説明

開閉装置及び画像形成装置

【課題】別ユニットの着脱にかかわらず上面カバー(開閉ユニット)を安定して開閉操作することのできる開閉装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】上面カバー(開閉ユニット)30に制動力を加える制動部32を、電流発生手段101,102,103と、上面カバー30に圧接して上面カバー30に制動力を加えるアーム105と、電流発生手段101,102,103からの電流によって作動してアーム105を上面カバー30に圧接させると共に、電流発生手段101,102,103の発生電流量の大きさによってアーム105を上面カバー30に圧接させる力の大きさが変化するコイルバネ104とにより構成する。そして、上面カバー30を閉じる際、上面カバー30の回動速度が増加すると、この上面カバー30の回動速度の増加に伴いコイルバネ104により、アーム105によって上面カバー30に加える制動力の大きさが増加するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置及び画像形成装置に関し、特に装置本体に回動自在に保持された開閉ユニットに対して制動力を加える制動部の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ,複写機,ファクシミリ等の画像形成装置においては、例えば4つの感光体ドラム上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像をそれぞれ形成した後、各色トナー像を中間転写ベルトに一次転写するようにしたものがある。そして、このように各色トナー像を転写することにより、フルカラーのトナー像が中間転写ベルト上に形成される。
【0003】
なお、このように中間転写ベルト上に形成されたフルカラーのトナー像は、この後、二次転写部において、シートに転写され、さらにこの後、定着部において加圧及び加熱されることにより、シート上に定着される。
【0004】
ところで、このようなフルカラーのトナー像を一次転写する中間転写ベルトを備えた従来の画像形成装置において、例えば中間転写ベルトを備えた中間転写ベルトユニットを、画像形成装置本体の上部に設けるようにしたものがある。さらに、この中間転写ベルトユニットを、画像形成装置本体上面を構成する上面カバーに取り付け、中間転写ベルトを交換する際には、上面カバーを開放することにより、上面カバーと一体に中間転写ベルトユニットを交換可能位置まで移動させるようにしている。
【0005】
ここで、中間転写ベルトユニットが取り付けられた開閉ユニットである上面カバーは重いので、開閉ユニットを開閉する開閉装置は、自重により上面カバーが急に閉じないようばねとガスダンパ、またはばねとオイルダンパを組み合わせた制動部を設けている。そして、この制動部により、閉じる方向への反発力とユーザーによる閉じる場合の操作力とを両立させている。
【0006】
ところで、近年、アクチュエータとして、例えば電流を流すと伸縮したり変形したりするアクチュエータ素子がある。このアクチュエータ素子は、一般的に、普通のモータやソレノイドなどと区別して人工筋肉と呼ばれている。また、このアクチュエータ素子は、従来の電動モータや、シリンダソレノイド等に比べると小型化・軽量化が容易であるため、これに代わる物として知られている。
【0007】
現在、アクチュエータ素子としては、ゴム系(空気圧駆動)、電気化学系(高分子系)、形状記憶合金を原料にした金属系のものがある。また、生物のような柔らかで静かな動きをする金属のアクチュエータということで、糸状の細いものが市販されている。ここで、電気化学系(高分子系)のアクチュエータ素子としては、軽量ソフト高分子アクチュエータがある(特許文献1参照)。
【0008】
また、イオン交換樹脂に電極として金を特殊化学めっきにより形成し、電極表面積を非常に大きくしたことにより変位性能を大きく向上させた複合材料のシート状アクチュエータ素子がある。このアクチュエータ素子の場合は、電圧印加により素早く大きく動く特徴があり、また動作が電気的に制御できること、柔軟であること、構造体が樹脂により成り軽量であること、駆動時に騒音などの動作音がないという特徴がある。
【0009】
さらに、形状やサイズは比較的任意に決定することができること、板厚は、0.1mm〜10mmまで製造可能であること、低電力(0.05〜0.2W)で動作すること、素子の変形に伴い起電力が発生し、変位センサとしても使えるなどの特徴がある。
【0010】
なお、このようなアクチュエータ素子は、表裏両面に設けられた電極板と、両電極板の内側に配され、含水高分子電解質を内蔵しているプラスチックとにより構成されている。ここで、このようなアクチュエータ素子では、表裏面の電極板に夫々プラスとマイナスの電圧を印加すると、含水高分子電解質内の陽イオンが水分を伴って陰極側へ移動し、これにより含水量が偏るようになり、表裏での膨張に差が生じて変形する。この結果、アクチュエータ素子は湾曲形状に変形する。
【0011】
また、しなやかで強靭なポリピロール膜を用いた導電性高分子アクチュエータは、帯状フィルムの長手方向に電圧を印加すると伸縮する。また、金属コイル表面にポリピロール皮膜を形成させた複合体の導電性高分子アクチュエータ素子は、プラスとマイナスの印加で伸縮の押しと引きの両方の作動を行うことができる。
【0012】
また、金属系のアクチュエータ素子としてはNi−Ti系の形状記憶合金のアクチュエータ素子がある(特許文献2参照)。この金属のアクチュエータ素子は、針金状(ワイヤ状)の金属に電気エネルギーを付与すると、金属内部のイオンの作用により伸縮する特性を利用したものである。
【0013】
このアクチュエータ素子は、生物のような柔らかで静かな動作が特長で、通常はナイロンの糸のようにフレキシブルでしなやかであるが、電流を流すと発熱して収縮作用が発生し、ピアノ線のように硬く、剛くなって収縮する運動をする。このアクチュエータ素子を用いることにより、筋肉のように自分で緊張収縮と弛緩伸張する人工筋肉型の繊維状アクチュエータ(駆動装置)を構成することができる。
【0014】
なお、この金属系のアクチュエータ素子は、外部からの加熱による温度変化によって動かすことも可能である。例えば、70℃に加熱すると収縮し、冷却すると伸張する。そして、このような金属系のアクチュエータ素子は、組織的に安定なため優れた耐久性と動作特性を示すと共に、細くても大きな力を出せるため、ミリ・マイクロサイズのアクチュエータに最適である。
【0015】
また、金属系のアクチュエータ素子としては、Ti−Ni系の形状記憶合金を原料にし、繊維長手方向に優れた伸縮特性を引き出せるように異方性組織化された繊維状のアクチュエータ素子がある(特許文献3参照)。そして、このようなアクチュエータ素子は、繊維方向に組織化されているため巨大で安定した自己伸縮性を示し、所定の動作範囲では材料内部の変化などは起きにくく極めて安定な状態になっている。
【0016】
【特許文献1】特開2004−282992号公報
【特許文献2】特開2003−225474号公報
【特許文献3】特公平6−15154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、既述したように上面カバーが急に閉じないように、ばねとガスダンパ、又はばねとオイルダンパを組み合わせた構成の制動部を備えた従来の開閉装置及び画像形成装置において、上面カバーに別のユニットを着脱する場合がある。
【0018】
ここで、従来の制動部において、上面カバー30に、例えば別のユニットとして、画像が形成されたシートに対してステイプル処理等を施すシート処理装置を装着する場合がある。そして、このように別のユニットを装着した場合、開閉カバーが重くなり、自重により開閉カバーが急に閉じないように閉じる方向への反発力と、ユーザーによる閉じる場合の操作力とのバランスが崩れてしまうという問題が発生する。
【0019】
そこで、このように別ユニットを装着する場合は、制動部の制動力が大きくなるよう、ばねと組み合わされるダンパ等を交換することが一般的である。しかし、このようにダンパ等を交換して制動部の制動力を大きくした場合、装着されていた別のユニットを外した場合は、開閉カバーを開く方向の力が増大するために、ユーザーによる操作力が増大してしまう。このため、別ユニットがはずされた場合は、開閉カバーの重量に最適な組み合わせとなるようにダンパ等を交換することが一般的である。
【0020】
また、開閉カバーの自重に特化されたヒンジ構成は人間の操作力が加わることによる安全方向への冗長度を加えるため、結果として開閉カバーを閉じる時の操作力を大きくし、ユーザー操作性を犠牲にすることとなる。
【0021】
このように、従来のようなばねとガスダンパ、又はばねとオイルダンパを組み合わせた構成の制動部では、上面カバーに別ユニットを着脱した場合、上面カバーを安定して開閉操作できるようにするためにはダンパ等の交換が必要となる。つまり、上面カバーに別ユニットを着脱した場合、それに応じてダンパ等を交換しなければ上面カバーを安定して開閉操作することができない。
【0022】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、別ユニットの着脱にかかわらず上面カバー(開閉ユニット)を安定して開閉操作することのできる開閉装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、装置本体と、前記装置本体に回動自在に保持された開閉ユニットと、前記開閉ユニットに対して制動力を加える制動部と、を有する開閉装置において、前記制動部は、前記開閉ユニットの回動速度に応じた電流を発生する電流発生手段と、前記電流発生手段からの電流によって前記開閉ユニットに対する制動力の大きさを変化させる制動手段と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のように、開閉ユニットの回動速度に応じて発生した電流によって開閉ユニットに対する制動力の大きさを変化させることにより、開閉ユニットを安定して開閉操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る開閉装置を備えた画像形成装置の一例であるフルカラーの画像形成装置(フルカラープリンタ)の概略構成図である。
【0027】
この画像形成装置100は、一定の間隔をおいて一列に配設され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する像担持体である感光体ドラム1(1Y,1M,1C,1K)が4個配置された画像形成部100Aを備えている。なお、この感光体ドラム1の周囲には、それぞれ帯電手段、現像手段、クリーニング手段が配置され、これら感光体ドラム1、帯電手段等がプロセスカートリッジ2(2Y,2M,2C,2K)としてユニット化されている。
【0028】
これらプロセスカートリッジ2の上部には、各感光体ドラム1と接触するようにして、中間転写体である中間転写ベルト3が配置されている。さらに、中間転写ベルト3の内側には、1次転写手段としての転写ローラ5(5Y,5M,5C,5K)が中間転写ベルト3を介して各感光体ドラム1に当接可能に配置されている。ここで、中間転写ベルト3は、2次転写対向ローラ3a等により支持されており、2次転写対向ローラ3aへの駆動入力によって回転する。
【0029】
2次転写対向ローラ3aは、中間転写ベルト3を介して2次転写ローラ10と当接可能に配置されており、この2次転写対向ローラ3aと2次転写ローラ10とにより2次転写部が構成される。また、2次転写部よりもシート搬送方向下流側には、定着ローラ11aと加圧ローラ11bを有する定着装置11が設置されている。
【0030】
なお、図1において、4はプロセスカートリッジ2の鉛直方向下方に配置された露光装置であり、この露光装置4により、感光体ドラム1へ画信号に応じたレーザ光を照射して選択的な露光を行う。そして、このように感光体ドラム1を露光することにより、帯電手段によって帯電された各感光体ドラム1の表面に画像情報に応じた各色の静電潜像を形成する。
【0031】
なお、露光装置4はレーザ光を発光する不図示の発光部材、発光部材からのレーザ光を感光体ドラム1の長手方向(主走査方向)に走査するポリゴンミラー4a、各種レンズや各感光体ドラム1に照射するための反射するミラー4b等によって構成されている。そして、筐体4cに形成された不図示のスリットを介してレーザ光を各感光体ドラム1へ光照射する。
【0032】
次に、このような構成の画像形成装置100における画像形成動作について説明する。
【0033】
画像形成開始信号が発せられると、所定のプロセス速度で回転駆動される各感光体ドラム1は、それぞれ帯電手段によって一様に負極性に帯電される。そして、露光装置4は、外部から入力される画像情報をカラー色ごとに分解した画信号に応じて発光部材からレーザ光を発光する。そして、レーザ光を、ポリゴンミラー4a、反射ミラー4b等を経由して感光体ドラム上に照射し、感光体ドラム上に各色の静電潜像を形成する。
【0034】
次に、まず感光体ドラム1Y上に形成された静電潜像に、イエローのトナーを付着させて感光体ドラム1Y上の静電潜像をイエロートナー像として可視像化する。このイエロートナー像は、感光体ドラム1Yと転写ローラ5Yとの間の1次転写部にて、トナーと逆極性の1次転写バイアス(正極性)が印加された転写ローラ5Yにより、駆動されている中間転写ベルト3上に1次転写される。
【0035】
イエロートナー像が転写された中間転写ベルト3は、次にマゼンタのトナー像が形成された感光体ドラム1M側に移動する。そして、感光体ドラム1Mに形成されたマゼンタトナー像が、中間転写ベルト3上のイエロートナー像上に重ね合わせて1次転写部にて転写される。
【0036】
以下、同様にして、中間転写ベルト3上に重畳転写されたイエロー及びマゼンタトナー像上に感光体ドラム1C,1Kで形成されたシアン及びブラックトナー像を各1次転写部にて順次重ね合わせる。これにより、フルカラーのトナー像が中間転写ベルト3上に形成される。
【0037】
次に、給紙カセット7に収納され、給送ローラ8によりレジストローラ9に搬送されたシートが、レジストローラ9により、中間転写ベルト3上に形成されたフルカラートナー像の先端が2次転写部に達するタイミングに合わせて2次転写部に搬送される。そして、この2次転写部に搬送されたシートに、トナーと逆極性の2次転写バイアス(正極性)が印加された2次転写ローラ10により、フルカラーのトナー像が一括して2次転写される。
【0038】
次に、フルカラーのトナー像が形成されたシートは、定着装置11に搬送され、定着ローラ11aと加圧ローラ11bとの間の定着ニップ部で加熱、加圧されることにより、フルカラーのトナー像がシートの表面に熱定着される。この後、このように画像が形成されたシートは、排出ローラ12によって装置本体6の上面に設けられた排紙トレイ13上に排出され、一連の画像形成動作を終了する。
【0039】
ところで、本実施の形態において、排紙トレイ13は、装置本体6の上面に開閉自在に保持された上部カバー30の上面に形成されており、このように排紙トレイ13が上面に形成されている上面カバー30には中間転写ベルト3が着脱自在に支持されている。
【0040】
そして、中間転写ベルト3を交換する際、又は装置本体6に対して着脱可能に装填されたプロセスカートリッジ2を感光体ドラム1等の寿命に応じて交換する際は、図2に示すように上面カバー30を開放するようにしている。そして、このように開閉ユニットである上面カバー30を開放することにより、中間転写ベルト3及びプロセスカートリッジ2等の交換が可能となる。
【0041】
上面カバー30は、装置本体奥側に設けられたヒンジ部により上下方向に回動可能に支持されている。図3及び図4は、このように上面カバー30を回動開閉可能に支持するヒンジ部の構成を示す図である。
【0042】
図3及び図4において、31はヒンジ部であり、このヒンジ部31には上面カバー30に対して制動力を加える制動部32が設けられている。なお、本実施の形態においては、装置本体6と、開閉ユニットである上面カバー30と、このヒンジ部31とによって開閉装置100Bが構成される。108は上面カバー30の両側面に設けられた円筒状の回動軸である。そして、この筒状の軸である回動軸108を装置本体6に設けられた不図示の軸支部である回動中心穴に挿入することにより、上面カバー30は装置本体6に対し、回動軸108を支点として上下方向に回動可能となる。
【0043】
ここで、この円筒状の回動軸108の内面にはS極とN極の一対の磁石101,102が対向して配置されており、これら磁石101,102は、上面カバー30の開閉の際には、回動軸108と一体で回転するようになっている。また、装置本体側の不図示の回動中心穴にはコイル103が配置されており、回動軸108が回動中心穴に係合すると、図3及び図4に示すように、コイル103は対向して配置された磁石101,102の間に位置するようになる。
【0044】
これにより、上面カバー30が回動する際、上面カバー30の回動軸108と一体に磁石101,102が回転すると、コイル103を通る磁束密度が変化し、この結果、コイル103に誘導電流が発生することとなる。つまり、本実施の形態において、制動部32は、コイル103と磁石101,102とにより構成され、上面カバー30の開閉(回動)によって電流が発生する電流発生手段を備えている。
【0045】
また、制動部32は、回動軸108の近傍に配置され、装置本体6に設けられた軸107を支点として回動可能なアーム105を備えている。このアーム105は、後述するように上面カバー30が下方回動すると、軸107を中心に回動し、回動軸108に圧接して回動軸108に制動力を加えるようになっている。なお、この制動部材であるアーム105の回動軸108に圧接する部分には、回動軸108との間に摩擦力を生じさせる摩擦制動パッド106が取り付けられている。
【0046】
また、制動部32は、アクチュエータ素子の一例である、コイルバネ状の形状記憶合金(形状記憶合ワイヤ)で形成されたコイルバネ104を備えている。そして、アーム105は回動軸108を挟んで軸107と対向する位置で、このコイルバネ104を介して装置本体6と連結される。なお、本実施の形態においては、コイルバネ104の一方の端部104aは装置本体6に固定され、もう一方の端部104bはアーム105に固定されている。また、コイルバネ104と、コイル103との間は、図4に示すように導線109により接続されている。
【0047】
ここで、既述したように、上面カバー30が回動すると、回動軸108と一体の磁石101,102が回転してコイル103を通る磁束密度が変化し、これに伴いコイル103に誘導電流が発生し、この誘導電流は導線109を通ってコイルバネ104に流れる。
【0048】
なお、この形状記憶合金のコイルバネ104は、電流を通すことにより収縮し、電流を止めることにより元の長さに戻るものであり、このように電流が流れることにより、コイルバネ104は縮む。そして、このようにコイルバネ104が縮むことにより、アーム105は軸107を支点として回動して摩擦制動パッド106を回動軸108に押し付け、回動軸108との間に上面カバー30の回動を規制する制動力を発生させる。
【0049】
ここで、コイル103は、上面カバー30の回動速度が速いほど大きな電流を発生するため、これに伴いコイルバネ104の収縮力が大きくなり、結果的に大きな制動力を得ることができる。つまり、本実施の形態の制動部32では、上面カバー30の回動速度が早くなるほど電流発生手段の電流の発生量(発生電流量)が大きくなり、大きな制動力を発揮することができる。また、本実施の形態では、コイルバネ104、アーム105及び摩擦制動パッド106によって、上面カバー30に対する制動力を変化させる制動手段が構成されている。
【0050】
なお、本実施の形態においては、例えばコイルバネ104とコイル103との間にダイオード等を設け、上面カバー30が下方回動するときにのみ、コイルバネ104に電流が流れるようにしている。これにより、ユーザーが上面カバー30を上方回動操作する際には、制動部32による制動力が働かないようになるので、通常の操作力で上面カバー30を上方回動することができる。
【0051】
以上説明したように、上面カバー30を閉じる際、上面カバー30の回動速度が増加すると、制動部32は、上面カバー30に加える制動力の大きさを増加させる。これにより、上面カバー30に別ユニットを着脱したり、人間の操作力が加わって上面カバー30の閉じる力が大きくなった場合でも、上面カバー30の閉じる速度を遅くすることができる。
【0052】
そして、このように上面カバー30の回動速度の増加に伴って制動力の大きさが増加し、上面カバー30の閉じる速度が遅くなるようにすることにより、別ユニットの着脱にかかわらず上面カバー30を安定して開閉操作することができる。この結果、上面カバー30を閉じる際の操作性の低下を防ぐことができる。
【0053】
また、本実施の形態の制動部32は、自己発電でコイルバネ104を駆動させる構成であり、上面カバー30の開閉動作(回動動作)によって上面カバー30の回動速度に応じた電流を発生し、コイルバネ104に発生した電流を供給する。したがって、装置本体6に電源が供給されていない状態でも、制動力を得ることができる。
【0054】
なお、本実施の形態のコイルバネ(アクチュエータ素子)は作動時の電流が少なく、材質がPS、PC、PMAAなど電気化学的なものである。また、例えば、コイルバネの直径0.1mm、長さ300mm、最大張力的1Nとした場合の入力は8.2Vで192mA程度である。このため、消費電力が少なく、コイルバネ104を装置本体6の電源により駆動するようにしても電源負荷に影響を与えることはない。
【0055】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0056】
図5は本実施の形態に係る画像形成装置に設けられた制動部の側面図、図6はその斜視図である。なお、図5及び図6において、既述した図3及び図4と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0057】
図5及び図6において、114は回動軸108の方向に移動可能な制動部材であるスライダであり、このスライダ114は装置本体6に配設されたスライダ支台113に上下方向にスライド可能に配置されている。ここで、このスライダ114の上部部分は回動軸108に倣うように湾曲しており、この湾曲した上部部分の内壁面には摩擦制動パッド106が取り付けられている。さらに、このスライダ114は、コイルバネ112により、通常、回動軸108と摩擦制動パッド106とが離間するように付勢されている。
【0058】
111は、スライダ支台113に懸架された形状記憶合金で形成されたストレートのワイヤであり、コイルバネ112により、回動軸108から離間する方向に付勢されているスライダ114は、このワイヤ111によって保持されている。なお、このアクチュエータ素子の一例としての、直線状の形状記憶合金(形状記憶ワイヤ)で形成されたであるワイヤ111と、コイル103とは不図示の導線で結線されており、コイル103に発生した電流がワイヤ111に流れるようになっている。
【0059】
このように構成することにより、本実施の形態においても、既述したように、上面カバー30が回動すると、回動軸108と一体の磁石101,102が回転してコイル103を通る磁束密度が変化し、これに伴いコイル103に誘導電流が発生する。この誘導電流は不図示の導線を通ってワイヤ111に流れ、このように電流が流れることにより、ワイヤ111は縮む。
【0060】
そして、このようにワイヤ111が縮むと、これに伴いワイヤ111によりスライダ114が下方に押圧され、スライダ114はコイルバネ112に抗して回動軸側にスライドする。これにより、摩擦制動パッド106が回動軸108に押し付けられ、回動軸108との間に上面カバー30の下方への回動を規制する制動力を発生させる。
【0061】
ここで、コイル103は、上面カバー30の回動速度が速いほど大きな電流を発生するため、これに伴いワイヤ111の収縮力が大きくなり、結果的に大きな制動力を得ることができる。つまり、本発明の制動部32では、上面カバー30の回動速度が早くなるほど大きな制動力を発揮することができる。これにより、既述した第1の実施の形態と同様に、別ユニットの着脱にかかわらず上面カバー30を安定して開閉操作することができ、上面カバー30を閉じる際の操作性の低下を防ぐことができる。
【0062】
なお、これまでの説明においては、回動軸108を上面カバー側に、コイル103を装置本体側に設けたが、回動軸108を装置本体側に、コイル103を上面カバー側に設けるようにしても良い。つまり、回動軸108を上面カバー30と装置本体6の一方に、軸支部を上面カバー30と装置本体6の他方に設けるようにすれば良い。
【0063】
ところで、これまで説明した第1及び第2の実施の形態では、制動部32は、回動軸108に直接制動力を作用させるように構成されていたが、本発明は、これに限らず、回動軸108に対して間接的に制動力を作用させるように構成しても良い。
【0064】
次に、このように回動軸108に対して間接的に制動力を作用させるようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0065】
図7は本実施の形態に係る画像形成装置に設けられた制動部の側面図である。なお、図7において、既述した図5と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0066】
図7において、120は回動軸108に直結し、上面カバー30の回動に伴って回転する第1ギアである回動軸側ギア、123は回動軸側ギア120の回転に伴って回転する第2ギアである制動ギアである。
【0067】
この制動ギア123の内側には円筒状の空隙123aが形成されており、この空隙123aの内面にS極とN極の一対の磁石101,102が対向して配置されている。なお、この制動ギア123の空隙123aには、装置本体6に上面カバー30を取り付ける際、装置本体側に設けられたコイル103が入り込むように構成されている。つまり、装置本体6に上面カバー30を取り付けた状態のとき、制動ギア123に対向して配置された磁石101,102の間にコイル103が入り込むようになっている。
【0068】
また、図7において、121、122は回動軸側ギア120と制動ギア123との間に設けられた伝達ギアである増速ギアである。そして、上面カバー30の回動に伴い回動軸108が回転すると、回動軸108に直結した回動軸側ギア120が回転し、この回動軸側ギア120の回転は、増速ギア121,122を介して制動ギア123へ増速されて伝わるようになっている。
【0069】
さらに、このように制動ギア123が回転すると、制動ギア123と一体の磁石101,102が回転してコイル103を通る磁束密度が変化し、これに伴いコイル103に誘導電流が発生する。つまり、本実施の形態において、制動部32は、装置本体6に設けられたコイル103と、制動ギア123に設けられた磁石101,102とにより構成され、上面カバー30の開閉(回動)によって電流が発生する電流発生手段を備えている。そして、この誘導電流は不図示の導線を通ってワイヤ111に流れ、このように電流が流れることにより、ワイヤ111は縮む。
【0070】
ここで、本実施の形態において、スライダ114は、制動ギア123の不図示のスリーブ部に対して接離可能となっている。そして、このようにワイヤ111が縮むと、これに伴いスライダ114がワイヤ111により下方に押圧され、スライダ114はコイルバネ112に抗して制動ギア側にスライドする。これにより、摩擦制動パッド106が制動ギア123のスリーブ部に押し付けられ、制動ギア123との間に上面カバー30の下方への回動を規制する制動力を発生させる。
【0071】
ところで、本実施の形態のように、上面カバー30の回動運動を増速ギア121,122により増速して制動ギア123に伝達することにより、上面カバー30の回動量が僅かな場合でも、コイル103に大きな電流を発生させることができる。この結果、ワイヤ111の収縮力が大きくなり、大きな制動力を得ることができる。
【0072】
また、増速された制動ギア123に摩擦制動パッド106を圧接することにより、小さな力で大きな質量の回転を止めることが可能となる。これに伴い、既述した第1及び第2の実施の形態と同様に、上面カバー30を閉じる際の操作性の低下を防ぐことができる。
【0073】
なお、これまでの説明においては、アクチュエータ素子としてワイヤ111やコイルバネ104を例に挙げたが、本発明は、これに限らずシート状の高分子を素材とするアクチュエータ素子を用いても良い。
【0074】
また、これまでの説明において、上面カバー30に着脱される別ユニットとして中間転写ベルト3を例にして述べてきたが、例えば上面カバー30に別ユニットとしてシート処理装置を着脱可能に取り付けるようにしても良い。そして、このようにシート処理装置を取り付けることにより上面カバー30が重くなった場合でも、本発明の制動部32を用いるようにすれば、上面カバー30を閉じる際の操作性の低下を防ぐことができる。
【0075】
さらに、これまでの説明においては、開閉ユニットとして上面カバー30を例に挙げ、画像形成装置100に本発明の開閉装置100Bを適用した。しかし、本発明はこれに限らない。開閉ユニットとしては、例えば、画像形成装置の自動原稿送り装置、搬送経路を開放するための各扉、ユーザーやサービスマンによるメンテナンスにおける扉等があり、これらにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーの画像形成装置(フルカラープリンタ)の概略構成図。
【図2】上記画像形成装置における中間転写ベルト及びプロセスカートリッジ等を交換するときの状態を示す図。
【図3】上記画像形成装置に設けられた上面カバーを回動開閉可能に支持するヒンジ部に設けられた制動部の構成を示す側面図。
【図4】上記制動部の構成を示す斜視図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に設けられた制動部の側面図。
【図6】上記制動部の構成を示す斜視図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置に設けられた制動部の構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0077】
6 装置本体
30 上面カバー
31 ヒンジ部
32 制動部
100 画像形成装置
100A 画像形成部
100B 開閉装置
101,102 磁石
103 コイル
104 コイルバネ
105 アーム
106 摩擦制動パッド
108 回動軸
111 ワイヤ
114 スライダ
120 回動軸側ギア
121,122 増速ギア
123 制動ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、前記装置本体に回動自在に保持された開閉ユニットと、前記開閉ユニットに対して制動力を加える制動部と、を有する開閉装置において、
前記制動部は、
前記開閉ユニットの回動速度に応じた電流を発生する電流発生手段と、
前記電流発生手段からの電流によって前記開閉ユニットに対する制動力の大きさを変化させる制動手段と、を備えることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記開閉ユニットを閉じる際、前記開閉ユニットの回動速度の増加に伴って前記開閉ユニットに加える前記制動力の大きさを前記制動手段が増加させることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記制動部は、
前記開閉ユニットと前記装置本体との一方に設けられ、前記開閉ユニットを前記装置本体に回動自在に保持するための筒状の軸と、
前記開閉ユニットと前記装置本体との他方に設けられ、前記筒状の軸を支持する軸支部と、を備え、
前記電流発生手段は、前記筒状の軸の内壁に対向して配置された磁石と、前記軸支部に設けられ、前記対向して配置された磁石の間に位置すると共に、前記制動手段に接続されたコイルとを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記制動部は、
前記開閉ユニットの回動に伴って回転する第1ギアと、
前記第1ギアの回転に伴って回転すると共に、内部に空隙が形成された第2ギアと、を備え、
前記電流発生手段は、前記第2ギアの空隙に対向して配置された磁石と、前記装置本体に設けられ、前記対向して配置された磁石の間に位置すると共に、前記制動手段に接続されたコイルとを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記第1ギアと前記第2ギアとの間に、前記開閉ユニットの回動速度を増速して前記第2ギアに伝達する伝達ギアを設けたことを特徴とする請求項4記載の開閉装置。
【請求項6】
前記制動手段は、前記開閉ユニットに圧接して前記開閉ユニットに制動力を加える制動部材と、前記電流発生手段からの電流によって前記制動部材を前記開閉ユニットに圧接させるよう作動し、かつ前記電流発生手段の発生電流量の大きさによって前記制動部材を前記開閉ユニットに圧接させるアクチュエータ素子と、を有し、
前記アクチュエータ素子は、直線状の形状記憶ワイヤからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記制動手段は、前記開閉ユニットに圧接して前記開閉ユニットに制動力を加える制動部材と、前記電流発生手段からの電流によって前記制動部材を前記開閉ユニットに圧接させるよう作動し、かつ前記電流発生手段の発生電流量の大きさによって前記制動部材を前記開閉ユニットに圧接させるアクチュエータ素子と、を有し、
前記アクチュエータ素子は、コイルバネ状の形状記憶ワイヤからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項8】
装置本体と、
前記装置本体に回動自在に保持された開閉ユニットと、
前記開閉ユニットに対して制動力を加える制動部と、を有し、
前記制動部は、前記開閉ユニットの回動速度の増加に伴って前記開閉ユニットに加える前記制動力の大きさを増加させることを特徴とする開閉装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成部と、前記請求項1乃至8のいずれか記載の開閉装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−145389(P2009−145389A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319498(P2007−319498)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】