説明

間接照明システムおよび車両用灯具

【課題】 レーザー光を用いた小型で高輝度の間接照明システムおよび車両用灯具を提供する。
【解決手段】 車両用灯具の光源ユニット9は、レーザー光源13からのレーザー光LBを圧電振動子15により上下方向に振動させ、レーザー光LBの振幅方向に広がる第1スリット光S1を生成する。第1リフレクタ10は、第1スリット光S1と同一の平面内に階段状または連続斜状の第1反射面20を備え、第1反射面20により第1スリット光S1の進路を変えて上向きの第2スリット光S2を形成する。第1リフレクタ10の上方に第2リフレクタ11を設置し、第2リフレクタ11の第2反射面21により第2スリット光S2の進路を変え、反射光を灯具ハウジングの前面から出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光をリフレクタで反射させて対象領域を間接的に照明するシステム、および、このシステムを用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDの拡散光をリフレクタで反射させ、灯具の前方領域を間接的に照明するシステムが知られている。例えば、特許文献1には、灯具ハウジングの底部にLEDと放物面鏡とを備えた光源ユニットを設置し、光源ユニットの上方にレンズリフレクタと拡散リフレクタとを並設し、LEDからの上向きの光を二つのリフレクタで水平向きに変換し、灯具ハウジングの前面から照射する車両用灯具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−317508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の間接照明システムによると、LEDの拡散光を集めるために放物面鏡が必要となり、光源ユニットが大型化し、灯具ハウジングが厚くなるという不都合があった。また、放物面鏡からの平行光束をレンズリフレクタの階段状反射面で分割した後に、拡散リフレクタで反射させているため、均一な拡散光が得られる反面、光束の分割によって輝度が低下するという問題点もあった。
【0005】
本発明の目的は、レーザー光を用いた小型で高輝度の間接照明システムおよび車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の間接照明システムは、レーザー光源からのレーザー光をアクチュエータにより一方向に振動させ、レーザー光の振幅方向に広がる第1スリット光を生成する光源ユニットと、第1スリット光と同一の平面内に階段状または連続斜状の第1反射面を含み、第1反射面により第1スリット光の進路を変えて第2スリット光を形成する第1リフレクタとを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の間接照明システムは、第1リフレクタに加えて第2リフレクタを備え、第2リフレクタが第2スリット光を含む平面と交差する第2反射面を含み、第2反射面により第2スリット光の進路を変えて、反射光を出射することを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態では、第1スリット光を生成するために、光源ユニットがレーザー光源に振動を加えるアクチュエータを備える。本発明の別の実施形態では、光源ユニットがレーザー光源からのレーザー光線を透過させるレンズと、レンズに振動を加えるアクチュエータとを備える。
【0009】
本発明の車両用灯具は、車体上に設置された灯具ハウジングの内部に、レーザー光源からのレーザー光をアクチュエータにより一方向に振動させ、レーザー光の振幅方向に広がる第1スリット光を生成する光源ユニットと、第1スリット光と同一の平面内に階段状または連続斜状の第1反射面を含み、第1反射面により第1スリット光の進路を変えて第2スリット光を形成する第1リフレクタと、第2スリット光を含む平面と交差する第2反射面を含み、第2反射面により第2スリット光の進路を変えて、反射光を灯具ハウジングの前面から出射する第2リフレクタとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の間接照明システムおよび車両用灯具によれば、高いコヒーレンスのレーザー光を振動させるので、レーザー光源のほぼ全出力を一点で発光させ、発光点の光跡によって高輝度の第1スリット光を形成することができる。また、第1スリット光と第2スリット光が同一平面内に形成されるため、灯具全体を薄く小型に構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用灯具の概略正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】レーザー光の進路を示す光路図である。
【図4】光源ユニットの変更例を示す立面図である。
【図5】光源ユニットの別の変更例を示す凹凸レンズの光路図である。
【図6】第1リフレクタの変更例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の間接照明システムを車両用灯具に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1、図2に示す車両用灯具1はリアコンビネーションランプであって、車体の後部に取り付けられる灯具ハウジング2を備えている。灯具ハウジング2の前面にはアウターレンズ3が装着され、アウターレンズ3にターンシグナルランプとしての発光域4、テール&ストップランプとしての発光域5、およびバックアップランプとしての発光域6が画定されている。
【0013】
灯具ハウジング2の内部にはインナーレンズ7が設置され、その内面に拡散ステップ7aが形成され、下部にエクステンション8が設けられている。エクステンション8の後側には光源ユニット9と第1リフレクタ10が左右に並設され、不透明なエクステンション8によって灯具前方の視界から隠されている。そして、第1リフレクタ10の上側に、第2リフレクタ11がインナーレンズ7の背後に位置するように設けられている。
【0014】
図1に示す光源ユニット9は、発光源にレーザーダイオード(LD)を用いたレーザー光源13と、レーザー光源13からのレーザー光LBを透過するレンズ14と、レンズ14に振動を加えるアクチュエータとしての圧電振動子15とを備え、圧電振動子15によってレーザー光LBを上下方向に振動させ、レーザー光LBの振幅方向に広がる横向きの第1スリット光S1(図3参照)を生成するようになっている。
【0015】
図3に示す光源ユニット9は、圧電振動子15が加振板16を介してレーザー光源13に振動を加え、レーザー光LBの上下方向の振動によって横向きの第1スリット光S1を生成する。灯具ECU17は駆動回路18を介してレーザー光源13のON/OFFやレーザー光LBの輝度等を制御する。また、灯具ECU18は発振回路19を介して圧電振動子15を制御し、配光パターンに応じてレーザー光LBの振幅、振動速度等を変化させる。
【0016】
第1リフレクタ10は、第1スリット光S1と同一の平面内に広がる平板状に形成され、上側の面が第1スリット光S1を反射する第1反射面20となっている。第1反射面20は、光源ユニット9側が低い階段状に形成され、第1スリット光S1の進路を横向きから上向きに変換し、第2リフレクタ11に向かう第2スリット光S2を形成する。なお、第1反射面20を第1リフレクタ10に連続斜状に形成することも可能である。
【0017】
第2リフレクタ11は、第2スリット光S2を含む平面と交差する第2反射面21を備えている。第2反射面21は、図3に示すような階段形状、または、図2に示すような段付き傾斜面とすることができる。そして、第2リフレクタ11は、第2反射面21により第2スリット光S2を灯具前方に向けて反射し、反射光R(図2参照)をインナーレンズ7とアウターレンズ3に通して灯具ハウジング2の前面から出射するようになっている。
【0018】
従って、この実施形態の車両用灯具1によれば、高いコヒーレンスのレーザー光LBを振動させているため、レーザー光源13のほぼ全出力を一点で発光させ、発光点のスキャン軌跡によって高輝度の第1スリット光S1を形成できる。一方、第2スリット光S2は第1スリット光S1と同一平面内に形成されているので、立体的なリフレクタが不要となり、灯具ハウジング2を薄く小型に構成できる。また、第2リフレクタ11の第2反射面21は第2スリット光S2の進路に沿って広がるように形成されているので、反射光Rを灯具ハウジング2の前面から車両後方の広い範囲に出射することができる。
【0019】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)図4に示すように、レーザー光源13を横U字形の弾性変形部材23上に設置し、弾性変形部材23に角度調整ネジ24を設け、レンズ14に対するレーザー光LBの位置を微調整できるように構成すること。
(2)図5に示すように、レンズとして凹凸レンズ25を使用し、レーザー光LBの振幅を広げ、第1スリット光S1を拡張すること。
(3)図6に示すように、第1リフレクタ10を屈曲させ、第1反射面20の屈曲部に反射部26を立設し、スリット光S1,S2の向きや位置を配光パターンに応じて変更できるように構成すること。
(4)圧電振動子15にかえ、モータによってレーザー光源13またはレンズ14を加振すること。
【符号の説明】
【0020】
1 車両用灯具
2 灯具ハウジング
9 光源ユニット
10 第1リフレクタ
11 第2リフレクタ
13 レーザー光源
14 レンズ
15 圧電振動子
20 第1反射面
21 第2反射面
LB レーザー光
S1 第1スリット光
S2 第2スリット光
R 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源からのレーザー光をアクチュエータにより一方向に振動させ、レーザー光の振幅方向に広がる第1スリット光を生成する光源ユニットと、
第1スリット光と同一の平面内に階段状または連続斜状の第1反射面を含み、第1反射面により第1スリット光の進路を変えて第2スリット光を形成する第1リフレクタと、
を備えたことを特徴とする間接照明システム。
【請求項2】
前記第2スリット光を含む平面と交差する第2反射面を含み、第2反射面により第2スリット光の進路を変えて、反射光を出射する第2リフレクタを備えたことを特徴とする請求項1記載の間接照明システム。
【請求項3】
前記光源ユニットがレーザー光源に振動を加えるアクチュエータを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の間接照明システム。
【請求項4】
前記光源ユニットがレーザー光源からのレーザー光を透過させるレンズと、レンズに振動を加えるアクチュエータとを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の間接照明システム。
【請求項5】
車体に設置された灯具ハウジングの内部に、
レーザー光源からのレーザー光をアクチュエータにより一方向に振動させ、レーザー光の振幅方向に広がる第1スリット光を生成する光源ユニットと、
第1スリット光と同一の平面内に階段状または連続斜状の第1反射面を含み、第1反射面により第1スリット光の進路を変えて第2スリット光を形成する第1リフレクタと、
第2スリット光を含む平面と交差する第2反射面を含み、第2反射面により第2スリット光の進路を変えて、反射光を灯具ハウジングの前面から出射する第2リフレクタと、
を備えたことを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−238504(P2012−238504A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107347(P2011−107347)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】