説明

防・耐火パネル及び防火戸

【課題】長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性に優れる防・耐火パネル
及び防火戸を提供すること。
【解決手段】
熱膨張性無機耐火材の少なくとも一方の面に木質板を設けた積層体であって、
前記熱膨張性無機耐火材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
前記熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000
℃の範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする防・耐火パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防・耐火パネル及び防火戸に関し、特に熱膨張性無機耐火材を有する防・耐
火パネル及び防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から扉としては、木質材料、又は金属材料が使われている。このうち木質材料から
なる扉は、その意匠性が優れていることから好適に用いられている。しかしながら、木質
材料の場合、火災が発生したときにそれ自体が燃えやすく、類焼が発生するという問題が
あった。このため、木質材料に防・耐火性を付与するために、甲種防火戸のような木質板
とガラス繊維混入ケイ酸カルシウム板やセメント板とを複合した防火戸が作られているが
、防・耐火性を発現させるために厚みが厚くなると同時に重量が重くなり過ぎるという問
題があった。
この問題に対応するために、熱可塑性樹脂等を含有する熱膨張性耐火材を有する防・耐
火パネル及び防火戸が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この一方、前記扉は建物の開口部内周に設けられた枠体に対して蝶番などを介して開閉
自在に吊り込まれていることが通常である。
この場合、枠体と前記扉との間には、一定の隙間が形成されており、火災によって温度
が上昇した場合に前記扉が反ったり、変形すると、前記枠体との隙間が大きくなり、火炎
が一方側から他方側に侵入し、火災がより大きくなるという問題がある。
この問題に対応するために、ブチルゴム等を含有する熱膨張性耐火材を有する防火戸が
提案されている(特許文献2)。
【0004】
さらにこれらの先行技術に加えて、ロックウール50〜90重量%、熱膨張性無機粉末
5〜25重量%、焼結性無機質材5〜10重量%および有機質バインダー2〜10重量%
の組成物の水分スラリーを湿式抄造して得られる熱膨張性無機質繊維フェルトがこれまで
に提案されている。
この熱膨張性無機質繊維フェルトは火災等による熱を受ける前と受けた後ではその形状
が大きく変化する。このため火災等の熱により前記熱膨張性無機質繊維フェルトが膨張し
た後であっても、膨張後の前記熱膨張性無機質繊維フェルトが容易に崩れ落ちたりしない
様に、前記熱膨張性無機質繊維フェルトには焼結性無機質材が必須の構成要素とされてい
る。
この焼結性無機質材は、前記ロックウールと火災等の熱により焼結一体化する。この焼
結一体化により膨張後の前記熱膨張性無機質繊維フェルトが短時間の間に崩れ落ちたりす
ることを防止することができる。
このことから前記熱膨張性無機質繊維フェルトを、耐火性シール材等に応用することが
できるとされる(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−146942号公報
【特許文献2】特開2001−107655号公報
【特許文献3】特開2000−199194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記に説明した熱可塑性樹脂等を含有する熱膨張性耐火材に替えて、ある
いは上記に説明したブチルゴム等を含有する熱膨張性耐火材に替えて、単に前記熱膨張性
無機質繊維フェルトを使用すると問題が生じた。
すなわち、前記熱膨張性無機質繊維フェルトの場合の様に、融点が75℃のホウ砂等や
、あるいは融点が1300℃を超えるセピオライト等の焼結性無機質材を前記熱膨張性無
機質繊維フェルトに使用した場合には、火災等の熱により前記熱膨張性無機質材料が十分
に膨張する前に前記焼結性無機質材と前記無機繊維とが焼結一体化してしまったり、逆に
前記熱膨張性無機質材料が十分に膨張した後になっても、前記焼結性無機質材と前記無機
繊維とが十分に焼結一体化しないことがあり、長時間高温にさらされた場合の形状保持性
が未だ十分ではないとの問題があった。
本発明の目的は、長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性に優れる防・
耐火パネル及び防火戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、融点が650〜1000℃
の範囲であるという、特定の融点を有する焼結性無機質材を含む下記の熱膨張性無機耐火
材を備えた防・耐火パネル及び防火戸が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成
するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
[1]熱膨張性無機耐火材の少なくとも一方の面に木質板を設けた積層体であって、
前記熱膨張性無機耐火材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
前記熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000
℃の範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする防・耐火パネルを提供するもの
であり、
[2]難燃性材料、不燃性材料または準不燃性材料の両方の面に、上記[1]に記載の積
層体を設けてなることを特徴とする防・耐火パネルを提供するものであり、
[3]難燃性材料、不燃性材料または準不燃性材料の両方の面に、内側から外側に向かっ
て熱膨張性耐火材、木質板の順に積層体を設けてなることを特徴とする、上記[2]に記
載の防・耐火パネルを提供するものであり、
[4]前記熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、二酸化ケイ素50〜
60重量%、酸化アルミニウム10〜20重量%、酸化カルシウム10〜20重量%、酸
化マグネシウム1〜10重量%および酸化ホウ素8〜13重量%を含有する焼結性無機質
材からなることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の防・耐火パネルを
提供するものであり、
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の防・耐火パネルからなる防火戸を提供する
ものであり、
[6]建物の開口部内周に設けられた枠体と、
前記枠体に開閉自在に取り付けられた扉と、
前記扉の外周面および/または前記枠体の内周面に設置される、熱膨張性無機耐火材と、
から構成され、
前記熱膨張性無機耐火材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000℃の
範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする防火戸を提供するものであり、
[7]前記扉が、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の防・耐火パネルからなることを
特徴とする、上記[6]に記載の防火戸を提供するものであり、
[8]前記熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、二酸化ケイ素50〜
60重量%、酸化アルミニウム10〜20重量%、酸化カルシウム10〜20重量%、酸
化マグネシウム1〜10重量%および酸化ホウ素8〜13重量%を含有する焼結性無機質
材からなることを特徴とする、上記[6]または[7]に記載の防火戸を提供するもので
あり、
[9]前記扉の外周面または前記枠体の内周面に設置された前記熱膨張性無機耐火材の最
外表面に化粧層が積層されていることを特徴とする、上記[6]〜[8]のいずれかに記
載の防火戸を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性に優れる防・
耐火パネル及び防火戸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の防・耐火パネルは、熱膨張性無機耐火材の少なくとも一方の面に木質材を設け
た積層体である。また本発明の防・耐火パネルの変形例としては、例えば、難燃性材料、
不燃性材料または準不燃性材料(以下、「難燃性材料等」という。)の両面に前記積層体
を設けたものを挙げることができる。
この様な本発明の防・耐火パネルは前記熱膨張性無機耐火材を使用するものであるが、
この熱膨張性無機耐火材は、無機繊維、熱膨張性無機物、無機質バインダーおよび有機質
バインダーからなるものである。
【0010】
最初に前記熱膨張性無機耐火材に使用する無機繊維について説明する。
本発明に使用する無機繊維としては、例えば、セラミック繊維等を挙げることができる。
この様なセラミック繊維としては、例えば、具体的にはシリカアルミナ繊維、アルミナ
繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
かかるセラミック繊維は、耐熱性の観点から融点が1300℃以上のものが好ましく、
1500℃以上のものであればさらに好ましい。
なお本発明において融点という場合、純物質等の様にその融点を明確に示す物質につい
てはその融点を意味し、混合物等の様にその融点を明確に示さないものについては、JI
S R3103−1に準じて測定された軟化点を意味するものとする。
【0011】
前記無機繊維は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0012】
本発明に使用する無機繊維の配合量は、前記熱膨張性無機耐火材の重量を基準として、
55〜85重量%の範囲である。
前記無機繊維の配合量が55重量%未満の場合には断熱層の形状保持性が低下し、また
85重量%を超える場合には前記熱膨張性無機耐火材の製造作業性が低下する。
本発明に使用する無機繊維の配合量は、60〜80重量%の範囲であれば好ましい。
【0013】
前記無機繊維の直径は、通常0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜
30μmの範囲である。また前記無機繊維はシランカップリング剤等の集束剤により複数
の繊維を一本にまとめたものを使用することができる。
【0014】
前記無機繊維を得るための製造方法に限定はないが、例えば、この無機繊維の原料を軟
化させて線引きして得られた繊維を巻き取るロッド法、溶融させた前記原料をノズルから
排出し、得られた繊維を巻き取るポット法、有機溶剤に溶かした前記原料の前駆体を繊維
状にし、これをプレカーサーとして焼結して得られた繊維を巻き取る前駆ポリマー法等の
方法等を挙げることができる。これらの無機繊維として市販品を入手することができる。
【0015】
本発明に使用する無機繊維は、例えば、直線状のセラミック繊維を切断して得られたも
の、直線状のセラミック繊維を粉砕して得られたもの等を挙げることができる。
上記の直線状のセラミック繊維を切断して得られたものはチョップド無機繊維として市
販品を入手することができ、上記の直線状のセラミック繊維を粉砕して得られたものはミ
ルド無機繊維として市販品を入手することができる。
これらの無機繊維は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0016】
次に本発明に使用する熱膨張性無機物について説明する。
前記熱膨張性無機化合物としては、加熱時に膨張するものであれば特に限定はないが、
例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等が挙げられる。これらの
中でも発泡開始温度が低いことから熱膨張性黒鉛が好ましい。
【0017】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラフ
ァイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0018】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0019】
上記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメ
チルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0020】
上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナ
トリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0021】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度が2
00メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、十分な耐火断熱層が得られない
ことがあり、また、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという
利点はあるが、前記熱膨張性無機耐火材に保持されにくくなることがある。
【0022】
前記中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON
社製「GRAF GUARD」、東ソー社製「GREP−EG」等が挙げられる。
【0023】
前記熱膨張性無機物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0024】
本発明に使用する熱膨張性無機物の配合量は、本発明に使用する前記熱膨張性無機耐火
材の重量を基準として、5〜30重量%の範囲である。
前記熱膨張性無機物の配合量が5重量%未満の場合には燃焼後の膨張体積が少なく、十
分な耐火断熱層が得られない。また30重量%を超える場合には膨張後の前記熱膨張性無
機耐火材の強度が低下する。
本発明に使用する熱膨張性無機物の配合量は、10〜25重量%の範囲であれば好まし
い。
【0025】
次に本発明に使用する無機質バインダーについて説明する。
本発明に使用する無機質バインダーとしては、例えば、焼結性無機質材等を挙げること
ができる。
この焼結性無機質材の具体例としては、例えば、電気絶縁性ガラス等を例示することが
できる。
前記電気絶縁性ガラスとしては、具体的には二酸化ケイ素が50〜60重量%、酸化ア
ルミニウムが10〜20重量%、酸化カルシウムが10〜20重量%、酸化マグネシウム
が1〜10重量%、酸化ホウ素が8〜13重量%等の範囲で含まれるEガラスと呼ばれる
もの等を挙げることができる。
【0026】
本発明に使用する焼結性無機質材は、鉛金属塩およびアルカリ金属酸化物含有量が前記
焼結性無機質材の重量に対してそれぞれ1重量%未満のものであれば好ましい。
前記鉛金属塩としては、例えば、PbO、PbO、Pb等を挙げることができ
る。
また前記アルカリ金属酸化物としては、例えば、NaO、KO等を挙げることがで
きる。
【0027】
本発明に使用する焼結性無機質材の中でも前記Eガラスは、アルカリ金属酸化物含有量
が少なく、防・耐火パネルからなる防火戸等に対する影響が少ないことから好ましい。
【0028】
本発明に使用する焼結性無機質材は、650〜1000℃の範囲の融点を有するもので
ある。
これにより、本発明に使用する前記熱膨張性無機耐火材が火災等の熱により膨張した後
であっても前記熱膨張性無機耐火材に含まれる無機繊維等を一体のまとまりのある形状に
保つことができることに加え、長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性が
維持される。
前記融点が650℃未満の場合には、火災等の熱により、前記熱膨張性無機耐火材が十
分に膨張する前に前記焼結性無機質材と前記無機繊維とが焼結一体化するため、長時間高
温にさらされた場合の形状保持性に劣る。また前記融点が1000℃を超える場合には、
前記熱膨張性無機耐火材が十分に膨張した後になっても、前記焼結性無機質材と前記無機
繊維とが十分焼結一体化しないことがあり、同様に長時間高温にさらされた場合の形状保
持性に劣る。
前記融点の範囲は700〜900℃であれば好ましく、750〜850℃の範囲であれ
ばさらに好ましい。
【0029】
所望の融点を有する前記焼結性無機質材は、前記焼結性無機質材に含まれる成分の調整
を行なうことにより得ることができる。
例えば、具体的には前記Eガラスの場合であれば、二酸化ケイ素が55重量%、酸化ア
ルミニウムが15重量%、酸化カルシウムが15重量%、酸化マグネシウムが5重量%、
酸化ホウ素が10重量%等含まれる場合、その融点は700℃である。
【0030】
このEガラスに対し、その中に含まれる酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の量を増
加させることにより、このEガラスに含まれる二酸化ケイ素等の共有結合の割合を減少さ
せることができることから、前記Eガラスの融点を700℃以下に下げることができる。
【0031】
逆に、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の量を減少させることにより、このEガラ
スに含まれる二酸化ケイ素等の共有結合の割合を増加させることができることから、前記
Eガラスの融点を700℃以上に上げることが可能となる。
【0032】
本発明に使用する焼結性無機質材の配合量は、本発明に使用する前記熱膨張性無機耐火
材の重量を基準として、5〜25重量%の範囲である。
前記焼結性無機質材の配合量が5重量%未満の場合または25重量%を超える場合には、前記熱膨張性無機耐火材が長時間高温にさらされた場合、その形状保持性が低下する。
本発明に使用する焼結性無機質材の配合量は、10〜15重量%の範囲であれば好まし
い。
【0033】
前記焼結性無機質材の形状には特に限定はないが、例えば、繊維形状体、繊維形状体が
絡み合ったウール形状体、粉体形状体等を挙げることができる。
前記焼結性無機質材として繊維形状体を使用する場合には、前記繊維の直径は、通常0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜30μmの範囲である。この場合、前記繊維形状体はシランカップリング剤等の集束剤により複数の繊維を一本にまとめたものを使用することができる。
【0034】
この様な繊維形状体を得る方法としては特に限定はないが、例えば、この焼結性無機質
材の原料を軟化させて線引きして得られた繊維を巻き取るロッド法、溶融させた前記原料
をノズルから排出し、得られた繊維を巻き取るポット法等の方法等を挙げることができる。これらの方法により得られたもの等を市販品として入手することができる。
【0035】
また、前記焼結性無機質材として粉体形状体を使用する場合には、前記粉体状体の平均
粒径は、通常5〜500μmの範囲である。前記粉体状体は通常市販品として入手するこ
とができる。
前記焼結性無機質材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0036】
次に本発明に使用する有機質バインダーについて説明する。
本発明に使用する有機質バインダーに特に限定はないが、例えば、具体的にはポリプロ
ピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等
のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
ン系樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹
脂、エチレン−プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹
脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂類、
天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリ
ブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン
ゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン
ゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(
ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリ
コーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、
ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール
樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂類、
上記熱可塑性樹脂類、ゴム類等のラテックス類、
上記熱可塑性樹脂類、ゴム類等のエマルション類等を挙げることができる。
【0037】
中でも取り扱い性の面等から、ゴム類のラテックス類、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ア
クリル系樹脂エマルション等が好ましい。
【0038】
前記有機質バインダーは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0039】
本発明に使用する有機質バインダーの配合量は、本発明に使用する前記熱膨張性無機耐
火材の重量を基準として、5〜15重量%の範囲である。
有機質バインダーの配合量が5重量%未満の場合、前記熱膨張性無機耐火材を製造する
作業性が低下する。また15重量%を超える場合には、前記熱膨張性無機耐火材が長時間
高温にさらされた場合、その形状保持性が低下する。
本発明に使用する有機質バインダーの配合量は、5〜10重量%の範囲であれば好まし
い。
【0040】
また前記熱膨張性無機耐火材に対しては、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤、
酸化防止剤、難燃剤、無機充填材、粘着剤等の各種添加剤を使用することができる。
【0041】
次に本発明に使用する前記熱膨張性無機耐火材を製造する方法について説明する。
前記熱膨張性無機耐火材の製造方法については特に限定はないが、例えば、前記熱膨張
性無機耐火材の各成分を抄造法により板状形状、シート状形状とする方法、前記熱膨張性
無機耐火材の各成分と有機溶剤との混合物を成形した後、有機溶剤を除去することにより
板状形状、シート形状とする方法等が挙げられる。
【0042】
中でも、均質な前記熱膨張性無機耐火材を製造する観点から、抄造法による製造方法が
好ましく、この抄造法による製造方法の中でも吸着成形法による製造方法がさらに好まし
い。
【0043】
代表的な抄造法による前記熱膨張性無機耐火材の製造方法としては、例えば、次の工程
による製造方法を挙げることができる。
(1)先に説明した本発明に使用する前記熱膨張性無機耐火材の各成分を、ミキサーやミ
ル等の装置を用いて溶剤に分散し、前記各成分の溶剤スラリーを調製する。
(2)前記溶剤スラリーをロートフォーマー等の抄造機により抄造し、所望の形状に成形
する。
(3)必要に応じて前記溶剤スラリーを吸引、圧縮、遠心、加熱、送風等の手段により溶
剤分を除去する。
以上の工程により、本発明に使用する前記熱膨張性無機耐火材を得ることができる。
【0044】
次に吸着成形法による前記熱膨張性無機耐火材の製造方法について説明する。
この吸着成形法の一実施態様について、図1を参照しつつ具体的な工程を挙げて例示す
ると次の通りである。
(1)例えば、前記熱膨張性無機耐火材の各構成成分を溶解しない溶剤を準備しておき、
かかる溶剤中に前記熱膨張性無機耐火材の各構成成分を懸濁させたスラリー1を準備して
おく。
(2)前記スラリー1を吸入するための枠体吸入口2と、前記枠体吸引口2の一方の側に
備えられた前記スラリー1から前記熱膨張性無機耐火材の各構成成分を分離するための濾
過部材3と、前記濾過部材3を通して前記スラリー1から前記溶剤を回収するための吸引
装置4とを備えた吸着成形装置5により前記スラリーを吸引する。
(3)前記吸着成形装置5の前記枠体吸入口2から前記濾過手段3との間には、例えば、
スラリー1に含まれる無機繊維を一方向に配向させるための仕切りを設けることができる
(図示せず。)。この仕切りは各区画の一辺が他辺に比べて十分に長く設けられているた
め、吸引成形装置5の内部においてこの長い辺の方向に沿って無機繊維6が順次前記濾過
部材3側から堆積する。
なお説明の便宜上、図1においては無機繊維の長さは実際よりも長く描かれている。
前記仕切りは吸引操作終了後、もしくは吸引操作を行いながら前記枠体吸引口2から抜
き取ることにより、前記吸着成形装置5の内部には前記無機繊維が一定方向に略配向した
濾過物が形成される。
(4)吸引後、得られた濾過物に含まれる溶剤を吸引、圧縮、遠心、加熱、送風等の手段
により除去する。
(5)続いて切断等の手段を用いて、所望の形状に成形することができる。
以上の工程により、本発明に使用する前記熱膨張性無機耐火材を得ることができる。
【0045】
前記濾過部材としては、例えば、濾紙、濾布、フィルター、金属メッシュ等を有するも
の等を挙げることができる。
前記濾過部材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0046】
前記枠体吸入口の形状を適宜選択することにより、所望の形状の前記熱膨張性無機耐火
材を得ることができる。
【0047】
なお前記溶剤は、前記熱膨張性無機耐火材の各種成分を溶解しないものが好ましく、例
えば、水、メタノール等を挙げることができる。これらの中でも取り扱い性の面から、前
記溶剤は水であることが好ましい。
【0048】
上記の操作により前記スラリーを吸引する際に、吸引方向に無機繊維の配向方向を揃え
ることができ、前記熱膨張性無機耐火材中に含まれる無機繊維を、前記熱膨張性無機耐火
材の表面に対する法線方向に略配向させることができる。
【0049】
前記無機繊維が前記熱膨張性無機耐火材の表面に対する法線方向に略配向することによ
り、前記熱膨張性無機耐火材は、前記熱膨張性無機耐火材の厚み方向に比べて、前記熱膨
張性無機耐火材の表面方向に大きく膨張する。
これにより、前記熱膨張性無機耐火材の一部に開口部や、前記木質板等の一部分に前記
熱膨張性無機耐火材により覆われていない箇所があったとしても、これらの開口部や覆わ
れていない箇所を火災等の熱に基づく膨張により閉塞させることができる。
【0050】
また、前記有機溶剤との混合物を成形する方法の具体例としては、例えば、有機質バイ
ンダーが溶解する有機溶剤に、無機繊維、熱膨張性無機物、焼結性無機質材および有機質
バインダーを混合してパテ状混合物を作製し、成形機にて各種形状に成形した後、有機溶
剤を除去する方法が挙げられる。この方法によっても前記熱膨張性無機耐火材を得ること
ができる。
【0051】
次に本発明に使用する木質板について説明する。
本発明に使用する木質板としては、通常ベニヤ板などの合板や化粧合板、木質単板など
が用いられるが、特にこれらに限定されない。またこれらの材料は、難燃化処理が施され
ていてもよい。
【0052】
次に本発明に使用する難燃性材料等について説明する。
本発明に使用する難燃性材料等としては、木質板を難燃化処理したもの、例えばパーチ
クルボードや、フェノールフォーム、ウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム等と
これらに水酸化アルミニウムを充填したもの、石膏ボード、ロックウール、グラスウール、ガラスマット、セラミックブランケット、ケイカル板、スレート板、ALC、PC板、各種セメント板、含水無機物含有ボード、木片セメント板等の一般に用いられている材料を使用することができる。これらの材料は、単独で使用しても、複合で使用してもよい。
【0053】
次に本発明の防・耐火パネルについて説明する。
本発明の防・耐火パネルとしては、前記熱膨張性無機耐火材、前記木質板、前記難燃性
材料等を積層してなるものであるが、具体的には、次の2種類のものが挙げられる。
【0054】
(i)0.1〜4mmの厚みの前記熱膨張性無機耐火材の少なくとも一方の面に木質板を
積層した積層体
(ii)難燃性材料等の両方の面に、前記熱膨張性無機耐火材の積層体を積層したもの、
特に難燃性材料等に前記熱膨張性無機耐火材、木質板の順に積層した積層体
【0055】
前記熱膨張性無機耐火材の厚みが0.1mm未満であると熱膨張によって十分な厚みの
耐熱断熱層が形成されないため、耐火性能が不十分となり、4mmを超えると重量が重く
なると共に、燃焼時に形成される耐火断熱層の厚みが必要以上に厚くなり過ぎて過剰品質
となる。
【0056】
前記熱膨張性無機耐火材を木質板に積層した形態としては、上記(i)に該当するもの
としては、例えば、図2(a)に示すように前記熱膨張性無機耐火材9の一方の面に木質
板10を積層した形態、図2(b)に示す様に前記熱膨張性無機耐火材9の両方の面に木
質板10を積層した形態、図2(c)に示すように木質板10の両方の面に前記熱膨張性
無機耐火材9を積層した形態、図2(d)に示すように木質板10の両面に前記熱膨張性
無機耐火材9を積層し、さらにその一方の面に木質板10を積層した形態、図2(e)に
示す様に木質板10の両方の面に前記熱膨張性無機耐火材9を積層し、さらにその両方の
面に木質板10を積層した形態があるが、特にこれらに限定されるものではない。
ここで、図2において、参照符号9は熱膨張性無機耐火材であり、参照符号10は木質
板である。
【0057】
また、前記(ii)に該当するものとしては、図3に示すように難燃性材料等15の両
面に熱膨張性耐火材9を積層し、さらにその上に木質板10を積層したものが挙げられる。
ここで図3において、参照符号9は熱膨張性耐火材、参照符号10は木質板、参照符号
15は難燃性材料等である。
【0058】
前記木質板と前記熱膨張性無機耐火材との積層方法は特に限定されないが、前記熱膨張
性無機耐火材が粘着性を有する場合は、その粘着力を利用して積層固定してもよい。
前記熱膨張性無機耐火材に粘着力がない場合は、接着剤を使用して接着することができ
る。
【0059】
また、前記熱膨張性無機耐火材に支持材として金属板、金属箔、ハニカム構造を有する
補強板等を積層してもよい。
前記金属板もしくは金属箔としては、例えば、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、
アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板等の金属板やアルミ箔、アルミガラスクロス、アルミクラフト、 銅箔、金箔等の金属箔が挙げられる。金属板の厚みは、0.1〜5mmが好ましく、0.1mm以下の金属箔も用いることができる。
中でも、アルミ箔とガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維等を積層した材料はアルミ
の熱反射性に優れる点から耐火上有利であり、ガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維等
の耐熱性により、熱膨張性耐火材の保護を行うことができ、特に好適に用いることができ
る。
前記アルミガラスクロスのアルミ箔の厚みは、取り扱いを考慮すると5μm以上が好ま
しい。
また、ガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維等は、単位面積当たりの重量が5g/m以上が好ましく、5g/m未満であると熱膨張性耐火材の保護という点で劣ることが
ある。前記アルミ箔とガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維等はポリエチレン等でラミ
ネートするか、不燃性のアクリル系接着剤等を用いて積層される。
【0060】
本発明の防・耐火パネルは、火災等の加熱によって前記熱膨張性無機耐火材が膨張し、
燃焼残渣が耐火断熱層を形成し、この断熱層によって、非加熱側の裏面温度の温度上昇を
抑制するとともに、火炎の貫通を防止することができる。
【0061】
次に本発明の防火戸について説明する。
本発明の防・耐火パネルは、厚みが薄く、軽量で耐火性に優れるので、建造物や住宅等
の防火戸とすることができる。
【0062】
先に説明した(i)の積層体構成からなる防・耐火パネルを防火戸として用いる構成と
しては、図4に例示する様に前記熱膨張性無機耐火材9の両面に木質板10を配した前記
木質板10/前記熱膨張性無機耐火材9/前記木質板10の構成、
図5に例示する様に、前記木質板10/前記熱膨張性無機耐火材9/前記木質板10/
前記熱膨張性無機耐火材9/前記木質板10の構成、
図6に例示する様に前記木質板10/前記金属板11/前記熱膨張性耐火材9/前記木
質板10/前記熱膨張性無機耐火材9/前記金属板11/前記木質板10の構成が挙げら
れる。
【0063】
前記(ii)の積層体構成からなる防・耐火パネルを防火戸として用いる構成としては、図7に例示する様に前記不燃性材料等15の両面に前記熱膨張性無機耐火材9を積層し、次に前記金属箔11を積層し、更に前記木質板10を配した、前記木質板10/前記金属箔11/前記熱膨張性無機耐火材9/前記難燃性材料等15/前記熱膨張性無機耐火材9/前記金属箔11/前記木質板10の構成が挙げられる。
【0064】
また、外周側に鏡板部を設ける防火戸としては、図8に例示する様に防火戸中心部13
を前記木質板10/前記熱膨張性耐火材9/前記木質板10の構成にし、前記鏡板部14
を前記木質板10/前記熱膨張性無機耐火材9/集成材12/前記熱膨張性無機耐火材9
/前記木質板10の構成にした防火戸を例示でき、
さらに、図9に示すように防火戸中心部13を前記木質板10/前記熱膨張性無機耐火
材9/前記木質板10/前記熱膨張性無機耐火材9/前記木質板10の構成にし、鏡板部
14を前記木質板10/ 前記熱膨張性無機耐火材9/前記木質板10/前記集成材12
/前記木質板10/前記熱膨張性無機耐火材9/前記木質板10の構成にした防火戸を例
示することができる。
ここで、図3〜9において、参照符号9は熱膨張性無機耐火材、参照符号10は木質板、参照符号11は金属板または金属箔、参照符号12は集成材、参照符号13は防火戸中心部、参照符号14は鏡板部、参照符号15は難燃性材料等である。
【0065】
本発明の防火戸は、先に説明した防・耐火パネルと同様に、火災等の加熱によって前記
熱膨張性無機耐火材が膨張し、燃焼残渣が耐火断熱層を形成し、この断熱層によって、壁
内側の裏面温度の温度上昇を抑制することができる。
【0066】
次に本発明の異なる実施形態について説明する。以下に図面を参照しつつこの実施形態
について説明する。
図10は、本発明の防火戸16の一実施形態を例示したものである。この実施形態は、
建物の開口部内周に設けられた枠体17と、前記枠体17に開閉自在に取り付けられた扉
18と、前記扉18の外周面に設置される、前記熱膨張性無機耐火材19とから構成され
ている。
【0067】
図11は、本発明の防火戸16の他の実施形態が示されている。この実施形態は、建物
の開口部内周に設けられた枠体17と、前記枠体17に開閉自在に取り付けられた扉18
と、前記枠体17の内周面に設置される前記熱膨張性無機耐火材19と、から構成されて
いる。
【0068】
図12には、本発明の防火戸16のもう一つの実施形態が示されている。この実施形態
は、建物の開口部内周に設けられた枠体17と、前記枠体17に開閉自在に取り付けられ
た扉18と、前記扉18の外周面および前記枠体17の内周面にそれぞれ貼着され、自己
粘着性を有する前記熱膨張性無機耐火材19と、から構成されている。自己粘着性を有す
る前記熱膨張性無機耐火材19は、前記熱膨張性無機耐火材に粘着性付与材を添加する方
法、または粘着層を積層する方法等により得ることができる。
また前記扉として、先に説明した防・耐火パネルを使用することができる。
この防・耐火パネルは冒頭に記載した[1]〜[4]の通り、前記熱膨張性無機耐火材
の少なくとも一方の面に木質板を設けた積層体である。
また前記防・耐火パネルは、難燃性材料、不燃性材料または準不燃性材料の両方の面に
前記積層体を設けたものであれば好ましく、難燃性材料、不燃性材料または準不燃性材料
の両方の面に、内側から外側に向かって熱膨張性耐火材、木質板の順に積層体を設けたも
のであればさらに好ましい。
【0069】
また本発明の防火戸16に用いる前記扉18としては、例えば、図13に例示される様
に、方形状の金属製外枠31と、前記外枠31の表裏の両方の面に順に、内側から外側へ
向かって積層された無機質板(ケイ酸カルシウム板)32および前記木材板33と、前記
外枠31および前記無機質板32によって形成された空間に充填された無機系断熱材(セ
メント板)34と、から構成され、前記扉18の前記外枠31外周面に前記熱膨張性無機
耐火材19が設置されたものである。
【0070】
さらに、図13に例示される前記扉18において、前記外枠31の外周面に設置された
前記熱膨張性無機耐火材19の最外表面に化粧層35を積層してもよい(図14参照)。
【0071】
前記熱膨張性無機耐火材4の厚みは、枠体と扉との隙間の大きさ、その膨張倍率によっ
ても異なるが、0.3〜5mmの範囲であることが好ましく、特に、0.5〜3mmの範
囲が好ましい。厚みが0.3mm未満であると、枠体と扉との隙間を強固に埋めることが
できないことがあり、5mmを超えると、コストが高くなることがある。
【0072】
前記無機質板としては、無機質であって、火炎を遮るファイアーストップの役割を果た
せば特に限定されず、例えば、セメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、鉄板など
が挙げられる。
【0073】
前記無機系断熱材としては、無機質であって、断熱性があれば特に限定されないが、例
えば、ロックウール、グラスウール、セメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、A
LC板などが挙げられる。
【0074】
前記化粧層としては、特に限定されないが、例えば、各種樹脂フィルム、鉄板、木板な
どが挙げられる。
なお、化粧層には、意匠性向上の観点から、表面に印刷などにより模様を加えてもよい。
【0075】
本発明によれば、前記熱膨張性無機耐火材を前記扉の外周面および/または外枠の内周
面に設置することにより、火災時において、前記熱膨張性無機耐火材が火災による熱を受
けて膨張し、耐火断熱層を形成して前記扉と前記枠体との隙間を埋めることから、火炎が
前記扉と前記枠体との隙間を通して一方側から他方側に侵入することを確実に防止するこ
とができる。
また、前記熱膨張性無機耐火材に対して自己粘着性を持たせることにより、扉の外周面
および/または外枠の内周面に仮止めすることができ、施工性を大きく改善することがで
きる。
【0076】
また、前記扉が、方形の外枠と、前記外枠の表裏両面に内側から外側へ向かって順に積
層された前記無機質板および前記木材板と、前記外枠および前記無機質板によって形成さ
れた空間に充填された無機系断熱材と、から構成され、外枠の外周面に前記熱膨張性無機
耐火材が貼着されていると、前記扉そのものに耐火性能を付与することができ、火災時に
おいて、前記扉の焼損を防止することができるとともに、前記熱膨張性無機耐火材によっ
て前記扉と前記枠体との隙間を埋めることができる。
【0077】
さらに、前記扉の外周面または前記枠体の内周面に貼着された前記熱膨張性無機耐火材
の最外表面に化粧層が積層されていると、防火戸の見栄えが向上するとともに、火災時に
おいて前記熱膨張性無機耐火材が扉と枠体との隙間を埋めることができる。
【0078】
以下、実施例により本発明の実施態様をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実
施例に限定されるものではない。
・参考例1〜3
表1に示した配合比のセラミック繊維(新日化サーマルセラミックス社製「SCバルク
」)、熱膨張性黒鉛(東ソー社製「GREP−EG」)、ガラス繊維(旭ファイバーグラ
ス社製「グラスロンチョップドストランド」、Eガラス長繊維、繊維径:約10μm、繊
維長:約3mm)、ガラスウール(旭ファイバーグラス社製「グラスロンウール」、繊維
径:約4〜7μm)、アクリル樹脂系ラテックス(日本ゼオン社製「LX874」)の水
分散液を調整し、抄造法にて表1に記載のかさ密度、厚みを有する熱膨張性無機耐火材を
作製した。
作製した前記熱膨張性無機耐火材について、下記の性能評価を行った。参考例2および
3についても、表1に示した配合比にて実施例1の場合と同様に実施した。結果を表1に
まとめた。
【0079】
[膨張倍率・破断点応力の測定]
参考例1〜3により得られたサンプルを用いて、電気炉にて1000℃の温度により一
時間加熱し、膨張倍率を加熱後の厚みの、加熱前の厚みに対する比(加熱後の厚み/加熱
前の厚み)としてそれぞれ算出した。
【0080】
また加熱膨張後の前記熱膨張性無機耐火材の形状保持性の指標として、加熱後のサンプ
ルを圧縮試験機(カトーテック社製「フィンガーフィーリングテスター」)を用いて、0.25cmの圧子で0.1cm/sの圧縮速度にて破断点応力を測定した。
結果を表1に示す。
【0081】
なお、前記サンプルの破断点応力が、0.05kgf/cm以上であると、垂直に保
持させた状態において耐火試験を行ったとしても、加熱膨張後の前記熱膨張性無機耐火材
の形状が崩れることなく耐火性能を十分に発揮することができる。
【0082】
【表1】

【0083】
・参考例4〜5
熱膨張性材料の作製
セラミック繊維(新日化サーマルセラミックス社製「SCバルク」)、熱膨張性黒鉛(
東ソー社製「GREP−EG」)、ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製「グラスロンチ
ョップドストランド」、Eガラス長繊維、繊維径:約10μm、繊維長:約3mm)、ガ
ラスウール(旭ファイバーグラス社製「グラスロンウール」、繊維径:約4〜7μm)、
アクリル樹脂系ラテックス(日本ゼオン社製「LX874」)を、表2に示した配合比に
て水に分散させスラリーを調製した。幅300mm×長さ450mm×厚み30mmの金
型を用い、抄造法にて厚み方向から吸引(吸着成形法)して、無機繊維が略一定方向に配向
した所定のかさ密度の前記熱膨張性無機耐火材を作製した後、無機繊維の配向方法と垂直
方向にスライスして、所定厚みの前記熱膨張性無機耐火材を得た。
【0084】
[得られたサンプルの評価]
作製した前記熱膨張性無機耐火材について、体積膨張倍率の評価を行った。
50mm角の前記熱膨張性無機耐火材を電気炉にて1000℃の温度にて一時間加熱し
、幅・長さ・厚みを測定して、体積膨張倍率を加熱後の体積の、加熱前の体積に対する比
(加熱後の体積/加熱前の体積)として算出した。
加熱後のサンプルは、主として繊維方向と平行になる方向に優先的に膨張するが、繊維
方向、すなわち厚み方向にも膨張が見られた。
【0085】
【表2】

【実施例1】
【0086】
1.本発明に使用する部材について
(1)熱膨張性無機耐火材として、上記に説明した参考例1〜5に記載のものを使用する
ことができる。
(i)
(2)木質板
(i)木質版として、一般に建築用材料として使用される公知の合板を使用することが
できる。
(3)難燃性材料等
(i)パーチクルボード(東洋プライウッド社製難燃トップラム)
(ii)フェノールフォーム(群栄化学社製)
(iii)石膏ボード(吉野石膏社製タイガーボードGB−R)
(iv)ダイライト(大建工業社製ダイライトF)
(4)金属箔類
(i)アルミガラスクロス(日本金属箔工業社製)
【0087】
参考例2で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材と厚み4mmの木質板とを図4の
ように積層し、1000×1000mmサイズの防・耐火パネルを作成する。得られた防
・耐火パネルは優れた耐火性能を示す。
【実施例2】
【0088】
参考例2で得られた厚み1mmの熱膨張性無機耐火材と厚み2.5mmの木質板とを図
4のように積層し、1000×1000mmサイズの防・耐火パネルを作成する。得られ
た防・耐火パネルは優れた耐火性能を示す。
【実施例3】
【0089】
参考例3で得られた厚み0.5mmの熱膨張性無機耐火材と厚み2.5mmの木質板と
厚み0.6mmの鉄板とを図6のように積層し、1000×1000mmサイズの防・耐
火パネルを作成する。得られた防・耐火パネルは優れた耐火性能を示す。
【実施例4】
【0090】
参考例4で得られた厚み3mmの熱膨張性無機耐火材と厚み2.5mmの木質板とを図
6のように積層し、1000×1000mmサイズの防・耐火パネルを作成する。得られ
た防・耐火パネルは優れた耐火性能を示す。
【実施例5】
【0091】
参考例1で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材と厚み4mmの木質板とを図5の
ように積層し、1000×2200mmサイズの防火戸を作成する。得られた防火戸は優
れた耐火性能を示す。
【実施例6】
【0092】
参考例3で得られた厚み0.5mmの熱膨張性無機耐火材と厚み2.5mmの木質板と
厚み0.6mmの鉄板とを図6のように積層し、1000×2200mmサイズの防火戸
を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例7】
【0093】
参考例3で得られた厚み0.5mmの熱膨張性無機耐火材と厚み2.5mmの木質板と
を図4のように積層し、1000×2200mmサイズの防火戸を作成する。得られた防
火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例8】
【0094】
参考例1で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材と厚み10mmの木質板とを図4
のように積層し、1000×2200mmサイズの防火戸を作成する。得られた防火戸は
優れた耐火性能を示す。
【実施例9】
【0095】
参考例1で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材と厚み4mmの木質板とを積層し
て戸中心部とする。
次に参考例2で得られた厚み1mmの熱膨張性無機耐火材と厚み4mmの木質板と厚み
10mmの集成材の鏡板部及び前記戸中心部を図8のように積層し、1000×2200
mmサイズの防火戸を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例10】
【0096】
参考例2で得られた厚み1mmの熱膨張性無機耐火材と厚み2.5mmの木質板とを積
層して戸中心部とする。
次に参考例2で得られた厚み1mmの熱膨張性無機耐火材と厚み2.5mmの木質板と
厚み9.5mmの集成材の鏡板部及び前記戸中心部を図9のように積層し、1000×2
200mmサイズの防火戸を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例11】
【0097】
参考例4で得られた厚み3mmの熱膨張性無機耐火材と厚み10mmの木質板とを積層
して戸中心部とする。
次に参考例1で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材と厚み10mmの木質板と厚
み23mmの集成材の鏡板部及び前記戸中心部を図8のように積層し、1000×220
0mmサイズの防火戸を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例12】
【0098】
参考例1で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材と厚み7mmの木質板とを積層し
て戸中心部とする。
次に参考例1で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材と厚み7mmの木質板と厚み
25mmの集成材の鏡板部及び前記戸中心部を図9のように積層し、1000×2200
mmサイズの防火戸を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例13】
【0099】
参考例1で得られた厚み2mmの熱膨張性無機耐火材、厚み20mmの難燃性材料等(
パーチクルボード)、金属板又は金属箔([1]アルミガラスクロス)、及び厚み2.8
mmの木質板を用い、1000×2200mmサイズの防火戸を作成する。得られた防火
戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例14】
【0100】
参考例2で得られた厚み1mmの熱膨張性無機耐火材、厚み20mmの難燃性材料等(
パーチクルボード)、金属板又は金属箔([1]アルミガラスクロス、[2]アルミガラ
スクロス)、及び厚み2.8mmの木質板を用い、1000×2200mmサイズの防火
戸を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例15】
【0101】
参考例5で得られた厚み1.5mmの熱膨張性無機耐火材、厚み20mmの難燃性材料
等(パーチクルボード)、及び厚み2.8mmの木質板を用い、1000×2200mm
サイズの防火戸を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例16】
【0102】
参考例5で得られた厚み1.5mmの熱膨張性無機耐火材、厚み20mmの難燃性材料
等(パーチクルボード)、金属板又は金属箔([1]アルミガラスクロス、[2]アルミ
ガラスクロス)、及び厚み2.8mmの木質板を用い、1000×2200mmサイズの
防火戸を作成する。得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【0103】
本発明の防・耐火パネル及び防火戸は、上述の構成であり、耐火性能を満足すると共に、従来の耐火被覆構造に比べて総厚みが薄肉化されることによって、軽量化が図られている。また、施工性が大幅に向上すると共に生産性も大幅に向上し、工業的に有用な材料で、幅広い用途に適応可能である。
【実施例17】
【0104】
実施例17の防火戸16は、図14に示した構成において、無機質板32として厚み3
mmのケイ酸カルシウム板を、木材板33として厚み3mmの合板を、無機系断熱材34
として厚み35mmのセメント板を、化粧層35として厚み5mmの木板をそれぞれ用い
て、1m角の扉18を形成したものである。
前記熱膨張性無機耐火材19は、参考例1で得られた厚み2mmに形成したものである。
得られた防火戸は優れた耐火性能を示す。
【実施例18】
【0105】
実施例18の防火戸16は、参考例2で得られた厚み1mmの前記熱膨張性無機耐火材
19を使用した以外は実施例1と同一である。
【実施例19】
【0106】
この実施例19の防火戸16は、参考例3で得られた厚みを0.5mmの前記熱膨張性
無機耐火材19を使用した以外は実施例1と同一である。
【0107】
以上のように本発明によれば、前記熱膨張性無機耐火材を前記扉の外周面および/また
は前記外枠の内周面に貼着することにより、火災時において、前記熱膨張性無機耐火材が
火災による熱を受けて膨張し、耐火断熱層を形成して扉と枠体との隙間を埋めることから、火炎が前記扉と前記枠体との隙間を通して一方側から他方側に侵入することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】吸着成形法による熱膨張性無機耐火材を製造するための装置の概略を示す模式要部断面図である。
【図2】防・耐火パネルの被覆状態の図である。
【図3】防・耐火パネルの被覆状態の図である。
【図4】本発明の防火戸の構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の防火戸の構成の一例を示す図である。
【図6】本発明の防火戸の構成の一例を示す図である。
【図7】本発明の防火戸の構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の防火戸の構成の一例を示す図である。
【図9】本発明の防火戸の構成の一例を示す図である。
【図10】本発明の防火戸の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の防火戸の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の防火戸のもう一つの実施形態を模式的に示す断面図である。
【図13】図10の防火戸を構成する扉の一実施形態を示す断面図である。
【図14】図13の扉の一実施形態の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0109】
1 スラリー
2 枠体吸入口
3 濾過部材
4 吸引装置
5 吸着成形装置
6 無機繊維
7 配管
8 スラリー槽
9 熱膨張性無機耐火材
10 木質板
11 鉄板
12 集成材
13 防火戸中心部
14 鏡板部
15 難燃性材料等
16 防火戸
17 枠体
18 扉
19 熱膨張性無機耐火材
31 外枠
32 無機質板(ケイ酸カルシウム板)
33 木材板(合板)
34 無機系断熱材(セメント板)
35 化粧層(木板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性無機耐火材の少なくとも一方の面に木質板を設けた積層体であって、
前記熱膨張性無機耐火材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
前記熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000
℃の範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする防・耐火パネル。
【請求項2】
難燃性材料、不燃性材料または準不燃性材料の両方の面に、請求項1に記載の積層体を
設けてなることを特徴とする防・耐火パネル。
【請求項3】
難燃性材料、不燃性材料または準不燃性材料の両方の面に、内側から外側に向かって熱
膨張性耐火材、木質板の順に積層体を設けてなることを特徴とする、請求項2に記載の防
・耐火パネル。
【請求項4】
前記熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、二酸化ケイ素50〜60
重量%、酸化アルミニウム10〜20重量%、酸化カルシウム10〜20重量%、酸化マ
グネシウム1〜10重量%および酸化ホウ素8〜13重量%を含有する焼結性無機質材か
らなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防・耐火パネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の防・耐火パネルからなる防火戸。
【請求項6】
建物の開口部内周に設けられた枠体と、
前記枠体に開閉自在に取り付けられた扉と、
前記扉の外周面および/または前記枠体の内周面に設置される、熱膨張性無機耐火材と

から構成され、
前記熱膨張性無機耐火材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000℃の
範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする防火戸。
【請求項7】
前記扉は、請求項1〜4のいずれかに記載の防・耐火パネルからなることを特徴とする
、請求項6に記載の防火戸。
【請求項8】
前記熱膨張性無機耐火材に含まれる前記無機質バインダーは、二酸化ケイ素50〜60
重量%、酸化アルミニウム10〜20重量%、酸化カルシウム10〜20重量%、酸化マ
グネシウム1〜10重量%および酸化ホウ素8〜13重量%を含有する焼結性無機質材か
らなることを特徴とする、請求項6または7に記載の防火戸。
【請求項9】
前記扉の外周面または前記枠体の内周面に設置された前記熱膨張性無機耐火材の最外表
面に化粧層が積層されていることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の防火戸


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−31801(P2008−31801A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209129(P2006−209129)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】