説明

防汚ステンレス部材

【課題】 耐傷つき性を向上させるとともに、水垢付着などに対する防汚性を長期に亘って維持することができる防汚ステンレス部材を提供する。
【解決手段】 本願発明の防汚ステンレス部材は、エンボス加工されたステンレス基材の表面上に撥水性被膜がコーティングされていることを特徴とする。撥水性被膜は、フッ素系処理剤の塗膜又はフッ素を含有するフッ素系塗膜により形成することができ、水接触角が90゜以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、防汚ステンレス部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より住環境などで使用されるステンレス部材は、一般的に表面仕上げとしてBA仕上げ、2B、2D、No.4研磨仕上げ、あるいは#400番研磨などにより表面を研磨されたものが多く、表面が平滑であるため、表面に擦り傷、引っかき傷、打痕などが非常に目立ちやすいものであった。特に、ステンレス製キッチンのシンクやカウンターなどでは、その大半は鍋、茶碗、包丁などのキッチン製品により無数の傷がついてしまう。また、傷があることにより汚れもつきやすく、清潔さを維持するには日常の清掃、手入れが必要であった。
【0003】
また、ステンレス部材はそのすぐれた耐食性などから、住環境の中でも特に水廻りで使用されることが多くなっている。ところが、上記のようにステンレスは傷などがつきやすく、油汚れと非常に馴染みが良く、また水垢も堆積して、汚れが目立つことになる。
【0004】
油の汚れに対しては、たとえば特許文献1において、エンボス加工によりエンボス模様を形成したステンレス鋼板を基材とし、エンボス模様表面に光触媒層を設けたステンレス部材が提案されている。このステンレス部材によれば、汚れ分解能を向上させるとともに、干渉色による外観不良が防止できるとされている。また、洗剤技術の進展とともに、洗剤による手入れにより、ある程度は油の除去が可能となっている。
【特許文献1】特開2001−18323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水垢については、長期に亘る使用により堆積して水垢汚れが発生すると、洗剤ではなかなか除去することができず、研磨剤入りの洗剤などによりステンレス表面を削ることで除去しなければならなかった。
【0006】
そこで、本願発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたもので、耐傷つき性を向上させて長期に亘る使用による傷つきを極力低減させ、水垢付着などに対する防汚性を長期に亘って維持することができる防汚ステンレス部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の防汚ステンレス部材は、上記課題を解決するため、第1には、エンボス加工したステンレス基材の表面上に撥水性被膜がコーティングされていることを特徴とする。
【0008】
また、第2には、上記第1の発明において、撥水性被膜が、フッ素系処理剤の塗膜よりなり、水接触角が90゜以上であることを特徴とする。
【0009】
また、第3には、上記第1の発明において、撥水性被膜が、フッ素を含有するフッ素系塗膜よりなり、水接触角が90゜以上であることを特徴とする。
【0010】
また、第4には、上記第2の発明において、撥水性被膜の膜厚が3〜100nmであることを特徴とする。
【0011】
また、第5には、上記第3の発明において、撥水性被膜の膜厚が1〜20μmであることを特徴とする。
【0012】
また、第6には、上記第1から第5のいずれかの発明において、エンボスが幾何学模様であり、その凹凸の凹部と凸部の面積比が3:7〜9:1であることを特徴とする。
【0013】
また、第7には、上記第1から第6のいずれかの発明において、幾何学模様における凹部及び凸部の幅がそれぞれ50μm〜3.0mmであることを特徴とする。
【0014】
また、第8には、上記第1から第7のいずれかの発明において、凹部の底面から凸部の頂点までの平均高さが20〜200μmであることを特徴とする。
【0015】
また、第9には、上記第1から第5のいずれかの発明において、エンボスが不規則な模様であり、その算術平均表面粗さRaが1〜50μmであることを特徴とする。
【0016】
また、第10には、上記第1から第9のいずれかの発明において、エンボスの凹凸の表面にさらに小さなエンボスとして凹部の底面から凸部の頂点までの平均高さが0.1〜30μmの凹凸を設けたことを特徴とする。
【0017】
さらに、第11には、上記第1から第10のいずれかの発明において、エンボス表面に凹部の底部から凸部の頂点までの平均高さが50nm以下の細かい凹凸が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願各請求項の発明によれば、耐傷つき性を向上させ、ステンレス部材の防汚処理としての撥水性を長期に亘り維持することができ、なおかつ水垢などの汚れの除去性が向上した防汚ステンレス部材を提供することが可能となり、従来品と比較して長期間に亘って清潔さを保つ防汚ステンレス部材を提供することができる。
【0019】
また、本願請求項2、3の発明によれば、撥水性被膜をフッ素系処理剤の塗膜又はフッ素を含有するフッ素系塗膜で構成し、水接触角を90゜以上に規定することにより、良好な撥水性を得ることができ、防汚性能をより向上させることができる。
【0020】
また、本願請求項4から10の発明によれば、撥水性被膜の膜厚、エンボスの模様の形態、凹凸の凹部と凸部の面積比、凹部と凸部の幅、凸部の高さ、算術平均表面粗さを規定し、また大きなエンボスの表面にさらに小さなエンボスの凹凸を設けることにより、撥水性被膜の傷つき、剥離などをさらに低減させることができ、より長期に亘る防汚性維持が確保できる。
【0021】
また、本願請求項11の発明によれば、エンボス表面に細かい凹凸を設けたので、撥水性能をさらに向上させることができ、さらに長期に亘る防汚性維持が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0023】
本実施形態の防汚ステンレス部材は、表面をエンボス加工したステンレス鋼を基材とし、エンボス表面上に撥水性被膜をコーティングしている。
【0024】
本実施形態で用いることのできるステンレス鋼は、オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、析出硬化型、二相系のいずれのタイプのものも使用することができる。
【0025】
本実施形態の防汚ステンレス部材は、住環境などで使用されるもので、その形態は特に限定されないが、典型的には、キッチンのシンクやカウンターにおいて使用される曲面状や板状のものとして好ましく適用される。
【0026】
防汚ステンレス部材の表面には、エンボス加工が施されるが、そのエンボス模様は幾何学模様であってもよいし、不規則な形状の模様であってもよい。エンボス模様が幾何学模様である場合、その凸部の断面形状は、典型的には台形状であるが、防汚ステンレス部材をたとえばキッチンのシンクやカウンターなどに適用する場合には、鍋、茶碗、包丁などのキッチン用品との接触面積がより小さくなるように頂点を持つ形状とすることもできる。その場合の凸部の断面形状は半円状、半楕円状、三角形状などの各種形状とすることができる。幾何学形状の凸部の平面形状も正方形、長方形、菱形、円形、楕円形などの各種形状とすることができる。エンボスの凹部はフラットとなっていてもよく、緩やかな窪みなどとなっていてもよい。
【0027】
エンボスの凹凸の凹部と凸部の面積比は、耐傷つき性及び長期に亘る防汚性維持の観点から、3:7〜9:1の範囲であることが好ましい。また、同様の観点から、エンボスの凹部と凸部の幅は50μm〜3.0mmの範囲であることが好ましく、凹部の底面から凸部の頂点(凸部の最外表面がフラットな面であればその面内の任意の点)までの平均高さは20〜200μmであることが好ましい。エンボスの凹凸の凹部と凸部の面積比、凹部と凸部の幅、凹部の底面から凸部の頂点までの高さが上記のような範囲であると、防汚ステンレス部材を、たとえばキッチンのシンクやカウンターなどに適用した場合、鍋、茶碗、包丁などのキッチン用品との接触面積が極力小さくなり、凸部ではキッチン用品と接触し、撥水性被膜の一部を喪失したとしても、凹部では接触しないので、凹部においては長期に亘り撥水効果による防汚効果が持続し、全体としても長期に亘り撥水効果による防汚効果が維持できるようになる。
【0028】
また、上記のようなエンボスの凹凸の表面にさらに小さなエンボスとして凹部の底面から凸部の頂点までの平均高さが0.1〜30μmの凹凸を設けると、撥水性被膜の維持による防汚効果がより長期に亘り持続されることとなる。
【0029】
エンボスが不規則な模様である場合、その算術平均表面粗さRaは、上記と同様、耐傷つき性及び長期に亘る防汚性維持の観点から、1〜50μmであることが好ましい。
【0030】
また、撥水性能をより一層向上させるために、エンボス表面に凹部の底部から凸部の頂点までの平均高さが50nm以下、好ましくは3〜50nmの範囲の細かい凹凸を形成してもよい。このような細かい凹凸は、たとえばショットブラスト処理などの方法で形成することができる。
【0031】
エンボスの形成には、たとえばプレス加工、サンドブラスト処理など、従来より使用されてきた各種方法を用いることができる。また、上記のさらに小さなエンボスの形成も、上記と同じ、たとえばプレス加工、サンドブラスト処理などの方法を用いることができる。
【0032】
エンボスを形成したステンレス鋼の表面には、撥水性被膜がコーティングされるが、このようなコーティング剤としては従来公知の各種のコーティング材料を用いることができる。このようなコーティング材料としては、たとえばフッ素系処理剤や、フッ素を含有するフッ素系塗膜材料や、アクリル系樹脂材料などを用いることができる。本明細書において、「フッ素系処理剤」とは、水酸基と脱水反応又は脱水素反応により結合するケイ素含有官能基を有するもののことであり、「フッ素を含有するフッ素系塗膜材料」とは、フッ素樹脂又はフッ素を主骨格と側鎖の少なくともいずれかに有する塗料のことである。
【0033】
フッ素系処理剤を用いる場合、十分な撥水性能を得るため及び長期に亘る防汚性維持の観点から、撥水性被膜の水接触角は90゜以上であることが好ましく、膜厚は3〜100nmであることが好ましいが、これに限定されない。
【0034】
フッ素系処理剤としては、たとえばパーフルオロアルキルシランなどを使用することができる。
【0035】
この場合の撥水性被膜の形成方法としては、たとえばスプレー方式、ディップ方式、フローコート、ロールコートなどを用いることができる。
【0036】
また、フッ素を含有するフッ素系塗膜材料を用いる場合、十分な撥水性能を得るため及び長期に亘る防汚性維持の観点から、撥水性被膜の水接触角は90゜以上であることが好ましく、膜厚は1〜20μmであることが好ましいが、これに限定されない。
【0037】
フッ素を含有するフッ素系塗膜材料としては、たとえばテトラフロロエチレン樹脂などのフッ素樹脂などを使用することができる。
【0038】
この場合の撥水性被膜の形成方法としては、たとえばスプレー方式、刷毛塗り、ロールコート、ディップコートなどの方法を用いることができる。
【0039】
アクリル系樹脂材料としても撥水性を有していれば従来公知の各種の材料を使用することができ、十分な撥水性能を得るため及び長期に亘る防汚性維持の観点から、撥水性被膜の水接触角は90゜以上であることが好ましく、膜厚は1〜20μmであることが好ましいが、これに限定されない。
【0040】
この場合の撥水性被膜の形成方法としても、たとえばスプレー方式、刷毛塗り、ロールコート、ディップコートなどの方法を用いることができる。
【0041】
本実施形態の撥水性被膜は、良好な耐傷つき性を持たせるため、その硬度を3H以上とする。なお、本明細書において撥水性被膜の「硬度」は鉛筆硬度であり、JIS K5400法に準拠している。
【0042】
本実施形態の防汚ステンレス部材では、撥水性被膜の密着性向上などを目的として、撥水性被膜をプライマー層とトップコート層の2層構造とすることができる。プライマー層に用いることができる材料としては、ポリシラザンなどの各種無機ポリマーや、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの各種有機ポリマーを用いることができる。プライマー層の膜厚は、トップコート層がフッ素系処理剤の塗膜の場合は1〜100nm程度、トップコート層がフッ素系塗膜の場合は1〜5μm程度が適当である。プライマー層の形成方法はトップコート層の形成方法と同じであっても、異なっていてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本願発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0044】
本実施例においては、耐傷つき性、及び防汚性としての水垢除去性による性能の判断を行った。耐傷つき性の評価としては、標準的な試験はないため、耐傷つき性評価方法として陶器製の茶碗をサンプルの上に置き、自重を含め3Kgの荷重をサンプル上に与えて、往復摺動100回後の傷つき外観評価を肉眼による官能評価により行った。また、水垢除去性については、無機成分を十分に含む水道水を滴下乾燥後の拭取り除去性を外観の官能評価により評価した。また、水を含んだスポンジによる磨耗を実施し、10,000回後の水接触角を接触角測定器CA−W(協和界面科学社製;商品名)で測定し、撥水効果の維持性をみた。さらに、撥水性被膜(塗膜)の硬度は鉛筆硬度試験機(安田精機製作所製)で測定した。
【0045】
[実施例1]
厚さ1.0mmのオーステナイト系ステンレス鋼板(SUS304)の表面にプレス加工により、表1に示す条件でエンボスを作製した。そのエンボスの凸部の条件として、凸部の幅をa mm、凸部間の幅をb mm、凹部の底から凸部の頂点までの高さ寸法をc μmとする(実施例1における上記a、b、cの寸法はそれぞれ表1に示している)。エンボスの幾何学模様は、凸部の断面形状が台形、平面形状が正方形、凹部がフラットなもので、凸部が縦横に繰り返して配列されているパターンとし、凹部と凸部の面積の比は7:3とした。その後、エンボス加工時の汚れを十分に除去した後、密着向上を目的としたプライマー層として、アクアミカ(クラリアントジャパン社製;商品名)をスプレー塗装により塗布したものを常温で乾操させた後、トップコート層としてフッ素系処理剤であるフロロサーフFG−5010(フロロテクノロジー社製;商品名)をスプレー塗装し、100℃で30分間焼き付けて塗膜を形成した。形成した塗膜の硬度は3Hであった。プライマー層の膜厚は約50nmであった。トップコート層の膜厚及びその他の物性評価結果を表1に示す。耐傷つき性及び水垢除去性はA〜Eの5段階評価を行い、A〜Dは有効な効果が見られたもので、良好なものがD、より良好なものがC、さらに良好なものがB、最も良好なものがAであり、Eは不可を表す(以下、同様)。
【0046】
[実施例2〜16]
表1及び表2に示すエンボスの条件にてエンボスを作製し、その後実施例1と同様の処理を施したサンプルについて、同様の評価を実施例2〜16において実施した。その物性評価結果を表1及び表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

[比較例1]
厚さ1.0mmのSUS304ステンレス平板上に実施例1と同様の塗膜を形成し、比較例1のサンプルとした。このサンプルの物性評価を実施例1と同様な方法で行った。その結果を表2に示す。その結果、水垢除去性は(A)ですぐれていたが、耐傷つき性は不可(E)の結果となった。
【0049】
[比較例2〜10]
さらに実施例1〜9の比較として、撥水処理を施さないこと以外は実施例1と同様にして比較例2〜10のサンプルを作製した。各サンプルの物性評価を実施例1と同様の方法で行ったが、エンボス加工だけでは、水垢の除去がいずれも不可(E)の結果となった。
【0050】
[実施例17〜32]
厚さ1.0mmのSUS304ステンレス平板の表面にプレス加工により、実施例1〜16と同条件のエンボスを作製した。その後、アクリル系の紫外線硬化型樹脂であるレイクイーン(三菱レーヨン社製;商品名)を塗布し、UV硬化条件(120W、1m/min、積算光量約1500mJ/cm)により塗膜を硬化させて、撥水性塗膜を有するサンプルを作製した。各サンプルを実施例17〜32とし、実施例1と同様に物性評価を行った。形成した塗膜の硬度は3Hであった。その他の評価結果を表3及び表4に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

[実施例33、34]
厚さ1.0mmのSUS304ステンレス平板の表面にサンドブラスト処理により算術平均表面粗さ10μmの不規則なエンボス模様を作製した。その上に実施例1及び実施例17と同様にして塗膜を形成し、それぞれ実施例33、34のサンプルとした。各サンプルの物性評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0053】
実施例33は、プライマー層の膜厚は50nm、トップコート層の膜厚は50nm、塗膜硬度は3Hであった。また、実施例34は、プライマー層の膜厚は1μm、トップコート層の膜厚は5μm、塗膜硬度は4Hであった。その他の評価結果を表5に示す。
【0054】
[実施例35、36]
実施例33において、算術平均表面粗さを0.1μm及び55μmとしたこと以外は同様にして作製したサンプルをそれぞれ実施例35、36とした。各サンプルの物性評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0055】
実施例35の塗膜硬度は3Hであり、実施例36の塗膜硬度は4Hであった。その他の評価結果を表5に示す。
【0056】
[実施例37、38]
実施例34において、算術平均表面粗さを0.1μm及び55μmとしたこと以外は同様にして作製したサンプルをそれぞれ実施例37、38とした。各サンプルの物性評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0057】
実施例37の塗膜硬度は3Hであり、実施例38の塗膜硬度は4Hであった。その他の評価結果を表5に示す。
【0058】
[実施例39、40]
実施例1と同様のエンボスを作製したSUS304ステンレス鋼板の表面にさらに凹部の底部から凸部の頂点までの平均高さが10nmの細かな凹凸をショットブラスト処理により形成し、その上に実施例1及び実施例17と同様にして塗膜を形成し、それぞれ実施例39、40のサンプルとした。各サンプルの物性評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0059】
実施例39は、プライマー層の膜厚は20nm、トップコート層の膜厚は20nm、塗膜硬度は3Hであった。その他の評価結果を表5に示す。
【0060】
実施例40は、プライマー層の膜厚は1μm、トップコート層の膜厚は5μm、塗膜硬度は4Hであった。その他の評価結果を表5に示す。
【0061】
[実施例41]
実施例17のエンボス条件のSUSステンレス鋼板に、コーティング剤としてレイクイーンにコロイダルシリカ(スノーテックスOL)を3wt%添加したものを実施例17と同様に塗布した後、硬化させ、実施例41のサンプルとした。このサンプルの物性評価を実施例1と同様の方法で行った。塗膜硬度は4Hであった。その他の評価結果を表5に示す。
【0062】
[実施例42、43]
実施例1と同様のエンボスを作製したSUS304ステンレス鋼板の表面にさらに凹部の底部から凸部の頂点までの平均高さが3.0μmの凹凸を小さなエンボスとしてあらかじめ大きなエンボスを形成する前に、プレス加工処理により形成しておき、2重のエンボスを作製し、その上に実施例1及び実施例17と同様にして塗膜を形成し、それぞれ実施例42、43のサンプルとした。各サンプルの物性評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0063】
実施例42は、プライマー層の膜厚は20nm、トップコート層の膜厚は20nm、塗膜硬度は3Hであった。実施例43は、プライマー層の膜厚は1μm、トップコート層の膜厚は5μm、塗膜硬度は3Hであった。その他の評価結果を表5に示す。
【0064】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボス加工されたステンレス基材の表面上に撥水性被膜がコーティングされていることを特徴とする防汚ステンレス部材。
【請求項2】
撥水性被膜が、フッ素系処理剤の塗膜よりなり、水接触角が90゜以上であることを特徴とする請求項1記載の防汚ステンレス部材。
【請求項3】
撥水性被膜が、フッ素を含有するフッ素系塗膜よりなり、水接触角が90゜以上であることを特徴とする請求項1記載の防汚ステンレス部材。
【請求項4】
撥水性被膜の膜厚が3〜100nmであることを特徴とする請求項2記載の防汚ステンレス部材。
【請求項5】
撥水性被膜の膜厚が1〜20μmであることを特徴とする請求項3記載の防汚ステンレス部材。
【請求項6】
エンボスが幾何学模様であり、その凹凸の凹部と凸部の面積比が3:7〜9:1であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防汚ステンレス部材。
【請求項7】
幾何学模様における凹部及び凸部の幅がそれぞれ50μm〜3.0mmであることを特徴とする請求項6記載の防汚ステンレス部材。
【請求項8】
凹部の底面から凸部の頂点までの平均高さが20〜200μmであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の防汚ステンレス部材。
【請求項9】
エンボスが不規則な模様であり、その算術平均表面粗さRaが1〜50μmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防汚ステンレス部材。
【請求項10】
エンボスの凹凸の表面にさらに小さなエンボスとして凹部の底面から凸部の頂点までの平均高さが0.1〜30μmの凹凸を設けたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の防汚ステンレス部材。
【請求項11】
エンボス表面に凹部の底部から凸部の頂点までの平均高さが50nm以下の細かい凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の防汚ステンレス部材。

【公開番号】特開2007−38626(P2007−38626A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274584(P2005−274584)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】