説明

鍵盤装置

【課題】 発光素子の発光時間を短くして消費電力を抑制することができると共に、外部光の影響を受けずに、鍵を長い時間に亘って良好に光らせることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 鍵盤シャーシ上に発光素子30を複数の鍵2にそれぞれ対応させて設け、この複数の鍵2に、発光素子30からの光を受光して光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって発光する蓄光層33を設けると共に、この蓄光層33に対する発光素子30と反対側に位置する鍵2の箇所に、発光素子30および蓄光層33で発光した光を透過し、且つ鍵2にその外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する再帰反射層34を設けた。従って、発光素子30の発光時間を短くして消費電力を抑制することができると共に、外部光の影響を受けずに、鍵2を長い時間に亘って良好に光らせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの電子鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関し、更に詳しく演奏に応じて各鍵が光る鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤装置においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵を並列に配列させた状態で上下方向に回転可能に設けると共に、この鍵盤シャーシ上に各鍵の内部に光を照射させるための複数の発光素子を各鍵にそれぞれ対応させて設け、この複数の発光素子を順次発光させることにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵を光らせて指示するナビゲーション機能を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−34268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の鍵盤装置は、複数の発光素子を順次発光させることにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵を光らせる際に、その押鍵すべき鍵が押鍵される前から発光素子を発光させると共に、鍵が押鍵されて再び初期位置に戻るまでの間に亘って発光素子を発光させる必要があるため、発光素子の発光時間が長く、消費電力が多くなるという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、発光素子の発光時間を短くして消費電力を抑制することができると共に、外部光の影響を受けずに、鍵を長い時間に亘って良好に光らせることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に並列に配列された状態で上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵と、前記鍵盤シャーシ上に前記複数の鍵にそれぞれ対応して設けられ、この複数の鍵にその下側から光をそれぞれ照射する発光素子と、前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記発光素子からの光を受光して光エネルギとして蓄え、この蓄えた前記光エネルギによって発光する蓄光層と、この蓄光層に対する前記発光素子と反対側に位置する箇所の前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記発光素子および前記蓄光層で発光した光を透過し、且つ前記複数の鍵にその外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する再帰反射層と、を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記再帰反射層が、光透過性を有すると共に、前記鍵にその外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する多数の再帰プリズムを平面上に配列させた構成であることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記再帰反射層が、光透過性を有するシートの一面に前記多数の再帰プリズムを配列させた状態で一体に形成したことを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記複数の鍵が光透過性を有する合成樹脂からなり、前記再帰反射層は、前記複数の鍵それぞれに前記多数の再帰プリズムを配列させた状態で一体に形成したことを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記鍵が、光透過性を有する合成樹脂からなる外側鍵と、この外側鍵の内面に設けられた内側鍵とを有し、前記再帰反射層は、前記外側鍵と前記内側鍵との間に介在され、前記蓄光層は、前記内側鍵に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記蓄光層が、前記内側鍵に蓄光剤を混入させた構成であることを特徴とする請求項5に記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、押鍵すべき鍵に対応する発光素子を発光させると、その光が蓄光層に照射され、この照射された光を蓄光層で光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって蓄光層が発光し、この蓄光層で発光した光が再帰反射層を透過して押鍵すべき鍵を光らせることができる。このため、押鍵すべき鍵に対応する発光素子を発光させる際に、その発光時間を短くしても、蓄光層によって十分に長い時間に亘って鍵を光らせることができるので、発光素子による消費電力を抑制することができる。
【0013】
また、押鍵すべき鍵に対応する発光素子を発光させる際に、鍵の外部から光が押鍵すべき鍵に照射されても、その外部光を蓄光層が受光しないように再帰反射層によって反射することができる。このため、蓄光層が外部光の影響を受けずに、押鍵すべき鍵に対応する発光素子と蓄光層とで発光した光のみによって鍵を良好に光らせて、押鍵すべき鍵を確実に指示することができる。これにより、発光素子の発光時間を短くして消費電力を抑制することができると共に、外部光の影響を受けずに、鍵を長い時間に亘って良好に光らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1における断面図である。
【図2】図1に示された電子鍵盤楽器における鍵を上下反転させた状態で、鍵の一部を破断して示した要部の拡大斜視図である。
【図3】図1に示された鍵のA−A矢視における要部の拡大断面図である。
【図4】図3に示された鍵を分解して示した要部の拡大断面図である。
【図5】図2に示された鍵の再帰反射シートの要部を示した拡大平面図である。
【図6】図5に示された再帰反射シートにおける再帰プリズムを示し、(a)はその再帰プリズムの拡大平面図、(b)はその再帰プリズムの拡大斜視図である。
【図7】図1に示された電子鍵盤楽器において発光素子と蓄光層とによって鍵が光る際における光の強さと発光時間との特性を示した図である。
【図8】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2において、鍵を上下反転させた状態で、鍵の一部を破断して示した要部の拡大斜視図である。
【図9】図8に示された鍵を上下反転させて示した要部の拡大断面図である。
【図10】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態3において、鍵を上下反転させた状態で、鍵の一部を破断して示した要部の拡大斜視図である。
【図11】図10に示された鍵を上下反転させて示した要部の拡大断面図である。
【図12】実施形態3における鍵の第1変形例を示した要部の拡大断面図である。
【図13】実施形態1〜3に記載された蓄光層を円形状に形成した第2変形例における鍵の要部を示した拡大斜視図である。
【図14】実施形態1〜3に記載された蓄光層を「HIT:ヒット」などのマーク部として形成した第3変形例における鍵の要部を示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、図1〜図7を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1に示すように、合成樹脂製の鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に並列に配列されて上下方向にそれぞれ回転可能に取り付けられた複数の鍵2(図1では1つのみを示す)と、この複数の鍵2にその押鍵動作に応じてそれぞれアクション荷重を付与する複数のハンマー部材3と、複数の鍵2の押鍵動作に応じてそれぞれオン信号を出力するスイッチ部4と、鍵盤シャーシ1の後端部に設けられて鍵2の後端部の上側を覆う上部ケース5とを備えている。
【0016】
鍵盤シャーシ1は、図1に示すように、楽器本体の下部ケースを構成するものであり、その前端部(図1では右端部)には、前脚部6が底部から上方に突出して形成されている。この前脚部6の前端部(図1では右端部)には、鍵2の前端面に対応する前カバー部7が前部上方(図1では右側上方)に向けて更に突出して形成されている。また、この前脚部6の上部には、鍵2の横振れを防ぐための鍵ガイド部6aが上方に突出して設けられている。
【0017】
さらに、この鍵盤シャーシ1の前脚部6の後部側(図1では左側)には、図1に示すように、後述する素子基板8を搭載する第1基板搭載部9が前脚部6よりも少し高く形成されている。この第1基板搭載部9の後部側(図1では左側)に位置する鍵盤シャーシ1の箇所には、後述する複数のハンマー部材3を支持するハンマー支持部10が形成されている。
【0018】
また、このハンマー支持部10の後部側(図1では左側)に位置する鍵盤シャーシ1の箇所には、図1に示すように、立上り部11が第1基板搭載部9とほぼ同じ高さで形成されている。この立上り部11には、複数のハンマー部材3の後部(図1では左側部)が鍵盤シャーシ1の前側から後側に向けて挿入する開口部11aが設けられている。
【0019】
この立上り部11の上部における後部側(図1では右側)に位置する鍵盤シャーシ1の箇所には、図1に示すように、スイッチ部4を搭載する第2基板搭載部12が形成されている。この第2基板搭載部12の上面には、スイッチ部4が取り付けられている。また、鍵盤シャーシ1の後部、つまり第2基板搭載部12の後部側(図2では左側部)には、複数の鍵2を支持する鍵搭載部13が前カバー部7とほぼ同じ高さで形成されている。
【0020】
さらに、鍵盤シャーシ1の鍵搭載部13の後端部(図1では左端部)には、図1に示すように、鍵盤シャーシ1の後端部を支持する後脚部14が、鍵盤シャーシ1の上部から底部に向けて垂下されている。なお、この後脚部14の後端部には、上部ケース5が鍵盤シャーシ1の後端部側と鍵2の後端部側とを覆った状態で取り付けられている。この上部ケース5の内部には、楽音を放音するためのスピーカ15が設けられている。また、この鍵盤シャーシ1の底部には、底板16が設けられている。
【0021】
一方、鍵2は、白鍵と黒鍵とを有している。ただし、この実施形態1では白鍵のみついて説明する。この鍵2は、図1に示すように、その後部が鍵盤シャーシ1の鍵搭載部13に設けられた鍵支持部17の支持軸18に上下方向に回転可能に取り付けられた構成になっている。この鍵2における前後方向のほぼ中間部には、鍵盤シャーシ1の第2基板搭載部12上に取り付けられたスイッチ部4を押圧するためのスイッチ押圧部20が下側に突出して形成されている。
【0022】
この場合、スイッチ部4は、図1に示すように、スイッチ基板21と、このスイッチ基板21上に配置されたゴムシート22を備えている。このゴムシート22には、ドーム状の膨出部が鍵2の各スイッチ押圧部20にそれぞれ対応して形成されている。このスイッチ部4は、ゴムシート22の膨出部が各鍵2の各スイッチ押圧部20によって押圧された際に、膨出部が弾性変形して、その内部の可動接点がスイッチ基板21の固定接点(いずれも図示せず)に接触してオン信号を出力するように構成されている。
【0023】
また、この鍵2における前端部とスイッチ押圧部20との間には、図1に示すように、ハンマー部材3を上下方向に回転させるためのハンマー押圧部23が下側に突出して形成されている。ハンマー部材3は、その後部に錘部24aを有するハンマー本体24と、このハンマー本体24の上部における両側面(図1では紙面の表裏面)にそれぞれ突出して形成された軸受け部25と、ハンマー本体24の上部から斜め前側上方(図1では右上側)に突出して形成された鍵当接部26とを備えている。
【0024】
このハンマー部材3は、図1に示すように、ハンマー本体24の後部(図1では左側部)が鍵盤シャーシ1の前側上方から立上り部11の開口部11aに挿入され、この状態でハンマー本体24の上部に形成された軸受け部25が、鍵盤シャーシ1のハンマー支持部10の軸部10aに上下方向に回転自在に取り付けられることにより、ハンマー本体24の前側上部の鍵当接部26が、鍵盤シャーシ1のハンマー支持部10の前側上方(図1では右側上方)に位置するように構成されている。
【0025】
この場合、ハンマー部材3は、図1に示すように、鍵当接部26が鍵2のハンマー押圧部21に対応し、この鍵当接部26が鍵2のハンマー押圧部23に設けられた中空状の保持部23a内に挿入されて摺動可能に保持され、この状態で鍵2が押鍵された際に、鍵当接部26が鍵2のハンマー押圧部23によって押し下げられることにより、ハンマー本体24が軸部10aを中心に時計回りに回転するように構成される。
【0026】
このため、ハンマー部材3は、図1に示すように、鍵2が押鍵されていない初期状態のときに、ハンマー本体24がその自重で軸部10aを中心に反時計回りに回転し、ハンマー本体24の後部が鍵盤シャーシ1の底板16に設けられた下限ストッパ部27に当接して、ハンマー本体24が下限位置に規制されるように構成されている。これにより、ハンマー部材3は、鍵当接部25が鍵2のハンマー押圧部23を押し上げて、鍵2を上方に押し上げることにより、鍵2を上限位置に規制するように構成されている。
【0027】
また、このハンマー部材3は、鍵2が押鍵された際に、鍵2のハンマー押圧部23によって、ハンマー部材3の鍵当接部26が押し下げられると、ハンマー本体24がその自重に抗して軸部10aを中心に時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与すると共に、ハンマー本体24の後部が、鍵盤シャーシ1の鍵搭載部12の下面に設けられた上限ストッパ部28に当接して、ハンマー本体24が上限位置に規制されることにより、鍵2を下限位置に規制するように構成されている。
【0028】
ところで、鍵盤シャーシ1の第1基板搭載部9上には、図1に示すように、素子基板8が搭載されている。この素子基板8は、鍵2の配列方向に沿って連続する帯状に形成されている。また、この素子基板8は、接続ケーブル29によってスイッチ部4のスイッチ基板21と電気的に接続されている。この素子基板8の上面には、図1に示すように、複数の発光素子30が各鍵2にそれぞれ対応して配置されている。
【0029】
この発光素子30は、発光ダイオード(LED)からなり、図1に示すように、発光した光を鍵2の前側内部にその下側から照射するように構成されている。この場合、鍵2は、図1〜図4に示すように、その前側部、つまり鍵2の前端部(図1では右端部)からハンマー押圧部23までの間に位置する前側の部分が、外側鍵31と内側鍵32との2層構造になっている。
【0030】
外側鍵31は、アクリル樹脂(PMMA)やスチロール樹脂(ポリスチレン:PS)などの透明な合成樹脂からなり、下側(図2では上側)に開放された中空状に形成されている。内側鍵32は、スチロール樹脂(ポリスチレン:PS)などの乳白色の光透過性を有する合成樹脂からなり、外側鍵31と同様、下側(図2では上側)に開放された中空状に形成され、外側鍵31内に装着されるように構成されている。
【0031】
この鍵2の内側鍵32における内部には、図3および図4に示すように、蓄光層33が設けられている。この蓄光層33は、発光素子30で発光した光を受光して光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって発光するものであり、塗料またはシールかなり、発光素子30によって光が照射される箇所に位置する内側鍵32の内部下面に設けられている。この場合、蓄光層33は、光透過性を有するものであり、発光素子30で発光した光の一部を受光して光エネルギとして蓄え、残りの光を透過するように構成されている。
【0032】
また、外側鍵31と内側鍵32との間には、図1〜図4に示すように、再帰反射シート34が鍵2の内面に沿って設けられている。この再帰反射シート34は、発光素子30および蓄光層33で発光した光を透過すると共に、鍵2の外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射するものである。すなわち、この再帰反射シート34は、図2〜図5に示すように、透明なシート本体34aに鍵2の外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する多数の再帰プリズム34bを平面的に配列した構成になっている。
【0033】
この場合、再帰反射シート34は、図2および図3に示すように、透明なシート本体34aが外側鍵31の内部下面に対面し、多数の再帰プリズム34bが内側鍵32の外部上面に対面した状態で、外側鍵31の内部下面にその前後方向におけるほぼ全長に亘って設けられている。この場合、再帰プリズム34bは、図6(a)および図6(b)に示すように、1つの辺が短いほぼ二等辺三角形の三角錐形状に形成されている。
【0034】
この再帰プリズム34bは、図6(b)に示すように、外側鍵31の外部(図6(b)では下側)から光が透明なシート本体34aを透過して再帰プリズム34b内に入射すると、その入射した外部光を再帰プリズム34bの3つの斜面によってその入射方向に向けてそれぞれ反射するように構成されている。
【0035】
また、この再帰プリズム34bは、発光素子30および蓄光層33で発光した光が再帰プリズム34bの外面(図6(b)では上側に位置する外表面)に照射されると、その照射光を再帰プリズム34bの3つの斜面から屈折させて採り込み、この採り込んだ光を透過させて外側鍵31に照射させることにより、鍵2を光らせるように構成されている。
【0036】
この場合、再帰プリズム34bは、図5および図6に示すように、ほぼ二等辺三角形の三角錐形状に形成された底面(図6(b)では下面)における長さの短い辺同士を互いに接触または接近させて配置すると、2つの再帰プリズム34bが平面的にほぼ菱形形状をなし、この菱形形状をなす2つの再帰プリズム34bにおける底面の各長辺同士を互いに接触または接近させて縦横に多数配列させた構成になっている。
【0037】
これにより、再帰反射シート34は、発光素子30および蓄光層33で発光した光が再帰プリズム34bの外面に照射されると、その照射された光を再帰プリズム34bが採り込み、この採り込んだ光を外側鍵31に向けて放出させることにより、鍵2を光らせる。また、この再帰反射シート34は、鍵2の外部から光が外側鍵31および透明なシート本体34aを透過して再帰プリズム34b内に入射すると、この再帰プリズム34bの3つの斜面によって入射した外部光のほとんど(例えば90%程度)をその入射方向に向けて反射するように構成されている。
【0038】
このため、この再帰反射シート34は、鍵2の外部から光が鍵2に照射されても、その照射された外部光を、蓄光層33にほとんど到達させないように再帰反射させることにより、蓄光層33が鍵2の外部からの光によって光エネルギを蓄えて発光しないように構成されている。
【0039】
次に、このような電子鍵盤楽器の作用について説明する。
この電子鍵盤楽器で複数の鍵2を順次押鍵して演奏する場合には、その演奏に応じて押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を順次発光させて、押鍵すべき鍵2を順次光らせる。このときには、発光素子30で発光した光が鍵2の内側鍵32内に設けられた蓄光層33に照射され、この照射された光の一部が蓄光層33に光エネルギとして蓄えられると共に、残りの一部の光が蓄光層33を透過する。
【0040】
この蓄光層33を透過した光は、鍵2の内側鍵32を透過して再帰反射シート34に照射される。このときには、蓄光層33を透過した光が再帰反射シート34に形成された多数の再帰プリズム34bの各外面に照射されるので、この照射された光が各再帰プリズム34bおよび透明なシート本体34aを透過して外側鍵31の内面に照射される。この照射された光によって、鍵2が光る。
【0041】
また、このときには、発光素子30で発光した光の一部を蓄光層33が光エネルギとして蓄え、この蓄光層33が蓄えた光エネルギによって発光する。このため、蓄光層33で発光した光も、発光素子30の光と同様、多数の再帰プリズム34bの各外面に照射されるので、この照射された光が各再帰プリズム34bおよび透明なシート本体34aを透過して外側鍵31に照射される。これにより、押鍵すべき鍵2が発光素子30と蓄光層33とで発光した光によって光る。
【0042】
この場合、発光素子30は、図7に示すように、その発光時間T1が短く設定されている。例えば、発光素子30は、押鍵すべき鍵2を光らせて押鍵すべき鍵2の指示を開始した状態から押鍵すべき鍵2が押鍵されるまでの短い時間T1だけ発光する。また、蓄光層33は、発光素子30が点灯している間の時間T1で光エネルギを蓄え、この蓄えた光エネルギによって発光する。この蓄光層33の発光時間T2は、発光素子30が点灯してから蓄光層33による発光が減衰するまでの時間である。
【0043】
すなわち、押鍵すべき鍵2に蓄光層33が光を照射している光照射時間は、図7に示すように、発光素子30が消灯してから蓄光層33による発光が減衰するまでの時間(T2−T1)であり、この蓄光層33による光照射時間(T2−T1)は、発光素子30の発光時間T1よりも長く(T2―T1>T1)なるように設定されている。
【0044】
このため、演奏者は、押鍵すべき鍵2を発光素子30による発光時間T1で光らせることにより、鍵2を押鍵する前に、事前に視認することができると共に、この押鍵すべき鍵2を押鍵する際に、発光素子30が消灯しても、蓄光層33が発光することにより、この蓄光層33の発光による光照射時間(T2−T1)だけ、押鍵されている鍵2を光らせることができる。これにより、演奏者が初心者であっても、押鍵すべき鍵2を確認しながら、良好に演奏することができる。
【0045】
また、演奏中にスポットライトなどの外部光が鍵2に照射されても、その外部光の影響を受けずに、押鍵すべき鍵2を視認することができる。すなわち、スポットライトなどの外部光が鍵2に照射されると、その外部光が鍵2の外側鍵31を透過して、再帰反射シート34の透明なシート本体34aに入射する。この入射した外部光は、透明なシート本体34aを透過して多数の再帰プリズム34b内に入射する。この入射した外部光は、再帰プリズム34bによってその入射方向に向けて反射される。
【0046】
このため、鍵2の外側鍵31を透過した外部光は、鍵2の内側鍵32にほとんど到達することがないので、蓄光層33によって受光されることがない。すなわち、再帰反射シート34は、入射した外部光のほとんど(約90%)を各再帰プリズム34bの3つの斜面によって、その入射方向に向けて反射するので、鍵2の外部からスポットライトなどの外部光が照射されても、その照射された外部光が蓄光層33に到達することがない。
【0047】
これにより、蓄光層33は、外部光によって光エネルギを蓄えて発光することがなく、発光素子30の光のみを受光して蓄えた光エネルギによって発光するので、鍵2の外部から照射されたスポットライトなどの外部光の影響を受けずに、発光素子30と蓄光層33とで発光した光のみによって押鍵すべき鍵2を正確に且つ良好に光らせて指示することができる。
【0048】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ1上に複数の発光素子30を複数の鍵2にそれぞれ対応させて設けると共に、この複数の鍵2それぞれに、複数の発光素子30からの光を受光して光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって発光する複数の蓄光層33を設けた構成であるから、発光素子30の発光時間T1を短くして、消費電力を抑制することができると共に、鍵2を長い時間T2に亘って良好に光らせることができる。
【0049】
すなわち、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させると、その光が蓄光層33に照射され、この照射された光を蓄光層33で光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって蓄光層33が発光し、この蓄光層33で発光した光が再帰反射シート34を透過して押鍵すべき鍵2を光らせることができる。このため、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させる際に、その発光時間T1を短くしても、蓄光層33によって長い時間T2に亘って鍵2を光らせることができ、これにより発光素子30による消費電力を抑制することができる。
【0050】
また、この電子鍵盤楽器では、蓄光層33に対する発光素子30と反対側に位置する鍵2の箇所に、発光素子30および蓄光層33で発光した光を透過し、且つ複数の鍵2にその外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する再帰反射シート34が設けられていることにより、蓄光層33が外部光の影響を受けることがなく、発光素子30で発光した光のみを受光して光エネルギを蓄えることができるので、この蓄光層33と発光素子30とで発光した光のみによって鍵2を良好に光らせることができる。
【0051】
すなわち、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させる際に、鍵2の外部から光が押鍵すべき鍵2に照射されても、その外部光を蓄光層33が受光しないように再帰反射シート34によって反射することができる。このため、蓄光層33が外部光の影響を受けずに、発光素子30と蓄光層33とで発光した光のみによって、押鍵すべき鍵2を良好に光らせて押鍵すべき鍵2を確実に指示することができる。これにより、発光素子30の発光時間T1を短くして消費電力を抑制しても、外部光の影響を受けずに、鍵2を長い時間T2に亘って良好に光らせることができる。
【0052】
この場合、再帰反射シート34は、光透過性を有するシート本体34aと、このシート本体34aの上面に平面的に配列された多数の再帰プリズム34bとを備え、この多数の再帰プリズム34bが複数の鍵2にその外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する構成であることにより、鍵2の外部から光が押鍵すべき鍵2に照射されて、再帰反射シート34の透明なシート本体34aを透過して再帰プリズム34b内に入射すると、この入射した外部光を再帰プリズム34bによってその入射方向に向けて反射することができる。
【0053】
このため、鍵2の外側鍵31に照射された外部光は、鍵2の内側鍵32にほとんど到達することがなく、蓄光層33によって受光されることがないので、鍵2の外部からスポットライトなどの外部光が照射されても、その照射された外部光によって蓄光層33が影響を受けることがなく、発光素子30で発光した光のみを受光して光エネルギを蓄えることができるので、この蓄光層33と発光素子30とで発光した光のみによって鍵2を良好に光らせることができる。
【0054】
この場合、再帰反射シート34は、光透過性を有するシート本体34aの上面に多数の再帰プリズム34bを平面的に配列された構成であることにより、多数の再帰プリズム34bを有していても、成形用金型によって簡単に且つ容易に製作することができると共に、再帰反射シート34を鍵2の外側鍵32と内側鍵32との間に簡単に且つ容易に設置することができる。
【0055】
また、この再帰反射シート34は、本来、蓄光層33に対応する部分のみに設けられていれば良いのであるが、鍵2の外側鍵32と内側鍵32との間に位置した状態で、外側鍵31の内面にその前後方向におけるほぼ全長に亘って設けられていることにより、演奏中にスポットライトなどの外部光が各鍵2に照射された際に、その外部光を再帰反射シート34によって照射方向に向けて反射させるので、外部光の反射光が演奏者に向けて照射されることない。
【0056】
このため、スポットライトなどの外部光が演奏者の前方から照射されても、その外部光を演奏者の前方に向けて反射するので、演奏者が外部光の反射によって眩しくならないばかりか、発光素子30および蓄光層33で発光した光のみによって、光っている鍵2を良好に且つ確実に視認することができ、これによっても良好に演奏することができる。
【0057】
さらに、この電子鍵盤楽器では、鍵2が外側鍵31と内側鍵32との2層構造に形成されているので、多数の再帰プリズム34bを有する再帰反射シート34を鍵2と別に形成しても、この再帰反射シート34を外側鍵31と内側鍵32との間に容易に配置することができると共に、内側鍵32の内面に蓄光層33を簡単に設けることができ、これにより鍵2が蓄光層33および再帰反射シート34を備えていても、鍵2を容易に製作することができる。
【0058】
なお、上述した実施形態1では、鍵2の内側鍵32の内部下面に蓄光層33を設けた場合について述べたが、必ずしも内側鍵32の内部下面に蓄光層33を設ける必要はなく、再帰反射シート34が対面する内側鍵32の外部上面に蓄光層33を設けた構成であっても良い。このように構成しても、発光素子30で発光した光が内側鍵32を透過して蓄光層33に照射されるので、実施形態1と同様の作用効果がある。
【0059】
(実施形態2)
次に、図8および図9を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図7に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、蓄光層40の構造が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0060】
すなわち、この蓄光層40は、図8および図9に示すように、鍵2の内側鍵32中に蓄光剤41aを混入させた構成になっている。この場合にも、鍵2は、実施形態1と同様、外側鍵31と内側鍵32とを備えている。外側鍵31は、アクリル樹脂(PMMA)やスチロール樹脂(ポリスチレン:PS)などの透明な合成樹脂からなり、下側(図8では上側)に開放された中空状に形成されている。
【0061】
内側鍵32は、スチロール樹脂(ポリスチレン:PS)などの乳白色の光透過性を有する合成樹脂からなり、外側鍵31と同様、下側(図8では上側)に開放された中空状に形成され、外側鍵31内に設けられるように構成されている。この内側鍵32は、その合成樹脂中に蓄光剤41が混入されている。これにより、内側鍵32は、それ自体が蓄光層40として構成されている。
【0062】
この内側鍵32である蓄光層40は、実施形態1と同様、発光素子30で発光した光を受光して光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって発光するように構成されている。この場合にも、蓄光層40は、光透過性を有するものであり、発光素子30で発光した光の一部を受光して光エネルギとして蓄え、残りの光を透過するように構成されている。また、この内側鍵32の内部下面には、実施形態1と同様、再帰反射シート34が外側鍵31と内側鍵32との間に位置した状態で、鍵2の前後方向におけるほぼ全長に亘って設けられている。
【0063】
この再帰反射シート34も、実施形態1と同様、発光素子30および蓄光層33で発光した光を透過すると共に、鍵2の外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射するものである。すなわち、この再帰反射シート34は、図2および図5に示したように、透明なシート本体34aに鍵2の外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する多数の再帰プリズム34bを平面的に配列した構成になっている。
【0064】
このような電子鍵盤楽器によれば、実施形態1と同様、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させると、その光が鍵2の内側鍵32中に混入された蓄光層40の蓄光剤41に照射され、この照射された光を蓄光層40の蓄光剤41で光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって蓄光層40の蓄光剤41が発光し、この蓄光層40で発光した光を押鍵すべき鍵2に照射させて鍵2を光らせることができる。このため、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させる際に、実施形態1と同様、その発光時間T1を短くしても、蓄光層40によって長い時間(T2)に亘って鍵2を光らせることができるので、発光素子30による消費電力を抑制することができる。
【0065】
また、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させる際に、鍵2の外部から光が押鍵すべき鍵2に照射されても、その外部光を蓄光層40が受光しないように再帰反射シート34によって反射することができる。このため、蓄光層40が外部光の影響をほとんど受けずに、発光素子30で発光した光のみを受光して光エネルギを蓄えることができるので、この蓄光層40と発光素子30とで発光した光のみによって押鍵すべき鍵2を良好に光らせて確実に指示することができる。これにより、発光素子30の発光時間T1を短くして消費電力を抑制しても、外部光の影響を受けずに、鍵2を長い時間T2に亘って良好に光らせることができる。
【0066】
この場合、蓄光層40は、鍵2の内側鍵32中に蓄光剤41を混入させた構成であるから、内側鍵32の全体が蓄光層40として機能するが、実際は発光素子30の光が照射される領域が、内側鍵32の内部下面に集中する。このため、鍵2には、実施形態1と同様、発光素子30およびその光の照射領域に位置する箇所の蓄光層40で発光した光が照射されるので、この照射された光によって鍵2の前部のみを良好に光らせることができる。
【0067】
また、この場合にも、再帰反射シート34は、鍵2の外側鍵32と内側鍵32との間に鍵2の前後方向におけるほぼ全長に亘って設けられていることにより、演奏中にスポットライトなどの外部光が各鍵2に照射された際に、その外部光を再帰反射シート34によって照射方向に向けて反射させるので、外部光の反射光が演奏者に向けて照射されることない。このため、演奏者が外部光の反射によって眩しくならないばかりか、発光素子30および蓄光層40によって光っている鍵2を良好に且つ確実に視認することができ、これによっても良好に演奏することができる。
【0068】
(実施形態3)
次に、図10および図11を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態3について説明する。この場合にも、図1〜図7に示された実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、鍵2の内面に再帰反射層45を一体に形成し、この再帰反射層45の下側に蓄光層46を設けた構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0069】
この場合、鍵2は、実施形態1と異なり、外側鍵31と内側鍵32とを有しない1層構造になっている。この鍵2は、実施形態1の内側鍵32と同様、スチロール樹脂(ポリスチレン:PS)などの乳白色の光透過性を有する合成樹脂からなり、図10および図11に示すように、下側(図10では上側)に開放された中空状に形成されている。
【0070】
この鍵2の内面には、図11に示すように、再帰反射層45が一体に形成されている。この再帰反射層45は、実施形態1と同様、鍵2の外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する多数の再帰プリズム45aを平面的に配列した構成になっている。この再帰プリズム45aも、実施形態1と同様、1つの辺が短いほぼ二等辺三角形の三角錐形状に形成されている。
【0071】
すなわち、再帰プリズム45aは、実施形態1と同様、鍵2の外部から光が鍵2を透過して入射すると、その入射した外部光を再帰プリズム34bの3つの斜面によってその入射方向に向けてそれぞれ反射するように構成されている。また、この再帰プリズム45aは、発光素子30および蓄光層46で発光した光が再帰プリズム34bの外面に照射されると、その照射光を再帰プリズム34bの3つの斜面から屈折させて採り込み、この採り込んだ光を鍵2の外部に向けて放出させることにより、鍵2を光らせるように構成されている。
【0072】
この場合にも、再帰プリズム45aは、実施形態1と同様、鍵2の外部から光が鍵2を透過して再帰プリズム45a内に入射すると、その入射した外部光を再帰プリズム45aの3つの斜面によってその入射方向に向けてそれぞれ反射するように構成されている。また、この再帰プリズム45aは、その底面における長さの短い辺同士を互いに接触させて配置すると、2つの再帰プリズム45aが平面的に菱形形状をなし、この菱形形状をなす2つの再帰プリズム45aにおける底面の各辺同士を互いに接触させて縦横に多数配列させた構成になっている。
【0073】
この再帰反射層45の下面、つまり再帰プリズム45aの下側には、図11に示すように、蓄光層46が配置されている。この蓄光層46は、樹脂シートに蓄光剤を塗布または混入させたものであり、鍵2の前側内部に位置する再帰反射層45の下側、つまり発光素子30によって光が照射される箇所に対応して配置されている。
【0074】
この蓄光層46は、実施形態1と同様、発光素子30で発光した光を受光して光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって発光するように構成されている。この場合にも、蓄光層46は、光透過性を有するものであり、発光素子30で発光した光の一部を受光して光エネルギとして蓄え、残りの光を透過するように構成されている。
【0075】
このような電子鍵盤楽器においても、実施形態1と同様、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させると、その光が鍵2の内面に一体に形成された再帰反射層45の下側に配置された蓄光層46に照射され、この照射された光を蓄光層46で光エネルギとして蓄え、この蓄えた光エネルギによって蓄光層46が発光し、この蓄光層46で発光した光が再帰反射層45を透過することにより、押鍵すべき鍵2を光らせることができる。このため、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させる際に、実施形態1と同様、その発光時間T1を短くしても、蓄光層46によって長い時間T2に亘って鍵2を光らせることができるので、発光素子30による消費電力を抑制することができる。
【0076】
また、押鍵すべき鍵2に対応する発光素子30を発光させる際に、鍵2の外部から光が押鍵すべき鍵2に照射されても、その外部光を蓄光層46が受光しないように再帰反射層45によって反射することができる。このため、蓄光層46が外部光の影響を受けずに、発光素子30で発光した光のみを受光して光エネルギとして蓄えることができるので、この蓄光層46と発光素子30とで発光した光のみによって押鍵すべき鍵2を良好に光らせて確実に指示することができる。これにより、発光素子30の発光時間T1を短くして消費電力を抑制しても、外部光の影響を受けずに、鍵2を長い時間T2に亘って良好に光らせることができる。
【0077】
この場合、再帰反射層45は、鍵2の内部下面に一体に形成されていることにより、実施形態1、2のように鍵2を外側鍵31と内側鍵32との2層構造にする必要がなく、1層構造で良いので、鍵2の構造が簡単になるばかりか、鍵2を容易に製作することができると共に、鍵2の組立作業を簡素化することができ、これにより低価格な鍵盤楽器を提供することができる。
【0078】
また、この電子鍵盤楽器においても、再帰反射層45が鍵2の下面にその前後方向におけるほぼ全長に亘って一体に形成されていることにより、演奏中にスポットライトなどの外部光が各鍵2に照射された際に、その外部光を再帰反射層45によって照射方向に向けて反射させることができるので、外部光の反射光が演奏者に向けて照射されることない。このため、演奏者が外部光の反射によって眩しくならないばかりか、発光素子30および蓄光層46で発光した光によって、光っている鍵2を良好に且つ確実に視認することができ、これによっても良好に演奏することができる。
【0079】
なお、上述した実施形態3では、鍵2の内部下面に一体に形成された再帰反射層45の下側に蓄光層46が配置され、この蓄光層46が樹脂シートに蓄光剤を塗布または混入させた場合について述べたが、これに限らず、例えば図12に示す第1変形例のように、鍵2の内部下面に一体に形成された再帰反射層45の下面、つまり再帰プリズム45aの外表面に蓄光剤を塗布して蓄光層50を形成した構成でも良い。このように構成すれば、実施形態3と同様の作用効果があるほか、鍵2に蓄光層50を容易に設けることができる。
【0080】
また、上述した実施形態1〜3およびその変形例では、発光素子30によって光が鍵2の内面に照射される光照射領域のほぼ全域に蓄光層33、40、46を設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば図13に示す第2変形例のように、蓄光層51を発光素子30による光照射領域内の中心部に円形状に形成しても良く、また図14に示す第3変形例のように、蓄光層52を発光素子30による光照射領域内に「HIT:ヒット」などのマーク部として形成しても良い。
【0081】
このように構成すれば、発光素子30を点灯させた後に、発光素子30を消灯させると、発光素子30による光の照射領域内に蓄光層51、52によって円形状やマーク部などを浮き上がらせることができると共に、鍵2の光っている部分を変化させることができ、これにより演奏者の意識を引き付けることができる。このため、例えば第3変形例の蓄光層52をC1、D3などの音高名が表示されるように形成すれば、押鍵すべき鍵2の音高名を光によって浮き上がらせて視認することができるので、教育用の鍵盤楽器として最適なものを提供することができる。
【0082】
さらに、上述した実施形態1〜3およびその各変形例では、再帰反射シート34または再帰反射層45の各再帰プリズム34b、45aをほぼ二等辺三角形の三角錐形状に形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば四角錐、六角錐などの多角錐形状に形成しても良く、またこれに限らず、断面が半円形、半楕円、半放物線などの曲面突起形状に形成して良い。
【符号の説明】
【0083】
1 鍵盤シャーシ
2 鍵
30 発光素子
31 外側鍵
32 内側鍵
33、40、46、50、51、52 蓄光層
34 再帰反射シート
34a シート本体
34b、45a 再帰プリズム
41 蓄光剤
45 再帰反射層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤シャーシと、
この鍵盤シャーシ上に並列に配列された状態で上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵と、
前記鍵盤シャーシ上に前記複数の鍵にそれぞれ対応して設けられ、この複数の鍵にその下側から光をそれぞれ照射する発光素子と、
前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記発光素子からの光を受光して光エネルギとして蓄え、この蓄えた前記光エネルギによって発光する蓄光層と、
この蓄光層に対する前記発光素子と反対側に位置する箇所の前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記発光素子および前記蓄光層で発光した光を透過し、且つ前記複数の鍵にその外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する再帰反射層と、
を備えていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記再帰反射層は、光透過性を有すると共に、前記鍵にその外部から照射された外部光をその照射方向に向けて反射する多数の再帰プリズムを平面上に配列させた構成であることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記再帰反射層は、光透過性を有するシートの一面に前記多数の再帰プリズムを配列させた状態で一体に形成したことを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記複数の鍵は光透過性を有する合成樹脂からなり、前記再帰反射層は、前記複数の鍵それぞれに前記多数の再帰プリズムを配列させた状態で一体に形成したことを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記鍵は、光透過性を有する合成樹脂からなる外側鍵と、この外側鍵の内面に設けられた内側鍵とを有し、前記再帰反射層は、前記外側鍵と前記内側鍵との間に介在され、前記蓄光層は、前記内側鍵に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記蓄光層は、前記内側鍵に蓄光剤を混入させた構成であることを特徴とする請求項5に記載の鍵盤装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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