関節装置
【課題】ロボットの関節装置において、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を規制する機構を持ちながらも、360゜を超える相対回転角度を実現する。
【解決手段】第1連結部1と第2連結部2を軸受部を介して連結し、第1連結部1に設けられた第1ストッパーピン6と、第2連結部2に設けられた第2ストッパーピン8と、第2連結部2と同心でフリーに回転可能な中間リング7と、を備え、中間リング7は、第1ストッパーピン6に対して第1回転角度(θ1)だけ回転可能にする突出部7dと、第2ストッパーピン8に対して第2回転角度(θ2)だけ回転可能にする凹部7dと、を備え、突出部7dと凹部7eのいずれか一方により、それ以上の回転が規制された後も、突出部7dと凹部7eのいずれか他方により回転が規制されるまで、第1連結部1と第2連結部2の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで許容する。
【解決手段】第1連結部1と第2連結部2を軸受部を介して連結し、第1連結部1に設けられた第1ストッパーピン6と、第2連結部2に設けられた第2ストッパーピン8と、第2連結部2と同心でフリーに回転可能な中間リング7と、を備え、中間リング7は、第1ストッパーピン6に対して第1回転角度(θ1)だけ回転可能にする突出部7dと、第2ストッパーピン8に対して第2回転角度(θ2)だけ回転可能にする凹部7dと、を備え、突出部7dと凹部7eのいずれか一方により、それ以上の回転が規制された後も、突出部7dと凹部7eのいずれか他方により回転が規制されるまで、第1連結部1と第2連結部2の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで許容する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1連結部と第2連結部を軸受部を介して、共通の回転軸に対し相対回転可能に連結したロボットの関節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用のロボットは、人間の行う作業を自動化したり、部品組み立て作業や検査などの種々の目的で用いられている(例えば、下記特許文献1)。かかるロボットにおいては、関節装置を設けることが不可欠であり、第1連結部と第2連結部とが、軸受部を介して相対回転可能に連結されている。
【0003】
かかる場合において、上記相対回転の角度を制限する必要がある場合がある。例えば、連結部を介して配線を通す場合である。相対回転角度が360゜を大きく超えて、無制限に設定してしまうと、配線がねじれてしまい断線等の不具合が生じる。そこで、相対回転角度を規制する必要がある。かかる回転角度を規制する場合の構成を図6に概念的に示す。
【0004】
第1連結部100に対して第2連結部200が相対回転可能に連結されている。第1連結部100には、ストッパーピン101が固定して取り付けられている。第2連結部200には、規制突起201が一体形成されている。図6の状態では、第2連結部200は、これ以上時計方向には回転できないが、反時計方向には回転可能である。反時計方向に角度α回転した後、ストッパーピン101に、反対側から当接して、これ以上、反時計方向に回転できない状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−5635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の構成の場合、第2連結部200が相対回転できる角度αは360゜以下である。これは、ストッパーピン101の大きさが有限である以上、原理的に360゜を超えることはできない。しかし、実際には、360゜を超える相対回転角度を実現したいという要望がある。これにより、ロボットとしての作動範囲が広がり、さらに自由度が高まるからである。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、ロボットの関節装置において、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を規制する機構を持ちながらも、360゜を超える相対回転角度を実現できる関節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る関節装置は、
第1連結部と第2連結部を軸受部を介して、回転軸に対し相対回転可能に連結したロボットの関節装置であって、
第1連結部または第2連結部の一方に設けられた第1ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部の他方に設けられた第2ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部に、前記回転軸と同心でフリーに回転可能な中間部材と、を備え、
前記中間部材は、前記第1ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第1回転角度(θ1)だけ回転可能にする第1回転規制部と、
前記第2ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第2回転角度(θ2)だけ回転可能にする第2回転規制部と、を備えており、
前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか一方により、それ以上の回転が規制された後も、前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか他方により回転が規制されるまで、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで許容するように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成による関節装置の作用・効果を説明する。説明の便宜上、第1連結部に第1ストッパー部材が設けられ、第2連結部に第2ストッパー部材が設けられているものとして説明する。本発明としては、第1連結部に第2ストッパー部材が、第2連結部に第1ストッパー部材が設けられていてもよい。そして、中間部材が設けられているところに本発明の特徴がある。この中間部材は、第1ストッパー部材に対して当接する第1回転規制部を設けており、これにより、第1回転角度(θ1)の相対回転が可能になる。また、第2ストッパー部材に対して当接する第2回転規制部を設けており、これにより、第2回転角度(θ2)の相対回転が可能になる。
【0010】
例えば、第2連結部を回転させて第2回転規制部により、それ以上の回転が規制された後も、第1回転規制部により回転が規制されるまで、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで可能にしている。例えば、θ1とθ2は、いずれも360゜を超えることができないのは前述の通りである。しかし、上記のように構成すれば、(θ1+θ2)で360゜を超える回転角度を実現できる。以上のように、中間部材を設けるという簡素な構成ながらも、360゜を超える相対回転角度を実現できる関節装置を提供することができる。
【0011】
本発明において、前記中間部材は、リング状に形成され、外径側に前記第1回転規制部としての突出部が形成され、内径側に前記第2回転規制部としての円弧状凹部が形成されていることが好ましい。
【0012】
このように、リング状の中間部材とすることで、第1・第2回転規制部の構成を内径側と外径側に効率よく配置することできる。従って、関節装置自体も大型化せずに、中間部材を配置することができる。
【0013】
本発明において、前記第1ストッパー部材と第2ストッパー部材は、夫々、軸状の部材として形成されていることが好ましい。
【0014】
軸状の部材とすることで、第1連結部や第2連結部への形成も容易に行うことができ、配置スペースも抑制することができる。なお、軸状部材としては、円筒、円柱、角柱等、種々の形状により形成することができ、特定の形状に限定されるものではない。
【0015】
本発明において、前記中間部材の前記内径側が、第1連結部または第2連結部に設けられた円筒状突出部に嵌合されることが好ましい。
【0016】
かかる構成により、中間部材を回転自在に取り付けることができる。また、中間部材を嵌合取り付けするための特別な部材も必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るロボットの関節装置を有するロボットのアームを示す断面図
【図2】関節装置の構成を示す断面図
【図3】関節装置の構成を示す外観斜視図
【図4A】中間リングの作用を説明する図
【図4B】中間リングの作用を説明する図
【図4C】中間リングの作用を説明する図
【図4D】中間リングの作用を説明する図
【図5A】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図5B】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図5C】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図5D】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図6】従来技術の問題点を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るロボットの関節装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明に係るロボットの関節装置を有するロボットのアームを示す断面図である。図2は、関節装置の構成を示す断面図である。図3は、関節装置の構成を示す外観斜視図(図1,図2に示す装置を下部から見た図)である。
【0019】
<関節装置の構成>
ロボットを構成する第1アームA1と第2アームA2が関節装置Bにより互いに回転可能に連結されている。関節装置Bは、第1連結部1と第2連結部2を備えている。また、第1連結部1と第2連結部2の間には、ラジアル軸受3と、上下のスラスト軸受4,5が介在されている。第1連結部1と第2連結部2は、垂直な回転軸周りに相対回転可能に構成されている。
【0020】
<第1連結部>
第1連結部1は、第1本体10と第2本体11により構成され、第2本体11は平板状に形成される。第1本体10と第2本体11を結合したとき、内面側に軸受収容凹部1aが形成される。第2本体11の底面11aは、ラジアル軸受3の上端部を受け止め、かつ、位置決めする。第2本体11の表面11bは、スラスト軸受4を受け止め、かつ、位置決めする。
【0021】
第1本体10の軸受収容凹部1aを形成する上面10aは、ラジアル軸受3の下端部を受け止め、かつ、位置決めする。第1本体10の底面10bは、スラスト軸受5を受け止め、かつ、位置決めする。
【0022】
第1本体10には、図3に示すように、径方向に張り出した(フランジ状の)大径部10cが設けられている。この大径部10cの表面に、第1ストッパー部材として機能する第1ストッパーピン6が圧入等の方法により植設されている。
【0023】
<第2連結部>
第2連結部2は、第1本体20と、第2本体21と、第3本体22を結合して構成される。第1本体20は、円筒状であり、その中心部は配線を通すための空間として機能する。第1本体20の外周面20aは、ラジアル軸受3が嵌合する。段差部20bにより、ラジアル軸受3の位置決めを行っている。
【0024】
第2本体21は、ボルト23により、第1本体20の上端面に結合される。第2本体21の裏面21aは、スラスト軸受4を受け止め、かつ、位置決めする。第2本体21は、平板状の上面21bと円筒状の側面21cと、フランジ状の大径部21dが一体形成されて構成される。大径部21dは、第1連結部1の大径部10cと同じ外径を有しており、互いに近接して向かい合っている。
【0025】
第3本体22は、平板状であり、第1本体20の下端面とボルト24により結合される。第3本体22の裏面(上面)22aは、スラスト軸受5を受け止め、かつ、位置決めする。第3本体の側面には、歯部22bが形成され、後述するベルトが係合する。第3本体22の底面(下面)22cには段差部22dが形成され、中間リング7(中間部材に相当)が回転自在に嵌合される。第3本体22の中央部にも配線を通すための貫通孔が形成されている。
【0026】
第3本体22の底面には、第2ストッパー部材として機能する第2ストッパーピン8が圧入等により植設されている。
【0027】
中間リング7は、リング状本体7aの内径部が第3本体22の段差部22dに嵌合している。中間リング7の外周面には第1回転規制部として機能する突出部7bが一体形成される。突出部7bには、第1ストッパーピン6に直接当接可能な第1当接面7cと第2当接面7dが形成されている。
【0028】
中間リング7の内周面には、第2回転規制部として機能する円弧状凹部7eが形成されている。円弧状凹部7eには、第2ストッパーピン8に直接当接可能な第1当接面7fと第2当接面7gが形成されている。
【0029】
図1に示すように、第2連結部2の第3本体22の下面に、連動ギヤ30が結合されている。連動ギヤ30の回転軸は垂直に設定されている。この連動ギヤ30と噛み合う駆動ギヤ31が駆動軸32に軸支されている。駆動ギヤ31の回転軸は水平に設定されている。なお、連動ギヤ30には、回転位置検出機構(不図示)が設けられており、連動ギヤ30の回転位置、すなわち、第2連結部2の回転位置が検出される。駆動軸32は、不図示のモータにより回転駆動される。
【0030】
第1アームA1を構成する部品は、カバー部材40の内部に収容される。第1連結部1の第1本体10は、カバー部材40の軸受部40aの位置に取り付けられている。第2アームA2を構成する部品は、カバー部材41の内部に収容される。カバー部材41の軸受部41aに第2連結部2の第2本体21が結合される。これにより、駆動軸32を駆動することで、第2連結部2が回転し、第2アームA2が回転駆動される。
【0031】
<中間リングの作用(1)>
次に、本発明の特徴である中間リング7の作用について説明する。図4A〜4Dは、第2連結部2を回転させていくときの様子を示す図であり、図1,図2に示す装置を下部から見た図である。図4Aの位置では、突出部7bの第1当接部7cは、第1連結部1の第1ストッパーピン6に当接している。また、円弧状凹部7eの第1当接部7fが第2ストッパーピン8に当接している。第2ストッパーピン8を時計方向に回転しようとしても、これ以上は回転できない。
【0032】
図4Aの状態から第2連結部2を反時計方向に回転させる。すると、図4Bに示すように、第2ストッパーピン8が反時計方向に回転し、第2ストッパーピン8が円弧状凹部7eの第2当接部7gに当接する。この時の、第2ストッパーピン8の回転角度はθ2である。なお、第1ストッパーピン6と第1当接部7cとの位置関係に変更はない。
【0033】
更に、第2連結部2を回転させると、図4Cに示すように、第2ストッパーピン8が円弧状凹部7eの第2当接部7gを押しながら、中間リング7を反時計方向に回転させる。そして、図4Dに示すように、突出部7bの第2当接部7dが第1ストッパーピン6に当接した時点で、これ以上反時計方向には回転できなくなる。中間リング7が回転する角度はθ1である。
【0034】
従って、第2連結部2は第1連結部1に対して、(θ1+θ2)の角度だけ、回転できる。θ1もθ2も原理的に360゜を超えることはできないが、(θ1+θ2)は360゜を超えることができる。第2連結部2を時計方向に回転させるときの動作は、上記とは逆に、図4D〜図4Aをたどることになる。
【0035】
図2に示すように、第2連結部2の中央部は配線を通すための空間として使用される。従って、第2連結部2を第1連結部1に対して回転させる場合、無限に回転可能に構成すると、配線がねじれてしまい断線等の不具合が生じる。そこで、ストッパーピン等を設けることで、相対回転角度を規制している。
【0036】
一方、単にストッパーピンを設けるだけの構成では、回転可能な角度は360゜以下になる。しかし、実際には、360゜を超える回転角度を実現したいという要望がある。上記のように、中間リング7を設けることで、360゜を超える回転角度を実現することができる。これにより、ロボットとしての作動範囲が広がり、さらに自由度が高まる。
【0037】
<中間リングの作用(2)>
上記実施形態では、第1連結部1が固定で第2連結部2が回転する構成を説明した。これとは逆に第1連結部1が回転し第2連結部2が固定されている場合の作用を図5A〜5Dにより説明する。すなわち、第1連結部1の方に駆動源が接続されている場合の動作を説明する。図5も図4と同様に、装置の下部から見た図である。
【0038】
図5Aに示す状態は図4Aと同じである。第1連結部1の第1ストッパーピン6がこの状態から時計方向へ回転する。図5Bは回転している途中である。図5Cは更に回転して、第1ストッパーピン6が突出部7dの第1当接部7bに当接した状態である。第1ストッパーピン6が回転した角度はθ1である。
【0039】
この状態から更に第1連結部1を回転させていくと、第1ストッパーピン6が中間リング7を更に押して、中間リング7を時計方向へ回転させる。これにより、円弧状凹部7eの第1当接部7fが第2ストッパーピン8から離れていき、図5Dに示すように、第2当接部7gが第2ストッパーピン8に当接する。これにより、第1ストッパーピン6は、これ以上、時計方向へ回転することができなくなる。この場合も、第1連結部1は第2連結部2に対して、(θ1+θ2)の角度だけ、回転でき、(θ1+θ2)は360゜を超えることができる。
【0040】
<別実施形態>
本発明に係る関節装置が用いられるロボットについては、特定の用途に限定されるものではない。本実施形態において中間リング7は、第2連結部2に設けられているが、第1連結部1に設けるようにしてもよい。本実施形態では、θ1がθ2よりもかなり大きな角度で設定されているが、角度配分については、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0041】
A1 第1アーム
A2 第2アーム
1 第1連結部
2 第2連結部
3 ラジアル軸受
4 スラスト軸受
5 スラスト軸受
6 第1ストッパーピン
7 中間リング
7b 突出部
7c 第1当接面
7d 第2当接面
7e 円弧状凹部
7f 第1当接面
7g 第2当接面
8 第2ストッパーピン
10 第1本体
11 第2本体
20 第1本体
21 第2本体
22 第3本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1連結部と第2連結部を軸受部を介して、共通の回転軸に対し相対回転可能に連結したロボットの関節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用のロボットは、人間の行う作業を自動化したり、部品組み立て作業や検査などの種々の目的で用いられている(例えば、下記特許文献1)。かかるロボットにおいては、関節装置を設けることが不可欠であり、第1連結部と第2連結部とが、軸受部を介して相対回転可能に連結されている。
【0003】
かかる場合において、上記相対回転の角度を制限する必要がある場合がある。例えば、連結部を介して配線を通す場合である。相対回転角度が360゜を大きく超えて、無制限に設定してしまうと、配線がねじれてしまい断線等の不具合が生じる。そこで、相対回転角度を規制する必要がある。かかる回転角度を規制する場合の構成を図6に概念的に示す。
【0004】
第1連結部100に対して第2連結部200が相対回転可能に連結されている。第1連結部100には、ストッパーピン101が固定して取り付けられている。第2連結部200には、規制突起201が一体形成されている。図6の状態では、第2連結部200は、これ以上時計方向には回転できないが、反時計方向には回転可能である。反時計方向に角度α回転した後、ストッパーピン101に、反対側から当接して、これ以上、反時計方向に回転できない状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−5635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の構成の場合、第2連結部200が相対回転できる角度αは360゜以下である。これは、ストッパーピン101の大きさが有限である以上、原理的に360゜を超えることはできない。しかし、実際には、360゜を超える相対回転角度を実現したいという要望がある。これにより、ロボットとしての作動範囲が広がり、さらに自由度が高まるからである。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、ロボットの関節装置において、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を規制する機構を持ちながらも、360゜を超える相対回転角度を実現できる関節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る関節装置は、
第1連結部と第2連結部を軸受部を介して、回転軸に対し相対回転可能に連結したロボットの関節装置であって、
第1連結部または第2連結部の一方に設けられた第1ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部の他方に設けられた第2ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部に、前記回転軸と同心でフリーに回転可能な中間部材と、を備え、
前記中間部材は、前記第1ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第1回転角度(θ1)だけ回転可能にする第1回転規制部と、
前記第2ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第2回転角度(θ2)だけ回転可能にする第2回転規制部と、を備えており、
前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか一方により、それ以上の回転が規制された後も、前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか他方により回転が規制されるまで、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで許容するように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成による関節装置の作用・効果を説明する。説明の便宜上、第1連結部に第1ストッパー部材が設けられ、第2連結部に第2ストッパー部材が設けられているものとして説明する。本発明としては、第1連結部に第2ストッパー部材が、第2連結部に第1ストッパー部材が設けられていてもよい。そして、中間部材が設けられているところに本発明の特徴がある。この中間部材は、第1ストッパー部材に対して当接する第1回転規制部を設けており、これにより、第1回転角度(θ1)の相対回転が可能になる。また、第2ストッパー部材に対して当接する第2回転規制部を設けており、これにより、第2回転角度(θ2)の相対回転が可能になる。
【0010】
例えば、第2連結部を回転させて第2回転規制部により、それ以上の回転が規制された後も、第1回転規制部により回転が規制されるまで、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで可能にしている。例えば、θ1とθ2は、いずれも360゜を超えることができないのは前述の通りである。しかし、上記のように構成すれば、(θ1+θ2)で360゜を超える回転角度を実現できる。以上のように、中間部材を設けるという簡素な構成ながらも、360゜を超える相対回転角度を実現できる関節装置を提供することができる。
【0011】
本発明において、前記中間部材は、リング状に形成され、外径側に前記第1回転規制部としての突出部が形成され、内径側に前記第2回転規制部としての円弧状凹部が形成されていることが好ましい。
【0012】
このように、リング状の中間部材とすることで、第1・第2回転規制部の構成を内径側と外径側に効率よく配置することできる。従って、関節装置自体も大型化せずに、中間部材を配置することができる。
【0013】
本発明において、前記第1ストッパー部材と第2ストッパー部材は、夫々、軸状の部材として形成されていることが好ましい。
【0014】
軸状の部材とすることで、第1連結部や第2連結部への形成も容易に行うことができ、配置スペースも抑制することができる。なお、軸状部材としては、円筒、円柱、角柱等、種々の形状により形成することができ、特定の形状に限定されるものではない。
【0015】
本発明において、前記中間部材の前記内径側が、第1連結部または第2連結部に設けられた円筒状突出部に嵌合されることが好ましい。
【0016】
かかる構成により、中間部材を回転自在に取り付けることができる。また、中間部材を嵌合取り付けするための特別な部材も必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るロボットの関節装置を有するロボットのアームを示す断面図
【図2】関節装置の構成を示す断面図
【図3】関節装置の構成を示す外観斜視図
【図4A】中間リングの作用を説明する図
【図4B】中間リングの作用を説明する図
【図4C】中間リングの作用を説明する図
【図4D】中間リングの作用を説明する図
【図5A】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図5B】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図5C】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図5D】別実施形態に係る中間リングの作用を説明する図
【図6】従来技術の問題点を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るロボットの関節装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明に係るロボットの関節装置を有するロボットのアームを示す断面図である。図2は、関節装置の構成を示す断面図である。図3は、関節装置の構成を示す外観斜視図(図1,図2に示す装置を下部から見た図)である。
【0019】
<関節装置の構成>
ロボットを構成する第1アームA1と第2アームA2が関節装置Bにより互いに回転可能に連結されている。関節装置Bは、第1連結部1と第2連結部2を備えている。また、第1連結部1と第2連結部2の間には、ラジアル軸受3と、上下のスラスト軸受4,5が介在されている。第1連結部1と第2連結部2は、垂直な回転軸周りに相対回転可能に構成されている。
【0020】
<第1連結部>
第1連結部1は、第1本体10と第2本体11により構成され、第2本体11は平板状に形成される。第1本体10と第2本体11を結合したとき、内面側に軸受収容凹部1aが形成される。第2本体11の底面11aは、ラジアル軸受3の上端部を受け止め、かつ、位置決めする。第2本体11の表面11bは、スラスト軸受4を受け止め、かつ、位置決めする。
【0021】
第1本体10の軸受収容凹部1aを形成する上面10aは、ラジアル軸受3の下端部を受け止め、かつ、位置決めする。第1本体10の底面10bは、スラスト軸受5を受け止め、かつ、位置決めする。
【0022】
第1本体10には、図3に示すように、径方向に張り出した(フランジ状の)大径部10cが設けられている。この大径部10cの表面に、第1ストッパー部材として機能する第1ストッパーピン6が圧入等の方法により植設されている。
【0023】
<第2連結部>
第2連結部2は、第1本体20と、第2本体21と、第3本体22を結合して構成される。第1本体20は、円筒状であり、その中心部は配線を通すための空間として機能する。第1本体20の外周面20aは、ラジアル軸受3が嵌合する。段差部20bにより、ラジアル軸受3の位置決めを行っている。
【0024】
第2本体21は、ボルト23により、第1本体20の上端面に結合される。第2本体21の裏面21aは、スラスト軸受4を受け止め、かつ、位置決めする。第2本体21は、平板状の上面21bと円筒状の側面21cと、フランジ状の大径部21dが一体形成されて構成される。大径部21dは、第1連結部1の大径部10cと同じ外径を有しており、互いに近接して向かい合っている。
【0025】
第3本体22は、平板状であり、第1本体20の下端面とボルト24により結合される。第3本体22の裏面(上面)22aは、スラスト軸受5を受け止め、かつ、位置決めする。第3本体の側面には、歯部22bが形成され、後述するベルトが係合する。第3本体22の底面(下面)22cには段差部22dが形成され、中間リング7(中間部材に相当)が回転自在に嵌合される。第3本体22の中央部にも配線を通すための貫通孔が形成されている。
【0026】
第3本体22の底面には、第2ストッパー部材として機能する第2ストッパーピン8が圧入等により植設されている。
【0027】
中間リング7は、リング状本体7aの内径部が第3本体22の段差部22dに嵌合している。中間リング7の外周面には第1回転規制部として機能する突出部7bが一体形成される。突出部7bには、第1ストッパーピン6に直接当接可能な第1当接面7cと第2当接面7dが形成されている。
【0028】
中間リング7の内周面には、第2回転規制部として機能する円弧状凹部7eが形成されている。円弧状凹部7eには、第2ストッパーピン8に直接当接可能な第1当接面7fと第2当接面7gが形成されている。
【0029】
図1に示すように、第2連結部2の第3本体22の下面に、連動ギヤ30が結合されている。連動ギヤ30の回転軸は垂直に設定されている。この連動ギヤ30と噛み合う駆動ギヤ31が駆動軸32に軸支されている。駆動ギヤ31の回転軸は水平に設定されている。なお、連動ギヤ30には、回転位置検出機構(不図示)が設けられており、連動ギヤ30の回転位置、すなわち、第2連結部2の回転位置が検出される。駆動軸32は、不図示のモータにより回転駆動される。
【0030】
第1アームA1を構成する部品は、カバー部材40の内部に収容される。第1連結部1の第1本体10は、カバー部材40の軸受部40aの位置に取り付けられている。第2アームA2を構成する部品は、カバー部材41の内部に収容される。カバー部材41の軸受部41aに第2連結部2の第2本体21が結合される。これにより、駆動軸32を駆動することで、第2連結部2が回転し、第2アームA2が回転駆動される。
【0031】
<中間リングの作用(1)>
次に、本発明の特徴である中間リング7の作用について説明する。図4A〜4Dは、第2連結部2を回転させていくときの様子を示す図であり、図1,図2に示す装置を下部から見た図である。図4Aの位置では、突出部7bの第1当接部7cは、第1連結部1の第1ストッパーピン6に当接している。また、円弧状凹部7eの第1当接部7fが第2ストッパーピン8に当接している。第2ストッパーピン8を時計方向に回転しようとしても、これ以上は回転できない。
【0032】
図4Aの状態から第2連結部2を反時計方向に回転させる。すると、図4Bに示すように、第2ストッパーピン8が反時計方向に回転し、第2ストッパーピン8が円弧状凹部7eの第2当接部7gに当接する。この時の、第2ストッパーピン8の回転角度はθ2である。なお、第1ストッパーピン6と第1当接部7cとの位置関係に変更はない。
【0033】
更に、第2連結部2を回転させると、図4Cに示すように、第2ストッパーピン8が円弧状凹部7eの第2当接部7gを押しながら、中間リング7を反時計方向に回転させる。そして、図4Dに示すように、突出部7bの第2当接部7dが第1ストッパーピン6に当接した時点で、これ以上反時計方向には回転できなくなる。中間リング7が回転する角度はθ1である。
【0034】
従って、第2連結部2は第1連結部1に対して、(θ1+θ2)の角度だけ、回転できる。θ1もθ2も原理的に360゜を超えることはできないが、(θ1+θ2)は360゜を超えることができる。第2連結部2を時計方向に回転させるときの動作は、上記とは逆に、図4D〜図4Aをたどることになる。
【0035】
図2に示すように、第2連結部2の中央部は配線を通すための空間として使用される。従って、第2連結部2を第1連結部1に対して回転させる場合、無限に回転可能に構成すると、配線がねじれてしまい断線等の不具合が生じる。そこで、ストッパーピン等を設けることで、相対回転角度を規制している。
【0036】
一方、単にストッパーピンを設けるだけの構成では、回転可能な角度は360゜以下になる。しかし、実際には、360゜を超える回転角度を実現したいという要望がある。上記のように、中間リング7を設けることで、360゜を超える回転角度を実現することができる。これにより、ロボットとしての作動範囲が広がり、さらに自由度が高まる。
【0037】
<中間リングの作用(2)>
上記実施形態では、第1連結部1が固定で第2連結部2が回転する構成を説明した。これとは逆に第1連結部1が回転し第2連結部2が固定されている場合の作用を図5A〜5Dにより説明する。すなわち、第1連結部1の方に駆動源が接続されている場合の動作を説明する。図5も図4と同様に、装置の下部から見た図である。
【0038】
図5Aに示す状態は図4Aと同じである。第1連結部1の第1ストッパーピン6がこの状態から時計方向へ回転する。図5Bは回転している途中である。図5Cは更に回転して、第1ストッパーピン6が突出部7dの第1当接部7bに当接した状態である。第1ストッパーピン6が回転した角度はθ1である。
【0039】
この状態から更に第1連結部1を回転させていくと、第1ストッパーピン6が中間リング7を更に押して、中間リング7を時計方向へ回転させる。これにより、円弧状凹部7eの第1当接部7fが第2ストッパーピン8から離れていき、図5Dに示すように、第2当接部7gが第2ストッパーピン8に当接する。これにより、第1ストッパーピン6は、これ以上、時計方向へ回転することができなくなる。この場合も、第1連結部1は第2連結部2に対して、(θ1+θ2)の角度だけ、回転でき、(θ1+θ2)は360゜を超えることができる。
【0040】
<別実施形態>
本発明に係る関節装置が用いられるロボットについては、特定の用途に限定されるものではない。本実施形態において中間リング7は、第2連結部2に設けられているが、第1連結部1に設けるようにしてもよい。本実施形態では、θ1がθ2よりもかなり大きな角度で設定されているが、角度配分については、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0041】
A1 第1アーム
A2 第2アーム
1 第1連結部
2 第2連結部
3 ラジアル軸受
4 スラスト軸受
5 スラスト軸受
6 第1ストッパーピン
7 中間リング
7b 突出部
7c 第1当接面
7d 第2当接面
7e 円弧状凹部
7f 第1当接面
7g 第2当接面
8 第2ストッパーピン
10 第1本体
11 第2本体
20 第1本体
21 第2本体
22 第3本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1連結部と第2連結部を軸受部を介して、回転軸に対し相対回転可能に連結したロボットの関節装置であって、
第1連結部または第2連結部の一方に設けられた第1ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部の他方に設けられた第2ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部に、前記回転軸と同心でフリーに回転可能な中間部材と、を備え、
前記中間部材は、前記第1ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第1回転角度(θ1)だけ回転可能にする第1回転規制部と、
前記第2ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第2回転角度(θ2)だけ回転可能にする第2回転規制部と、を備えており、
前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか一方により、それ以上の回転が規制された後も、前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか他方により回転が規制されるまで、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで許容するように構成したことを特徴とする関節装置。
【請求項2】
前記中間部材は、リング状に形成され、外径側に前記第1回転規制部としての突出部が形成され、内径側に前記第2回転規制部としての円弧状凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の関節装置。
【請求項3】
前記第1ストッパー部材と第2ストッパー部材は、夫々、軸状の部材として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の関節装置。
【請求項4】
前記中間部材の前記内径側が、第1連結部または第2連結部に設けられた円筒状突出部に嵌合されることを特徴とする請求項2に記載の関節装置。
【請求項1】
第1連結部と第2連結部を軸受部を介して、回転軸に対し相対回転可能に連結したロボットの関節装置であって、
第1連結部または第2連結部の一方に設けられた第1ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部の他方に設けられた第2ストッパー部材と、
第1連結部または第2連結部に、前記回転軸と同心でフリーに回転可能な中間部材と、を備え、
前記中間部材は、前記第1ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第1回転角度(θ1)だけ回転可能にする第1回転規制部と、
前記第2ストッパー部材に対して時計方向から当接する位置と反時計方向から当接する位置との間で第2回転角度(θ2)だけ回転可能にする第2回転規制部と、を備えており、
前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか一方により、それ以上の回転が規制された後も、前記第1回転規制部と第2回転規制部のいずれか他方により回転が規制されるまで、第1連結部と第2連結部の相対回転角度を最大で、(θ1+θ2)まで許容するように構成したことを特徴とする関節装置。
【請求項2】
前記中間部材は、リング状に形成され、外径側に前記第1回転規制部としての突出部が形成され、内径側に前記第2回転規制部としての円弧状凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の関節装置。
【請求項3】
前記第1ストッパー部材と第2ストッパー部材は、夫々、軸状の部材として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の関節装置。
【請求項4】
前記中間部材の前記内径側が、第1連結部または第2連結部に設けられた円筒状突出部に嵌合されることを特徴とする請求項2に記載の関節装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【公開番号】特開2012−183619(P2012−183619A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49221(P2011−49221)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000236964)富士インパルス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000236964)富士インパルス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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