説明

鍛造用金型

【課題】圧縮工程の際に、ワークから大きな荷重を受けてもバリの発生のないようにワークを成形することができる鍛造用金型を提供する。
【解決手段】分割されて圧縮軸心L方向に並設された第1分割型21と第2分割型22を備え、組付け状態で、第1分割型21の分割接合面21a及び第2分割型22の分割接合面22aが圧縮軸心Lに直交状である鍛造用金型に於て、組付け前の軽接触状態で、第1分割型21の分割接合面21aと第2分割型22の分割接合面22aとの間隙寸法が、キャビティ11側の最内端縁21b,22bからラジアル外方側Nへ向かって、5′〜50′の微小対面角度θをもって増加するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造に於て、金型への負荷が最も大きいのは、圧縮によりワーク(素材)の厚みを薄くする圧縮工程の際であり、その際の大きな負荷によって金型に不具合が発生しやすい。
従来は、キャビティを形成する成形金型(インサート)は、大きな荷重を受けるために、例えば、ケース金型に焼嵌めで組付けて外周側から補強し、さらに、圧縮の際に成形金型の割れ易い箇所を、予め圧縮軸心方向に並設するように2分割して、応力を逃がしていた。
例えば、特許文献1に示されたように、第1分割型(第1インサート)と第2分割型(第2インサート)を、ケース金型に組付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−221645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、第1分割型と第2分割型とをケース金型に組付ける力(予圧)が大きいと、第1分割型と第2分割型の接合面が部分的にお互いに食い込んでしまい、塑性変形を招き、成形に因る変形に追従しなくなり(応力を逃がすことができず)金型が損傷するといった問題があった。
鍛造用金型は、現実には、その容積(外径寸法)に制約があり、第1分割型と第2分割型に分割した外周をケース金型にて十分に補強することが許されない場合が多い。そのような場合には、組付ける力(予圧)が弱く、ワークから受ける大きな荷重によって、第1分割型と第2分割型の接合部に於て、キャビティ側の最内端縁に、隙間が生じ、その隙間にワーク(素材)の一部が侵入して成形品にバリ等の成形不良が発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、鍛造用金型の容積(外径寸法)の大きさの制約下に於て、分割型と分割型の接合面の間に、キャビティ側から圧縮工程中の素材が入り込むような隙間(間隙)が発生することを、簡素な構造をもって、防止することを目的とする。また、接合面に局部的に接触面圧が過大となって、塑性変形(食い込み)が発生することを、簡素な構造をもって、防止することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の鍛造用金型は、分割されて圧縮軸心方向に並設された第1分割型と第2分割型を備え、組付け状態で、上記第1分割型の分割接合面及び上記第2分割型の分割接合面が上記圧縮軸心に直交状である鍛造用金型に於て、組付け前の軽接触状態で、上記第1分割型の上記分割接合面と上記第2分割型の上記分割接合面との間隙寸法が、キャビティ側の最内端縁からラジアル外方側へ向かって、5′〜50′の微小対面角度をもって増加するように構成したものである。
また、上記軽接触状態で、上記第1分割型の上記分割接合面と上記第2分割型の上記分割接合面の内、一方を上記圧縮軸心に直交する直交平面に形成し、他方を勾配面状に形成したものである。
また、上記組付け状態において、上記第1分割型の上記分割接合面と上記第2分割型の上記分割接合面との接触面圧が、均一になるように構成したものである。
または、上記組付け状態において、上記第1分割型の上記分割接合面と上記第2分割型の上記分割接合面との接触面圧が、上記ラジアル外方側から上記キャビティ側へ向かうにつれて次第に大きくなるように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮工程の際に、第1分割型と第2分割型の間に隙間を発生させず、ワーク(の一部)が第1分割型と第2分割型の間に侵入するのを防止できる。また、第1分割型と第2分割型とが接合面に於てお互いに食い込んで塑性変形することを防止できる。さらに、鍛造品に、バリ等が発生することを防止できる。また、第1分割型と第2分割型の接合部の損傷や磨耗を防止し金型寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態の組付け状態を示す簡略正面断面図である。
【図2】実施の一形態の組付け前状態を示す簡略正面断面図である。
【図3】組付け前の状態の要部拡大断面図である。
【図4】組付け前の軽接触状態の要部拡大断面図である。
【図5】組付け状態の要部拡大断面図である。
【図6】成形状態での接触面圧を説明するための要部拡大断面図である。
【図7】他の実施形態の組付け状態の要部拡大断面図である。
【図8】他の実施形態の成形状態での接触面圧を説明するための要部拡大断面図である。
【図9】別の実施の形態の組付け前の軽接触状態を示す要部拡大断面図である。
【図10】金型の組付け状態の他例を示す簡略正面断面図である。
【図11】従来例を示し、組付け前の状態の要部断面図である。
【図12】従来例を示し、組付け状態の要部断面図である。
【図13】従来例を示し、成形中にワークから受ける力を説明した要部断面図である。
【図14】従来例を示し、成形状態の接触面圧を説明すると共に従来の問題点を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
図1の実施の形態に於て、鍛造用金型は、ケース金型(補強金型)2に焼嵌め等にて内嵌締め付け状に組付けられた状態(組付け状態)で、ワーク(素材)Wが内装されるキャビティ11を形成する円筒状の成形金型(インサート金型)20を備えている。また、成形金型20は、スペーサ金型3に下方から支持され、パンチ31から付与される圧縮軸心L方向の押圧力(下方への押圧力)を受けるように配設される。
図2に示すように、成形金型20は、組付け前状態で、パンチ(ポンチ)31が往復移動する圧縮軸心L方向に、円筒状の第1分割型(上インサート型又は上ニブとも呼ぶ)21と円筒状の第2分割型(下インサート型又は下ニブとも呼ぶ)22とに、分割される。
【0010】
図1及び図2に於て、第1分割型21は、組付け状態でキャビティ11の一部を形成する内周面21cと、組付け状態で第2分割型22と接合する分割接合面21a(以下、第1接合面21aと呼ぶ場合もある)と、を有し、円筒状に形成されている。
第2分割型22は、組付け状態でキャビティ11の一部を形成する内周面22c及び底面22fと、組付け状態で第1分割型21と接合する分割接合面22a(以下、第2接合面22aと呼ぶ場合もある)と、パンチ31と対向状に配設され圧縮軸心L方向に往復移動可能なダイピン(ノックアウトピン)32が挿入される貫孔22dと、を有し、円筒状に形成されている。
このように、分割されて圧縮軸心L方向に第1分割型21と第2分割型22を備えていると共に、組付け状態で、分割接合面21aと分割接合面22aは、圧縮軸心Lに直交状である。
【0011】
図3に示すように、第1分割型21と第2分割型22を圧縮軸心Lを共通軸心として配設して、第1接合面(第1分割型21の下面)21aと第2接合面(第2分割型22の上面)22aを対面状に配設した組付け前の(準備)状態において、第1接合面21aは、圧縮軸心Lに直交する直交平面(以下、軸心直交平面と呼ぶ場合がある)に形成され、第2接合面22aは、キャビティ11側の最内端縁22bから所定寸法Sだけ離れた所定位置Qまで軸心直交平面外方側(ラジアル外方側)Nに向かって下傾する勾配(テーパ)面状に形成されている。
即ち、第2接合面22aは円錐面を成している。また、第2接合面22aは、軸心直交平面に対して、5′〜50′の微小勾配角度αをもって形成されている。なお、このような微小勾配角度αを10′〜20′とすることは、さらに望ましい。
【0012】
また、第2分割型22は、所定位置Qから、軸心直交平面外方側(ラジアル外方側)Nに向かって下傾する逃がし勾配面22eを有している。
逃がし勾配面22eは、軸心直交平面に対して、微小勾配角度αよりも大きな角度の逃がし角度βをもって傾斜している。逃がし角度βは具体的には、1°〜60°である。
即ち、第2分割型22の上面は、組付け前状態で、第2接合面22aと逃がし勾配面22eを連続状に有する折れ曲がりテーパ面(傾斜面)状であり、第2分割型22の上部は側面視円錐台状である。
【0013】
図4に示すように、第1接合面21aの最内端縁21bと、第2接合面22aの最内端縁22bが当接した、組付け前の軽接触状態(圧縮軸心L方向の押圧力が付与されていない非押圧状態)において、第1接合面21aは軸心直交平面に形成され、第2接合面22aは勾配面状に形成されている。
そして、この軽接触状態において、第1接合面21aと第2接合面22aの間隙寸法が、最内端縁21b,22bからラジアル外方側(軸心直交平面外方側)Nへ向かって、5′〜50′の微小対面角度θをもって増加するように形成されている。なお、10′〜20′の微小対面角度θをもって増加するように形成されるのが好ましい。ところで、前述したところの微小勾配角度αが、微小対面角度θに相当する(相等しい)。また、第1接合面21aと第2接合面22aの間は、軽接触状態の正面断面視で、開口嘴状に形成されているとも言える。
【0014】
また、図5に示すように、組付け状態では、第2接合面22aと第1接合面21aとが相互に押圧して、応力のバランスが保たれる(平衡となる)まで弾性変形し、第1接合面21aと第2接合面22aがキャビティ11側からラジアル外方側Nへ向かって下方傾斜状の極微小傾斜面にて面接触状に接合するように構成している。なお、図示省略するが、第1接合面21aが第2接合面22aに押圧されてキャビティ11側からラジアル外方側Nへ向かって下方傾斜状となる場合もある。いずれにせよ、第1接合面21aと第2接合面22aが外方下傾斜状の極微小傾斜面にて面接触状に接合するように構成している。(微小対面角度θを設定している。)
この極微小傾斜面の極微小傾斜角度α´が、1′〜40′となるように構成(微小対面角度θを設定)するのが望ましい。より好ましくは、極微小傾斜角度α´が2′〜15′となるように構成する。
さらに、組付け状態で、第1接合面21aと第2接合面22aとの接触面圧Pが均一になるように構成している。
なお、本発明に於て、組付け状態で、この極微小傾斜面の極微小傾斜角度α´が、極めて小さいため、第1接合面21aと第2接合面22aが組付け状態で、圧縮軸心Lに直交状と呼ぶ場合もある。
【0015】
言い換えると、図5に於て、第2接合面22aを、二点鎖線で示す組付け前の勾配面状から、組立(組付け)状態で直交平面状(傾斜角度が小さくなった極微小傾斜面状)に変形(弾性変形)するように設けている。さらに言い換えると、図4に於て、第2分割型22は、最内端縁22bから所定位置Qまでの範囲に、一点鎖線で示す軸心直交基準平面Eq(成形金型20の軸心直交分割基準平面)よりも、接合相手の分割型側(上方)へ突出する横断面三角形状(直角三角形状)の小凸部29を有している。
【0016】
さらに具体的に説明すれば、図2から図1のように、あるいは、図4から図5のように、ケース金型2に第1・第2分割型21,22を挿入して締付けるが、一般に焼嵌め等を適用するのが望ましい。図4(図2)から図5(図1)のように、ケース金型2に焼嵌め等にて締付ける際に、第1分割型21は僅かに上方凸状(山型)に弾性変形して接合するので、第1分割型21の下面(分割接合面)21aは、ラジアル外方へ下傾状勾配面の分割接合面22aと、平行状態に近づきつつ圧接し、図5に示す如く、均一(均等)な接触面圧Pを描くことになる。なお、上述したように、第1分割型21が僅かに上方凸状(山型)に弾性変形する理由は、(第2分割型22の下面はスペーサ金型3にて下方への変形を阻止されているのに対して、)第1分割型21の上面は(他部材が存在せず)フリー状態であるためである。
本発明にあっては、焼嵌め等の締付けの際に、第1分割型21が上方凸状(山型)に弾性変形して、その下面もそのように上方凸状に弾性変形する現象を巧妙に活用し、予め、図3と図4にて説明した微小勾配角度αの勾配面状に、第2分割型22の分割接合面22aを形成して、図5に示すように、組付け状態に於て、接触面圧Pを均一(均等)になるようにしたものといえる。
【0017】
ここで、図11〜図14は従来例を示しており、図11に示すように、第1分割型91の分割接合面91a(第1接合面91a)を軸心直交平面とし、第2分割型92の分割接合面92a(第2接合面92a)を、軸心直交平面としたものである。
図12に示すように、組付け状態で、第1接合面91aと第2接合面92aの接触面圧P´は、最内端縁91b,92bに接近するにつれて次第に接触面圧が小さくなる(不均一である)。このように最内端縁91b,92b及びその近傍の接触面圧P´が小さい状態で、ワークWを鍛造する圧縮加工の際に、図13に示すような、ワークWからの押圧力Fを第1分割型91及び第2分割型92が受けると、押圧力Fは底面95側が大きいため、矢印Mのようにおじぎ変形を起こし、第2接合面92aは、ラジアル内方側(最内端縁92b)が図13,図14の下方へ微小寸法だけ移動し、ラジアル外方側が同図の上方へ移動しようとするため、ラジアル外方側の第1接合面91aに対する接触面圧がさらに増大して、図12に示す接触面圧P´から、図14に示す接触面圧P´´のように変化する。即ち、ラジアル内方側とラジアル外方側の接触面圧の差が大きくなり、しかも、最内端縁92bの接触面圧が零又は零に近づき、ワーク(素材)Wの一部が、図14の如く、侵入して、いわゆるバリを発生する。さらに、最内端縁91b,92b及びその近傍に、磨耗や損傷が発生し、金型の寿命を早めてしまうといった問題がある。また、所定位置Q´近傍(第1・第2接合面91a,92aの最外端縁近傍)では、接触面圧が過剰に大きくなり、圧潰や、分割型同士が互いに食い込むような塑性変形が発生し、金型の寿命を早めてしまうといった問題がある。このような図11〜図14にて述べた従来の問題点を、本発明は、簡素な構成によって見事に解決したものであって、図5の組付け状態に於て、接触面圧Pを均等(均一)になるように、5′〜50′の微小対面角度θをもってラジアル外方向に増加させ(図4参照)たことで達成し、従来の図12の組付け状態と比較すると、最内端縁21b,22b近傍の接触面圧を増加させ、同時に、所定位置Qでは接触面圧を減少させている。
本発明にあっても、従来例で述べた図13と全く同様の現象が生じて、矢印M方向におじぎ変形を生じる。そのため図5〜図6に示す如く、鍛造工程(圧縮加工)の成形状態では、接触面圧分布が変化する。即ち、ラジアル内方側の面圧は減少し、ラジアル外方側の面圧は増加する。しかし、従来例の図12から図14への変化に比べると、図6で明らかな如く、ラジアル内方側(最内端縁21b,22b)にも圧縮面圧が残り、それによって、図14に示したような間隙(隙間)Cを生じつつワーク(素材)Wの一部が侵入してバリを発生することを防止でき、さらに、ラジアル外方側(所定位置Qの近傍)の面圧は、従来の図14よりも十分に小さくなって、接合面21a,22aに圧潰(塑性変形)を生ずることを防止できる。
【0018】
また、他の実施の形態は、図7に示すように、組付け状態において、第1接合面21aと第2接合面22aとの接触面圧Pが、ラジアル外方側Nからキャビティ11側へ向かうにつれて次第に大きくなるように構成している。
そして、図8に示すように、ワークWを鍛造する圧縮加工の際に、第1接合面21aと第2接合面22aとの接触面圧Pが、均一になるように構成している。
従来例の図14と比べると、図8で明らかな如く、ラジアル内方側(最内端縁21b,22b)にも圧縮面圧が残り、それによって、図14に示したような間隙(隙間)Cを生じつつワーク(素材)Wの一部が侵入してバリを発生することを防止でき、さらに、ラジアル外方側(所定位置Qの近傍)の面圧は、従来の図14よりも十分に小さくなって、接合面21a,22aに圧潰(塑性変形)を生ずることを防止できる。
【0019】
次に、別の実施の形態は、図9に示すように、組付け前の軽接触状態で、第1接合面21aを勾配面状に設け、第2接合面22aを軸心直交平面に形成し、第1接合面21aと第2接合面22aとの間隙寸法が、最内端縁21b,22bから軸心直交平面外方側(ラジアル外方向)Nへ向かって、微小対面角度θをもって増加するように形成している。
また、軽接触状態で、第1接合面21aと、第2接合面22aの両方を、勾配面状に形成して、組付け前の軽接触状態で、上記間隙寸法が、最内端縁21b,22bから軸心直交平面外方側Nへ向かって、微小対面角度θをもって増加するように形成するも好ましい(図示省略)。
【0020】
なお、本発明は、設計変更可能であって、成形金型20(第1分割型21と第2分割型22)のラジアル外方側Nを保持(補強)する構造は、図1に示したように、ケース金型2に組付ける場合に限らず、図10に示すように、成形金型20とケース金型2の間に、第1分割型21が組付けられる円筒状の第1補強型51と、第2分割型22が組付けられる円筒状に第2補強型52を設けて補強したものでも良い。即ち、第1分割型21と第2分割型22が組付けられる金型(部材)の構造(形状)は自由である。
また、第2分割型22に逃がし勾配面22eを設けず、第1分割型21に逃がし勾配面を形成しても良い。また、逃がし勾配面22eを、第1分割型21と第2分割型22の両方に設けても良い。また、圧縮軸心Lを鉛直状(上下方向)として方向を説明したが、水平状や傾斜状とするも自由である。また、微小対面角度θ(微小勾配角度α)を10′〜20′とするのがさらに好ましい。なお、本発明に於て、均一とは、最大面圧と最小面圧の差が20%以内と定義する。
【0021】
以上のように、本発明の鍛造用金型は、分割されて圧縮軸心L方向に並設された第1分割型21と第2分割型22を備え、組付け状態で、第1分割型21の分割接合面21a及び第2分割型22の分割接合面22aが圧縮軸心Lに直交状である鍛造用金型に於て、組付け前の軽接触状態で、第1分割型21の分割接合面21aと第2分割型22の分割接合面22aとの間隙寸法が、キャビティ11側の最内端縁21b,22bからラジアル外方側Nへ向かって、5′〜50′の微小対面角度θをもって増加するように構成したので、圧縮工程の際に、第1分割型21と第2分割型22の間に間隙C(図14参照)を発生させず、ワークWの一部が第1分割型21と第2分割型22の間に侵入するのを防止できる。また、第1分割型21と第2分割型22とがお互いに食い込んで塑性変形するような強い力で無理に組付ける必要がなくなり成形に因る変形に分割型を追従させることができる。キャビティを適正な形状に維持でき、バリの発生等加工不良を軽減して所定形状に加工できる。また、第1分割型21と第2分割型22の接合部の損傷や磨耗を防止し金型寿命を延ばすことができる。
【0022】
また、軽接触状態で、第1分割型21の分割接合面21aと第2分割型22の分割接合面22aの内、一方を圧縮軸心Lに直交する直交平面に形成し、他方を勾配面状に形成したので、製作が容易である。
【0023】
また、組付け状態において、第1分割型21の分割接合面21aと第2分割型22の分割接合面22aとの接触面圧Pが、均一になるように構成したので、成形によって第1分割型21の分割接合面21aと第2分割型22の分割接合面22aとの間に間隙Cが生じるのをより確実に防止でき、適正で品質の良い鍛造品を得ることができる。また、金型寿命を延ばすことができる。
【0024】
また、組付け状態において、第1分割型21の分割接合面21aと第2分割型22の分割接合面22aとの接触面圧Pが、ラジアル外方側Nからキャビティ11側へ向かうにつれて次第に大きくなるように構成したので、成形によって第1分割型21の分割接合面21aと第2分割型22の分割接合面22aとの間に間隙Cが生じるのをより確実に防止でき、適正で品質の良い鍛造品を得ることができる。また、金型寿命を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0025】
11 キャビティ
21 第1分割型
21a 分割接合面
21b 最内端縁
22 第2分割型
22a 分割接合面
22b 最内端縁
L 圧縮軸心
N ラジアル外方側
P 接触面圧
θ 微小対面角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割されて圧縮軸心(L)方向に並設された第1分割型(21)と第2分割型(22)を備え、組付け状態で、上記第1分割型(21)の分割接合面(21a)及び上記第2分割型(22)の分割接合面(22a)が上記圧縮軸心(L)に直交状である鍛造用金型に於て、
組付け前の軽接触状態で、上記第1分割型(21)の上記分割接合面(21a)と上記第2分割型(22)の上記分割接合面(22a)との間隙寸法が、キャビティ(11)側の最内端縁(21b)(22b)からラジアル外方側(N)へ向かって、5′〜50′の微小対面角度(θ)をもって増加するように構成したことを特徴とする鍛造用金型。
【請求項2】
上記軽接触状態で、上記第1分割型(21)の上記分割接合面(21a)と上記第2分割型(22)の上記分割接合面(22a)の内、一方を上記圧縮軸心(L)に直交する直交平面に形成し、他方を勾配面状に形成した請求項1記載の鍛造用金型。
【請求項3】
上記組付け状態において、上記第1分割型(21)の上記分割接合面(21a)と上記第2分割型(22)の上記分割接合面(22a)との接触面圧(P)が、均一になるように構成した請求項1又は2記載の鍛造用金型。
【請求項4】
上記組付け状態において、上記第1分割型(21)の上記分割接合面(21a)と上記第2分割型(22)の上記分割接合面(22a)との接触面圧(P)が、上記ラジアル外方側(N)から上記キャビティ(11)側へ向かうにつれて次第に大きくなるように構成した請求項1又は2記載の鍛造用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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