防弾に好適な布帛アセンブリおよび製造方法
柔軟な防護服として特に有用な布帛アセンブリは、1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸から作製された多数の布帛をそれぞれ含む2つの別個のセクションを有する。第1のセクションには圧縮布帛が用いられ、15平方mm〜350平方mmの範囲の線引きされる面積を形成する、65N以下の張力破断力を有する連結具により連結される。第2のセクションの布帛は、布帛が互いに滑るのを防ぐ以外は、圧縮も結合もしていない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防弾性の柔軟な防護服として特に有用な布帛アセンブリおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防弾性防護服については、多くのデザインが提案され、多くが市販されてきた。デザインは、着用者の快適さを高め、面密度を増やすことなく、さらなる貫入抵抗性を付与するものである。快適さは、一般に、着用者が自由に動けるよう、防護服をより軽く、より柔軟にすることにより高められる。しかしながら、衣服の軽量化は、防弾性能の大幅な低下と引き換えに達成されるものであってはならない。
【0003】
米国特許出願公開第2008/0075933A1号明細書には、近接する要素を相互接続するための連結手段を裏側に有する高強度繊維の可撓性要素を含む防弾性アセンブリが開示されている。かかるアセンブリは、砲弾を受けた際の外傷を減じると主張されている。
【0004】
NiemiおよびCuniffは、Technical Note Natick/TN−91/0004に「The Performance of Quilted Body Armor Systems Under Ballistic Impact by Right Circular Cylinders」という題名で、「1.1グラムの直円柱で得られた結果に基づくと、キルティングの効果によって、計算された防弾値または評価したKevlar(登録商標)、Spectra(登録商標)およびナイロン防弾システムの比エネルギー吸収能は全く増加しなかった。」と述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重量を増やさずに、防弾性を増大できる軽量で柔軟な防護服が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からできた複数の連結圧縮された布帛層を含む第1のセクションであって、
連結圧縮された布帛層が、65N以下の張力破断力を有する連結具により一緒に固定されており、
連結具が、15〜350平方mmの範囲で、複数の布帛層の表面内および表面上の面積を画定しており、
試験方法Aに規定される第1のセクションの布帛層の圧縮率が、少なくとも2%である、第1のセクションと、
(b)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からできた複数の布帛層を含む第2のセクションであって、
布帛層が、15〜350平方mmの範囲の面積を画定するために、連結されておらず、
試験方法Aに規定される第2のセクションの布帛層の圧縮率が、0.5%以下である、第2のセクションと
を含む防弾に好適な布帛アセンブリ(fabric assembly)に係る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】第1のセクションの外側布帛層(プライ)の平面図であり、連結具ライン、連結具長さ、連結具の列の間隔および連結具の面積を示している。
【図1B】ステープルまたはクリップ連結具の端面図である。
【図1C】布帛プライを通した連結具のピンパターンを示す平面図である。
【図2】連結具がなく、隅部タックステッチにより一緒に保持された第2のセクションの布帛層の平面図である。
【図3A】連結具を有する第1のセクションの複数の布帛層の断面図である。これを「A」と称す。
【図3B】連結具のない第2のセクションの複数の布帛層の断面図である。これを「B」と称す。
【図4】図3AのAによる被弾面としての第1のセクションと、図3BのBによる裏面としての第2のセクションとを有するベストスタックの断面図である。
【図4A】被弾面が布帛層Aの数多くの下位アセンブリおよび裏面が布帛層Bの数多くの下位アセンブリから組み立てたベストスタックの断面図である。
【図5】AとBの繰り返し配列を有するベストスタックの断面図である。
【図6A】図3BのBによる第2のセクションを有する芯を挟む、図3AのAによる被弾面と裏面として第1のセクションを有するベストスタックの断面図である。
【図6B】図3AのAによる第1のセクションを有する芯を挟む、図3BのBによる被弾面と裏面として第2のセクションを有するベストスタックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
防弾に好適な布帛アセンブリは、第1のセクションと第2のセクションとして本明細書に示される2つの単独の別個のセクションを含む。両セクション共、1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からできた複数の布帛層を含む。
【0009】
本明細書で用いる「複数」とは少なくとも2つを意味する。しかしながら、多くの場合、少なくとも5つ、場合によっては、少なくとも10〜30までの布帛層を、布帛アセンブリの第1および/または第2のセクションに用いるであろう。
【0010】
布帛アセンブリの第1および第2のセクションの糸
第1および第2のセクションに用いる1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸は当該技術分野において周知されている。第1および第2のセクションの糸は同一である必要はないものと考えられる。糸に好適な材料としては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアゾールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0011】
ポリマーがポリアミドのときは、アラミドが好ましい。「アラミド」という用語は、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が、2つの芳香族環に直接付加しているポリアミドを意味する。好適なアラミド繊維は、Man−Made Fibres−Science and Technology,Volume2,Section、題名Fibre−Forming Aromatic Polyamides、297頁、W.Blackら、Interscience Publishers,1968に記載されている。
【0012】
好ましいアラミドは、パラ−アラミドである。好ましいパラ−アラミドは、PPD−Tと呼ばれるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。PPD−Tは、p−フェニレンジアミンと塩化テレフタロイルのモル対モル重合から得られたホモポリマー、同じく、少量の他のジアミンのp−フェニレンジアミンへの、そして、少量の他の二酸塩化物の塩化テレフタロイルへの組み込みから得られたコポリマーである。概して、他のジアミンおよび他の二酸塩化物は、p−フェニレンジアミンまたは塩化テレフタロイルの約10モルパーセントまで、あるいはこれよりやや多い量で用いることができる。ただし、他のジアミンおよび二酸塩化物が、重合反応を妨げる反応基を有していない場合に限る。PPD−Tとはまた、他の芳香族ジアミンおよび他の芳香族二酸塩化物、例えば、塩化2,6−ナフタロイルあるいは塩化クロロ−またはジクロロテレフタロイルあるいは3,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組み込みから得られるコポリマーを意味する。
【0013】
添加剤は、アラミドと共に用いることができ、10重量パーセント以上までの他のポリマー材料をアラミドとブレンドできることが分かっている。アラミドのジアミンの代わりに10パーセント以上の他のジアミン、または二酸塩化物またはアラミドの代わりに10パーセント以上の他の二酸塩化物を有するコポリマーを用いることができる。
【0014】
ポリマーがポリオレフィンのときは、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。「ポリエチレン」という用語は、主に、好ましくは、100万を超える分子量の鎖状ポリエチレン材料を意味し、主鎖の100個の炭素原子当たり5つ以下の少量の鎖分岐またはコモノマーを含有していてもよく、また、約50重量パーセント以下の1つ以上のポリマー添加剤、例えば、アルケン−1−ポリマー、特に、低密度ポリエチレン、プロピレン等または低分子量添加剤、例えば、一般的に組み込まれる酸化防止剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、着色剤等と混合したものを含有していてもよい。これは、拡張連鎖ポリエチレン(ECPE)または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)として一般的に知られている。
【0015】
ある好ましい実施形態において、ポリアゾールは、ポリベンズアゾールおよびポリピリダゾール等のポリアレーンアゾールである。好適なポリアゾールとしては、ホモポリマー、同じく、コポリマーが挙げられる。添加剤は、ポリアゾールと共に用いることができ、10重量パーセントまでの他のポリマー材料を、ポリアゾールとブレンドすることができる。また、ポリアゾールのモノマーの代わりに10パーセント以上の他のモノマーを有するコポリマーを用いることができる。好適なポリアゾールホモポリマーおよびコポリマーは、公知の手順により製造することができる。
【0016】
好ましいポリベンズアゾールは、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾチアゾールおよびポリベンズオキサゾールであり、より好ましくは、30gpd以上の靭性の糸を有する繊維を形成することができるかかるポリマーである。ポリベンズアゾールが、ポリベンゾチアゾールである場合には、好ましくは、ポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)である。ポリベンズアゾールが、ポリベンズオキサゾールである場合には、好ましくは、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)であり、より好ましくは、PBOと呼ばれるポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)である。
【0017】
好ましいポリピリダゾールは、ポリピリジイミダゾール、ポリピリドチアゾールおよびポリピリドオキサゾールであり、より好ましくは、30gpd以上の靭性の糸を有する繊維を形成することができるかかるポリマーである。ある実施形態において、好ましいポリピリダゾールは、ポリピリドビスアゾールである。好ましいポリ(ピリドビスオキサゾール)は、PIPDと呼ばれるポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾールである。ポリピリドビスアゾールを含む好適なポリピリダゾールは、公知の手順により製造することができる。
【0018】
布帛アセンブリの第1のセクション
布帛アセンブリの第1のセクションの布帛の糸の要件は、上述したとおりである。
【0019】
第1のセクションのさらなる要件としては、(1)互いに連結され、(2)圧縮され、(3)65N以下の強度(張力破断力)を有する連結具により一緒に固定され、(4)連結具により画定される15平方mm〜350平方mmの範囲の面積を有し、(5)試験方法Aに規定される少なくとも2%の圧縮率を有する布帛が含まれる。
【0020】
要件(1)、(3)および(4)については、互いに関連させて説明する。
【0021】
第1のセクションの布帛は、互いに、物理的に連結されている必要がある。布帛層の連結は、65N以下の機械的強度を有する連結具による。好ましくは、機械的強度は、40N、より好ましくは、35Nを超えない。機械的強度についての下限は、決定的なものではないが、実際、1N未満とはならない。
【0022】
連結具の張力破断力は、1つ以上の連結具材料の最終引張応力と、連結具の断面積の乗数である。このように、連結具の寸法は、特定の材料について所望の破断力が得られるように調整することができる。化学的連結具については、所望の寸法は、2つの近接する布帛層間の接着面積である。
【0023】
好ましい連結具は、ステッチのためのスレッドの使用によるものであり、すなわち、第1のセクションの別個の布帛層を一緒にステッチするものである。スレッドは、連続フィラメント糸またはステープル繊維であってもよい。機械ステッチにおいては、2つのスレッドを一緒にループして、一方のスレッドは上側から供給し、他方は、下側から供給するのが一般的である。かかるステッチ技術を、連結具スレッドを縫うのに用いるときは、少なくとも1つのボビンが、65N以下の破断力を有する材料でなければならない。プライ糸を連結具スレッドとして用いる場合には、糸を含む個々のスレッドを併せた破断力が、65N以下でなければならない。プライ糸は、2つ以上の単糸を一緒にツイストすることにより形成した糸である。好適なスレッド材料としては、アラミド、綿、ナイロン、ポリエステルまたはエラストマーポリウレタン(Lycra(登録商標))が挙げられる。加熱時に収縮する連結具糸は、布帛層を圧縮する別の手段である。
【0024】
しかしながら、ステッチスレッドまたは糸以外の連結具を用いてもよいものと考えられる。これらの連結具は、ステープルや機械的手段等により、機械的なものとすることができる。連結具は、互いに接触している必要はなく、連結具により線引きされる面積を提供するものと考えられる。
【0025】
機械的連結具は、スレッドばかりでなく、クリップ、ピン、ニードルまたはステープルであってもよい多くの形態とすることができ、ポリマー、金属、セラミックまたはその他無機材料で製造することができる。ピン、クリップ、ニードルまたはステープルについて好適な材料としては、カーボン、ガラス、セラミック、金属またはポリマーが挙げられる。
【0026】
化学的連結具の一例は接着剤である。接着剤は、1379MPa以下のモジュラスを有するのが好ましい。接着剤は、熱硬化性または熱可塑性であってよく、好ましくは、20℃〜180℃、より好ましくは、20℃〜120℃で硬化する。接着剤は、液体、ペースト、粉末またはフィルムの形態にあってもよい。好適な材料としては、エポキシ、フェノール、ウレタン、ポリエステル、ビニルエステル、ポリイミドまたはマレイミドが挙げられる。接着連結具は、実線または破線、ドット、楕円、ダイヤモンドおよびその他形状の形態を採ってもよい。
【0027】
上述したとおり、連結具は、65N以下の張力破断力を有する必要がある。機械的連結具の場合には、破断力は、使用前に連結具を試験することにより求めることができる。しかしながら、化学的連結具については、典型的に、布帛の層での実際に使用する機械的強度を求める必要がある。
【0028】
連結具ピッチ長は、(1)ステッチについては、1つのステッチとするのに布帛の表面で、連結具ラインに沿って針が進む最小距離、(2)クリップおよびステープルについては、クリップまたはステープルの長さ、および(3)ピンについては、同じ連結具ライン上の2つの近接する連結具間の最小距離である。これについて、図1A〜1Cに詳細に示してある。
【0029】
連結具面積は、連結具ラインの境界で囲まれた面積である。
【0030】
連結具の列の間隔は、近接する平行な連結具ライン間の距離である。
【0031】
連結具の機能は、布帛の高靭性フィラメントの機械的特性に影響を与えることなく、防護具の運動量伝達能力を高めることである。他の要件は、布帛中のフィラメントの軸方向の動きを過度に抑制しないことである。
【0032】
運動量伝達を高めるために、連結具が布帛表面に存在する面積において、連結具は布帛糸を圧縮できる必要がある。連結具はまた、表面および布帛アセンブリの第1のセクションの各連結布帛内の面積も画定する。表面積は、15〜350平方mmの範囲であり、好ましい範囲は、100〜250平方mm、より好ましい範囲は、115〜180平方mmである。布帛アセンブリの第1のセクションにおいて画定された面積の数は、布帛アセンブリの全体のサイズにより決まるであろう。アセンブリの好ましい用途が、人間が着用する柔軟な防護服であるため、布帛アセンブリ表面で、連結具により画定される面積の最低数は、少なくとも1000であろう。
【0033】
連結具は、任意の好適な長さを有していてもよい。好ましくは、長さは、2.54〜15.24mm、より好ましくは、3.56〜14.22mmである。接着ドット、楕円等については、長さは、接着ドットまたは楕円の最大寸法である。連結具に囲まれた面積の方が、面積の形状より重要である。連結具ラインにより画定される好適な面積形状としては、これらに限られるものではないが、正方形、矩形、三角形、六角形、ダイヤモンドおよび山形が挙げられる。実用上の理由から、15平方mm未満の連結具面積は、連結具挿入プロセスにより、糸が損傷する危険性があるため、あまり望ましくない。
【0034】
連結具を挿入する技術は、周知されており、スレッドについては縫製、ピン、針およびステープルについては、圧力ガン、超音波等が挙げられる。これらの技術は全て、テキスタイルの技術分野において周知されている。
【0035】
連結具が縫製タイプのときは、用いるステッチのタイプは重要でなく、ピッチ長および列の間隔について必要とされる関係に従っていれば、大きく異なり得る。ステッチおよび縫製法、例えば、ハンドステッチ、マルチスレッドチェーンステッチ、オーバーエッジステッチ、フラットシームステッチ、シングルスレッドロックステッチ、ロックステッチ、チェーンステッチ、ジグザグステッチ等が、本発明に用いる好ましい固定手段を構成する。
【0036】
布帛層の糸への損傷を最少にする、すなわち、防弾性のためには、連結部ラインが、布帛の縦横糸両方に、5〜85度の間の角度となるような方向に配置するのが好ましい。より好ましくは、この角度は、20〜70度の間にすべきである。
【0037】
布帛アセンブリの第1のセクションのさらなる要件は、圧縮され、試験方法Aに規定される少なくとも2%の圧縮率を有する布帛の使用である。この試験は、製造後、布帛の厚さを減じるような処理をさらにすることなく、布帛の厚さを最初に測定する手順を定義するものである。その後、布帛の厚さは、布帛アセンブリの第1のセクションで用いるために圧縮した後、測定される。%基準で表わされる圧縮率は、元の布地の厚さを基準とした、布帛の厚さの減少量である。
【0038】
布帛アセンブリの第1のセクションについて圧縮した布帛は、少なくとも2%、好ましくは、少なくとも5%、より好ましくは、少なくとも7%の圧縮率であろう。説明すると、圧縮率は、20%を超えず、より狭い最大値は15%である。
【0039】
布帛アセンブリの第2のセクション
布帛アセンブリの第2のセクションの布帛における糸の要件は、上述したとおりである。第2のセクションの繊維は、第1のセクションのものと異なっていてもよい。
【0040】
第2のセクションのさらなる要件としては、(1)15〜350平方mmの範囲の面積を画定するために、布帛は連結されていないこと、(2)試験方法Aに規定される布帛の圧縮率が、0.5%以下であることが挙げられる。これらの実質的に圧縮されていない布帛はまた、ルースプライとしても当該技術分野において知られている。
【0041】
布帛アセンブリの第2のセクションの要件(1)については、布帛層が互いに連結していないのが好ましい。しかしながら、全体の布帛アセンブリの製造においては、滑ることなく、層の配列を保つのが望ましい。従って、本明細書で用いる「実質的に連結のない」とは、連結の量が、滑るのを防ぐのに必要であるが、層を互いに圧縮させるには不十分な量であることを意味する。この例は、図2に示す隅部ステッチである。従って、第2のセクションは、布帛間(3つ以上も)に実質的に連結がないのが好ましい。布帛アセンブリの第2のセクションの要件(2)については、布帛の圧縮がないのが好ましい。しかしながら、通常の取扱いおよび製造においては、最小の圧縮は生じる可能性がある。従って、試験方法Aに規定される最大の圧縮率は、0.5%以下、好ましくは、0.2%、より好ましくは、0%である。
【0042】
布帛の構成
様々な構成技術を、布帛アセンブリの第1および第2のセクションの布帛に用いてもよいと考えられる。例を挙げると、布帛は、織であっても、バインダーを含む、または含まない一方向性であっても、配向の異なる糸の層による多軸であっても、3次元であってもよい。これらの布帛のスタイルはそれぞれ、当該技術分野において周知されている。さらに、構成と組成の両方において、異なる組み合わせの布帛を、布帛アセンブリの第1のセクションおよび第2のセクションに用いることができるものと考えられる。
【0043】
防護服物品
防護服物品は、少なくとも2つの布帛層下位アセンブリを含み、一方の下位アセンブリは、連結具を有する布帛層を含む第1のセクションであり、他方は、連結具のない布帛層を含む第2のセクションである。各下位アセンブリは、一緒に積み重ねられた2〜30の織布層を有することができる。異なる下位アセンブリの織布層は、同一または異なるものとすることができる。最終アセンブリは、各下位アセンブリの少なくとも1つのタイプを含む。そして、最終アセンブリを、ベストパックまたは防護服物品に適合させる。
【0044】
最終アセンブリを含む下位アセンブリの全てからの総数の布帛層は、一緒に積み重ねたとき、5.0kg/m2以下、好ましくは、4.68kg/m2以下の面密度を有するのが好ましい。
【0045】
防弾ベストのデザインによって、連結具を必要とする布帛層の数は変わる。連結具を有する層および連結具のない層の位置は、アセンブリ内で変えることができる。例えば、図4、4A、5、6Aおよび6Bを参照のこと。これらの図面において、「A」と示された布帛層は、連結具を有し、「B」と示されたものは、連結具はない。図面に示した以外の下位アセンブリの組み合わせも有用である。
【0046】
図4に示す第1の実施形態において、連結具を有する布帛層を含む下位アセンブリ「A」は、被弾方向に向いており、連結具のない布帛層を含む下位アセンブリ「B」は、被弾方向でない方向に向いている。
【0047】
第2の実施形態において、連結具を有する布帛層をそれぞれ含む数多くの下位アセンブリは、被弾方向に向いており、連結具のない布帛層をそれぞれ含む数多くの下位アセンブリは、被弾方向でない方向に向いている。これは、弾丸に向いた連結具を有する布帛層A1、A2およびA3の3つの下位アセンブリ、および被弾方向でない方向に向いた連結具のない布帛層B1、B2およびB3の3つの下位アセンブリを示す図4Aに例示されている。
【0048】
図5のような第3の実施形態は、連結具を有する布帛層「A」および連結具のない布帛層「B」を有する交互の下位アセンブリの構成を含む。
【0049】
第4の実施形態において、それぞれ連結具を有する布帛層を含む2つの下位アセンブリは、最終アセンブリの2つの外側層を形成し、連結具のない布帛層を含む下位アセンブリは、アセンブリの芯を形成する。これを図6Aに示す。
【0050】
第5の実施形態において、それぞれ連結具のない布帛層を含む2つの下位アセンブリは、最終アセンブリの2つの外側層を形成し、連結具を有する布帛層を含む下位アセンブリは、アセンブリの芯を形成する。これを図6Bに示す。
【0051】
連結具のないセクションの布帛層を一緒に保持して、あるレベルの一貫性を維持しなければならない。これらの層は、例えば、ステッチまたは接着剤またはメルトボンディングにより、布帛の端部に、かつ/または隅部を横断して、取り付けることができる。布帛層にあるこれらのステッチは、連結具と同じように層を圧縮することはなく、防弾性能には影響しない。任意の好適なスレッドを、端部および隅部を縫うのに用いてもよい。端部および隅部ステッチには、アラミドスレッドが特に好適である。端部または隅部ステッチは、連結具を有する布帛層には任意のプロセスであり、最終組み立てプロセスを補助できるという利点がある。
【0052】
好ましくは、防弾性布帛最終アセンブリは、9mmの弾丸に対して試験したとき、少なくとも465m/秒のV50および/または17粒弾丸に対して試験したとき、少なくとも579m/秒のV50を有し、布帛層は、一緒に積み重ねると、4.68kg/m2を超えないスタック面密度を有する。V50は、銃弾または破片が、発砲の50%が防護具に貫通し、残り50%が貫通しない平均速度を特定する統計的尺度である。測定されるパラメータは、ゼロ度でのV50であり、ゼロ度とは、ターゲットに対する弾丸の傾斜を指す。
【0053】
組み立て方法
柔軟な防護服物品用の布帛アセンブリを製造する方法は、(1)破断力が65N以下の連結具を含み、連結具により囲まれた面積が、30〜350平方mmである、布帛層のアセンブリまたは下位アセンブリを形成する工程と、(2)連結具のない布帛層のアセンブリまたは下位アセンブリを形成して、これらの層を、端部に沿って、かつ/または連結具を横断してステッチする工程と、(3)アセンブリまたは下位アセンブリを所望の順番で組み合わせて、全布帛薄層の総重量を、5.0kg/m2未満、より好ましくは、4.68kg/m2未満とする工程と、(4)最終布帛アセンブリを、パウチまたはベストパックに配置する工程とを含む。
【0054】
試験方法
温度:温度は全て、摂氏(℃)で測定した。
【0055】
線密度:糸または繊維の線密度は、ASTM D1907−97およびD885−98に記載された手順に基づいて、既知の長さの糸または繊維を秤量することによって求められる。デシテックスまたは「dtex」は、10,000メートルの糸または繊維のグラム単位の重量と定義される。デニール(d)は、デシテックス(dtex)の9/10倍である。
【0056】
引張特性:試験する繊維を調整してから、ASTM D885−98に記載された手順に基づいて引張試験した。靱性(破断靱性)、弾性率、破断力および破断点伸びは、Instron万能試験機で試験糸を破断することによって求められる。
【0057】
面密度:布帛層の面密度を、選択されたサイズ、例えば、10cm×10cmの各単層の重量を測定することによって求めた。複合体構造の面密度は、個々の層の面密度の合計によって求めた。
【0058】
弾道貫通性能:多層パネルの弾道試験を、調達文書FQ/PD 07−05B(Body Armor,Multiple Threat/Interceptor Improved Outer Tactical Vest)およびMIL STD−662F(V50 Ballistic Test for Armor)に記載されたような標準的手順に従って実施した。大半の実施例について、4つのターゲットを試験し、各ドライターゲットに、ゼロ度傾斜で、6〜9発、発砲した。記録されたV50値は、各実施例について発砲数の平均値である。
【実施例】
【0059】
本発明の方法に従って作製した実施例は、数値で示される。対照または比較例は文字で示される。比較例および実施例に関連するデータおよび試験結果を表1に示す。
【0060】
層の説明
以下の高靭性繊維布帛およびシート構造の層を作製し、以下の弾道試験のために様々な複合アセンブリとした。
【0061】
(S15351F)布帛層「F1」は、E.I.du Pont de Nemours and CompanyよりKevlar(登録商標)パラ−アラミドブランドKM2糸という商品名で入手可能な600デニール(660dtex)のポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(またはPA)糸の平織布であり、1センチメートル当たり11.1×11.1エンド(1インチ当たり28×28エンド)で織った。
【0062】
(S706F)布帛層「F2」は、E.I.du Pont de Nemours and CompanyよりKevlar(登録商標)パラ−アラミドブランドKM2糸という商品名で入手可能な600デニール(660dtex)のポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(またはPA)糸の平織布であり、1センチメートル当たり13.5×13.5エンド(1インチ当たり34×34エンド)で織った。
【0063】
上記の布帛層を、以下の例のとおり組み立ててから、発砲の前に、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)のナイロン袋に入れた。弾丸に向いた袋の側は、900dtex(1000デニール)Woodland Camouflage Corduraリップストップ布であり、他方の側は、450dtex(500デニール)Black Corduraリップストップ布であった。両布共、Bradford Printing&Finishing LLC,Bradford,RIから入手した。
【0064】
連結具スレッドは全て、Juki sewing machine、型番LU 563を用いて縫った。
【0065】
例A
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の28枚の層を、層の四隅のステッチにより、面密度5.23kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.,Northbrook,IL製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、478〜500m/sの間であり、平均値は488m/sであった。
【0066】
例B
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の26枚の層を、層の四隅のステッチにより、面密度4.88kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、474〜497m/sの間であり、平均値は483m/sであった。
【0067】
例C
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の35枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度5.28kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、496〜525m/sの間であり、平均値は511m/sであった。
【0068】
例D
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の31枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度4.68kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、454〜466m/sの間であり、平均値は462m/sであった。
【0069】
例E
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の28枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度5.23kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、563〜612m/sの間であり、平均値は577m/sであった。
【0070】
例F
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の26枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度4.88kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、532〜582m/sの間であり、平均値は558m/sであった。
【0071】
例G
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の35枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度5.28kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、573〜606m/sの間であり、平均値は592m/sであった。
【0072】
例H
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の31枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度4.68kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。6つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、553〜578m/sの間であり、平均値は565m/sであった。
【0073】
例J
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の13枚の層を、13枚の層を貫いて直交するよう縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が69.8NのSaunders Thread Company,Gaston,NC製961dtex(865デニール)のKevlar(登録商標)スパンスレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F2の38cm×38cm(15インチ×15インチ)の13枚のルース層と組み合わせて、面密度4.88kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.,製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、521〜562m/sの間であり、平均値は547m/sであった。
【0074】
例K
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が69.8NのSaunders Thread Company製961dtex(865デニール)のKevlar(登録商標)スパンスレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.,製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、554〜586m/sの間であり、平均値は571m/sであった。
【0075】
例L
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の26枚の層を、全ての層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。また、ステッチは、層の四隅(隅部ステッチ)にあって、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、499〜532m/sの間であり、平均値は518m/sであった。
【0076】
実施例1
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の13枚の層を、13枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F2の38cm×38cm(15インチ×15インチ)の13枚のルース層と組み合わせて、面密度4.88kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、484〜493m/sの間であり、平均値は487m/sであった。
【0077】
例Bでは、1回の発砲で異常に高いV50値が観察され、平均値は高かった。しかしながら、対照例Aより面密度が7パーセント低いアセンブリにおいて連結具のある布帛層を有する実施例1は、例Aに比べて、V50の減少は何ら示さなかった。
【0078】
実施例2
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、483〜498m/sの間であり、平均値は492m/sであった。
【0079】
例C、Dおよび実施例2の結果を比較したところ、物品重量が5.28kg/m2の例Cは、許容できるV50を有していたが、4.68kg/m2と面密度が減じた例DのV50は、10パーセント低く、所望の目標値を僅かに下回った。例Bと同数の布層および密度を有するが、第1の15枚の布帛層の被弾面に連結具を組み込んだ実施例2は、6パーセントから許容できる値までV50性能を回復した。
【0080】
実施例3
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の13枚の層を、13枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F2の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の13枚のルース層と組み合わせて、面密度4.88kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、552〜575m/sの間であり、平均値は569m/sであった。
【0081】
例E、Fおよび実施例3の結果を比較したところ、面密度を7パーセント減じると、V50値が約4パーセント減少した。第1の13枚の布帛層の被弾面に連結具を組み込むと、全て回復したが、V50性能は1パーセントであった。例Lによれば、全布帛層に連結具を縫うと、V50値が非常に低くなった。例Jにより示されるとおり、65Nを超える破断力を有する連結具材料を使用しても、V50は低かった。
【0082】
実施例4
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、564〜605m/sの間であり、平均値は585m/sであった。
【0083】
例G、Hおよび実施例4の結果を比較したところ、物品重量が5.28kg/m2の例Gは、許容できるV50を有していたが、4.68kg/m2と面密度が減じた例HのV50は、5パーセント低く、所望の目標値を僅かに下回った。例Hと同数の布層および密度を有するが、第1の15枚の布帛層の被弾面に本発明の連結具を組み込んだ実施例4は、ほぼ完全にV50性能を回復した。
【0084】
実施例5
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は19.1mmであった。連結具ラインは、363平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。2つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、558および570m/sであり、平均値は564m/sであった。
【0085】
実施例6
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は25.4mmであった。連結具ラインは、645平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。3つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、562〜589m/sの間であり、平均値は574m/sであった。
【0086】
実施例7
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は6.4mmであった。連結具ラインは、40平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。2つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、571および576m/sであり、平均値は574m/sであった。
【0087】
実施例4〜7の結果を比較したところ、連結具が約161平方mmの面積を囲む布帛アセンブリのV50弾道性能は非常に良好で、約363平方mmおよび約40平方mmの囲まれた面積は、許容できる弾道性能を与える囲まれた面積の上限および下限をそれぞれ表わしている。
【0088】
実施例8
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が40.1NのSaunders Thread Company製2400dtex(2160デニール)の綿スレッドG4−Tx240であった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、562〜576m/sの間であり、平均値は571m/sであった。
【0089】
実施例9
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具のない層が弾丸に向くように、すなわち、連結具を有する層が本体側になるように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、576〜590m/sの間であり、平均値は583m/sであった。
【0090】
本実施例によれば、連結材料の破断力が65N未満で、連結具が50〜350平方mmの面積を囲んでいれば、連結した布帛層が被弾方向から外方を向いたアセンブリのV50が、連結のない層のアセンブリに比べて増大するであろうことが分かる。
【0091】
実施例10
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が29NのUnited Thread Mills製351dtex(316デニール)のKevlar(登録商標)スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、583〜594m/sの間であり、平均値は588m/sであった。
【0092】
例J、Kおよび実施例10の結果を比較したところ、低い破断力(29N)の連結具材料を用いると、高い破断力(69.8N)の連結具を用いるのに比べて、大幅に良好なV50を与えることが分かる。
【0093】
実施例11
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具のない層が弾丸に向くように、すなわち、連結具を有する層が本体側になるように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、465〜480m/sの間であり、平均値は473m/sであった。
【0094】
実施例9のように、本実施例によれば、連結材料の破断力が65N未満で、連結具が50〜350平方mmの面積を囲んでいれば、連結した布帛層が被弾方向から外方を向いたアセンブリのV50が、連結のない層のアセンブリに比べて増大するであろうことが分かる。
【0095】
実施例12
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が29NのUnited Thread Mills製351dtex(316デニール)のKevlar(登録商標)スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具のない層が、弾丸に向くようにして、すなわち、連結具を有する層が本体側になるように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、492〜505m/sの間であり、平均値は498m/sであった。
【0096】
以下の表に、例の試験結果をまとめてある。
【0097】
【表1−1】
【表1−2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防弾性の柔軟な防護服として特に有用な布帛アセンブリおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防弾性防護服については、多くのデザインが提案され、多くが市販されてきた。デザインは、着用者の快適さを高め、面密度を増やすことなく、さらなる貫入抵抗性を付与するものである。快適さは、一般に、着用者が自由に動けるよう、防護服をより軽く、より柔軟にすることにより高められる。しかしながら、衣服の軽量化は、防弾性能の大幅な低下と引き換えに達成されるものであってはならない。
【0003】
米国特許出願公開第2008/0075933A1号明細書には、近接する要素を相互接続するための連結手段を裏側に有する高強度繊維の可撓性要素を含む防弾性アセンブリが開示されている。かかるアセンブリは、砲弾を受けた際の外傷を減じると主張されている。
【0004】
NiemiおよびCuniffは、Technical Note Natick/TN−91/0004に「The Performance of Quilted Body Armor Systems Under Ballistic Impact by Right Circular Cylinders」という題名で、「1.1グラムの直円柱で得られた結果に基づくと、キルティングの効果によって、計算された防弾値または評価したKevlar(登録商標)、Spectra(登録商標)およびナイロン防弾システムの比エネルギー吸収能は全く増加しなかった。」と述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重量を増やさずに、防弾性を増大できる軽量で柔軟な防護服が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からできた複数の連結圧縮された布帛層を含む第1のセクションであって、
連結圧縮された布帛層が、65N以下の張力破断力を有する連結具により一緒に固定されており、
連結具が、15〜350平方mmの範囲で、複数の布帛層の表面内および表面上の面積を画定しており、
試験方法Aに規定される第1のセクションの布帛層の圧縮率が、少なくとも2%である、第1のセクションと、
(b)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からできた複数の布帛層を含む第2のセクションであって、
布帛層が、15〜350平方mmの範囲の面積を画定するために、連結されておらず、
試験方法Aに規定される第2のセクションの布帛層の圧縮率が、0.5%以下である、第2のセクションと
を含む防弾に好適な布帛アセンブリ(fabric assembly)に係る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】第1のセクションの外側布帛層(プライ)の平面図であり、連結具ライン、連結具長さ、連結具の列の間隔および連結具の面積を示している。
【図1B】ステープルまたはクリップ連結具の端面図である。
【図1C】布帛プライを通した連結具のピンパターンを示す平面図である。
【図2】連結具がなく、隅部タックステッチにより一緒に保持された第2のセクションの布帛層の平面図である。
【図3A】連結具を有する第1のセクションの複数の布帛層の断面図である。これを「A」と称す。
【図3B】連結具のない第2のセクションの複数の布帛層の断面図である。これを「B」と称す。
【図4】図3AのAによる被弾面としての第1のセクションと、図3BのBによる裏面としての第2のセクションとを有するベストスタックの断面図である。
【図4A】被弾面が布帛層Aの数多くの下位アセンブリおよび裏面が布帛層Bの数多くの下位アセンブリから組み立てたベストスタックの断面図である。
【図5】AとBの繰り返し配列を有するベストスタックの断面図である。
【図6A】図3BのBによる第2のセクションを有する芯を挟む、図3AのAによる被弾面と裏面として第1のセクションを有するベストスタックの断面図である。
【図6B】図3AのAによる第1のセクションを有する芯を挟む、図3BのBによる被弾面と裏面として第2のセクションを有するベストスタックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
防弾に好適な布帛アセンブリは、第1のセクションと第2のセクションとして本明細書に示される2つの単独の別個のセクションを含む。両セクション共、1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からできた複数の布帛層を含む。
【0009】
本明細書で用いる「複数」とは少なくとも2つを意味する。しかしながら、多くの場合、少なくとも5つ、場合によっては、少なくとも10〜30までの布帛層を、布帛アセンブリの第1および/または第2のセクションに用いるであろう。
【0010】
布帛アセンブリの第1および第2のセクションの糸
第1および第2のセクションに用いる1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸は当該技術分野において周知されている。第1および第2のセクションの糸は同一である必要はないものと考えられる。糸に好適な材料としては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアゾールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0011】
ポリマーがポリアミドのときは、アラミドが好ましい。「アラミド」という用語は、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が、2つの芳香族環に直接付加しているポリアミドを意味する。好適なアラミド繊維は、Man−Made Fibres−Science and Technology,Volume2,Section、題名Fibre−Forming Aromatic Polyamides、297頁、W.Blackら、Interscience Publishers,1968に記載されている。
【0012】
好ましいアラミドは、パラ−アラミドである。好ましいパラ−アラミドは、PPD−Tと呼ばれるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。PPD−Tは、p−フェニレンジアミンと塩化テレフタロイルのモル対モル重合から得られたホモポリマー、同じく、少量の他のジアミンのp−フェニレンジアミンへの、そして、少量の他の二酸塩化物の塩化テレフタロイルへの組み込みから得られたコポリマーである。概して、他のジアミンおよび他の二酸塩化物は、p−フェニレンジアミンまたは塩化テレフタロイルの約10モルパーセントまで、あるいはこれよりやや多い量で用いることができる。ただし、他のジアミンおよび二酸塩化物が、重合反応を妨げる反応基を有していない場合に限る。PPD−Tとはまた、他の芳香族ジアミンおよび他の芳香族二酸塩化物、例えば、塩化2,6−ナフタロイルあるいは塩化クロロ−またはジクロロテレフタロイルあるいは3,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組み込みから得られるコポリマーを意味する。
【0013】
添加剤は、アラミドと共に用いることができ、10重量パーセント以上までの他のポリマー材料をアラミドとブレンドできることが分かっている。アラミドのジアミンの代わりに10パーセント以上の他のジアミン、または二酸塩化物またはアラミドの代わりに10パーセント以上の他の二酸塩化物を有するコポリマーを用いることができる。
【0014】
ポリマーがポリオレフィンのときは、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。「ポリエチレン」という用語は、主に、好ましくは、100万を超える分子量の鎖状ポリエチレン材料を意味し、主鎖の100個の炭素原子当たり5つ以下の少量の鎖分岐またはコモノマーを含有していてもよく、また、約50重量パーセント以下の1つ以上のポリマー添加剤、例えば、アルケン−1−ポリマー、特に、低密度ポリエチレン、プロピレン等または低分子量添加剤、例えば、一般的に組み込まれる酸化防止剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、着色剤等と混合したものを含有していてもよい。これは、拡張連鎖ポリエチレン(ECPE)または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)として一般的に知られている。
【0015】
ある好ましい実施形態において、ポリアゾールは、ポリベンズアゾールおよびポリピリダゾール等のポリアレーンアゾールである。好適なポリアゾールとしては、ホモポリマー、同じく、コポリマーが挙げられる。添加剤は、ポリアゾールと共に用いることができ、10重量パーセントまでの他のポリマー材料を、ポリアゾールとブレンドすることができる。また、ポリアゾールのモノマーの代わりに10パーセント以上の他のモノマーを有するコポリマーを用いることができる。好適なポリアゾールホモポリマーおよびコポリマーは、公知の手順により製造することができる。
【0016】
好ましいポリベンズアゾールは、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾチアゾールおよびポリベンズオキサゾールであり、より好ましくは、30gpd以上の靭性の糸を有する繊維を形成することができるかかるポリマーである。ポリベンズアゾールが、ポリベンゾチアゾールである場合には、好ましくは、ポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)である。ポリベンズアゾールが、ポリベンズオキサゾールである場合には、好ましくは、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)であり、より好ましくは、PBOと呼ばれるポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)である。
【0017】
好ましいポリピリダゾールは、ポリピリジイミダゾール、ポリピリドチアゾールおよびポリピリドオキサゾールであり、より好ましくは、30gpd以上の靭性の糸を有する繊維を形成することができるかかるポリマーである。ある実施形態において、好ましいポリピリダゾールは、ポリピリドビスアゾールである。好ましいポリ(ピリドビスオキサゾール)は、PIPDと呼ばれるポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾールである。ポリピリドビスアゾールを含む好適なポリピリダゾールは、公知の手順により製造することができる。
【0018】
布帛アセンブリの第1のセクション
布帛アセンブリの第1のセクションの布帛の糸の要件は、上述したとおりである。
【0019】
第1のセクションのさらなる要件としては、(1)互いに連結され、(2)圧縮され、(3)65N以下の強度(張力破断力)を有する連結具により一緒に固定され、(4)連結具により画定される15平方mm〜350平方mmの範囲の面積を有し、(5)試験方法Aに規定される少なくとも2%の圧縮率を有する布帛が含まれる。
【0020】
要件(1)、(3)および(4)については、互いに関連させて説明する。
【0021】
第1のセクションの布帛は、互いに、物理的に連結されている必要がある。布帛層の連結は、65N以下の機械的強度を有する連結具による。好ましくは、機械的強度は、40N、より好ましくは、35Nを超えない。機械的強度についての下限は、決定的なものではないが、実際、1N未満とはならない。
【0022】
連結具の張力破断力は、1つ以上の連結具材料の最終引張応力と、連結具の断面積の乗数である。このように、連結具の寸法は、特定の材料について所望の破断力が得られるように調整することができる。化学的連結具については、所望の寸法は、2つの近接する布帛層間の接着面積である。
【0023】
好ましい連結具は、ステッチのためのスレッドの使用によるものであり、すなわち、第1のセクションの別個の布帛層を一緒にステッチするものである。スレッドは、連続フィラメント糸またはステープル繊維であってもよい。機械ステッチにおいては、2つのスレッドを一緒にループして、一方のスレッドは上側から供給し、他方は、下側から供給するのが一般的である。かかるステッチ技術を、連結具スレッドを縫うのに用いるときは、少なくとも1つのボビンが、65N以下の破断力を有する材料でなければならない。プライ糸を連結具スレッドとして用いる場合には、糸を含む個々のスレッドを併せた破断力が、65N以下でなければならない。プライ糸は、2つ以上の単糸を一緒にツイストすることにより形成した糸である。好適なスレッド材料としては、アラミド、綿、ナイロン、ポリエステルまたはエラストマーポリウレタン(Lycra(登録商標))が挙げられる。加熱時に収縮する連結具糸は、布帛層を圧縮する別の手段である。
【0024】
しかしながら、ステッチスレッドまたは糸以外の連結具を用いてもよいものと考えられる。これらの連結具は、ステープルや機械的手段等により、機械的なものとすることができる。連結具は、互いに接触している必要はなく、連結具により線引きされる面積を提供するものと考えられる。
【0025】
機械的連結具は、スレッドばかりでなく、クリップ、ピン、ニードルまたはステープルであってもよい多くの形態とすることができ、ポリマー、金属、セラミックまたはその他無機材料で製造することができる。ピン、クリップ、ニードルまたはステープルについて好適な材料としては、カーボン、ガラス、セラミック、金属またはポリマーが挙げられる。
【0026】
化学的連結具の一例は接着剤である。接着剤は、1379MPa以下のモジュラスを有するのが好ましい。接着剤は、熱硬化性または熱可塑性であってよく、好ましくは、20℃〜180℃、より好ましくは、20℃〜120℃で硬化する。接着剤は、液体、ペースト、粉末またはフィルムの形態にあってもよい。好適な材料としては、エポキシ、フェノール、ウレタン、ポリエステル、ビニルエステル、ポリイミドまたはマレイミドが挙げられる。接着連結具は、実線または破線、ドット、楕円、ダイヤモンドおよびその他形状の形態を採ってもよい。
【0027】
上述したとおり、連結具は、65N以下の張力破断力を有する必要がある。機械的連結具の場合には、破断力は、使用前に連結具を試験することにより求めることができる。しかしながら、化学的連結具については、典型的に、布帛の層での実際に使用する機械的強度を求める必要がある。
【0028】
連結具ピッチ長は、(1)ステッチについては、1つのステッチとするのに布帛の表面で、連結具ラインに沿って針が進む最小距離、(2)クリップおよびステープルについては、クリップまたはステープルの長さ、および(3)ピンについては、同じ連結具ライン上の2つの近接する連結具間の最小距離である。これについて、図1A〜1Cに詳細に示してある。
【0029】
連結具面積は、連結具ラインの境界で囲まれた面積である。
【0030】
連結具の列の間隔は、近接する平行な連結具ライン間の距離である。
【0031】
連結具の機能は、布帛の高靭性フィラメントの機械的特性に影響を与えることなく、防護具の運動量伝達能力を高めることである。他の要件は、布帛中のフィラメントの軸方向の動きを過度に抑制しないことである。
【0032】
運動量伝達を高めるために、連結具が布帛表面に存在する面積において、連結具は布帛糸を圧縮できる必要がある。連結具はまた、表面および布帛アセンブリの第1のセクションの各連結布帛内の面積も画定する。表面積は、15〜350平方mmの範囲であり、好ましい範囲は、100〜250平方mm、より好ましい範囲は、115〜180平方mmである。布帛アセンブリの第1のセクションにおいて画定された面積の数は、布帛アセンブリの全体のサイズにより決まるであろう。アセンブリの好ましい用途が、人間が着用する柔軟な防護服であるため、布帛アセンブリ表面で、連結具により画定される面積の最低数は、少なくとも1000であろう。
【0033】
連結具は、任意の好適な長さを有していてもよい。好ましくは、長さは、2.54〜15.24mm、より好ましくは、3.56〜14.22mmである。接着ドット、楕円等については、長さは、接着ドットまたは楕円の最大寸法である。連結具に囲まれた面積の方が、面積の形状より重要である。連結具ラインにより画定される好適な面積形状としては、これらに限られるものではないが、正方形、矩形、三角形、六角形、ダイヤモンドおよび山形が挙げられる。実用上の理由から、15平方mm未満の連結具面積は、連結具挿入プロセスにより、糸が損傷する危険性があるため、あまり望ましくない。
【0034】
連結具を挿入する技術は、周知されており、スレッドについては縫製、ピン、針およびステープルについては、圧力ガン、超音波等が挙げられる。これらの技術は全て、テキスタイルの技術分野において周知されている。
【0035】
連結具が縫製タイプのときは、用いるステッチのタイプは重要でなく、ピッチ長および列の間隔について必要とされる関係に従っていれば、大きく異なり得る。ステッチおよび縫製法、例えば、ハンドステッチ、マルチスレッドチェーンステッチ、オーバーエッジステッチ、フラットシームステッチ、シングルスレッドロックステッチ、ロックステッチ、チェーンステッチ、ジグザグステッチ等が、本発明に用いる好ましい固定手段を構成する。
【0036】
布帛層の糸への損傷を最少にする、すなわち、防弾性のためには、連結部ラインが、布帛の縦横糸両方に、5〜85度の間の角度となるような方向に配置するのが好ましい。より好ましくは、この角度は、20〜70度の間にすべきである。
【0037】
布帛アセンブリの第1のセクションのさらなる要件は、圧縮され、試験方法Aに規定される少なくとも2%の圧縮率を有する布帛の使用である。この試験は、製造後、布帛の厚さを減じるような処理をさらにすることなく、布帛の厚さを最初に測定する手順を定義するものである。その後、布帛の厚さは、布帛アセンブリの第1のセクションで用いるために圧縮した後、測定される。%基準で表わされる圧縮率は、元の布地の厚さを基準とした、布帛の厚さの減少量である。
【0038】
布帛アセンブリの第1のセクションについて圧縮した布帛は、少なくとも2%、好ましくは、少なくとも5%、より好ましくは、少なくとも7%の圧縮率であろう。説明すると、圧縮率は、20%を超えず、より狭い最大値は15%である。
【0039】
布帛アセンブリの第2のセクション
布帛アセンブリの第2のセクションの布帛における糸の要件は、上述したとおりである。第2のセクションの繊維は、第1のセクションのものと異なっていてもよい。
【0040】
第2のセクションのさらなる要件としては、(1)15〜350平方mmの範囲の面積を画定するために、布帛は連結されていないこと、(2)試験方法Aに規定される布帛の圧縮率が、0.5%以下であることが挙げられる。これらの実質的に圧縮されていない布帛はまた、ルースプライとしても当該技術分野において知られている。
【0041】
布帛アセンブリの第2のセクションの要件(1)については、布帛層が互いに連結していないのが好ましい。しかしながら、全体の布帛アセンブリの製造においては、滑ることなく、層の配列を保つのが望ましい。従って、本明細書で用いる「実質的に連結のない」とは、連結の量が、滑るのを防ぐのに必要であるが、層を互いに圧縮させるには不十分な量であることを意味する。この例は、図2に示す隅部ステッチである。従って、第2のセクションは、布帛間(3つ以上も)に実質的に連結がないのが好ましい。布帛アセンブリの第2のセクションの要件(2)については、布帛の圧縮がないのが好ましい。しかしながら、通常の取扱いおよび製造においては、最小の圧縮は生じる可能性がある。従って、試験方法Aに規定される最大の圧縮率は、0.5%以下、好ましくは、0.2%、より好ましくは、0%である。
【0042】
布帛の構成
様々な構成技術を、布帛アセンブリの第1および第2のセクションの布帛に用いてもよいと考えられる。例を挙げると、布帛は、織であっても、バインダーを含む、または含まない一方向性であっても、配向の異なる糸の層による多軸であっても、3次元であってもよい。これらの布帛のスタイルはそれぞれ、当該技術分野において周知されている。さらに、構成と組成の両方において、異なる組み合わせの布帛を、布帛アセンブリの第1のセクションおよび第2のセクションに用いることができるものと考えられる。
【0043】
防護服物品
防護服物品は、少なくとも2つの布帛層下位アセンブリを含み、一方の下位アセンブリは、連結具を有する布帛層を含む第1のセクションであり、他方は、連結具のない布帛層を含む第2のセクションである。各下位アセンブリは、一緒に積み重ねられた2〜30の織布層を有することができる。異なる下位アセンブリの織布層は、同一または異なるものとすることができる。最終アセンブリは、各下位アセンブリの少なくとも1つのタイプを含む。そして、最終アセンブリを、ベストパックまたは防護服物品に適合させる。
【0044】
最終アセンブリを含む下位アセンブリの全てからの総数の布帛層は、一緒に積み重ねたとき、5.0kg/m2以下、好ましくは、4.68kg/m2以下の面密度を有するのが好ましい。
【0045】
防弾ベストのデザインによって、連結具を必要とする布帛層の数は変わる。連結具を有する層および連結具のない層の位置は、アセンブリ内で変えることができる。例えば、図4、4A、5、6Aおよび6Bを参照のこと。これらの図面において、「A」と示された布帛層は、連結具を有し、「B」と示されたものは、連結具はない。図面に示した以外の下位アセンブリの組み合わせも有用である。
【0046】
図4に示す第1の実施形態において、連結具を有する布帛層を含む下位アセンブリ「A」は、被弾方向に向いており、連結具のない布帛層を含む下位アセンブリ「B」は、被弾方向でない方向に向いている。
【0047】
第2の実施形態において、連結具を有する布帛層をそれぞれ含む数多くの下位アセンブリは、被弾方向に向いており、連結具のない布帛層をそれぞれ含む数多くの下位アセンブリは、被弾方向でない方向に向いている。これは、弾丸に向いた連結具を有する布帛層A1、A2およびA3の3つの下位アセンブリ、および被弾方向でない方向に向いた連結具のない布帛層B1、B2およびB3の3つの下位アセンブリを示す図4Aに例示されている。
【0048】
図5のような第3の実施形態は、連結具を有する布帛層「A」および連結具のない布帛層「B」を有する交互の下位アセンブリの構成を含む。
【0049】
第4の実施形態において、それぞれ連結具を有する布帛層を含む2つの下位アセンブリは、最終アセンブリの2つの外側層を形成し、連結具のない布帛層を含む下位アセンブリは、アセンブリの芯を形成する。これを図6Aに示す。
【0050】
第5の実施形態において、それぞれ連結具のない布帛層を含む2つの下位アセンブリは、最終アセンブリの2つの外側層を形成し、連結具を有する布帛層を含む下位アセンブリは、アセンブリの芯を形成する。これを図6Bに示す。
【0051】
連結具のないセクションの布帛層を一緒に保持して、あるレベルの一貫性を維持しなければならない。これらの層は、例えば、ステッチまたは接着剤またはメルトボンディングにより、布帛の端部に、かつ/または隅部を横断して、取り付けることができる。布帛層にあるこれらのステッチは、連結具と同じように層を圧縮することはなく、防弾性能には影響しない。任意の好適なスレッドを、端部および隅部を縫うのに用いてもよい。端部および隅部ステッチには、アラミドスレッドが特に好適である。端部または隅部ステッチは、連結具を有する布帛層には任意のプロセスであり、最終組み立てプロセスを補助できるという利点がある。
【0052】
好ましくは、防弾性布帛最終アセンブリは、9mmの弾丸に対して試験したとき、少なくとも465m/秒のV50および/または17粒弾丸に対して試験したとき、少なくとも579m/秒のV50を有し、布帛層は、一緒に積み重ねると、4.68kg/m2を超えないスタック面密度を有する。V50は、銃弾または破片が、発砲の50%が防護具に貫通し、残り50%が貫通しない平均速度を特定する統計的尺度である。測定されるパラメータは、ゼロ度でのV50であり、ゼロ度とは、ターゲットに対する弾丸の傾斜を指す。
【0053】
組み立て方法
柔軟な防護服物品用の布帛アセンブリを製造する方法は、(1)破断力が65N以下の連結具を含み、連結具により囲まれた面積が、30〜350平方mmである、布帛層のアセンブリまたは下位アセンブリを形成する工程と、(2)連結具のない布帛層のアセンブリまたは下位アセンブリを形成して、これらの層を、端部に沿って、かつ/または連結具を横断してステッチする工程と、(3)アセンブリまたは下位アセンブリを所望の順番で組み合わせて、全布帛薄層の総重量を、5.0kg/m2未満、より好ましくは、4.68kg/m2未満とする工程と、(4)最終布帛アセンブリを、パウチまたはベストパックに配置する工程とを含む。
【0054】
試験方法
温度:温度は全て、摂氏(℃)で測定した。
【0055】
線密度:糸または繊維の線密度は、ASTM D1907−97およびD885−98に記載された手順に基づいて、既知の長さの糸または繊維を秤量することによって求められる。デシテックスまたは「dtex」は、10,000メートルの糸または繊維のグラム単位の重量と定義される。デニール(d)は、デシテックス(dtex)の9/10倍である。
【0056】
引張特性:試験する繊維を調整してから、ASTM D885−98に記載された手順に基づいて引張試験した。靱性(破断靱性)、弾性率、破断力および破断点伸びは、Instron万能試験機で試験糸を破断することによって求められる。
【0057】
面密度:布帛層の面密度を、選択されたサイズ、例えば、10cm×10cmの各単層の重量を測定することによって求めた。複合体構造の面密度は、個々の層の面密度の合計によって求めた。
【0058】
弾道貫通性能:多層パネルの弾道試験を、調達文書FQ/PD 07−05B(Body Armor,Multiple Threat/Interceptor Improved Outer Tactical Vest)およびMIL STD−662F(V50 Ballistic Test for Armor)に記載されたような標準的手順に従って実施した。大半の実施例について、4つのターゲットを試験し、各ドライターゲットに、ゼロ度傾斜で、6〜9発、発砲した。記録されたV50値は、各実施例について発砲数の平均値である。
【実施例】
【0059】
本発明の方法に従って作製した実施例は、数値で示される。対照または比較例は文字で示される。比較例および実施例に関連するデータおよび試験結果を表1に示す。
【0060】
層の説明
以下の高靭性繊維布帛およびシート構造の層を作製し、以下の弾道試験のために様々な複合アセンブリとした。
【0061】
(S15351F)布帛層「F1」は、E.I.du Pont de Nemours and CompanyよりKevlar(登録商標)パラ−アラミドブランドKM2糸という商品名で入手可能な600デニール(660dtex)のポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(またはPA)糸の平織布であり、1センチメートル当たり11.1×11.1エンド(1インチ当たり28×28エンド)で織った。
【0062】
(S706F)布帛層「F2」は、E.I.du Pont de Nemours and CompanyよりKevlar(登録商標)パラ−アラミドブランドKM2糸という商品名で入手可能な600デニール(660dtex)のポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(またはPA)糸の平織布であり、1センチメートル当たり13.5×13.5エンド(1インチ当たり34×34エンド)で織った。
【0063】
上記の布帛層を、以下の例のとおり組み立ててから、発砲の前に、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)のナイロン袋に入れた。弾丸に向いた袋の側は、900dtex(1000デニール)Woodland Camouflage Corduraリップストップ布であり、他方の側は、450dtex(500デニール)Black Corduraリップストップ布であった。両布共、Bradford Printing&Finishing LLC,Bradford,RIから入手した。
【0064】
連結具スレッドは全て、Juki sewing machine、型番LU 563を用いて縫った。
【0065】
例A
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の28枚の層を、層の四隅のステッチにより、面密度5.23kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.,Northbrook,IL製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、478〜500m/sの間であり、平均値は488m/sであった。
【0066】
例B
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の26枚の層を、層の四隅のステッチにより、面密度4.88kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、474〜497m/sの間であり、平均値は483m/sであった。
【0067】
例C
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の35枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度5.28kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、496〜525m/sの間であり、平均値は511m/sであった。
【0068】
例D
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の31枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度4.68kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、454〜466m/sの間であり、平均値は462m/sであった。
【0069】
例E
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の28枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度5.23kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、563〜612m/sの間であり、平均値は577m/sであった。
【0070】
例F
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の26枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度4.88kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、532〜582m/sの間であり、平均値は558m/sであった。
【0071】
例G
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の35枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度5.28kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、573〜606m/sの間であり、平均値は592m/sであった。
【0072】
例H
約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布層F1の31枚の層を、層の四隅のステッチ(隅部ステッチ)により、面密度4.68kg/m2の物品へと一緒に保持した。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。6つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、553〜578m/sの間であり、平均値は565m/sであった。
【0073】
例J
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の13枚の層を、13枚の層を貫いて直交するよう縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が69.8NのSaunders Thread Company,Gaston,NC製961dtex(865デニール)のKevlar(登録商標)スパンスレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F2の38cm×38cm(15インチ×15インチ)の13枚のルース層と組み合わせて、面密度4.88kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.,製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、521〜562m/sの間であり、平均値は547m/sであった。
【0074】
例K
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が69.8NのSaunders Thread Company製961dtex(865デニール)のKevlar(登録商標)スパンスレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.,製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、554〜586m/sの間であり、平均値は571m/sであった。
【0075】
例L
本例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の26枚の層を、全ての層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。また、ステッチは、層の四隅(隅部ステッチ)にあって、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、499〜532m/sの間であり、平均値は518m/sであった。
【0076】
実施例1
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の13枚の層を、13枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F2の38cm×38cm(15インチ×15インチ)の13枚のルース層と組み合わせて、面密度4.88kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、484〜493m/sの間であり、平均値は487m/sであった。
【0077】
例Bでは、1回の発砲で異常に高いV50値が観察され、平均値は高かった。しかしながら、対照例Aより面密度が7パーセント低いアセンブリにおいて連結具のある布帛層を有する実施例1は、例Aに比べて、V50の減少は何ら示さなかった。
【0078】
実施例2
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が、弾丸に向くようにして、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、483〜498m/sの間であり、平均値は492m/sであった。
【0079】
例C、Dおよび実施例2の結果を比較したところ、物品重量が5.28kg/m2の例Cは、許容できるV50を有していたが、4.68kg/m2と面密度が減じた例DのV50は、10パーセント低く、所望の目標値を僅かに下回った。例Bと同数の布層および密度を有するが、第1の15枚の布帛層の被弾面に連結具を組み込んだ実施例2は、6パーセントから許容できる値までV50性能を回復した。
【0080】
実施例3
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F2の13枚の層を、13枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F2の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の13枚のルース層と組み合わせて、面密度4.88kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、552〜575m/sの間であり、平均値は569m/sであった。
【0081】
例E、Fおよび実施例3の結果を比較したところ、面密度を7パーセント減じると、V50値が約4パーセント減少した。第1の13枚の布帛層の被弾面に連結具を組み込むと、全て回復したが、V50性能は1パーセントであった。例Lによれば、全布帛層に連結具を縫うと、V50値が非常に低くなった。例Jにより示されるとおり、65Nを超える破断力を有する連結具材料を使用しても、V50は低かった。
【0082】
実施例4
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、564〜605m/sの間であり、平均値は585m/sであった。
【0083】
例G、Hおよび実施例4の結果を比較したところ、物品重量が5.28kg/m2の例Gは、許容できるV50を有していたが、4.68kg/m2と面密度が減じた例HのV50は、5パーセント低く、所望の目標値を僅かに下回った。例Hと同数の布層および密度を有するが、第1の15枚の布帛層の被弾面に本発明の連結具を組み込んだ実施例4は、ほぼ完全にV50性能を回復した。
【0084】
実施例5
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は19.1mmであった。連結具ラインは、363平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。2つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、558および570m/sであり、平均値は564m/sであった。
【0085】
実施例6
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は25.4mmであった。連結具ラインは、645平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。3つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、562〜589m/sの間であり、平均値は574m/sであった。
【0086】
実施例7
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Thread Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は6.4mmであった。連結具ラインは、40平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒模擬破片弾(FSP)を、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。2つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、571および576m/sであり、平均値は574m/sであった。
【0087】
実施例4〜7の結果を比較したところ、連結具が約161平方mmの面積を囲む布帛アセンブリのV50弾道性能は非常に良好で、約363平方mmおよび約40平方mmの囲まれた面積は、許容できる弾道性能を与える囲まれた面積の上限および下限をそれぞれ表わしている。
【0088】
実施例8
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が40.1NのSaunders Thread Company製2400dtex(2160デニール)の綿スレッドG4−Tx240であった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、562〜576m/sの間であり、平均値は571m/sであった。
【0089】
実施例9
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具のない層が弾丸に向くように、すなわち、連結具を有する層が本体側になるように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、576〜590m/sの間であり、平均値は583m/sであった。
【0090】
本実施例によれば、連結材料の破断力が65N未満で、連結具が50〜350平方mmの面積を囲んでいれば、連結した布帛層が被弾方向から外方を向いたアセンブリのV50が、連結のない層のアセンブリに比べて増大するであろうことが分かる。
【0091】
実施例10
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて直交するように縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が29NのUnited Thread Mills製351dtex(316デニール)のKevlar(登録商標)スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。17粒FSPを、アルミニウム24ga、0.20、2024−T3フレーム・クランプ裏当て板に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具を有する層が弾丸に向くように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、583〜594m/sの間であり、平均値は588m/sであった。
【0092】
例J、Kおよび実施例10の結果を比較したところ、低い破断力(29N)の連結具材料を用いると、高い破断力(69.8N)の連結具を用いるのに比べて、大幅に良好なV50を与えることが分かる。
【0093】
実施例11
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が18.5NのUnited Mills製453dtex(408デニール)の綿スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具のない層が弾丸に向くように、すなわち、連結具を有する層が本体側になるように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、465〜480m/sの間であり、平均値は473m/sであった。
【0094】
実施例9のように、本実施例によれば、連結材料の破断力が65N未満で、連結具が50〜350平方mmの面積を囲んでいれば、連結した布帛層が被弾方向から外方を向いたアセンブリのV50が、連結のない層のアセンブリに比べて増大するであろうことが分かる。
【0095】
実施例12
本実施例において、約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の布F1の15枚の層を、15枚の層を貫いて縫って、連結具により一緒に保持した。連結具材料は、破断力が29NのUnited Thread Mills製351dtex(316デニール)のKevlar(登録商標)スレッドであった。連結具ピッチ長は6.4mmであり、連結具の列の間隔は12.8mmであった。連結具ラインは、161平方mmの連結具面積を囲んでいた。連結具のある下位アセンブリを、隅部ステッチにより、布帛F1の約38cm×38cm(15インチ×15インチ)の16枚のルース層と組み合わせて、面密度4.68kg/m2の物品とした。隅部ステッチスレッドは、B−92という商品名のImperial Threads Inc.製の800dtex(720デニール)のKevlar(登録商標)であった。9mm124粒FMJ弾丸を、Roma Plastinaナンバー1背面衝撃観察用粘土に支持されたターゲットに対して用いて、弾道試験を行った。連結具のない層が、弾丸に向くようにして、すなわち、連結具を有する層が本体側になるように、試験物品を配置した。4つのターゲットの弾道試験の結果のV50値は、492〜505m/sの間であり、平均値は498m/sであった。
【0096】
以下の表に、例の試験結果をまとめてある。
【0097】
【表1−1】
【表1−2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸から作製された複数の連結圧縮された布帛層を含む少なくとも1つの第1のセクションであって、
前記連結圧縮された布帛層が、65N以下の張力破断力を有する連結具により一緒に固定されており、
前記連結具が、15〜350平方mmの範囲で、前記複数の布帛層内かつ該布帛層の表面上の面積を画定しており、
試験方法Aに規定される前記第1のセクションの前記布帛層の圧縮率が、少なくとも2%である、少なくとも1つの第1のセクションと、
(b)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からから作製された複数の布帛層を含む少なくとも1つの第2のセクションであって、
前記布帛層が、15〜350平方mmの範囲の面積を画定するために、連結されておらず、
試験方法Aに規定される前記第2のセクションの前記布帛層の圧縮率が、0.5%以下である、少なくとも1つの第2のセクションと
を含む防弾に好適な布帛アセンブリ。
【請求項2】
前記第2のセクションの布帛が、前記層が互いに対して滑るのを防ぐのに十分な機械的強度のみによって連結されている請求項1に記載の布帛アセンブリ。
【請求項3】
前記第1および第2のセクションの布帛層の総数が、一緒に積み重なったとき、5.0kg/m2未満の面密度を有する請求項1に記載の布帛アセンブリ。
【請求項4】
綿、ポリエステル、p−アラミド、エラストマーポリウレタンおよびこれらの混合物のフィラメントを含むスレッドの形態にある請求項1に記載の連結具。
【請求項5】
連続糸が、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアゾールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから作製されたフィラメントで作製されている請求項1に記載の布帛。
【請求項6】
(a)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する連続糸から作製された複数の布帛層を積み重ねる工程と、
(b)前記複数の布帛層を圧縮固定して、前記布帛層を貫いて連結具を挿入することにより、第1のセクションを形成する工程であって、前記連結具が、前記布帛の表面にラインパターンを形成しており、前記連結具が、各連結具の張力破断力が65N以下となるような、機械的強度をさらに有していて、前記連結具ラインが、前記連結具に囲まれた圧縮布帛の面積の周囲をさらに画定しており、前記囲まれた圧縮面積が、前記圧縮布帛層表面で、15平方mmを超え、350平方mm未満であり、試験方法Aに規定される圧縮率が少なくとも2.0%である圧縮束を提供する工程と、
(c)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する連続糸からから作製された複数の布帛層を積み重ねる工程と、
(d)前記複数の布帛層を、隅部および端部周囲に固定することにより、第2のセクションを形成して、試験方法Aに規定される圧縮率が0.5%以下である凝集束を提供する工程と、
(e)少なくとも1つの第1のセクションを、少なくとも1つの第2のセクションと組み合わせて、5.0kg/m2以下の面密度を有する布帛アセンブリとする工程と
を含む防護服物品用布帛アセンブリを製造する方法。
【請求項1】
(a)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸から作製された複数の連結圧縮された布帛層を含む少なくとも1つの第1のセクションであって、
前記連結圧縮された布帛層が、65N以下の張力破断力を有する連結具により一緒に固定されており、
前記連結具が、15〜350平方mmの範囲で、前記複数の布帛層内かつ該布帛層の表面上の面積を画定しており、
試験方法Aに規定される前記第1のセクションの前記布帛層の圧縮率が、少なくとも2%である、少なくとも1つの第1のセクションと、
(b)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する糸からから作製された複数の布帛層を含む少なくとも1つの第2のセクションであって、
前記布帛層が、15〜350平方mmの範囲の面積を画定するために、連結されておらず、
試験方法Aに規定される前記第2のセクションの前記布帛層の圧縮率が、0.5%以下である、少なくとも1つの第2のセクションと
を含む防弾に好適な布帛アセンブリ。
【請求項2】
前記第2のセクションの布帛が、前記層が互いに対して滑るのを防ぐのに十分な機械的強度のみによって連結されている請求項1に記載の布帛アセンブリ。
【請求項3】
前記第1および第2のセクションの布帛層の総数が、一緒に積み重なったとき、5.0kg/m2未満の面密度を有する請求項1に記載の布帛アセンブリ。
【請求項4】
綿、ポリエステル、p−アラミド、エラストマーポリウレタンおよびこれらの混合物のフィラメントを含むスレッドの形態にある請求項1に記載の連結具。
【請求項5】
連続糸が、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアゾールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから作製されたフィラメントで作製されている請求項1に記載の布帛。
【請求項6】
(a)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する連続糸から作製された複数の布帛層を積み重ねる工程と、
(b)前記複数の布帛層を圧縮固定して、前記布帛層を貫いて連結具を挿入することにより、第1のセクションを形成する工程であって、前記連結具が、前記布帛の表面にラインパターンを形成しており、前記連結具が、各連結具の張力破断力が65N以下となるような、機械的強度をさらに有していて、前記連結具ラインが、前記連結具に囲まれた圧縮布帛の面積の周囲をさらに画定しており、前記囲まれた圧縮面積が、前記圧縮布帛層表面で、15平方mmを超え、350平方mm未満であり、試験方法Aに規定される圧縮率が少なくとも2.0%である圧縮束を提供する工程と、
(c)1dtex当たり少なくとも7.3グラムの靭性および1dtex当たり少なくとも100グラムのモジュラスを有する連続糸からから作製された複数の布帛層を積み重ねる工程と、
(d)前記複数の布帛層を、隅部および端部周囲に固定することにより、第2のセクションを形成して、試験方法Aに規定される圧縮率が0.5%以下である凝集束を提供する工程と、
(e)少なくとも1つの第1のセクションを、少なくとも1つの第2のセクションと組み合わせて、5.0kg/m2以下の面密度を有する布帛アセンブリとする工程と
を含む防護服物品用布帛アセンブリを製造する方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2012−517577(P2012−517577A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549325(P2011−549325)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/023596
【国際公開番号】WO2010/093611
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/023596
【国際公開番号】WO2010/093611
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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