長い生体内半減期を有する生理活性ポリペプチド結合体
【課題】 生理活性ポリペプチドの活性減少を最小化しながらも、生体内半減期を延長させ、免疫反応を誘発しないタンパク質結合体の提供。
【解決手段】 i)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含む、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体は、免疫反応の誘発可能性を減らしながらも、向上した生体内安定性および延長された血中半減期を有するためポリペプチド薬物の開発に有用である。
【解決手段】 i)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含む、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体は、免疫反応の誘発可能性を減らしながらも、向上した生体内安定性および延長された血中半減期を有するためポリペプチド薬物の開発に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内半減期が延長された活性持続型タンパク質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチドは変性しやすいか、血液、肝または腎臓において酵素によって分解しやすい。このようなポリペプチドの低い安定性のため、活性成分の有効血中濃度を保持するためにはポリペプチド薬物を患者に持続的な頻度で投与する必要がある。さらに、ポリペプチド薬物は通常注射によって投与されるので、ポリペプチド薬物の頻繁な注射は患者に相当な不便をかけることになる。したがって、高い薬理学的効果を保持しながらも血中半減期が増加されたポリペプチド薬物を開発するために多くの研究が行われてきた。前記好ましいポリペプチド薬物はまた向上した血中安定性、高い活性、様々なポリペプチドへの適用可能性の要件を満たし、また、患者への投与時、好ましくない免疫反応を誘発してはならない。
【0003】
タンパク質の安定性を改善するために最も広く用いられる方法の一つは、ポリペプチドのプロテアーゼとの接触を防止するポリエチレングリコール(polyethylene glycol; PEG)のような溶解度の高い高分子でポリペプチドを化学的に変形させるものである。PEGはポリペプチド薬物に特異的にまたは非特異的に結合してポリペプチド薬物の溶解度を増加させ、またその加水分解を防止することによって、ポリペプチド薬物の血中安定性を増加させ、低い抗原性のため如何なる免疫反応も起こさないと知られている(Sadaら、J. Fermentation Bioengineering, 1991, 71: 137-139)。しかし、このようにPEGが結合したタンパク質は、PEGの分子量が増加するほど活性成分の活性および生産収率が減少するという短所がある。二つの活性化されたPEGと結合したインターフェロンだけでなく、異なる活性を有する2種のポリペプチドがPEGスペーサーで連結された結合体が米国特許第5,738,846号および国際特許公開WO92/16221に各々開示されているが、これらは生体内で生理学的活性ポリペプチドの活性延長という点においては顕著な効果を示さない。
【0004】
また、組合せヒト顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)をヘテロ−二官能性PEGを通じてアルブミンに共有結合させることによってG−CSFの血中半減期を増加させ得ると報告されている(Kinstler et al., Pharmaceutical Research, 1995, 12(12): 1883-1888)。しかし、修飾されたG−CSF−PEG−アルブミンの安定性は、G−CSF自体に比べてただ4倍に過ぎないため、これまで実用化されていない。
【0005】
生理活性ポリペプチドの生体内安定性を向上させるための他の方法として、安定したタンパク質と融合した活性ポリペプチドを組合せ技術によって形質転換体で生産する。たとえば、アルブミンは、それに融合したポリペプチドの安定性を向上させるのに最も効果的なタンパク質の一つであると知られており、そのような融合タンパク質は多く報告されている(国際特許公開WO93/15199およびWO93/15200、およびヨーロッパ特許公開第413,622号)。しかし、アルブミンと結合した融合タンパク質は活性減少という問題を依然として有している。
【0006】
米国特許第5,045,312号は、成長ホルモンの活性を向上させるために、カルボジイミド(carbodiimide)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、酸クロリドなどのような架橋結合剤を用いて成長ホルモンをウシ血清アルブミン(bovine serum albumin; BSA)またはマウスの免疫グロブリンに結合させる方法を開示している。しかし、この方法は、ただ標的成長ホルモンの活性を向上させることのみを目的とする。また、架橋結合剤としてカルボジイミド、グルタルアルデヒド、酸クロリドなどのような化学物質を用いることは強い毒性および反応の非特異性のため不利である。
【0007】
免疫グロブリンは、抗体−依存性細胞毒性(Antibody-dependent cell cytotoxicity, ADCC)または補体−依存性細胞毒性(Complement dependent cytotoxicity, CDC)を示す抗体として作用でき、糖鎖はADCCおよびCDCの発揮に重要な役割を果すと報告されている(Burton D., Molec. Immun. 22, 161-206, 1985)。糖鎖がなくても非糖鎖化免疫グロブリンは糖鎖化したものと同様な血中半減期を有するが、補体またはレセプターに対する結合力は糖鎖除去により10倍〜1000倍減少する(Waldmann H., Eur. J. Immunol. 23, 403-411, 1993, Morrison S., J. Immunol. 143, 2595-2601, 1989)。
【0008】
生理活性ポリペプチドを種々の高分子と結合させるための多くの試みが行われてきたが、これらはいずれも安定性と活性を同時に増加させることはできなかった。
活性ポリペプチドの安定性を向上させるとともに、生体内活性を保持するための改善された方法として、本発明は、生理活性ポリペプチド、非−ペプチド重合体および免疫グロブリンが共有結合で互いに連結されたタンパク質結合体を提供する。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,738,846号公報
【特許文献2】国際特許公開WO92/16221号公報
【特許文献3】国際特許公開WO93/15199号公報
【特許文献4】国際特許公開WO93/15200号公報
【特許文献5】ヨーロッパ特許公開第413,622号公報
【特許文献6】米国特許第5,045,312号公報
【非特許文献1】Sadaら著、J. Fermentation Bioengineering, 1991年発行、71: 137-139頁
【非特許文献2】Kinstlerら著、Pharmaceutical Research, 1995年発行、12(12): 1883-1888頁
【非特許文献3】Burton D. 著、Molec. Immun. 22, 161-206頁、1985年発行
【非特許文献4】Waldmann H.著、Eur. J. Immunol. 23, 403-411頁、1993年発行
【非特許文献5】Morrison S. 著、J. Immunol. 143, 2595-2601頁、1989年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の主な目的は、生理活性ポリペプチドの活性減少を最小化しながらも、生体内半減期を延長させ、免疫反応を誘発しないタンパク質結合体を提供することである。
本発明の他の目的は、生理活性ポリペプチド、生体親和性非ペプチド性重合体および免疫グロブリンが共有結合で互いに連結されたタンパク質結合体の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、生体内半減期が延長された前記生理活性ポリペプチドを含む医薬組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、生理活性ポリペプチドの活性を減少させることなく、その生体内安定性を向上させ、血中半減期を増加させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施態様に従って、本発明では、共有結合で互いに連結されたi)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含み、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体が提供される。
【0013】
また、本発明の他の実施態様に従って、本発明では、(a)少なくとも一つの生理活性ポリペプチド、および少なくとも一つの免疫グロブリンを両末端に反応基を有する少なくとも一つの非ペプチド性重合体と共有結合で連結する段階;および
(b)共有結合で互いに連結された生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体を必須的に含むタンパク質結合体を分離する段階を含む、請求項1記載のタンパク質結合体の製造方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の実施態様に従って、本発明では、タンパク質結合体および薬剤学的に許容可能な担体を含む、半減期が長くなった生理活性ポリペプチドの医薬組成物が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の実施態様に従って、本発明では、両末端に反応基を有する非ペプチド性重合体を生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと共有結合で連結することを含む、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を延長させる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書に用いられる用語「生理活性ポリペプチド」とは、ヒトを含む哺乳動物に投与された場合、有用な生物学的活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をいい、「生理活性タンパク質」、「活性タンパク質」、「活性ポリペプチド」または「ペプチド薬物」という用語と相互交換的に使用され得る。
【0017】
本明細書に用いられる用語「タンパク質結合体」または「結合体」とは、本発明によって共有結合で互いに連結されている、生理活性ポリペプチド、非ペプチド性重合体および免疫グロブリンを含む化合物をいう。
前記「結合体」という用語と区別される用語「連結体」は、生理活性ポリペプチド、非ペプチド性重合体および免疫グロブリンから選ばれた2種類の構成要素のみを含む化合物を意味する。
【0018】
用語「非ペプチド性重合体」は、少なくとも二つ以上のモノマーを含み、このモノマーがペプチド結合ではなく、任意の共有結合を通じて連結された生体適合性重合体をいう。
本発明の一実施態様に従って、共有結合で互いに連結された、i)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含み、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体が提供される。
【0019】
たとえば、本発明のタンパク質結合体は、[活性ポリペプチド/非ペプチド性重合体/免疫グロブリン]によって表わされる単位構造を少なくとも一つ含み得、ここですべての構成要素は共有結合によって線状で連結されている。非ペプチド性重合体は両末端に各々反応基を有し得るので、これを通じて生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと各々共有結合で連結される。好ましい具現例では、少なくとも二つの生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体からなる連結体が一つの免疫グロブリンに共有結合で連結され得る。
【0020】
生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンのモル比は1:1〜10:1、好ましくは1:1〜4:1の範囲であり得る。
1種類の重合体だけではなく、異なる種類の重合体の組合せが非ペプチド性重合体として使用され得る。
【0021】
本発明のタンパク質結合体において、免疫グロブリンの適当な結合部位としては免疫グロブリンの可変領域または不変領域にあるアミノ酸残基の遊離官能基を含み得る。非ペプチド性重合体または活性ポリペプチドと共有結合するのに適当な免疫グロブリンの部位は可変領域のアミノ末端、リジン残基またはヒスチジン残基のアミノ基、およびシステインの遊離−SH基を含み得、非ペプチド性重合体の適当な部位は末端反応基である。
【0022】
免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組合せおよびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のようなIgGのすべてのサブタイプからなる群から選ばれ得る。患者において免疫反応を誘発しないように、前記免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンであることが好ましい。
【0023】
本発明のタンパク質結合体を構成する構成要素として、免疫グロブリンは血液から単離した天然型免疫グロブリンであるか、遺伝工学的に産生された組合せ免疫グロブリンであり得る。機能、構造および安定性において野生型と実質的に等しい限り、様々な部位でアミノ酸残基の置換、欠失または付加によって修飾された任意の免疫グロブリンだけではなく、高糖鎖化、低糖鎖化および糖鎖が除去された誘導体も本発明に使用され得る。免疫グロブリンの糖鎖の増減または除去は、化学的方法、酵素学的方法および遺伝工学的方法のような通常の方法のいずれかを用いて行い得る。IgGの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322、327〜331番アミノ酸残基が修飾のための適当な部位として使用され得る。
【0024】
適当な非ペプチド性重合体は、アルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、マレイミドおよびスクシンイミド誘導体からなる群から選ばれる反応基を有する。スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルカルボキシメチル、ヒドロキシスクシンイミジル、およびスクシンイミジルカーボネートからなる群から選ばれ得る。両末端にアルデヒド基を有する非ペプチド性重合体は、非特異的カップリング反応を最小化して非ペプチド性重合体の両末端で生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと各々結合するのに効果的である。アルデヒド基の還元に基づくアルキル化によって生成したタンパク質結合体はアミド結合を通じて連結されたものよりも遥かに安定である。
【0025】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は同一でも異なっていてもよい。たとえば、非ペプチド性重合体は一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはマレイミド基、アルデヒド基、またはプロピオンアルデヒド基を有し得る。ポリ(エチレングリコール)が非ペプチド性重合体として用いられる場合、本発明のタンパク質結合体の製造に市販の製品を用いるか、カップリング反応前に市販のPEGの末端ヒドロキシ基を他の反応基にさらに転換させて用いられ得る。
【0026】
前記非ペプチド性重合体は、前記免疫グロブリンのアミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基と前記生理活性ポリペプチドの反応基のいずれかを共有結合で連結するスペーサーの役割をする。
【0027】
非ペプチド性重合体はポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ(乳酸−グリコール酸)、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸およびこれらの組合せからなる群から選ばれ得る。当該分野に周知のこれらの誘導体もまた同じ目的で使用され得る。より好ましい非ペプチド性重合体はポリ(エチレングリコール)である。非ペプチド性重合体の分子量は500〜100,000、好ましくは500〜20,000の範囲である。
【0028】
二つのポリペプチドを遺伝子クローニングによって結合させるための、オリゴペプチドのような従来報告されている架橋結合剤は、好ましくない免疫反応の可能性を増加させ、結合部位をポリペプチドのN−末端またはC−末端のみに制限させる。したがって、非ペプチド性重合体の使用は、オリゴペプチドと比較する場合、毒性や免疫原性の減少という長所がある。他の長所は、結合部位の多様性による適用可能性の増加である。
【0029】
架橋結合剤として用いられる場合、カルボジイミドおよびグルタルアルデヒドのような低分子架橋剤はこれを通じて結合されたタンパク質を変性、または結合の制御および生成物の精製の困難をもたらすことがある。これに対し、非ペプチド性重合体を含む本発明のタンパク質結合体は、結合の調節および生成した結合体の精製が容易であり、非特異的カップリング反応を最小化できるというメリットがある。
【0030】
本発明のタンパク質結合体は、ポリペプチド−PEG連結体またはポリペプチド−PEG−アルブミン結合体よりも遥かに優れた生体内半減期および活性を示す。薬物動力学分析(pharmacokinetic analysis)によれば、本発明のhGH−PEG−IgG結合体の半減期は野生型hGHに比べて約13倍さらに長い反面、hGH−PEG連結体およびhGH−PEG−アルブミン結合体は各々野生型タンパク質に比べて約7倍および約5倍さらに長い半減期を示す(試験例2、表3参照)。hGHの代わりにG−CSFおよび17S−G−CSF、インターフェロンまたはEPOを用いた試験においても同様な結果が得られた。PEGのみでまたはPEG−アルブミン連結体で修飾された結合体に比べて、本発明のタンパク質結合体は前記通常の連結体よりも2倍〜70倍高い、遥かに増加した平均滞留時間(mean residence time; MRT)および血中半減期を示す(試験例2、表4〜7参照)。また、本発明のFab’−PEG−IgG結合体、すなわち、IgG−PEG連結体がFab’のC−末端近くの−SH基、またはN−末端に各々連結されたFab’−S−PEG−N−IgGおよびFab’−N−PEG−N−IgG結合体は、Fab’−S−40K PEG連結体に比べて2倍〜3倍さらに長い血中半減期を示す(試験例3および図12参照)。
【0031】
さらに、非糖鎖化免疫グロブリンを用いて製造されたタンパク質結合体は糖鎖化された免疫グロブリンを含む相応するタンパク質結合体と同様な血中半減期と生体外活性を示す(表4、7および9、および図10および11参照)。
【0032】
薬物動力学分析結果、hGH、インターフェロン、EPO、G−CSFまたはその誘導体、および抗体断片を含む様々な生理活性ポリペプチドに適用された本発明のタンパク質結合体は、血中半減期およびMRTの面で優れた特性を示すので、延長された生体内半減期を有するポリペプチド薬物製剤を製造するのに有用である。
【0033】
さらに、動物モデルを用いた生体内試験によれば、本発明のhGH−PEG−IgG結合体は非常に優れた生体内活性を示す。具体的に、hGH−PEG−IgG結合体を野生型投与容量の1/3容量で6日に1回投与したとき、野生型を毎日投与したものと等しいかより優れた効果を示し、このような結果は、hGH−PEG−IgG結合体の生体内活性が野生型に比べて3倍以上高いことを意味する(図14参照)。
【0034】
本発明の17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体は20kDa PEG−G−CSF連結体に比べて3倍以上高い生体内活性を示し、5日に1回投与したとき、同じ総投与量になるように毎日投与した野生型G−CSFよりも2倍以上高い好中球回復効果を示す(図15参照)。しかも、本発明のEPO−PEG−IgG結合体は、ヘマトクリット数値において野生型EPOまたは高糖鎖化EPOの場合よりもさらに高くて速い増加率を誘導し、このような高い生体内活性を長期間保持する(図16)。
【0035】
このような結果は、本発明のタンパク質結合体が頻繁な投与を必要とする野生型ペプチドの問題を克服するとともに、生理活性タンパク質の血中半減期および生体内活性を著しく増加させることを示す。
【0036】
生理活性ポリペプチドとしては、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質およびレセプターなどのポリペプチド、およびこれらの変異体および他の類似体を例示することができる。
【0037】
本発明のタンパク質結合体を製造するのに適当な生理活性ポリペプチドの具体的な例はヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類(例:インターフェロンα,βおよびγ)、コロニー刺激因子、インターロイキン類(例:インターロイキン−1,−2,−3,−4,−5,−6,−7,−8,−9,−10,−11,−12,−13,−14,−15,−16,−17,−18,−19,−20,−21,−22,−23,−24,−25,−26,−27,−28,−29および−30)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、アポリポタンパク質−E、エリトロポイエチン、高糖鎖化エリトロポイエチン、血液因子VII、血液因子VIII、血液因子IX、プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、表皮成長因子、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、結合組織活性化因子、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、FSH放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラクシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン−類似成長因子、副腎皮質刺激ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、レセプター類(例:NFR(P75)およびTNFR(P55))、レセプター拮抗物質(例:IL1−Ra)、細胞表面抗原(例:CD2,3,4,5,7,11a,11b,18,19,20,23,25,33,38,40,45および69)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片およびウイルス由来のワクチン抗原を含む。
【0038】
抗体断片とは特定抗原に結合し得る抗体の断片、たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、FdおよびscFvを示し、Fab’が好ましい。Fab断片は抗体の軽鎖および重鎖の可変ドメインと第1不変ドメイン(CH1)からなり;Fab’断片はFab断片のCH1ドメインのC−末端にヒンジ(hinge)領域からの一つ以上のシステイン残基を含む数個のアミノ酸残基がさらに付加されたものであり;F(ab’)2断片は二つのFab’断片がジスルフィド結合或いは化学的反応で相互連結されたものであり;Fd断片は重鎖の可変領域と第1不変ドメイン(CH1)を含む。scFv断片は、ペプチドリンカーで互いに連結された軽鎖と重鎖の可変領域からなる単一ポリペプチド鎖である。
【0039】
特に好ましいポリペプチドは、疾病の治療または予防の目的で投与される場合、他のものに比べてさらに頻繁な投与が要求されるということに照らし、ヒト成長ホルモン、インターフェロン類(インターフェロンα,βおよびγ)、顆粒球コロニー刺激因子および赤血球生成因子からなる群から選ばれたいずれかである。
【0040】
本発明が適用され得る生理活性ポリペプチドの種類は前述のものに制限されず、野生型ポリペプチドと実質的に等しいかさらに優れた機能、構造、活性または安定性を有する変異体または誘導体も本発明の生理活性ポリペプチドの範囲に含まれる。
【0041】
他の実施態様として、本発明は、
(a)少なくとも一つの生理活性ポリペプチド、少なくとも一つの免疫グロブリン、および両末端に反応基を有する少なくとも一つの非ペプチド性重合体を共有結合で連結する段階;および
(b)共有結合で連結された生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体を必須的に含むタンパク質結合体を単離する段階を含む、前記タンパク質結合体の製造方法を提供する。
【0042】
前記方法の段階(a)において、生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体は2段階反応または同時反応によって共有結合で連結され得る。2段階反応、たとえば、非ペプチド性重合体を活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンと共有結合させた後、生成した連結体を活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンと共有結合させてこれらの結合体を製造し、ここで活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンは非ペプチド性ポリマーを用いて相互連結される方法が好ましくない副産物の生成を減少させるのに有利である。
【0043】
したがって、前記方法の段階(a)は、
(a1)非ペプチド性重合体の一方の末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドと共有結合で連結する段階;
(a2)反応混合物から非ペプチド性重合体と連結された免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドを含む連結体を分離する段階;および
(a3)連結体の非ペプチド性重合体の自由末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドと共有結合で連結して非ペプチド性重合体が生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンを共有結合で互いに連結するタンパク質結合体を生産する段階;を含み得る。
【0044】
前記段階(a1)において、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体のモル比は好ましくは1:2.5〜1:5の範囲であり、免疫グロブリンと非ペプチド性重合体のモル比は1:5〜1:10である。なお、段階(a3)において、段階(a2)で得られた連結体と生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンのモル比は1:0.5〜1:20、好ましくは1:1〜1:5の範囲である。
【0045】
段階(a1)および段階(a3)は、ナトリウムシアノボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライド、ジメチルアミンボレートおよびピリジンボレートからなる群から選ばれる還元剤の存在下で行い得る。
【0046】
段階(a2)および(b)を行うための手続は、要求される純度、および生成した結合体の分子量および電荷量のような特性を考慮して、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどおよびこれらの組合せのような、タンパク質の分離に用いられる通常の方法で行い得る。
【0047】
さらに他の実施態様として、本発明は、本発明のタンパク質結合体および薬剤学的に許容可能な担体(賦形剤)を含む、修飾されていないポリペプチドに比べて延長された生体内半減期を有する生理活性ポリペプチドの医薬組成物を提供する。
【0048】
本発明の医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈または筋肉内投与を含む種々の経路を通じて投与され得、注射投与がより好ましい。本発明の医薬組成物は、患者に投与された後、活性成分の迅速、遅速または遅延放出を提供するために当業界で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、錠剤、丸剤、粉末、におい袋(sachet)、エリキシル(elixir)、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エーロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末などの形態であり得る。適切な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラル油などを挙げることができる。剤形は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0049】
活性成分の実際投与量は治療する疾患、選択された投与経路、患者の年齢、性別および体重、および患者の症状を含む色々な関連因子、特に活性成分の種類によって決定される。本発明のタンパク質結合体の向上した安定性のため、本発明のタンパク質結合体を含むポリペプチド薬物剤形の総投与回数および頻度を著しく減らすことができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明の好ましい具現例を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【0051】
[実施例1]hGH−PEG−IgG結合体の製造I
(段階1)hGH−PEG連結体の製造
ヒト成長ホルモン(hGH、分子量22kDa)を5mg/mlの濃度に100mMリン酸塩緩衝液に溶解し、両末端にアルデヒド反応基を有する分子量3.4kDaのポリエチレングリコール(ALD-PEG-ALD, Shearwater Inc.、米国)をhGH:PEGのモル比が1:1、1:2.5、1:5、1:10または1:20になるように加えた。これに還元剤としてナトリウムシアノボロハイドライド(NaCNBH3、Sigma)を最終濃度20mMになるように加え、この混合物を4℃で3時間攪拌した。PEGがhGHのアミノ末端部位に1:1のモル比で選択的に結合したhGH−PEG連結体を得るために、得られた反応混合物をスーパーデックス(Superdex(登録商標)、Pharmacia社製、米国)サイズ排除(size exclusion)クロマトグラフィーを行った。溶離液として10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてhGH−PEG連結体をカラムから溶離および精製し、修飾されていないhGH、未反応のPEGおよび二分子のhGHがPEGの両末端に連結された二量体副産物を除去した。精製されたhGH−PEG連結体を5mg/mlに濃縮した。最良の結果を得るためのhGH:PEGの最適のモル比は1:2.5〜1:5であることが確認された。
【0052】
(段階2)hGH−PEG連結体とIgGとの間の結合体形成
分子量150kDaの免疫グロブリンG(IgG、緑十字、韓国)を100mMリン酸塩緩衝液に溶解した。段階1で精製されたPEG−hGH連結体のアルデヒド基にIgGを結合させるために、hGH−PEG連結体:IgGのモル比が1:1、1:2、1:4または1:8になるようにhGH−PEG連結体をIgG−含有緩衝液に加えた。還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加え、この混合物を4℃で20時間徐々に攪拌した。結合反応後hGH−PEG−IgG結合体を汚染物から分離精製するために、反応混合物を用いて20mMトリス緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAEカラム(Pharmacia、米国)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。移動相を緩衝液A(20mMトリス緩衝液、pH7.5)から線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.5M)で緩衝液B(1.0M NaClを含む20mMトリス緩衝液、pH7.5)に変えた。溶離したhGH−PEG−IgG結合体から少量の未反応のIgGおよび修飾されていないhGHを除去するために、溶離液として10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で平衡化したpolyCATカラム(PolyLC、米国)を用いた陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーを行った。移動相を緩衝液A(10mM酢酸ナトリウム、pH4.5)から線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.5M)で緩衝液B(1.0M NaClを含む10mM酢酸ナトリウム、pH4.5)に変えてhGH−PEG−IgG結合体を精製した(図1)。
最良の結果を得るためのhGH−PEG連結体:IgGの最適のモル比は1:4であることが確認された。
【0053】
[実施例2]hGH−PEG−IgG結合体の製造II
(段階1)IgG−PEG連結体の製造
IgG(緑十字、韓国)を100mMリン酸塩緩衝液に15mg/mlの濃度に溶解し、生成した溶液に3.4kDaのALD−PEG−ALD(Shearwater Inc.、米国)をIgG:PEGのモル比が各々1:1、1:2.5、1:5、1:10または1:20になるように加えた。これに還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、この混合物を4℃で3時間攪拌した。PEGがIgGのアミノ末端部位に1:1のモル比で選択的に結合したIgG−PEG連結体を分離するために、得られた反応混合物をスーパーデックス(Superdex(登録商標)、Pharmacia社製、米国)サイズ排除クロマトグラフィーを行った。溶離液として10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてIgG−PEG連結体を溶離および精製し、修飾されていないIgG、未反応のPEG、および二分子のIgGがPEGの両末端に連結された二量体副産物を除去した。精製されたIgG−PEG連結体を15mg/mlに濃縮した。最良の結果を得るためのIgG:PEGの最適のモル比は1:5〜1:10であることが確認された。
【0054】
(段階2)IgG−PEG連結体とhGHとの結合体形成
前記段階1で精製されたIgG−PEG連結体にhGH(分子量22kDa)を結合させるために、100mMリン酸塩緩衝液に溶解したhGHをIgG−PEG連結体と各々1:1、1:1.5、1:3または1:6のモル比で反応させた。これに還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加え、反応混合物を4℃で20時間攪拌した。得られた反応混合物を実施例1の段階2と同様な精製方法を行って未反応物質および副産物を除去し、IgG−PEG−hGH結合体を精製した。
【0055】
[実施例3]IFNα−PEG−IgG結合体の製造
hGHの代わりにインターフェロンアルファ2b(IFNα2b、分子量20kDa)を用い、IFNα2b:ALD−PEG−ALD(分子量3.4kDa)のモル比を1:5にしたことを除いては、実施例1と同様な方法でIFN−α−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0056】
[実施例4]ヒト顆粒球コロニー刺激因子−PEG−IgG結合体の製造
hGHの代わりにヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF、分子量18.7kDa)を用い、G−CSF:ALD−PEG−ALD(分子量3.4kDa)のモル比を1:5にしたことを除いては、実施例1と同様な方法でG−CSF−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
また、野生型G−CSFの17番目のアミノ酸がセリンで置換されたG−CSF誘導体(17S−G−CSF)を用いて前記と同様な方法でG−CSF誘導体−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0057】
[実施例5]EPO−PEG−IgG結合体の製造
hGHの代わりにヒト赤血球生成因子(Erythropoietin(EPO)、分子量35kDa)を用い、EPO:ALD−PEG−ALD(分子量3.4kDa)のモル比を1:5にしたことを除いては、実施例1と同様な方法でEPO−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0058】
[実施例6]異なる反応基を有するPEGを用いたタンパク質結合体の製造
両末端にアルデヒド基以外の異なる反応基を有するPEGを用いてhGH−PEG−IgG結合体を次のように製造した。100mMリン酸塩緩衝液に溶解したhGH10mgを両末端にスクシンイミジルプロピオネート(SPA)基を有するPEG(SPA−PEG−SPA、Shearwater Inc.、米国、分子量3.4kDa)とhGH:PEGのモル比が各々1:1、1:2.5、1:5、1:10または1:20になるように反応させた。反応混合物を室温で2時間攪拌した。hGHのリジン残基にPEGが1:1のモル比で選択的に結合したhGH−PEG連結体を得るために、反応混合物をスーパーデックス(登録商標)(Pharmacia社製、米国)サイズ排除クロマトグラフィーを行って分離した。溶離液として10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてhGH−PEG連結体を溶離および精製し、修飾されていないhGH、未反応のPEGおよび二分子のhGHがPEGの両末端に連結された二量体副産物を除去した。精製されたhGH−PEG連結体を5mg/mlに濃縮した。濃縮hGH−PEG連結体を用いて実施例1と同様な方法でhGH−PEG−IgG結合体を製造した。最良の結果を得るためのhGH:PEGの最適のモル比は1:2.5〜1:5であることが確認された。
両末端にN−ヒドロキシスクシンイミジル(N-hydroxysuccinimidyl;NHS)基を有するPEG(NHS−PEG−NHS;Shearwater Inc.、米国)を用いたことを除いては、前記と同様な方法を行って他のhGH−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0059】
[実施例7]分子量が異なるPEGを用いたタンパク質結合体の製造
分子量が10,000ダルトンであり、両末端にアルデヒド反応基を有するPEGであるALD−PEG−ALD(Shearwater Inc.、米国)を用いたことを除いては、実施例1の段階1と同様な方法でhGH−PEG連結体を製造および精製した。この際、最良の結果を得るためのhGH:PEGの最適のモル比は1:2.5〜1:5であることが確認された。精製されたhGH−PEG連結体を5mg/mlになるように濃縮した。濃縮されたhGH−PEG連結体を用いて実施例1の段階2と同様な方法でhGH−PEG−IgG結合体を製造した。
【0060】
[実施例8]Fab’−S−PEG−N−IgG結合体の製造(−SH基)
(段階1)Fab’の発現および精製
抗−TNF−αFab’を発現する大腸菌BL21/poDLHF(寄託番号:KCCM10511)をLB培地100mlに接種して一晩振盪培養した。培養したLBブロスを5lフェメンター(Marubishi)に移して温度30℃、空気投入量20vvm、攪拌速度500rpmの条件下で培養した。発酵が進むにつれて、微生物の成長によって惹起されたエネルギー源の不足を補充するために適当量のブドウ糖(glucose)と酵母抽出液(yeast extract)を培養水に加えた。吸光度600nmで培養液の吸光度が80に至ると、IPTGを培養液に加えてタンパク質発現を誘導した。培養液の吸光度が600nmで120〜140になるまで40〜45時間培養を続けた。得られた発酵液を遠心分離(20,000xg、30分)して上澄液を得た。
【0061】
上澄液から次のような3段階のカラムクロマトグラフィーを行って抗−TNF−αFab’を精製した。前記上澄液を20mMリン酸塩緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrapタンパク質G(5ml、Pharmacia社製、ドイツ)カラムに充填した後、100mMグリシン緩衝液(pH3.0)で溶離した。溶離したFab’分画を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(PBS、pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200(Pharmacia社製、ドイツ)カラムに加え、同じ緩衝液で溶離した。溶離したFab’分画をpolyCAT 21x250(PolyLC Inc.、米国)カラムに加え、10mMアセテート緩衝液(pH4.5)でNaCl線形濃度勾配法(0.15M→0.4M)下に溶離して純粋な抗−TNF−αFab’分画を得た。
【0062】
(段階2)IgG−PEG連結体の製造
免疫グロブリン(IgG、分子量150kDa、緑十字、韓国)150mgを100mM PBS(pH6.0)に5mg/mlの濃度で溶解し、これにNHS−PEG−MAL(分子量3,400ダルトン、Shearwater Inc.、米国)をIgG:PEGのモル比が1:10になるように加えた。反応混合物を4℃で12時間徐々に攪拌した。
反応終了後、反応緩衝液を20mM PBS(pH6.0)に取り替えて未反応のNHS−PEG−MALを除去した。その後、この反応混合物をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に充填し、20mM PBS(pH6.0)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)を用いて溶離してIgG−PEG連結体を得た。未反応のIgGがIgG−PEG連結体よりも遅く溶離され、除去された。
【0063】
(段階3)Fab’−S−PEG−N−IgG結合体(−SH基)の製造
段階1で得られた精製されたFab’を100mM PBS(pH7.3)に2mg/mlの濃度に溶解し、生成した溶液に段階2で製造されたIgG−PEG連結体をFab’:連結体のモル比が1:5になるように加えた。反応混合物をタンパク質濃度が50mg/mlになるように濃縮し、4℃で24時間徐々に攪拌した。
【0064】
カップリング反応終了後、得られた反応混合物を10mM PBS(pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200カラム(Pharmacia社製、米国)に加え、同じ緩衝液で1ml/分の流速で溶離してFab’−S−PEG−N−IgG結合体分画を得た。分子量が大きいFab’−S−PEG−N−IgG結合体が先に溶離され、未反応のIgG−PEG連結体およびFab’はその後で溶離、除去された。残っている未反応のIgG−PEG連結体を除去するために、Fab’−S−PEG−N−IgG結合体分画をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、20mM PBS(pH6.0)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)を用いて溶離した。結果として、IgG−PEG連結体がFab’のC−末端付近の−SH基に連結された純粋なFab’−S−PEG−N−IgG結合体を含む分画を得た。
【0065】
[実施例9]Fab’−N−PEG−N−IgG結合体の製造(N−末端)
(段階1)Fab’−PEG連結体(N−末端)の製造
前記実施例8の段階1で得られた精製されたFab’ 40mgを100mM PBS(pH6.0)に5mg/mlの濃度に溶解した後、生成した溶液にButyl ALD−PEG−ButylALD(分子量3,400Da、Shearwater Inc.、米国)をFab’:PEGのモル比が1:5になるように加えた。還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、反応混合物を4℃で2時間徐々に攪拌した。
反応終了後、反応緩衝液を20mM PBS(pH6.0)に取り替えた。緩衝液を取り替えた後、混合物をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に充填し、20mM PBS(pH4.5)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.4M)を用いて溶離してFab’−PEG連結体を含む分画を得た。未反応のFab’が連結体よりも遅く溶離され、除去された。
【0066】
(段階2)Fab’−N−PEG−N−IgG結合体の製造(N−末端)
段階1で得られた精製されたFab’−PEG連結体を100mM PBS(pH6.0)に10mg/mlの濃度で溶解した後、生成した溶液にIgG(分子量150kDa、緑十字、韓国)を連結体:IgGのモル比が1:5になるように加えた。反応混合物を最終タンパク質濃度が50mg/mlになるように濃縮した。還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、反応混合物を4℃で24時間徐々に攪拌した。
【0067】
カップリング反応終了後、反応液を10mM PBS(pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200カラム(Pharmacia社製)に加え、同じ緩衝液で1ml/分の流速で溶離してFab’−N−PEG−N−IgG結合体を含む分画を得た。Fab’−N−PEG−N−IgG結合体は分子量が大きいため先に溶離され、未反応のIgGおよびFab’−PEG連結体はその後で溶離、除去された。残っている未反応のIgGを除去するために、Fab’−N−PEG−N−IgG結合体分画をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、20mM PBS(pH6.0)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)を用いて溶離した。結果として、IgG−PEG連結体がFab’のN−末端に連結された純粋なFab’−N−PEG−N−IgG結合体を含む分画を得た。
【0068】
[実施例10]糖鎖除去されたIgG(AG IgG)の製造
IgG(緑十字、韓国)200mgを100mMリン酸塩緩衝液(pH7.5)に2mg/mlの濃度になるように溶解し、これに300U/mgの脱糖鎖化酵素PNGase F(NEB Inc.、イギリス)を加えた。反応混合物を37℃で24時間徐々に攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応混合物をSPセファロースFFカラム(ファルマシア、ドイツ)に加え、1M NaClを用いる線形濃度勾配法(0.1M→0.6M)を用いて10mMアセテート緩衝液(pH4.5)で溶離し、野生型IgGよりも遅く溶離した糖鎖除去されたIgGの分画を得た。
【0069】
[実施例11]IFNα−PEG−AG IgG結合体の製造
前記実施例3で製造されたIFNα−PEG連結体に前記実施例10で製造された糖鎖除去されたIgG(AG IgG)を結合することによって次のようにIFNα−PEG−AG IgG結合体を製造した。
AG IgG(分子量:約147kDa)を10mMリン酸塩緩衝液に溶解した。IFNα−PEG連結体をAG IgG−含有緩衝液にIFNα−PEG連結体:AG IgGのモル比が各々1:1、1:2、1:4および1:8になるように加えた。生成した混合物を100mMリン酸塩緩衝溶液の状態にし、還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた。反応混合物を4℃で20時間徐々に攪拌した。最良の結果を得るためのIFNα−PEG連結体:AG IgGの最適のモル比は1:2であることが確認された。
【0070】
結合反応後、汚染物からIFNα−PEG−AG IgG結合体を精製するために、反応混合物を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った。反応混合物をスーパーデックス(登録商標)(Pharmacia社製、ドイツ)カラムに加え、10mM PBS(pH7.3)を用いて流速2.5ml/分で溶離してIFNα−PEG−AG IgG結合体分画を得、未反応のAG IgGおよびIFNα−PEG連結体のような汚染物を除去した。このように得られたIFNα−PEG−AG IgG結合体の分画からさらに陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーを用いて少量の未反応のAG IgGおよびIFNα−PEG連結体を除去した。前記分画を10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で平衡化したPolyCAT LPカラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、1.0M NaClを含む10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液で線形濃度勾配法(塩化ナトリウム濃度0M→0.6M)を用いて溶離してIFNα−PEG−AG IgG結合体分画を得た。このように得られた分画を用いてさらに陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。該分画を10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝溶液で平衡化したPolyWAX LPカラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、1.0M塩化ナトリウムを含む10mM Tris−HCl緩衝溶液(pH7.5)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.3M)を用いて溶離して純粋なIFNα−PEG−AG IgG結合体を得た。
【0071】
[実施例12]EPO−PEG−AG IgG結合体の製造
前記実施例5で精製されたEPO−PEG連結体と、前記実施例10で製造された糖鎖が除去されたIgGを用いて実施例11と同様な方法でEPO−PEG−AG IgG結合体を得た。
【0072】
[比較例1]PEG−hGH連結体の製造
hGH5mgを100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解して溶液5mlを得、40kDa PEGを有する活性化されたメトキシ−PEG−ALD(Shearwater社製、米国)をhGH:PEGのモル比が1:4になるように前記溶液に加えた。これに還元剤であるNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、反応混合物を4℃で18時間徐々に攪拌した。これにエタノールアミンを最終濃度が50mMになるように加えて未反応のPEGを失活させた。
未反応のPEGを除去するために、得られた反応混合物をセファデックスG−25カラム(Pharmacia社製)クロマトグラフィーで処理した。まず、カラムを2カラム体積(column volume;CV)の10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化した後反応混合物を加えた。UV分光光度計を用いて260nmで溶離分画の吸光度を分析した。分子量がさらに大きいPEG−修飾されたhGHが先に溶離され、未反応のPEGが後で溶離された。
【0073】
前記溶離分画から次のようにPEG−修飾されたhGHをさらに精製した。PolyWAX LP(Polywax Inc.、米国)3mlで充填されたカラムを10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化した。PEG−修飾されたhGHを含有する溶離分画を1ml/分の流速でカラム上に加えた後、15mlの平衡緩衝液でカラムを洗浄した。1M NaCl含有緩衝液を用いた塩濃度勾配法(NaCl濃度:0%→100%)によって30分間溶離し、トリ−、ジ−、モノ−PEGが連結されたhGHの分画を順次得た。
前記混合物からモノ−PEG結合hGH連結体をさらに精製するために、カラム溶離物を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った。前記溶離液を濃縮して10mMリン酸ナトリウム緩衝液で平衡化したスーパーデックス200(Superdex 200、Pharmacia社製)に加え、同じ緩衝液で流速1ml/分で溶離した。トリ−、ジ−PEGが連結されたhGH連結体はモノ−PEGが連結されたhGH連結体よりも溶離時間が速いので、これを除去してモノ−PEGが連結されたhGH連結体のみを純粋分離した。
同様な方法でIFNαまたはG−CSFのアミノ末端に40kDa PEGが各々結合したPEG−IFN、PEG−17S−G−CSF誘導体およびPEG−G−CSF連結体を製造した。
【0074】
[比較例2]アルブミン−hGH連結体の製造
実施例1で得られたhGH−PEG連結体にアルブミンを結合させるために、hGH−PEG連結体を10mMリン酸塩緩衝液に溶解したヒトアルブミン(HAS、分子量約67kDa)(緑十字、韓国)とhGH−PEG連結体:アルブミンのモル比が各々1:1、1:2、1:4または1:8になるようにして反応させた。得られた反応混合物を100mMリン酸塩緩衝液の状態で濃縮し、これに還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた。反応混合物を4℃で20時間徐々に攪拌した。最良の結果を得るためのhGH−PEG連結体:アルブミンの最適のモル比は1:2であることが確認された。
【0075】
結合反応後、反応混合物からスーパーデックスサイズ排除クロマトグラフィーを行って未反応の出発物質および副産物を除去した。反応混合物を濃縮した後、カラムに加え、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を流速2.5ml/分で溶離して精製されたhGH−PEG−アルブミン結合体を得た。精製されたhGH−PEG−アルブミン結合体分画には不純物として少量の未反応のアルブミンおよびhGH二量体が混じっているので、これの除去のためにさらに陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーを行った。hGH−PEG−アルブミン結合体分画を10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液で平衡化したSP5PW(Waters、米国)カラムに加え、1M塩化ナトリウム(NaCl)を含む10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液を線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.5M)で流して分画を得ることによって純粋なhGH−PEG−アルブミン結合体を得た。
同様な方法でIFNα、G−CSFまたは17S−G−CSF誘導体に各々アルブミンが結合したIFNα−PEG−アルブミン、G−CSF−PEG−アルブミンおよび17S−G−CSF誘導体−PEG−アルブミン結合体を製造および精製した。
【0076】
[比較例3]Fab’−S−40K PEG連結体の製造
実施例8の段階1で得られた精製されたFab’を活性化緩衝液(20mM酢酸ナトリウム(pH4.0)、0.2mM DTT)に1時間放置して遊離−SH基を活性化させた。緩衝液をPEG修飾緩衝(50mMリン酸カリウム(pH6.5))に取り替えた。生成した溶液にマレイミド−PEG(分子量40kDa、Shearwater Inc.、米国)をFab’:PEGのモル比が1:10になるように添加した。この反応混合物を4℃で24時間徐々に攪拌した。
【0077】
反応終了後、得られた反応混合物を10mM PBS(pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200(Superdex 200、Pharmacia社製)カラムに加え、同じ緩衝液を1ml/分の流速で流してFab’−S−40kDa PEG連結体を含む分画を溶離した。未反応のFab’は前記連結体よりも遅く溶離、除去された。残っている未反応のFab’を除去するため、Fab’−S−40K PEG連結体分画をpolyCAT 21x250(PolyLC Inc.、米国)カラムに加えた後、20mM PBS(pH4.5)を線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)で流して溶離した。結果として、Fab’のC−末端に隣接する−SH基に40KDa PEGが連結された純粋なFab’−S−40K PEG連結体を得た。
【0078】
[試験例1]タンパク質結合体の確認および定量
(1)タンパク質結合体の確認
4〜20%の濃度勾配を有するゲルを用いるSDS−PAGEおよびELISA法(R & D system、米国)を用いて前記実施例で製造したタンパク質結合体の修飾状態を分析した。
hGH、hGH−PEG、IFNおよびIFN−PEGにDTT(Dithiothreitol)を各々50mMの量で添加した後、SDS−PAGEを行い、IgG、hGH−PEG−IgGおよびIFN−PEG−IgGはDTTなしで展開した。
【0079】
図2および図3は、各々hGH−PEG−IgGおよびIFN−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果を示す。左の余白の数字は分子量マーカー(kDa)である。
図2から分かるように、hGH−PEG−IgG結合体の見かけ分子量は約170kDaである。しかし、IgGタンパク質結合体と野生型IgGの分子量差異はSDS−PAGEで区別しにくいため、hGH−PEG−IgG結合体およびIgGを各々DTTで処理して還元させて軽鎖および重鎖に分離し、その結合状態をSDS−PAGEで各々確認した(図4)。
【0080】
IgGをDTTで処理すると、分子量によってIgGの軽鎖が先に分離され、IgGの重鎖が後で分離される。DTTで処理したhGH−PEG−IgG結合体のバンドは前記軽鎖および重鎖断片に各々hGH−PEG(3.4kDa)連結体の分子量を足すことによって計算された分子量に該当する位置に現れた。hGH−PEG−IgG結合体の軽鎖は約80KDaの位置にバンドが現れたhGH−PEG−IgG結合体の重鎖よりも低い位置(さらに小さい分子量)にバンドを形成した。前記結果からhGHは軽鎖と重鎖に同じ確率で結合し、IgGとhGHが1:1のモル比で結合したことが分かる。
【0081】
(2)タンパク質結合体の定量
前記実施例で製造した各タンパク質結合体の量はサイズ排除クロマトグラフィー(カラム:Superdex、溶離液:10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0))から観察された結合体のピーク面積をコントロールと比較して計算する方法で測定した。予め定量されたhGH、IFN、G−CSF、17S−G−CSF、EPOおよびIgGで各々サイズ排除クロマトグラフィーを行った後、ピーク面積の相対的感応(response)係数を測定した。各タンパク質結合体を一定量用いて同じ条件下でサイズ排除クロマトグラフィーを行い、ここから得られた各タンパク質結合体のピーク面積からIgGに該当するピーク面積を引いた値を各タンパク質結合体に存在する生理活性タンパク質の定量値とした。
【0082】
クロマトグラフィー法以外にELISA法(R&D system、米国)を並行して行った。IgGの一部がポリペプチドの生物学的活性部位に結合すると生物学的活性部位に特異的な抗体を用いたELISAによって得られる定量値はクロマトグラフィーによって計算される値よりも減少すると予測される。hGH−PEG−IgG結合体の場合にはELISAによって測定された値がクロマトグラフィーによって決定された値の約30%に過ぎないことが確認された。
【0083】
(3)タンパク質結合体の純度および質量確認
実施例3で得られたIFNα−PEG−IgG結合体の純度を分析するために、逆相カラム(259VHP54カラム、Vydac社、米国)を用いて逆相HPLCを行った。結合体を0.5%TFAの存在下でアセトニトリル溶媒で線形濃度勾配法法(アセトニトリル濃度:40%→100%)を用いて溶離し、280nmで検出した。図5から分かるように、結合体の純度は95%以上である。
各々の実施例で得られたタンパク質結合体に対してサイズ排除クロマトグラフィーを行った後、280nmで吸光度を分析した。hGH−PEG−IgG、IFN−PEG−IgG、G−CSFおよび17S−G−CSF−PEG−IgGは各々170,000〜180,000ダルトンの分子量に該当する単一ピークを示した。EPO−PEG−IgGのピークは分子量200,000ダルトンに該当する位置から観察された。
【0084】
各タンパク質結合体の正確な分子量を測定するために、精製された試料をMALDI−TOF(Voyager DE-STR、Applied Biosystems、USA)超高速質量分析器を用いて分析した。マトリックスとしてはシナピン酸(sinapinic acid)を用いた。各試料0.5μlをスライドガラスに塗布し、空気中で乾燥した。同じ容積のマトリックス溶液をスライドガラス上に滴下した後、スライドガラスを空気中で乾燥し、イオン源(ion source)に導入した。検出はポジティブ方式でリニアー−モードTOF装置によって行い、イオンは遅延されたイオン抽出器を用いる分割抽出供給源で、遅延された抽出時間は750nsec/1500nsecで、約2.5kVの全電位差を通じて加速化した。hGH−PEG−IgG結合体の質量分析結果を下記表1および図6に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
前記結果は、hGH−PEG−IgG結合体の純度が90%以上であり、測定された分子量が理論値とほとんど同じであることを示した。また、hGH−PEG−IgG結合体はIgGがhGH−PEG連結体に1:1のモル比で結合した形態であった。
また、前記MALDI−TOF法で測定された実施例10で製造したAG IgGの分子量は野生型IgGよりも3,000Daが少ない147kDaであった(図9)。減少した分子量3,000Daは糖鎖の理論的サイズに該当するので、IgGの糖鎖が完全に除去されたことを確認できた。
下記表2は前記実施例11〜12で製造したIFNα−PEG−AG IgGおよびEPO−PEG−AG IgG結合体の分子量を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
[試験例2]薬物動力学分析I
前記実施例および比較例で製造したIgG−タンパク質結合体、PEG−タンパク質連結体およびアルブミン−タンパク質結合体(試験群)の生体内安定性および薬物動力学係数を野生型生理活性タンパク質(対照群)と比較した。下記実験では、各群当り5匹のスプラーグ・ドーリー(SD)ラットを用いた。対照群、PEG−連結体、アルブミン−タンパク質結合体およびIgG−タンパク質結合体を各々100ug/kgずつラットに皮下注射した。対照群から注射後0.5、1、2、4、6、12、24、30、48、72および96時間後に血液試料を得、試験群からは注射後1、6、12、24、30、48、72、96、120、240および320時間後に血液試料を得た。血液試料をヘパリンでコーティングされたチューブに集めて凝固を防止し、高速マイクロ遠心分離器で4℃、3000xgで30分間遠心分離して細胞を除去した。血漿中のタンパク質濃度は各生理活性タンパク質に対する抗体を用いてELISA方法で測定した。
【0089】
野生型hGH、IFN、G−CSFおよびEPOとこれらのタンパク質連結体および結合体の薬物動力学値を下記表2〜表6に示し、ここでTmaxは最高薬物濃度に至る時間を、T1/2は薬物の血中半減期を、MRT(mean residence time)は薬物の平均的な体内滞留時間を意味する。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
前記表3および図7から分かるように、hGH−PEG−IgGタンパク質結合体の血中半減期は13.9時間であって、これは野生型hGHに比べて約13倍増加したものであり、比較例1で製造したhGH−40kDa PEG連結体(7.7時間)よりも約2倍増加したものである。PEGの一方の末端にアルブミンが結合したhGH−PEG−アルブミン結合体の半減期は5.9時間であった。このような結果から、本発明のタンパク質結合体は遥かに優れた血中持続性を示すことが確認できる。
【0096】
さらに、表4および図10において、IFNαに対する結果もhGHと同様な結果を示すが、本発明のタンパク質結合体が示す血中半減期の増加効果は遥かに大きかった。野生型IFNαの半減期は1.7時間であるが、40kDa PEG−IFNα連結体の半減期は35.8時間に増加し、IFNα−PEG−アルブミン結合体の半減期は17.1時間に増加した。これに対し、本発明のIFNα−PEG−IgG結合体の半減期は76.7時間と著しく増加した。また、IFNα−PEG−AG IgG結合体の半減期は59.7時間であって、IFNα−PEG−IgG結合体とほとんど等しかった。この結果から、糖鎖の不在が結合体の生体内安定性には影響を及ぼさないことが分かる。
【0097】
表5および6から分かるように、G−CSFおよびその誘導体の血中持続性も前記hGHおよびIFNのものと同様な傾向を示した。40kDa PEGが修飾されたタンパク質連結体およびアルブミン結合体の半減期は野生型G−CSFおよびその誘導体よりもさらに長かった。しかし、本発明のタンパク質結合体は遥かに長い半減期を示した。タンパク質の血中薬物持続性を増加させるIgGのこのような効果はアミノ酸が修飾された誘導体からもまた観察された。このような結果から、他のタンパク質に適用された本発明のタンパク質結合体はまた前述の好ましい効果を示すことが予想できる。
【0098】
表7および図8と図11から分かるように、糖鎖化された残基を有するEPOに対しても本発明のタンパク質結合体の血中半減期の増加効果が明らかである。すなわち、野生型EPOの血中半減期は9.4時間であり、血中安定性が高い高糖鎖化EPOであるDarbepoetin−α(Aranesp、Amgen、USA)の半減期は14.9時間であった。EPO−PEG−IgG結合体の場合は、血中半減期が67.5時間に著しく増加し、EPO−PEG−AG IgG結合体の血中半減期も47.8時間に増加した。
【0099】
前記結果から分かるように、生理活性タンパク質が非ペプチド性重合体および免疫グロブリンと共有結合した本発明のタンパク質結合体は、野生型タンパク質に比べて数十倍以上増加した血中半減期を有する。また、タンパク質結合体の血中半減期増加効果は糖鎖除去された免疫グロブリンを用いても同様な水準に保持された。
【0100】
特に、従来報告されたPEG剤形のうち血中持続性が最も高い、40kDa PEGによって修飾されたタンパク質結合体と比較すると、本発明のIgGタンパク質結合体は遥かに高い持続性を示す。また、IgGの代わりにアルブミンを結合させたタンパク質結合体に比べて、本発明のタンパク質結合体は著しく優れた持続性を示した。このような結果は、本発明のタンパク質結合体がタンパク質薬物の持続型製剤を製造するのに効果的に使用できることを意味する。本発明のタンパク質結合体が、点突然変異を有するG−CSF誘導体を含む幅広いタンパク質であるのに対し、従来報告されたPEG結合タンパク質またはアルブミンタンパク質結合体よりも遥かに優れた血中安定性とさらに長いMRTを示す本願の発見は、本発明のタンパク質結合体に対して確認された前記血中安定性および持続性増加効果が異なる生理活性ペプチドに対しても応用できることを強く暗示する。
【0101】
非ペプチド性重合体として10kDa PEGを用いて製造したhGH−PEG−IgG結合体(実施例7)の半減期を前記と同様な方法で測定したとき、半減期は9.5時間であり、分子量3.4kDaであるPEGを用いたhGH−PEG−IgG結合体(13.9時間)よりも多少短かった。スクシンイミジルプロピオネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジル基およびブチルアルデヒド基のような他の反応基を有するPEGを用いて製造された結合体の見かけ分子量と血中半減期はアルデヒド基を有するPEGを用いて製造されたものと同様であった。
【0102】
[試験例3]薬物動力学分析II
実施例8および9で各々製造したFab’−S−PEG−N−IgG、Fab’−N−PEG−N−IgG結合体(−SH基、N−末端)、および比較例3で製造したFab’−S−40K PEG連結体の血中半減期を測定するために、Fab’を対照群とし、前記結合体または連結体を用いて試験例2と同様な方法で薬物動力学分析を行った。その結果を図12に示す。
図12から分かるように、Fab’−S−PEG−N−IgG、Fab’−N−PEG−N−IgG結合体はFab’およびFab’−S−40K PEG連結体に比べて2〜3倍延長された血中半減期を示した。
【0103】
[試験例4]試験管内活性測定
(1)hGHタンパク質結合体の試験管内活性比較
hGH−PEG−IgG結合体(実施例1)、40kDa PEG−hGH連結体(比較例1)およびhGH−PEG−アルブミン結合体(比較例2)の試験管内活性をhGH依存性有糸分裂をする細胞であるラット結節リンパ腫(rat node lymphoma)細胞株Nb2(European Collection of Cell Cultures(ECACC) #97041101)を用いて次のように測定した。
【0104】
Nb2細胞をフィッシャー培地(Fisher's medium)に10%ウシ胎児血清(FBS)、0.075%NaCO3、0.05mM 2−メルカプトエタノールおよび2mMグルタミンを添加した培地で培養した。得られた細胞を10%ウシ胎児血清を除いた同じ培地で24時間さらに培養した。96ウェルプレートに2x104/ウェルの量の細胞を入れた後、hGH−PEG−IgG、40kDa PEG−hGHおよびhGH−PEG−アルブミン、および対照群である国際標準品(National Institute for Biological Standards and Control, NIBSC)を多様に各ウェルに添加した後、37℃、CO2培養器で48時間培養した。その後、細胞の成長程度(各wellの細胞数)を測定するために、25μlの細胞染色薬(cell titer 96 Aqueous One Solution(promega社製、米国))を各ウェルに入れた後、37℃で4時間さらに培養した。490nmで吸光度を測定して各試料の力価を計算し、計算された力価を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
表8から分かるように、試験に用いたすべての試料は試験管内活性を有した。また、PEGによって修飾されたhGHの試験管内活性は修飾されていないhGHに比べて低かった。インターフェロンの場合、IFNと12kDa PEGおよび40kDa PEGの連結体は各々野生型の約25%および7%程度の試験管内活性を有すると報告されている(P.Bailonら、Bioconjugate Chem.2001. 12:195〜202)。修飾されたPEGの分子量が増加するほどPEG連結体の試験管内活性は減少した。40kDaのPEGが修飾されたhGH連結体の試験管内活性は野生型hGHの約7.6%に過ぎず、hGH−PEG−アルブミン結合体もまた野生型対比約5.2%程度と低い試験管内活性を示した。しかし、IgGをhGH−PEG連結体に結合させた場合は、その相対活性は野生型の30%以上と著しく高くなった。このような結果は、本発明のタンパク質結合体が血中半減期の画期的な増加とともに高い生体内活性を有することを示す。本発明のIgGタンパク質結合体の場合、レセプターに対する結合親和性を保存する役割をするIgGとの結合によって高い血中安定性、および空間的余裕を提供する非ペプチド性重合体によってタンパク質の活性が増加したとみられる。このような効果は、他の生理活性タンパク質のIgGタンパク質結合体でも起こることと期待される。
【0107】
(2)IFNαタンパク質結合体の試験管内活性比較
IFNαタンパク質結合体の試験管内活性を比較するために、IFNα−PEG−IgG結合体(実施例3)、40kDa PEG−IFNα連結体(比較例1)およびIFNα−PEG−アルブミン結合体(比較例2)の抗ウイルス活性を水胞性口炎ウイルスで飽和させたマディン−ダービ(Madin-Darby)ウシ腎臓細胞(MDBK、Madin Darby Bovine Kidney、ATCC CCL−22)を用いる細胞培養生検法(cell cultrue biopsy method)で測定した。PEGで修飾されていないIFNα 2b(NIBSC IFN)を対照群として用いた。
【0108】
MDBK細胞を、MEM(minimum essential medium:JBI)に10%FBSおよび1%ペニシリン−ストレプトマイシンが添加された培地で37℃、5%CO2の条件で培養した。試料と標準物質(NIBSCインターフェロン)を同じ培地を用いて一定濃度に希釈して96ウェルプレートの各ウェルに100μlずつ入れた。前記で培養された細胞液を各ウェルに100μlずつ加えた後、37℃、5%CO2の条件で約1時間培養した。1時間後、ウイルス濃度が5〜7x103PFUであるVSV(Vesicular stomatitis virus)を50μlずつ各ウェルに加え、37℃、5%CO2の条件で約16〜20時間さらに培養した。試料または標準物質を入れずに細胞とウイルスのみを入れたウェルを陰性対照群とし、ウイルス希釈溶液を入れずに細胞のみを入れたウェルを陽性対照群として各々用いた。
【0109】
培養液を除去し、生きている細胞を染色するために、ニュートラルレッド(neutral red)溶液100μlずつを各ウェルに加えた後、37℃、5%CO2の条件下で2時間さらに培養した。吸出によって上澄液を除去した後、抽出溶液(100%エタノールと1%酢酸との1:1混合物100μl)を各ウェルに入れた。染色された細胞を振盪させながら抽出溶液に懸濁した後、540nmで吸光度を測定した。陰性対照群の細胞成長に比べての陽性対照群の細胞成長を100%とみなして最高細胞成長の50%を示すED50を計算した。
【0110】
【表9】
【0111】
表9から分かるように、PEGによって修飾されたIFNαの活性は修飾されていないIFNαに比べて低かった。特に、PEG部分の分子量が増加するほど血中安定性は増加するが、相対活性は次第に減少した。40kDaのPEGが修飾されたIFNα連結体は野生型活性の約4.8%に該当する非常に低い活性を示した。前述のように、12kDa PEGおよび40kDa PEGによって修飾されたIFNαは各々野生型の約25%および7%程度の試験管内活性を示すと報告されている(P.Bailonら、Bioconjugate Chem. 2001. 12: 195〜202)。すなわち、PEGの分子量が増加すれば血中半減期は長くなるが、その薬効が急激に減少するので、増加した薬剤学的活性および延長された半減期を有する物質の開発が要求されてきた。IFNα−PEG−アルブミン結合体もまた野生型対比約5.2%程度であって、低い試験管内活性を示した。しかし、IFNαをIgGで修飾した場合(IFNα−PEG−IgG結合体)、相対活性は野生型の11.2%に増加した。また、IFNα−PEG−AG IgG結合体は野生型の10.2%に該当する試験管内活性を示すので、糖鎖の不在がタンパク質結合体の活性には別の影響を及ぼさないことを確認できた。
このような結果は、本発明のIgGタンパク質結合体が延長された半減期とともに高い生体内活性を示すことを示す。
【0112】
(3)G−CSFタンパク質結合体の試験管内活性比較
野生型G−CSF(Filgrastim)、17Ser−G−CSF誘導体、20kDa PEG−G−CSF連結体(Neulasta, USA)、40kDa PEG−17S−G−CSF誘導体連結体(比較例1)、17Ser−G−CSF誘導体−PEG−アルブミン結合体(比較例2)および17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体(実施例4)の試験管内活性を測定した。
【0113】
まず、ヒト骨髄起源の細胞株であるHL−60(ATCC CCL−240、Promyelocytic leukemia patient/36 yr old Caucasian female)を10%のFBSを含むRPMI1640培地で培養し、細胞の数を約2.2×105細胞/mlになるように調整した。DMSO(dimethylsulfoxide、culture grade/SIGMA)を1.25%(v/v)になるように細胞に添加した。約2×104個の懸濁した細胞を含むDMSO90μlで処理した培養液を96ウェルプレート(Corning/low evaporation 96 well plate)の各ウェルに入れ、37℃、5%CO2培養器で72時間培養した。
【0114】
G−CSF ELISAキット(R & D systems、米国)を用いて各試料の濃度を決定し、各試料を10μg/mlになるようにRPMI1640で適宜希釈した。生成した溶液をRPMI1640で1/2ずつ連続希釈する過程を19回繰り返した。
このようにして製造された試料10μlずつを培養中のHL−60細胞が入っている各ウェルに加え、最終濃度を1000ng/mlから連続的に半減させた。タンパク質試料で処理された細胞を37℃培養器で72時間さらに培養した。
培養後、細胞の成長程度を調査するために、CellTiter96(商標)(PROMEGA社、米国)を用いて670nmで吸光度を測定することによって細胞数を決定した。
【0115】
【表10】
【0116】
表10から分かるように、アミノ酸を変形させた17Ser−G−CSF誘導体のIgGタンパク質結合体も野生型のタンパク質結合体と同様な効果を示した。PEGで修飾された17Ser−G−CSF誘導体は修飾されていないものに比べて血中半減期は増加するが、活性は低下することが既に確認されている(韓国特許出願第2003−17867号)。特に、PEG部分の分子量が増加するほどPEGによって修飾された17Ser−G−CSF誘導体の血中安定性は増加したが、その相対活性は次第に減少した。40kDaのPEGで修飾された17Ser−G−CSF誘導体連結体は、野生型の約10%に該当する非常に低い試験管内活性を示した。すなわち、PEGの分子量が増加するほど血中半減期は増加するが、その薬効は急激に減少するので、改善された薬剤学的活性および延長された半減期を有する物質の開発が要求されてきた。一方、アルブミンで修飾された17Ser−G−CSF誘導体は野生型の約23%に該当する相対的に低い試験管内活性を示した。しかし、17Ser−G−CSF誘導体をIgGで修飾した場合(17Ser−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体)、その相対活性は野生型の69%以上の水準に増加した。このような結果は、本発明のIgGタンパク質結合体が延長された半減期とともに高い生体内活性を有することを示す。
【0117】
(4)EPOタンパク質結合体の試験管内活性比較
野生型EPO(BRP、UK)、高糖鎖化EPO(Aranesp、USA)およびEPO−PEG−IgG結合体の試験管内活性を測定した。
まず、ヒト骨髄起源の細胞株であるTF−1細胞(ATCC CRL-2003、erythroleukemia)を10%のFBS、12ng/mlのGM−CSFを含むRPMI1640培地で培養した後、GM−CSFを除去した同じRPMI1640培地で1日間培養した。約2×104個の細胞を有する培養液50μlずつを96−ウェルプレート(Corning/low evaporation 96 well plate)の各ウェルに加え、37℃、5%CO2培養器で72時間培養した。
【0118】
EPO ELISAキット(R & D systems、米国)を用いて各試料の濃度を測定し、各試料をRPMI1640で最終濃度が10μg/mlになるように適宜希釈した。生成した溶液をRPMI1640で1/2ずつ連続希釈する過程を19回繰り返した。
このように製造された試料を培養中のTF−1細胞が入っている各ウェルに50μlずつ加え、最終濃度を5μg/mlから連続的に半減させた。タンパク質試料で処理されたプレートを37℃、5%CO2培養器で72時間さらに培養した。
培養後、細胞の成長程度を調査するために、CellTiter96(商標)AQueous One(Cat. No. G3581、PROMEGA社製、米国)を用いて490nmで吸光度を測定することによって細胞数を決定した。
【0119】
【表11】
【0120】
表11から分かるように、試験に用いたすべての試料はヒト骨髄起源の細胞株の成長を促進させることによって立証されたように試験管内活性を有する。また、高糖鎖化されたEPOとPEG−IgG連結体によって修飾されたEPOの試験管内活性は修飾されていないEPOよりも低かった。しかし、本発明のEPOタンパク質結合体の場合、著しく増加した血中半減期のため、修飾されていないEPOに比べて優れた生体内活性を有すると期待される。本発明のEPOタンパク質結合体の場合、レセプターに対する結合力を保存する役割をするIgGとの結合による増加した血中安定性および空間的余裕を提供する非ペプチド性重合体によってタンパク質の活性が増加したものとみられる。
【0121】
(5)Fab’タンパク質結合体の細胞毒性中和
実施例8および9で製造したFab’−S−PEG−N−IgGおよびFab’−N−PEG−N−IgG結合体、および比較例3で製造したFab’−S−40K PEG連結体がマウス繊維芽細胞株L929(ATCC CRL−2148)に対するTNF−αの細胞毒性を中和させる能力を測定することによって、これらの試験管内活性を調査した。
【0122】
各々のFab’結合体および連結体を2倍ずつ順次希釈し、希釈液各100μlずつを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。rhTNF−α(R & D systems)と、RNA合成の阻害剤であるアクチノマイシン−D(Sigma)を各々10ng/mlおよび1ug/mlの濃度になるように各ウェルに加えた。この反応混合物を37℃、5%CO2の条件で30分間反応させた後、分析用マイクロプレートに移した。L929細胞株培養液50ulずつを5x104細胞/ウェルになるように各ウェルに加えて37℃、5%CO2培養器で24時間培養した。ウェルの培養液を除去した後、PBSに5mg/mlの濃度で溶けているMTT(sigma)を50μlずつ各ウェルに入れた後、細胞を37℃、5%CO2培養器で4時間培養した。DMSO 150μlを各ウェルに加えて溶解した。540nmで吸光度を測定して試験Fab’結合体および連結体によるrhTNF−αの細胞毒性の中和程度を決定した。対照群としては実施例8の段階1で得られた精製されたFab’を用いた。
【0123】
図13の結果から分かるように、すべてのタンパク質結合体および連結体はFab’と同様な吸光度を示した。このような結果は、IgGがFab’のN−末端またはC−末端近くの遊離システイン残基にPEGスペーサーを通じて結合したFab’−PEG−IgG結合体がFab’の生物学的活性を保持することを示す。
【0124】
[試験例5]動物モデルにおける生体内活性測定
(1)hGHタンパク質結合体の生体内活性比較
各実験群当り10匹ずつの脳下垂体が除去された雄スプラーグ・ドーリーラット(5週齢、SLC社製、日本)を用いて体重増加試験を行ってhGH−PEG−IgG結合体、hGH−40K PEG連結体および野生型hGHの生体内活性を測定した。溶媒対照群、野生型hGH、hGH−PEG−IgG結合体、およびhGH−40K PEG連結体を、下記表12のような投与スケジュールおよび容量に従って、ラットの肩背部の皮下に26G注射器(1ml、(株)韓国ワクチン)で各々投与した。投与前および投与16時間後ラットの体重を測定した。最終投与から24時間後、ラットをエーテル麻酔で致死させ、肉眼で脳下垂体の残存有無を検査して、脳下垂体の残存物が観察された個体は結果から除外した。
【0125】
【表12】
【0126】
各試料の投与後の体重変化を図14に示す。標準品(対照群)として用いられた野生型hGHは生体内活性を保持するために毎日投与しなければならないので、毎日1回ずつ12日間投与したので、グループ2のラットは投与期間を通じて体重増加が観察された。hGH−40kDa PEG連結体を6日に1回投与したグループ3のラットは、投与後3日まで持続的に体重が増加し、3日以降は体重増加率が鈍化した。このような結果は、hGH−40kDa PEG連結体が野生型hGHに比べて遥かに長い半減期および高い試験管内活性を示した試験例1および2の結果からの予想と一致する。特に、hGH−PEG−IgG結合体を野生型投与容量の1/3容量で6日に1回投与することによって得られる効果は野生型を毎日投与したものと等しいか、より良好であった。これは、hGH−PEG−IgG結合体の生体内活性が野生型よりも3倍以上高いことを意味する。
【0127】
(2)G−CSF誘導体タンパク質結合体の生体内活性比較
17番目のアミノ酸がセリンで置換された17Ser−G−CSFを用いて本発明のタンパク質結合体の効果を調査するために、野生型G−CSF、市販中の20kDa PEG−G−CSF連結体および17Ser−G−CSF−PEG−IgG結合体の生体内活性を比較した。本発明の17Ser−G−CSF−PEG−IgG結合体は溶媒(20mMリン酸ナトリウム、1%グリシン、0.25%マンニトール、pH7.0)に溶解した。比較群としては、野生型メチオニルG−CSF連結体(Filgrastim、Amgen、USA)および20kDaのPEGで修飾されたG−CSF(Neulasta、Amgen、USA)を前記と同じ溶媒に希釈して使用した。7週齢の雌ICRマウスをセムタコBio(韓国)から購入して一週間の順化期間を経た後試験に用いた。試験開始時、ICRマウスの体重は30〜35gであった。順化期間および試験期間中には実験動物用飼料(三養社、韓国)および水を自由に摂取させ、温度22±3℃、相対湿度55±5%、換気回数10〜12回/時間、照度150〜200ルクス(lux)および12時間明/12時間暗の明暗周期の条件下で檻に閉じ込めた。各実験群は5匹のマウスからなり、複合抗癌剤と各試料を下記表13のような投与スケジュールおよび容量でマウスに投与した。好中球減少症(Neutropenia)動物モデルはシクロヘキサミド(CPA;Sigma、米国)130mg/kg、ドキソルビシン(DXR;Sigma、米国)4.5mg/kgおよびビンクリスチン(VCR;Sigma、米国)1mg/kgの混合物をICRマウスの腹腔内に単回投与して製造した。無処置群は抗癌剤を投与せず、好中球数の減少を示さない。溶媒対照群は抗癌剤を投与して好中球の数を低め、薬物の代わりに賦形剤のみを投与した群である。抗癌剤投与後1日目から5日目まで午前10時頃に野生型G−CSFを100μg/kg/日の容量で皮下注射した。17Ser−G−CSF−PEG−IgG結合体と20kDa PEG−G−CSF連結体(Neulasta、Amgen、USA)は抗癌剤投与後1日目に1回のみ投与したが、投与容量は1000μg/kg/日であって、野生型1日投与容量の2倍量で(200μg/kg/日)5日分を一回に投与した。抗癌剤投与後1、2、3、4、5、6および8日目に0.3〜0.5mlの血液をマウスの眼窩静脈層から採血した。採血時間は薬物投与6時間後である午後4時頃であった。自動血球測定器で白血球(WBC)、赤血球(RBC)および血小板(Platelet)の数を測定した。また、血液塗抹標本を製作してギムザ(Giemsa)染色を行った。各血球を分別計数して得られた好中球(neutrophil)の比率を得、これに基づいて下記式1によって好中球の数を算出した。
【0128】
<式1>
好中球の数(細胞/mm3)=総WBCの数(細胞/mm3)×好中球比率(%)×1/100
無処置群、溶媒対照群、および17Ser−G−CSF誘導体−PEG−IgG群から得られた値の統計的有意義性を検証するために、各群の血球数および体重に対してStudent’s t-testを用いて統計的分析を行った。
【0129】
【表13】
【0130】
各試料の投与後の好中球回復効果を図15に示す。標準品として用いた野生型G−CSFを5日間毎日投与したとき、投与期間中好中球の数が徐々に増加して5日目に最高値に達した。20kDa PEG−G−CSFを1日投与容量の2倍容量で1回投与すると野生型G−CSFを毎日投与したときに観察されたものの2/3程度の生体内効力を示した反面、17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体は20kDa PEG−G−CSF連結体の生体内活性に比べて3倍以上高い活性を示した。また、本発明のタンパク質結合体はG−CSFを毎日投与した場合よりも2倍以上高い好中球回復効果を示したが、このような結果は、17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体が野生型に比べて遥かに長い血中半減期と高い生体内活性を有するという結果と一致する。前記結果から、野生型タンパク質を用いた場合と同様に、アミノ酸を変形させた誘導体タンパク質からもIgGおよびPEGの共有結合による本発明のタンパク質結合体の効果を同様に示すことが分かる。したがって、本発明のタンパク質結合体は、頻繁な投与が要求される野生型G−CSFの短所を克服しながらG−CSFの血中半減期および生体内活性を著しく増加させる目的を同時に満たす持続型剤形として効果的に利用できる。
【0131】
(3)EPOタンパク質結合体の生体内活性比較
野生型EPO、高糖鎖化EPO(Aranesp、USA)、およびEPO−PEG−IgG結合体の生体内活性を比較するために、前記試験試料を投与したラットにおける血液成分の変化を調査した。本実験は、文献〔J.C. Egrie and Browne, British Journal of Cancer (2001) B4 (Supplement 1), 3-10〕に記述された方法を若干変形して次のように行った。
【0132】
本発明のEPO−PEG−IgG結合体を溶媒(20mMリン酸ナトリウム、1%グリシン、0.25%マンニトール、pH7.0)に溶解した。比較群としては、野生型EPOおよび高糖鎖化EPOを前記と同じ溶媒に希釈して用いた。7週齢の雌ラットを大韓バイオリンク(株)(韓国)から購入して一週間の順化期間を経た後試験に用いた。試験開始時のラットの体重は200〜250gであった。順化期間および試験期間中には実験動物用飼料(第一製糖(株)、韓国)および水を自由に摂取させ、温度22±3℃、相対湿度55±5%、換気回数10〜12回/時間、照度150〜200ルクス(lux)および12時間明/12時間暗の明暗周期の条件下で檻に閉じ込めた。各実験群は5匹のラットからなり、前記のように準備された各試験試料を下記表14のような投与容量およびスケジュールに従ってラットの肩背部の皮下に26G注射器(1ml、(株)韓国ワクチン)で投与した。
【0133】
投与後、3日に一回ずつ一ヶ月間尻尾の静脈から血液凝固防止剤(EDTA)を含むチューブに全血試料を採取した。血球自動測定装備(Vet ABC)を用いて血液試料のヘマトクリット(hematocrit)を測定した。
【0134】
【表14】
【0135】
各試料の投与後のヘマトクリット回復効果を図16に示す。標準品として用いた野生型EPOを5日間毎日投与したとき、投与期間中ヘマトクリットの数値が徐々に増加して9日目に最高値に達した。高糖鎖化EPOを投与したグループ3のラットでは、ヘマトクリット数値が注射後6日間は速く増加したが、以降は急速に減少した。これに対し、本発明のEPO−PEG−IgG結合体は、ヘマトクリット数値の初期増加速度が高糖鎖化EPOよりも速く、増加幅もさらに大きく、他の試験タンパク質に比べて高い生体内活性を2週間以上保持した。このような結果は、EPO−PEG−IgG結合体が野生型EPOまたは高糖鎖化EPOに比べて遥かに長い血中半減期を示す試験例2の結果から期待されるものと一致する。したがって、本発明のタンパク質結合体は、過度に頻繁な投与が要求される野生型EPOの短所を克服するとともに、EPOの血中半減期および生体内活性を著しく増加させる目的を同時に満たす持続型剤形として効果的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】hGH−PEG−IgG結合体のクロマトグラムである。
【図2】hGH−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果である。
【図3】インターフェロン−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果である。
【図4】DDT処理前と後のhGH−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果である。
【図5】IFNα−PEG−IgG結合体の逆相HPLCクロマトグラムである。
【図6】hGH−PEG−IgG結合体の質量スペクトルである。
【図7】hGH−PEG−IgG結合体がPEG−hGH連結体に比べて優れた血中安定性を有することを示す薬物動力学グラフである。
【図8】エリトロポイエチン−PEG−IgG結合体が自由エリトロポイエチンまたは高糖鎖化によって安定化されたエリトロポイエチンに比べて向上した血中半減期を有することを示す薬物動力学グラフである。
【図9】非糖鎖化IgG(AG IgG)の分子量スペクトルである。
【図10】IFNα−PEG−AG IgG結合体が野生型IFNαに比べて向上した血中安定性を有し、糖鎖がないにもかかわらず活性を保持することを示す薬物動力学グラフである。
【図11】EPO−PEG−AG IgG結合体が野生型EPOに比べて向上した血中安定性を有し、糖鎖がないにもかかわらず活性を保持することを示す薬物動力学グラフである。
【図12】Fab’−S−PEG−N−IgG結合体およびFab’−N−PEG−N−IgG結合体が野生型Fab’およびFab’−S−40K PEG連結体に比べて向上した血中半減期を有することを示す薬物動力学グラフである。
【図13】Fab’、Fab’−S−40K PEG連結体、Fab’−S−PEG−N−IgG結合体およびFab’−N−PEG−N−IgG結合体の生体内活性を示すグラフである。
【図14】ビヒクル(30μg/日;グループ1)、野生型hGH(30μg/日;グループ2)、hGH−PEG(30μg/日;グループ3)、hGH−PEG−IgG結合体(30μg/日;グループ4)、およびhGH−PEG−IgG結合体(10μg/日;グループ5)の投与後、ラット体重の経時変化に基づくhGH−PEG−IgG結合体の生体内活性を示す。
【図15】好中球(Neutrophil)数の経時変化に基づくG−CSF−PEG−IgG結合体の生体内活性を示す:非処理(グループ1)、ビヒクルのみを注射(グループ2)、野生型G−CSF処理(グループ3)、20kDa PEG−G−CSF処理(グループ4)、および17S−G−CSF−PEG−IgG結合体処理(グループ5)。
【図16】ヘマトクリット(Hematocrit)数の経時変化に基づくEPO−PEG−IgG結合体の生体内活性を示す:溶媒のみを注射(グループ1)、野生型EPO処理(グループ2)、高糖鎖化EPO処理(グループ3)、およびEPO−PEG−IgG結合体処理(グループ4)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内半減期が延長された活性持続型タンパク質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチドは変性しやすいか、血液、肝または腎臓において酵素によって分解しやすい。このようなポリペプチドの低い安定性のため、活性成分の有効血中濃度を保持するためにはポリペプチド薬物を患者に持続的な頻度で投与する必要がある。さらに、ポリペプチド薬物は通常注射によって投与されるので、ポリペプチド薬物の頻繁な注射は患者に相当な不便をかけることになる。したがって、高い薬理学的効果を保持しながらも血中半減期が増加されたポリペプチド薬物を開発するために多くの研究が行われてきた。前記好ましいポリペプチド薬物はまた向上した血中安定性、高い活性、様々なポリペプチドへの適用可能性の要件を満たし、また、患者への投与時、好ましくない免疫反応を誘発してはならない。
【0003】
タンパク質の安定性を改善するために最も広く用いられる方法の一つは、ポリペプチドのプロテアーゼとの接触を防止するポリエチレングリコール(polyethylene glycol; PEG)のような溶解度の高い高分子でポリペプチドを化学的に変形させるものである。PEGはポリペプチド薬物に特異的にまたは非特異的に結合してポリペプチド薬物の溶解度を増加させ、またその加水分解を防止することによって、ポリペプチド薬物の血中安定性を増加させ、低い抗原性のため如何なる免疫反応も起こさないと知られている(Sadaら、J. Fermentation Bioengineering, 1991, 71: 137-139)。しかし、このようにPEGが結合したタンパク質は、PEGの分子量が増加するほど活性成分の活性および生産収率が減少するという短所がある。二つの活性化されたPEGと結合したインターフェロンだけでなく、異なる活性を有する2種のポリペプチドがPEGスペーサーで連結された結合体が米国特許第5,738,846号および国際特許公開WO92/16221に各々開示されているが、これらは生体内で生理学的活性ポリペプチドの活性延長という点においては顕著な効果を示さない。
【0004】
また、組合せヒト顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)をヘテロ−二官能性PEGを通じてアルブミンに共有結合させることによってG−CSFの血中半減期を増加させ得ると報告されている(Kinstler et al., Pharmaceutical Research, 1995, 12(12): 1883-1888)。しかし、修飾されたG−CSF−PEG−アルブミンの安定性は、G−CSF自体に比べてただ4倍に過ぎないため、これまで実用化されていない。
【0005】
生理活性ポリペプチドの生体内安定性を向上させるための他の方法として、安定したタンパク質と融合した活性ポリペプチドを組合せ技術によって形質転換体で生産する。たとえば、アルブミンは、それに融合したポリペプチドの安定性を向上させるのに最も効果的なタンパク質の一つであると知られており、そのような融合タンパク質は多く報告されている(国際特許公開WO93/15199およびWO93/15200、およびヨーロッパ特許公開第413,622号)。しかし、アルブミンと結合した融合タンパク質は活性減少という問題を依然として有している。
【0006】
米国特許第5,045,312号は、成長ホルモンの活性を向上させるために、カルボジイミド(carbodiimide)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、酸クロリドなどのような架橋結合剤を用いて成長ホルモンをウシ血清アルブミン(bovine serum albumin; BSA)またはマウスの免疫グロブリンに結合させる方法を開示している。しかし、この方法は、ただ標的成長ホルモンの活性を向上させることのみを目的とする。また、架橋結合剤としてカルボジイミド、グルタルアルデヒド、酸クロリドなどのような化学物質を用いることは強い毒性および反応の非特異性のため不利である。
【0007】
免疫グロブリンは、抗体−依存性細胞毒性(Antibody-dependent cell cytotoxicity, ADCC)または補体−依存性細胞毒性(Complement dependent cytotoxicity, CDC)を示す抗体として作用でき、糖鎖はADCCおよびCDCの発揮に重要な役割を果すと報告されている(Burton D., Molec. Immun. 22, 161-206, 1985)。糖鎖がなくても非糖鎖化免疫グロブリンは糖鎖化したものと同様な血中半減期を有するが、補体またはレセプターに対する結合力は糖鎖除去により10倍〜1000倍減少する(Waldmann H., Eur. J. Immunol. 23, 403-411, 1993, Morrison S., J. Immunol. 143, 2595-2601, 1989)。
【0008】
生理活性ポリペプチドを種々の高分子と結合させるための多くの試みが行われてきたが、これらはいずれも安定性と活性を同時に増加させることはできなかった。
活性ポリペプチドの安定性を向上させるとともに、生体内活性を保持するための改善された方法として、本発明は、生理活性ポリペプチド、非−ペプチド重合体および免疫グロブリンが共有結合で互いに連結されたタンパク質結合体を提供する。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,738,846号公報
【特許文献2】国際特許公開WO92/16221号公報
【特許文献3】国際特許公開WO93/15199号公報
【特許文献4】国際特許公開WO93/15200号公報
【特許文献5】ヨーロッパ特許公開第413,622号公報
【特許文献6】米国特許第5,045,312号公報
【非特許文献1】Sadaら著、J. Fermentation Bioengineering, 1991年発行、71: 137-139頁
【非特許文献2】Kinstlerら著、Pharmaceutical Research, 1995年発行、12(12): 1883-1888頁
【非特許文献3】Burton D. 著、Molec. Immun. 22, 161-206頁、1985年発行
【非特許文献4】Waldmann H.著、Eur. J. Immunol. 23, 403-411頁、1993年発行
【非特許文献5】Morrison S. 著、J. Immunol. 143, 2595-2601頁、1989年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の主な目的は、生理活性ポリペプチドの活性減少を最小化しながらも、生体内半減期を延長させ、免疫反応を誘発しないタンパク質結合体を提供することである。
本発明の他の目的は、生理活性ポリペプチド、生体親和性非ペプチド性重合体および免疫グロブリンが共有結合で互いに連結されたタンパク質結合体の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、生体内半減期が延長された前記生理活性ポリペプチドを含む医薬組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、生理活性ポリペプチドの活性を減少させることなく、その生体内安定性を向上させ、血中半減期を増加させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施態様に従って、本発明では、共有結合で互いに連結されたi)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含み、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体が提供される。
【0013】
また、本発明の他の実施態様に従って、本発明では、(a)少なくとも一つの生理活性ポリペプチド、および少なくとも一つの免疫グロブリンを両末端に反応基を有する少なくとも一つの非ペプチド性重合体と共有結合で連結する段階;および
(b)共有結合で互いに連結された生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体を必須的に含むタンパク質結合体を分離する段階を含む、請求項1記載のタンパク質結合体の製造方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の実施態様に従って、本発明では、タンパク質結合体および薬剤学的に許容可能な担体を含む、半減期が長くなった生理活性ポリペプチドの医薬組成物が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の実施態様に従って、本発明では、両末端に反応基を有する非ペプチド性重合体を生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと共有結合で連結することを含む、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を延長させる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書に用いられる用語「生理活性ポリペプチド」とは、ヒトを含む哺乳動物に投与された場合、有用な生物学的活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をいい、「生理活性タンパク質」、「活性タンパク質」、「活性ポリペプチド」または「ペプチド薬物」という用語と相互交換的に使用され得る。
【0017】
本明細書に用いられる用語「タンパク質結合体」または「結合体」とは、本発明によって共有結合で互いに連結されている、生理活性ポリペプチド、非ペプチド性重合体および免疫グロブリンを含む化合物をいう。
前記「結合体」という用語と区別される用語「連結体」は、生理活性ポリペプチド、非ペプチド性重合体および免疫グロブリンから選ばれた2種類の構成要素のみを含む化合物を意味する。
【0018】
用語「非ペプチド性重合体」は、少なくとも二つ以上のモノマーを含み、このモノマーがペプチド結合ではなく、任意の共有結合を通じて連結された生体適合性重合体をいう。
本発明の一実施態様に従って、共有結合で互いに連結された、i)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含み、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体が提供される。
【0019】
たとえば、本発明のタンパク質結合体は、[活性ポリペプチド/非ペプチド性重合体/免疫グロブリン]によって表わされる単位構造を少なくとも一つ含み得、ここですべての構成要素は共有結合によって線状で連結されている。非ペプチド性重合体は両末端に各々反応基を有し得るので、これを通じて生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと各々共有結合で連結される。好ましい具現例では、少なくとも二つの生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体からなる連結体が一つの免疫グロブリンに共有結合で連結され得る。
【0020】
生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンのモル比は1:1〜10:1、好ましくは1:1〜4:1の範囲であり得る。
1種類の重合体だけではなく、異なる種類の重合体の組合せが非ペプチド性重合体として使用され得る。
【0021】
本発明のタンパク質結合体において、免疫グロブリンの適当な結合部位としては免疫グロブリンの可変領域または不変領域にあるアミノ酸残基の遊離官能基を含み得る。非ペプチド性重合体または活性ポリペプチドと共有結合するのに適当な免疫グロブリンの部位は可変領域のアミノ末端、リジン残基またはヒスチジン残基のアミノ基、およびシステインの遊離−SH基を含み得、非ペプチド性重合体の適当な部位は末端反応基である。
【0022】
免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組合せおよびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のようなIgGのすべてのサブタイプからなる群から選ばれ得る。患者において免疫反応を誘発しないように、前記免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンであることが好ましい。
【0023】
本発明のタンパク質結合体を構成する構成要素として、免疫グロブリンは血液から単離した天然型免疫グロブリンであるか、遺伝工学的に産生された組合せ免疫グロブリンであり得る。機能、構造および安定性において野生型と実質的に等しい限り、様々な部位でアミノ酸残基の置換、欠失または付加によって修飾された任意の免疫グロブリンだけではなく、高糖鎖化、低糖鎖化および糖鎖が除去された誘導体も本発明に使用され得る。免疫グロブリンの糖鎖の増減または除去は、化学的方法、酵素学的方法および遺伝工学的方法のような通常の方法のいずれかを用いて行い得る。IgGの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322、327〜331番アミノ酸残基が修飾のための適当な部位として使用され得る。
【0024】
適当な非ペプチド性重合体は、アルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、マレイミドおよびスクシンイミド誘導体からなる群から選ばれる反応基を有する。スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルカルボキシメチル、ヒドロキシスクシンイミジル、およびスクシンイミジルカーボネートからなる群から選ばれ得る。両末端にアルデヒド基を有する非ペプチド性重合体は、非特異的カップリング反応を最小化して非ペプチド性重合体の両末端で生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと各々結合するのに効果的である。アルデヒド基の還元に基づくアルキル化によって生成したタンパク質結合体はアミド結合を通じて連結されたものよりも遥かに安定である。
【0025】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は同一でも異なっていてもよい。たとえば、非ペプチド性重合体は一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはマレイミド基、アルデヒド基、またはプロピオンアルデヒド基を有し得る。ポリ(エチレングリコール)が非ペプチド性重合体として用いられる場合、本発明のタンパク質結合体の製造に市販の製品を用いるか、カップリング反応前に市販のPEGの末端ヒドロキシ基を他の反応基にさらに転換させて用いられ得る。
【0026】
前記非ペプチド性重合体は、前記免疫グロブリンのアミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基と前記生理活性ポリペプチドの反応基のいずれかを共有結合で連結するスペーサーの役割をする。
【0027】
非ペプチド性重合体はポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ(乳酸−グリコール酸)、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸およびこれらの組合せからなる群から選ばれ得る。当該分野に周知のこれらの誘導体もまた同じ目的で使用され得る。より好ましい非ペプチド性重合体はポリ(エチレングリコール)である。非ペプチド性重合体の分子量は500〜100,000、好ましくは500〜20,000の範囲である。
【0028】
二つのポリペプチドを遺伝子クローニングによって結合させるための、オリゴペプチドのような従来報告されている架橋結合剤は、好ましくない免疫反応の可能性を増加させ、結合部位をポリペプチドのN−末端またはC−末端のみに制限させる。したがって、非ペプチド性重合体の使用は、オリゴペプチドと比較する場合、毒性や免疫原性の減少という長所がある。他の長所は、結合部位の多様性による適用可能性の増加である。
【0029】
架橋結合剤として用いられる場合、カルボジイミドおよびグルタルアルデヒドのような低分子架橋剤はこれを通じて結合されたタンパク質を変性、または結合の制御および生成物の精製の困難をもたらすことがある。これに対し、非ペプチド性重合体を含む本発明のタンパク質結合体は、結合の調節および生成した結合体の精製が容易であり、非特異的カップリング反応を最小化できるというメリットがある。
【0030】
本発明のタンパク質結合体は、ポリペプチド−PEG連結体またはポリペプチド−PEG−アルブミン結合体よりも遥かに優れた生体内半減期および活性を示す。薬物動力学分析(pharmacokinetic analysis)によれば、本発明のhGH−PEG−IgG結合体の半減期は野生型hGHに比べて約13倍さらに長い反面、hGH−PEG連結体およびhGH−PEG−アルブミン結合体は各々野生型タンパク質に比べて約7倍および約5倍さらに長い半減期を示す(試験例2、表3参照)。hGHの代わりにG−CSFおよび17S−G−CSF、インターフェロンまたはEPOを用いた試験においても同様な結果が得られた。PEGのみでまたはPEG−アルブミン連結体で修飾された結合体に比べて、本発明のタンパク質結合体は前記通常の連結体よりも2倍〜70倍高い、遥かに増加した平均滞留時間(mean residence time; MRT)および血中半減期を示す(試験例2、表4〜7参照)。また、本発明のFab’−PEG−IgG結合体、すなわち、IgG−PEG連結体がFab’のC−末端近くの−SH基、またはN−末端に各々連結されたFab’−S−PEG−N−IgGおよびFab’−N−PEG−N−IgG結合体は、Fab’−S−40K PEG連結体に比べて2倍〜3倍さらに長い血中半減期を示す(試験例3および図12参照)。
【0031】
さらに、非糖鎖化免疫グロブリンを用いて製造されたタンパク質結合体は糖鎖化された免疫グロブリンを含む相応するタンパク質結合体と同様な血中半減期と生体外活性を示す(表4、7および9、および図10および11参照)。
【0032】
薬物動力学分析結果、hGH、インターフェロン、EPO、G−CSFまたはその誘導体、および抗体断片を含む様々な生理活性ポリペプチドに適用された本発明のタンパク質結合体は、血中半減期およびMRTの面で優れた特性を示すので、延長された生体内半減期を有するポリペプチド薬物製剤を製造するのに有用である。
【0033】
さらに、動物モデルを用いた生体内試験によれば、本発明のhGH−PEG−IgG結合体は非常に優れた生体内活性を示す。具体的に、hGH−PEG−IgG結合体を野生型投与容量の1/3容量で6日に1回投与したとき、野生型を毎日投与したものと等しいかより優れた効果を示し、このような結果は、hGH−PEG−IgG結合体の生体内活性が野生型に比べて3倍以上高いことを意味する(図14参照)。
【0034】
本発明の17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体は20kDa PEG−G−CSF連結体に比べて3倍以上高い生体内活性を示し、5日に1回投与したとき、同じ総投与量になるように毎日投与した野生型G−CSFよりも2倍以上高い好中球回復効果を示す(図15参照)。しかも、本発明のEPO−PEG−IgG結合体は、ヘマトクリット数値において野生型EPOまたは高糖鎖化EPOの場合よりもさらに高くて速い増加率を誘導し、このような高い生体内活性を長期間保持する(図16)。
【0035】
このような結果は、本発明のタンパク質結合体が頻繁な投与を必要とする野生型ペプチドの問題を克服するとともに、生理活性タンパク質の血中半減期および生体内活性を著しく増加させることを示す。
【0036】
生理活性ポリペプチドとしては、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質およびレセプターなどのポリペプチド、およびこれらの変異体および他の類似体を例示することができる。
【0037】
本発明のタンパク質結合体を製造するのに適当な生理活性ポリペプチドの具体的な例はヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類(例:インターフェロンα,βおよびγ)、コロニー刺激因子、インターロイキン類(例:インターロイキン−1,−2,−3,−4,−5,−6,−7,−8,−9,−10,−11,−12,−13,−14,−15,−16,−17,−18,−19,−20,−21,−22,−23,−24,−25,−26,−27,−28,−29および−30)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、アポリポタンパク質−E、エリトロポイエチン、高糖鎖化エリトロポイエチン、血液因子VII、血液因子VIII、血液因子IX、プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、表皮成長因子、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、結合組織活性化因子、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、FSH放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラクシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン−類似成長因子、副腎皮質刺激ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、レセプター類(例:NFR(P75)およびTNFR(P55))、レセプター拮抗物質(例:IL1−Ra)、細胞表面抗原(例:CD2,3,4,5,7,11a,11b,18,19,20,23,25,33,38,40,45および69)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片およびウイルス由来のワクチン抗原を含む。
【0038】
抗体断片とは特定抗原に結合し得る抗体の断片、たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、FdおよびscFvを示し、Fab’が好ましい。Fab断片は抗体の軽鎖および重鎖の可変ドメインと第1不変ドメイン(CH1)からなり;Fab’断片はFab断片のCH1ドメインのC−末端にヒンジ(hinge)領域からの一つ以上のシステイン残基を含む数個のアミノ酸残基がさらに付加されたものであり;F(ab’)2断片は二つのFab’断片がジスルフィド結合或いは化学的反応で相互連結されたものであり;Fd断片は重鎖の可変領域と第1不変ドメイン(CH1)を含む。scFv断片は、ペプチドリンカーで互いに連結された軽鎖と重鎖の可変領域からなる単一ポリペプチド鎖である。
【0039】
特に好ましいポリペプチドは、疾病の治療または予防の目的で投与される場合、他のものに比べてさらに頻繁な投与が要求されるということに照らし、ヒト成長ホルモン、インターフェロン類(インターフェロンα,βおよびγ)、顆粒球コロニー刺激因子および赤血球生成因子からなる群から選ばれたいずれかである。
【0040】
本発明が適用され得る生理活性ポリペプチドの種類は前述のものに制限されず、野生型ポリペプチドと実質的に等しいかさらに優れた機能、構造、活性または安定性を有する変異体または誘導体も本発明の生理活性ポリペプチドの範囲に含まれる。
【0041】
他の実施態様として、本発明は、
(a)少なくとも一つの生理活性ポリペプチド、少なくとも一つの免疫グロブリン、および両末端に反応基を有する少なくとも一つの非ペプチド性重合体を共有結合で連結する段階;および
(b)共有結合で連結された生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体を必須的に含むタンパク質結合体を単離する段階を含む、前記タンパク質結合体の製造方法を提供する。
【0042】
前記方法の段階(a)において、生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体は2段階反応または同時反応によって共有結合で連結され得る。2段階反応、たとえば、非ペプチド性重合体を活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンと共有結合させた後、生成した連結体を活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンと共有結合させてこれらの結合体を製造し、ここで活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンは非ペプチド性ポリマーを用いて相互連結される方法が好ましくない副産物の生成を減少させるのに有利である。
【0043】
したがって、前記方法の段階(a)は、
(a1)非ペプチド性重合体の一方の末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドと共有結合で連結する段階;
(a2)反応混合物から非ペプチド性重合体と連結された免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドを含む連結体を分離する段階;および
(a3)連結体の非ペプチド性重合体の自由末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドと共有結合で連結して非ペプチド性重合体が生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンを共有結合で互いに連結するタンパク質結合体を生産する段階;を含み得る。
【0044】
前記段階(a1)において、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体のモル比は好ましくは1:2.5〜1:5の範囲であり、免疫グロブリンと非ペプチド性重合体のモル比は1:5〜1:10である。なお、段階(a3)において、段階(a2)で得られた連結体と生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンのモル比は1:0.5〜1:20、好ましくは1:1〜1:5の範囲である。
【0045】
段階(a1)および段階(a3)は、ナトリウムシアノボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライド、ジメチルアミンボレートおよびピリジンボレートからなる群から選ばれる還元剤の存在下で行い得る。
【0046】
段階(a2)および(b)を行うための手続は、要求される純度、および生成した結合体の分子量および電荷量のような特性を考慮して、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどおよびこれらの組合せのような、タンパク質の分離に用いられる通常の方法で行い得る。
【0047】
さらに他の実施態様として、本発明は、本発明のタンパク質結合体および薬剤学的に許容可能な担体(賦形剤)を含む、修飾されていないポリペプチドに比べて延長された生体内半減期を有する生理活性ポリペプチドの医薬組成物を提供する。
【0048】
本発明の医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈または筋肉内投与を含む種々の経路を通じて投与され得、注射投与がより好ましい。本発明の医薬組成物は、患者に投与された後、活性成分の迅速、遅速または遅延放出を提供するために当業界で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、錠剤、丸剤、粉末、におい袋(sachet)、エリキシル(elixir)、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エーロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末などの形態であり得る。適切な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラル油などを挙げることができる。剤形は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0049】
活性成分の実際投与量は治療する疾患、選択された投与経路、患者の年齢、性別および体重、および患者の症状を含む色々な関連因子、特に活性成分の種類によって決定される。本発明のタンパク質結合体の向上した安定性のため、本発明のタンパク質結合体を含むポリペプチド薬物剤形の総投与回数および頻度を著しく減らすことができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明の好ましい具現例を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【0051】
[実施例1]hGH−PEG−IgG結合体の製造I
(段階1)hGH−PEG連結体の製造
ヒト成長ホルモン(hGH、分子量22kDa)を5mg/mlの濃度に100mMリン酸塩緩衝液に溶解し、両末端にアルデヒド反応基を有する分子量3.4kDaのポリエチレングリコール(ALD-PEG-ALD, Shearwater Inc.、米国)をhGH:PEGのモル比が1:1、1:2.5、1:5、1:10または1:20になるように加えた。これに還元剤としてナトリウムシアノボロハイドライド(NaCNBH3、Sigma)を最終濃度20mMになるように加え、この混合物を4℃で3時間攪拌した。PEGがhGHのアミノ末端部位に1:1のモル比で選択的に結合したhGH−PEG連結体を得るために、得られた反応混合物をスーパーデックス(Superdex(登録商標)、Pharmacia社製、米国)サイズ排除(size exclusion)クロマトグラフィーを行った。溶離液として10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてhGH−PEG連結体をカラムから溶離および精製し、修飾されていないhGH、未反応のPEGおよび二分子のhGHがPEGの両末端に連結された二量体副産物を除去した。精製されたhGH−PEG連結体を5mg/mlに濃縮した。最良の結果を得るためのhGH:PEGの最適のモル比は1:2.5〜1:5であることが確認された。
【0052】
(段階2)hGH−PEG連結体とIgGとの間の結合体形成
分子量150kDaの免疫グロブリンG(IgG、緑十字、韓国)を100mMリン酸塩緩衝液に溶解した。段階1で精製されたPEG−hGH連結体のアルデヒド基にIgGを結合させるために、hGH−PEG連結体:IgGのモル比が1:1、1:2、1:4または1:8になるようにhGH−PEG連結体をIgG−含有緩衝液に加えた。還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加え、この混合物を4℃で20時間徐々に攪拌した。結合反応後hGH−PEG−IgG結合体を汚染物から分離精製するために、反応混合物を用いて20mMトリス緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAEカラム(Pharmacia、米国)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。移動相を緩衝液A(20mMトリス緩衝液、pH7.5)から線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.5M)で緩衝液B(1.0M NaClを含む20mMトリス緩衝液、pH7.5)に変えた。溶離したhGH−PEG−IgG結合体から少量の未反応のIgGおよび修飾されていないhGHを除去するために、溶離液として10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で平衡化したpolyCATカラム(PolyLC、米国)を用いた陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーを行った。移動相を緩衝液A(10mM酢酸ナトリウム、pH4.5)から線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.5M)で緩衝液B(1.0M NaClを含む10mM酢酸ナトリウム、pH4.5)に変えてhGH−PEG−IgG結合体を精製した(図1)。
最良の結果を得るためのhGH−PEG連結体:IgGの最適のモル比は1:4であることが確認された。
【0053】
[実施例2]hGH−PEG−IgG結合体の製造II
(段階1)IgG−PEG連結体の製造
IgG(緑十字、韓国)を100mMリン酸塩緩衝液に15mg/mlの濃度に溶解し、生成した溶液に3.4kDaのALD−PEG−ALD(Shearwater Inc.、米国)をIgG:PEGのモル比が各々1:1、1:2.5、1:5、1:10または1:20になるように加えた。これに還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、この混合物を4℃で3時間攪拌した。PEGがIgGのアミノ末端部位に1:1のモル比で選択的に結合したIgG−PEG連結体を分離するために、得られた反応混合物をスーパーデックス(Superdex(登録商標)、Pharmacia社製、米国)サイズ排除クロマトグラフィーを行った。溶離液として10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてIgG−PEG連結体を溶離および精製し、修飾されていないIgG、未反応のPEG、および二分子のIgGがPEGの両末端に連結された二量体副産物を除去した。精製されたIgG−PEG連結体を15mg/mlに濃縮した。最良の結果を得るためのIgG:PEGの最適のモル比は1:5〜1:10であることが確認された。
【0054】
(段階2)IgG−PEG連結体とhGHとの結合体形成
前記段階1で精製されたIgG−PEG連結体にhGH(分子量22kDa)を結合させるために、100mMリン酸塩緩衝液に溶解したhGHをIgG−PEG連結体と各々1:1、1:1.5、1:3または1:6のモル比で反応させた。これに還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加え、反応混合物を4℃で20時間攪拌した。得られた反応混合物を実施例1の段階2と同様な精製方法を行って未反応物質および副産物を除去し、IgG−PEG−hGH結合体を精製した。
【0055】
[実施例3]IFNα−PEG−IgG結合体の製造
hGHの代わりにインターフェロンアルファ2b(IFNα2b、分子量20kDa)を用い、IFNα2b:ALD−PEG−ALD(分子量3.4kDa)のモル比を1:5にしたことを除いては、実施例1と同様な方法でIFN−α−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0056】
[実施例4]ヒト顆粒球コロニー刺激因子−PEG−IgG結合体の製造
hGHの代わりにヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF、分子量18.7kDa)を用い、G−CSF:ALD−PEG−ALD(分子量3.4kDa)のモル比を1:5にしたことを除いては、実施例1と同様な方法でG−CSF−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
また、野生型G−CSFの17番目のアミノ酸がセリンで置換されたG−CSF誘導体(17S−G−CSF)を用いて前記と同様な方法でG−CSF誘導体−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0057】
[実施例5]EPO−PEG−IgG結合体の製造
hGHの代わりにヒト赤血球生成因子(Erythropoietin(EPO)、分子量35kDa)を用い、EPO:ALD−PEG−ALD(分子量3.4kDa)のモル比を1:5にしたことを除いては、実施例1と同様な方法でEPO−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0058】
[実施例6]異なる反応基を有するPEGを用いたタンパク質結合体の製造
両末端にアルデヒド基以外の異なる反応基を有するPEGを用いてhGH−PEG−IgG結合体を次のように製造した。100mMリン酸塩緩衝液に溶解したhGH10mgを両末端にスクシンイミジルプロピオネート(SPA)基を有するPEG(SPA−PEG−SPA、Shearwater Inc.、米国、分子量3.4kDa)とhGH:PEGのモル比が各々1:1、1:2.5、1:5、1:10または1:20になるように反応させた。反応混合物を室温で2時間攪拌した。hGHのリジン残基にPEGが1:1のモル比で選択的に結合したhGH−PEG連結体を得るために、反応混合物をスーパーデックス(登録商標)(Pharmacia社製、米国)サイズ排除クロマトグラフィーを行って分離した。溶離液として10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてhGH−PEG連結体を溶離および精製し、修飾されていないhGH、未反応のPEGおよび二分子のhGHがPEGの両末端に連結された二量体副産物を除去した。精製されたhGH−PEG連結体を5mg/mlに濃縮した。濃縮hGH−PEG連結体を用いて実施例1と同様な方法でhGH−PEG−IgG結合体を製造した。最良の結果を得るためのhGH:PEGの最適のモル比は1:2.5〜1:5であることが確認された。
両末端にN−ヒドロキシスクシンイミジル(N-hydroxysuccinimidyl;NHS)基を有するPEG(NHS−PEG−NHS;Shearwater Inc.、米国)を用いたことを除いては、前記と同様な方法を行って他のhGH−PEG−IgG結合体を製造および精製した。
【0059】
[実施例7]分子量が異なるPEGを用いたタンパク質結合体の製造
分子量が10,000ダルトンであり、両末端にアルデヒド反応基を有するPEGであるALD−PEG−ALD(Shearwater Inc.、米国)を用いたことを除いては、実施例1の段階1と同様な方法でhGH−PEG連結体を製造および精製した。この際、最良の結果を得るためのhGH:PEGの最適のモル比は1:2.5〜1:5であることが確認された。精製されたhGH−PEG連結体を5mg/mlになるように濃縮した。濃縮されたhGH−PEG連結体を用いて実施例1の段階2と同様な方法でhGH−PEG−IgG結合体を製造した。
【0060】
[実施例8]Fab’−S−PEG−N−IgG結合体の製造(−SH基)
(段階1)Fab’の発現および精製
抗−TNF−αFab’を発現する大腸菌BL21/poDLHF(寄託番号:KCCM10511)をLB培地100mlに接種して一晩振盪培養した。培養したLBブロスを5lフェメンター(Marubishi)に移して温度30℃、空気投入量20vvm、攪拌速度500rpmの条件下で培養した。発酵が進むにつれて、微生物の成長によって惹起されたエネルギー源の不足を補充するために適当量のブドウ糖(glucose)と酵母抽出液(yeast extract)を培養水に加えた。吸光度600nmで培養液の吸光度が80に至ると、IPTGを培養液に加えてタンパク質発現を誘導した。培養液の吸光度が600nmで120〜140になるまで40〜45時間培養を続けた。得られた発酵液を遠心分離(20,000xg、30分)して上澄液を得た。
【0061】
上澄液から次のような3段階のカラムクロマトグラフィーを行って抗−TNF−αFab’を精製した。前記上澄液を20mMリン酸塩緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrapタンパク質G(5ml、Pharmacia社製、ドイツ)カラムに充填した後、100mMグリシン緩衝液(pH3.0)で溶離した。溶離したFab’分画を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(PBS、pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200(Pharmacia社製、ドイツ)カラムに加え、同じ緩衝液で溶離した。溶離したFab’分画をpolyCAT 21x250(PolyLC Inc.、米国)カラムに加え、10mMアセテート緩衝液(pH4.5)でNaCl線形濃度勾配法(0.15M→0.4M)下に溶離して純粋な抗−TNF−αFab’分画を得た。
【0062】
(段階2)IgG−PEG連結体の製造
免疫グロブリン(IgG、分子量150kDa、緑十字、韓国)150mgを100mM PBS(pH6.0)に5mg/mlの濃度で溶解し、これにNHS−PEG−MAL(分子量3,400ダルトン、Shearwater Inc.、米国)をIgG:PEGのモル比が1:10になるように加えた。反応混合物を4℃で12時間徐々に攪拌した。
反応終了後、反応緩衝液を20mM PBS(pH6.0)に取り替えて未反応のNHS−PEG−MALを除去した。その後、この反応混合物をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に充填し、20mM PBS(pH6.0)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)を用いて溶離してIgG−PEG連結体を得た。未反応のIgGがIgG−PEG連結体よりも遅く溶離され、除去された。
【0063】
(段階3)Fab’−S−PEG−N−IgG結合体(−SH基)の製造
段階1で得られた精製されたFab’を100mM PBS(pH7.3)に2mg/mlの濃度に溶解し、生成した溶液に段階2で製造されたIgG−PEG連結体をFab’:連結体のモル比が1:5になるように加えた。反応混合物をタンパク質濃度が50mg/mlになるように濃縮し、4℃で24時間徐々に攪拌した。
【0064】
カップリング反応終了後、得られた反応混合物を10mM PBS(pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200カラム(Pharmacia社製、米国)に加え、同じ緩衝液で1ml/分の流速で溶離してFab’−S−PEG−N−IgG結合体分画を得た。分子量が大きいFab’−S−PEG−N−IgG結合体が先に溶離され、未反応のIgG−PEG連結体およびFab’はその後で溶離、除去された。残っている未反応のIgG−PEG連結体を除去するために、Fab’−S−PEG−N−IgG結合体分画をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、20mM PBS(pH6.0)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)を用いて溶離した。結果として、IgG−PEG連結体がFab’のC−末端付近の−SH基に連結された純粋なFab’−S−PEG−N−IgG結合体を含む分画を得た。
【0065】
[実施例9]Fab’−N−PEG−N−IgG結合体の製造(N−末端)
(段階1)Fab’−PEG連結体(N−末端)の製造
前記実施例8の段階1で得られた精製されたFab’ 40mgを100mM PBS(pH6.0)に5mg/mlの濃度に溶解した後、生成した溶液にButyl ALD−PEG−ButylALD(分子量3,400Da、Shearwater Inc.、米国)をFab’:PEGのモル比が1:5になるように加えた。還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、反応混合物を4℃で2時間徐々に攪拌した。
反応終了後、反応緩衝液を20mM PBS(pH6.0)に取り替えた。緩衝液を取り替えた後、混合物をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に充填し、20mM PBS(pH4.5)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.4M)を用いて溶離してFab’−PEG連結体を含む分画を得た。未反応のFab’が連結体よりも遅く溶離され、除去された。
【0066】
(段階2)Fab’−N−PEG−N−IgG結合体の製造(N−末端)
段階1で得られた精製されたFab’−PEG連結体を100mM PBS(pH6.0)に10mg/mlの濃度で溶解した後、生成した溶液にIgG(分子量150kDa、緑十字、韓国)を連結体:IgGのモル比が1:5になるように加えた。反応混合物を最終タンパク質濃度が50mg/mlになるように濃縮した。還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、反応混合物を4℃で24時間徐々に攪拌した。
【0067】
カップリング反応終了後、反応液を10mM PBS(pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200カラム(Pharmacia社製)に加え、同じ緩衝液で1ml/分の流速で溶離してFab’−N−PEG−N−IgG結合体を含む分画を得た。Fab’−N−PEG−N−IgG結合体は分子量が大きいため先に溶離され、未反応のIgGおよびFab’−PEG連結体はその後で溶離、除去された。残っている未反応のIgGを除去するために、Fab’−N−PEG−N−IgG結合体分画をpolyCAT 21x250カラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、20mM PBS(pH6.0)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)を用いて溶離した。結果として、IgG−PEG連結体がFab’のN−末端に連結された純粋なFab’−N−PEG−N−IgG結合体を含む分画を得た。
【0068】
[実施例10]糖鎖除去されたIgG(AG IgG)の製造
IgG(緑十字、韓国)200mgを100mMリン酸塩緩衝液(pH7.5)に2mg/mlの濃度になるように溶解し、これに300U/mgの脱糖鎖化酵素PNGase F(NEB Inc.、イギリス)を加えた。反応混合物を37℃で24時間徐々に攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応混合物をSPセファロースFFカラム(ファルマシア、ドイツ)に加え、1M NaClを用いる線形濃度勾配法(0.1M→0.6M)を用いて10mMアセテート緩衝液(pH4.5)で溶離し、野生型IgGよりも遅く溶離した糖鎖除去されたIgGの分画を得た。
【0069】
[実施例11]IFNα−PEG−AG IgG結合体の製造
前記実施例3で製造されたIFNα−PEG連結体に前記実施例10で製造された糖鎖除去されたIgG(AG IgG)を結合することによって次のようにIFNα−PEG−AG IgG結合体を製造した。
AG IgG(分子量:約147kDa)を10mMリン酸塩緩衝液に溶解した。IFNα−PEG連結体をAG IgG−含有緩衝液にIFNα−PEG連結体:AG IgGのモル比が各々1:1、1:2、1:4および1:8になるように加えた。生成した混合物を100mMリン酸塩緩衝溶液の状態にし、還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた。反応混合物を4℃で20時間徐々に攪拌した。最良の結果を得るためのIFNα−PEG連結体:AG IgGの最適のモル比は1:2であることが確認された。
【0070】
結合反応後、汚染物からIFNα−PEG−AG IgG結合体を精製するために、反応混合物を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った。反応混合物をスーパーデックス(登録商標)(Pharmacia社製、ドイツ)カラムに加え、10mM PBS(pH7.3)を用いて流速2.5ml/分で溶離してIFNα−PEG−AG IgG結合体分画を得、未反応のAG IgGおよびIFNα−PEG連結体のような汚染物を除去した。このように得られたIFNα−PEG−AG IgG結合体の分画からさらに陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーを用いて少量の未反応のAG IgGおよびIFNα−PEG連結体を除去した。前記分画を10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で平衡化したPolyCAT LPカラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、1.0M NaClを含む10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液で線形濃度勾配法(塩化ナトリウム濃度0M→0.6M)を用いて溶離してIFNα−PEG−AG IgG結合体分画を得た。このように得られた分画を用いてさらに陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。該分画を10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝溶液で平衡化したPolyWAX LPカラム(PolyLC Inc.、米国)に加え、1.0M塩化ナトリウムを含む10mM Tris−HCl緩衝溶液(pH7.5)で線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.3M)を用いて溶離して純粋なIFNα−PEG−AG IgG結合体を得た。
【0071】
[実施例12]EPO−PEG−AG IgG結合体の製造
前記実施例5で精製されたEPO−PEG連結体と、前記実施例10で製造された糖鎖が除去されたIgGを用いて実施例11と同様な方法でEPO−PEG−AG IgG結合体を得た。
【0072】
[比較例1]PEG−hGH連結体の製造
hGH5mgを100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解して溶液5mlを得、40kDa PEGを有する活性化されたメトキシ−PEG−ALD(Shearwater社製、米国)をhGH:PEGのモル比が1:4になるように前記溶液に加えた。これに還元剤であるNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた後、反応混合物を4℃で18時間徐々に攪拌した。これにエタノールアミンを最終濃度が50mMになるように加えて未反応のPEGを失活させた。
未反応のPEGを除去するために、得られた反応混合物をセファデックスG−25カラム(Pharmacia社製)クロマトグラフィーで処理した。まず、カラムを2カラム体積(column volume;CV)の10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化した後反応混合物を加えた。UV分光光度計を用いて260nmで溶離分画の吸光度を分析した。分子量がさらに大きいPEG−修飾されたhGHが先に溶離され、未反応のPEGが後で溶離された。
【0073】
前記溶離分画から次のようにPEG−修飾されたhGHをさらに精製した。PolyWAX LP(Polywax Inc.、米国)3mlで充填されたカラムを10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化した。PEG−修飾されたhGHを含有する溶離分画を1ml/分の流速でカラム上に加えた後、15mlの平衡緩衝液でカラムを洗浄した。1M NaCl含有緩衝液を用いた塩濃度勾配法(NaCl濃度:0%→100%)によって30分間溶離し、トリ−、ジ−、モノ−PEGが連結されたhGHの分画を順次得た。
前記混合物からモノ−PEG結合hGH連結体をさらに精製するために、カラム溶離物を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った。前記溶離液を濃縮して10mMリン酸ナトリウム緩衝液で平衡化したスーパーデックス200(Superdex 200、Pharmacia社製)に加え、同じ緩衝液で流速1ml/分で溶離した。トリ−、ジ−PEGが連結されたhGH連結体はモノ−PEGが連結されたhGH連結体よりも溶離時間が速いので、これを除去してモノ−PEGが連結されたhGH連結体のみを純粋分離した。
同様な方法でIFNαまたはG−CSFのアミノ末端に40kDa PEGが各々結合したPEG−IFN、PEG−17S−G−CSF誘導体およびPEG−G−CSF連結体を製造した。
【0074】
[比較例2]アルブミン−hGH連結体の製造
実施例1で得られたhGH−PEG連結体にアルブミンを結合させるために、hGH−PEG連結体を10mMリン酸塩緩衝液に溶解したヒトアルブミン(HAS、分子量約67kDa)(緑十字、韓国)とhGH−PEG連結体:アルブミンのモル比が各々1:1、1:2、1:4または1:8になるようにして反応させた。得られた反応混合物を100mMリン酸塩緩衝液の状態で濃縮し、これに還元剤としてNaCNBH3を最終濃度が20mMになるように加えた。反応混合物を4℃で20時間徐々に攪拌した。最良の結果を得るためのhGH−PEG連結体:アルブミンの最適のモル比は1:2であることが確認された。
【0075】
結合反応後、反応混合物からスーパーデックスサイズ排除クロマトグラフィーを行って未反応の出発物質および副産物を除去した。反応混合物を濃縮した後、カラムに加え、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を流速2.5ml/分で溶離して精製されたhGH−PEG−アルブミン結合体を得た。精製されたhGH−PEG−アルブミン結合体分画には不純物として少量の未反応のアルブミンおよびhGH二量体が混じっているので、これの除去のためにさらに陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーを行った。hGH−PEG−アルブミン結合体分画を10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液で平衡化したSP5PW(Waters、米国)カラムに加え、1M塩化ナトリウム(NaCl)を含む10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液を線形濃度勾配法(NaCl濃度0M→0.5M)で流して分画を得ることによって純粋なhGH−PEG−アルブミン結合体を得た。
同様な方法でIFNα、G−CSFまたは17S−G−CSF誘導体に各々アルブミンが結合したIFNα−PEG−アルブミン、G−CSF−PEG−アルブミンおよび17S−G−CSF誘導体−PEG−アルブミン結合体を製造および精製した。
【0076】
[比較例3]Fab’−S−40K PEG連結体の製造
実施例8の段階1で得られた精製されたFab’を活性化緩衝液(20mM酢酸ナトリウム(pH4.0)、0.2mM DTT)に1時間放置して遊離−SH基を活性化させた。緩衝液をPEG修飾緩衝(50mMリン酸カリウム(pH6.5))に取り替えた。生成した溶液にマレイミド−PEG(分子量40kDa、Shearwater Inc.、米国)をFab’:PEGのモル比が1:10になるように添加した。この反応混合物を4℃で24時間徐々に攪拌した。
【0077】
反応終了後、得られた反応混合物を10mM PBS(pH7.3)で平衡化したスーパーデックス200(Superdex 200、Pharmacia社製)カラムに加え、同じ緩衝液を1ml/分の流速で流してFab’−S−40kDa PEG連結体を含む分画を溶離した。未反応のFab’は前記連結体よりも遅く溶離、除去された。残っている未反応のFab’を除去するため、Fab’−S−40K PEG連結体分画をpolyCAT 21x250(PolyLC Inc.、米国)カラムに加えた後、20mM PBS(pH4.5)を線形濃度勾配法(NaCl濃度0.15M→0.5M)で流して溶離した。結果として、Fab’のC−末端に隣接する−SH基に40KDa PEGが連結された純粋なFab’−S−40K PEG連結体を得た。
【0078】
[試験例1]タンパク質結合体の確認および定量
(1)タンパク質結合体の確認
4〜20%の濃度勾配を有するゲルを用いるSDS−PAGEおよびELISA法(R & D system、米国)を用いて前記実施例で製造したタンパク質結合体の修飾状態を分析した。
hGH、hGH−PEG、IFNおよびIFN−PEGにDTT(Dithiothreitol)を各々50mMの量で添加した後、SDS−PAGEを行い、IgG、hGH−PEG−IgGおよびIFN−PEG−IgGはDTTなしで展開した。
【0079】
図2および図3は、各々hGH−PEG−IgGおよびIFN−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果を示す。左の余白の数字は分子量マーカー(kDa)である。
図2から分かるように、hGH−PEG−IgG結合体の見かけ分子量は約170kDaである。しかし、IgGタンパク質結合体と野生型IgGの分子量差異はSDS−PAGEで区別しにくいため、hGH−PEG−IgG結合体およびIgGを各々DTTで処理して還元させて軽鎖および重鎖に分離し、その結合状態をSDS−PAGEで各々確認した(図4)。
【0080】
IgGをDTTで処理すると、分子量によってIgGの軽鎖が先に分離され、IgGの重鎖が後で分離される。DTTで処理したhGH−PEG−IgG結合体のバンドは前記軽鎖および重鎖断片に各々hGH−PEG(3.4kDa)連結体の分子量を足すことによって計算された分子量に該当する位置に現れた。hGH−PEG−IgG結合体の軽鎖は約80KDaの位置にバンドが現れたhGH−PEG−IgG結合体の重鎖よりも低い位置(さらに小さい分子量)にバンドを形成した。前記結果からhGHは軽鎖と重鎖に同じ確率で結合し、IgGとhGHが1:1のモル比で結合したことが分かる。
【0081】
(2)タンパク質結合体の定量
前記実施例で製造した各タンパク質結合体の量はサイズ排除クロマトグラフィー(カラム:Superdex、溶離液:10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0))から観察された結合体のピーク面積をコントロールと比較して計算する方法で測定した。予め定量されたhGH、IFN、G−CSF、17S−G−CSF、EPOおよびIgGで各々サイズ排除クロマトグラフィーを行った後、ピーク面積の相対的感応(response)係数を測定した。各タンパク質結合体を一定量用いて同じ条件下でサイズ排除クロマトグラフィーを行い、ここから得られた各タンパク質結合体のピーク面積からIgGに該当するピーク面積を引いた値を各タンパク質結合体に存在する生理活性タンパク質の定量値とした。
【0082】
クロマトグラフィー法以外にELISA法(R&D system、米国)を並行して行った。IgGの一部がポリペプチドの生物学的活性部位に結合すると生物学的活性部位に特異的な抗体を用いたELISAによって得られる定量値はクロマトグラフィーによって計算される値よりも減少すると予測される。hGH−PEG−IgG結合体の場合にはELISAによって測定された値がクロマトグラフィーによって決定された値の約30%に過ぎないことが確認された。
【0083】
(3)タンパク質結合体の純度および質量確認
実施例3で得られたIFNα−PEG−IgG結合体の純度を分析するために、逆相カラム(259VHP54カラム、Vydac社、米国)を用いて逆相HPLCを行った。結合体を0.5%TFAの存在下でアセトニトリル溶媒で線形濃度勾配法法(アセトニトリル濃度:40%→100%)を用いて溶離し、280nmで検出した。図5から分かるように、結合体の純度は95%以上である。
各々の実施例で得られたタンパク質結合体に対してサイズ排除クロマトグラフィーを行った後、280nmで吸光度を分析した。hGH−PEG−IgG、IFN−PEG−IgG、G−CSFおよび17S−G−CSF−PEG−IgGは各々170,000〜180,000ダルトンの分子量に該当する単一ピークを示した。EPO−PEG−IgGのピークは分子量200,000ダルトンに該当する位置から観察された。
【0084】
各タンパク質結合体の正確な分子量を測定するために、精製された試料をMALDI−TOF(Voyager DE-STR、Applied Biosystems、USA)超高速質量分析器を用いて分析した。マトリックスとしてはシナピン酸(sinapinic acid)を用いた。各試料0.5μlをスライドガラスに塗布し、空気中で乾燥した。同じ容積のマトリックス溶液をスライドガラス上に滴下した後、スライドガラスを空気中で乾燥し、イオン源(ion source)に導入した。検出はポジティブ方式でリニアー−モードTOF装置によって行い、イオンは遅延されたイオン抽出器を用いる分割抽出供給源で、遅延された抽出時間は750nsec/1500nsecで、約2.5kVの全電位差を通じて加速化した。hGH−PEG−IgG結合体の質量分析結果を下記表1および図6に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
前記結果は、hGH−PEG−IgG結合体の純度が90%以上であり、測定された分子量が理論値とほとんど同じであることを示した。また、hGH−PEG−IgG結合体はIgGがhGH−PEG連結体に1:1のモル比で結合した形態であった。
また、前記MALDI−TOF法で測定された実施例10で製造したAG IgGの分子量は野生型IgGよりも3,000Daが少ない147kDaであった(図9)。減少した分子量3,000Daは糖鎖の理論的サイズに該当するので、IgGの糖鎖が完全に除去されたことを確認できた。
下記表2は前記実施例11〜12で製造したIFNα−PEG−AG IgGおよびEPO−PEG−AG IgG結合体の分子量を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
[試験例2]薬物動力学分析I
前記実施例および比較例で製造したIgG−タンパク質結合体、PEG−タンパク質連結体およびアルブミン−タンパク質結合体(試験群)の生体内安定性および薬物動力学係数を野生型生理活性タンパク質(対照群)と比較した。下記実験では、各群当り5匹のスプラーグ・ドーリー(SD)ラットを用いた。対照群、PEG−連結体、アルブミン−タンパク質結合体およびIgG−タンパク質結合体を各々100ug/kgずつラットに皮下注射した。対照群から注射後0.5、1、2、4、6、12、24、30、48、72および96時間後に血液試料を得、試験群からは注射後1、6、12、24、30、48、72、96、120、240および320時間後に血液試料を得た。血液試料をヘパリンでコーティングされたチューブに集めて凝固を防止し、高速マイクロ遠心分離器で4℃、3000xgで30分間遠心分離して細胞を除去した。血漿中のタンパク質濃度は各生理活性タンパク質に対する抗体を用いてELISA方法で測定した。
【0089】
野生型hGH、IFN、G−CSFおよびEPOとこれらのタンパク質連結体および結合体の薬物動力学値を下記表2〜表6に示し、ここでTmaxは最高薬物濃度に至る時間を、T1/2は薬物の血中半減期を、MRT(mean residence time)は薬物の平均的な体内滞留時間を意味する。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
前記表3および図7から分かるように、hGH−PEG−IgGタンパク質結合体の血中半減期は13.9時間であって、これは野生型hGHに比べて約13倍増加したものであり、比較例1で製造したhGH−40kDa PEG連結体(7.7時間)よりも約2倍増加したものである。PEGの一方の末端にアルブミンが結合したhGH−PEG−アルブミン結合体の半減期は5.9時間であった。このような結果から、本発明のタンパク質結合体は遥かに優れた血中持続性を示すことが確認できる。
【0096】
さらに、表4および図10において、IFNαに対する結果もhGHと同様な結果を示すが、本発明のタンパク質結合体が示す血中半減期の増加効果は遥かに大きかった。野生型IFNαの半減期は1.7時間であるが、40kDa PEG−IFNα連結体の半減期は35.8時間に増加し、IFNα−PEG−アルブミン結合体の半減期は17.1時間に増加した。これに対し、本発明のIFNα−PEG−IgG結合体の半減期は76.7時間と著しく増加した。また、IFNα−PEG−AG IgG結合体の半減期は59.7時間であって、IFNα−PEG−IgG結合体とほとんど等しかった。この結果から、糖鎖の不在が結合体の生体内安定性には影響を及ぼさないことが分かる。
【0097】
表5および6から分かるように、G−CSFおよびその誘導体の血中持続性も前記hGHおよびIFNのものと同様な傾向を示した。40kDa PEGが修飾されたタンパク質連結体およびアルブミン結合体の半減期は野生型G−CSFおよびその誘導体よりもさらに長かった。しかし、本発明のタンパク質結合体は遥かに長い半減期を示した。タンパク質の血中薬物持続性を増加させるIgGのこのような効果はアミノ酸が修飾された誘導体からもまた観察された。このような結果から、他のタンパク質に適用された本発明のタンパク質結合体はまた前述の好ましい効果を示すことが予想できる。
【0098】
表7および図8と図11から分かるように、糖鎖化された残基を有するEPOに対しても本発明のタンパク質結合体の血中半減期の増加効果が明らかである。すなわち、野生型EPOの血中半減期は9.4時間であり、血中安定性が高い高糖鎖化EPOであるDarbepoetin−α(Aranesp、Amgen、USA)の半減期は14.9時間であった。EPO−PEG−IgG結合体の場合は、血中半減期が67.5時間に著しく増加し、EPO−PEG−AG IgG結合体の血中半減期も47.8時間に増加した。
【0099】
前記結果から分かるように、生理活性タンパク質が非ペプチド性重合体および免疫グロブリンと共有結合した本発明のタンパク質結合体は、野生型タンパク質に比べて数十倍以上増加した血中半減期を有する。また、タンパク質結合体の血中半減期増加効果は糖鎖除去された免疫グロブリンを用いても同様な水準に保持された。
【0100】
特に、従来報告されたPEG剤形のうち血中持続性が最も高い、40kDa PEGによって修飾されたタンパク質結合体と比較すると、本発明のIgGタンパク質結合体は遥かに高い持続性を示す。また、IgGの代わりにアルブミンを結合させたタンパク質結合体に比べて、本発明のタンパク質結合体は著しく優れた持続性を示した。このような結果は、本発明のタンパク質結合体がタンパク質薬物の持続型製剤を製造するのに効果的に使用できることを意味する。本発明のタンパク質結合体が、点突然変異を有するG−CSF誘導体を含む幅広いタンパク質であるのに対し、従来報告されたPEG結合タンパク質またはアルブミンタンパク質結合体よりも遥かに優れた血中安定性とさらに長いMRTを示す本願の発見は、本発明のタンパク質結合体に対して確認された前記血中安定性および持続性増加効果が異なる生理活性ペプチドに対しても応用できることを強く暗示する。
【0101】
非ペプチド性重合体として10kDa PEGを用いて製造したhGH−PEG−IgG結合体(実施例7)の半減期を前記と同様な方法で測定したとき、半減期は9.5時間であり、分子量3.4kDaであるPEGを用いたhGH−PEG−IgG結合体(13.9時間)よりも多少短かった。スクシンイミジルプロピオネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジル基およびブチルアルデヒド基のような他の反応基を有するPEGを用いて製造された結合体の見かけ分子量と血中半減期はアルデヒド基を有するPEGを用いて製造されたものと同様であった。
【0102】
[試験例3]薬物動力学分析II
実施例8および9で各々製造したFab’−S−PEG−N−IgG、Fab’−N−PEG−N−IgG結合体(−SH基、N−末端)、および比較例3で製造したFab’−S−40K PEG連結体の血中半減期を測定するために、Fab’を対照群とし、前記結合体または連結体を用いて試験例2と同様な方法で薬物動力学分析を行った。その結果を図12に示す。
図12から分かるように、Fab’−S−PEG−N−IgG、Fab’−N−PEG−N−IgG結合体はFab’およびFab’−S−40K PEG連結体に比べて2〜3倍延長された血中半減期を示した。
【0103】
[試験例4]試験管内活性測定
(1)hGHタンパク質結合体の試験管内活性比較
hGH−PEG−IgG結合体(実施例1)、40kDa PEG−hGH連結体(比較例1)およびhGH−PEG−アルブミン結合体(比較例2)の試験管内活性をhGH依存性有糸分裂をする細胞であるラット結節リンパ腫(rat node lymphoma)細胞株Nb2(European Collection of Cell Cultures(ECACC) #97041101)を用いて次のように測定した。
【0104】
Nb2細胞をフィッシャー培地(Fisher's medium)に10%ウシ胎児血清(FBS)、0.075%NaCO3、0.05mM 2−メルカプトエタノールおよび2mMグルタミンを添加した培地で培養した。得られた細胞を10%ウシ胎児血清を除いた同じ培地で24時間さらに培養した。96ウェルプレートに2x104/ウェルの量の細胞を入れた後、hGH−PEG−IgG、40kDa PEG−hGHおよびhGH−PEG−アルブミン、および対照群である国際標準品(National Institute for Biological Standards and Control, NIBSC)を多様に各ウェルに添加した後、37℃、CO2培養器で48時間培養した。その後、細胞の成長程度(各wellの細胞数)を測定するために、25μlの細胞染色薬(cell titer 96 Aqueous One Solution(promega社製、米国))を各ウェルに入れた後、37℃で4時間さらに培養した。490nmで吸光度を測定して各試料の力価を計算し、計算された力価を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
表8から分かるように、試験に用いたすべての試料は試験管内活性を有した。また、PEGによって修飾されたhGHの試験管内活性は修飾されていないhGHに比べて低かった。インターフェロンの場合、IFNと12kDa PEGおよび40kDa PEGの連結体は各々野生型の約25%および7%程度の試験管内活性を有すると報告されている(P.Bailonら、Bioconjugate Chem.2001. 12:195〜202)。修飾されたPEGの分子量が増加するほどPEG連結体の試験管内活性は減少した。40kDaのPEGが修飾されたhGH連結体の試験管内活性は野生型hGHの約7.6%に過ぎず、hGH−PEG−アルブミン結合体もまた野生型対比約5.2%程度と低い試験管内活性を示した。しかし、IgGをhGH−PEG連結体に結合させた場合は、その相対活性は野生型の30%以上と著しく高くなった。このような結果は、本発明のタンパク質結合体が血中半減期の画期的な増加とともに高い生体内活性を有することを示す。本発明のIgGタンパク質結合体の場合、レセプターに対する結合親和性を保存する役割をするIgGとの結合によって高い血中安定性、および空間的余裕を提供する非ペプチド性重合体によってタンパク質の活性が増加したとみられる。このような効果は、他の生理活性タンパク質のIgGタンパク質結合体でも起こることと期待される。
【0107】
(2)IFNαタンパク質結合体の試験管内活性比較
IFNαタンパク質結合体の試験管内活性を比較するために、IFNα−PEG−IgG結合体(実施例3)、40kDa PEG−IFNα連結体(比較例1)およびIFNα−PEG−アルブミン結合体(比較例2)の抗ウイルス活性を水胞性口炎ウイルスで飽和させたマディン−ダービ(Madin-Darby)ウシ腎臓細胞(MDBK、Madin Darby Bovine Kidney、ATCC CCL−22)を用いる細胞培養生検法(cell cultrue biopsy method)で測定した。PEGで修飾されていないIFNα 2b(NIBSC IFN)を対照群として用いた。
【0108】
MDBK細胞を、MEM(minimum essential medium:JBI)に10%FBSおよび1%ペニシリン−ストレプトマイシンが添加された培地で37℃、5%CO2の条件で培養した。試料と標準物質(NIBSCインターフェロン)を同じ培地を用いて一定濃度に希釈して96ウェルプレートの各ウェルに100μlずつ入れた。前記で培養された細胞液を各ウェルに100μlずつ加えた後、37℃、5%CO2の条件で約1時間培養した。1時間後、ウイルス濃度が5〜7x103PFUであるVSV(Vesicular stomatitis virus)を50μlずつ各ウェルに加え、37℃、5%CO2の条件で約16〜20時間さらに培養した。試料または標準物質を入れずに細胞とウイルスのみを入れたウェルを陰性対照群とし、ウイルス希釈溶液を入れずに細胞のみを入れたウェルを陽性対照群として各々用いた。
【0109】
培養液を除去し、生きている細胞を染色するために、ニュートラルレッド(neutral red)溶液100μlずつを各ウェルに加えた後、37℃、5%CO2の条件下で2時間さらに培養した。吸出によって上澄液を除去した後、抽出溶液(100%エタノールと1%酢酸との1:1混合物100μl)を各ウェルに入れた。染色された細胞を振盪させながら抽出溶液に懸濁した後、540nmで吸光度を測定した。陰性対照群の細胞成長に比べての陽性対照群の細胞成長を100%とみなして最高細胞成長の50%を示すED50を計算した。
【0110】
【表9】
【0111】
表9から分かるように、PEGによって修飾されたIFNαの活性は修飾されていないIFNαに比べて低かった。特に、PEG部分の分子量が増加するほど血中安定性は増加するが、相対活性は次第に減少した。40kDaのPEGが修飾されたIFNα連結体は野生型活性の約4.8%に該当する非常に低い活性を示した。前述のように、12kDa PEGおよび40kDa PEGによって修飾されたIFNαは各々野生型の約25%および7%程度の試験管内活性を示すと報告されている(P.Bailonら、Bioconjugate Chem. 2001. 12: 195〜202)。すなわち、PEGの分子量が増加すれば血中半減期は長くなるが、その薬効が急激に減少するので、増加した薬剤学的活性および延長された半減期を有する物質の開発が要求されてきた。IFNα−PEG−アルブミン結合体もまた野生型対比約5.2%程度であって、低い試験管内活性を示した。しかし、IFNαをIgGで修飾した場合(IFNα−PEG−IgG結合体)、相対活性は野生型の11.2%に増加した。また、IFNα−PEG−AG IgG結合体は野生型の10.2%に該当する試験管内活性を示すので、糖鎖の不在がタンパク質結合体の活性には別の影響を及ぼさないことを確認できた。
このような結果は、本発明のIgGタンパク質結合体が延長された半減期とともに高い生体内活性を示すことを示す。
【0112】
(3)G−CSFタンパク質結合体の試験管内活性比較
野生型G−CSF(Filgrastim)、17Ser−G−CSF誘導体、20kDa PEG−G−CSF連結体(Neulasta, USA)、40kDa PEG−17S−G−CSF誘導体連結体(比較例1)、17Ser−G−CSF誘導体−PEG−アルブミン結合体(比較例2)および17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体(実施例4)の試験管内活性を測定した。
【0113】
まず、ヒト骨髄起源の細胞株であるHL−60(ATCC CCL−240、Promyelocytic leukemia patient/36 yr old Caucasian female)を10%のFBSを含むRPMI1640培地で培養し、細胞の数を約2.2×105細胞/mlになるように調整した。DMSO(dimethylsulfoxide、culture grade/SIGMA)を1.25%(v/v)になるように細胞に添加した。約2×104個の懸濁した細胞を含むDMSO90μlで処理した培養液を96ウェルプレート(Corning/low evaporation 96 well plate)の各ウェルに入れ、37℃、5%CO2培養器で72時間培養した。
【0114】
G−CSF ELISAキット(R & D systems、米国)を用いて各試料の濃度を決定し、各試料を10μg/mlになるようにRPMI1640で適宜希釈した。生成した溶液をRPMI1640で1/2ずつ連続希釈する過程を19回繰り返した。
このようにして製造された試料10μlずつを培養中のHL−60細胞が入っている各ウェルに加え、最終濃度を1000ng/mlから連続的に半減させた。タンパク質試料で処理された細胞を37℃培養器で72時間さらに培養した。
培養後、細胞の成長程度を調査するために、CellTiter96(商標)(PROMEGA社、米国)を用いて670nmで吸光度を測定することによって細胞数を決定した。
【0115】
【表10】
【0116】
表10から分かるように、アミノ酸を変形させた17Ser−G−CSF誘導体のIgGタンパク質結合体も野生型のタンパク質結合体と同様な効果を示した。PEGで修飾された17Ser−G−CSF誘導体は修飾されていないものに比べて血中半減期は増加するが、活性は低下することが既に確認されている(韓国特許出願第2003−17867号)。特に、PEG部分の分子量が増加するほどPEGによって修飾された17Ser−G−CSF誘導体の血中安定性は増加したが、その相対活性は次第に減少した。40kDaのPEGで修飾された17Ser−G−CSF誘導体連結体は、野生型の約10%に該当する非常に低い試験管内活性を示した。すなわち、PEGの分子量が増加するほど血中半減期は増加するが、その薬効は急激に減少するので、改善された薬剤学的活性および延長された半減期を有する物質の開発が要求されてきた。一方、アルブミンで修飾された17Ser−G−CSF誘導体は野生型の約23%に該当する相対的に低い試験管内活性を示した。しかし、17Ser−G−CSF誘導体をIgGで修飾した場合(17Ser−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体)、その相対活性は野生型の69%以上の水準に増加した。このような結果は、本発明のIgGタンパク質結合体が延長された半減期とともに高い生体内活性を有することを示す。
【0117】
(4)EPOタンパク質結合体の試験管内活性比較
野生型EPO(BRP、UK)、高糖鎖化EPO(Aranesp、USA)およびEPO−PEG−IgG結合体の試験管内活性を測定した。
まず、ヒト骨髄起源の細胞株であるTF−1細胞(ATCC CRL-2003、erythroleukemia)を10%のFBS、12ng/mlのGM−CSFを含むRPMI1640培地で培養した後、GM−CSFを除去した同じRPMI1640培地で1日間培養した。約2×104個の細胞を有する培養液50μlずつを96−ウェルプレート(Corning/low evaporation 96 well plate)の各ウェルに加え、37℃、5%CO2培養器で72時間培養した。
【0118】
EPO ELISAキット(R & D systems、米国)を用いて各試料の濃度を測定し、各試料をRPMI1640で最終濃度が10μg/mlになるように適宜希釈した。生成した溶液をRPMI1640で1/2ずつ連続希釈する過程を19回繰り返した。
このように製造された試料を培養中のTF−1細胞が入っている各ウェルに50μlずつ加え、最終濃度を5μg/mlから連続的に半減させた。タンパク質試料で処理されたプレートを37℃、5%CO2培養器で72時間さらに培養した。
培養後、細胞の成長程度を調査するために、CellTiter96(商標)AQueous One(Cat. No. G3581、PROMEGA社製、米国)を用いて490nmで吸光度を測定することによって細胞数を決定した。
【0119】
【表11】
【0120】
表11から分かるように、試験に用いたすべての試料はヒト骨髄起源の細胞株の成長を促進させることによって立証されたように試験管内活性を有する。また、高糖鎖化されたEPOとPEG−IgG連結体によって修飾されたEPOの試験管内活性は修飾されていないEPOよりも低かった。しかし、本発明のEPOタンパク質結合体の場合、著しく増加した血中半減期のため、修飾されていないEPOに比べて優れた生体内活性を有すると期待される。本発明のEPOタンパク質結合体の場合、レセプターに対する結合力を保存する役割をするIgGとの結合による増加した血中安定性および空間的余裕を提供する非ペプチド性重合体によってタンパク質の活性が増加したものとみられる。
【0121】
(5)Fab’タンパク質結合体の細胞毒性中和
実施例8および9で製造したFab’−S−PEG−N−IgGおよびFab’−N−PEG−N−IgG結合体、および比較例3で製造したFab’−S−40K PEG連結体がマウス繊維芽細胞株L929(ATCC CRL−2148)に対するTNF−αの細胞毒性を中和させる能力を測定することによって、これらの試験管内活性を調査した。
【0122】
各々のFab’結合体および連結体を2倍ずつ順次希釈し、希釈液各100μlずつを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。rhTNF−α(R & D systems)と、RNA合成の阻害剤であるアクチノマイシン−D(Sigma)を各々10ng/mlおよび1ug/mlの濃度になるように各ウェルに加えた。この反応混合物を37℃、5%CO2の条件で30分間反応させた後、分析用マイクロプレートに移した。L929細胞株培養液50ulずつを5x104細胞/ウェルになるように各ウェルに加えて37℃、5%CO2培養器で24時間培養した。ウェルの培養液を除去した後、PBSに5mg/mlの濃度で溶けているMTT(sigma)を50μlずつ各ウェルに入れた後、細胞を37℃、5%CO2培養器で4時間培養した。DMSO 150μlを各ウェルに加えて溶解した。540nmで吸光度を測定して試験Fab’結合体および連結体によるrhTNF−αの細胞毒性の中和程度を決定した。対照群としては実施例8の段階1で得られた精製されたFab’を用いた。
【0123】
図13の結果から分かるように、すべてのタンパク質結合体および連結体はFab’と同様な吸光度を示した。このような結果は、IgGがFab’のN−末端またはC−末端近くの遊離システイン残基にPEGスペーサーを通じて結合したFab’−PEG−IgG結合体がFab’の生物学的活性を保持することを示す。
【0124】
[試験例5]動物モデルにおける生体内活性測定
(1)hGHタンパク質結合体の生体内活性比較
各実験群当り10匹ずつの脳下垂体が除去された雄スプラーグ・ドーリーラット(5週齢、SLC社製、日本)を用いて体重増加試験を行ってhGH−PEG−IgG結合体、hGH−40K PEG連結体および野生型hGHの生体内活性を測定した。溶媒対照群、野生型hGH、hGH−PEG−IgG結合体、およびhGH−40K PEG連結体を、下記表12のような投与スケジュールおよび容量に従って、ラットの肩背部の皮下に26G注射器(1ml、(株)韓国ワクチン)で各々投与した。投与前および投与16時間後ラットの体重を測定した。最終投与から24時間後、ラットをエーテル麻酔で致死させ、肉眼で脳下垂体の残存有無を検査して、脳下垂体の残存物が観察された個体は結果から除外した。
【0125】
【表12】
【0126】
各試料の投与後の体重変化を図14に示す。標準品(対照群)として用いられた野生型hGHは生体内活性を保持するために毎日投与しなければならないので、毎日1回ずつ12日間投与したので、グループ2のラットは投与期間を通じて体重増加が観察された。hGH−40kDa PEG連結体を6日に1回投与したグループ3のラットは、投与後3日まで持続的に体重が増加し、3日以降は体重増加率が鈍化した。このような結果は、hGH−40kDa PEG連結体が野生型hGHに比べて遥かに長い半減期および高い試験管内活性を示した試験例1および2の結果からの予想と一致する。特に、hGH−PEG−IgG結合体を野生型投与容量の1/3容量で6日に1回投与することによって得られる効果は野生型を毎日投与したものと等しいか、より良好であった。これは、hGH−PEG−IgG結合体の生体内活性が野生型よりも3倍以上高いことを意味する。
【0127】
(2)G−CSF誘導体タンパク質結合体の生体内活性比較
17番目のアミノ酸がセリンで置換された17Ser−G−CSFを用いて本発明のタンパク質結合体の効果を調査するために、野生型G−CSF、市販中の20kDa PEG−G−CSF連結体および17Ser−G−CSF−PEG−IgG結合体の生体内活性を比較した。本発明の17Ser−G−CSF−PEG−IgG結合体は溶媒(20mMリン酸ナトリウム、1%グリシン、0.25%マンニトール、pH7.0)に溶解した。比較群としては、野生型メチオニルG−CSF連結体(Filgrastim、Amgen、USA)および20kDaのPEGで修飾されたG−CSF(Neulasta、Amgen、USA)を前記と同じ溶媒に希釈して使用した。7週齢の雌ICRマウスをセムタコBio(韓国)から購入して一週間の順化期間を経た後試験に用いた。試験開始時、ICRマウスの体重は30〜35gであった。順化期間および試験期間中には実験動物用飼料(三養社、韓国)および水を自由に摂取させ、温度22±3℃、相対湿度55±5%、換気回数10〜12回/時間、照度150〜200ルクス(lux)および12時間明/12時間暗の明暗周期の条件下で檻に閉じ込めた。各実験群は5匹のマウスからなり、複合抗癌剤と各試料を下記表13のような投与スケジュールおよび容量でマウスに投与した。好中球減少症(Neutropenia)動物モデルはシクロヘキサミド(CPA;Sigma、米国)130mg/kg、ドキソルビシン(DXR;Sigma、米国)4.5mg/kgおよびビンクリスチン(VCR;Sigma、米国)1mg/kgの混合物をICRマウスの腹腔内に単回投与して製造した。無処置群は抗癌剤を投与せず、好中球数の減少を示さない。溶媒対照群は抗癌剤を投与して好中球の数を低め、薬物の代わりに賦形剤のみを投与した群である。抗癌剤投与後1日目から5日目まで午前10時頃に野生型G−CSFを100μg/kg/日の容量で皮下注射した。17Ser−G−CSF−PEG−IgG結合体と20kDa PEG−G−CSF連結体(Neulasta、Amgen、USA)は抗癌剤投与後1日目に1回のみ投与したが、投与容量は1000μg/kg/日であって、野生型1日投与容量の2倍量で(200μg/kg/日)5日分を一回に投与した。抗癌剤投与後1、2、3、4、5、6および8日目に0.3〜0.5mlの血液をマウスの眼窩静脈層から採血した。採血時間は薬物投与6時間後である午後4時頃であった。自動血球測定器で白血球(WBC)、赤血球(RBC)および血小板(Platelet)の数を測定した。また、血液塗抹標本を製作してギムザ(Giemsa)染色を行った。各血球を分別計数して得られた好中球(neutrophil)の比率を得、これに基づいて下記式1によって好中球の数を算出した。
【0128】
<式1>
好中球の数(細胞/mm3)=総WBCの数(細胞/mm3)×好中球比率(%)×1/100
無処置群、溶媒対照群、および17Ser−G−CSF誘導体−PEG−IgG群から得られた値の統計的有意義性を検証するために、各群の血球数および体重に対してStudent’s t-testを用いて統計的分析を行った。
【0129】
【表13】
【0130】
各試料の投与後の好中球回復効果を図15に示す。標準品として用いた野生型G−CSFを5日間毎日投与したとき、投与期間中好中球の数が徐々に増加して5日目に最高値に達した。20kDa PEG−G−CSFを1日投与容量の2倍容量で1回投与すると野生型G−CSFを毎日投与したときに観察されたものの2/3程度の生体内効力を示した反面、17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体は20kDa PEG−G−CSF連結体の生体内活性に比べて3倍以上高い活性を示した。また、本発明のタンパク質結合体はG−CSFを毎日投与した場合よりも2倍以上高い好中球回復効果を示したが、このような結果は、17S−G−CSF誘導体−PEG−IgG結合体が野生型に比べて遥かに長い血中半減期と高い生体内活性を有するという結果と一致する。前記結果から、野生型タンパク質を用いた場合と同様に、アミノ酸を変形させた誘導体タンパク質からもIgGおよびPEGの共有結合による本発明のタンパク質結合体の効果を同様に示すことが分かる。したがって、本発明のタンパク質結合体は、頻繁な投与が要求される野生型G−CSFの短所を克服しながらG−CSFの血中半減期および生体内活性を著しく増加させる目的を同時に満たす持続型剤形として効果的に利用できる。
【0131】
(3)EPOタンパク質結合体の生体内活性比較
野生型EPO、高糖鎖化EPO(Aranesp、USA)、およびEPO−PEG−IgG結合体の生体内活性を比較するために、前記試験試料を投与したラットにおける血液成分の変化を調査した。本実験は、文献〔J.C. Egrie and Browne, British Journal of Cancer (2001) B4 (Supplement 1), 3-10〕に記述された方法を若干変形して次のように行った。
【0132】
本発明のEPO−PEG−IgG結合体を溶媒(20mMリン酸ナトリウム、1%グリシン、0.25%マンニトール、pH7.0)に溶解した。比較群としては、野生型EPOおよび高糖鎖化EPOを前記と同じ溶媒に希釈して用いた。7週齢の雌ラットを大韓バイオリンク(株)(韓国)から購入して一週間の順化期間を経た後試験に用いた。試験開始時のラットの体重は200〜250gであった。順化期間および試験期間中には実験動物用飼料(第一製糖(株)、韓国)および水を自由に摂取させ、温度22±3℃、相対湿度55±5%、換気回数10〜12回/時間、照度150〜200ルクス(lux)および12時間明/12時間暗の明暗周期の条件下で檻に閉じ込めた。各実験群は5匹のラットからなり、前記のように準備された各試験試料を下記表14のような投与容量およびスケジュールに従ってラットの肩背部の皮下に26G注射器(1ml、(株)韓国ワクチン)で投与した。
【0133】
投与後、3日に一回ずつ一ヶ月間尻尾の静脈から血液凝固防止剤(EDTA)を含むチューブに全血試料を採取した。血球自動測定装備(Vet ABC)を用いて血液試料のヘマトクリット(hematocrit)を測定した。
【0134】
【表14】
【0135】
各試料の投与後のヘマトクリット回復効果を図16に示す。標準品として用いた野生型EPOを5日間毎日投与したとき、投与期間中ヘマトクリットの数値が徐々に増加して9日目に最高値に達した。高糖鎖化EPOを投与したグループ3のラットでは、ヘマトクリット数値が注射後6日間は速く増加したが、以降は急速に減少した。これに対し、本発明のEPO−PEG−IgG結合体は、ヘマトクリット数値の初期増加速度が高糖鎖化EPOよりも速く、増加幅もさらに大きく、他の試験タンパク質に比べて高い生体内活性を2週間以上保持した。このような結果は、EPO−PEG−IgG結合体が野生型EPOまたは高糖鎖化EPOに比べて遥かに長い血中半減期を示す試験例2の結果から期待されるものと一致する。したがって、本発明のタンパク質結合体は、過度に頻繁な投与が要求される野生型EPOの短所を克服するとともに、EPOの血中半減期および生体内活性を著しく増加させる目的を同時に満たす持続型剤形として効果的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】hGH−PEG−IgG結合体のクロマトグラムである。
【図2】hGH−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果である。
【図3】インターフェロン−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果である。
【図4】DDT処理前と後のhGH−PEG−IgG結合体のSDS−PAGE結果である。
【図5】IFNα−PEG−IgG結合体の逆相HPLCクロマトグラムである。
【図6】hGH−PEG−IgG結合体の質量スペクトルである。
【図7】hGH−PEG−IgG結合体がPEG−hGH連結体に比べて優れた血中安定性を有することを示す薬物動力学グラフである。
【図8】エリトロポイエチン−PEG−IgG結合体が自由エリトロポイエチンまたは高糖鎖化によって安定化されたエリトロポイエチンに比べて向上した血中半減期を有することを示す薬物動力学グラフである。
【図9】非糖鎖化IgG(AG IgG)の分子量スペクトルである。
【図10】IFNα−PEG−AG IgG結合体が野生型IFNαに比べて向上した血中安定性を有し、糖鎖がないにもかかわらず活性を保持することを示す薬物動力学グラフである。
【図11】EPO−PEG−AG IgG結合体が野生型EPOに比べて向上した血中安定性を有し、糖鎖がないにもかかわらず活性を保持することを示す薬物動力学グラフである。
【図12】Fab’−S−PEG−N−IgG結合体およびFab’−N−PEG−N−IgG結合体が野生型Fab’およびFab’−S−40K PEG連結体に比べて向上した血中半減期を有することを示す薬物動力学グラフである。
【図13】Fab’、Fab’−S−40K PEG連結体、Fab’−S−PEG−N−IgG結合体およびFab’−N−PEG−N−IgG結合体の生体内活性を示すグラフである。
【図14】ビヒクル(30μg/日;グループ1)、野生型hGH(30μg/日;グループ2)、hGH−PEG(30μg/日;グループ3)、hGH−PEG−IgG結合体(30μg/日;グループ4)、およびhGH−PEG−IgG結合体(10μg/日;グループ5)の投与後、ラット体重の経時変化に基づくhGH−PEG−IgG結合体の生体内活性を示す。
【図15】好中球(Neutrophil)数の経時変化に基づくG−CSF−PEG−IgG結合体の生体内活性を示す:非処理(グループ1)、ビヒクルのみを注射(グループ2)、野生型G−CSF処理(グループ3)、20kDa PEG−G−CSF処理(グループ4)、および17S−G−CSF−PEG−IgG結合体処理(グループ5)。
【図16】ヘマトクリット(Hematocrit)数の経時変化に基づくEPO−PEG−IgG結合体の生体内活性を示す:溶媒のみを注射(グループ1)、野生型EPO処理(グループ2)、高糖鎖化EPO処理(グループ3)、およびEPO−PEG−IgG結合体処理(グループ4)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合で互いに連結されたi)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含み、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体。
【請求項2】
前記非ペプチド性重合体が両末端に各々反応基を有し、これらを通じて前記重合体が生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと共有結合で連結されている、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項3】
前記免疫グロブリンが、少なくとも二つの生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体からなる連結体に共有結合で連結されている、請求項2記載のタンパク質結合体。
【請求項4】
前記免疫グロブリンがIgG、IgA、IgD、IgE、IgMおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項5】
前記免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項4記載のタンパク質結合体。
【請求項6】
前記免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンである、請求項4記載のタンパク質結合体。
【請求項7】
前記免疫グロブリンが、野生型糖鎖を有する免疫グロブリン、増加または減少した糖鎖を有する免疫グロブリン、糖鎖が除去された免疫グロブリン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項8】
前記免疫グロブリンの糖鎖の増減または除去が、化学的方法、酵素的方法、遺伝工学的方法およびこれらの組合せからなる群から選ばれる方法によって行われる、請求項7記載のタンパク質結合体。
【請求項9】
前記非ペプチド性重合体の反応基がアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、マレイミドおよびスクシンイミド誘導体からなる群から選ばれる、請求項2記載のタンパク質結合体。
【請求項10】
前記スクシンイミド誘導体がスクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルカルボキシメチル、ヒドロキシスクシンイミジルまたはスクシンイミジルカーボネートである、請求項9記載のタンパク質結合体。
【請求項11】
前記非ペプチド性重合体が両末端に各々アルデヒド基を有する、請求項9記載のタンパク質結合体。
【請求項12】
前記非ペプチド性重合体が、その両末端で前記免疫グロブリンのアミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基、および前記生理活性ポリペプチドのアミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基と各々共有結合で連結される、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項13】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ(乳酸−グリコール酸)、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項14】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)である、請求項13記載のタンパク質結合体。
【請求項15】
前記生理活性ポリペプチドがホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質およびレセプターからなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項16】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、コロニー刺激因子、インターロイキン類、グ
ルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、アポリポタンパク質−E、エリトロポイエチン、高糖鎖化エリトロポイエチン、血液因子VII、血液因子VIII、血液因子IX、プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、表皮成長因子、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、結合組織活性化因子、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、FSH放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラクシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン−類似成長因子、副腎皮質刺激ホルモン 、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、レセプター類、レセプター拮抗物質、細胞表面抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FdおよびscFvを含む抗体断片、およびウイルス由来のワクチン抗原からなる群から選ばれる、請求項15記載のタンパク質結合体。
【請求項17】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、顆粒球コロニー刺激因子または赤血球生成因子である、請求項16記載のタンパク質結合体。
【請求項18】
(a)少なくとも一つの生理活性ポリペプチド、および少なくとも一つの免疫グロブリンを両末端に反応基を有する少なくとも一つの非ペプチド性重合体と共有結合で連結する段階;および
(b)共有結合で互いに連結された生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体を必須的に含むタンパク質結合体を分離する段階を含む、請求項1記載のタンパク質結合体の製造方法。
【請求項19】
前記段階(a)が、
(a1)非ペプチド性重合体の一方の末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドのいずれか一つと共有結合で連結する段階;
(a2)生成した反応混合物から非ペプチド性重合体と連結された免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドを含む連結体を分離する段階;および
(a3)前記連結体の非ペプチド性重合体の自由末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドと共有結合で連結して、共有結合で互いに連結された生理活性ポリペプチド、非ペプチド性重合体および免疫グロブリンを含むタンパク質結合体を生成する段階をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記段階(a1)において生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体のモル比が1:2.5〜1:5である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記段階(a1)において免疫グロブリンと非ペプチド性重合体のモル比が1:5〜1:10である請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記段階(a3)において、段階(a2)で得られた連結体と免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドのモル比が1:1〜1:3である請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記段階(a1)および(a3)が各々還元剤の存在下で行われる請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記還元剤がナトリウムシアノボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライド、ジメチルアミンボレートおよびピリジンボレートである請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のタンパク質結合体および薬剤学的に許容可能な担体を含む、半減期が延長された生理活性ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項26】
両末端に反応基を有する非ペプチド性重合体を生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと共有結合で連結することを含む、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を延長させる方法。
【請求項27】
前記免疫グロブリンが、少なくとも二つの生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体からなる連結体に共有結合で連結されている請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgMおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンである請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記免疫グロブリンが、野生型糖鎖を有する免疫グロブリン、増加または減少した糖鎖を有する免疫グロブリン、糖鎖が除去された免疫グロブリン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記免疫グロブリンの糖鎖の増減または除去が、化学的方法、酵素的方法、遺伝工学的方法およびこれらの組合せからなる群から選ばれる方法によって行われる請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記非ペプチド性重合体の反応基がアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、マレイミドおよびスクシンイミド誘導体からなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項34】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)である請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記生理活性ポリペプチドがホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質およびレセプターからなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項36】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、コロニー刺激因子、インターロイキン類、グルコセレプロシダーゼ(glucocerebrosidase)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、アポリポタンパク質−E、エリトロポイエチン、高糖鎖化エリトロポイエチン、血液因子VII、血液因子VIII、血液因子IX、プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、表皮成長因子、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、結合組織活性化因子、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、FSH放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラクシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン−類似成長因子、副腎皮質刺激ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、レセプター類、レセプター拮抗物質、細胞表面抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FdおよびscFvを含む抗体断片、およびウイルス由来のワクチン抗原からなる群から選ばれる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、顆粒球コロニー刺激因子、または赤血球生成因子である請求項36記載の方法。
【請求項1】
共有結合で互いに連結されたi)生理活性ポリペプチド、ii)非ペプチド性重合体、およびiii)免疫グロブリンを含み、前記生理活性ポリペプチドの生体内半減期が延長されたタンパク質結合体。
【請求項2】
前記非ペプチド性重合体が両末端に各々反応基を有し、これらを通じて前記重合体が生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと共有結合で連結されている、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項3】
前記免疫グロブリンが、少なくとも二つの生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体からなる連結体に共有結合で連結されている、請求項2記載のタンパク質結合体。
【請求項4】
前記免疫グロブリンがIgG、IgA、IgD、IgE、IgMおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項5】
前記免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項4記載のタンパク質結合体。
【請求項6】
前記免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンである、請求項4記載のタンパク質結合体。
【請求項7】
前記免疫グロブリンが、野生型糖鎖を有する免疫グロブリン、増加または減少した糖鎖を有する免疫グロブリン、糖鎖が除去された免疫グロブリン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項8】
前記免疫グロブリンの糖鎖の増減または除去が、化学的方法、酵素的方法、遺伝工学的方法およびこれらの組合せからなる群から選ばれる方法によって行われる、請求項7記載のタンパク質結合体。
【請求項9】
前記非ペプチド性重合体の反応基がアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、マレイミドおよびスクシンイミド誘導体からなる群から選ばれる、請求項2記載のタンパク質結合体。
【請求項10】
前記スクシンイミド誘導体がスクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルカルボキシメチル、ヒドロキシスクシンイミジルまたはスクシンイミジルカーボネートである、請求項9記載のタンパク質結合体。
【請求項11】
前記非ペプチド性重合体が両末端に各々アルデヒド基を有する、請求項9記載のタンパク質結合体。
【請求項12】
前記非ペプチド性重合体が、その両末端で前記免疫グロブリンのアミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基、および前記生理活性ポリペプチドのアミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基と各々共有結合で連結される、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項13】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ(乳酸−グリコール酸)、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項14】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)である、請求項13記載のタンパク質結合体。
【請求項15】
前記生理活性ポリペプチドがホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質およびレセプターからなる群から選ばれる、請求項1記載のタンパク質結合体。
【請求項16】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、コロニー刺激因子、インターロイキン類、グ
ルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、アポリポタンパク質−E、エリトロポイエチン、高糖鎖化エリトロポイエチン、血液因子VII、血液因子VIII、血液因子IX、プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、表皮成長因子、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、結合組織活性化因子、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、FSH放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラクシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン−類似成長因子、副腎皮質刺激ホルモン 、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、レセプター類、レセプター拮抗物質、細胞表面抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FdおよびscFvを含む抗体断片、およびウイルス由来のワクチン抗原からなる群から選ばれる、請求項15記載のタンパク質結合体。
【請求項17】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、顆粒球コロニー刺激因子または赤血球生成因子である、請求項16記載のタンパク質結合体。
【請求項18】
(a)少なくとも一つの生理活性ポリペプチド、および少なくとも一つの免疫グロブリンを両末端に反応基を有する少なくとも一つの非ペプチド性重合体と共有結合で連結する段階;および
(b)共有結合で互いに連結された生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンおよび非ペプチド性重合体を必須的に含むタンパク質結合体を分離する段階を含む、請求項1記載のタンパク質結合体の製造方法。
【請求項19】
前記段階(a)が、
(a1)非ペプチド性重合体の一方の末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドのいずれか一つと共有結合で連結する段階;
(a2)生成した反応混合物から非ペプチド性重合体と連結された免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドを含む連結体を分離する段階;および
(a3)前記連結体の非ペプチド性重合体の自由末端を免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドと共有結合で連結して、共有結合で互いに連結された生理活性ポリペプチド、非ペプチド性重合体および免疫グロブリンを含むタンパク質結合体を生成する段階をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記段階(a1)において生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体のモル比が1:2.5〜1:5である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記段階(a1)において免疫グロブリンと非ペプチド性重合体のモル比が1:5〜1:10である請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記段階(a3)において、段階(a2)で得られた連結体と免疫グロブリンまたは生理活性ポリペプチドのモル比が1:1〜1:3である請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記段階(a1)および(a3)が各々還元剤の存在下で行われる請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記還元剤がナトリウムシアノボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライド、ジメチルアミンボレートおよびピリジンボレートである請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のタンパク質結合体および薬剤学的に許容可能な担体を含む、半減期が延長された生理活性ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項26】
両末端に反応基を有する非ペプチド性重合体を生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと共有結合で連結することを含む、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を延長させる方法。
【請求項27】
前記免疫グロブリンが、少なくとも二つの生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体からなる連結体に共有結合で連結されている請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgMおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンである請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記免疫グロブリンが、野生型糖鎖を有する免疫グロブリン、増加または減少した糖鎖を有する免疫グロブリン、糖鎖が除去された免疫グロブリン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記免疫グロブリンの糖鎖の増減または除去が、化学的方法、酵素的方法、遺伝工学的方法およびこれらの組合せからなる群から選ばれる方法によって行われる請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記非ペプチド性重合体の反応基がアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、マレイミドおよびスクシンイミド誘導体からなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項34】
前記非ペプチド性重合体がポリ(エチレングリコール)である請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記生理活性ポリペプチドがホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質およびレセプターからなる群から選ばれる請求項26記載の方法。
【請求項36】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、コロニー刺激因子、インターロイキン類、グルコセレプロシダーゼ(glucocerebrosidase)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、アポリポタンパク質−E、エリトロポイエチン、高糖鎖化エリトロポイエチン、血液因子VII、血液因子VIII、血液因子IX、プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、表皮成長因子、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、結合組織活性化因子、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、FSH放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラクシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン−類似成長因子、副腎皮質刺激ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、レセプター類、レセプター拮抗物質、細胞表面抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FdおよびscFvを含む抗体断片、およびウイルス由来のワクチン抗原からなる群から選ばれる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記生理活性ポリペプチドがヒト成長ホルモン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、顆粒球コロニー刺激因子、または赤血球生成因子である請求項36記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−528346(P2007−528346A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500659(P2006−500659)
【出願日】平成16年3月13日(2004.3.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000535
【国際公開番号】WO2004/081053
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月13日(2004.3.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000535
【国際公開番号】WO2004/081053
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】
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