説明

長尺成形品用金型

【課題】可動型と固定型とを組み合わせて形成したキャビティの長手方向の一端に設けられたゲートから溶融した磁性樹脂材料が射出されると、ゲート側において、固定型と可動型が組み合わされたPL面が摩耗し易いという問題がある。
【解決手段】可動型および固定型のキャビティ面のゲート側に、ゲート側入れ子受容穴をそれぞれ形成し、長尺成形品のゲート側の横断面の面積が相似形状のまま小さくなるように、可動型および固定型のゲート側入れ子受容穴のそれぞれにゲート側入れ子を挿入して固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に用いられるマグネットロールを構成するマグネットピース等の横断面が略均一な長尺成形品を成形するための金型に関する。
【背景技術】
【0002】
図25〜図27に示すように、従来より、シャフト52の周りに短手方向の断面(横断面)の形状が略扇形状で、横断面の面積が長手方向に渡って略均一な複数のマグネットピース53〜58を接着剤等を用いて放射状に貼り合わせたマグネットロール51が提供されている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0003】
図25に示すように、マグネットロール51は、シャフト52の周りに、汲み上げ極S3のマグネットピース55と、トリミング極N2のマグネットピース54と、現像極S1のマグネットピース53と、回収(搬送)極N1のマグネットピース58と、剥離極S2のマグネットピース57と、介在極ピース56がこの順に貼り付けられた(貼り合わされた)ものである。
【0004】
マグネットピース53〜58は、磁石材料粉、樹脂バインダー、添加剤等の混合物からなる磁性樹脂材料を用いて磁場中で成形することによって製造したものである。磁石材料粉としては、例えば、フェライト粉や、Nd等の希土類金属粉とFe、Co、Ni等の鉄族金属粉との混合物を使用することができる。また、樹脂バインダーは、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エチレンエチルアクリレート(EEA)等を使用することができる。
【0005】
この所謂貼り合わせマグネットロール51に用いられる個々のマグネットピース(長尺成形品)53〜58は、図28に示すように、固定型64と可動型63とが組み合わされて形成されたキャビティ65の長手方向の一端のキャビティ面に設けたゲート(図示せず)から溶融した磁性樹脂材料を射出することにより製造することができる(例えば、特許文献8参照)。
【0006】
ここで、キャビティとは、金型内部の空間(射出成形品の形状を有する空間)のことをいい、キャビティ面とは、当該キャビティを形成する金型の面のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−229309号公報
【特許文献2】特開2003−229321号公報
【特許文献3】特開2001−034068号公報
【特許文献4】特開2000−075665号公報
【特許文献5】特開平10−308308号公報
【特許文献6】特開平01−114011号公報
【特許文献7】特開昭62−282422号公報
【特許文献8】特開2003−229321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、キャビティ65の長手方向の一端のキャビティ面に設けられたゲートから溶融した磁性樹脂材料(溶融樹脂)が射出されると、高圧の溶融樹脂により、固定型64と可動型63が組み合わされた(接触した)PL面(パーティングライン面)66が摩耗し易いという問題がある。このPL面66の摩耗は、キャビティ65の長手方向の両端に発生し易く、特にゲート側においては溶融樹脂材料の圧力が高いので発生し易い。
【0009】
PL面66が摩耗すると、この摩耗した箇所に溶融樹脂材料が入り込み、長尺成形品の端部にバリが発生するので、作業者が長尺成形品の端部のバリ取り作業をしなければならないという問題が生じる。
【0010】
また、PL面66に生じた摩耗は、放置すると徐々に大きくなるだけではなく、キャビティ65の長手方向に沿って除々に長くなる。すなわち、キャビティ65に面したPL面66の摩耗は、ゲート側から徐々に反ゲート側に向かって成長するという問題がある。言うまでもなく、PL面66の摩耗の成長に伴い、成形品のバリも成長することになる。
【0011】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、長尺成形品のゲート側および/または反ゲート側の横断面の面積が相似形状のまま小さくなるように、可動型および/または固定型のそれぞれに入れ子を設けるという簡単な構成により、長尺成形品の端部におけるバリの発生を安価に抑えることが可能な長尺成形品用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第1発明)
第1発明は、可動型と固定型を組み合わせることにより形成した長尺なキャビティに、このキャビティの長手方向の一端のキャビティ面に設けたゲートから溶融樹脂を射出して、横断面が略均一な長尺成形品を成形する長尺成形品用金型に関する。
【0013】
そして、可動型および固定型のキャビティ面のゲート側に、ゲート側入れ子受容穴をそれぞれ形成し、長尺成形品のゲート側の横断面の面積が相似形状のまま小さくなるように、可動型および固定型のゲート側入れ子受容穴のそれぞれにゲート側入れ子を挿入して固定したものである。
ゲート側入れ子についてさらに詳述すると、固定型のキャビティ面のゲート側にゲート側入れ子Aが固定され、可動型のキャビティ面のゲート側にゲート側入れ子Bが固定され、ゲート側入れ子Aの下端CはPL面に位置しており、ゲート側入れ子Bの上端DはPL面に位置しており、型締めした場合に下端Cおよび上端Dは接触する。
【0014】
かかる構成により、キャビティに面したゲート側のPL面に生じた摩耗を、入れ子を交換するだけで安価に無くすことができる。つまり、摩耗がゲート側から反ゲート側に向かって成長する前に、入れ子を交換することにより、長尺成形品に発生するであろうバリを未然に取り除くことができる。
【0015】
また、キャビティに面したゲート側のPL面が若干摩耗し、長尺成形品のゲート側にバリが発生しても、長尺成形品のゲート側は、長尺成形品のその他の部分の外形形状よりも一段低い(小さい)ので、バリ取り作業を不要にできる。
すなわち、バリが発生しているのは、長尺成形品の中でも一段低いゲート側の部分なので、この段差により、長尺成形品が取り付けられる他の部材にバリが当たることがない。
【0016】
(第2発明)
第2発明に係る長尺成形品用金型は、第1発明において、さらに、可動型および固定型のキャビティ面の反ゲート側にも反ゲート側入れ子受容穴をそれぞれ形成し、長尺成形品の反ゲート側の横断面の面積が相似形状のまま小さくなるように、可動型および固定型の反ゲート側入れ子受容穴のそれぞれに反ゲート側入れ子を挿入して固定したものである。
【0017】
かかる構成により、キャビティに面したゲート側のPL面のみならず、キャビティに面した反ゲート側のPL面に生じた摩耗を、入れ子を交換するだけで安価に無くすことができる。つまり、摩耗が反ゲート側からゲート側に向かって成長する前に、反ゲート側入れ子を交換することにより、長尺成形品に発生するであろうバリを未然に取り除くことができる。
【0018】
また、キャビティに面したゲート側のみならず、キャビティに面した反ゲート側のPL面が若干摩耗し、長尺成形品の反ゲート側にバリが発生しても、長尺成形品の反ゲート側は、長尺成形品のその他の部分の外形形状よりも一段低い(小さい)ので、バリ取り作業を不要にできる。
【0019】
すなわち、バリが発生しているのは、長尺成形品の中でも一段低い反ゲート側の部分なので、この段差により、長尺成形品が取り付けられる他の部材にバリが当たることがない。
【0020】
(第3発明)
第3発明に係る長尺成形品用金型は、可動型と固定型を組み合わせることにより形成した長尺なキャビティに、このキャビティの長手方向の一端のキャビティ面に設けたゲートから溶融樹脂を射出して、横断面が略均一な長尺成形品を成形する長尺成形品用金型において、可動型又は固定型のキャビティ面のゲート側に、ゲート側入れ子受容穴を形成し、上端または下端が可動型および固定型が接触する面であるパーティングライン面に位置するように、ゲート側入れ子受容穴にゲート側入れ子を挿入して固定し、このゲート側入れ子が固定された可動型又は固定型における長尺成形品のキャビティ面のゲート側の横断面の面積を、ゲート側入れ子により略相似形状のまま小さくしたものである。
【0021】
つまり、第3発明に係る長尺成形品用金型は、第1発明に係る長尺成形品用金型において、可動型または固定型の一方のみにゲート側入れ子受容穴を形成し、ゲート側入れ子を固定したものである。したがって、長尺成形品において、略相似形状のまま小さくなるのは、ゲート側入れ子が設けられた部分のみである。
【0022】
さらに詳述すると、可動型にゲート側入れ子が設けられた場合は、第1発明で成形される長尺成形品において、PL面を界にして可動型側のゲート側のみが略相似形状のまま小さくなり、固定型にゲート側入れ子が設けられた場合は、第1発明で成形される長尺成形品において、PL面を界にして固定型側のゲート側のみが略相似形状のまま小さくなる。
【0023】
かかる構成により、ゲート側における可動型または固定型の一方のみのPL面が摩耗する場合、摩耗する可動型または固定型の一方のゲート側の横断面の面積を相似形状のまま小さくすれば良いので、前記した第1発明の効果が得られるだけではなく、金型の製造費用を安価にできるという効果がある。
【0024】
(第4発明)
第4発明に係る長尺成形品用金型は、第3発明において、さらに、ゲート側入れ子穴を形成した可動型または固定型におけるキャビティ面の反ゲート側にも反ゲート側入れ子受容穴を形成し、上端または下端が可動型および固定型が接触する面であるパーティングライン面に位置するように、反ゲート側入れ子受容穴に反ゲート側入れ子を挿入して固定し、反ゲート側入れ子が固定された可動型又は固定型における長尺成形品のキャビティ面の反ゲート側の横断面の面積を、反ゲート側入れ子により略相似形状のまま小さくしたものである。
【0025】
かかる構成により、ゲート側および反ゲート側における可動型または固定型の一方のみのPL面が摩耗する場合、摩耗のできる可動型または固定型の一方のゲート側および反ゲート側の横断面の面積を相似形状のまま小さくすれば良いので、前記した第3発明と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る長尺成形品用金型は、キャビティ面の長手方向のゲート側または反ゲート側に設けた入れ子を交換することにより、長尺成形品の一端または両端の近傍に生じたバリに対するメンテナンスを安価にできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る長尺成形品用金型の斜視図
【図2】可動型の構成部品を示す斜視図
【図3】固定型の斜視図
【図4】固定型の構成部品を示す斜視図
【図5】可動型の入れ子の上面図
【図6】可動型の入れ子の正面図
【図7】固定型の入れ子の上面図
【図8】固定型の入れ子の正面図
【図9】マグネットロールの斜視図
【図10】マグネットピースの斜視図
【図11】現像剤担持体の断面図
【図12】マグネットピースのゲート側の斜視図
【図13】マグネットピースの側面の拡大図(図10における矢視A)
【図14】マグネットピースを正面から見たゲート側の部分拡大図
【図15】マグネットピースの反ゲート側の斜視図
【図16】マグネットピースを正面から見た反ゲート側の部分拡大図
【図17】長尺成形品用金型の斜視図
【図18】固定型の斜視図
【図19】可動型の斜視図
【図20】固定型の斜視図
【図21】マグネットピースを側面から見たゲート側の拡大図
【図22】マグネットピースを正面から見たゲート側の部分拡大図
【図23】マグネットピースを側面から見たゲート側の拡大図
【図24】マグネットピースを正面から見たゲート側の部分拡大図
【図25】従来のマグネットロールの側面図
【図26】従来のマグネットロールの斜視図
【図27】従来のマグネットピースの斜視図
【図28】従来の金型の断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
尚、以下の実施例は、長尺成形品として、マグネットロールで使用されるマグネットピースを例示して説明するが、長尺成形品をマグネットピースに限定して解釈する趣旨ではない。
また、以下の実施例は、マグネットロールに使われる複数のマグネットピースの内の特定の1つのマグネットピースの成形用金型を取り上げて説明するが、他のマグネットピースの成形用金型も同様に構成されるものである。
【実施例1】
【0029】
本発明に係る長尺成形品用金型を図1〜図16を用いて説明する。
図1は本発明に係る長尺成形品用金型の斜視図、図2は可動型の構成部品を示す斜視図、図3は固定型の斜視図、図4は固定型の構成部品を示す斜視図、図5は可動型の入れ子の上面図、図6は可動型の入れ子の正面図、図7は固定型の入れ子の上面図、図8は固定型の入れ子の正面図、図9はマグネットロールの斜視図、図10はマグネットピースの斜視図、図11は現像剤担持体の断面図、図12はマグネットピースのゲート側の斜視図、図13はマグネットピースの側面の拡大図(図10における矢視A)、図14はマグネットピースを正面から見たゲート側の部分拡大図、図15はマグネットピースの反ゲート側の斜視図、図16はマグネットピースを正面から見た反ゲート側の部分拡大図である。
【0030】
(長尺成形品用金型)
図1に示すように、本発明に係る長尺成形品用金型21は、可動型13と固定型14とからなる。これら可動型13と固定型14にはそれぞれ可動型側キャビティ面19と固定型側キャビティ面20が形成されており、可動型13と固定型14を組み合わせることにより、キャビティ30が形成される。また、可動型13と固定型14を組み合わせることにより、ゲート18も形成される。
【0031】
(可動型)
可動型13の可動型側キャビティ面19には、図1および図2に示すように、ゲート18の側(ゲート側)にゲート側入れ子受容穴43、ゲート18の反対側(反ゲート側)に反ゲート側入れ子受容穴45が形成されている。そして、ゲート側入れ子受容穴43にはゲート側入れ子47が挿入され、反ゲート側入れ子受容穴45には反ゲート側入れ子49が挿入され、それぞれの入れ子は、図示しない他の固定用入れ子や、ネジ等を用いた公知の方法で可動型13に固定されている。
【0032】
(固定型)
図1に示すように、固定型14には、長尺成形品としてのマグネットピース3を着磁するための配向ヨーク17が設けられている。
また、固定型14の固定型側キャビティ面20には、図3および図4に示すように、ゲート側にゲート側入れ子受容穴44、反ゲート側に反ゲート側入れ子受容穴46が形成されている。そして、ゲート側入れ子受容穴44にはゲート側入れ子48が挿入され、反ゲート側入れ子受容穴46には反ゲート側入れ子50が挿入され、それぞれの入れ子は、図示しないネジ等で固定型14に固定されている。
【0033】
(入れ子)
図5および図6に示すように、ゲート側入れ子47および反ゲート側入れ子49には、キャビティ30の一部を形成するキャビティ面39が形成されている。そして、ゲート側入れ子47および反ゲート側入れ子49は、それぞれゲート側入れ子受容穴43および反ゲート側入れ子受容穴45に挿入した際、面90が、PL面と同一平面に位置するように設定されている。
【0034】
ここで、キャビティ面39とは、図6に示す凹部を形成する2つの側面と、円弧状の底面をいう。
このキャビティ面39は、キャビティ面39により成形される成形品が、可動型側キャビティ面19により成形される成形品に対して、横断面の面積が略相似形状のまま小さくなるように形成されている。
【0035】
ゲート側入れ子47および反ゲート側入れ子49において、略相似形状とは、キャビティ面39により形成される部分のみが相似形状となり、その他の部分、つまり、図6の凹部における上に開放された部分は上下方向に不変の意味である。別言すると、ゲート側入れ子47および反ゲート側入れ子49におけるPL面と同一平面に位置する面90以外のキャビティ面を構成する面39により成形される部分のみが相似形状になることである。
【0036】
同様に、図7および図8に示すように、ゲート側入れ子48および反ゲート側入れ子50には、キャビティ30の一部を形成するキャビティ面40が形成されている。そして、ゲート側入れ子48および反ゲート側入れ子50は、それぞれゲート側入れ子受容穴44および反ゲート側入れ子受容穴46に挿入した際、面91が、PL面と同一平面に位置するように設定されている。
【0037】
ここで、キャビティ面40とは、図7および図8に示す凹部を形成する1つの円弧状の底面をいう。
このキャビティ面40は、キャビティ面40により成形される成形品が、固定型側キャビティ面20により成形される成形品に対して、横断面の面積が略相似形状のまま小さくなるように形成されている。
【0038】
ゲート側入れ子48および反ゲート側入れ子50において、略相似形状とは、キャビティ面40により形成される部分のみが相似形状となり、その他の部分、つまり、図8の凹部における上に開放された部分は上下方向に不変の意味である。別言すると、ゲート側入れ子48および反ゲート側入れ子50におけるPL面と同一平面に位置する面91以外のキャビティ面を構成する面40により成形される部分のみが相似形状になることである。
【0039】
尚、図1に示すように、入れ子47〜50が取り付けられた可動型13および固定型14を型締めすると、入れ子47および49の面90と、入れ子48および50の面91はそれぞれPL面12に位置し、かつ、面90と面91は互いに対向しつつ面接触する。
【0040】
(長尺成形品)
前記した構成の長尺成形品用金型21のゲート18からキャビティ30内に磁石材料粉を有する流動状態の溶融樹脂材料を射出(注入)した後、長尺成形品用金型21を冷却すると、図10に示した長尺成形品としてのマグネットピース3を製造することができる。
【0041】
従来、このマグネットピース3を製造する際、高圧の溶融樹脂材料が長尺なキャビティの一端のキャビティ面に設けられたゲートからキャビティ内に射出されるので、キャビティの長手方向の両端(主に、ゲート側)のPL面が除々に摩耗するという問題があった。
【0042】
しかし、本発明においては、図1乃至図8に示したように、キャビティ30のゲート18側および反ゲート側に入れ子47〜50が設けられているので、高圧の溶融樹脂材料により入れ子47〜50の稜線59、60(面90、91)が摩耗しても、稜線59、60(面90、91)が摩耗した入れ子のみを交換することにより、安価に長尺成形品用金型21のメンテナンスができる。
【0043】
また、マグネットピース3は、図12〜図14に示すように、ゲート側入れ子47、48により、ゲート側15に、マグネットピース3のゲート側15および反ゲート側16以外の部分と相似形状の相似形状部9が形成される。つまり、この相似形状部9の横断面は、マグネットピース3の横断面を相似形のまま小さくしたものである。
【0044】
同様に、マグネットピース3は、反ゲート側においても、図15および図16に示すように、ゲート側入れ子49、50により、反ゲート側16およびゲート側15以外の部分と相似形状の相似形状部9が形成される。
【0045】
このように、マグネットピース3のゲート側および反ゲート側に相似形状部9が形成されるので、相似形状部9においてもマグネットピースとしての機能を発揮させることができる。本実施例においては、ゲート側15および反ゲート側の相似形状部9の横断面の面積は、それ以外の部分の横断面の面積を100とした場合に、99とした。尚、図12〜図16においては、説明を分かりやすくするため、相似形状部9の大きさを実際よりも小さく図示している。
【0046】
また、本実施例1においては、図12〜図16に示すように、マグネットピース3の上側の稜線(角部)22、24と、マグネットピース3のゲート側15および反ゲート側16に形成された相似形状部9の上側の稜線(角部)23、25とが同一平面上に位置するようにしている。この同一平面とは、PL面のことである。
【0047】
かかる構成により、キャビティ30のゲート側のPL面が摩耗して稜線23、25、27および29の一部または全部にバリが発生しても、これらの稜線23、25、27および29は、マグネットピース3の稜線22、24、26および28よりも内側にあるので、バリがマグネットピース3の稜線22、24、26および28よりの外側に突出することが無い。
【0048】
同様に、キャビティ30の反ゲート側のPL面が摩耗して稜線23、25、27および29の一部または全部にバリが発生しても、これらの稜線23、25、27および29は、マグネットピース3の稜線22、24、26および28よりも内側にあるので、バリがマグネットピース3の稜線22、24、26および28よりの外側に突出することが無い。
【0049】
このため、マグネットピース3のバリを取り除く作業を無くすことができる。すなわち、本発明に係る長尺成形品用金型21を用いて成形したマグネットピース3等は、バリ取り作業をすることなく、図9に示したようなシャフト2の周りに貼り付けてマグネットロール1を製造することができる。
【0050】
尚、マグネットピース3は、磁石材料粉、樹脂バインダー、添加剤等の混合物を磁場中で成形することによって製造したものである。磁石材料粉としては、例えば、フェライト粉や、Nd等の希土類金属粉とFe、Co、Ni等の鉄族金属粉との混合物を使用することができる。また、樹脂バインダーは、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エチレンエチルアクリレート(EEA)等を使用することができる。
【0051】
また、本発明に係る長尺成形品用金型により製造された長尺成形品としてのマグネットピース3〜8は、シャフト2の周面に接着剤で固定してマグネットロール1を構成した後、図11に示すように、シャフト2の両端部をベアリング34により支持したフランジ33と、フランジ33を両端で固定した現像スリーブ37とを用いて現像剤担持体31として使用できる。
【実施例2】
【0052】
本発明に係る第2実施例を、図17および図18を用いて説明する。尚、実施例1と同一の部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
図17は長尺成形品用金型の斜視図、図18は固定型の斜視図である。
【0053】
本実施例2の実施例1との相違点は、ゲート側のキャビティ面のみに入れ子を設けた点である。つまり、図17に示すように、可動型81の可動型側キャビティ面83には、ゲート側にゲート側入れ子受容穴43が形成されている。そして、ゲート側入れ子受容穴43にはゲート側入れ子47が挿入され、ゲート側入れ子47は図示しない他の固定用入れ子や、ネジ等を用いた公知の方法で可動型81に固定されている。
【0054】
また、固定型82の固定型側キャビティ面84には、図18に示すように、ゲート側にゲート側入れ子受容穴44が形成されている。そして、ゲート側入れ子受容穴44にはゲート側入れ子48が挿入され、ゲート側入れ子48は、図示しない他の固定用入れ子や、ネジ等を用いた公知の方法で固定型82に固定されている。
【0055】
このように、反ゲート側においてPL面の摩耗が発生しない、または摩耗が発生し難い場合は、ゲート側にのみ入れ子を設けても良い。この場合、長尺成形品(マグネットピース3)は、言うまでもなく、ゲート側15のみに相似形状部9が形成される。そして、ゲート側のみ、実施例1に記載した効果を得ることができる。
【実施例3】
【0056】
本発明に係る第3実施例を、図18、図19、図21および図22を用いて説明する。尚、実施例2と同一の部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
図19は可動型の斜視図であり、図21はマグネットピースを側面から見たゲート側の拡大図、図22はマグネットピースを正面から見たゲート側の部分拡大図である。
【0057】
本実施例3の実施例2との相違点は、固定型のみにゲート側入れ子受容穴44を設け、ゲート側入れ子48を設けた点である。つまり、図19に示すように、可動型71には、入れ子が設けられていない。
【0058】
かかる構成は、可動型71のPL面に摩耗が発生しない場合に採用することができる。かかる場合は、長尺成形品用金型は、図19に示した可動型71と、図18に示した固定型82を用いて構成できる。
【0059】
本実施例3に係る長尺成形品用金型を用いて成形したマグネットピース3は、図21および図22のようになる。
図21および図22において、マグネットピース3の稜線22、24を含む平面(PL面)より上部に固定型82が位置し、下部に可動型71が位置している。
【0060】
そして、可動型71のPL面の摩耗が無い場合、すなわち、稜線22および24においてバリの発生が無い場合は、可動型71のゲート側は相似形状にする必要が無いので、固定型側のマグネットピース3のゲート側の横断面の面積のみを略相似形状のまま小さくしている。
【0061】
つまり、固定型82に形成されたゲート側入れ子受容穴44に挿入される図8に示すゲート側入れ子48において、キャビティ面40により形成される部分のみが相似形状のまま小さくなり、その他の部分、つまり、図8の凹部における上に開放された部分は上下方向に不変となる。さらに別言すると、ゲート側入れ子48におけるPL面と同一平面に位置する面91以外のキャビティ面を構成する面40により成形される部分のみが相似形状のまま小さくなる。
【0062】
かかる構成において、固定型82に対応する部分の谷部41および42においてバリが発生しても、マグネットピース3の上側の稜線22および24よりも谷部41および42が内側にあるので、バリがマグネットピース3の上側の稜線22および24より外側に突出することが無い。このため、マグネットピース3のバリを取り除く作業を無くすことができる。
【0063】
尚、反ゲート側も前記したゲート側と同様、横断面の面積を略相似形状のまま小さくしたのが固定型に対応する部分のみにしても良い。つまり、この場合は、図3に示す固定型14と、図19に示す可動型71を使用する。そして、かかる長尺成形品用金型により成形された長尺成形品のゲート側および反ゲート側は、図21に示したように略相似形状のまま小さくなる。つまり、反ゲート側においても、ゲート側と同様の前記した効果を得ることができる。
【実施例4】
【0064】
本発明に係る第4実施例を、図17、図20、図23および図24を用いて説明する。尚、実施例2と同一の部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
図20は固定型の斜視図であり、図23はマグネットピースを側面から見たゲート側の拡大図、図24はマグネットピースを正面から見たゲート側の部分拡大図である。
【0065】
本実施例4の実施例2との相違点は、可動型のみにゲート側入れ子受容穴43を設け、ゲート側入れ子47を設けた点である。つまり、図20に示すように、固定型72には、入れ子が設けられていない。
【0066】
かかる構成は、固定型72のPL面に摩耗が発生しない場合に採用することができる。かかる場合は、長尺成形品用金型は、図17に示した可動型81と、図20に示した固定型72を用いて構成できる。
【0067】
本実施例4に係る長尺成形品用金型を用いて成形したマグネットピース3は、図23および図24のようになる。
図23および図24において、マグネットピース3の稜線22、24を含む平面(PL面)より上部に固定型72が位置し、下部に可動型81が位置している。
【0068】
そして、固定型72のPL面の摩耗が無い場合、すなわち、稜線22、24においてバリの発生が無い場合は、固定型72のゲート側は相似形状にする必要が無いので、可動型側のマグネットピース3のゲート側の横断面の面積のみを略相似形状のまま小さくしている。
【0069】
つまり、可動型81に形成されたゲート側入れ子受容穴43に挿入される図6に示すゲート側入れ子47において、キャビティ面39により形成される部分のみが相似形状のまま小さくなり、その他の部分、つまり、図6の凹部における上に開放された部分は上下方向に不変となる。さらに別言すると、ゲート側入れ子47におけるPL面と同一平面に位置する面90以外のキャビティ面を構成する面39により成形される部分のみが相似形状のまま小さくなる。
【0070】
かかる構成において、可動型81に対応する部分の稜線27および29においてバリが発生しても、マグネットピース3の下側の稜線26および28よりも稜線27および29が内側にあるので、バリがマグネットピース3の下側の稜線26および28より外側に突出することが無い。このため、マグネットピース3のバリを取り除く作業を無くすことができる。
【0071】
尚、反ゲート側も前記したゲート側と同様、横断面の面積を略相似形状のまま小さくしたのが可動型に対応する部分のみにしても良い。つまり、この場合は、図1に示す可動型13と、図20に示す固定型72を使用する。そして、かかる長尺成形品用金型により成形された長尺成形品のゲート側および反ゲート側は、図23に示したように略相似形状のまま小さくなる。つまり、反ゲート側においても、ゲート側と同様の前記した効果を得ることができる。
【0072】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、画像形成装置に使用されるマグネットピース用金型等に適用される。
【符号の説明】
【0074】
12 PL面
13 可動型
14 固定型
18 ゲート
19 可動型側キャビティ面
20 固定型側キャビティ面
21 長尺成形品用金型
30 キャビティ
43 ゲート側入れ子受容穴(可動型)
44 ゲート側入れ子受容穴(固定型)
45 反ゲート側入れ子受容穴(可動型)
46 反ゲート側入れ子受容穴(固定型)
47 ゲート側入れ子(可動型)
48 ゲート側入れ子(固定型)
49 反ゲート側入れ子(可動型)
50 反ゲート側入れ子(固定型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動型と固定型を組み合わせることにより形成した長尺なキャビティに、該キャビティの長手方向の一端のキャビティ面に設けたゲートから溶融樹脂を射出して、横断面が略均一な長尺成形品を成形する長尺成形品用金型において、
前記可動型および前記固定型の前記キャビティ面のゲート側に、ゲート側入れ子受容穴をそれぞれ形成し、
前記長尺成形品のゲート側の横断面の面積が相似形状のまま小さくなるように、前記可動型および前記固定型の前記ゲート側入れ子受容穴のそれぞれにゲート側入れ子を挿入して固定したことを特徴とする長尺成形品用金型
【請求項2】
さらに、前記可動型および前記固定型の前記キャビティ面の反ゲート側にも反ゲート側入れ子受容穴をそれぞれ形成し、
前記長尺成形品の前記反ゲート側の横断面の面積が相似形状のまま小さくなるように、前記可動型および前記固定型の前記反ゲート側入れ子受容穴のそれぞれに反ゲート側入れ子を挿入して固定した請求項1に記載の長尺成形品用金型
【請求項3】
可動型と固定型を組み合わせることにより形成した長尺なキャビティに、該キャビティの長手方向の一端のキャビティ面に設けたゲートから溶融樹脂を射出して、横断面が略均一な長尺成形品を成形する長尺成形品用金型において、
前記可動型又は前記固定型の前記キャビティ面のゲート側に、ゲート側入れ子受容穴を形成し、
上端または下端が前記可動型および前記固定型が接触する面であるパーティングライン面に位置するように、該ゲート側入れ子受容穴にゲート側入れ子を挿入して固定し、
該ゲート側入れ子が固定された前記可動型又は前記固定型における前記長尺成形品の前記キャビティ面のゲート側の横断面の面積を、該ゲート側入れ子により略相似形状のまま小さくしたことを特徴とする長尺成形品用金型
【請求項4】
さらに、前記ゲート側入れ子穴を形成した前記可動型または前記固定型における前記キャビティ面の反ゲート側にも反ゲート側入れ子受容穴を形成し、
上端または下端が前記可動型および前記固定型が接触する面であるパーティングライン面に位置するように、該反ゲート側入れ子受容穴に反ゲート側入れ子を挿入して固定し、
該反ゲート側入れ子が固定された前記可動型又は前記固定型における前記長尺成形品の前記キャビティ面の反ゲート側の横断面の面積を、該反ゲート側入れ子により略相似形状のまま小さくしたことを特徴とする請求項3に記載の長尺成形品用金型

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−162782(P2010−162782A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7277(P2009−7277)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】