関節炎を治療及び予防する方法
【課題】関節炎を治療及び予防する方法の提供。
【解決手段】式1で表される化合物:
[化1]
[式中、Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;Aは、
[化2]
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]を、関節リウマチを含む関節炎の治療又は予防に使用する。
【解決手段】式1で表される化合物:
[化1]
[式中、Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;Aは、
[化2]
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]を、関節リウマチを含む関節炎の治療又は予防に使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、関節リウマチ等の関節炎を、その治療又は予防を必要とする患者に或るチオアラビノフラノシル化合物を投与することによって、当該患者において治療又は予防することに関する。本開示において用いられる化合物は、予防効果を発現して関節炎を防ぐ又は少なくとも実質的に防ぐとともに、良好な抗関節炎活性を示す。本開示において用いられる化合物は、α配置ではなく、β配置の状態である。
【背景技術】
【0002】
多くの関節炎薬が開発されているにもかかわらず、高齢者人口の増加によって、関節炎は世界的にみて今なお深刻な疾患である。関節炎による死亡率は低いものの、当該疾患の患者のクオリティ・オブ・ライフはその犠牲になり、活動レベルや生産性が低下してしまう。
【0003】
多くの関節炎の種類の中でも、最も深刻であるのは関節リウマチである。関節リウマチは、自己反応性Tリンパ球の作用による自己免疫疾患である。Tリンパ球は、遅延型過敏症を介して関節リウマチを引き起こす。当該疾患の原因となる、Tリンパ球により認識される抗原がどれであるかは全く分かっていない。最も蓋然性が高いものとしてII型コラーゲンが知られているが、他の可能性も捨てきれない。上記疾患の原因であるとははっきりしていないものの、抗ヒストン自己抗体が発見されている。
【0004】
多くの薬剤が関節リウマチの治療に使用されているが、その症状を完全に緩和するものではない。従来の薬剤としては、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID、アスピリン、イブプロフェン)、金塩、ペニシラミン、及びステロイドホルモンが挙げられる。最も強力で有効なものであるステロイドホルモンは、長期にわたり摂取する場合に副作用を示す。近年、炎症メカニズムで大きな役割を果たす腫瘍壊死因子(TNF)の組換え型可溶性受容体が、関節リウマチの新たな治療物質として治験中である。しかしながら、炎症などの関節リウマチの症状を治療する製剤のさらなる改良が求められている。
【0005】
コラーゲン誘発関節炎(CIA)はTリンパ球性関節リウマチの動物モデルとして利用されている(非特許文献1)。関節炎を発現する傾向のあるマウスにII型コラーゲンを注射すると、2週間以内に関節炎が誘発され、パンヌスの形成、軟骨や骨の糜爛などといった症状が生じる。関節リウマチと同様に、CIAでは、さらにコラーゲンに対する体液性免疫反応や細胞性免疫反応も起こる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Autoimmunity to Type II collagen:Experimental model of arthrits,J.Exp.Med.146;857−868(1977)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、関節炎を治療又は予防する方法であって、式1で表される化合物:
【0008】
【化1】
[式中、
Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;
Aは、
【0009】
【化2】
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]
の少なくとも1つを、関節炎を治療又は予防するのに有効な量で、その治療又は予防を必要とするホストに投与することを含む方法に関する。
【0010】
本開示の更に別の目的及び利点は、以下の詳細な説明により、当業者にとって容易に明らかとなるであろう。詳細な説明においては、単に考えられる最良の形態を例示することで好ましい実施形態を図示し、説明している。十分に理解されるであろうが、本開示は他の異なる実施形態も採りうるものであり、幾つかの細部については、本開示から逸脱することなく、各種の自明な点で改変が可能である。従って、本明細書は本質的に例示的なものであり、これに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、試験期間中のマウスの平均体重を示す。
【図2】図2は、20mg/kg/日投与群マウスの一個体における皮膚発疹(skin rash)の発症を示す。
【図3】図3は、高投与量(60mg/kg/日)群マウス全てにおいて見られた脾腫を示す。
【図4】図4は、本開示に係る被験化合物を用い、その投与量を変えて治療した際の、各マウスにおける関節炎の罹患率を示す。
【図5】図5は、各処理・治療群におけるコラーゲン誘発関節炎の平均発症時期を示す。
【図6】図6は、関節炎の罹患率を経時的に示した図である。
【図7】図7は、治療群及び対照群の各動物における、関節炎を罹患している足の累積数による分析を示す。
【図8】図8は、疾患の平均重症度の分析を示す。
【図9】図9は、実験前、免疫付与後14日目、関節炎の発症時(該当する場合)、及び、終了時に摂取した各血清中の抗CII(II型コラーゲン)抗体濃度を示す。
【図10】図10は、マウス中の総Ig濃度を示す。
【図11】図11は、マイトジェンであるコンカナバリンA及びLPS、並びに、抗原であるII型コラーゲンに対する各反応に由来するリンパ節細胞活性化のレベルを示す。
【図12】図12は、脾臓細胞における、Con A(コンカナバリンA)、LPS、及びCIIに対する反応を示す。
【図13】図13は、健常マウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図14】図14は、CIAマウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図15】図15は、100mg/kgのT−araCで6週間治療したCIAマウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図16】図16は、9mg/kgのメトトレキサートで6週間治療したCIAマウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図17】図17は、mCT画像に基づく、マウスの関節及び骨の破壊を表すグラフである。
【図18】図18は、H&Eによる組織学的分析を示すマイクロ写真である。(各マウスの足を一本、それぞれ病理組織学的に評価した。組織サンプルを固定し、脱灰し、パラフィン包埋し、H&E染色を行った。各足の構造上の変化及び周辺部の糜爛の重症度を評価し、スコアをつけた。)
【図19】図19は、H&E染色を基に、関節炎の重症度を表すグラフである。
【図20】図20は、マウス血清中の抗コラーゲン抗体を表すグラフである。(血液サンプルはT−araC治療終了後2週間してから採取した。)
【図21】図21は、マウス血清中のIL−10を表すグラフである。
【図22】図22は、マウス血清中のVEGFを表すグラフである。
【図23】図23は、マウス血中のT細胞を表すグラフである。
【図24】図24は、マウス血中のTヘルパーを表すグラフである。
【図25】図25は、マウス血中のT細胞傷害性を表すグラフである。
【図26】図26は、マウス血中のB細胞を表すグラフである。
【図27】図27A〜27Dは、コラーゲン誘発関節炎の組織学的所見、及び、本開示による治療を示す。
【図28】図28は、本開示による治療が関節炎症に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【図29】図29は、本開示による治療が関節糜爛に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【図30】図30は、本開示による治療が関節炎病変に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【図31】図31は、本開示による治療が軟骨基質の損失に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、関節炎を治療又は予防する方法であって、式1で表される化合物:
【0013】
【化3】
[式中、
Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;
Aは、
【0014】
【化4】
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]
の少なくとも1つを、関節リウマチを治療又は予防するのに有効な量で、その治療又は予防を必要とするホストに投与することを含む方法に関する。
【0015】
式1において、Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であるのが好ましい。脂肪族アシル基は、典型的には、1〜6個の炭素原子を含み、例えばホルミル基、アセチル基、及びプロピオニル基等が挙げられる。芳香族アシル基として、典型的には、非置換芳香族基及びアルキル置換芳香族基が挙げられ、芳香族基中に7〜10個の炭素原子を含む。置換されている場合、上記アルキル基は典型的には、1〜6個の炭素原子を含む。芳香族アシル基として、典型的には、ベンゾイル基及びパラ−トルオイル基(toloyl)等が挙げられる。
【0016】
Xのモノアルキルアミノ基としては、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばモノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノ−イソプロピルアミノ基、モノ−n−プロピルアミノ基、モノ−イソブチル−アミノ基、モノ−n−ブチルアミノ基、及びモノ−n−ヘキシルアミノ基等が例示される。アルキル部分は直鎖でも分枝鎖でもよい。
【0017】
Y及びXの好適なジアルキルアミノ基は、各アルキル基中に1〜6個の炭素原子を含む。各アルキル基は同じであっても異なっていてもよく、直鎖でも分枝鎖でもよい。好適な基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、メチルペンチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、及びエチルヘキシルアミノ基等が例示される。
【0018】
Xのハロゲン基としては、Cl、Br、F、及びIが挙げられ、Fが最も典型的なものである。
【0019】
Xのアルキル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、直鎖でも分枝鎖でもよい。例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が例示される。
【0020】
ハロアルキル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、直鎖でも分枝鎖でもよい。例えば、Cl、Br、F、又はIで置換されたアルキル基が例示され、当該アルキル基自体の例としては、例えば上記に具体的に開示されたアルキル基が挙げられる。
【0021】
アルコキシ基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基等である。
【0022】
アルケニル基としては、典型的には、2〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばエテニル基及びプロペニル基等である。
【0023】
ハロアルケニル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられる。例えば、Cl、Br、F、又はIで置換されたアルケニル基が例示され、当該アルケニル基自体の例としては、例えば上記に具体的に開示されたアルケニル基が挙げられる。
【0024】
アルキニル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばエチニル基及びプロピニル基等である。
【0025】
本開示の方法において用いられる化合物としては、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)フルオロシトシン、及び1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンが好ましい。本明細書においては、当該化合物をThio AraCやT AraCとも称する。
【0026】
本開示において用いられる化合物は米国特許第6,576,621号明細書に開示されている改良法によって調製可能である。当該文献の開示内容を本明細書に引用して援用する。
【0027】
本開示に関する関節炎の種類として、例えば関節リウマチ及び変形性関節症が挙げられる。
【0028】
本開示において治療されるホストとしては、ヒトやコンパニオン・アニマル(イヌやネコ等)といった哺乳動物が挙げられる。
【0029】
以下の例によって本開示を説明するが、本開示はその例に限定されない。以下の例によって、関節炎の治療及び予防における、本開示において用いられる化合物の有効性を示す。
【0030】
下記データから、予防プロトコルに準じて被験化合物(即ち、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン)を使用することにより、コラーゲン誘発関節炎に対して著しい抗関節炎効果が奏されることが分かる。当該薬剤は、強い用量依存性効果を示し、60mg/kg/日で疾患の発症を完全に防ぐことができ、20mg/kg/日の治療によりマウスの罹患率を有意に低減した。正確な作用メカニズムは現段階の実験からは明らかでないが、当該薬剤は疾患の進行に影響を与え、マウスにおいては、実際に関節炎を発症した数以上に、罹患している足の数を有意に低減した。また、関節疾患を伴う足における関節炎の重症度も低減した。抗CII(II型コラーゲン)抗体価の著しい低減は、本調査において確認された抗関節炎活性の鍵であるようにも思われる。しかしながら、全身における免疫抑制効果の指標である総免疫グロブリン濃度もまた低下したということに留意する必要があろう。リンパ節細胞で、T細胞マイトジェンCon A(コンカナバリンA)に対する反応に著しい低減が見られ、体内の細胞活性化反応から、リンパ球活性が全身で低減したことが分かった。20mg/kg/日投与群(20%のマウスで非致死性の皮膚発疹を確認)及び60mg/kg/日投与群(20%で皮膚発疹を確認し、その内の1匹が死亡。脾腫も顕著に発現)の両方であるレベルの薬剤毒性を呈した。本被験化合物は概して、前臨床所見において抗関節炎活性を強く示しており、非常に有望である。
【0031】
コラーゲン関節炎は、罹患しやすい種のマウスに、関節軟骨の主要成分であるII型コラーゲンを用いて免疫性を付与することで引き起こされる(1)。紅斑及び水腫という臨床的特徴を有する進行性の炎症性関節炎が、免疫性を付与した動物の大部分で発現し、罹患した足の幅は、典型的には100%の増加率で大きくなる。臨床的スコア評価指数を開発し、関節変形や脊椎炎への疾患の進行を評価した(2)。罹患した関節では、病理組織学的に見て、滑膜炎、パンヌス形成、及び、軟骨や骨の糜爛が確認される。これら病理組織学的症状を指標として用いてもよい。免疫学的検査所見においては、II型コラーゲンに対する高濃度の抗体や高ガンマグロブリン血症などが確認される。当該モデルは現在、関節疾患に対する免疫療法アプローチのテスト法として確立されており(3)、関節リウマチ(RA)を治療するための生物学的物質及び薬理学的物質のいずれの研究にも用いられ、好結果を得ている(4;5)。本実験において、予防プロトコルに準じてII型コラーゲンで免疫性を付与してから3回被験化合物を投与することで、被験化合物がCIAに対して及ぼす影響を評価した。
【0032】
以下の材料及び方法を試験に用いた。
【0033】
動物及び化合物投与:40匹の8〜10週齢のDBA/1 LacJマウスをJackson Labsから入手し、実験前に10日間、試験設備に順応させた。試験開始時に動物の体重は全て、16グラムを超えていた。投与溶液を毎週新たに調製し、4℃で保存した。各マウスを下記4つの処理・治療群の1つに割り当てた。
【0034】
第1群:無菌賦形剤(Tween 80を0.05%含有する生理食塩水)100μlを毎日、腹腔内注射した。
【0035】
第2群:5mg/kg/日の化合物を含有する無菌賦形剤100μlを腹腔内注射した。
【0036】
第3群:20mg/kg/日の化合物を含有する無菌賦形剤100μlを腹腔内注射した。
【0037】
第4群:60mg/kg/日の化合物を含有する無菌賦形剤100μlを腹腔内注射した。
【0038】
初回投与から3日後、マウス全てに対して、完全フロインドアジュバント(FCA)中のウシII型コラーゲン100μgを尾の基部に皮内注射した。マウスでの発症の有無を毎日モニターし、記録した。マウスの体重を毎週測定し、全般的な健康状態を記録した。関節炎を罹患している動物を週に5回、臨床的に評価し、免疫性を付与してから10週間目まで継続して評価した。また、週に3回、足を計測した。免疫性を付与してから10週間たっても関節炎の徴候が見られないマウスを疾患陰性とみなした。
【0039】
免疫学的評価:試験開始前に予め全てのマウスから採血し、その後、免疫性を付与してから2週間目、関節炎の発症時(該当する場合)、及び試験終了時に採血した。血清を分離して、−80℃で保存した。ELISAアッセイを行い、(1)抗II型コラーゲン抗体濃度と(2)総免疫グロブリン濃度を求めた。試験体を屠殺して脾臓及びリンパ節を取り出し、単一細胞の懸濁物を調製した。Con A及びLPSに対するマイトジェン反応、並びに、II型コラーゲンに対する抗原増殖反応を標準的な技法を用いて確認した。
【0040】
分析:適当な統計学的比較を行い、(i)罹患率、(ii)発症時期、(iii)個々の足の腫れ、及び(iv)疾患の進行度、に対する化合物の影響を、累積関節炎スコアに基づいて評価した。免疫学的データを分析し、(i)II型コラーゲンに対する抗体反応、(ii)総免疫グロブリン濃度、(iii)T細胞マイトジェン反応、(iv)B細胞マイトジェン反応、及び(v)抗原特異的(コラーゲン)増殖反応に対する化合物の影響を調べた。
【0041】
副作用及び毒性:試験期間中のマウスの平均体重を図1に示す。無作為に各群に割り当てたにもかかわらず、実験開始時の対照群マウスの体重は、治療群マウスよりも少なかったが、有意差は見られなかった。コラーゲン関節炎で典型的に見られるように、その後、対照群マウスの体重は発症に伴って減少した。同様の体重パターンが、5mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスにおいても観察された。対照的に、20mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスの体重は、試験の間ずっと、健常動物と同様な割合で増加した。このようにして、対照群のマウスと当該治療群との間に5週間目から有意差が見られ始めた。60mg/kg/日で治療したマウスの体重は、6週間目までずっと、正常な割合で増加したが、6週間目から8週間目にかけて急速に減少した。その後、当該マウスの体重は健常に近い状態にまで回復した。
【0042】
高投与量(60mg/kg/日)群の動物の一個体については、潰瘍性皮膚発疹が顕著に発現し、二次感染の徴候を示していたため、調査の途中で安楽死させた。60mg/kg/日投与群の別の一匹のマウスと、20mg/kg/日投与群の2匹の動物とに軽度の皮膚発疹が見られた(図2)。3〜4日間治療を中断することでこれらの徴候を制御すると、皮膚の炎症は軽減されたようであったので、治療を再開すると、症状は悪化しなかった。試験が終了するまでには、概して、発疹は消散し、軽度に線維が形成した部分が残るのみであった。患部から皮膚生検を採取し、病理学的所見に関しては未だ結果が出ていない。
【0043】
検死おける観察から、高投与量(60mg/kg/日)群のマウス全てで脾腫が顕著に確認された(図3)。PBS対照群中では、組織均質化前の脾臓重量がほぼ5倍に増加していた。また、リンパ節障害がみられるマウスもいたが、脾臓で観察されるよりは発生率は低く、重大なものではなかった。このような効果は、低投与量治療群では確認されなかった。概して、20mg/kg/日及び5mg/kg/日では、薬剤はかなり許容されており、これらの投与群のマウスは全て調査期間中、生存し続けた。
【0044】
関節炎の罹患率及び発症時期:本開示に係る被験化合物の投与量を変えて治療した各マウスにおける関節炎の罹患率を図4に示す。調査で最も目立った特徴は、60mg/kg/日で治療したマウスにおいて発症が完全に防がれたことである。当該治療群では、疾患を有する動物は0/10個体であったが、これに対し、PBS対照群では100%の罹患率(10/10)であった(p<0.001)。20mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスにおいても、罹患率は極めて有意に低減(p<0.01)していたが、5mg/kg/日で治療したマウスの罹患率(9/10)に関しては、対照群との有意差はみられなかった。データから、コラーゲン誘発関節炎の罹患率に対して用量依存性の効果がはっきりと確認される。
【0045】
各処理・治療群におけるコラーゲン誘発関節炎の平均発症時期を図5に示す。発症時期に関して、関節炎を発現したマウスの各群間で有意差は見られなかった。対照群のマウスは治療群のマウスよりも僅かに遅い平均発症時期で疾患を発現したが(43日対34日)、この差は統計的に有意なものではなかった。
【0046】
図6では、関節炎の罹患率を経時的に示している。治療群マウスと対照群動物の発症率は、試験開始後5週間までは比較的同等である。この時点から、20mg/kg投与群では発症率がかなり減少する(これに対し、5mg/kg/日投与群では減少しない)。50日目から試験終了まで明らかに、20mg/kg投与群で罹患率が有意に低減しており、実験終了時の最終的な罹患率において、対照群に対し有意差(p<0.01)がみられた。
【0047】
治療群及び対照群の各動物において、関節炎を罹患している足の累積数により疾患の重症度及び進行度を分析すること(図7)で、被験化合物による治療がコラーゲン誘発関節炎の進行に著しい作用を与えることが明らかとなった。PBSで処理した対照群マウスにおいて、40本の足のうち、あわせて27本が関節炎の徴候を示しており、この結果は、60mg/kg/日(0/40)又は20mg/kg/日(7/40)で治療したどちらのマウスに対しても大きな有意差(p<0.001)を有していた。5mg/kg/日で治療したマウスの罹患している足の数は、対照群よりも少なかったが(19/40)、統計学的に有意差は得られなかった。
【0048】
図8に示すように、同様の所見が疾患の平均重症度の分析においても認められた。対照群マウスにおいて6週間目から試験終了まで見られる、疾患の著しい悪化は、コラーゲン関節炎に特徴的なものである。20mg/kg/日で治療したマウスにおいて疾患重症度の改善がはっきりと確認され、6週間目で有意な低減(p<0.04)がみられ、8週間目から試験終了時にかけて有意差が増大した(p<0.001)。5mg/kg/日で治療したマウスでは疾患重症度が明らかに低減したとは言えないが、試験終了時(10週間目)には有意差(p<0.05)が得られるほどの低減に達した。
【0049】
抗II型コラーゲン抗体濃度:実験前、免疫付与後14日目、関節炎の発症時(該当する場合)、及び終了時に採取した各血清中の抗CII抗体濃度を図9に示す。
【0050】
60mg/kg/日のT−araCで治療したマウスでは、抗CII抗体価は完全に抑制された。これは抗関節炎活性の作用メカニズム(MoA)を示すものとなっている。20mg/kg/日で治療したマウスにおいても、実験終了時に、抗コラーゲン抗体は有意(p<0.02)に減少しており、対照群マウスで観察された濃度を下回っていた。また、5mg/kg/日で治療したマウスでも、発症時には有意に減少していた(p<0.01)。
【0051】
総免疫グロブリン濃度:マウス中の総Ig濃度を図10に示す。実験開始前(実験前採血)において各群間に有意差はみられなかった。全ての治療群のIg濃度は、治療後2週間目で対照群における濃度よりも下回り、その減少は、5mg/kg/日(p<0.05)、20mg/kg/日(p<0.05)、及び60mg/kg/日(p<0.005)のように統計学的にも確認された。しかしながら、発症時にはいずれのマウス群間にも有意差は認められなかった。調査終了時において、60mg/kg/日で治療したマウス中のIg濃度は非常に低く、さらに、5mg/kg/日又は20mg/kg/日で治療したどちらのマウスでも、そのIg濃度は有意(p<0.02)に減少しており、対照群マウスを下回っていた。
【0052】
マイトジェン及び抗原増殖反応:マイトジェンであるコンカナバリンA及びLPS、並びに、抗原であるII型コラーゲンに対する各反応に由来するリンパ節細胞活性化のレベルを図11に示す。T細胞マイトジェン コンカナバリンAに対する反応は、5mg/kg/日(p<0.04)及び60mg/kg/日(p<0.001)のT−araCで治療した各群において有意に低減し、20mg/kg/日で治療したマウスでは、有意ではないがそれに近いものとなった(p=0.08)。興味深いことに、LPS(主にB細胞マイトジェン)に対する反応において有意な影響は見られなかった。また、刺激性抗原(II型コラーゲン)に対する反応においても治療による影響は見られなかった。
【0053】
脾臓細胞における、Con A、LPS及びCIIに対する反応を図12に示す。20mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスにおいて、リンパ節細胞で抑制がみられるのとは対照的に、細胞刺激が有意に高まっているのが確認された(p<0.005)。しかしながら、データを考察すると、体内の(刺激を受けていない)細胞の活性化レベルが、20mg/kg/日(0.53)及び60mg/kg/日(0.58)で治療した各マウスでは、対照群マウスの細胞活性化レベル(0.77)に比べて低いことが分かった。これら各群の差は、統計学的に有意である(それぞれ、p<0.001、p<0.05)。結果として、刺激指数のこのような見かけ上の増加は数学的なものであり、増殖が高まったというよりはむしろ、ベースラインの細胞活性が低下したことによる。
【0054】
上記結果から、予防プロトコルに準じて本開示に係る被験化合物を使用することにより、コラーゲン誘発関節炎に対して著しい抗関節炎効果が奏されることが分かる。当該薬剤は、強い用量依存性効果を示し、60mg/kg/日で疾患の発症を完全に防ぐことができ、20mg/kg/日の治療によりマウスの罹患率を有意に低減した。当該薬剤は疾患の進行に著しい影響を与え、マウスにおいては、実際に関節炎を発症した数以上に、罹患している足の数を有意に低減した。また、関節疾患を伴う足における関節炎の重症度も低減した。正確な作用メカニズムは現段階の実験からは明らかでないが、抗CII抗体価の著しい低減は、本調査において確認された抗関節炎活性の鍵であるように思われる。しかしながら、全身における免疫抑制効果の指標である総免疫グロブリン濃度もまた低下しており、自己免疫活性の特異的な低減という訳ではないということに留意する必要があろう。リンパ節細胞で、T細胞マイトジェンCon Aに対する反応に著しい低減が見られ、体内の細胞活性化反応から、リンパ球活性が全身で低減したことが示された。20mg/kg/日投与群(20%のマウスで非致死性の皮膚発疹を確認)及び60mg/kg/日投与群(20%で皮膚発疹を確認し、その内の1匹が死亡。脾腫も顕著に発現)の両方においてあるレベルの薬剤毒性を呈した。当該薬剤は概して、前臨床所見において抗関節炎活性が高く評価されており、非常に有望である。
【0055】
さらなる試験において、各マウスにコラーゲンII/完全フロインドアジュバント(CFA)を0日目に最初の免疫付与物として注射し、21日目にコラーゲンIIをCFAを用いずにブースタ注射として再び注射した。6週間の治療は−2日目に開始し、3週間の治療については19日目に開始した。全ての治療を40日目に終了した。組織及び血液サンプルを54日目に採取し、病理学的分析及び免疫学的分析に供した。
【0056】
【表1】
【0057】
X線マイクロトモグラフィー(mCT)によって非破壊的な3次元内部顕微鏡検査を行い、マウスの骨や関節の破壊及び糜爛を確認した。当該技術を用いて、関節炎の治療におけるT−araC[1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン]薬剤の効能を検討した。健常マウス、CIAマウス、T−araCで治療したCIAマウス、及び、メトトレキサートで治療したCIAマウスの各々における関節及び骨のmCT画像である図13〜16などを参照されたい。3次元内部顕微鏡検査のマイクロCT画像、さらに、関節糜爛及び骨糜爛の定量分析によって(図17)、T−araCを2種類の治療投与量及び計画に準じて使用した場合に著しい抗関節炎活性が示されることが分かった。T−araCはCIAモデルにおいてメトトレキサート(関節リウマチに対して現在臨床使用されている薬剤)と同様な活性を示した。マウスの足を組織学的に分析し、マウス関節周辺部の炎症性変化及び糜爛性変化を評価した。この結果もまた、T−araCの著しい抗関節炎活性を示すものであり(図18及び19)、マイクロCT分析と一致していた。さらに、第I相臨床試験結果とも一致しており、抗炎症及び抗血管新生サイトカインIL−10は、T−araC治療後のマウス血清中で有意に増加していた(図21)。マウス血清中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)含量をELISAで調べたところ、各治療・処理群間に有意差はみられなかった(図22)。T−araC治療後2週間の時点でマウス血液サンプル中のT細胞及びB細胞をカウントしたところ、いずれの細胞も減少していないことが分かった。なおこれは、T−araC治療に伴って、T細胞数又はB細胞数に何らかの免疫抑制効果があったかどうかを示すものであり、T−araC治療による当該効果は可逆的であるように思われる。結論として、CIAマウスモデルと、表に示された治療計画とを用いた当該前臨床試験により、T−araCの抗関節炎活性は統計学的に有意なものであり、T−araC治療に関連した明らかな毒性は認められないということが確認された。
【0058】
さらに別の試験において、8〜10週齢の60匹のDBA/1 LacJマウスを入手して、実験前に最低10日間、試験設備に順応させた。試験開始時に動物の体重は全て、16グラムを超えていた。完全フロインドアジュバント(FCA)中のウシII型コラーゲン100μgを各マウスの尾の基部に皮内注射した。発症の有無を毎日モニターし、記録した。関節炎の臨床エビデンスが初めて現れた時点で、各マウスを下記4つの処理・治療群の1つに割り当てた。
第1群:無菌賦形剤100μlを週に3回、強制経口投与した。
第2群:30mg/kgのT−araCを含有する無菌賦形剤100μlを強制経口投与した。
第3群:60mg/kgのT−araCを含有する無菌賦形剤100μlを強制経口投与した。
第4群:90mg/kgのT−araCを含有する無菌賦形剤100μlを強制経口投与した。
【0059】
マウスの体重を毎週測定し、全般的な健康状態を記録した。動物を週に5回、疾患に関して臨床的に評価し、疾患発症後10週間目まで継続して評価した。また週に3回、足を計測した。
【0060】
組織学的評価:臨床評価検査後、全てのマウスの肢を取り除き、中性緩衝ホルマリン溶液中に保存した。関節を18日間10%蟻酸中で脱灰し、脱水し、パラフィンブロック中に包埋した。長手方向軸に沿って切断して、各切片をスライドに固定し、ヘマトキシリン・エオジン染色又はトルイジンブルー染色のいずれかを行った。各標本をほぼ正中線で切断した後、矢状方向中心切断サンプルをそれぞれスライドに固定して評価した。これにより、一貫した形態学的評価(geographic evaluation)が可能となった。5〜10個のサンプルをスライドに固定した(通常、1スライド当たりサンプル数:4〜6個)。染色後、各スライドをカバースリップで恒久的に固着させた。少なくとも1標本当たり3つの別々の切片を、盲検法により、群の割り当てが分からないようにして評価した。全ての肘関節、手関節、及び中手関節を前肢のスコアとしてカウントし、全ての膝関節、足首関節、及び中足関節を後足のスコアとしてカウントした。切片化の過程でPIP関節のほとんどが取り除かれるため、指は評価しなかった。各スライドにおいて、滑膜炎、パンヌス形成、周辺部の糜爛(marginal erosions)、構造上の変化(主に亜脱臼)、及び破壊の有無を評価した。次に、これらの集計点に基づき、総合的スコアを各切片に対してそれぞれ配点した。スコアのカウント法は以下に拠る。
【0061】
滑膜の膜厚によって滑膜炎を判定し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − 細胞3個分未満の厚み
1 − 細胞3〜5個分の厚み
2 − 細胞6〜10個分の厚み
3 − 細胞10〜20個分の厚み
4 − 細胞20〜30個分の厚み
【0062】
パンヌス形成に対し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − パンヌス形成なし
1 − 微絨毛有り
2 − パンヌスの明らかな付着
3 − パンヌスの顕著な付着
4 − 関節腔におけるパンヌス浸潤
【0063】
周辺部の糜爛に対し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − 目に見える糜爛なし
1 − 被膜付着領域における小さなくぼみ
2 − 軟骨の明らかな糜爛
3 − 軟骨下骨への糜爛の拡大
4 − 骨及び軟骨の重度の糜爛
【0064】
構造上の変化に対し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − 正常な関節構造
1 − 浮腫性変化
2 − 関節摺動面の軽度の亜脱臼
3 − 関節摺動面の重度の亜脱臼
4 − 完全な線維形成及びコラーゲン架橋
【0065】
総合的スコアに対しては、以下のように反映させた。
0 − 通常の正常な関節外観
1 − 軽微な変化であって、寛解に相当する程度であり、臨床上おそらく正常なもの
2 − 確定的な炎症性関節炎
3 − 重度の炎症性、糜爛性疾患
4 − 破壊性、糜爛性関節炎
【0066】
トルイジンブルー染色切片のプロテオグリカン損失を評価した。関節表面の染色を成長板の染色と比較し、以下のようにスコア付けを行った。
0 − プロテオグリカン損失がなく、トルイジンブルー染色は正常
1 − 軽度のプロテオグリカン損失があり、軟骨表面から染色がいくらか損失している
2 − 中程度のプロテオグリカン損失があり、軟骨表面の染色が弱い
3 − 顕著なプロテオグリカン損失があり、軟骨表面のトルイジンブルー染色が確認できない
4 − 重度のプロテオグリカン損失があり、軟骨深部においてもトルイジンブルー染色が確認できない
【0067】
コラーゲン誘発関節炎の組織学的所見:各切片において、疾患の炎症性パラメータと糜爛性パラメータを評価した。関節炎の外観(図27A)から、対照(PBS処理)群では重度の炎症性糜爛性疾患病変が確認され、滑膜の肥大や過形成といった典型的な関節炎の特徴、及び、顕著なパンヌス付着や周辺部の糜爛が見られた。
【0068】
30mg/kg/日のT−araC化合物で治療した場合(図27B)には、各関節炎パラメータが有意に変化し、関節の炎症性変化と糜爛性変化がいずれも低減した。60mg/kg/日のT−araCで治療した場合(図27C)には、パンヌス形成及び糜爛が対照群と比較してより著しく低減した。T−araCを90mg/kg/日で投与した場合(図27D)には、外観上、軽微な変化が見られるか、又は、正常な関節のままであり、滑膜は薄く、軟骨表面は滑らかで、骨は正常であった。さらに、各種投与量でT−araC治療を行う上記調査において、動物実験技術者から皮膚発疹が報告されることはなかった。
【0069】
炎症スコアの分析(図28)によって、T−araCで治療したマウスの炎症が、対照群(生理食塩水で処理)の動物と比較した場合、用量に依存して低減した。30mg/kgのT−araCで治療したマウスにおいて、滑膜炎は有意に低減し(p<0.01)、パンヌス形成のスコアも同様に低減した(p<0.01)。60mg/kg又は90mg/kgで治療したマウスにおいて、これらのパラメータは極めて有意に減少し(p<0.001)、当該高投与量群においては、30mg/kgのT−araCで治療したマウスに対する優位差も確認された。
【0070】
コラーゲン誘発関節炎の糜爛性の変化(糜爛や関節構造の変化)を評価すると、同様なパターンの効果がみられた。30mg/kg/日〜90mg/kg/日のT−araCで治療した群では、対照群(生理食塩水で処理)の動物と比較した場合、関節糜爛が極めて有意に低減した(p<0.001)(図29)。また、20mg/kg/日のT−araC化合物で治療したマウスにおいても有意に低減した(p<0.01)。
【0071】
各病理組織学的パラメータを組み合わせて得た総合的な組織学的関節炎スコア(図30)は、個々の疾患パラメータの結果を反映するものであった。T−araCで治療したマウスと、対照群として(PBS)処理した動物の間に有意差がみられ、その差は用量に依存していた。60mg/kg/日及び90mg/kg/日で治療したマウスにおいて総疾患数は極めて有意に低減した(p<0.001)。
【0072】
トルイジンブルー染色した切片を検査し、関節炎を罹患している関節からの基質タンパク質の損失に対してT−araCが奏する効果を確認した。データ(図31)から、60mg/kg/日又は90mg/kg/日のT−araCが、事実、プロテオグリカン損失を防ぎ、その効果が統計学的に極めて有意なものであることが分かった。
【0073】
組織学的所見は、罹患したコラーゲン誘発関節炎を治療プロトコルに準じて本開示の化合物で治療することで、用量に依存して疾患が著しく改善した、という臨床データを裏付けるものである。60mg/kg又は90mg/kgで治療したどちらのマウスにおいても、関節炎の組織学的パラメータ全てが低減し、統計学的に大きな有意差が得られた。しかしながら、どの投与量においても疾患は統計学的に低減していた。T−araCの高投与量群では、関節構造の顕著な回復が見られた。総じた印象として、高投与量で治療したマウスではT−araCによって関節疾患がある程度治癒したように思われた。概して、これらの所見は、得られた臨床的観察結果に一致するものであり、非常に有望であることを示すものである。これらの結果から、罹患した関節炎に対し治療的方法で投与した場合、本開示の化合物は抗関節炎効果を奏し得るということが示唆される。
【0074】
治療的試験により確認された顕著な抗関節炎効果をまとめると、90mg/kg/日で治療した100%のマウスの疾患が試験中のある時点で寛解に達し、60%の動物が試験終了時にも臨床的に疾患のない状態を維持していた。さらに、関節炎指数、及び、罹患している足の数が極めて有意に低減した。また、60mg/kg/日で治療したマウスでも、関節炎が有意に低減し、70%のものの疾患がある時点で寛解に達し、40%が試験終了時でも寛解を維持していた。さらに、疾患スコア、及び、罹患している肢の数の有意な低減も記録された。30mg/kg/日で治療したマウスでは、臨床疾患に対して有意な効果は見られなかった。組織学的所見は臨床データを裏付けるものであり、罹患したコラーゲン誘発関節炎を本開示の化合物T−araCで治療することにより、用量に依存して疾患が著しく改善することが示された。関節炎の組織学的パラメータ全てが低減し、統計学的に大きな有意差が得られ、さらにT−araCの高投与量群では、関節構造の著しい回復もみられた。脾腫(関節炎効能とは無関係に、T−araCで治療した全てのマウスにおいて随所に見られた)の調査により、最も目立った変化として、組織壊死又は線維形成は見られないものの、細胞の過剰増殖が確認された。この顕著な細胞数の増加は脾臓サイズの膨張を説明するもののように思われる。
【0075】
剤形
本開示の化合物は、医薬品と共に使用することが可能な任意の従来手段によって投与することができ、単一の治療剤としてもよく、又は、治療剤を組み合わせてもよい。本開示の化合物は単独で投与してもよいが、一般的には医薬基剤と共に投与する。当該医薬基剤は、選択された投与経路と医薬分野の標準的なプラクティスとに基づいて選択される。上記化合物はまた、インターフェロン(IFN)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、コンセンサス・インターフェロン(CIFN)、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターロイキン−12、ウルソデオキシコール酸(UDCA)及びグリシリジン等の他の治療剤と共に投与してもよい。
【0076】
本明細書で説明する薬学的に許容される基剤、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤又は希釈剤などは、当業者に周知である。典型的には、薬学的に許容される基剤は活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用条件下において有害な副作用又は毒性を持つことはない。薬学的に許容される基剤としては、ポリマー及びポリマーマトリックスが挙げられる。
【0077】
本開示の化合物は、医薬品と共に使用することが可能な任意の従来手段によって投与することができ、単一の治療剤としてもよく、又は、治療剤を組み合わせてもよい。
【0078】
投与量は当然ながら、薬剤の種類及びその投与の形態や経路といった薬力学的特徴;受容者の年齢、健康状態及び体重;症状の性質及び程度;併用療法の種類;治療頻度;並びに、所望の効果などの既知の要因に応じて異なるであろう。有効成分の1日当たりの投与量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.001〜1000ミリグラム(mg)であると予想され、好ましくは0.1〜約30mg/kgである。
【0079】
投与形態(投与に適した組成物)には、1単位当たり約1mg〜約500mgの有効成分が含まれている。これらの医薬組成物には、通常、当該組成物の全重量に基づいて約0.5〜95重量%の量の有効成分が含まれるであろう。
【0080】
有効成分は、カプセル、錠剤及び散剤などの固形剤として経口投与してもよく、あるいは、エリキシル剤、シロップ剤及び懸濁剤などの液剤として経口投与してもよい。また、無菌液の投与形態で非経口投与してもよい。有効成分は、鼻腔内に投与してもよく(点鼻薬)、あるいは、薬剤パウダーミストの吸入によって投与してもよい。パッチ型や軟膏による経皮投与などの他の投与形態も可能な場合がある。
【0081】
経口投与に適した剤形は、(a)水、塩水、又はオレンジジュース等の希釈液に有効量の化合物を溶解させたような液状溶液、(b)所望量の有効成分を含有している、固形物又は顆粒としてのカプセル、サシェ剤、錠剤、薬用ドロップ(lozenges)及びトローチ剤、(c)散剤、(d)適当な液体との懸濁剤、及び、(e)好適な乳剤であってもよい。液剤の場合、水、並びに、例えばエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレンアルコール等のアルコール類などといった希釈剤が含まれてもよく、薬学的に許容される界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤が添加されていても、いなくてもよい。カプセル形態の場合、界面活性剤、滑沢剤、並びに、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ等の不活性充填剤などを含有している通常のハードシェルゼラチン型又はソフトシェルゼラチン型であってもよい。錠剤の場合、以下のものを1つ以上含んでいてもよい:ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及びその他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存料、フレーバー付与剤、及び、薬理学的に適合した基剤。薬用ドロップ形態の場合、一般的にはスクロース、アラビアゴム又はトラガカントゴム等であるフレーバー中に有効成分を含んでいてもよい。香錠(pastilles)の場合も同様に、ゼラチン及びグリセリン、又は、スクロース及びアラビアゴム(acadia)等といった不活性なベース中に有効成分を含んでいてもよく、乳剤及びゲル剤の場合も、有効成分に加えて当該技術分野で公知であるような基剤を含有していてもよい。
【0082】
本開示の化合物は、単独で、又は、他の好適な成分と組み合わせて、吸入投与用のエアロゾル剤形に調剤されてもよい。このエアロゾル剤形は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン及び窒素などの許容される高圧噴射剤としてもよい。また、このエアロゾル剤形は、ネブライザー又はアトマイザー等といった非加圧製剤用の医薬品に調剤されてもよい。
【0083】
非経口投与に適した剤形としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び、製剤を対象受容者の血液と等張にする溶質を含んでいてもよい、水性及び非水性の等張無菌注射液;並びに、懸濁化剤、溶解剤、増粘剤、安定剤、及び保存料を含んでいてもよい、水性及び非水性無菌懸濁液が挙げられる。化合物は、医薬基剤中の生理学的に許容される希釈剤に含ませて投与してもよい。この生理学的に許容される希釈剤は、例えば無菌の液体又は液体混合物であり、水;塩水;デキストロース水溶液及び関連する糖液;エタノール、イソプロパノール又はヘキサデシルアルコール等のアルコール;プロピレングリコール、又は、例えばポリ(エチレングリコール)400等のポリエチレングリコールなどといったグリコール類;2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール等のグリセロールケタル類;エーテル;オイル;脂肪酸;脂肪酸エステル又はグリセリド;あるいは、アセチル化脂肪酸グリセリドが挙げられる。これらには、薬学的に許容される界面活性剤(石鹸又は洗浄剤など)、懸濁化剤(ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース等)、又は乳化剤、及び、他の医薬アジュバントが添加されていても、いなくてもよい。
【0084】
非経口剤形で使用されるオイルとしては、石油、動物油、植物油、又は合成油が挙げられる。オイルの具体例としては、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタム、及び鉱物油が挙げられる。非経口剤形に使用される好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルが好適な脂肪酸エステルの例として挙げられる。非経口剤形に使用される好適な石鹸としては、脂肪酸アルカリ金属塩、脂肪酸アンモニウム塩、及び脂肪酸トリエタノールアミン塩が挙げられる。好適な洗浄剤としては、(a)例えばハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム及びハロゲン化アルキルピリジニウム等のカチオン性洗浄剤、(b)例えばアルキル、アリール及びオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリドスルフェート、並びに、スルホサクシネート等のアニオン性洗浄剤、(c)例えば脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレン・ポリプロピレン共重合体などの非イオン性洗浄剤、(d)例えばアルキルβ−アミノプロピオネート、及び2−アルキルイミダゾリン第4級アンモニウム塩などの両性洗浄剤、さらに(e)これらの混合物が挙げられる。
【0085】
非経口剤形は、典型的には約0.5〜約25重量%の有効成分を溶液中に含有している。このような剤形には、適当な保存料及び緩衝剤を使用してもよい。注射部位での刺激を最小限に抑えるか又は除くために、このような組成物には、親水親油バランス(HLB)が約12〜約17である非イオン性界面活性剤を1つ以上含有させてもよい。このような剤形における界面活性剤の量は、約5〜約15重量%である。好適な界面活性剤としては、モノオレイン酸ソルビタンなどのポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、並びに、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により形成される疎水性基部(ベース)とのエチレンオキシドの高分子量付加物が挙げられる。
【0086】
薬学的に許容される賦形剤もまた、当業者には周知である。賦形剤は、化合物の種類や組成物の投与に使用される具体的な方法を幾分考慮して選択されるであろう。従って、本開示の医薬組成物には、様々な種類の好適な剤形が考えられる。以下の方法及び賦形剤は単なる例示に過ぎず、これらに限定されない。薬学的に許容される賦形剤としては、有効成分の作用を阻害せず、不都合な副作用を引き起こさないものが好ましい。好適な基剤及び賦形剤としては、水、アルコール及びプロピレングリコール等の溶媒、固体の吸収剤及び希釈剤、界面活性剤、懸濁化剤、錠剤結合剤(tableting binders)、滑沢剤、フレーバー、並びに、着色剤が挙げられる。
【0087】
剤形は、単回投与用又は反復投与用の密封容器(アンプル及びバイアル等)に封入してもよい。また、使用直前に水などの無菌液体賦形剤を添加するだけで注射可能となるフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。無菌粉末、顆粒及び錠剤から、用時調製注射液及び懸濁液を調製してもよい。注射用組成物には有効な医薬基剤が必要であることは、当業者に周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,Eds.,238−250(1982)、及び、ASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,622−630(1986)を参照されたい。
【0088】
局所投与に適した剤形としては、一般的にはスクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴムであるフレーバー中に有効成分を含んでいる薬用ドロップ;ゼラチン及びグリセリン、又は、スクロース及びアラビアゴム等といった不活性なベース中に有効成分を含んでいる香錠;並びに、好適な液体基剤中に有効成分を含んでいる口内洗浄剤;さらに、有効成分に加えて当該技術分野で公知であるような基剤を含有しているクリーム、乳剤及びゲル剤が挙げられる。
【0089】
さらに、直腸投与に適した剤形を、乳化性のベース又は水溶性のベースなどといった種々のベースと混合することで坐薬として調製してもよい。膣投与に適した剤形を、有効成分に加えて、関連分野で適切であることが知られている基剤を含有させた膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体、又は、スプレー式剤形として調製してもよい。
【0090】
好適な医薬基剤については、当該分野の標準的な参考文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Companyに記載されている。
【0091】
本開示において、動物、とりわけヒトへの投与量は、適度な期間にわたって体内で治療反応を引き起こすのに十分な量であるのが望ましい。投与量が、動物の体調や体重、さらには、治療される症状の重症度や段階などの種々の要因によって決定されることは当業者の理解するところであろう。
【0092】
好適な投与量は、最終的に、患者体内の活性物質の濃度に関して所望の反応を起こすことが知られている濃度になると推定される量である。扱いにくい副作用を起こすことなく、治療される症状を最大限抑制することとなる投与量が好ましい。
【0093】
投与量は、投与の経路、タイミング及び頻度、さらに、化合物の投与に伴って生じる何らかの不都合な副作用の有無、性質及び程度や、所望の生理学的効果によっても決定される。
【0094】
本開示に係る化合物を投与するのに有用な薬学的投与形態は、以下のように説明される。
【0095】
ハードシェルカプセル
標準的な2ピース(two−piece)ハードゼラチンカプセル毎に、粉末状の有効成分100mg、ラクトース150mg、セルロース50mg、及び、ステアリン酸マグネシウム6mgを充填して、多数のカプセル単位を調製する。
【0096】
ソフトゼラチンカプセル
大豆油、綿実油又はオリーブ油等の消化可能なオイル中に有効成分を含ませて混合物を調製し、それを容積移送式ポンプで、溶かしたゼラチンに注入し、有効成分100mgを含有するソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄し、乾燥させる。ポリエチレングリコールとグリセリンとソルビトールとの混合物に有効成分を溶解させ、水混和性の混合薬を調製してもよい。
【0097】
錠剤
有効成分100mg、コロイド二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、微結晶セルロース275mg、デンプン11mg、及び、ラクトース98.8mgを含む投与単位となるように、従来の手順で多数の錠剤を調製する。嗜好性を増加させるため、外観及び安定性を向上させるため、又は、吸収を遅らせるために適当な水性及び非水性コーティングを施してもよい。
【0098】
速放性(immediate release)錠剤/カプセル
従来のプロセスや新規のプロセスで調製される、経口投与用の固体投与形態である。これらの投与単位は、すぐに溶解して薬物を送達するので、水無しで経口的に摂取される。有効成分を、糖、ゼラチン、ペクチン及び甘味料などの成分を含有する液体に混合する。これらの液体を、フリーズドライ技術や固体状態で抽出する技術によって固体の錠剤又はカプレットへと固体化する。薬剤化合物を、粘弾性及び熱弾性の糖やポリマーあるいは起泡性成分と共に打錠して、水無しで即時放出されるような多孔質マトリックスを調製してもよい。
【0099】
また、本開示の化合物は、点鼻薬、又は、定量吸入器や鼻腔用若しくは口腔用吸入器の形態で投与してもよい。薬剤は、細かい霧状の点鼻液、あるいはエアロゾル状の粉末によって送達してもよい。
【0100】
本明細書中、「含む(comprising)」という用語(及びその文法上の活用形)は、「有する(having)」又は「包含する(including)」という包括的な意味で用いられ、「のみから成る(consisting only of)」という限定的な意味では用いられてはいない。本明細書中、「本質的に・・・から成る(consisting essentially of)」という用語は、明示的に記載されている事柄に加えて、記載又は特定された事柄の基本的特徴及び新規な特徴に対して実質的に(materially)影響を与えないものをも含むものであることを示すものである。本明細書中、「1つの(a)」(不定冠詞)及び「その(the)」(定冠詞)という用語は、単数と共に複数をも包含すると解される。
【0101】
ここまで、本開示について例示し、説明した。また、本開示では好ましい実施形態しか図示及び記載していないが、上述の通り、上記教示、及び/又は、関連技術の技術若しくは知識に相応する範囲において、様々な他の組み合わせ例、変形例及び環境のもとで本開示を用いることができ、本明細書に示した概念の範囲内であれば変更又は改変も可能であると解されるべきである。
【0102】
さらに、上記実施形態は、実施するために現段階で分かっている最良の形態を説明することを意図したものであり、このような実施形態として、或いは、別の実施形態として、また、具体的に適用若しくは使用するにあたって必要とされる各種の改変をさらに施して、当業者が本開示を利用できるよう意図したものである。従って、本明細書に開示された形態に限定する意図はない。また、添付した特許請求の範囲は、代替の実施形態をも含むと解されるべきものである。
【0103】
本明細書に引用した全ての刊行物、特許文献及び特許出願文献は、各刊行物、特許文献又は特許出願文献をそれぞれ具体的に且つ個別に提示し、引用して援用するように、本明細書に引用され、任意のあらゆる目的に援用される。矛盾が生じる場合、本開示が優先される。
【0104】
参考文献
(1)Wooley PH,Luthra HS,Stuart JM,David CS.Type II collagen−induced arthritis in mice.I.Major histocompatibility complex(I region)linkage and antibody correlates.Journal of Experimental Medicine 1981;154:688−700.
(2)Wooley PH.Collagen−induced arthritis in the mouse.Methods In Enzymology 1988;162:361−373.
(3)Staines NA,Wooley PH.Collagen arthritis−−what can it teach us?British Journal of Rheumatology 1994;33(9):798−807.
(4)Wooley PH,Whalen JD,Chapman DL,Berger AE,Richard KA,Aspar DG.The effect of an interleukin−1 receptor antagonist protein on type II collagen−induced arthritis and antigen−induced arthritis in mice.Arthritis Rheum 1993;36:1305−1314.
(5)Wooley PH,Dutcher J,Widmer MB,Gillis S.Influence of a recombinant human soluble tumor necrosis factor receptor FC fusion protein on type II collagen−induced arthritis in mice.Journal of Immunology 1993;151:6602−6607.
【技術分野】
【0001】
本開示は、関節リウマチ等の関節炎を、その治療又は予防を必要とする患者に或るチオアラビノフラノシル化合物を投与することによって、当該患者において治療又は予防することに関する。本開示において用いられる化合物は、予防効果を発現して関節炎を防ぐ又は少なくとも実質的に防ぐとともに、良好な抗関節炎活性を示す。本開示において用いられる化合物は、α配置ではなく、β配置の状態である。
【背景技術】
【0002】
多くの関節炎薬が開発されているにもかかわらず、高齢者人口の増加によって、関節炎は世界的にみて今なお深刻な疾患である。関節炎による死亡率は低いものの、当該疾患の患者のクオリティ・オブ・ライフはその犠牲になり、活動レベルや生産性が低下してしまう。
【0003】
多くの関節炎の種類の中でも、最も深刻であるのは関節リウマチである。関節リウマチは、自己反応性Tリンパ球の作用による自己免疫疾患である。Tリンパ球は、遅延型過敏症を介して関節リウマチを引き起こす。当該疾患の原因となる、Tリンパ球により認識される抗原がどれであるかは全く分かっていない。最も蓋然性が高いものとしてII型コラーゲンが知られているが、他の可能性も捨てきれない。上記疾患の原因であるとははっきりしていないものの、抗ヒストン自己抗体が発見されている。
【0004】
多くの薬剤が関節リウマチの治療に使用されているが、その症状を完全に緩和するものではない。従来の薬剤としては、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID、アスピリン、イブプロフェン)、金塩、ペニシラミン、及びステロイドホルモンが挙げられる。最も強力で有効なものであるステロイドホルモンは、長期にわたり摂取する場合に副作用を示す。近年、炎症メカニズムで大きな役割を果たす腫瘍壊死因子(TNF)の組換え型可溶性受容体が、関節リウマチの新たな治療物質として治験中である。しかしながら、炎症などの関節リウマチの症状を治療する製剤のさらなる改良が求められている。
【0005】
コラーゲン誘発関節炎(CIA)はTリンパ球性関節リウマチの動物モデルとして利用されている(非特許文献1)。関節炎を発現する傾向のあるマウスにII型コラーゲンを注射すると、2週間以内に関節炎が誘発され、パンヌスの形成、軟骨や骨の糜爛などといった症状が生じる。関節リウマチと同様に、CIAでは、さらにコラーゲンに対する体液性免疫反応や細胞性免疫反応も起こる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Autoimmunity to Type II collagen:Experimental model of arthrits,J.Exp.Med.146;857−868(1977)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、関節炎を治療又は予防する方法であって、式1で表される化合物:
【0008】
【化1】
[式中、
Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;
Aは、
【0009】
【化2】
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]
の少なくとも1つを、関節炎を治療又は予防するのに有効な量で、その治療又は予防を必要とするホストに投与することを含む方法に関する。
【0010】
本開示の更に別の目的及び利点は、以下の詳細な説明により、当業者にとって容易に明らかとなるであろう。詳細な説明においては、単に考えられる最良の形態を例示することで好ましい実施形態を図示し、説明している。十分に理解されるであろうが、本開示は他の異なる実施形態も採りうるものであり、幾つかの細部については、本開示から逸脱することなく、各種の自明な点で改変が可能である。従って、本明細書は本質的に例示的なものであり、これに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、試験期間中のマウスの平均体重を示す。
【図2】図2は、20mg/kg/日投与群マウスの一個体における皮膚発疹(skin rash)の発症を示す。
【図3】図3は、高投与量(60mg/kg/日)群マウス全てにおいて見られた脾腫を示す。
【図4】図4は、本開示に係る被験化合物を用い、その投与量を変えて治療した際の、各マウスにおける関節炎の罹患率を示す。
【図5】図5は、各処理・治療群におけるコラーゲン誘発関節炎の平均発症時期を示す。
【図6】図6は、関節炎の罹患率を経時的に示した図である。
【図7】図7は、治療群及び対照群の各動物における、関節炎を罹患している足の累積数による分析を示す。
【図8】図8は、疾患の平均重症度の分析を示す。
【図9】図9は、実験前、免疫付与後14日目、関節炎の発症時(該当する場合)、及び、終了時に摂取した各血清中の抗CII(II型コラーゲン)抗体濃度を示す。
【図10】図10は、マウス中の総Ig濃度を示す。
【図11】図11は、マイトジェンであるコンカナバリンA及びLPS、並びに、抗原であるII型コラーゲンに対する各反応に由来するリンパ節細胞活性化のレベルを示す。
【図12】図12は、脾臓細胞における、Con A(コンカナバリンA)、LPS、及びCIIに対する反応を示す。
【図13】図13は、健常マウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図14】図14は、CIAマウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図15】図15は、100mg/kgのT−araCで6週間治療したCIAマウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図16】図16は、9mg/kgのメトトレキサートで6週間治療したCIAマウスの関節及び骨のmCT画像である。
【図17】図17は、mCT画像に基づく、マウスの関節及び骨の破壊を表すグラフである。
【図18】図18は、H&Eによる組織学的分析を示すマイクロ写真である。(各マウスの足を一本、それぞれ病理組織学的に評価した。組織サンプルを固定し、脱灰し、パラフィン包埋し、H&E染色を行った。各足の構造上の変化及び周辺部の糜爛の重症度を評価し、スコアをつけた。)
【図19】図19は、H&E染色を基に、関節炎の重症度を表すグラフである。
【図20】図20は、マウス血清中の抗コラーゲン抗体を表すグラフである。(血液サンプルはT−araC治療終了後2週間してから採取した。)
【図21】図21は、マウス血清中のIL−10を表すグラフである。
【図22】図22は、マウス血清中のVEGFを表すグラフである。
【図23】図23は、マウス血中のT細胞を表すグラフである。
【図24】図24は、マウス血中のTヘルパーを表すグラフである。
【図25】図25は、マウス血中のT細胞傷害性を表すグラフである。
【図26】図26は、マウス血中のB細胞を表すグラフである。
【図27】図27A〜27Dは、コラーゲン誘発関節炎の組織学的所見、及び、本開示による治療を示す。
【図28】図28は、本開示による治療が関節炎症に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【図29】図29は、本開示による治療が関節糜爛に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【図30】図30は、本開示による治療が関節炎病変に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【図31】図31は、本開示による治療が軟骨基質の損失に対して及ぼす影響を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、関節炎を治療又は予防する方法であって、式1で表される化合物:
【0013】
【化3】
[式中、
Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;
Aは、
【0014】
【化4】
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]
の少なくとも1つを、関節リウマチを治療又は予防するのに有効な量で、その治療又は予防を必要とするホストに投与することを含む方法に関する。
【0015】
式1において、Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であるのが好ましい。脂肪族アシル基は、典型的には、1〜6個の炭素原子を含み、例えばホルミル基、アセチル基、及びプロピオニル基等が挙げられる。芳香族アシル基として、典型的には、非置換芳香族基及びアルキル置換芳香族基が挙げられ、芳香族基中に7〜10個の炭素原子を含む。置換されている場合、上記アルキル基は典型的には、1〜6個の炭素原子を含む。芳香族アシル基として、典型的には、ベンゾイル基及びパラ−トルオイル基(toloyl)等が挙げられる。
【0016】
Xのモノアルキルアミノ基としては、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばモノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノ−イソプロピルアミノ基、モノ−n−プロピルアミノ基、モノ−イソブチル−アミノ基、モノ−n−ブチルアミノ基、及びモノ−n−ヘキシルアミノ基等が例示される。アルキル部分は直鎖でも分枝鎖でもよい。
【0017】
Y及びXの好適なジアルキルアミノ基は、各アルキル基中に1〜6個の炭素原子を含む。各アルキル基は同じであっても異なっていてもよく、直鎖でも分枝鎖でもよい。好適な基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、メチルペンチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、及びエチルヘキシルアミノ基等が例示される。
【0018】
Xのハロゲン基としては、Cl、Br、F、及びIが挙げられ、Fが最も典型的なものである。
【0019】
Xのアルキル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、直鎖でも分枝鎖でもよい。例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が例示される。
【0020】
ハロアルキル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、直鎖でも分枝鎖でもよい。例えば、Cl、Br、F、又はIで置換されたアルキル基が例示され、当該アルキル基自体の例としては、例えば上記に具体的に開示されたアルキル基が挙げられる。
【0021】
アルコキシ基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基等である。
【0022】
アルケニル基としては、典型的には、2〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばエテニル基及びプロペニル基等である。
【0023】
ハロアルケニル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられる。例えば、Cl、Br、F、又はIで置換されたアルケニル基が例示され、当該アルケニル基自体の例としては、例えば上記に具体的に開示されたアルケニル基が挙げられる。
【0024】
アルキニル基としては、典型的には、1〜6個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えばエチニル基及びプロピニル基等である。
【0025】
本開示の方法において用いられる化合物としては、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)フルオロシトシン、及び1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンが好ましい。本明細書においては、当該化合物をThio AraCやT AraCとも称する。
【0026】
本開示において用いられる化合物は米国特許第6,576,621号明細書に開示されている改良法によって調製可能である。当該文献の開示内容を本明細書に引用して援用する。
【0027】
本開示に関する関節炎の種類として、例えば関節リウマチ及び変形性関節症が挙げられる。
【0028】
本開示において治療されるホストとしては、ヒトやコンパニオン・アニマル(イヌやネコ等)といった哺乳動物が挙げられる。
【0029】
以下の例によって本開示を説明するが、本開示はその例に限定されない。以下の例によって、関節炎の治療及び予防における、本開示において用いられる化合物の有効性を示す。
【0030】
下記データから、予防プロトコルに準じて被験化合物(即ち、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン)を使用することにより、コラーゲン誘発関節炎に対して著しい抗関節炎効果が奏されることが分かる。当該薬剤は、強い用量依存性効果を示し、60mg/kg/日で疾患の発症を完全に防ぐことができ、20mg/kg/日の治療によりマウスの罹患率を有意に低減した。正確な作用メカニズムは現段階の実験からは明らかでないが、当該薬剤は疾患の進行に影響を与え、マウスにおいては、実際に関節炎を発症した数以上に、罹患している足の数を有意に低減した。また、関節疾患を伴う足における関節炎の重症度も低減した。抗CII(II型コラーゲン)抗体価の著しい低減は、本調査において確認された抗関節炎活性の鍵であるようにも思われる。しかしながら、全身における免疫抑制効果の指標である総免疫グロブリン濃度もまた低下したということに留意する必要があろう。リンパ節細胞で、T細胞マイトジェンCon A(コンカナバリンA)に対する反応に著しい低減が見られ、体内の細胞活性化反応から、リンパ球活性が全身で低減したことが分かった。20mg/kg/日投与群(20%のマウスで非致死性の皮膚発疹を確認)及び60mg/kg/日投与群(20%で皮膚発疹を確認し、その内の1匹が死亡。脾腫も顕著に発現)の両方であるレベルの薬剤毒性を呈した。本被験化合物は概して、前臨床所見において抗関節炎活性を強く示しており、非常に有望である。
【0031】
コラーゲン関節炎は、罹患しやすい種のマウスに、関節軟骨の主要成分であるII型コラーゲンを用いて免疫性を付与することで引き起こされる(1)。紅斑及び水腫という臨床的特徴を有する進行性の炎症性関節炎が、免疫性を付与した動物の大部分で発現し、罹患した足の幅は、典型的には100%の増加率で大きくなる。臨床的スコア評価指数を開発し、関節変形や脊椎炎への疾患の進行を評価した(2)。罹患した関節では、病理組織学的に見て、滑膜炎、パンヌス形成、及び、軟骨や骨の糜爛が確認される。これら病理組織学的症状を指標として用いてもよい。免疫学的検査所見においては、II型コラーゲンに対する高濃度の抗体や高ガンマグロブリン血症などが確認される。当該モデルは現在、関節疾患に対する免疫療法アプローチのテスト法として確立されており(3)、関節リウマチ(RA)を治療するための生物学的物質及び薬理学的物質のいずれの研究にも用いられ、好結果を得ている(4;5)。本実験において、予防プロトコルに準じてII型コラーゲンで免疫性を付与してから3回被験化合物を投与することで、被験化合物がCIAに対して及ぼす影響を評価した。
【0032】
以下の材料及び方法を試験に用いた。
【0033】
動物及び化合物投与:40匹の8〜10週齢のDBA/1 LacJマウスをJackson Labsから入手し、実験前に10日間、試験設備に順応させた。試験開始時に動物の体重は全て、16グラムを超えていた。投与溶液を毎週新たに調製し、4℃で保存した。各マウスを下記4つの処理・治療群の1つに割り当てた。
【0034】
第1群:無菌賦形剤(Tween 80を0.05%含有する生理食塩水)100μlを毎日、腹腔内注射した。
【0035】
第2群:5mg/kg/日の化合物を含有する無菌賦形剤100μlを腹腔内注射した。
【0036】
第3群:20mg/kg/日の化合物を含有する無菌賦形剤100μlを腹腔内注射した。
【0037】
第4群:60mg/kg/日の化合物を含有する無菌賦形剤100μlを腹腔内注射した。
【0038】
初回投与から3日後、マウス全てに対して、完全フロインドアジュバント(FCA)中のウシII型コラーゲン100μgを尾の基部に皮内注射した。マウスでの発症の有無を毎日モニターし、記録した。マウスの体重を毎週測定し、全般的な健康状態を記録した。関節炎を罹患している動物を週に5回、臨床的に評価し、免疫性を付与してから10週間目まで継続して評価した。また、週に3回、足を計測した。免疫性を付与してから10週間たっても関節炎の徴候が見られないマウスを疾患陰性とみなした。
【0039】
免疫学的評価:試験開始前に予め全てのマウスから採血し、その後、免疫性を付与してから2週間目、関節炎の発症時(該当する場合)、及び試験終了時に採血した。血清を分離して、−80℃で保存した。ELISAアッセイを行い、(1)抗II型コラーゲン抗体濃度と(2)総免疫グロブリン濃度を求めた。試験体を屠殺して脾臓及びリンパ節を取り出し、単一細胞の懸濁物を調製した。Con A及びLPSに対するマイトジェン反応、並びに、II型コラーゲンに対する抗原増殖反応を標準的な技法を用いて確認した。
【0040】
分析:適当な統計学的比較を行い、(i)罹患率、(ii)発症時期、(iii)個々の足の腫れ、及び(iv)疾患の進行度、に対する化合物の影響を、累積関節炎スコアに基づいて評価した。免疫学的データを分析し、(i)II型コラーゲンに対する抗体反応、(ii)総免疫グロブリン濃度、(iii)T細胞マイトジェン反応、(iv)B細胞マイトジェン反応、及び(v)抗原特異的(コラーゲン)増殖反応に対する化合物の影響を調べた。
【0041】
副作用及び毒性:試験期間中のマウスの平均体重を図1に示す。無作為に各群に割り当てたにもかかわらず、実験開始時の対照群マウスの体重は、治療群マウスよりも少なかったが、有意差は見られなかった。コラーゲン関節炎で典型的に見られるように、その後、対照群マウスの体重は発症に伴って減少した。同様の体重パターンが、5mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスにおいても観察された。対照的に、20mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスの体重は、試験の間ずっと、健常動物と同様な割合で増加した。このようにして、対照群のマウスと当該治療群との間に5週間目から有意差が見られ始めた。60mg/kg/日で治療したマウスの体重は、6週間目までずっと、正常な割合で増加したが、6週間目から8週間目にかけて急速に減少した。その後、当該マウスの体重は健常に近い状態にまで回復した。
【0042】
高投与量(60mg/kg/日)群の動物の一個体については、潰瘍性皮膚発疹が顕著に発現し、二次感染の徴候を示していたため、調査の途中で安楽死させた。60mg/kg/日投与群の別の一匹のマウスと、20mg/kg/日投与群の2匹の動物とに軽度の皮膚発疹が見られた(図2)。3〜4日間治療を中断することでこれらの徴候を制御すると、皮膚の炎症は軽減されたようであったので、治療を再開すると、症状は悪化しなかった。試験が終了するまでには、概して、発疹は消散し、軽度に線維が形成した部分が残るのみであった。患部から皮膚生検を採取し、病理学的所見に関しては未だ結果が出ていない。
【0043】
検死おける観察から、高投与量(60mg/kg/日)群のマウス全てで脾腫が顕著に確認された(図3)。PBS対照群中では、組織均質化前の脾臓重量がほぼ5倍に増加していた。また、リンパ節障害がみられるマウスもいたが、脾臓で観察されるよりは発生率は低く、重大なものではなかった。このような効果は、低投与量治療群では確認されなかった。概して、20mg/kg/日及び5mg/kg/日では、薬剤はかなり許容されており、これらの投与群のマウスは全て調査期間中、生存し続けた。
【0044】
関節炎の罹患率及び発症時期:本開示に係る被験化合物の投与量を変えて治療した各マウスにおける関節炎の罹患率を図4に示す。調査で最も目立った特徴は、60mg/kg/日で治療したマウスにおいて発症が完全に防がれたことである。当該治療群では、疾患を有する動物は0/10個体であったが、これに対し、PBS対照群では100%の罹患率(10/10)であった(p<0.001)。20mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスにおいても、罹患率は極めて有意に低減(p<0.01)していたが、5mg/kg/日で治療したマウスの罹患率(9/10)に関しては、対照群との有意差はみられなかった。データから、コラーゲン誘発関節炎の罹患率に対して用量依存性の効果がはっきりと確認される。
【0045】
各処理・治療群におけるコラーゲン誘発関節炎の平均発症時期を図5に示す。発症時期に関して、関節炎を発現したマウスの各群間で有意差は見られなかった。対照群のマウスは治療群のマウスよりも僅かに遅い平均発症時期で疾患を発現したが(43日対34日)、この差は統計的に有意なものではなかった。
【0046】
図6では、関節炎の罹患率を経時的に示している。治療群マウスと対照群動物の発症率は、試験開始後5週間までは比較的同等である。この時点から、20mg/kg投与群では発症率がかなり減少する(これに対し、5mg/kg/日投与群では減少しない)。50日目から試験終了まで明らかに、20mg/kg投与群で罹患率が有意に低減しており、実験終了時の最終的な罹患率において、対照群に対し有意差(p<0.01)がみられた。
【0047】
治療群及び対照群の各動物において、関節炎を罹患している足の累積数により疾患の重症度及び進行度を分析すること(図7)で、被験化合物による治療がコラーゲン誘発関節炎の進行に著しい作用を与えることが明らかとなった。PBSで処理した対照群マウスにおいて、40本の足のうち、あわせて27本が関節炎の徴候を示しており、この結果は、60mg/kg/日(0/40)又は20mg/kg/日(7/40)で治療したどちらのマウスに対しても大きな有意差(p<0.001)を有していた。5mg/kg/日で治療したマウスの罹患している足の数は、対照群よりも少なかったが(19/40)、統計学的に有意差は得られなかった。
【0048】
図8に示すように、同様の所見が疾患の平均重症度の分析においても認められた。対照群マウスにおいて6週間目から試験終了まで見られる、疾患の著しい悪化は、コラーゲン関節炎に特徴的なものである。20mg/kg/日で治療したマウスにおいて疾患重症度の改善がはっきりと確認され、6週間目で有意な低減(p<0.04)がみられ、8週間目から試験終了時にかけて有意差が増大した(p<0.001)。5mg/kg/日で治療したマウスでは疾患重症度が明らかに低減したとは言えないが、試験終了時(10週間目)には有意差(p<0.05)が得られるほどの低減に達した。
【0049】
抗II型コラーゲン抗体濃度:実験前、免疫付与後14日目、関節炎の発症時(該当する場合)、及び終了時に採取した各血清中の抗CII抗体濃度を図9に示す。
【0050】
60mg/kg/日のT−araCで治療したマウスでは、抗CII抗体価は完全に抑制された。これは抗関節炎活性の作用メカニズム(MoA)を示すものとなっている。20mg/kg/日で治療したマウスにおいても、実験終了時に、抗コラーゲン抗体は有意(p<0.02)に減少しており、対照群マウスで観察された濃度を下回っていた。また、5mg/kg/日で治療したマウスでも、発症時には有意に減少していた(p<0.01)。
【0051】
総免疫グロブリン濃度:マウス中の総Ig濃度を図10に示す。実験開始前(実験前採血)において各群間に有意差はみられなかった。全ての治療群のIg濃度は、治療後2週間目で対照群における濃度よりも下回り、その減少は、5mg/kg/日(p<0.05)、20mg/kg/日(p<0.05)、及び60mg/kg/日(p<0.005)のように統計学的にも確認された。しかしながら、発症時にはいずれのマウス群間にも有意差は認められなかった。調査終了時において、60mg/kg/日で治療したマウス中のIg濃度は非常に低く、さらに、5mg/kg/日又は20mg/kg/日で治療したどちらのマウスでも、そのIg濃度は有意(p<0.02)に減少しており、対照群マウスを下回っていた。
【0052】
マイトジェン及び抗原増殖反応:マイトジェンであるコンカナバリンA及びLPS、並びに、抗原であるII型コラーゲンに対する各反応に由来するリンパ節細胞活性化のレベルを図11に示す。T細胞マイトジェン コンカナバリンAに対する反応は、5mg/kg/日(p<0.04)及び60mg/kg/日(p<0.001)のT−araCで治療した各群において有意に低減し、20mg/kg/日で治療したマウスでは、有意ではないがそれに近いものとなった(p=0.08)。興味深いことに、LPS(主にB細胞マイトジェン)に対する反応において有意な影響は見られなかった。また、刺激性抗原(II型コラーゲン)に対する反応においても治療による影響は見られなかった。
【0053】
脾臓細胞における、Con A、LPS及びCIIに対する反応を図12に示す。20mg/kg/日の被験化合物で治療したマウスにおいて、リンパ節細胞で抑制がみられるのとは対照的に、細胞刺激が有意に高まっているのが確認された(p<0.005)。しかしながら、データを考察すると、体内の(刺激を受けていない)細胞の活性化レベルが、20mg/kg/日(0.53)及び60mg/kg/日(0.58)で治療した各マウスでは、対照群マウスの細胞活性化レベル(0.77)に比べて低いことが分かった。これら各群の差は、統計学的に有意である(それぞれ、p<0.001、p<0.05)。結果として、刺激指数のこのような見かけ上の増加は数学的なものであり、増殖が高まったというよりはむしろ、ベースラインの細胞活性が低下したことによる。
【0054】
上記結果から、予防プロトコルに準じて本開示に係る被験化合物を使用することにより、コラーゲン誘発関節炎に対して著しい抗関節炎効果が奏されることが分かる。当該薬剤は、強い用量依存性効果を示し、60mg/kg/日で疾患の発症を完全に防ぐことができ、20mg/kg/日の治療によりマウスの罹患率を有意に低減した。当該薬剤は疾患の進行に著しい影響を与え、マウスにおいては、実際に関節炎を発症した数以上に、罹患している足の数を有意に低減した。また、関節疾患を伴う足における関節炎の重症度も低減した。正確な作用メカニズムは現段階の実験からは明らかでないが、抗CII抗体価の著しい低減は、本調査において確認された抗関節炎活性の鍵であるように思われる。しかしながら、全身における免疫抑制効果の指標である総免疫グロブリン濃度もまた低下しており、自己免疫活性の特異的な低減という訳ではないということに留意する必要があろう。リンパ節細胞で、T細胞マイトジェンCon Aに対する反応に著しい低減が見られ、体内の細胞活性化反応から、リンパ球活性が全身で低減したことが示された。20mg/kg/日投与群(20%のマウスで非致死性の皮膚発疹を確認)及び60mg/kg/日投与群(20%で皮膚発疹を確認し、その内の1匹が死亡。脾腫も顕著に発現)の両方においてあるレベルの薬剤毒性を呈した。当該薬剤は概して、前臨床所見において抗関節炎活性が高く評価されており、非常に有望である。
【0055】
さらなる試験において、各マウスにコラーゲンII/完全フロインドアジュバント(CFA)を0日目に最初の免疫付与物として注射し、21日目にコラーゲンIIをCFAを用いずにブースタ注射として再び注射した。6週間の治療は−2日目に開始し、3週間の治療については19日目に開始した。全ての治療を40日目に終了した。組織及び血液サンプルを54日目に採取し、病理学的分析及び免疫学的分析に供した。
【0056】
【表1】
【0057】
X線マイクロトモグラフィー(mCT)によって非破壊的な3次元内部顕微鏡検査を行い、マウスの骨や関節の破壊及び糜爛を確認した。当該技術を用いて、関節炎の治療におけるT−araC[1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン]薬剤の効能を検討した。健常マウス、CIAマウス、T−araCで治療したCIAマウス、及び、メトトレキサートで治療したCIAマウスの各々における関節及び骨のmCT画像である図13〜16などを参照されたい。3次元内部顕微鏡検査のマイクロCT画像、さらに、関節糜爛及び骨糜爛の定量分析によって(図17)、T−araCを2種類の治療投与量及び計画に準じて使用した場合に著しい抗関節炎活性が示されることが分かった。T−araCはCIAモデルにおいてメトトレキサート(関節リウマチに対して現在臨床使用されている薬剤)と同様な活性を示した。マウスの足を組織学的に分析し、マウス関節周辺部の炎症性変化及び糜爛性変化を評価した。この結果もまた、T−araCの著しい抗関節炎活性を示すものであり(図18及び19)、マイクロCT分析と一致していた。さらに、第I相臨床試験結果とも一致しており、抗炎症及び抗血管新生サイトカインIL−10は、T−araC治療後のマウス血清中で有意に増加していた(図21)。マウス血清中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)含量をELISAで調べたところ、各治療・処理群間に有意差はみられなかった(図22)。T−araC治療後2週間の時点でマウス血液サンプル中のT細胞及びB細胞をカウントしたところ、いずれの細胞も減少していないことが分かった。なおこれは、T−araC治療に伴って、T細胞数又はB細胞数に何らかの免疫抑制効果があったかどうかを示すものであり、T−araC治療による当該効果は可逆的であるように思われる。結論として、CIAマウスモデルと、表に示された治療計画とを用いた当該前臨床試験により、T−araCの抗関節炎活性は統計学的に有意なものであり、T−araC治療に関連した明らかな毒性は認められないということが確認された。
【0058】
さらに別の試験において、8〜10週齢の60匹のDBA/1 LacJマウスを入手して、実験前に最低10日間、試験設備に順応させた。試験開始時に動物の体重は全て、16グラムを超えていた。完全フロインドアジュバント(FCA)中のウシII型コラーゲン100μgを各マウスの尾の基部に皮内注射した。発症の有無を毎日モニターし、記録した。関節炎の臨床エビデンスが初めて現れた時点で、各マウスを下記4つの処理・治療群の1つに割り当てた。
第1群:無菌賦形剤100μlを週に3回、強制経口投与した。
第2群:30mg/kgのT−araCを含有する無菌賦形剤100μlを強制経口投与した。
第3群:60mg/kgのT−araCを含有する無菌賦形剤100μlを強制経口投与した。
第4群:90mg/kgのT−araCを含有する無菌賦形剤100μlを強制経口投与した。
【0059】
マウスの体重を毎週測定し、全般的な健康状態を記録した。動物を週に5回、疾患に関して臨床的に評価し、疾患発症後10週間目まで継続して評価した。また週に3回、足を計測した。
【0060】
組織学的評価:臨床評価検査後、全てのマウスの肢を取り除き、中性緩衝ホルマリン溶液中に保存した。関節を18日間10%蟻酸中で脱灰し、脱水し、パラフィンブロック中に包埋した。長手方向軸に沿って切断して、各切片をスライドに固定し、ヘマトキシリン・エオジン染色又はトルイジンブルー染色のいずれかを行った。各標本をほぼ正中線で切断した後、矢状方向中心切断サンプルをそれぞれスライドに固定して評価した。これにより、一貫した形態学的評価(geographic evaluation)が可能となった。5〜10個のサンプルをスライドに固定した(通常、1スライド当たりサンプル数:4〜6個)。染色後、各スライドをカバースリップで恒久的に固着させた。少なくとも1標本当たり3つの別々の切片を、盲検法により、群の割り当てが分からないようにして評価した。全ての肘関節、手関節、及び中手関節を前肢のスコアとしてカウントし、全ての膝関節、足首関節、及び中足関節を後足のスコアとしてカウントした。切片化の過程でPIP関節のほとんどが取り除かれるため、指は評価しなかった。各スライドにおいて、滑膜炎、パンヌス形成、周辺部の糜爛(marginal erosions)、構造上の変化(主に亜脱臼)、及び破壊の有無を評価した。次に、これらの集計点に基づき、総合的スコアを各切片に対してそれぞれ配点した。スコアのカウント法は以下に拠る。
【0061】
滑膜の膜厚によって滑膜炎を判定し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − 細胞3個分未満の厚み
1 − 細胞3〜5個分の厚み
2 − 細胞6〜10個分の厚み
3 − 細胞10〜20個分の厚み
4 − 細胞20〜30個分の厚み
【0062】
パンヌス形成に対し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − パンヌス形成なし
1 − 微絨毛有り
2 − パンヌスの明らかな付着
3 − パンヌスの顕著な付着
4 − 関節腔におけるパンヌス浸潤
【0063】
周辺部の糜爛に対し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − 目に見える糜爛なし
1 − 被膜付着領域における小さなくぼみ
2 − 軟骨の明らかな糜爛
3 − 軟骨下骨への糜爛の拡大
4 − 骨及び軟骨の重度の糜爛
【0064】
構造上の変化に対し、以下のようにスコアをカウントした。
0 − 正常な関節構造
1 − 浮腫性変化
2 − 関節摺動面の軽度の亜脱臼
3 − 関節摺動面の重度の亜脱臼
4 − 完全な線維形成及びコラーゲン架橋
【0065】
総合的スコアに対しては、以下のように反映させた。
0 − 通常の正常な関節外観
1 − 軽微な変化であって、寛解に相当する程度であり、臨床上おそらく正常なもの
2 − 確定的な炎症性関節炎
3 − 重度の炎症性、糜爛性疾患
4 − 破壊性、糜爛性関節炎
【0066】
トルイジンブルー染色切片のプロテオグリカン損失を評価した。関節表面の染色を成長板の染色と比較し、以下のようにスコア付けを行った。
0 − プロテオグリカン損失がなく、トルイジンブルー染色は正常
1 − 軽度のプロテオグリカン損失があり、軟骨表面から染色がいくらか損失している
2 − 中程度のプロテオグリカン損失があり、軟骨表面の染色が弱い
3 − 顕著なプロテオグリカン損失があり、軟骨表面のトルイジンブルー染色が確認できない
4 − 重度のプロテオグリカン損失があり、軟骨深部においてもトルイジンブルー染色が確認できない
【0067】
コラーゲン誘発関節炎の組織学的所見:各切片において、疾患の炎症性パラメータと糜爛性パラメータを評価した。関節炎の外観(図27A)から、対照(PBS処理)群では重度の炎症性糜爛性疾患病変が確認され、滑膜の肥大や過形成といった典型的な関節炎の特徴、及び、顕著なパンヌス付着や周辺部の糜爛が見られた。
【0068】
30mg/kg/日のT−araC化合物で治療した場合(図27B)には、各関節炎パラメータが有意に変化し、関節の炎症性変化と糜爛性変化がいずれも低減した。60mg/kg/日のT−araCで治療した場合(図27C)には、パンヌス形成及び糜爛が対照群と比較してより著しく低減した。T−araCを90mg/kg/日で投与した場合(図27D)には、外観上、軽微な変化が見られるか、又は、正常な関節のままであり、滑膜は薄く、軟骨表面は滑らかで、骨は正常であった。さらに、各種投与量でT−araC治療を行う上記調査において、動物実験技術者から皮膚発疹が報告されることはなかった。
【0069】
炎症スコアの分析(図28)によって、T−araCで治療したマウスの炎症が、対照群(生理食塩水で処理)の動物と比較した場合、用量に依存して低減した。30mg/kgのT−araCで治療したマウスにおいて、滑膜炎は有意に低減し(p<0.01)、パンヌス形成のスコアも同様に低減した(p<0.01)。60mg/kg又は90mg/kgで治療したマウスにおいて、これらのパラメータは極めて有意に減少し(p<0.001)、当該高投与量群においては、30mg/kgのT−araCで治療したマウスに対する優位差も確認された。
【0070】
コラーゲン誘発関節炎の糜爛性の変化(糜爛や関節構造の変化)を評価すると、同様なパターンの効果がみられた。30mg/kg/日〜90mg/kg/日のT−araCで治療した群では、対照群(生理食塩水で処理)の動物と比較した場合、関節糜爛が極めて有意に低減した(p<0.001)(図29)。また、20mg/kg/日のT−araC化合物で治療したマウスにおいても有意に低減した(p<0.01)。
【0071】
各病理組織学的パラメータを組み合わせて得た総合的な組織学的関節炎スコア(図30)は、個々の疾患パラメータの結果を反映するものであった。T−araCで治療したマウスと、対照群として(PBS)処理した動物の間に有意差がみられ、その差は用量に依存していた。60mg/kg/日及び90mg/kg/日で治療したマウスにおいて総疾患数は極めて有意に低減した(p<0.001)。
【0072】
トルイジンブルー染色した切片を検査し、関節炎を罹患している関節からの基質タンパク質の損失に対してT−araCが奏する効果を確認した。データ(図31)から、60mg/kg/日又は90mg/kg/日のT−araCが、事実、プロテオグリカン損失を防ぎ、その効果が統計学的に極めて有意なものであることが分かった。
【0073】
組織学的所見は、罹患したコラーゲン誘発関節炎を治療プロトコルに準じて本開示の化合物で治療することで、用量に依存して疾患が著しく改善した、という臨床データを裏付けるものである。60mg/kg又は90mg/kgで治療したどちらのマウスにおいても、関節炎の組織学的パラメータ全てが低減し、統計学的に大きな有意差が得られた。しかしながら、どの投与量においても疾患は統計学的に低減していた。T−araCの高投与量群では、関節構造の顕著な回復が見られた。総じた印象として、高投与量で治療したマウスではT−araCによって関節疾患がある程度治癒したように思われた。概して、これらの所見は、得られた臨床的観察結果に一致するものであり、非常に有望であることを示すものである。これらの結果から、罹患した関節炎に対し治療的方法で投与した場合、本開示の化合物は抗関節炎効果を奏し得るということが示唆される。
【0074】
治療的試験により確認された顕著な抗関節炎効果をまとめると、90mg/kg/日で治療した100%のマウスの疾患が試験中のある時点で寛解に達し、60%の動物が試験終了時にも臨床的に疾患のない状態を維持していた。さらに、関節炎指数、及び、罹患している足の数が極めて有意に低減した。また、60mg/kg/日で治療したマウスでも、関節炎が有意に低減し、70%のものの疾患がある時点で寛解に達し、40%が試験終了時でも寛解を維持していた。さらに、疾患スコア、及び、罹患している肢の数の有意な低減も記録された。30mg/kg/日で治療したマウスでは、臨床疾患に対して有意な効果は見られなかった。組織学的所見は臨床データを裏付けるものであり、罹患したコラーゲン誘発関節炎を本開示の化合物T−araCで治療することにより、用量に依存して疾患が著しく改善することが示された。関節炎の組織学的パラメータ全てが低減し、統計学的に大きな有意差が得られ、さらにT−araCの高投与量群では、関節構造の著しい回復もみられた。脾腫(関節炎効能とは無関係に、T−araCで治療した全てのマウスにおいて随所に見られた)の調査により、最も目立った変化として、組織壊死又は線維形成は見られないものの、細胞の過剰増殖が確認された。この顕著な細胞数の増加は脾臓サイズの膨張を説明するもののように思われる。
【0075】
剤形
本開示の化合物は、医薬品と共に使用することが可能な任意の従来手段によって投与することができ、単一の治療剤としてもよく、又は、治療剤を組み合わせてもよい。本開示の化合物は単独で投与してもよいが、一般的には医薬基剤と共に投与する。当該医薬基剤は、選択された投与経路と医薬分野の標準的なプラクティスとに基づいて選択される。上記化合物はまた、インターフェロン(IFN)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、コンセンサス・インターフェロン(CIFN)、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターロイキン−12、ウルソデオキシコール酸(UDCA)及びグリシリジン等の他の治療剤と共に投与してもよい。
【0076】
本明細書で説明する薬学的に許容される基剤、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤又は希釈剤などは、当業者に周知である。典型的には、薬学的に許容される基剤は活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用条件下において有害な副作用又は毒性を持つことはない。薬学的に許容される基剤としては、ポリマー及びポリマーマトリックスが挙げられる。
【0077】
本開示の化合物は、医薬品と共に使用することが可能な任意の従来手段によって投与することができ、単一の治療剤としてもよく、又は、治療剤を組み合わせてもよい。
【0078】
投与量は当然ながら、薬剤の種類及びその投与の形態や経路といった薬力学的特徴;受容者の年齢、健康状態及び体重;症状の性質及び程度;併用療法の種類;治療頻度;並びに、所望の効果などの既知の要因に応じて異なるであろう。有効成分の1日当たりの投与量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.001〜1000ミリグラム(mg)であると予想され、好ましくは0.1〜約30mg/kgである。
【0079】
投与形態(投与に適した組成物)には、1単位当たり約1mg〜約500mgの有効成分が含まれている。これらの医薬組成物には、通常、当該組成物の全重量に基づいて約0.5〜95重量%の量の有効成分が含まれるであろう。
【0080】
有効成分は、カプセル、錠剤及び散剤などの固形剤として経口投与してもよく、あるいは、エリキシル剤、シロップ剤及び懸濁剤などの液剤として経口投与してもよい。また、無菌液の投与形態で非経口投与してもよい。有効成分は、鼻腔内に投与してもよく(点鼻薬)、あるいは、薬剤パウダーミストの吸入によって投与してもよい。パッチ型や軟膏による経皮投与などの他の投与形態も可能な場合がある。
【0081】
経口投与に適した剤形は、(a)水、塩水、又はオレンジジュース等の希釈液に有効量の化合物を溶解させたような液状溶液、(b)所望量の有効成分を含有している、固形物又は顆粒としてのカプセル、サシェ剤、錠剤、薬用ドロップ(lozenges)及びトローチ剤、(c)散剤、(d)適当な液体との懸濁剤、及び、(e)好適な乳剤であってもよい。液剤の場合、水、並びに、例えばエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレンアルコール等のアルコール類などといった希釈剤が含まれてもよく、薬学的に許容される界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤が添加されていても、いなくてもよい。カプセル形態の場合、界面活性剤、滑沢剤、並びに、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ等の不活性充填剤などを含有している通常のハードシェルゼラチン型又はソフトシェルゼラチン型であってもよい。錠剤の場合、以下のものを1つ以上含んでいてもよい:ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及びその他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存料、フレーバー付与剤、及び、薬理学的に適合した基剤。薬用ドロップ形態の場合、一般的にはスクロース、アラビアゴム又はトラガカントゴム等であるフレーバー中に有効成分を含んでいてもよい。香錠(pastilles)の場合も同様に、ゼラチン及びグリセリン、又は、スクロース及びアラビアゴム(acadia)等といった不活性なベース中に有効成分を含んでいてもよく、乳剤及びゲル剤の場合も、有効成分に加えて当該技術分野で公知であるような基剤を含有していてもよい。
【0082】
本開示の化合物は、単独で、又は、他の好適な成分と組み合わせて、吸入投与用のエアロゾル剤形に調剤されてもよい。このエアロゾル剤形は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン及び窒素などの許容される高圧噴射剤としてもよい。また、このエアロゾル剤形は、ネブライザー又はアトマイザー等といった非加圧製剤用の医薬品に調剤されてもよい。
【0083】
非経口投与に適した剤形としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び、製剤を対象受容者の血液と等張にする溶質を含んでいてもよい、水性及び非水性の等張無菌注射液;並びに、懸濁化剤、溶解剤、増粘剤、安定剤、及び保存料を含んでいてもよい、水性及び非水性無菌懸濁液が挙げられる。化合物は、医薬基剤中の生理学的に許容される希釈剤に含ませて投与してもよい。この生理学的に許容される希釈剤は、例えば無菌の液体又は液体混合物であり、水;塩水;デキストロース水溶液及び関連する糖液;エタノール、イソプロパノール又はヘキサデシルアルコール等のアルコール;プロピレングリコール、又は、例えばポリ(エチレングリコール)400等のポリエチレングリコールなどといったグリコール類;2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール等のグリセロールケタル類;エーテル;オイル;脂肪酸;脂肪酸エステル又はグリセリド;あるいは、アセチル化脂肪酸グリセリドが挙げられる。これらには、薬学的に許容される界面活性剤(石鹸又は洗浄剤など)、懸濁化剤(ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース等)、又は乳化剤、及び、他の医薬アジュバントが添加されていても、いなくてもよい。
【0084】
非経口剤形で使用されるオイルとしては、石油、動物油、植物油、又は合成油が挙げられる。オイルの具体例としては、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタム、及び鉱物油が挙げられる。非経口剤形に使用される好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルが好適な脂肪酸エステルの例として挙げられる。非経口剤形に使用される好適な石鹸としては、脂肪酸アルカリ金属塩、脂肪酸アンモニウム塩、及び脂肪酸トリエタノールアミン塩が挙げられる。好適な洗浄剤としては、(a)例えばハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム及びハロゲン化アルキルピリジニウム等のカチオン性洗浄剤、(b)例えばアルキル、アリール及びオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリドスルフェート、並びに、スルホサクシネート等のアニオン性洗浄剤、(c)例えば脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレン・ポリプロピレン共重合体などの非イオン性洗浄剤、(d)例えばアルキルβ−アミノプロピオネート、及び2−アルキルイミダゾリン第4級アンモニウム塩などの両性洗浄剤、さらに(e)これらの混合物が挙げられる。
【0085】
非経口剤形は、典型的には約0.5〜約25重量%の有効成分を溶液中に含有している。このような剤形には、適当な保存料及び緩衝剤を使用してもよい。注射部位での刺激を最小限に抑えるか又は除くために、このような組成物には、親水親油バランス(HLB)が約12〜約17である非イオン性界面活性剤を1つ以上含有させてもよい。このような剤形における界面活性剤の量は、約5〜約15重量%である。好適な界面活性剤としては、モノオレイン酸ソルビタンなどのポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、並びに、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により形成される疎水性基部(ベース)とのエチレンオキシドの高分子量付加物が挙げられる。
【0086】
薬学的に許容される賦形剤もまた、当業者には周知である。賦形剤は、化合物の種類や組成物の投与に使用される具体的な方法を幾分考慮して選択されるであろう。従って、本開示の医薬組成物には、様々な種類の好適な剤形が考えられる。以下の方法及び賦形剤は単なる例示に過ぎず、これらに限定されない。薬学的に許容される賦形剤としては、有効成分の作用を阻害せず、不都合な副作用を引き起こさないものが好ましい。好適な基剤及び賦形剤としては、水、アルコール及びプロピレングリコール等の溶媒、固体の吸収剤及び希釈剤、界面活性剤、懸濁化剤、錠剤結合剤(tableting binders)、滑沢剤、フレーバー、並びに、着色剤が挙げられる。
【0087】
剤形は、単回投与用又は反復投与用の密封容器(アンプル及びバイアル等)に封入してもよい。また、使用直前に水などの無菌液体賦形剤を添加するだけで注射可能となるフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。無菌粉末、顆粒及び錠剤から、用時調製注射液及び懸濁液を調製してもよい。注射用組成物には有効な医薬基剤が必要であることは、当業者に周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,Eds.,238−250(1982)、及び、ASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,622−630(1986)を参照されたい。
【0088】
局所投与に適した剤形としては、一般的にはスクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴムであるフレーバー中に有効成分を含んでいる薬用ドロップ;ゼラチン及びグリセリン、又は、スクロース及びアラビアゴム等といった不活性なベース中に有効成分を含んでいる香錠;並びに、好適な液体基剤中に有効成分を含んでいる口内洗浄剤;さらに、有効成分に加えて当該技術分野で公知であるような基剤を含有しているクリーム、乳剤及びゲル剤が挙げられる。
【0089】
さらに、直腸投与に適した剤形を、乳化性のベース又は水溶性のベースなどといった種々のベースと混合することで坐薬として調製してもよい。膣投与に適した剤形を、有効成分に加えて、関連分野で適切であることが知られている基剤を含有させた膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体、又は、スプレー式剤形として調製してもよい。
【0090】
好適な医薬基剤については、当該分野の標準的な参考文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Companyに記載されている。
【0091】
本開示において、動物、とりわけヒトへの投与量は、適度な期間にわたって体内で治療反応を引き起こすのに十分な量であるのが望ましい。投与量が、動物の体調や体重、さらには、治療される症状の重症度や段階などの種々の要因によって決定されることは当業者の理解するところであろう。
【0092】
好適な投与量は、最終的に、患者体内の活性物質の濃度に関して所望の反応を起こすことが知られている濃度になると推定される量である。扱いにくい副作用を起こすことなく、治療される症状を最大限抑制することとなる投与量が好ましい。
【0093】
投与量は、投与の経路、タイミング及び頻度、さらに、化合物の投与に伴って生じる何らかの不都合な副作用の有無、性質及び程度や、所望の生理学的効果によっても決定される。
【0094】
本開示に係る化合物を投与するのに有用な薬学的投与形態は、以下のように説明される。
【0095】
ハードシェルカプセル
標準的な2ピース(two−piece)ハードゼラチンカプセル毎に、粉末状の有効成分100mg、ラクトース150mg、セルロース50mg、及び、ステアリン酸マグネシウム6mgを充填して、多数のカプセル単位を調製する。
【0096】
ソフトゼラチンカプセル
大豆油、綿実油又はオリーブ油等の消化可能なオイル中に有効成分を含ませて混合物を調製し、それを容積移送式ポンプで、溶かしたゼラチンに注入し、有効成分100mgを含有するソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄し、乾燥させる。ポリエチレングリコールとグリセリンとソルビトールとの混合物に有効成分を溶解させ、水混和性の混合薬を調製してもよい。
【0097】
錠剤
有効成分100mg、コロイド二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、微結晶セルロース275mg、デンプン11mg、及び、ラクトース98.8mgを含む投与単位となるように、従来の手順で多数の錠剤を調製する。嗜好性を増加させるため、外観及び安定性を向上させるため、又は、吸収を遅らせるために適当な水性及び非水性コーティングを施してもよい。
【0098】
速放性(immediate release)錠剤/カプセル
従来のプロセスや新規のプロセスで調製される、経口投与用の固体投与形態である。これらの投与単位は、すぐに溶解して薬物を送達するので、水無しで経口的に摂取される。有効成分を、糖、ゼラチン、ペクチン及び甘味料などの成分を含有する液体に混合する。これらの液体を、フリーズドライ技術や固体状態で抽出する技術によって固体の錠剤又はカプレットへと固体化する。薬剤化合物を、粘弾性及び熱弾性の糖やポリマーあるいは起泡性成分と共に打錠して、水無しで即時放出されるような多孔質マトリックスを調製してもよい。
【0099】
また、本開示の化合物は、点鼻薬、又は、定量吸入器や鼻腔用若しくは口腔用吸入器の形態で投与してもよい。薬剤は、細かい霧状の点鼻液、あるいはエアロゾル状の粉末によって送達してもよい。
【0100】
本明細書中、「含む(comprising)」という用語(及びその文法上の活用形)は、「有する(having)」又は「包含する(including)」という包括的な意味で用いられ、「のみから成る(consisting only of)」という限定的な意味では用いられてはいない。本明細書中、「本質的に・・・から成る(consisting essentially of)」という用語は、明示的に記載されている事柄に加えて、記載又は特定された事柄の基本的特徴及び新規な特徴に対して実質的に(materially)影響を与えないものをも含むものであることを示すものである。本明細書中、「1つの(a)」(不定冠詞)及び「その(the)」(定冠詞)という用語は、単数と共に複数をも包含すると解される。
【0101】
ここまで、本開示について例示し、説明した。また、本開示では好ましい実施形態しか図示及び記載していないが、上述の通り、上記教示、及び/又は、関連技術の技術若しくは知識に相応する範囲において、様々な他の組み合わせ例、変形例及び環境のもとで本開示を用いることができ、本明細書に示した概念の範囲内であれば変更又は改変も可能であると解されるべきである。
【0102】
さらに、上記実施形態は、実施するために現段階で分かっている最良の形態を説明することを意図したものであり、このような実施形態として、或いは、別の実施形態として、また、具体的に適用若しくは使用するにあたって必要とされる各種の改変をさらに施して、当業者が本開示を利用できるよう意図したものである。従って、本明細書に開示された形態に限定する意図はない。また、添付した特許請求の範囲は、代替の実施形態をも含むと解されるべきものである。
【0103】
本明細書に引用した全ての刊行物、特許文献及び特許出願文献は、各刊行物、特許文献又は特許出願文献をそれぞれ具体的に且つ個別に提示し、引用して援用するように、本明細書に引用され、任意のあらゆる目的に援用される。矛盾が生じる場合、本開示が優先される。
【0104】
参考文献
(1)Wooley PH,Luthra HS,Stuart JM,David CS.Type II collagen−induced arthritis in mice.I.Major histocompatibility complex(I region)linkage and antibody correlates.Journal of Experimental Medicine 1981;154:688−700.
(2)Wooley PH.Collagen−induced arthritis in the mouse.Methods In Enzymology 1988;162:361−373.
(3)Staines NA,Wooley PH.Collagen arthritis−−what can it teach us?British Journal of Rheumatology 1994;33(9):798−807.
(4)Wooley PH,Whalen JD,Chapman DL,Berger AE,Richard KA,Aspar DG.The effect of an interleukin−1 receptor antagonist protein on type II collagen−induced arthritis and antigen−induced arthritis in mice.Arthritis Rheum 1993;36:1305−1314.
(5)Wooley PH,Dutcher J,Widmer MB,Gillis S.Influence of a recombinant human soluble tumor necrosis factor receptor FC fusion protein on type II collagen−induced arthritis in mice.Journal of Immunology 1993;151:6602−6607.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節炎を治療又は予防する方法であって、式1で表される化合物:
【化1】
[式中、
Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;
Aは、
【化2】
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]
の少なくとも1つを、関節炎を治療又は予防するのに有効な量で、その治療又は予防を必要とするホストに投与することを含む方法。
【請求項2】
RはそれぞれHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aは
【化3】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
XはHである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
XはHである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)フルオロシトシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ホストは哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ホストはヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ホストはコンパニオン・アニマルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記関節炎は関節リウマチである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)フルオロシトシンである、請求項10に記載の方法。
【請求項1】
関節炎を治療又は予防する方法であって、式1で表される化合物:
【化1】
[式中、
Rはそれぞれ独立してH、脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基であり;
Aは、
【化2】
(式中、Xは、水素、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される)
からなる群より選択される]
の少なくとも1つを、関節炎を治療又は予防するのに有効な量で、その治療又は予防を必要とするホストに投与することを含む方法。
【請求項2】
RはそれぞれHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aは
【化3】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
XはHである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
XはHである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)フルオロシトシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ホストは哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ホストはヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ホストはコンパニオン・アニマルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記関節炎は関節リウマチである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物は、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)フルオロシトシンである、請求項10に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2010−522215(P2010−522215A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554788(P2009−554788)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/058008
【国際公開番号】WO2008/118852
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507258674)サザン リサーチ インスティテュート (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/058008
【国際公開番号】WO2008/118852
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507258674)サザン リサーチ インスティテュート (11)
【Fターム(参考)】
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