説明

長尺体、長尺体の製造方法および長尺体読取装置

【課題】RFID(Radio Frequency Identification)を内蔵した長尺体、RFIDを内蔵した長尺体の製造方法およびこの長尺体に内蔵されているRFIDの情報を読み取る長尺体読取装置を提供する。
【解決手段】長尺体100は、RFID1と、ケーブル心線2と、シース101とを含む。ケーブル心線2は、4心の導線を束にしたものの周囲を布等で被覆して形成された多心ケーブルである。シース101は、電磁波が通過可能であり、ポリエチレン、ビニルあるいはゴム等の絶縁部材でできている。このシースは、RFIDの埋め込まれた位置が認識できるように、RFID上を覆う第一シース3と、第一シース3と異なる色の第二シース4からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDを内蔵した長尺体、RFIDを内蔵した長尺体の製造方法およびこの長尺体に内蔵されているRFIDの情報を読み取る長尺体読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、敷設された多数のケーブルを識別するために、RFID(Radio Frequency Identification)を埋め込む技術が検討されている(特許文献1)。RFIDをケーブルに埋め込むことにより、RFIDに記録された情報を利用して正確にケーブルを識別することが可能となる。ところが、RFIDの読み取り範囲は非常に狭い。そのため、ユーザは、RFIDの埋め込み位置(RFIDが読み取れる位置)を探索しながら読み取り操作を行う必要がある。この読み取り操作は、非常に手間のかかる作業である。
【0003】
読み取り範囲を広げるためにRFIDの読取装置の送信電力等を上げることが考えられる。しかし、この方法では、読み取り範囲は広がるものの対象とするケーブルのRFID以外のRFIDを読み取ってしまい誤識別してしまう可能性がある。
【0004】
そこで、RFIDを埋め込んだ位置のケーブルシース表面にマークを印字する技術が考えられた(特許文献2)。マークの目視確認によりRFIDの埋め込まれた位置に素早く読取装置をかざすことができるため作業時間の短縮が可能になる。
【0005】
また、RFIDを読む場合は、ケーブル軸方向のRFIDの位置の他に、ケーブルの円周方向の位置も重要になってくる。つまり、ケーブル心線の導体の影響でRFIDの読み取り電波が遮蔽され、ケーブル裏側や側面のRFIDが読み取りにくくなる場合がある。そこで、ケーブルの円周方向に多数のアンテナを配置することにより、ケーブルの円周方向のすべての位置に埋め込まれたRFIDからデータを読み込む技術が考えられた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−146068号公報
【特許文献2】特開2006−286396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、ケーブル敷設時のケーブル移動により、ケーブル表面が削れてしまったり、敷設後の経年劣化により印字が退色したり剥がれ落ちたりして印字したマークが消えてしまうという問題が依然としてある。
【0008】
さらに、同一時刻にすべてのアンテナからRFIDの読み取り電波を発射した場合、お互いの電波が干渉し読み取ることができなくなる。此処のアンテナから発射する電波が干渉しないように異なる時刻に電波を発射することも考えられるが、1つのRFIDを複数回の読み取り操作により読み取ることになり読み取り時間が長くなってしまう。そのため、ケーブル製造時にRFIDを実際に読取りRFIDの動作確認を行うような用途で利用する場合ケーブル製造速度を遅くする必要があり製造に時間がかかり、ケーブルの製造コストがアップするという問題もある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、埋め込まれたRFIDから高速かつ確実に情報を読み取ることが可能な構造の長尺体、この長尺体の製造方法および長尺体読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決
するため、本発明の長尺体は、電磁波が透過可能な素材で形成されたシースと、シースに埋め込まれたRFIDとを備える。そして、シースは、RFID上にある第一シースと、第一シースと異なる色の素材で形成された第二シースとを含む。
上記構成によれば、RFIDの上の第一シースの色を、第二シースの色と異なるようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、視覚的にRFIDの埋め込み位置を示すことができるので、RFIDの埋め込み位置を高速かつ確実に認識できる。これにより、埋め込まれたRFIDから高速かつ確実に情報を読み取ることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る長尺体およびその内部構造を示す透過斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る長尺体の径方向の内部構造を示す断面図である。
【図3】長尺体製造装置の構成を示すブロック図である。
【図4】RFID挿入装置およびシース製造装置の構造を示す説明図である。
【図5】RFIDテープの構成を示す説明図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る長尺体およびその内部構造を示す透過斜視図である。
【図7】長尺体製造装置の構成を示すブロック図である。
【図8】ストライプ幅コントローラの構造を示す説明図である。
【図9】本発明の第二の実施形態に係る長尺体の製造手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の変形例に係る長尺体の経方向の内部構造を示す断面図である。
【図11】本発明の変形例に係るRFIDテープの構成を示す説明図である。
【図12】本発明の第一の実施形態に係る長尺体読取装置を適応した長尺体製造装置を示すブロック図である。
【図13】本発明の第一の実施形態に係る長尺体読取装置を中心とする構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第一の長尺体読取装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図15】本発明の第二の実施形態に係る長尺体読取装置を中心とする構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第二の実施形態に係る長尺体読取装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例であるため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0014】
以下の手順で説明を行う。
<長尺体の第一の実施形態例>
1.長尺体の構成
2.長尺体の製造方法
<長尺体の第二の実施形態例>
1.長尺体の構成
2.長尺体の製造方法
<長尺体読取装置の第一の実施形態例>
1.長尺体読取装置の構成
2.長尺体読取装置の動作
<長尺体読取装置の第二の実施形態例>
1.長尺体読取装置の構成
2.長尺体読取装置の動作
【0015】
<長尺体の第一の実施形態例>
本発明の第一の実施形態の例を、図1〜図5を参照して説明する。
[1.長尺体の構成]
図1は、本発明の第一の実施形態に係る長尺体およびその内部構造を示す透過斜視図である。
図2は、本発明の第一の実施形態に係る長尺体の径方向の内部構造を示す断面図である。なお、長尺体100の一例として電線ケーブルを例に示す。
【0016】
長尺体100は、RFID(Radio Frequency Identification)1と、ケーブル心線2と、シース101とを含む。
ケーブル心線2は、4心の導線を束にしたものの周囲を布等で被覆して形成された多心ケーブルである。そして、このケーブル心線2の表面には、軸方向に所定の間隔でRFID1が配置される。
【0017】
RFID1は、情報が書き込まれたICチップおよびアンテナを備えている。そして、RFID1は、アンテナで電波を捉えて、ICチップに導くことにより、ICチップを動作させる。そのため、ICチップに書き込まれた情報は、アンテナを介して電磁波を利用した長尺体読取装置で読み取られる。なお、RFID1は、電磁波が透過できれば光学的に透過できないプラスチックなどの素材であってもよい。
【0018】
このようなRFID1には、製造時にID情報を書換えできない状態で記録されているタイプ(読み取り専用)と、利用時に内部のROMに情報を書き込むタイプ(読み書きタイプ)が存在する。本例では、読み取り専用タイプを例に説明するが、読み書きタイプでも同様の構造で実現可能である。これらケーブル心線2およびRFID1の周囲は、シース101で覆われている。
【0019】
シース101は、電磁波が通過可能であることと、RFID1およびケーブル心線2の保護および外部との絶縁とを目的としているいため、ポリエチレン、ビニルあるいはゴム等の絶縁部材できている。そして、ケーブル心線2の直径に略等しい内径を有する、中空の略円筒形状に形成されている。このシース101は、RFID1の埋め込まれた位置が認識できるように、RFID1上を覆う第一シース3と、第一シース3と異なる色の第二シース4からなる。
【0020】
第一シース3は、RFID1を完全に覆うように配置される(図2を参照)。なお、第一シース3の短い方の弧の長さは、RFID1の幅と等しいことが好ましい。
【0021】
第二シース4は、RFID1およびケーブル心線2において第一シース3で覆われていない部分を完全に覆うように配置される(図2を参照)。以下では、第一シース3の色をA色、第二シース4の色をA色とは異なるB色とする。
【0022】
[2.長尺体の製造方法]
次に、第一の実施形態に係る長尺体100の製造方法について図3,4を参照して説明する。
図3は、長尺体製造装置の構成を示すブロック図である。
長尺体製造装置150は、長尺体100を製造する装置であり、心線ドラム31と、RFID挿入装置33と、シース製造装置36と、巻き取りドラム38とを備える。
【0023】
心線ドラム31には、ケーブル心線2が巻かれている。そして、RFID挿入装置33は、心線ドラム31から引き出されたケーブル心線2の表面にRFID1を沿わせる。これらのRFID1およびケーブル心線2がシース製造装置36に導かれる。
【0024】
シース製造装置36は、RFID1が貼り付けられたケーブル心線2をシース101で覆う処理を行って長尺体100を生成する。より具体的には、シース製造装置36は、注入されたA色樹脂34で、第一シース3を生成し、注入されたB色樹脂35で第二シース4を生成する(図1、2を参照)。なお、RFID挿入装置33およびシース製造装置36における処理の詳細については図4にて後述する。
【0025】
巻き取りドラム38は、シース製造装置36で生成された長尺体100を所定の速度で巻き取るものである。すなわち、心線ドラム31からシース製造装置36に導かれるRFID1およびケーブル心線2の移動速度は、巻き取りドラム33の巻き取り速度に等しい。なお、所定の長さ巻き取られた長尺体100を含む巻き取りドラム38が製品として出荷される。
【0026】
次に、RFID挿入装置33およびシース製造装置36でなされる処理について、図4,5を参照して説明する。
図4は、RFID挿入装置およびシース製造装置の構造を示す説明図である。なお、巻き取りドラム38の巻き取りにより、ケーブル心線2および長尺体100は、図4に示すx方向に所定の速度で動いているものとする。図5は、RFIDテープの構成を示す説明図である。
【0027】
RFID挿入装置33は、RFIDテープ45をケーブル心線2の方面に沿わせるとともに、シース製造装置36の第一シース生成用容器43に挿入する。図5に示すように、RFIDテープ45は、帯状のテープ54にRFID1を取り付けることで形成されている。RFID1は、テープ54の長手方向に所定の間隔をあけて配置されている。なお、テープ534の長手方向の長さは、製造する長尺体100の長さに応じて、適宜設定される。これにより、非常に長い長尺体100を製造する場合であっても、ケーブル心線2の軸方向にRFID1を連続的に沿わせることができる。
【0028】
図4に示すように、シース製造装置36は、中空の略円筒形状の容器を含んでおり、この容器は第一シース生成用容器43および第二シース生成用容器44に分割されている。第一シース生成用容器43は、A色樹脂注入口41に連通され、第二シース生成用容器44は、B色樹脂注入口に連通されている。
【0029】
第一シース生成用容器43には、押し出し機などにより高圧で融解したA色樹脂34がA色樹脂注入口41から注入されている。そして、注入されたA色樹脂34で、RFIDテープ45を覆うようにケーブル心線2がコーティングされ、第一シース3が生成される。
【0030】
一方、第二シース生成用容器44には、押し出し機などにより高圧で融解したB色樹脂35がB色樹脂注入口42から注入されている。そして、注入されたB色樹脂35で、ケーブル心線2の第一シース3でコーティングされる以外の箇所がコーティングされ、第二シース4が生成される。
【0031】
以上説明したように、上述した長尺体の第一の実施形態では、RFID1の真上の第一シース3の色を、第二シース4の色と異なるようにすることができる。これにより、RFID1の埋め込まれている場所を示すことができるので、作業者にRFID1の埋め込み位置を視覚的に示すことができる。この結果、RFID1の埋め込み位置を高速かつ正確に確認することができる。したがって、埋め込まれたRFID1から高速かつ確実に情報を読み取ることができる、という効果がある。
【0032】
また、上述した長尺体の第一の実施形態では、第一および第二シース3,4は、それぞれ長尺体100の内部まで入り込んだ構造となっている。このため、長尺体100の表面が削れたり、経年劣化により長尺体100の表面が剥がれ落ちたりしても、シースの色の違いを判別できる。
【0033】
<長尺体の第二の実施形態例>
本発明の第二の実施形態の例を、図6〜図9を参照して説明する。図6〜図9に示す第二の実施形態に係る長尺体200は、第一の実施形態に係る長尺体100とその構成はほとんど変わらないので、共通部分については同一符号を付して、説明を省略することにする。
【0034】
[1.長尺体の構成]
図6は、本発明の第二の実施形態に係る長尺体およびその内部構造を示す透過斜視図である。
長尺体200は、円周方向および軸方向のどこにRFID1が埋め込まれているのかを、作業者が目視確認できるようにするために、長尺体100のシース101(図1,2を参照)の代替えとして、シース201を備える。シース201は、シース101と同じ素材で同じ形状に形成されている。このシース201は、第一シース61および第二シース62を含む。
【0035】
第一シース61は、第一シース3と同じ素材で形成される。この第一シース61において、RFID1に重なっている部分63は、第一シース3と同一形状である。一方、RFID1に重なっていない部分64は、第一シース3とほぼ相似になるように形成されており、この部分64の弧の長さは、部分63の弧の長さより短くなっている。なお、第二シース62は、第一シースと合併可能な形状に形成されている。
【0036】
[2.長尺体の製造方法]
次に、第二の実施形態に係る長尺体200の製造方法について図7,8を参照して説明する。
図7は、長尺体製造装置の構成を示すブロック図である。
長尺体製造装置250は、長尺体200を製造する装置であり、長尺体製造装置150(図3を参照)にRFID位置検知装置71およびストライプ幅コントローラ72を追加した構成となっている。
【0037】
RFID位置検知装置71は、RFID挿入装置33により心線2に沿って挿入されたRFIDテープ45のRFID1の位置を検知する。この検知結果は、ストライプ幅コントローラ72に出力される。なお、RFID1の位置を検出する手段としては、光学的なセンサでRFID1とその他の部分との色の違いなどを検出するようなセンサでもよいし、RFID1に記憶された情報が読めるか否かで判定するRFIDリーダでもよい。
【0038】
ストライプ幅コントローラ72は、RFID位置検知装置71から入力される検知結果を用いて、第一シース61(図6を参照)の外観から見える部分の幅を調節する。なお、ストライプ幅コントローラ72の構造については図8にて後述する。
【0039】
次に、ストライプ幅コントローラ72の詳細な構造について、図8を参照して説明する。
図8は、ストライプ幅コントローラの構造を示す説明図である。なお、巻き取りドラム38への巻き取りにより、長尺体200は、図8に示すx方向に所定の速度で動いているものとする。
【0040】
ストライプ幅コントローラ72は、シース製造装置36の第一シース生成用容器43の後段に備えられ、第一シース生成用容器43から出力されるA色樹脂の量をバルブ83により制御して、第一シース3の幅を調節する。バルブ83が開放位置84にあるときには、バルブ83を通過するA色樹脂が多くなり、第一シース3の幅の広い部分63が形成される。一方、バルブ83が絞り位置85にあるときには、バルブ83を通過するA色樹脂が少なくなり、第一シース3の幅の狭い部分64が形成される。なお、このような第一シース3の幅の変化に伴ない、第二シース4の幅も変化する。
【0041】
図9は、本発明の第二の実施形態に係る長尺体の製造手順を示すフローチャートである。
まず、RFID位置検知装置71は、RFID1が通過したか否かを検知する(ステップS90)。RFID1が通過したことを検知したならば(ステップS90のYES)、ストライプ幅コントローラ72は、RFID1の通過速度に応じた時間が経過した後に、バルブ83を開放位置84にする制御を行う(ステップS91)。そして、ステップS90の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0042】
一方、RFID1が通過したことを検知していないならば(ステップS90のNO)、ストライプ幅コントローラ72は、RFID1の通過速度に応じた時間が経過した後に、バルブ83を絞り位置85に移動する制御を行う(ステップS92)。そして、ステップS90の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0043】
ステップS91およびステップS92の処理において、RFID1の通過速度に応じた時間が経過した後にバルブ83を開閉するのは、RFID位置検知装置71とバルブ83までの距離があるためである。だたし、RFIDの移動速度は、巻き取りドラム38の巻き取り速度と等しく、本例では、ユーザにより入力されたものとするが、センサ等によっても取得可能である。なお、RFID1の移動速度の他にバルブ開閉を行うための応答時間を考慮して、遅延時間を計算してもよい。
【0044】
以上説明したように、上述した長尺体の第二の実施形態では、RFID1の真上の第一シース61の色を、第二シース62の色と異なるようにすることができる。さらに、第一シース61の幅をRFID1が埋め込まれている箇所とそうでない箇所とで異なるようにすることができる。これにより、RFID1の埋め込まれている場所を示すことができるので、作業者にRFID1の埋め込み位置を確実に視覚的に示すことができる。この結果、RFID1の埋め込み位置をより高速かつ正確に認識させることができる。したがって、埋め込まれたRFID1の読み取り作業を高速かつ容易に行うことができる、という効果がある。
【0045】
また、長尺体の第一の実施形態と同様に、第一および第二シース61,62は、それぞれ長尺体200の内部まで入り込んだ構造となっている。このため、長尺体200の表面が削れたり、経年劣化により長尺体200の表面が剥がれ落ちたりしても、シースの色の違いを判別できる。
【0046】
なお、上述した長尺体の第一および第二の実施形態において、ケーブル心線2を単心ケーブルとしてもかまわない。
【0047】
また、上述した長尺体の第一および第二の実施形態において、RFID1が配置されている中心部までA色の第一シース21が及んでいない(図10(a)を参照)ように構成してもよいし、第一シース22の中にRFID1が配置される(図10(b)を参照)ように構成してもよい。
【0048】
また、上述した長尺体の第一および第二の実施形態において、シースに対して着色する手段として通常の照明で判別できる顔料を用いても良いが、ブラックライトなど特定の波長の光や電磁波を当てることにより発光する蛍光顔料などを用いてもかまわない。このようにすると、通常の照明では一般の長尺体のように見えてRFIDの存在を知ることができないが特殊な光を当てることによりRFIDの埋め込み位置が判別できるようになる。通常は知られたくない場所にRFIDを埋め込む場合などに効果的である。
【0049】
また、上述した長尺体の第一および第二の実施形態において、ケーブルを長尺体の一例としたが、配管など内部が中空構造の物、ロープなどのように内部も同じ材質で構成されるものでも同様の構造で実現可能である。例えば配管(パイプ)の場合、ケーブル心線の部分が中空になっていると考えれば同様の構造で実現可能である。配管にRFIDが埋め込まれていることにより多数ある配管の識別が可能となる。
【0050】
また、色違いの配管材料でRFIDの位置を表示することにより配管表面が削れたり腐食した場合でもRFIDの埋め込み位置を目視確認できる。
【0051】
ロープの場合、ケーブル心線部分とシース部分とが同じ材質となるようにすればよい。つまり、より合わせる前のロープにおいてRFIDを埋め込んだ部分とその他の部分を違う色の顔料で染色し、より合わせればよい。例えば、エレベータロープの識別やRFIDに記憶されたIDと位置を対応付けて置くことによりフロアーの検出などにも利用できる。ロープの場合でもロープ自体に色をつけているため経年変化による色の退色などに強い構造とすることができる。
【0052】
また、上述した長尺体の第一および第二の実施形態において、RFIDテープを構成するテープ部分の材質を熱で溶融してシースと同化するような材質にしてもよい。ケーブル心線にテープを沿わせるようにした場合、テープとシース材料の熱収縮率の違いやケーブルを曲げたときの内側と外側での経路長の違いによりテープおよびRFIDに過大な応力がかかりRFIDが損傷する場合がある。ところが、シースと溶解し同化する材料をテープに用いた場合、溶解によりテープはなくなり、RFIDが単独でシース下部に点在させることができる。そのため、熱収縮や長尺体の曲げなどにより発生する応力は局所的に留まり、RFIDの損傷が少なくなるという効果がある。
【0053】
また、上述した長尺体の第一および第二の実施形態において、図11に示すように、テープ54のRFID1のない箇所に切れ込み55を入れてもよい。切れ込みを入れることにより過大な応力がテープ54にかかった場合、切れ込み55箇所からテープ54が切断され、RFID1が保護される。なお、切れ込み55の代わりに切れ込み55の位置を横切るようにミシン目を入れても同様の効果が得られる。
【0054】
<長尺体読取装置の第一の実施形態例>
長尺体読取装置の第一の実施形態の例を、図12〜図14を参照して説明する。なお、長尺体の第一および第二の実施形態との共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。
【0055】
図12は、本発明の第一の実施形態に係る長尺体読取装置を適応した長尺体製造装置を示すブロック図である。
長尺体100に埋め込まれたRFID1が正常に動作しているか否かを検査するためにはシース101が形成された後に、RFID1が読み取れることを確認する必要がある。そのため、長尺体製造装置300は、図3に示す長尺体製造装置150のシース製造装置36と、巻き取りドラム38との間に長尺体読取装置102をさらに備える。この長尺体読取装置102は、巻き取りドラムに巻かれる前の長尺体100に埋め込まれた各RFID1に記憶された情報(例えば、ID情報)を読み取り、読み取った情報を記憶装置103に蓄積していく。本例では、長尺体読取装置102は、長尺体100に埋め込まれたRFID1から情報を読み取るものとするが、長尺体200に埋め込まれたRFID1からも情報を読み取れることはいうまでもない。なお、長尺体読取装置102の詳細な構成については、図13にて後述する。
【0056】
[1.長尺体読取装置の構成]
次に、長尺体読取装置102の構成について、図13を参照して説明する。
図13は、本発明の第一の実施形態に係る長尺体読取装置の構成を示すブロック図である。
【0057】
長尺体読取装置102は、制御部110と、駆動部111と、アンテナ113と、ストライプ検知センサ115,116と、筐体119と、RFID読取部120を備える。
【0058】
筐体119は、中空の略円筒形状である。筐体119の中空部分をシース製造装置36から出力された長尺体100が通過するため、この中空部分の直径は、長尺体100の直径よりも長くなっている。このような、筐体119の内壁には、ストライプ検知センサ115,116がそれぞれ周方向に所定の間隔をあけて設けられている。そして、ストライプ検知センサ115,116の間にはアンテナ113が設けられている。そのため、筐体119が回転すると、アンテナ113およびストライプ検知センサ115,116も共に回転するようになっている。
【0059】
ストライプ検知センサ115,116は、色や濃淡の変化(シース3とシース4の境界)を検知し、その検出結果を制御部110に出力する。本例では、ストライプ検知センサ115,116は、第一シース3のA色を検出する。ストライプ検知センサ115,116としては、例えば、フォトセンサを適用することができる。
【0060】
制御部110は、ストライプ検知センサ115,116からの検出結果に基づいて、駆動部111を動作させる。この駆動部111の動作に伴ない、筐体119は第一シース3の真上にアンテナ113が来るように、方向112または方向114に回転する。
【0061】
一方、アンテナ113は、RFID読取部120が生成するRFID読み取り用の電磁波を送信する。また、アンテナ113は、この電磁波をRFID1が受信した場合、RFID1から送信される電磁波を受信してRFID読取部120に出力する。RFID1から送信される電磁波には、RFID1に予め記憶された情報が載せられる。
【0062】
RFID読取部120は、アンテナ113が受信した電磁波から情報を取り出して記憶装置103に記憶する。
【0063】
[2.長尺体読取装置の動作]
次に、長尺体読取装置102の動作について、図14を参照して説明する。
図14は、本発明の第一の実施形態に係る長尺体読取装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【0064】
まず、ストライプ検知センサ115,116が起動する(ステップS121)。そして、ストライプ検知センサ115が、第一シース3のA色を検出したか否かを確認する(ステップS122)。ストライプ検知センサ115がA色を検出したならば(ステップS122のYES)、制御部110は駆動部111を動作させて、筐体119を方向114に所定の距離回転させる(ステップS124)。そして、ステップ121の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0065】
一方、ストライプ検知センサ115がA色を検出していないならば(ステップS122のNO)、ストライプ検知センサ116が、第一シース3のA色を検知したか否かを確認する(ステップS123)。
【0066】
ストライプ検知センサ116がA色を検出したならば(ステップS123のYES)、制御部110は駆動部111を動作させて、筐体119を方向112に所定の距離回転させる(ステップS125)。そして、ステップS121の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0067】
一方、ストライプ検知センサ116がA色を検出していないならば(ステップS123のNO)、制御部110は、駆動部111を停止させて、筐体119が回転しないようにする(ステップS126)。そして、ステップS121の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0068】
以上説明したように、上述した長尺体読取装置の第一の実施形態では、ストライプ検知センサ115,116により第一シース3のA色を検知する。そして、その検知結果に基づいて、アンテナ113を含む筐体119を回転させて、アンテナ113が第一シース3の真上の位置になるようにすることができる。これにより、RFID1の真上に常にアンテナ113を配置することができる。その結果、最良の電波状態で、RFID1に記憶された情報を、RFID読取部120が確実に読み込むことができる。
【0069】
<長尺体読取装置の第二の実施形態例>
長尺体読取装置の第一の実施形態の例を、図15,16を参照して説明する。なお、長尺体の第一および第二の実施形態と、長尺体読取装置の第一の実施形態との共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。
【0070】
[1.長尺体読取装置の構成]
図15は、本発明の第二の実施形態に係る長尺体読取装置の構成を示すブロック図である。
【0071】
長尺体読取装置130は、第一の実施形態に係る長尺体読取装置102と同様に、長尺体100に埋め込まれた各RFID1に記憶されたID情報等を読み取り、読み取った情報を記憶装置103に蓄積する。この長尺体読取装置130は、RFID読取部120と、制御部131と、アンテナ切替部132と、複数のストライプ検知センサ133と、各ストライプ検知センサ133と対になっている複数のアンテナ134とを備える。
【0072】
筐体119は、中空の略円筒形状である。筐体119の中空部分をシース製造装置36から出力された長尺体100が通過するため、この中空部分の直径は、長尺体100の直径よりも長くなっている。このような、筐体119の内壁には、複数のストライプ検知センサ133およびアンテナ134が長尺体100を取り囲むように、同方向に等間隔に設けられている。
【0073】
ストライプ検知センサ133は、色や濃淡の変化を検知し、その検出結果を制御部131に出力する。本例では、ストライプ検知センサ133は、第一シース3のA色を検出するものである。
【0074】
制御部110は、各ストライプ検知センサ133からの検出結果に基づいて、どのストライプ検知センサ133がA色を検出したのか検索し、検索結果をアンテナ切替部132に出力する。
【0075】
アンテナ切替部132は、制御部131から入力される検索結果に基づいて、A色を検出したストライプ検知センサ133と対になっているアンテナ134をRFID読取部120に電気的に接続する。
【0076】
アンテナ113は、RFID読取部120が生成するRFID読み取り用の電磁波を送信する。また、アンテナ113は、この電磁波をRFID1が受信した場合、RFID1から送信される電磁波を受信してRFID読取部120に出力する。
【0077】
RFID読取部120は、アンテナ113が受信した電磁波から情報を取り出して記憶装置103に記憶する。
【0078】
[2.長尺体読取装置の動作]
次に、長尺体読取装置130の動作について、図16を参照して説明する。
図16は、本発明の第二の実施形態に係る長尺体読取装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【0079】
まず、すべてのストライプ検知センサ133が起動する(ステップS140)。ここで、制御部110は、どのストライプ検知センサ133がA色(第一シース3)を検知したのかを検索する(ステップS140)。
【0080】
続いて、制御部110は、アンテナ切替部132を制御して、ステップS140の処理で検索したストライプ検知センサ133と対になっているアンテナ134を選択し、選択したアンテナ134とRFID読取部120とを電気的に接続する(ステップS142)。
【0081】
以上の処理が完了した後、RFID読取部120は、ステップS142の処理で選択されたアンテナ134を用いて、RFID1に記憶されているデータを読み取り、記憶装置103に記憶する(ステップS143)。そして、ステップS140の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0082】
以上説明したように、上述した長尺体読取装置の第二の実施形態では、第一シース3のA色を検知したストライプ検知センサ133と対になっているアンテナ134を用いてRFID1から情報を読み取ることができる。これにより、最良の電波状態で、RFID1に記憶された情報を、RFID読取部120が確実に読み込むことができる。
【0083】
また、長尺体読み取り装置の第二の実施形態では、複数のストライプ検知センサ133と複数のアンテナ134が長尺体100を取り囲むように配置されている。そのため、長尺体の回転に応じて筐体119を回転させる必要がなく、駆動部111を削除して装置の小型化を図ることができる。
【0084】
なお、上述した長尺体読取装置の第一および第二の実施形態では、長尺体製造装置に適応した例としたが、例えば、延線機へ適応することも可能である。
【0085】
以上、本発明の各実施形態の例について説明したが、本発明は上記各実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1…RFID、2…ケーブル心線、3…第一シース、4…第二シース、31…心線ドラム、33…RFID挿入装置、34…A色樹脂、35…B色樹脂、36…シース製造装置、38…巻き取りドラム、40…A色樹脂注入口、41…B色樹脂注入口、43…第一シース生成用容器、44…第二シース生成用容器、45…RFIDテープ、51…ICチップ、54…テープ、61…第一シース、62…第二シース、63…部分、64…部分、71…RFID位置検知装置、72…ストライプ幅コントローラ、83…バルブ、84…開放位置、85…絞り位置、100…長尺体、101…シース、102…長尺体読取装置、103…記憶装置、110…制御部、111…駆動部、112…方向、113…アンテナ、114…方向、115…ストライプ検知センサ、116…ストライプ検知センサ、119…筐体、120…RFID読取部、130…長尺体読み取り装置、131…制御部、132…アンテナ切替部、133…アンテナ、133…ストライプ検知センサ、134…アンテナ、150…長尺体製造装置、200…長尺体、201…シース、250…長尺体製造装置、300…長尺体製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の長尺体において、
電磁波が透過可能な素材で形成されたシースと、
前記シースに埋め込まれたRFIDとを備え、
前記シースは、
前記RFID上にある第一シースと、
前記第一シースと異なる色の素材で形成された第二シースと
を含む長尺体。
【請求項2】
前記第一シースの幅と、前記第二の幅とが異なるように形成された
請求項1に記載の長尺体。
【請求項3】
前記RFIDが、前記第一シースに所定の間隔かつ軸方向に複数個埋め込まれた
請求項2に記載の長尺体。
【請求項4】
前記RFIDが埋め込まれた箇所と埋め込まれていない箇所で、前記第一シースの幅が異なるように形成された
請求項3に記載の長尺体。
【請求項5】
前記第一シースに埋め込まれた複数のRFIDは、RFIDが所定の間隔で貼り付けられているRFIDテープである
請求項4に記載の長尺体。
【請求項6】
前記シースは、径方向に所定の厚みを持つ
請求項5に記載の長尺体。
【請求項7】
RFIDを第一シース生成用容器に導く工程と、
電磁波が通過可能な素材でできた溶解樹脂を第一シース生成容器に注入して、前記RFIDの上に第一シースを形成する工程と、
前記第一シース生成用容器と合併可能な第二シース生成用容器に、前記第一シース生成用容器に注入された樹脂とは異なる色の溶解樹脂を注入して、前記第一シースと色の異なる第二シースを形成する工程と
を備える長尺体の製造方法。
【請求項8】
電磁波が透過可能な素材で形成されたシースと、前記シースに埋め込まれたRFIDとを備え、前記シースは、前記RFID上にある第一シースと、前記第一シースと異なる色の素材で形成された第二シースとを含む棒状の長尺体のRFIDから情報を読み取る長尺体読取装置において、
前記第一シースの色を検知するストライプ検知センサと、
前記RFIDから電磁波を受信するアンテナと、
前記ストライプ検知センサの検出結果に基づいて、前記アンテナで前記RFIDからの電磁波を受信可能にする制御部と、
前記電磁波から情報を読み取るRFID読取部と
を備える長尺体読取装置。
【請求項9】
棒状の長尺体において、
電磁波が透過可能な素材で形成されたシースと、
前記シースに埋め込まれた複数のRFIDとを備え、
前記複数のRFIDは、テープ部に所定の間隔を開けて貼り付けられたRFIDテープとして前記シースに埋め込まれ、
前記テープ部の素材が前記シース形成時に溶融する素材であり、
前記RFIDテープの上にシースを形成して前記テープ部が溶融する長尺体。
【請求項10】
前記シースは、前記複数のRFID上にある第一シースと、前記第一シースと異なる色の素材で形成された第二シースとを含む請求項9に記載の長尺体。
【請求項11】
棒状の長尺体において、
電磁波が透過可能な素材で形成されたシースと、
前記シースに埋め込まれた複数のRFIDとを備え、
前記複数のRFIDは、テープ部に所定の間隔を開けて貼り付けられたRFIDテープとして前記シースに埋め込まれ、
RFIDテープの前記複数のRFIDが取り付けられている部分以外に切り込みあるいはミシン目が入れられている長尺体。
【請求項12】
前記シースは、前記複数のRFID上にある第一シースと、前記第一シースと異なる色の素材で形成された第二シースとを含む請求項11に記載の長尺体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−175487(P2011−175487A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39342(P2010−39342)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】