説明

門扉解施錠システム

【課題】
自宅、および、契約駐車場にて、自動車の盗難を起きにくくする手段を提供すること。
【解決手段】
生体特徴情報を利用して個人を識別可能な個人認証装置3を搭載した自動車2と、解施錠可能な門扉4を持つ駐車スペース1から構成され、個人認証装置3にて門扉4の解錠を許可された本人であると判別された場合に、無線にて門扉解施錠装置に解錠,開門信号を通知して、門扉4を解錠して開き、自動車2を前記駐車スペース1に出し入れ可能となる手段を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車庫や駐車場の解施錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のドアロック解除やエンジンを始動させるため、従来から鍵が用いられている。この従来から用いられている鍵においては、鍵を盗難された場合や鍵穴のピッキング等により、自動車のオーナー以外の悪意を持った人物に運転されてしまう可能性がある。
【0003】
そこで、セキュリティを高めるため、鍵の代わりに生体特徴情報のひとつである指紋を個人認証の手段(いわゆるバイオメトリクス)として利用して自動車のドアロック解除やエンジンを始動させることが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
しかしながら、指紋は偽造することが可能であるため、よりセキュリティを高める方法として、生体特徴情報として個人によって異なる指の血管パターンを含む画像を利用する個人認証の方法が提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【0005】
この方法は、指に近赤外光の成分を含む光源(本明細書及び請求の範囲において、赤外光源と定義する)から光を照射すると、指を透過して指から再放射される近赤外光の強度分布に指の血管パターン(主として静脈のパターン)の情報が含まれるので、これをイメージセンサにより検出し、検出した指の血管パターンとあらかじめ登録した指の血管パターンとの一致,不一致を判定することにより、指の血管パターンを登録した個人を特定し認証するものである。
【0006】
また、生体特徴情報として指の血管パターンを利用して個人認証を行う個人識別装置と類似した例として、赤外光源から生体に向かって赤外光を照射し、その反射光をイメージセンサによって撮像して血管パターンを含む画像を利用する個人識別装置が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
【特許文献1】特開昭61−53972号公報
【特許文献2】特開平6−72291号公報
【特許文献3】特開2001−184507号公報
【特許文献4】特開2003−30632号公報
【特許文献5】特開平10−127609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、(社)日本損害保険協会 第3回自動車盗難事故実態調査結果(2002年3月29日発行)によると、自動車が盗難される場所として、自宅と契約駐車場であわせて約2/3を占めている。すなわち、これらの場所で盗難されにくい環境とすれば、自動車の盗難が減る可能性が高いことを示している。本発明の目的は、主に、自宅、および、契約駐車場にて、自動車の盗難を起きにくくする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明では、生体特徴情報を利用して個人を識別可能な個人認証装置を搭載した自動車と、解施錠可能な門扉解施錠装置を持つ駐車スペースから構成され、個人認証装置にて門扉の解錠を許可された本人であると判別された場合に、前記判別結果を無線にて門扉解施錠装置に通知して、門扉を解錠して開き、自動車を前記駐車スペースに出し入れ可能となる手段を有する構成とした。
(2)(1)において、個人認証装置に認証開始スイッチがあり、認証開始スイッチの操作後、認証作業が開始され、門扉の解錠を許可された本人であると判別された場合に前記門扉を解錠し、開く手段を有する構成とした。
(3)(1)において、自動車に開門スイッチが追加して設けてあり、個人認証装置にて門扉の解錠を許可された本人であると判別された場合に、開門スイッチの操作により門扉を解錠し、開く手段を有する構成とした。
(4)(2)において、門扉が開いている場合、認証開始スイッチの操作により門扉を閉じ、施錠する手段を有する構成とした。
(5)(1)から(3)のいずれかにおいて、自動車に門扉の施錠スイッチを追加し、施錠スイッチの操作により門扉を閉じ、施錠する手段を有する構成とした。
(6)(1)から(3)のいずれかにおいて、自動車が門扉を通過後、門扉を閉じ、施錠する手段を有する構成とした。
(7)(1)から(6)のいずれかにおいて、生体特徴情報として、指の血管パターンを利用する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本実施例によれば、主に、自宅、および、契約駐車場にて、自動車の盗難を起きにくくする手段を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1から図7を用いて門扉解施錠システムの構成および動作について説明する。
【実施例1】
【0012】
最初に、図1から図5を用いて、門扉解施錠システムについて説明する。
【0013】
図1は門扉解施錠システムの構成の一例、図2は個人認証装置の概観図である。門扉解施錠システムは、駐車スペース1,自動車2,個人認証装置3,無線端末装置36,門扉4、および門扉開閉制御装置5から構成される。個人認証装置3は自動車2に搭載され、また、無線端末装置36と接続される。門扉開閉制御装置5は門扉4と接続される。また、無線端末装置36と門扉開閉制御装置5との無線通信のために、それぞれにアンテナ
35,55が接続されている。
【0014】
図2の個人認証装置3は、指などの生体を置く認証スペース310,認証開始スイッチ301がある。なお、個人認証に必要な生体特徴情報としては、指紋,静脈パターン,顔,音声,虹彩、などの既知の生体認証技術を利用できる。生体認証技術として、ここでは、認証開始から結果の通知までの反応時間が短く、本人拒否はほとんどない、指の静脈パターンを利用した個人認証装置3を仮定する。
【0015】
図3は指の静脈パターンを利用した個人認証装置3の指Fの軸に垂直な面における断面図である。個人識別装置3は、マイクロコンピュータ320と、駆動回路322と、不揮発性メモリ324と、電源回路326と、赤外光源330,331と、イメージセンサ
340と、レンズ341と、窓342とを備えている。また、通信路328を介してローカルエリアネットワークLANに接続されている。ローカルエリアネットワークLANには無線端末装置36およびそのアンテナ35,車両解施錠制御ユニット37,エンジン制御ユニット38,情報端末装置39などが接続されていてもよい。なお、図1では、個人認証装置3と無線端末装置36は1対1で直接接続されているが、図3のようにローカルエリアネットワークLANで接続する形態をとってもよい。また、個人認証装置3と無線端末装置36とそのアンテナ35,車両解施錠制御ユニット37,エンジン制御ユニット38,情報端末装置39は分けずに、一部、または全部を1つの装置としてまとめてもよい。なお、車両解施錠制御ユニット37は自動車のドアやステアリングのロックの解施錠を制御する装置,エンジン制御ユニット38は自動車のエンジンを制御する装置、情報端末装置39はカーナビゲーションシステムなどに代表されるさまざまな情報を表示する装置である。これらの装置は個人認証装置3による本人確認情報を利用して、ドアロック解除,エンジン始動の制御や情報コンテンツなどへのアクセスにおける課金の制御などを行うことが可能である。
【0016】
図3に戻って、マイクロコンピュータ320は駆動回路322を介して赤外光源330,331に通電して、赤外光を指Fに向かって照射する。赤外光源330,331としては、発光ダイオードなどを用いることができる。照射された赤外光は、指F内部で散乱し、また血管内の血液のヘモグロビンで吸収される。散乱,吸収された赤外光は、指Fの掌面(屈側面)から再び放射する。血管パターンを含む再放射した光はレンズ341を通過してイメージセンサ340に入射する。イメージセンサ340として、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどを用いる。なお、窓342は個人認証装置3の内部を保護するためのものであるが、さらに、赤外光源の波長帯付近の光のみを透過する特性をもたせ、かつ外側から内部が見えないような機能を持たせてもよい。イメージセンサ340により撮像した血管パターンを含む画像は光電変換されて電気信号となり、マイクロコンピュータ320に取り込む。
【0017】
ここで、図4を用いて、撮像される血管パターンの一例について説明する。
【0018】
例えば、指Fを撮像部の撮像範囲IAの中心に置いた場合、図4に示すように、イメージセンサ340で撮像される像として、指Fの輪郭CFと、血管パターンBVが得られる。この血管パターンBVは個人により異なっている。この血管パターンBV、または画像処理して特徴抽出処理したパターンはあらかじめ不揮発性メモリ324に登録しておき、照合時の登録パターンとして用いる。
【0019】
図3に戻って、マイクロコンピュータ320は、照合時における識別パターンと登録パターンの一致,不一致の判定、および、個人認証装置3全体の制御なども行う。
【0020】
個人認証装置3による個人識別の動作は、図3に示したマイクロコンピュータ320に記憶されたプログラムにより制御される。マイクロコンピュータ320の動作を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0021】
プログラムが開始されると、まず、ステップS10に移行し、マイクロコンピュータ
20は個人識別装置3の初期化処理を行う。
【0022】
次に、ステップS20へ移行する。ステップS22において、マイクロコンピュータ
20は所定の範囲内に指Fが置かれているか検出する。指Fが置かれていれば、さらにステップS24に移行して、適切な画像を取得できるように赤外光源330,331の光量制御を行う。
【0023】
図5に戻って照合作業はステップS30からステップS50で行われる。
【0024】
ステップS30において、マイクロコンピュータ320は、照合開始かどうか判定する。この判定は、例えば認証開始スイッチ301の操作により行われる。また、ステップ
S24にて適切に光量制御されたら自動的に認証開始としてもよい。もし、認証開始でなければ、ステップS20に戻り、置かれた場合には、ステップS40に移行する。
【0025】
ステップS40では、取り込んだ画像を用いて照合処理を行う。
【0026】
まず、ステップS41において、指Fから放射される光の強度分布画像をイメージセンサ340からマイクロコンピュータ320に取り込む。
【0027】
次に、ステップS42において、赤外光源330,331を消灯する。
【0028】
次に、ステップS43において、取得された強度分布に対して、演算処理を行い、血管パターンBVの特徴パターンを算出する。この特徴パターンを照合パターンとする。なお、本ステップにおける処理の方法については、特開2001−184507号公報に開示されているように、積分処理,微分処理を組み合わせたフィルタ処理を行うことにより実現可能である。
【0029】
次に、ステップS44において、抽出した照合パターンと、あらかじめメモリ324に記憶された単数、もしくは複数の登録パターンとの照合を行う。ここでは、ステップS43で抽出した照合パターンと、不揮発性メモリ324から呼び出した登録パターンを比較して、両者の相違の程度を算出する。
【0030】
次に、ステップS45において、ステップS44で算出された相違の程度から、照合結果の判定を行う。もし、相違の程度が小さい結果があれば、登録されている本人であると判断し、ステップS50へ移行する。また、相違が大きければ、未登録者、または照合失敗として、ステップS46へ移行する。
【0031】
ステップS46では、全登録パターンを照合したか判断し、全パターンが照合されていなければ、該当登録パターン無しと判断してステップS20へ戻る。照合していない登録パターンがあれば、ステップS44へ戻り、照合を繰り返す。
【0032】
そして、ステップS50において、照合OKであれば、この結果をローカルエリアネットワークLANに出力する。この情報を無線端末装置36で受け取り、無線を利用して、図1に示した門扉開閉制御装置5に対して解錠・開門信号を通知する。開門されれば、自動車2は道路Rへ出し入れできる。
【0033】
なお、図1において、門扉4はシャッターとし、駐車スペース1は車庫とし、自動車2は1台としているが、これに限定したものでなくてよい。例えば、門扉は横開きなどの門でもよく、また輪止めなどでもよい。また、駐車スペースは屋外でもよい。自動車も1台ではなく数台でもよく、門扉開閉制御装置5に対し、複数の個人認証装置3が対応する構成でもよい。無線方式はIEEE802.11a,b,gやブルートゥースなど、既知の方式を用いることが可能である。無線通信路に関しては、IDを利用し、暗号化したほうがよい。
【実施例2】
【0034】
さらに好ましい実施例として、図5のステップS22で認証開始スイッチ301の操作後、認証作業が開始され、ステップS45で門扉4の解錠を許可された本人であると判別された場合に、自動的に門扉4を解錠し、開く手段を有する構成とした。この構成により、操作者はより省力化が可能となる。
【実施例3】
【0035】
さらに好ましい実施例として、図6のように個人認証装置3に開門スイッチ302が追加して設けてあり、個人認証装置3にて門扉4の解錠を許可された本人であると判別された場合に、開門スイッチ301の操作により門扉4を解錠し、開く手段を有する構成とした。この構成により、操作者は認証後に確認をして、門扉4の解錠,開門が可能となる。
【実施例4】
【0036】
さらに好ましい実施例として、図2の認証開始スイッチ303を用いて、門扉4が開いている場合、認証開始スイッチ301の操作により門扉4を閉じ、施錠する手段を有する構成とした。この構成により、操作者は自動車2から降りることなく、門扉4の閉門,施錠することが可能となる。
【実施例5】
【0037】
さらに好ましい実施例として、図7のように、自動車2に門扉4の施錠スイッチ302を追加し、施錠スイッチ302の操作により門扉4を閉じ、施錠する手段を有する構成とした。この構成により、操作者は自動車2から降りることなく、門扉4の閉門,施錠することが可能となる。
【実施例6】
【0038】
さらに好ましい実施例として、図5のステップS50において、門扉4の開門後、自動車2が通過したあとに、門扉4が閉じ、施錠されるように、門扉開閉制御装置5を制御するようにしてもよい。これにより、門扉4を閉じる手間を省略することが可能となる。
【実施例7】
【0039】
さらに好ましい実施例として、個人認証装置3は、指の静脈パターンを利用した個人認証装置とする。この認証装置は認証開始から結果の通知までの反応時間が短く、本人拒否はほとんどないので、操作者にほとんどストレスを感じさせないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1における門扉解施錠システムの一例を示す図。
【図2】本発明の実施例1における個人認証装置の一例を示す図。
【図3】本発明の実施例1における個人認証装置の一例を示す図。
【図4】指と血管パターンの撮像例を示す図。
【図5】マイクロコンピュータのプログラム動作フローチャートの一例を示す図。
【図6】本発明の実施例3における個人認証装置の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例5における個人認証装置の一例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1…駐車スペース、2…自動車、3…個人認証装置、4…門扉、5…門扉開閉制御装置、35,55…アンテナ、36…無線端末装置。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体特徴情報を利用して個人を識別可能な個人認証装置を搭載した自動車と、解施錠可能な門扉解施錠装置を持つ駐車スペースから構成され、前記個人認証装置にて前記門扉の解錠を許可された本人であると判別された場合に、前記判別結果を無線にて門扉解施錠装置に通知して、門扉を解錠して開き、前記自動車を前記駐車スペースに出し入れ可能となる手段を有することを特徴とする門扉解施錠システム。
【請求項2】
請求項1において、前記個人認証装置に認証開始スイッチがあり、前記認証開始スイッチの操作後、認証作業が開始され、前記門扉の解錠を許可された本人であると判別された場合に前記門扉を解錠し、開く手段を有することを特徴とする門扉解施錠システム。
【請求項3】
請求項1において、前記自動車に開門スイッチが追加して設けてあり、前記個人認証装置にて前記門扉の解錠を許可された本人であると判別された場合に、前記開門スイッチの操作により前記門扉を解錠し、開く手段を有することを特徴とする門扉解施錠システム。
【請求項4】
請求項2において、前記門扉が開いている場合、前記認証開始スイッチの操作により前記門扉を閉じ、施錠する手段を有することを特徴とする門扉解施錠システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記自動車に前記門扉の施錠スイッチを追加し、前記施錠スイッチの操作により前記門扉を閉じ、施錠する手段を有することを特徴とする門扉解施錠システム。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記自動車が前記門扉を通過後、前記門扉を閉じ、施錠する手段を有することを特徴とする門扉解施錠システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかにおいて、前記生体特徴情報として、指の血管パターンを利用することを特徴とする門扉解施錠システム。
【請求項8】
個人を認証する認証装置から無線信号を受信し、
受信した無線信号に錠の解錠要求が含まれている場合には、前記錠の解錠を行う錠の解錠方法。
【請求項9】
請求項8において、
受信した無線信号に前記錠の設置された扉の開放要求が含まれている場合には、
前記開錠の後、前記扉を開放することを特徴とする錠の開錠方法。
【請求項10】
請求項8または9において、
前記無線信号は暗号化されていることを特徴とする錠の解錠方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−257636(P2006−257636A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72164(P2005−72164)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】