説明

鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンとトモキセチンマンデル酸塩

本発明により、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩とアトモキセチンHClが提供される。本発明によりさらに、ラセミ・トモキセチンから調製した、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が提供される。本発明により、(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩から調製した、鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンHClも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
【0002】
本出願は、2004年6月28日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/583,641号、2004年9月14日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/609,716号、2004年10月25日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/622,065号、2005年2月11日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/652,330号、2004年6月28日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/583,644号、2005年2月11日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/652,332号、2004年6月28日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/583,643号、2005年2月11日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/652,331号、2005年3月30日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/666,666号、2005年4月26日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/675,369号、2005年6月9日に出願された番号がまだわかっていない出願(弁理士ドケット番号第12670/46803号)、2005年6月14日に出願された番号がまだわかっていない出願(代理人事件番号第12670/47001号)に基づく優先権の利益を主張する。なおこれらすべての出願の内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0003】
本発明は、ラセミ・トモキセチンを光学分割して得られる鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンとトモキセチンマンデル酸塩に関する。
【背景技術】
【0004】
アトモキセチンHClは、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤である。この化合物は、注意欠陥/過活動性障害(ADHD)の治療を目的としてストラッテラ(登録商標)の名称で市販されており、10mg、18mg、25mg、40mg、60mgの投与形態が利用できる。
【0005】
アトモキセチンは化学的には(R)-(-)-N-メチル-3-(2-メチルフェノキシ)-3-フェニルプロピルアミンとして知られており、以下の構造を有する。
【0006】
【化1】

【0007】
トモキセチンの(R)-(-)鏡像異性体であるアトモキセチンは、アリールオキシフェニルプロピルアミンである。アメリカ合衆国仮特許第4,018,895号(イーライ・リリー社に譲渡)、ヨーロッパ特許第0 052 492号(イーライ・リリー社)、第0 721 777号(イーライ・リリー社)に記載されているように、アトモキセチンは、ラセミ混合物よりも約2倍有効であり、(+)鏡像異性体よりも約9倍有効である。
【0008】
(S)-(+)マンデル酸ジアステレオ異性添加塩のキラル・クロマトグラフィと分別結晶の両方によってラセミ・トモキセチンを光学分割して(R)-(-)-トモキセチン(アトモキセチン)と(S)-(+)-トモキセチンにする方法が従来技術で知られている。
【0009】
ヨーロッパ特許第'492号には、N-メチル-3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピルアミンから調製したラセミ・トモキセチンを(S)-(+)-マンデル酸を用いて分割することにより、(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が約18%というわずかな収率で得られるという分割法が記載されている。この方法は、かなり時間がかかる上、環境にやさしくない溶媒(例えばジエチルエーテルやジクロロメタン)による負荷がかかる。さらに、このような光学分割による収率の理論的上限は50%であることが知られているが、実際の収率はかなり低い。
【0010】
その後、ヨーロッパ特許第0 052 492号に開示されているような方法により、(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩からアトモキセチンHClを調製することができる。この方法では、(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩をまず最初に水の中で塩基化してマンデル酸塩を除去した後、ジエチルエーテルの中に抽出する。HClガスをその溶液の中に吹き込み、(R)-(-)-トモキセチン(アトモキセチン)ヒドロクロリドを得る。
【0011】
上記プロセスの間、大量のラセミ・トモキセチンが、望まない鏡像異性体である(S)-(+)-トモキセチンとして母液の中に残る。これは商業的な観点からは好ましくなく、望ましい鏡像異性体が望まない(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体で汚染される。望む異性体を得るためには、時間がかかって厄介な精製法(例えばカラム・クロマトグラフィ、HPLC、または他の方法)で最終生成物を精製する必要があるため、この方法を商業的に実現するのは難しい。
【0012】
鏡像異性体の純度に関する研究をストラッテラ(登録商標)60mgという市販されている錠剤について行なったところ、(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体がHPLCによる面積比で0.28%のレベルで含まれていることがわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
薬理学の分野では最もよく処方される薬の多くがキラリティを示し、2つの異性体が異なる力価を示すため、立体化学的純度が重要である。さらに、異性体によっては単に不活性というのではなく実際に害をもたらす可能性があるため、光学純度が重要である。したがってアトモキセチンHClの望ましい鏡像異性体を高純度で得る必要がある。
【0014】
さらに、アトモキセチンHClを工業スケールで合成するための反応を高効率にするには、鏡像異性不純物を最少にすることにより、望む異性体を高収率かつ高光学純度で得る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施態様には、(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.1%以下である、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が含まれる。(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルは約0.08%以下であることが好ましい。より好ましいのは、(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.07%以下になっていることである。
【0016】
本発明の別の一実施態様には、(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルが約0.1%以下である、鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリド(HCl)が含まれる。(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルは約0.03%以下であることが好ましい。より好ましいのは、(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルが約0.01%以下になっていることである。
【0017】
本発明のさらに別の一実施態様には、ラセミ・トモキセチンの光学分割によって得られる、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が含まれる。
【0018】
本発明にはさらに、上記のようにして得られた鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩をアトモキセチンHClに変換することによって得られる、鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンHClが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明により、鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリド(HCl)と(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が提供される。
【0020】
アトモキセチンHClと(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩に関する“鏡像異性体に関して純粋な”という表現は、それぞれの望ましくない鏡像異性体が約0.1%未満であることを意味する。
【0021】
“粗(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩”という用語は、含まれている(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.1%を超える(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩調製物を意味する。
【0022】
本発明により、(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.1%以下である、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が得られる。(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルは約0.08%以下であることが好ましい。より好ましいのは、(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.07%以下になっていることである。
【0023】
本発明によりさらに、(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルが約0.1%以下である、鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンHClが提供される。(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルは約0.03%以下であることが好ましい。より好ましいのは、(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルが約0.01%以下になっていることである。
【0024】
本発明により、ラセミ・トモキセチンの光学分割法によって得られた、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が提供される。この方法は、ラセミ・トモキセチンと(S)-(+)-マンデル酸をC1〜4アルコールと芳香族炭化水素の存在下で混合して反応混合物を得る操作を含んでいる。C1〜4アルコールはメタノールであることが好ましい。芳香族炭化水素は、場合によっては1個以上(好ましくは1〜3個)のC1〜C3アルキル基、C3〜C8アルキルエステル、C3〜C8アルキルエーテルC6〜C10で置換された芳香族炭化水素(例えばベンゼン、キシレン、トルエン)であることが好ましい。芳香族炭化水素はトルエンであることが最も好ましい。反応混合物を加熱し、溶けていない固形物をすべて溶かすことが好ましい。反応混合物は、60℃〜80℃に加熱するとよく、より好ましいのは65℃〜70℃に加熱することであり、最も好ましいのは約65℃に加熱することである。温度を下げると、粗(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が固化するので、反応混合物から回収する。温度は55℃〜0℃まで下げることが好ましく、45℃〜0℃まで下げることがより好ましい。最も好ましいのは、温度をまず最初に約45℃まで下げ、次いで約0℃まで下げることである。非常に好ましい結晶化温度は約0℃である。
【0025】
本発明により、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩をアトモキセチンHClに変換する方法によって得られる、鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンHClが提供される。この方法は、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩と有機溶媒を水と塩基の存在下で混合した後、気体または水溶液としてのHClと混合する操作を含んでいる。
【0026】
有機溶媒は、C1〜4アルキルエステルであることが好ましく、酢酸n-ブチルが最も好ましい。塩基は、アルカリ金属の水酸化物(例えばNaOHやKOH)またはアルカリ金属の炭酸塩(例えばNa2CO3やK2CO3)の中から選択することが好ましい。最も好ましい塩基はNaOHである。反応は、約15℃〜40℃の温度で行なわせることが好ましい。最も好ましいのは、反応を約20℃〜25℃の温度で行なわせることである。
【0027】
鏡像異性体に関して純粋なこの明細書に開示したアトモキセチンHClは医薬組成物として調製することができ、その医薬組成物は、注意欠陥障害の治療に有用であると考えられる。このような組成物には、アトモキセチンHClと、当業者に知られている薬理学的に許容可能な基剤および/または賦形剤が含まれている。
【0028】
本発明により、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を用いてアトモキセチンヒドロクロリドを調製する方法も提供される。
【0029】
例えばこの組成物は、経口投与、非経口投与、直腸投与、経皮投与、頬腔投与、鼻腔内投与する薬として調製することができる。経口投与に適した形態として、錠剤、圧縮ピル、コーティングされたピル、ドラジェ、サッシェ、硬質カプセルまたはゼラチン・カプセル、舌下錠剤、シロップ、懸濁液などがある。非経口投与に適した形態として、水溶液、非水性溶液、エマルジョンなどがあり、直腸投与に適した形態として、親水性または疎水性のビヒクルを含む座薬などがある。本発明の局所投与は、従来技術で知られている適切な経皮デリバリー系によってなされ、鼻腔内デリバリーは、従来技術で知られている適切なエーロゾル・デリバリー系によってなされる。
【実施例】
【0030】
キラルHPLC分析
【0031】
器具:HPLCヒューレット・パッカードVWD検出器HP1100
カラム:キラセルOD-Rセルローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート) 250mm×4.60mm×10mm(ダイセル化学、カタログ番号DAIC14625)
移動相:KPF6 100mM/アセトニトリル - 60/40
流速:0.8ml/分
温度:35℃
波長:UV、215nm
【0032】
粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩の調製
実施例1
【0033】
粗ラセミ・トモキセチンをトルエンに溶かした無水化有機溶液(TMXの含量:HPLCアッセイによると85.37g)に、8.5mlのメタノール(ラセミ・トモキセチン1gにつき0.1ml)と30.53gの(S)-(+)-マンデル酸を、撹拌しながら20℃にて添加した。約65℃に加熱して固形物をすべて溶かした後、冷却して粗マンデル酸塩を結晶化させた。温度は約1時間かけて65℃から45℃に下げた。約45℃で結晶化が自発的に始まった。必要な場合には、反応混合物に(R)-アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を種として入れた。次に、この懸濁液を約2時間かけて45℃から0℃まで冷却した。得られたスラリーを0℃にて1〜2時間にわたって撹拌した後、固形物を濾過によって分離し、45mlのトルエンで2回洗浄した。収率:43%。
【0034】
(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(R-TMX-SMA)/(S)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(S-TMX-SMA):HPLCによる面積比は約95/5%。
【0035】
鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩の調製
実施例2
【0036】
20gの湿った粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(0.049モル、R/S=94.3:5.56;トルエンを6.8g含有)と、31.7mlのトルエンと、8.27mlのメタノール(トモキセチン塩基1gにつき1ml)を、約20℃にて撹拌することによって混合した。
【0037】
得られた懸濁液を約30分間にわたって65℃に加熱すると溶液が得られた。冷却すると(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が結晶化した。温度は3時間かけて65℃から20℃まで下げた。
【0038】
このスラリーを20℃にて1時間にわたって撹拌した後、固形物を濾過によって分離し、10mlのトルエンで2回洗浄した。
【0039】
固形物を真空下で乾燥させると、R-TMX-SMA/(S-TMX-SMA)が得られた:HPLCによる面積比は99.91/0.09%。
実施例3
【0040】
20gの湿った粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(0.049モル、トルエンを6.8g含有)と31.7mlのトルエンを、約20℃にて撹拌することによって混合した。
【0041】
得られた懸濁液を65℃に加熱し、4.4mlのメタノールを滴下し終わったときに溶液が得られた。次に温度を3時間かけて65℃から20℃まで下げると、直ちに結晶化が起こった。
【0042】
このスラリーを20℃にて1時間にわたって撹拌した後、固形物を濾過によって分離し、10mlのトルエンで2回洗浄した。
【0043】
固形物を真空下で50℃にて18時間にわたって乾燥させると、R-TMX-SMA/S-TMX-SMAが得られた:HPLCによる面積比は99.93/0.07%。
実施例4
【0044】
1モルの乾燥した粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(R/S=96.5/3.3)と、1222.5ml(全量:乾燥したアトモキセチンマンデル酸塩1gにつき3mlで、トモキセチン塩基1gにつき4.8mlに対応)のトルエンと、153.2ml(乾燥したアトモキセチンマンデル酸塩1gにつき0.376mlで、トモキセチン塩基1gにつき0.6mlに対応)のメタノールを約20℃にて撹拌することによって混合した。
【0045】
得られた懸濁液を約30分間かけて65℃に加熱すると溶液が得られた。冷却すると(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が結晶化した。温度は6時間かけて65℃から20℃まで下げた。結晶化は55℃〜50℃で自発的に始まった。このスラリーを20℃にて1時間にわたって撹拌した後、固形物を濾過によって分離し、270mlのトルエンで2回洗浄した。
【0046】
固形物を真空下で50℃にて15時間にわたって乾燥させると323.3gが得られた。収率:79.3%。R-TMX-SMA/S-TMX-SMA:HPLCによる面積比は99.93/0.07%。
実施例5
【0047】
15gの乾燥した粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(0.0368モル)と、45mlのトルエンと、5.64mlのメタノールを約20℃にて撹拌することによって混合した。
【0048】
得られた懸濁液を約30分間にわたって65℃に加熱すると溶液が得られた。冷却すると(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が結晶化した。ここでは、温度を1.5時間かけて65℃から45℃まで下げ、1.5時間にわたって45℃に維持した後、さらに1.5時間かけて20℃まで冷却した。
【0049】
このスラリーを20℃にて1時間にわたって撹拌した後、固形物を濾過によって分離し、10mlのトルエンで2回洗浄した。
【0050】
固形物を真空下で50℃にて15時間にわたって乾燥させると12.31gが得られた。収率:82.1%。R-TMX-SMA/S-TMX-SMA:HPLCによる面積比は99.92/0.08%。
実施例6
【0051】
15gの乾燥粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(0.0368モル)と、45mlのトルエンと、5.64mlのメタノールを約20℃にて撹拌することによって混合した。
【0052】
得られた懸濁液を約30分間かけて65℃に加熱すると溶液が得られた。冷却すると(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が結晶化した。温度は3時間かけて65℃から20℃まで下げた。その後、固形物を濾過によって分離し、10mlのトルエンで2回洗浄した。
【0053】
固形物を真空下で50℃にて15時間にわたって乾燥させると12.31gが得られた。収率:82.1%。R-TMX-SMA/S-TMX-SMA:HPLCによる面積比は99.90/0.1%。
実施例7
【0054】
湿っていてトルエンを含む63.7gの粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(R/S=96.3/3.4;LOD=32.7%、乾燥生成物42.9gに対応、0.1053モル)と、107.5mlのトルエンと、16.1mlのメタノールを約20℃にて撹拌することによって混合した。
【0055】
得られた懸濁液を65℃に加熱すると溶液が得られた。冷却すると(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩が結晶化した。温度は3時間かけて65℃から20℃まで下げた。
【0056】
このスラリーを20℃にて1時間にわたって撹拌した後、固形物を濾過によって分離し、20mlのトルエンで2回洗浄した。
【0057】
固形物を真空下で50℃にて乾燥させると34.92gが得られた。収率:81.4%。R-TMX-SMA/S-TMX-SMA:HPLCによる面積比は99.92/0.08%。
実施例8
【0058】
20gの粗アトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(0.049モル)と、60mlのトルエンと、7.5mlのメタノールを撹拌することによって混合した。
【0059】
得られた懸濁液を30分間かけて70℃まで加熱し、得られた溶液を10分間にわたって70℃に維持した。次にこの混合物を3時間かけて70℃から0℃まで冷却した。
【0060】
このスラリーを0℃にて1時間にわたって撹拌した後、固形物を濾過によって分離し、10mlのトルエンで2回洗浄した。
【0061】
固形物を真空下で25℃にて乾燥させると17.93gが得られた。収率:89.6%。R-TMX-SMA/S-TMX-SMA:HPLCによる面積比は99.91/0.09%。
実施例9〜20
【0062】
鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンHClの調製
【0063】
1モルのアトモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩(電位差アッセイによると88.6%w/w)を撹拌しながら2037.5mlの酢酸n-ブチルおよび2037.5mlの水と混合した。温度を20〜25℃に維持しつつ1.529モルの30%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、相を分離させた。有機相を400mlの水で2回洗浄した後、紙で濾過し、次にステップで使用した。撹拌し、水浴冷却によって温度を約22℃〜約25℃に維持しつつ、1.1435モルの塩化水素水溶液(36%)を、上に得られたアトモキセチン塩基溶液に滴下した。するとヒドロクロリドが結晶化した。得られた懸濁液を約25℃にて1時間にわたって撹拌した。濾過によって固形物を回収し、345mlの酢酸n-ブチルで2回洗浄した。回収した固形物を真空下で70℃にて18時間にわたって乾燥させた。鏡像異性体の純度を以下の表にまとめてある。
【0064】
【表1】

【0065】
本発明を特に好ましい実施態様と代表的な実施例を参照して説明してきたが、当業者であれば、この明細書に開示した本発明の精神と範囲を逸脱することなく、ここに説明した本発明を変更しうることがわかるであろう。本発明の理解を助けるために実施例を示したが、本発明がその実施例に限定されることは意図しておらず、本発明がその実施例に限定されると考えてもならない。実施例には、従来法の詳しい説明は含まれていない。そのような方法は当業者には周知であり、多くの刊行物に記載されている。この明細書で言及したすべての参考文献は、その全体がこの明細書に組み込まれているものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.1%以下である、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩。
【請求項2】
(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.08%以下である、請求項1に記載の鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩。
【請求項3】
(S)-(+)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩鏡像異性体のレベルが約0.07%以下である、請求項2に記載の鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩。
【請求項4】
(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルが約0.1%以下である、鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリド。
【請求項5】
(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルが約0.03%以下である、請求項4に記載の鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリド。
【請求項6】
(S)-(+)-トモキセチン鏡像異性体のレベルが約0.01%以下である、請求項5に記載の鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリド。
【請求項7】
鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩の調製方法であって、
(a)粗(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩と、C1〜4アルコールと、芳香族溶媒を混合して混合物にするステップと;
(b)ステップ(a)の混合物を加熱するステップと;
(c)ステップ(b)の混合物を冷却し、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を結晶化させるステップと;
(d)鏡像異性体に関して純粋なその(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を回収するステップを含む方法。
【請求項8】
上記C1〜4アルコールがメタノールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記芳香族溶媒の選択を、トルエン、ベンゼン、キシレンからなるグループの中から行なう、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記芳香族溶媒がトルエンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)の混合物を約65℃〜約70℃の温度に加熱する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)の混合物を約0℃〜約45℃の温度に冷却する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)の混合物をまず最初に約1.5時間かけて約45℃の温度に冷却し、約1.5時間にわたって45℃に維持した後、さらに約0℃の温度に冷却する、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)の冷却を約3時間かけて行なう、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩の調製方法であって、
(a)ラセミ・トモキセチンと、C1〜4アルコールと、芳香族溶媒と、(S)-(+)-マンデル酸を混合して混合物にするステップと;
(b)ステップ(a)の混合物を維持して粗(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を結晶化させるステップと;
(c)ステップ(b)の混合物からその粗(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を回収するステップと;
(d)回収したその粗(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩と、C1〜4アルコールと、芳香族溶媒を混合して混合物にするステップと;
(e)ステップ(d)の混合物を加熱するステップと;
(f)ステップ(e)の混合物を冷却し、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を結晶化させるステップと;
(g)鏡像異性体に関して純粋なその(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を回収するステップを含む方法。
【請求項16】
上記C1〜4アルコールがメタノールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記芳香族溶媒の選択を、トルエン、ベンゼン、キシレンからなるグループの中から行なう、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
上記芳香族溶媒がトルエンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(e)の混合物を約65℃〜約70℃の温度に加熱する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(f)の混合物を約0℃〜約45℃の温度に冷却する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(f)の混合物をまず最初に約1.5時間かけて約45℃の温度に冷却し、約1.5時間にわたって45℃に維持した後、さらに約0℃の温度に冷却する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(c)の冷却を約3時間かけて行なう、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリドの調製方法であって、
(a)粗(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩と、C1〜4アルコールと、芳香族溶媒を混合して混合物にするステップと;
(b)ステップ(a)の混合物を加熱するステップと;
(c)ステップ(b)の混合物を冷却し、鏡像異性体に関して純粋な(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を結晶化させるステップと;
(d)鏡像異性体に関して純粋なその(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を回収するステップと;
(e)鏡像異性体に関して純粋なその(R)-(-)-トモキセチン(S)-(+)-マンデル酸塩を、水と有機溶媒の混合物と混合して二相系を得るステップと;
(f)この二相系に塩基を添加するステップと;
(g)この二相系の有機相と水相を分離するステップと;
(h)分離した有機相にHClを添加して結晶性アトモキセチンHClを生成させるステップと;
(i)この結晶性アトモキセチンHClを回収するステップを含む方法。
【請求項24】
上記有機溶媒がC1〜4アルキルエステルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記有機溶媒が酢酸n-ブチルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記塩基が水酸化ナトリウムである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(e)〜ステップ(h)を約20℃〜25℃の温度で実施する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
請求項4、5、6のいずれか1項に記載の鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリド、または請求項23の方法によって得られる鏡像異性体に関して純粋なアトモキセチンヒドロクロリドの治療に有効な量と、薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤とを含む医薬組成物。

【公表番号】特表2008−504302(P2008−504302A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518380(P2007−518380)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/023273
【国際公開番号】WO2006/004923
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506022784)テバ ファーマシューティカル ファイン ケミカルズ ソチエタ レスポンサビリタ リミテ (6)
【Fターム(参考)】