説明

開閉体制御装置

【課題】小型化が可能な開閉体制御装置を提供する。
【解決手段】開閉体制御装置100は、ストライカの引き込みと開放とを行うラッチと、ラッチ操作機構を介してラッチを操作すると共に、ラッチを引き込み状態にさせるクローズ領域とラッチを開放状態にするリリース領域とクローズ領域及びリリース領域の間に位置する中立領域とを含む移動領域の間で移動変位される変位体と、当該変位体を移動変位させるモータ61と、当該モータ61の回転量を計数する回転量計数部84と、変位体のクローズ動作後に当該変位体をクローズ領域から中立領域内に設定される中立位置に復帰させる第1復帰動作と変位体のリリース動作後に当該変位体をリリース領域から中立位置に復帰させる第2復帰動作とをモータ61の回転量に基づいて当該モータ61の回転制御を行う制御ユニット90と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチとストライカとの係合状態を確立させるクローズ操作と、ラッチとストライカとの係合状態を解除するリリース操作と、をモータの動作に基づく回動変位によって行うことができる開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータの出力軸を正方向に回動させることにより施錠操作を行うと共に、逆方向に回動させることにより開錠操作を行う自動車用ドアロック操作装置が知られている(例えば特許文献1)。また、正逆回転可能なモータの動力を受ける変位体としてのドリブンギヤを一方向に変位させることでラッチを回動させてストライカを引き込むクローズ動作を行い、ドリブンギヤを他方向に変位させることでラッチとポールとの係合を解除するようにポールを回動させるリリース動作を行う車両用ドアクローザ装置も知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−81249号公報
【特許文献2】特開2007−2589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置では、セクタギヤのようなモータ動力を受ける変位体を中立領域を基準にリリース方向に変位させることでラッチとストライカとの噛み合いを解除するリリース機能と、変位体を中立領域を基準にクローズ方向に駆動することでラッチがストライカを引き込むクローズ機能とを備えている。その際、リリース機能又はクローズ機能を実行した後に、モータ動力により変位体を中立領域に変位させる場合、モータ停止制御のためにスイッチ等の中立検知手段が必要となる。
【0005】
このような中立検知手段を構成するスイッチにあっては、その個体毎に検出特性にばらつきが含まれる。このような検出特性にばらつきのあるスイッチを前記装置に用いる場合には、当該ばらつきを吸収するために(確実に中立領域を検出するために)中立領域を広く設定する必要がある。即ち、最大ばらつきを考慮して中立領域を広く設定する必要がある。このため、セクタギヤのサイズが大きくなることから、当該セクタギヤの制御に付随する周辺装置(ケース部材(ハウジング)やモータ等)も大きくなっていた。したがって、材料費のコストアップだけでなく、その装置全体の重量も増加し、大型化を招く原因となっていた。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化が可能な開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る開閉体制御装置の特徴構成は、ストライカの引き込みと開放とを行うラッチと、ラッチ操作機構を介して前記ラッチを操作すると共に、前記ラッチを引き込み状態にさせるクローズ領域と前記ラッチを開放状態にするリリース領域と前記クローズ領域及び前記リリース領域の間に位置する中立領域とを含む移動領域の間で移動変位される変位体と、前記変位体を移動変位させるモータと、前記モータの回転量を計数する回転量計数部と、前記変位体のクローズ動作後に当該変位体を前記クローズ領域から前記中立領域内に設定される中立位置に復帰させる第1復帰動作と前記変位体のリリース動作後に当該変位体を前記リリース領域から前記中立位置に復帰させる第2復帰動作とを前記モータの回転量に基づいて前記モータの回転制御を行う制御ユニットと、を備える点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、クローズ動作完了位置及びリリース動作完了位置から、予め設定された回転量に応じた位置を中立位置として設定することができる。このため、モータの回転量を検出して当該モータの回転を制御することにより、中立位置を認識するためのスイッチを不要にすることができると共に、ばらつきを含まない中立位置を設定することができる。したがって、低コストで精度の良い制御を行うことが可能となる。また、中立領域を有効活用できると共に、ばらつきを見込んで設定していた中立領域を小さく設定することができるので、開閉体制御装置を小型化することが可能となる。
【0009】
また、前記制御ユニットは、前記クローズ領域の回動終端における前記モータの回転量を基準として、前記第1復帰動作及び前記第2復帰動作を行うと好適である。
【0010】
このような構成とすれば、変位体がクローズ終端に達した場合に、回転量計数部が計数している値のゼロ点補正をすることができる。したがって、常に精度の良いモータの制御を行うことが可能となる。
【0011】
また、前記ラッチの状態を評価するラッチ状態評価部と、前記モータに供給する供給電圧をPWM制御を用いて生成する電圧生成部と、を備え、前記制御ユニットが、前記供給電圧の電圧値を前記ラッチの状態に応じて決定すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、必要のないところでは低電圧でモータを駆動させることができ、これにより変位体が惰性で移動する距離を短くする(なくす)ことができる。
【0013】
また、本発明に係る開閉体制御装置の他の特徴構成は、ストライカの引き込みと開放とを行うラッチと、ラッチ操作機構を介して前記ラッチを操作すると共に、前記ラッチを引き込み状態にさせるクローズ領域と前記ラッチを開放状態にするリリース領域と前記クローズ領域及び前記リリース領域の間に位置する中立領域とを含む移動領域の間で移動変位される変位体と、前記ラッチの状態を評価するラッチ状態評価部と、前記変位体を移動変位させるモータと、前記モータに供給する供給電圧の電圧値を前記ラッチの状態に応じて決定する制御ユニットと、前記決定された電圧値の供給電圧をPWM制御を用いて生成する電圧生成部と、を備える点にある。
【0014】
このような特徴構成とすれば、モータを停止する場合には供給電圧を小さくすることによりモータの回転速度を遅くすることができる。したがって、変位体が惰性で移動する距離を短くする(なくす)ことができるので、適切に所望の位置で停止させることが可能となる。
【0015】
また、前記制御ユニットは、前記供給電圧の電圧値が予め規定された上限値を超えないように決定すると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、制御ユニットがモータの絶対最大定格以下で動作させることができるので、モータを破壊することなく運転させることができる。
【0017】
また、前記制御ユニットは、前記ストライカの開放時よりも前記ストライカの引き込み時の方が前記供給電圧の電圧値を高く決定すると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、必要のないところでは低電圧でモータを駆動させることができ、これにより変位体が惰性で移動する距離を短くする(なくす)ことができる。
【0019】
また、前記制御ユニットは、開閉体のクローズ動作時に前記開閉体が受ける荷重の大きさに応じて前記供給電圧の電圧値を決定すると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、クローズ動作の初期段階は低電圧でゆっくりと動作させることにより、モータの動作音を低減することができる。したがって、ユーザが耳障りであると感じることが少なくなる。また、閉切り間際のパワーが必要な場合のみ供給電圧を高くすることにより、引き込み力を確保することができる。したがって、クローズ動作中に必要以上の引き込み力を発生させる必要がなくなる。
【0021】
また、前記制御ユニットは、前記モータを停止させる際、前記供給電圧の電圧値を次第に低下させるように制御すると好適である。
【0022】
このような構成とすれば、モータを停止させる場合には、供給電圧を次第に低下することによりモータの回転速度を遅くすることができる。したがって、変位体が惰性で移動する距離を短くする(なくす)ことができるので、適切に所望の位置で停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】開閉体制御装置を搭載した車両の側面を示す図である。
【図2】ストライカ及びドアロック装置の拡大を模式的に示す図である。
【図3】閉扉時におけるドアロック装置の動作を示す図である。
【図4】開扉時におけるドアロック装置の動作を示す図である。
【図5】各スイッチの出力の切り替わりを示す図である。
【図6】制御ユニットの概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図7】セクタギヤの移動領域を模式的に示す図である。
【図8】セクタギヤの回動領域を示す図である。
【図9】開扉時のセクタギヤの復帰動作を模式的に示す図である。
【図10】閉扉時のセクタギヤの復帰動作を模式的に示す図である。
【図11】電圧生成部を模式的に示す図である。
【図12】制御ユニットから出力されるPWM制御信号の例を示す図である。
【図13】ラッチの状態に応じて決定される供給電圧の電圧値の例を示す図である。
【図14】閉扉時の処理に関するフローチャートである。
【図15】開扉時の処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る開閉体制御装置100について説明する。本開閉体制御装置100は、開閉体を自動で開閉させる機能を備えた装置に利用される。本実施形態では、開閉体制御装置100の好適な適用例として、車両が備えるバックドア(ラゲージドア)3の開閉を行う装置に利用した場合の例について説明する。したがって、本実施形態における開閉体は、車両が備えるバックドア3が相当する。図1は、開閉体制御装置100を搭載した車両の側面を示した図である。また、図2は、開閉体制御装置100が備えるストライカ2及びドア開閉操作機構40の拡大を模式的に示した図である。
【0025】
図1及び図2には、開閉体制御装置100を搭載した車体1とバックドア3との間に設けられたドアロック装置4が示される。本実施形態では、ドアロック装置4は、バックドア3側にドア開閉操作機構40と、車体1側に設けられたストライカ2とを備えて構成される。このストライカ2は、バックドア3を開扉した際に現れる車体1の開口部に、ドア開閉操作機構40と係合可能に配設される。もちろん、図1に示される以外の部分に配設することも当然に可能である。また、バックドア3の外側にはオープンハンドル3aが設けられる。
【0026】
詳細は後述するが、ドア開閉操作機構40は、バックドア3の開扉時及び閉扉時のいずれにおいても動作する。図3はバックドア3の閉扉時におけるドアロック装置4の動作を示した図であり、図4はバックドア3の開扉時におけるドアロック装置4の動作を示した図である。ドアロック装置4は、ストライカ2の引き込みと開放とを行うラッチ41、ラッチ41の回転をラチェット方式で規制するポール42、ラッチ41やポール42を操作するラッチ操作機構50を有して構成される。ラッチ41は、ストライカ2をバックドア3の本体側に引き込み操作可能な板状部材で形成される。
【0027】
ラッチ操作機構50に操作変位を与えるために、ドア開閉操作機構40は、クローザモータ(本発明に係るモータに相当)61と、当該クローザモータ61の回転を変速する変速ギヤ対として機能するピニオンギヤ62と、ラッチ操作機構50を介してラッチ41を操作するセクタギヤ(本発明に係る変位体に相当)63とを備えて構成される。セクタギヤ63は、非図示のハウジングに配設された回動軸63a周りで回動可能に支持される。
【0028】
また、詳細は後述するが、セクタギヤ63は、ラッチ41を引き込み状態にさせるクローズ領域と、ラッチ41を開放状態にするリリース領域と、クローズ領域とリリース領域との間に位置する中立領域とを含む移動領域の間で移動変位される。この移動は、クローザモータ61から出力される回転動力により実現される。
【0029】
ラッチ41は、非図示のハウジングに配設された支持軸41a周りで回動可能に支持され、バネ等(図示しない)によって図3(a)に示されるような復帰姿勢に付勢される。ラッチ41には、第1アーム部411及び第2アーム部412が形成され、その間にストライカ2を受け入れ可能な係入溝部413が形成される。第1アーム部411には、ハーフラッチ位置においてポール42の接当作用部421に係合するハーフ係合面414が設けられる。また、第2アーム部412には、フルラッチ位置においてポール42の接当作用部421に係合するフル係合面415が設けられる。
【0030】
ポール42は、支持軸芯42a周りで係合姿勢と離脱姿勢との間で回動可能なように支持される。その係合姿勢や離脱姿勢において、ポール42の接当作用部421がラッチ41の第1アーム部411や第2アーム部412の回転軌跡内に位置するように配設される。また、ポール42は、バネ等(図示しない)によって係合姿勢に復帰するよう付勢される。係合姿勢とは、ラッチ41と係合する前の姿勢であり、図3(a)に示される姿勢に相当する。
【0031】
ラッチ41の回動位置を検出するための位置検出器として、ラッチ41と一体的に支持軸41a周りを回動する被検出筒にロータリスイッチ型の第1ラッチスイッチ81と第2ラッチスイッチ82とが設けられる。第1ラッチスイッチ81は、ラッチ41がハーフラッチ領域にあることを検知するために用いられる。そして、第2ラッチスイッチ82は、ラッチ41がフルラッチ領域にあることを検知する。
【0032】
なお、本実施形態においては、第1ラッチスイッチ81は、図5に示されるように、ラッチ41が開放状態からハーフラッチ領域を超えた場合に、High(オン)からLow(オフ)に切り替わるように設定される。また、ラッチ41が引き込み状態からハーフラッチ領域に達した場合に、Low(オフ)からHigh(オン)に切り替わるように設定される。
【0033】
第2ラッチスイッチ82は、図5に示されるように、ラッチ41が開放状態からハーフラッチ領域に達した時にLow(オフ)からHigh(オン)に切り替わり、フルフラッチ領域に達した時にHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わるように設定される。また、ラッチ41が引き込み状態からフルラッチ領域を超えた場合にLow(オフ)からHigh(オン)に切り替わり、ハーフラッチ領域を超えた場合にHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わるように設定される。
【0034】
図3に戻り、ポール42の回動位置を検出するための位置検出器として、ストロークスイッチ型のポールスイッチ83が設けられる。ポールスイッチ83は、ポール42がラッチ41と係合姿勢であることを検知する。本実施形態においては、ポールスイッチ83は、図5に示されるように、ポール42がラッチ41の第1アーム部411と係合するハーフラッチ位置を含むその手前の領域に位置している時に、High(オン)となる。更に、ポールスイッチ83は、ポール42がラッチ41の第2アーム部412と係合するフルラッチ位置を含むその手前の領域に位置している時に、High(オン)となる。即ち、バックドア3のクローズ動作において、ポールスイッチ83の1回目の立ち下がり点がハーフラッチ位置に対応し、2回目の立ち下がり点がフルラッチ位置に対応する。
【0035】
ラッチ操作機構50は、クローズ操作機構51(図3参照)とリリース操作機構52(図4参照)とを有する。クローズ操作機構51は、セクタギヤ63の回動変位を入力としてラッチ41に対する回動操作を出力とする。リリース操作機構52は、セクタギヤ63の回動変位を入力としてポール42に対する回動操作(係合離脱操作)を出力とする。クローズ操作機構51が機能するセクタギヤ63の回動領域であるクローズ領域と、リリース操作機構52が機能するセクタギヤ63の回動領域であるリリース領域とは、中立領域を挟んで異なっている(詳細は後述する)。したがって、クローズ操作機構51とリリース操作機構52とは別々に動作する。
【0036】
図6は、ドア開閉操作機構40を制御する制御ユニット90の概略構成を模式的に示したブロック図である。制御ユニット90の入力ポートには、電圧生成部60、第1ラッチスイッチ81、第2ラッチスイッチ82、ポールスイッチ83、回転量計数部84が接続される。また、制御ユニット90の出力ポートには、電圧生成部60及び図示されていないドライバを介してクローザモータ61が接続される。また、この制御ユニット90は車両の状態を評価して車両状態情報を出力する車両状態評価ECU80とも接続され、バックドア3の開閉に関連する車両状態情報を取得することができる。
【0037】
制御ユニット90は、ラッチ状態評価部91、ポール評価部92、変位体位置評価部93、タイマ制御部94、クローザモータ制御部95から構成される。そして、制御ユニット90は、CPUを中核部材としてバックドア3を開閉する種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築される。
【0038】
ラッチ状態評価部91は、第1ラッチスイッチ81や第2ラッチスイッチ82からの信号に基づいてラッチ41の状態を評価する。ポール評価部92は、ポールスイッチ83からの信号に基づいてポール42の状態を評価する。変位体位置評価部93は、後述する回転量計数部84からの出力信号に基づいてセクタギヤ63の回動位置を評価する。タイマ制御部94は、内部タイマ等を用いてタイマ制御を行う。クローザモータ制御部95は、ラッチ状態評価部91やポール評価部92や変位体位置評価部93の評価結果及びタイマ制御部94のタイマ情報に基づいてクローザモータ61に対する制御信号を生成して出力する。
【0039】
ストライカ2をラッチ41に引き込むクローズ動作は、セクタギヤ63を介してクローズ操作機構51を操作することで実行される。また、ストライカ2をラッチ41から開放するリリース動作は、セクタギヤ63を介してリリース操作機構52を操作することで実行される。クローズ動作及びリリース動作を導くセクタギヤ63の回動領域は、図7及び図8示されるように、クローズ領域とリリース領域とが中立領域を挟むように区分けされる。中立領域の中央部には、中立位置が設定される。なお、中立位置は、図7及び図8に示されるように中立領域の中央部に位置するように設定すると好適であるが、必ずしも中央部に設定しなければならないわけではない。中立領域内における所定の位置に予め設定しておくと良い。
【0040】
セクタギヤ63がクローズ領域をクローズ領域側の回動終端である第1回動終端に向かって回動(図8で時計方向に回動)することによりクローズ動作が導かれる(図8(a)参照)。そして、セクタギヤ63のクローズ動作後(クローズ動作の終了後)に、セクタギヤ63をクローズ領域から中立領域に復帰させる第1復帰動作(中立復帰動作)が行われる。この第1復帰動作では、セクタギヤ63は、反転回動(図8で反時計方向に回動)し、クローズ領域を通り抜けて中立領域に入り、上述の中立位置で停止される。
【0041】
また、セクタギヤ63がリリース領域を第2回動終端に向かって回動(図8で反時計方向に回動)することによりリリース動作が導かれる(図8(b)参照)。そして、セクタギヤ63のリリース動作後(リリース動作の終了後)に、セクタギヤ63をリリース領域から中立領域に復帰させる第2復帰動作(中立復帰動作)が行われる。この第2復帰動作では、セクタギヤ63は、反転回動(図8で時計方向に回動)し、リリース領域を通り抜けて中立領域に入り、上述の中立位置で停止される。このように、第1復帰動作後のセクタギヤ63の停止位置と第2復帰動作のセクタギヤ63の停止位置とは、同じ位置(即ち、中立位置)となるように制御される。
【0042】
回転量計数部84は、セクタギヤ63を移動変位させるクローザモータ61の回転量を計数する。クローザモータ61の回転量とは、クローザモータ61が何回転したかを示す量である。このような回転量の検出にあっては、例えばホール素子を用いると好適である。ホール素子は電流が流れている導体に磁界を加えた場合に、導体内部の電荷が横方向に動かされるように受ける力に応じて起電力を生じるホール効果を利用して磁束を検出する素子である。
【0043】
このようなホール素子を用いる場合には、クローザモータ61の回転軸の周囲に永久磁石を配設し、クローザモータ61の回転に応じて変化する磁界をホール素子により検出すると好適である。このようなホール素子から出力される検出結果は電気的なパルス信号であるので、回転量計数部84が当該パルス信号を計数することにより、クローザモータ61の回転量を検出することが可能となる。回転量計数部84により計数されたパルス数は、クローザモータ61の回転量として、制御ユニット90に伝達される。
【0044】
本実施形態では、セクタギヤ63のクローズ動作後に当該セクタギヤをクローズ領域から中立位置に復帰させる第1復帰動作とセクタギヤ63のリリース動作後に当該セクタギヤを中立位置に復帰させる第2復帰動作とを行う際、制御ユニット90は上述のクローザモータ61の回転量に基づいて当該クローザモータ61の回転制御を行う。本実施形態においては、制御ユニット90(クローザモータ制御部95)は、セクタギヤ63を第1回動終端から中立位置まで移動変位するのに必要なクローザモータ61の回転量が予め計測され、当該計測結果が記憶されている。即ち、第1回動終端を基準として(クローズ基準として)、セクタギヤ63を当該第1回動終端から中立位置まで移動変位するのに出力されるパルス信号のパルス数(例えばXパルスとする)が予め記憶されている。このため、クローザモータ制御部95は、第1回動終端に位置するセクタギヤ63に対して第1復帰動作を行う場合には図9に示されるように、回転量計数部84がパルス信号をXパルス計数するまでクローザモータ61を回動(例えば逆転駆動)させる。
【0045】
一方、クローザモータ制御部95は、第2回動終端にあるセクタギヤ63の第2復帰動作を行う場合には、図10に示されるように、前記記憶されているパルス数になるようにクローザモータ61を回動させる。即ち、第2回動終端から第2復帰動作を行う場合には、クローザモータ制御部95は回転量計数部84が現在のパルス数からクローザモータ61の回動に応じて検出されるパルス信号を減じて、Xパルスになるまでクローザモータ61を回動(例えば正転駆動)させる。このように、制御ユニット90(クローザモータ制御部95)は、クローズ領域の第1回動終端におけるクローザモータ61の回転量を基準として、第1復帰動作及び第2復帰動作を行う。
【0046】
図3及び図4に戻り、クローズ動作及びリリース動作における、セクタギヤ63とラッチ41とポール42の状態を説明する。図3(a)〜(d)は、クローズ動作とその後の中立復帰動作(第1復帰動作)の態様を模式的に示した図であり、図4(a)〜(d)は、リリース動作とその後の中立復帰動作(第2復帰動作)の態様を模式的に示した図である。
【0047】
クローズ動作は、車体1に対して開けられたバックドア3を閉じる際に行われる。バックドア3が開状態にある場合、先のバックドア3が開けられた際に行われたリリース動作に付随する中立復帰動作(第2復帰動作)によってセクタギヤ63の回動位置は図3(a)に示されるような中立位置となる。開状態にあるバックドア3を閉方向に動かすと、バックドア3側に配置されたドア開閉操作機構40が車体1に固定されたストライカ2に近づく。
【0048】
そして、ドア開閉操作機構40におけるラッチ41の係入溝部413がストライカ2を受け入れる。バックドア3を更に動かすと、図3(b)に示されるように、ポール42の接当作用部421がラッチ41の第1アーム部411と係合する(ハーフラッチ位置)。ラッチ41がハーフラッチ位置に達すると、クローザモータ61が正転駆動し(反時計方向に回動し)、クローザモータ61の回転軸に付設されたピニオンギヤ62も反時計方向に回動する。ピニオンギヤ62が反時計方向に回動すると、セクタギヤ63が回動軸63aを軸中心に時計方向に回動する。セクタギヤ63が回動すると、クローズ操作機構51と連動し、ラッチ41が支持軸41aを軸中心として回動し始める。なお、この段階では、バックドア3は車体1に対して完全には閉じられていない。
【0049】
セクタギヤ63が、更にクローズ領域の最終回動位置である第1回動終端まで回動すると、図3(c)に示されるように、ポール42の接当作用部421がラッチ41の第2アーム部412と係合する(フルラッチ位置)。バックドア3は、この段階で車体1に対して完全に閉められることとなる。
【0050】
クローズ動作が終了すると、セクタギヤ63の中立復帰のために、クローザモータ61が逆転駆動する(時計方向に回動する)。回転量計数部84は、クローザモータ61の回転に応じて得られるパルス信号を計数し、セクタギヤ63が第1回動終端に存在する状態から前記逆転駆動を開始してから予め設定されたパルス数に達した場合に、クローザモータ制御部95は、クローザモータ61を停止する。係る場合、セクタギヤ63は図3(d)に示されるように、中立位置で停止される。このようにして、ドア開閉操作機構40は、バックドア3の閉動作を行う。
【0051】
ここで、上記制御は、図5のタイミングチャートを用いても説明できる。制御ユニット90によりドアモータが正転駆動され、バックドア3の閉動作が行われている状態で、ラッチ41がハーフラッチ位置に達すると、ポールスイッチ83がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わる。このタイミングで、制御ユニット90は、ドアモータの正転駆動を停止する。また、クローザモータ制御部95は、この切り替わったタイミングで、クローザモータ61を正転駆動する。
【0052】
ラッチ41がフルラッチ位置に達すると、ポールスイッチ83がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わる。すると、クローザモータ制御部95は、この切り替わったタイミングで、セクタギヤ63が第1回動終端に達したと認識し、クローザモータ61の正転駆動を停止する。その後、クローザモータ制御部95は、セクタギヤ63の第1復帰動作を行うために、クローザモータ61を逆転駆動する。この逆転駆動の開始と共に、回転量計数部84はパルス信号を計数する。クローザモータ制御部95は、当該パルス数が予め設定されたパルス数に達した場合にクローザモータ61の逆転駆動を停止する。このようなタイムチャートに沿ってドア開閉操作機構40は、バックドア3の閉動作を行う。
【0053】
リリース動作は、車体1に対して閉められたバックドア3を開ける際に行われる。バックドア3が閉状態にある場合、先に行われているクローズ動作に付随する中立復帰動作(第1復帰動作)によってセクタギヤ63の回動位置は図4(a)に示されるような中立位置となっている。バックドア3のオープンハンドル3aに設けられているハンドルスイッチ(非図示)等の操作によってクローザモータ61が逆転駆動すると、図4(b)に示されるように、セクタギヤ63がリリース領域方向に回動する。
【0054】
セクタギヤ63が回動すると、リリース操作機構52と連動し、ポール42が係合離脱方向に回動し始める。図4(c)に示されるように、ポール42の接当作用部421がラッチ41から離脱すると、バネ付勢力によりポール42は離脱姿勢であるホームポジション(図3(a)や図4(d)の姿勢)に戻る。ラッチ41もバネ付勢によりストライカ2を開放する姿勢に戻る。この段階で、バックドア3が車体1に対して開放可能となる。
【0055】
リリース動作が終了すると、セクタギヤ63の中立復帰のために、クローザモータ61が正転駆動する。回転量計数部84は、クローザモータ61の回転に応じて得られるパルス信号を計数する。クローザモータ制御部95は、セクタギヤ63が第2回動終端に移動する際に取得されたパルス数から、当該正転駆動を開始してから得られたパルス数を減じ、予め設定されたパルス数に達した場合に、クローザモータ63を停止する。係る場合、セクタギヤ63は図4(d)に示されるように中立位置で停止される。このようにして、ドア開閉操作機構40は、バックドア3の開動作を行う。
【0056】
この制御(リリース動作から第2復帰動作に係る処理)は、上述のクローズ動作から第1復帰動作に係る処理と同様に、図5のタイミングチャートを用いても説明できる。バックドア3のオープンハンドル3aに設けられているハンドルスイッチ(非図示)等の操作によってハンドルスイッチがLow(オフ)からHigh(オン)に切り替わる。すると、クローザモータ制御部95は、この切り替わったタイミングで、クローザモータ61を逆転駆動する。
【0057】
ラッチ41がフルラッチ領域を超えると、第2ラッチスイッチ82がLow(オフ)からHigh(オン)に切り替わる。すると、クローザモータ制御部95は、この切り替わったタイミングで、セクタギヤ63が第2回動終端に達したと認識し、クローザモータ61の逆転駆動を停止する。また、制御ユニット90は、バックドア3を開扉するためにドアモータを逆転駆動する。その後、クローザモータ制御部95は、第2ラッチスイッチ82がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わった時点で、セクタギヤ63の第2復帰動作を行うために、クローザモータ61を正転駆動する。クローザモータ制御部95は、第2回動終端に至るのに計数されたパルス数から、正転駆動開始後に取得されたパルス数を減じ、予め設定されたパルス数に達した場合にクローザモータ61の正転駆動を停止する。そして、バックドア3が全開にされた時点で制御ユニット90はドアモータの逆転駆動を停止する。このようなタイムチャートに沿ってドア開閉操作機構40は、バックドア3の開動作を行う。
【0058】
ここで、本開閉体制御装置100は、上述のように、バックドア3のクローズ動作が終了すると、セクタギヤ63の第1復帰動作が行われる。第1復帰動作では、セクタギヤ63が反転回動し、クローズ領域を通り抜けて中立領域に入り、中立位置で停止される。この中立位置の検出は、回転量計数部84のパルス信号の計数に基づいて行われる。
【0059】
しかしながら、セクタギヤ63を移動変位させるクローザモータ61は、クローザモータ制御部95が当該クローザモータ61を停止させようとした場合であっても、クローザモータ61が高速回転している場合にあっては、クローザモータ61のロータ(図示しない)に慣性力が働くので突然に停止させることは容易ではない。このため、セクタギヤ63が中立位置を通過し、更には中立領域をも通過してクローズ領域に突入してしまう可能性がある。係る場合、開閉体制御装置100は、バックドア3の開動作若しくは閉動作が行われるものとして誤動作を起こす恐れがある。このような誤動作を確実に防止するために、本開閉体制御装置100は、クローザモータ61の回転速度を制御する機能を備えている。
【0060】
本実施形態では、このようなクローザモータ61の回転速度の制御は、クローザモータ61に供給する供給電圧を制御して行われる。電圧生成部60は、このような供給電圧をPWM(Pulse Width Modulation)制御を用いて生成する。PWM制御については、公知技術であるため詳細説明は省略する。電圧生成部60は、図11に示されるような降圧チョッパー回路で構成される。降圧チョッパー回路は、主にMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor - Field Effect Transistor)60a、ダイオード60b、コイル60c、コンデンサ60dから構成される。
【0061】
降圧チョッパー回路の入力段(MOS−FET60bのソース端子)には所定の電圧を出力する電源59が接続される。電源59としては、例えば本開閉体制御装置100を備える車両が有するバッテリとすることができる。降圧チョッパー回路の出力段にはクローザモータ61が接続される。したがって、電源59の所定の出力電圧をチョッパー回路が当該出力電圧以下に降圧し、クローザモータ61に供給電圧として供給する。このような供給電圧の電圧値は、制御ユニット90がラッチ41の状態に応じて決定する。このため、MOS−FET60aのゲート端子は制御ユニット90に接続される。制御ユニット90が備えるクローザモータ制御部95は、PWM制御に係るPWM制御信号を生成し出力する。降圧チョッパー回路からは制御ユニット90に対して出力電圧値が伝達され、制御ユニット90は当該出力電圧値を維持するようにフィードバック制御を行う。
【0062】
制御ユニット90が行う出力電圧の維持は、上述のようにPWM制御を用いて行われる。即ち、制御ユニット90からは、図12に示されるようなPWM制御信号が出力される。このPWM制御信号は、出力電圧を維持するようにDUTY制御される。このようなPWM制御信号に基づき、電圧生成部60の出力電圧は以下のように決定される(ただし、負荷及び損失を無視した場合とする)。
【0063】
【数1】

ただし、Vin:入力電圧、Vout:出力電圧、T:1周期の時間、Ton:1周期あたりのオン時間である。
【0064】
電圧生成部60が時間Tを一定で制御する形態であれば(即ち、所定の周波数帯域で制御する定周波数制御であれば)、制御ユニット90は、出力電圧を高くする場合にはオン時間が長くなるように制御し、出力電圧を低くする場合にはオン時間が短くなるように制御する。ここで、制御ユニット90は、常に出力電圧を一定に保持するように制御するわけではなく、適宜状況に応じて出力電圧を変更するように制御する。
【0065】
例えば、制御ユニット90は、ストライカ2の開放時よりもストライカ2の引き込み時の方が供給電圧の電圧値を高く決定すると好適である。一般的に、その構造上、ドア開閉操作機構40がストライカ2を開放する場合よりも、ストライカ2を引き込む場合の方がクローザモータ61に要求される出力(回転トルク)が大きい。このため、制御ユニット90は、ドア開閉操作機構40がストライカ2を開放する場合より、ストライカ2を引き込む場合の方が供給電圧を高く設定する。したがって、ドア開閉操作機構40が効率良くストライカ2を引き込むことが可能となる。
【0066】
図13は、ラッチ41の状態に応じて決定された供給電圧(電圧生成部60の出力電圧)の一例を示した図である。図13に示す図では、横軸にラッチ41の状態を示し(特に、ハーフラッチを超えてからの状態を示し)、縦軸に供給電圧を示している。図13に示されるように、ハーフラッチに達した時点(例えばaの時点)で出力電圧をV1に設定し、当該V1から出力電圧を徐々に高くしながらフルラッチに移行する。そして、フルラッチに達する前の時点(例えばbの時点)で出力電圧をV2に設定する。その後、更に当該V2から出力電圧を徐々に高くしながら制御する。このような制御を行うことにより、ラッチ41とストライカ2とを係合させる際に生じる荷重が大きくなっても、ラッチ41とストライカ2とをスムーズに係合させることが可能となる。
【0067】
また、制御ユニット90は、供給電圧の電圧値が予め規定された上限値V3(図13参照)を超えないように決定すると好適である。この上限値V3をクローザモータ61の少なくとも絶対最大定格以下に設定しておけば、クローザモータ61は絶対最大定格以下で制御されるので、クローザモータ61の破壊を防止することができる。
【0068】
また、制御ユニット90は、バックドア3のクローズ動作時にバックドア3が受ける荷重の大きさに応じて供給電圧の電圧値を決定すると好適である。一般的にバックドア3を閉扉した場合には、車体1とバックドア3との間には、雨等の水が車内に浸入しないようにゴム等でできたウェザーストリップが備えられる場合が多い。このようなウェザーストリップはゴム等でできているため、バックドア3を閉扉する場合には開扉方向に力が生じる。したがって、ストライカ2を引き込む場合には当該力よりも強い力でストライカ2を引き込む必要があり、クローザモータ61に対して大きな出力(回転トルク)が要求される。このため、制御ユニット90は、バックドア3を閉扉する場合には、バックドア3が受ける荷重の大きさに応じて供給電圧を高く設定する。
【0069】
また、制御ユニット90は、クローザモータ61を停止させる際、供給電圧の電圧値を次第に低下させるように制御すると好適である。クローザモータ61は、回転している状態から停止させる場合、クローザモータ61のロータ等の回転部分には慣性力が働くため停止しようとしても急に停止することはできない。即ち、ロータ等の回転部分が惰性で回転してしまう。特に、これはクローザモータ61の回転速度が速い場合に顕著である。このため、制御ユニット90は、クローザモータ61を停止させる場合には、その前段階から(所定時間前から)供給電圧を次第に低下するように制御し、惰性での回転を含めて停止するように制御する。このように制御ユニット90は、ラッチ41やバックドア3の状態に応じて供給電圧を決定する。
【0070】
次に、本開閉体制御装置100が行う、開扉されているバックドア3を閉扉する際の処理に関して図14に示すフローチャートを用いて説明する。なお、その際、図5に示すタイムチャートを参照して説明する。まず、図示しないドアモータが正転駆動され、バックドア3がクローズ動作される(ステップ#01)。
【0071】
制御ユニット90は、ドア開閉操作機構40のクローズ開始条件が成立すると(ステップ#02:Yes)、ドアモータを停止し(ステップ#03)、クローザモータ61を正転駆動させる(ステップ#04)。クローズ開始条件とは、ラッチ41がストライカ2の引き込みを行うクローズ動作を開始する条件である。本実施形態では、図5に示されるように、第1ラッチスイッチ81がHigh(オン)である場合に、ポールスイッチ83がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わったことがクローズ開始条件として規定される。制御ユニット90は、このようなクローズ開始条件が成立しない場合には(ステップ#02:No)、継続してドアモータを正転駆動させる。
【0072】
クローザモータ61の正転駆動の開始後、第1ラッチスイッチ81がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わると(ステップ#05:Yes)、即ち、ハーフラッチを超えると、制御ユニット90はクローザモータ61の供給電圧を高く設定し(例えばV1に変更し)、更に当該電圧値を徐々に高くしながら正転駆動を継続する(ステップ#06)。第1ラッチスイッチ81がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わらない場合には(ステップ#05:No)、制御ユニット90は供給電圧を変更せずにクローザモータ61の正転駆動を継続する。
【0073】
クローザモータ61の供給電圧が高く設定され(例えばV1に設定され)正転駆動が行われている場合に、第2ラッチスイッチ82がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わると(ステップ#07:Yes)、制御ユニット90はクローザモータ61の供給電圧を更に高く設定し(例えばV2に変更し)、更に当該電圧値を徐々に高くしながら正転駆動を継続する(ステップ#08)。第2ラッチスイッチ82がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わらない場合には(ステップ#07:No)、制御ユニット90は供給電圧を更に高くせずに(V2に変更せずに)クローザモータ61の正転駆動を継続する。
【0074】
ここで、制御ユニット90は、ドア開閉操作機構40のクローズ停止条件が成立すると(ステップ#09:Yes)、クローザモータ61を逆転駆動する(ステップ#10)。クローズ停止条件とは、ラッチ41がストライカ2の引き込みを停止する条件である。本実施形態では、図5に示されるように、第1ラッチスイッチ81がLow(オフ)であり、第2ラッチスイッチ82がLow(オフ)である場合に、ポールスイッチ83がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わった場合にクローズ動作が停止される。制御ユニット90は、このようなクローズ停止条件が成立しない場合には(ステップ#09:No)、継続してクローザモータ61を正転駆動する。
【0075】
制御ユニット90は、上述のクローズ停止条件が成立すると、セクタギヤ63の第1復帰動作を行うために、クローザモータ61を逆転駆動する(ステップ#10)。また、回転量計数部84は、クローザモータ61が逆転駆動されてから取得される出力パルスを計数する。この出力パルスが予め設定されたパルス数に近づいた場合には(ステップ#11:Yes)、制御ユニット90は供給電圧を低く設定する(ステップ#12)。一方、クローザモータ61が逆転駆動されてから計数された出力パルスが予め設定されたパルス数から離れている場合には(ステップ#11:No)、制御ユニット90は供給電圧を低く設定することなくクローザモータ61の逆転駆動を継続する。
【0076】
回転量計数部84により計数されるクローザモータ61が逆転駆動されてから計数された出力パルスが、予め設定されたパルス数に達した場合には(ステップ#13:Yes)、制御ユニット90はクローザモータ61を停止する(ステップ#14)。一方、出力パルスが予め設定されたパルス数に達しない場合には(ステップ#13:No)、クローザモータ61の逆転駆動を継続する。ここで、予め設定されたパルス数とは、第1回動終端に位置するセクタギヤ63が中立位置に到達するのに必要なクローザモータ63を回転動力に応じて出力される出力パルスである。本開閉体制御装置100は、バックドア3を閉扉する場合にはこのように制御を行うことにより、第1復帰動作を行った後、適切に中立位置にセクタギヤ63を停止させることが可能となる。
【0077】
次に、本開閉体制御装置100が行う、閉扉されているバックドア3を開扉する際の処理に関して図15に示すフローチャートを用いて説明する。なお、その際、図5に示すタイムチャートを参照して説明する。制御ユニット90は、ドア開閉操作機構40のリリース開始条件が成立すると(ステップ#51:Yes)、クローザモータ61を逆転駆動させる(ステップ#52)。リリース開始条件とは、ストライカ2の開放を行うリリース動作を開始する条件である。本実施形態では、図5に示されるように、第1ラッチスイッチ81がLow(オフ)であり、第2ラッチスイッチ82もLow(オフ)である場合に、ハンドルスイッチ(図示しない)がLow(オフ)からHigh(オン)に切り替わることが条件となる。制御ユニット90は、このようなリリース開始条件が成立しない場合には(ステップ#51:No)、リリース開始条件の成立待ち(検出待ち)の状態となる。
【0078】
クローザモータ61の逆転駆動の開始後、クローザモータ61の停止条件が成立すると(ステップ#53:Yes)、クローザモータ61を停止する(ステップ#54)。クローザモータ61の停止条件とは、本実施形態では、図5に示されるように、第1ラッチスイッチ81がLow(オフ)である場合に、第2ラッチスイッチ82がLow(オフ)からHigh(オン)に切り替わったことである。制御ユニット90は、このようなクローザモータ61の停止条件が成立しない場合には(ステップ#53:No)、継続してクローザモータ61を逆転駆動する。
【0079】
制御ユニット90は、上述のようにクローザモータ61を停止すると(ステップ#54)、その後ドアモータを逆転駆動させる(ステップ#55)。制御ユニット90は、ドア開閉操作機構40のリリース復帰条件が成立すると(ステップ#56:Yes)、クローザモータ61を正転駆動する(ステップ#57)。リリース復帰条件とは、セクタギヤ63がリリース動作をした後、行われる第2復帰動作を開始する条件である。本実施形態では、図5に示されるように、第1ラッチスイッチ81がHigh(オン)である場合に、第2ラッチスイッチ82がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わったことが条件となる。制御ユニット90は、このようなリリース復帰条件が成立しない場合には(ステップ#56:No)、リリース復帰条件の成立待ち(検出待ち)となる。
【0080】
制御ユニット90は、上述のリリース復帰条件が成立すると、セクタギヤ63の第2復帰動作を行うために、クローザモータ61を正転駆動する(ステップ#57)。そして、回転量計数部84は、クローザモータ61の回転に応じて取得される出力パルスを計数する。この出力パルスが予め設定されたパルス数に近づいた場合には(ステップ#58:Yes)、制御ユニット90は供給電圧を低く設定する(ステップ#59)。一方、出力パルスが予め設定されたパルス数から離れている場合には(ステップ#58:No)、制御ユニット90は供給電圧を低く設定することなくクローザモータ61の正転駆動を継続する。
【0081】
出力パルスが、予め設定されたパルス数に達した場合には(ステップ#60:Yes)、制御ユニット90はクローザモータ61を停止する(ステップ#61)。一方、出力パルスが予め設定されたパルス数に達しない場合には(ステップ#60:No)、クローザモータ61の正転駆動を継続する。ここで、予め設定されたパルス数とは、第1回動終端を基準として規定された中立位置に対応したクローザモータ63を回転動力に応じて出力される出力パルスである。
【0082】
なお、制御ユニット90は、セクタギヤ63の第2復帰動作を行う際も継続してバックドア3の開扉制御をおこなっている。この開扉制御は、バックドア3が全開となるまで(ステップ#62:No)、継続して行われる。バックドア3が全開となると(ステップ#62:Yes)、制御ユニット90は、ドアモータを停止し(ステップ#63)、処理を終了する。本開閉体制御装置100は、バックドア3を開扉する場合にはこのように制御を行うことにより、第2復帰動作を行った後、適切に中立位置にセクタギヤ63を停止させることが可能となる。
【0083】
したがって、本実施形態によれば、クローザモータ61の回転量に基づいて当該クローザモータ61の回転を制御することにより、中立位置を認識するためのスイッチを不要にすることができると共に、ばらつきを含まない中立位置の設定が可能となる。即ち、中立位置を認識するためのスイッチを設ける場合、当該スイッチを組み付ける際のばらつきや、当該スイッチの固有の検出特性のばらつきなどを考慮する必要があるものの、こうしたスイッチを廃することで上記ばらつきを何ら考慮する必要がなくなる。換言すれば、本実施形態によれば、当該実施形態によれば、当該スイッチを適正位置に高精度に組み付けるための工数の削減を図りつつ、上記ばらつきを考慮した中立領域の設定が不要となる。
【0084】
また、中立領域を狭く設定することが可能となることにより、変位体(セクタギヤ63)の作動範囲(作動ストローク)を短くすることができるため、当該変位体の小型化、ひいては開閉体制御装置100の小型化が可能となり、バックドア3内への搭載スペースを省スペース化することができる。よって、例えばバックドア3等の開閉体の大きさや形状等による開閉体制御装置100の搭載スペースに制約を受けにくくなり、開閉体制御装置100の車両への搭載自由度を向上させることができる。
【0085】
しかも、クローザモータ61に対する給電(供給電圧)を制御することにより、例えばクローズ動作中において、ウェザーストリップからの反力など荷重が加わらない領域においては必要以上の引き込み力を発生させる必要がないため供給電圧を低く抑える一方、ウェザーストリップからの反力など荷重が加わる領域においては供給電圧を高く設定することが可能となる。このため、バックドア3に加わる荷重が車両毎に異なる場合においても、荷重に応じた供給電圧の電圧値を設定可能となり、スムーズにクローズ動作を完了させることができる。
【0086】
さらに、クローザモータ61を停止させる際に供給電圧を次第に低下させることにより、セクタギヤ63の惰性移動量を低減させることができ、適切に所望位置で停止させることができる。
【0087】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、回転量計数部84は、クローザモータ61の回転軸の周囲に配設された永久磁石の回転に応じて出力されるパルス信号を計数するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、クローザモータ61に通電されるモータ電流のリップルに基づくリップルパルスを計数することによりクローザモータ61の回転量を計数することも可能である。
【0088】
上記実施形態では、第1復帰動作及び第2復帰動作を行う際に用いられる中立位置のパルス数が、第1回動終端を基準として予め設定されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。第2回動終端を基準として中立位置のパルス数を設定することも可能であるし、中立位置を基準としてパルス数を設定することも可能である。また、第1回動終端、第2回動終端の夫々を基準(原点)として設定されていても良く、例えば第1復帰動作は第1回動終端を基準として中立位置のパルス数が設定され、第2復帰動作は第2回動終端を基準として中立位置のパルス数が設定されていても良い。
【0089】
上記実施形態では、バックドア3の開動作においては、全開になった場合にドアモータが停止されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。任意の開度でバックドア3を停止させることも当然に可能である。
【0090】
上記実施形態では、電圧生成部60が、クローザモータ61に供給する供給電圧をPWM制御を用いて生成するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。PFM(Pulse Frequency Modulation)制御を用いて生成するような構成であっても良いし、複数のレギュレータを用い、各レギュレータの出力をラッチ41の状態に応じて切り替えながらクローザモータ61に供給する構成とすることも可能である。
【0091】
上記実施形態では、開閉体は、車両が備えるバックドア3が相当するとして説明し、開閉体制御装置100が当該バックドア3のドアクローザ制御装置として適用されるものとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、開閉体を車両が備えるスライドドアとすることも当然に可能である。係る場合には、スライドドアを開閉する開閉体制御装置に本発明を適用することにより、上述と同様の効果を得ることは当然に可能である。また、例えばスイングドアのクローザ装置やラゲージクローザ装置などとしても適用可能である。また、必ずしも車両用開閉体に適用される必要はなく、例えば住宅用開閉体制御装置としても適用可能である。
【0092】
上記実施形態では、変位体としてセクタギヤ63を用いた動力伝達機構を採用した場合の例として説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、遊星歯車を用いた動力伝達機構を採用しても良い。即ち、この場合、変位体としては、遊星歯車を用いた動力伝達機構の構成部品(サンギヤ)であっても良い。
【0093】
本発明は、ラッチとストライカとの係合状態を確立させるクローズ操作と、ラッチとストライカとの係合状態を解除するリリース操作と、をモータの動作に基づく回動変位によって行うことができる開閉体制御装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
60:電圧生成部
61:クローザモータ(モータ)
80:車両状態評価ECU
81:第1ラッチスイッチ
82:第2ラッチスイッチ
83:ポールスイッチ
84:回転量計数部
90:制御ユニット
91:ラッチ状態評価部
92:ポール評価部
93:変位体位置評価部
94:タイマ制御部
95:クローザモータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカの引き込みと開放とを行うラッチと、
ラッチ操作機構を介して前記ラッチを操作すると共に、前記ラッチを引き込み状態にさせるクローズ領域と前記ラッチを開放状態にするリリース領域と前記クローズ領域及び前記リリース領域の間に位置する中立領域とを含む移動領域の間で移動変位される変位体と、
前記変位体を移動変位させるモータと、
前記モータの回転量を計数する回転量計数部と、
前記変位体のクローズ動作後に当該変位体を前記クローズ領域から前記中立領域内に設定される中立位置に復帰させる第1復帰動作と前記変位体のリリース動作後に当該変位体を前記リリース領域から前記中立位置に復帰させる第2復帰動作とを前記モータの回転量に基づいて前記モータの回転制御を行う制御ユニットと、
を備える開閉体制御装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記クローズ領域の回動終端における前記モータの回転量を基準として、前記第1復帰動作及び前記第2復帰動作を行う請求項1に記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
前記ラッチの状態を評価するラッチ状態評価部と、
前記モータに供給する供給電圧をPWM制御を用いて生成する電圧生成部と、を備え、
前記制御ユニットが、前記供給電圧の電圧値を前記ラッチの状態に応じて決定する請求項1又は2に記載の開閉体制御装置。
【請求項4】
ストライカの引き込みと開放とを行うラッチと、
ラッチ操作機構を介して前記ラッチを操作すると共に、前記ラッチを引き込み状態にさせるクローズ領域と前記ラッチを開放状態にするリリース領域と前記クローズ領域及び前記リリース領域の間に位置する中立領域とを含む移動領域の間で移動変位される変位体と、
前記ラッチの状態を評価するラッチ状態評価部と、
前記変位体を移動変位させるモータと、
前記モータに供給する供給電圧の電圧値を前記ラッチの状態に応じて決定する制御ユニットと、
前記決定された電圧値の供給電圧をPWM制御を用いて生成する電圧生成部と、
を備える開閉体制御装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記供給電圧の電圧値が予め規定された上限値を超えないように決定する請求項3又は4に記載の開閉体制御装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記ストライカの開放時よりも前記ストライカの引き込み時の方が前記供給電圧の電圧値を高く決定する請求項3から5のいずれか一項に記載の開閉体制御装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、開閉体のクローズ動作時に前記開閉体が受ける荷重の大きさに応じて前記供給電圧の電圧値を決定する請求項3から6のいずれか一項に記載の開閉体制御装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記モータを停止させる際、前記供給電圧の電圧値を次第に低下させるように制御する請求項3から7のいずれか一項に記載の開閉体制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−255373(P2010−255373A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109463(P2009−109463)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】