説明

防水コネクタ

【課題】 シール部材の挿入作業を円滑に行うことのできる防水コネクタを提供することにある。
【解決手段】 係止突起23が押圧部22において押圧面22Aの裏面側に組み付け治具Jの押し当て方向に沿って突設されている。このような構成によれば、組み付け治具Jからの押圧力を係止突起23の係止孔16への挿通方向に沿って作用させやすくなるので、突起頭部25の係止孔16への押し込み力を安定させやすい。また、突起頭部25の外周縁がガイド溝18に嵌まり合うことでシールリング20の位置決めを行えるから、係止突起23と係止孔16との位置合わせを確実に行うことができる。これらにより、シールリング20の挿入作業を円滑に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図9には、実開昭63−162470号公報に開示された防水コネクタ100を示した。この防水コネクタ100は、端子収容部101の外周に相手側コネクタ110のフード部111を受け入れ可能な嵌合空間102が設けられ、この嵌合空間102内部に筒状のシール部材103が装着されたものである。そして、このシール部材103によって端子収容部101の外周面とフード部111の内周面との隙間がシールされるようになっている。
ところで、この種の防水コネクタ100では、メンテナンス等の必要により相手側コネクタ110を取り外す際に、シール部材103が一緒になって嵌合空間102から脱落してしまうことがある。そこで、これを防止する手段として、嵌合空間102の奥壁に保持孔104を設けるともに、シール部材103の後端には先端に径大の突起頭部105Aを設けた棒状の係止突起105を形成している。そして、この係止突起105における突起頭部105Aを保持孔104の孔縁に係止させることによって、シール部材103の前方への遊動、即ち嵌合空間102からの離脱を規制するようになっている。
【特許文献1】実開昭63−162470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のような構成では、シール部材103が円周方向に回転して係止突起105と保持孔104とが位置ずれする場合があること、シール部材103を嵌合空間102内に取り付ける際に、係止突起105の突起頭部105Aを潰しつつ保持孔104に通す必要があるために、大きな挿入抵抗を受けて係止突起105が座屈する場合があること、等の事情から、挿入作業に手間取るおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シール部材の挿入作業を円滑に行うことのできる防水コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための請求項1の発明に係る防水コネクタは、端子金具を収容可能な端子収容部とこの端子収容部を取り囲むように設けられるフード部とからなるハウジングと、前記端子収容部と前記フード部との間に設けられて相手側ハウジングを収容可能な嵌合空間と、この嵌合空間内に装着されて前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの間に挟み付けられることで前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの間をシールするシール部材とを備えた防水コネクタであって、前記嵌合空間の内周面にはこの嵌合空間への前記シール部材の挿入方向に沿って延びるガイド溝が設けられ、前記嵌合空間の奥壁部には前記シール部材の挿入方向に貫通する係止孔が設けられているとともに、前記シール部材には前記嵌合空間において前記相手側ハウジングの嵌合領域に張り出すとともにこのシール部材を前記組付空間に押し込むための組み付け治具を押し当て可能な押圧面を備えた押圧部と、前記押圧部において前記押圧面の裏面側に前記組み付け治具の押し当て方向に沿って突設されるとともに前記係止孔に係合可能な係止突起とが設けられ、かつ、前記押圧部と前記係止突起との少なくとも一方の張り出し端部が前記ガイド溝に嵌まり合うようにされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、係止突起が押圧部において押圧面の裏面側に組み付け治具の押し当て方向に沿って突設されている。このような構成によれば、組み付け治具からの押圧力を係止突起の係止孔への挿通方向に沿って作用させやすくなるので、係止突起の係止孔への押し込み力を安定させやすい。また、押圧部と係止突起との少なくとも一方の張り出し端部をガイド溝に嵌まり合うガイド部として利用しているから、簡易な構造で係止突起と係止孔との位置合わせを確実に行うことができる。これらにより、シール部材の挿入作業を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の防水コネクタを具体化した実施形態について、図1〜図6を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態の防水コネクタ1には、相手側ハウジング(図示せず)と嵌合可能なハウジング10が備えられ、このハウジング10の内部にはシールリング20が装着されるようになっている。なお、以下の説明において、ハウジング10の相手側ハウジングとの嵌合面側を前方とする。
【0008】
防水コネクタ1のハウジング10は合成樹脂によって一体に形成されており、端子収容部11と、この端子収容部11の周囲に設けられたフード部12とを備えている。
【0009】
端子収容部11は、全体として横長のブロック状に形成されており、その内部には、端子金具(図示せず)を受け入れ可能な複数のキャビティ14が前後方向に貫通して設けられている。
【0010】
フード部12は、前後方向に開放されて端子収容部11の周囲を囲う筒状に形成されており、前後方向中央よりやや後側位置において内側に突設された連結壁13(本発明の奥壁部に該当する)によって端子収容部11と連結されている。これら端子収容部11とフード部12と連結壁13とで囲まれた空間は、前方に開口するとともに後述するシールリング20および相手側ハウジングを前方から嵌め入れ可能な有底の嵌合空間15とされている。なお、端子収容部11の外周面11Aにおいて連結壁13との接合位置からやや前方にかけての領域にはその前方部分よりも拡径された段差部19が設けられている。
【0011】
連結壁13には後述するシールリング20に設けられた係止突起23を係止するための係止孔16が厚さ方向(シールリング20の挿入方向)に貫通形成されている。この係止孔16は、端子収容部11を挟んで対称位置に左右一対が設けられている。そして、フード部12の内周面12Aには、この係止孔16の外側位置に、断面半円状に形成された左右一対のガイド溝18が設けられている。このガイド溝18は、フード部12前端の開口縁から連結壁13に至る位置に前後方向(シールリング20の挿入方向)に沿って設けられている。
【0012】
また、このフード部12の外周面には、外周側に向かって膨出される膨出部が設けられており、ここには、上下方向に揺動可能に形成されるとともに相手側ハウジングのロック突起に係合することでハウジング10と相手側ハウジングとを離間不能に保持するロックアーム17が設けられている。
【0013】
嵌合空間15内には、弾性部材(例えばゴム)からなるシールリング20(本発明のシール部材に該当する)が装着されている。シールリング20は円環状に形成されて嵌合空間15の奥端位置に収容されており、その内周面20Aが端子収容部11の外周面11Aに密着されている。また、シールリング20の内周面20Aおよび外周面20Bには、複数条のリップ21が設けられている。
【0014】
シールリング20の外周面20Bには、平板状に形成された左右一対の押圧部22が対称位置に設けられている。これらの押圧部22は、シールリング20における外周面20Bの後端部から径方向外側に向かって張り出し形成されており、その張り出し先端がフード部12の内周面12Aに達している。この押圧部22の前側面は、シールリング20を嵌合空間15内に挿入する際に組み付け治具Jを受ける押圧面22Aとされている。
【0015】
この押圧部22の後側面(押圧面22Aの裏面)には、連結壁13に設けられた係止孔16と整合する位置に係止突起23が突設されている。この係止突起23は、押圧面22Aの裏面側から後方に突設される軸部24と、この軸部24の後端に設けられた突起頭部25とで構成されている。軸部24はその軸方向がシールリング20の挿入方向、すなわち組み付け治具Jの押し当て方向に沿って延びる円柱状に形成されて、押圧部22の後側面から連結壁13の厚み分だけ後方に突出されている。また、突起頭部25は軸部24よりもやや径大に形成されての係止孔16の後面側の孔縁に係合可能な係合部25Aと、この係合部25Aの後端面から後端側に向かって先細りとなる円錐状に形成された円錐部25Bと、この円錐部25Bの頂点に径小の円柱状に形成された頂点部25Cとからなっている。また、係合部25Aの外周縁は押圧部22の張り出し端よりもやや外周側に突出されてガイド溝18と嵌まり合うようになっている。なお、シールリング20における内周面20Aの後端部には、全周にわたって拡径されて端子収容部11の段差部19と整合する段差受け部26が設けられている。
【0016】
このハウジング10に相手側ハウジングを嵌合させる際には、相手側ハウジングのスカート部をハウジング10の嵌合空間15内に進入させる。両ハウジングが正規の嵌合状態に至ると、両雌雄の端子金具が接合されるとともに、防水コネクタ1のフード部12に設けられたロックアーム17が相手側ハウジングに設けられたロック突起に係合することにより、両ハウジングが抜け止め状態に保持される。また、スカート部の先端部がシールリング20の外周面20Bとフード部12の内周面12Aとの間の空間に進入し、シールリング20の内周面20Aおよび外周面20Bに設けられたリップ21が押し潰されてスカート部の内周面および端子収容部11の外周面11Aに押し付けられる。これにより、両ハウジング間の防水性が保たれる。
【0017】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用および効果について説明する。
【0018】
シールリング20を防水コネクタ1のハウジング10に対して組み付けるには、まずシールリング20における係止突起23の係合部25Aをガイド溝18に整合させつつ、シールリング20を端子収容部11の前端部分に嵌め合わせた状態にセットする。そして、組み付け治具Jを利用してこのシールリング20における押圧部22の押圧面22Aを押圧し、シールリング20を嵌合空間15の奥方へ向かって押し込んでゆく。このとき、ガイド溝18が係止突起23を案内することにより、シールリング20が端子収容部11の周りで周方向に回転して係止突起23と係止孔16とが位置ずれしてしまうことが防がれる。
【0019】
シールリング20の後端部に形成された係止突起23が嵌合空間15の奥端面に達すると、この係止突起23が係止孔16に進入し、突起頭部25の外周部分が押し潰されながら係止孔16を通過する。ここで、突起頭部25の外周と係止孔16の内周との間には摺接抵抗が生じるが、係止突起23が押圧部22において組み付け治具Jが押し当てられる押圧面22Aの裏面側に設けられ、かつ組み付け治具Jの押し当て方向に沿って突設されているから、組み付け治具Jからの押圧力を係止突起23の軸方向、すなわち係止突起23の係止孔16への押し込み方向に沿って作用させることができ、係止突起23に安定した押し込み力をかけることができる。これにより、係止突起23の係止孔16への挿通を円滑に行わせることができる。
【0020】
そして、さらにシールリング20の後端面が嵌合空間15の奥端面に達するまでこのシールリング20を押し込んでゆくと、突起頭部25が連結壁13の後側に突出して復元変形し、係止孔16の後端側の孔縁に係止される。これにより、シールリング20が抜け止め状態に保持される。
【0021】
以上のように本実施形態によれば、係止突起23が押圧部22において押圧面22Aの裏面側に組み付け治具Jの押し当て方向に沿って突設されている。このような構成によれば、組み付け治具Jからの押圧力を係止突起23の係止孔16への挿通方向に沿って作用させやすくなるので、突起頭部25の係止孔16への押し込み力を安定させやすい。また、突起頭部25の外周縁がガイド溝18に嵌まり合うことでシールリング20の位置決めを行えるから、係止突起23と係止孔16との位置合わせを確実に行うことができる。これらにより、シールリング20の挿入作業を円滑に行うことができる。
【0022】
<他の実施形態>
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。その他、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0023】
(1)上記実施形態では、突起頭部25の外周縁がガイド溝18に嵌め合わせられていたが、突起頭部に代えて押圧部の突出端がガイド溝に嵌め合わせられるようにしても良い。また、図7および図8に示す防水コネクタ30のように、押圧部31の突出端が突起頭部32の外周縁と同位置まで張り出され、双方がガイド溝33に嵌め合わせられるようにしても良い。
(2)上記実施形態では、端子収容部11の外周面11Aにシールリング33が装着され、この端子収容部の外周面11Aとスカート部の内周面との間でシールリング33が挟み付けられるようにされていたが、フード部12の内周面12Aにシール部材が装着され、このフード部12の内周面12Aとスカート部の外周面との間でシール部材が挟み付けられるようにされてもよい。この場合、シール部材の内周側に押圧部が張り出し形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の防水コネクタのハウジングの正面図
【図2】シールリングを装着したハウジングの断面図
【図3】ハウジングの側断面図
【図4】シールリングの正面図
【図5】シールリングの側面図
【図6】シールリングがハウジング内に挿入される途中の様子を示す側断面図
【図7】他の実施形態のシールリングの側面図
【図8】他の実施形態のシールリングが装着されたハウジングの部分拡大断面図
【図9】従来のコネクタハウジングの側断面図
【符号の説明】
【0025】
1…防水コネクタ
10…ハウジング
11…端子収容部
12…フード部
15…嵌合空間
13…連結壁(奥壁部)
16…係止孔
18…ガイド溝
22A…押圧面
22…押圧部
23…係止突起
30…シールリング(シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容可能な端子収容部とこの端子収容部を取り囲むように設けられるフード部とからなるハウジングと、前記端子収容部と前記フード部との間に設けられて相手側ハウジングを収容可能な嵌合空間と、この嵌合空間内に装着されて前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの間に挟み付けられることで前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの間をシールするシール部材とを備えた防水コネクタであって、
前記嵌合空間の内周面にはこの嵌合空間への前記シール部材の挿入方向に沿って延びるガイド溝が設けられ、前記嵌合空間の奥壁部には前記シール部材の挿入方向に貫通する係止孔が設けられているとともに、
前記シール部材には前記嵌合空間において前記相手側ハウジングの嵌合領域に張り出すとともにこのシール部材を前記組付空間に押し込むための組み付け治具を押し当て可能な押圧面を備えた押圧部と、前記押圧部において前記押圧面の裏面側に前記組み付け治具の押し当て方向に沿って突設されるとともに前記係止孔に係合可能な係止突起とが設けられ、かつ、前記押圧部と前記係止突起との少なくとも一方の張り出し端部が前記ガイド溝に嵌まり合うようにされていることを特徴とする防水コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−156081(P2006−156081A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343699(P2004−343699)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】