説明

鏡像異性的に純粋な1−置換−3−アミノアルコールの製造方法

式(Ia)および(Ib)の、N-モノ置換β-アミノアルコールスルホネート(式中、R1はC6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、それぞれ任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルまたはC1-4アルコキシ基で置換され、R2はC1-4アルキルまたはC6-20アリールであり、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され、式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)の製造方法であって、
a)メチルケトン、第1アミン、ホルムアルデヒドおよびスルホン酸を圧力約1.5barで、任意に有機溶媒(任意に水を含む)中で反応させて、式(II)のN-モノ置換β-アミノケトンスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)を得ることと、
b)前記スルホネートを、塩基と、遷移金属およびジホスフィンリガンドを有する触媒との存在下で、極性溶媒中、任意に水の存在下で、不斉に水素化することと、
を具備する方法を提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式:
【化9】

のN-モノ置換β-アミノアルコールスルホネート(式中、R1は、C6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2は、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキルおよびC6-20アリールからなる群より選択され、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)の製造方法であって、
a)(i)式:
【化10】

のメチルケトン(式中、R1は上記定義のとおりである)、
(ii)式:
H2N−R2 V
の第一アミン(式中、R2は上記定義のとおりである)、および
(iii)ホルムアルデヒド、または、ホルムアルデヒド水溶液、1,3,5-トリオキサン、パラホルムアルデヒドおよびそれらの混合物からなる群より選択される、ホルムアルデヒドの供給源
を含む混合物を、式:
【化11】

のスルホン酸(式中、R3は上記定義のとおりである)の存在下で、任意に有機溶媒(任意に水を含む)中で反応させて、式:
【化12】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)
を得ることと、
b)塩基と、遷移金属およびジホスフィンリガンドを含んだ触媒との存在下で、5〜50barの水素圧で、極性溶媒中、任意に水の存在下で、前記スルホネートを不斉に水素化して、式Iのβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)を得ることと、
を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)-(-)-3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールは、(S)-(+)-メチル-[3-(1-ナフチルオキシ)-3-(2-チエニル)-プロピル]-アミン(デュロキセチン(duloxetine))の製造のための中間体であり、鬱病および尿失禁の治療のための薬剤である(Huiling et al. Chirality2000, 12, 26-29, Sorbera et al. Drugs of the Future 2000, 25(9), 907-916)。
【0003】
無機酸またはカルボン酸の存在下での工程a)の反応はWO-A 2004/005239に記載されており、上記式IIの化合物の無機酸またはカルボン酸の塩を得る。この手順は、オートクレーブ槽において約8時間以上という長期の反応時間を要するという不都合を有する。加圧反応は損失のおそれをもたらし、反応時間を増大させる。
【0004】
N-モノ置換β-アミノケトンは、メチルケトンを、ホルムアルデヒドおよび第1もしくは第2アルキル-アミンと塩酸の存在下で反応させることにより、1922年に初めて合成された(Mannich, C. et al., Chem. Ber. 1922, 55, 356-365)。第1アルキルアミン形成を用いた前記反応において、式:
【化13】

の第3β-ケトアミノ塩酸塩の生成は、第2β-ケトアミン塩酸塩の生成よりも優勢である。これらの研究結果はBlicke et al.(J. Am. Chem. Soc. 1942, 64, 451-454)およびBecker et al.(Wiss. Z. Tech. Hochsch. Chem. Leuna-Merseburg. 1969, 11, 38-41)により裏付けられた。
【0005】
Mannich et al.によれば、第3β-アミノケトンの水蒸気蒸留は、ビニル化合物および他の副生成物を伴いつつ、かなり満足のいく収量で第2β-アミノケトンの形成を生じる。第3β-ケトアミンの約40〜60%という乏しい収率と、後続する開裂での50%を上回る損失が、Mannich法を工業生産に不適切にしている。式III(式中、R1は-チエニルであり、R2はメチルである)のβ-アミノケトン塩酸塩の水蒸気蒸留の後、対応する第2N-モノメチル β-アミノケトンが生成される証拠はない(Blicke et al.)。
【0006】
チエニルアミノケトンのラセミおよび不斉水素化のためのいくつかの方法、並びに3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールのキラル分解のための方法が知られている(WO-A 2003/062219,FR-A-2841899,WO-A 2004/005220,WO-A 2004/005307)。
【0007】
Huiling et al.は、チオフェンからの(S)-(-)-3-N-メチル-アミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールの製造を記述する。チオフェンは、ベンゼン中の四塩化スズの存在下の塩化3-クロロプロパノイルで3-クロロ-1-(2-チエニル)-1-プロパノンに変換され、これはエタノール中のホウ化水素ナトリウムで、3-クロロ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールに還元される。ヘキサン中でビニルブタノエートと、Candida AntarcticaからのリパーゼBを触媒として用いるエステル転移反応による動的分解(kineic resolution)により(S)-3-クロロ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールが得られ、これは、アセトン中のヨウ化ナトリウムで(S)-3-ヨード-1-(2-チエニル)-1-プロパノールに変換される。続いてテトラヒドロフラン中のメチルアミンを用いて処理し、(S)-(-)-3-N-メチル-アミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールを得る。
【0008】
Sorbera et al.は、チオフェンからの(S)-(-)-3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールの別の製造法を開示し、これはHuiling et al.から公知であるものと基本的に同様であるが、例外として3-クロロ-1-(2-チエニル)-1-プロパノンは、THF中のボランおよび触媒量の(R)-3,3-ジフェニル-1-メチル-テトラヒドロ-3H-ピロロ-[1,2-c][1,3,2]オキサザボロールを用いて、(S)-3-クロロ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールに不斉に還元される。この不斉還元により、3-クロロ-1-(2-チエニル)-1-プロパノンから(S)-3-クロロ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールを86%収率で得た(Wheeler et al. J. Label. Compd. Radiopharm. 1995, 36, 213-223)。
【0009】
Sakuraba et al., Chem. Pharm. Bull. 1995, 43, 748-753およびJP-A 50 70412には、3-N-メチルアミノ-1-フェニル-1-プロパノールおよび3-アミノ-1-フェニル-1-プロパノンのHCl塩の不斉水素化が開示されている。EP-A 457559は、3-ジメチル-アミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノンおよび(S)-(-)-N,N-ジメチル-3-(2-チエニル)-3-ヒドロキシプロパンアミンのHCl塩、および並びに(S)-(+)-N,N-ジメチル-3-(1-ナフタレニルオキシ)-3-(2-チエニル)-プロパンアミンおよび(S)-(-)-N,N-ジメチル-3-(1-ナフタレニルオキシ)-3-(2-チエニル)-プロパンアミンのオキサレート塩の製造を開示している。
【0010】
式IIのアミノケトンの不斉水素化にはいくつかの処理方法が知られているが、キラルな薬学的活性化合物の光学純度について、国立の登録機関が定める最も厳しい要件は、製造過程における不断の改良を必要とする。
【0011】
(S)-(-)-3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールの製造のための上記手順の欠点は、四塩化スズやベンゼンのような有害性または発癌性化合物の使用、および/またはヨウ化ボランまたはナトリウムのような高価な化合物を使用することであり、さらに後者は廃棄することが困難であることである。開示されたジホスフィンを用いた不斉水素化工程は、3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノンの水素化においては満足のいくものではない。
【発明の開示】
【0012】
本発明の目的は、鏡像異性的に純粋なN-モノ置換-3-アミノアルコール、とりわけ(S)(-)-および(R)-(+)-3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールを製造するための、経済的かつ環境的にに改良された方法を提供することである。さらに本発明は、式IIのアミノケトンの製造の改良された方法であって、そのスルホネートを直接的に入手しやすくする方法を提供する。
【0013】
上記目的は、請求項1記載の方法により達成される。
【0014】
式:
【化14】

のN-モノ置換β-アミノアルコールスルホネート(式中、R1は、C6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2は、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキルおよびC6-20アリールからなる群より選択され、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)の製造方法であって、
a)(i)式:
【化15】

のメチルケトン(式中、R1は上記定義のとおりである)、
(ii)式:
H2N−R2 V
の第一アミン(式中、R2は上記定義のとおりである)、および
(iii)ホルムアルデヒド、または、ホルムアルデヒド水溶液、1,3,5-トリオキサン、パラホルムアルデヒドおよびそれらの混合物からなる群より選択される、ホルムアルデヒドの供給源
を含む混合物を、式:
R3−SO2−OH VI
のスルホン酸(式中、R3は上記定義のとおりである)の存在下で、任意に有機溶媒(任意に水を含む)中で反応させて、式:
【化16】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)
を得ることと、
b)塩基と、遷移金属およびジホスフィンリガンドを含んだ触媒との存在下で、5〜50barの水素圧で、極性溶媒中、任意に水の存在下で、前記スルホネートを不斉に水素化して、式Iのβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)を得ることと、
を含む方法が提供される。
【0015】
用語「鏡像異性的に純粋な化合物」は、鏡像体過剰率(ee)が少なくとも85%である光学活性化合物を含む。
【0016】
用語「C1-nアルキル」、例えば「C1-18アルキル」は、1〜nの炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基を表す。任意に1または複数のハロゲン原子で置換されたC1-18アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルおよびオクタデシルを表す。
【0017】
用語「C1-nアルコキシ」、例えば「C1-6アルコキシ」は、1〜nの炭素原子を有する直鎖または分枝アルコキシ基を表す。任意に1または複数のハロゲン原子で置換されたC1-6アルコキシは、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、およびヘキシルオキシを表す。
【0018】
用語「C3-nシクロアルキル」、例えば「C3-10シクロアルキル」は、3〜nの炭素原子を有するシクロ脂肪族基を表す。任意に1または複数のハロゲン原子で置換されたC3-10シクロアルキルは、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチルまたはノルボルニルのような単環式または多環式系を表す。
【0019】
用語「C6-nアリール」、例えば「C6-20アリール」は、6〜nの炭素原子を有し、任意に1または複数のハロゲン原子、アミノ基、および/または任意に置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはジ-C1-6-アルキルアミノ基で置換された芳香族基を表し、ここでアルキル部分は任意に1または複数のハロゲン原子で置換される。C6-20アリールは、例えば上述のフェニルまたはナフチルおよびそれらの誘導体を表す。
【0020】
用語「C4-nヘテロアリール」、例えば「C4-12ヘテロアリール」は、4〜nの炭素原子を有し、それぞれ窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される1〜2のヘテロ原子を含み、任意に1または複数のハロゲン原子、アミノ基、および/または任意に置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはジ-C1-6-アルキルアミノ基で置換された複素環式芳香族基を表し、ここでアルキル部分は任意に1または複数のハロゲン原子で置換される。C4-12-ヘテロアルキルは、例えば上述のフリルまたはチエニルおよびそれらの誘導体を表し、好ましくは2-フリルおよび2-チエニルである。
【0021】
用語「C7-nアラルキル」、例えば「C7-20アラルキル」は、7〜nの炭素原子を有する芳香族基を表し(ここでアラルキル残基のアルキル部分は直鎖C1-8アルキルであり、アリール部分はフェニル、ナフチル、フランイル、-チエニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チエニルからなる群より選択される)、任意に1または複数のハロゲン原子、アミノ基、および/または任意に置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはジ-C1-6-アルキルアミノ基で置換される。C6-20 アリールは、例えば上述のベンジルまたはフェニルエチル、およびそれらの誘導体を表す。
【0022】
さらに、式:
【化17】

【化18】

のN-モノ置換β-アミノアルコールスルホネート(式中、R1はC6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2はC1-4アルキル、C3-8シクロアルキルおよびC6-20アリールからなる群より選択され、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)の製造方法であって、
塩基と、遷移金属およびジホスフィンリガンドを含む触媒の存在下で、5〜50barの水素圧で、極性溶媒中、任意に水存在下で、
式:
【化19】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)を不斉に水素化することを含む方法が提供される。
【0023】
好ましい態様において、工程a)およびb)、または工程b)のみを含む方法において、R1は、フェニル、1-ナフチル、2-フラニル、および2-チエニルからなる群より選択され、それぞれ任意にハロゲン、直鎖または分枝C1-4アルキル、直鎖または分枝C1-4アルコキシ、C3-8シクロアルキル、CF3、C2F5、OCF3またはOC2F5で置換される。
【0024】
さらに好ましい態様において、R2は、直鎖または分枝C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、フェニル、1-ナフチル、ベンジルおよびエチルベンジルからなる群より選択され、各アリールまたはアラルキルは、任意にハロゲン、直鎖または分枝C1-4アルキル、直鎖または分枝C1-4アルコキシ、C3-6シクロアルキル、CF3、C2F5、OCF3、またはOC2F5で置換される残基を表す。とくに好ましくは、工程a)の式IVのメチルケトンは2-フリルメチルケトン-(2-アセチルフラン)、メチル2-チエニルケトン(アセチルチオフェン)またはメチルフェニルケトン(アセトフェノン)である。
【0025】
第1アミンは、上記で定義した式IVの遊離塩基、または対応するスルホネートとして用いられ得る。
【0026】
また特に好ましくは、工程a)における式Vの第1アミンは、直鎖または分枝C1-4アルキルアミンであり、より好ましくはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミンまたはtert-ブチル アミンであり、それぞれ遊離塩基または対応するスルホネートとして用いられる。
【0027】
好ましい態様において、工程a)における式Vの第1アミンは、少なくとも式IVのメチルケトンと等モル量で存在する。とくに好ましくは、式IVのメチルケトンの、式IVの第1アミンに対するモル比は、1:1〜1:2の間である。
【0028】
とくに好ましくは、工程a)およびb)、または工程b)のみを含んだ方法であり、ここで、R1は2-チエニルまたはフェニルであり、それぞれ任意に1または複数のハロゲン原子で置換され、R2はメチル、エチル、tert-ブチルおよびシクロプロピルからなる群より選択される。
【0029】
さらに好ましくは、工程a)およびb)、または工程b)のみを含んだ方法において、式Iの化合物は、(S)-(-)-3-N-メチル-アミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノール、(S)-(-)-3-N-メチル-アミノ-1-(3-クロロ-2-チエニル)-1-プロパノール、(R)-(+)-3-N-メチル-アミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールおよび(R)-(+)-3-N-メチル-アミノ-1-(3-クロロ-2-チエニル)-1-プロパノールからなる群より選択される。
【0030】
WO-A 2004/005239に開示される無機酸またはカルボン酸の代わりにスルホン酸を用いることにより、工程a)の圧力下で要する反応時間が約8hから約1〜4hへと劇的に減少する。さらにスルホン酸を使用すると、殆どの無機性の酸に比べても腐食問題を無視できる。さらにスルホン酸は通常液体または固体であり、蒸気圧が低く臭気が弱いため、扱いが容易である。さらにスルホネートは容易に結晶化する傾向にあるため、本発明の方法の工程a)および/またはb)の生成物の回収が容易になる。これらの化合物は、例えば洗浄、ドリリング、およびヤーンスピニング (yarn spinning)を目的とする潤滑剤、軟化剤、乳化剤、および界面活性剤として多大な技術的利点を有することから、多様なスルホン酸が利用可能である。
【0031】
工程a)およびb)、または工程b)のみを有する方法における好ましい態様において、式VIのスルホン酸のR3は、
i)1〜18の炭素原子からなり、アミノ、ハロゲンおよびヒドロキシからなる群のうち1または複数の置換基を含む、直鎖または分枝アルキル残基、
ii)6〜20の炭素原子からなり、任意に、1または複数の窒素または酸素原子、および/または、アミノ、ハロゲンおよび、ヒドロキシおよび酸素からなる群のうち1または複数の置換基を含む、単環式または多環式シクロアルキル残基、および
iii)6〜20の炭素原子からなり、任意に、1または複数の窒素または酸素原子、および/または、アミノ、ハロゲンおよびヒドロキシからなる群のうち1または複数の置換基を含む、単環式または多環式アリールまたはアラルキル残基
からなる群より選択される。
【0032】
制限するものではないが、上記i)によれば、式VIのスルホン酸のR3は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、パーフルオロ-C1-6-アルキル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、パーフルオロエチル、パークロロエチル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチルおよび2-アミノエチルとすることができる。
【0033】
制限するものではないが、上記ii)によれば、環に付加される酸素置換基を有する、式IVのポリシクロ脂肪族スルホン酸の例は、7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]へプト-1-イル)メタンスルホン酸である。
【0034】
単環、多環式シクロアルキル、単環または多環式アリールまたはアラルキル残基を含んだスルホン酸のさらなる非限定的な例は、クメンスルホン酸、グアヤコールスルホン酸、モルホリノプロパンスルホン酸、ヒドロキシ-(2-ヒドロキシ-フェニル)-メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2-, 3-, または4-アミノベンゼンスルホン酸、ジアミノベンゼンスルホン酸、4-(N-メチル-アニリノ)-ベンゼンスルホン酸、2-, 3-, または4-クロロベンゼンスルホン酸、2-, 3-, または4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、4-ドデシル-ベンゼンスルホン酸、ドデシル-、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2-, 3- または4-トルエンスルホン酸、アントラキノン-1-スルホン酸、アントラキノン-2-スルホン酸、アントラキノン-2,7-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、4-アミノ-ナフタレンスルホン酸、3-クロロ-2-ナフタレンスルホン酸、5-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,4-ジスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、8-アミノナフタレン-1-スルホン酸、5-アミノナフタレン-2-スルホン酸、4-アミノナフタレン-1-スルホン酸、2-アミノ-ナフタレン-1-スルホン酸、8-アミノナフタレン-2-スルホン酸、5-アミノナフタレン-1-スルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸、6-アミノ-4-ヒドロキシ-ナフタレンスルホン酸、5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホン酸、5-ヒドロキシナフタレン-1-スルホン酸、7-ヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸、6-ヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸、4-ヒドロキシナフタレン-1-スルホン酸、3-ヒドロキシ-4-(2-イミダゾリルアゾ)-1-スルホン酸、6-ヒドロキシ-5-(2-ピリジルアゾ)-ナフタレン-2-スルホン酸、6-ヒドロキシ-ナフタレン-2-スルホン酸、イサチン-5-スルホン酸およびリグニンスルホン酸である。
【0035】
とくに好ましいスルホン酸は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]へプト-1-イル)メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸からなる群より選択される。
【0036】
さらに好ましい態様において、工程a)における有機溶媒は、工程a)の反応条件に対し、不活性である。より好ましくは、有機溶媒はアルコール、カルボン酸エステル、エーテル、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、およびこれらの混合物を含み、任意に、さらなる添加物、共溶媒または水を含む。好ましい態様において、アルコールは直鎖または分枝C1-12アルキルアルコールである。
【0037】
とくに好ましい脂肪族アルコールは、およびまたはまたは直鎖または分枝脂肪酸または脂環式C1-12-アルコールであり、これは二および/または三量体エチレングリコールまたはモノ C1-4アルキルまたはそのアセチル誘導体を含み、前記 C1-12-アルコールはそれぞれ1〜3のヒドロキシ基を含む。
【0038】
適切なC1-12-アルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2,2,2-トリフルオレタノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2,3-プロパントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノアセタートである。
【0039】
とくに好ましいアルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールからなる群より選択することができる。
【0040】
工程a)の反応に適するカルボン酸エステルは、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチルである。
【0041】
好ましい態様において、エーテルおよびチオエーテルは、ジアルキル或はアルキルアリールエーテル、またはチオエーテルであり、直鎖または分枝アルキル 部分は独立にC1-6アルキルであり、アリール部分 はフェニルである。
【0042】
さらに好ましい態様において、エーテルおよびチオエーエーテルは、1〜2の酸素または硫黄原子を含むC3-8シクロアルキルエーテルおよびC3-8シクロアルキルチオエーテルである。
【0043】
とくに好ましいエーテル、チオエーテル、スルホン、およびスルホキシドは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル およびtert-ブチル メチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、メチルエチル硫化物およびtert-ブチルメチル硫化物、1,4-ジチアン、チオラン、スルホラン、およびジメチルスルホキシドからなる群より選択することができる。
【0044】
好ましい態様において、反応工程a)の間の圧力は約1.5barであり、より好ましくは、1.5〜10barの範囲であり、特に好ましくは1.5〜5barの範囲である。
【0045】
さらに好ましい態様において、工程a)の反応は、80〜150℃、好ましくは100〜130℃の温度で行われる。
【0046】
式I,IIおよびVIの化合物における残基 R1, R2およびR3についての上記工程a)で言及された選択肢は、下記における工程b)にも適用される。
【0047】
我々は式IIのβ-アミノケトンのスルホン酸の塩が、各無機塩または有機塩に比べて非常に扱いやすいことを見出したが、前記スルホネートの不斉水素化は、遷移金属およびジホスフィンリガンドを用いた公知の方法を用いては、乏しい収率しかもたらさなかった。
【0048】
驚くべきことに、水素化の間の塩基の存在において、収率は劇的に増大し、β-アミノアルコールの鏡像体過剰率(ee)も改良された。さらにいくつかの例において、基質/触媒比(S/C)もまた顕著に増大した(表4)。添加された塩基のもう1つの驚くべき効果は、水素化の間の温度を約50〜80℃から25〜50℃に低下する可能性である。これによりキラル生成物と出発物質の安定性が向上する。我々は、β-アミノケトンをスルホネートとして添加すること、または対応する遊離塩基およびスルホン酸として添加することに、違いは無いことを見出した。
【0049】
工程b)の好ましい態様において、塩基は、式IIβ-アミノケトンに対し0.05〜0.5モル等量(0.05〜0.5eq)の比で存在する。
【0050】
とくに好ましくは、当該塩基は無機塩基である。さらにより好ましくは、無機塩基は金属カルボネートである。より特に好ましくは、該金属カルボネートはアルカリまたは土類アルカリカーボネート である。好ましい態様において、塩基は、Li2CO3、Na2CO3およびK2CO3からなる群より選択される。
【0051】
工程b)で用いられる触媒は、少なくとも遷移金属およびジホスフィンリガンドを含む。
【0052】
好ましい態様において、遷移金属は、ロジウム、ルテニウム、およびイリジウムからなる群より選択され、好ましくはロジウムである。
【0053】
さらなる他の好ましい態様では、ジホスフィンリガンドは、
【化20】

からなる群より選択される。
【0054】
当該触媒溶液は、ルテニウム塩Run+Y-n(式中、nは2または3であり、Y-はCl-, Br-, I-, BF4-, AsF6-, SbF6-, PF6-, ClO4- またはOTf-(トリフルオロメタンスルホネートまたはトリフレート)である)または他の適切な対イオンを極性溶媒中に溶解させ、適切な量のジホスフィンリガンドと混合させ、任意にさらに少なくとも1つの安定化リガンドとも混合させることにより、インサイチューで調製することができる。
【0055】
代替的には、前記触媒溶液は、触媒前駆体複合体、すなわち少なくとも1つの安定化リガンドをすでに含んだ予め形成された(preformed)ルテニウム複合体を、極性溶媒中で、適量のさらなるジホスフィンリガンドと混合させることにより得ることができる。該触媒前駆体複合体は、ジエン、アルケン、またはアレーンのような少なくとも1つの安定化リガンドを有する。好ましい態様において、安定化リガンドは1,5-シクロオクタジエン(cod)、ノルボルナジエン(nbd)またはp-シメン(cym)である。とくに好ましくは安定化リガンドはp-シメンである。
【0056】
さらに好ましい態様において、触媒前駆体複合体は、少なくとも1つのキラルジホスフィンリガンドを有する。
【0057】
さらに特に好ましい態様において、触媒前駆体複合体は、安定化リガンドとして、ジメチル-スルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはアセトニトリル(MeCN)のような少なくとも1つの極性溶媒分子を含む。
【0058】
そのような安定化リガンドを含んだ触媒前駆体複合体の例は、[RH2Cl4(cym)2]、[RH2BR4(cym)2]、[RhCl((RP,RP,SC,SC)-DuanPhos)(ベンゼン)]Cl、[RhCl2((RP,RP,SC,SC)-DuanPhos)DMF]、[RhCl2((RP,RP,SC,SC)-DuanPhos)DMSO]および[RH2Cl4(cod)2MeCN]である。
【0059】
さらに、触媒溶液は、全ての要求されるジホスフィンリガンドをすでに含んだ予め形成されたキラルルテニウム複合体を溶解させることにより、得ることができる。
【0060】
触媒および触媒溶液の調製に一般的に適用される方法のいくつかの例はAshworth, T. V. et al. S. Afr. J. Chem. 1987, 40, 183-188, WO 00/29370およびMashima, K. J. Org. Chem. 1994, 59, 3064-3076に開示されている。
【0061】
とくに好ましい態様において、当該触媒組成物は、[Rh((R,R,S,S)-Tangphos)(ノルボルナジエン)]BF4、[(S,S)-Me-Duphos-Rh]BF4および [Rh(NBD)(RP,RP,SC,SC)-DuanPhos)]BF4からなる群より選択される理想式に対応する。
【0062】
また別の好ましい態様において、当該触媒はジホスフィンリガンド「(RP,RP,SC,SC)-DuanPhos」を含み、任意に上述した更なる構成要素を含む。
【0063】
好ましい態様において、工程b)における水素化の間の圧力は1.5barを上回り、より好ましくは1.5〜50barの範囲であり、とくに好ましくは5〜40barの範囲である。
【0064】
さらに好ましい態様において、工程b)の反応は、0〜80℃の温度、好ましくは20〜50℃の温度で行われる。
【0065】
水素化は、C1-4アルコール、エーテル、チオエーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)またはこれらの混合物からなる群より選択される極性溶媒中の触媒溶液を用いて行われ、触媒の存在中、水素化に対して不活性である。
【0066】
好ましい態様において、エーテルおよびチオエーエーテルは、ジアルキルもしくはアルキルアリールエーテルまたはチオエーテルであり、当該直鎖または分枝アルキル部分は独立してC1-6アルキルであり、当該アリール部分はフェニルである。さらに好ましい態様において、エーテルおよびチオエーテルは、C3-8シクロアルキルエーテルおよびC3-8シクロアルキルチオエーテルである。
【0067】
とくに好ましくは、エーテルおよびチオエーテルは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテルおよびtert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、エチルメチルチオエーテルおよびtert-ブチル メチルチオエーテル、チオランおよびスルホランからなる群より選択される。
【0068】
好ましくは極性溶媒はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0069】
いずれの場合においても、工程b)で用いられる溶媒は、ジクロロメタンのようなさらなる溶媒添加物を含んでよい。
【0070】
さらに好ましくい方法において、式IaおよびIbの化合物の遊離塩基は、対応する塩から塩基から、塩基の存在中、好ましくは、NaOH, KOH, Ca(OH)2またはMg(OH)2のような水酸化アルカリまたは水酸化土類アルカリの存在中で、水性加水分解(aqueous hydrolysis)により得ることができる。
【0071】
また本発明は、式
【化21】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R1はC6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2は直鎖または分岐鎖のC1-4アルキルまたはC6-20アリールからな群より選択され、アリール部分は任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC3-6シクロアルキルで置換され;式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)、および
式:
R3−SO2−OH VI
のスルホン酸(式中、R3は上記定義のとおりである)
を提供する。
【0072】
本発明はまた、式:
【化22】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)
を提供する。
【0073】
また本発明は、式:
【化23】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)
を提供する。
【0074】
さらに本発明は、式:
【化24】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)
も提供する。
【0075】
また本発明は、式:
【化25】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)を提供する。
【0076】
本発明は、式:
【化26】

のβ-アミノアルコールスルホネート
(式中、R1はC6-20アリールまたはC4-12へテロアルキルであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され、R2はC1-4アルキルまたはC6-20アリールであり、ここでアリール部分は任意に1または複数のハロゲン原子および/またはC1-4アルキルまたはC1-4アルコキシ基で置換され、式中、R3は、C1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)、および
式:
R3−SO2−OH V
のスルホン酸(式中、R3は上記定義のとおりである)
を提供する。
【0077】
また本発明は式:
【化27】

のβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)
を提供する。
【0078】
また本発明は、式:
【化28】

のβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)
を提供する。
【0079】
また本発明は式:
【化29】

のβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)
を提供する。
【0080】
また本発明は式:
【化30】

のβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R3は上記定義のとおりであり、R4はメチル、エチル、イソブチルおよびtert-ブチルを表す)
を提供する。
【0081】
本発明は、以下の非限定的なな例により例証される。
【0082】
本方法の工程a)およびb)は、例1〜17および21〜26にそれぞれ概説される。式IIのβ-アミノケトンスルホネートは、例えば例18〜20に説明される各々の塩酸塩のように、原則的には酸の交換(acid exchange)により得ることができるので、本発明は、式IIのβ-アミノケトンスルホネートから出発する工程b)のみを含む方法も提供する。例27および28は、対応する塩酸塩から出発する酸の交換を介する式Iのβ-アミノアルコールスルホネートの製造に向かう。よって本発明は、実施可能な酸の交換の方法を提供する。
【0083】
例1:
オートクレーブ内のエタノール(40mL)、メチルアンモニウムメタンスルホネート(MAMS)(16.5g, 130mmol)、2-アセチルチオフェン(11.0g, 87.2mmol)およびパラホルムアルデヒド(2.6g, 86.6mmol)の混合物を、120℃にまで総圧力4.5barで加熱する。その温度で3h後、オートクレーブで25℃にまで冷却する。反応混合物を濃縮して乾燥させ、エタノール(20mL)および酢酸エチル(400mL)の混合物を残渣に添加し、ついで得られた懸濁物を30分25℃で撹拌する。その後、沈殿物を濾過し、酢酸エチル(40mL)で洗浄し、フィルターから取り出す。ついで粗生成物質を酢酸エチル(200mL)およびエタノール(50mL)の混合物中に懸濁させ、加熱して還流させ、0℃にまで冷却する。低温になったら懸濁物を1hその温度で撹拌する。ついで沈殿物を濾過し、酢酸エチル(40mL)で洗浄し、40℃で真空下で(20mbar)15h乾燥させて、白色がかったベージュ色の固体を得る(19.4g, 50%, 3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オンメシレート,1H-NMRによる);1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.5(2H, s, broad), 8.1(1H, dm), 8.0(1H, dm), 7.30(1H, dd), 3.42(2H, t), 3.3(2H, s, broad), 2.6(3H, s, broad), 2.38(3H, s);13C-NMR(DMSO-d6, 100MHz):189.9, 142.6, 135.4, 133.9, 128.0, 43.2, 39.6, 34.5, 32.7。
【0084】
例2〜17の一般手順:
溶媒、式IV(R1は表1に記載)の1等量(1eq)のメチルケトン、式Vの第1アルキルアミンおよび/またはその塩(1.1〜2.0eq)、ホルムアルデヒドまたはその供給源 (1.1〜1.5eq)、任意にさらなるスルホン酸の混合物(総量1.0〜1.1eq)を、オートクレーブで総圧力約1.5barで1h〜5h加熱する。その後、反応溶液を室温(RT)にまで冷却する。ついで任意に、生成物の沈殿を促進する必要があれば、反応溶媒を部分的または全体的に除去することができ、酢酸エチルまたはイソプロピルアルコールのような溶媒を撹拌しながら添加することができる。懸濁物を冷却し(0〜20℃)、沈殿後に濾過し(0.5〜10h)、任意に洗浄し乾燥させて、僅かに白色〜薄茶色の粉末を40〜60%の収率で得る。生成物は、酢酸エチルおよび/または好ましくはエタノールまたはイソプロピルアルコールのような上記したアルコールから、再結晶化することができる。ついで沈殿物を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、約40℃で真空下にて(約20mbar)15h乾燥させて、白−ベージュ〜薄茶色の固体を得た。
【0085】
一連の反応を促進するために、例11および17を除く全ての例は、メタンスルホン酸(MSA)の存在中、もしくはそれぞれのアルキル-、アリール-またはアラルキル-アンモニウムメタン-スルホネート塩を用いて実施された。例11では、(+)カンファー-10スルホン酸((+)CSA)をメチルアミンのエタノール溶液に添加した。例17では、メチル-アンモニウムp-トルエンスルホネートを用いた。さらに例13および16では、それぞれアミンおよびスルホン酸を別々に添加し、反応槽内で混合した。例1〜16から、総収率40〜60%を得た。しかるべき反応生成物は、それぞれの出発アミンと比較して約2:1の比で分離することができた。式Vの出発アミンは変化せず、さらなる反応で用いることができる。
【0086】
比較例1(C1):
2-ブタノール(40mL)、MAMS(16.5g, 130mmol)、2-アセチルチオフェン(11.0g, 87.2mmol)およびパラホルムアルデヒド(2.6g, 86.6mmol)の混合物を80℃にまで大気圧下で加熱する。その温度で4h後、反応混合物を25℃にまで冷却する。反応混合物を濃縮して乾燥させ、エタノール(20mL)および酢酸エチル(400mL)の混合物を残渣に添加し、ついで得られた懸濁物を30分25℃で撹拌する。その後、沈殿物を濾過し、酢酸エチル(40mL)で洗浄し、フィルターから取り出した。ついで粗製物質を、酢酸エチル(200mL)およびエタノール(50mL)の混合物中に懸濁させ、加熱して還流させ、0℃にまで冷却した。低温になったら懸濁物を1h室温で撹拌し、沈殿物を濾過し、酢酸エチル(40mL)で洗浄し、40℃で真空下にて(20mbar)15h乾燥させて、淡紅色の固体を得る。式IIおよびIIIの化合物は、低い(poor)収率で(全体で約40%)ほぼ等しい比で形成された。3,3’-(メチルアミノ)bis[1-(チオフェン-2-イル)プロパン-1-オン]メシレート)のデータ:1H NMR(DMSO-d6, 400MHz):9.4(1H, s, broad), 8.1(4H, m), 7.3(2H, m), 3.4-3.6(8H, m), 2.90(3H, s), 2.38(3H, s);13C-NMR(DMSO-d6, 100MHz):189.6, 142.7, 135.3, 134.0, 128.9, 50.3, 40.3, 39.6, 33.1。
【0087】
比較例2(C2):
イソプロピルアルコール(30mL)、MAMS(5.6g, 44mmol)、2-アセチルチオフェン(10.1g, 80mmol)、パラホルムアルデヒド(3.2g, 108mmol)およびMSA(約0.1g)の混合物を、84℃で通常の圧力下で加熱して還流させる。その温度で20h後、沈殿物を約80℃で濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄し(3×20mL)、40℃で真空下で(20mbar)15h乾燥させて、白色の固体を得る。式Iの化合物を微量でのみ分離することができた。式IIIの化合物(3,3'-(メチルアミノ)bis[1-(チオフェン-2-イル)プロパン-1-オン]メシレート)は、全体収率における約40%で分離することができた。
【0088】
表1:例1〜C2の反応条件
【表1】

【0089】
例11〜17の新規の化合物のNMRデータを下記に示す:
例11:3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オン 1-(S)-(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]hept-1-イル)メタンスルホネート
1H NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.4(2H, s, broad), 8.1(1H, dm), 8.0(1H, dm), 7.29(1H, dd), 3.44(2H, t), 3.27(2H, t), 2.92(1H, d), 2.64(3H, s), 2.6(1H, m), 2.43(1H, d), 2.2(1H, m), 2.0(1H, m), 1.9(1H, m), 1.80(1H, d), 1.3(2H, m), 1.04(3H, s), 0.73(3H, s)。
【0090】
例12:3-エチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オンメシレート
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.4(2H, s, broad), 8.1(1H, dm), 8.0(1H, dm), 7.3(1H, m), 3.40(2H, t), 3.3(2H, s, broad), 3.0(2H, s, broad), 2.32(3H, s), 1.20(3H, t)。
【0091】
例13:3-ベンジルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オンメシレート
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.8(2H, s, broad), 8.1(1H, dm), 8.0(1H, dm), 7.5(5H, m), 7.3(1H, m), 4.23(2H, s), 3.44(2H, t), 3.30(2H, t), 2.31(3H, s)。
【0092】
例14:3-メチルアミノ-1-フェニル-プロパン-1-オンメシレート
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.0(2H, dm), 7.7(1H, tm), 7.6(2H, tm), 7.5(2H, s, broad), 3.47(2H, t), 3.27(2H, t), 2.64(3H, s), 2.31(3H, s)。
【0093】
例15:3-エチルアミノ-1-フェニル-プロパン-1-オンメシレート
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.5(2H, s, broad), 8.0(2H, dm), 7.7(1H, tm), 7.6(2H, tm), 3.50(2H, t), 3.3(2H, s, broad), 3.0(2H, s, broad), 2.38(3H, s), 1.22(3H, t)。
【0094】
例16:3-ベンジルアミノ-1-フェニル-プロパン-1-オンメシレート
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.8(2H, s, broad), 8.0(2H, dm), 7.7(1H, m), 7.3-− 7.6(7H, m), 4.25(2H, s), 3.50(2H, t), 3.30(2H, t), 2.31(3H, s)。
【0095】
例17:3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オンp-トルエンスルホネート
1H-NMR(CDCl3, 400MHz):8.8(2H, s, broad), 7.7(2H, dm), 7.6(2H, m), 7.1-(2H, dm), 7.0(1H, m), 3.5(2H, m), 3.4(2H, m), 2.75(3H, m, symm), 2.30(3H, s)。
【0096】
比較例C1およびC2で得られる式IIIの化合物は、スルホン酸およびさらなるアミンの存在中、式IIのアミノケトン中に開裂することができる。比較例C3〜C6で添加されたアミンはMAMSであった。4つの異なる溶媒であるジグリム、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン(MIBK)およびN-メチル-ピロリドン(NMP)を試験した。反応を約4〜5barの圧力下で行った。比較例C3〜C6の収率(R1およびR2は表2に記載のとおり)は50%を下回る。いずれのケースにおいても、生成物は未確認の副生成物を含んだ。
【0097】
表2:式IIIの化合物の開裂
【表2】

【0098】
本方法の工程b)における不斉水素化のための、スルホン酸を有する式IIのアミノケトンの塩は、上記例1〜17で説明した圧力下で工程a)に従うMannich反応か、スルホン酸と、式IIのβ-アミノケトンの遊離塩基との混合によって得ることができる。式IIのβ-アミノケトンの遊離塩基は、塩酸塩のような塩を水性塩基の存在中で加水分解し、続いて有機溶媒で抽出することにより、容易に得ることができる。表3の例18〜20は、前記β-アミノケトンの塩酸塩(WO-A 2004/005239にしたがい入手可能であり、R1およびR2は表に記載されたとおり)を用いて出発する2工程反応を示す。収率は少なくとも83%であった。
【0099】
例18:3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オンメシレートを、3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オン塩酸塩から、例20の手順にしたがい調製,量および条件は表2に記載のとおり。
【0100】
例19:3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オンの1-(S)-(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]hept-1-イル) メタンスルホネートを、3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オン塩酸塩から、例20の手順にしたがい調製,量および条件は表2に記載のとおり。
【0101】
例20:3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オン p-トルエンスルホネートを、3-メチル-アミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オン塩酸塩から、表2にしたがい調製。3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オン塩酸塩(29.2g, 0.142-mol)、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)(510mL)および水(60mL)の5℃にまで冷却した混合物に、15分以内で水酸化ナトリウム水溶液(38.4gの20wt%溶液, 0.192mol)を添加する。添加終了後、反応混合物をさらに10分その温度で撹拌し、2つの相に分配する。有機相を水(180mL)で洗浄し、ついで回収した水相をMTBEで抽出する(2×150mL)。ついで回収した有機相を5℃にまで冷却し、低温になったらp-トルエンスルホン酸水和物(25.8g, 0.136mol)およびメタノール(20mL)の混合物を15分で滴下添加する。添加の間に生成物が自発的に結晶化する。添加終了後、反応混合物を25℃で静置し、この温度で30分撹拌し、ついで沈殿物を濾過し、MTBE(50mL)で洗浄し、50℃で真空下にて(20mbar)15h乾燥させて、薄い茶色−淡紅色の固体(39.5g, 85%,純粋生成物と比較,1H-NMRによる)。必要であれば、粗成物を、イソプロピルアルコール(150mL)から再結晶化させて、薄い淡紅色の固体(32.7g, 70%), 純粋生成物)を得ることができる。
【0102】
表3:アニオン交換による塩の製造
【表3】

【0103】
式IIのβ-アミノケトンスルホネートの水素化を、下記例21〜C16において概要を説明する。
【0104】
例21〜26の一般手順:
表4に示した触媒、式IIのβ-アミノケトンスルホネート(1eq)、炭酸カリウム(0.05〜0.5eq)、メタノール(40〜50mL)および水(10〜12.5mL) の混合物を窒素下にてオートクレーブ内に充填する。ついでオートクレーブを閉じ、窒素で数回パージし、ついで圧力が10(例24および25)または30barになるまで25℃で水素を添加する。その後、表4に示された各温度で撹拌しながら各時間の経過後、残った水素を慎重に放出させ、ついで反応混合物を、メタノールおよび水の4:1(vol:vol)混合物で約100mLにまで希釈する。低温になったら50mL丸底フラスコ中に移し、濃縮して乾燥させて、生成物をスルホン酸の塩で得た。表4に参照される出発アミノケトン量は、それぞれのアミノケトンのスルホン酸の量に対応する。表4の2番目の列は、各出発β-アミノケトンスルホネートが得られた例を示す。
【0105】
例21, 22, 23, 24および26において、式Iaのβ-アミノアルコールは、MTBE(10mL)および水酸化ナトリウム水溶液(5mLの20%水溶液)の混合物を用いた濃縮の後の残渣を処理することにより、遊離塩基として分離された。ついで2つの相を分配し、水相をMTBEで抽出する(2×5mL)。その後、回収した有機相(微細な沈殿物が含まれる)を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して乾燥させて、茶色の油状物を得、これは通常、数時間後に結晶化する。スルホネートからの式Iのアミノアルコールの遊離塩基の放出は、例18〜20に概要を述べた手順に対応する。
【0106】
比較例C12〜C16のための一般手順:
メタノール(25mL)中の表4に示した式II(1eq)のβ-アミノケトンの塩の混合物を、オートクレーブに窒素下で充填した。その後、窒素下でメタノール(10mL)中の触媒の溶液を調製し、シリンジを介して上記第一の混合物に添加する。ついでオートクレーブを閉じ、窒素で数回パージし、ついで圧力が30barsに達するまで水素を添加し、混合物を表4に示した温度にまで加熱する。各温度で各時間撹拌しながら、反応混合物を25℃にまで冷却した。低温になったら50mL丸底フラスコ中に移し、濃縮して乾燥させて、生成物をスルホン酸の塩で得た。
【0107】
例25:表4の(S)-3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オールメシレートのデータ
mp(未修正):62-65℃;1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.4(2H, s, broad), 7.4(1H, dm), 7.0(2H, m), 6.0(1H, s, broad), 4.94(1H, m, symm.), 3.00(2H, m, symm.), 2.59(3H, s), 2.39(3H, s), 2.0(2H, m)。
【0108】
表4:式IIの化合物のスルホネートの不斉水素化
【表4】

【0109】
ジホスフィンリガンドは、商業的に、例えばChiral Quest, Inc, Monmouth Junction, NJ, USAから入手可能であり、例21〜C16に用いられたものは[Rh((R,R,S,S)-Tangphos)(ノルボルナジエン)]BF4=TANG,[(S,S)-Me-Duphos-Rh]BF4=DUPH,[Rh(NBD)( RP,RP,SC,SC DuanPhos)]BF4=DUANである。
【0110】
例27:(S)-3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オール p-トルエンスルホネート
(S)-3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オール(5.0g, 29.2mmol)、塩化メチレン(50mL)、p-トルエンスルホン酸水和物(5.55g, 29.2mmol)およびメタノール(20mL)の混合物を1h 25℃で撹拌し、ついで濃縮して乾燥させる。数時間後に固体化する残渣(10.8g)を最後にブタノール(30mL)から再結晶化させて、白色の粉末(6.0g, 60%)を得た;1H NMR(DMSO-d6, 400MHz):8.1(1H, s, broad), 7.5(2H, dm), 7.42(1H, dd), 7.1-(2H, dm), 7.0(2H, m), 4.92(1H, dd), 2.97(2H, m, symm.), 2.57(3H, s), 2.28(3H, s), 2.0(2H, m);13C-NMR(DMSO-d6, 100MHz):149.3, 145.5, 137.6, 128.0, 126.6, 125.4, 124.4, 123.0, 66.1, 45.8, 35.1, 32.7, 20.7。
【0111】
例28:(S)-3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オール 1-(S)-(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]hept-1-イル)-メタンスルホネート
(S)-3-メチルアミノ-1-チオフェン-2-イル-プロパン-1-オール(34.2g, 200mmol)および酢酸エチル(400mL)の混合物を30℃にまで加熱し、ついで(+)-カンファー-10-スルホン酸(46.4g, 200mmol)、酢酸エチル(100mL)およびエタノール(100mL)の混合物を30℃で40分滴下添加する。添加完了後、得られた溶液を50℃にまで加熱し、その温度で15分撹拌し、ついで25℃にまで冷却する。低温になったら反応混合物を濃縮して乾燥させ、酢酸エチル(500mL)を残渣に添加する。ついで得られた混合物を加熱して還流させ、その温度を15分維持し、ついで、30分25℃にまで冷却し、その間温度が約40℃に達したら、反応混合物をシードする。低温になったら得られた懸濁物をさらに30分撹拌する。その後、沈殿物を濾過し、酢酸エチルで洗浄し(2×50mL)、40℃で真空下にて(20mbar)15h乾燥させて、白色の固体を得る(71.5g, 89%);1H-NMR(CDCl3, 400MHz):7.2(1H, dm), 7.0(1H, m), 6.9(1H, m), 5.21(1H, t), 3.3(3H, m), 2.82(1H, d), 2.75(3H, s), 2.50(1H, m, symm.), 2.3(3H, m), 2.1(1H, m), 2.0(1H, m), 1.85(1H, d), 1.74(1H, m, symm.), 1.4(1H, m), 1.04(3H, s), 0.82(3H, s)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

のN-モノ置換β-アミノアルコールスルホネート(式中、R1は、C6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2は、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキルおよびC6-20アリールからなる群より選択され、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)の製造方法であって、
a)(i)式:
【化2】

のメチルケトン(式中、R1は上記定義のとおりである)、
(ii)式:
H2N−R2 V
の第一アミン(式中、R2は上記定義のとおりである)、および
(iii)ホルムアルデヒド、または、ホルムアルデヒド水溶液、1,3,5-トリオキサン、パラホルムアルデヒドおよびそれらの混合物からなる群より選択される、ホルムアルデヒドの供給源
を含む混合物を、式:
R3−SO2−OH VI
のスルホン酸(式中、R3は上記定義のとおりである)の存在下で、任意に有機溶媒(任意に水を含む)中で反応させて、式:
【化3】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)
を得ることと、
b)塩基と、遷移金属およびジホスフィンリガンドを含んだ触媒との存在下で、5〜50barの水素圧で、極性溶媒中、任意に水の存在下で、前記スルホネートを不斉に水素化して、上記式Iのβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)を得ることと、
を含む方法。
【請求項2】
式:
【化4】

のN-モノ置換β-アミノアルコールスルホネート(式中、R1はC6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2はC1-4アルキル、C3-8シクロアルキルおよびC6-20アリールからなる群より選択され、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)の製造方法であって、
塩基と、遷移金属およびジホスフィンリガンドを含んだ触媒との存在下で、5〜50barの水素圧で、極性溶媒中、任意に水存在下で、
式:
【化5】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R1, R2およびR3は上記定義のとおりである)を不斉に水素化すること
を含む方法。
【請求項3】
R1が任意に1または複数のハロゲン原子で置換された2-チエニルであり、R2がメチル、エチル、tert-ブチルおよびシクロプロピルからなる群より選択される請求項1または2の何れか1項に記載の方法。
【請求項4】
式Iのβ-アミノアルコールが、(S)-(-)-3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノール、(S)-(-)-3-N-メチル-アミノ-1-(3-クロロ-2-チエニル)-1-プロパノール、(R)-(+)-3-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-1-プロパノールおよび(R)-(+)-3-N-メチルアミノ-1-(3-クロロ-2-チエニル)-1-プロパノールからなる群より選択される請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
式VI のスルホン酸のR3が、
i)1〜18の炭素原子からなり、アミノ、ハロゲンおよびヒドロキシからなる群より選択される1または複数の置換基を含む、直鎖または分枝アルキル残基、
ii)6〜20の炭素原子からなり、任意に、1または複数の窒素または酸素原子、および/または、アミノ、ハロゲンおよびヒドロキシからなる群より選択される1または複数の置換基を含む、シクロアルキル残基、および
iii)6〜20の炭素原子からなり、任意に、1または複数の窒素または酸素原子、および/または、アミノ、ハロゲンおよびヒドロキシからなる群より選択される1または複数の置換基を含む、単環式または多環式の芳香族または脂肪族残基
からなる群より選択される請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
当該塩基が炭酸金属である請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
当該遷移金属が、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムからなる群より選択され、好ましくはロジウムである請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
当該ジホスフィンリガンドが、
【化6】

からなる群より選択される請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
式:
【化7】

のβ-アミノケトンスルホネート(式中、R1はC6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2はC1-4アルキルまたはC6-20アリールであり、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;式中、R3はC1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)。
【請求項10】
式:
【化8】

のβ-アミノアルコールスルホネート(式中、R1はC6-20アリールまたはC4-12ヘテロアリールであり、各々任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;R2はC1-4アルキルまたはC6-20アリールであり、各アリールは任意に1または複数のハロゲン原子および/または1または複数のC1-4アルキルもしくはC1-4アルコキシ基で置換され;式中、R3は、C1-18アルキル、C6-20シクロアルキル、C6-20アリールおよびC7-20アラルキル残基からなる群より選択される)。

【公表番号】特表2008−530161(P2008−530161A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555518(P2007−555518)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001334
【国際公開番号】WO2006/087166
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(398075600)ロンザ ア−ゲ− (58)
【Fターム(参考)】