説明

防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物

【課題】乾燥条件下での耐クラック性、耐剥離性に優れた塗膜を形成可能な防汚塗料組成物の提供。
【解決手段】重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位を20〜65重量%の量で有し数平均分子量が1000〜50000の被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛とを含んでなり、酸化亜鉛が該被膜形成性共重合体100重量部に対して1〜1000重量部の量で含有されていることを特徴とする防汚塗料組成物、およびこの防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物に関する。
さらに詳しくは、本発明は、塗膜の強度に優れ例えば特に船舶建造時に大きな圧力の加わる盤木部での塗膜ダメージを抑制できる強度を有する塗膜を形成でき、さらに特に乾−湿条件が交互に繰り返される環境下(乾湿交互部)における耐クラック性、耐剥離性に優れ、例えば船舶の水線部または水中構造物の喫水線近傍などのように海水中への浸漬と空気中への暴露とが繰り返されるような環境下にあっても経時変化しにくく安定性に優れた塗膜を形成でき、しかも、海水中で安定した研掃性を有することにより、船底、水中構造物、漁網などへの水棲生物の付着も効果的に防止できるような自己研摩性防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
船底、水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、貝、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の藻類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0003】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招く虞が高い。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、ドックにおける多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖しスライム(ヘドロ状物)が付着すると、これらが腐敗し、その物性が劣化し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0004】
このため従来では、船底など専ら水中に浸漬するような部位での上記のような被害を防止するとの観点のみから各種防汚塗料の研究開発がなされてきた。換言すれば、従来では船体の水線部や水中構造物の喫水線近傍などのように乾湿交互条件が繰り返される部位に塗布するとの観点や、盤木部における塗膜強度をも考慮した上で実用的に極めて有用な防汚塗料を設計するという観点からの研究開発は行われていなかった。
【0005】
このため、本発明者らは、特に乾湿交互部における耐クラック性、耐剥離性に優れ、しかも例えば船舶の水線部などのように海水中への浸漬と空気中への暴露とが繰り返されるような環境下にあっても経時変化しにくく安定性に優れた塗膜を形成できると共に、特に実用的な強度を有し、例えば船舶建造時における盤木部などのように大きな圧力の加わる場所においてもダメージを抑制できるような塗膜を形成できるような自己研磨性防汚塗料組成物を見出すべく鋭意研究したところ、驚くべきことに特定のシリルエステル系共重合体と酸化亜鉛との2成分を特定量で含有する防汚塗料組成物は、特に乾湿交互部における耐クラック性、耐剥離性に優れ、例えば船舶の水線部などのように乾湿交互環境にあっても経時変化しにくく安定性に優れると共に塗膜強度に優れており、例えば盤木ダメージを実用上問題のない程度まで抑制できる強度に優れた塗膜を形成できることを見出すとともに、これら成分に加えてさらに塩素化パラフィン、防汚剤などが配合された防汚塗料組成物では、船底、水中構造物、漁網などへの水棲生物の付着も効果的に防止できることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
なお、従来では、船底など専ら水中に浸漬する部位への水棲生物などの付着被害を防止すべく、船底などには種々の防汚塗料が塗布されていた。このような防汚塗料としては、例えば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有するものが挙げられる。この防汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。
【0007】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような、錫を含有しない防汚塗料の開発が求められている。
【0008】
このような錫を含有しない防汚塗料としては、例えば、特開平4-264170号公報(特許文献1)、特開平4-264169号公報(特許文献2)、特開平4-264168号公報(特許文献3)に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。しかしながら、これらの公報においては、得られる塗膜の特に乾燥時の耐クラック性、あるいは水中への浸漬と乾燥空気中への暴露とが繰返されるような環境下では経時変化の安定性については何等教示されていない。
【0009】
またこれらの防汚塗料には、特開平6-157941号公報(特許文献4)、特開平6-157940号公報(特許文献5)などにも教示されているように防汚性に劣り、また水中でのクラックおよび剥離が生ずるとの問題点もある。
【0010】
また、特開平2-196869号公報(特許文献6)には、トリメチルシリルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびメトキシエチルアクリレートをアゾ系重合開始剤の存在下に共重合してなり、トリメチルシリル基によりブロックされたカルボン酸基を含有するブロックされた酸官能性コポリマー(A)と、多価カチオンの化合物(B)とを含有する防汚塗料が教示されており、その発明の具体的な記載の項には、海洋生物に対する殺生物剤として、酸化亜鉛、酸化第一銅などが挙げられ、またその実施例には、上記酸官能性コポリマー(A)と多価カチオンの化合物に加えて、塩素化パラフィン可塑剤などを含む防汚塗料が開示されている。しかしながら、この実施例に開示されている防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性(特に乾燥時の耐クラック性)、耐剥離性が充分満足しうるものではないという問題点がある。すなわち、この特開平2-196869号公報には、酸化亜鉛をいかなる量で含む防汚塗料からなる塗膜が特に乾燥時の耐クラック性、耐剥離性に優れ、しかも海水中への浸漬と乾燥空気中への暴露とが繰返されるような環境下にあっても経時変化しにくく安定性に優れるかという点については、何等教示されていない。
【0011】
特開昭63-215780号公報(特許文献7)には、(メタ)アクリル酸のトリアルキルシリルエステルなどのオルガノシリル基を有するビニル系単量体などを他のビニル系単量体と共重合させてなり、数平均分子量が3000〜40000の防汚塗料用樹脂が記載され、その発明の詳細な説明の項では、さらにオルトギ酸トリメチル等の有機系水結合剤、酸化第一銅等の防汚剤、ベンガラ等の顔料などを配合し得る旨記載されているが、該公報記載の防汚塗料用樹脂組成物では、特に乾燥時の耐クラック性、耐剥離性に劣り、しかも水中への浸漬と(乾燥)空気中への暴露とが繰返されるような環境下では経時変化しやすく安定性に劣るとの問題点がある。
【0012】
また上記特表昭60-500452号に対応する特公平5-32433号公報(特許文献8)には、毒物(a)と、式[(−CH2-CXCOOR)−(B)−:XはHまたはCH3であり、RはSiR'3又はSi(OR')3でR'はアルキル基などを示し、Bはエチレン性不飽和単量体残基を示す]で表される反復単位を有し、特定の加水分解速度などを有する重合体結合材(b)とからなる防汚塗料が開示され、防汚毒物(a)として酸化亜鉛などが例示され、さらに溶剤、水感受性顔料成分、不活性顔料、充填剤、遅延剤を含有し得る旨記載され、またこの特表昭60-500452号の試験用塗料の製造例の項には、トリブチル錫メタクリレート重合体(TBTM)と酸化第一銅などとを含む防汚塗料が記載され、このTBTMに代えてシリルアクリレート重合体を使用できる旨記載されているが、この製造例に実際に開示されている防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性特に乾燥時の耐クラック性に劣り、また喫水線近傍などでは経時変化しやすく安定性に劣るとの問題点がある。
【0013】
特開平7-18216号公報(特許文献9)には、A)分子内に、式:-COO-SiR123(R1〜R3は炭素数1〜18のアルキル基などを示す)で表されるトリ有機珪素エステル基を有する有機珪素含有重合体と、B)銅または銅化合物とを主成分とする塗料組成物において、上記のA,B成分以外の必須成分として、C)式:
【0014】
【化1】

(R4〜R6は水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基、シクロアルコキシ基、などを示し、R7は炭素数1〜18のアルキル基などを示し、nは1〜3の整数を示す)で表されるアルコキシ基含有珪素化合物を含有した塗料組成物が開示されており、また該公報の発明の構成・作用の欄には、該塗料組成物には酸化亜鉛などの顔料、塩素化パラフィンなどの可塑剤、アクリル樹脂などの樹脂が必要に応じて含まれていてもよい旨記載されている。また、その実施例には、トリn−ブチルシリルメタクリレート系重合体、酸化亜鉛、弁柄およびタルクなどを含む塗料組成物が開示されている。しかしながら、該公報においては、得られる塗膜の特に乾燥時の耐クラック性、あるいは喫水線近傍などでの経時変化の安定性については何等教示されていない。
また、特開平7-102193号公報には、式:
【0015】
【化2】

(但し、式中R1〜R3はいずれもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレオイルオキシ基またはフマロイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、式:Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示され、またその発明の作用・効果の項には、防汚剤として酸化亜鉛などが例示され、塗料固形分中0.1〜80重量%の量で使用される旨記載されている。
【0016】
しかしながら、該公報においては、得られる塗膜の特に乾燥時の耐クラック性、あるいは経時変化の安定性については何等教示されていない。
このように、上記何れの公報記載にも、どんな組成の防汚塗料からなる塗膜が、特に乾燥時の耐クラック性、あるいは水中への浸漬と乾燥空気中への暴露とが繰返されるような環境下での経時変化の安定性に優れるかという点ついては何等教示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平4-264170号公報
【特許文献2】特開平4-264169号公報
【特許文献3】特開平4-264168号公報
【特許文献4】特開平6-157941号公報
【特許文献5】特開平6-157940号公報
【特許文献6】特開平2-196869号公報
【特許文献7】特開昭63-215780号公報
【特許文献8】上記特表昭60-500452号に対応する特公平5-32433号公報
【特許文献9】特開平7-18216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、特に船体、水中構造物などの喫水線より上部にあるなど乾燥下での耐クラック性、耐剥離性などの物性に優れ、しかも喫水線の変動により乾燥下に晒されたり、海水中に浸漬されたりすることによっても経時変化しにくく、長期安定性に優れた塗膜を形成でき、また、塗膜に盤木などの圧力が加えられてもこの圧力によるダメージを実用上問題のない程度まで抑制できるような強度に優れた塗膜を形成できるような防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0019】
本発明は、さらに好ましくは上記目的に加えて水中での耐クラック性、防汚性、自己研磨性(消耗性)にも優れているような防汚塗膜を形成でき、しかも貯蔵安定性に優れているような防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0020】
また、本発明は、このような防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る防汚塗料組成物は、重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位を20〜65重量%の量で有し数平均分子量が3000〜50000の被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛とを含んでなることを特徴としている。
【0022】
その好ましい態様においては、酸化亜鉛を、該被膜形成性共重合体100重量部に対して、通常1〜1000重量部の量で、好ましくは3〜500重量部の量で含有していることが望ましい。
【0023】
本発明に係る防汚塗料組成物には、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛とに加えて塩素化パラフィンを含んでいてもよく、このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、酸化亜鉛が上記のような量で含有され、塩素化パラフィンが、18〜65重量部、好ましくは20〜55重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0024】
本発明の好ましい態様においては、上記トリアルキルシリルエステルの珪素原子に結合している3つのアルキル基のうちの少なくとも1つが炭素数3以上のものであることが望ましく、さらには、この3つのアルキル基の炭素原子数がすべて4以上であるものが好ましく、特に上記トリアルキルシリルエステルがトリブチルシリル(メタ)アクリレートであることが望ましい。
【0025】
また、上記塩素化パラフィンの平均炭素数は8〜30であり、塩素含有率は35〜75%であることが望ましい。
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記の被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛とに加えて、上記被膜形成性共重合体と相溶可能な数平均分子量が1000〜100000の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含んでいてもよく、このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、酸化亜鉛が1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部の量で含有され、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体が5〜200重量部、好ましくは10〜200重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0026】
また、このような防汚塗料組成物では、上記相溶可能な(メタ)アクリル酸エステル系重合体が、疎水性の(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体および(メタ)アクリル酸エステル・スチレン系共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル系重合体であることが望ましく、さらには、これらの(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)は0℃以上であることが望ましい。
【0027】
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記の被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛と、上記の(メタ)アクリル酸エステル系重合体とに加えて、さらに塩素化パラフィンを含んでいてもよく、このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、酸化亜鉛が1〜1000重量部好ましくは3〜500重量部の量で含有され、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が5〜200重量部、好ましくは10〜200重量部の量で含有され、上記塩素化パラフィンが5〜150重量部、好ましくは8〜100重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0028】
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛とに加えて、脱水剤を含んでいてもよく、このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、酸化亜鉛が1〜1000重量部好ましくは3〜500重量部の量で含有され、上記脱水剤は0.1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0029】
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛と塩素化パラフィンと脱水剤とを含んでいてもよく、このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、酸化亜鉛が1〜1000重量部好ましくは3〜500重量部の量で含有され、塩素化パラフィンは3〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは18〜65重量部の量で含有され、上記脱水剤は0.1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0030】
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛と塩素化パラフィンと上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体と脱水剤とを含んでいてもよく、このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、酸化亜鉛は1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部の量で含有され、塩素化パラフィンは3〜200重量部、好ましくは5〜150重量部の量で含有され、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は1〜200重量部、好ましくは5〜200重量部、特に好ましくは10〜200重量部の量で含有され、上記脱水剤は0.1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0031】
本発明に係る上記何れの防汚塗料組成物においても、有機系および/または無機系の防汚剤(酸化亜鉛を除く)を、例えば、被膜形成性共重合体100重量部に対して50〜1500重量部程度の量で含有することが好ましく、このような防汚剤(殺生物剤)のうちでも、銅または銅化合物(例:亜酸化銅)、ジンクピリチオンなどが好ましい。
【0032】
本発明に係る防汚塗料組成物のうちで、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛とに加えて、塩素化パラフィン、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体、脱水剤あるいは防汚剤(酸化亜鉛を除く)などを含有するものは、上記効果に加えて水中での耐クラック性、防汚性、自己研磨性(消耗性)などにも優れた塗膜を形成でき、しかも貯蔵安定性に優れている。(なお、本明細書中では、特にその趣旨に反しない限り、「耐クラック性、耐剥離性」なる語は、水中、(乾燥)空気中両者を含む意味で用いる。)
本発明に係る防汚塗膜は、上記防汚塗料組成物から形成されている。
【0033】
本発明に係る船体または水中構造物の防汚方法は、上記防汚塗料組成物を用いることを特徴としている。本発明に係る防汚塗膜被覆船体または水中構造物は、上記の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0034】
上記のような本発明に係る一液タイプの防汚塗料組成物によれば、耐クラック性、耐剥離性、特に空気中に晒されるなど乾燥下における耐クラック性、耐剥離性に優れ、しかも経時変化の安定性(すなわち、喫水線の変動などにより繰返して乾燥下に晒されたり、水中に浸漬されたりすることによっても経時変化しにくく、長期安定性を有すること)に優れた塗膜を形成できる。
【0035】
特に、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛とに加えて、さらに上記塩素化パラフィン、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、脱水剤、防汚剤(酸化亜鉛を除く)などを含有する本発明の防汚塗料組成物では、上記効果に加えて、さらに船底などの基材あるいはプライマー層などに対する耐剥離性などの物性に優れ、防汚性、自己研磨性(消耗性)にも優れているような防汚塗膜を形成でき、しかも貯蔵安定性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<防汚塗料組成物>
以下、本発明に係る防汚塗料組成物について、具体的に説明する。
本発明に係る防汚塗料組成物は、下記のような被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛とを含有しており、酸化亜鉛は、この被膜形成性共重合体100重量部に対して、通常1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部の量で含有されている。
【0037】
このような本発明に係る一液タイプの防汚塗料組成物によれば、耐クラック性、耐剥離性特に空気中に晒されるなど乾燥下における耐クラック性、耐剥離性に優れ、しかも経時変化の安定性(すなわち、船体、水中構造物等の防汚塗膜が喫水線の変動などにより繰返して乾燥下に晒されたり、水中に浸漬されたりすることによっても経時変化しにくく、長期安定性を有すること)に優れた塗膜を形成できる。
【0038】
なお、この酸化亜鉛量が1重量部未満では、例えば塗膜が空気中に晒されるなど乾燥条件下におかれた際に、簡単にクラックや剥離が生じてしまい、また、1000重量部を超える量では、それ以上の効果の向上は望めず、顔料濃度が高すぎることにより生ずる塗布、乾燥時のワレの発生や、スプレー塗装時のダスト量の増加をまねく傾向がある。
【0039】
[被膜形成性共重合体]
上記の被膜形成性共重合体は、重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位を20〜65重量%の量で有し数平均分子量が3000〜50000である。
【0040】
このトリアルキルシリルエステルは、例えば、下記式[I]:
【0041】
【化3】

で表される。
【0042】
この式[I]中、R1は、水素原子またはメチル基等のアルキル基を表し、R2、R3およびR4は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数が1〜18個程度のアルキル基を表し、R2、R3およびR4は互いに異なっていてもよく同一であってもよい。
【0043】
このようなトリアルキルシリルエステルとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル等のようにR2、R3およびR4が同一のトリアルキルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のようにR2、R3およびR4のうちの1部または全部が互いに異なったトリアルキルシリルエステルなどが挙げられる。
【0044】
本発明においては、このようなトリアルキルシリルエステルを1種単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
このようなトリアルキルシリルエステルの内では、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つのアルキル基の炭素数が3以上であるものが好ましく、さらにはこの3つのアルキル基の炭素原子数がすべて4以上であるものが好ましく、またR2、R3およびR4の総炭素数が5〜21程度のものが好ましい。
【0045】
このようなトリアルキルシリルエステルのうちでは、特にトリアルキルシリルエステル合成の容易性、あるいはこのようなトリアルキルシリルエステルを用いてなる防汚塗料組成物の造膜性、貯蔵安定性、研掃性の制御のしやすさなどを考慮すると、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステルが最も好ましく用いられる。
【0046】
このようなトリアルキルシリルエステルと共重合されるモノマー(コモノマー)としては、任意の重合性不飽和化合物(エチレン性不飽和単量体)を用いることができ、このような重合性不飽和化合物としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類などを挙げることができ、好ましくは、メタアクリル酸メチルエステル(MMA)が用いられる。
【0047】
このようなMMAは、コモノマー(エチレン性不飽和単量体)中に、通常、30重量%以上、好ましくは、50重量%以上の量で含まれていることが好ましく、このような量でMMAを含有してなる共重合体では、ガラス転移温度(Tg)が、例えば30〜60℃と高く、後述するような塩素化パラフィンが配合されてなる防汚塗料組成物からなる塗膜の強度が低下されない。
【0048】
この(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のような重合性不飽和化合物から誘導される成分単位とトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位とは、共重合体中においては、原料として用いられた各モノマーのエチレン結合が解裂して通常ランダムに結合している。
【0049】
なお、このような共重合体中にカルボン酸残基が存在していると、得られる防汚塗料組成物の貯蔵安定性を著しく低下させるため、該共重合体中には、カルボン酸残基が存在しないことが望ましい。
【0050】
該共重合体の合成時には、カルボン酸残基を有しない高純度のモノマーを用いることが好ましい。
このような皮膜形成性共重合体中には、上述したように1種または2種以上の上記のような重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位(トリアルキルシリルエステル成分単位)が含まれていてもよいが、このようなトリアルキルシリルエステル成分単位は、その合計量として20〜65重量%の量で、好ましくは30〜55重量%の量で該共重合体中に含有されていると、この防汚塗料組成物から長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られるため好ましい。
【0051】
また、この共重合体のGPC測定による数平均分子量(Mn)は、3000〜50000、好ましくは3000〜20000、さらに好ましくは4000〜15000、特に好ましくは5000〜12000であり、また重量平均分子量(Mw)は、通常4000〜150000(15万)、好ましくは4000〜60000(6万)、さらに好ましくは6000〜30000(3万)であることが望ましく、またこの共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0〜4.0、好ましくは1.0〜3.0、特に好ましくは1.0〜2.5であることが望ましく、またこの共重合体のガラス転移温度(Tg℃)は、通常15〜80℃、好ましくは25〜80℃、さらに好ましくは30〜70℃、特に好ましくは35〜60℃であることが望ましく、また、この共重合体の例えば50%キシレン溶液における粘度(25℃、CPS)は、通常30〜1000、好ましくは40〜600であることが望ましい。
【0052】
この共重合体の数平均分子量が上記範囲(1000〜50000)内にあると、長期間の塗膜防汚性能、形成された塗膜の耐ダメージ性(耐衝撃性)および得られる塗料組成物の貯蔵安定性と塗膜の耐クラック性に優れるようになる。
【0053】
このような被膜形成性共重合体として、具体的には、下記のようなものが挙げられ、好ましくは付番(1)、(2)、さらに好ましくは付番(1)に示す被膜形成性共重合体が用いられる。
【0054】
(1): トリブチルシリルメタクリレート(イ)と、メチルメタクリレート(MMA)との共重合体であって、その共重合比((イ)/(MMA):重量比)が35〜65/65〜35(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量(Mn)が3000〜5万、好ましくは5000〜12000であり、重量平均分子量(Mw)が4000〜15万、好ましくは6000〜30000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.5であり、ガラス転移温度(Tg℃)が30〜70℃、好ましくは35〜60℃であり、その例えば50%キシレン溶液における粘度(25℃、CPS)が、30〜1000、好ましくは40〜600のもの、
(2): トリプロピルシリルメタクリレート(ロ)とメチルメタクリレート(MMA)と2-エチルヘキシルアクリレート(ハ)との共重合体であって、その共重合比((ロ)/(MMA)/(ハ):重量比)が25〜55/74〜35/1〜10(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量(Mn)が3000〜5万、好ましくは5000〜12000であり、重量平均分子量(Mw)が4000〜15万、好ましくは6000〜30000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.5であり、ガラス転移温度(Tg℃)が30〜70℃、好ましくは35〜60℃であり、例えば50%キシレン溶液におけるその粘度(25℃、CPS)が、30〜1500、好ましくは40〜1000のもの、
(3): トリブチルシリルメタクリレート(イ)と、トリプロピルシリルメタクリレート(ロ)と、メチルメタクリレート(MMA)との共重合体であって、その共重合比((イ)/(ロ)/(MMA):重量比)が30〜60/1〜20/69〜20(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量(Mn)が3000〜5万、好ましくは5000〜12000であり、重量平均分子量(Mw)が4000〜15万、好ましくは6000〜30000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.5であり、ガラス転移温度(Tg℃)が30〜60℃、好ましくは35〜55℃であり、例えば50%キシレン溶液におけるその粘度(25℃、CPS)が、30〜1000、好ましくは40〜400のもの、
(4): トリブチルシリルメタクリレート(イ)と、トリプロピルシリルメタクリレート(ロ)と、メチルメタクリレート(MMA)と、2-エチルヘキシルアクリレート(ハ)との共重合体であって、その共重合比((イ)/(ロ)/(MMA)/(ハ):重量比)が30〜60/1〜20/68〜19/1〜10(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量(Mn)が3000〜5万、好ましくは5000〜12000であり、重量平均分子量(Mw)が4000〜15万、好ましくは6000〜30000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.5であり、ガラス転移温度(Tg℃)が30〜60℃、好ましくは35〜55℃であり、例えば50%キシレン溶液におけるその粘度(25℃、CPS)が、30〜1000、好ましくは40〜400のもの、
(5): トリブチルシリルメタクリレート(イ)と、メチルメタクリレート(MMA)と、2-エチルヘキシルアクリレート(ハ)との共重合体であって、その共重合比((イ)/(MMA)/(ハ):重量比)が35〜65/64.9〜34.9/0.1〜10(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量(Mn)が3000〜5万、好ましくは5000〜12000であり、重量平均分子量(Mw)が4000〜15万、好ましくは6000〜30000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.5であり、ガラス転移温度(Tg℃)が30〜70℃、好ましくは35〜60℃であり、例えば50%キシレン溶液におけるその粘度(25℃、CPS)が、30〜1000、好ましくは40〜600のもの、
(6): トリイソプロピルシリルアクリレート(ニ)とメチルメタクリレート(MMA)とエチルアクリレート(ホ)との共重合体であって、その共重合比((ニ)/(MMA)/(ホ):重量比)が40〜65/59〜20/1〜20(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量(Mn)が1000〜5万、好ましくは3000〜30000(3万)であり、重量平均分子量(Mw)が1000〜15万、好ましくは3000〜3万であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜4.0、好ましくは1.0〜3.0であり、ガラス転移温度(Tg℃)が20〜80℃、好ましくは25〜75℃であり、例えば50%キシレン溶液におけるその粘度(25℃、CPS)が30〜1500、好ましくは40〜1300のもの、
(7): トリイソブチルシリルメタクリレート(ヘ)とメチルメタクリレート(MMA)と、2-エチルヘキシルアクリレート(ハ)との共重合体であって、その共重合比((ヘ)/(MMA)/(ハ):重量比)が35〜65/64.9〜34.9/0.1〜10(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量(Mn)が1000〜5万、好ましくは3000〜12000であり、重量平均分子量(Mw)が1000〜15万、好ましくは3000〜30000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.5であり、ガラス転移温度(Tg℃)が25〜80℃、好ましくは30〜70℃であり、例えば50%キシレン溶液におけるその粘度(25℃、CPS)が、30〜2000、好ましくは40〜1500のもの、など。
【0055】
このような被膜形成性共重合体を調製するには、例えば、通常窒素気流中などの不活性雰囲気下、キシレン等の有機溶媒中で、トリブチルシリルメタクリレート等のトリアルキルシリルエステルと、コモノマー類中にメチルメタクリレートが50重量%以上(例:80重量%)の量で含有された重合性不飽和化合物とを、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系あるいは過酸化物系などの重合開始剤、必要に応じてn−オクチルメルカプタンなどの重合調整剤などの存在下に、2〜12時間程度、50〜120℃程度の温度でラジカル重合等の方法にて反応させればよい。
【0056】
このようにして得られた被膜形成性共重合体には、用いられた各モノマー量に対応する量で各成分単位が含まれている。なお重合方法は、簡便な上記ラジカル溶液重合法に限定されず、従来より公知の種々の方法を採用することができる。
【0057】
また溶媒としては、上記芳香族(例:キシレン)の他、脂肪族、ケトン、エステル、エーテルなど通常塗料用として汎用されている各種溶剤から任意に選択することができる。
溶媒としては、特に水分含有量の低い溶媒が好ましく、このような低水分溶媒を用いると、上記反応時及びその後の加水分解反応を避けることができるため好ましい。
【0058】
なお、アルコール系溶媒は、初期水分含量が高く、しかもシラノールとの反応性を有するため、かかる観点からは上記反応時に用いるのは適当ではない。
【0059】
[防汚塗料組成物の製造]
このような防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、例えば、上記被膜形成性共重合体と、該被膜形成性共重合体100重量部に対して1〜1000重量部の量の酸化亜鉛と、必要により用いられる後述するような18〜65重量部の量の塩素化パラフィンと、50〜1500重量部の量の防汚剤(例:亜酸化銅80〜1200重量部)と、0.1〜200重量部の量の脱水剤(例:無水石膏、モレキュラーシーブ)と、任意量のタレ止め・沈降防止剤、顔料、溶剤などとを一度にあるいは任意の順序で加えて攪拌・混合・分散すればよい。
【0060】
このような本発明に係る防汚塗料組成物は、被膜形成性共重合体と酸化亜鉛(亜鉛華)とを含有しているが、この他に塩素化パラフィン、防汚剤、後述するような(メタ)アクリル酸エステル系重合体、脱水剤、タレ止め・沈降防止剤、鱗片状顔料、溶剤などを含んでいてもよい。
【0061】
[塩素化パラフィン]
すなわち、本発明の好ましい態様においては、上記防汚塗料組成物には、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛に加えて、さらに塩素化パラフィン(塩化パラフィン;塩パラ)が含まれていてもよい。
【0062】
このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、酸化亜鉛は通常、1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部の量で含有され、塩素化パラフィンは、18〜65重量部、好ましくは20〜55重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0063】
また、このような防汚塗料組成物では、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、後述するような防汚剤は、通常50〜1500重量部、好ましくは80〜1200重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0064】
塩素化パラフィンは、得られる防汚塗料組成物からなる塗膜(本明細書中では、「防汚塗膜」とも言う)の耐クラック性特に水中(淡水、海水を含む。以下同じ)に浸漬するような場合での耐クラック性の向上に寄与するが、このような塩素化パラフィンとしては、直鎖状でもよく分岐を有していてもよく、室温で液状でも固体(粉体)でもよいが、その平均炭素数が通常、8〜30、好ましくは10〜26のものが好ましく用いられ、その数平均分子量が通常、200〜1200、好ましくは300〜1100であり、粘度が通常1以上(ポイズ/25℃)、好ましくは1.2以上(ポイズ/25℃)であり、その比重が1.05〜1.80/25℃、好ましくは1.10〜1.70/25℃のものが好ましく用いられる。
【0065】
このような炭素数の塩素化パラフィンを用いると、得られる防汚塗料組成物を用いて割れ(クラック)、剥がれの少ない塗膜を形成できる。
なお塩素化パラフィンの炭素数は、クラックの抑制効果および得られる塗膜表面の消耗性(更新性)と防汚性から8〜30の範囲にあることが好ましい。
【0066】
また、この塩素化パラフィンの塩素化率(塩素含有量:重量%)は、通常35〜75%、好ましくは35〜65%であることが好ましい。
このような塩素化率の塩素化パラフィンを用いると、得られる防汚塗料組成物を用いて割れ(クラック)、剥がれの少ない塗膜を形成できる。
【0067】
なお塩素化パラフィンの塩素化率が、35〜75%の範囲にあると、被膜形成性共重合体(シリルエステル共重合体)との混和性(相溶性)、クラックの抑制効果、得られた塗膜表面の消耗性および防汚性に優れるようになる。このような塩素化パラフィンとしては、東ソー(株)製の「トヨパラックス150」、「トヨパラックスA-70」などが挙げられる。
【0068】
本発明においては、このような塩素含有率、炭素数などの異なる2種以上の塩素化パラフィンを適宜組み合わせて用いることができる。
このように2種以上の塩素化パラフィンを組み合わせて用いる場合には、上記塩素化パラフィンの炭素数、塩素化率は、防汚塗料組成物中に含まれるこれらの塩素化パラフィンの炭素数あるいは塩素化率の平均値で示す。
【0069】
このような塩素化パラフィンは、本発明に係る防汚塗料組成物においては、上記の被膜形成性共重合体100重量部に対して、3〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは18〜65重量部、より好ましくは20〜55重量部、特に好ましくは20〜50重量部の量で含まれていることが好ましい。
【0070】
この塩素化パラフィンの量が18〜65重量部の範囲にあると、該防汚塗料組成物にて形成された塗膜に生ずるクラックの抑制効果に優れかつ塗膜強度および耐ダメージ(衝撃)性に優れるようになる。
【0071】
このように上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛とに加えて上記のように塩素化パラフィン等が配合された防汚塗料組成物は、1液性で貯蔵安定性に優れ、しかも、例えば、船底に塗布形成されたこの防汚塗料組成物からなる塗膜(防汚塗膜)が空気中に晒され、また没水しても、防汚塗膜のクラックは抑制される。
【0072】
また、該防汚塗料組成物がプライマー表面に塗布される場合、塗布されたプライマー表面からの防汚塗膜の剥離は抑制される。
また、本発明の防汚塗料組成物による塗装を含む各種防汚塗料による船底等の塗装を複数回行ない、あるいは本発明の防汚塗料組成物を用いて、既に本発明の防汚塗膜が形成されている船底等の表面に修繕塗装等を行う場合においては、前回塗布形成された防汚塗膜表面からの本発明の表面防汚塗膜の剥離は抑制される。
【0073】
しかも、このようにプライマー表面にあるいは修繕すべき船底等の表面に塗布形成された本発明の防汚塗膜では、その消耗制御が可能であり、用いられる環境に応じて必要な消耗度と防汚力(性)を提供することができる。従って、この防汚塗料組成物では、用途に応じて形成すべき防汚塗膜の膜厚を最大限低減化することができるため、経済的にも優れている。
【0074】
[防汚剤]
本発明に係る防汚塗料組成物には、必ずしも防汚剤が含有されていなくともよいが、防汚剤が含有されていることが好ましい。
【0075】
このような防汚剤としては、有機系のものであってもよく無機系のもの(酸化亜鉛を除く)であってもよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、亜酸化銅(Cu2O)、銅粉、チオシアン化第1銅(ロダン銅)、等の銅または銅化合物の他、下記式[II]で示される金属−ピリチオンおよびその誘導体[式中R1〜R4は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基を示し、Mは、Zn、Cu、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Fe、Al等の金属を示し、nは価数を示す]:
【0076】
【化4】

、テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の毒物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン-2-エチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、4,5−ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、ピリジントリフェニルボラン・ロダン銅等を挙げることができ、好ましくは亜酸化銅が用いられる。
【0077】
亜酸化銅以外の防汚剤は、亜酸化銅と併用して用いることが好ましく、この亜酸化銅と併用される防汚剤としては、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩(ジンクピリチオン)が好ましい。
【0078】
このような防汚剤は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。このような防汚剤は、防汚塗料組成物調製時に用いられる防汚剤、被膜形成性共重合体などの種類あるいはこのような防汚塗料組成物が塗布形成される船舶等の種類(船舶では、外航−内航用、各種海水域用、木造−鋼鉄−アルミ製船用等)などにもより一概に決定されないが、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、防汚剤総量として通常50〜1500重量部の量で、好ましくは80〜1200重量部の量で用いられる。
【0079】
例えば、防汚剤として上記亜酸化銅を用いる場合、この亜酸化銅は、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して通常、80〜1200重量部程度の量で防汚塗料組成物中に含有されていてもよい。
【0080】
[(メタ)アクリル酸エステル系重合体]
本発明に係る防汚塗料組成物には、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛とに加えて、この被膜形成性共重合体と相溶可能な数平均分子量が1000〜100000(10万)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体[(メタ)アクリル酸シリルエステル以外の(メタ)アクリル酸系エステルの単独重合体または共重合体]が含有されていてもよい。
【0081】
本発明の防汚塗料組成物においては、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛と上記塩素化パラフィンとに加えて、この被膜形成性共重合体と相溶可能な(メタ)アクリル酸エステル系重合体が配合されていると、得られる塗膜の耐クラック性を一層改善することができ、塗膜の海水消耗速度と防汚性能の持続性を好適な範囲に調整することができ、また既存の防汚塗膜の上に本発明の防汚塗料組成物を上塗りする場合には得られる塗膜の接着性を一層改善する効果を発揮することができるという利点があり、また、上記塩素化パラフィンの配合量を低減しても、得られる塗膜の耐クラック性を改善することができるという利点がある。
【0082】
このような被膜形成性共重合体と相溶可能な(メタ)アクリル酸エステル系重合体としては、前記被膜形成性共重合体調製用として用いられる(メタ)アクリル酸シリルエステル以外の(メタ)アクリル酸系エステルの単独重合体または共重合体が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、少なくとも2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン系共重合体などが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0083】
これらの(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、被膜形成性共重合体と相溶可能である限り、例えば鎖状であっても分岐状であってもよく、また架橋構造を有していてもよい。
【0084】
ここで、被膜形成性共重合体と「相溶可能」な(メタ)アクリル酸エステル系重合体とは、被膜形成性共重合体(トリアルキルシリル(メタ)アクリレート共重合体ともいう)濃度30重量%のキシレン溶液と、(メタ)アクリル酸エステル系重合体濃度30重量%のキシレン溶液とを、1:1の容量比で25℃において混合したとき、透明な均一溶液となるか、または2液分液層を形成することなく乳白色の均一溶液を形成するような(メタ)アクリル酸エステル系重合体をいう。
【0085】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量が上記のような範囲内にあると、クラックの抑制と、消耗度の調整を効果的に行うことができる上に、静置防汚性にも優れた防汚塗膜を形成できる傾向がある。
【0086】
また(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量が、上記範囲を超えて大きくなると得られる防汚塗膜のクラックの抑制効果は大きく、消耗度の低減効果も大きいが、静置防汚性は低下する傾向があり、また上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の分子量が上記範囲を超えて小さくなると、得られる防汚塗膜の防汚性を高く維持できても、クラックの抑制効果は低減する傾向がある。
【0087】
このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体あるいはこれらのモノマーの共重合体、スチレン(ST)等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ビニルエーテル化合物などの各種モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの共重合体を挙げることができる。
【0088】
このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体として、具体的には、例えば、
(1):メタアクリル酸メチル(MMA)とメタアクリル酸ブチル(BMA)との共重合体であって、その共重合比(各成分の重量比で示す。以下同様)(MMA/BMA)が30〜70/70〜30(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量が1000〜10万、好ましくは1000〜5万のもの、
(2):メタアクリル酸イソブチル(i-BMA)とメタアクリル酸t−ブチル(t-BMA)とスチレン(ST)とメタアクリル酸ステアリル(SLMA)との共重合体であって、その共重合比(i-BMA/t-BMA/ST/SLMA)が10〜40/10〜40/20〜60/5〜20(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量が1000〜10万、好ましくは1000〜8万程度のもの、
(3):メタアクリル酸メチル(MMA)の単独重合体であって、数平均分子量が1000〜10万、好ましくは1000〜2万程度のもの、
(4):メタアクリル酸エチル(EMA)の単独重合体であって、数平均分子量が1000〜10万、好ましくは1000〜2万程度のもの、
(5):メタアクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)の共重合体であって、その共重合比(MMA/BA)が90〜10/10〜90(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量が1000〜10万、好ましくは1000〜5万程度のもの、
(6):メタアクリル酸エチル(EMA)とアクリル酸ブチル(BA)の共重合体であって、その共重合比(EMA/BA)が100〜70/0〜30(全成分合計100重量部)であり、数平均分子量が1000〜10万、好ましくは1000〜3万程度のもの、などを挙げることができる。
【0089】
このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体のうちでは、好ましくは疎水性のアクリル系ポリマー[(メタ)アクリル酸エステル含量が50重量%を超え、スチレン含量が50重量%未満のもの]、またはスチレン系ポリマー[スチレン含量が50重量%以上のもの]が用いられ、付番(1)、(2)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体が特に好ましく用いられる。
【0090】
このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)は0℃以上であることが好ましく、特に20〜105℃であることが好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体(例:アクリル酸ブチル(BA)ホモポリマー)では、得られる防汚塗膜におけるクラックの抑制効果が低くなることがある。
【0091】
なお、このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、塩素化パラフィンが含有されない被膜形成性共重合体含有防汚塗料組成物では、該被膜形成性共重合体100重量部に対して通常10〜200重量部の量で用いられるが、この塩素化パラフィンが含有される防汚塗料組成物ではさらに低減可能であり、該被膜形成性共重合体100重量部に対して5〜200重量部の量で用いることができる。
【0092】
すなわち、このような防汚塗料組成物では、酸化亜鉛は、前記被膜形成性共重合体100重量部に対して、1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部の量で含有され、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、通常1〜200重量部、好ましくは5〜200重量部、さらに好ましくは10〜200重量部、特に好ましくは15〜160重量部の量で含有され、上記塩素化パラフィンは、通常3〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは8〜100重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0093】
また、このような防汚塗料組成物では、前記被膜形成性共重合体100重量部に対して、防汚剤は、通常100〜2000重量部、好ましくは150〜1500重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0094】
上記塩素化パラフィン含量が5〜150重量部の範囲にあると、とくに得られる防汚塗膜のクラックの抑制効果および得られる防汚塗膜の機械的強度に優れるようになる。
なお、このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体中には、前記被膜形成性共重合体の場合と同様、カルボン酸残基が存在していると、得られる防汚塗料組成物の貯蔵安定性を著しく低下させるため、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体中には、カルボン酸残基が存在しないことが望ましく、ポリマーの酸価(AV値)は通常15以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下となるように、カルボン酸残基を有しないモノマーを用いることが好ましい。
【0095】
この防汚塗料組成物では、例えば、船底に塗布形成されたこの防汚塗料組成物からなる塗膜(防汚塗膜)が没水しても、防汚塗膜のクラックは抑制され、消耗制御は可能であり、用いられる環境に応じて必要な消耗度と防汚性能を提供することができる。
【0096】
従って、このように(メタ)アクリル酸エステル系重合体が含有されている防汚塗料組成物では、用途に応じて防汚塗膜の膜厚を最大限低減化することができるために、経済的にも優れている。
【0097】
[鱗片状顔料]
本発明に係る防汚塗料組成物には、上記の被膜形成性共重合体と上記の酸化亜鉛と上記の塩素化パラフィンとに加えて、下記のような鱗片状顔料が含有されていてもよい。
【0098】
鱗片状顔料としては、雲母粉、鱗片状のアルミ粉、銅粉、亜鉛末あるいはパール顔料などが挙げられ、雲母粉が好ましく用いられる。このような雲母粉の原石として、さらに具体的には、シロウンモ、ベニウンモ、ソーダウンモ、セリサイト、バナジンウンモ、イライトなどのシロウンモ系列、クロウンモ、キンウンモ、テツウンモ、チンワルドウンモなどのクロウンモ系列の他、カイリョク石、セラドン石などが挙げられるが、一般的には、シロウンモの粉砕物が用いられる。
【0099】
このような鱗片状顔料の平均粒径、アスペクト比などは通常特に限定されないが、好ましくは、その平均粒径が0.1〜200μmであり、アスペクト比が(粒子の長辺/短辺の比)10以上であることが望ましい。
【0100】
このような防汚塗料組成物では、前記被膜形成性共重合体100重量部に対して酸化亜鉛は1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部の量で含有され、上記塩素化パラフィンは通常5〜65重量部、好ましくは8〜55重量部の量で含有され、上記鱗片状顔料は通常1〜100重量部、好ましくは5〜90重量部の量で含有されていることが好ましい。
【0101】
またこのような防汚塗料組成物では、前記被膜形成性共重合体100重量部に対して、防汚剤は、通常100〜800重量部、好ましくは200〜600重量部の量で含有されていることが望ましい。鱗片状顔料が1〜100重量部の範囲にあると、添加効果に優れかつ防汚効果に優れ特に耐クラック性に優れた防汚塗膜を形成することができる。
【0102】
なお、一般的に、鱗片状顔料を防汚塗料組成物などに配合すれば、得られる塗膜の耐クラック性の向上には効果的であると考えられる。
しかしながら、従来の防汚塗料では、生理活性を有しない鱗片状顔料が配合された場合には、得られる防汚塗膜からの防汚剤の溶出は妨げられ、防汚効力は、大幅に低下してしまうとの問題点があった。
【0103】
ところが、本発明のような自己研磨性(消耗性)に優れたシリルエステル系防汚塗料組成物(AF)から形成される防汚塗膜では、海水中における表面更新性に優れており、塗膜表面に鱗片状顔料が存在していても充分な塗膜の更新性を有する上、もともと防汚活性も極めて高いレベルにあるため、防汚剤の過度の溶出を制御し適切な範囲に保持(制御)しつつ、しかも、没水後のクラックの発生をさらに効率的に抑制することができる。
【0104】
なお、被膜形成性共重合体が(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル[TBS(M)A]と(メタ)アクリル酸メチル[M(M)A]との共重合体である防汚塗料組成物からなる防汚塗膜を例に採って、さらに具体的に説明すると、海水中では、水酸イオン(OH-)等の影響を受けて、該被膜形成性共重合体中のトリブチルシロキシ基(Bu3SiO−)が該共重合体主鎖に結合しているカルボニル基(−CO−)から切れて、トリブチルシラノール(Bu3SiOH)となって海水中に溶解して行く。
【0105】
一方、主鎖を構成していたポリマーもカルボン酸塩の構造(−COO-)で、海水中に脱落・溶解していくため防汚塗膜の海水との接面(防汚塗膜表面)は、次々と更新されるものと考えられる。
【0106】
このため、防汚塗膜中に含有されていた防汚剤は、速やかに防汚塗膜表面から放出される。
ところが、上記のように鱗片状顔料が塗料中に含まれていると、海水と、防汚剤および被膜形成性共重合体との接触は抑制されるため、本発明では、上記のような効果が得られるのであろうと思われる。
【0107】
本発明に係る防汚塗料組成物には、上記の被膜形成性共重合体と酸化亜鉛と塩素化パラフィンとに加えて、上記の(メタ)アクリル酸エステル系重合体と鱗片状顔料とが含有されていてもよい。
【0108】
このような防汚塗料組成物では、前記被膜形成性共重合体100重量部に対して、
酸化亜鉛は1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部の量で含有され、上記塩素化パラフィンは、通常3〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜100重量部の量で含有され、
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、通常1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜100重量部の量で含有され、
上記鱗片状顔料は通常0.5〜400重量部、好ましくは1〜200重量部、さらに好ましくは5〜150重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0109】
また、このような防汚塗料組成物では、前記被膜形成性共重合体100重量部に対して、防汚剤は、通常100〜2000重量部、好ましくは150〜1500重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0110】
[脱水剤]
また、脱水剤が含有された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができ、このような脱水剤としては、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブTI)等が挙げられ、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく、特にモレキュラーシーブが好ましく用いられる。
【0111】
このような脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、無水石膏よりもモレキュラーシーブが特に好ましく用いられるのは、下記の理由による。
【0112】
すなわち、無水石膏が含有された防汚塗料組成物を塗布すると、塗布後のスウェットや降雨の際には、水溶性の水和した石膏が塗膜表面に析出し、塗膜の白化原因となることがあり、またこの防汚塗膜の表面にさらに上塗りを行なう場合には、上塗り性への影響が生ずる傾向があるため、これらを回避するには、モレキュラーシーブを用いることが特に好ましい。
【0113】
なお、このような脱水剤との関係で、前記特開平7-18216号公報記載の塗料組成物と対比しつつ本願発明についてさらに詳説すると、本願発明の防汚塗料組成物には、前記皮膜形成性共重合体として比較的低分子量のものが含有されているために、上記脱水剤が配合されていない防汚塗料組成物においてもある程度、貯蔵中の増粘ゲル化は抑制される。
【0114】
また、もし該防汚塗料組成物の長期貯蔵中に多少増粘し、ゲル化する傾向が認められたとしても、適宜選択された溶剤を用いて該防汚塗料組成物を希釈して船底等に塗布できれば、形成された塗膜は消耗性(自己研磨性)を有しており、良好な防汚性が認められる。
【0115】
このように増粘ゲル化しているような防汚塗料組成物を塗布形成してなる塗膜であっても、消耗性を有しているのは、主として前述したような量で比較的低分子量の皮膜形成性共重合体が用いられているためであろうと思われる。
【0116】
これに対して、前記特開平7-18216号公報記載の塗料組成物では、脱水剤が配合されていないと、該塗料組成物の貯蔵中に顕著な増粘ゲル化傾向が見られ、このように増粘ゲル化した塗料組成物を船底等に塗布形成してなる塗膜では、消耗性は殆ど認められず、防汚性に劣る。
【0117】
このような脱水剤は、上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、通常0.1〜200重量部の量で、好ましくは1〜100重量部の量で用いられる。
【0118】
[タレ止め・沈降防止剤、顔料など]
タレ止め・沈降防止剤としては、有機粘土などのような防汚塗料組成物の貯蔵安定性を害するもの以外は、任意量で配合されていてもよい。
【0119】
このようなタレ止め・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アミドワックス、水添ヒマシ油ワックス系,ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは水添ヒマシ油ワックス、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスが用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200-20」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0120】
顔料としては、前記鱗片状顔料(例:雲母粉)の他、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。
【0121】
溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。
【0122】
上記のような防汚塗料組成物を水中構造物(例:原子力発電所の給排水口)の表面に、あるいは、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木設備の工事用の汚泥拡散防止膜の表面に、あるいは、船舶、漁具(例:ロープ、漁網)などの各種成形体の表面に常法に従って1回〜複数回塗布すれば、特に乾燥条件下に晒され、あるいは喫水線付近のように水中への浸漬と空気中への暴露とが繰り返されるような箇所での耐クラック性、経時変化の安定性に優れた防汚塗膜被覆船体または水中構造物などが得られる。
【0123】
なお、本発明に係る防汚塗料組成物は、直接上記船体または水中構造物等の表面に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または水中構造物等の表面に塗布してもよい。
【0124】
さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは本発明発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、水中構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。
【0125】
このようにして船体、水中構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜150μm/回程度である。
【0126】
[発明の効果]
このような本発明に係る防汚塗料組成物は、特に空気中に晒されるなど乾燥下における耐クラック性、耐剥離性に優れ、しかも経時変化の安定性(すなわち、喫水線の変動により繰返して乾燥下に晒されたり、水中に浸漬されたりすることによっても経時変化しにくく、長期安定性を有すること)に優れた塗膜を形成できる。
【0127】
特に、上記被膜形成性共重合体と酸化亜鉛とに加えて、さらに上記塩素化パラフィン、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、脱水剤、防汚剤(酸化亜鉛を除く)などを含有する本発明の防汚塗料組成物では、上記効果に加えて、さらに船底などの基材あるいはプライマー層などに対する耐剥離性などの物性に優れ、防汚性、自己研磨性(消耗性)にも優れているような防汚塗膜を形成でき、しかも貯蔵安定性に優れている。
【0128】
[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
【0129】
なお、以下の実施例、比較例等において、「部」は「重量部」の意味である。また、表中の各成分量例えば、共重合体成分量、塩素化パラフィン(塩パラ)量、着色顔料、亜酸化銅、亜鉛華などの量、あるいは溶媒(例:キシレン)量などは、特に断らない限りいずれも「重量部」表示で示す。
【0130】
[ポリマーの製造例]
(共重合体S−1の製造)
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み窒素気流下で90℃の温度条件に加熱攪拌を行った。
【0131】
同温度を保持しつつ滴下装置より、上記反応器内にトリブチルシリルメタクリレート40部、メチルメタクリレート60部および重合開始剤の2,2'−アゾビスイソブチロニトリル1.2部の混合物を4時間かけて滴下した。
【0132】
その後同温度で4時間攪拌を続けて無色透明の共重合体溶液S−1を得た。
得られた共重合体溶液S−1を105℃で3時間加熱した後の加熱残分は49.9重量%であり、GPCによる残存モノマーの定量結果より各モノマーの95重量%以上は、共重合体中に組み込まれ、反応中の重合率変化は各モノマーでほぼ等しく、これらのモノマーから誘導される各成分単位はほぼそれぞれ用いられたモノマー量比で、ランダムに配列しているものと考えられる。
【0133】
またこの共重合体溶液S−1中の共重合体(加熱残分)S−1のガラス転移温度(Tg
)は51℃であり、共重合体溶液S−1の25℃における粘度は295cpsであり、GPC測定による数平均分子量(Mn)は11200であり、重量平均分子量(Mw)は21200であった。
(共重合体S−2〜共重合体S−6の製造)
上記共重合体S−1の製造の際に、滴下配合成分を表1に示すように変えた以外は、上記と同様にして共重合体S−2、共重合体S−3、共重合体S−4、共重合体S−5および共重合体S−6を得て、上記と同様にこれらの共重合体(溶液)の物性値を測定した。
【0134】
結果を併せて表1に示す。
【0135】
【表1】

防汚塗料組成物を構成する際に用いられる相溶性(メタ)アクリル酸エステル系重合体成分(溶液)の種類と物性値[加熱残分(重量%/重合体溶液)および該重合体成分中に含有される相溶性(メタ)アクリル酸エステル系重合体の粘度(ガードナー/25℃)、分子量(Mn:GPC測定による)、酸価(AV)、ガラス転移温度(Tg℃)]を測定した。
【0136】
結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
[実施例1〜31、比較例1〜7]
[防汚塗料組成物の製造例]
表4〜表11に示す配合組成の各防汚塗料組成物を製造した(各成分量は重量部表示)。
【0139】
表4〜表11に示す配合組成の防汚塗料組成物を製造するに際しては、ガラスビーズを入れたペイントシェーカー内でこれらの配合成分を一緒にして2時間振とうした後、室温で12時間熟成を行った。次いで100メッシュのフィルターにて濾過して、所望の防汚塗料組成物を得た。
【0140】
該防汚塗料組成物についてストーマー粘度計で測定した製造直後の粘度(Ku値/25℃)、および常温で1カ月貯蔵後の粘度を表12〜14に併せて示す。また、該防汚塗料組成物を用いた防汚性、経時消耗度、乾湿交互部における物性、塗膜強度の評価を下記のようにして行った。
結果を、表12〜14に示す。
【0141】
[防汚性の評価]
広島湾の海水中に設置した回転ドラムの側面に取付け可能なように曲げ加工が施された70×200×3mmのサンドブラスト板を用意した。
【0142】
このサンドブラスト板に、エポキシ系ジンクリッチプライマー(乾燥塗膜中の亜鉛末含有率80重量%)、タールエポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるように順次重ねて塗装した後、供試防汚塗料組成物をその乾燥後の膜厚が200μmとなるように塗装し、試験板を得た。
【0143】
回転ドラムにこの試験板を取り付けて周速15ノット、50%稼働条件(夜間12時間稼働、昼間12時間停止の交互運転)にて12カ月間船舶の運航をシュミレートした後、防汚性(動的防汚性,試験板への各種水棲生物の付着面積%)、消耗度μ(膜厚減少:表中★印欄)の評価を行った。
また、下記のような条件で経時消耗度、乾湿交互部における物性、塗膜強度の評価をも行った。
【0144】
[経時消耗度の評価]
直径300mmで厚さ3mmの円盤状サンドブラスト板にエポキシ系ジンクリッチプライマー(乾燥塗膜中の亜鉛末含有率80%のもの)を、その乾燥膜厚が20μmとなるように塗装した後、一日置いて、タールエポキシ系防食塗料をその乾燥膜厚が150μmとなるように塗装した後、また一日置いて、さらにビニル系バインダーコートをその乾燥膜厚が50μmとなるように順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。
【0145】
その後スキマ500μmのアプリケーターを用い供試防汚塗料組成物を半径方向に放射状に塗装し、試験板を得た。25℃の海水を入れた恒温槽中でモーターにこの試験板を取りつけ、周速15ノットで100%稼働条件(昼夜を問わず連続運転)で回転し、円周付近の消耗度(膜厚減少)を3ヶ月毎に4回測定した。
【0146】
[乾湿交互部における物性の評価]
70mm×150mm×2.3mmのサンドブラスト板に、「防汚性の評価」で用いた塗装方法と同様の方法で塗装を行い、試験板を得た。
この試験板を、12時間の海水浸漬と12時間の空中暴露とを繰り返す回転式乾燥交互試験機に取り付け、3ヶ月間この試験機の運転を行った後、目視にて該試験板の物性評価を行った。
評価基準は以下の通り。
5:試験板表面に、ワレ、ハガレが認められない。
4:試験板表面に、微細なワレが僅かに認められる。
3:試験板表面に、微細なワレが認められる。
2:試験板表面に、顕著なワレが認められる。
1:試験板表面に、ハガレを伴う顕著なワレが認められる。
【0147】
[塗膜強度の評価]
70mm×150mm×2.3mmのサンドブラスト板にタールエポキシ系防食塗料をその乾燥膜厚が150μmとなるように塗装した後、1日置いて、その表面にさらにビニール系バインダーコートをその乾燥膜厚が50μmとなるように塗装し、次いで40℃の恒温器中で2日間乾燥した。
【0148】
次いで、上記乾燥膜の表面に、さらにビニル系バインダーコートをその乾燥膜厚が50μmとなるように塗装した。
その翌日に、供試防汚塗料組成物をその乾燥膜厚が150μmとなるように塗装した後、さらにその翌日にも、これと同じ防汚塗料組成物を150μmの乾燥膜厚で塗装した(防汚塗料組成物よりなる乾燥膜厚合計:150+150=300μm)。
【0149】
次いで、温度20℃で湿度75%の恒温・恒湿室中で14日間乾燥した。
このようにして得られた試験板の塗膜表面に、50mm×50mmのポリエチレンシートを置き、その上に30mm×30mmの模擬盤木を置いて、30kg/cm2の荷重で30分間加圧した後、塗膜のダメージを目視により評価した。
評価基準は、以下の通り。
【0150】
【表3】

上記評価結果を、併せて表12〜14に示す。
【0151】
なお、表中の成分名称等は以下の通りである。
(1)「トヨパラックス150」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、平均炭素数:14.5、塩素含有率(量)50%、粘度:12ポイズ/25℃、比重:1.25/25℃。
(2)「トヨパラックスA-40」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、平均炭素数:24.5、塩素含有率(量)40.5%、粘度:18.5ポイズ/25℃、比重:1.16/25℃。
(3)「トヨパラックス 270」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、平均炭素数:12、塩素含有率(量)70%、粘度:4ポイズ/80℃、比重:1.50/80℃。
(4)「トヨパラックスA-70」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、平均炭素数:24.5、塩素含有率(量)70%、白色粉体、比重:1.65/25℃。
(5)「モレキュラーシーブ4A」脱水剤、ユニオン昭和(株)製、合成ゼオライトパウダー。
(6)「ディスパロン305」楠本化成(株)製の水添ヒマシ油系タレ止め剤。
(7)「ディスパロン4200-20」楠本化成(株)製の酸化ポリエチレン系沈降防止剤、20%キシレンペースト。
(8)「マイカ白玉」:(有)(脇元雲母)製の鱗片状顔料、平均粒径:15μm、アスペクト比:40。
【0152】
表中、「塩素化パラフィン(重量%)(対共重合体)」、「Cu2O(重量%)(対共重合体、すなわち対被膜形成性共重合体、以下同じ)」、「ZnO(重量%)(対共重合体)」等の算出方法は、以下のとおりである。
【0153】
例えば「防汚塗料組成物P−1」では、「塩ハ゜ラ(塩素化パラフィン)含有量(重量%)(対共重合体)」=30.8は、以下のようにして求められる。
すなわち、「防汚塗料組成物P−1」中には、塩素化パラフィンは4重量部の量で配合され、また「共重合体成分(溶液)S−1」は26重量部の量で配合されており、この「共重合体成分(溶液)S−1」26重量部中には、加熱残分(共重合体S−1)が49.9重量%の量で含有されている。
【0154】
従って、「防汚塗料組成物P−1」では、「塩素化パラフィン(重量%)(対共重合体)」=[4/{26×49.9/100}]×100%=30.8(重量%)となる。
【0155】
【表4】

【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
【表7】

【0159】
【表8】

【0160】
【表9】

【0161】
【表10】

【0162】
【表11】

【0163】
【表12】

【0164】
【表13】

【0165】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位を20〜65重量%の量で有し数平均分子量が3000〜20000、重量平均分子量が4000〜150000、ガラス転移点が25〜80℃、50%キシレン溶液における粘度(25℃、CPS)が40〜1000の被膜形成性共重合体と、
酸化亜鉛とを含んでなり、
上記酸化亜鉛が、該被膜形成性共重合体100重量部に対して1〜1000重量部の量で含有されていることを特徴とする防汚塗料組成物。
【請求項2】
重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位を20〜65重量%の量で有し数平均分子量が3000〜20000、重量平均分子量が4000〜150000、ガラス転移点が25〜80℃、50%キシレン溶液における粘度(25℃、CPS)が40〜1000の被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛と、塩素化パラフィンとを含んでなり、
上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、上記酸化亜鉛が1〜1000重量部の量で含有され、上記塩素化パラフィンが18〜65重量部の量で含有されていることを特徴とする防汚塗料組成物。
【請求項3】
重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位を20〜65重量%の量で有し数平均分子量が3000〜20000、重量平均分子量が4000〜150000、ガラス転移点が25〜80℃、50%キシレン溶液における粘度(25℃、CPS)が40〜1000の被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛と、脱水剤とを含んでなり、
上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、上記酸化亜鉛が1〜1000重量部の量で含有され、上記脱水剤が0.1〜200重量部の量で含有されていることを特徴とする防汚塗料組成物。
【請求項4】
重合性不飽和カルボン酸のトリアルキルシリルエステルから誘導される成分単位を20〜65重量%の量で有し数平均分子量が3000〜20000、重量平均分子量が4000〜150000、ガラス転移点が25〜80℃、50%キシレン溶液における粘度(25℃、CPS)が40〜1000の被膜形成性共重合体と、酸化亜鉛と、塩素化パラフィンと、脱水剤とを含んでなり、
上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、上記酸化亜鉛が1〜1000重量部の量で含有され、上記塩素化パラフィンが18〜65重量部の量で含有され、上記脱水剤が0.1〜200重量部の量で含有されていることを特徴とする防汚塗料組成物。
【請求項5】
上記トリアルキルシリルエステルの珪素原子に結合している3つのアルキル基のうちの少なくとも1つが炭素数3以上のものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
上記トリアルキルシリルエステルがトリブチルシリル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
上記塩素化パラフィンの平均炭素数が8〜30であり、塩素含有率が35〜75%であることを特徴とする請求項2と4の何れかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
防汚剤(酸化亜鉛を除く)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
(メタ)アクリル酸シリルエステル以外の(メタ)アクリル酸系エステルの単独重合体または共重合体をさらに含んでなり、
上記被膜形成性共重合体100重量部に対して、上記(メタ)アクリル酸シリルエステル以外の(メタ)アクリル酸系エステルの単独重合体または共重合体が1〜200重量部の量で含有されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の防汚塗料組成物から形成されている塗膜。
【請求項11】
請求項1〜9の何れかに記載の防汚塗料組成物を用いることを特徴とする船体または水中構造物の防汚方法。
【請求項12】
請求項1〜9の何れかに記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴とする船体または水中構造物。

【公開番号】特開2012−117077(P2012−117077A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16948(P2012−16948)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2007−36847(P2007−36847)の分割
【原出願日】平成8年6月3日(1996.6.3)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】