説明

防水性を有した金属ケース及び防水性を有した金属ケースの製造方法

【課題】底板2とこの底板2の外周に沿って立ち上がる複数の側板3,4とを有し、底板2外周の角部では互いに交差隣接する側板3と側板4とによりケース隅部5が形成された金属ケースにおいて、ケース隅部5の内側に、いちいち目張り用樹脂を塗布しなくても金属ケースに防水性をもたせることができるものとし、それによって高効率且つ低コストに製造することができるようにする。
【解決手段】ケース隅部5には、一方の側板3の端面部3aと他方の側板4の板面とが当接する状態で、端面部3aに凹凸を伴って生じた破断痕を板面に塑性変形させつつ馴染ませて形成した圧密接合部7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性を有した金属ケース及び防水性を有した金属ケースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気部品や電気基板、電子回路など(以下、これらを総じて「電気部品等」と言う)を板金製の金属ケースへ収納し、この金属ケース内に液状乃至ゼリー状の樹脂を充填し、硬化させることで、電気部品等を樹脂封入状態にし、もって電気部品等を絶縁したり、水濡れや結露を防止したり、保温性又は放熱性をよくしたりすることは公知である。
この種の金属ケースでは、樹脂充填時における樹脂の漏れ出しを防止する必要があるために、防水性を有したものとする必要がある。そこで従来は、プレス加工で打ち抜いたブランク(ケースを組み立てる前の展開状態の素板)をケース形に折り曲げてから、その後の別工程で、ケース隅部の内側にできる側板同士の当接部分に目張り用の樹脂を塗布し、乾燥(硬化)させる方法を採用していた(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
なお、プレス加工の打抜きでは、ブランクの外周縁(端面部)に対し、その板厚方向に沿って打抜き用パンチが接する側から「だれ」「剪断面」「破断面」「かえり(バリ)」が発生することが知られている。また、ブランク外形を美しく仕上げ且つ寸法精度を高精度にするためには、「剪断面」の占める割合を可及的に多くさせればよいことが通念上、知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−209649号公報(図1、図3、図4)
【特許文献2】特開平4−348806号公報([0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、防水性を有した金属ケースを製造するに際し、ケース隅部内の側板当接部分に目張り用の樹脂を塗布、乾燥させる方法は、面倒であると共に乾燥時間などを要するため、これらが金属ケースの製造能率を著しく低下させる問題があった。また目張り用樹脂を用いることが原因で高コストになる問題もあった。
なお、ブランクの外周縁(端面部)に生じさせる「剪断面」の割合を多くして、ブランク外形を美しく仕上げ且つ寸法精度を高精度にしたとしても(端面部全部を剪断面で形成させる等によりどんなに精度を高めても)、このブランクから形成した金属ケースに防水性をもたせることができないことは、言うまでもない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ケース隅部の内側にいちいち目張り用樹脂を塗布しなくても金属ケースに防水性をもたせることができるものとし、それによって高効率且つ低コストに製造することができるようにした防水性を有した金属ケース及び防水性を有した金属ケースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る防水性を有した金属ケースは、底板とこの底板の外周に沿って立ち上がる複数の側板とを有し前記底板外周の角部では互いに交差隣接する側板と側板とによりケース隅部が形成された金属ケースにおいて、前記ケース隅部には、一方の側板の端面部と他方の側板の板面とが当接する状態で、前記端面部に凹凸を伴って生じた破断痕を前記板面に塑性変形させつつ馴染ませて形成した圧密接合部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
ここにおいて「塑性変形させつつ馴染ませて」は、端面部に凹凸を伴って生じた破断痕(特に凹凸の凸部分)と板面とが、互いに強く押し付けられることで、破断痕が押し潰され且つ延ばされ、或いは板面に食い込む状態となり、また場合によっては板面側が破断痕に合わせて凹み変形する状態となって、結果として端面部と板面とが水密的に密着し、防水性を生じることを言う。
【0009】
また、ここにおいて「圧密接合部」は、一方の側板の端面部と他方の側板の板面とが、『水密的な密着状態』を保持して当接する状態を言うものとする。また、金属ケース内へ液状乃至ゼリー状の樹脂を充填する場合において、前記した『水密的な密着状態』は、金属ケース内へ充填した樹脂がケース内において硬化するまでの間(30〜120分程度)、ケース外へ漏れ出さない程度に当接する状態が得られればよい。
【0010】
このように、ケース隅部に圧密接合部が設けられた構成にすることで、ケース隅部の内側にいちいち目張り用樹脂を塗布するようなことをしなくとも、金属ケースに防水性をもたせることができる。従って、防水性を有する金属ケースを高効率且つ低コストで製造することができる。
なお、前記複数の側板は前記底板の外周全部に設けられ、これら側板によって囲まれるケース内では前記底板から前記側板が立ち上がる高さ範囲のうち前記底板寄りとなる下部側で樹脂貯留部が形成され当該樹脂貯留部より上部側で非貯留域が形成されるようになっており、前記樹脂貯留部に対応して前記圧密接合部が設けられたものとすることもできる。
【0011】
要するに、金属ケースに樹脂を充填する場合では、樹脂の充填量(貯留高さ)に相当させた圧密接合部を設ければよいものである。
一方、本発明に係る防水性を有した金属ケースの製造方法は、底板とこの底板の外周に沿って立ち上がる複数の側板とを有し前記底板外周の角部では互いに交差隣接する側板と側板とによりケース隅部が形成された金属ケースを製造する方法において、前記金属ケースのブランクを打抜くに際しては、前記ケース隅部を形成するうち一方の側板ではその端面部の板厚方向に生じる剪断面と凹凸を伴う破断面との相対比で破断面が剪断面の同等以上となる破断痕付き端面部が形成されるようにして打抜きを行い、前記破断痕付き端面部を生じた側板と前記ケース隅部を形成するうちの他方の側板とをブランクから曲げ起こすに際しては、前記破断痕付き端面部を生じた側板の端面部に他方の側板の板面が押し当てられる状態として前記端面部に生じた破断痕が前記板面に塑性変形しつつ馴染むようにすることで前記ケース隅部に圧密接合部を形成させながら、前記ブランクをケース形に組み立てることを特徴とする。
【0012】
前記ブランクを打ち抜くに際し、前記破断痕付き端面部を生じさせる側板は、前記破断痕による凹凸が、前記ケース隅部を形成するうちの他方の側板の板面と当接させるときの組立寸法よりも寸法外方へ突出したものとして形成するとよい。
前記破断痕付き端面部を生じた側板と前記ケース隅部を形成するうちの他方の側板とをブランクから曲げ起こすに際し、前記破断痕付き端面部を生じた側板が先で他方の側板が後となるように曲げタイミングに差を生じさせ、立ち上がり状態にした後の前記破断痕付き端面部を生じた側板に対してその端面部に他方の側板の板面を押し付けるようにするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る防水性を有した金属ケース及び防水性を有した金属ケースの製造方法では、ケース隅部の内側にいちいち目張り用樹脂を塗布しなくても金属ケースに防水性をもたせることができるものであり、それによって高効率且つ低コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防水性を有した金属ケースの第1実施形態を示した斜視図である。
【図2】金属ケースのブランク(ケースを組み立てる前の展開状態の素板)を示した平面(展開)図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】金属ケースの製造に用いる曲げ用プレス装置のダイを示した平面図である。
【図5】(a)は図4のB−B線に対応させて示して曲げ用プレス装置の要部断面図であり(b)は図4のC−C線に対応させて示して曲げ用プレス装置の要部断面図である。
【図6】金属ケースの製造に用いる曲げ用プレス装置によってブランクを曲げた状態を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図3は、本発明に係る防水性を有した金属ケース1の第1実施形態を示している。図1に示すように、この金属ケース1は、底板2と、この底板2の外周に沿って立ち上がる複数の側板3,3及び4,4とを有したもので、底板2の外周の角部では、互いに交差隣接する側板3と側板4とによってケース隅部5が形成されたものとなっている。
【0016】
本第1実施形態において底板2は長方形に形成され、また底板2の外周全部(四辺)に側板3,4が設けられることで、側板3,4は全部で4枚あるものとしている。更に、底板2における短辺側に沿って設けられた側板3,3も、底板2における長辺側に沿って設けられた側板4,4も、それぞれ長方形に形成されており、金属ケース1がその全体として、蓋無しの細長い箱形を呈したものを示している。
【0017】
この金属ケース1において、ケース隅部5は、一方の側板3の端面部と、他方の側板4の板面とが、互いに当接することで形成されている。また、このケース隅部5には圧密接合部7が設けられている。この圧密接合部7は、側板3,4を水密的に密着させたところである。すなわち、このケース隅部5において圧密接合部7が設けられた部分では防水性が保たれている。
【0018】
なお、底板2の短辺部に着目して金属ケース1を見れば、一方の側板3が他方の側板4によって両外側から挟持されるような構造となっていることから、以下では説明の便宜上、一方の側板3を「中入り側板3」と呼び、他方の側板4を「外囲い側板4」と呼ぶことにする。
本第1実施形態において、前記圧密接合部7は、底板2から中入り側板3,3や外囲い側板4,4が立ち上がる高さよりも低い範囲で、且つ、底板2寄りとなる位置に形成されたものとしてある。これは、金属ケース1として、防水性が必要とされる深さにのみ対応させて、圧密接合部7を設けたものということになる。
【0019】
すなわち、金属ケース1内に電気部品等を収納し、樹脂を充填して硬化させる(電気部品等を樹脂封入状態にする)場合には、底板2から側板3,4が立ち上がる高さ範囲のうち、底板2寄りとなる下部側で樹脂貯留部が形成され、この樹脂貯留部より上部側で非貯留域(空気が貯まった空間)が形成されるようにする。そのため、防水性が必要とされる樹脂貯留部にのみ対応させて、圧密接合部7を設けているものである。
【0020】
金属ケース1内での樹脂貯留部の高さは、収納する電気部品等の大きさや配置、ケース内大きさなどに応じて種々様々に変更されることは言うまでもない。そのため、圧密接合部7についても、高くしたり低くしたり、実施の状況に応じて種々様々に変更し得るものとなる。
前記圧密接合部7を設けるには、図2に示すように、プレス加工の打抜きによって金属ケース1のブランク10を形成する際に、中入り側板3において、外囲い側板4に当接するようにされる端面部3aに、凹凸を伴う破断痕が顕著に発生している領域(以下、「破断痕発生部11」と言う)を形成させておく。言うまでもなく、この端面部3aのなかの破断痕発生部11が、前記圧密接合部7を形成する部分である。
【0021】
すなわち、この破断痕発生部11に発生している破断痕と、外囲い側板4の板面とを互いに強く押し付けることで、破断痕の凹凸(特に凸部分)が押し潰され且つ延ばされ、或いは板面に食い込む状態となる。このように端面部3aの破断痕が塑性変形しつつ、外囲い側板4の板面と馴染むようになる。このとき、外囲い側板4の板面にも、破断痕と馴染むような凹み変形が生じることがある。これらの塑性変形により、中入り側板3の端面部3aと外囲い側板4の板面とが水密的に密着し、防水性を有する圧密接合部7が形成されるものである。
【0022】
ここにおいて破断痕発生部11とは、図3に示すように、中入り側板3の打抜き時に、端面部3aの板厚方向に沿って打抜き用パンチが接する側(図3上側)から「だれ12」「剪断面13」「破断面14」「かえり(バリ)15」が発生するようになるが、このうち、破断面14の占める割合を多くして、凹凸が多く発生している状態を言うものとする。更に言えば、破断面14の占める割合が多いとは、剪断面13と破断面14との相対比で破断面14が剪断面13の同等以上となっている状態であり、この状態を「破断痕発生部11」と言うものとする。
【0023】
なお、中入り側板3において、外囲い側板4の板面と当接させるときの組立寸法(金属ケース1としたときの外囲い側板4の対向間隔(=短辺側の内法寸法)に同じ)を図2中に示すW寸法とおくとき、破断痕発生部11が形成された部分はこの組立寸法(W)よりも大きくされている(W+α)。このように、組立寸法Wの寸法外方へ突出した部分(α/2)が、各端面部3aでの破断痕の凹凸によるものとする。
【0024】
剪断面13:破断面14の具体的な比率や、破断痕の凹凸における具体的な突出量(α/2)と、これらに基づいて得られる防水作用との関係については、ブランク10の材質や板厚(t)、圧密接合部7の高さなどによって種々に変動する。ブランク10がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合の一例を挙げれば、剪断面13:破断面14は1:1〜1:2等とし、α/2はt/20等とするのが好適であった。
【0025】
次に、前記金属ケース1を製造する製造方法を説明する。
金属ケース1を製造するには、ブランク10(図2参照)を打ち抜くための打抜き工程と、このブランク10をケース形に曲げるための曲げ工程とを行う。なお、打抜き工程と曲げ工程とは、別々に行う単発式で実施してもよいし、打抜き工程は順送式とし曲げ工程は単発式として実施してもよい。
【0026】
打抜き工程では、図2に関して説明したように、ブランク10における中入り側板3の端面部3aに、破断痕発生部11が形成されたものとする。また、中入り側板3において、破断痕発生部11が形成された部分を前記組立寸法(W)よりも大きくなるように(W+α)形成しておく。
破断痕発生部11を形成するため、即ち、端面部3aにおいて破断面14(図3参照)の割合を多くするには、打抜き用プレスにおけるダイとパンチとのクリアランスを大きくしたり、打抜き速度を遅くしたりすることなどで実現させることができる。
【0027】
例えば、ブランク10がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合、ダイとパンチとのクリアランスは、ブランク10の板厚の10%程度(ブランク10の板厚が1.0mmのときクリアランスは0.1mm程度とする等)とする。クリアランスを大きくするとは、おおよそこの程度を言う。但し、ブランク10の材質や板厚等が異なれば、クリアランスの程度も変更されることになる。
【0028】
図4乃至図6は、金属ケース1の製造に用いる曲げ用のプレス装置20(単発式又は順送式)を示している。このプレス装置20は、金属ケース1としてのケース外形を取り囲むように枠形に形成されたダイ21と、このダイ21の内側にブランク10の板厚を保持しつつ嵌合するブロック形のパンチ22とを有している。
このプレス装置20を用いた曲げ工程では、中入り側板3と外囲い側板4とをブランク10から曲げ起こし、ブランク10をケース形に組み立てることになる。この曲げの終段において、中入り側板3の端面部3aに生じた破断痕(破断痕発生部11)を外囲い側板4の板面に押し当て、塑性変形させつつ馴染ませ、場合によっては食い込ませるようにする。
【0029】
中入り側板3と外囲い側板4とをブランク10から曲げ起こすに際し、中入り側板3が先で外囲い側板4が後となるように、側板3,4の曲げタイミングに差を生じさせるのが好ましい。すなわち、先に中入り側板3が立ち上がり、その状態で、外囲い側板4を中入り側板3へ当て付けるようにする。このようにすることで、中入り側板3の端面部3aに生じた破断痕(破断痕発生部11)の凹凸を、外囲い側板4の板面で垂直に押す状況を得る。
【0030】
実際に、側板3,4の曲げタイミングに差を生じさせるには、ダイ21とパンチ22との対向縁に施す面取りを、中入り側板3に対応する部分(図5(b)に示す)に比べて、外囲い側板4に対応する部分(図5(a)に示す)が大きくなるようにすることで実現できる。なお、面取りは、図例のような丸面取りでよい。
場合によっては、ダイ21において、中入り側板3に対応する部分の上面を高くし、外囲い側板4に対応する部分の上面を低くすることでも、中入り側板3が先で外囲い側板4が後となるような曲げタイミングにすることができる。
【0031】
中入り側板3と外囲い側板4との間に生じさせる曲げタイミングの差をどの程度にするかは、ブランク10の材質や板厚等により異なる。ブランク10がアルミニウム又はアルミニウム合金であって板厚が1.0mmのときであれば、ブランク10に対して中入り側板3が30°ほど曲げ起こされた時点で、ブランク10に対する外囲い側板4の曲げ起こしを開始し、両者間にこの30°の角度差が生じたまま、両側板3,4の曲げ起こしを続行させるのが好適であった。側板3,4の曲げタイミングに差を生じさせるとは、おおよそこの程度の角度差を言う。
【0032】
なお、ブランク10の状態(図2参照)では、中入り側板3の両側に外囲い側板4,4が配置されたものとなっている。そのため、ブランク10から中入り側板3を曲げ起こすと、両側の外囲い側板4における端面部4a同士を結んだ仮想線Lに対して、中入り側板3の下端側は、前記仮想線Lから板厚tだけ、底板2側へ入り込むようになる。このことが原因となり、ケース形に曲げた後、ケース隅部5の下端部(なかでも中入り側板3の下端部)には、ケース外方へ膨らむような膨出部が形成されてしまうことになる。
【0033】
そこで、図6に示すように、ダイ21には、中入り側板3及び外囲い側板4の下端部を押さえ込むようにするための丸面取り25を、ダイ内の全周に施しておくのが好適となる。
また付言すると、圧密接合部7の形成、曲げタイミングの差、ケース隅部5での膨出部防止、側板3,4を曲げ起こした後のスプリングバックの防止、側板3,4の外面への傷つき防止等を、それぞれ確実に得られるようにするためには、ダイ21に対するパンチ22の降下速度を低速化させる方向で調節し、ブランク10をゆっくりと曲げるようにするとよいことが確かめられている。
【0034】
殊に、スプリングバックの防止には、ストライキング(パンチ22の外周部に突起縁を形成して局部的な圧下を加えること)を併用するのが好適であるのは、言うまでもない。
以上詳説したところから明らかなように、本発明では、所定形状に打ち抜いたブランク10から側板3,4を曲げ起こし、中入り側板3の端面部3aに生じた破断痕(破断痕発生部11)を外囲い側板4の板面に押し当て、塑性変形させつつ馴染ませるだけで、防水性を有する金属ケース1を製造できるものである。当然に、このようにして製造された金属ケース1は防水性を有しているので、ケース隅部5の内側にいちいち目張り用樹脂を塗布しなくてもよい。このように、防水性を有した金属ケース1を高効率且つ低コストに製造することができる。
【0035】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、金属ケース1において、底板2や側板3,4の形状が長方形をしていることは限定されるものではなく、それぞれ、正方形などとしてもよい。勿論、底板2は、四角形以外の多角形に形成されたものとしてもよい。また、底板2に対し、その外周全部に側板3,4が設けられているとする点も、特に限定されるものではない(少なくとも1箇所のケース隅部5を形成できるようになっていればよい)。
【0036】
金属ケース1内を樹脂で満たす場合に対応させるのであれば、中入り側板3,3や外囲い側板4,4の高さに対応させて(同じ高さにして)圧密接合部7を設けるようにしてもよい。
金属ケース1は、電気部品等を樹脂封入する目的以外に使用するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 金属ケース
2 底板
3 側板
3a 端面部
4 側板
4a 端面部
5 ケース隅部
7 圧密接合部
10 ブランク
11 破断痕発生部
13 剪断面
14 破断面
20 プレス装置
21 ダイ
22 パンチ
25 丸面取り
W 組立寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板とこの底板の外周に沿って立ち上がる複数の側板とを有し前記底板外周の角部では互いに交差隣接する側板と側板とによりケース隅部が形成された金属ケースにおいて、
前記ケース隅部には、一方の側板の端面部と他方の側板の板面とが当接する状態で、前記端面部に凹凸を伴って生じた破断痕を前記板面に塑性変形させつつ馴染ませて形成した圧密接合部が設けられていることを特徴とする防水性を有した金属ケース。
【請求項2】
前記複数の側板は前記底板の外周全部に設けられ、これら側板によって囲まれるケース内では前記底板から前記側板が立ち上がる高さ範囲のうち前記底板寄りとなる下部側で樹脂貯留部が形成され当該樹脂貯留部より上部側で非貯留域が形成されるようになっており、
前記樹脂貯留部に対応して前記圧密接合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防水性を有した金属ケース。
【請求項3】
底板とこの底板の外周に沿って立ち上がる複数の側板とを有し前記底板外周の角部では互いに交差隣接する側板と側板とによりケース隅部が形成された金属ケースを製造する方法において、
前記金属ケースのブランクを打抜くに際しては、前記ケース隅部を形成するうち一方の側板ではその端面部の板厚方向に生じる剪断面と凹凸を伴う破断面との相対比で破断面が剪断面の同等以上となる破断痕付き端面部が形成されるようにして打抜きを行い、
前記破断痕付き端面部を生じた側板と前記ケース隅部を形成するうちの他方の側板とをブランクから曲げ起こすに際しては、前記破断痕付き端面部を生じた側板の端面部に他方の側板の板面が押し当てられる状態として前記端面部に生じた破断痕が前記板面に塑性変形しつつ馴染むようにすることで前記ケース隅部に圧密接合部を形成させながら、前記ブランクをケース形に組み立てる
ことを特徴とする防水性を有した金属ケースの製造方法。
【請求項4】
前記ブランクを打ち抜くに際し、
前記破断痕付き端面部を生じさせる側板は、前記破断痕による凹凸が、前記ケース隅部を形成するうちの他方の側板の板面と当接させるときの組立寸法よりも寸法外方へ突出したものとして形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の防水性を有した金属ケースの製造方法。
【請求項5】
前記破断痕付き端面部を生じた側板と前記ケース隅部を形成するうちの他方の側板とをブランクから曲げ起こすに際し、
前記破断痕付き端面部を生じた側板が先で他方の側板が後となるように曲げタイミングに差を生じさせ、
立ち上がり状態にした後の前記破断痕付き端面部を生じた側板に対してその端面部に他方の側板の板面を押し付けるようにする
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の防水性を有した金属ケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−89788(P2012−89788A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237440(P2010−237440)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(505171816)日光金属工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】