鍵盤装置
【課題】 複数の鍵や鍵盤シャーシおよびスイッチ部などの形状や機能を音高に応じて変える必要がなく、簡単に音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 複数の鍵2をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部14の設置位置を複数の鍵2の音高に応じて異ならせた。従って、複数のスイッチ部14の各反発力が一定であっても、各スイッチ部14の設置位置に応じて鍵タッチ感を異ならせることができ、これにより各鍵2の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの製造を簡素化することができ、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【解決手段】 複数の鍵2をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部14の設置位置を複数の鍵2の音高に応じて異ならせた。従って、複数のスイッチ部14の各反発力が一定であっても、各スイッチ部14の設置位置に応じて鍵タッチ感を異ならせることができ、これにより各鍵2の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの製造を簡素化することができ、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの電子鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵を上下方向に回転可能に配置すると共に、この複数の鍵をそれぞれ板ばねのばね力によって弾力的に押し上げ、この板ばねのばね力に抗して鍵を押鍵操作するように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−271366号公報
【0004】
このような電子鍵盤楽器では、複数の鍵に対応する各板ばねの一端部をそれぞれ鍵に設けられた各鍵係止部に係止させ、他端部を鍵盤シャーシにそれぞれ設けられた各シャーシ係止部に係止させ、この状態で各板ばねをそれぞれ上方に向けて凸形状となるように湾曲させることにより、各鍵をそれぞれ弾力的に押し上げている。
【0005】
この種の電子鍵盤楽器は、各鍵に対応する板ばねの設置状態を各鍵の音高に応じて変えることにより、複数の鍵の音高に応じて鍵タッチ感が変わるように構成されている。すなわち、この電子鍵盤楽器は、各鍵に対応する板ばねの一端部が係止される各鍵の鍵係止部の上下位置を音高に応じてそれぞれ異ならせ、板ばねの他端部が係止される鍵盤シャーシのシャーシ係止部を一定の位置に設けることにより、各板ばねの湾曲状態をそれぞれ音高に応じて変え、これにより各板ばねのばね力が音高に応じてそれぞれ異なるように構成されている。
【0006】
例えば、高音域の鍵では鍵係止部の設置位置を高く形成し、低音域の鍵では鍵係止部の設置位置を低く形成し、高音域の板ばねのばね力を低音域の板ばねのばね力よりも小さくすることにより、高音域の鍵タッチ感が低音域の鍵タッチ感よりも軽くなるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の電子鍵盤楽器では、鍵の音高に応じて鍵タッチ感を変えるために、各板ばねの一端部を係止する各鍵の鍵係止部の上下位置を音高に応じて変えて、各板ばねの湾曲状態をそれぞれ音高に応じて変える必要がある。このため、複数の鍵の各鍵係止部を各鍵ごとに異なる位置に形成しなければならず、複数の鍵の形状が音高に応じてそれぞれ異なることなる。このため、各鍵の製作が面倒で煩雑になるばかりか、製作コストが高くなるという問題がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、複数の鍵や鍵盤シャーシおよびスイッチ部などの形状や機能を音高に応じて変える必要がなく、簡単に音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に並列に配列された状態でそれぞれ回転支点を中心に上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵と、この複数の鍵をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部とを備えた鍵盤装置において、前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音高に応じて前記回転支点からの設置位置が異なっていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記複数のスイッチ部の前記設置位置が、前記複数の鍵の音域ごとに段階的に異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記複数のスイッチ部の前記設置位置が、前記複数の鍵の音階順に徐々に異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、複数のスイッチ部の各反発力が一定であっても、各スイッチ部の設置位置に応じて鍵タッチ感を異ならせることができるので、簡単に各鍵の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵や鍵盤シャーシおよびスイッチ部などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵や鍵盤シャーシおよびスイッチ部などの製造を簡素化することができ、これにより低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1において、鍵の一部を取り除いた状態で、高音域、中音域、低音域の各音域を部分的に示した平面図である。
【図2】図1に示された電子鍵盤楽器における高音域を示した拡大平面図である。
【図3】図2に示された電子鍵盤楽器の高音域のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図3に示された電子鍵盤楽器におけるスイッチ部を示した要部の拡大断面図である。
【図5】図1に示された電子鍵盤楽器における中音域を示した拡大平面図である。
【図6】図5に示された電子鍵盤楽器の中音域のB−B矢視における拡大断面図である。
【図7】図1に示された電子鍵盤楽器の低音域を示した拡大平面図である。
【図8】図7に示された電子鍵盤楽器の低音域のC−C矢視における拡大断面図である。
【図9】図1に示された電子鍵盤楽器において、高音域、中音域、低音域の各音域ごとの押鍵操作時における鍵荷重と鍵ストロークとの特性を示した図である。
【図10】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2において、要部を示した拡大平面図である。
【図11】図10に示された電子鍵盤楽器において、鍵の一部を取り除いた状態を示した要部の拡大平面図である。
【図12】図11に示された電子鍵盤楽器の中音域のD−D矢視における拡大断面図である。
【図13】図10に示された電子鍵盤楽器において、全ての鍵に対応するスイッチ部の設置位置を示した要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、図1〜図9を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1〜図3に示すように、楽器ケースの下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ1を備えている。この鍵盤シャーシ1の上部には、図2および図3に示すように、複数の鍵2が音階順に並列に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられている。この複数の鍵2は、図1に示すように、それぞれ白鍵と黒鍵とからなり、高音域、中音域、低音域の3つの音域に分かれている。
【0015】
この場合、鍵2の後端部(図3では左端部)には、図3に示すように、回転支点である肉厚の薄い屈曲部3がそれぞれ設けられている。この屈曲部3は、図2および図3に示すように、鍵2の配列方向に沿って連続する共通連結部4に連結されている。この共通連結部4は、図3に示すように、鍵盤シャーシ1の後端上部(図3では左端上部)に設けられた鍵支持部5上にビス5aによって取り付けられている。
【0016】
すなわち、共通連結部4は、図2および図3に示すように、白鍵用の共通連結部4と黒鍵用の共通連結部4とを有し、これらが上下に重ね合わされた状態で、鍵支持部5上にビス5aによって取り付けられている。これにより、鍵2は、図3に示すように、押鍵操作されると、回転支点である屈曲部3が上下方向に弾性変形することにより、この屈曲部3を中心に上下方向に回転するように構成されている。
【0017】
また、この鍵2の前側内部(図3では右側内部)には、図3に示すように、鍵盤シャーシ1の鍵ガイド部6が挿入されている。これにより、鍵2は、押鍵操作された際に、鍵ガイド部6が鍵2内を相対的に上下方向に摺動することにより、横振れしないように構成されている。さらに、この鍵2は、図3に示すように、そのほぼ中間部に鍵2の上下位置を規制するための位置規制部7が下側に突出して設けられている。この位置規制部7は、その下部後端に突起部7aが設けられ、この突起部7aが鍵盤シャーシ1の立上り部8に設けられた開口部8a内に挿入した状態で、上下方向に移動するように構成されている。
【0018】
これにより、位置規制部7は、図3に示すように、鍵2が押し下げられた際に、位置規制部7の下端が鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの下部に設けられた下限ストッパ9に当接することにより、鍵2の下限位置を規制するように構成されている。また、この位置規制部7は、図3に示すように、押鍵された鍵2が初期位置に復帰する際に、位置規制部7の突起部7aが鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの上部に設けられた上限ストッパ10に当接することにより、鍵2の上限位置を規制するように構成されている。
【0019】
一方、鍵盤シャーシ1の前後方向(図3では左右方向)におけるほぼ中間に位置する上部には、図1〜図3に示すように、スイッチ部材11が複数の鍵2の下側に位置した状態で設けられている。このスイッチ部材11は、図2〜図4に示すように、鍵盤シャーシ1上に取り付けられたスイッチ基板12と、このスイッチ基板12上に取り付けられて鍵2の押圧部13によって押圧されるスイッチ部14とを備えている。
【0020】
スイッチ基板12は、図1に示すように、鍵2の配列方向に沿って連続する帯板状に形成されている。このスイッチ基板12は、図2および図3に示すように、鍵盤シャーシ1における後端部の鍵支持部5と中間部の立上り部8との間にそれぞれ起立して設けられた基板支持部15によって、鍵盤シャーシ1上に取り付けられている。また、このスイッチ基板12の上面には、図4に示すように、後述する固定接点12aが音域ごとに異なった位置に設けられていると共に、このスイッチ基板12には、スイッチ部14を取り付けるための後述する取付孔12bが音域ごとに異なった位置に設けられている。
【0021】
スイッチ部14は、図4に示すように、スイッチ基板12上に配置されるゴムシート16を備えている。このゴムシート16は、図2に示すように、スイッチ基板12の前後方向の長さよりも十分に短い幅、つまり図3に示すように、後述する鍵2の押圧部13の下面における前後方向(図3では左右方向)の長さの一部に対応する幅で、鍵2の配列方向に沿って連続する細長い帯状に形成されている。
【0022】
このゴムシート16には、図2〜図4に示すように、ドーム形状の膨出部17が複数の鍵2の各押圧部13にそれぞれ対応した状態で等間隔に形成されている。このドーム形状の膨出部17は、図3に示すように、その反発力によって鍵2の押圧部13を押し上げると共に、反発力に抗して鍵2の押圧部13で押圧されると、弾性変形するように構成されている。
【0023】
すなわち、このドーム形状の膨出部17は、図3、図6、図8において各鍵2の押圧部13でそれぞれ押圧されると、弾性変形を開始し、図9に示すように、鍵荷重がそれぞれ上昇する曲線を描くように徐々に重くなり、更に各鍵2の押圧部13でそれぞれ押圧されると、急激に弾性変形し、図9に示すように、鍵荷重がそれぞれ降下する曲線を描くように抜ける感覚で軽くなり、この後、更に各鍵2の押圧部13でそれぞれ押圧されると、ほとんど弾性変形しないため、図9に示すように、鍵荷重がそれぞれ再び上昇する曲線を描いて重くなるように構成されている。
【0024】
この場合、ドーム形状の膨出部17内には、図4に示すように、スイッチ基板12の上面に設けられた一対の固定接点12aに接離可能に接触する一対の可動接点17aが設けられている。これにより、スイッチ部14は、図3および図4に示すように、鍵2の押圧部13によってドーム形状の膨出部17が押圧されて弾性変形すると、一対の可動接点17aがスイッチ基板12の一対の固定接点12aに順次接触して、スイッチ信号を出力するように構成されている。
【0025】
ところで、鍵2の押圧部13は、図3に示すように、鍵2の前後方向(図3では左右方向)における長さが、スイッチ部14の膨出部17のほぼ3倍程度の長さで、十分に長く形成されている。この場合、鍵2の押圧部13は、押鍵時における鍵ストロークが鍵2の前側(図3で右側)が後側(図3では左側)よりも長いため、押圧部13の下面が鍵2の前側から後側に向けて緩やかな後部下がりに傾斜した状態で形成されている。これにより、鍵2の押圧部13は、鍵2が押鍵操作されてスイッチ部14を押圧した際に、その下面がスイッチ基板12の上面に対してほぼ平行になるように構成されている。
【0026】
一方、鍵2の押圧部13によって押圧されるスイッチ部14は、図1に示すように、複数の鍵2の音域ごとにスイッチ基板12に対する設置位置が異なっている。すなわち、高音域の鍵2に対応するスイッチ部14は、図2および図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に取り付けられている。
【0027】
また、中音域の鍵2に対応するスイッチ部14は、図5および図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に取り付けられている。さらに、低音域の鍵2に対応するスイッチ部14は、図7および図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に取り付けられている。
【0028】
この場合、スイッチ基板12上に設けられた固定接点12aは、複数の鍵2の音域ごとにスイッチ基板12に対する設置位置がそれぞれ異なっている。すなわち、高音域の鍵2に対応する固定接点12aは、図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に対応するスイッチ基板12の後部側(図3では左側)に位置して設けられている。
【0029】
同様に、中音域の鍵2に対応する固定接点12aは、図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に対応するスイッチ基板12のほぼ中間部に位置して設けられている。さらに、低音域の鍵2に対応する固定接点12aは、図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に対応するスイッチ基板12の前部側(図8では右側)に位置して設けられている。
【0030】
これに伴って、スイッチ基板12にスイッチ部14を取り付けるためにスイッチ部14の突起16aが挿入する取付孔12bも、複数の鍵2の音域ごとにスイッチ基板12に対する設置位置がそれぞれ異なっている。すなわち、高音域のスイッチ部14に対する取付孔12bは、図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に位置する下面に対応した状態で、高音域のスイッチ部14における固定接点12aの近傍に位置して設けられている。
【0031】
同様に、中音域のスイッチ部14をスイッチ基板12に取り付けるための取付孔12bは、図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に位置する下面に対応した状態で、中音域のスイッチ部14における固定接点12aの近傍に位置して設けられている。さらに、低音域のスイッチ部14をスイッチ基板12に取り付けるための取付孔12bは、図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に位置する下面に対応した状態で、低音域のスイッチ部14における固定接点12aの近傍に位置して設けられている。
【0032】
これにより、高音域のスイッチ部14は、図2および図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の後部側(図3では左側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さ(L1)が最も短く設定されている。
【0033】
また、中音域のスイッチ部14は、図5および図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の中間部に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さ(L2)が高音域よりも長く(L2>L1)設定されている。
【0034】
さらに、低音域のスイッチ部14は、図7および図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の前部側(図8では右側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さ(L3)が中音域よりも更に長く(L3>L2)設定されている。
【0035】
すなわち、高音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL1は、中音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL2よりも短く(L1<L2)設定されている。また、中音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL2は、低音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL3よりも短く(L2<L3)設定されている。さらに、低音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL3は、高音域および中音域の各長さL1、L2よりも長く(L3>L2>L1)設定されている。
【0036】
このため、複数の鍵2における各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する際には、スイッチ部14の膨出部17の反発力が一定で、且つ鍵2の回転支点である屈曲部3から鍵2の前部における押鍵位置までの長さLがほぼ一定であることにより、図9に示すように、高音域における鍵2の押鍵力が中音域における鍵2の押鍵力よりも軽く、中音域における鍵2の押鍵力が低音域における鍵2の押鍵力よも軽く、低音域における鍵2の押鍵力が最も重くなる。
【0037】
すなわち、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定(F)であるとした場合に、高音域の鍵2を押圧するために必要な押鍵力F1は、(L1/L)Fであり、中音域の鍵2を押圧するために必要な押鍵力F2は、(L2/L)Fであり、低音域の鍵2を押圧するために必要な押鍵力F3は、(L3/L)Fである。
【0038】
これにより、高音域、中音域、低音域の各音域における鍵2をそれぞれ押圧する各押鍵力F1、F2、F3は、(L1/L)F<(L2/L)F<(L3/L)Fであり、図9に示すように、高音域の押鍵力F1が最も軽く、中音域の押鍵力F2が高音域の押鍵力F1よりも重く、低音域の押鍵力F3が最も重くなる(F1<F2<3)。
【0039】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に並列に配列された状態でそれぞれ回転支点である屈曲部3を中心に上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵2と、この複数の鍵2をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部14とを備え、この複数のスイッチ部14は、鍵2の回転支点である屈曲部3からの設置位置が、複数の鍵2の音高に応じて異なっていることにより、音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。
【0040】
すなわち、複数のスイッチ部14は、その設置位置が複数の鍵2の音高に応じて異なっている構成であることにより、複数のスイッチ部14の各反発力が一定であっても、各スイッチ部14の設置位置に応じて複数の鍵2の各鍵タッチ感を異ならせることができ、これにより各鍵2の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの製造を簡素化することができ、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【0041】
この場合、複数のスイッチ部14は、複数の鍵2の音域ごとに段階的に設置位置が異なっていることにより、複数のスイッチ部14を高音域、中音域、低音域ごとに段階的に変えて設置すれば良いので、スイッチ部14の設置作業が容易にできる。すなわち、高音域ではスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3に近づけた位置に設置し、中音域ではスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3から高音域よりも離した位置に設置し、低音域ではスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3から中音域よりも更に離した位置に設置するだけで良い。
【0042】
このようにスイッチ部14を音域ごとに段階的に異なる位置に設置することにより、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定(F)であるとした場合に、高音域の鍵2を押圧する押鍵力F1は、中音域の鍵2を押圧する押鍵力F2よりも小さく、中音域の鍵2を押圧する押鍵力F2は、低音域の鍵2を押圧する押鍵力F3よりも小さく、低音域の鍵2を押圧する押鍵力F3は、高音域の押鍵力F1および中音域の押鍵力F2よりも大きくすることができる。これにより、複数の鍵2の音域ごとに各鍵2の鍵タッチ感を良好に変えることができる。
【0043】
また、この電子鍵盤楽器では、押鍵時における鍵ストロークが鍵2の前側から後側に向かうに従って徐々に短くなるため、複数の鍵2にそれぞれ設けられた各押圧部13の下面が、鍵2の前側から後側に向けて緩やかな後部下がりに傾斜した状態で形成されていることにより、鍵2が押鍵操作されて鍵2の押圧部13によってスイッチ部14を押圧した際に、押圧部13の下面をスイッチ基板12の上面に対してほぼ平行にすることができ、これにより複数の鍵2の鍵ストロークを変えずに、押圧部13によって各スイッチ部14をほぼ一定の状態で押圧することができ、これによっても複数の鍵2の音域ごとに各鍵タッチ感を良好に変えることができる。
【0044】
(実施形態2)
次に、図10〜図13を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図9に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、図11および図13に示すように、スイッチ部材11のスイッチ部14を高音域から低音域に向けて連続させた状態で、徐々に前後方向に傾斜させて配置した構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0045】
すなわち、スイッチ部材11は、実施形態1と同様、鍵盤シャーシ1上に取り付けられたスイッチ基板12と、このスイッチ基板12上に取り付けられて鍵2の押圧部13によって押圧されるスイッチ部14とを備えている。この場合にも、スイッチ基板12は、図11および図13に示すように、鍵2の配列方向に沿って連続する帯板状に形成されている。このスイッチ基板12も、図12に示すように、鍵盤シャーシ1における後端部の鍵支持部5と中間部の立上り部8との間にそれぞれ起立して設けられた基板支持部15によって、鍵盤シャーシ1上に取り付けられている。
【0046】
また、スイッチ部14も、実施形態1と同様、スイッチ基板12上に配置されたゴムシート16を備えている。この場合にも、ゴムシート16は、実施形態1と同様、スイッチ基板12の前後方向(図12では左右方向)における長さよりも十分に短い幅、つまり図3に示すように、後述する鍵2の押圧部13の下面における前後方向の長さの一部に対応する幅で、鍵2の配列方向に沿って連続する細長い帯状に形成されている。
【0047】
このゴムシート16には、実施形態1と同様、ドーム形状の膨出部17が複数の鍵2の各押圧部13にそれぞれ対応した状態で等間隔に形成されている。このドーム形状の膨出部17も、実施形態1と同様、その反発力によって鍵2の押圧部13を押し上げると共に、反発力に抗して鍵2の押圧部13で押圧されると、弾性変形し、内部の可動接点17aがスイッチ基板12の固定接点12aに接触することにより、スイッチ信号を出力するように構成されている。
【0048】
ところで、このスイッチ部14は、図10〜図13に示すように、複数の鍵2の音階順にスイッチ基板12に対する設置位置が徐々に異なるように構成されている。すなわち、このスイッチ部14は、図12および図13に示すように、最も音高の高い鍵2に対応する膨出部17が鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に位置する下面に対応し、最も音高の低い鍵2に対応する膨出部17が鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に前後方向(図12では左右方向)に傾斜して取り付けられている。
【0049】
この場合、スイッチ基板12上に設けられた固定接点12aは、複数の鍵2の音階順にスイッチ基板12に対する設置位置が徐々に異なっている。すなわち、最も音高の高い鍵2に対応する固定接点12aは、図12および図13に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に対応するスイッチ基板12の後部側(図12では左側)に位置して設けられている。
【0050】
また、最も音高の低い鍵2に対応する固定接点12aは、図12および図13に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に対応するスイッチ基板12の前部側(図12では右側)に位置して設けられている。このため、最も音高の高いスイッチ部14に対する固定接点12aと、最も音高の低いスイッチ部14に対する固定接点12aとの間に位置する各固定接点12aは、図13に示すように、スイッチ基板12の後部側(図13では上辺側)からスイッチ基板12の前部側(図13では下辺側)に向けて徐々に位置がずれて設けられている。
【0051】
これに伴って、スイッチ基板12にスイッチ部14を取り付けるために、スイッチ部14の突起16aが挿入する取付孔12bも、複数の鍵2の音階順にスイッチ基板12に対する設置位置が徐々に異なっている。すなわち、最も音高の高いスイッチ部14に対応する取付孔12bは、図11〜図13に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に位置する下面に対応した状態で、最も音高の高いスイッチ部14の固定接点12aの近傍に位置して設けられている。
【0052】
また、最も音高の低いスイッチ部14に対する取付孔12bは、図11〜図13に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に位置する下面に対応した状態で、最も音高の低いスイッチ部14の固定接点12aの近傍に位置して設けられている。このため、最も音高の高いスイッチ部14に対する取付孔12bと、最も音高の低いスイッチ部14に対する取付孔12bとの間に位置する各取付孔12bは、図13に示すように、スイッチ基板12の後部側(図13では上辺側)からスイッチ基板12の前部側(図13では下辺側)に向けて徐々に位置がずれて設けられている。
【0053】
これにより、最も音高の高いスイッチ部14は、図12に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の後部側(図12では左側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さが最も短く設定されている。
【0054】
また、最も音高の低いスイッチ部14は、図12に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の前部側(図12では右側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さが最も長く設定されている。
【0055】
このため、複数の鍵2における各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する際には、スイッチ部14の膨出部17の反発力が一定で、且つ鍵2の回転支点である屈曲部3から鍵2の前部における押鍵位置までの長さがほぼ一定であることにより、複数の鍵2をそれぞれ押圧する各押鍵力は、最も音高の高い鍵2から最も音高の低い鍵2に向かうに従って、音階順に徐々に重くなるように変化する。
【0056】
すなわち、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定であるとした場合において、複数の鍵2をそれぞれ押圧するために必要な各押鍵力は、最も音高の高い鍵2から最も音高の低い鍵2に向かうに従って徐々に大きくなることにより、高音域側から低音域側に向けて音階順に徐々に重くなる。
【0057】
このように、この電子鍵盤楽器においても、実施形態1と同様、複数のスイッチ部14は、その設置位置が複数の鍵2の音高に応じて異なっている構成であることにより、複数のスイッチ部14の各反発力が一定であっても、各スイッチ部14の設置位置に応じて鍵タッチ感を異ならせることができ、これにより各鍵2の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの製造を簡素化することができ、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【0058】
この場合、複数のスイッチ部14は、複数の鍵2の音階順に徐々に設置位置が異なっていることにより、複数の鍵2の各鍵タッチ感を高音域から低音域に亘って徐々に変えることができると共に、複数のスイッチ部14を鍵2の前後方向に傾斜させて設置するだけで良いので、スイッチ部14の設置作業が容易にできる。すなわち、最も音高の高いスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3に最も近づけた位置に設置し、最も音高の低いスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3から最も離した位置に設置するだけ、複数の鍵2に対する全てスイッチ部14を簡単に設置することができる。
【0059】
このようにスイッチ部14を高音域から低音域に亘って鍵2の前後方向に傾斜させて設置することにより、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定であるとした場合に、高音域から低音域に向かうに従って各鍵2をそれぞれ押圧する各押鍵力を徐々に重くすることができ、これにより各鍵2の音階順に鍵タッチ感を徐々に変えることができるので、実施形態1よりも、鍵タッチ感を微妙に変えることができる。
【0060】
なお、上述した実施形態1、2では、スイッチ部材11のスイッチ基板12上に設けられた固定接点12aが、複数の鍵2の各音高に応じた位置に設けられている場合について述べたが、これに限らず、固定接点12aを鍵2の押圧部13における前後方向の長さとほぼ同じ長さで、鍵2の前後方向に沿って長く形成しても良い。
【0061】
このように構成すれば、複数の鍵2の各音高に応じてスイッチ部14の設置位置を変えても、スイッチ部14の可動接点17aを固定接点12aに対応させることができるので、複数の鍵2の各音高に応じて各固定接点12aの設置位置を変える必要ないので、スイッチ基板12を容易に製作することができる。
【0062】
また、上述した実施形態1、2では、鍵2を反発力によって押し上げると共に押鍵操作によって弾性変形してスイッチ信号を出力するスイッチ部14が、ドーム形状の膨出部17を有するゴムシート16で構成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば、板ばねやコイルばねなどのばね部材を備えたスイッチ部を用いた構成であっても良い。この場合にも、スイッチ部の設置位置を複数の鍵2の各音高に応じて変えれば良い。
【0063】
さらに、上述した実施形態1、2では、鍵盤シャーシ1上に配列された鍵2が、屈曲部3および共通連結部4を備え、押鍵操作に応じて屈曲部3が上下方向に弾性変形することにより、この屈曲部3を回転支点として上下方向に回転するように構成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば鍵盤シャーシ1の鍵支持部5に支持軸を設け、この支持軸に鍵2の後端部を回転可能に取り付けることにより、鍵2が支持軸を回転支点として上下方向に回転するように構成されているものであっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 鍵盤シャーシ
2 鍵
3 屈曲部
4 共通連結部
5 鍵支持部
11 スイッチ部材
12 スイッチ基板
12a 固定接点
12b 取付孔
13 押圧部
14 スイッチ部
15 基板支持部
16 ゴムシート
16a 突起
17 ドーム形状の膨出部
17a 可動接点
L 回転支点から鍵の押鍵位置までの長さ
L1〜L3 回転支点からスイッチ部までの長さ
F スイッチ部に対する押圧部による押圧力
F1〜F3 鍵を押圧する押鍵力
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの電子鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵を上下方向に回転可能に配置すると共に、この複数の鍵をそれぞれ板ばねのばね力によって弾力的に押し上げ、この板ばねのばね力に抗して鍵を押鍵操作するように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−271366号公報
【0004】
このような電子鍵盤楽器では、複数の鍵に対応する各板ばねの一端部をそれぞれ鍵に設けられた各鍵係止部に係止させ、他端部を鍵盤シャーシにそれぞれ設けられた各シャーシ係止部に係止させ、この状態で各板ばねをそれぞれ上方に向けて凸形状となるように湾曲させることにより、各鍵をそれぞれ弾力的に押し上げている。
【0005】
この種の電子鍵盤楽器は、各鍵に対応する板ばねの設置状態を各鍵の音高に応じて変えることにより、複数の鍵の音高に応じて鍵タッチ感が変わるように構成されている。すなわち、この電子鍵盤楽器は、各鍵に対応する板ばねの一端部が係止される各鍵の鍵係止部の上下位置を音高に応じてそれぞれ異ならせ、板ばねの他端部が係止される鍵盤シャーシのシャーシ係止部を一定の位置に設けることにより、各板ばねの湾曲状態をそれぞれ音高に応じて変え、これにより各板ばねのばね力が音高に応じてそれぞれ異なるように構成されている。
【0006】
例えば、高音域の鍵では鍵係止部の設置位置を高く形成し、低音域の鍵では鍵係止部の設置位置を低く形成し、高音域の板ばねのばね力を低音域の板ばねのばね力よりも小さくすることにより、高音域の鍵タッチ感が低音域の鍵タッチ感よりも軽くなるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の電子鍵盤楽器では、鍵の音高に応じて鍵タッチ感を変えるために、各板ばねの一端部を係止する各鍵の鍵係止部の上下位置を音高に応じて変えて、各板ばねの湾曲状態をそれぞれ音高に応じて変える必要がある。このため、複数の鍵の各鍵係止部を各鍵ごとに異なる位置に形成しなければならず、複数の鍵の形状が音高に応じてそれぞれ異なることなる。このため、各鍵の製作が面倒で煩雑になるばかりか、製作コストが高くなるという問題がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、複数の鍵や鍵盤シャーシおよびスイッチ部などの形状や機能を音高に応じて変える必要がなく、簡単に音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に並列に配列された状態でそれぞれ回転支点を中心に上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵と、この複数の鍵をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部とを備えた鍵盤装置において、前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音高に応じて前記回転支点からの設置位置が異なっていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記複数のスイッチ部の前記設置位置が、前記複数の鍵の音域ごとに段階的に異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記複数のスイッチ部の前記設置位置が、前記複数の鍵の音階順に徐々に異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、複数のスイッチ部の各反発力が一定であっても、各スイッチ部の設置位置に応じて鍵タッチ感を異ならせることができるので、簡単に各鍵の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵や鍵盤シャーシおよびスイッチ部などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵や鍵盤シャーシおよびスイッチ部などの製造を簡素化することができ、これにより低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1において、鍵の一部を取り除いた状態で、高音域、中音域、低音域の各音域を部分的に示した平面図である。
【図2】図1に示された電子鍵盤楽器における高音域を示した拡大平面図である。
【図3】図2に示された電子鍵盤楽器の高音域のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図3に示された電子鍵盤楽器におけるスイッチ部を示した要部の拡大断面図である。
【図5】図1に示された電子鍵盤楽器における中音域を示した拡大平面図である。
【図6】図5に示された電子鍵盤楽器の中音域のB−B矢視における拡大断面図である。
【図7】図1に示された電子鍵盤楽器の低音域を示した拡大平面図である。
【図8】図7に示された電子鍵盤楽器の低音域のC−C矢視における拡大断面図である。
【図9】図1に示された電子鍵盤楽器において、高音域、中音域、低音域の各音域ごとの押鍵操作時における鍵荷重と鍵ストロークとの特性を示した図である。
【図10】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2において、要部を示した拡大平面図である。
【図11】図10に示された電子鍵盤楽器において、鍵の一部を取り除いた状態を示した要部の拡大平面図である。
【図12】図11に示された電子鍵盤楽器の中音域のD−D矢視における拡大断面図である。
【図13】図10に示された電子鍵盤楽器において、全ての鍵に対応するスイッチ部の設置位置を示した要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、図1〜図9を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1〜図3に示すように、楽器ケースの下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ1を備えている。この鍵盤シャーシ1の上部には、図2および図3に示すように、複数の鍵2が音階順に並列に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられている。この複数の鍵2は、図1に示すように、それぞれ白鍵と黒鍵とからなり、高音域、中音域、低音域の3つの音域に分かれている。
【0015】
この場合、鍵2の後端部(図3では左端部)には、図3に示すように、回転支点である肉厚の薄い屈曲部3がそれぞれ設けられている。この屈曲部3は、図2および図3に示すように、鍵2の配列方向に沿って連続する共通連結部4に連結されている。この共通連結部4は、図3に示すように、鍵盤シャーシ1の後端上部(図3では左端上部)に設けられた鍵支持部5上にビス5aによって取り付けられている。
【0016】
すなわち、共通連結部4は、図2および図3に示すように、白鍵用の共通連結部4と黒鍵用の共通連結部4とを有し、これらが上下に重ね合わされた状態で、鍵支持部5上にビス5aによって取り付けられている。これにより、鍵2は、図3に示すように、押鍵操作されると、回転支点である屈曲部3が上下方向に弾性変形することにより、この屈曲部3を中心に上下方向に回転するように構成されている。
【0017】
また、この鍵2の前側内部(図3では右側内部)には、図3に示すように、鍵盤シャーシ1の鍵ガイド部6が挿入されている。これにより、鍵2は、押鍵操作された際に、鍵ガイド部6が鍵2内を相対的に上下方向に摺動することにより、横振れしないように構成されている。さらに、この鍵2は、図3に示すように、そのほぼ中間部に鍵2の上下位置を規制するための位置規制部7が下側に突出して設けられている。この位置規制部7は、その下部後端に突起部7aが設けられ、この突起部7aが鍵盤シャーシ1の立上り部8に設けられた開口部8a内に挿入した状態で、上下方向に移動するように構成されている。
【0018】
これにより、位置規制部7は、図3に示すように、鍵2が押し下げられた際に、位置規制部7の下端が鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの下部に設けられた下限ストッパ9に当接することにより、鍵2の下限位置を規制するように構成されている。また、この位置規制部7は、図3に示すように、押鍵された鍵2が初期位置に復帰する際に、位置規制部7の突起部7aが鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの上部に設けられた上限ストッパ10に当接することにより、鍵2の上限位置を規制するように構成されている。
【0019】
一方、鍵盤シャーシ1の前後方向(図3では左右方向)におけるほぼ中間に位置する上部には、図1〜図3に示すように、スイッチ部材11が複数の鍵2の下側に位置した状態で設けられている。このスイッチ部材11は、図2〜図4に示すように、鍵盤シャーシ1上に取り付けられたスイッチ基板12と、このスイッチ基板12上に取り付けられて鍵2の押圧部13によって押圧されるスイッチ部14とを備えている。
【0020】
スイッチ基板12は、図1に示すように、鍵2の配列方向に沿って連続する帯板状に形成されている。このスイッチ基板12は、図2および図3に示すように、鍵盤シャーシ1における後端部の鍵支持部5と中間部の立上り部8との間にそれぞれ起立して設けられた基板支持部15によって、鍵盤シャーシ1上に取り付けられている。また、このスイッチ基板12の上面には、図4に示すように、後述する固定接点12aが音域ごとに異なった位置に設けられていると共に、このスイッチ基板12には、スイッチ部14を取り付けるための後述する取付孔12bが音域ごとに異なった位置に設けられている。
【0021】
スイッチ部14は、図4に示すように、スイッチ基板12上に配置されるゴムシート16を備えている。このゴムシート16は、図2に示すように、スイッチ基板12の前後方向の長さよりも十分に短い幅、つまり図3に示すように、後述する鍵2の押圧部13の下面における前後方向(図3では左右方向)の長さの一部に対応する幅で、鍵2の配列方向に沿って連続する細長い帯状に形成されている。
【0022】
このゴムシート16には、図2〜図4に示すように、ドーム形状の膨出部17が複数の鍵2の各押圧部13にそれぞれ対応した状態で等間隔に形成されている。このドーム形状の膨出部17は、図3に示すように、その反発力によって鍵2の押圧部13を押し上げると共に、反発力に抗して鍵2の押圧部13で押圧されると、弾性変形するように構成されている。
【0023】
すなわち、このドーム形状の膨出部17は、図3、図6、図8において各鍵2の押圧部13でそれぞれ押圧されると、弾性変形を開始し、図9に示すように、鍵荷重がそれぞれ上昇する曲線を描くように徐々に重くなり、更に各鍵2の押圧部13でそれぞれ押圧されると、急激に弾性変形し、図9に示すように、鍵荷重がそれぞれ降下する曲線を描くように抜ける感覚で軽くなり、この後、更に各鍵2の押圧部13でそれぞれ押圧されると、ほとんど弾性変形しないため、図9に示すように、鍵荷重がそれぞれ再び上昇する曲線を描いて重くなるように構成されている。
【0024】
この場合、ドーム形状の膨出部17内には、図4に示すように、スイッチ基板12の上面に設けられた一対の固定接点12aに接離可能に接触する一対の可動接点17aが設けられている。これにより、スイッチ部14は、図3および図4に示すように、鍵2の押圧部13によってドーム形状の膨出部17が押圧されて弾性変形すると、一対の可動接点17aがスイッチ基板12の一対の固定接点12aに順次接触して、スイッチ信号を出力するように構成されている。
【0025】
ところで、鍵2の押圧部13は、図3に示すように、鍵2の前後方向(図3では左右方向)における長さが、スイッチ部14の膨出部17のほぼ3倍程度の長さで、十分に長く形成されている。この場合、鍵2の押圧部13は、押鍵時における鍵ストロークが鍵2の前側(図3で右側)が後側(図3では左側)よりも長いため、押圧部13の下面が鍵2の前側から後側に向けて緩やかな後部下がりに傾斜した状態で形成されている。これにより、鍵2の押圧部13は、鍵2が押鍵操作されてスイッチ部14を押圧した際に、その下面がスイッチ基板12の上面に対してほぼ平行になるように構成されている。
【0026】
一方、鍵2の押圧部13によって押圧されるスイッチ部14は、図1に示すように、複数の鍵2の音域ごとにスイッチ基板12に対する設置位置が異なっている。すなわち、高音域の鍵2に対応するスイッチ部14は、図2および図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に取り付けられている。
【0027】
また、中音域の鍵2に対応するスイッチ部14は、図5および図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に取り付けられている。さらに、低音域の鍵2に対応するスイッチ部14は、図7および図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に取り付けられている。
【0028】
この場合、スイッチ基板12上に設けられた固定接点12aは、複数の鍵2の音域ごとにスイッチ基板12に対する設置位置がそれぞれ異なっている。すなわち、高音域の鍵2に対応する固定接点12aは、図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に対応するスイッチ基板12の後部側(図3では左側)に位置して設けられている。
【0029】
同様に、中音域の鍵2に対応する固定接点12aは、図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に対応するスイッチ基板12のほぼ中間部に位置して設けられている。さらに、低音域の鍵2に対応する固定接点12aは、図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に対応するスイッチ基板12の前部側(図8では右側)に位置して設けられている。
【0030】
これに伴って、スイッチ基板12にスイッチ部14を取り付けるためにスイッチ部14の突起16aが挿入する取付孔12bも、複数の鍵2の音域ごとにスイッチ基板12に対する設置位置がそれぞれ異なっている。すなわち、高音域のスイッチ部14に対する取付孔12bは、図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に位置する下面に対応した状態で、高音域のスイッチ部14における固定接点12aの近傍に位置して設けられている。
【0031】
同様に、中音域のスイッチ部14をスイッチ基板12に取り付けるための取付孔12bは、図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に位置する下面に対応した状態で、中音域のスイッチ部14における固定接点12aの近傍に位置して設けられている。さらに、低音域のスイッチ部14をスイッチ基板12に取り付けるための取付孔12bは、図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に位置する下面に対応した状態で、低音域のスイッチ部14における固定接点12aの近傍に位置して設けられている。
【0032】
これにより、高音域のスイッチ部14は、図2および図3に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図3では左側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の後部側(図3では左側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さ(L1)が最も短く設定されている。
【0033】
また、中音域のスイッチ部14は、図5および図6に示すように、鍵2の押圧部13における中間部に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の中間部に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さ(L2)が高音域よりも長く(L2>L1)設定されている。
【0034】
さらに、低音域のスイッチ部14は、図7および図8に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図8では右側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の前部側(図8では右側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さ(L3)が中音域よりも更に長く(L3>L2)設定されている。
【0035】
すなわち、高音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL1は、中音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL2よりも短く(L1<L2)設定されている。また、中音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL2は、低音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL3よりも短く(L2<L3)設定されている。さらに、低音域のスイッチ部14における鍵2の屈曲部3からの長さL3は、高音域および中音域の各長さL1、L2よりも長く(L3>L2>L1)設定されている。
【0036】
このため、複数の鍵2における各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する際には、スイッチ部14の膨出部17の反発力が一定で、且つ鍵2の回転支点である屈曲部3から鍵2の前部における押鍵位置までの長さLがほぼ一定であることにより、図9に示すように、高音域における鍵2の押鍵力が中音域における鍵2の押鍵力よりも軽く、中音域における鍵2の押鍵力が低音域における鍵2の押鍵力よも軽く、低音域における鍵2の押鍵力が最も重くなる。
【0037】
すなわち、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定(F)であるとした場合に、高音域の鍵2を押圧するために必要な押鍵力F1は、(L1/L)Fであり、中音域の鍵2を押圧するために必要な押鍵力F2は、(L2/L)Fであり、低音域の鍵2を押圧するために必要な押鍵力F3は、(L3/L)Fである。
【0038】
これにより、高音域、中音域、低音域の各音域における鍵2をそれぞれ押圧する各押鍵力F1、F2、F3は、(L1/L)F<(L2/L)F<(L3/L)Fであり、図9に示すように、高音域の押鍵力F1が最も軽く、中音域の押鍵力F2が高音域の押鍵力F1よりも重く、低音域の押鍵力F3が最も重くなる(F1<F2<3)。
【0039】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に並列に配列された状態でそれぞれ回転支点である屈曲部3を中心に上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵2と、この複数の鍵2をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部14とを備え、この複数のスイッチ部14は、鍵2の回転支点である屈曲部3からの設置位置が、複数の鍵2の音高に応じて異なっていることにより、音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。
【0040】
すなわち、複数のスイッチ部14は、その設置位置が複数の鍵2の音高に応じて異なっている構成であることにより、複数のスイッチ部14の各反発力が一定であっても、各スイッチ部14の設置位置に応じて複数の鍵2の各鍵タッチ感を異ならせることができ、これにより各鍵2の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの製造を簡素化することができ、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【0041】
この場合、複数のスイッチ部14は、複数の鍵2の音域ごとに段階的に設置位置が異なっていることにより、複数のスイッチ部14を高音域、中音域、低音域ごとに段階的に変えて設置すれば良いので、スイッチ部14の設置作業が容易にできる。すなわち、高音域ではスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3に近づけた位置に設置し、中音域ではスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3から高音域よりも離した位置に設置し、低音域ではスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3から中音域よりも更に離した位置に設置するだけで良い。
【0042】
このようにスイッチ部14を音域ごとに段階的に異なる位置に設置することにより、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定(F)であるとした場合に、高音域の鍵2を押圧する押鍵力F1は、中音域の鍵2を押圧する押鍵力F2よりも小さく、中音域の鍵2を押圧する押鍵力F2は、低音域の鍵2を押圧する押鍵力F3よりも小さく、低音域の鍵2を押圧する押鍵力F3は、高音域の押鍵力F1および中音域の押鍵力F2よりも大きくすることができる。これにより、複数の鍵2の音域ごとに各鍵2の鍵タッチ感を良好に変えることができる。
【0043】
また、この電子鍵盤楽器では、押鍵時における鍵ストロークが鍵2の前側から後側に向かうに従って徐々に短くなるため、複数の鍵2にそれぞれ設けられた各押圧部13の下面が、鍵2の前側から後側に向けて緩やかな後部下がりに傾斜した状態で形成されていることにより、鍵2が押鍵操作されて鍵2の押圧部13によってスイッチ部14を押圧した際に、押圧部13の下面をスイッチ基板12の上面に対してほぼ平行にすることができ、これにより複数の鍵2の鍵ストロークを変えずに、押圧部13によって各スイッチ部14をほぼ一定の状態で押圧することができ、これによっても複数の鍵2の音域ごとに各鍵タッチ感を良好に変えることができる。
【0044】
(実施形態2)
次に、図10〜図13を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図9に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、図11および図13に示すように、スイッチ部材11のスイッチ部14を高音域から低音域に向けて連続させた状態で、徐々に前後方向に傾斜させて配置した構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0045】
すなわち、スイッチ部材11は、実施形態1と同様、鍵盤シャーシ1上に取り付けられたスイッチ基板12と、このスイッチ基板12上に取り付けられて鍵2の押圧部13によって押圧されるスイッチ部14とを備えている。この場合にも、スイッチ基板12は、図11および図13に示すように、鍵2の配列方向に沿って連続する帯板状に形成されている。このスイッチ基板12も、図12に示すように、鍵盤シャーシ1における後端部の鍵支持部5と中間部の立上り部8との間にそれぞれ起立して設けられた基板支持部15によって、鍵盤シャーシ1上に取り付けられている。
【0046】
また、スイッチ部14も、実施形態1と同様、スイッチ基板12上に配置されたゴムシート16を備えている。この場合にも、ゴムシート16は、実施形態1と同様、スイッチ基板12の前後方向(図12では左右方向)における長さよりも十分に短い幅、つまり図3に示すように、後述する鍵2の押圧部13の下面における前後方向の長さの一部に対応する幅で、鍵2の配列方向に沿って連続する細長い帯状に形成されている。
【0047】
このゴムシート16には、実施形態1と同様、ドーム形状の膨出部17が複数の鍵2の各押圧部13にそれぞれ対応した状態で等間隔に形成されている。このドーム形状の膨出部17も、実施形態1と同様、その反発力によって鍵2の押圧部13を押し上げると共に、反発力に抗して鍵2の押圧部13で押圧されると、弾性変形し、内部の可動接点17aがスイッチ基板12の固定接点12aに接触することにより、スイッチ信号を出力するように構成されている。
【0048】
ところで、このスイッチ部14は、図10〜図13に示すように、複数の鍵2の音階順にスイッチ基板12に対する設置位置が徐々に異なるように構成されている。すなわち、このスイッチ部14は、図12および図13に示すように、最も音高の高い鍵2に対応する膨出部17が鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に位置する下面に対応し、最も音高の低い鍵2に対応する膨出部17が鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に位置する下面に対応した状態で、スイッチ基板12上に前後方向(図12では左右方向)に傾斜して取り付けられている。
【0049】
この場合、スイッチ基板12上に設けられた固定接点12aは、複数の鍵2の音階順にスイッチ基板12に対する設置位置が徐々に異なっている。すなわち、最も音高の高い鍵2に対応する固定接点12aは、図12および図13に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に対応するスイッチ基板12の後部側(図12では左側)に位置して設けられている。
【0050】
また、最も音高の低い鍵2に対応する固定接点12aは、図12および図13に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に対応するスイッチ基板12の前部側(図12では右側)に位置して設けられている。このため、最も音高の高いスイッチ部14に対する固定接点12aと、最も音高の低いスイッチ部14に対する固定接点12aとの間に位置する各固定接点12aは、図13に示すように、スイッチ基板12の後部側(図13では上辺側)からスイッチ基板12の前部側(図13では下辺側)に向けて徐々に位置がずれて設けられている。
【0051】
これに伴って、スイッチ基板12にスイッチ部14を取り付けるために、スイッチ部14の突起16aが挿入する取付孔12bも、複数の鍵2の音階順にスイッチ基板12に対する設置位置が徐々に異なっている。すなわち、最も音高の高いスイッチ部14に対応する取付孔12bは、図11〜図13に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に位置する下面に対応した状態で、最も音高の高いスイッチ部14の固定接点12aの近傍に位置して設けられている。
【0052】
また、最も音高の低いスイッチ部14に対する取付孔12bは、図11〜図13に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に位置する下面に対応した状態で、最も音高の低いスイッチ部14の固定接点12aの近傍に位置して設けられている。このため、最も音高の高いスイッチ部14に対する取付孔12bと、最も音高の低いスイッチ部14に対する取付孔12bとの間に位置する各取付孔12bは、図13に示すように、スイッチ基板12の後部側(図13では上辺側)からスイッチ基板12の前部側(図13では下辺側)に向けて徐々に位置がずれて設けられている。
【0053】
これにより、最も音高の高いスイッチ部14は、図12に示すように、鍵2の押圧部13における後部(図12では左側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の後部側(図12では左側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さが最も短く設定されている。
【0054】
また、最も音高の低いスイッチ部14は、図12に示すように、鍵2の押圧部13における前部(図12では右側)に位置する下面に対応していると共に、スイッチ基板12の前部側(図12では右側)に位置する固定接点12aにも対応していることにより、鍵2の回転支点である屈曲部3からの長さが最も長く設定されている。
【0055】
このため、複数の鍵2における各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する際には、スイッチ部14の膨出部17の反発力が一定で、且つ鍵2の回転支点である屈曲部3から鍵2の前部における押鍵位置までの長さがほぼ一定であることにより、複数の鍵2をそれぞれ押圧する各押鍵力は、最も音高の高い鍵2から最も音高の低い鍵2に向かうに従って、音階順に徐々に重くなるように変化する。
【0056】
すなわち、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定であるとした場合において、複数の鍵2をそれぞれ押圧するために必要な各押鍵力は、最も音高の高い鍵2から最も音高の低い鍵2に向かうに従って徐々に大きくなることにより、高音域側から低音域側に向けて音階順に徐々に重くなる。
【0057】
このように、この電子鍵盤楽器においても、実施形態1と同様、複数のスイッチ部14は、その設置位置が複数の鍵2の音高に応じて異なっている構成であることにより、複数のスイッチ部14の各反発力が一定であっても、各スイッチ部14の設置位置に応じて鍵タッチ感を異ならせることができ、これにより各鍵2の音高に応じて鍵タッチ感を変えることができる。このため、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの形状や機能を音高に応じて変える必要がないので、複数の鍵2や鍵盤シャーシ1およびスイッチ部14などの製造を簡素化することができ、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【0058】
この場合、複数のスイッチ部14は、複数の鍵2の音階順に徐々に設置位置が異なっていることにより、複数の鍵2の各鍵タッチ感を高音域から低音域に亘って徐々に変えることができると共に、複数のスイッチ部14を鍵2の前後方向に傾斜させて設置するだけで良いので、スイッチ部14の設置作業が容易にできる。すなわち、最も音高の高いスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3に最も近づけた位置に設置し、最も音高の低いスイッチ部14を鍵2の回転支点である屈曲部3から最も離した位置に設置するだけ、複数の鍵2に対する全てスイッチ部14を簡単に設置することができる。
【0059】
このようにスイッチ部14を高音域から低音域に亘って鍵2の前後方向に傾斜させて設置することにより、複数の鍵2の各押圧部13が各スイッチ部14をそれぞれ押圧する各押圧力がほぼ一定であるとした場合に、高音域から低音域に向かうに従って各鍵2をそれぞれ押圧する各押鍵力を徐々に重くすることができ、これにより各鍵2の音階順に鍵タッチ感を徐々に変えることができるので、実施形態1よりも、鍵タッチ感を微妙に変えることができる。
【0060】
なお、上述した実施形態1、2では、スイッチ部材11のスイッチ基板12上に設けられた固定接点12aが、複数の鍵2の各音高に応じた位置に設けられている場合について述べたが、これに限らず、固定接点12aを鍵2の押圧部13における前後方向の長さとほぼ同じ長さで、鍵2の前後方向に沿って長く形成しても良い。
【0061】
このように構成すれば、複数の鍵2の各音高に応じてスイッチ部14の設置位置を変えても、スイッチ部14の可動接点17aを固定接点12aに対応させることができるので、複数の鍵2の各音高に応じて各固定接点12aの設置位置を変える必要ないので、スイッチ基板12を容易に製作することができる。
【0062】
また、上述した実施形態1、2では、鍵2を反発力によって押し上げると共に押鍵操作によって弾性変形してスイッチ信号を出力するスイッチ部14が、ドーム形状の膨出部17を有するゴムシート16で構成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば、板ばねやコイルばねなどのばね部材を備えたスイッチ部を用いた構成であっても良い。この場合にも、スイッチ部の設置位置を複数の鍵2の各音高に応じて変えれば良い。
【0063】
さらに、上述した実施形態1、2では、鍵盤シャーシ1上に配列された鍵2が、屈曲部3および共通連結部4を備え、押鍵操作に応じて屈曲部3が上下方向に弾性変形することにより、この屈曲部3を回転支点として上下方向に回転するように構成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば鍵盤シャーシ1の鍵支持部5に支持軸を設け、この支持軸に鍵2の後端部を回転可能に取り付けることにより、鍵2が支持軸を回転支点として上下方向に回転するように構成されているものであっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 鍵盤シャーシ
2 鍵
3 屈曲部
4 共通連結部
5 鍵支持部
11 スイッチ部材
12 スイッチ基板
12a 固定接点
12b 取付孔
13 押圧部
14 スイッチ部
15 基板支持部
16 ゴムシート
16a 突起
17 ドーム形状の膨出部
17a 可動接点
L 回転支点から鍵の押鍵位置までの長さ
L1〜L3 回転支点からスイッチ部までの長さ
F スイッチ部に対する押圧部による押圧力
F1〜F3 鍵を押圧する押鍵力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に並列に配列された状態でそれぞれ回転支点を中心に上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵と、この複数の鍵をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部とを備えた鍵盤装置において、
前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音高に応じて前記回転支点からの設置位置が異なっていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音域ごとに段階的に前記設置位置が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音階順に前記設置位置が徐々に異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項1】
鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に並列に配列された状態でそれぞれ回転支点を中心に上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵と、この複数の鍵をそれぞれ反発力によって押し上げると共に押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力する複数のスイッチ部とを備えた鍵盤装置において、
前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音高に応じて前記回転支点からの設置位置が異なっていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音域ごとに段階的に前記設置位置が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチ部は、前記複数の鍵の音階順に前記設置位置が徐々に異なっていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−203543(P2011−203543A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71414(P2010−71414)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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