説明

長い1本鎖核酸および2本鎖核酸から短い1本鎖核酸を分離するための方法、ならびに関連した生体分子アッセイ法

試料中の標的核酸配列の存在または非存在を検出するための方法およびキットが提供される。これらの方法およびキットは、負に帯電したナノ粒子、および金属ナノ粒子と核酸分子との静電的相互作用の使用を含む。これらの方法は、標的とハイブリダイズするタグ化されたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドプローブとの間で差異を生じる、負に帯電したナノ粒子と、ss-核酸およびds-核酸との差次的な相互作用に依拠する。この方法の蛍光変化に対する感度の改善は、ss-核酸が結合された負に帯電したナノ粒子から、溶液中のds-核酸を分離し、次いでその溶液中のds-標的核酸の存在を検出する段階を含むことによって行われた。同じ分離プロトコールを使用して、電気化学的タグまたは放射性タグを用いて実行可能な検出アプローチを作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ハイブリダイゼーションに基づいた核酸検出手順、およびそれを実施するための材料に関する。なお、本出願は、2003年5月16日に出願された米国特許仮出願第60/471,257号および2004年5月12日に出願された同第60/552,793号の優先権の恩典を主張する、2004年5月17日に出願された米国特許出願第10/847,233号の一部継続出願である。本出願はまた、2005年1月21日に出願された米国特許仮出願第60/645,821号の優先権の恩典も主張する。上記に特定した各優先権出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、少なくとも一部は、助成金AG18231のもとで、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から受領した資金を用いて行われた。米国政府は、本発明においていくつかの権利を保有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
特定のオリゴヌクレオチド配列の検出は、臨床的診断、生化学的調査および医学的調査、食品産業および薬品産業、ならびに環境モニタリング、病理学および遺伝学のために重要である(Primrose et al., Principles of Genome Analysis and Genomics, Blackwell Publishing, Malden, MA, Third edition (2003); Hood et al., Nature 421 :444-448 (2003); Rees, Science 296:698-700 (2002))。本発明のアッセイ法は、チップに基づいた方法(Epstein et al., Analytica Chimica Acta 469:3-36 (2002); Chee et al., Science 274:610-614 (1996))を特徴とするが、これらの方法には2つの主要な不都合点がある。第一に、標的の標識化が、通常必要とされる。第二に、表面上の立体的に制約されたプローブへのハイブリダイゼーションが遅い。サンドイッチアッセイ法(Elghanian et al., Science 277:1078-1081 (1997); Taton et al., Science 289:1757-1760 (2000); Cao et al., Science 297:1536-1540 (2002); Park et al., Science 295:1503-1506 (2002))、固定化された分子ビーコン(Dubertret et al., Nat. Biotech. 19:365-370 (2001); Du et al., J. of Am. Chem. Soc. 125:4012-4013 (2003))、表面プラズモン共鳴(Brockman et al., Annual Review of Physical Chemistry 51:41-63 (2000))、多孔質シリコンマイクロキャビティ発光(Chan et al., Materials Science & Engineering C-Biomimetic and Supramolecular Systems 15:277- 282 (2001))、および反射干渉法(Lin et al., Science 278:840-843 (1997); Pan et al., Nano Lett. 3:811-814 (2003))などのアプローチは、前者の問題を回避するが、プローブ固定化のために複雑な表面結合化学を依然として必要とし、かつ反応が遅いという欠点を持ち得る。これらの例のうちのいくつかでは、アッセイ法において、未結合の標識を除去するために、かなりのゆすぎ段階が必要とされるか、または第2のハイブリダイゼーション段階が必要とされる。
【0004】
DNA配列に関するほぼすべてのアッセイ法では、ポリメラーゼ連鎖反応法(「PCR」)を使用して、DNAのわずか1つのコピーから、容易に検出される量まで特定の配列セグメントを増幅させる(Reed et al., Practical Skills in Biomolecular Sciences, Addison Wesley Longman Limited, Edinburgh Gate, Harlow, England (1998); Walker et al., Molecular Biology and Biotechnology, The Royal Society of Chemistry, Thomas Graham House, Cambridge, UK (2000))。PCRの使用は、感度の問題に対処するだけでなく、試料を効果的に精製して、所与のアッセイ法の関心対象ではない可能性がある多量のDNAの影響を緩和する。これらの特徴により、表面プラズモン共鳴 (「SPR」) (Thiel et al., Anal. Chem. 69:4948-4956 (1997); Jordan et al., Anal. Chem. 69:4939-4947 (1997); Nelson et al., Anal. Chem. 73:1-7 (2001); He et al., J. Am. Chem. Soc. 122:9071-9077 (2000))、蛍光マイクロアレイ(Sueda et al., Bioconjugate Chem. 13:200-205 (2002); Paris et al., Nucleic Acids Res. 26:3789-3793 (1998); Lepecq et al., Mol. Biol. 27:87-106 (1967))、半導体または金属ナノ粒子に基づいたアッセイ法 (Bruchez et al., Science 281:2013-2016 (1998); Gerion et al., J. Am. Chem. Soc. 124:7070-7074 (2002); Chan et al., Science 281:2016-2018 (1998); Elghanian et al., Science 277:1078-1081 (1997); Taton et al., Science 289:1757-1760 (2000); Park et al., Science 295:1503-1506 (2002); Cao et al., Science 297:1536-1540 (2002); Maxwell et al., J. Am. Chem. Soc. 124:9606-9612 (2002); Dubertret et al., Nat. Biotech. 19:365- 370 (2001); Sato et al., J. Am. Chem. Soc. 125:8102-8103 (2003))、および水溶性共役ポリマーに基づくセンサー(Gaylord et al., J. Am. Chem. Soc. 125:896-900 (2003))など多種多様な革新的な検知アプローチの開発にもかかわらず、現在、PCRの使用はゲノムDNAの解析にほぼ不可欠になっている。これらの技術は、精製された合成オリゴヌクレオチドにおいて大部分は実証されたが、これらのうちいくつかを、PCRで増幅された試料に適合するように改造することが可能である可能性がある。しかしながら、PCR増幅が一度使用されると、さらなる増幅が簡単であるため、アッセイ法の長所は、その感度よりむしろその平易性によって主として判定される。上述したように、上記のアプローチの大半は、高価な計測装置を必要とするか、またはDNA、基質、もしくはナノ粒子を修飾するための時間のかかる合成を伴う。さらに、立体障害を誘導してプローブと標識の緩徐かつ非効率的な結合をもたらす基質の存在下でハイブリダイゼーションを実施することが、通常必要である。結果として、PCRで増幅された試料の後処理は、費用および時間がかかる場合がある(Rolfs et al., PCR:Clinical Diagnostics and Research, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg (1992))。
【0005】
DNAと負に帯電した金ナノ粒子間の複合体は、長年、研究されており(Mirkin et al., Nature 382:607-609 (1996); Alivisatos et al., Nature 382:609-611 (1996))、多くの独創的なスキームは、ナノアセンブリーまたはオリゴヌクレオチド検知のいずれかのために、特定の標的DNA配列に結合するようにDNA配列で共有結合的に機能化された金のナノ粒子を活用した(Elghanian et al., Science 277:1078-1081 (1997); Taton et al., Science 289:1757-1760 (2000); Park et al., Science 295:1503-1506 (2002); Cao et al., Science 297:1536-1540 (2002); Maxwell et al., J.Am. Chem. Soc. 124:9606-9612 (2002); Dubertret et al., Nat. Biotech. 19:365-370 (2001); Sato et al., J. Am. Chem. Soc. 125:8102-8103 (2003); Mirkin et al., Nature 382:607-609 (1996); Alivisatos et al., Nature 382:609-611 (1996); Chakrabarti et al., J.Am. Chem. Soc. 125:12531-12540 (2003); Loweth et al., Angew. Chem. Int. Ed. 38:1808-1812 (1999); Mbindyo et al., Adv. Mater. 13:249-254 (2001))。
【0006】
前述の内容に基づくと、標的核酸の検出のために修飾を必要としない帯電したナノ粒子および標的核酸分子を使用するアッセイ法を提供することが望ましいと思われる。さらに、ハイブリダイゼーションを劇的に減速させ、かつその効率を低下させる表面結合プローブの立体的制約の無い最適な条件下で実施することができるように、ハイブリダイゼーションが検出から完全に切り離されているアッセイ法を提供することが望ましいと思われる。
【0007】
本発明は、当技術分野においてこれらの目標を達成し、かつこれらの欠陥および他の欠陥を克服することを対象としている。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の第1の局面は、試験溶液(例えば試料)中の標的核酸分子の存在または非存在を検出するための方法に関する。本方法は、以下の段階を含む:少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを、標的核酸を潜在的に含む試験溶液と混合してハイブリダイゼーション溶液を作る段階であって、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブおよび試験溶液が、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブと、試験溶液中に存在する任意の標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で混合される段階;前記の混合する段階の後にハイブリダイズしていないままである少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが複数の金属ナノ粒子と静電気的に結合することを可能にするのに有効な条件下で、ハイブリダイゼーション溶液を複数の金属ナノ粒子に曝露する段階;ならびに、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたか、または複数の金属ナノ粒子のうちの1つもしくは複数と静電気的に結合したかを判定する段階であって、標的核酸へのハイブリダイゼーションまたは1つもしくは複数の金属ナノ粒子との静電気的結合が、ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性によって示唆される段階。
【0009】
本発明のこの局面に関して、特に好ましいいくつかの態様がある。比色アッセイ法と呼ばれる1つの態様は、非標識のオリゴヌクレオチドプローブを使用し、かつ、曝露する段階の後にハイブリダイゼーション溶液の色の変化を検出することにより判定を行う段階であって、色の変化により、標的核酸の存在下での複数の金属ナノ粒子の実質的な凝集が示唆される段階を含む。色の変化が起こらない場合(または微々たる変化しか起こらない場合)、標的核酸の非存在が示唆される。別の態様は、蛍光標識したオリゴヌクレオチドプローブを使用し、かつ、複数の金属ナノ粒子に曝露した後に蛍光が検出され得るか否かを判定する段階であって、蛍光の消失により標的核酸の非存在が示唆され、蛍光の残存によりその存在が示唆される段階を含む。標識オリゴヌクレオチドプローブによる蛍光が残存している場合、それらのオリゴヌクレオチドプローブは二重鎖を形成しており、かつ金属ナノ粒子から離れたままである(すなわち、蛍光消光はまったく起こっていない)。
【0010】
本発明の第2の局面は、標的核酸分子中の一塩基多型(「SNP」)を検出するための方法に関する。本方法は、(i)標的核酸分子を含む試験溶液および(ii)一塩基多型を含み得る標的核酸分子のある領域にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する、少なくとも1つの第1の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを混合して、ハイブリダイゼーション試験溶液を作る段階であって、該混合する段階が、標的核酸分子と少なくとも1つの第1の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションを可能にして、少なくとも1つのハイブリダイゼーション複合体を形成させるのに有効な条件下で実施される段階;(i)標的核酸分子を含む対照溶液および(ii)一塩基多型を含まない標的核酸分子のある領域に完全にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する、少なくとも1つの第2の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを混合して、対照ハイブリダイゼーション溶液を作る段階であって、該混合する段階が、標的核酸分子と少なくとも1つの第2の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションを可能にして、少なくとも1つのハイブリダイゼーション複合体を形成させるのに有効な条件下で実施される段階;ハイブリダイゼーション試験溶液および対照ハイブリダイゼーション溶液を、少なくとも1つの第1の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブの融解温度と少なくとも1つの第2の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブの融解温度の間である温度でこれらのハイブリダイゼーション溶液を維持しつつ、ハイブリダイゼーション溶液中のハイブリダイズしていないプローブが金属ナノ粒子と静電気的に結合することを可能にするのに有効な条件下で、複数の金属ナノ粒子に曝露する段階;ならびに、ハイブリダイゼーション試験溶液および対照ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性が実質的に異なっていて、標的核酸分子中の一塩基多型の存在が示唆されているかどうかを判定する段階によって実施される。
【0011】
本発明の第3の局面は、標的核酸分子中のSNPを検出するための方法に関する。本方法は、以下の段階によって実施される:(i)標的核酸分子を含む溶液、ならびに(ii)一塩基多型を含み得る標的核酸分子のある領域にハイブリダイズするヌクレオチド配列およびそれに結合された蛍光標識を有する、少なくとも1つの第1の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを混合して、ハイブリダイゼーション溶液を作る段階であって、該混合する段階が、標的核酸分子と少なくとも1つの第1の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションを可能にして、少なくとも1つのハイブリダイゼーション複合体を形成させるのに有効な条件下で実施される段階;ハイブリダイゼーション溶液中のハイブリダイズしていないプローブが金属ナノ粒子と静電気的に結合することを可能にするのに有効な条件下で、ハイブリダイゼーション溶液を複数の金属ナノ粒子に曝露する段階;蛍光標識による光ルミネセンスの消光が始まるハイブリダイゼーション溶液の温度を決定する段階であって、該温度が融解温度に相当する段階;ならびに、ハイブリダイゼーション溶液の融解温度を、完全に相補的なプローブの公知の融解温度と比較する段階であって、これらの融解温度間の差異により、標的核酸分子中の一塩基多型の存在が示唆される段階。
【0012】
本発明の第4の局面は、試験溶液中の標的核酸を検出するための方法に関する。本方法は、以下の段階を含む:標的核酸を潜在的に含む試験溶液の一部をポリメラーゼ連鎖反応に供し、かつ、ポリメラーゼ連鎖反応の1本鎖核酸生成物を含む生成物溶液を得る段階;少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブと、生成物溶液中に存在する任意の標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを生成物溶液と混合して、ハイブリダイゼーション溶液を作る段階;ハイブリダイゼーション溶液中の任意の1本鎖核酸が複数の金属ナノ粒子と結合することを可能にするのに有効な条件下で、ハイブリダイゼーション溶液を複数の金属ナノ粒子に曝露する段階;ならびに、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたか、または複数の金属ナノ粒子のうちの1つもしくは複数と静電気的に結合したかを判定する段階であって、標的核酸へのハイブリダイゼーションまたは1つもしくは複数の金属ナノ粒子との静電気的結合が、ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性によって示唆される段階。
【0013】
本発明の第5の局面は、試料中の病原体を検出する方法であって、病原体の核酸を含み得る試料を得る段階、および次いで、病原体の標的核酸に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて本発明の方法を実施する段階を含み、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたかどうかを判定する段階により、病原体の存在が示唆される方法に関する。
【0014】
本発明の第6の局面は、遺伝子スクリーニングの方法に関する。本方法は、試料を得る段階、試料からDNAを単離する段階、試料から単離したDNAを増幅する段階、および次いで遺伝的病態または遺伝性病態などを診断するために特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて本発明の方法を実施する段階によって実施され、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたかどうかを判定する段階により、遺伝的病態、遺伝性病態に対する素因、または生物の同一性が示唆される。
【0015】
本発明の第7の局面は、試料中のタンパク質を検出する方法に関する。本方法は、試料を得る段階、その試料を用いて、タンパク質にコンジュゲートされている核酸の増幅をもたらすイムノポリメラーゼ連鎖反応手順を実施する段階、および次いで、タンパク質にコンジュゲートされている核酸(またはその相補体)に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて、本発明の方法を実施する段階によって実施され、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたかどうかを判定する段階により、そのタンパク質が試料中に存在することが示唆される。
【0016】
本発明の第8の局面は、ポリメラーゼ連鎖反応によって調製される増幅された核酸の量を定量する方法に関する。本方法は、増幅しようとする核酸分子またはその相補体にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列をそれぞれが有する、2種またはそれ以上の蛍光標識したオリゴヌクレオチドプライマーを提供する段階;標的核酸分子および/またはその相補体、ならびに提供された蛍光標識したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を実施する段階;ならびに、前記ポリメラーゼ連鎖反応を実施する段階の後に得られる試料に対して本発明の蛍光定量的方法を実施する段階によって実施され、試料から検出される蛍光のレベルにより、増幅された核酸分子中に組み込まれたプライマーの量が示唆される。
【0017】
本発明の第9の局面は、以下の段階を含む、試験溶液中の標的核酸の存在または非存在を検出するための方法に関する:少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを、標的核酸を潜在的に含む試験溶液と混合してハイブリダイゼーション溶液を作る段階であって、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブおよび試験溶液が、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブと、試験溶液中に存在する任意の標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で混合される段階;前記の混合する段階の後にハイブリダイズしていないままである任意の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブまたは非標的核酸が負に帯電した複数のナノ粒子と静電気的に結合することを可能にするのに有効な条件下で、ハイブリダイゼーション溶液を負に帯電した複数のナノ粒子に曝露する段階;前記の曝露する段階の後に、負に帯電した複数のナノ粒子をハイブリダイゼーション溶液から分離する段階;ならびに、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたかどうかを判定する段階。本方法は、本発明の他の局面に従って、SNP検出、PCR生成物の検出、病原体核酸の検出、および標的核酸の定量用に適合させることができる。
【0018】
本発明の第10の局面は、使用者が本発明の1つまたは複数の方法を実施することを可能にすると考えられる様々な構成要素を含むキットに関する。1つの態様によれば、これらのキットは、負に帯電した複数のナノ粒子を含む第1の容器;および負に帯電したナノ粒子の凝集を引き起こすのに有効である濃度の塩を有する塩溶液を含む第2の容器を最低限含む。第2の態様によれば、これらのキットは、標的核酸に相補的な少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含む第3の容器、ならびに/またはハイブリダイゼーション溶液および/もしくは凝集したナノ粒子のろ過を可能にするのに十分なフィルターを含む第4の容器をさらに含む得る。第3の態様によれば、これらのキットは、基材に結合された負に帯電した複数のナノ粒子を含む容器を含み得る。
【0019】
本発明の第11の局面は、本発明の方法を実施するための検出装置に関する。
【0020】
本発明のアッセイ法およびキットは、負に帯電したナノ粒子および核酸分子の使用を含み、ナノ粒子と核酸分子の静電的相互作用を利用する。特に、出願人らは、本発明のアッセイ法および材料によって利用することができる4種の独特な相互作用を特定した。これらには、以下のものが含まれる:(1)特定の条件下で、1本鎖核酸は、負に帯電したナノ粒子上に吸着するのに対し、2本鎖核酸分子は吸着しないという発見;(2)コロイド溶液中に懸濁された負に帯電したナノ粒子上に1本鎖核酸分子が吸着することにより、ナノ粒子が、塩によって誘導される凝集を起こさないように安定化されること;(3)1本鎖核酸分子の吸着速度が、配列の長さに依存すること;および(4)1本鎖核酸分子の吸着速度が、溶液の温度に依存すること。
【0021】
1本鎖核酸および2本鎖核酸の静電気的特性の本質的な差異は、ss-核酸が十分にほどけてその塩基を露出し得るのに対し、ds-核酸は、負に帯電したリン酸骨格を常に与える安定な二重らせんの幾何学的配置を有するために、おそらくは生じる(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Watson, The Double Helix:A Personal Account of the Discovery of the Structure of DNA, Weidenfeld and Nicholson, London (1968); Bloomfield et al., Nuclei Acids:Structures, Properties, and Functions, University Science Books, Sausalito, California (1999))。溶液中の負に帯電したナノ粒子は、粒子間の強いファンデルワールス引力がそれらの凝集を引き起こすのを防ぐ、それらの反発作用によって、典型的には安定化されている(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Hunter, Foundations of Colloid Science, Oxford University Press Inc., New York (2001); Shaw, Colloid and Surface Chemistry, Butterworth-Heinemann Ltd., Oxford (1991))。ds-核酸の帯電したリン酸骨格と負に帯電したナノ粒子の間の反発作用は、ナノ粒子とds-核酸の間の静電的相互作用より優勢であり、その結果、ds-核酸は吸着しないと考えられる。ss-核酸は、その塩基を部分的にほどくのに十分なだけ可撓性であるため、これらの塩基は、負に帯電したナノ粒子に曝露され得る。これらの条件下では、主鎖上の負電荷は十分に離れており、その結果、塩基とナノ粒子の間の引力性のファンデルワールス力は、負に帯電したナノ粒子へのss-核酸の吸着を引き起こすのに十分である。二重鎖構造では、塩基を露出するのに必要とされるアンコイリング(uncoiling)が不可能であるため、同じメカニズムは、ds-核酸では機能しない。本発明において、負に帯電したナノ粒子(例えば、クエン酸でコーティングされたAuナノ粒子)へのss-DNAおよびRNAの選択的吸着が立証される。さらに、ss-核酸の吸着により、負電荷の反発的な相互作用を通常は遮ると考えられる塩濃度で凝集を起こさないようにナノ粒子が安定化されることが示される。金属ナノ粒子の場合、それらの色は、表面プラズモン共鳴によって主として決定され、かつ、これは、ナノ粒子の凝集によって劇的に影響を及ぼされる(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Link et al., Intl. Reviews in Physical Chemistry 19:409-453 (2000); Kreibig et al., Surface Science 156:678-700 (1985); Quinten et al., Surface Science 172:557-577 (1986))。ss-核酸およびds-核酸の静電気的特性の差異を用いて、単純な比色ハイブリダイゼーションアッセイ法を設計することができる。このアッセイ法は、市販されている未修飾の材料を使用する、タグ化されていないオリゴヌクレオチドの配列特異的な検出のために使用することができる。このアッセイ法は、100フェムトモルのレベルでの視覚的検出のために実施し易く、かつ、プローブと標的の一塩基ミスマッチを検出するために容易に適合されることが示される。また、標的とプローブ配列の長さのミスマッチが、金属ナノ粒子上にオリゴヌクレオチドが吸着する傾向にどのように影響を及ぼすかに関する最初の研究も、本明細書において提示される。
【0022】
本発明のアッセイ法およびキットにおいて、上記に確認した相互作用を利用することによって、本発明は、以前に開発された検出手順より優れたいくつかの利益を与える、標的核酸を検出する方法を提供する。これらの利益のいくつかには以下のものが含まれる:標的の標識化が不要であること;これらのアッセイ法は溶液中で実施され、(ハイブリダイゼーションプロセスを減速させる傾向がある、チップまたは表面に基づいたアッセイ法より有意に速い)約10分未満での標的核酸の検出を可能にすること;検出手順はハイブリダイゼーション手順から時間的に切り離されており、その結果、検出手順とほとんど関係無く、または全く関係無く、ハイブリダイゼーションプロセスを最適化できること;および、これらのアッセイ法は、市販されている材料を用いて実施できること。本発明の2つの基本的な態様である比色アッセイ法および蛍光定量的アッセイ法は、有意な利益をもたらす。比色アッセイ法は、蛍光顕微鏡または光電子増倍管など高価な検出装置を必要とせずに実施することができる。比色アッセイ法における陽性結果または陰性結果の検出は、観察者が裸眼で評価することができる。これらのアッセイ法は極めて感度が高く、フェムトモル量(または蛍光的アプローチの場合にはより少ない量)の標的核酸を検出することができ、核酸の複合混合物を区別することができ、かつ、野生型の標的と、SNPもしくは欠失のような他の変異またはノックアウト挿入のような改変を有するものを区別することができる。ゲノムDNA中のSNPの検出は、特に困難であるが、いくつかの遺伝性の病態および癌に関連しているため、診断技術の最前線にある(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Friedberg, Nature 421 :436-439 (2003); Futreal et al., Nature 409:850-852 (2002))。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明の方法は、試料または試験溶液中の標的核酸分子の存在(または実質的な非存在)を検出するために使用することができる。基本的には、本方法は、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブと、試験溶液中に存在する任意の標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブおよび試験溶液を混合する段階を含む。標的核酸がまったく存在しない場合、または標的核酸が実質的に存在しない場合、ハイブリダイゼーション複合体はまったく形成しないか、またはハイブリダイゼーション複合体は実質的に形成しないと考えられる。ハイブリダイゼーションを生じさせた後(すなわち、プローブと標的のハイブリダイゼーションが可能である場合)、ハイブリダイゼーション溶液は、ハイブリダイズしていない任意のプローブが、負に帯電した複数のナノ粒子と静電気的に結合することを可能にするのに有効な条件下で、負に帯電した複数のナノ粒子に曝露される。次いで、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたか、または負に帯電した複数の金属ナノ粒子のうちの1つもしくは複数と静電気的に結合したかが判定される。この判定は、後述するように、ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性に従って下される。
【0024】
本発明の方法は、後述するように、ハイブリダイゼーション段階後に未結合のままである短い1本鎖プローブ分子(または他のss-核酸)からds-核酸を分離する段階をさらに含み得る。
【0025】
検出することが意図される標的核酸分子は、DNAまたはRNAであり得る。DNAもしくはRNAは、十分な量で存在する場合には、試料から直接単離し(すなわち、細胞片が無くなるまで濃縮し)、次いで試験することができ、または、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)もしくは逆転写PCRによって最初に増幅することができる。したがって、検出しようとするDNAは、増幅されたcDNAであり得る。DNAは増幅されたcDNAであり得るため、cDNAはまた、合成ヌクレオシド塩基、天然ヌクレオシド塩基、または構造的に改変されたヌクレオシド塩基をその中に組み入れていてもよい。
【0026】
標的核酸分子はまた、任意の供給生物(例えば、ヒト、または他の動物、ウイルス、細菌、昆虫、植物など)に由来してよい。
【0027】
代替として、標的核酸は、タンパク質もしくはポリペプチドに結合されているか、またはそうでなければコンジュゲートされているヌクレオチド配列を含み得る。このような場合では、標的核酸の検出により、タンパク質またはポリペプチドの存在が直接確認される。あるいは、標的核酸は、イムノPCR手順に関与するタンパク質もしくはポリペプチドに結合されているか、またはそうでなければコンジュゲートされているヌクレオチド配列を含み得る。続いて増幅された標的cDNAにより、試験される試料中の標的核酸の存在が間接的に確認される(すなわち、標的cDNAの非存在により、最初の試料中に標的が存在していないことが確認される)。
【0028】
本発明において使用され得る1本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、非標識でもよく、または、標識にコンジュゲートされているか、もしくはそうでなければ結合されていてよい。適切な標識には、蛍光標識、レドックス(電気化学的)標識、および放射性標識が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0029】
オリゴヌクレオチドプローブへの蛍光標識の結合は、公知の核酸結合化学を用いて、または当技術分野において周知のイオン力、共有結合力、もしくは他の力などの物理的手段によって、実現することができる(例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Dattagupta et al., Analytical Biochemistry 177:85-89 (1989); Saiki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230-6234 (1989); Gravitt et al., J. Clin. Micro. 36:3020-3027 (1998)を参照されたい)。末端塩基または末端塩基近くの別の塩基のいずれかを蛍光標識に結合することができる。例えば、オリゴヌクレオチドプローブの末端のヌクレオチド塩基を、(非限定的に)カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、またはチオールなどの反応性基を含むように修飾することができる。
【0030】
蛍光標識は、核酸にコンジュゲートされることができ、かつ、適切な検出機器を用いて検出し、容易に同定することができる光ルミネセンス特性を好ましくは有する任意の蛍光体であることができる。例示的な蛍光標識には、蛍光色素、半導体量子ドット、ランタニド原子を含む複合体、および蛍光タンパク質が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明において使用される蛍光体は、視覚的に、または当技術分野において公知のタイプの光学検出器を用いて検出可能である最大蛍光発光を特徴とする。可視スペクトル中に最大蛍光発光を有する蛍光体が好ましい。
【0031】
例示的な色素には、Cy2(商標)、YO-PRO(商標)-1、YOYO(商標)-1、カルセイン、FITC、FluorX(商標)、Alexa(商標)、ローダミン110、5-FAM、Oregon Green(商標)500、Oregon Green(商標)488、RiboGreen(商標)、ローダミングリーン(商標)、ローダミン123、Magnesium Green(商標)、Calcium Green(商標)、TO-PRO(商標)-1、TOTO(登録商標)-1、JOE、BODIPY(登録商標)530/550、Dil、BODIPY(登録商標)TMR、BODIPY(登録商標)558/568、BODIPY(登録商標)564/570、Cy3(商標)、Alexa(商標)546、TRITC、Magnesium Orange(商標)、フィコエリトリンR&B、ローダミンファロイジン、Calcium Orange(商標)、ピロニンY、ローダミンB、TAMRA、ローダミンレッド(商標)、Cy3.5(商標)、ROX、Calcium Crimson(商標)、Alexa(商標)594、Texas red(登録商標)、ナイルレッド、YO-PRO(商標)-3、YOYO(商標)-3、R-フィコシアニン、C-フィコシアニン、TO-PRO(商標)-3、TOTO(登録商標)-3、DiD DilC(5)、Cy5(商標)、チアジカルボシアニン、およびCy5.5(商標)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。現在公知であるか、または今後開発される他の色素も、それらの励起および発光の特徴が光源に適合しており、かつ、存在し得る他の蛍光体に干渉しない(すなわち、蛍光共鳴エネルギー転移もしくはFRETに関与することができない)限り、同様に使用することができる。
【0032】
オリゴヌクレオチドプローブへの色素の結合は、例えば、末端塩基または末端塩基近くの別の塩基のいずれかが色素に結合されるのを可能にする様々な公知の技術のうちのいずれかを用いて実施することができる。例えば、3'-テトラメチルローダミン(TAMRA)は、製造業者の取扱い説明書に従って(Glen Research, Sterling, Virginia)、3'-TAMRA-CPGのような市販されている試薬を用いて結合させることができる。他の例示的な手順は、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Dubertret et al., Nature Biotech. 19:365-370 (2001); Wang et al., J. Am. Chem. Soc., 125:3214-3215 (2003); Bioconjugate Techniques, Hermanson, ed. (Academic Press)(1996)において説明されている。
【0033】
例示的なタンパク質には、オワンクラゲ(Aequorea)およびウミシイタケ(Renilla)など様々な供給源に由来する、天然の緑色蛍光タンパク質および改変された(すなわち変異体)緑色蛍光タンパク質の双方(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Prasher et al., Gene 111 :229-233 (1992);PCT出願WO 95/07463);ビブリオ(Vibrio)およびフォトバクテリウム(Photobacterium)など様々な供給源に由来する、天然の青色蛍光タンパク質および改変された青色蛍光タンパク質の双方(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Karatani et al., Photochem.Photobiol. 55(2):293-299 (1992); Lee et al., Methods Enzymol. (Biolumin. Chemilumin.)57:226-234 (1978); Gast et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 80(1):14-21 (1978));ならびに、シアノバクテリアおよび真核藻類に由来するタイプのフィコビリンタンパク質(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Apt et al., J. Mol. Biol. 238:79-96 (1995); Glazer, Ann. Rev. Microbiol. 36:173-198 (1982); Fairchild et al., J. Biol. Chem. 269:8686-8694 (1994); Pilot et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6983-6987 (1984); Lui et al., Plant Physiol. 103:293-294 (1993); Houmard et al., J.Bacteriol. 170:5512-5521 (1988))が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、これらのうちいくつかは、ProZyme, Inc. (San Leandro, CA)から市販されている。現在公知であるか、または今後開発される他の蛍光タンパク質も、それらの励起および発光の特徴が光源に適合しており、かつ、存在し得る他の蛍光体に干渉しない限り、同様に使用することができる。
【0034】
オリゴヌクレオチドプローブへの蛍光タンパク質の結合は、核酸に色素を結び付けるために使用されるのと実質的に同じ手順を用いて実施することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Bioconjugate Techniques, Hermanson, ed. (Academic Press)(1996)を参照されたい。
【0035】
半径がバルク励起子ボーア半径より小さい、(Quantum Dot(商標)粒子としても公知である)ナノ結晶粒子または半導体ナノ結晶は、分子とバルク形態の物質の中間の物質のクラスを構成する。3次元すべてにおける電子および正孔の双方の量子閉じ込めにより、結晶子サイズの縮小に伴って、材料の有効なバンドギャップが増大する。その結果として、ナノ結晶のサイズが小さくなるに従い、半導体ナノ結晶の光吸収および発光の双方とも、青色(より高いエネルギー)にシフトする。キャップされた本発明のナノ結晶粒子が一次光源で照射される場合、光の二次発光は、ナノ結晶粒子中で使用されている半導体材料のバンドギャップに対応する周波数で発生する。バンドギャップは、ナノ結晶粒子のサイズの関数である。キャップされたナノ結晶粒子の分布範囲が狭いことの結果として、照射されたナノ結晶粒子はスペクトル域の狭い光を発して、高純度の光をもたらす。粒子サイズは、直径が約1nm〜約1000nmの間、好ましくは約2nm〜約50nmの間、より好ましくは約5nm〜約20nmであり得る。
【0036】
結果として生じるナノ結晶粒子の蛍光発光は、材料の選択および粒子のサイズ分布の制御に基づいて制御することができる。例えば、ZnSe粒子およびZnS粒子は、青色領域または紫外線領域(約400nmもしくはそれ以下)において蛍光発光を示し;Au、Ag、CdSe、CdS、およびCdTeは、可視スペクトル(約440nm〜約700nmの間)において蛍光発光を示し;InAsおよびGaAsは、近赤外領域(約1000nm)において蛍光発光を示し、かつ、PbS、PbSe、およびPbTeは、近赤外領域(すなわち約700nm〜2500nmの間)において蛍光発光を示す。ナノ結晶粒子の成長を制御することによって、所望の波長で蛍光を発する粒子を作製することが可能である。上記のように、小型の粒子の方が、同じ材料のより大型の粒子と比較すると、青色(より高いエネルギー)へのシフトをもたらすと考えられる。
【0037】
ナノ結晶粒子の調製は、公知の手順、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Murray et al., MRS Bulletin 26(12):985-991 (2001); Murray et al., IBM J. Res. Dev. 45(1):47-56 (2001); Sun et al., J. Appl. Phys. 85(8, Pt. 2A):4325-4330 (1999); Peng et al., J. Am. Chem. Soc. 124(13):3343-3353 (2002); Peng et al., J. Am. Chem. Soc. 124(9):2049-2055 (2002); Qu et al., Nano Lett. 1(6):333-337 (2001); Peng et al., Nature 404(6773):59-61 (2000); Talapin et al., J. Am. Chem. Soc. 124(20):5782-5790 (2002); Shevenko et al., Advanced Materials 14(4):287-290 (2002); Talapin et al., Colloids and Surfaces, A:Physiochemical and Engineering Aspects 202(2-3):145-154 (2002); Talapin et al., Nano Lett. 1(4):207-211 (2001)に従って、実施することができる。あるいは、ナノ結晶粒子は、Evident Technologiesのような商業的供給業者から購入することができる。
【0038】
オリゴヌクレオチドプローブへのナノ結晶粒子の結合は、それに色素を結び付けるために使用されるのと実質的に同じ手順を用いて実施することができる。これらの手順に関する詳細は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Bioconjugate Techniques, Hermanson, ed. (Academic Press)(1996)において説明されている。
【0039】
例示的なランタニド原子には、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLvが含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらのうちで、Nd、Er、およびTbが、蛍光用途において一般に使用されているため、好ましい。オリゴヌクレオチドプローブへのランタニド原子(またはランタニド原子を含む複合体)の結合は、それに色素を結び付けるために使用されるのと実質的に同じ手順を用いて実施することができる。これらの手順に関する詳細は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Bioconjugate Techniques, Hermanson, ed. (Academic Press)(1996)において説明されている。
【0040】
複数のプローブが使用され、かつそれぞれが蛍光標識にコンジュゲートされている場合、適切な検出機器を用いてそれらの蛍光標識を互いから区別できることが好ましい。すなわち、1種の蛍光標識の蛍光発光は、使用される別の蛍光標識の蛍光発光に重なるべきでも、干渉すべきでもない。同様に、任意の1種の蛍光標識の吸収スペクトルは、(他の標識による発光を遮蔽し得る蛍光共鳴エネルギー転移をもたらし得る)別の蛍光標識の発光スペクトルと重なるべきではない。
【0041】
上記のように、様々な電気化学的標識またはレドックス標識のいずれかを使用することができる。オリゴヌクレオチド配列(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、ChoongらのPCT出願WO 01/42508;Pividori et al., S. Biosens. Bioelectron. 15:291-303 (2000))およびDNA損傷(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Mugweru et al., Anal. Chem. 74:4044-4049 (2002)を検出するために、DNA検出に対する様々な電気化学的アプローチが開発された(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Palecek, E. Talanta 56:809-819 (2002))。核酸それら自体の電気的活性(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Mugweru et al., Anal. Chem. 74:4044-4049 (2002); De-los-Santos-Alvarez, Anal. Chem. 74:3342-3347 (2002); Sistare et al., J. Phys. Chem. B 103:10718-10728 (1999); Olivira-Brett et al., Langmuir 18:2326-2330 (2002); Armistead et al., Anal. Chem. 72:3764-3770 (2000); Thorp, Trends in Biotechnol. 16:117-121 (1998))、核酸への電気的活性マーカーの組込み(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、ChoongらのPCT出願 WO 01/42508; Pividori et al., S. Biosens. Bioelectron. 15:291-303 (2000); Yu et al., J. Am. Chem. Soc. 123:11155-11161 (2001); Wang et al., Anal. Chem. 73:5576-5581 (2001))、DNAハイブリダイゼーションによって改変されるレドックス反応を使用する、標識を用いない検出法(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ruan et al., Anal. Chem. 74:4814-4820 (2002); Yan et al., Anal. Chem. 73:5272-5280 (2001); Patolsky et al., Langmuir 15:3703-3706 (1999); Patolsky et al., J. Am. Chem. Soc. 123:5194-5205 (2001))、および二重鎖DNA中への電気的活性部分の選択的インターカレーションが、すべて実証された。サイクリックボルタンメトリー(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、De-los-Santos-Alvarez, Anal. Chem. 74:3342-3347 (2002))、ストリッピング電位差測定法(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Wang et al., Anal. Chem. 73:5576-5581 (2001))、方形波ボルタンメトリー(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Mugweru et al., Anal. Chem. 74:4044-4049 (2002))、微分ボルタンメトリー(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Olivira-Brett et al., Langmuir 18:2326-2330 (2002))、およびACインピーダンス分光法(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ruan et al., Anal. Chem. 74:4814-4820 (2002); Yan et al., Anal. Chem. 73:5272-5280 (2001); Patolsky et al., Langmuir 15:3703-3706 (1999); Patolsky et al., J. Am. Chem. Soc. 123:5194-5205 (2001))を含む、様々な電気化学的測定プロトコールが使用された。他の任意の適切な電気化学的検出手順を使用することができる。
【0042】
例示的な電気化学的標識には、遷移金属錯体(例えば、ルテニウム、コバルト、鉄、もしくはオスミウムの錯体)を含むレポーター基、または水系飽和カロメル参照電極に対して有用なレドックス部分(例えば、遷移金属錯体、1,4-ベンゾキノン、フェロセン、フェロシアニド、テトラシアノキノジメタン、N,N,N',N'-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、もしくはテトラチアフルバレン)、およびAg/AgCI参照電極に対して有用なレドックス部分(例えば、9-アミノアクリジン、アクリジンオレンジ、アクラルビシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、臭化エチジウム、エチジウムモノアジド、クロルテトラサイクリン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、Hoechst 33258、Hoechst 33342、7-アミノアクチノマイシンD、クロモマイシンA3、ミトラマイシンA、ビンブラスチン、リファンピシン、Os(ビピリジン)-2-(ジピリドフェナジン)-2''-Co(ビピリジン)331、もしくはFe-ブレオマイシン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。電気化学的標識は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、ChoongらのPCT出願WO 01/42508において説明されているように、適切なリンカー分子、典型的には有機部分を介して連結されていてもよい。
【0043】
1本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、RNAまたはDNAのいずれかで形成されていてよく、かつ、1つもしくは複数の修飾塩基、1つもしくは複数の修飾糖、1つもしくは複数の修飾主鎖、またはそれらの組合せを含み得る。修飾塩基、修飾糖、または修飾主鎖は、標的核酸分子へのプローブの親和性を高めるためか、または蛍光標識への結合を可能にするために使用することができる。修飾塩基の例示的な形態は、当技術分野において公知であり、かつ、アルキル化塩基、アルキニル化塩基、チオウリジン、およびG-クランプ(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Flanagan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 30:3513-3518 (1999))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。修飾糖の例示的な形態は、当技術分野において公知であり、かつ、LNA、2'-O-メチル、2'-O-メトキシエチル、および2'-フルオロが含まれるが、それらに限定されるわけではない(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Freier and Attmann, Nucl. Acids Res. 25:4429-4443 (1997)を参照されたい)。修飾主鎖の例示的な形態は、当技術分野において公知であり、かつ、ホスホルアミダート、チオホスホルアミダート、およびアルキルホスホナートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。他の修飾塩基、修飾糖、および/または主鎖も、当然使用することができる。
【0044】
1本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、試験溶液中の(存在する場合は)標的核酸への迅速なハイブリダイゼーション、および試験溶液中に後で導入される負に帯電したナノ粒子との迅速な静電気的結合を可能にさせるのに適している任意の長さのものであり得る。迅速とは、1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが、オリゴヌクレオチドプローブの導入前の試験溶液中の他の核酸との結合速度よりも(好ましくは少なくとも1桁)速い速度で、負に帯電したナノ粒子と静電気的に結合できることを意図する。例として、かつ非限定的に、1本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、長さが約10〜約50ヌクレオチドの間、より好ましくは、長さが約10〜30ヌクレオチドの間、最も好ましくは、長さが約12〜20ヌクレオチドの間である。
【0045】
1本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、完全長を有してよく、または標的核酸にハイブリダイズするように標的化されたその任意の一部分を有してよい。オリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸配列の一部分に100パーセントまたは完全に相補的であるヌクレオチド配列を有することが好ましい。
【0046】
試験溶液中に導入されるオリゴヌクレオチドプローブの量は、ハイブリダイゼーション溶液中に導入される予定の負に帯電したナノ粒子の総量、および/または存在すると考えられる標的核酸の総量に基づいて決定することができる。
【0047】
(後述の)比色アッセイ法の場合、オリゴヌクレオチドプローブの量は、ハイブリダイゼーション溶液中に存在する負に帯電したナノ粒子の量より少なくとも少し多い(すなわち、1:1より多い比率)ことが好ましく、より好ましくは約10:1より多く、かつ最大で約30:1である。使用されるプローブおよび標的の量の適切なマッチが、アッセイ法を最適化するために望ましい。試料中の核酸の量を妥当に推定することができる場合は、プローブ:標的の比率は、約0.3:1〜約3:1の間であるべきである。妥当に推定することができない場合は、濃度系列を使用することができる。
【0048】
後述の蛍光アッセイ法の場合、試験溶液中の標的およびプローブの相対濃度は重要ではない。その代わりに、ハイブリダイズしていないすべてのプローブが消光されるように(かつ過剰な標的が蛍光を生じないように)、負に帯電した過剰なナノ粒子が使用される。
【0049】
後述の電気化学的アッセイ法または放射線アッセイ法の場合も、結合した核酸および未結合の核酸を分離するために、ハイブリダイズしていないすべてのプローブを凝集させることができるように、負に帯電した過剰なナノ粒子が同様に使用される。
【0050】
複数の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを一度に使用する場合、上記に開示した同じ基準を考慮に入れることができる。
【0051】
オリゴヌクレオチドプローブは、標準的な合成手順を用いて合成することができるか、またはMidland Certified Reagent Co. (Midland, Texas)およびIntegrated DNA Technologies, Inc. (Coralville, Iowa)などの商業的供給業者に注文することができる。商業的に注文したプローブは、所望の標識と共に得ることができる。
【0052】
負に帯電したナノ粒子は、導電性金属またはガラスのような非荷電の基材のいずれかで形成され得る。
【0053】
金属ナノ粒子は、ナノ粒子が適切な条件下で1本鎖核酸分子と静電気的に結合できるようにさせるか、または他の金属ナノ粒子と共に凝集できるようにさせる、任意の導電性金属または金属合金で形成され得る。(本発明において使用する前に、コロイド懸濁液は、実質的に凝集が起こっていない安定な環境中で金属ナノ粒子を維持していることが理解されるべきである。)重要なことだが、金属ナノ粒子は、ハイブリダイゼーション複合体(すなわち、2本鎖核酸分子)と静電気的に有意に結合しない。例示的な金属ナノ粒子には、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、混合型の金属ナノ粒子(例えば、銀コアを囲む金シェル)、およびそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、金属ナノ粒子は、磁性で、コバルトのような磁性の内側コアおよび金のような外側コアで形成され得る。
【0054】
金属ナノ粒子コロイドの懸濁液は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Grabar et al., Anal. Chem. 67:735-743 (1995)において説明されている手順を用いて形成させることができる。特定の態様における金属ナノ粒子は、それらの外表面にコンジュゲートされているか、またはそうでなければ結合されているいかなるリガンドも含まない。しかしながら、それらは、以下のパラグラフにおいて特定するもののような負に帯電したアニオンによって、溶液中で安定化されている。コロイド懸濁液は、好ましくは、約5nm〜約500nmの間、最も好ましくは約10nm〜30nmの間の金属ナノ粒子を含む。
【0055】
非荷電の基材で形成されているナノ粒子は、好ましくは、アニオンまたはポリアニオンを用いて荷電される。アニオンまたはポリアニオンは、標準的なガラス結合化学反応を用いて、基材(例えばガラス)に結合させることができる。例示的なアニオンには、シトラート、アセタート、カルボナート、リン酸二水素、オキサラート、スルファート、およびニトラートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的なポリアニオンには、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アネトールスルホン酸)、ポリ(アニリンスルホン酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、およびポリ(ビニルスルホン酸)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。他のアニオンおよびポリアニオンもまた、使用することができる。
【0056】
このアッセイ法を実施する際、プローブと標的のハイブリダイゼーションの検出は、いくつかの好ましいアプローチ、すなわち比色アプローチ、蛍光定量的アプローチ、およびレドックスまたは放射線アプローチのうちの1つにおいて実現することができる。それぞれが、他のものより優れた異なる利点を有し、望むように使用することができる。
【0057】
(プローブが標識されなくてよい)比色アッセイ法において、ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性は、その可視色である。この態様において、負に帯電したナノ粒子は、好ましくは金属ナノ粒子である。ハイブリダイゼーション溶液の色の変化は、図1に示すように複数の金属ナノ粒子の凝集を誘導することによって引き起こすことができる。比色アッセイ法は、定量が必要ではない場合、かつ高価な検出機器が使用できない場合に特に有用である。ハイブリダイゼーション溶液における色の変化の検出は、使用者(すなわちこのアッセイ法を実施している者)の裸眼での観察によって実施することができる。
【0058】
わずかな数のオリゴヌクレオチドプローブしか金属ナノ粒子と静電気的に結合しなかった場合にのみ、凝集が起こると考えられる。かなりの数のオリゴヌクレオチドプローブが金属ナノ粒子と静電気的に結合した場合(平均して、ナノ粒子当たり約1つまたは2つより多く結合した場合)、凝集は著しく阻害されると考えられる。凝集(色の変化)により、標的核酸が試験溶液中に存在していたことが示される。凝集の誘導は、ハイブリダイゼーション溶液中に塩溶液を導入することによって実施することができ、この塩は、金属ナノ粒子の静電気的特性を改変し、それによってそれらの凝集を促進するのに十分な濃度である。塩溶液は、好ましくは、約0.01M〜約1Mの間、より好ましくは約0.1M〜約0.3Mの間のNa+濃度を含む。ハイブリダイゼーション媒質への塩溶液の導入は、金属ナノ粒子を含む溶液の導入と同時に、または(最大約15分間遅れて、もしくは遅れずに)それに連続して、実施することができる。
【0059】
比色アッセイ法は、裸眼での観察によって検出することができるため、使用者は、ハイブリダイゼーション溶液の検出可能な色の変化を検査することができるか、または、凝集した金属ナノ粒子を含む比較可能な溶液(陰性対照)および/もしくは、実質的に凝集していない金属ナノ粒子を含む比較可能な溶液(陽性対照)の色を再現する1つもしくは複数の対照(陽性もしくは陰性)と並行して、アッセイ法を実施することができる。
【0060】
蛍光定量的アッセイ法において、ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性は、蛍光体による蛍光スペクトルまたは蛍光ピークの大きさである。負に帯電したナノ粒子の存在下でハイブリダイゼーション手順を進行させた後に、蛍光体標識の光ルミネセンス特性が検出される。ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドプローブの方が、それらのサイズに基づいて、ハイブリダイゼーション溶液中のより長い核酸分子よりも、負に帯電したナノ粒子とより迅速に静電気的に結合すると考えられる。使用される負に帯電したナノ粒子のタイプによって、凝集体は、溶液中に残存するナノ粒子から分離する必要があることもあれば、ないこともある。
【0061】
金属ナノ粒子を使用する場合、ハイブリダイゼーションの欠如(すなわち標的の非存在)は、オリゴヌクレオチドプローブが1つまたは複数の金属ナノ粒子と静電気的に結合する場合の、蛍光標識による蛍光の実質的な消光によって示されるため、分離は必要とされない。オリゴヌクレオチドと標的核酸分子のハイブリダイゼーション(すなわち、標的の存在)は、(前述したのと同じ様式で実現される)金属ナノ粒子の凝集後にさえ維持されている光ルミネセンス特性によって示される。これらの代替を図2に例示する。
【0062】
蛍光発光を必ずしも消光しない非金属ナノ粒子を使用する場合、溶液中に(すなわち、ds-ハイブリダイゼーション複合体中に)残存している標識プローブは、(ss-核酸およびプローブが結合している)凝集体から物理的に分離されている。溶出液(溶液)からの蛍光発光は、ds-核酸、およびその結果、標的の存在を示唆する。後述するように、様々な物理的分離手順のいずれかを使用することができる。
【0063】
対象となる標的が試料中のただ1つもしくは多数の核酸鎖である場合、標的核酸の定量が望まれる場合、または複数の異なる標的核酸分子の存在が、同じハイブリダイゼーション溶液内で同時に(すなわち、異なる蛍光体をそれぞれ結合されている複数のオリゴヌクレオチドプローブを用いて)解析される場合は、蛍光定量的アッセイ法が、高感度であるため特に有用である。ハイブリダイゼーション溶液の蛍光特性の検出は、当技術分野において公知である適切な検出機器(例えば、蛍光顕微鏡、光電子増倍管、CCDカメラ、フォトダイオードなど)を用いて実現することができる。
【0064】
蛍光定量的アッセイ法は、ハイブリダイゼーション溶液中の蛍光体によってもたらされる蛍光を測定する段階を含むため、使用者は、蛍光の存在または非存在のいずれかに関してハイブリダイゼーション溶液を検査することができる。対照は必要ではない。
【0065】
蛍光定量的アッセイ法は少量に対しても高感度であり、かつ、的確な計測装置を用いて光ルミネセンス特性を検出することができるため、蛍光定量的アッセイ法は、試験溶液中に存在する標的核酸の量を定量するのに適している。試験溶液中に存在する標的核酸の量を定量するための1つのアプローチは、試験溶液から得られる結果を、公知であるが異なる量の標的核酸をそれぞれ含む2種の対照溶液から得られる結果と比較する段階を含んだ。したがって、光ルミネセンス特性の測定値は、試験溶液および2種の対照溶液から得られる。各溶液の光ルミネセンスに基づき、第1および第2の対照溶液中に存在する標的核酸の量に比べて、試験溶液中の標的核酸の量を算出することが可能である。あるいは、(試験溶液から)測定された光学的特性、および標的核酸の量に対する測定された光学的(例えば光ルミネセンス)特性の検量線を用いて、試験溶液中の標的核酸の量を算出することもできる。
【0066】
蛍光定量的アッセイ法に関する前述の説明から、原則として、蛍光は極めて感度が高いことが理解されるべきである。実際に、個人的経験から、本出願者らは、DNAの単一コピーの検出を可能にする単一分子蛍光を実現できることを、別の研究において実証した。これにより、PCR増幅の必要性を効果的に完全に無くすことができる。
【0067】
後述の改良により、前述の蛍光定量的アッセイ法の2つの制約が解決される。第1の制約は、消光されていない蛍光とハイブリダイズされたプローブの蛍光のコントラストを含む。ハイブリダイズされる標的が試料の小さな割合に相当し、完全には消光されていないプローブの蛍光によってそれが圧倒されている場合に、これは起こり得る。これはまた、金粒子それら自体からの微量のルミネセンスがある場合にも起こり得る。第2の制約は、蛍光分子が非常に限られた領域内にあることが公知である場合に、単一(またはごく少数の)分子感度が実現され得ることである。したがって、蛍光定量的アッセイ法の理論上の感度を活用するためには、コントラストだけを改良することは十分ではないと考えられる。蛍光プローブとハイブリダイズされたDNAは、蛍光顕微鏡、またはさらに良くは共焦点顕微鏡によって蛍光を集めることができるように、局在化されるべきである。これらの検出スキームの双方とも、それらが光を集める領域が非常に小さいため、散在するバックグラウンドがプローブと比べて無視できるようになるので、単一分子の視覚的検出を与えることができる。
【0068】
したがって、本発明の改良は、前述の蛍光定量的アッセイ法の感度の限界を克服することに関する。ハイブリダイゼーションの後、かつ検出の前に、(未結合のss-プローブ、ss-非標的核酸、およびds-標的核酸を含む)ハイブリダイゼーション手順の生成物を処理して、未結合のss-プローブおよびss-非標的核酸からのds-標的核酸の分離を可能にする。
【0069】
ds-標的核酸を分離するためにハイブリダイゼーション生成物を処理するための例示的なアプローチには、非限定的に、以下が含まれる:(1)固定化された、静電気的に帯電したナノ粒子(例えば、クエン酸でコーティングされた金もしくはポリアニオンでコーティングされたガラス)の使用;(2)ss-核酸に結合された静電気的に帯電したナノ粒子に、不溶性の凝集体を形成させる段階(いわゆる「クラッシュアウト(crashout)」アプローチ);(3)帯電した固体表面上へのds-核酸の濃縮(単独でまたは(1)もしくは(2)のいずれかと組み合わせて実施することができる);(4)ss-核酸が吸着された、溶液から除去することができる静電気的に帯電した磁性ナノ粒子の使用;(5)溶液から金を除去するためにチオール部分で機能化された表面の使用;(6)金ナノ粒子と反応させ、かつ凝集を介して溶液からそれらを除去するための、可溶性のジチオール化合物またはチオアミン化合物の添加;または、(7)遠心分離、もしくはds-核酸ハイブリダイゼーション複合体を、吸着されたタグ化プローブと共に通過させつつ、凝集したナノ粒子を除去することができるナノ多孔質網に溶液を通過させる段階(例えば、ナイロン膜に溶液を押し通す段階)など、ナノ粒子をろ過および除去するための機械的方法。
【0070】
凝集および分離のための修正されたアプローチは、機能化された金ナノ粒子の使用を含む。例えば、混合チオールの自己組織化層で修飾された表面を有する比較的大型の金ナノ粒子(約30nm〜最大約100nm、好ましくは約40〜約60nm)を使用することができる。表面の大半は、ds-DNAを吸着しないように、粒子をわずかに水溶性にし、かつ負に帯電させるために、HS-(CH2)nCOOHを含み得る。他の金ナノ粒子への結合を可能にし、それによって、金/ss-DNAをクラッシュアウトさせると考えられる凝集体を形成すると考えられるHS-(CH2)mSHジチオールで、1粒子当たり数ヶ所の部位をチオール化してよい。好ましくは、m>nの場合にこのプロセスが促進される。緩徐ではあるが、このプロセスは、当然、金ナノ粒子を凝集させるのに有効である。
【0071】
チオール化された表面は、様々なガラス表面を用いて調製することもでき、例えば、標準的なシラン処理化学反応を用いて、チオールが露出したガラスビーズのカラムを製作することができる。
【0072】
プローブの蛍光定量的標識化の代替として、公知の(または今後開発される)電気化学的標識または放射性標識を使用する、電気化学的標識化または放射性標識化などの非蛍光性標識化を使用することができる。これらの検出手順は、(プローブを有する)ds-核酸の分離と共に、および好ましくは濃縮とも共に、使用することができる。電気化学的検出手順および放射線検出手順は当技術分野において公知であり、かつ、特に前述の分離プロトコールの後に、標識を検出するために容易に適合させることができる。
【0073】
本発明のアッセイ法の重要な用途のうちの1つは、上記のように、1つまたは複数の形態のPCRを伴う。PCRは試料中の核酸の総量を急速に増幅させることができるため、ハイブリダイゼーションに基づいた検出手順と共にしばしば使用される。本発明の重要な利益のうちの1つは、このアッセイ法が、サーモサイクラー中で使用されるハイブリダイゼーション媒質を用いて実施できることである。しかしながら、唯一の条件は、負に帯電したナノ粒子を導入する前に、PCRの生成物(典型的には2本鎖cDNA)を変性させなければならないことである。具体的には、ハイブリダイゼーション媒質にオリゴヌクレオチドプローブを導入する前または後であるが、負に帯電したナノ粒子を導入する前に、2本鎖cDNAを変性させてよい。2本鎖cDNAを変性させないと、任意の標的核酸(存在する場合)とオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションが妨げられて、偽陰性の可能性がある結果を生じると考えられる。PCR生成物を変性させずに、1本鎖生成物を実現する代替のPCR手順を使用することもできる。
【0074】
本発明のアッセイ法の別の重要な用途は、標的核酸分子中の一塩基多型(「SNP」)を検出するための用途である。これは、比色アッセイ法または蛍光定量的(または電気化学的もしくは放射線)アッセイ法が実施される予定であるかどうかによって、若干異なる様式で実施される。
【0075】
基本的には、比色アッセイ法は、試験溶液および対照溶液を用いて、並行して実施される。ハイブリダイゼーション試験溶液は、標的核酸分子、およびSNPを含み得る標的核酸分子のある領域にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する、少なくとも1つの第1の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含む。プローブは、SNPを含む領域に完全にはハイブリダイズしない(すなわち、SNPとの塩基対形成が起こらない)ヌクレオチド配列を含む。対照ハイブリダイゼーション溶液は、標的核酸分子、および一塩基多型を含まない標的核酸分子のある領域に完全にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの第2の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含む。次いで、ハイブリダイゼーション試験溶液および対照ハイブリダイゼーション溶液の両方を金属ナノ粒子に曝露させて、ハイブリダイゼーション溶液中の任意のハイブリダイズしていないプローブを金属ナノ粒子と静電気的に結合させる。重要なことには、アッセイ法のこの段階の間、これらのハイブリダイゼーション溶液は、少なくとも1つの第1の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブの融解温度と(完全に相補的であるため、より高い融点温度を有する)少なくとも1つの第2の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブの融解温度の間である温度で維持される。実施されるアッセイ法(比色アッセイ法または蛍光定量的アッセイ法)に応じて、ハイブリダイゼーション試験溶液および対照ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性が実質的に異なるかどうかを判定する。実質的な差異により、標的核酸分子中の一塩基多型の存在が示唆される。
【0076】
SNPを検出する際、第1および第2の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、同じヌクレオチド配列(かつ、同じ長さであり得る)または異なるヌクレオチド配列を有し得る。すなわち、これら2種のオリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸の同じ領域または異なる領域にハイブリダイズすることができる。後者の場合には、対照溶液中の標的核酸分子は、例えば、試験溶液中で検出される特定のSNPを有さないことが公知であるcDNA分子である。前者の場合には、対照溶液中の標的核酸分子のハイブリダイゼーション領域は、安定であり、かつSNPが無いことが公知である(すなわち、野生型配列を含む)。それぞれの標的を有するこれら2種のオリゴヌクレオチドプローブの融解温度の差異を増大させるために、対照アッセイ法のためのオリゴヌクレオチドプローブはより長くてもよく、または、プローブと標的の間の安定性を高める修飾された構造体(例えば、修飾塩基、修飾主鎖など)を有してもよい。
【0077】
蛍光定量的アッセイ法は、蛍光標識からの光ルミネセンスの消光が始まるときにハイブリダイゼーション溶液の温度を測定する(すなわち、消光が始まるまで、温度をゆっくりと低下させる)以外は、前述したように実質的に実施する。測定された温度は、プローブと標的核酸の融解温度に相当する。次いで、この測定された融解温度を、完全に相補的なプローブの公知の融解温度と比較する(この測定値は市販されているキットを用いて得ることができるか、または並行してアッセイ法を実施することによって測定することができる)。これらの融解温度間の差異により、標的核酸分子中の一塩基多型の存在が示唆される。これらのアッセイ法はまた、前述の分離および検出手順を用いる場合に実施することもできる。
【0078】
本発明のアッセイ法のさらに別の重要な用途は、試料中の病原体の存在を検出するための用途である。基本的には、試料が得られ(例えば、組織試料、食品試料、水試料など)、かつ、核酸が試料から単離される。核酸、すなわちRNAまたはDNAのいずれかを単離した後、これらのアッセイ法を用いた検出を可能にするのに十分な試料が存在するかどうか、または単離された核酸を増幅するためにPCRもしくはRT-PCRが必要であるかどうかに関して、評価を下すことができる。したがって、増幅は必要なこともあれば必要でないこともある。例えば、試料から単離された全RNAは、RT-PCRを用いずに進行するのに十分な量である場合があり;一方、試料から単離された全DNAが、増幅を必要とする場合がある。それとは関係なく、本発明のアッセイ法を実施し、かつ、ハイブリダイゼーション溶液の光学的特性(色もしくは蛍光強度)を測定または評価して、1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズして病原体の存在が示唆されたか否かを判定する。このアッセイ法はまた、前述の分離および検出手順を用いる場合に実施することもできる。
【0079】
本発明のアッセイ法のさらに別の重要な用途は、遺伝子スクリーニングのための用途である。基本的には、試料は患者から得られ、かつ、核酸が試料から単離される。遺伝子スクリーニングは、DNAの単離および解析を典型的には含むと考えられるため、(必ずしもではないものの)典型的には増幅を必要とすると考えられる。それとは関係なく、本発明のアッセイ法を実施し、かつ、ハイブリダイゼーション溶液の光ルミネセンス特性を測定または評価して、1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズして遺伝的状態、遺伝性状態(例えば、父性、母性、血縁性(relatedness)など)に対する遺伝子マーカーの存在が示唆されたか、または生物が同定されたか否かを判定する。このアッセイ法はまた、前述の分離および検出手順を用いる場合に実施することもできる。
【0080】
本発明のアッセイ法のさらなる用途は、試料中のタンパク質または抗体の検出である。イムノPCRは、標的とされたタンパク質が試料中に存在する場合にのみcDNA増幅をもたらすことができる手順である。したがって、本発明のアッセイ法をイムノPCRの増幅検出手順と併用して、ハイブリダイゼーション媒質中の増幅されたcDNA、およびしたがって、試料中の標的タンパク質の存在を確認することができる。基本的には、試料を得られ、かつ、その試料を用いてイムノPCRを実施し、その際、イムノPCRにより、タンパク質にコンジュゲートされている核酸が増幅される。その後、タンパク質にコンジュゲートされている核酸(またはその相補体)が、本発明の比色アッセイ法または蛍光定量的アッセイ法の標的となる、本発明のアッセイ法を実施する。このアッセイ法はまた、前述の分離および検出手順を用いる場合に実施することもできる。
【0081】
本発明のアッセイ法のさらなる用途は、ポリメラーゼ連鎖反応(または同様の増幅手順)によって調製される増幅された核酸の量の定量である。基本的には、増幅しようとする核酸分子またはその相補体にハイブリダイズできるヌクレオチド配列をそれぞれが有する1つまたは複数の、および好ましくは2つまたはそれ以上の蛍光標識したオリゴヌクレオチドプライマーが提供される。これらのプライマーを使用する増幅は、標的核酸分子、および/またはその相補体、ならびに提供された蛍光標識したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、(ポリメラーゼ連鎖反応法のような)様々な公知の増幅手順のうちのいずれかを用いて実施する。その後、増幅手順を実施した後に得られる試料に対して、本発明の蛍光定量的な方法を実施する。試料から検出される蛍光のレベルにより、増幅された核酸分子中に組み入れられたプライマーの量が示される。増幅が継続するにつれ(かつ、より多くのプライマーが、より長い増幅配列中に組み入れられるにつれ)、長い核酸の方が金属ナノ粒子に静電気的に結合する速度が遅いため、所与の試料からの蛍光の量は、増加するはずである。その一方で、伸長されていないプライマーは、金属ナノ粒子と迅速に結合して、結合されている標識による蛍光の消光をもたらすと考えられる。このアッセイ法はまた、前述の分離および検出手順を用いる場合に実施することもできる。
【0082】
本発明の別の局面は、本発明のアッセイ法を実施するために使用することができる1つまたは複数のタイプのキットに関する。これらのキットは、様々な構成要素の中でも特に、本発明の方法に従って使用される個々の構成要素を含む様々な容器、ならびに本発明の1つまたは複数の態様を実施するための取扱い説明書を含み得る。
【0083】
1つの態様によれば、キットは、金属ナノ粒子のコロイド溶液を含む第1の容器、標的核酸分子に実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有する少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含む水溶液を含む第2の容器を含む。実施しようとするアッセイ法(比色アッセイ法または蛍光定量的アッセイ法)に応じて、第2の容器中のオリゴヌクレオチドプローブは、前述のタイプの蛍光標識にコンジュゲートされていても、コンジュゲートされていなくてもよい。蛍光定量的アッセイ法および複数の標的を区別する能力を用いる場合、第2の容器は、異なる蛍光発光パターンをそれぞれ有する、(同じまたは異なる標的核酸分子を対象とする)付加的なオリゴヌクレオチドプローブを任意で含み得る。前述の容器および構成要素に加えて、対照溶液、塩溶液、および様々な取扱い説明書を含む容器もまた、提供され得る。
【0084】
別の態様によれば、キットは、負に帯電したナノ粒子のコロイド溶液を含む第1の容器、および負に帯電したナノ粒子の凝集を誘導するのに適した塩水溶液を含む第2の容器を含む。この特定のキットの形式は、使用者が彼ら自身の(標識付き)プローブおよび検出機器を供給するつもりである場合に望ましい。すなわち、使用するプローブに応じて、電気化学的標識、放射性標識、または蛍光標識に適した検出装置を望むように使用することができる。キットは、凝集していないナノ粒子およびds-核酸を通過させつつ、塩によって誘導された凝集体を除去するのに適しているフィルター、ならびに、本発明のアッセイ法を実施するための取扱い説明書を任意で含み得る。
【0085】
別の態様によれば、キットは、基材、例えばガラスビーズに結合された負に帯電した複数のナノ粒子を含む。この基材は、カラム中に充填することができ、これらはそこで、ds-核酸を流過させつつ、短いss-核酸を除去するフィルターの役割を果たす。キットはまた、本発明のアッセイ法を実施するための取扱い説明書も含み得る。
【0086】
実施例
以下の実施例は、本発明の態様を例示するために提供されるが、決してその範囲を限定することを意図するものではない。
【0087】
実施例1のための材料および方法
HAuCl4のクエン酸還元を介して合成した直径約13nmの金ナノ粒子のコロイド溶液(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Grabar et al., Anal. Chem. 67:735-743 (1995))を使用した。コロイド溶液の濃度は典型的には17nMであった。凍結乾燥されたオリゴヌクレオチド配列およびそれらの相補体をMWG Biotech(High Point, NC)から購入し、かつ10mMリン酸緩衝溶液中に溶解した。典型的には、プローブおよび標的の企図されたハイブリダイゼーションは、0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝溶液中、室温で5分間実施した。個々の塩濃度は実験によって異なり、図の説明文中に記載する。ハイブリダイゼーション試験の後に、試験溶液を金コロイドと混合し、かつ直ちに、塩/緩衝液を添加した。
【0088】
参照として水を用い、Perkin Elmer UV/VIS/NIR分光計Lambda 19を用いて吸収スペクトルを記録するために、光路長5mmの石英キュベット中に試料を入れた。時間に対する蛍光スペクトルおよび蛍光強度に関しては、MWG Biotech (High Point, NC)から購入した色素標識オリゴヌクレオチドを使用した。光路長1cmの石英セル中の溶液を、正面収集(front face collection)幾何学的配置および解像度4nmを用いるJobin-Yvon Fluorolog-3分光計で調査した。定常状態で532nmでの励起を有するこれらの色素標識オリゴヌクレオチドおよびレイリー散乱を阻止するためのホログラフィックノッチフィルターを有するOcean Optics CCDアレイによる検出を用いて、共鳴ラマンスペクトルを測定した。解像度は約10cm-1であった。Canon S-30デジタルカメラを用いて写真を撮影した。
【0089】
実施例1
金ナノ粒子は、2本鎖核酸ではなく1本鎖核酸に優先的に吸着する
色素でタグ化されたss-DNAと金ナノ粒子の優先的相互作用の直接的な証拠を図4A〜図4Bに示す。色素でタグ化されたss-DNAが金に吸着するのに対し、ds-DNAは吸着しないということを、色素でタグ化されたss-DNAまたは色素でタグ化されたds-DNAのいずれかを含む溶液への金コロイドの添加の効果を通して認めることができる。色素でタグ化されたss-DNAの場合、色素の光ルミネセンスの消光および色素からの共鳴ラマン散乱の増大が観察された。これらの両方とも、金プラズモンとの電子的相互作用の効果であるため、色素と金の密接な接触を必要とする。
【0090】
図5Aは、ss-DNAまたはds-DNAおよび塩/緩衝液の添加前および添加後のコロイドのスペクトルを示す。通常、塩への曝露は、反発的な相互作用を遮り、かつコロイド凝集を引き起こす(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Hunter, Foundations of Colloid Science, Oxford University Press Inc., New York (2001); Shaw, Colloid and Surface Chemistry, Butterworth-Heinemann Ltd., Oxford (1991))。金ナノ粒子をベースとしたss-DNAの吸着は、塩が導入された際に凝集しないように金コロイド粒子をさらに安定させるように見受けられる。したがって、適切な量のss-DNAを含む溶液は、凝集を防ぎ、かつ金コロイドはピンク色のままであるのに対し、ds-DNAを含む溶液は、凝集に影響を及ぼさず、かつ溶液は青色に変色する。おそらく、これは、表面をより負に帯電したように見えさせる、電荷の再分布に関係している。ラマン研究により、ss-DNAがクエン酸イオンを置換しないことが示唆される。
【0091】
図5Bは、2種のss-DNA配列に関する同じデータの要約した形態を示し、かつ色がss-DNAの量にどのように依存するかを実証する。珍しいことに、金ナノ粒子1つ当たりごく少数のss-DNAしか含まない溶液は、ナノ粒子の表面領域が、数百個のss-DNA 24-merを受け入れるのに十分であるにもかかわらず、明確に異なる吸収スペクトルを有する。十分なss-DNAがある場合、コロイドはピンク色の発色を保持するのに対し、試験溶液がハイブリダイゼーションしてds-DNAを形成すると、青色を帯びたコロイドが生じる(図5C)。実用的な観点から、これにより、所与の試料が1本鎖DNAまたは2本鎖DNAを含むかどうかを、図1に示したプロトコールの方針に沿って判定するためのアッセイ法の設計が可能になる。この方法の極めて重要な特徴は、最適化された条件(pH、塩、および緩衝液濃度)下で、標識の付いていないオリゴヌクレオチドを用いてハイブリダイゼーションを実施でき、かつ、検出段階から完全に独立していることである。また、標的とプローブの濃度のミスマッチに伴って何が起こるかも、それらの比率が0から1まで変化する溶液を用いることによって、調査する。これらの結果(図5C)により、この技術は、標的の存在を検出する能力が驚くほど高いことが分かる。較正された比色測定値を用いて、標的の量を定量的に決定することができると思われる。
【0092】
同様に、分析物溶液が、プライマーおよび他の断片が存在している、ポリメラーゼ連鎖増幅の生成物中に存在し得るオリゴヌクレオチド配列の混合物を含む場合を考察することもできる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Rolfs et al., PCR:Clinical Diagnostics and Research, Springer- Verlag, Berlin Heidelberg (1992))。図6Aは、様々な割合の標的配列を含む混合型のオリゴヌクレオチド分析物に関する結果を示し、わずか30%の標的が容易に検出されることが明らかである。標的およびプローブの配列が相補的であるが、長さが異なる場合に、濃度のミスマッチに似た状況が起こる。この場合、ハイブリダイズされた鎖の一部が、ss-DNAの静電気的特性を有するように見えるのに対し、他の部分は2本鎖であるように見えることが想像され得る。定性的には、これらの結果は、完全に長さが一致しているものと同様であり、かつ、比較的長さの差異が大きい(5〜10塩基対程度)、ハイブリダイズされたプローブおよび標的の鎖でも、2本鎖として挙動する。
【0093】
金ナノ粒子の吸光係数は格段に高いため(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Doremus, J.Chem.Phys. 40:2389-2396 (1994))、この比色法は極めて感度が高くなる。濃度17nMで(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Grabar et al., Anal.Chem. 67:735-743 (1995))、1cmの光路長により、均一に近い光学濃度が提供される。経験的に、100フェムトモル未満の金粒子を含む液滴5μL中の色を視覚的に同定することは容易である。図5Bは、ナノ粒子濃度より少しだけ高いss-DNA濃度が、塩に曝露された場合に凝集しないようにコロイドを安定させるのに十分であることを示す。その結果として、100フェムトモル程度の量のss-DNAおよびds-DNAを、計測装置を用いずに識別できることが予想されるはずである。ナノ粒子当たり1つまたは2つだけのss-DNA鎖が吸着する場合、金の表面領域のごく少ししか覆わないにもかかわらず、クエン酸コーティング中の電荷の再配列によって、ナノ粒子の周囲に分布される正味の負電荷が加えられるようである。上記の推論と一致して、4.3nMの標的濃度(図6B)または60フェムトモル程度の少ない標的総量(図6C)において、容易に目に見える差異が生じる。色を評価するために吸収分光計を使用することにより、感度が少なくとも1桁改善するはずであり、かつ、光熱偏向のような、吸収を測定するための零位法(null method)の使用により、感度がさらにいっそう高められると思われる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Jackson, Applied Optics 20:1333-1344 (1981))。
【0094】
本方法は、生物学的に重要な一塩基多型の検出のために不可欠である、プローブと標的の一塩基対ミスマッチの同定に容易に適合される(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Rolfs et al., PCR:Clinical Diagnostics and Research, Springer- Verlag, Berlin Heidelberg (1992))。ss-DNA断片へのds-DNAの解離の動力学は、結合強度に依存し(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Owczarzy et al., Biopolymers 44:217-239 (1997); Santalucia et al., J. Am. Chem. Soc. 113:4313- 4322 (1991))、したがって、完全にマッチしたds-DNAの場合より、ミスマッチしたds-DNA(ds'-DNA)の場合により速いということを利用した。金コロイドおよび塩/緩衝液を添加する前に、塩を含まない水中で短時間、試験溶液に由来するds-DNAを脱ハイブリダイズさせた。アッセイ法を実施する前に2分間待機して、完全にマッチした(

およびその相補体)と、一塩基対がミスマッチしたds-DNAセグメントSEQ ID NO:1および

との間に明白な色の差異が観察された(図6D)。脱ハイブリダイゼーションは、単に緩衝液/塩溶液の導入を遅らせることによって、金コロイド溶液中で実施することもできるが、ds-DNAは、水中よりもコロイド溶液中でより安定であることが見出されており、金コロイド中での10分後のアッセイ法によって判定されるように、有意な脱ハイブリダイゼーションは起こっていない。一塩基対がミスマッチしたDNAセグメントは、5分後に明白な脱ハイブリダイゼーションを示した。緩衝液/塩溶液と混合する前に1分または2分間、オリゴヌクレオチド溶液および金コロイドの混合物を超音波に供することによって、脱ハイブリダイゼーションが加速され、また、ds-DNAとds'-DNAの間に優れたコントラストが生じた(図6E)
【0095】
ss-DNAおよびds-DNAは、静電気的特性が原因で、金ナノ粒子上に吸着する傾向が異なっていることが実証された。これを利用して、市販されている材料のみを使用し、10分未満しかかからず、検出装置を必要とせず、一塩基ミスマッチに対する感度が高く、かつ濃度または長さのミスマッチに十分に許容するオリゴヌクレオチド認識アッセイ法を設計した。説明するこのアッセイ法は、その速度および単純性に勝る付加的な利益を有する。DNAの静電気的特性を活用することができるため、ハイブリダイゼーションは検出から切り離されており、その結果、DNA結合の動力学および熱力学が、プローブによって機能化された表面に関連する立体的制約によって乱されない。さらに、このアッセイ法は、もっぱら液相中で存在するため、同種であり、この特徴により、標準的なマイクロウェルプレートのロボット操作を用いて自動化することが容易になっている。金粒子上に差次的にss-DNAを吸着させる能力はまた、分析物のタグ化をやはり敬遠する、蛍光に基づいた感度の高いアッセイ法の基本原理を形成することもできる。プローブ鎖上に組み入れられた蛍光色素を用いて、図4Aのように、ss-DNAの蛍光を選択的に消光することができる。これは、色素が強制的に金ナノ粒子に近づけられ、そこで蛍光が消光されるためである(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Dubertret et al., Nature Biotechnol. 19:365-370 (2001); Du et al., J. Am. Chem. Soc. 125:4012-4013 (2003))。しかしながら、タグ化されたプローブss-DNAが標的に結合する場合には、ds-DNAは金に吸着せず、かつ蛍光が持続する。
【0096】
表面プラズモン共鳴は、単離された直径13nmのAuナノ粒子を約520nmの鋭い吸収および対応する赤みを帯びた色相で染める(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Kreibig and Genzel, "Optical Absorption of Small Metallic Particles," Surf. Sci. 156:678-700 (1985))。これらのAuナノ粒子の凝集により、可視であり、かつ対応する灰色を帯びた青色の全体にわたる非常に広範な吸収にスペクトルを実質的に変える、粒子間のプラズモン相互作用が生じる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Quinten and Kreibig, "Optical Properties of Aggregates of Small Metal Particles," Surf. Sci. 172:557-577 (1986))。Auナノ粒子コロイド懸濁液は、ナノ粒子間の強力な静電気的反発をもたらす負に帯電したイオンの吸着によって、Auナノ粒子凝集を起こさないように安定化される(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Hunter, Foundations of Colloid Science. Oxford University Press Inc., NY (2001))。最も一般的には、合成中の金ナノ粒子にクエン酸ナトリウムが添加され、その結果、クエン酸吸着により、Auナノ粒子表面が負に帯電する。比色検出プロトコールおよび蛍光検出プロトコールの両方とも、1本鎖オリゴヌクレオチドのAuナノ粒子への迅速な吸着を利用する。この吸着は、蛍光消光およびラマン実験を用いて実証した(以下の実施例を参照されたい)。オリゴヌクレオチドそれら自体は、クエン酸によって反発されると思われる負に帯電したリン酸骨格を与える負に帯電した化学種と一般にみなされているため、これらの結果は、いくらか意外である。迅速なss-DNA吸着は、疎水性塩基がAuナノ粒子に面するように1本鎖オリゴヌクレオチドが配列することができるモデルを用いて合理化することができる。この幾何学的配置では、双極子引力により、ss-DNAおよびss-RNAの吸着に対する障壁が軽減され得る(以下の実施例を参照されたい)。2本鎖オリゴヌクレオチドは、塩基が露出したほどけた幾何学的配置を実現することができず、したがって、Auナノ粒子表面上のイオンによるずっと大きな反発を受ける。その結果として、それらは、吸着するのにずっと長い時間がかかるか、または一部の条件下ではまったくAuナノ粒子に吸着しない。
【0097】
一度吸着されると、1本鎖オリゴヌクレオチドは、Auナノ粒子表面に負電荷密度を加え、かつ、コロイドの安定性を高める役割を果たす。したがって、通常なら、Auナノ粒子間の静電気的反発を遮り、かつ凝集を誘導すると考えられる量の塩に曝露された際に、凝集しないようにコロイドを保護することが可能である。その結果、金は、ss-DNAまたはss-RNAへの曝露後に塩に曝露された際にはピンク色のままであると考えられるのに対し、ds-DNAまたはds-RNAへの曝露後は、灰色を帯びた青色に変わると考えられる。この観察結果は、比色ハイブリダイゼーションアッセイ法の基本原理を形成する。Auナノ粒子への短いss-DNAプローブ配列の優先的吸着もまた、蛍光アッセイ法を実施するために活用することができる。ss-DNAプローブが蛍光タグ化されている場合、金属表面に吸着すると、蛍光が消光する(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Lakowicz, Principles of Fluorescence Spectroscopy, Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, NY (1999))。しかしながら、プローブが分析物溶液中の標的に結合する場合、これは吸着に耐性であり、かつその蛍光は持続して、マッチを示唆する。これらのアッセイ法は、ss-DNAおよびds-RNA(またはds-DNA)の静電気的特性の差異に依拠するということにより、Auナノ粒子に結合するためにハイブリダイゼーションが使用される、オリゴマーで共有結合的に機能化されたAuナノ粒子を使用する検出アプローチ(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Elghanian et al., Science 277:1078-1081 (1997); Sato et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 8102-8104 (2003))と区別される。本研究において、ハイブリダイゼーション試験は、アッセイ法と別々に実施され、迅速な二重鎖形成が促進される。
【0098】
実施例2〜6のための材料および方法
直径13nmの金粒子を、HAuCl4の還元によって合成した(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Gradar et al., Anal. Chem. 67:735-743 (1995))。手短に言えば、1mMのHAuCl4 500mLを勢いよく攪拌しながら気泡が湧き出るまで沸騰させた。38.8mMクエン酸ナトリウム50mLを素早く溶液に添加し、かつ沸騰を10分間持続させた。次いで、加熱マントルを除去し、かつ攪拌をさらに15分間継続した。
【0099】
オリゴヌクレオチドはすべて、MWG Biotech, Inc. (High Point, NC)から購入し、さらに精製はしなかった。プローブは、室温または適切な温度で、5分間より長い時間、0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝溶液中で標的とハイブリダイズする。
【0100】
実施例2において使用したプローブおよび標的は以下のとおりである:
ローダミンレッドで標識したプローブ:AGGAATTCCATAGCT(SEQ ID NO:25);および
標的核酸:AGCTATGGAATTCCT(SEQ ID NO:26)。
【0101】
実施例3および4において使用したプローブおよび標的は以下のとおりである:
ローダミンレッドで標識したプローブ:AGGAATTCCATAGCT(SEQ ID NO:25);
相補的標的A:

相補的標的B:

;および非相補的標的C:


【0102】
実施例5において使用したプローブおよび標的は以下のとおりである:
ローダミンレッドで標識したプローブ:AGGAATTCCATAGCT(SEQ ID NO:25);
相補的標的A':

;および相補的標的B':


【0103】
実施例6において使用したプローブおよび標的は以下のとおりである:
ローダミンレッドで標識したプローブ1:CTGAATCCAGGAGCA(SEQ ID NO:29);
相補的標的1:プローブ1の相補体;
Cy5で標識されたプローブ2:

相補的標的2:プローブ2の相補体;および
非相補的標的:


【0104】
ハイブリダイズされた溶液の一部分を17nM金コロイド溶液500μLに添加し、かつ、特定の説明が無い場合には、さらに500μLの0.1M生理食塩水10mMリン酸緩衝溶液を添加した。蛍光計または蛍光顕微鏡およびカメラのいずれかを用いて、この混合物の蛍光を直ちに記録した。特定の説明が示されない場合、570mmでの励起および585nm〜680nmの発光範囲を用いる蛍光計で、4nm帯域に対して設定されたスリットを用いて、蛍光スペクトルを測定した。ノッチフィルターおよび狭帯域干渉フィルターを装備された共焦点蛍光顕微鏡を用いて蛍光画像を記録した。蛍光は、532nmのレーザー源によって励起した。
【0105】
実施例2
色素でタグ化された1本鎖DNAおよび2本鎖DNAの差次的な蛍光消光
5'末端に共有結合されたローダミンレッド蛍光色素で標識されたDNAオリゴヌクレオチドをプローブとして使用した。0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝液中で、ハイブリダイゼーション試験のために、数マイクロリットルのμMプローブ溶液を標的配列に曝露させた。これらのハイブリダイゼーション溶液を金コロイド懸濁液に添加し、かつ、ds-DNAの安定化を補助するために、追加のリン酸緩衝液生理食塩水溶液を添加した。
【0106】
図7Aは、相補的標的および非相補的標的を含む試験溶液からの光ルミネセンスを比較する測定の結果を示す。ハイブリダイズしていないプローブは金ナノ粒子上に効率的に吸着し、その結果、それらの結果が消光されるため、100:1より大きな蛍光コントラストが観察された。吸着メカニズムは、上記の実施例1で論じたように、完全に静電気的である。吸着および付随する蛍光消光は不可逆的である。
【0107】
金コロイドへのハイブリダイゼーション試験溶液および塩の添加は、最終的に、コロイドの凝集を引き起こす。後者は沈殿をもたらし、したがって、ナノ粒子はもはや、プローブの蛍光の有効な消光物質ではない。コロイドを安定させるために無関係なss-DNA鎖を用いることによって、二重鎖と化合するのに十分な塩を含む条件下で、凝集しないようにコロイドを保護することが可能である。しかしながら、図7Aのデータは、蛍光測定が約15分以内になされる限り、これが必要ではないことを示す。
【0108】
典型的な蛍光計には比較的多量の溶液が必要とされるため、同じ測定プロトコールを用いて本方法の感度を評価することは実用的ではない。図7Bは、わずか0.1フェムトモルの標的を含む溶液の非常に少ないアリコートの蛍光の測定を示し、これは、蛍光顕微鏡およびカメラを用いて容易に検出される。本方法は本質的に零位法であるため、10コピーの標的オリゴヌクレオチド(0.1アトモル)未満の量まで、比較的複雑でない蛍光検出において使用することができるのは理にかなっている(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Cao et al., Science 297:1536-1540 (2002))。
【0109】
実施例3
長い標的配列への応用
ゲノム解析のためには、合成オリゴヌクレオチドよりずっと長いDNA標的上の特定の配列を検出することが望ましい。これらは、臨床試料に直接由来することができ、またはPCRを用いて増幅された試料に由来することができる。図8Aは、長い標的の一部分へのマッチを検出するための原理の証拠である。標的の多くの部分が1本鎖のままであり、かつ、ss-DNAの静電気的特性をおそらく有すると考えられるにもかかわらず、このアッセイ法を用いて、これらの長い標的が、色素でタグ化された短いプローブに相補的な配列を含むかどうかを判定することができる。この場合に吸着および消光が観察されない理由は、本明細書において実施例7で示すように、長いss-DNA配列が、ずっと遅い速度で金ナノ粒子に吸着することである。したがって、この技術は、色素でタグ化された短いプローブ(<25mer)が使用される場合に、最も実用的である。
【0110】
実施例4
標的配列の混合物への応用
このアッセイ法の唯一の条件は、分析物中の標的配列にハイブリダイズしないss-DNAプローブが金に吸着し、かつ消光されることであるため、唯一の制約は、金コロイドの量が、プローブDNAのすべてを吸着するのに十分でなければならないことである。したがって、このアッセイ法は、図8Bのデータによって実証されるように、DNAオリゴヌクレオチドの複合混合物中でさえ、標的鎖が存在するかどうかを判定するために機能し得る。この場合、標的配列の存在を確認するために、1%の相補的標的を99%の非相補的標的と混合して、標的配列の存在を確認した。感度に加えて、このアッセイ法が混合物を許容することから、PCRによって標的を増幅せずにこれを使用できる可能性が提供される。
【0111】
実施例5
一塩基ミスマッチの検出
完全にマッチした対照を導入し、かつストリンジェンシー試験を用いてこれら2種を比較することによって一塩基ミスマッチを検出するように、この技術を適合させることは簡単である。例示的な目的のために、1つの塩基が異なる2種の異なる標的配列を使用した。これらのうち1つは、色素でタグ化されたプローブに完全にマッチする。手順の唯一の違いは、2種のハイブリダイゼーション試験溶液を金コロイドに導入する前に、46℃、すなわちミスマッチに対する融解温度より高く、かつ完全なマッチに対する融解温度より低い温度で5分間、それらをそれぞれ維持することである。ミスマッチした鎖は脱ハイブリダイズし、それによって、1本鎖プローブが放出され、その蛍光が消光され得る。したがって、ミスマッチを有する試料は、完全にマッチした標的よりはるかに少ない光ルミネセンスを示す。図9は、中央部分がプローブに相補的な1つの長い標的、および一方の末端がプローブに相補的な別の長い標的による検出を示す。この手順は、当然、ゲノムDNA中の一塩基多型の迅速な検出に応用可能であるはずであり、これは、現在標準的なプロトコールである時間および費用のかかるゲル配列決定手順を不要にするための心躍る見通しである(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Rolfs et al., PCR:Clinical Diagnostics and Research, Springer- Verlag, Berlin Heidelberg (1992))。実際には、当然、2種の異なるプローブ鎖配列を使用し、野生型配列に相補的なプローブを、標的とされた位置に一塩基のミスマッチを有するプローブと比較すると考えられる。
【0112】
実施例6
複数の標的の同時検出
差次的な消光アッセイ法はまた、単一の標的上のいくつかの配列、またはいくつかの標的を同時に探索するために多重化することもできる。図10は、2種の異なる色素を有する2種の異なるプローブが標的の混合物とハイブリダイズされるこの事例を示す。分光学的検出が使用される場合、従来の色素、およびさらには、鋭いスペクトルの発光を有する半導体ナノ粒子蛍光体を有する5つまたは6つの標的へのこのアプローチの拡張を想像することは妥当と思われる。当然、これは、この方法の基本原理である本質的な静電気学をこれらが混乱させないことを想定する。
【0113】
要約すれば、これらの実験は、ss-DNAおよびds-DNAの静電気的特性の差異に基づいてDNA配列を認識するための単純なアッセイ法を実証する。特定の塩濃度では、ss-DNAはクエン酸でコーティングされた金ナノ粒子に吸着するのに対し、ds-DNAは吸着せず、このことは、色素でタグ化されたss-DNAプローブの蛍光を差次的に消光するために活用することができる。本方法は、標的の修飾を必要とせず、市販されている材料のみを使用し、オリゴヌクレオチドの混合物を含む分析物に対して機能し、かつ、一塩基ミスマッチの検出に応用することができる。おそらく、このアプローチの最も魅力的な特徴は、そのスピードである。ハイブリダイゼーション段階は、最適化された条件下の溶液中に存在し、かつ検出段階から切り離されているため、10分未満でアッセイ法全体を完了することができる。0.1フェムトモル未満のDNAオリゴヌクレオチドに対する感度が実証されたが、本方法は、ほぼ零位法であり、かつ蛍光検出に依拠するため、これを数桁改善することがおそらく可能である。本方法は、病原体検出、SNPの臨床的解析、および生体分子研究に応用できる見込みが非常に大きいと考えられている。
【0114】
実施例7〜9のための材料および方法
合成オリゴヌクレオチドはすべて、MWG Biotech, Inc. (High Point, NC)から購入し、かつ、さらに精製はせずに使用した。
【0115】
金ナノ粒子のコロイド溶液は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Grabar et al., Anal. Chem. 67:735-743 (1995)において説明されている手順に従って合成した。手短に言えば、1mM HAuCl4(Alfa Aesar, Ward Hill, MA)250mLを、攪拌しながら沸点まで加熱した。沸騰している溶液に、38.8mMクエン酸ナトリウム(Alfa Aesar, Ward Hill, MA)25mLを素早く添加し、さらに15分間、溶液を沸騰させ、かつ攪拌し続けた。溶液を室温まで放冷した。これは、使用するまで無期限に保存することができる。
【0116】
本研究におけるすべての写真は、Canon PowerShot S30デジタルカメラを用いて記録した。吸収スペクトルは、Perkin Elmer UV/VIS/NIR分光計Lambda 19を用いて記録した。光路長2mmまたは5mmの石英セルを使用し、かつ参照として水を使用した。時間に対する蛍光スペクトルおよび蛍光強度を、570mmでの励起および590nmでの発光を用いるJobin-Yvon Fluorolog-3分光計で、4nm帯域に対して設定されたスリットをそれぞれ用いて記録した。光路長1cmの石英セルおよび正面収集を、蛍光測定のために使用した。
【0117】
実施例7
金ナノ粒子へのss-DNAの吸着に対するオリゴヌクレオチドプローブの長さおよび温度の影響
金ナノ粒子凝集に対するss-DNAの影響を研究するために、金コロイド300μLを、0.2M NaClを含む10mM PBS 10μL中の24merのss-DNA

300ピコモルと混合し、次いで、0.2M NaClを含む10mM PBS 100μLを添加した。比較のために、脱イオン水100μLを、0.2M NaClを含む10mM PBS 100μL、金コロイド300μLとそれぞれ混合した。光路長2mmのセルを用いて吸収スペクトルを記録し、かつこれらの混合物の写真を撮影した。これらのスペクトルは、経時的に安定である。
【0118】
金ナノ粒子に対するss-DNAの配列長に依存的な吸着を調査するために、5'末端にローダミンレッドタグを有するss-DNA 2μL(2μM)を、13nm金コロイド1000μLに添加した。ss-DNA配列は、10mer(5'- CAG GAA TTC C-3' (SEQ ID NO:5))、24mer

、および50mer

であった。時間に対する蛍光強度を、蛍光計を用いて記録した。
【0119】
ss-DNA吸着の温度依存性を研究するために、50mer ss-DNA 2μL(100μM)および13nm金コロイド300μLの混合物を、2分間、それぞれ22℃、45℃、70℃、および95℃まで加熱した。0.2M NaClを含む22℃の10mM PBS溶液300μLを直ちに添加し、かつ、光路長5mmのセルを用いて吸収スペクトルを測定した。
【0120】
短いss-DNAおよび長いss-DNAの混合物の吸着を研究するために、ローダミンレッドで標識した2μM 15mer(5'-AGG AAT TCC ATA GCT-3' (SEQ ID NO:8))4μLを、ハイブリダイゼーション試験用に、0.3M NaClを含む10mM PBS中の3種の異なる50mer(以下の配列)のそれぞれ(濃度2μMで4μL)と混合した。中央が15merに相補的な

末端が15merに相補的な

。15merに非相補的な

。5分間のハイブリダイゼーション後、各溶液を、13nm金コロイド1mLおよび0.1M NaClを含むさらに0.4mLの10mM PBSと混合し、かつ、結果として生じる蛍光スペクトルを、蛍光計を用いて記録した。同じ配列の非標識の15merを用いずに、金コロイド300μL、ハイブリダイズされたDNA溶液6μL(20μM)、および0.2M NaClを含む10mM PBS 300μLの混合物のカラー写真をCanon S-30カメラで撮影した。
【0121】
金コロイドの色は、懸濁液中のナノ粒子の凝集の程度の影響を非常に受けやすく(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Quinten et al., Surf.Sci. 172:557 (1986); Lazarides et al., J.Phys.Chem.B 104:460 (2000); Storhoff et al., J. Am. Chem. Soc. 122:4640- 4650 (2000))、かつ、凝集は、塩のような電解質を用いて容易に誘導することができる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Hunter, Foundations of Colloid Science, Oxford University Press Inc., New York (2001); Shaw, Colloid and Surface Chemistry, Butterworth-Heinemann Ltd., Oxford (1991))。この現象は、吸収分光法によって、または視覚的観察によって容易にモニターすることができる。水溶液中の金ナノ粒子(直径13nm)は、クエン酸イオンの負に帯電したコーティングによって、凝集しないように安定化される(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Bloomfield et al., Nucleic Acids:Structures, Properties, and Functions, University Science Books, Sausalito, California (1999))。個々の粒子として、金ナノ粒子は、520nmで表面プラズマ共鳴の吸収ピークを有し(図11A、赤色)、かつピンク色に見える(図11A、挿入図:左側のバイアル)。イオンでコーティングされた金ナノ粒子間の静電気的反発を遮るために十分な塩が添加された場合、金ナノ粒子の即時的な凝集が発生する。この結果は、金ナノ粒子凝集体の表面プラズマ共鳴に特徴的な、特色の無い広い吸収スペクトル(図11A、青色)および青色を帯びた灰色(図11A、挿入図:中央のバイアル)である(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Quinten et al., Surf. Sci. 172:557 (1986); Lazarides et al., J. Phys. Chem. B 104:460-467 (2000); Storhoff et al., J. Am. Chem. Soc. 122:4640-4650 (2000))。
【0122】
ss-DNAが添加されなければ凝集を引き起こすと思われる塩を添加する前に、十分なss-DNAが金コロイドに添加される場合には、塩は、金ナノ粒子の凝集をもはや引き起こさないことが判明した。これらの環境下で、金コロイドはその吸収スペクトルおよび色を保持する(図11A:緑色および挿入図:右側のバイアル)。コロイドが安定化する理由は、オリゴヌクレオチドが、金ナノ粒子に吸着し、かつ負電荷を加えて、それらの反発を強めることである。この主張は、ローダミンレッドでタグ化されたss-DNAを使用する蛍光消光実験によって確認される(図11B)。オリゴヌクレオチドが金ナノ粒子に吸着する場合、付随的に色素が金に近接することにより、蛍光が消光される(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Maxwell et al., J. Am. Chem. Soc. 124:9606-9612 (2002); Dubertret et al., Nat. Biotech. 19:365-370 (2001))。蛍光消光実験はまた、吸着速度が配列長に依存し、短い配列ほど金ナノ粒子にはるかに迅速に付着することも示す(図11B)。さらに、温度が高くなるほど、より速い吸着をもたらすことも判明した(図11C)。図11A〜図11Dのデータから推測される金ナノ粒子へのss-DNAの吸着および金ナノ粒子凝集の両方とも、不可逆的である。
【0123】
ss-DNAは、その天然の立体配置において、コイル状であり、その結果、負に帯電した親水性のリン酸骨格は、大半が水溶液に曝露されているため(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Bloomfield et al., Nuclei Acids:Structures, Properties, and Functions, University Science Books, Sausalito, California (1999))、負に帯電した金ナノ粒子へのss-DNAの吸着は、従来の見識(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Maxwell et al., J. Am. Chem. Soc. 124:9606- 9612 (2002); Graham et al., Angew. Chem. Int. Ed. 39:1061 (2000))とは異なる。ss-DNAが金ナノ粒子に付着すること、ならびに配列長および温度への依存性は、コロイド科学の理論から誘導される単純な絵を用いて説明することができる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Hunter, Foundations of Colloid Science, Oxford University Press Inc., New York (2001); Shaw, Colloid and Surface Chemistry, Butterworth-Heinemann Ltd., Oxford (1991))。金ナノ粒子およびss-DNAの両方とも、溶液から対イオンを引きつけ、図12に模式図的に示すように、電気的二重層によってうまく説明される。すべての場合において、オリゴヌクレオチドとナノ粒子の間に引力を有するファンデルワールス力がある。静電気力は、双極子相互作用に起因しており、かつ、ss-DNAの立体配置および向きに依存する。一時的な構造の変動によりss-DNAの短いセグメントがほどけることが可能になり、かつ塩基が金ナノ粒子に面する場合、引力を有する静電気力は、ss-DNAの金への不可逆的な吸着を引き起こす。残存してコイル状の形態を強化する鎖がより少ないため、不可欠な変動は、短い配列においてより多い。その結果、短いss-DNAオリゴヌクレオチドの方が、より速く吸着する。同様に、温度の上昇により、塩基を露出し、かつコイル状の構造をほどいて吸着をより速くさせる変動が促進される。温度の上昇はまた、より長いDNA鎖の2次構造を壊し、それによって図12の幾何学的配置をより容易に達成可能にする働きもすると考えられる。
【0124】
長さ依存性の吸着を活用して、典型的には数百塩基対の大きさであるPCRで増幅されたDNA配列の検出に適切なアッセイ法を開発することができる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Reed et al., Practical Skills in Biomolecular Sciences, Addison Wesley Longman Limited, Edinburgh Gate, Harlow, England (1998); Walker et al., Molecular Biology and Biotechnology, The Royal Society of Chemistry, Thomas Graham House, Cambridge, UK (2000))。短いオリゴヌクレオチド「プローブ」は、これらが長鎖にハイブリダイズされる場合には、金ナノ粒子に急速に吸着しないという考えを用いて、設計することができる。したがって、これらは、プローブと長鎖の一部分の間に配列一致がある場合、塩によって誘導される凝集および付随的な色の変化を防ぐことができないと考えられる。あるいは、短いプローブが蛍光標識されている場合、それらの蛍光は、長い標的鎖へのハイブリダイゼーションによって「拘束され(tied up)」ない限りは、金ナノ粒子への吸着によって消光されると考えられる。図11Dは、50塩基の合成オリゴヌクレオチド標的およびローダミンで標識した15塩基のプローブを用いて、これらの各アッセイ法の原理の証拠を示す。
【0125】
実施例8
PCRで増幅された標的cDNAの検出
University of Rochester Medical CenterのMing Qi博士から得たゲノムDNAをPCR鋳型として使用した。プライマーは、合成オリゴヌクレオチド

であった。QT延長症候群を示すKCNE1遺伝子の特定の領域を、Tag DNAポリメラーゼを用いて、95℃で5分間;95℃で30秒、56℃で30秒、および72℃で30秒を35サイクル;72℃で10分間、Promega PCRマスターミックス(Promega, Madison, WI)中で増幅させ、次いで4℃で維持して、189bpのPCR生成物を得た。
【0126】
これらのモデル実験に続いて、PCRで増幅されたDNAの解析において起こる重大な問題に取り組む単純な比色アッセイ法を設計した。第1に、プローブとのハイブリダイゼーションを評価することによって、増幅されたDNAが所望の配列を含むかどうかを確認することができる。第2に、増幅された配列中のSNPを同定することが簡単である。これらの実験はすべて、臨床診断実験室から得たPCR生成物をさらに精製せずに用いて実施した。探索される配列は、QT延長症候群と呼ばれる致死的な心臓不整脈の患者研究において採取されたゲノムDNAに由来する(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Priori et al., J. Interv. Card. Electr. 9:93 (2003))。この病態は、KCNE1遺伝子の変異に関連付けられている(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Splawski et al., Circulation 102:1178-1185 (2000))。
【0127】
PCRで増幅された配列における点突然変異に関する現在のアッセイ法は、時間のかかる手順、高価な計測装置、またはそれら両方を要する(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Reed et al., Practical Skills in Biomolecular Sciences, Addison Wesley Longman Limited, Edinburgh Gate, Harlow, England (1998); Walker et al., Molecular Biology and Biotechnology, The Royal Society of Chemistry, Thomas Graham House, Cambridge, UK (2000); Rolfs et al., PCR:Clinical Diagnostics and Research, Springer- Verlag, Berlin Heidelberg (1992))。本方法は、適切な配列の増幅を確認し、かつPCRを実施するのに使用されるのと同じサーマルサイクラーを用いてSNPを試験するのに10分未満しかかからない。所望の配列の増幅を確認するために、図13Aに模式図的に示したプロトコールに従った。プライマーより低い融解温度を有する所望のPCR生成物に相補的な配列を用いて2種のss-DNAプローブを選択し、かつPCR生成物溶液にこれらを添加した。PCRによって増幅されたds-DNAは、95℃で脱ハイブリダイズされて、ss-DNAを生成する。これらのプローブが、PCRによって増幅された配列が存在する場合にはそれとハイブリダイズすることができるように、プローブの融解温度より低い温度でこれらの混合物をアニーリングする。同時に、消費されていないプライマーもまた、プローブの融解温度より高い融解温度を有するため、PCR生成物に結合する。PCRプロセスそれ自体におけるように、PCRで増幅された相補体の再ハイブリダイゼーションに起因する結合位置をめぐる競合は、立体的理由から、より緩徐であるため、無視できる。金コロイドがこの混合物に曝露された場合、ハイブリダイゼーション溶液中の塩は、増幅されたDNA標的にプローブがハイブリダイズした場合には、即時の金ナノ粒子凝集および色の変化を引き起こす(図13B、左側のバイアル)。PCR生成物がプローブに相補的ではない場合、またはPCR増幅が完全に失敗する場合、プローブは金ナノ粒子に吸着し、かつ凝集を防ぐ(図13B、右側のバイアル)。
【0128】
実施例9
PCRによって増幅された標的cDNAの配列検出および一塩基対ミスマッチの検出
配列検出の場合、未修飾のPCR生成物8μLを、0.3M NaClを含む10mM PBS中の2種の相補的プローブまたは2種の非相補的プローブのいずれかを含む1μMプローブ溶液6μLと混合した。95℃で5分間変性させ、かつ50℃で1分間アニーリングさせた後、金コロイド60μLを添加し、かつ写真を撮影した。プローブ配列は以下のとおりである:
5'-CCT GTC TAA CAC CAC AG-3 ' (SEQ ID NO:14)および5'-CCA CAG CTT GGT CAG AA-3' (SEQ ID NO:15)(相補的プローブ);
5'-ACC ACA CAC TGT CTC TC-3' (SEQ ID NO:16)および5'-CTG AGC ACA CTC AGT AC-3' (SEQ ID NO:2)(非相補的プローブ)。
【0129】
一塩基対ミスマッチ(SNP)の検出の場合、それぞれ、PCR生成物8μLを一塩基ミスマッチにオーバーラップしている1μMプローブ6μLと混合し、かつ、PCR生成物8μLを一塩基ミスマッチにオーバーラップしていない1μMプローブ6μLと混合した。これらの混合物を95℃で5分間加熱し、かつ、それぞれ50℃、54℃、および58℃で1分間アニーリングさせ、次いで、金コロイド60μLを添加し、かつ写真を撮影した。プローブは以下のとおりであった:
5'-CGG GAG ATG CAG GAG-3' (SEQ ID NO:17)および5'-ACG GCA AGC TGG AGG-3' (SEQ ID NO:18)(SNPとオーバーラップしていない);
5'-CTT GCC GTC ACC GCT-3' (SEQ ID NO:19)および 5'-CAG CGG TGA CGG CAA-3' (SEQ ID NO:20)(SNPとオーバーラップしている)。
【0130】
一塩基ミスマッチでは、標的配列へのプローブのハイブリダイゼーションがなお可能であるため、一塩基対ミスマッチの検出は、若干異なるプロトコールを必要とする。図14Aにおいて示す戦略を用いる、特定の配列検出の場合と同じ概念を使用した。PCRプライマーの融解温度より低い、同じ融解温度を有する4種のプローブを選択した。これらの配列は、標的の野生型配列に相補的となるように選択した。これらのプローブのうち2種は、点突然変異が起こり得る位置にオーバーラップして結合されたのに対し、2種は対照として使用され、かつ研究対象のSNPとオーバーラップしない位置に結合された。標的配列上に変異が存在する場合は、変異を範囲に含むプローブは、完全にマッチするように設計されている、配列中の別の場所に位置する対照プローブより低い温度で脱ハイブリダイズすると考えられる。両方の配列の融解温度より低い温度では、これらのプローブは、PCRで増幅されたDNAに結合されたままであり、塩によって誘導される金ナノ粒子凝集を防ぐことができない(図14B:a、b)。完全な配列およびミスマッチした配列の両方の融解温度より高い温度では、どちらにも脱ハイブリダイゼーションが起こり、金ナノ粒子凝集が防がれる(図14B:e、f)。ミスマッチした配列が脱ハイブリダイズする温度より高いが、完全にマッチした配列が脱ハイブリダイズする温度より低い温度では、SNPの存在を示唆する色の差異が検出される(図14B:c、d)。
【0131】
ss-DNAが、長さおよび温度に依存的な速度で金ナノ粒子に吸着することが、これらの実験によって実証された。さらに、金ナノ粒子にss-DNAが吸着することにより、塩によって誘導される凝集を起こさないようにコロイドを効果的に安定させることができる。これらの観察結果を用いて、DNAの静電気的特性に厳密に基づいた、PCRによって増幅されたDNAの単純かつ迅速な比色アッセイ法を設計した。このアプローチは、ゲル電気泳動および他の複雑な配列決定手順の必要性を無くす。これは、市販されている安価な材料を用いて10分未満で実施することができ、かつ、PCR用に使用されるプログラム可能なサーマルサイクラー以外の計測装置を必要としない。本方法の重要な特徴は、チップに基づいたアッセイ法(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Fodor et al., Nature 364:555- 556 (1993); Chee et al., Science 274:610-614 (1996))、または機能化されたナノ粒子を使用する他のアプローチ(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Elghanian et al., Science 277:1078-1081 (1997); Taton et al., Science 289:1757-1760 (2000); Park et al., Science 295:1503-1506 (2002); Cao et al., Science 297:1536-1540 (2002); Maxwell et al., J. Am. Chem. Soc. 124:9606-9612 (2002); Dubertret et al., Nat Biotech 19:365-370 (2001); Sato et al., J. Am. Chem. Soc. 125:8102-8103 (2003))とは異なって、ハイブリダイゼーションが、アッセイ法から独立して調節することができる最適化された条件下で起こることである。このアッセイ法はまた、QT延長症候群として公知の遺伝性心臓不整脈に関連したSNPをスクリーニングする、ゲノムDNAの臨床試料にも応用された。このアプローチは、PCRによって増幅されたDNAをポストプロセッシングするためのいくつかの従来の解析方法に取って代わることができ、かつ、広く応用されることになると考えられている。
【0132】
実施例10
修飾RNAプローブを用いたRNA検出
配列検出の場合、100μM 2'-o-メチルRNAプローブ2.4μLを、10mM PBSおよび0.3M NaCl溶液中の1種の相補的プローブまたは1種の非相補的プローブのいずれかを含む100μM RNA標的2,4μLと混合した。95℃で2分間変性させ、かつプローブの融解温度より低い温度で30分間アニーリングさせた後、金コロイド200μLを添加し、かつ写真を撮影した。RNAおよび金コロイドの量は、それ相応に増加または減少させることができる。この場合、比較的多量のRNAおよび金を使用して、通常の分光計で可視スペクトルを測定した。
【0133】
プローブおよび標的の配列は以下のとおりである:2'-o-メチルRNAプローブ:AGGAAUUCCAUAGCU(SEQ ID NO:21);
完全にマッチした標的:AGCUAUGGAAUUCCU (SEQ ID NO:22);および
非相補的標的:CGAUCACGAGAUCGA(SEQ ID NO:23)。
【0134】
一塩基対ミスマッチ(SNP)検出の場合、それぞれ、(標的と完全にマッチしている)100μM 2'-o-メチルRNAプローブ1 2.4μLを、100μMの標的2.4μLと混合し、かつ、(標的と1つのミスマッチがある)100μM 2'-o-メチルRNAプローブ2 2.4μLを、100μMの標的2.4μLと混合した。これらの混合物を95℃で2分間加熱し、かつ、それぞれ50℃および60℃で30分間アニーリングさせ、次いで、金コロイド200μLを添加し、かつ写真を撮影した。
【0135】
プローブおよび標的の配列は以下のとおりである:
2'-o-メチルRNAプローブ:AGGAAUUCCAUAGCU(SEQ ID NO:21);
完全にマッチした標的:AGCUAUGGAAUUCCU (SEQ ID NO:22);および
1つのミスマッチがある標的:AGCUAUAGAAUUCCU (SEQ ID NO:24)。
【0136】
図15A〜図15Bに示すように、RNAプローブを使用して、SNPと野生型配列を効果的に区別することができる。
【0137】
実施例11
イムノPCRプロトコール
捕捉抗体、およびストレプトアビジンを介してビオチン化DNA分子に結合されたビオチン化検出抗体を使用する検出プロトコールを、標準的なイムノPCR手順を用いて抗原の存在を検出する際に使用することができる。抗原が存在する場合、PCRは、ビオチン化DNA分子の増幅をもたらすと考えられる。抗原が存在したと仮定すると、増幅されたPCR生成物は、上記の実施例において説明した比色検出法または蛍光定量的検出法によって検出されると考えられる。
【0138】
実施例12
クエン酸でコーティングされた固定化された金ナノ粒子を用いた、標的核酸の検出
図16に示すように、(前述のように調製した)クエン酸でコーティングされた金ナノ粒子をガラスビーズの表面に結合させ、これらのビーズをカラム中に充填し、次いで、ハイブリダイゼーション生成物をこのカラム中に導入して、(蛍光体で標識された2本鎖DNAを含む)溶出される溶液を回収した。このアプローチにより、上記に確認したコントラストの問題が効果的に解決された。このプロセスは、結果を最適化するために複数回繰り返すことができる。
【0139】
詳細な手順には以下の段階が含まれた:1.ガラスビーズを清掃する段階:直径1mmのガラスビーズをピラニア溶液で20分間洗浄し、清浄水で入念にすすぎ、次いで、ホットプレート上で乾燥させた。2.アミノ基末端を有する分子でガラスビーズをコーティングする段階:トルエン溶液中のアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)中にガラスビーズを30分間浸し、次いでトルエンで入念に洗浄した。次いで、APTESで修飾されたガラスビーズを100℃のオーブン中で焼成させた。3.金ナノ粒子でガラスビーズをコーティングする段階:APTESで修飾されたガラスビーズを金コロイド中に30分間浸し、次いで清浄水で入念にすすぎ、ホットプレート上で乾燥させ、かつ使用するために室温まで放冷した。4.検出:蛍光標識されたDNAプローブを、ハイブリダイゼーション緩衝溶液中で、5分間より長い時間、その相補的標的または非相補的標的とハイブリダイズさせた。次いで、このハイブリダイゼーション溶液を、(金ナノ粒子でコーティングされた修飾ガラスビーズを充填された)カラムに通した。次いで、溶出液を回収し、かつ蛍光測定のために検査した。この実験において、DNA配列は以下のとおりであった:
プローブ:5'-AGG AAT TCC ATA GCT-3' (SEQ ID NO:8)
c-標的:5'-AGC TAT GGA ATT CCT-3' (SEQ ID NO:37)
nc-標的:5'-TAA CAA TAA TCC CTC-3' (SEQ ID NO:38)
【0140】
ローダミンレッドで標識したプローブ100ピコモルを、0.3M NaClを含む10mM PBS中で、同量の相補的標的(c-標的)または非相補的標的(nc-標的)と、5分間より長い時間、ハイブリダイズさせた。ds-DNAおよびss-DNAの検出を図17に示す。赤色(上側)の曲線は、金ナノ粒子でコーティングされたビーズを通過した後の、c-標的を含むハイブリダイゼーション溶液から記録し、一方、緑色(下側)の曲線は、金ナノ粒子でコーティングされたビーズを通過した後の、nc-標的を含むハイブリダイゼーション溶液から記録した。
【0141】
実施例13
クエン酸またはポリアニオンでコーティングされたガラスビーズの形成
小型のアニオンガラスビーズは、アニオンを含む水溶液にガラスビーズを曝露させることによって作製することができる。温度およびpHの適切な条件下で、ガラスの表面はアニオンで効果的にコーティングされると考えられる。多種多様の基材のポリアニオンコーティングは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Shiratori and Rubner, "pH-dependent Thickness Behavior of Sequentially Adsorbed Layers of Weak Polyelectrolytes," Macromolecules 33(11):4213-4219 (2000)の方法に従って、単に高分子電解質溶液中に基材を浸漬することによって達成することができる。
【0142】
実施例14
基材上のパターン化帯電フィルムの形成
ds-核酸を濃縮するために使用されるパターン化帯電フィルムは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Zhang et al., "Particle Assembly On Patterned "Plus/Minus" Polyelectrolyte Surfaces Via Polymer-On- Polymer Stamping," Langmuir 18(11):4505-4510 (2002)において説明されている手順に従って製作することができる。
【0143】
実施例15
クラッシュアウト法による、溶液中のds-DNAからのクエン酸でコーティングされた金ナノ粒子(およびそれらに結合したss-DNA)の分離
クラッシュアウト法は、溶液中の相互作用を使用して、金(または負に帯電した他の)ナノ粒子上に優先的にss-DNAを吸着させる段階を最初に含むが、次いで、それらのナノ粒子およびそれらに結合したss-DNAを除去して、分析しようとするds-DNA(標的)を残す段階を含む。これは、溶液からss-DNAを除去するのではなく、溶液からナノ粒子を除去する段階を含むため、「クラッシュアウト」法と呼ばれている。
【0144】
この方法のためのプロトコールは、前述の蛍光法に類似している。最初に、(その存在がスクリーニングされる)標的に相補的な配列を有する蛍光でタグ化されたプローブに対して分析物をハイブリダイズさせた。次いで、ハイブリダイゼーション溶液を金コロイド中に導入し、続いて塩溶液を添加した。(蛍光法では、塩の目的は、ds-DNAをさらに安定させることだけであったのに対し、クラッシュアウト法では、その最も重要な目的は、それらを溶液から除去、すなわち脱出させることができるように、金ナノ粒子を凝集させることである。)塩が多すぎると、ナノ粒子コーティングの反発が遮られるようになり、その結果、ds-DNAが吸着すると考えられ、一方、塩が少なすぎると、金の凝集を引き起こさないと考えられるため、塩濃度は、約0.1M〜1Mの範囲内で提供されるべきである。
【0145】
上記の手順のうちで、塩によって誘導される凝集、および遠心分離をより詳細に説明する。金コロイド500μL(13nm粒子、17nM溶液)に、ss-DNA(またはds-DNA)溶液100μLを添加した(0.2M塩、10mM PBS)。金凝集の特徴である赤色から青色への変化が観察された。凝集後、混合物を2分間遠心分離した。清澄な溶液をピペットでポリスチレンキュベット中に移し、次いで蛍光計中で調査した。これらの結果を図18に示し、10倍を超えるコントラストが達成されたことを実証する。これは初期の結果であるため、プロトコールを最適化するにつれて、コントラストの有意な改善が実現されると考えられている。この改善を実現するための1つの実行可能な手段は、本方法を複数回適用することである。
【0146】
シグナル検出それ自体は、蛍光の消光にもはや依拠していないという状況から、クラッシュアウト法において、金コロイドナノ粒子の代わりに、アニオンまたはポリアニオンでコーティングされた非金属ナノ粒子を使用できることもまた、企図される。
【0147】
実施例16
ビーズをまたはクラッシュアウト分離技術と共に使用される他のタグ化アプローチ
固定化されたビーズおよびクラッシュアウト法は、コントラストの問題を解決するだけでなく、蛍光タグ以外の他の標識の使用も可能にする。2種の適切な標識は、放射性タグおよび電気化学的(「レドックス」)タグである。溶液中に残存するナノ粒子を凝集体から分離した後、サイクリックボルタンメトリー(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、De-los-Santos-Alvarez, Anal. Chem. 74:3342-3347 (2002))、ストリッピング電位差測定法(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Wang et al., Anal. Chem. 73:5576-5581 (2001))、方形波ボルタンメトリー(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Mugweru et al., Anal. Chem. 74:4044-4049 (2002))、微分ボルタンメトリー(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Olivira-Brett et al., Langmuir 18:2326-2330 (2002))、およびACインピーダンス分光法(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ruan et al., Anal. Chem. 74:4814-4820 (2002); Yan et al., Anal. Chem. 73:5272-5280 (2001); Patolsky et al., Langmuir 15:3703-3706 (1999); Patolsky et al., J. Am. Chem. Soc. 123:5194-5205 (2001))のいずれかを用いて、電気化学的検出を実施することができる。
【0148】
ビーズ法およびフェロセンによるプローブ核酸の電気化学的タグ化を用いて、10-17モルまたは10-18モルの標識の検出を容易に実現できることが予想される。電気的方法は、レドックスタグの存在を検知するのに必要とされる計測装置を、小型の装置、例えば電子的検出が同じチップ上に統合され得るチップ上でのPCRを使用するものに小型化することができるという点で、特に興味深い。
【0149】
実施例17
超高感度のアッセイ法のための、溶出されたds-核酸の濃縮
大半の応用例において、カラムを通過する分析物の部分の蛍光(または放射能もしくは電気化学的活性)を容易に分析することができる。しかしながら、ほんの数コピーの核酸の超高感度の検出を実施するために、カラム(または他の分離手順)から溶出する分析物を濃縮することが可能である。分析物を濃縮することにより、PCR増幅の必要性を潜在的に軽減させるか、または無くすことができる。
【0150】
未結合のプローブがカラムによって一旦分離されると、ds-核酸のすべてを回収しない理由はない。分析用に予め定められた位置にds-核酸が付着するように、負に帯電した表面上の正に帯電したスポットを用いることによって、これを実現することができる。蛍光の場合、帯電スポットは、ポリカチオン(例えばポリアミン)を用いて調製することができ、かつ、検出機器(例えば蛍光顕微鏡)の焦点を、予め定められた位置に合わせることができる。電気化学的な場合、帯電スポットは、正に帯電している末端基、例えばNH2を有する単層で機能化されているマイクロ電極(例えば、金、白金など)であり得る。
【0151】
パターン化高分子電解質は、以下のようにして作製することができる。第1に、標準的な静電気的自己組織化技術によって、DNAが付着しないと考えられる負に帯電した表面をスライドガラス上で形成させる。例えば、PAA(ポリアクリル酸)の仕上げ層を用いて、多層構造体を形成させることができる。所望の顕微鏡焦点のサイズの予め定められたへこんだ領域を用いて、PDMSスタンプを製作することができる。スタンプには、スタンプがへこんでいる場所を除いたすべての場所に、表面を疎水性にパターン化するための単層のインクがつけられる。有機溶媒中のODA(CH3(CH2)17NH2)で作られたインクが、この目的に適してい。本出願人らは、このインクの使用を以前に実証した。アミンは、PAA表面のカルボキシラート末端に誘引され、それによって、インク層が塗布されている領域中の親水性PAAを疎水性に変える。結果として生じるパターン化された表面に、正に帯電した電解質を添加することができ、かつ、電解質は、ODAが無い場所にのみ付着すると考えられる。次いで、有機溶媒ですすぐことによってODAを除去して、パターン化された帯電表面を残すことができる。タグ化されたds-核酸だけが残存しているはずである、処理された分析物を適用することにより、DNAが、分析用の正に帯電したスポット上に濃縮されると考えられる。
【0152】
実施例18
正に帯電した微粒子の形成
ポリカチオン性のポリスチレン微粒子またはシリカ微粒子は、カチオンを含む水溶液に微粒子を曝露させることによって作製することができる。温度およびpHの適切な条件下で、微粒子表面は、カチオンで効果的にコーティングされると考えられる。多種多様な基材のポリカチオンコーティングは、単に高分子電解質溶液中に基材を浸漬することによって、達成することができる。
【0153】
実施例19
超高感度のアッセイ法のための、溶出されたds-核酸の濃縮
ポリカチオン微粒子を、上記の実施例17において説明したタイプの分離カラムを通過する溶出液中に導入することができる。これらの微粒子は、標識されたds-DNAを小さな体積上に吸着すると考えられる。回収の際、共焦点顕微鏡を使用する分析のために、負にバイアスされた電極上にこれらの微粒子を誘導することができる。
【0154】
実施例20〜21のための材料および方法
Auナノ粒子の合成:
99.99%のテトラクロロ金(III)酸水素(HAuCl4・3H2O)および99%のクエン酸ナトリウム(Na3C6H5O7・2H2O)を、Alfa Aesarから購入し、かつ、さらなる精製をせずに使用した。金コロイド、すなわちクエン酸ナトリウムによって凝集しないように安定させたAuナノ粒子の水性懸濁液を、他で説明されているように調製した(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Grabar et al., "Preparation and Characterization of Au Colloid Monolayers," Anal. Chem. 67:735-743 (1995))。手短に言えば、1mM HAuCl4(Alfa Aesar, Ward Hill, MA)水溶液250mLを、攪拌しながら沸点まで加熱した。沸騰している溶液に、38.8mMクエン酸ナトリウム(Alfa Aesar, Ward Hill, MA)水溶液25mLを迅速に添加した後、15分間、沸騰および攪拌を継続した。次いで、使用するために溶液を室温まで放冷した。TEMによって金ナノ粒子の直径を測定したところ、約13nmであり、これは、それらの吸収スペクトル(520nmで最大)と一致している。金コロイドの濃度は約17nMであった。
【0155】
オリゴヌクレオチド標的およびオリゴヌクレオチドプローブの選択および調製:
比色アッセイ法用のプローブ配列として使用される2-o-メチルRNAオリゴヌクレオチド(5'-AGG AAU UCC AUA GCU-3', SEQ ID NO:34)は、IDT(Coralville, IA)によって合成および精製された。プローブと同じ長さの3種のRNA配列を標的として使用した。これらは、IDTによって合成および精製された(RNaseフリーHPLC精製、85%を上回る完全長生成物のRNAオリゴ)。1つの配列(c-標的)はプローブに相補的であった。2つ目(mc-標的:5'-AGC UAU AGA AUU CCU-3', SEQ ID NO:35)は、プローブとの間に一塩基対ミスマッチを有していた。3つ目(nc-標的:5'-CGA UCA CGA GAU CGA-3', SEQ ID NO:33)は、プローブに相補的ではない。蛍光アッセイ法の場合、ローダミンレッドで標識したDNAをプローブ(野生型プローブ:ローダミンレッド-5'-AGG AAT TCC ATA GCT-3', SEQ ID NO:8、および変異プローブ:ローダミンレッド-5'-AGG AAT GCC ATA GCT-3', SEQ ID NO:36)として使用した。ローダミンレッドで標識したDNA配列は、MWG Biotech (High Point, NC)から購入した。2'-ACEで保護した50merのRNA50aおよびRNA50bを、DHARMACOM RNA Technologies (Lafayette, CO)から購入した。これらの2種の配列は、配列中の1つの塩基だけが異なっている(それぞれ、

RNA50aは、野生型プローブと完全にマッチした配列を含むのに対し、RNA50aの類似したセグメントは、野生型プローブとの一塩基対ミスマッチを有する。逆に言えば、RNA50b上の標的配列は、変異プローブと完全にマッチしており、したがって、RNA50aの類似したセグメントは、変異プローブとの一塩基対ミスマッチを有する。
【0156】
本文中で指定した濃度の塩およびリン酸緩衝液を含むRNA溶液およびDNA溶液を作製した。必要なリン酸カリウム(一塩基性、無水物、99.999%)およびリン酸ナトリウム(二塩基性、無水物、99.999%)をAldrich Chemical (Milwaukee, WI)から入手し、かつ供給された状態のままで使用した。塩化ナトリウム結晶は、Mallinckrodt(Hazelwood, MO)から購入した。
【0157】
2'-ACEで保護されたRNAの脱保護:
ハイブリダイゼーションを試みる前に、製造業者によって提供された手順に従って、2'-ACEで保護されたRNAを脱保護し、かつさらに精製はせずに使用した。脱保護は、2分間の遠心分離、脱保護緩衝液400μLをRNAのチューブに添加する段階、および結果として生じるRNA沈殿物を完全に溶解させる段階を含む。この溶液を10秒間回転させ、10秒間遠心分離し、かつ60℃で30分間インキュベートした。次いで、Speed Vacを用いて、使用前にこの試料を脱水した。
【0158】
ハイブリダイゼーション:
20ピコモルの各プローブ配列および標的配列を含むハイブリダイゼーション試験溶液を、0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝溶液(PBS)中で作製した。RNA標的の任意の二次構造を壊し、かつプローブとハイブリダイゼーションさせるために、3分間、95℃まで試験溶液を加熱し、次いで1分間、所望のアッセイ法に適した温度まで冷却した。単純な配列検出用に使用される温度は典型的に周囲温度であったのに対し、一塩基ミスマッチの検出では、ミスマッチの融解温度と完全なマッチの融解温度の間の温度でハイブリダイゼーションが起こることが必要である。以下にこれらのアッセイ法を実施する際、試験溶液の温度に関わらず、周囲温度で金コロイドを使用した。
【0159】
比色検出:
金コロイド溶液50μLをハイブリダイゼーション試験溶液10μLに添加し、かつこの混合物の色を直ちに検査した。Canon S-30デジタルカメラを用いて写真を記録した。
【0160】
蛍光検出:
ハイブリダイゼーション試験溶液5μLを、金コロイド500μLに添加し、次いで、0.3M NaClを含む10 PBS 500μLと混合した。混合後2分以内に、蛍光計(Fluorolog 3, Jobin Yvon)中で、570mmでの励起を用い、585nm〜680nmの発光波長の範囲に渡って、この混合物の蛍光スペクトルを記録した。分光計のスリットは、4nm帯域に対して設定した。ローダミンの最大発光波長に近い590nmを用いて、時間に対する光ルミネセンスのトレースを記録した。センチメートル光路長のキュベット用に設計された蛍光計を用いた測定を容易にするために、多量の溶液を使用し、かつ、試料体積のわずか約1%から蛍光を効率的に集めた。したがって、前述の実施例において論じた蛍光アッセイ法の感度は、極めて過小評価されていた。
【0161】
実施例20
RNAオリゴヌクレオチドの比色検出
図19A〜図19Dは、ハイブリダイゼーション試験溶液を金コロイドと混合した直後に撮影した画像である。ハイブリダイゼーション溶液中の塩の量は、RNAの非存在下でAuナノ粒子凝集を引き起こすのに十分であった。各バイアルは、10mM PBSおよび0.3M NaClならびに金コロイド50μLを含むハイブリダイゼーション試験溶液10μLを含む。ハイブリダイゼーション溶液中には、20ピコモルのRNAプローブおよび標的があった。プローブとしては、安定性が高いため、2'-o-メチルRNAを使用した(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Majlessi et al., "Advantages of 2'-O-methyl Oligoribonucleotide Probes for Detecting RNA Targets," Nucleic Acids Res. 26:2224-2229 (1998))。相補的(c)標的配列、一塩基ミスマッチの(mc)標的配列、および無関係の(nc)標的配列を、それぞれ、左側のバイアル、中央のバイアル、および右側のバイアル中で使用した。すべてのハイブリダイゼーション試験溶液を95℃で3分間加熱し、次いで、指定の温度(A:20℃、B:50℃、C:59℃、およびD:64℃)で1分間アニーリングした。図19Aおよび図19Bにおいて、c標的およびmc標的は、灰色を呈したのに対し、nc標的は、明るいピンク色に見えた。この結果より、c標的およびmc標的は、50℃より低い温度でプローブとハイブリダイズし、ds-RNAを形成することが示唆される。ds-RNAは、Auナノ粒子に吸着せず、その結果、ハイブリダイゼーション溶液中の塩がAuナノ粒子の凝集および色の変化を引き起こす。nc標的はプローブに相補的ではないため、nc-標的およびプローブの両方とも、1本鎖のままである。したがって、それらはAuナノ粒子に迅速に吸着し、かつ塩によって誘導される凝集を起こさないようにそれらを安定させ、その結果、金コロイドがピンク色のままである。Auナノ粒子と混合する前にアニーリング温度を59℃まで上昇させた場合(図19C)、59℃は、mc-標的の融解温度(Tm)より高いが、c-標的の融解温度より低いため、c-標的を含む混合物はやはり灰色に変わったが、mc-標的を含む混合物はピンク色のままであった。64℃(図19D)では、どの標的もプローブとハイブリダイズすることができず、かつ全ての溶液はピンク色に見える。コロイド中でのこれらの条件下のハイブリダイゼーションは、Auナノ粒子への吸着よりずっと遅いため、ハイブリダイゼーション試験溶液のみを加熱するが、金コロイドは20℃のままにさせることが、実用的である。同時に、Auナノ粒子が凝集するのにかかるよりも長い間、2本鎖の安定性を維持するのに十分な塩が混合物中にある。Auナノ粒子の凝集は、不可逆的である。
【0162】
色の変化は、ヒトの眼によって検出可能であるが、吸収スペクトルによってより高感度で、かつ定量的にモニターすることができる(図20)。これらは、凝集が起こらない場合には、特徴的な孤立したAuナノ粒子スペクトルを示し、かつ、塩が凝集を引き起こすことができる場合には、凝集体に関連した幅広い赤い尾部(tail)を示す。図1および図2の場合の塩によって誘導される凝集挙動の実質的な変化は、Auナノ粒子当たり10個以上のオリゴヌクレオチド(15mer)の場合に観察される。驚くべきことに、これは、Auナノ粒子表面領域のわずか約1%をss-RNAで占めることに相当する。金ナノ粒子に関連する吸光係数は非常に大きいため(約107lit-mol-1cm-1)、17nM Auナノ粒子溶液の色は、液滴10μL中で眼によって、または光路長100μmの試料セルを使用する吸収分光計を用いることによって、容易に検出される。図19〜図20のデータは、Auナノ粒子当たり約40個の1本鎖RNA(または20個の2本鎖RNA)を用いて記録し、これにより、目視検査によるサビピコモルの標的RNA検出が可能であることが示される。
【0163】
実施例21
RNAロングmerの蛍光検出
比色検出には、前述の蛍光アッセイ法を用いることによって改善できるいくつかの制約がある。従来の吸収分光法は、本来、零位法の実験ではないため、その感度は限定されている。さらに、前述の実施例において示した比色法を使用する場合に、いくつかのあいまい性が生じる。例えば、標的およびプローブの量が異なり、その結果、ハイブリダイゼーション試験溶液が1本鎖および2本鎖の両方を含む環境を想像することは容易である。さらに、プローブの長さが標的の長さにマッチしない状況では、2本鎖複合体上に1本鎖のオーバーハングが残される。蛍光アッセイ法を使用すると、これらの実施上の困難は生じない。蛍光でタグ化されたプローブ鎖の最終結果だけをモニターするため、ミスマッチした標的は、アッセイ法に影響を及ぼさない。プローブ配列が分析物中のある配列とハイブリダイズする場合、それは、吸着および付随する蛍光消光から保護されると考えられる。したがって、すべてのプローブオリゴヌクレオチドを吸着するのに十分な濃度のAuナノ粒子がある限り、蛍光の存在により、分析物中に標的配列が存在することが示唆される。結果ゼロは、蛍光が無いことを示すべきである。測定の零位法の性質(null character)、蛍光検出の高感度、および標的の複合混合物中で機能できる能力により、これは、DNA検出のための強力なアッセイ法になる。
【0164】
RNA配列検出の場合、RNAオリゴヌクレオチドは蛍光で標識することが困難であるため、DNA配列をプローブとしてローダミンレッドで標的した。二次構造を有する長い合成標的(50塩基)を用いてゲノムRNAを刺激し、かつ15塩基のプローブを用いて、標的上の相補的配列についてアッセイした。二次構造を壊すために、ハイブリダイゼーション溶液を3分間、94℃まで加熱し、かつ、より低い温度で1分間、アニーリングした。比色法の場合に実証したように、ハイブリダイゼーションのためのアニーリング温度を慎重に選択することによって、一塩基変異を検出することができる。プローブおよび変異標的から形成された二重鎖は、プローブおよび野生型標的から形成された二重鎖よりも融解温度が低い。これら2種の二重鎖の融解温度の間の温度でハイブリダイゼーションを実施すると、野生型標的に対してのみ二重鎖が形成されると考えられる。プローブがRNA標的とハイブリダイズする場合、これはAuナノ粒子に吸着せず、かつその蛍光は持続する。この実験の結果を図21に示す。15塩基のプローブを使用して野生型50-merが検出されたが、プローブ配列にオーバーラップしている一塩基の差異を有する50-merは、感知できるシグナルを生じない。
【0165】
実用的な目的のためには、オリゴヌクレオチドの複合混合物中の標的RNA配列を検出することが望ましい。蛍光法は、タグ化プローブが分析物の何らかの構成要素とハイブリダイズする限り、ルミネセンスが観察されるように構成されているため、混合物に非常に適している。この特徴を実証するために、プローブに非相補的な短いRNA配列を、標的の濃度の10倍の濃度で、ハイブリダイゼーション試験溶液に添加した。図22は、図21の実験に類似しているが、ハイブリダイゼーション溶液が、5ピコモルのプローブ、5ピコモルの標的、および50ピコモルの短い非相補的なRNAセグメントを含む実験において蛍光の最大波長でモニターした、ハイブリダイゼーション試験溶液をAuナノ粒子と混合した後のルミネセンスの経時変化を示す。野生型および変異体のプローブおよび標的の各組合せを、野生型の融解温度より低いアニーリング温度で例示する。これらのデータにより、変異体標的と完全にマッチするプローブ配列を選択すると、当然、変異体標的に曝露された場合に、野生型プローブ配列よりもはるかに多い蛍光を生じることが確認される。図22の重要な意味は、蛍光アッセイ法が、しばしば発生する短い配列へのRNA分解の実質的な量を許容し得ることである。十分な濃度のAuナノ粒子がある限り、これらは、ハイブリダイズしていないプローブの吸着、およびアッセイ法に不可欠な付随する蛍光消光を妨害しない。
【0166】
蛍光は、ハイブリダイズしていないプローブの吸着を可能にするのに十分な長さであるが、プローブと標的の間で形成されるハイブリダイズされた複合体の存続期間または吸着速度に比べて十分に短い時間で評価されるべきであるため、図22に示された動力学は、アッセイ法の実施において重要である。図22の条件下で、Auナノ粒子へのハイブリダイズしていないプローブの吸着は非常に迅速であり、かつ、トレースの開始より前に起こる。図22において認められるその後の緩徐な減退にはいくつかの考え得る説明がある。プローブと標的の間で形成される複合体は、金コロイド中で完全には安定ではないことがあり、かつゆっくりと脱ハイブリダイズすることがある。脱ハイブリダイズしない場合でも、長い標的鎖の1本鎖部分がAuナノ粒子に吸着し、かつプローブ蛍光体をAuナノ粒子に近づけ、その結果、消光が観察されることがある。最後に、完全な二重鎖さえ、実験で使用される塩濃度で、金にゆっくりと吸着することがある。Auナノ粒子上のクエン酸コーティングとリン酸骨格の間の静電気的反発が甚だしく遮られる高い塩濃度では、二重鎖がAuナノ粒子に迅速に付着することが実験的に実証された。
【0167】
上記の実施例は、Auナノ粒子への1本鎖オリゴヌクレオチドおよび2本鎖オリゴヌクレオチドの差次的な吸着速度に基づいた、特定のRNA配列の検出に対する単純なアプローチを実証する。2-o-メチルRNAプローブを用いた標的RNA配列の比色アッセイ法、および蛍光標識したDNAプローブとの標的RNAのハイブリダイゼーションに基づいた蛍光アッセイ法が開発された。これらのアッセイ法は、市販されている反応物しか必要としない。これらの方法の重要な強みは、ハイブリダイゼーション段階が、アッセイ法から独立して完了され、その結果、迅速かつ効率的なハイブリダイゼーションのための最適条件下で実施できることである。したがって、各アッセイ法は、10分未満しかかからず、その結果、RNAの不安定性に関する問題は最小限に抑えられる。プローブ配列と標的配列の一塩基ミスマッチは、高いコントラストで容易に検出することができる。蛍光アッセイ法は、標的の複合混合物にさえも、かつプローブおよび標的の長さがかなり異なる場合にさえ有効であるため、特に有望である。このため、ゲノムRNAの試料中の標的配列を捜す際に使用することが可能になると考えられる。これらの方法は、分子生物学および臨床的診断において広く応用されると考えられる。
【0168】
本明細書において詳細に好ましい態様を示し、かつ説明したが、様々な修正、追加、および置換などを、本発明の精神から逸脱することなく実施できること、ならびに、したがってこれらが、以下の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内にあるとみなされることが、関連技術分野の熟練者には明らかであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
(図1)1本鎖オリゴヌクレオチドと2本鎖オリゴヌクレオチドを区別し、その結果として選択的にオリゴヌクレオチドを検出するための比色法の絵で表した図である。円は、コロイド状の金属(例えば金)ナノ粒子を表す。
(図2)選択的オリゴヌクレオチド検出のための蛍光定量的方法の絵で表した図である。パネルA、パネルB、およびパネルD中の赤色の星は、プローブ鎖上の蛍光標識に由来する、同定可能な(すなわち消光されていない)蛍光を表す。緑色の細い鎖および緑色の太い鎖は、それぞれ1本鎖核酸分子および2本鎖核酸分子を表す。パネルCおよびパネルD中の円は、金属(例えば金)ナノ粒子を表す。オリゴヌクレオチドプローブと標的核酸分子のハイブリダイゼーションは、金属ナノ粒子を導入する前に起こる。DNA二重鎖の形成が起こらなかったハイブリダイゼーション溶液中にナノ粒子が導入されると、プローブ上のタグに由来する蛍光が消光される(パネルC)。ハイブリダイゼーションが起こった溶液中にナノ粒子が導入されると、二重鎖を形成しているプローブ上のタグに由来する蛍光が観察される(パネルD)。
(図3)イムノPCRを本発明の方法と組み合わせたタンパク質検出の模式的なプロトコールである。
(図4)金ナノ粒子上でのss-DNAの優先的な吸着の証拠を提供する。図4Aは、ss-DNA(破線)およびds-DNA(実線)に結合されたローダミンレッドから発された蛍光のグラフ図である。蛍光スペクトルは、ハイブリダイゼーション試験溶液(色素標識したss-DNAの最終濃度:50nM)、金コロイド500μL、および0.1M NaClを含む10mMリン酸緩衝溶液(PBS)500μLからなる混合物から記録した。ss-DNA(破線)の曲線は、プローブおよびその非相補的な標的(nc-標的)を含む混合物から記録した。点からなる曲線は、プローブおよびその相補的な標的(c-標的)を含む混合物から記録した。図4Bは、ss-DNA(実線)およびds-DNA(破線)上のタグ化されたローダミングリーンに由来する表面増強共鳴ラマン散乱(「SERRS」)のグラフ図である。SERRSは、プローブ5ピコモルおよびnc-標的5ピコモル(実線の曲線)またはc-標的5ピコモル(破線の曲線)、ならびに0.5M NaClを含む10mM PBS 100μL、ならびに銀コロイド300μLの混合物から記録した。1645cm-1、1558cm-1、1509cm-1、および1363cm-1でのラマンモードは、ローダミングリーンのコアの芳香族C-Cストレッチ(stretch)モードであるのに対し、1279cm-1および1182cm-1でのラマンモードは、それぞれ、ローダミンのC-O-Cストレッチ振動およびC-Cストレッチ振動である。
(図5)オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの比色検出を示す。図5Aは、それぞれ、金コロイド(ひし形)、ならびにss-DNA1(円)、ss-DNA2(三角形)、およびss-DNA1とss-DNA2のハイブリダイゼーションに由来するds-DNA(四角形)を含む混合物の吸収スペクトルを示すグラフである。金コロイドは、混合物中での濃度と同じ濃度まで水で希釈した。これらの混合物は、17nMの金コロイド500μL、続いて10mM PBSおよび0.2M NaCl 200μLに添加される、ハイブリダイゼーション試験溶液(塩緩衝液中ss-DNA 5μL(60μM))を含んだ。図5Bは、金ナノ粒子当たりのDNAの数で表したオリゴヌクレオチド濃度に対する、520nmでの吸光度と700nmでの吸光度の比率のグラフ図である。DNA配列および混合物は、DNAの量の変動以外は、図5Aにおけるものと同じである。図5Cは、重症急性呼吸器症候群(「SARS」)ウイルスに特徴的なDNA配列断片の比色検出を示す写真である(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Drosten et al., The New England Journal of Medicine 348:1967-1976 (2003))。すべての溶液は、プローブ120ピコモル、金コロイド200μL、ならびに10 mM PBSおよび0.2M NaCl 100μLを含んだ。溶液中の標的の量とプローブの量の比率は、それぞれ、(左から右に)0、0.2、0.4、0.6、および1であった。
(図6)混合物中、低濃度、少量であり、かつ一塩基ミスマッチを有する標的の比色検出を示す。図6Aは、混合物中の標的配列の検出を示す写真である。ハイブリダイゼーション試験溶液3.5μLを、金コロイド300μL、および0.2M NaClを含む10mMリン酸緩衝溶液300μLと混合した。溶液中に含まれる相補的標的は、左から右に、全オリゴヌクレオチド濃度の50%、40%、30%、および0%であり、残りの部分は非相補的標的が占めた。すべての溶液は、相補的標的および非相補的標的の総量に等しい、105ピコモルのプローブを含んだ。図6Bは、低濃度溶液中の標的DNAの検出を示す写真である。金コロイド100μLを、水300μL中に希釈し、ハイブリダイゼーション試験溶液1μL、および0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝溶液300μLと混合した(最終標的濃度:4.3nM)。左側のバイアルは、ミスマッチしたss-DNA鎖を含んでいたのに対し、右側のバイアルは、相補鎖を含んでいた。図6Cは、少量の標的の検出を示す写真である。金コロイド5μLを、0.3μMオリゴヌクレオチドを含むハイブリダイゼーション試験溶液0.2μLと混合し、次いで、0.2M NaClを含む10mMリン酸緩衝溶液3μLと混合した。結果として生じる、それぞれ60フェムトモルを含む非相補的ss-DNA混合物(左)および相補的ss-DNA(右)の液滴を、検査するために、逆さにしたプラスチック製バイアル上に置いた。図6Dは、水中の脱ハイブリダイゼーション動力学を介した、ds-DNA中の一塩基対ミスマッチの同定を示す写真である。ds-DNA溶液1μLを、それぞれ0分、1分、および2分間、水100μL中で脱ハイブリダイズし、次いで、金ナノ粒子300μLおよび10mMリン酸緩衝溶液0.3M NaCl 300μLと混合した(ds-DNA最終濃度:0.043μM)。各脱ハイブリダイゼーション時間の群の左側のバイアル中の溶液は、一塩基対ミスマッチを有するds-DNAを含んでいたのに対し、右側のバイアルは、完全にマッチした標的鎖およびプローブ鎖を含んでいた。赤色は、ds-DNAの一部分が脱ハイブリダイズしていたことを示す。図6Eは、金コロイド中の脱ハイブリダイゼーション動力学を介した、ds-DNA中の一塩基対ミスマッチの同定を示す写真である。オリゴヌクレオチド1μLおよび金ナノ粒子300μLをそれぞれ0.5分間、1分間、および2分間超音波処理し、次いで、10mMリン酸緩衝溶液0.3M NaCl 300μLと混合した(最終標的濃度:0.05μM)。各脱ハイブリダイゼーション時間の群の左側のバイアル中の溶液は、一塩基対ミスマッチを有するds-DNAを含んでいたのに対し、右側のバイアルは、完全にマッチした標的鎖およびプローブ鎖を含んでいた。赤色は、ds-DNAの一部分が脱ハイブリダイズしていたことを示す。これらのオリゴヌクレオチド配列は、本文中で特定する。
(図7)金ナノ粒子が、ss-DNA上に標識された蛍光体からの蛍光を優先的に消光することを示す。図7Aは、ローダミンレッドで標識したss-DNAプローブおよびその相補的標的(黒色の四角形)または非相補的標的(白抜きの四角形)のハイブリダイズされた試験溶液5μL(10μM)、金コロイド500μL、ならびに0.1M NaClを含む10mM PBS 500μLの混合物の蛍光スペクトルを示すグラフである。図7Bは、共焦点蛍光顕微鏡を用いて測定した蛍光画像強度プロファイルを示すグラフである。ハイブリダイゼーション試験溶液0.5μL(0.1μM)を、希釈した金コロイド(脱イオン水で20倍希釈)500μLおよび0.1M NaClを含む10mM PBS 500μLと混合した。黒色の円は、相補的標的を含む混合物2μLから記録した。白抜きの円は、非相補的標的を含む混合物2μLから記録した。
(図8)長い標的および混合物中の長い標的の検出を示す。図8Aは、長い標的を扱う方法を示すグラフである。蛍光スペクトルは、それぞれ、相補的標的a(黒色の四角形)、相補的標的b(白抜きの四角形)、および非相補的標的c(黒色の三角形)を含む溶液から記録した。溶液は、ハイブリダイズされた試験溶液4μL(10μM)、金コロイド500μL、および0.1M NaClを含む10mM PBS 500μLを含んだ。図8Bは、混合物中の長い標的を扱う方法を示すグラフである。蛍光スペクトルは、それぞれ、1%の相補的標的a(黒色の四角形)、1%の相補的標的b(白抜きの四角形)、および非相補的標的(黒色の三角形)を含む溶液から記録した。ハイブリダイズされた試験溶液中のオリゴヌクレオチドの構成要素は、10ピコモルの非相補的標的、0.5ピコモルのプローブ、および0.1ピコモルの候補を含んだ。これらの混合物は、ハイブリダイズされた試験溶液0.5μL、金コロイド500μL(水250μLで希釈)、および0.1M NaClを含む10mM PBS 500μlで構成された。
(図9)一塩基対ミスマッチの検出を示す。図9Aは、長い標的aおよび標的a'の中央に結合するプローブを示すグラフである。図9Bは、長い標的bおよび相補的標的b'の一端に結合するプローブを示すグラフである。一塩基対ミスマッチ検出のための蛍光スペクトルは、46℃の湯浴中で温めたハイブリダイズされた試験溶液(同量のプローブおよび標的)1μL(10μM)、金コロイド500μL、ならびに10mM PBSおよび0.1M NaCl 500μLを含む混合物から記録した。黒色の四角形は、完全にマッチしたds-DNAを含む混合物から記録し、白抜きの四角形は、一塩基対ミスマッチを有するds-DNAを含む混合物から記録した。
(図10)は、複数の標的の同時検出を示す。図10Aは、プローブ1上にタグ化されたローダミンレッドの吸収極大である570nmでの励起を示すグラフである。図10Bは、プローブ2上にタグ化されたcy5の吸収極大である648nMでの励起を示すグラフである。(注意:図10B中のスペクトル(黒色の四角形)の第2のピークは、570nmによって励起される、プローブ2上にタグ化されたcy5の発光である。)
(図11)は、金ナノ粒子へのss-DNAの吸着を示す。図11Aは、最初に、金コロイド300μLと、脱イオン水100μL(赤色)、10mM PBS(0.2M NaCl)100μL(青色)、300ピコモルの24塩基ss-DNAとの、次いで10mM PBS(0.2M NaCl)100μL(緑色)との吸収スペクトルを図示する。図11Bは、金コロイド1000μLにローダミンレッドでタグ化したss-DNA 4ピコモルを添加した後の、時間に対する光ルミネセンス強度を示すグラフである。10mer(赤色)、24mer(緑色)、および50mer(青色)である。図11Cは、異なる温度で2分間加熱し、続いて10mM PBS(0.2M NaCl)300μLを添加した、ss-DNA(50mer)200ピコモルおよび金ナノ粒子300μLの混合物の吸収スペクトルを図示する。22℃(青色)、45℃(シアン色)、70℃(緑色)、および95℃(赤色)である。図11Dは、ローダミンレッドで標識した15merのss-DNA、50merのss-DNA、および金コロイドのハイブリダイズされた溶液の蛍光スペクトルを図示する。15merが、50merの中央に結合しているもの(赤色)、末端に結合しているもの(緑色)、およびどこにも結合していないもの(青色)である。下側の挿入図は、15merと50merの間の結合位置を模式図的に示す。上側の挿入図は、15mer上に蛍光標識を持たない、対応する混合物(左から右)のカラー写真を含む。
(図12)負に帯電した金属ナノ粒子とss-DNAの相互作用の模式図である。くさびに似た構造体(左)は、金属ナノ粒子を表し、構造体(右)は、リン酸骨格(縦の実線)およびヌクレオチド塩基(横線)を有するss-核酸を表す。
(図13)PCRで増幅されたDNA配列の同定を示す。図13Aは、検出プロトコールの模式図である。PCR生成物およびプローブの混合物を変性させ、かつ相補的プローブの融解温度より低い温度でアニーリングし、続いて金コロイドを添加する。青色および緑色の長い線は、PCRで増幅されたDNA断片を表し、かつ、ピンク色および淡青色の中くらいの棒は、過剰なPCRプライマーを表す。青色および緑色の短い棒は、結合して、金ナノ粒子凝集(紫色)を結果として生じる、相補的プローブである。紫色およびオレンジ色の短い棒は、金ナノ粒子に結合および吸着せず、ナノ粒子凝集を防ぎ、かつ溶液をピンク色のままにする、非相補的プローブである。図13Bは、相補的プローブ(a)および非相補的プローブ(b)を用いた結果として生じる溶液のカラー写真である。PCR生成物8μL、プローブ3.5ピコモル、および金コロイド70μLを各バイアル中で使用した。
(図14)一塩基対ミスマッチの検出を示す。図14Aは、検出戦略を例示する。緑色および青色の長い線上の赤いスポットは、潜在的なSNPの位置を表す。緑色および青色の長い線は、PCRで増幅されたDNA断片の相補的配列である。緑色および青色の短い棒は、例示されるPCRで増幅されたDNA断片の野生型配列の一部分に相補的なプローブである。図14Bは、一塩基対ミスマッチの検出を示す写真である。バイアルb、d、およびfは、一塩基ミスマッチにオーバーラップしているプローブを有するPCR生成物を含むのに対し、バイアルa、c、およびeは、一塩基対ミスマッチにオーバーラップしていないプローブを有するPCR生成物を含む。50℃(a、b)、54℃(c、d)、および58℃(e、f)でアニーリングした混合物の写真を撮影した。PCR生成物8μL、プローブ3.5ピコモル、および金コロイド70μLを各バイアル中で使用した。
(図15)RNAプローブおよびRNA標的を用いた一塩基対ミスマッチの検出を示す。図15A〜図15B中に示す記号は、以下のとおりである:ds:二重鎖;ds':ミスマッチを含む二重鎖;ss:対照。
(図16)1本鎖核酸から2本鎖を分離するための固定化ビーズ法の1つの実施例を模式図的に示す。固定化された負に帯電したナノ粒子(網掛けの円)で機能化したガラスビーズ(格子模様の円)を充填したフィルターに通して分析物を処理することによる、ハイブリダイズしていない短いss-DNAプローブの除去。フィルターを通過する前のハイブリダイゼーション試験溶液を、模式図的に上に示し、フィルター通過後を下に示す。タグ(太陽に似た白抜きの円)の付いたss-DNAプローブ(くねった薄い線)の結果を左側に、長いss-DNA標的の結果を中央に、およびハイブリダイズされたプローブを伴う標的を右側に示す。タグは、蛍光性、放射性、または電気化学的でよい。溶出された試料中のタグの存在により、標的の存在が示唆れる。
(図17)ss-DNAが、固定化されたビーズのカラムによって優先的に保持されていることを示すグラフである。
(図18)塩によって誘導されるクラッシュアウトおよび遠心分離による金の除去後に残存している溶液の蛍光を示すグラフである。黒色の四角形は、ローダミンでタグ化されたds-DNAである試験分析物を表し、白抜きの四角形は、同量のローダミンでタグ化されたss-DNAを有する試験分析物を表す。
(図19)RNA配列検出のための比色法を示す。図19A〜図19Dのそれぞれにおいて、ハイブリダイゼーション試験溶液および金コロイドの同じ混合物を使用した。各画像の左側のバイアルは、相補的標的を含み、中央のバイアルは、プローブとの一塩基ミスマッチを有する標的を含み、かつ、右側のバイアルは、ランダムな非相補的標的を含む。各ハイブリダイゼーション溶液を94℃で5分間加熱し、続いて、異なる温度で3分間アニーリングした:図19A、20℃;図19B、50℃;図19C、59℃;および図19D、64℃。
(図20)金コロイドに添加された後に2種の異なる温度でアニーリングされたハイブリダイゼーション試験溶液の混合物からの吸収スペクトルを示すグラフである。これらの混合物に由来する四角形、円、および三角形は、それぞれ、相補的標的(c-標的)、ミスマッチ標的(mc-標的)、および非相補的標的(nc-標的)を含む。それぞれの場合において、ハイブリダイゼーション溶液を95℃で3分間加熱し、次いで、20℃で金コロイドに添加する前に1分間アニーリングした。DNAプローブ:ローダミンレッド-5'-AGG AAT TCC ATA GCT-3'、SEQ ID NO:8。野生型標的:

変異標的:

(図21)蛍光標識したDNAプローブの蛍光消光を用いた、RNA配列中の一塩基変異の検出を示すグラフである。ハイブリダイゼーション溶液、金コロイド、および緩衝液/塩溶液の混合物の蛍光スペクトルを、混合の2分後に示す。四角形:DNAプローブに完全に相補的な配列を含む「野生型」RNA標的。円:プローブと一塩基対ミスマッチを形成する配列を含む「変異体」RNA標的。変異体プローブ:ローダミンレッド-5'-AGG AAT TCC ATA GCT-3'、SEQ ID NO:8。非相補的バックグラウンド:5'-CGA UCA CGA GAU CGA-3'、SEQ ID NO:33。
(図22)蛍光アッセイ法を用いた、複合混合物中のRNA配列中の一塩基変異の検出を示すグラフである。PおよびTは、それぞれプローブおよび標的を示し、wおよびmは、それぞれ野生型および変異体を示す。すべてのハイブリダイゼーション溶液は、標的の10倍の濃度の非相補的バックグラウンドRNAを含む。野生型プローブ、野生型標的、および変異体標的の配列は、図21の説明において記載されている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、試験溶液中の標的核酸の存在または非存在を検出するための方法:
少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを、標的核酸を潜在的に含む試験溶液と混合してハイブリダイゼーション溶液を作る段階であって、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブおよび試験溶液が、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブと、試験溶液中に存在する任意の標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で混合される段階;
前記の混合する段階の後に、ハイブリダイズしていないままである任意の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブまたは非標的核酸が負に帯電した複数のナノ粒子と静電気的に結合することを可能にするのに有効な条件下で、ハイブリダイゼーション溶液を負に帯電した複数のナノ粒子に曝露する段階;
前記の曝露する段階の後に、負に帯電した複数のナノ粒子をハイブリダイゼーション溶液から分離する段階;ならびに、
少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたかどうかを判定する段階。
【請求項2】
負に帯電したナノ粒子が、アニオンでコーティングされたナノ粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アニオンが、シトラートアニオン、アセタートアニオン、カルボナートアニオン、リン酸二水素アニオン、オキサラートアニオン、スルファートアニオン、およびニトラートアニオンの群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子が導電性金属で形成されている、請求項2記載の方法。
【請求項5】
導電性金属が金、銀、または白金である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ナノ粒子が非導電性材料で形成されている、請求項2記載の方法。
【請求項7】
非導電性材料がガラスである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
非導電性材料がポリアニオンによってコーティングされている、請求項6記載の方法。
【請求項9】
ポリアニオンが、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アネトールスルホン酸)、ポリ(アニリンスルホン酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、およびポリ(ビニルスルホン酸)の群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
負に帯電した複数のナノ粒子が表面に固定化されている、請求項1記載の方法。
【請求項11】
曝露する段階が、表面にハイブリダイゼーション溶液を導入する段階を含み、かつ、分離する段階が、表面から溶出されるハイブリダイゼーション溶液を回収する段階を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
表面がガラス表面である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
ガラス表面が複数のガラスビーズを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
曝露する段階が、負に帯電したナノ粒子の凝集を引き起こすのに有効である濃度の塩を含む塩溶液をハイブリダイゼーション溶液に添加する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
分離する段階が、負に帯電したナノ粒子の凝集体を溶液から除去するのに有効な条件下で、ハイブリダイゼーション溶液を遠心分離する段階を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
負に帯電した複数のナノ粒子が磁性である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
分離する段階が、ハイブリダイゼーション溶液から負に帯電した磁性ナノ粒子を除去する磁場にハイブリダイゼーション溶液を曝露する段階を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
帯電した固体表面上に2本鎖核酸分子を濃縮する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
帯電した固体表面が、正に帯電している表面上に位置する負に帯電した表面を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドプローブが標識を含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
標識が、蛍光体、放射能標識、またはレドックス電気化学的物質(redox electrochemical)である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
標識が蛍光体であり、かつ、判定する段階が、分離する段階の後にハイブリダイゼーション溶液中の蛍光体の蛍光を検出する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
標識が放射能標識であり、かつ、判定する段階が、分離する段階の後にハイブリダイゼーション溶液中の放射能標識の放射能を検出する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
標識がレドックス化学物質であり、かつ、判定する段階が、分離する段階の後にハイブリダイゼーション溶液のレドックス化学物質の存在を反映している電気化学的活性を検出する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
以下の段階を含む、試料中の病原体を検出する方法:
病原体の核酸を含み得る試料を得る段階;および
請求項1記載の方法を実施する段階であって、少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸にハイブリダイズしたことを判定する段階により、病原体の存在が示唆される段階。
【請求項26】
試料から単離される核酸がRNAであり、かつ標的核酸がRNAである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
試料から単離される核酸がDNAであり、かつ標的核酸がDNAである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
負に帯電した複数のナノ粒子を含む第1の容器;および
負に帯電したナノ粒子の凝集を引き起こすのに有効である濃度の塩を含む塩溶液を含む第2の容器、
を含むキット。
【請求項29】
負に帯電したナノ粒子が、アニオンでコーティングされたナノ粒子を含む、請求項28記載のキット。
【請求項30】
アニオンが、シトラートアニオン、アセタートアニオン、カルボナートアニオン、リン酸二水素アニオン、オキサラートアニオン、スルファートアニオン、およびニトラートアニオンの群より選択される、請求項29記載のキット。
【請求項31】
ナノ粒子が導電性金属で形成されている、請求項29記載のキット。
【請求項32】
導電性金属が金、銀、または白金である、請求項31記載のキット。
【請求項33】
ナノ粒子が非導電性材料で形成されている、請求項29記載のキット。
【請求項34】
非導電性材料がガラスである、請求項33記載のキット。
【請求項35】
非導電性材料がポリアニオンによってコーティングされている、請求項33記載のキット。
【請求項36】
ポリアニオンが、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アネトールスルホン酸)、ポリ(アニリンスルホン酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、およびポリ(ビニルスルホン酸)の群より選択される、請求項35記載のキット。
【請求項37】
負に帯電した複数のナノ粒子がガラスビーズ上に固定化されており、かつビーズがカラム内部に保持されている、請求項28記載のキット。
【請求項38】
以下の1つまたは両方をさらに含む、請求項28記載のキット:
標的核酸に相補的な少なくとも1つの1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含む第3の容器;および、
ハイブリダイゼーション溶液を含む第4の容器。
【請求項39】
1つまたは複数の遠心チューブをさらに含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
負に帯電した複数のナノ粒子が磁性である、請求項28記載のキット。
【請求項41】
正に帯電している表面の場所を含む負に帯電した固体表面をさらに含む、請求項28記載のキット。
【請求項42】
オリゴヌクレオチドプローブが標識を含む、請求項28記載のキット。
【請求項43】
標識が、蛍光体、放射能標識、またはレドックス電気化学的物質である、請求項42記載のキット。
【請求項44】
フィルターをさらに含む、請求項28記載のキット。
【請求項45】
ガラスビーズ上に固定化された負に帯電した複数のナノ粒子を含む容器;および
2本鎖核酸から1本鎖核酸を分離し、かつ負に帯電した複数のナノ粒子を通り越した2本鎖核酸を検出するためのアッセイ法を実施するための取扱い説明書
を含むキット。
【請求項46】
請求項1記載の方法を実施するための検出装置。
【請求項47】
1本鎖核分子を含む試料を得る段階;ならびに、
SNPを含む標的分子の融解温度より高い温度および低い温度で、請求項1記載の方法を実施する段階を含む、
標的核酸分子中の一塩基多型(SNP)を検出する方法であって、
判定する段階が、SNPを含む標的分子の融解温度より低いが、融解温度を超えない温度で混合が実施される場合に、分離する段階の後にds-ハイブリダイゼーション複合体が存在するかどうかを検出する段階を含む、方法。

【公表番号】特表2008−527999(P2008−527999A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552328(P2007−552328)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/002233
【国際公開番号】WO2006/079009
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(500549847)ユニバーシティー オブ ロチェスター (3)
【Fターム(参考)】