説明

開閉装置及びこれを用いた電子機器

【課題】主に各種電子機器に使用される開閉装置及びこれを用いた電子機器に関し、多様で確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】可動ピン16や可動カム17が形成された可動体15が、所定角度回転した後は、常に開方向へ付勢されるようにして開閉装置30を形成すると共に、この開閉装置30と略アーム状の連結部材33を介して、可動筐体32を固定筐体31に装着することによって、可動体15が所定角度回転した後は常に開方向へ付勢されているため、確実に可動筐体32の開操作が行えると共に、可動筐体32が閉じた状態でも、この上面には表示部32Aが設けられているため、表示されたメニューの確認等を行うことができ、多様な操作が可能な開閉装置、及びこれを用いた電子機器を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に携帯電話や電子辞書、パーソナルコンピュータ等の各種電子機器に使用される開閉装置、及びこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電子辞書、パーソナルコンピュータ等の電子機器の多様化や高機能化が進むなか、固定筐体に対し可動筐体を開閉させて、様々な操作を行うものが増えており、これらに用いられる開閉装置においても、使い易く、多様な操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の開閉装置や電子機器について、図7を用いて説明する。
【0004】
図7は従来の電子機器の斜視図であり、図7(c)において、1は略箱型で合成樹脂製の固定筐体、2は同じく合成樹脂製の可動筐体で、固定筐体1の上面には複数のキーが配列された操作部1Aが、可動筐体2の下面には液晶表示素子等の表示部2Aが形成されている。
【0005】
また、3は複数のカムやばね(図示せず)等から形成された開閉装置で、固定筐体1後端と可動筐体2下端の間に装着され、この開閉装置3によって、可動筐体2が固定筐体1に対して開閉可能に軸支されて電子機器が構成されている。
【0006】
以上の構成において、図7(a)に示すように、固定筐体1に対して可動筐体2が閉じた状態では、開閉装置3によって可動筐体2が閉方向へ付勢され、可動筐体2が閉じた状態で保持されている。
【0007】
そして、この閉状態から、図7(b)に示すように、手で可動筐体2を開くと、開閉装置3のカムやばね等が動作して可動筐体2に開く方向の力が加わり、図7(c)に示すように、可動筐体2が固定筐体1に対して所定の操作角度、例えば135度前後開いた状態で保持され、表示部2Aを見ながら操作部1Aを操作して、例えば文字の入力操作等が行い易い状態となる。
【0008】
なお、この開状態から可動筐体2を手で閉操作すると、図7(a)に示したように、可動筐体2が閉じて保持された状態に戻って、携帯して持ち運び易い状態となる。
【0009】
つまり、開閉装置3によって可動筐体2を開閉操作することで、固定筐体1に対して可動筐体2が開き、表示部2Aを見ながら操作部1Aによる入力操作が行い易い状態と、可動筐体2が閉じて携帯し易い状態に、各々保持することが可能なように構成されているものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−264527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の開閉装置及びこれを用いた電子機器においては、操作部1Aは固定筐体1の上面に、表示部2Aは可動筐体2の下面に形成され、可動筐体2が閉じた状態では操作部1Aも表示部2Aも隠れているため、この状態では画面を見ることも入力操作を行うこともできず、可動筐体2を都度開いてこれらを行う必要があり、操作が煩雑なものになってしまうという課題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、可動筐体が閉じたままでも操作等が行え、多様な操作が可能な開閉装置及びこれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、可動ピンまたは可動カムが形成された可動体が、所定角度回転した後は、常に開方向へ付勢されるようにして開閉装置を形成すると共に、この開閉装置と略アーム状の連結部材を介して、可動筐体を固定筐体に装着して電子機器を構成したものであり、可動体が所定角度回転した後は常に開方向へ付勢されているため、確実に可動筐体の開操作が行えると共に、可動筐体が閉じた状態でも、この上面に表示部が設けられているため、表示されたメニューの確認等を行うことができ、多様な操作が可能な開閉装置、及びこれを用いた電子機器を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、多様な操作が可能な開閉装置及びこれを用いた電子機器を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同電子機器の分解斜視図
【図4】同斜視図
【図5】同カム動作図
【図6】同カム動作図
【図7】従来の電子機器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0018】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11は略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金等の固定体で、外周には外方へ突出した一対の固定カム12が設けられている。
【0019】
そして、13は略円柱状で金属製の固定軸、14は略円筒状で金属製の固定ケースで、固定ケース14内に固定体11が収納されると共に、固定軸13の左端に固定体11と固定ケース14が各々固着され、固定ケース14右端には傾斜部14Aが設けられている。
【0020】
また、15は略リング状で金属製の可動体で、固定体11に対し開閉方向へ回転可能に、かつ軸線方向へ移動可能に配置されると共に、内周には内方へ突出した一対の可動ピン16が、左端外周には固定体11の方向へ突出する一対の可動カム17が各々形成されている。
【0021】
さらに、18は略円筒状で金属製の可動ケースで、外周の溝部に可動体15外周の凸部が挿入され、可動体15が可動ケース18に対し軸線方向へは移動可能で、回転方向へは一体となって回転するようにして、可動ケース18内に収納されている。
【0022】
また、可動ケース18の左端開口部には固定ケース14が回転可能に装着されると共に、固定軸13が可動体15や可動ケース18内を挿通し、右端が止め輪19によって可動ケース18外側面に回転可能に装着されている。
【0023】
そして、20はコイル状に巻回された鋼線製のばねで、可動体15右側面と可動ケース18内側面の間にやや撓んだ状態で装着され、このばね20によって、可動体15が左方の固定体11の方向へ付勢されている。
【0024】
さらに、21は略円筒状で金属製の反転体、22は略リング状の解除体で、反転体21右端には右方へ突出する一対の反転カム23が、解除体22右端には凹凸状の解除カム24が各々形成されている。
【0025】
そして、反転体21が軸線方向へ移動可能なように、解除体22が回転可能なようにして、反転体21と解除体22が固定ケース14に各々装着されている。
【0026】
さらに、25は右端に右方へ突出する押圧カム26が形成された押圧体、27は鋼線製の巻ばねで、巻ばね27がやや捩られた状態で一端が解除体22に、他端が押圧体25に係止されると共に、押圧体25が固定軸13左端に軸線方向へ移動可能に装着され、固定ケース14から左方へ突出して、開閉装置30が構成されている。
【0027】
また、図3はこのような開閉装置30を用いた電子機器の分解斜視図であり、同図において、31は略箱型で合成樹脂製の固定筐体で、この固定筐体31内には複数の電子部品が実装された配線基板(図示せず)が収納されて、電子回路(図示せず)が形成されると共に、上面には複数のキーが配列された操作部31Aが設けられている。
【0028】
そして、32は同じく合成樹脂製の可動筐体で、可動筐体32内には固定筐体31と同様に電子回路が形成されると共に、上面には液晶表示素子等の上に、光透過性のタッチパネル等を載置した表示部32Aが設けられている。
【0029】
さらに、33は略アーム状で合成樹脂または金属製の連結部材で、この連結部材33の左下端に開閉装置30の可動ケース18が、固定筐体31の左内側面に固定ケース14が各々固着され、開閉装置30を介して連結部材33左下端が固定筐体31左内側面に装着されている。
【0030】
また、34はダンパーで、固定部34Aとこれに対して回転可能な可動部34Bの間に、複数のカムや潤滑油、ばね(図示せず)等が設けられ、可動部34Bが所定の摩擦力をもって回転するように形成されると共に、このダンパー34の固定部34Aが固定筐体31の右内側面に、可動部34Bが連結部材33の右下端に固着されている。
【0031】
そして、連結部材33の左右上端の貫通孔を挿通したピン35Aと35Bが、可動筐体32の左右側面の通孔に挿入され、連結部材33左右上端が可動筐体32左右側面に回転可能に装着されている。
【0032】
さらに、固定筐体31の左右内側面には、上面に平行に溝部31Bが設けられると共に、この溝部31Bに可動筐体32下端の左右側面の突起部32Bが挿入され、固定筐体31左側面から突出した開閉装置30の押圧体25には押釦36が装着されて、電子機器が構成されている。
【0033】
以上の構成において、図4(a)の斜視図に示すように、固定筐体31に対して可動筐体32が閉じた状態では、開閉装置30は、図5(a)のカム動作図に示すように、可動体15の方向へ突出した反転カム23の、下側の傾斜面に可動ピン16が弾接し、可動体15がばね20によって下方向の閉方向へ付勢されているため、可動ケース18が装着された連結部材33左下端には閉方向への付勢力が働き、上面に表示部32Aが形成された可動筐体32が、固定筐体31上に閉じた状態で保持されている。
【0034】
そして、このように可動筐体32が閉じた状態でも、可動筐体32上面には表示部32Aが形成されているため、この表示部32Aの画面に表示されたメニュー等を見ることができると共に、タッチパネル等を通して背面の液晶表示素子等を見ながら、所望のメニュー上のタッチパネルを押圧あるいは接触操作することで、所望のメニュー等の選択を行えるようになっている。
【0035】
また、この閉状態から、指で固定筐体31左側面の押釦36を押圧操作すると、図5(b)に示すように、押釦36が装着された押圧体25の押圧カム26が解除カム24を押圧して、解除体22が巻ばね27を撓めながら下方向へ回転し、解除カム24が反転カム23左端から外れるため、反転カム23が左方向へ移動する。
【0036】
このため、図5(c)に示すように、ばね20に付勢された一対の可動ピン16が、固定カム12上側の傾斜面に弾接して上方向へ回転し、可動体15が上方向の開方向へ付勢されるため、この力によって可動ケース18と、これが装着された連結部材33左下端には開く方向の力が加わり、図4(b)に示すように、可動筐体32が開操作される。
【0037】
なお、この時、可動筐体32下端の左右側面の突起部32Bが、固定筐体31の左右内側面の溝部31B内を摺動し、可動筐体32が左右下端を固定筐体31にガイドされて可動筐体32の開操作が行われるため、可動筐体32がガタつきなく滑らかに開くようになっている。
【0038】
そして、固定カム12上側の傾斜面上を、可動ピン16が上方向へ弾接摺動するに伴って可動筐体32が開いてゆくが、可動体15が所定角度回転した後は、図6(a)のカム動作図に示すように、一対の可動カム17が固定ケース14右端に設けられた傾斜部14Aに弾接する。
【0039】
さらに、この後、図6(b)に示すように、可動体15外周の可動カム17が、固定ケース14右端の傾斜部14Aを上方向へ弾接摺動し、この可動体15外周の可動カム17の大きなトルク力によって、可動体15の回転と、これに伴う可動筐体32の開操作が行われる。
【0040】
そして、図4(c)に示すように、可動筐体32が所定角度まで開くと、連結部材33下端が固定筐体31後端に当接、あるいは突起部32Bが溝部31B後端に当接して、可動体15の回転が止められ、可動筐体32が固定筐体31に対して所定の操作角度で、例えば130度前後開いた状態で保持され、表示部32Aを見ながら操作部31Aを操作して、例えば文字の入力操作等が行い易い状態となる。
【0041】
なお、押圧操作した後、押釦36から指を離すと、図6(c)に示すように、押圧カム26への押圧力がなくなるため、巻ばね27に付勢された解除カム24が上方向へ戻り、左端を押圧された反転カム23が右方向へ移動して、これらのカムが元の位置に復帰する。
【0042】
また、この開状態から可動筐体32を手で閉じると、上記とは逆に、可動カム17が傾斜部14Aを下方向へ弾接摺動した後、可動ピン16が反転カム23の傾斜面を下方向へ弾接摺動し、可動ピン16が反転カム23の下側の傾斜面に弾接して、図4(a)や図5(a)に示した状態に戻り、可動筐体32が携帯し易い閉じた状態となる。
【0043】
つまり、手による開閉操作に加え、可動筐体32を開く際には、押釦36が装着された押圧体25の押圧操作によって、可動体15を上方向、すなわち開方向に回転させて、可動筐体32をワンタッチで開く、所謂ワンタッチオープン操作が行えると共に、可動筐体32が閉じた状態でも、この上面には表示部32Aが設けられているため、表示されたメニューの確認や選択等を行うことが可能なように構成されている。
【0044】
そして、このように押釦36を押圧操作して開操作を行う際、可動ピン16や可動カム17が形成された可動体15が、所定角度回転した後は、可動カム17が固定ケース14の傾斜部14Aを弾接摺動して、可動体15が常に開方向へ付勢されて、可動筐体32の開操作が行われると共に、可動体15外周の可動カム17と固定ケース14右端の傾斜部14Aの、大きなトルク力によって開操作が行われるようになっている。
【0045】
すなわち、可動ピン16が固定カム12の傾斜面を弾接摺動し、可動体15が所定角度回転した後は、連結部材33や突起部32B等によって可動体15の回転が止められ、可動筐体32が完全に開き切るまでは、可動カム17が固定ケース14の傾斜部14Aを弾接摺動して、可動体15が常に開方向へ付勢されているため、確実な可動筐体32の開操作が行えるように構成されている。
【0046】
さらに、可動筐体32下端の左右側面に設けられた突起部32Bが、固定筐体31の左右内側面の溝部31Bに挿入され、可動筐体32が左右下端を固定筐体31にガイドされて、可動筐体32の開閉が行われているため、ガタつきがなく滑らかな可動筐体32の開閉が行われるようになっている。
【0047】
また、開閉装置30とは逆側の固定筐体31の右内側面と、連結部材33の右下端に固着されたダンパー34の回転摩擦力を大きく、あるいは小さくし、開閉装置30による開方向への付勢力を調整することで、可動筐体32を緩やかに、あるいは速やかに開操作することも可能となる。
【0048】
なお、以上の説明では、可動筐体32上面に表示部32Aを、固定筐体31上面に操作部31Aを設けた構成について説明したが、固定筐体31上面に可動筐体32と同様の、液晶表示素子等の上に光透過性のタッチパネル等を載置した表示部を設け、これを操作して表示されたメニューの確認や選択等を行ったり、二つの大きな画面で画像を見たりする構成としても、本発明の実施は可能である。
【0049】
このように本実施の形態によれば、可動ピン16や可動カム17が形成された可動体15が、所定角度回転した後は、常に開方向へ付勢されるようにして開閉装置30を形成すると共に、この開閉装置30と略アーム状の連結部材33を介して、可動筐体32を固定筐体31に装着することによって、可動体15が所定角度回転した後は常に開方向へ付勢されているため、確実に可動筐体32の開操作が行えると共に、可動筐体32が閉じた状態でも、この上面には表示部32Aが設けられているため、表示されたメニューの確認等を行うことができ、多様な操作が可能な開閉装置、及びこれを用いた電子機器を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による開閉装置及びこれを用いた電子機器は、多様で確実な操作が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器に使用される開閉装置として有用である。
【符号の説明】
【0051】
11 固定体
12 固定カム
13 固定軸
14 固定ケース
14A 傾斜部
15 可動体
16 可動ピン
17 可動カム
18 可動ケース
19 止め輪
20 ばね
21 反転体
22 解除体
23 反転カム
24 解除カム
25 押圧体
26 押圧カム
27 巻ばね
30 開閉装置
31 固定筐体
31A 操作部
31B 溝部
32 可動筐体
32A 表示部
32B 突起部
33 連結部材
34 ダンパー
34A 固定部
34B 可動部
35A、35B ピン
36 押釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定カムが形成された固定体と、この固定体を収納する略円筒状の固定ケースと、上記固定カムに弾接する可動ピンまたは可動カムが形成された可動体と、この可動体を軸線方向へ移動可能に収納する可動ケースと、この可動体を上記固定体の方向へ付勢するばねからなり、上記可動体が所定角度回転した後は、常に開方向へ付勢される開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の開閉装置と、上面に表示部または操作部が形成された固定筐体と、上面に表示部が形成された可動筐体と、略アーム状の連結部材からなり、上記開閉装置の可動ケースと固定ケースを、上記連結部材の下端と上記固定筐体に固着すると共に、上記連結部材の上端を上記可動筐体に回転可能に装着した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108543(P2013−108543A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252557(P2011−252557)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】