説明

関節炎改善用組成物

【課題】本発明の目的は、安全で効果の高い関節炎改善用組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明によれば、セリンもしくはスレオニンまたはその塩ならなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有する関節炎改善用組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリンもしくはスレオニンまたはその塩ならなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有する関節炎改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関節炎のメカニズムは複雑であり、治療に使用されている医薬品も、抗炎症剤、鎮痛剤、潤滑剤など多岐に渡っている一方、抗炎症作用を有する物質が必ずしも関節炎に適用されているわけではない。
セリンは抗炎症作用を示すアミノ酸として知られている(非特許文献1)。これは、ラットの腹腔内に炎症性サイトカインであるTNF-αを直接投与し、その後セリンを添加した餌を与えた結果、肺中のグルタチオン濃度が減少するのを抑えた、また炎症マーカーの一つであるセルロプラスミンの増加を抑えた、というものである。これまで、セリンの摂取により関節炎が改善されることは知られていない。
【0003】
また、セリンと同様、蛋白質を構成するヒドロキシアミノ酸であるスレオニンについても、関節炎改善作用は知られていない。
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・ニュートリション(Journal of nutrition)」、1992年、第122巻、p.1369
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、安全で効果の高い関節炎改善用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の(1)〜(3)に関する。
(1)セリンもしくはスレオニンまたはその塩ならなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有する関節炎改善用組成物。
(2)関節炎が、慢性関節リュウマチである上記(1)の組成物。
(3)組成物が、医薬、飲食品、食品添加剤、飼料または飼料添加剤である、上記(1)または(2)の組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、セリンもしくはスレオニンまたはその塩ならなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有する、安全で効果の高い関節炎改善用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の組成物において、セリン、スレオニンは、それぞれL体、D体、およびL体とD体の混合物のいずれを用いてもよいが、好ましくはL体を用いる。
セリンまたはスレオニンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩があげられる。
【0008】
金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。
有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。
【0009】
アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。
セリン、スレオニンは、協和発酵工業株式会社、シグマ−アルドリッチ社等より購入することができる。
本発明の組成物は、医薬、飲食品、食品添加剤、飼料、または飼料添加剤として用いることができる(以下、本発明の医薬、飲食品、食品添加剤、飼料、飼料添加剤ともいう)。
【0010】
本発明の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与しまたは摂取させることにより、該ヒトまたは非ヒト動物における関節炎を改善することができる。
本発明が適用できる関節炎としては、クラミジア関節炎、慢性吸収性関節炎、腸疾患性関節炎、淋菌性関節炎、痛風関節炎、ジャクー関節炎、若年性関節炎、ライム関節炎、アルカプトン尿性関節炎、化膿性関節炎、変形性関節症、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)、過度の運動負荷による関節炎、慢性関節リウマチ等のいずれであってもよいが、特に慢性関節リウマチに有効である。
【0011】
本発明の組成物は、セリンもしくはスレオニンまたはその塩の他に、関節炎の改善に有効な任意の他の成分を含有していてもよい。
関節炎の改善に有効な他の成分としては、例えば、ホウ素、カルシウム、クロム、銅、マグネシウム、マンガン、セレン、シリコン、亜鉛、S−アデノシルメチオニン、コラーゲン、コラーゲン加水分解物、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、ブロメライン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ルチン、カロチノイド、フラボノイド、抗酸化ビタミン、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ボスウェリア、カプサイシン、キャッツクロー、デビルズクロー、フィーバーフュー、ショウガ、ネトルス、ナイアシアミド、サメ軟骨、ターメリックおよびクルクミン等の精製物、含有物または抽出物があげられる。
【0012】
本発明の組成物を医薬として用いる場合、セリンもしくはスレオニンまたはその塩をそのまま投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。
該医薬製剤は、有効成分としてセリンもしくはスレオニンまたはその塩を含有するが、更に任意の他の治療のための有効成分を含有していてもよい。また、それら医薬製剤は、有効成分を薬理学的に許容される一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0013】
製剤の投与形態は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与または、例えば静脈内、腹膜内もしくは皮下投与等の非経口投与をあげることができるが、経口投与が好ましい。
投与する剤形としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよいが、経口剤として好適に用いられる。
【0014】
経口剤を製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体、安息香酸ナトリウム等の保存剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して製剤化することができる。
【0015】
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤および顆粒剤等は、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
【0016】
非経口投与に適当な、例えば注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張であるセリンもしくはスレオニンまたはその塩を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩溶液とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種またはそれ以上の補助成分を添加することができる。
【0017】
本発明の製剤中のセリンもしくはスレオニンまたはその塩の濃度は、製剤の種類、当該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、例えば経口剤の場合、セリンもしくはスレオニンまたはその塩として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。
本発明の製剤の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度により異なるが、通常、成人一日当り、セリンもしくはスレオニンまたはその塩として、通常は5mg〜5000mg、好ましくは50mg〜5000mg、より好ましくは500mg〜5000mgとなるように、一日一回ないし数回投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは2週間〜3ヶ月間である。
【0018】
なお、本発明の製剤は、ヒトだけでなく、ヒト以外の動物(以下、非ヒト動物と略す)に対しても使用することができる。
非ヒト動物としては、ほ乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類等、ヒト以外の動物をあげることができる。
非ヒト動物に投与する場合の投与量は、動物の年齢、種類、症状の性質もしくは重篤度により異なるが、通常、体重1kg1日当たり、セリンもしくはスレオニンまたはその塩として、通常は0.1mg〜100mg、好ましくは1mg〜100mg、より好ましくは10mg〜100mgとなるように一日一回ないし数回投与する。
【0019】
投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは2週間〜3ヶ月間である。
上記の製剤と同様な方法により、セリンもしくはスレオニンまたはその塩を含有する食品添加剤を調製することができる。
本発明の食品添加剤は、必要に応じて他の食品添加剤を混合または溶解し、例えば粉末、顆粒、ペレット、錠剤、各種液剤の形態に加工、製造される。
【0020】
本発明の飲食品は、セリンもしくはスレオニンまたはその塩、あるいは本発明の食品添加剤を添加する以外は、一般的な飲食品の製造方法を用いることにより、加工、製造することができる。
また、本発明の飲食品は、例えば流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、解砕造粒、噴霧造粒、噴射造粒等の造粒方法、パンコーティング、流動層コーティング、ドライコーティング等のコーティング方法、パフドライ、過剰水蒸気法、フォームマット方法、マイクロ波加熱方法等の膨化方法、押出造粒機やエキストルーダー等の押出方法等を用いて製造することもできる。
【0021】
本発明の飲食品としては、例えばジュース類、清涼飲料水、茶類、乳酸菌飲料、発酵乳、冷菓、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等の乳製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉製品、蒲鉾、竹輪、さつま揚げ等の魚肉練り製品、だし巻き、卵豆腐等の卵製品、クッキー、ゼリー、チューインガム、キャンディー、スナック菓子等の菓子類、パン類、麺類、漬物類、燻製品、干物、佃煮、塩蔵品、スープ類、調味料等、いずれの形態のものであってもよい。
【0022】
また、本発明の飲食品は、例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態のものであってもよい。
本発明の飲食品は、関節炎改善用の健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品として用いることができる。
【0023】
本発明の飲食品または食品添加剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば食品添加物表示ハンドブック(日本食品添加物協会、平成9年1月6日発行)に記載されている甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
【0024】
本発明の飲食品中へのセリンもしくはスレオニンまたはその塩、あるいは本発明の食品添加剤の添加量は、飲食品の種類、当該飲食品の摂取により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、セリンもしくはスレオニンまたはその塩として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%含有するように添加される。
【0025】
本発明の飲食品の摂取量は、摂取形態、摂取者の年齢、体重等に応じて異なるが、通常、成人一日当り、セリンもしくはスレオニンまたはその塩として、通常は5mg〜5000mg、好ましくは50mg〜5000mg、より好ましくは500mg〜5000mgとなるように一日一回ないし数回摂取する。
摂取期間は特に限定はないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは2週間〜3ヶ月間である。
【0026】
本発明の食品添加剤と同様な方法により、セリンもしくはスレオニンまたはその塩を含有する飼料添加剤を調製することができる。本発明の飼料添加剤は、必要に応じて他の飼料添加剤を混合または溶解し、例えば粉末、顆粒、ペレット、錠剤、各種液剤の形態に加工、製造される。
本発明の飼料は、非ヒト動物用の飼料にセリンもしくはスレオニンまたはその塩、あるいは本発明の飼料添加剤を添加する以外は、一般的な飼料の製造方法を用いることにより、加工、製造することができる。
【0027】
非ヒト動物用の飼料としては、ほ乳類、鳥類、は虫類、両生類または魚類等の非ヒト動物用の飼料で有ればいずれでもよく、例えば、イヌ、ネコ、ネズミ等のペット用飼料、ウシ、ブタ等の家畜用飼料、ニワトリ、七面鳥等の家禽用飼料、タイ、ハマチ等の養殖魚用飼料等があげられる。
セリンもしくはスレオニンまたはその塩、あるいは本発明の飼料添加剤を添加する飼料としては、穀物類、糟糠類、植物性油かす類、動物性飼料原料、その他の飼料原料、精製品等があげられる。
【0028】
穀物としては、例えばマイロ、小麦、大麦、えん麦、らい麦、玄米、そば、あわ、きび、ひえ、とうもろこし、大豆等があげられる。
糟糠類としては、例えば米ぬか、脱脂米ぬか、ふすま、末粉、小麦胚芽、麦ぬか、ペレット、トウモロコシぬか、トウモロコシ胚芽等があげられる。
植物性油かす類としては、例えば大豆油かす、きな粉、あまに油かす、綿実油かす、落花生油かす、サフラワー油かす、やし油かす、パーム油かす、ごま油かす、ひまわり油かす、なたね油かす、カポック油かす、からし油かす等があげられる。
【0029】
動物性飼料原料としては、例えば魚粉(北洋ミール、輸入ミール、ホールミール、沿岸ミール)、フィッシュソルブル、肉粉、肉骨粉、血粉、分解毛、骨粉、家畜用処理副産物、フェザーミール、蚕よう、脱脂粉乳、カゼイン、乾燥ホエー等があげられる。
その他の飼料原料としては、植物茎葉類(アルファルファ、ヘイキューブ、アルファルファリーフミール、ニセアカシア粉末等)、トウモロコシ加工工業副産物(コーングルテンミール、コーングルテンフィード、コーンステープリカー等)、でんぷん加工品(でんぷん等)、砂糖、発酵工業産物(酵母、ビールかす、麦芽根、アルコールかす、しょう油かす等)、農産製造副産物(柑橘加工かす、豆腐かす、コーヒーかす、ココアかす等)、キャッサバ、そら豆、グアミール、海藻、オキアミ、スピルリナ、クロレラ、鉱物等があげられる。
【0030】
精製品としては、タンパク質(カゼイン、アルブミン等)、アミノ酸、糖質(スターチ、セルロース、蔗糖、グルコース等)、ミネラル、ビタミン等があげられる。
本発明の飼料は、例えば流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、解砕造粒、噴霧造粒、噴射造粒等の造粒方法、パンコーティング、流動層コーティング、ドライコーティング等のコーティング方法、パフドライ、過剰水蒸気法、フォームマット方法、マイクロ波加熱方法等の膨化方法、押出造粒機やエキストルーダー等の押出方法等を用いて製造することもできる。
【0031】
本発明の飼料は、関節炎改善用の飼料として用いることができる。
本発明の飼料中へのセリンもしくはスレオニンまたはその塩、あるいは本発明の飼料添加剤の添加量は、飼料の種類、当該飼料の摂食により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、セリンもしくはスレオニンまたはその塩として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%含有するように添加される。
【0032】
本発明の飼料を非ヒト動物に摂餌させる場合の摂餌量は、摂取形態、摂取動物の種類、該動物の年齢、体重等に応じて異なるが、通常、体重1kg1日当たり、セリンもしくはスレオニンまたはその塩として、通常は0.1mg〜100mg、好ましくは1mg〜100mg、より好ましくは10mg〜100mgである。
摂餌期間は、特に限定はないが、通常1日間〜1年間、好ましくは2週間〜3ヶ月間である。
【0033】
以下に、セリンおよびスレオニンによる関節炎改善効果を調べた試験例を示す。
なお、下記試験例において、DBA/1Jマウスはチャールスリバー社製、粉末飼料CE−2は日本クレア社製、L−セリン、L−スレオニンは協和発酵工業社製を用いた。また、添加物の量は全て重量%を示す。
試験例1:2型コラーゲン関節炎マウスにおけるL−セリンの効果
DBA/1Jマウスは、2型コラーゲンを2回投与することにより関節炎が惹起されることが知られている。
【0034】
オスの6週齢のDBA/1Jマウスに、2型コラーゲン(コラーゲン技術研修会社製)とFreund.s complete adjuvant(ヤトロン社製)を等量ずつ混合しホモジナイザーでエマルション化した溶液を、1匹あたり100μl皮内投与した。1回目の2型コラーゲン投与の21日後に、同様に2型コラーゲンとFreund.s complete adjuvantを等量ずつ混合しホモジナイザーでエマルション化した溶液を1匹あたり100μl皮内投与した。以上のようにしてマウスに関節炎を惹起した。
【0035】
1回目の2型コラーゲン投与日から、粉末飼料CE−2、またはセリンを1%添加した粉末飼料CE−2をマウスに摂取させた。1回目の2型コラーゲン投与から22日目、24日目、28日目、30日目、34日目、36日目、38日目、41日目に、関節炎の発症の程度を以下のような指標によってスコアリングした。
マウスの1本の手または足につき、0点:無症状、1点:指1本はれ、あるいは手(足)首のはれ(軽度)、2点:指1〜3本はれ、あるいは手(足)首のはれ、3点:指3〜5本はれ+手(足)首のはれ、4点:指全部はれ+手(足)首のはれ、として0点〜4点でスコアリングした。マウス1匹について手足合計4本のスコアの合計点、すなわち0点〜16点でスコアリングした。各条件につき、それぞれ20匹のマウスについて調べた。
【0036】
結果を図1に示す。図1に示されるとおり、L−セリン摂取群では、対照群と比較して、34日目以降に関節炎の症状の進行が大きく抑制された。
以上から、L−セリンの関節炎改善効果が明らかとなった。
試験例2:2型コラーゲン関節炎マウスにおけるL−スレオニンの効果
上記試験例1においてL−セリンの代わりにL−スレオニンを用いて同様な実験を行った。
【0037】
すなわち、1回目の2型コラーゲン投与日から、粉末飼料CE−2、またはL−スレオニンを1%添加した粉末飼料CE−2をマウスに摂取させた。1回目の2型コラーゲン投与から22日目、25日目、27日目、30日目、34日目、36日目、39日目、42日目に、関節炎の発症の程度を上記試験例1の指標に従ってスコアリングした。各条件につき、それぞれ20匹のマウスについて調べた。
【0038】
結果を図2に示す。図2に示されるとおり、L−スレオニン摂取群では、対照群と比較して、30日目以降に関節炎の症状の進行が大きく抑制された。
以上から、L−スレオニンの関節炎改善効果が明らかとなった。
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0039】
下記の第1表に示した組成に従い成分を混合した後、打錠機(畑製作所製、HT−AP15SS−U型)で打錠し、直径8mm、重量200mgの錠剤を製造する。

第1表
組成 配合割合(重量%)
L−セリン 20
乳糖 40
乳酸カルシウム 10
ステアリン酸マグネシウム 25
炭酸カルシウム 5
【実施例2】
【0040】
下記の第2表に示した組成に従いドッグフードを製造する。

第2表
組成 配合割合(重量%)
L−セリン 1.0
ミートミール 35.0
コーンスターチ 40.0
チキンエキス 5.0
酵母エキス 5.0
植物油脂 5.0
乳酸カルシウム 1.0
塩化ナトリウム 1.0
リン酸水素ナトリウム 0.5
炭酸マグネシウム 0.5
硫酸鉄 0.1
ビタミンB1 0.0005
ビタミンB2 0.0005
ビタミンE 0.001
ナイアシン 0.005
ビタミンA 2000 IU
ビタミンD 150 IU
水分 6.3
【実施例3】
【0041】
下記の第3表に示した配合により飲料を製造する。

第3表
組成 配合(g)
L−セリン 49
パインデックス#3(松谷化学社製) 49
ピロリン酸第2鉄(鉄源) 0.1
ホルカルFF 1.0
ビタミンミックス(メルク社製) 1.0

上記配合物20gを水180mlに分散させて飲料にする。
【実施例4】
【0042】
下記の第4表に示した配合で常法によりキャンデー(20個分)を製造する。

第4表
組成 配合(g)
L−セリン 1
砂糖 80
水飴 20
香料 1
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、L−セリンの関節炎改善効果を表すグラフである。●は対照群を、○はL−セリン摂取群を表す。
【図2】図2は、L−スレオニンの関節炎改善効果を表すグラフである。●は対照群を、○はL−スレオニン摂取群を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリンもしくはスレオニンまたはその塩ならなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有する関節炎改善用組成物。
【請求項2】
関節炎が、慢性関節リュウマチである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、医薬、飲食品、食品添加剤、飼料または飼料添加剤である、請求項1または2記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238581(P2007−238581A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67114(P2006−67114)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】