説明

防振台装置

【課題】長尺状の防振台1をポンプユニットP等、機器の幅方向に2つ並べて梁部材8により連結してなる防振台装置Aにおいて、ポンプの起動時の反力による横揺れを十分に抑制できるようにする。
【解決手段】2つの防振台1,1の各架台2には、それぞれの幅方向外側で長手方向に延びるようにして可動ブラケット6が配設され、この可動ブラケット6の基端側(相対的に架台2の端寄りに位置する側)が各架台2に対しその長手方向にスライド移動可能に且つアイソレータ4を中心に回動可能に取り付けられている。ポンプユニットPのポンプ側がモータ側に比べて幅広の場合に、可動ブラケット6を基端側の周りに回動させることで、その先端側に配設される取付ボルト5の位置を変更し、防振台1,1をハの字状にして配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばポンプユニット等、振動の大きな設備機器を設置するための防振台装置に関し、特にその機器の長手方向に延びる長尺状の防振台を幅方向に2つ並べて連結した構造のものに係る。
【背景技術】
【0002】
従来より一般にポンプユニット等を設置する防振台装置としては、概略矩形厚板状の上部架台の上面に複数の凹部を開口させ、この各凹部内にそれぞれ移動可能にアンカーボルトを配置したものが用いられている。そして、そのアンカーボルトの位置をポンプユニット等の取付穴に合わせて調整した後に、凹部内にコンクリートを充填して固定するようにしている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
そのような防振台装置では現場でのコンクリート打ち作業が必要であり、手間がかかるとともに、廃棄するときには環境に負荷をかけ易いという問題もある。また、設置するポンプユニット等によってアンカーボルトの位置を調整できるものの、上部架台の外形寸法は変わらないので、これを或る程度大きなポンプユニット等に合わせて設定すると、小型のポンプユニット等の場合は無駄な設置面積を占めることになる。
【0004】
これらの不具合に着目して本願の発明者は、ポンプユニットの長手方向に延びる長尺の防振台(所謂レール式防振台)を該ポンプユニットの幅方向に並べて、それぞれの上部架台同士を梁部材によって連結する構造を提案し、既に特許出願をしている(特許文献2)。すなわち、各防振台の上部の架台にはポンプユニットのベース部が直接、載置されるので、その剛性を確保するために架台同士の間に梁部材を架け渡して連結するのである。
【0005】
また、そうして防振台の架台と梁部材とを連結するためのブラケット部材を利用して、前記提案例のものでは架台と梁部材とをポンプユニットのベース部に締結するようにしている。すなわち、ブラケット部材には架台の幅方向外側に延びる延出部が設けられるとともに、梁部材の両端部はそれぞれ架台の下をくぐって外側に突出しており、この突出部位において梁部材の端側を前記ブラケット部材の延出部と共締めでポンプユニットのベース部に結合するのである。
【0006】
より詳しくは、前記ブラケットの延出部には貫通溝が形成されていて、取付ボルトの位置を架台の幅方向に調整できるようになっている。そして、相対的に幅の狭いモータ側の取付穴の間隔(取付ピッチ)に合わせて2つの防振台の間隔を決めた後に、相対的に幅の広いポンプ側の取付ピッチに合うように、前記の貫通溝に沿って取付ボルトを移動させるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭54−22873号公報
【特許文献2】特開2008−267524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで一般にポンプユニットは、その長手方向にポンプとモータとが同軸に連結されていて、ポンプ側の幅が相対的に広くなっているとともに、起動時にはそのポンプ側のインぺラを駆動する反力によって、回転軸の周りに大きなローリング・モーメントが発生することになる。
【0009】
これに対し前記提案例のものでは、ポンプユニットの幅方向に並ぶ2つの防振台の間隔が相対的に幅の狭いモータ側の取付ピッチによって決まってしまうため、相対的に幅の広いポンプ側においてはポンプユニットの全幅に対して防振台が内側に入り込んだような状態になる。そのため、前記のように起動時に発生する大きなローリング・モーメントによって、ポンプユニットには大きな横揺れが生じるという不具合があった。
【0010】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、長尺状の防振台をポンプユニット等、機器の幅方向に2つ並べて連結してなる防振台装置において、ポンプの起動時の反力による横揺れを十分に抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成すべく本発明は、架台と梁部材とを連結するブラケットの構造に工夫を凝らして、ポンプユニットのように機器の長手方向一側の幅寸法が他側に比べて大きい場合に、その一側の幅が広いハの字状にして架台を設置できるようにしたものである。
【0012】
すなわち、請求項1の発明は、各々長尺状の架台及び基台の間に防振体を介在させてなる防振台が、その架台上に載置する機器の幅方向に2つ並んで、それぞれ当該機器の長手方向に延びるように配置され、且つ、前記2つの架台同士が前記機器の幅方向に延びる梁部材によって連結された防振台装置が対象である。
【0013】
そして、前記2つの防振台の各架台には、それぞれの幅方向外側、即ち相対する防振台のある側とは反対側で長手方向に延びるようにして前記梁部材と連結するためのブラケット部材を配設し、相対的に各架台の端寄りに位置する各ブラケット部材の基端側は、該各架台に対してその長手方向にスライド移動可能に且つ上下方向の軸線周りに回動可能に取り付ける一方、当該各ブラケット部材の先端側には、前記梁部材の長手方向の両端側をそれぞれスライド移動可能に取り付たものである。
【0014】
斯かる構成により、機器の幅方向に並ぶ2つの防振台の各架台にはそれぞれ、梁部材との連結のためのブラケット部材が上下方向の軸線周りに回動可能に取り付けられているから、これらブラケット部材と梁部材との位置関係や相互の取付状態を保ったまま、2つの防振台の間の角度を変更して、上方から見てハの字状に設置することができる。
【0015】
よって、例えばポンプユニットのように相対的に幅の広いポンプ側において起動時に大きな反力を受けるものでは、そのポンプ側の幅が広くなるように2つの架台をハの字状に設置することにより、概ねポンプユニットの全幅に近い間隔でその荷重を受け止めることができる。こうすれば、起動時の反力によって大きなローリング・モーメントが発生しても、これによるポンプユニットの横揺れを十分に抑制できる。
【0016】
また、そうして大きな反力を受けるポンプ側に梁部材が配設されていて、これにより防振台の架台同士が連結されて幅方向の剛性が高められていることも、ポンプユニットの横揺れを抑える上で有利に働く。
【0017】
より具体的に、前記ブラケット部材の先端側には前記機器への取付ボルトを配設するとともに、前記梁部材の長手方向の両端側はそれぞれ前記各架台の下方を通過させて、その外側に突出するようにし、この各突出部位において前記ブラケット部材の先端側に取り付けることが好ましい(請求項2)。
【0018】
この構造では、ブラケット部材を機器のベース部に取付ボルトによって締結することにより、そのベース部と梁部材との間に架台を挟み込んで締め付けることができ、上述した提案例(特許文献2)のものと同様に架台と梁部材とを機器のベース部に共締めでしっかりと固定することができる。
【0019】
また、前記防振台の架台が角パイプからなり、その長手方向に移動可能に防振体が配設されている場合に、好ましいのは、前記ブラケット部材の基端側に矩形状の基板部を形成し、これを前記架台に下方から接合するとともに、前記防振体の上部にその周りに回動するように取り付けることである(請求項3)。
【0020】
こうすれば、ブラケット部材の基端側に設けられた基板部が架台(角パイプ)の下面に安定的に接合され、この接合面をガイド面としてブラケット部材を防振体の周りにスムーズに回動させることができる。また、架台上に機器を載置した状態でもその荷重は防振体により受け止められるから、この防振体の周りにブラケット部材や架台(防振台)の位置をずらすことが可能で、ボルトの位置の微調整が行える。
【0021】
より具体的に、好ましいブラケット部材の構造として、その基端側には基板部の一側縁から上方に延びる側板部を形成し、その上縁から前記基板部とは反対側に折れ曲がって延びるように上板部を形成するとともに、この上板部はブラケット部材の基端側から先端側まで延びるものとする。そして、その上板部の先端側において両側縁からそれぞれ折れ曲がって垂下するように垂下板部を形成し、且つこの両垂下板部にはそれぞれ前記梁部材の嵌入される嵌入穴を形成する(請求項4)。
【0022】
このような構造のブラケット部材は板材の曲げ加工によって比較的安価に製造できる。また、その先端側両側縁に形成した垂下板部にそれぞれ梁部材の嵌入穴を設ければ、その梁部材の端側が長手方向に離れた2箇所で保持されるようになり、梁部材をブラケット部材に対し例えば直交する状態で、しっかりと取り付けることができる。
【0023】
特に前記の梁部材を比較的安価な丸パイプによって構成する場合は、それが嵌入される前記嵌入穴の少なくとも下半分の形状を、当該梁部材(丸パイプ)の外形状に相当する円の内接するような多角形状とするのがよい(請求項5)。こうずれば、丸パイプである梁部材の外周が嵌入穴の内周と2点以上で接触するようになり、応力の集中による丸パイプの局所的な変形を回避することができる。このことは、梁部材をブラケットを介して架台や機器にしっかりと取り付ける上で有効である。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したように本発明の防振台装置は、長尺状の2つの防振台を機器の幅方向に並べて梁部材により連結した簡易な構造でありながら、その梁部材と架台との連結構造に工夫を凝らして、2つの防振台の間隔が一端側で広くなるようハの字状に設置できるようにしたから、例えばポンプユニットのように相対的に幅広のポンプ側において起動時に大きな反力を受けるものであれば、このポンプ側の間隔を広げることによって起動時のポンプユニットの横揺れを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態に係る防振台装置の平面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。
【図2】防振台装置を斜め上方から見た斜視図である。
【図3】耐震ストッパ機構の説明図である。
【図4】架台と梁部材との連結構造を拡大して示す斜視図である。
【図5】可動ブラケットの側方から見た図4相当図である。
【図6】可動ブラケットの平面図(a)及び側面図(b)である。
【図7】2つの防振台をハの字に配置したときの図1(a)相当図である。
【図8】ポンプ側の幅が小さなポンプユニットを設置する場合の図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
−全体構成−
図1、2には本発明に係る防振台装置をポンプ防振台に適用した実施形態を示し、図1(a)は平面図で同(b)、(c)はそれぞれ正面図、側面図である。また、図2は、防振台装置Aを斜め上から見た斜視図である。この防振台装置Aは、一例としてポンプ及び電動モータからなるポンプユニット(機器:図7にのみ仮想線Pで示す)を設置するためのもので、そのポンプユニットPの長手方向に延びる長尺状の所謂レール式防振台1を当該ポンプユニットPの幅方向に2つ並べて、それらを連結した構造である。
【0028】
この例では2つの防振台1,1は略同じものであり、各々断面矩形状の角パイプ(例えば構造用角形鋼管等)からなる長尺状の架台2及び基台3が、互いに上下方向に所定の間隔を空けて配置され、その間には架台2及び基台3の長手方向に離れて2つのアイソレータ4,4が介設されている。アイソレータ4は、架台2及び基台3の間の振動伝達を軽減する防振体で、この例ではゴム筒の内部にコイルばねが埋設されて一体化されたものであり、上下にそれぞれ配設されたコ字状の板部材4a,4aが架台2及び基台3に嵌着されて、その長手方向にスライド移動可能になっている。
【0029】
また、各架台2には、その長手方向に離れた2箇所においてそれぞれ防振台装置Aの幅方向外側、即ち相対する防振台1のある側とは反対の側へはみ出すようにして、ポンプユニットPの取付ボルト5,5,…(図2にのみ示す)が配設されるブラケット6,7が設けられている。架台2の長手方向一側(図1(a)の下側、図2の左奥側)のブラケット6は可動ブラケット(ブラケット部材)であり、架台2の外側に沿ってその長手方向に延びるように配設されている。
【0030】
そして、詳しくは後述するが、架台2の端寄りに位置する可動ブラケット6の基端側が当該架台2に対して、その長手方向にスライド移動可能に且つ上下方向の軸線Zの周りに回動可能に取り付けられている一方、可動ブラケット6の先端側には、その上部にポンプユニットPの取付ボルト5が配設されるとともに、梁部材8の端側が貫通する状態でその長手方向にスライド移動可能に取り付けられている。
【0031】
よって、前記の可動ブラケット6を架台2の長手方向にスライド移動させるとともに、その基端側の周りに回動させることによって、ボルト5の取付位置を防振台装置Aの長手方向及び幅方向の双方に変化させて、ポンプユニットPのベース部(以下、ポンプベースともいう)のボルト取付穴に位置合わせすることができる。また、その取付ボルト5によって、詳しくは後述するが、可動ブラケット6がポンプベースに締結されることにより、その近傍において架台2と梁部材8とが結合されるようになっている。
【0032】
一方、架台2の長手方向他側(図1(a)の上側、図2の右手前側)に位置するブラケット7は固定ブラケットであり、ボルト5の軸部が遊嵌される貫通穴7a(図1(a)にのみ符号を付して示す)が形成されている。この貫通穴7aの大きさはボルト5の軸部よりも大きめに設定されていて、その遊びの分だけボルト5の位置を調整することができる。
【0033】
また、図の例では防振台1の架台2よりも基台3が長く、その両端部がそれぞれ架台2の端部よりも外方まで突出している。この突出部位には断面コ字状の補強金具31が嵌着され、そこから上方に延びるように耐震ボルトが配設されていて、上架台2の端部に配設されているブラケットとともに耐震ストッパ機構9を構成している。すなわち、図3に拡大して示すように耐震ボルト9aは、補強金具31の上面にロックナット9cにより締結され、その軸部が耐震ブラケット9bの底部の貫通穴に遊嵌状態で挿通されている。
【0034】
前記ボルト9aの軸部には、ブラケット9bの底部よりも上方にゴムブッシュ9dと平座金9eとが外挿され、さらにナット9fが螺合されている。図ではブラケット9bの床部の上面にゴムブッシュ9dが接触しているが、防振台装置Aを使用するときにはナット9fの位置を調整して、両者の間に適当な隙間を形成することによって、例えば地震等により基礎が大きく揺れたときでも、ブラケット9bとボルト9aとの変位を適切に規制することができる。
【0035】
−防振台の連結構造−
以下に、この実施形態の特徴である防振台1,1の連結構造について詳細に説明する。この例ではポンプユニットPの幅方向に並んだ2つの防振台1,1の間に1本の丸パイプ(例えばガス管)からなる梁部材8を架け渡し、その長手方向の両端側を各々前記した可動ブラケット6,6によって各架台2,2に結合している。図の例では梁部材8の両端側が架台2,2の下をくぐって、それぞれ架台2,2の幅方向外側に突出しており、この各突出部位において各々可動ブラケット6の先端側に取り付けられている。梁部材8の先端にはゴムキャップ8aが被せられている。
【0036】
より詳しくは拡大して図4〜6にも示すように、可動ブラケット6は例えば鉄板等の金属製板材を曲げ加工したもので、相対的に架台2の端寄り(図5,6の左寄り)に位置する基端側には、角パイプである架台2に下方から接合される概略矩形状の基板部60と、その両側縁からそれぞれ折り曲げられて上方に延び、架台2を両側から挟む側板部61,61とが形成されている。そのうちの一側(図5の手前側)の側板部61の上縁は基板部60と反対側に折れ曲がって、可動ブラケット6の先端側まで延びる上板部62に連続している。
【0037】
前記の基板部60には、図6にのみ示すが半円形状の開口60aが形成されるとともに、その円の直径に相当する辺から下方に折り曲げられた係合片60bが設けられていて、この係合片60bがアイソレータ4のゴム筒の上端開口(図示せず)に係合するようになっている。つまり、可動ブラケット6の基板部60は、その上面が前記のように架台2(角パイプ)に下方から接合されるとともに、下面はアイソレータ4の上面に接合されて、その軸心(軸線Z)の周りに回動可能に組み付けられている。
【0038】
そうして可動ブラケット6が取り付けられるアイソレータ4は、上部の板部材4aが取り除かれ、その代わりに前記のように可動ブラケット6の基板部60が取り付けられて、この基板部60及び側板部61,61が板部材4aと同様に架台2に下方から嵌着されている。このことでアイソレータ4は可動ブラケット6の基端側と共に、架台2及び基台3に対してその長手方向にスライド移動可能になっている。
【0039】
また、そうして基板部60が架台2(角パイプ)の下面とアイソレータ4の上面との間に挟まれているとともに、その基板部60の係合片60bが前記したようにアイソレータ4のゴム筒の上端開口に回動可能に係合しており、このことで、基板部60の上面と接合する架台2の下面をガイド面として、可動ブラケット6がスムーズに回動するようになっている。
【0040】
そうして可動ブラケット6の基端側が架台2に対してスライド移動可能に、且つアイソレータ4を中心に回動可能に取り付けられている一方で、当該可動ブラケット6の先端側には、上述したようにポンプユニットPの取付ボルト5が配設されるとともに、架台2の下をくぐった梁部材8の端側が幅方向に貫通して取り付けられるようになっている。
【0041】
すなわち、前記の如く基端側の一側板部61の上縁に連続して可動ブラケット6の先端側まで延びる上板部62は、図6(a)に示すように先端側の略半分が拡幅した矩形状とされていて、その長手方向の略中央には図4,5のように架台2に近接する側に寄せられて取付ボルト5の貫通穴62aが形成されている。このボルト貫通穴62aには、図4に示すように取付ボルト5の軸部が下方から挿通され、図外のポンプベースのボルト取付穴も貫通して上方に突出し、そこにナット10が螺合されるようになる。
【0042】
また、前記上板部62の先端側にはその両側縁からそれぞれ折れ曲がって垂下するように板部63,63が形成されている。この垂下板部63,63は、図の例では下方に向かって先細りとなる台形状で、その下端部が半円弧状になっている。2つの垂下板部63,63のうちの架台2寄りのものには、上板部62のボルト貫通穴62aに繋がるように切り欠きが形成されていて、ここに取付ボルト5の頭部が入り込むようになっている。
【0043】
2つの垂下板部63,63は互いに平行であり、それぞれに互いに対向するようにして嵌入穴63a,63aが形成されている。すなわち、両方の嵌入穴63a,63aの形状は同じで、図6(b)のように側方から見ると合致するように形成されている。よって、これらの嵌入穴63a,63aに端側を嵌入されると梁部材8は、垂下板部63,63に対して略直交するようになる。
【0044】
また、嵌入穴63aの上半分は梁部材8(丸パイプ)の外周に相当する半円形状である一方、下半分は、梁部材8の外周に相当する半円の内接するような多角形状(図の例では八角形の半分の形状)である。このため、丸パイプである梁部材8の外周下部は、嵌入穴63aの内周下部と3点で接触するようになり、以下に述べるように取付ボルト5によって可動ブラケット6をポンプベースに締結したときに、応力の集中によって梁部材8に局所的な凹陥の生じることを回避できる。
【0045】
すなわち、前記のように可動ブラケット6の上板部62にはボルト貫通穴62aが形成されているが、ここに取付ボルト5を挿通するとこのボルト5が梁部材8の略真上に位置することになり、これにより可動ブラケット6の上板部62をポンプベースに締結すると、当該可動ブラケット6の垂下壁部63に端側が取り付けられている梁部材8は、上方に対向するポンプベースとの間に架台2を強く挟み込んで、締め付けるようになる。
【0046】
このときに梁部材8の端側において垂下板部63の嵌入穴63aに嵌入されている部位においては、その下部外周とこれに当接する嵌入穴63aの下部内周との間に大きな力が作用し合うことになり、仮に嵌入穴63aが丸穴であると、その内周に丸パイプである梁部材8の外周が1箇所でのみ当接して、応力集中により局所的に凹陥(塑性変形)する虞れがあった。
【0047】
そうして丸パイプである梁部材8の周面が局所的に凹陥すると、いくら取付ボルト5を締め付けても梁部材8を架台2に下方から強く押し付けることができなくなり、その梁部材8、架台2及びポンプベースの取り付けに緩みを生じることになるが、この実施形態では前記のように嵌入穴63a下半分を多角形状として、梁部材8の外周と2点以上で接触させるようにしており、このことで前記のような梁部材8の局所的な変形を回避することができる。
【0048】
尚、可動ブラケット6の上板部62の上面から垂下板部63の嵌入穴63aの上縁までの上下の間隔は、角パイプである架台2の上下寸法よりも僅かに(例えば0.5〜1mm程度)短くなっており、取付ボルト5を締め付けない状態であれば、図5に示すように可動ブラケット6の上板部62の上面が架台2の上面よりも低くなる。よって、取付ボルト5を締め付けることにより前記のように梁部材8を架台2に対して強く押し付けることができる。
【0049】
−ポンプユニットの設置手順−
上述の如き構造の防振台装置AによってポンプユニットPを設置するときには、まず、前記図1(a)のように2つの防振台1,1同士を概ね平行とし、且つその長手方向に可動ブラケット6,6を沿わせたままで、その可動ブラケット6,6のボルト貫通穴62a,62aがポンプベースのポンプ側の(即ち相対的に幅の広い方の)取付ピッチに合うように、2つの防振台1、1の間隔を調整する。また、ポンプベースのボルト取付穴の長手方向の間隔に合わせて、アイソレータ4,4と可動ブラケット6,6と梁部材8とを架台2,2の長手方向にスライド移動させる。
【0050】
それから可動ブラケット6,6と梁部材8,8との位置関係を保ったまま、即ちポンプ側の取付ピッチを固定したまま、図7に矢印で示すように防振台1、1をそれぞれポンプ側のアイソレータ4の周りに回動させて、固定ブラケット7,7のボルト貫通穴7a,7aが、相対的に幅の狭いモータ側の取付ピッチに大体、合うようにする。こうすると2つの防振台1,1は、図示のようにモータ側の間隔が狭い(ポンプ側の間隔が広い)ハの字状になる。
【0051】
その後、ポンプユニットPを架台2,2の上に載置すると、この上にベース部全体が載るようになり、相対的に幅の広いポンプ側においてもその全幅に対して架台2,2が内側に入り込んだような状態にはならない。こうしておいて可動ブラケット6,6のボルト貫通穴62a,62aをそれぞれポンプ側のボルト取付穴に合わせ、下方からボルト5を挿入して、ポンプユニットPのベース部よりも上方に突出するボルト5の軸部に上方からナット10を螺合させて仮留めする。
【0052】
次に、モータ側のボルト取付穴に正確に合わせるために防振台1、1の位置を少しだけずらす。すなわち、ポンプユニットPを載置した状態でその荷重は主にアイソレータ4,4,…に加わることになるから、ポンプ側のアイソレータ4の周りに少しだけ回動するように防振台1の位置をずらすことは可能であり、ポンプベースに対してアイソレータ4や可動ブラケット6の位置は変えずに、架台2及び基台3の位置をずらして固定ブラケット7のボルト貫通穴7aの位置合わせをすることができる。
【0053】
そうして位置を微調整した上で、固定ブラケット7のボルト挿通孔7aにも前記の可動ブラケット6側と同様に下方からボルト5を挿入し、ポンプベースの取付穴を貫通して上方に延びるボルト5の軸部にナット10を螺合させる。そして、仮留めしてある可動ブラケット6側も含めた4つのナット10,10,…を本締めする。こうすると、可動ブラケット6においては梁部材8とポンプベースとの間に架台2が強く挟み込まれ、これにより梁部材8と架台2とがしっかりと結合される。
【0054】
したがって、この実施形態に係る防振台装置Aによると、2つの長尺状の防振台1,1(所謂レール式防振台)をポンプユニットPの幅方向に並べて梁部材8によって連結するとともに、その連結のための可動ブラケット6,6を利用して、架台2及び梁部材8をボルト5により共締めでポンプベースに締結するようにしたから、防振台装置AへのポンプユニットPの載置とともに防振台1,1の各架台2,2をしっかりと連結することができ、設置作業が容易に行える。
【0055】
しかも、全体として部品点数が少なく梱包サイズも小さくなることから、設置現場への運搬性も高い。勿論、現場でのコンクリート打ち作業が不要であることも作業性の向上に寄与するし、コンクリートを用いないことから、廃棄するときにはリサイクルが可能であり、環境にも優しい。
【0056】
また、この実施形態では相対的に幅の広いポンプ側で起動時に大きな反力を受けることになるが、このポンプ側における防振台1,1の間隔が広くなるようハの字状に配置しているので、起動反力によるローリング・モーメントを受けたときのポンプユニットPの横揺れを効果的に抑制できる。
【0057】
また、そうして2つの防振台1,1をハの字状に配置しても、可動ブラケット6,6と梁部材8とは直交する状態に保たれ、相互の位置関係や取付状態には変化が生じないため、2つの防振台1,1のなす角度に依らず架台2と梁部材8との間には所期の結合剛性が得られる。
【0058】
さらに、前記したように仮にポンプユニットPを載置した状態でもポンプ側のアイソレータ4,4の周りに防振台1,1の位置をずらすことが可能であり、このことで、固定ブラケット7のボルト貫通穴7aの位置を微調整することも容易になる。
【0059】
−他の実施形態−
尚、本発明に係る防振台装置の構成は前記実施形態のものに限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。すなわち、前記実施形態では、梁部材8を1本の丸パイプによって構成しているが、これは角パイプであってもよいし、丸パイプ若しくは角パイプを2本以上、組み合わせてもよい。また、中実の棒部材によって構成することも可能である。
【0060】
また、前記の実施形態では、図7に示すようにポンプ側の幅が広いポンプユニットPに対応して、ポンプ側である可動ブラケット6の側が広いハの字になるように、防振台1,1,を配置しているが、これに限らず、ポンプ側の幅が狭いポンプユニットPを設置する場合には、図8に示すように可動ブラケット6の側が狭い逆ハの字状に防振台1,1,を配置してもよい。但し、こうするためには可動ブラケット6の垂下壁部63,63に形成する嵌入穴63aを横に長い長穴状としなくてはならない。
【0061】
さらに、本発明に係る防振台装置は、ポンプユニットPを設置するものに限らず、例えばチラーやボイラー等の空調設備を始めとした種々の設備機器の防振台装置として適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように本発明は、2つのレール式防振台を横並びに設けた簡易な構造で、低コスト化が図られるとともに運搬性、設置作業性にも優れ、環境にも優しいものであるから例えばポンプ防振台として極めて有用である。
【符号の説明】
【0063】
A 防振台装置
P ポンプユニット(機器)
1 レール式防振台(長尺状の防振台)
2 架台
3 基台
4 アイソレータ(防振体)
5 ボルト
6 可動ブラケット(ブラケット部材)
60 基板部
61 側板部
62 上板部
63 垂下板部
63a 嵌入穴
8 梁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々長尺状の架台及び基台の間に防振体を介在させてなる防振台が、その架台上に載置する機器の幅方向に2つ並んで、それぞれ当該機器の長手方向に延びるように配置され、且つ、前記2つの架台同士が前記機器の幅方向に延びる梁部材によって連結された防振台装置であって、
前記2つの防振台の各架台には、それぞれの幅方向外側で長手方向に延びるようにして前記梁部材と連結するためのブラケット部材が配設され、
相対的に各架台の端寄りに位置する前記各ブラケット部材の基端側が、該各架台に対しその長手方向にスライド移動可能に且つ上下方向の軸線周りに回動可能に取り付けられている一方、
当該各ブラケット部材の先端側には、前記梁部材の長手方向の両端側がそれぞれスライド移動可能に取り付けられていることを特徴とする防振台装置。
【請求項2】
前記ブラケット部材の先端側には前記機器への取付ボルトが配設され、
前記梁部材の長手方向の両端側は、それぞれ前記各架台の下方を通過してその外側に突出しており、この各突出部位において前記ブラケット部材の先端側に取り付けられている、請求項1の防振台装置。
【請求項3】
前記架台が角パイプからなり、その長手方向に移動可能に前記防振体が配設され、
前記ブラケット部材の基端側には、前記架台に下方から接合される矩形状の基板部が形成され、この基板部が前記防振体の上部に回動可能に取り付けられている、請求項1又は2のいずれかの防振台装置。
【請求項4】
前記ブラケット部材の基端側には基板部の一側縁から上方に延びる側板部が形成されるとともに、その上縁から前記基板部とは反対側に折れ曲がって延びる上板部が形成され、
前記上板部がブラケット部材の基端側から先端側まで延びていて、この先端側において両側縁からそれぞれ折れ曲がって垂下する垂下板部が形成され、且つこの両垂下板部にはそれぞれ前記梁部材の嵌入される嵌入穴が形成されている、請求項3の防振台装置。
【請求項5】
前記梁部材が丸パイプからなり、
前記ブラケット部材の垂下板部の嵌入穴は、その少なくとも下半分の形状が、前記梁部材の外形状に相当する円の内接する多角形状とされている、請求項4の防振台装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−21699(P2011−21699A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167899(P2009−167899)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】