説明

閉止水栓のシール座面を加工する方法および装置

本発明は、発電設備や産業設備(2)に組み付けられた閉止水栓(6)の、接続管(8a,b)の端部(26)に配置されたシール座面(24a,b)を加工する方法に関するものであり、次の各ステップを有している。すなわち、a)水栓上側部分(16)とハウジング取付部品(32)が閉止水栓(6)のハウジング(10)から取り外され、それによってハウジング開口部(14)が解放され、b)軸受支持部(56)を有するクランプ装置(40)がハウジング開口部(14)を通して接続管または別の接続管(8a,b)へ挿入されて、その内壁(50)に固定され、c)ハウジング開口部(14)を通して軸受(64)を担持する加工機械(58)がハウジング(10)の中に挿入されて、軸受(64)により軸受支持部(56)に支承され、d)加工機械(58)によってシール座面(24a,b)で加工ステップ(B1−4)が実施され、e)加工機械(58)が軸受支持部(56)から外されて、ハウジング開口部(14)を通して取り出され、f)必要に応じてステップc)からe)が別の工作機械もしくは同じ工作機械(58)で反復され、g)クランプ装置(40)が接続管(8a,b)から外されて、ハウジング開口部(14)を通して取り出され、h)水栓上側部分(16)と取付部品(32)がハウジング(10)に取り付けられる。発電設備や産業設備(2)に組み付けられた閉止水栓(6)の、接続管(8a,b)の端部(26)に配置されたシール座面(24a,b)を加工する装置は、閉止水栓(6)のハウジング開口部(14)を通って接続管または別の接続管(8a,b)へ挿入可能であるクランプ装置(40)を含んでおり、該クランプ装置は軸受支持部(56)と、接続管(8a,b)の内壁(50)と協働する固定部材(47)とを含んでおり、シール座面(24a,b)で加工ステップ(B1−4)を実行するためにハウジング開口部(14)を通してハウジングへ挿入可能な少なくとも1つの加工機械(58)を有しており、加工機械(58)は軸受支持部(56)で支承可能な軸受(64)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉止水栓のシール座面を加工する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備や産業設備の配管を閉止するために、さまざまな種類の閉止水栓が用いられる。産業設備としては、たとえば流体を用いて作動するあらゆる設備、たとえば化学産業などが考慮の対象となる。発電所については、ここではあらゆる型式の発電所、たとえば原子力発電所すなわち沸騰水型原子炉や圧力水型原子炉が該当する。
【0003】
ここで対象とする閉止水栓は、たとえば約40バール以下、40−160バール、および160バールにそれぞれ相当する低圧領域(ND)、中圧領域(MD)、および高圧領域(HD)の閉止スライダや逆止めフラップである。これらに対応する閉止水栓の公称口径は、約50から1200mmの範囲内にある。
【0004】
このとき閉止水栓は、水栓ハウジングの内部へと通じる少なくとも2つの接続管を有している。封止機能をもつこのような接続管は、それぞれの端面側の端部にシール座面を有している。シール座面はたとえば閉止水栓の中心平面に対して平行に延びており(ND逆止めフラップ)、または、水栓上側部分に向かって開くように傾いた平面に位置している(HD楔形スライダ)。
【0005】
水栓を閉じるために、たとえばスピンドルの軸方向運動を通じて、または逆止めフラップの旋回運動を通じて、たとえば封止プレートのような封止部材が、水栓ハウジングの接続管の領域に入り、シール座面に当接する。閉止スライダでは、たとえば閉止スライダの圧力で付勢される側(流入接続管)が、圧力のない側(流出接続管)の側のシールリングないしシール座面に向かって封止プレートを押圧する。そのようにして封止作用が生じる。それによって閉止水栓では、たとえば媒体が流動方向に関わりなく遮断され、逆止めフラップでは、媒体流が所定の流動方向に向かってのみ遮断される。
【0006】
閉止スライダは、通常、遠隔駆動ないしハンドル車を通じて距離依存的に調整される。移動距離の距離依存性とは、あらゆる温度膨張を考慮したうえで、封止プレートがシール座面を確実に遮断ないし解放し、かつ水栓ハウジングと衝突しない程度に、封止プレートがちょうど水栓ハウジングへ出入りすることを意味している。
【0007】
このような閉止水栓のシール面は高い負荷に耐えなくてはならないので、たとえばPN40の公称圧力(PN, Pressure Nominal)以下の低圧水栓では、17%のクロム鋼強化外装により摩耗を防ぐように防護ないし施工されている。換言すると、接続管の端面側の端部に、厚さ数ミリメートルのクロム鋼の層が硬質塗装として肉盛溶接される。
【0008】
いくつかの動作条件のもとで閉止水栓が一定回数の開閉サイクルを行うと、部分的に高い面押圧力に基づき、シール部材に、特にシール座面に摩耗挙動が生じる。閉止水栓のシール挙動はシール面の摩減が増すにつれて低下していき、水栓の密閉性が保証されなくなる。このような摩減は、負荷のケースによっては千回または数千回の閉止サイクルの後ですでに発生することがある。このことは、水栓を通って流れる媒体の種類や、発生する温度などに強く左右される。
【0009】
したがって、このような摩耗が生じたときに閉止水栓ないしそのシール材を修復することが必要である。このことはスライダ取付部品、たとえばシールプレート、スライダ、逆止めフラップなどについては問題なく可能である。これらは水栓ハウジングから取り外して出すことができ、水栓の外部で修復できるからである。取り外された部品の搬送にも通常問題はない。したがって修復は、たとえば現地の設備内で水栓の外部で行うか、または設備内の工場で行うか、または水栓の製造者のもとで行うことができる。
【0010】
問題となるのは、接続管のシール座面の修復である。水栓ハウジングの内部にあるシール座面へのアクセス部は狭い。いわゆるスライダ研削機械を利用して、損傷したシール面をその場で再研削する方法が、たとえば特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4から知られている。その場合、水栓上側部分と複数の取付部品とが閉止水栓のハウジングから外され、それによってハウジング開口部が解放される。ハウジング開口部を通して、研削機械が水栓ハウジングの中へ手動式に挿入され、そこに在るシール座面が再研削される。このとき材料除去はマイクロメートル単位で行われ、それにより、除去範囲の枠内において可能である限りにおいて、加工されたシール面ないしハウジング固定されたシール座面の平面平行性が再び成立する。公知の再研削にもかかわらず、閉止水栓の使用年数が延びるにつれて動作に起因する摩耗も増えていき、複数のコンポーネントやその取付部品の不具合も増えていく。損傷もしくは一般的な摩耗の常時繰り返される再研削は限定的にしか可能でなく、すなわち、シール座面における残りの残存強化外装が最低厚さになるまでしか可能でない。つまり研削量が増すにつれて、下地材料と強化外装との間の混合ゾーンに達し、すなわち溶接の熱影響ゾーンに達し、必要な強化外装の公称硬度が確保されなくなる。したがってシール座面の摩耗挙動は、再研削の回数に比例して、ないしは時間に比例して、いっそう増大していき、閉止水栓のシール部材ないしシール面ないしシール座面の不具合が発生する。
【0011】
再研削はμm単位でのみ行われ、その際には、絶対的な水栓寸法にはいかなる考慮も払われないので、たとえば斜めに着座するシール座面の片側の摩減を補正することはできないので、水栓ハウジングにおけるシール座面の角度は、再研削された平面平行の表面にもかかわらず、もはや正しくなくなっている。
【0012】
閉止水栓のハウジングに固定して取り付けられたシール座面が、上に述べた再研削ではもはや対処できない程度まで損傷すると、配管システムから閉止水栓全体を外して取り出すことによって損傷の除去が行われる。そして取り出された水栓は、修復をするために、必要な修復機械を装備している現地の工場もしくは水栓の製造者へ送られる。そして水栓は、その全体の外面がクランプ装置に挟み込まれ、旋盤、溶接機等の通常の加工機械によって修復される。
【0013】
別案として、故障した水栓を修復するのではなく処分して、発電設備や産業設備の配管システムの当初の位置に新しい水栓ないし交換用水栓が組み込まれる。水栓の取り出しと再溶接は、著しいコスト負担と結びついている。さらに、特に原子力発電所では広範な修理スペックが必要である。既存の配管システムから大きくて重い水栓を取り出すには特殊装備や特別な昇降装置が必要であり、水栓の周囲スペースが狭いために、しばしば著しいコストをかけなければ可能でなく、たとえば、そもそも水栓を取り出せるようにするために、まず周囲にある設置部品や建物部分を取り外さなくてはならないからである。
【0014】
発電設備や産業設備の内部での水栓の搬送、あるいは水栓の製造者への搬送は、費用がかかり高コストである。特に原子力発電の分野では水栓が汚染されており、このことは追加の経費とコストにつながる。水栓を取り出すときの取扱は、関与する人員のいっそう高い怪我のリスクや、閉止水栓自体または産業設備のその他のコンポーネントを損傷させる危険と結びついている。水栓をあらためて溶接するときには調整管が製作される。熱影響ゾーンを全面的に取り除き、切削された部分を補なわなければならないからである。水栓の取付位置は、当初の状態で復旧されなければならない。新しい閉止水栓が用いられるときには、明らかに高い計画作成コストを想定しなくてはならない。新しい水栓については、たとえば圧力機器ガイドラインのような最新の規則集を考慮しなくてはならないからである。その場合、通常は長い年数が経過している水栓に適用される従前のガイドラインに比べて、いっそう高い安全性が求められる。たとえば新しい閉止水栓では、従来使用されていた古い水栓よりも壁厚およびこれに伴って重量が増している。その結果、状況によっては、新しい水栓の付加重量を考慮した、該当する配管システムないし配管区域の動的構造計算を行うことが必要である。もっとも不都合な場合、保持部を付け加えたり強化したりしなければならない。状況によっては、長い期間がかかり高いコストを要する建設許可手続が必要である。さらに、配管システムで溶接が実施されるので、たとえば水栓を含んでいる管区域全体であらためて圧力試験を行わなくてはならない。
【0015】
特許文献5より、現場でシール面に肉盛溶接を行うことも知られている。そのようにして、シール面の表面をまず当初の設計的な設定よりも高いレベルにしておいてから、最終的にこれを補修レベルまで削ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】東ドイツ特許出願公開第217171A1号明細書
【特許文献2】東ドイツ特許出願公開第278542A1号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第2400077A1号明細書
【特許文献4】東ドイツ特許出願公開第109822A1号明細書
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第102005004232A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで本発明の課題は、発電設備や産業設備に組み付けられた閉止水栓のシール座面を加工する、改良された方法および改良された装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、閉止水栓のハウジングに固定されたシール座面を、配管システムに取り付けられた状態のまま現場で補強するという原理的思想に依拠している。それにより閉止水栓ないしその水栓ハウジングは、発電設備や産業設備に組み付けられたまま保たれる。現場でのこのような修復方法により、上に挙げた不都合な点の大半に当てはまる取付けと取外し、および搬送を回避することができる。
【0019】
本発明によると、組み付けられている水栓を補修するために設備で適用される複合的な装置が、当該方法のために利用される。このようなシール座面はハウジング開口部からのみアクセス可能であり、これはすなわち水栓上側部分、駆動部、シールプレート、およびその他の取付部品が取り外されたときである。シール座面は通常ほぼ平行であるが、ハウジング開口部は水栓の中心平面に対して垂直に位置しているので、通常、約90°の力と運動の方向転換を行わなければならない。楔形プレートスライダでは、追加的にシール座面の傾斜角の分だけスピンドル長手方向に対して、すなわち上述した中心平面に対して、加工装置を位置調節可能でなくてはならない。水栓ハウジングの中でのスペース不足のために、加工装置の機能性を制約することなく、加工装置の特別な設計形態が必要である。加工装置は、たとえば2つ接続管の間で、ないし楔形スライダのシール座面の間で使用できるようにするために、それぞれ平坦な設計形態で構成される。本発明によると、こうしてシール座面の加工を、その横方向平面に対して垂直の方向から行うことができる。そうすれば、加工のための相応の力を特に簡単に印加することができる。
【0020】
方法に関しては、発電設備や産業設備に組み付けられた閉止水栓の、接続管の端部に配置されたシール座面を加工する請求項1に記載の方法であって、次の各ステップを有するものによって課題が解決される:
【0021】
ステップa)では、水栓上側部分と複数の取付部品が閉止水栓のハウジングから外され、それによってハウジング開口部が解放される。このハウジング開口部は、たとえば低圧領域および中圧領域の水栓についてはフランジであり、高圧領域の水栓についてはハウジングネック部ないしハウジングドーム部である。ステップb)では、クランプ装置がハウジング開口部を通して対象の接続管へ挿入され、もしくは、たとえば加工されるべきシール座面に向かい合う別の接続管へ挿入される。クランプ装置は接続管の内壁に固定される。クランプ装置は1つの軸受支持部を有しており、この軸受支持部は、組付け状態のときに、すなわちクランプ装置が固定されたときに、ハウジング内部のほうを向いているクランプ装置の側に位置し、そのようにして引き続きハウジング開口部からアクセス可能である。
【0022】
ステップc)では、ハウジング開口部を通して加工機械がハウジングの中に挿入される。加工機械は1つの軸受を有しており、この軸受により軸受支持部に支承される。ステップd)では、加工機械によってシール座面において加工ステップが実施される。次いでステップe)では加工機械が軸受支持部から外され、ハウジング開口部を通して取り出される。ステップf)では、必要に応じてステップc)からe)が別の工作機械で、もしくは同じ工作機械で反復される。
【0023】
シール座面においての本来の作業の終了後、ステップg)でクランプ装置が接続管から外され、ハウジング開口部を通して再び閉止水栓から外に取り出される。引き続き、ステップh)で水栓上側部分と取付部品が再びハウジングに取り付けられ、それによって水栓が一式揃って再び動作準備の整った状態となる。
【0024】
このように本発明では、クランプ装置ないしその軸受支持部によって、および加工機械に取り付けられた軸受によって、加工機械を水栓ハウジング内部の特定された位置に据え、そこを起点として的確に高精度の作業をシール座面において行うことが可能となる。したがってクランプ装置ないし軸受支持部は、すべての加工ステップないしその精度のために位置固定されたままに保たれる、幾何学的に正確に固定されて静止した基準位置を水栓で形成する。それにより軸受支持部は、水栓内部での基準点ないし基準寸法を形成する。そうすれば軸受支持部は、水栓のゼロ寸法に対して相対的に固定され、たとえば低圧スライダのフランジに対して相対的に固定され、補修中にそれ自体をゼロ寸法として利用することができる。特に、たとえば異なる加工機械を用いて相前後して実施される作業ステップを、幾何学的に正確に相互に固定された位置で実施することができる。すべての加工機械が、すでに固定されて作業中に動かない軸受支持部で、特定された幾何学的な位置に常に支承されるからである。つまりクランプ装置は、たとえば任意の位置ただし固定的な位置へ据えられてから、軸受支持部の位置が水栓の座標系で判定される。そして加工は、すでに固定された位置を起点として、寸法どおりに加工機械によって行われる。
【0025】
従来、機械の加工ヘッドないし工具を交換することが知られている。機械の本体、たとえばその駆動部やハウジングはそのまま維持される。取り替えられるのは、たとえばさまざまな旋削ヘッド、穿孔ヘッド、フライス削りヘッドなどである。しかしながら本発明では、加工機械全体が取り替えられる。このことは、各々の機械をそれ自体として、たとえば駆動モータ、ハウジングなどに関して個別的に、それぞれ個々の加工ステップについて最善に構成できるという利点をもたらす。しかし軸受支持部により規定される幾何学的な基準位置は、たとえ加工機械がどのように別様に構成されていたとしても、あらゆる加工機械について有効である。
【0026】
この軸受支持部は加工されるべきシール座面の領域で固定されるので、作業領域との距離が短い。使用する加工機械を安定的に、かつ簡素に施工することができ、このことは高い加工力を可能にする。
【0027】
シールプレートないしスライダ取付部品は、通常の仕方で従来と同じく水栓ハウジングの外部で、たとえば現地の工場で、補修することができる。
【0028】
その設備において加工されるべき水栓の再現性が保証されるようにするために、たとえば水栓の相応のダミーで本方法が事前に確認される。換言すると、たとえば試験手続や許可手続に合格するようにするために、サンプルでシミュレーションが行われる。
【0029】
本方法の好ましい実施形態では、加工ステップとして、ハウジング内部のほうを向く接続管の端面が旋削または研削される。このような種類の作業ステップにより、たとえば新たに挿入されるべきスライダ座面リングの嵌め合い部を、正確に特定された幾何学平面で旋削または研削し、シール座面の強化外装を下地材料まで特定された平面で除去し、あるいは新たに塗布された強化外装を平面平行に、かつ特定された平面で、水栓ジオメトリーに関して正確に研削することが可能である。旋削によってシール面の機械的な最終加工を実現し、成形のための研削によってその精密加工を実現することができる。下地材料が出るまで除去をすることで、水栓ないし接続管の下地材料と、新たに塗布されるべき材料とのその後の良好な結合が保証される。
【0030】
本方法の別の好ましい実施形態では、加工ステップとして、シール座面を形成する強化外装が接続管の端面に肉盛溶接される。特にこの加工ステップと上に述べたステップとの組み合わせにおいて、次のような手順が可能となる。すなわち修復されるべき水栓で、スライダ取付部品の取外し後に、さしあたりまだ存在しているシール座面ないし最新のシール座面の状態が、光学的ないし機械的に測定される。たとえば、接続管にまだ存在している残りの強化外装の厚さが測定される。次いで、クランプ装置が前述したように取り付けられ、水栓ジオメトリーに関して目標位置へ固定され、それにより、たとえば軸受支持部が水栓における特定された位置の地点で固定点を形成する。次いで、加工機械によって向かい合う接続管のシール座面が下地材料まで旋削され、そして加工機械としての溶接機械ないし溶接装置により、新たな強化外装がシール座面の当初の製造寸法で被着される。次いで、再度旋削装置によってシール座面が当初の製造寸法まで旋削され、最後に研削機で平面平行に精密研削される。このようにして、水栓における正確な幾何学位置に関して、正確な当初のシール面ジオメトリーがオリジナル状態で再び成立する。
【0031】
このように本発明の方法により、新規に設けられ、それに伴って高品質である硬度を新たな強化外装ないし新たなシール座面の形態で、既存の閉止水栓に施すことができる。このとき、たとえば340−400HV(ビッカース硬度)の硬度が可能である。この方法により、新規に設けられたシール面の硬度に基づき、耐用期間と摩耗挙動が明らかに改善される。それによりスライダ自体でも、スライダが固定的に組み付けられたままである配管システムでも、変更は生じない。水栓のスペックは変更されない。水栓が製造された時点における当初の状態が、ほぼ同一のままで再び回復されるからである。予備試験書類の作成が大幅に簡素化される。たとえば原子力発電所では、修理予備試験書類を作成するだけでよい。溶接による水栓の取外しと取付けをするコスト全体が省略され、設備は変更されることがなく、あらためて圧力検査をしなくてよく、いかなる新たな作動試験、静的、動的な計算も不要である。廃棄処理の問題が明らかに最小限に抑えられる。たとえば放射能汚染された古い水栓ハウジングを処理しなくてすむからである。
【0032】
このとき加工機械は5つの軸の自由度を有するのがよく、すなわち、接続管の長手方向への変位と、楔形スライダのさまざまな角度に合わせるためのシール座面に向かう傾きと、長軸を中心とする回転と、長軸に対して垂直方向の変位(1つの平面での運動:2つの自由度)とを有するのがよい。それにより、任意のシール座面を加工することができる。
【0033】
別案の方法態様では、加工ステップとして、シール座面を支持するハウジング座面リングが接続管から分離され、またはこれに溶接される。このような種類の加工ステップにより、シール座面そのものを現場で修復することができない高圧水栓でも補修をすることができる。すなわちこのシール座面は、特別な硬度をもつ多層の層として、相応の座面リングに装着される。そのために、たとえば座面リングの水平方向の支承を可能にする特殊工場が必要である。しかしこの加工ステップにより、座面リングを水栓から外すことができる。座面リングを単独で、大幅に少ないコストで特殊工場へ運ぶことができ、そこで修復することができる。修復後、この座面リングを再び当初の水栓に取り付けることができる。別案として、新しい座面リングを水栓にただちに組み込むこともできる。水栓の残りの部分は設備に残されており、取り替える必要はない。この点でも、通常、認可手続またはその他の追加コストが大幅に削減される。
【0034】
このような種類の加工ステップでは、通常、クランプ装置は加工されるべきであるものと同じ接続管へ挿入される。したがってクランプ装置は、低圧水栓において接続管と向かい合うシール座面を修復するときと同じように、引き続き接続管へ挿入されている。それにもかかわらず、クランプ装置は加工場所の可能な限り近くにある。
【0035】
別の方法態様では、クランプ装置は、クランプ装置の基準点が接続管の中心長軸に位置するように、接続管の中で固定される。それにより、上に述べた幾何学的に正確な、ないしは事前に特定された、クランプ装置または軸受支持部の位置が、水栓の座標系において実現される。そうすれば加工機械の組立て状態のとき、これが軸受支持部に保持されれば、加工機械は常に水栓ジオメトリーにおける既知の位置で位置決めされる。
【0036】
装置に関して本発明の課題は、発電設備や産業設備に組み付けられた閉止水栓の、接続管の端部に配置されたシール座面を加工する請求項7に記載の装置によって解決される。
【0037】
この装置は、閉止水栓のハウジング開口部を通って修復されるべき接続管またはその他の接続管へ挿入可能であるクランプ装置を含んでいる。クランプ装置は軸受支持部を有しており、上に述べた方法の時間のあいだクランプ装置を確実に接続管の中で安定的に固定するために、接続管の内壁と協働する固定部材を含んでいる。さらに本装置は、シール座面での加工ステップを実行するために、ハウジング開口部を通してハウジングへ挿入可能な少なくとも1つの加工機械を含んでいる。加工機械は、軸受支持部で支承可能な1つの軸受を有している。本発明による装置については、すでに本発明による方法との関連で、その利点とともに説明したところである。
【0038】
本発明の特別な実施形態では、固定部材は接続管の内壁に向かって移動可能な油圧シリンダを有している。1つの、または特に複数のこのような油圧シリンダにより、クランプ装置を特別に簡単かつ高い強度で、接続管の中に固定することができる。このときクランプ装置は、通常、円板状または円筒状であり、組付け状態のときに、その横方向平面が接続管の横方向平面と平行に固定される。閉止水栓の外部へと通じる油圧配管により、油圧シリンダを遠隔制御することができる。油圧シリンダが組付け状態で接続管のほぼ半径方向に延びているとき、異なる油圧シリンダを選択的に制御することで、横方向平面におけるクランプ装置の位置を、接続管に対して簡単に変えることができる。
【0039】
別の好ましい実施形態では、クランプ装置は、接続管の内面に当接可能な少なくとも2つの測定プローブを含んでいる。これらの測定プローブにより、接続管の中でのクランプ装置の実際の位置を判定し、クランプ装置を特に制御可能な油圧シリンダとともに組み合わせて自動調節システムにすることができ、それにより、たとえばクランプ装置が接続管の中で、その中心長軸に対して自動的にセンタリングされる。換言すると、こうした相応の制御によって自動調節式の測定プローブが得られる。
【0040】
本発明の別の実施形態では、軸受支持部は固定可能なクイック・クランプ・マウントである。その別案または追加として、軸受はローラヘッドまたはボールヘッドである。クイック・クランプ・マウントにより、加工機械をその軸受により特別に迅速かつ簡単に、クランプ装置へ固定することができる。他の加工機械との交換も、迅速かつ簡単に可能である。この固定可能性により、軸受と軸受支持部との間の、およびこれに伴って加工機械とクランプ装置との間の、相対的な位置を固定することができる。そのようにして、たとえば加工ステップ中に加工機械の特定された初期位置を維持するために、ないしは加工機械により保持される旋削工具のような工具を維持するために、加工機械を水栓の規準系で不動に固定することもできる。ローラヘッドにより、加工機械は運動性のただ1つの自由度しか与えられず、すなわち、ローラ軸を中心とする回転運動を行う。このことは、たとえば加工機械を楔形スライダシール座面の楔角に合わせて調整しようとする場合に特別に望ましく、そこでさまざまな角度をとることができる。それに対してボールヘッドは、2つの軸を中心とする加工機械の相応の傾きを可能にするが、たとえば接続管の軸方向における平面での固定は与えられたまま保たれる。
【0041】
別の好ましい実施形態では、軸受支持部はクランプ装置に固定して配置されており、さらに、クランプ装置の調節によって接続管の中で接続管の中心長軸上でセンタリング可能であるように、クランプ装置に配置されている。すなわち換言すると、クランプ装置は常に、軸受支持部が接続管の中心長軸上でセンタリングされるように、接続管の中で調節することができる。そのように軸受支持部は、加工機械のそれぞれの軸受のための標準化された出発点を形成する。そのようにして加工機械の開発にあたって、たとえばその軸受が加工時点で接続管の中心長軸上にあることを常に前提とすることができる。そのようにして、加工ジオメトリーを特別に簡単に設定することができる。
【0042】
別の好ましい実施形態では、加工機械は、軸受を含む、組付け状態のときにハウジング開口部から突出する剛直な本体支持体を有している。加工ヘッドが同じく本体支持体に固定して取り付けられており、それにより、その本体支持体に対する傾斜角は変わることがない。このような種類の装置の帰結として、シール座面に対する加工ヘッドの傾斜角の変更は、軸受支持部における本体支持体の傾きによってのみ引き起こされる。さらにこの傾きは、水栓ハウジングの外部から簡単に、たとえばゲージや連結リンクを用いて手動式に、調整することができる。換言すると本体支持体は、ハウジング開口部の外部からアクセス可能かつ操作可能である、シール座面に対する加工ヘッドの傾きを変えることができる一種のレバーを形成する。このことも、閉止水栓に対する加工機械およびこれに伴うシール座面の目標傾斜を、特別に簡単な仕方で調整するために適している。
【0043】
この実施形態の1つの変形では、加工機械は、組付け状態のときにハウジングの外部に位置する駆動部を備える旋削機械または研削機械である。本体支持体は、駆動部を加工ヘッドと連結するシャフトアームを形成する。加工ヘッドは、1つの回転軸を中心として回転可能な旋削部材または研削部材を担持しており、この回転軸はシャフトアームに対して固定された相対位置を有している。つまりそのようにして、組付け状態のときにシャフトアームの運動によって水栓ハウジングの外部から作業平面を調整することができる研削機械ないし旋削機械が得られる。
【0044】
上述した方法における研削ステップは、たとえば従来式のスライダ研削機械を用いて行うこともできる。しかし本発明による装置の旋削機械および研削機械により、一般に1つの設備において別個の研削機械が必要なくなり、このことは、ひいては保守整備機械のコスト全体を削減する。本発明の装置によって、あらゆる作業を実施することができる。
【0045】
この発明態様の別の実施形態では、旋削機械または研削機械は、たとえば旋削工具は、回転軸に対して半径方向と長手方向にのみ工具として送り可能である。すなわち接続管の中心長軸の長手方向における軸方向ならびに半径方向の工具の作用位置は、この送りによって惹起される。それに対して作用位置の平面の位置は、シャフトアームの調節によって実現される。
【0046】
別の好ましい実施形態では、加工機械は溶接機械ないし溶接設備であり、組付け状態のときにその供給ユニットが、たとえば電圧供給部および制御部が、ハウジングの外部に位置している。ハウジングの内部には、軸受を有する本体支持体が位置している。本体支持体には、溶接材料容器と、1つの回転軸を中心として回転可能な溶接ヘッドとが配置されている。この回転軸は、たとえばシール面の目標平面に対して、すなわち接続管の中心長軸に対して垂直方向に位置している。
【0047】
特別に好ましい実施形態では、溶接機械はティグ円周溶接設備ないしティグ円周溶接機械である。これは、溶接ヘッドと工作物との間隔が溶接設備自体によって制御されるという利点を提供する。したがってこの溶接設備は、シール座面の横方向平面に関してのみ正確にセンタリングすればよい。
【0048】
別の好ましい実施形態では、加工機械は、ハウジング開口部に固定可能な保持部を含んでいる。たとえば支持プレートが低圧水栓のフランジに、または高圧水栓のドーム部に固定され、さらに支持プレートには加工機械の一部を、たとえば本体支持体ないしシャフトアームを、固定可能である。そのようにして、組付け状態のときに加工機械全体が少なくとも意図せず外れないように、ただし多くの場合においては閉止水栓における特定された場所位置で、固定される。特に頭上に組付けられた閉止水栓の場合、そのようにして加工機械がその組付け位置ないし作業位置で確実に保持される。
【0049】
この態様の好ましい実施形態では、保持部は加工機械の組付け状態のときに、軸受における加工機械の位置の変更と固定を可能にする。このことはたとえば、上に述べた楔形スライダのシール座面の当て付け角の態様との関連で、たとえば加工機械ないしその工具の通常の3°または7°の傾斜姿勢での固定が可能であるときに有意義である。
【0050】
本発明のさらに詳しい説明のために、図面の実施例を援用する。図面はそれぞれ模式的な略図で次のものを示している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】閉止水栓としての低圧楔形スライダである。
【図2】図1の水栓を分解した状態で示す図である。
【図3】クランプ装置と旋削・研削機械が挿入された図2に対応する水栓である。
【図4】図3の水栓を溶接機械とともに示す図である。
【図5】クランプ装置と旋削機械が挿入された高圧水栓である。
【図6】図5の部位VIの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、任意の発電設備または産業設備の代表として、たとえば発電設備のような設備2の配管4の一部分を示している。配管4には、本例では低圧閉止スライダである閉止水栓6が組み込まれている。閉止水栓6は定置の構成要素として2つの接続管8a,bを有しており、これらを介して配管4と固定的に溶接されている。接続管8a,bは水栓6のハウジング10の一部であり、このハウジングは、フランジ12のところにハウジング開口部14を有する。図1は最終組付けされた状態の閉止水栓6を示しており、すなわちこれは、スピンドル18を支持するハウジングカバー16がフランジ12に組み付けられたときである。スピンドル18はその一方の端部がハンドル車20で終わっている。スピンドル18の他方の端部には、2つのシールプレートの形態のシール部材22がある。シール部材22は、ハウジング10の内部で接続管8a,bの端面側の端部に配置された2つのシール座面24a,bと協働する。シール座面24a,bは、接続管8a,bの下地材料34の上に、本例では17%のクロム鋼からなる強化外装36が、それぞれの端部26に端面側で肉盛溶接されるように構成されている。ハウジングカバー16、スピンドル18、ハンドル車20、およびシール部材22は、閉止水栓6のいわゆるハウジング取付部品32を共同で構成し、これらはすべてハウジング10から取外し可能である。
【0053】
図1では、閉止水栓6は閉じられた状態で示されており、すなわちシール部材22がシール座面24a,bに当接している。水栓6を開くにはハンドル車20を矢印28の方向へ回し、それに応じてスピンドル18が、シール部材22を矢印30の方向へシール座面24a,bから持ち上げる。すると接続管8a,bの端部26は完全に開かれ、図示しない媒体が両方向に妨げられることなく配管4を通って流れることができる。
【0054】
閉止水栓6を作動させることで、シール座面24a,bは著しく摩減する。閉止水栓6をこの点に関して修復しなくてはならない。本発明によると、閉止水栓6はその場合、配管4の中にとどめられる。
【0055】
第1の方法ステップa)では、まずすべてのハウジング取付部品32が取り外される。図2は、ハウジング取付部品32が取り外された図1の閉止水栓6を示している。ハウジング開口部14が開いており、すなわち、ハウジング10の内部が外部空間44からアクセス可能である。さらにこのようにして、ハウジング開口部14を通してシール座面24a,bの中を目視可能であり、光学式に、ないしは図示しないノギス等の測定装置を用いて計測することができる。こうしてシール座面24a,bの最新の状態を判定することができる。特に、たとえばシール座面24a,bがどれだけの厚さdをまだ有しているかを確認することができる。閉止水栓6の作動により、強化外装36は破線で図示する水栓6の製造時点での当初の厚さd0から、厚さdに減少している。
【0056】
シール座面24a,bを修復するために、引き続き次のように手順を進める。ハウジング開口部14を通して、図3に示すようにステップb)で、矢印38の方向にクランプ装置40が接続管8aの中に取り付けられる。クランプ装置40はほぼ円板状に構成されており、ストッパ42を有しており、このストッパによってシール座面24aの上に載る。外部空間44へと通じる油圧配管46を介して、クランプ装置40に取り付けられた油圧シリンダ48が、接続管8aの内壁50に押しつけられる。それにより油圧シリンダ48は、クランプ装置40が接続管8aの中で固定される固定部材の一部となる。これらは実質的に半径方向へ可動である。それによりクランプ装置40は、接続管8aの中で確実に固定される。接続管8aの中でのクランプ装置40の半径方向の位置を、接続管の中心長軸52に合わせて正確にセンタリングするために、クランプ装置40は、半径方向外側を向く測定プローブ54をさらに有しており、この測定プローブにより、内壁50に対するクランプ装置40の間隔を、測定プローブ54のそのつどの位置で測定することができる。油圧シリンダ48は、最終的にクランプ装置40をセンタリングするために相応に制御される。図3は、最終調節された組付け状態Mでのクランプ装置40を示している。
【0057】
クランプ装置40は、組付け状態Mのときにハウジング10の内部に位置し、ないしはそのほうを向き、ハウジング開口部14からアクセス可能な軸受支持部56を有している。さらに、基準点57すなわち軸受支持部56の中心点が、中心長軸52の上に位置している。この基準点は、以下に説明するように連結されるべき軸受64のための、固定された幾何学的な出発位置としての役目をする。
【0058】
ステップc)では、矢印38の方向に加工機械58が、同じくハウジング開口部14を通してハウジング10へ挿入される。加工機械58は、図3では、本体支持体60としてシャフトアーム62を有する旋削機械である。本体支持体60には、軸受支持部56にぴったりはまる軸受64が固定して取り付けられている。図3は、加工機械58を同じく組付け状態Mで示しており、すなわちこれは、軸受64が軸受支持部56へ挿入され、ないしはそこで支承されているときである。組付け状態Mのときにハウジング10から外へ突出するシャフトアーム62の端部には、駆動部66が取り付けられており、これと向かい合うシャフトアーム62の端部には加工ヘッド68が取り付けられている。加工ヘッド68は、シャフトアーム62の長軸76に対して固定的な、本例では90°の角度を有する回転軸74を中心として回転可能である。加工ヘッド68には、加工工具ないし工具として、回転軸74に関して半径方向80と軸方向82へのみシャフトアーム62に対して相対的に送り可能である旋削工具78が保持されている。このことは、調節ねじ84と平面スライダ86によって実現される。
【0059】
加工機械58は、一方では軸受64により軸受支持部56およびクランプ装置40を介してハウジング10に固定ないし支承されており、このとき軸受64と軸受支持部56によって可能となる自由度に基づいてのみ回動可能である。他方では加工機械は、もう1つの点で支承されている。すなわちフランジ12には保持部70がねじ止めされており、さらにこの保持部には、シャフトアーム62を案内するスライド72が調節可能に組み付けられている。
【0060】
シール座面24bは、その平行平面88が水栓6の中心平面90に対して所定の角度αをなすように加工される。この閉止水栓6は楔形スライダだからである。換言すると、加工機械58は接続管8bに対して然るべく当て付けられなければならない。回転軸74は長軸76に対して固定されているので、角度αは、スライド72を矢印92の方向へ移動させ、そのようにしてシャフトアーム62が軸受支持部56で傾けられることによって調整される。正しい角度αは、シャフトアーム62に組み付けられた傾斜測定器94によって管理される。
【0061】
方法ステップd)では、加工ステップB1がシール座面24bにおいて実行される。すなわち旋削工具78を半径方向80と軸方向82へ送ることで、まだ存在している厚さdの強化外装36が接続管8bから削り取られる。こうして以後の安定した肉盛溶接のために、下地材料34が再びアクセス可能となる。
【0062】
ステップe)では、加工機械58が軸受支持部56から外されて、ハウジング開口部14を通して矢印38と反対の方向へ閉止水栓6から取り出される。シール座面24bの修復はまだ完了していないので、ステップf)では、ステップc)からe)が加工機械58を取り替えて相応の回数だけ反復される。
【0063】
図4では、矢印38の方向に、ティグ円周溶接機械の形態の別の加工機械58がハウジング開口部14を通ってハウジング10の中へ挿入される。加工機械58は同じくその本体支持体60に軸受64を有しており、これによって軸受支持部56で固定される。この場合にも本体支持体60は、加工機械58を組付け位置Mで固定するために、やはり保持部70に固定される。このことは、固定アーム95を介して行われる。本体支持部60は供給配管96を介して、外部空間44に配置された供給モジュール98と接続されている。この供給モジュールは、たとえば溶接装置のための電源や制御部を含んでいる。本体支持体60には、ワイヤロール状の溶接材料容器100、ワイヤ送り102、およびティグ溶接トーチ104が配置されている。回転駆動部106ならびに半径方向スライド108および軸方向スライド110を介して、ティグ溶接トーチ104は常に自動的に、溶接されるべき物体すなわち接続管8bの端部26から正しい間隔に保たれる。
【0064】
図4に示す加工ステップB2の間に、新しい強化外装36(破線で図示)が接続管8bに肉盛溶接される。加工ステップB2が終わるのは、強化外装36が、後加工に利用される一定の余裕分を含めて当初の厚さd0に達したときである。すると加工機械58は、矢印38と反対の方向に、再びハウジング10から取り外される。
【0065】
その後に次の方法ステップf)が続く。図3に示すように、加工機械58として旋削工具が再度使用される。これによって新たに被着された強化外装36が、加工ステップB3で、厚さd0の当初寸法になるまで削り取られる。そして加工機械58において、旋削工具78が工具としての研磨工具112と取り替えられる。これにより、最後の加工ステップB4で、シール座面24bが強化外装36の表面として最終加工され、ないしは平滑に研磨される。
【0066】
最後に、加工機械58がまず取り外される。シール座面24bの加工はすでに完了しているので、次いで方法ステップg)で、クランプ装置40もハウジング10から外されて取り出される。
【0067】
そして場合により、すでに加工されている接続管8bへクランプ装置40が挿入され、上に説明したのと同じ仕方で、シール座面24aが厚さd0の当初寸法になるように復旧される。
【0068】
図5は別案の閉止水栓6として、同じくハウジング10ならびに接続管8a,bと、シール部材22と、スピンドル18と、ハンドル車20と、ハウジングカバー16とを有する高圧スライダを示している。しかし低圧スライダとは異なり、それぞれハウジング10の内部のほうを向いている接続管8a,bの端部26には、座面リング114a,bが溶接されている。これがシール座面24a,bをそれぞれ担持する。
【0069】
その修復は、上に述べたのと同じ内容の各ステップを含んでいる。ただし上に述べたのとは異なり、シール座面24a,bはそれ自体がその場で修復されるのではなく、座面リング114a,bとともに水栓6から取り外され、外部で修復もしくは交換される。そして修復された、または新しい座面リング114a,bが、再び溶接される。
【0070】
閉止水栓6を修復するために、同じく全部のハウジング取付部品32(シール部材22、スピンドル18、ハウジングカバー16など)が取り外され、それによってハウジング開口部14が残り、これを通じてハウジング10の内部がアクセス可能となる。図3に示す手順に準じて、同じくクランプ装置40が接続管8aの内部へ全面的に入る。この接続管は、中心長軸52に対してセンタリングして固定するために、相応に油圧シリンダ48と測定プローブ58を装備している。軸受支持部56に同じく加工機械58を設置することができる。加工機械58は同じく矢印38の方向でハウジング10の内部に挿入され、ないしは、本例では接続管8aの内部へも挿入される。しかし上述したのとは異なり、クランプ装置は、シール座面が修復されるべきである同じ接続管の中にとどまっている。
【0071】
図6は、図5の部位VIの詳細を示している。溶接継目116を介してハウジング10ないし接続管8aと結合された座面リング114aを見ることができる。クランプ装置40は油圧シリンダ48により、接続管8aの内壁50に支持される。軸受支持部56で、加工機械58が軸受64により保持される。加工機械58は同じく旋削工具78を工具として備える旋削機械であり、これが溶接継目116を分断する。そして座面リング114aを外し、ハウジング開口部14を通して取り出すことができる。引き続いて加工機械58は、代替の工作機械58の形態の図示しない溶接ユニットないし溶接機械と取り替えられ、これが新しい座面リング114aないし修復された座面リング114aを、図6に示す初期状態になるように再び溶接する。この場合にも、保持部40はすべての加工ステップのあいだ恒常的に応力をかけられ、そのようにして、相応の加工ステップを幾何学的に正確に互いに適合させるために、連結されるべき加工機械58の基準位置を軸受支持部56によって形成する。
【0072】
別案の実施形態では、新たに挿入されるべき座面リング114aには、加工時に発生する溶接ガスを排出するために、ガス抜きスリット118(図6に破線で図示)がある。
【0073】
さらに図6は、高圧シール座面において、これが多層の強化外装36の形態で座面リング114aに被着され、ハウジング10ないし接続管8aに直接的に被着されるのではないことを示している。
【符号の説明】
【0074】
6:閉止水栓、8a,b:接続管、10:ハウジング、14:ハウジング開口部、24a,b:シール座面、40:クランプ装置、48:油圧シリンダ、54:測定プローブ、56:軸受支持部、57:基準点、58:加工機械、60:本体支持体、64:軸受、68:加工ヘッド、74:回転軸、78:旋削部材、98:供給ユニット、100:溶接材料容器、104:溶接ヘッド、112:研削部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備や産業設備(2)に組み付けられた閉止水栓(6)の、接続管(8a,b)の端部(26)に配置されたシール座面(24a,b)を加工する方法において、次の各ステップを有している、すなわち、
a)水栓上側部分(16)と複数のハウジング取付部品(32)が前記閉止水栓(6)のハウジング(10)から取り外され、それによってハウジング開口部(14)が解放され、
b)1つの軸受支持部(56)を有するクランプ装置(40)が前記ハウジング開口部(14)を通して前記接続管または別の接続管(8a,b)へ挿入されて、その内壁(50)に固定され、
c)前記ハウジング開口部(14)を通して1つの軸受(64)を担持する加工機械(58)が前記ハウジング(10)の中に挿入されて、前記軸受(64)により前記軸受支持部(56)に支承され、
d)前記加工機械(58)によって前記シール座面(24a,b)において加工ステップ(B1−4)が実施され、
e)前記加工機械(58)が前記軸受支持部(56)から外されて、前記ハウジング開口部(14)を通して取り出され、
f)必要に応じて前記ステップc)からe)が別の工作機械もしくは同じ工作機械(58)で反復され、
g)前記クランプ装置(40)が前記接続管(8a,b)から外されて、前記ハウジング開口部(14)を通して取り出され、
h)前記水栓上側部分(16)と前記取付部品(32)が前記ハウジング(10)に取り付けられる方法。
【請求項2】
前記加工ステップ(B1−4)として前記ハウジング(10)の内部のほうを向く前記接続管(8a,b)の端面が旋削または研削される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工ステップ(B1−4)として前記シール座面(24a,b)を形成する強化外装(36)が前記接続管(8a,b)の端面に肉盛溶接される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加工ステップ(B1−4)として前記シール座面(24a,b)を担持するハウジング座面リング(114a,b)が前記接続管(8a,b)から分離され、またはこれに溶接される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記クランプ装置(40)は前記ハウジング(10)の内部のほうを向く前記接続管(8a,b)の端面にストッパ(42)が当接するまで前記接続管(8a,b)に挿入される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記クランプ装置(40)は前記クランプ装置(40)の基準点(57)が前記接続管(8a,b)の中心長軸(52)上に位置するように前記接続管(8a,b)の中で固定される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
発電設備や産業設備(2)に組み付けられた閉止水栓(6)の、接続管(8a,b)の端部(26)に配置されたシール座面(24a,b)を加工する装置において、
前記閉止水栓(6)のハウジング開口部(14)を通って前記接続管または別の接続管(8a,b)へ挿入可能であるクランプ装置(40)を有しており、該クランプ装置は、1つの軸受支持部(56)と、前記接続管(8a,b)の内壁(50)と協働する1つの固定部材(47)とを含んでおり、
前記シール座面(24a,b)で加工ステップ(B1−4)を実行するために前記ハウジング開口部(14)を通して前記ハウジングへ挿入可能な少なくとも1つの加工機械(58)を有しており、前記加工機械(58)は前記軸受支持部(56)で支承可能な1つの軸受(64)を有している装置。
【請求項8】
前記固定部材(47)は前記接続管(8a,b)の内壁(50)に向かって移動可能な油圧シリンダ(48)を含んでいる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記クランプ装置(40)は前記接続管(8a,b)の内壁(50)に当接可能な少なくとも2つの測定プローブ(54)を有している、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記軸受支持部(56)は固定可能なクイック・クランプ・マウントであり、および/または前記軸受(64)はローラヘッドまたはボールヘッドである、請求項7から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記軸受支持部(56)は前記接続管(8a,b)の中での前記クランプ装置(40)の調節によってその中心長軸(52)に合わせてセンタリング可能であるように前記クランプ装置(40)に固定して配置されている、請求項7から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記加工機械(58)は、組付け状態(M)のときに前記ハウジング開口部(14)から外に突出する、前記軸受(64)を担持する剛直な本体支持体(60)と、前記シール座面(24a,b)に対する傾きに関してこれに固定的に取り付けられた加工ヘッド(68)とを有しており、それにより、前記閉止水栓(6)の中心平面(90)に対する前記加工ヘッド(68)の傾斜角(α)の変更は前記軸受支持部(56)での前記本体支持体(60)の傾きによって惹起される、請求項7から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記加工機械(58)は、組付け状態(M)のときに前記ハウジング(10)の外部に位置する駆動部(66)と、前記駆動部(66)から加工ヘッド(68)まで達する、前記本体支持体(60)を形成するシャフトアーム(62)とを備える旋削機械または研削機械であり、前記加工ヘッド(68)は回転軸(74)を中心として回転可能な旋削部材(78)または研削部材(112)を含んでおり、前記回転軸(74)は前記シャフトアーム(62)に対して固定的な相対位置を有している、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記旋削部材(78)または前記研削部材(112)は前記回転軸(74)に関して半径方向(80)と軸方向(82)でのみ送り可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記加工機械(58)は、組付け状態(M)のときに前記ハウジング(10)の外部に位置する供給ユニット(98)と、前記ハウジング(10)の内部に位置する、前記軸受(64)を有する本体支持体(60)とを備える溶接機械であり、該本体支持体には、溶接材料容器(100)と、回転軸(74)を中心として回転可能な溶接ヘッド(104)とが配置されている、請求項7から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記溶接機械はティグ円周溶接機械である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記加工機械(58)は前記ハウジング開口部(14)に固定可能な保持部(70,95)を含んでいる、請求項7から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記保持部(70,95)は前記加工機械(58)の組付け状態(M)のときに前記軸受支持部(56)における前記加工機械(58)の位置の変更と固定を可能にする、請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−510008(P2013−510008A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535879(P2012−535879)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066780
【国際公開番号】WO2011/054891
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(501315289)アレヴァ エンペー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (61)
【Fターム(参考)】