長期放出型経口アセトアミノフェン/トラマドール投与形態
アセトアミノフェン及びトラマドールの長期放出経口投与形態。この投与形態はアニオン性ポリマーとともに形成されるトラマドール複合体とアセトアミノフェンの組成物を含む。このトラマドール複合体は、アセトアミノフェンとトラマドールの同時(調整された)放出プロファイルのために、トラマドールの持続的放出を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の長期放出に関する。特定すると、本発明は、アセトアミノフェンとトラマドールの併用剤の長期放出投与形態に関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛及び変形性関節症の炎症痛のような慢性疼痛は、個人の深刻な苦痛、経済生産性の多大な損失、及び社会全体に与える多額の直接的・間接的費用を引き起こす大きな健康問題である。合衆国の成人のおよそ60%〜80%は、生涯の間にある程度の期間、慢性の腰痛を患うと予測される。現在、多くの国々では、高齢化に伴い、疼痛の懸念は増大している。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、慢性疼痛の処置のために一般的に使用されているが、効能に限りがある。更に、NSAIDはしばしば、胃腸病、潰瘍形成、出血、更には死さえも含む、健康上の実質的な危険因子を伴う。したがって、これらの慢性疼痛の処置のための医療上の改善された処置の必要性がある。
【0003】
トラマドール(2−(ジメチルアミノメチル)−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オル、C16H25NO2)は中枢作用性鎮痛剤であり、一方、NSAIDは末梢作用性鎮痛剤である。トラマドールの作用形態は完全には理解されていないが、in vivoの結果は、親分子及びその代謝産物とミューオピオイド受容体との結合、並びにノルエピネフィリン及びセロトニンの再取り込みの阻害の弱さという二重機構を示唆している。例えばTYLENOLブランドでよく知られているアセトアミノフェンすなわち(N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、C8H9NO2)(又は「APAP」)は、長年にわたり疼痛の処置のための鎮痛剤の第一選択肢である。APAPの作用機構はなお不確かではあるが、CNSにおけるプロスタグランジン合成の選択的阻害、N−メチル−D−アスパラギン酸又はP媒介性酸化窒素合成、及び脊髄におけるプロスタグランジン−E2の阻害が関与する中枢媒介性であると、やはり考えられる。
【0004】
トラマドール及びAPAPは併用剤として送達されてきた。合衆国特許RE39221号は、この併用が、トラマドール材料とAPAPのいずれかを単独で使用した場合、同量の鎮痛剤を生産するために必要となるよりも少ない量でそれら両方を使用することを記述している。Ortho−McNeil Pharmaceuticalが開発した同社専売の経口即時放出型投与形態のトラマドール/APAP(37.5/325mg)併用剤(ULTRACET)は、急性疼痛管理用に2001年にFDA(合衆国食品医薬品局)によって承認された。この製品は、NSAIDの使用に伴う胃腸潰瘍又は出血のような副作用を示さない。加えて、臨床試験では、APAPより長い作用持続期間を有し、トラマドールより速効性がある、この併用による相乗効果が実証された。ULTRACETの場合、用量を4〜6時間毎に摂取しなくてはならない。
【0005】
アセトアミノフェン(本明細書ではAPAP)(Mw 151.163g/モル)及びトラマドール(本明細書ではTRDとも呼ばれる)(Mw 263.375g/モル)は、それぞれ、pKa値9.38及び9.41を有する弱塩基である。APAPの水性溶解度は約14mg/mLであるが、トラマドールHClは水に完全に可溶性である。経口投与の後、APAP及びトラマドールHClは急速に吸収され、どちらの薬物も有意な初回通過代謝を経る。投与形態の投与後のAPAPの吸収は主に小腸で生じるが、良好な大腸吸収もまた生じるようである。APAP(McNeil Consumer HealthcareのTYLENOL(登録商標)ER)の長期放出型(ER)経口投与形態は1995年に市販化された。この2層マトリックス錠剤は、即時放出層の325mgのAPAPと追加的な長期放出層の325mgのAPAPとを含む。APAPの長期放出は、親水性のポリマーマトリックスにおける薬物拡散を制御することによって達成される。
【0006】
トラマドールに関しては、トラマドールHCl ULTRAM(登録商標)ER及びトラマドールHCl CONTRAMID(登録商標)OADの現在の長期放出型投与形態の生物学的利用能は、低い胃腸管での許容可能な吸収を意味する。これらの2つの製品は、24時間にわたり有効な疼痛制御を、便利な一日一回の形式で提供する。ULTRAM(登録商標)ER製品は、半透過性ポリマーと水溶性透過補助剤との混合物でコーティングされたコアを有する。錠剤からのトラマドールHClの徐放は、コーティング膜を制御することによって達成される。CONTRAMID(登録商標)OADは、圧縮コーティングされたマトリックス錠剤である。コアマトリックスは、ゆっくりとした放出をもたらす架橋された高アミラーゼ澱粉であり、一方、圧縮コーティングは比較的速い放出をもたらす。
【0007】
しかし、TYLENOL(登録商標)ERでの親水性ポリマーマトリックスのアプローチ、又はULTRAM(登録商標)ER及びCONTRAMID(登録商標)OADでのコーティングされた錠剤のアプローチのいずれかを用いる、APAP/トラマドールHCl併用剤の長期放出投与形態の開発には、技術的課題がある。トラマドールHClのような非常に水溶性の薬物では、その親水性ゲルネットワークを介して溶解した薬物の急速な拡散のために、親水性マトリックスシステムでの望ましくない薬物破裂がしばしば観察される。また、2つの薬物の水溶性に大きな差があると、APAPとトラマドールHClとの両方の同時放出を達成する長期的放出をもたらすためのコーティングの使用が、非実用的になる。例えば、WO2004026308号及び合衆国公開特許US20040131671号で、APAPとトラマドールの長期放出をもたらす試みがなされてきた。しかし、上手く調整された放出の達成は困難である。必要なのは、2つの薬物の放出の累積重量百分率の差があまりないように、長期間にわたる2つの薬物の同時(又は調整された)放出を送達することができるトラマドール及びAPAPの長期放出投与形態である。本明細書に記載される全ての参照、特許、及び出版物は、参照によりそれらの全てがここに組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、APAP及びトラマドールの長期送達のための方法及び投与形態を提供する。本発明の投与形態では、トラマドールとアニオン性ポリマー間の薬物/ポリマーイオン相互作用は、トラマドールの徐放をもたらし、APAP及びトラマドールの調整された放出をもたらす。
【0009】
一態様では、本発明は、APAP及び複合化されたトラマドール材料を含有する製薬学的組成物を提供し、この組成物は、患者の経口投与で生じるような溶解に際して、調整された持続的放出を呈し、経時的に調整されたトラマドールの蓄積(すなわち累積)放出及びAPAPの蓄積放出をもたらす。この組成物は、錠剤又は錠剤の一部であってよく、胃腸管にあるとき、徐々に崩壊して、調整された放出プロファイルのトラマドール及びAPAPを放出する。好ましくは、この組成物は複合化されたトラマドール材料を含み、この複合化はカラギーナンを用いて行われる。トラマドールは、好ましくはトラマドール塩であり、より好ましくは塩酸(HCl)塩である。
【0010】
別の態様では、複合化されたトラマドール材料及びAPAPを含有する組成物は、4〜12時間にわたり、特定すると6時間以上〜12時間にわたり、トラマドール及びAPAPの両方のためにその投与形態が設計された持続的送達の全期間にわたり持続的放出をもたらす。有能な規制当局(例えば、USFDA(合衆国食品医薬品局))によって薬物が患者を治すために認可されるとき、投与形態は、投与量を定期的に投与間隔で摂取するものとして承認されることに注意されたい。したがって、投与形態の用途及び認可によってその投与形態の設計上の投与期間が特定される。
【0011】
一態様では、本発明は、製薬学的組成物の投与形態の製造方法を提供し、この方法は、複合化されたトラマドール材料を形成せしめる工程と、複合化されたトラマドール材料及びAPAPを含む圧縮形状を形成せしめる工程とを含む。圧縮形状は、患者に経口投与されると、調整された持続的放出を呈し、トラマドールの調整された蓄積放出及びAPAPの蓄積放出を経時的にもたらす。組成物は、トラマドール及びAPAPの持続的で調整された長期的放出(ER)を提供する錠剤、又は錠剤の一部(層など)であってよい。一態様では、投与形態は、APAPとトラマドール複合体とを含有する長期放出(ER)層と、APAP及び複合化されていないトラマドールとを含有する即時放出(IR)層との2つの層が互いに共に接着された2層錠剤であってよい。別の態様では、投与形態は、APAPとトラマドール複合体とを含有するER材料を含むことができ、APAPと、複合化されていないトラマドールとのIR層によって全側面が囲まれている又は両側が挟まれている。
【0012】
一態様では、本発明は、疼痛の処置のための薬剤製造のための複合化されたトラマドール材料の使用と、この薬物で疼痛を処置する方法と、を提供する。この薬物は、複合化されたトラマドール材料及びAPAPを含有し、患者への経口投与によるような薬物の溶解の際にトラマドール及びAPAPの調整された持続的放出を呈し、結果的に、調整されたトラマドールの累積放出及びAPAPの累積放出を経時的もたらす。
【0013】
我々は、特定のアニオン性ポリマー(特にカラギーナン)が薬物の溶解性及び拡散性、又は溶解を低減し、トラマドールの持続的かつ長期的放出をもたらすことを発見した。したがって、カラギーナンで複合化したトラマドールとAPAPとの併用は、薬物の累積放出百分率に関して、APAPの放出プロファイルとかなり一致するトラマドールの持続的な放出をもたらした。これら2つの薬物の長期的な調整された送達は、頻繁な投与並びにAPAP及びトラマドール血漿中濃度の大きな変動が必須である従来の入手可能な投与形態に勝る有意な利点を提供する。持続的又は長期放出型製剤からの薬物の放出は、2つの異なる薬物の制御放出に依存し、制御されないと、それらの薬物のうち1つは、通常、もう一方より速く放出される。急速に放出される薬物の放出を遅延させて比較的徐放性の薬物の放出と一致させることができるかどうかは予測不可能である。したがって、選択されたアニオン複合化ポリマー(特にカラギーナン)の使用によって、APAPとトラマドールの放出がかなり一致した長期放出の達成が可能となることは、驚くべきことであった。我々は、複合化によって放出動態を修正することができ、フィッキアン拡散(Korsmeyer式においてn=約1.14cm(0.45インチ))から、よりゼロ次放出(Korsmeyer式においてnが1に近づく)になり、放出速度も遅らせることができることを発見した。したがって、カラギーナン(特にλカラギーナン)でトラマドールを複合化することは、トラマドールとAPAPの放出速度のギャップを減少し、それによって、それらの放出速度を同期化する。この製剤は、好ましくは、複合化剤であるカラギーナンの他に放出遅延剤として2つの他の賦形剤(PEO及びHPMC K4M)を含有することができる。PEOがないと、この複合化混合物を錠剤に圧縮することがラミネーション及び/又はキャッピングによって難しくなり、圧縮されたときに適正な硬度を達成することが難しい。また、PEOを用いずに圧縮されたER錠剤は、たとえそれらの薬物がカラギーナン複合体と同期化されていても、PEOを用いるものと比べて溶解中により低いゼロ次動態特性を示す。したがって、PEOは、APAP及びトラマドールのゼロ次に近い放出動態を提供すること、並びにより良い圧縮性及び製造可能性を提供することを補助する。また、HPMC K4Mが錠剤の圧縮性に寄与し、APAPとトラマドールの両方の持続的放出を改善することも発見された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明によるAPAPとトラマドールの2層錠投与形態の一部分の断面図。
【図1B】ER層が本発明によるIR層によって囲まれている、APAPとトラマドールの錠投与形態の別の実施形態の断面図。
【図1C】ER層はIR材料の層間に挟まれている、APAPとトラマドールの錠投与形態の別の実施形態の断面図。
【図2】トラマドールが複合化されているマトリックスからと、トラマドールが複合化されていないマトリックスからとの、APAP/トラマドール併用剤の放出プロファイル。
【図3】異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイル。
【図4】異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイル。
【図5】異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイル。
【図6】HPMCの効果を例示するためにAPAPのT80対トラマドールの持続比。
【図7a】トラマドールとカラギーナンとの複合体を有する場合と有さない場合の影響を図示する、それぞれ組成物F及びGに関するトラマドール及びAPAPの放出プロファイル。
【図7b】トラマドールとカラギーナンとの複合体を有する場合と有さない場合の影響を図示する、それぞれ組成物F及びGに関するトラマドール及びAPAPの放出プロファイル。
【図8】ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、F−No.2〜F−No.5の4つの製剤のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図9】ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、図8のF−No.2〜F−No.5の4つの製剤のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図10】IR及びERの2層投与形態を仮定した、ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、図8のF−No.2〜F−No.5の4つの製剤のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図11】IR及びERの2層投与形態を仮定した、ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、図8のF−No.2〜F−No.5の4つの製剤のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図12】製剤F−No.6のAPAP及びトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図13】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.6のAPAPとトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図14】製剤F−No.7及び製剤F−No.8のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図15】製剤F−No.7及び製剤F−No.8のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図16】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7及び製剤F−No.8のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図17】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7及び製剤F−No.8のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図18】製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図19】製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図20】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図21】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図22】製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図23】製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図24】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図25】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図26】異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図27】異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図28】IR及びERの2層投与形態を仮定した、異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図29】IR及びERの2層投与形態を仮定した、異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図30】異なる溶解攪拌速度(rpm)での、製剤F−No.7からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図31】異なる溶解攪拌速度(rpm)での、製剤F−No.7からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図32】IR及びERの2層投与形態を仮定した、溶解中の異なる攪拌速度(rmp)での製剤F−No.7からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図33】IR及びERの2層投与形態を仮定した、溶解中の異なる攪拌速度(rmp)での製剤F−No.7からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図34】50rpmでのF−No.13の溶解プロファイルを、最初の2時間はpH1.2緩衝液で、それ以降12時間まではpH 6.8緩衝液で、F−No.13からの(a)APAP及び(b)トラマドールHCl。
【図35】F−No.13の2層錠剤の実施形態を製造するための製造プロセスの工程図。
【図36】ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のトラマドールの平均血漿中濃度−時間プロファイルの部分的なグラフ。
【図37】ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のAPAPの平均血漿中濃度−時間プロファイルの部分的なグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、APAP及びトラマドールを患者に経口投与により調整送達する投与形態に関する。より具体的には、本発明は、長期送達において胃腸管を介して患者にAPAP及びトラマドールを調整送達する投与形態に関し、その送達中、投与形態は崩壊し、薬物は長期にわたって徐々に放出される。
【0016】
本発明を説明するに当たり以下の用語が使用されるが、それらの用語は次のように定義されるものと意図される。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0017】
本明細書で用いられる用語「トラマドール」は、別段の指示がない限り、イオン相互作用によってカラギーナンと複合化されるカチオン性を有するトラマドール塩基、トラマドール塩、又はトラマドール誘導体を意味することができる。本明細書において言及されるトラマドールの量は、トラマドールHCl等価を指す。
【0018】
「生物活性剤」は、その最も広範な意味において解釈されるべきであり、何らかの生物学的効果、便益効果、治療効果、あるいは、透過、鎮痛、及び避妊のようなその他の意図される効果をもたらすことが意図される任意の材料を意味する。本明細書で用いられる用語「薬物」は、何らかの生物学的効果、便益効果、治療効果、又は他の意図される効果をもたらすことが意図される任意の材料を指す。
【0019】
図1Aは、2層錠剤、すなわち2つの層を有する錠剤の描出された概略断面図である。2層錠剤では、例えば1つの層がもう1つの層の上に乗るようにして、2つの層は直接及びじかに接触することができる。一実施形態では、錠剤20は、即時放出(IR)層22と共に接続された長期放出(ER)層24(トラマドール複合体粒子28を含む)を含む。この投与形態は、製薬学的有効成分(API)(APAP及びトラマドール)を有する2層のみを有する。別の実施形態では、図1Aに示した構造は、図1Bに示した形態の断面全体の一部分である場合がある。形態は、従来の丸薬形、細長い錠投与形、球形、キュウリのような形などであってよく、本明細書では、「錠剤」という言葉を別段明確に特定しない限り、便宜上「錠剤」と呼ぶ。図1Bに示した形態では、錠剤30は、即時放出(IR)層22に囲まれた長期放出(ER)層24(トラマドール複合体粒子28を含む)を含む。したがって、ER材料は、IR層に囲まれたコア(好ましくは層形状又は錠投与形態状)であってよい。更に、錠剤は、図1Cに示した錠剤40のように、2つのIR層に挟まれたER層を有してもよい。任意の形態の錠剤は、追加的に、外郭コーティング(又は、図1A〜1Cには図示していないが、コート)を含むことができる。外郭コーティングは、IR層22と、IR層によって囲まれていない任意のER材料とを囲むことができる。
【0020】
一態様では、本発明の投与形態は、長期放出において、ある期間にわたりゆっくりとAPAP及びトラマドールを放出する固形の圧縮形態を含む。例えば、この固形の圧縮投与形態は、2層錠剤のうちの1つの層、又は速放(又は即時放出)性の外郭層によって囲まれたコアであってよい。概して、この固形の圧縮形態は、トラマドールの活性部分をゆっくりと放出して胃腸管に吸収される複合化されたトラマドール材料を含む。塩基性薬物とカラギーナンとの複合体形成は、Aguzziら「Influence of Complex solubility on Formulations based on Lambda Carrageenan and Basic Drugs」、AAPS PharmSciTech 2002;3(3)Article 27に記述されている。
【0021】
複合化されたトラマドール材料は、トラマドール塩基又はその塩若しくはエステルであり得るトラマドール材料を含む。トラマドール材料は、(1R、2R又は1S、2S)−(ジメチルアミノメチル)−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサノール(トラマドール)、そのN−酸化物誘導体(「トラマドールN−酸化物誘導体」)、及びそのO−デスメチル誘導体(「O−デスメチルトラマドール」)又はその混合物のいずれか1つである。また、個々の立体異性体、立体異性体の混合物(ラセミ化合物、トラマドール材料の塩酸塩、例えば、クエン酸塩、酢酸塩、溶媒和物、及び多形体のようなアミンの薬物として許容される塩)もまた含まれる。トラマドールは、Grunenthalから市販されている。トラマドールの製造方法は、参照により本明細書に組み込まれる合衆国特許第3,652,589号及びRE39221号に記述されているように当該技術分野で既知である。O−デスメチルトラマドールは、O−デスメチル化反応条件下で遊離基としてのトラマドールを処理することによって、例えばNaOH又はKOH、チオフェノール、及びジエチレングリコール(DEG)のような強塩基と還流加熱により反応させることによって、調製される。WildesらJ.Org.Chem.,36,721(1971)を参照のこと。トラマドール材料をアニオン性ポリマーと複合化するには、トラマドールHClが好ましい。トラマドール塩基又はトラマドールと関連する他のトラマドールの塩(例えば異なるハロゲン塩など)の使用は、トラマドールとカラギーナンの複合体形成にあまり影響しないので、結果的に得られるER錠剤の放出速度に有意な差をもたらさないと考えられる。当業者は、不要な実験を伴わずに、本記述に基づいて適宜製剤を調整することができるであろう。
【0022】
複合化されるポリマーは水溶性、ゲル形成性、及びアニオン性であり、硫酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、又は他の負電荷の基のようなペンダント基を含有し、カチオン性薬物と相互作用する。好ましくは、この複合化されるポリマーは、ペンダントアニオン基を有する多糖類系の材料(言い換えれば、アニオン性多糖類、特に硫酸化多糖類)である。特に好ましいのはカラギーナンである。カラギーナンは、海草から得られる硫酸化多糖類である。概して、カラギーナンのタイプとしては、κ、ι、λが含まれ、これらは全て、室温で水とのゲルを形成せしめる。異なるタイプのカラギーナンは、異なる柔らかさ又は硬さの特性のゲルを形成せしめることができる。λ−カラギーナンと塩基性薬物との複合化は、参照により本明細書に組み込まれるAguzziらの文献(AAPS PharmSciTech 2002;3(3)Article 27)に記述されている。
【0023】
複合化されるポリマーは、生体適合性かつ無毒性である。複合化されるポリマーは十分に高分子量であり、ゲルはその活性剤とともに調製され得る。特定の理論に束縛されることは望まないが、カチオン性薬物はアニオン性ポリマーのアニオン性ペンダント基と相互作用し、ポリマーストランド間に静電相互作用を引き起こし、極性溶媒(例えば水)のトラマドールへの浸透を遅らせるようにポリマーストランドが位置づけられるようにすると考えられる。概して、λカラギーナンのMWは100,000〜500,000ダルトンである。2種類の粘度のλカラギーナンが市販されている。1つは、FMCからのVISCARIN(登録商標)GP 109(37℃で測定値約760cPsという低粘度であり、せん断速度は20s-1)であり、もう1つは、VISCARIN(登録商標)GP 209(37℃で測定値約1600cPs、高密度、せん断速度は20s-1)である。この研究では、VISCARIN(登録商標)GP 109がより有用であることが見出されたカラギーナンの好ましいグレードは、低分子量のλカラギーナンである。κカラギーナンのようなその他のカラギーナンを使用してもよい。λカラギーナンは、類似体のκ及びι型と比べて硫酸塩基の量が最も高いことによって特徴付けられる。λカラギーナンは高い可溶性の薬物と強く相互作用し得ることが実証されており、我々は、λカラギーナンがトラマドールと非常に良く相互作用することを示した。下表は、トラマドール放出を遅延するためのトラマドールとの複合化剤としてカラギーナンが有効であることを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上の表1に記載されているように、λカラギーナンは最も低い値のT80比を有していた(1.4)。T80は、APAP(及び同様に、薬物がトラマドールの場合はトラマドール)の累積溶解が80%に達する時点を意味する。T80比はAPAPのT80/トラマドールのT80である。λカラギーナン製剤で最も低い値のT80比(1.4)が得られたということは、2つの製薬学的有効成分(API)すなわち薬物の間の溶解のギャップが、この製剤で最も効果的に削減されたことを意味する。比較として、T80比は、κカラギーナンを用いる製剤では2.0であり、エチルセルロース(EC)を用いる製剤では2.2であり、複合化されていない製剤では2.4であった。したがって、エチルセルロースもまた、遅延剤として作用し得るが、カラギーナンほど効果的ではない。λカラギーナンの拡散指数n(下記に説明)もまた、より高いゼロ次特性を示した。
【0026】
トラマドールとの複合化に使用し得る他のアニオン性材料としては、アルギン酸、カルゴキシメチルセルロースなどが挙げられる。しかし、そのような他のアニオン性材料はカラギーナンより弱い複合化力を有する。硫酸デキストランを含む他の硫酸化又はスルフォン酸化多糖類又はポリマー又は強カチオン交換樹脂(AMBERLITE IRP69)を、トラマドールの複合化のためのアニオン性材料とすることもできる。
【0027】
トラマドール複合体を形成せしめる際、トラマドール材料対(カラギーナンのような)アニオン性ポリマー材料の重量比は、概して、約1:0.1から約1:100、好ましくは約1:0.5〜約1:10の範囲である。
【0028】
圧縮化される固形投与形態では、APAP及びトラマドール材料は、概して、APAP対トラマドール材料が約20:1〜1:1、好ましくは約5:1〜10:1、更により好ましくは約6:1〜9:1の重量比で存在する。更に、即時放出(IR)層では、APAP及びトラマドール材料は、概して、APAP対トラマドール材料が約20:1〜1:1、好ましくは約5:1〜18:1、更により好ましくは約10:1〜16:1の重量比で存在する。我々は、そのような範囲のAPAP対トラマドール比が単一の錠剤で非常に近い重量%累積放出比を伴いそれら2つの薬物の調整された送達をもたらし、送達の最初の1時間以内に実質的に30重量%累積放出超過をもたらし、約12時間の長期送達を持続することを見出した。
【0029】
ER材料に付着するために使用できるIR層は、APAP、トラマドール、及び賦形剤(崩壊剤、結合剤、充填剤など)を含むことができる。ステアリン酸マグネシウム、粉末セルロース、コーンスターチ、ゼラチン化デンプン、ナトリウムデンプンのような材料を使用してもよい。ゼラチン化デンプン、ポリビニルピロリドン、ガムなどのような容易に可溶な結合剤は、製剤が水性環境に入るまで、異なる成分を一時的に共に保持すること補助する。そのような結合剤は急速に可溶化し、IR層が離れて薬物を放出することを可能にする。グリコール酸ナトリウムデンプン、粉末セルロース、繊維状セルロース、及びシリカのような崩壊剤は、結合剤が溶け出すにつれて層が容易かつより均一に崩壊するのを助ける。ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマレートのような潤滑剤を使用してもよい。
【0030】
ER層に関しては(その隣のIR層を無視して)、トラマドールの累積放出が40重量%のときに、トラマドールの累積放出とAPAPの累積放出との差が25重量%未満である放出を達成することができた。我々はまた、トラマドールの累積放出が40重量%のときから始まる持続的放出において、APAPの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が20重量%を超すことが決してない放出を達成することができた。我々はまた、トラマドールの累積放出(重量%としての)が40重量%のとき、APAPの累積放出(重量%)とトラマドールの累積放出(重量%)との差が10重量%を超すことが決してない放出を達成することができた。我々は、更に、少なくとも12時間の持続的放出での最初の1時間の後の持続的放出において、APAPの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が10重量%を超すことが決してない放出を達成することができた。持続的放出での累積放出は、合衆国薬局方装置II(USP II)パドル法により、in vitroで、50rpm/900mL、37℃、pH 6.8の緩衝液中にて溶解することによって決定し得る(標準USPの擬似腸液、無酵素)。
【0031】
本発明による、(2層錠剤の層の1層のような)錠剤の部分は、好ましくは、粒子の圧縮プロセスによって調製され、これらの粒子又は顆粒は、製薬学的有効成分及び存在し得る他の賦形剤を含有する。長期放出層の材料は、図1Aなどに示されているような圧縮化された単位に圧縮されてから、即時放出層で覆われる。これらの粒子は、好ましくは約30μ〜3000μ、より好ましくは約100μ〜1000μ、最も好ましくは約150μ〜400μの平均粒径を有する。用語「粒経」は、概して、粒子の形が球形でないときは、粒子の、より大きい方の寸法を指す。
【0032】
好ましくは、トラマドール複合体は約30μ〜3000μ、より好ましくは約100μ〜900μ、最も好ましくは約150μ〜300μの粒径を有する粒子サイズを有する。
【0033】
長期放出層又はコアは、非水溶性の様々な材料を賦形剤として含有することができる。そのような非水溶性の材料の例としては、疎水性ポリマーであり得るポリマーが含まれる。有用な非水溶性材料の例としては、エチルセルロース、ブチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、ブチルセルロース等の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
ER層又はコアは、製薬学的有効成分と、有効成分の放出を制限する能力を有する少なくとも1つの化学物質と、その他の成分とを混合することによって生成され得る。例えば、ER層又はコアは、希釈剤、流動促進剤、結合剤、整粒溶剤、抗凝集剤、緩衝液、潤滑剤を含む広範な種類の賦形剤を含有することができる。例えば、任意により使用される希釈剤としては、1つ以上の砂糖(スクロース、ラクトース、マンニトール、ブドウ糖など);デンプン;微結晶セルロース;ソルビトール、マルトデキストリン、リン酸カルシウムなどカルシウム塩及びナトリウム塩;硫酸カルシウム;硫酸ナトリウム又は類似の無水硫酸塩;乳酸カルシウム;他のラクトース材料(無水ラクトースなど)、及びラクトース一水和物が挙げられる。好ましい1つの希釈剤はラクトースである。
【0035】
結合剤を使用して、(ER材料中の材料のような)材料を共に結合することができる。好適な結合剤としては、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、スクロース、ソルビトール,ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、ポリエチレンオキシド(PEO)などである代表的な材料の1つ以上が含まれる。HPMCは放出時間の延長を助ける傾向があるので、製剤への使用に好ましい。HPMC E5は、HPMC K4Mよりはるかに低い分子量を有し、結合剤として機能する。粘度は、2%溶液でHPMC E5では約5cpsであり、HPMC K4Mでは4000cpsである。この粘度の違いのため、結合剤としては、即時放出(IR)造粒ではHPMC E5が好ましく、長期放出製剤ではHPMC K4Mが好ましい。別の好ましい材料は酸化ポリエチレンである。製剤の薬物放出では、最初に水がポリマー中に浸透し、次いで、水の浸透に反応してポリマー鎖の弛緩が生じる。結果として、材料の膨張につれて薬物分子がポリマーを介して拡散する。HPMC及びPEOのような結合剤はまた、薬物への液体の浸透を阻害するゲルを形成せしめる特性も有するので、製剤からの薬物放出が遅延される。高分子量及び粘度のため、HPMC及びPEOは長期放出型製剤に有用である。
【0036】
潤滑剤及び抗凝集剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス、硬化植物油、ポリエチレングリコール、ナトリウム安息香酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及びdl−ロイシンの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。有用な潤滑剤はシリカ材料であり、例えばAEROSILは、粒径約15nmの極微小のヒュームドシリカであるコロイド二酸化シリコンとして市販されている。
【0037】
所望により、1つ以上の外郭コーティングを錠剤の上に適用して、包装及び取扱い中の保護並びに飲み込みの援助を提供することができる。そのような外郭コーティングは、即時放出層が内部の有効成分を迅速に放出するのを可能にするために、好ましくは迅速に崩壊する。コーティングは、1つ以上の錠剤コーティング材料を含むことができる。好適なコーティング材料としては、ゼラチン、糖類(例えば、単糖類、二糖類、多糖類(デンプン、セルロース誘導体など)が挙げられる。その他の有用なコーティング材料としては、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ポリアルキレングリコールなどのようなポリヘドリックアルコールが挙げられる。そのようなコーティング材料及びそれらの使用方法は、当業者には既知である。有用なコーティング材料の例は、SURELEASE及びOPADRY(どちらも、合衆国ペンシルベニア州West Point所在のColorconより入手可能)である。錠剤をコーティングする装置及び方法は、錠剤製造技術分野で周知である。更に、所望により、カルナバワックスのようなワックス材を表面仕上げに使用して、より光沢のある表面をもたらすことができる。
【0038】
本発明の投与形態錠剤を生産するプロセスは、錠剤を形成せしめるための従来の技法を使用する。一態様では、長期放出層は、長期放出材料で形成されてから、即時放出層で覆われ、所望により、1つ以上の外郭コーティングで覆われる。ER材料は、錠剤のコアでもまたあり得る。ER材料は、成分粒子を共に圧縮して圧縮形態にすることによって形成され得る。好ましくは、本発明の実施形態の圧縮形態は約4〜20KP/cm2の硬度を有する。更に、成分の微粒子又は顆粒形態は、低せん断造粒機、流動床造粒機、高せん断造粒機といった様々な種類の造粒機での造粒を含むことができる好適な技法の1つ以上のプロセスでの造粒によって形成され得る。
【0039】
本発明の錠剤は、当該技術分野で既知の任意の手段によって製造され得る。錠剤生産のための従来の方法としては、直接圧縮法(「ドライブレンディング」)、乾式造粒後に圧縮する方法、湿式増粒後に乾燥及び圧縮する方法が挙げられる。
【0040】
好ましくは、錠剤、又は錠剤の層は、直接圧縮法によって形成され、有効成分の配合物を直接に圧縮する工程を含む。例えば、配合した後、粉末配合物を錠剤プレス(例えばロータリープレス)の鋳型の窪みに充填し、プレスで材料を錠投与形態に押圧する。本明細書で使用されるとき、錠剤は、丸みのある矩形断面を有する従来の細長い形、球形、円盤丸薬形などの形を有することができる。材料は、好ましくは約2〜6KPの硬度(錠剤が乾燥しているときに約4KPが好ましい値である)の錠投与形に圧縮される。本発明では、IR若しくはERの層又は錠剤は、湿式造粒法によって圧縮されたものであり、硬度は6KP以上である。
【0041】
粒子を圧縮するために、粒子又は顆粒を生産後、十分な条件下で材料を乾燥して、好ましくは0.5重量%以下の水を有する顆粒を提供する。本発明では、IR及びER顆粒のLOD(乾燥による損失)範囲は、乾燥後に1.0%〜3.0%のレベルの水分をもたらす。材料は、約50℃である好ましい温度で乾燥することができる。好ましくは好適な時間、例えば12〜16時間にわたり、約40〜50℃の乾燥温度の範囲内で、溶剤及び/又は水のような液体を取り除く。実験室規模では、乾燥時間は12〜16時間である。工業規模では、流動床乾燥機を用いて、例えば約0.5〜2時間、乾燥時間を短縮することが可能である。
【0042】
2層錠剤では、1つの層をもう1つの層上に被覆することができ、例えば、IR材料の層をER層に、あるいはER層をIR層に、被覆すること又は付着することができる。同様に、IR材料の2層間に挟まれたER層を有する投与形態を、同じ方法で形成せしめることができる。同様に、錠剤が患者に治療的症状緩和のために即時放出及び持続的放出を提供するように、IR材料層の被覆層をコアの上に配置してERコアがIR層で囲まれているER錠剤を形成せしめることができる。
【0043】
錠剤製造において、層を有する錠剤、又は固体コアの周囲を囲む層を有する錠剤を形成せしめるための設備及び方法は、当該技術分野で周知である。例えば、長期放出コアのコア上の即時放出層は、様々な造粒プロセスによって達成され得る。更に、2層錠剤は、2層形成プレスを用いて製造することができる。2層錠剤を形成せしめる1つの方法は、1つの層のための顆粒又は粒子(例えばER材料)を圧縮して1つの層にし、次いで、その上にもう1つの層のための顆粒又は粒子(例えばIR材料)を圧縮して、2層の錠剤様の構造物を形成せしめることである。3層錠剤を形成せしめるには、第3の層(例えばIR層)を、2層の錠剤様の構造物の選択された側(例えばERの側)に圧縮することができる。
【0044】
概して、本発明の錠剤全体の有効成分のうち、APAPの約30重量%〜90重量%、好ましくは約40重量%〜80重量%、より好ましくは約50重量%〜70重量%は、錠剤のERコアにある。一方、概して、トラマドールの約30重量%〜100重量%、好ましくは約50重量%〜90重量%、より好ましくは約60重量%〜80重量%は、錠剤のERコアにある。治療効果のために薬物の血漿中濃度の迅速な上昇をもたらすために、APAP及びトラマドールの有効成分のバランスは、ER層の隣のIR層にあってよい。
【0045】
手順及び設備
以下に、本発明の投与形態の製造、評価、及び使用のために使用し得る典型的で代表的な設備及び手順を定める。代表的な例として、ラムダ(λ)カラギーナンが言及される。マトリックス錠剤は、湿式造粒法によって調製された。様々な製剤の詳細な組成は、以下に表示される表に記される。概して、この投与形態を製造するプロセスでは、トラマドールHClを60%エタノール溶液(1:1.5、w/v)中に溶解し、λカラギーナンを徐々に添加して複合体を調製し、攪拌棒を用いて広口容器内で混合して、トラマドールHCl溶液を得た。次いで、予め配合したAPAP/HPMC粉末を、その複合体と混合して、均質なウェットペーストを得た。このペーストを1.0mmメッシュスクリーンに通してから、一晩45℃で乾燥した。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュスクリーンに通してふるい、次いで、マトリックス形成ポリマー及び他の賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを含む)と配合した。19.5mm×8.5mmの楕円形パンチ及びダイセットを備えたロータリー錠剤プレスを用いてこれらの顆粒を圧縮し、それぞれ重量が約600mgの錠剤を得た。圧縮力は約20KNであり、錠剤の硬度は約7〜10KP、厚さは約3.9mmであった。調製物全てを室温で気密容器内に保管して、更に研究した。
【0046】
K5SSミキサー(Kitchen Aid(合衆国))を使用して、有効成分及び賦形剤の混合及び練り込みを行った。AR400型FGS(Erweka(ドイツ))造粒機を使用して化合物の造粒及びふるいを行った。ZP198ロータリー錠剤プレス(Shanghai Tianhe Pharmaceutical Machinery Co.,Ltd.(中国))を使用して、それぞれの錠剤を圧縮した。VK7000(VANKEL(ドイツ))溶解システムを使用して、圧縮錠のin vitroでの溶解試験を行い、LC−10A HPLC(SHIMADZU)を使用して定量分析を行った。溶解試験機は、USP I(バスケット)の方法とUSP II(パドル)の方法との両方に使用することができる。USPの溶解方法の説明は、「Dissolution」、The United States Pharmacopeia,30th ed.,pp.277〜284,The United States Pharmacopeial Convention,Rockville,MD(2007)に見出すことができる。当該技術分野では、USP I及びUSP IIのような溶解試験が、ヒト患者の胃腸管におけるin vivoでの薬物溶解の合理的な予測を与えることは既知である。FDAは、in vivoの相関合格(correlation successes)による経口製剤開発に要求される試験の1つとしてUSP溶解法を加えた。例として、(1)Dressman,Jennifer B.;Amidon,Gordon L.;Reppas,Christos;Shah,Vinod P,「Dissolution testing as a prognostic tool for oral drug absorption:immediate release dosage forms」の要約、Pharmaceutical Research(1998),15(1),11〜22,Plenum Publishing Corp.、(2)Shah,Vinod P.,「The role of dissolution testing in the regulation of pharmaceuticals:the FDA perspective」の要約、Pharmaceutical Dissolution Testing,(2005),81〜96,Taylor & Francis,Boca Raton,Florida、及び(3)Uppoor,V.R.S.,「Regulatory perspectives on in vitro(dissolution)/in vivo(bioavailability)correlations」の要約、Office of Clinical Pharmacology and Biopharmaceutics,FDA,CDER,Rockville,MD,USA、Journal of Controlled Release(2001),72(1〜3),127〜132,Elsevier Science Ireland Ltd.を参照のこと。
【0047】
典型的なカラギーナンはλカラギーナンである。λカラギーナン(VISCARIN(登録商標)GP109、VISCARIN(登録商標)GP209)は、FMC BioPolymersから入手した。HPMC 2910(METHOCEL(登録商標)K4M)、HPMC 2208(METHOCEL(商標)E5、METHOCEL(商標)E15)及びポリエチレンオキシド(POLYOX(登録商標)WSR N12K)は、COLORCONにより提供された。
【0048】
調製されたマトリックス錠剤のin vitroでの薬物放出の研究は、VK7000 Dissolution Systemを用いて12時間、USP II(パドル)の方法を使用して、50〜100rpm/900mLで37+/−0.5℃の条件下で、溶解媒体(pH 1.2、pH 4.0、pH 6.8の緩衝液及び蒸留水をUSPにしたがって調製)を用いて行った。pH 6.8の緩衝液は無酵素のUSP擬似腸液(SIF)と同じ組成であり、pH 1.2緩衝液は無酵素のUSP擬似胃液(SGF)と同じ組成であり、pH 4.0緩衝液は0.05モル/Lの酢酸と0.05モル/L酢酸ナトリウムとで製造し、pH 4.0に調製したものである。溶解媒体サンプル(pH 1.2、pH 4.0、pH 6.8の緩衝液及び蒸留水)を定期的間隔で取り出して、0.45μmの膜でろ過し、放出媒体中のトラマドールHCl及びAPAPの濃度を次のような条件でHPLCによって測定した。Xterra RP8(4.6×5.0mm、5μm、Waters(合衆国))をHPLC分析用カラムとして使用し、0.5%のNaCl水溶液/メタノール(85/15)溶液を移動相として使用した。移動相の流速は1mL/分であり、噴射量は10μLであった。SHIMADZU SPD−10A紫外線検出器を検出器として使用し、検出波長を275nmに設定した。
【0049】
サンプルに存在する薬物の量は、関連基準から構築された適切な較正曲線を用いて計算した。特定の期間に溶解された薬物を、放出率(%)対時間の曲線としてプロットした。溶解データは、高分子システムからの薬物放出挙動を記述するために当該技術分野で使用される以下の周知の指数方程式(数学モデリングでのKorsmeyer式)にしたがって適合した。
【0050】
Mt/M∞=ktn
式中、Mt/M∞は、時tでの分画薬物放出であり、kは高分子量高分子システム及び薬物を組み込んだ放出速度定数であり、放出指数の規模「n」は薬物放出機構を示す拡散指数である。錠剤の値n、n=0.45は古典的なフィッキアン(ケースI、拡散制御された薬物放出)を示し、0.45<n<0.89は非フィッキアン(異常、薬物拡散及びポリマー浸食放出)を示し、ケースIIではn=0.89(ゼロ次、浸食制御された放出)であり、n>0.89はスーパーケースII放出タイプ(super case II type of release)を示す。異常輸送(非フィッキアン)(non-Fickian manner)は、拡散及び浸食制御された薬物放出の両方の組み合わせを指す。
【0051】
モデルから独立したアプローチ、すなわち、溶解効率(DE)及び平均溶解時間(MDT)もまた使用して、調製された製剤による薬物放出の程度及び速度の差を比較し、そのプロファイルの差を単一の値にする。
【0052】
【数1】
これは、特定の時tまでの溶解曲線の下の区域として定義され、同じ時間での100%の溶解によって記述される矩形の区域の百分率として表現される。MDTは溶解速度の尺度であり、MDTが高いほど放出速度は遅い。
【0053】
【数2】
式中、iは溶解サンプル番号変数であり、nは溶解のサンプル番号の総数であり(the number of dissolution sample times)、tmidはサンプリング時iとi−1との間の中間点の時であり、ΔMはiとi−1との間に溶解された薬物の量である。
【実施例】
【0054】
以下の実施例では、トラマドールHClすなわちラセミのシス−(2−(ジメチルアミノメチル)−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オル、C16H25NO2)HClを使用して複合体を形成した。トラマドールHClの光学回転試験では、線形偏光での回転はなかった。しかし、複合化は、トラマドールのカチオン性と、硫酸基を有するカラギーナンとの相互作用であるので、トラマドールHClの他の鏡像異性体もカラギーナンと同じように複合化できると期待される。
【0055】
実施例1 トラマドール複合体の調製
最初に、1グラムのトラマドールHClを2mLの脱イオン水に溶解する。その結果得られる薬物溶液は、酸性のpHであった。次いで、λカラギーナン(FMCからのVISCARIN GP−l 09)0.8gをこの薬物溶液に添加して、約5分間、すり鉢・すりこぎセットを用いて練和して、トラマドール複合体ペーストを形成せしめた。このペーストを一晩、40℃の炉内で乾燥した。次いで、すり鉢すりこぎセットを用いて、乾燥した複合体を粉砕し、40メッシュスクリーンに通した。HPLCを用いて、複合体のトラマドール含有量を測定した。目標とするトラマドール対カラギーナンの重量比は1.0/0.8とした。
【0056】
実施例2 トラマドール複合体の調製
トラマドール対カラギーナンの重量比を1.01/1.0としたことを除き、実施例1の複合体調製手順をこの実施例でも繰り返した。
【0057】
実施例3 トラマドール複合体の調製
トラマドール対カラギーナンの重量比を1.01/1.25としたことを除き、実施例1の複合体調製手順をこの実施例でも繰り返した。
【0058】
実施例4 複合化されたトラマドールと複合化されていないトラマドールの放出
最初に、表2に記載されている賦形剤を40メッシュスクリーンに通した。次いで、表2に示した組成にしたがって、スクリーンに通したそれらの賦形剤と、実施例1で調製したトラマドール複合体又は遊離トラマドールとを乾式混合した。約1メートルトンの圧縮圧下で、0.71cm(9/32インチ)の工具を用いて、乾式混合された材料をそれぞれ600mgずつ錠剤に圧縮した。1メートルトンの圧力は57Mpaに相当する。
【0059】
【表2】
【0060】
トラマドール及びAPAPの両方とも、放出プロファイルは擬似腸液(標準pH 6.8 USP、無酵素)にて、USP Iの方法を用いて50rpmで測定した。放出媒体におけるトラマドール及びAPAPの濃度は、HPLC法を用いて測定した(85:15、v/v、水中O.5%NaCI:MeOHの移動相による、Waters XTerra RP8、5μm、4.6×50mm)図2は、トラマドールが複合化されたマトリックス、及びトラマドールが複合化されていないマトリックスの、APAP/トラマドール併用剤の放出プロファイルを示す。黒丸のデータポイントの曲線は製剤AのAPAPのデータ、白丸のデータポイントは製剤Aのトラマドールのデータ、黒三角は製剤BのAPAPのデータ、白三角は製剤Bのトラマドールのデータである。データは、薬物の80%が放出されるまでの時間として定義されるT80に基づき(トラマドールは7.3時間、APAPは17.7時間)、トラマドールの放出速度がAPAPの放出速度よりはるかに速いことを示している。これら2つの薬物間の放出持続時間にはギャップがあり、T80比は2.4であった。トラマドールをカラギーナンと複合化した製剤Bでは、放出持続時間のギャップは有意に低減された。そのT80は2.4から1.4に低減し、p値は<0.0001であった。このように、カラギーナンとの複合化はトラマドールの放出を遅延させる。上の表1を参照のこと。
【0061】
実施例5 HPMCの影響
この実施例では、広範な放出持続時間を提供するために錠剤の組成を変更したことを除き、実施例4に示した錠剤調製手順及び放出方法を繰り返した。表3は、使用した錠剤組成を示す。
【0062】
【表3】
【0063】
図3、4及び5は、異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)を有する製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイルを示す。黒丸はAPAPデータ、白丸はトラマドールデータを示す。APAPのT80対トラマドールの持続時間の比率を図6にプロットした。黒丸はAPAPデータ、白丸はトラマドールデータを示す。図6は、トラマドール複合体を含有する製剤では、HPMC含有量はAPAP放出持続時間に大きく影響する(HPMCの量の増加がT80を増加した)が、持続時間の比率には有意な影響がないことを示している。
【0064】
実施例6 トラマドール複合化の影響
【0065】
【表4】
【0066】
調製手順は、表4による製剤F及びGとともに上記実施例4で記述したものと同一である。図7a及び7bは、それぞれ組成物F及びGのトラマドール及びAPAPの放出プロファイルを示す。黒丸はAPAPデータ、白丸はトラマドールデータを示す。これら2つの製剤は、APAPについては類似したT80のプロファイルを有するが、トラマドールの放出プロファイルは大きく異なる。複合化されていると(製剤F)、放出持続時間の比率は1.1であり、トラマドール及びAPAPの同時放出が達成される。加えて、複合化されていないものでは拡散放出指数(n)は0.502であったが、複合化されたトラマドールでは0.731であった。n値の増加は、トラマドールの放出がゼロ次(一定速度の)送達に近づくことを示す。
【0067】
実施例7 即時放出材料
この実施例では、表5に記載されている即時放出(IR)材料の製剤であることを除き、実施例4と同じ錠剤調製手順を繰り返した。成分を40メッシュスクリーンに通してから乾式混合することにより、均質な混合を確保した。即時放出錠剤は、1.91cm×0.81cm(0.75×0.32インチ)のカプレット工具をCAVER圧縮機によって約1メートルトンの圧力(57Mpa相当)下で用いて、365.2mgの組成物をIR錠剤に圧縮して調製した。それぞれのIR錠剤はAPAPを325mg含有する。この錠剤は急速な崩壊を示し、95%を越すAPAPが15分未満に擬似腸液(SGF)(すなわち、無酵素の標準pH1.5のUSP、溶解はUSP IIの方法の標準的手順により行った)に溶解した。このように、APAPを急速に放出するIR材料が形成されたことが示された。この材料は、図1A、図1B、図1Cに示すような、APAP及び複合化されたトラマドールを含む長期放出型組成物に付着されるIR層として使用することができる。錠剤の外郭層であるので、同様に急速に崩壊し、薬物を放出しなくてはならない。この現在の実験では、IR層22はトラマドールを含まず、APAPのみを有効な鎮痛剤成分とした。しかし、このIR材料は非常に急速に溶解したので、トラマドールを含めることが薬物放出時間を有意に延ばすことになるとは考えにくい。何時間にもわたりAPAP及びトラマドールを放出するER材料と異なり、APAP及びトラマドールを有するIR層は分単位で溶解するべきである。
【0068】
【表5】
【0069】
実施例8 HPMC E5が硬度に与える影響
製剤F−No.01A〜03Aは、HPMC E5が錠剤の圧縮性に与える影響を示すために、表6Aに記載されている配合による様々なHPMC E5の割合を用いて調製した。HPMC E5の量が多いほど錠剤の硬度は高かった。このように、10mgのHPMC E5をER層粒剤に組み入れることは、適切な硬度(例えば約6〜12KP)の錠剤を生産するために有用であった。
【0070】
【表6】
【0071】
実施例9 複合体マトリックス錠剤の更なる実施例
マトリックス錠剤は、湿式造粒法によって調製した。様々な製剤の詳細な組成は表6B及び表6Cに記載されている。トラマドールHClを60%エタノール溶液(1:1.5、w/v)中に溶解し、λカラギーナンを徐々に添加して複合体を調製し、攪拌棒を用いて広口容器内で混合して、トラマドールHCl溶液を得た。次いで、予め配合したAPAP/HPMC粉末を、複合体と混合して、均質なウェットペーストを得た。このペーストを1.0mmメッシュスクリーンに通してから、一晩45℃で乾燥した。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュスクリーンに通してふるい、次いで、マトリックス形成ポリマー及び他の賦形剤(ステアリン酸マグネシウム(Mg)を含む)と配合した。19.5mm×8.5mmの楕円形パンチ及びダイセットを備えたロータリー錠剤プレスを用いてこれらの顆粒を圧縮し、それぞれ重量が約600mgの錠剤を得た。圧縮力は約20KNであり、錠剤の硬度は約7〜10KP、厚さは約3.9mmであった。調製物全てを室温で気密容器内に保管して、更に研究した。錠剤製造方法は、正しい賦形剤を含めることによって、以下の実施例の成分を有する錠剤の製造にも適応することができる。
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
実施例10 遅延化賦形剤
ポリエチレンオキシド(PEO)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のような親水性ポリマーは、放出型錠剤の処方を改良するための賦形剤として使用することができる。錠剤は、当業者には理解されるであろう上の実施例9の方法によって製造することができる。これらのポリマーは、いったん液体と接触すると含水して膨張し、錠剤マトリックスへの液体の更なる浸透及び内部からの薬物の溶解を調節するヒドロゲル層を形成せしめる。したがって、そのような高分子マトリックスからの薬物放出は、拡散、浸食、又はそれら両方の組み合わせによって達成される。BID投与量で約10〜12時間の放出持続時間を達成するよう、ER層のマトリックス錠剤を様々な含有量のHPMC及びPEOで、λカラギーナン/トラマドールHCl複合体を用いて製剤した(表7(APAPについては表7A、トラマドールHClについては表7B)を参照のこと)。PEOは、DOW Chemical Companyから入手したPOLYOX WSR N12Kを使用した。POLYOX WSR N−12K−NFの分子量(MW)は約1,000,000、25℃の2%溶液での粘度範囲は400〜800cpsである。表7は、様々な経験的等式により得た各マトリックス錠製剤の溶解パラメータの一覧である。表を見て分かるように、全ての製剤の相関係数(R2)の値は、Korsmeyerモデルによる薬物溶解挙動の評価をするために十分高く(>0.97)、「n」及びkの値は、ポリマーのタイプ及び濃度によって変化することが見出された。様々なマトリックスから決定される放出指数「n」の値は、APAPについては0.43〜0.88の範囲であり、トラマドールHClについては0.46〜0.66であり、拡散機構と浸食機構が組み合わさった影響が示された。F−No.1に遅延剤としてHPMC K4Mのみを使用したときは、錠剤の硬度は比較的低く(3KP未満)、このため圧縮が困難であった。しかし、錠剤充填剤としてラクトース又はAEROSIL 200を製剤に組み入れることで、適切な錠剤特性を補うことができた(F−No.2 & 3)。
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
F−No.1に遅延剤としてHPMC K4Mのみを使用したとき、錠剤の硬度は比較的低く、このため圧縮が困難であった。しかし、錠剤充填剤としてラクトース又はAEROSIL 200を製剤に組み入れることで、適切な錠剤特性を補うことができた(F−No.2 & 3)。PEOのみの使用、及びHPMC K4Mと遅延剤PEOとの併用での試験も行った(F−No.4 & 5)。溶解はpH 6.8の緩衝液(無酵素の擬似腸液)にて50rpmで行った。時間の関数としてのF−No.2〜5の拡散百分率を図8及び図9に示す。
【0078】
IR層含有量を仮定した、pH 6.8緩衝液にて50rpmでの異なるマトリックス錠(F−No.2〜5)製剤からの(a)APAP及び(b)トラマドールHClの擬似放出プロファイルを、図10及び図11に示す(IR層内容物を有することを仮定していないデータである図8及び図9の比較)。データは、平均+/−SD(n=3)として表されている。菱形のデータポイントはF−No.2のデータを表す。円形のデータポイントはF−No.3のデータを表す。三角形のデータポイントはF−No.4のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.5のデータを表す。上記実施例4に示したように、IR材料は、放出される有効成分の量を急速に増すためにAPAPを急速に放出するように形成せしめることができる。我々は同様に、APAP及びトラマドールを急速に放出するIR材料も形成した。我々は、IR材料の層を使用して、ER材料の層を有する2層を形成せしめる場合、APAP及びトラマドールの放出にかかる時間がごくわずかであると仮定することによって、APAP及びトラマドールの放出を近似させることができることを実証した。図1B及び1Cの構造物も、IR層からの薬物を同様に急速に放出するべきである。図10及び図11は、錠剤が、図8及び図9の錠剤の組成物のER層と、1つの外郭層として又は2層構造の1層としてのいずれかである、そのER材料に付随するIR層とを有すると仮定した擬似放出プロファイルを示す。累積放出率(%)は、錠剤(例えば2層)全体におけるAPAP(及びトラマドール)の合計量の百分率として計算される放出である。図10及び図11は、APAPの累積放出率(%)が、製剤のIR/ER(例えば2層)錠剤からのトラマドールの累積放出率(%)と非常に近かったことを示す。このように、複合化によって、APAP及びトラマドールHClの調整された長期放出を得ることができた。
【0079】
結果はまた、PEOとHPMC K4Mを遅延剤として併用することが(F−No.5)、上記のマトリックスのうち最も低いDE%及び最大のMDTを示し、より高い薬物放出遅延能力が示されることを示した。
【0080】
PEOの使用
製剤F−No.5及びF−No.6は、HPMC K4MとPEOを用いて低いDE%及びより大きいMDTを得ることの利点を示した。(F−No.6)HPMC K4M対PEOを1:1の比率で含有。図12は、APAP及びトラマドールHClの累積放出プロファイルの比較を示す。図13は、図12のデータから計算された、IR外郭層とERコアとを有するF−No.6の2層錠剤の擬似放出プロファイルを示す。図12及び図13において、菱形のデータポイントはAPAPのデータを表す。正方形のデータポイントはトラマドールのデータを表す。図12におけるAPAP及びトラマドールHClの放出は、Korsmeyerモデル(それぞれ相関R2=0.9967及び0.9977)を明確に追従している。放出指数(n=0.7739(APAP)及び0.5694(トラマドールHCl))から、放出機構が異常輸送(非フィッキアン)のようであることがわかる。データは、長期放出に適したほぼ一定の放出速度を示している。一定の放出速度を可能にする長期放出投与形態は、薬物の拡散及びポリマーの浸食の両方の総和を反映していると考えられる。溶解媒体に配置した後、膨張と浸食の両方が同時にマトリックス内で生じ、ほぼ一定の放出が得られた。そのような状況での一定の放出は、膨張による拡散パスの長さの増加がマトリックスの連続的な浸食によって補われることによって生じる。
【0081】
異なるグレードのλカラギーナン
異なるグレードのλカラギーナンを有する長期放出製剤F−No.7及びF−No.8での、放出されたAPAPの累積量と時間のプロットを図14は示し、図15はトラマドールHClの累積量と時間のプロットを示す。菱形のデータポイントはF−No.7のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.8のデータを表す。異なるグレードのλカラギーナン(VISCARIN(登録商標)GP−109及びVISCARIN(登録商標)GP−209)を含有するマトリックス間に薬物放出速度の有意な差は観察されず、トラマドールHClとそれらの複合化能力にほとんど差がないことが示された。図16及び図17は、それぞれ、図15及び図15のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。ここでも、トラマドールHClの放出プロファイルはAPAPのものと非常に近く、製剤F−No.7及びF−No.8の長期放出コアを有する2層投与形態が、それら2つの薬物の調整された長期放出をもたらし得ることが示された。
【0082】
HPMC K4Mの影響
F−No.7、F−No.9、F−No.10は、薬物放出プロファイルに与える遅延剤の影響を研究するために、一定量のPEO(30mg)でHPMC K4Mの割合を変えることによって、ER材料として製剤された。全ての製剤は10〜12時間以上の放出を示した。長期放出製剤F−No.7、F−No.9、F−No.10での、放出されたAPAPの累積量と時間のプロットを図18は示し、図19はトラマドールHClの累積量と時間のプロットを示す。図20及び図21は、それぞれ、図18及び図19のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。菱形のデータポイントはF−No.7のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.9のデータを表す。三角形のデータポイントはF−No.10のデータを表す。結果は、HPMC K4Mの量の増加が薬物の放出をわずかに遅延させることを示している。ここでも、トラマドールHClの放出プロファイルはAPAPのものと非常に近く、製剤F−No.7、F−No.9、F−No.10の長期放出コアを有する2層投与形態が、それら2つの薬物の調整された長期放出をもたらし得ることが示された。
【0083】
PEOの影響
F−No.7、F−No.11、F−No.12は、薬物放出プロファイルに与える遅延剤の影響を研究するために、一定量のHPMC K4M(20mg)でPEOの割合を変えることによって、ER材料として製剤された。全ての製剤は10〜12時間以上の放出を示した。長期放出製剤F−No.10、F−No.11、F−No.12での、放出されたAPAPの累積量と時間のプロットを図22は示し、図23はトラマドールHClの累積量と時間のプロットを示す。図24及び図25は、それぞれ、図22及び図23のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。菱形のデータポイントはF−No.11のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.10のデータを表す。三角形のデータポイントはF−No.12のデータを表す。結果は、PEOの量の増加量が薬物の放出をわずかに遅延させることを示している。ここでも、トラマドールHClの累積放出プロファイルはAPAPのものと非常に近く、製剤F−No.10、F−No.11、F−No.12の長期放出コアを有する2層投与形態が、それら2つの薬物の調整された長期放出をもたらし得ることが示された。
【0084】
pHの影響
溶解液のpHが親水性マトリックスからの薬物の放出速度に与える影響を研究するために、pH 1.2、pH 4.0、pH 6.8の緩衝液及び蒸留水での溶解速度を製剤F−No.10に関して50rpmで調査した。APAPのデータを図26に、トラマドールHClのデータを図27にそれぞれ示す。菱形のデータポイントはpH1.2でのデータを表す。正方形のデータポイントは4.0でのデータを表す。三角形のデータポイントはpH 6.8でのデータを表す。丸のデータポイントは蒸留水(DW)でのデータを表す。製剤F−No.10に関し、APAP及びトラマドールHClは両方とも放出速度は酸性pHではより高く、酸性条件ではMDTの値がより低く、DE%の値がより高いことで一致している。この結果は、酸性媒体では錠剤コア周囲のゲル層形成より前にマトリクス錠剤の表面浸食又は崩壊が起きて結果的に薬物放出がより速くもたらされることによる可能性がある。pH 6.8での放出プロファイルは他より遅かった。全てのERサンプルで1時間目の放出は低く、錠剤が胃を通過するとき、そのような製剤が薬物をごく少ない割合で放出することが示された。図28及び図29は、異なるpHの緩衝液及び蒸留水での擬似2層錠剤の累積薬剤放出を、それぞれ図26及び27のデータに基づいて計算したものを示す。ここでも結果は、APAPとトラマドールの調整された放出の投与形態を製剤し得ることを示している。
【0085】
攪拌速度(rpm)の影響
溶解中の50rpm、75rpm、100rpmの攪拌速度で、製剤F−No.7の実施例のER材料の溶解を調べた。APAPのデータを図30に、トラマドールHClのデータを図31にそれぞれ示す。菱形のデータポイントは50rpmのデータを表す。正方形のデータポイントは75rpmのデータを表す。三角形のデータポイントは100rpmのデータを表す。マトリクスからの合計薬物放出速度はrpmが高いほど有意に高く、このことは、F−No.7に関し、MDTがAPAPでは5.40時間、トラマドールHClでは4.28時間であり、DE%がAPAPでは47.92%、トラマドールHClでは60.87%であった50rpmでよりも、100rpmでより小さいMDT(APAPでは4.33時間、トラマドールHClでは3.21時間)及びより高いDE%(APAPでは64.41%、トラマドールHClでは68.24%)であったことによって裏付けられる。概して、親水性ポリマーは液体と接触するとヒドロゲル層を生成し、薬物溶解は拡散と浸食の組み合わせによるが、薬物拡散が支配的である。しかし、rpmが高いほどポリマーの含水よりマトリックスの浸食が増し、やがてより多くの薬物の拡散と溶解が促進される。図32及び図33は、それぞれ、図30及び図31のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。ここでも結果は、APAPとトラマドールの調整された放出の投与形態を製剤し得ることを示している。
【0086】
2層錠剤のin vitroでの長期放出
上記の結果に基づき、ER層を形成せしめる実施例9の方法を採用し、それにIR層を被覆することにより、圧縮されたトラマドールHClの複合体の層とAPAPを有するIR層を有する2層錠剤を表8の製剤F−No.13の組成にしたがって製造した。この圧縮は、IR圧縮材料とER圧縮材料とを2層圧縮機に同時に供給するにつれて、2層圧縮機を用いてIR層とER層をともに圧縮することによって行った。2層又は多層の錠剤を形成せしめる圧縮材料のための多くのプレスが知られており、錠剤を製造するために一般的に使用されている。当業者は、例えばCarverプレスのような典型的なプレスを使用して、本発明の2層錠剤を製造することができる。製剤F−No.13の錠剤は、パイロットプラントの38kgロットで製造された。表8はまた、ER材料の層の隣のER層の組成もまた示す。表8に示すように、IR層及びER層を有するコア錠剤に、任意のコーティングを提供した。
【0087】
【表11】
【0088】
表9は、製剤F−No.13の2層錠剤の3つのパイロットプラントロットの製造での実際の製造データを示す。3つのパイロットプラント製バッチの処方は、許容基準を満たし、丈夫で堅固な製品を代表する錠剤を生産した。表に示されるように、対応する層のために混合される他の成分として、水及び/又はエタノールを添加した。次いで、混合した材料を圧縮して、それぞれの層を形成した。錠剤を乾燥するために、水とエタノールを乾燥プロセスで除去した。これらの錠剤はまた、実験規模及び製剤開発段階で評価した錠剤の性能と匹敵した。
【0089】
【表12】
*水は乾燥プロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
【0090】
【表13】
*水は造粒プロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
**エタノールは造粒プロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
【0091】
【表14】
***値は、コーティングプロセス中の損失を考慮して調整した。このロットに必要とされる実際の量は20%の余分な許容差を含む。(3kg−−−−→3.6kg)。
****水はコーティングプロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
【0092】
IR層には流動床造粒製造プロセスを用い、ER層の製造、乾燥、ふるい、及び混合工程には高せん断ミキサー造粒プロセスを用いた後、圧縮を行った。圧縮した錠剤を完全にフィルムコーティングした。造粒には高せん断ミキサー造粒機、流動床造粒機、乾燥には流動床造粒機、ミリングには振動ふるい、混合にはVブレンダー、錠剤製造にはTMI2層圧縮機、コーティングにはハイコーターを、主要な装置として製造に使用した。錠剤製造プロセス工程図を図35に示す。
【0093】
IR顆粒の調整では、最初に結合剤液を調製した。IR材料(APAP、トラマドールHCl、粉末セルロース、予ゼラチン化デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン)を流動床造粒機に移送して、予め混合した。材料の顆粒は、流動床造粒機を用いて、必要量の結合剤液を材料に噴霧して形成した。顆粒を乾燥し、次いで、ステアリン酸マグネシウムとともにふるい製造機に通して、所望の粒径を達成した。得られたIR顆粒を、Vブレンダーを用いて混合した。ER顆粒の調製では、トラマドールHClを60%エタノール液に溶解し、λカラギーナンを添加して複合体を形成した。APAP及びHPMC E15はSuperMixer Granulatorで予め混合した。高せん断ミキサーを用いて、トラマドール複合体ペースト及びAPAP/HPMC E15をともに造粒した。湿った顆粒をふるい機に通して、所望の粒径を達成した。顆粒を流動床乾燥機で乾燥した。乾燥した顆粒及び他の化学品(HPMC K4M,POLYOX)をステアリン酸マグネシウムとともにふるい機に通し、次いで、混合してER配合物を形成した。IR配合物とER配合物とを、エンボス錠剤工具(49セット、上部、下部、及び鋳型)を備える適切な2層錠剤圧縮機(例えば、TMI2層プレス又は同等物)を用いて約925.8mgの重量の錠剤に圧縮した。錠剤を3バッチ(ロット)製造した。錠剤製造用工具に使用されたパンチの寸法的特徴は、長さ19.05mm、幅7.62mm、曲線半径5.5mmである。コーティング液(液体)は、適切な量のOPADRY Yellow YS−1−6370−Gを精製水と混合して製造した。コーティングされる錠剤(コア錠剤)をコーティングパンに乗せた。コーティングパンにてコア錠剤を加熱し、適切なコーター(例えばハイコーター又は同等物)を用いてコーティング液でコーティングした。噴霧完了後、パンの回転を続けることによって錠剤を確実に乾燥させた。回転している錠剤床全体にカルナバワックスを振りかけた。コーティング液は、溶剤中に全ての成分がよく溶けている溶液であっても、あるいは流体中に分散された何らかの粒子状成分を含有しているものであってもよい。コーティング液は当該技術分野において周知であり、当業者は、本明細書に開示された開示の実施例に基づいて、どの代替物を使用することができるかを知るであろう。
【0094】
錠剤の製造に使用した主な装置を以下に記す:
1.造粒:高せん断ミキサー造粒機(Supermixer:30kg)
流動床造粒機(Glatt WSG 30:30kg)
2.乾燥:流動床造粒機(Glatt WSG 30:30kg)
3.ミリング:振動ふるい
4.混合:Vブレンダー(100L)
5.錠剤製造機:TMIコンプレス
6.コーティング:パンコーター(30kg)
【0095】
表10は、ロット001、002、003の錠剤の製造に使用した上記装置のパラメータを示す。乾燥プロセスで、目標とする重量百分率(1重量%〜3重量%)の乾燥後の水分(MafD)まで錠剤を乾燥した。当業者は、表10のパラメータの条件下で錠剤を製造するための上記装置の使用方法がわかるであろう。表10で、設定パラメータの値はそれぞれのロットに適用されたものであり、わずかに変化する場合がある(表に示されているように)。
【0096】
【表15−1】
【0097】
【表15−2】
【0098】
表11は、長期放出錠剤のロット001、002、003に使用した即時放出(IR)顆粒のメッシュにおける粒径分布を示す。
【0099】
【表16】
【0100】
完成錠剤の重量は約951mg/錠であった。製造された錠剤の重量は約114Kg/ロットであった。
【0101】
上記F−No.13錠剤では、IR層の厚さは約3.14mm、ER層の厚さは約3.82mm、合計厚さは6.96mmである。上記の条件下で、コーティングされていない錠剤の硬度の平均値は8.5+/−1KPであり、破砕性は1%未満(0.23%)であった。図34は、F−No.13(コーティングされた錠剤)の溶解プロファイルを示す。菱形のデータポイントはAPAPのデータを表す。正方形のデータポイントはトラマドールのデータを表す。相対標準偏差(CV)値は、測定された全てのポイントについて7%未満であった(n=6)。1時間目から始めて12時間目までに、APAPの重量%累積放出はトラマドールの重量%累積放出と非常に近かった(10%未満の差)。2時間目から8時間目を通して、差は5%未満であった。この結果は、APAP及びトラマドールの調整された放出をもたらすことができる多層投与形態が製造されたことを示す。この実施形態では、トラマドール及びAPAPの放出速度は非常に近かった。APAP対トラマドールのT60、T70、T80、T90の比率は2未満であり、事実、1.5未満であり、ほぼ1に近い。放出速度実験の結果から、2層錠剤ではIR層が崩壊して薬物を急速に(例えば15分のような分単位で)放出することは明白である。IR層の薬物放出時間は、8時間以上かかるER層の放出に比べて極めて短い。したがって、2層錠剤のER層の薬物放出速度が、ER層のみを試験したin vitro溶解試験でのER層の薬物放出速度と同様となるであろうと仮定することは合理的である。F−No.13のER層はF−No.7のER層とほぼ同一であるので、ER層での放出指数nはAPAPに関しては約0.75となり、トラマドールに関しては0.6となる。
【0102】
トラマドールをアニオン性ポリマー(好ましくはカラギーナン)と複合化して錠剤に長期放出層を形成せしめることが、非フィッキアン及び/又はケースII浸食制御された放出をもたらし、それによってAPAPとの調整された放出を可能にすることが見出された。異なる錠剤の性能を比較するために、以下の方法を用いてUSP II(パドル)装置を使用するin vitroでの実験によって、Korsmeyer式におけるMDT、T80及び放出指数nの決定を行うことが好ましい。容器の底の内側から25mmにパドルを位置づける。溶解媒体はUSPの方法(無酵素のUSP SIF)にしたがって調製したpH 6.8のリン酸緩衝液であり、37+/−0.5℃で50rpm/900mLにて溶解する。溶解媒体サンプルを定期的間隔で取り出し、0.45μの膜フィルターでろ過し、放出媒体中のトラマドールHCl及びAPAPの両方の濃度を、水性緩衝液/メタノール溶液を移動相で用いるHPLCによって測定する。移動相(pH 2.7の緩衝液:メタノール=73:27)を0.45−um Millipore Filter(HAWP 04700)又は同等物に通してろ過し、ヘリウム散布によって脱気する。標準の溶液(100%)37.5/325mgは、36.11/純度mg(±1%)のアセトアミノフェンを50mLの容積測定用フラスコに入れて正確に重量測定し、トラマドール塩酸塩原液10.0mLを移し入れ、溶解し、pH 6.8のリン酸緩衝液で希釈することによって製造する。トラマドール塩酸塩原液は、トラマドール塩酸塩41.66/純度mg(±1%)を100mLの容積測定用フラスコに入れて重量測定し、溶解し、pH 6.8のリン酸緩衝液で希釈することによって製造する。HPLCカラムはSUPELCO LC−8−DB 150×4.6mm;5μmである。噴射量は10μL、流速は2.5mL/分、実行時間を16分とする。APAPの保持時間は約1.2分。トラマドール塩酸塩の保持時間は約4.0分。検出器はプログラム可能なWaters 490紫外線検出器又は同等物である(APAP 280nm−1.0AUFS;トラマドール塩酸塩215nm−0.5AUFS)。カラム温度は約35℃である。USP IIの方法を標準的方法とする。当業者は、USP IIの合衆国薬局方の方法を参照することができる。
【0103】
サンプル中の薬物のラベル(特定するとLa)量の百分率の計算は、次のように行うことができる。
【0104】
【数3】
式中、Asam=サンプルのトラマドール塩酸塩又はアセトアミノフェンのピーク区域
Astd=標準(std)トラマドール塩酸塩又はアセトアミノフェンのピーク区域
Cstd=標準濃度(mg/mL)
Ct100=理論上の100%濃度(mg/mL)
La=トラマドール塩酸塩又はAPAPのラベル量
【0105】
本発明では、ER層に関して、我々は、Korsmeyer式でトラマドールの放出指数nを得ることができた(約0.45超、更には0.7超、及び更に0.85超)。好ましくは、APAPの放出指数nは約0.46〜1、より好ましくは約0.6〜0.9、より好ましくは約0.6〜0.8である。好ましくは、トラマドールの放出指数nは約0.46〜0.7、より好ましくは約0.5〜0.7、より好ましくは約0.5〜0.65である。
【0106】
我々は、2層錠剤でのAPAP対トラマドールのT80の比率を1に近い値で達成することができた。好ましくは、T80比は約2未満であり、好ましくは約1.5未満であり、より好ましくは約1.5〜1の範囲である。更に好ましくは、T80比は0.9〜1.1の範囲である。また、T80は約8〜12時間が好ましく、より好ましくは約10〜12時間である。表12はF−No.13のT80データを示す。
【0107】
【表17】
【0108】
2層錠剤のin vivoでの長期放出
長期放出錠剤(表9に記載したパイロットプラント処方により製造したもの)の相対的生物学的利用能及び他の薬物動態学的特性を、韓国の健常男性ボランティアで、既存ブランドの処方によるトラマドール/APAP併用剤(ULTRACET)と比較した。ULTRACET錠剤は37.5mgのトラマドール塩酸塩及び325mgのAPAPを含有する。そのようなULTRACET錠剤は市販されている。錠剤の非有効成分は粉末セルロース、ゼラチン化コーンスターチ、グリコール酸ナトリウム、デンプン、精製水、ステアリン酸マグネシウム、OPADRY(登録商標)Light Yellow、及びカルナバワックスである。ULTRACET錠剤のラベル説明及び使用は、このパッチ及びその使用を記載したラベリング、例えばUSFDA NDA 021123号、に見出すことができ(ラベルは2004年4月16日に認可された。(著作権)OMP 2003)、このラベルは参照によりその全文がここに組み込まれる。
【0109】
下表13に示すように、試験期と試験期の間に4日間のウォッシュアウト期間を有する絶食条件下の韓国人ボランティア健常男性で、ランダマイズした複数用量、2回処置、2期間、2シーケンスの交差研究を行った。
【0110】
【表18】
【0111】
スクリーニング後、薬物投与シーケンスの開始に当たりそれぞれの被験者に、選択された薬物を第1期の4日間投与した後、薬物を投与しない4日間のウォッシュアウトを行い、次いで第2期の4日間の薬物投与を行った。被験者の薬物投与後のフォローアップ検査を4日間行い、被験者の血液サンプルのデータを記録した。表13のように、これらの薬物投与シーケンスの間、市販のULTRACET錠剤(表13でAと指定)は6時間おきに14回経口投与し、ER錠剤(表13でBと指定)は12時間おきに7回、それぞれ投与した。投与後、既定の時間間隔に血液サンプルを採取した。
【0112】
表13のデータを使用して、錠剤中の薬物の生物学的利用能を決定した。本明細書で用いるとき、用語「生物学的利用能」とは、薬物製品から吸収されて作用部位で利用可能になる有効成分又は有効部分のレート及び程度を指す。そのレート及び程度は、薬物のピーク血中濃度又は血漿中濃度(Cmax)及び濃度曲線下面積(AUC)のような薬物動態学的パラメータによって確立される。
【0113】
薬物動態学では、用語「AUC」は、非検体における利益薬剤の血漿中濃度対時間を、投与開示時から、投与開始後「t」時間まで測定してプロットすることによって得られる、非検体で得られる曲線下の面積を意味する。定常状態の薬物投与のためには、AUCssは、無限時間に定期的に用量を投与した場合の、ある投与期間の曲線下の面積である。AUCは、患者の血清サンプルの検定によって得られる。
【0114】
本明細書で用いられるとき、用語「Cmax」とは、薬物の血中又は血漿中ピーク濃度を指す。時間「tmax」とは、薬物の血中又は血漿中ピーク濃度に達するまでの時間を指す。用語「t1/2」は半減期であり、薬物の血漿中濃度が半減するまでにかかる時間を指す。
【0115】
APAP/トラマドールの血漿中濃度は、検証されたLC/MS/MS法を用いて決定される。血漿中濃度−時間曲線は、各ボランティアについて生成され、それを元に、投与後第1日の一次パラメータ(Cmax、Tmax、AUC0〜12hr)と、定常状態での2次パラメータ(Cmax(ss)、Tmax(ss)、AUC0〜12h,ss、及びt1/2)とを、WINNONLIN(登録商標)5.2.1(合衆国カリフォルニア州Pharsight Co.)による無隔壁分析を用いて決定する。例えば生物学的同等性は、韓国及び合衆国食品医薬品局が設定した規制要件を用いて定義づけた(生物学的同等性の許容範囲は0.80〜1.25)。市販のULTRACET錠剤と生物学的に同等であるためには、同じ用量強度の市販のULTRACET錠剤に対する新しいER錠剤の定常状態平均Cmax比の90%信頼区間(CI)はa=0.05で80%〜125%(すなわち0.8〜1.25)でなくてはならず、市販のULTRACET錠剤に対する新しいER錠剤の平均AUCss比の90%信頼区間(CI)は80%〜125%でなくてはならない。
【0116】
合計12人のボランティア被験者が試験を完了した。ボランティアの平均年齢は24.4+/−5.2才であり、平均体重は65.1+/−6.0kgであった。市販のULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤の投与後のトラマドールの薬物動態パラメータの(SDでの)平均値を下の表14及び表15に示す。
【0117】
【表19】
1)中央値[最小−最大]
【0118】
【表20】
1)相加平均±標準偏差
2)対数変換した幾何平均±標準偏差
3)ER対ULTRACET幾何平均の比相加値は、実際の被験者データから得た。しかし、生物学的同等性は、相加平均を幾何平均に変換し、90%信頼区間での幾何平均の差によって決定した。
【0119】
図36は、ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のトラマドールの平均血漿中濃度−時間プロファイルを部分的に示す。グラフで棒は標準偏差を表す。黒丸データポイントの曲線はERデータを表し、約12時間毎のピークを示す。丸データポイントの曲線はULTRACETデータを表し、約6時間毎のピークを示す。
【0120】
市販のULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤の投与後のAPAPの薬物動態パラメータの(SDでの)平均値を下の表16及び表17に示す。
【0121】
【表21】
1)中央値[最小−最大]
【0122】
【表22】
1)相加平均±標準偏差
2)対数変換した幾何平均±標準偏差
3)ER対ULTRACETの幾何平均比
【0123】
図37は、ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のAPAPの平均血漿中濃度−時間プロファイルを部分的に示す。グラフで棒は標準偏差を表す。黒丸データポイントの曲線はERデータを表し、約12時間毎のピークを示す。丸データポイントの曲線はULTRACETデータを表し、約6時間毎のピークを示す。
【0124】
上記in vivoの試験の分散分析データの分析(図36及び図37のデータを含む)は、研究されている薬物動態パラメータへの、製剤、期間、又はシーケンスの有意な影響を示さなかった。Cmax,ss及びAUC0〜12h(ss)の値での処置比の90%CIは、それぞれ、トラマドールでは0.87及び0.95であり、APAPでは0.85及び0.94であった。.全て、標準の生物学的同等性の許容範囲である0.80〜1.25の範囲内であった。選択された健常ボランティア母集団での、このin vivoの試験で、市販のULTRACET錠剤と新しい長期放出製剤とでCmax,ss及びAUC0〜12h,ssに統計的に有意な差はなく、これらの生物学的同等性が見出された。更に、どちらの製剤もよく忍容された。本試験で、副作用は報告されなかった。このように、本発明の新しいER製剤が市販のULTRACET錠剤とin vivoで生物学的同等性を示したことから、それらは市販のULTRACET錠剤と生物学的に同等なやり方で、人の疼痛の処置のために効果的かつ有効な治療効果をもたらすべきである。
【0125】
本発明の実践は、別途記載されない限り、当業者である製薬学的製品開発者が使用する従来の方法を使用する。本発明の実施形態について、具体的に説明してきた。実施形態は、本発明の全ての面において制限的でなくむしろ例示的であることが意図される。当業者は本発明の範囲から逸脱せずに本明細書に開示したスキームの様々な部分及び構成要素の様々な組み合わせ及び置換を実施することができるものと理解されたい。また、他の生物活性剤及び他の賦形剤を製剤に含めることもできると想到される。更に、物質が特定の成分を含むという説明では、基本的にそれらの成分からなる物質も製造されると想到される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の長期放出に関する。特定すると、本発明は、アセトアミノフェンとトラマドールの併用剤の長期放出投与形態に関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛及び変形性関節症の炎症痛のような慢性疼痛は、個人の深刻な苦痛、経済生産性の多大な損失、及び社会全体に与える多額の直接的・間接的費用を引き起こす大きな健康問題である。合衆国の成人のおよそ60%〜80%は、生涯の間にある程度の期間、慢性の腰痛を患うと予測される。現在、多くの国々では、高齢化に伴い、疼痛の懸念は増大している。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、慢性疼痛の処置のために一般的に使用されているが、効能に限りがある。更に、NSAIDはしばしば、胃腸病、潰瘍形成、出血、更には死さえも含む、健康上の実質的な危険因子を伴う。したがって、これらの慢性疼痛の処置のための医療上の改善された処置の必要性がある。
【0003】
トラマドール(2−(ジメチルアミノメチル)−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オル、C16H25NO2)は中枢作用性鎮痛剤であり、一方、NSAIDは末梢作用性鎮痛剤である。トラマドールの作用形態は完全には理解されていないが、in vivoの結果は、親分子及びその代謝産物とミューオピオイド受容体との結合、並びにノルエピネフィリン及びセロトニンの再取り込みの阻害の弱さという二重機構を示唆している。例えばTYLENOLブランドでよく知られているアセトアミノフェンすなわち(N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、C8H9NO2)(又は「APAP」)は、長年にわたり疼痛の処置のための鎮痛剤の第一選択肢である。APAPの作用機構はなお不確かではあるが、CNSにおけるプロスタグランジン合成の選択的阻害、N−メチル−D−アスパラギン酸又はP媒介性酸化窒素合成、及び脊髄におけるプロスタグランジン−E2の阻害が関与する中枢媒介性であると、やはり考えられる。
【0004】
トラマドール及びAPAPは併用剤として送達されてきた。合衆国特許RE39221号は、この併用が、トラマドール材料とAPAPのいずれかを単独で使用した場合、同量の鎮痛剤を生産するために必要となるよりも少ない量でそれら両方を使用することを記述している。Ortho−McNeil Pharmaceuticalが開発した同社専売の経口即時放出型投与形態のトラマドール/APAP(37.5/325mg)併用剤(ULTRACET)は、急性疼痛管理用に2001年にFDA(合衆国食品医薬品局)によって承認された。この製品は、NSAIDの使用に伴う胃腸潰瘍又は出血のような副作用を示さない。加えて、臨床試験では、APAPより長い作用持続期間を有し、トラマドールより速効性がある、この併用による相乗効果が実証された。ULTRACETの場合、用量を4〜6時間毎に摂取しなくてはならない。
【0005】
アセトアミノフェン(本明細書ではAPAP)(Mw 151.163g/モル)及びトラマドール(本明細書ではTRDとも呼ばれる)(Mw 263.375g/モル)は、それぞれ、pKa値9.38及び9.41を有する弱塩基である。APAPの水性溶解度は約14mg/mLであるが、トラマドールHClは水に完全に可溶性である。経口投与の後、APAP及びトラマドールHClは急速に吸収され、どちらの薬物も有意な初回通過代謝を経る。投与形態の投与後のAPAPの吸収は主に小腸で生じるが、良好な大腸吸収もまた生じるようである。APAP(McNeil Consumer HealthcareのTYLENOL(登録商標)ER)の長期放出型(ER)経口投与形態は1995年に市販化された。この2層マトリックス錠剤は、即時放出層の325mgのAPAPと追加的な長期放出層の325mgのAPAPとを含む。APAPの長期放出は、親水性のポリマーマトリックスにおける薬物拡散を制御することによって達成される。
【0006】
トラマドールに関しては、トラマドールHCl ULTRAM(登録商標)ER及びトラマドールHCl CONTRAMID(登録商標)OADの現在の長期放出型投与形態の生物学的利用能は、低い胃腸管での許容可能な吸収を意味する。これらの2つの製品は、24時間にわたり有効な疼痛制御を、便利な一日一回の形式で提供する。ULTRAM(登録商標)ER製品は、半透過性ポリマーと水溶性透過補助剤との混合物でコーティングされたコアを有する。錠剤からのトラマドールHClの徐放は、コーティング膜を制御することによって達成される。CONTRAMID(登録商標)OADは、圧縮コーティングされたマトリックス錠剤である。コアマトリックスは、ゆっくりとした放出をもたらす架橋された高アミラーゼ澱粉であり、一方、圧縮コーティングは比較的速い放出をもたらす。
【0007】
しかし、TYLENOL(登録商標)ERでの親水性ポリマーマトリックスのアプローチ、又はULTRAM(登録商標)ER及びCONTRAMID(登録商標)OADでのコーティングされた錠剤のアプローチのいずれかを用いる、APAP/トラマドールHCl併用剤の長期放出投与形態の開発には、技術的課題がある。トラマドールHClのような非常に水溶性の薬物では、その親水性ゲルネットワークを介して溶解した薬物の急速な拡散のために、親水性マトリックスシステムでの望ましくない薬物破裂がしばしば観察される。また、2つの薬物の水溶性に大きな差があると、APAPとトラマドールHClとの両方の同時放出を達成する長期的放出をもたらすためのコーティングの使用が、非実用的になる。例えば、WO2004026308号及び合衆国公開特許US20040131671号で、APAPとトラマドールの長期放出をもたらす試みがなされてきた。しかし、上手く調整された放出の達成は困難である。必要なのは、2つの薬物の放出の累積重量百分率の差があまりないように、長期間にわたる2つの薬物の同時(又は調整された)放出を送達することができるトラマドール及びAPAPの長期放出投与形態である。本明細書に記載される全ての参照、特許、及び出版物は、参照によりそれらの全てがここに組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、APAP及びトラマドールの長期送達のための方法及び投与形態を提供する。本発明の投与形態では、トラマドールとアニオン性ポリマー間の薬物/ポリマーイオン相互作用は、トラマドールの徐放をもたらし、APAP及びトラマドールの調整された放出をもたらす。
【0009】
一態様では、本発明は、APAP及び複合化されたトラマドール材料を含有する製薬学的組成物を提供し、この組成物は、患者の経口投与で生じるような溶解に際して、調整された持続的放出を呈し、経時的に調整されたトラマドールの蓄積(すなわち累積)放出及びAPAPの蓄積放出をもたらす。この組成物は、錠剤又は錠剤の一部であってよく、胃腸管にあるとき、徐々に崩壊して、調整された放出プロファイルのトラマドール及びAPAPを放出する。好ましくは、この組成物は複合化されたトラマドール材料を含み、この複合化はカラギーナンを用いて行われる。トラマドールは、好ましくはトラマドール塩であり、より好ましくは塩酸(HCl)塩である。
【0010】
別の態様では、複合化されたトラマドール材料及びAPAPを含有する組成物は、4〜12時間にわたり、特定すると6時間以上〜12時間にわたり、トラマドール及びAPAPの両方のためにその投与形態が設計された持続的送達の全期間にわたり持続的放出をもたらす。有能な規制当局(例えば、USFDA(合衆国食品医薬品局))によって薬物が患者を治すために認可されるとき、投与形態は、投与量を定期的に投与間隔で摂取するものとして承認されることに注意されたい。したがって、投与形態の用途及び認可によってその投与形態の設計上の投与期間が特定される。
【0011】
一態様では、本発明は、製薬学的組成物の投与形態の製造方法を提供し、この方法は、複合化されたトラマドール材料を形成せしめる工程と、複合化されたトラマドール材料及びAPAPを含む圧縮形状を形成せしめる工程とを含む。圧縮形状は、患者に経口投与されると、調整された持続的放出を呈し、トラマドールの調整された蓄積放出及びAPAPの蓄積放出を経時的にもたらす。組成物は、トラマドール及びAPAPの持続的で調整された長期的放出(ER)を提供する錠剤、又は錠剤の一部(層など)であってよい。一態様では、投与形態は、APAPとトラマドール複合体とを含有する長期放出(ER)層と、APAP及び複合化されていないトラマドールとを含有する即時放出(IR)層との2つの層が互いに共に接着された2層錠剤であってよい。別の態様では、投与形態は、APAPとトラマドール複合体とを含有するER材料を含むことができ、APAPと、複合化されていないトラマドールとのIR層によって全側面が囲まれている又は両側が挟まれている。
【0012】
一態様では、本発明は、疼痛の処置のための薬剤製造のための複合化されたトラマドール材料の使用と、この薬物で疼痛を処置する方法と、を提供する。この薬物は、複合化されたトラマドール材料及びAPAPを含有し、患者への経口投与によるような薬物の溶解の際にトラマドール及びAPAPの調整された持続的放出を呈し、結果的に、調整されたトラマドールの累積放出及びAPAPの累積放出を経時的もたらす。
【0013】
我々は、特定のアニオン性ポリマー(特にカラギーナン)が薬物の溶解性及び拡散性、又は溶解を低減し、トラマドールの持続的かつ長期的放出をもたらすことを発見した。したがって、カラギーナンで複合化したトラマドールとAPAPとの併用は、薬物の累積放出百分率に関して、APAPの放出プロファイルとかなり一致するトラマドールの持続的な放出をもたらした。これら2つの薬物の長期的な調整された送達は、頻繁な投与並びにAPAP及びトラマドール血漿中濃度の大きな変動が必須である従来の入手可能な投与形態に勝る有意な利点を提供する。持続的又は長期放出型製剤からの薬物の放出は、2つの異なる薬物の制御放出に依存し、制御されないと、それらの薬物のうち1つは、通常、もう一方より速く放出される。急速に放出される薬物の放出を遅延させて比較的徐放性の薬物の放出と一致させることができるかどうかは予測不可能である。したがって、選択されたアニオン複合化ポリマー(特にカラギーナン)の使用によって、APAPとトラマドールの放出がかなり一致した長期放出の達成が可能となることは、驚くべきことであった。我々は、複合化によって放出動態を修正することができ、フィッキアン拡散(Korsmeyer式においてn=約1.14cm(0.45インチ))から、よりゼロ次放出(Korsmeyer式においてnが1に近づく)になり、放出速度も遅らせることができることを発見した。したがって、カラギーナン(特にλカラギーナン)でトラマドールを複合化することは、トラマドールとAPAPの放出速度のギャップを減少し、それによって、それらの放出速度を同期化する。この製剤は、好ましくは、複合化剤であるカラギーナンの他に放出遅延剤として2つの他の賦形剤(PEO及びHPMC K4M)を含有することができる。PEOがないと、この複合化混合物を錠剤に圧縮することがラミネーション及び/又はキャッピングによって難しくなり、圧縮されたときに適正な硬度を達成することが難しい。また、PEOを用いずに圧縮されたER錠剤は、たとえそれらの薬物がカラギーナン複合体と同期化されていても、PEOを用いるものと比べて溶解中により低いゼロ次動態特性を示す。したがって、PEOは、APAP及びトラマドールのゼロ次に近い放出動態を提供すること、並びにより良い圧縮性及び製造可能性を提供することを補助する。また、HPMC K4Mが錠剤の圧縮性に寄与し、APAPとトラマドールの両方の持続的放出を改善することも発見された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明によるAPAPとトラマドールの2層錠投与形態の一部分の断面図。
【図1B】ER層が本発明によるIR層によって囲まれている、APAPとトラマドールの錠投与形態の別の実施形態の断面図。
【図1C】ER層はIR材料の層間に挟まれている、APAPとトラマドールの錠投与形態の別の実施形態の断面図。
【図2】トラマドールが複合化されているマトリックスからと、トラマドールが複合化されていないマトリックスからとの、APAP/トラマドール併用剤の放出プロファイル。
【図3】異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイル。
【図4】異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイル。
【図5】異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイル。
【図6】HPMCの効果を例示するためにAPAPのT80対トラマドールの持続比。
【図7a】トラマドールとカラギーナンとの複合体を有する場合と有さない場合の影響を図示する、それぞれ組成物F及びGに関するトラマドール及びAPAPの放出プロファイル。
【図7b】トラマドールとカラギーナンとの複合体を有する場合と有さない場合の影響を図示する、それぞれ組成物F及びGに関するトラマドール及びAPAPの放出プロファイル。
【図8】ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、F−No.2〜F−No.5の4つの製剤のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図9】ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、図8のF−No.2〜F−No.5の4つの製剤のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図10】IR及びERの2層投与形態を仮定した、ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、図8のF−No.2〜F−No.5の4つの製剤のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図11】IR及びERの2層投与形態を仮定した、ラクトース、AEROSIL、及びポリエチレンオキシドのような充填剤を有する、図8のF−No.2〜F−No.5の4つの製剤のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図12】製剤F−No.6のAPAP及びトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図13】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.6のAPAPとトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図14】製剤F−No.7及び製剤F−No.8のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図15】製剤F−No.7及び製剤F−No.8のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図16】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7及び製剤F−No.8のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図17】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7及び製剤F−No.8のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図18】製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図19】製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図20】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図21】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.7、製剤F−No.9、及び製剤F−No.10のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図22】製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図23】製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図24】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図25】IR及びERの2層投与形態を仮定した、製剤F−No.10、製剤F−No.11、及び製剤F−No.12のトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図26】異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図27】異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図28】IR及びERの2層投与形態を仮定した、異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図29】IR及びERの2層投与形態を仮定した、異なるpHの緩衝液及び蒸留水での製剤F−No.10からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図30】異なる溶解攪拌速度(rpm)での、製剤F−No.7からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図31】異なる溶解攪拌速度(rpm)での、製剤F−No.7からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図32】IR及びERの2層投与形態を仮定した、溶解中の異なる攪拌速度(rmp)での製剤F−No.7からのAPAPの放出プロファイルのグラフ。
【図33】IR及びERの2層投与形態を仮定した、溶解中の異なる攪拌速度(rmp)での製剤F−No.7からのトラマドールHClの放出プロファイルのグラフ。
【図34】50rpmでのF−No.13の溶解プロファイルを、最初の2時間はpH1.2緩衝液で、それ以降12時間まではpH 6.8緩衝液で、F−No.13からの(a)APAP及び(b)トラマドールHCl。
【図35】F−No.13の2層錠剤の実施形態を製造するための製造プロセスの工程図。
【図36】ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のトラマドールの平均血漿中濃度−時間プロファイルの部分的なグラフ。
【図37】ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のAPAPの平均血漿中濃度−時間プロファイルの部分的なグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、APAP及びトラマドールを患者に経口投与により調整送達する投与形態に関する。より具体的には、本発明は、長期送達において胃腸管を介して患者にAPAP及びトラマドールを調整送達する投与形態に関し、その送達中、投与形態は崩壊し、薬物は長期にわたって徐々に放出される。
【0016】
本発明を説明するに当たり以下の用語が使用されるが、それらの用語は次のように定義されるものと意図される。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0017】
本明細書で用いられる用語「トラマドール」は、別段の指示がない限り、イオン相互作用によってカラギーナンと複合化されるカチオン性を有するトラマドール塩基、トラマドール塩、又はトラマドール誘導体を意味することができる。本明細書において言及されるトラマドールの量は、トラマドールHCl等価を指す。
【0018】
「生物活性剤」は、その最も広範な意味において解釈されるべきであり、何らかの生物学的効果、便益効果、治療効果、あるいは、透過、鎮痛、及び避妊のようなその他の意図される効果をもたらすことが意図される任意の材料を意味する。本明細書で用いられる用語「薬物」は、何らかの生物学的効果、便益効果、治療効果、又は他の意図される効果をもたらすことが意図される任意の材料を指す。
【0019】
図1Aは、2層錠剤、すなわち2つの層を有する錠剤の描出された概略断面図である。2層錠剤では、例えば1つの層がもう1つの層の上に乗るようにして、2つの層は直接及びじかに接触することができる。一実施形態では、錠剤20は、即時放出(IR)層22と共に接続された長期放出(ER)層24(トラマドール複合体粒子28を含む)を含む。この投与形態は、製薬学的有効成分(API)(APAP及びトラマドール)を有する2層のみを有する。別の実施形態では、図1Aに示した構造は、図1Bに示した形態の断面全体の一部分である場合がある。形態は、従来の丸薬形、細長い錠投与形、球形、キュウリのような形などであってよく、本明細書では、「錠剤」という言葉を別段明確に特定しない限り、便宜上「錠剤」と呼ぶ。図1Bに示した形態では、錠剤30は、即時放出(IR)層22に囲まれた長期放出(ER)層24(トラマドール複合体粒子28を含む)を含む。したがって、ER材料は、IR層に囲まれたコア(好ましくは層形状又は錠投与形態状)であってよい。更に、錠剤は、図1Cに示した錠剤40のように、2つのIR層に挟まれたER層を有してもよい。任意の形態の錠剤は、追加的に、外郭コーティング(又は、図1A〜1Cには図示していないが、コート)を含むことができる。外郭コーティングは、IR層22と、IR層によって囲まれていない任意のER材料とを囲むことができる。
【0020】
一態様では、本発明の投与形態は、長期放出において、ある期間にわたりゆっくりとAPAP及びトラマドールを放出する固形の圧縮形態を含む。例えば、この固形の圧縮投与形態は、2層錠剤のうちの1つの層、又は速放(又は即時放出)性の外郭層によって囲まれたコアであってよい。概して、この固形の圧縮形態は、トラマドールの活性部分をゆっくりと放出して胃腸管に吸収される複合化されたトラマドール材料を含む。塩基性薬物とカラギーナンとの複合体形成は、Aguzziら「Influence of Complex solubility on Formulations based on Lambda Carrageenan and Basic Drugs」、AAPS PharmSciTech 2002;3(3)Article 27に記述されている。
【0021】
複合化されたトラマドール材料は、トラマドール塩基又はその塩若しくはエステルであり得るトラマドール材料を含む。トラマドール材料は、(1R、2R又は1S、2S)−(ジメチルアミノメチル)−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサノール(トラマドール)、そのN−酸化物誘導体(「トラマドールN−酸化物誘導体」)、及びそのO−デスメチル誘導体(「O−デスメチルトラマドール」)又はその混合物のいずれか1つである。また、個々の立体異性体、立体異性体の混合物(ラセミ化合物、トラマドール材料の塩酸塩、例えば、クエン酸塩、酢酸塩、溶媒和物、及び多形体のようなアミンの薬物として許容される塩)もまた含まれる。トラマドールは、Grunenthalから市販されている。トラマドールの製造方法は、参照により本明細書に組み込まれる合衆国特許第3,652,589号及びRE39221号に記述されているように当該技術分野で既知である。O−デスメチルトラマドールは、O−デスメチル化反応条件下で遊離基としてのトラマドールを処理することによって、例えばNaOH又はKOH、チオフェノール、及びジエチレングリコール(DEG)のような強塩基と還流加熱により反応させることによって、調製される。WildesらJ.Org.Chem.,36,721(1971)を参照のこと。トラマドール材料をアニオン性ポリマーと複合化するには、トラマドールHClが好ましい。トラマドール塩基又はトラマドールと関連する他のトラマドールの塩(例えば異なるハロゲン塩など)の使用は、トラマドールとカラギーナンの複合体形成にあまり影響しないので、結果的に得られるER錠剤の放出速度に有意な差をもたらさないと考えられる。当業者は、不要な実験を伴わずに、本記述に基づいて適宜製剤を調整することができるであろう。
【0022】
複合化されるポリマーは水溶性、ゲル形成性、及びアニオン性であり、硫酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、又は他の負電荷の基のようなペンダント基を含有し、カチオン性薬物と相互作用する。好ましくは、この複合化されるポリマーは、ペンダントアニオン基を有する多糖類系の材料(言い換えれば、アニオン性多糖類、特に硫酸化多糖類)である。特に好ましいのはカラギーナンである。カラギーナンは、海草から得られる硫酸化多糖類である。概して、カラギーナンのタイプとしては、κ、ι、λが含まれ、これらは全て、室温で水とのゲルを形成せしめる。異なるタイプのカラギーナンは、異なる柔らかさ又は硬さの特性のゲルを形成せしめることができる。λ−カラギーナンと塩基性薬物との複合化は、参照により本明細書に組み込まれるAguzziらの文献(AAPS PharmSciTech 2002;3(3)Article 27)に記述されている。
【0023】
複合化されるポリマーは、生体適合性かつ無毒性である。複合化されるポリマーは十分に高分子量であり、ゲルはその活性剤とともに調製され得る。特定の理論に束縛されることは望まないが、カチオン性薬物はアニオン性ポリマーのアニオン性ペンダント基と相互作用し、ポリマーストランド間に静電相互作用を引き起こし、極性溶媒(例えば水)のトラマドールへの浸透を遅らせるようにポリマーストランドが位置づけられるようにすると考えられる。概して、λカラギーナンのMWは100,000〜500,000ダルトンである。2種類の粘度のλカラギーナンが市販されている。1つは、FMCからのVISCARIN(登録商標)GP 109(37℃で測定値約760cPsという低粘度であり、せん断速度は20s-1)であり、もう1つは、VISCARIN(登録商標)GP 209(37℃で測定値約1600cPs、高密度、せん断速度は20s-1)である。この研究では、VISCARIN(登録商標)GP 109がより有用であることが見出されたカラギーナンの好ましいグレードは、低分子量のλカラギーナンである。κカラギーナンのようなその他のカラギーナンを使用してもよい。λカラギーナンは、類似体のκ及びι型と比べて硫酸塩基の量が最も高いことによって特徴付けられる。λカラギーナンは高い可溶性の薬物と強く相互作用し得ることが実証されており、我々は、λカラギーナンがトラマドールと非常に良く相互作用することを示した。下表は、トラマドール放出を遅延するためのトラマドールとの複合化剤としてカラギーナンが有効であることを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上の表1に記載されているように、λカラギーナンは最も低い値のT80比を有していた(1.4)。T80は、APAP(及び同様に、薬物がトラマドールの場合はトラマドール)の累積溶解が80%に達する時点を意味する。T80比はAPAPのT80/トラマドールのT80である。λカラギーナン製剤で最も低い値のT80比(1.4)が得られたということは、2つの製薬学的有効成分(API)すなわち薬物の間の溶解のギャップが、この製剤で最も効果的に削減されたことを意味する。比較として、T80比は、κカラギーナンを用いる製剤では2.0であり、エチルセルロース(EC)を用いる製剤では2.2であり、複合化されていない製剤では2.4であった。したがって、エチルセルロースもまた、遅延剤として作用し得るが、カラギーナンほど効果的ではない。λカラギーナンの拡散指数n(下記に説明)もまた、より高いゼロ次特性を示した。
【0026】
トラマドールとの複合化に使用し得る他のアニオン性材料としては、アルギン酸、カルゴキシメチルセルロースなどが挙げられる。しかし、そのような他のアニオン性材料はカラギーナンより弱い複合化力を有する。硫酸デキストランを含む他の硫酸化又はスルフォン酸化多糖類又はポリマー又は強カチオン交換樹脂(AMBERLITE IRP69)を、トラマドールの複合化のためのアニオン性材料とすることもできる。
【0027】
トラマドール複合体を形成せしめる際、トラマドール材料対(カラギーナンのような)アニオン性ポリマー材料の重量比は、概して、約1:0.1から約1:100、好ましくは約1:0.5〜約1:10の範囲である。
【0028】
圧縮化される固形投与形態では、APAP及びトラマドール材料は、概して、APAP対トラマドール材料が約20:1〜1:1、好ましくは約5:1〜10:1、更により好ましくは約6:1〜9:1の重量比で存在する。更に、即時放出(IR)層では、APAP及びトラマドール材料は、概して、APAP対トラマドール材料が約20:1〜1:1、好ましくは約5:1〜18:1、更により好ましくは約10:1〜16:1の重量比で存在する。我々は、そのような範囲のAPAP対トラマドール比が単一の錠剤で非常に近い重量%累積放出比を伴いそれら2つの薬物の調整された送達をもたらし、送達の最初の1時間以内に実質的に30重量%累積放出超過をもたらし、約12時間の長期送達を持続することを見出した。
【0029】
ER材料に付着するために使用できるIR層は、APAP、トラマドール、及び賦形剤(崩壊剤、結合剤、充填剤など)を含むことができる。ステアリン酸マグネシウム、粉末セルロース、コーンスターチ、ゼラチン化デンプン、ナトリウムデンプンのような材料を使用してもよい。ゼラチン化デンプン、ポリビニルピロリドン、ガムなどのような容易に可溶な結合剤は、製剤が水性環境に入るまで、異なる成分を一時的に共に保持すること補助する。そのような結合剤は急速に可溶化し、IR層が離れて薬物を放出することを可能にする。グリコール酸ナトリウムデンプン、粉末セルロース、繊維状セルロース、及びシリカのような崩壊剤は、結合剤が溶け出すにつれて層が容易かつより均一に崩壊するのを助ける。ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマレートのような潤滑剤を使用してもよい。
【0030】
ER層に関しては(その隣のIR層を無視して)、トラマドールの累積放出が40重量%のときに、トラマドールの累積放出とAPAPの累積放出との差が25重量%未満である放出を達成することができた。我々はまた、トラマドールの累積放出が40重量%のときから始まる持続的放出において、APAPの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が20重量%を超すことが決してない放出を達成することができた。我々はまた、トラマドールの累積放出(重量%としての)が40重量%のとき、APAPの累積放出(重量%)とトラマドールの累積放出(重量%)との差が10重量%を超すことが決してない放出を達成することができた。我々は、更に、少なくとも12時間の持続的放出での最初の1時間の後の持続的放出において、APAPの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が10重量%を超すことが決してない放出を達成することができた。持続的放出での累積放出は、合衆国薬局方装置II(USP II)パドル法により、in vitroで、50rpm/900mL、37℃、pH 6.8の緩衝液中にて溶解することによって決定し得る(標準USPの擬似腸液、無酵素)。
【0031】
本発明による、(2層錠剤の層の1層のような)錠剤の部分は、好ましくは、粒子の圧縮プロセスによって調製され、これらの粒子又は顆粒は、製薬学的有効成分及び存在し得る他の賦形剤を含有する。長期放出層の材料は、図1Aなどに示されているような圧縮化された単位に圧縮されてから、即時放出層で覆われる。これらの粒子は、好ましくは約30μ〜3000μ、より好ましくは約100μ〜1000μ、最も好ましくは約150μ〜400μの平均粒径を有する。用語「粒経」は、概して、粒子の形が球形でないときは、粒子の、より大きい方の寸法を指す。
【0032】
好ましくは、トラマドール複合体は約30μ〜3000μ、より好ましくは約100μ〜900μ、最も好ましくは約150μ〜300μの粒径を有する粒子サイズを有する。
【0033】
長期放出層又はコアは、非水溶性の様々な材料を賦形剤として含有することができる。そのような非水溶性の材料の例としては、疎水性ポリマーであり得るポリマーが含まれる。有用な非水溶性材料の例としては、エチルセルロース、ブチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、ブチルセルロース等の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
ER層又はコアは、製薬学的有効成分と、有効成分の放出を制限する能力を有する少なくとも1つの化学物質と、その他の成分とを混合することによって生成され得る。例えば、ER層又はコアは、希釈剤、流動促進剤、結合剤、整粒溶剤、抗凝集剤、緩衝液、潤滑剤を含む広範な種類の賦形剤を含有することができる。例えば、任意により使用される希釈剤としては、1つ以上の砂糖(スクロース、ラクトース、マンニトール、ブドウ糖など);デンプン;微結晶セルロース;ソルビトール、マルトデキストリン、リン酸カルシウムなどカルシウム塩及びナトリウム塩;硫酸カルシウム;硫酸ナトリウム又は類似の無水硫酸塩;乳酸カルシウム;他のラクトース材料(無水ラクトースなど)、及びラクトース一水和物が挙げられる。好ましい1つの希釈剤はラクトースである。
【0035】
結合剤を使用して、(ER材料中の材料のような)材料を共に結合することができる。好適な結合剤としては、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、スクロース、ソルビトール,ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、ポリエチレンオキシド(PEO)などである代表的な材料の1つ以上が含まれる。HPMCは放出時間の延長を助ける傾向があるので、製剤への使用に好ましい。HPMC E5は、HPMC K4Mよりはるかに低い分子量を有し、結合剤として機能する。粘度は、2%溶液でHPMC E5では約5cpsであり、HPMC K4Mでは4000cpsである。この粘度の違いのため、結合剤としては、即時放出(IR)造粒ではHPMC E5が好ましく、長期放出製剤ではHPMC K4Mが好ましい。別の好ましい材料は酸化ポリエチレンである。製剤の薬物放出では、最初に水がポリマー中に浸透し、次いで、水の浸透に反応してポリマー鎖の弛緩が生じる。結果として、材料の膨張につれて薬物分子がポリマーを介して拡散する。HPMC及びPEOのような結合剤はまた、薬物への液体の浸透を阻害するゲルを形成せしめる特性も有するので、製剤からの薬物放出が遅延される。高分子量及び粘度のため、HPMC及びPEOは長期放出型製剤に有用である。
【0036】
潤滑剤及び抗凝集剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス、硬化植物油、ポリエチレングリコール、ナトリウム安息香酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及びdl−ロイシンの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。有用な潤滑剤はシリカ材料であり、例えばAEROSILは、粒径約15nmの極微小のヒュームドシリカであるコロイド二酸化シリコンとして市販されている。
【0037】
所望により、1つ以上の外郭コーティングを錠剤の上に適用して、包装及び取扱い中の保護並びに飲み込みの援助を提供することができる。そのような外郭コーティングは、即時放出層が内部の有効成分を迅速に放出するのを可能にするために、好ましくは迅速に崩壊する。コーティングは、1つ以上の錠剤コーティング材料を含むことができる。好適なコーティング材料としては、ゼラチン、糖類(例えば、単糖類、二糖類、多糖類(デンプン、セルロース誘導体など)が挙げられる。その他の有用なコーティング材料としては、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ポリアルキレングリコールなどのようなポリヘドリックアルコールが挙げられる。そのようなコーティング材料及びそれらの使用方法は、当業者には既知である。有用なコーティング材料の例は、SURELEASE及びOPADRY(どちらも、合衆国ペンシルベニア州West Point所在のColorconより入手可能)である。錠剤をコーティングする装置及び方法は、錠剤製造技術分野で周知である。更に、所望により、カルナバワックスのようなワックス材を表面仕上げに使用して、より光沢のある表面をもたらすことができる。
【0038】
本発明の投与形態錠剤を生産するプロセスは、錠剤を形成せしめるための従来の技法を使用する。一態様では、長期放出層は、長期放出材料で形成されてから、即時放出層で覆われ、所望により、1つ以上の外郭コーティングで覆われる。ER材料は、錠剤のコアでもまたあり得る。ER材料は、成分粒子を共に圧縮して圧縮形態にすることによって形成され得る。好ましくは、本発明の実施形態の圧縮形態は約4〜20KP/cm2の硬度を有する。更に、成分の微粒子又は顆粒形態は、低せん断造粒機、流動床造粒機、高せん断造粒機といった様々な種類の造粒機での造粒を含むことができる好適な技法の1つ以上のプロセスでの造粒によって形成され得る。
【0039】
本発明の錠剤は、当該技術分野で既知の任意の手段によって製造され得る。錠剤生産のための従来の方法としては、直接圧縮法(「ドライブレンディング」)、乾式造粒後に圧縮する方法、湿式増粒後に乾燥及び圧縮する方法が挙げられる。
【0040】
好ましくは、錠剤、又は錠剤の層は、直接圧縮法によって形成され、有効成分の配合物を直接に圧縮する工程を含む。例えば、配合した後、粉末配合物を錠剤プレス(例えばロータリープレス)の鋳型の窪みに充填し、プレスで材料を錠投与形態に押圧する。本明細書で使用されるとき、錠剤は、丸みのある矩形断面を有する従来の細長い形、球形、円盤丸薬形などの形を有することができる。材料は、好ましくは約2〜6KPの硬度(錠剤が乾燥しているときに約4KPが好ましい値である)の錠投与形に圧縮される。本発明では、IR若しくはERの層又は錠剤は、湿式造粒法によって圧縮されたものであり、硬度は6KP以上である。
【0041】
粒子を圧縮するために、粒子又は顆粒を生産後、十分な条件下で材料を乾燥して、好ましくは0.5重量%以下の水を有する顆粒を提供する。本発明では、IR及びER顆粒のLOD(乾燥による損失)範囲は、乾燥後に1.0%〜3.0%のレベルの水分をもたらす。材料は、約50℃である好ましい温度で乾燥することができる。好ましくは好適な時間、例えば12〜16時間にわたり、約40〜50℃の乾燥温度の範囲内で、溶剤及び/又は水のような液体を取り除く。実験室規模では、乾燥時間は12〜16時間である。工業規模では、流動床乾燥機を用いて、例えば約0.5〜2時間、乾燥時間を短縮することが可能である。
【0042】
2層錠剤では、1つの層をもう1つの層上に被覆することができ、例えば、IR材料の層をER層に、あるいはER層をIR層に、被覆すること又は付着することができる。同様に、IR材料の2層間に挟まれたER層を有する投与形態を、同じ方法で形成せしめることができる。同様に、錠剤が患者に治療的症状緩和のために即時放出及び持続的放出を提供するように、IR材料層の被覆層をコアの上に配置してERコアがIR層で囲まれているER錠剤を形成せしめることができる。
【0043】
錠剤製造において、層を有する錠剤、又は固体コアの周囲を囲む層を有する錠剤を形成せしめるための設備及び方法は、当該技術分野で周知である。例えば、長期放出コアのコア上の即時放出層は、様々な造粒プロセスによって達成され得る。更に、2層錠剤は、2層形成プレスを用いて製造することができる。2層錠剤を形成せしめる1つの方法は、1つの層のための顆粒又は粒子(例えばER材料)を圧縮して1つの層にし、次いで、その上にもう1つの層のための顆粒又は粒子(例えばIR材料)を圧縮して、2層の錠剤様の構造物を形成せしめることである。3層錠剤を形成せしめるには、第3の層(例えばIR層)を、2層の錠剤様の構造物の選択された側(例えばERの側)に圧縮することができる。
【0044】
概して、本発明の錠剤全体の有効成分のうち、APAPの約30重量%〜90重量%、好ましくは約40重量%〜80重量%、より好ましくは約50重量%〜70重量%は、錠剤のERコアにある。一方、概して、トラマドールの約30重量%〜100重量%、好ましくは約50重量%〜90重量%、より好ましくは約60重量%〜80重量%は、錠剤のERコアにある。治療効果のために薬物の血漿中濃度の迅速な上昇をもたらすために、APAP及びトラマドールの有効成分のバランスは、ER層の隣のIR層にあってよい。
【0045】
手順及び設備
以下に、本発明の投与形態の製造、評価、及び使用のために使用し得る典型的で代表的な設備及び手順を定める。代表的な例として、ラムダ(λ)カラギーナンが言及される。マトリックス錠剤は、湿式造粒法によって調製された。様々な製剤の詳細な組成は、以下に表示される表に記される。概して、この投与形態を製造するプロセスでは、トラマドールHClを60%エタノール溶液(1:1.5、w/v)中に溶解し、λカラギーナンを徐々に添加して複合体を調製し、攪拌棒を用いて広口容器内で混合して、トラマドールHCl溶液を得た。次いで、予め配合したAPAP/HPMC粉末を、その複合体と混合して、均質なウェットペーストを得た。このペーストを1.0mmメッシュスクリーンに通してから、一晩45℃で乾燥した。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュスクリーンに通してふるい、次いで、マトリックス形成ポリマー及び他の賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを含む)と配合した。19.5mm×8.5mmの楕円形パンチ及びダイセットを備えたロータリー錠剤プレスを用いてこれらの顆粒を圧縮し、それぞれ重量が約600mgの錠剤を得た。圧縮力は約20KNであり、錠剤の硬度は約7〜10KP、厚さは約3.9mmであった。調製物全てを室温で気密容器内に保管して、更に研究した。
【0046】
K5SSミキサー(Kitchen Aid(合衆国))を使用して、有効成分及び賦形剤の混合及び練り込みを行った。AR400型FGS(Erweka(ドイツ))造粒機を使用して化合物の造粒及びふるいを行った。ZP198ロータリー錠剤プレス(Shanghai Tianhe Pharmaceutical Machinery Co.,Ltd.(中国))を使用して、それぞれの錠剤を圧縮した。VK7000(VANKEL(ドイツ))溶解システムを使用して、圧縮錠のin vitroでの溶解試験を行い、LC−10A HPLC(SHIMADZU)を使用して定量分析を行った。溶解試験機は、USP I(バスケット)の方法とUSP II(パドル)の方法との両方に使用することができる。USPの溶解方法の説明は、「Dissolution」、The United States Pharmacopeia,30th ed.,pp.277〜284,The United States Pharmacopeial Convention,Rockville,MD(2007)に見出すことができる。当該技術分野では、USP I及びUSP IIのような溶解試験が、ヒト患者の胃腸管におけるin vivoでの薬物溶解の合理的な予測を与えることは既知である。FDAは、in vivoの相関合格(correlation successes)による経口製剤開発に要求される試験の1つとしてUSP溶解法を加えた。例として、(1)Dressman,Jennifer B.;Amidon,Gordon L.;Reppas,Christos;Shah,Vinod P,「Dissolution testing as a prognostic tool for oral drug absorption:immediate release dosage forms」の要約、Pharmaceutical Research(1998),15(1),11〜22,Plenum Publishing Corp.、(2)Shah,Vinod P.,「The role of dissolution testing in the regulation of pharmaceuticals:the FDA perspective」の要約、Pharmaceutical Dissolution Testing,(2005),81〜96,Taylor & Francis,Boca Raton,Florida、及び(3)Uppoor,V.R.S.,「Regulatory perspectives on in vitro(dissolution)/in vivo(bioavailability)correlations」の要約、Office of Clinical Pharmacology and Biopharmaceutics,FDA,CDER,Rockville,MD,USA、Journal of Controlled Release(2001),72(1〜3),127〜132,Elsevier Science Ireland Ltd.を参照のこと。
【0047】
典型的なカラギーナンはλカラギーナンである。λカラギーナン(VISCARIN(登録商標)GP109、VISCARIN(登録商標)GP209)は、FMC BioPolymersから入手した。HPMC 2910(METHOCEL(登録商標)K4M)、HPMC 2208(METHOCEL(商標)E5、METHOCEL(商標)E15)及びポリエチレンオキシド(POLYOX(登録商標)WSR N12K)は、COLORCONにより提供された。
【0048】
調製されたマトリックス錠剤のin vitroでの薬物放出の研究は、VK7000 Dissolution Systemを用いて12時間、USP II(パドル)の方法を使用して、50〜100rpm/900mLで37+/−0.5℃の条件下で、溶解媒体(pH 1.2、pH 4.0、pH 6.8の緩衝液及び蒸留水をUSPにしたがって調製)を用いて行った。pH 6.8の緩衝液は無酵素のUSP擬似腸液(SIF)と同じ組成であり、pH 1.2緩衝液は無酵素のUSP擬似胃液(SGF)と同じ組成であり、pH 4.0緩衝液は0.05モル/Lの酢酸と0.05モル/L酢酸ナトリウムとで製造し、pH 4.0に調製したものである。溶解媒体サンプル(pH 1.2、pH 4.0、pH 6.8の緩衝液及び蒸留水)を定期的間隔で取り出して、0.45μmの膜でろ過し、放出媒体中のトラマドールHCl及びAPAPの濃度を次のような条件でHPLCによって測定した。Xterra RP8(4.6×5.0mm、5μm、Waters(合衆国))をHPLC分析用カラムとして使用し、0.5%のNaCl水溶液/メタノール(85/15)溶液を移動相として使用した。移動相の流速は1mL/分であり、噴射量は10μLであった。SHIMADZU SPD−10A紫外線検出器を検出器として使用し、検出波長を275nmに設定した。
【0049】
サンプルに存在する薬物の量は、関連基準から構築された適切な較正曲線を用いて計算した。特定の期間に溶解された薬物を、放出率(%)対時間の曲線としてプロットした。溶解データは、高分子システムからの薬物放出挙動を記述するために当該技術分野で使用される以下の周知の指数方程式(数学モデリングでのKorsmeyer式)にしたがって適合した。
【0050】
Mt/M∞=ktn
式中、Mt/M∞は、時tでの分画薬物放出であり、kは高分子量高分子システム及び薬物を組み込んだ放出速度定数であり、放出指数の規模「n」は薬物放出機構を示す拡散指数である。錠剤の値n、n=0.45は古典的なフィッキアン(ケースI、拡散制御された薬物放出)を示し、0.45<n<0.89は非フィッキアン(異常、薬物拡散及びポリマー浸食放出)を示し、ケースIIではn=0.89(ゼロ次、浸食制御された放出)であり、n>0.89はスーパーケースII放出タイプ(super case II type of release)を示す。異常輸送(非フィッキアン)(non-Fickian manner)は、拡散及び浸食制御された薬物放出の両方の組み合わせを指す。
【0051】
モデルから独立したアプローチ、すなわち、溶解効率(DE)及び平均溶解時間(MDT)もまた使用して、調製された製剤による薬物放出の程度及び速度の差を比較し、そのプロファイルの差を単一の値にする。
【0052】
【数1】
これは、特定の時tまでの溶解曲線の下の区域として定義され、同じ時間での100%の溶解によって記述される矩形の区域の百分率として表現される。MDTは溶解速度の尺度であり、MDTが高いほど放出速度は遅い。
【0053】
【数2】
式中、iは溶解サンプル番号変数であり、nは溶解のサンプル番号の総数であり(the number of dissolution sample times)、tmidはサンプリング時iとi−1との間の中間点の時であり、ΔMはiとi−1との間に溶解された薬物の量である。
【実施例】
【0054】
以下の実施例では、トラマドールHClすなわちラセミのシス−(2−(ジメチルアミノメチル)−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オル、C16H25NO2)HClを使用して複合体を形成した。トラマドールHClの光学回転試験では、線形偏光での回転はなかった。しかし、複合化は、トラマドールのカチオン性と、硫酸基を有するカラギーナンとの相互作用であるので、トラマドールHClの他の鏡像異性体もカラギーナンと同じように複合化できると期待される。
【0055】
実施例1 トラマドール複合体の調製
最初に、1グラムのトラマドールHClを2mLの脱イオン水に溶解する。その結果得られる薬物溶液は、酸性のpHであった。次いで、λカラギーナン(FMCからのVISCARIN GP−l 09)0.8gをこの薬物溶液に添加して、約5分間、すり鉢・すりこぎセットを用いて練和して、トラマドール複合体ペーストを形成せしめた。このペーストを一晩、40℃の炉内で乾燥した。次いで、すり鉢すりこぎセットを用いて、乾燥した複合体を粉砕し、40メッシュスクリーンに通した。HPLCを用いて、複合体のトラマドール含有量を測定した。目標とするトラマドール対カラギーナンの重量比は1.0/0.8とした。
【0056】
実施例2 トラマドール複合体の調製
トラマドール対カラギーナンの重量比を1.01/1.0としたことを除き、実施例1の複合体調製手順をこの実施例でも繰り返した。
【0057】
実施例3 トラマドール複合体の調製
トラマドール対カラギーナンの重量比を1.01/1.25としたことを除き、実施例1の複合体調製手順をこの実施例でも繰り返した。
【0058】
実施例4 複合化されたトラマドールと複合化されていないトラマドールの放出
最初に、表2に記載されている賦形剤を40メッシュスクリーンに通した。次いで、表2に示した組成にしたがって、スクリーンに通したそれらの賦形剤と、実施例1で調製したトラマドール複合体又は遊離トラマドールとを乾式混合した。約1メートルトンの圧縮圧下で、0.71cm(9/32インチ)の工具を用いて、乾式混合された材料をそれぞれ600mgずつ錠剤に圧縮した。1メートルトンの圧力は57Mpaに相当する。
【0059】
【表2】
【0060】
トラマドール及びAPAPの両方とも、放出プロファイルは擬似腸液(標準pH 6.8 USP、無酵素)にて、USP Iの方法を用いて50rpmで測定した。放出媒体におけるトラマドール及びAPAPの濃度は、HPLC法を用いて測定した(85:15、v/v、水中O.5%NaCI:MeOHの移動相による、Waters XTerra RP8、5μm、4.6×50mm)図2は、トラマドールが複合化されたマトリックス、及びトラマドールが複合化されていないマトリックスの、APAP/トラマドール併用剤の放出プロファイルを示す。黒丸のデータポイントの曲線は製剤AのAPAPのデータ、白丸のデータポイントは製剤Aのトラマドールのデータ、黒三角は製剤BのAPAPのデータ、白三角は製剤Bのトラマドールのデータである。データは、薬物の80%が放出されるまでの時間として定義されるT80に基づき(トラマドールは7.3時間、APAPは17.7時間)、トラマドールの放出速度がAPAPの放出速度よりはるかに速いことを示している。これら2つの薬物間の放出持続時間にはギャップがあり、T80比は2.4であった。トラマドールをカラギーナンと複合化した製剤Bでは、放出持続時間のギャップは有意に低減された。そのT80は2.4から1.4に低減し、p値は<0.0001であった。このように、カラギーナンとの複合化はトラマドールの放出を遅延させる。上の表1を参照のこと。
【0061】
実施例5 HPMCの影響
この実施例では、広範な放出持続時間を提供するために錠剤の組成を変更したことを除き、実施例4に示した錠剤調製手順及び放出方法を繰り返した。表3は、使用した錠剤組成を示す。
【0062】
【表3】
【0063】
図3、4及び5は、異なる量のヒドロキシプロピルメチルセルロースK4M(HPMC K4M)を有する製剤C、D、Eのそれぞれの放出プロファイルを示す。黒丸はAPAPデータ、白丸はトラマドールデータを示す。APAPのT80対トラマドールの持続時間の比率を図6にプロットした。黒丸はAPAPデータ、白丸はトラマドールデータを示す。図6は、トラマドール複合体を含有する製剤では、HPMC含有量はAPAP放出持続時間に大きく影響する(HPMCの量の増加がT80を増加した)が、持続時間の比率には有意な影響がないことを示している。
【0064】
実施例6 トラマドール複合化の影響
【0065】
【表4】
【0066】
調製手順は、表4による製剤F及びGとともに上記実施例4で記述したものと同一である。図7a及び7bは、それぞれ組成物F及びGのトラマドール及びAPAPの放出プロファイルを示す。黒丸はAPAPデータ、白丸はトラマドールデータを示す。これら2つの製剤は、APAPについては類似したT80のプロファイルを有するが、トラマドールの放出プロファイルは大きく異なる。複合化されていると(製剤F)、放出持続時間の比率は1.1であり、トラマドール及びAPAPの同時放出が達成される。加えて、複合化されていないものでは拡散放出指数(n)は0.502であったが、複合化されたトラマドールでは0.731であった。n値の増加は、トラマドールの放出がゼロ次(一定速度の)送達に近づくことを示す。
【0067】
実施例7 即時放出材料
この実施例では、表5に記載されている即時放出(IR)材料の製剤であることを除き、実施例4と同じ錠剤調製手順を繰り返した。成分を40メッシュスクリーンに通してから乾式混合することにより、均質な混合を確保した。即時放出錠剤は、1.91cm×0.81cm(0.75×0.32インチ)のカプレット工具をCAVER圧縮機によって約1メートルトンの圧力(57Mpa相当)下で用いて、365.2mgの組成物をIR錠剤に圧縮して調製した。それぞれのIR錠剤はAPAPを325mg含有する。この錠剤は急速な崩壊を示し、95%を越すAPAPが15分未満に擬似腸液(SGF)(すなわち、無酵素の標準pH1.5のUSP、溶解はUSP IIの方法の標準的手順により行った)に溶解した。このように、APAPを急速に放出するIR材料が形成されたことが示された。この材料は、図1A、図1B、図1Cに示すような、APAP及び複合化されたトラマドールを含む長期放出型組成物に付着されるIR層として使用することができる。錠剤の外郭層であるので、同様に急速に崩壊し、薬物を放出しなくてはならない。この現在の実験では、IR層22はトラマドールを含まず、APAPのみを有効な鎮痛剤成分とした。しかし、このIR材料は非常に急速に溶解したので、トラマドールを含めることが薬物放出時間を有意に延ばすことになるとは考えにくい。何時間にもわたりAPAP及びトラマドールを放出するER材料と異なり、APAP及びトラマドールを有するIR層は分単位で溶解するべきである。
【0068】
【表5】
【0069】
実施例8 HPMC E5が硬度に与える影響
製剤F−No.01A〜03Aは、HPMC E5が錠剤の圧縮性に与える影響を示すために、表6Aに記載されている配合による様々なHPMC E5の割合を用いて調製した。HPMC E5の量が多いほど錠剤の硬度は高かった。このように、10mgのHPMC E5をER層粒剤に組み入れることは、適切な硬度(例えば約6〜12KP)の錠剤を生産するために有用であった。
【0070】
【表6】
【0071】
実施例9 複合体マトリックス錠剤の更なる実施例
マトリックス錠剤は、湿式造粒法によって調製した。様々な製剤の詳細な組成は表6B及び表6Cに記載されている。トラマドールHClを60%エタノール溶液(1:1.5、w/v)中に溶解し、λカラギーナンを徐々に添加して複合体を調製し、攪拌棒を用いて広口容器内で混合して、トラマドールHCl溶液を得た。次いで、予め配合したAPAP/HPMC粉末を、複合体と混合して、均質なウェットペーストを得た。このペーストを1.0mmメッシュスクリーンに通してから、一晩45℃で乾燥した。乾燥した顆粒を1.0mmのメッシュスクリーンに通してふるい、次いで、マトリックス形成ポリマー及び他の賦形剤(ステアリン酸マグネシウム(Mg)を含む)と配合した。19.5mm×8.5mmの楕円形パンチ及びダイセットを備えたロータリー錠剤プレスを用いてこれらの顆粒を圧縮し、それぞれ重量が約600mgの錠剤を得た。圧縮力は約20KNであり、錠剤の硬度は約7〜10KP、厚さは約3.9mmであった。調製物全てを室温で気密容器内に保管して、更に研究した。錠剤製造方法は、正しい賦形剤を含めることによって、以下の実施例の成分を有する錠剤の製造にも適応することができる。
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
実施例10 遅延化賦形剤
ポリエチレンオキシド(PEO)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のような親水性ポリマーは、放出型錠剤の処方を改良するための賦形剤として使用することができる。錠剤は、当業者には理解されるであろう上の実施例9の方法によって製造することができる。これらのポリマーは、いったん液体と接触すると含水して膨張し、錠剤マトリックスへの液体の更なる浸透及び内部からの薬物の溶解を調節するヒドロゲル層を形成せしめる。したがって、そのような高分子マトリックスからの薬物放出は、拡散、浸食、又はそれら両方の組み合わせによって達成される。BID投与量で約10〜12時間の放出持続時間を達成するよう、ER層のマトリックス錠剤を様々な含有量のHPMC及びPEOで、λカラギーナン/トラマドールHCl複合体を用いて製剤した(表7(APAPについては表7A、トラマドールHClについては表7B)を参照のこと)。PEOは、DOW Chemical Companyから入手したPOLYOX WSR N12Kを使用した。POLYOX WSR N−12K−NFの分子量(MW)は約1,000,000、25℃の2%溶液での粘度範囲は400〜800cpsである。表7は、様々な経験的等式により得た各マトリックス錠製剤の溶解パラメータの一覧である。表を見て分かるように、全ての製剤の相関係数(R2)の値は、Korsmeyerモデルによる薬物溶解挙動の評価をするために十分高く(>0.97)、「n」及びkの値は、ポリマーのタイプ及び濃度によって変化することが見出された。様々なマトリックスから決定される放出指数「n」の値は、APAPについては0.43〜0.88の範囲であり、トラマドールHClについては0.46〜0.66であり、拡散機構と浸食機構が組み合わさった影響が示された。F−No.1に遅延剤としてHPMC K4Mのみを使用したときは、錠剤の硬度は比較的低く(3KP未満)、このため圧縮が困難であった。しかし、錠剤充填剤としてラクトース又はAEROSIL 200を製剤に組み入れることで、適切な錠剤特性を補うことができた(F−No.2 & 3)。
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
F−No.1に遅延剤としてHPMC K4Mのみを使用したとき、錠剤の硬度は比較的低く、このため圧縮が困難であった。しかし、錠剤充填剤としてラクトース又はAEROSIL 200を製剤に組み入れることで、適切な錠剤特性を補うことができた(F−No.2 & 3)。PEOのみの使用、及びHPMC K4Mと遅延剤PEOとの併用での試験も行った(F−No.4 & 5)。溶解はpH 6.8の緩衝液(無酵素の擬似腸液)にて50rpmで行った。時間の関数としてのF−No.2〜5の拡散百分率を図8及び図9に示す。
【0078】
IR層含有量を仮定した、pH 6.8緩衝液にて50rpmでの異なるマトリックス錠(F−No.2〜5)製剤からの(a)APAP及び(b)トラマドールHClの擬似放出プロファイルを、図10及び図11に示す(IR層内容物を有することを仮定していないデータである図8及び図9の比較)。データは、平均+/−SD(n=3)として表されている。菱形のデータポイントはF−No.2のデータを表す。円形のデータポイントはF−No.3のデータを表す。三角形のデータポイントはF−No.4のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.5のデータを表す。上記実施例4に示したように、IR材料は、放出される有効成分の量を急速に増すためにAPAPを急速に放出するように形成せしめることができる。我々は同様に、APAP及びトラマドールを急速に放出するIR材料も形成した。我々は、IR材料の層を使用して、ER材料の層を有する2層を形成せしめる場合、APAP及びトラマドールの放出にかかる時間がごくわずかであると仮定することによって、APAP及びトラマドールの放出を近似させることができることを実証した。図1B及び1Cの構造物も、IR層からの薬物を同様に急速に放出するべきである。図10及び図11は、錠剤が、図8及び図9の錠剤の組成物のER層と、1つの外郭層として又は2層構造の1層としてのいずれかである、そのER材料に付随するIR層とを有すると仮定した擬似放出プロファイルを示す。累積放出率(%)は、錠剤(例えば2層)全体におけるAPAP(及びトラマドール)の合計量の百分率として計算される放出である。図10及び図11は、APAPの累積放出率(%)が、製剤のIR/ER(例えば2層)錠剤からのトラマドールの累積放出率(%)と非常に近かったことを示す。このように、複合化によって、APAP及びトラマドールHClの調整された長期放出を得ることができた。
【0079】
結果はまた、PEOとHPMC K4Mを遅延剤として併用することが(F−No.5)、上記のマトリックスのうち最も低いDE%及び最大のMDTを示し、より高い薬物放出遅延能力が示されることを示した。
【0080】
PEOの使用
製剤F−No.5及びF−No.6は、HPMC K4MとPEOを用いて低いDE%及びより大きいMDTを得ることの利点を示した。(F−No.6)HPMC K4M対PEOを1:1の比率で含有。図12は、APAP及びトラマドールHClの累積放出プロファイルの比較を示す。図13は、図12のデータから計算された、IR外郭層とERコアとを有するF−No.6の2層錠剤の擬似放出プロファイルを示す。図12及び図13において、菱形のデータポイントはAPAPのデータを表す。正方形のデータポイントはトラマドールのデータを表す。図12におけるAPAP及びトラマドールHClの放出は、Korsmeyerモデル(それぞれ相関R2=0.9967及び0.9977)を明確に追従している。放出指数(n=0.7739(APAP)及び0.5694(トラマドールHCl))から、放出機構が異常輸送(非フィッキアン)のようであることがわかる。データは、長期放出に適したほぼ一定の放出速度を示している。一定の放出速度を可能にする長期放出投与形態は、薬物の拡散及びポリマーの浸食の両方の総和を反映していると考えられる。溶解媒体に配置した後、膨張と浸食の両方が同時にマトリックス内で生じ、ほぼ一定の放出が得られた。そのような状況での一定の放出は、膨張による拡散パスの長さの増加がマトリックスの連続的な浸食によって補われることによって生じる。
【0081】
異なるグレードのλカラギーナン
異なるグレードのλカラギーナンを有する長期放出製剤F−No.7及びF−No.8での、放出されたAPAPの累積量と時間のプロットを図14は示し、図15はトラマドールHClの累積量と時間のプロットを示す。菱形のデータポイントはF−No.7のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.8のデータを表す。異なるグレードのλカラギーナン(VISCARIN(登録商標)GP−109及びVISCARIN(登録商標)GP−209)を含有するマトリックス間に薬物放出速度の有意な差は観察されず、トラマドールHClとそれらの複合化能力にほとんど差がないことが示された。図16及び図17は、それぞれ、図15及び図15のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。ここでも、トラマドールHClの放出プロファイルはAPAPのものと非常に近く、製剤F−No.7及びF−No.8の長期放出コアを有する2層投与形態が、それら2つの薬物の調整された長期放出をもたらし得ることが示された。
【0082】
HPMC K4Mの影響
F−No.7、F−No.9、F−No.10は、薬物放出プロファイルに与える遅延剤の影響を研究するために、一定量のPEO(30mg)でHPMC K4Mの割合を変えることによって、ER材料として製剤された。全ての製剤は10〜12時間以上の放出を示した。長期放出製剤F−No.7、F−No.9、F−No.10での、放出されたAPAPの累積量と時間のプロットを図18は示し、図19はトラマドールHClの累積量と時間のプロットを示す。図20及び図21は、それぞれ、図18及び図19のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。菱形のデータポイントはF−No.7のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.9のデータを表す。三角形のデータポイントはF−No.10のデータを表す。結果は、HPMC K4Mの量の増加が薬物の放出をわずかに遅延させることを示している。ここでも、トラマドールHClの放出プロファイルはAPAPのものと非常に近く、製剤F−No.7、F−No.9、F−No.10の長期放出コアを有する2層投与形態が、それら2つの薬物の調整された長期放出をもたらし得ることが示された。
【0083】
PEOの影響
F−No.7、F−No.11、F−No.12は、薬物放出プロファイルに与える遅延剤の影響を研究するために、一定量のHPMC K4M(20mg)でPEOの割合を変えることによって、ER材料として製剤された。全ての製剤は10〜12時間以上の放出を示した。長期放出製剤F−No.10、F−No.11、F−No.12での、放出されたAPAPの累積量と時間のプロットを図22は示し、図23はトラマドールHClの累積量と時間のプロットを示す。図24及び図25は、それぞれ、図22及び図23のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。菱形のデータポイントはF−No.11のデータを表す。正方形のデータポイントはF−No.10のデータを表す。三角形のデータポイントはF−No.12のデータを表す。結果は、PEOの量の増加量が薬物の放出をわずかに遅延させることを示している。ここでも、トラマドールHClの累積放出プロファイルはAPAPのものと非常に近く、製剤F−No.10、F−No.11、F−No.12の長期放出コアを有する2層投与形態が、それら2つの薬物の調整された長期放出をもたらし得ることが示された。
【0084】
pHの影響
溶解液のpHが親水性マトリックスからの薬物の放出速度に与える影響を研究するために、pH 1.2、pH 4.0、pH 6.8の緩衝液及び蒸留水での溶解速度を製剤F−No.10に関して50rpmで調査した。APAPのデータを図26に、トラマドールHClのデータを図27にそれぞれ示す。菱形のデータポイントはpH1.2でのデータを表す。正方形のデータポイントは4.0でのデータを表す。三角形のデータポイントはpH 6.8でのデータを表す。丸のデータポイントは蒸留水(DW)でのデータを表す。製剤F−No.10に関し、APAP及びトラマドールHClは両方とも放出速度は酸性pHではより高く、酸性条件ではMDTの値がより低く、DE%の値がより高いことで一致している。この結果は、酸性媒体では錠剤コア周囲のゲル層形成より前にマトリクス錠剤の表面浸食又は崩壊が起きて結果的に薬物放出がより速くもたらされることによる可能性がある。pH 6.8での放出プロファイルは他より遅かった。全てのERサンプルで1時間目の放出は低く、錠剤が胃を通過するとき、そのような製剤が薬物をごく少ない割合で放出することが示された。図28及び図29は、異なるpHの緩衝液及び蒸留水での擬似2層錠剤の累積薬剤放出を、それぞれ図26及び27のデータに基づいて計算したものを示す。ここでも結果は、APAPとトラマドールの調整された放出の投与形態を製剤し得ることを示している。
【0085】
攪拌速度(rpm)の影響
溶解中の50rpm、75rpm、100rpmの攪拌速度で、製剤F−No.7の実施例のER材料の溶解を調べた。APAPのデータを図30に、トラマドールHClのデータを図31にそれぞれ示す。菱形のデータポイントは50rpmのデータを表す。正方形のデータポイントは75rpmのデータを表す。三角形のデータポイントは100rpmのデータを表す。マトリクスからの合計薬物放出速度はrpmが高いほど有意に高く、このことは、F−No.7に関し、MDTがAPAPでは5.40時間、トラマドールHClでは4.28時間であり、DE%がAPAPでは47.92%、トラマドールHClでは60.87%であった50rpmでよりも、100rpmでより小さいMDT(APAPでは4.33時間、トラマドールHClでは3.21時間)及びより高いDE%(APAPでは64.41%、トラマドールHClでは68.24%)であったことによって裏付けられる。概して、親水性ポリマーは液体と接触するとヒドロゲル層を生成し、薬物溶解は拡散と浸食の組み合わせによるが、薬物拡散が支配的である。しかし、rpmが高いほどポリマーの含水よりマトリックスの浸食が増し、やがてより多くの薬物の拡散と溶解が促進される。図32及び図33は、それぞれ、図30及び図31のデータに基づいて計算された擬似2層錠剤の累積薬物放出を示す。ここでも結果は、APAPとトラマドールの調整された放出の投与形態を製剤し得ることを示している。
【0086】
2層錠剤のin vitroでの長期放出
上記の結果に基づき、ER層を形成せしめる実施例9の方法を採用し、それにIR層を被覆することにより、圧縮されたトラマドールHClの複合体の層とAPAPを有するIR層を有する2層錠剤を表8の製剤F−No.13の組成にしたがって製造した。この圧縮は、IR圧縮材料とER圧縮材料とを2層圧縮機に同時に供給するにつれて、2層圧縮機を用いてIR層とER層をともに圧縮することによって行った。2層又は多層の錠剤を形成せしめる圧縮材料のための多くのプレスが知られており、錠剤を製造するために一般的に使用されている。当業者は、例えばCarverプレスのような典型的なプレスを使用して、本発明の2層錠剤を製造することができる。製剤F−No.13の錠剤は、パイロットプラントの38kgロットで製造された。表8はまた、ER材料の層の隣のER層の組成もまた示す。表8に示すように、IR層及びER層を有するコア錠剤に、任意のコーティングを提供した。
【0087】
【表11】
【0088】
表9は、製剤F−No.13の2層錠剤の3つのパイロットプラントロットの製造での実際の製造データを示す。3つのパイロットプラント製バッチの処方は、許容基準を満たし、丈夫で堅固な製品を代表する錠剤を生産した。表に示されるように、対応する層のために混合される他の成分として、水及び/又はエタノールを添加した。次いで、混合した材料を圧縮して、それぞれの層を形成した。錠剤を乾燥するために、水とエタノールを乾燥プロセスで除去した。これらの錠剤はまた、実験規模及び製剤開発段階で評価した錠剤の性能と匹敵した。
【0089】
【表12】
*水は乾燥プロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
【0090】
【表13】
*水は造粒プロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
**エタノールは造粒プロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
【0091】
【表14】
***値は、コーティングプロセス中の損失を考慮して調整した。このロットに必要とされる実際の量は20%の余分な許容差を含む。(3kg−−−−→3.6kg)。
****水はコーティングプロセスの間に取り除かれ、完成品には現れない。
【0092】
IR層には流動床造粒製造プロセスを用い、ER層の製造、乾燥、ふるい、及び混合工程には高せん断ミキサー造粒プロセスを用いた後、圧縮を行った。圧縮した錠剤を完全にフィルムコーティングした。造粒には高せん断ミキサー造粒機、流動床造粒機、乾燥には流動床造粒機、ミリングには振動ふるい、混合にはVブレンダー、錠剤製造にはTMI2層圧縮機、コーティングにはハイコーターを、主要な装置として製造に使用した。錠剤製造プロセス工程図を図35に示す。
【0093】
IR顆粒の調整では、最初に結合剤液を調製した。IR材料(APAP、トラマドールHCl、粉末セルロース、予ゼラチン化デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン)を流動床造粒機に移送して、予め混合した。材料の顆粒は、流動床造粒機を用いて、必要量の結合剤液を材料に噴霧して形成した。顆粒を乾燥し、次いで、ステアリン酸マグネシウムとともにふるい製造機に通して、所望の粒径を達成した。得られたIR顆粒を、Vブレンダーを用いて混合した。ER顆粒の調製では、トラマドールHClを60%エタノール液に溶解し、λカラギーナンを添加して複合体を形成した。APAP及びHPMC E15はSuperMixer Granulatorで予め混合した。高せん断ミキサーを用いて、トラマドール複合体ペースト及びAPAP/HPMC E15をともに造粒した。湿った顆粒をふるい機に通して、所望の粒径を達成した。顆粒を流動床乾燥機で乾燥した。乾燥した顆粒及び他の化学品(HPMC K4M,POLYOX)をステアリン酸マグネシウムとともにふるい機に通し、次いで、混合してER配合物を形成した。IR配合物とER配合物とを、エンボス錠剤工具(49セット、上部、下部、及び鋳型)を備える適切な2層錠剤圧縮機(例えば、TMI2層プレス又は同等物)を用いて約925.8mgの重量の錠剤に圧縮した。錠剤を3バッチ(ロット)製造した。錠剤製造用工具に使用されたパンチの寸法的特徴は、長さ19.05mm、幅7.62mm、曲線半径5.5mmである。コーティング液(液体)は、適切な量のOPADRY Yellow YS−1−6370−Gを精製水と混合して製造した。コーティングされる錠剤(コア錠剤)をコーティングパンに乗せた。コーティングパンにてコア錠剤を加熱し、適切なコーター(例えばハイコーター又は同等物)を用いてコーティング液でコーティングした。噴霧完了後、パンの回転を続けることによって錠剤を確実に乾燥させた。回転している錠剤床全体にカルナバワックスを振りかけた。コーティング液は、溶剤中に全ての成分がよく溶けている溶液であっても、あるいは流体中に分散された何らかの粒子状成分を含有しているものであってもよい。コーティング液は当該技術分野において周知であり、当業者は、本明細書に開示された開示の実施例に基づいて、どの代替物を使用することができるかを知るであろう。
【0094】
錠剤の製造に使用した主な装置を以下に記す:
1.造粒:高せん断ミキサー造粒機(Supermixer:30kg)
流動床造粒機(Glatt WSG 30:30kg)
2.乾燥:流動床造粒機(Glatt WSG 30:30kg)
3.ミリング:振動ふるい
4.混合:Vブレンダー(100L)
5.錠剤製造機:TMIコンプレス
6.コーティング:パンコーター(30kg)
【0095】
表10は、ロット001、002、003の錠剤の製造に使用した上記装置のパラメータを示す。乾燥プロセスで、目標とする重量百分率(1重量%〜3重量%)の乾燥後の水分(MafD)まで錠剤を乾燥した。当業者は、表10のパラメータの条件下で錠剤を製造するための上記装置の使用方法がわかるであろう。表10で、設定パラメータの値はそれぞれのロットに適用されたものであり、わずかに変化する場合がある(表に示されているように)。
【0096】
【表15−1】
【0097】
【表15−2】
【0098】
表11は、長期放出錠剤のロット001、002、003に使用した即時放出(IR)顆粒のメッシュにおける粒径分布を示す。
【0099】
【表16】
【0100】
完成錠剤の重量は約951mg/錠であった。製造された錠剤の重量は約114Kg/ロットであった。
【0101】
上記F−No.13錠剤では、IR層の厚さは約3.14mm、ER層の厚さは約3.82mm、合計厚さは6.96mmである。上記の条件下で、コーティングされていない錠剤の硬度の平均値は8.5+/−1KPであり、破砕性は1%未満(0.23%)であった。図34は、F−No.13(コーティングされた錠剤)の溶解プロファイルを示す。菱形のデータポイントはAPAPのデータを表す。正方形のデータポイントはトラマドールのデータを表す。相対標準偏差(CV)値は、測定された全てのポイントについて7%未満であった(n=6)。1時間目から始めて12時間目までに、APAPの重量%累積放出はトラマドールの重量%累積放出と非常に近かった(10%未満の差)。2時間目から8時間目を通して、差は5%未満であった。この結果は、APAP及びトラマドールの調整された放出をもたらすことができる多層投与形態が製造されたことを示す。この実施形態では、トラマドール及びAPAPの放出速度は非常に近かった。APAP対トラマドールのT60、T70、T80、T90の比率は2未満であり、事実、1.5未満であり、ほぼ1に近い。放出速度実験の結果から、2層錠剤ではIR層が崩壊して薬物を急速に(例えば15分のような分単位で)放出することは明白である。IR層の薬物放出時間は、8時間以上かかるER層の放出に比べて極めて短い。したがって、2層錠剤のER層の薬物放出速度が、ER層のみを試験したin vitro溶解試験でのER層の薬物放出速度と同様となるであろうと仮定することは合理的である。F−No.13のER層はF−No.7のER層とほぼ同一であるので、ER層での放出指数nはAPAPに関しては約0.75となり、トラマドールに関しては0.6となる。
【0102】
トラマドールをアニオン性ポリマー(好ましくはカラギーナン)と複合化して錠剤に長期放出層を形成せしめることが、非フィッキアン及び/又はケースII浸食制御された放出をもたらし、それによってAPAPとの調整された放出を可能にすることが見出された。異なる錠剤の性能を比較するために、以下の方法を用いてUSP II(パドル)装置を使用するin vitroでの実験によって、Korsmeyer式におけるMDT、T80及び放出指数nの決定を行うことが好ましい。容器の底の内側から25mmにパドルを位置づける。溶解媒体はUSPの方法(無酵素のUSP SIF)にしたがって調製したpH 6.8のリン酸緩衝液であり、37+/−0.5℃で50rpm/900mLにて溶解する。溶解媒体サンプルを定期的間隔で取り出し、0.45μの膜フィルターでろ過し、放出媒体中のトラマドールHCl及びAPAPの両方の濃度を、水性緩衝液/メタノール溶液を移動相で用いるHPLCによって測定する。移動相(pH 2.7の緩衝液:メタノール=73:27)を0.45−um Millipore Filter(HAWP 04700)又は同等物に通してろ過し、ヘリウム散布によって脱気する。標準の溶液(100%)37.5/325mgは、36.11/純度mg(±1%)のアセトアミノフェンを50mLの容積測定用フラスコに入れて正確に重量測定し、トラマドール塩酸塩原液10.0mLを移し入れ、溶解し、pH 6.8のリン酸緩衝液で希釈することによって製造する。トラマドール塩酸塩原液は、トラマドール塩酸塩41.66/純度mg(±1%)を100mLの容積測定用フラスコに入れて重量測定し、溶解し、pH 6.8のリン酸緩衝液で希釈することによって製造する。HPLCカラムはSUPELCO LC−8−DB 150×4.6mm;5μmである。噴射量は10μL、流速は2.5mL/分、実行時間を16分とする。APAPの保持時間は約1.2分。トラマドール塩酸塩の保持時間は約4.0分。検出器はプログラム可能なWaters 490紫外線検出器又は同等物である(APAP 280nm−1.0AUFS;トラマドール塩酸塩215nm−0.5AUFS)。カラム温度は約35℃である。USP IIの方法を標準的方法とする。当業者は、USP IIの合衆国薬局方の方法を参照することができる。
【0103】
サンプル中の薬物のラベル(特定するとLa)量の百分率の計算は、次のように行うことができる。
【0104】
【数3】
式中、Asam=サンプルのトラマドール塩酸塩又はアセトアミノフェンのピーク区域
Astd=標準(std)トラマドール塩酸塩又はアセトアミノフェンのピーク区域
Cstd=標準濃度(mg/mL)
Ct100=理論上の100%濃度(mg/mL)
La=トラマドール塩酸塩又はAPAPのラベル量
【0105】
本発明では、ER層に関して、我々は、Korsmeyer式でトラマドールの放出指数nを得ることができた(約0.45超、更には0.7超、及び更に0.85超)。好ましくは、APAPの放出指数nは約0.46〜1、より好ましくは約0.6〜0.9、より好ましくは約0.6〜0.8である。好ましくは、トラマドールの放出指数nは約0.46〜0.7、より好ましくは約0.5〜0.7、より好ましくは約0.5〜0.65である。
【0106】
我々は、2層錠剤でのAPAP対トラマドールのT80の比率を1に近い値で達成することができた。好ましくは、T80比は約2未満であり、好ましくは約1.5未満であり、より好ましくは約1.5〜1の範囲である。更に好ましくは、T80比は0.9〜1.1の範囲である。また、T80は約8〜12時間が好ましく、より好ましくは約10〜12時間である。表12はF−No.13のT80データを示す。
【0107】
【表17】
【0108】
2層錠剤のin vivoでの長期放出
長期放出錠剤(表9に記載したパイロットプラント処方により製造したもの)の相対的生物学的利用能及び他の薬物動態学的特性を、韓国の健常男性ボランティアで、既存ブランドの処方によるトラマドール/APAP併用剤(ULTRACET)と比較した。ULTRACET錠剤は37.5mgのトラマドール塩酸塩及び325mgのAPAPを含有する。そのようなULTRACET錠剤は市販されている。錠剤の非有効成分は粉末セルロース、ゼラチン化コーンスターチ、グリコール酸ナトリウム、デンプン、精製水、ステアリン酸マグネシウム、OPADRY(登録商標)Light Yellow、及びカルナバワックスである。ULTRACET錠剤のラベル説明及び使用は、このパッチ及びその使用を記載したラベリング、例えばUSFDA NDA 021123号、に見出すことができ(ラベルは2004年4月16日に認可された。(著作権)OMP 2003)、このラベルは参照によりその全文がここに組み込まれる。
【0109】
下表13に示すように、試験期と試験期の間に4日間のウォッシュアウト期間を有する絶食条件下の韓国人ボランティア健常男性で、ランダマイズした複数用量、2回処置、2期間、2シーケンスの交差研究を行った。
【0110】
【表18】
【0111】
スクリーニング後、薬物投与シーケンスの開始に当たりそれぞれの被験者に、選択された薬物を第1期の4日間投与した後、薬物を投与しない4日間のウォッシュアウトを行い、次いで第2期の4日間の薬物投与を行った。被験者の薬物投与後のフォローアップ検査を4日間行い、被験者の血液サンプルのデータを記録した。表13のように、これらの薬物投与シーケンスの間、市販のULTRACET錠剤(表13でAと指定)は6時間おきに14回経口投与し、ER錠剤(表13でBと指定)は12時間おきに7回、それぞれ投与した。投与後、既定の時間間隔に血液サンプルを採取した。
【0112】
表13のデータを使用して、錠剤中の薬物の生物学的利用能を決定した。本明細書で用いるとき、用語「生物学的利用能」とは、薬物製品から吸収されて作用部位で利用可能になる有効成分又は有効部分のレート及び程度を指す。そのレート及び程度は、薬物のピーク血中濃度又は血漿中濃度(Cmax)及び濃度曲線下面積(AUC)のような薬物動態学的パラメータによって確立される。
【0113】
薬物動態学では、用語「AUC」は、非検体における利益薬剤の血漿中濃度対時間を、投与開示時から、投与開始後「t」時間まで測定してプロットすることによって得られる、非検体で得られる曲線下の面積を意味する。定常状態の薬物投与のためには、AUCssは、無限時間に定期的に用量を投与した場合の、ある投与期間の曲線下の面積である。AUCは、患者の血清サンプルの検定によって得られる。
【0114】
本明細書で用いられるとき、用語「Cmax」とは、薬物の血中又は血漿中ピーク濃度を指す。時間「tmax」とは、薬物の血中又は血漿中ピーク濃度に達するまでの時間を指す。用語「t1/2」は半減期であり、薬物の血漿中濃度が半減するまでにかかる時間を指す。
【0115】
APAP/トラマドールの血漿中濃度は、検証されたLC/MS/MS法を用いて決定される。血漿中濃度−時間曲線は、各ボランティアについて生成され、それを元に、投与後第1日の一次パラメータ(Cmax、Tmax、AUC0〜12hr)と、定常状態での2次パラメータ(Cmax(ss)、Tmax(ss)、AUC0〜12h,ss、及びt1/2)とを、WINNONLIN(登録商標)5.2.1(合衆国カリフォルニア州Pharsight Co.)による無隔壁分析を用いて決定する。例えば生物学的同等性は、韓国及び合衆国食品医薬品局が設定した規制要件を用いて定義づけた(生物学的同等性の許容範囲は0.80〜1.25)。市販のULTRACET錠剤と生物学的に同等であるためには、同じ用量強度の市販のULTRACET錠剤に対する新しいER錠剤の定常状態平均Cmax比の90%信頼区間(CI)はa=0.05で80%〜125%(すなわち0.8〜1.25)でなくてはならず、市販のULTRACET錠剤に対する新しいER錠剤の平均AUCss比の90%信頼区間(CI)は80%〜125%でなくてはならない。
【0116】
合計12人のボランティア被験者が試験を完了した。ボランティアの平均年齢は24.4+/−5.2才であり、平均体重は65.1+/−6.0kgであった。市販のULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤の投与後のトラマドールの薬物動態パラメータの(SDでの)平均値を下の表14及び表15に示す。
【0117】
【表19】
1)中央値[最小−最大]
【0118】
【表20】
1)相加平均±標準偏差
2)対数変換した幾何平均±標準偏差
3)ER対ULTRACET幾何平均の比相加値は、実際の被験者データから得た。しかし、生物学的同等性は、相加平均を幾何平均に変換し、90%信頼区間での幾何平均の差によって決定した。
【0119】
図36は、ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のトラマドールの平均血漿中濃度−時間プロファイルを部分的に示す。グラフで棒は標準偏差を表す。黒丸データポイントの曲線はERデータを表し、約12時間毎のピークを示す。丸データポイントの曲線はULTRACETデータを表し、約6時間毎のピークを示す。
【0120】
市販のULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤の投与後のAPAPの薬物動態パラメータの(SDでの)平均値を下の表16及び表17に示す。
【0121】
【表21】
1)中央値[最小−最大]
【0122】
【表22】
1)相加平均±標準偏差
2)対数変換した幾何平均±標準偏差
3)ER対ULTRACETの幾何平均比
【0123】
図37は、ULTRACET錠剤及び本発明のER錠剤を複数回経口投与した後のAPAPの平均血漿中濃度−時間プロファイルを部分的に示す。グラフで棒は標準偏差を表す。黒丸データポイントの曲線はERデータを表し、約12時間毎のピークを示す。丸データポイントの曲線はULTRACETデータを表し、約6時間毎のピークを示す。
【0124】
上記in vivoの試験の分散分析データの分析(図36及び図37のデータを含む)は、研究されている薬物動態パラメータへの、製剤、期間、又はシーケンスの有意な影響を示さなかった。Cmax,ss及びAUC0〜12h(ss)の値での処置比の90%CIは、それぞれ、トラマドールでは0.87及び0.95であり、APAPでは0.85及び0.94であった。.全て、標準の生物学的同等性の許容範囲である0.80〜1.25の範囲内であった。選択された健常ボランティア母集団での、このin vivoの試験で、市販のULTRACET錠剤と新しい長期放出製剤とでCmax,ss及びAUC0〜12h,ssに統計的に有意な差はなく、これらの生物学的同等性が見出された。更に、どちらの製剤もよく忍容された。本試験で、副作用は報告されなかった。このように、本発明の新しいER製剤が市販のULTRACET錠剤とin vivoで生物学的同等性を示したことから、それらは市販のULTRACET錠剤と生物学的に同等なやり方で、人の疼痛の処置のために効果的かつ有効な治療効果をもたらすべきである。
【0125】
本発明の実践は、別途記載されない限り、当業者である製薬学的製品開発者が使用する従来の方法を使用する。本発明の実施形態について、具体的に説明してきた。実施形態は、本発明の全ての面において制限的でなくむしろ例示的であることが意図される。当業者は本発明の範囲から逸脱せずに本明細書に開示したスキームの様々な部分及び構成要素の様々な組み合わせ及び置換を実施することができるものと理解されたい。また、他の生物活性剤及び他の賦形剤を製剤に含めることもできると想到される。更に、物質が特定の成分を含むという説明では、基本的にそれらの成分からなる物質も製造されると想到される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含む製薬学的組成物であって、溶解の際に調整された持続的放出を呈し、経時的に調整されたトラマドールの累積放出及びアセトアミノフェンの累積放出をもたらす製薬学的組成物。
【請求項2】
前記複合化されたトラマドール材料がカラギーナンを用いて複合化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複合化されたトラマドール材料がカラギーナン及びトラマドール塩を用いて複合化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記持続的放出が、トラマドール及びアセトアミノフェンの両方に関して4〜12時間の期間の全期間にわたり行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記持続的放出が、トラマドール材料及びアセトアミノフェンの両方に関して10時間以上の期間にわたり行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記持続的放出において、トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるとき、トラマドールの重量%累積放出とアセトアミノフェンの重量%累積放出との差が25重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるときに開始する前記持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が20重量%を決して超えることがない、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるときに開始する前記持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が10重量%を決して超えることがない、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも12時間の持続的放出での最初の1時間の後の持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が10重量%を決して超えることがない、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記持続的放出の累積放出が、合衆国薬局方装置II(USP II)のパドル法によって、無酵素のpH 6.8の擬似腸液の溶解媒体中にて、37℃、50rpm/900mLでin vitroで決定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、即時放出層に付着された長期放出組成物の層を含み、前記長期放出組成物がアセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含み、前記即時放出層がアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、即時放出層に付着された長期放出組成物の層を含み、前記長期放出組成物が崩壊剤とアセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含み、前記複合化されたトラマドール材料はλカラギーナンとトラマドールHClとの複合体であり、前記即時放出層が親水性高分子遅延剤とアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記親水性高分子遅延剤が、多糖類又はその誘導体、寒天、アガロース、ガムからなる群から選択され、前記長期放出組成物がヒドロキシプロピルメチルセルロース及び充填剤を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、即時放出層に隣接する長期放出組成物の層を含み、前記長期放出組成物が崩壊剤担体とアセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含み、前記複合化されたトラマドール材料はλカラギーナンとトラマドールHClとの複合体であり、前記即時放出層が親水性高分子遅延剤とアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記長期放出組成物において、アセトアミノフェン対複合化されたトラマドール材料中のトラマドール材料との重量比が1:1〜20:1である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記長期放出組成物において、アセトアミノフェン対複合化されたトラマドール材料中のトラマドール材料との重量比が5:1〜10:1である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
アセトアミノフェン及び複合化されたトラマドール材料を含む前記製薬学的組成物が1つの層であり、その層中のアセトアミノフェン及びトラマドールの両方が非フィッキアン方法(non-Fickian manner)で放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
アセトアミノフェン及び複合化されたトラマドール材料を含む前記製薬学的組成物が1つの層であり、その層中のアセトアミノフェン及びトラマドールの両方が、Korsmeyer式においてトラマドールは約0.5〜0.7の放出指数nで、アセトアミノフェンは0.6〜0.9の放出指数nで放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
アセトアミノフェン及び複合化されたトラマドール材料を含む前記製薬学的組成物が1つの層であり、その層のアセトアミノフェン及びトラマドールの両方が、8時間以上のT80でアセトアミノフェンのT80対トラマドールのT80の比が0.9〜1.1である方法で放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
複合化されたトラマドール材料を形成せしめる工程と、
前記複合化されたトラマドール材料とアセトアミノフェンとを含む圧縮形態を形成せしめる工程と、
を含み、前記圧縮形態が、使用中の溶解の際に調整された持続的放出を呈し、経時的に、調整されたトラマドールの累積放出及びアセトアミノフェンの累積放出をもたらす、製薬学的組成物の投与形態の製造方法。
【請求項21】
前記複合化されたトラマドール材料を形成せしめるためにトラマドール塩及びカラギーナンを使用することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
トラマドール塩及びカラギーナンを使用して、前記複合化されたトラマドール材料をペーストとして形成せしめることと、前記ペーストを乾燥することと、それから顆粒を形成せしめることとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
トラマドール塩及びカラギーナンを使用して、前記複合化されたトラマドール材料をペーストとして形成せしめることと、前記ペーストを乾燥することと、それから顆粒を形成せしめることと、前記顆粒を圧縮して圧縮形態を形成することとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
トラマドール塩及びλカラギーナンを使用して、前記複合化されたトラマドール材料を形成せしめることと、それから顆粒を形成せしめることと、前記顆粒を圧縮して圧縮形態を形成せしめることと、前記圧縮形態を覆う追加層を形成せしめることとを含み、前記追加層が親水性高分子遅延剤とアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
アセトアミノフェン対トラマドール材料を重量比1:1〜20:1で使用して、前記圧縮形態を形成せしめることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アセトアミノフェン対トラマドール材料を重量比5:1〜10:1で使用して、前記圧縮形態を形成せしめることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記持続的放出において、トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるとき、トラマドールの重量%累積放出とアセトアミノフェンの重量%累積放出との差が25重量%未満である、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるときに開始する前記持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が20重量%を決して超えることがない、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
圧縮形態の製造において、少なくとも2つの異なる種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
疼痛の処置のための薬剤の製造における複合体トラマドール材料の使用であって、前記薬剤は、複合体トラマドール材料とアセトアミノフェンとを含有し、前記薬剤は患者における前記薬剤の経口投与の際に前記トラマドールとアセトアミノフェンの調整された持続的放出を呈し、経時的に調整されたトラマドールの累積放出とアセトアミノフェンの累積放出をもたらす使用。
【請求項1】
アセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含む製薬学的組成物であって、溶解の際に調整された持続的放出を呈し、経時的に調整されたトラマドールの累積放出及びアセトアミノフェンの累積放出をもたらす製薬学的組成物。
【請求項2】
前記複合化されたトラマドール材料がカラギーナンを用いて複合化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複合化されたトラマドール材料がカラギーナン及びトラマドール塩を用いて複合化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記持続的放出が、トラマドール及びアセトアミノフェンの両方に関して4〜12時間の期間の全期間にわたり行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記持続的放出が、トラマドール材料及びアセトアミノフェンの両方に関して10時間以上の期間にわたり行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記持続的放出において、トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるとき、トラマドールの重量%累積放出とアセトアミノフェンの重量%累積放出との差が25重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるときに開始する前記持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が20重量%を決して超えることがない、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるときに開始する前記持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が10重量%を決して超えることがない、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも12時間の持続的放出での最初の1時間の後の持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が10重量%を決して超えることがない、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記持続的放出の累積放出が、合衆国薬局方装置II(USP II)のパドル法によって、無酵素のpH 6.8の擬似腸液の溶解媒体中にて、37℃、50rpm/900mLでin vitroで決定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、即時放出層に付着された長期放出組成物の層を含み、前記長期放出組成物がアセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含み、前記即時放出層がアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、即時放出層に付着された長期放出組成物の層を含み、前記長期放出組成物が崩壊剤とアセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含み、前記複合化されたトラマドール材料はλカラギーナンとトラマドールHClとの複合体であり、前記即時放出層が親水性高分子遅延剤とアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記親水性高分子遅延剤が、多糖類又はその誘導体、寒天、アガロース、ガムからなる群から選択され、前記長期放出組成物がヒドロキシプロピルメチルセルロース及び充填剤を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、即時放出層に隣接する長期放出組成物の層を含み、前記長期放出組成物が崩壊剤担体とアセトアミノフェンと複合化されたトラマドール材料とを含み、前記複合化されたトラマドール材料はλカラギーナンとトラマドールHClとの複合体であり、前記即時放出層が親水性高分子遅延剤とアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記長期放出組成物において、アセトアミノフェン対複合化されたトラマドール材料中のトラマドール材料との重量比が1:1〜20:1である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記長期放出組成物において、アセトアミノフェン対複合化されたトラマドール材料中のトラマドール材料との重量比が5:1〜10:1である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
アセトアミノフェン及び複合化されたトラマドール材料を含む前記製薬学的組成物が1つの層であり、その層中のアセトアミノフェン及びトラマドールの両方が非フィッキアン方法(non-Fickian manner)で放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
アセトアミノフェン及び複合化されたトラマドール材料を含む前記製薬学的組成物が1つの層であり、その層中のアセトアミノフェン及びトラマドールの両方が、Korsmeyer式においてトラマドールは約0.5〜0.7の放出指数nで、アセトアミノフェンは0.6〜0.9の放出指数nで放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
アセトアミノフェン及び複合化されたトラマドール材料を含む前記製薬学的組成物が1つの層であり、その層のアセトアミノフェン及びトラマドールの両方が、8時間以上のT80でアセトアミノフェンのT80対トラマドールのT80の比が0.9〜1.1である方法で放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
複合化されたトラマドール材料を形成せしめる工程と、
前記複合化されたトラマドール材料とアセトアミノフェンとを含む圧縮形態を形成せしめる工程と、
を含み、前記圧縮形態が、使用中の溶解の際に調整された持続的放出を呈し、経時的に、調整されたトラマドールの累積放出及びアセトアミノフェンの累積放出をもたらす、製薬学的組成物の投与形態の製造方法。
【請求項21】
前記複合化されたトラマドール材料を形成せしめるためにトラマドール塩及びカラギーナンを使用することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
トラマドール塩及びカラギーナンを使用して、前記複合化されたトラマドール材料をペーストとして形成せしめることと、前記ペーストを乾燥することと、それから顆粒を形成せしめることとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
トラマドール塩及びカラギーナンを使用して、前記複合化されたトラマドール材料をペーストとして形成せしめることと、前記ペーストを乾燥することと、それから顆粒を形成せしめることと、前記顆粒を圧縮して圧縮形態を形成することとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
トラマドール塩及びλカラギーナンを使用して、前記複合化されたトラマドール材料を形成せしめることと、それから顆粒を形成せしめることと、前記顆粒を圧縮して圧縮形態を形成せしめることと、前記圧縮形態を覆う追加層を形成せしめることとを含み、前記追加層が親水性高分子遅延剤とアセトアミノフェンとほとんど複合化されていないトラマドール材料とを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
アセトアミノフェン対トラマドール材料を重量比1:1〜20:1で使用して、前記圧縮形態を形成せしめることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アセトアミノフェン対トラマドール材料を重量比5:1〜10:1で使用して、前記圧縮形態を形成せしめることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記持続的放出において、トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるとき、トラマドールの重量%累積放出とアセトアミノフェンの重量%累積放出との差が25重量%未満である、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
トラマドールの重量%累積放出が40重量%であるときに開始する前記持続的放出において、アセトアミノフェンの重量%累積放出とトラマドールの重量%累積放出との差が20重量%を決して超えることがない、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
圧縮形態の製造において、少なくとも2つの異なる種類のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
疼痛の処置のための薬剤の製造における複合体トラマドール材料の使用であって、前記薬剤は、複合体トラマドール材料とアセトアミノフェンとを含有し、前記薬剤は患者における前記薬剤の経口投与の際に前記トラマドールとアセトアミノフェンの調整された持続的放出を呈し、経時的に調整されたトラマドールの累積放出とアセトアミノフェンの累積放出をもたらす使用。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公表番号】特表2012−506907(P2012−506907A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534641(P2011−534641)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061803
【国際公開番号】WO2010/062524
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510046310)アルザ・コーポレーシヨン (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061803
【国際公開番号】WO2010/062524
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510046310)アルザ・コーポレーシヨン (4)
【Fターム(参考)】
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