説明

閉鎖型植物栽培法

【課題】 稼働率が高く育苗の商業生産にも適用可能な、噴霧水耕法を用いた閉鎖型植物栽培法の提供。
【解決手段】 (1)密閉され断熱された冷暖房完備の栽培室内で、3波長型蛍光灯を用いた人工照明により、多段式栽培棚を用いて栽培することを特徴とする閉鎖型植物栽培法。
(2)栽培室の内面を断熱性の発砲スチロールで覆う(1)記載の閉鎖型植物栽培法。
(3)COを施用して生育を促進させる(1)又は(2)記載の閉鎖型植物栽培法。
(4)冷房時にエアコンの冷却板で凝結した水を潅水に再利用する(1)〜(3)の何れかに記載の閉鎖型植物栽培法。
(5)植物の栽培が育苗である(1)〜(4)の何れかに記載の閉鎖型植物栽培法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉状態の栽培室で人工照明により植物を栽培する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸作物の生産は、育苗、栽培、収穫の3段階からなる。特に苗の品質が作物の収量と品質に大きく影響することは周知である。従って大型栽培施設向けに、周年に亘り最良の苗を低コストで供給できる育苗システムが必要であるが、従来の温室を利用した育苗では能率が悪く、大きなコストを掛けなければ良い苗を安定に大量生産できない。また、今までの育苗の現場では、気象条件により生産の量と時期が不安定になるし、人手を多く必要とするにも拘わらず育苗施設の稼働率が低く、かつ害虫の侵入も防げないため、定植後に被害が生じる。
また、近年では、育苗と栽培が分業化され、苗の商業的な生産と流通が進みつつある。今後、育苗と栽培・収穫の業種的な分業が更に進み、商業的に流通する苗の需要は益々増大すると考えられる。育苗と栽培が分離する大きな理由は、専業化により苗の品質と生産性が向上する点にある。栽培農家が自家育苗する場合と比較すると、明らかに商業生産された苗に軍配が挙がる。また、栽培農家の規模が拡大する傾向にあることから、購入苗を用いた栽培専門業者が増大し、苗の商業生産が拡大されることになる。
更に21世紀には、都市緑化、植林、砂漠の緑化、食糧増産などの事業が大幅に拡大するので、苗の需要も膨大なものとなる。従って育苗産業は、国内はもとより世界的に拡大するものと思われ、苗の商業生産に適した育苗システムの開発が待望されている。
【0003】
一方、近年、噴霧水耕栽培法(噴霧耕或いはミスト栽培法ともいう)という方式が注目され研究が進められている(例えば特許文献1参照)。噴霧耕は、養液(液肥)を噴霧ポンプでミスト状にして根に間歇的に吹き付ける方式であり、根が溶液中に浸らず空中に支えられているので水耕栽培における呼吸障害を回避することができる。
現在実際に生産圃場で採用されている噴霧耕では、ポリウレタンに定植された苗を穴あきパネルに差し込み、パネルを斜めに固定して下部から養液ミストを散布しており、レタスの栽培を行っている。人工光源を用い完全な温度管理とCOの付加施用を行なうことによる短期促成栽培を目指す植物工場で採用され、また農業試験所又は農学部や専門学校で様々な研究が盛んに行われている。しかし、これらの噴霧耕には多くの問題点があったため、本出願人は、従来の噴霧耕を改良した発明を出願すると共に実際に生産を開始している(特許文献2、及び特願2004−227234号参照)。本発明は更に噴霧耕を閉鎖型植物栽培法に応用するために研究開発したものであるが、このような閉鎖型植物栽培法に応用した例、特に育苗に応用した例は、本発明者の知る限り見当たらない。
【0004】
【特許文献1】特開平7−213180号公報
【特許文献2】特開2003−274774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商業生産からみた育苗専用施設の最大の問題点は、その稼働率の低さにある。稼働率が低いと、育苗面積(m)当たりの苗の年間売上げを約10〜20万円にすることは難しい。特に我が国では、夏の高温のため温室内で育苗しにくいことが、育苗施設の稼働率を低くする大きな要因となっている。夏の温室内の過高温を避けるために、現在、我が国の大手苗生産業者は、東北・北海道から九州・沖縄に渡り数箇所の生産地を確保して、季節毎に生産地を変えて苗生産を行っているので、各地域の苗生産用温室の稼働率は益々低くなる状況にある。また、夏の温室内の過高温を避けるため温室の窓を開け放つと害虫が侵入するし、害虫の侵入を阻止するために窓に防虫網を貼ると温室内が過高温になる。更に害虫の蔓延を防ぐための農薬散布は作業者及び消費者の健康・安全の点で好ましくない。
育苗施設の稼働率の低さは、栽培期間が数ヶ月以上の作物で、苗の需要が春や秋に集中する場合にも大きな問題となる。これに対し、栽培期間が1ヶ月程度のホウレンソウ、サラダナ、ハネギなどのように、苗の周年生産が必要な作物を対象とする場合は、育苗施設を周年に亘って利用できるので施設の稼働率は高い。また、栽培期間が2〜3ヶ月程度の1〜2段取りトマトなどにおいても稼働率はかなり高い。特に、育苗施設と苗の貯蔵施設を併用すれば施設稼働率は高くなる。
【0006】
育苗施設の稼働率を高める対策としては、多種類の園芸作物の苗を対象としたり、育苗の端境期に苗ではなく葉菜類(サラダ菜など)の生産を行う方法もある。
しかし、上述のような稼働率の向上方法を採用したとしても、夏期の温室内の過高温による育苗の問題は解消できないし、夏期には害虫の大量発生も問題となる。逆に冬期には光量不足や低温による育苗期間の延長を防止することが重要で難かしい問題である。
一方、先進国の高齢化と発展途上国の人口増加により、厚生医療費の社会的負担が世界的に増大しているため、総合的効果を有する薬草の役割は今後益々大きくなる。従って、合成薬に代わる漢方薬などの需要が高まると予想されるが、需要の増加に伴い山野で略奪的に採取してきた薬草が枯渇することは必至であり、薬用植物栽培の必要性が増すものと考えられる。また、健康指向から、サラダ菜などの清浄野菜類の効率的な無農薬栽培法も待望されている。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、稼働率が高く育苗の商業生産にも適用可能な、噴霧水耕法を用いた閉鎖型植物栽培法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、次の1)〜5)の発明によって解決される。
1) 密閉され断熱された冷暖房完備の栽培室内で、3波長型蛍光灯を用いた人工照明により、多段式栽培棚を用いて噴霧水耕法で栽培することを特徴とする閉鎖型植物栽培法。
2) 栽培室の内面を発泡樹脂からなる断熱材で覆う1)記載の閉鎖型植物栽培法。
3) COを施用して生育を促進させる1)又は2)記載の閉鎖型植物栽培法。
4) 冷房時にエアコンの冷却板で凝結した水を潅水に再利用する1)〜3)の何れかに記載の閉鎖型植物栽培法。
5) 植物の栽培が育苗である1)〜4)の何れかに記載の閉鎖型植物栽培法。
【0008】
以下、上記本発明について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1に本発明で用いる栽培室の一例を示す。本発明では、密閉空間を形成できる閉鎖型栽培室を用意し、室の内面のなるべく多くの部分、好ましくは内面全体を発泡ポリスチレンなどの発泡樹脂からなる断熱材で覆って熱的に室外環境と遮断する。例えば、天井や壁の部分には断熱材を貼り、床には、強度の大きい断熱材を用いるか、又は発泡ポリスチレン板などの強度の小さい断熱材を床に敷き詰めたのち強度の大きい板材などで覆うようにすればよい。断熱材の厚さは断熱効果を基準として適宜決定する。発泡ポリスチレン板の場合、10cm程度の厚さにすれば、ほぼ完全に断熱できる。
栽培室内には、図に示すように多段式栽培棚を設置する。栽培棚の配置は作業性などを考慮して適宜決定すればよい。また、図では、エアコン、養液供給機器、CO施用機器、温度や湿度などの制御システムを収納するシステムスペースが用意されている。
【0009】
図2に多段式栽培棚の一例を示す。図2(a)が正面図、図2(b)が側面図である。図のような多段式架台の各段に栽培パネルを載せて栽培棚とする構造が簡便で好ましい。栽培棚の段数は多いほど省スペースになるので好ましいが、各段の上部には植物が生長するための空間が必要であり、下部には根に養液を噴霧するための空間が必要であるから、作業性も考慮すると通常は2〜4段程度が適当である。図は3段の例である。各段の下部空間には養液のミスト散布装置(例えばミストノズルを一定間隔で有する塩ビ製の養液配管)を設ける。これにより養分や水分を完全に管理することが可能となる。養液ミストは霧状に散布することが望ましく、液滴の大きさは50μm以下が好ましい。養液は植物の種類に合わせて適宜選択可能であるが、安全性の点から人工的な添加物を含まないものが好ましい。各段の底部には、ミスト散布後の余剰養液を回収するためのドレーンパンを設け、養液回収配管を介して養液供給源に戻し循環利用する。各段の下部の両側面はビニールシートなどのミスト遮蔽シートで覆い下部空間を簡易なミスト散布室とする。栽培パネルを載せる架台用資材には建築用足場パイプや農業用亜鉛メッキ鋼管等を利用するとコストが安くなる。また架台の下部にベースプレートを設置して不整地に対応できるようにすると共に、接続金具によりパイプや鋼管を現場で組み立てる極めて簡易な構成の架台とし、ミスト散布室の遮蔽も農業用PO(ポリオレフィン)を用いてビニペットで固定するようにすれば、一層簡素でローコストな省力型施設とすることができる。
【0010】
栽培室は完全冷暖房とするが、ヒートポンプエアコンなどによる簡易空調を行えば稼動費用を安くできる。また、栽培室の内面全体を断熱材で覆うことにより、壁や床などを通じて外に逃げる熱を極端に少なくすることができ、極寒でも暖房費は温室の数%で済む。寒地の温室では冬季の暖房費が生産費の15〜20%を占めることもあるから、本発明によれば大幅な経費節減になる。また、栽培室の内面全体を断熱材で覆うことにより、壁や天井などを通じて外から入ってくる熱を非常に少なくすることができ、冷房負荷は照明に伴う発熱を打ち消すための負荷にほぼ等しくなるので、照明の時間と光強度が年間を通じて変わらなければ冷房負荷も殆ど変化しない。冷房用の電気代は、照明を含む全電気代の15〜20%である。家庭用エアコンの成績係数(Coefficent Of Pefomance)は夏期で4以上、冬期で8〜10である。なお、本発明では、害虫の侵入とCOの室外への流失を防ぐために、外気温が室内気温より低い時でも換気はせずにエアコンで管理することが好ましい。
【0011】
人工照明には発熱量の少ない3波長型蛍光灯を用いる。白熱灯やNaランプは発熱量が多くて栽培棚の段数を多くできないので用いない。3波長型蛍光灯を用いると省エネにもなる。また、3波長型110W蛍光灯を2灯用いれば、栽培パネル上面で15000LUX位の照度が得られる。これにより、従来の育苗における3000〜5000LUXに比べて、光照射の効率が各段に向上するし、15000LUXあるので、育苗以外の植物栽培にも適用可能となる。更に、光源の波長組成などの工夫により草姿や発色などを制御し、短期間に付加価値を高めることも可能である。
栽培パネルは、例えば図3(a)〜(c)又は図4(a)〜(c)に示すような形状としプラスチックなどで作成する。栽培パネルの底面には、ピートポットなどの栽培容器を支持するために多数の穴を開ける。図3は断面が四角いピートポット(ピートモスで作ったポット)用の場合であり、45ミリ角の穴が80個あけてある。また図4は断面が丸いピートポット用の場合であり、直径70ミリの穴が42個あけてある。
栽培容器の形状、構造は、栽培パネルの穴に嵌め込めるものならば特に限定はないが、抜け落ちないように上部よりも下部の径が小さいものを用いる。培地には通常、ピートモスを主成分とし微量要素を高めるため土を混ぜたものを用い、培地の深さは通常5〜10cm程度とする。
【0012】
本発明の好ましい態様ではCOを施用して生育を促進させる。栽培室が密閉されておりCOが室外へ流失しないので、施用したCOを高い効率で利用することができる。例えば育苗に応用した場合、施用したCOの80〜90%が植物光合成に利用されて炭酸同化作用により固定される。また、暗期に植物の呼吸により放出されたCOも明期の開始と共に再利用される。育苗に応用した場合のCO価格は、一苗当り0.01円程度でありCO施用装置は10万円程度である。
更に、冷房時にエアコンの冷却板で凝結した水を潅水に再利用すれば、潅水のために供給する正味の水量は温室の場合の数%で済む。例えば育苗に応用した場合、再利用法によれば水の利用効率は98%程度になるが、エアコンで除湿された水蒸気を廃棄した場合には、水の利用効率は5〜6%程度である。
【0013】
以上のような閉鎖型植物栽培法を採用すると、従来法に比べて、上述した種々の利点や特徴点の他に、次のような利点がある。
(1)多段式栽培棚を用いたことにより、通常の温室に比べて床面積が非常に小さくて済み、生産性が向上する。しかし、初期設備投資費用は温室と変らない。例えば育苗の場合、通常の温室に比べて生産性が約6倍以上になり(温室に比べて床占有率0.3、成長速度1.4倍、苗の歩留まり1.3倍、即ち、1.4×1.3÷0.3=約6倍)、床面積は温室の約1/6以下で済む。
(2)床面積が小さいから、栽培室内での運搬や作業に関する移動距離が短縮され、運搬設備費、運搬費、人件費、土地などを削減できる。
(3)床面積が小さく人工培地を用いるので温室、倉庫、建物の屋上などに設置できる。
(4)換気のための設備費、運転費は無視できるほど小さい。
(5)電気代は、寒地の温室における補光のための電気代の2〜3倍で済む(温室の場合には、この電気代の他に多額の暖房用燃料費が必要である)。例えば、育苗の場合、苗1本当たりの電気代を1円以下(苗販売価格の1〜5%程度)に抑えることができる。
(6)栽培環境が外界の気象に殆ど影響されないので、栽培環境の制御が容易かつ正確になり、理想的環境で栽培できる。また、前述した夏期や冬期に特有の問題も解消されるので稼働率が格段に高まる。更に、環境制御装置も簡単になる。
(7)栽培環境の制御が正確になれば、成長が促進され、植物の生育が均一になり品質も良くなるので商品価値が高まる。育苗の場合には、苗の品質が良いので定植後の成長が促進され収量が増大する。また、健丈な良苗となるので、定植後の環境がある程度悪くても比較的順調に生育する苗を供給できる。
【0014】
(8)植物の成長が促進されるので生産期間を短縮できる。例えば育苗の場合、生産期間(播種又は挿し穂から苗出荷まで)が2〜4週間となり、育苗棚で年間10〜20回の生産が可能であり、育苗面積(m)当りの苗の年間売上げは25〜50万円となる(従来の育苗では、10〜20万円)。
(9)裁植密度を高くして生産性を上げることができる。例えば育苗の場合、500〜900株/m程度にできる(従来の育苗では、7cmポットを密に並べた場合で200株/m程度)。
(10)害虫が栽培室内に侵入する可能性が極めて低いので、農薬を用いなくて済む。
(11)植物や培地から蒸発した水分が栽培室から逃げないので、冷房時の相対湿度を、気温25℃において、常に70%前後に維持できる。この湿度条件は育苗に最適である。
(12)環境が光合成に適しているので、人工照明光の光合成利用効率は温室の約2倍である。
(13)養液を完全循環利用し農薬を用いないので、肥料や農薬を含む汚染水を栽培室外に排出することがなく、環境を汚染しない。
(14)商圏が全国規模又は国際規模の大手種苗業者の場合は、苗需要の季節変動の影響が緩和されるので、本発明の栽培法と苗貯蔵施設を併用すれば、栽培期間が数ヶ月以上に亘る作物の苗を周年生産することも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、稼働率が高く育苗の商業生産にも適用可能な、噴霧水耕法を用いた閉鎖型植物栽培法を提供できる。例えば、本発明を育苗に適用すれば、高品質な苗を、省資源的、省力的、環境保全的で、かつ商業的に採算が合うような条件で計画的に生産できる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0017】
実施例1、比較例1
図1に示す広さ(5.55m×9.3m=51.6m)で、内面全体を厚さ10cmの断熱性の発泡ポリスチレン板(ダウ化工社製:スタイロンフォーム)で覆った栽培室(育苗室)に、図2に示すような構造と大きさ(図2中の寸法はmm)の3段式栽培棚(育苗棚)を設置し、各育苗棚に、図3(d)に示すような50mm角のピートポットを80個嵌め込んだ図3(a)〜(c)に示すような栽培パネル(育苗パネル)を24枚(3段の各段に8枚)づつ載せ、各ピートポットに2粒づつ播種し(播種数34,560粒)、合計17280株の大葉の育苗を行った。3段式栽培棚には、図2に示すように、蛍光灯取付板、110W3波長型蛍光灯、養液配管、ミスト散布ノズル(ヤマホ・コンビ噴口、液滴の大きさ30〜50μmの霧状)、養液回収パン、養液ミスト回収配管、ミスト遮蔽シート(東都興業社製:ビニペット)を配設した。
育苗(ミスト育苗)は、次のような手順及び操作で行った。
1.播種するピートポットにピートモス培地を入れ、充分に灌水する。
2.大葉の種を2粒蒔き、軽く覆土を行う。
3.発芽するまで、電照は行わない。
4.ミスト散布は、発芽するまでは培地水分率を高く維持できる間隔で行う。
5.発芽を確認したら、電照を行う(明期・暗期のコントロールは50%)。
6.子葉展開終了までは、養液濃度を0.2単位(E.C.)とする(大塚A
処方)。
7.本葉展開後の養液濃度は0.4単位(E.C.)とする。
8.本葉4枚展開後の養液濃度は0.8単位(E.C.)とする。
9.以後の養液濃度は変更しない。
10.育苗中の培地水分率はPF2.0とする.
【0018】
一方、比較例1として、155m(5.4m×29m)の温室に、1.2m×12mの育苗ベッドを4台設置し、各々に80枚の72穴育苗トレーを載置育苗し、各穴に3粒づつ播種して(播種数69,120粒)、合計23040株の大葉の育苗を行った。
育苗は、次のような慣行の手順及び操作で行なった。
1.播種床に催芽した種を、72穴のトレーに丁寧に3粒づつ播種する。
2.播種後、モミ殻燻炭を軽く種が隠れる程度蒔き、軽く鎮圧する。
3.播種床には藁を掛け、上からたっぷりと灌水する。
4.播種床の水分率が充分に維持されるように、適時、上から灌水する。
5.発芽を始めたら直ちに覆いの藁を外す。
6.日中は、強い光に曝さないように寒冷紗で覆い、温度調整を行う。
7.密生箇所は、子葉展開時と本葉1〜2枚の時の2回に分けて間引きし、最終株間
が2.5〜3cmになるようにする。
8.発芽までは、培地水分率をPF1.8前後とし、発芽後はPF2.2前後で管理
する。
9.育苗中は培地の元肥のみで育成し、追肥は行わない。
【0019】
上記の結果、実施例1では、6葉展開までに要した日数が28日であったのに対し、比較例1では40〜43日を要した。即ち、本発明の方が、天候に左右されず、約1.4〜1.5倍早く成長したことになる。
また、実施例1では、一部選別苗の入れ替えを行ったが、全株優良苗として定植でき、かつ、苗の定植はピートポットを培地にそのまま埋めるため、根の痛みは全く生じず全株が安定に活着したのに対し、比較例1では、選別苗の入れ替えを行っても定植できた優良苗数は17,135株(約74%)であった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明で用いる栽培室の一例を示す図。
【図2】本発明で用いる栽培棚の一例を示す図。(a)正面図、(b)側面図。
【図3】本発明で用いる栽培パネルの一例を示す図。(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図、(d)ピートポット。
【図4】本発明で用いる栽培パネルの他の例を示す図。(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図、(d)ピートポット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉され断熱された冷暖房完備の栽培室内で、3波長型蛍光灯を用いた人工照明により、多段式栽培棚を用いて噴霧水耕法で栽培することを特徴とする閉鎖型植物栽培法。
【請求項2】
栽培室の内面を発泡樹脂からなる断熱材で覆う請求項1記載の閉鎖型植物栽培法。
【請求項3】
COを施用して生育を促進させる請求項1又は2記載の閉鎖型植物栽培法。
【請求項4】
冷房時にエアコンの冷却板で凝結した水を潅水に再利用する請求項1〜3の何れかに記載の閉鎖型植物栽培法。
【請求項5】
植物の栽培が育苗である請求項1〜4の何れかに記載の閉鎖型植物栽培法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−296297(P2006−296297A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123004(P2005−123004)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(501421487)株式会社セントラルサン (7)
【Fターム(参考)】