説明

防湿性透明導電性フィルム

【解決手段】 高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜、第2層として耐エッチング膜及び第3層として導電膜が順に積層されてなる防湿性透明導電性フィルム、及び高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜及び第2層として耐エッチング膜が順に積層されると共に、上記高分子フィルムの他面に導電膜が積層されてなる防湿性透明導電性フィルム。
【効果】 本発明の防湿性透明導電性フィルムは、導電膜のエッチングによるパターニングによって防湿性が損なわれることがなく、特に、防湿膜、耐エッチング膜及び導電膜を同一の成膜法にて成膜したものは、簡略化された成膜工程により防湿性に優れた透明導電性フィルムとして製造でき、また、簡易な層構成であることから、工程管理やコストの面で有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間で各色の粒子が反転して画像を表示する電子ペーパディスプレイやLCD、有機ELディスプレイ素子などに好適に使用でき、低コストで効率よく製造することができる透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性薄膜が成膜された高分子フィルム(PET,TAC,PC,PES,PENなど)をディスプレイや電子ペーパ用途の透明導電基板として使用する場合にしばしば問題となるのが、ガラス基板に比べて高分子フィルムの水蒸気透過性が高いために、透過した水蒸気によって素子の劣化や動作不良が起こることである。
【0003】
そもそも透明導電膜として広く使用されているITO(酸化インジウム・スズ)は、アモルファスであれば、ある程度の防湿性を示す。しかしながら、通常導電膜はエッチングにてパターニングして使用するため、エッチング後の透明導電性フィルムの防湿性は、パターニングにより導電膜が取り除かれた部分で基板の高分子フィルムの防湿性に支配され、高分子フィルムの防湿性と大差がなくなってしまう。
【0004】
このため、透明導電性薄膜が成膜された高分子フィルムには、透明導電性薄膜とは別にパッシベーション膜を成膜して水蒸気のバリア性をもたせる必要があり、一般的には、無機膜と有機膜を交互に積層した例えば4層膜にて防湿性をもたせるなどしている。しかし、このような無機膜と有機膜との積層膜では、無機層を成膜する際の真空チャンバー内での成膜工程と、有機層を成膜する際のウェットコーターによる成膜工程とを何度も行き来する必要があり、この工程間の往復が工程管理やコストの面でデメリットとなっている。
【0005】
なお、この発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−241805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、防湿性に優れ、低コストで効率よく製造することができる防湿性透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、基板となる高分子フィルムの一面に、防湿性を備えるアモルファスのITO等の防湿膜を成膜し、この防湿膜上に導電膜のエッチングの際に用いるエッチング液から防湿膜を保護する耐エッチング膜を成膜し、更に、この耐エッチング膜上にITO等の導電膜を成膜した防湿性透明導電性フィルム、又は基板となる高分子フィルムの一面に、防湿性を備えるアモルファスのITO等の防湿膜を成膜し、この防湿膜上に導電膜のエッチングの際に用いるエッチング液から防湿膜を保護する耐エッチング膜を成膜すると共に、高分子フィルムの他面にITO等の導電膜を成膜した防湿性透明導電性フィルムが、導電膜のエッチングによるパターニングの際に、防湿膜はエッチングされることなく耐エッチング膜により保護されることから導電膜のみをエッチングでき、その結果、アモルファスのITO等の防湿膜の防湿性を損なうことがなく、導電膜を所望のパターンにパターニングした後の透明導電性フィルムが防湿性に優れるものとなることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の防湿性透明導電性フィルムを提供する。
請求項1:高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜、第2層として耐エッチング膜及び第3層として導電膜が順に積層されてなることを特徴とする防湿性透明導電性フィルム。
請求項2:高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜及び第2層として耐エッチング膜が順に積層されると共に、上記高分子フィルムの他面に導電膜が積層されてなることを特徴とする防湿性透明導電性フィルム。
請求項3:上記防湿膜が酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物であることを特徴とする請求項1又は2記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項4:上記導電性無機物がインジウム・スズ酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、アンチモンドープ・亜鉛酸化物又はガリウムドープ・亜鉛酸化物であることを特徴とする請求項3記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項5:上記酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物がアモルファス構造であることを特徴とする請求項3又は4記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項6:上記耐エッチング膜が無機酸化物又は無機酸窒化物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項7:上記無機酸化物又は無機酸窒化物が、酸化ケイ素又は酸窒化ケイ素であることを特徴とする請求項6記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項8:上記導電膜が酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項9:上記導電性無機物がインジウム・スズ酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、アンチモンドープ・亜鉛酸化物又はガリウムドープ・亜鉛酸化物であることを特徴とする請求項8記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項10:上記防湿膜及び耐エッチング膜の膜厚及び屈折率が反射防止機能を呈するように設定されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項11:上記防湿膜、耐エッチング膜及び導電膜が、同一の成膜法にて成膜されてなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項12:上記成膜法が物理蒸着法又は化学蒸着法であることを特徴とする請求項11記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項13:上記物理蒸着法がスパッタリング、イオンプレーティング又は真空蒸着であることを特徴とする請求項12記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項14:上記化学蒸着法が熱CVD、プラズマCVD又は常圧CVDであることを特徴とする請求項12記載の防湿性透明導電性フィルム。
請求項15:上記耐エッチング膜がデュアルカソードスパッタリングにより成膜されてなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防湿性透明導電性フィルムは、導電膜のエッチングによるパターニングによって防湿性が損なわれることがなく、特に、防湿膜、耐エッチング膜及び導電膜を同一の成膜法にて成膜したものは、簡略化された成膜工程により防湿性に優れた透明導電性フィルムとして製造でき、また、簡易な層構成であることから、工程管理やコストの面で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の防湿性透明導電性フィルムの第1の態様は、高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜、第2層として耐エッチング膜及び第3層として導電膜が順に積層されてなるものである。
【0012】
この第1の態様を、図を参照して具体的に説明すると、この第1の態様の防湿性透明導電性フィルムは、図1に示されるように、基板をなす高分子フィルム1の一面に防湿膜2が積層され、この防湿膜2上に導電膜4のエッチングの際に用いるエッチング液から防湿膜2を保護する耐エッチング膜3が積層され、更にこの耐エッチング膜3上に導電膜4が積層されたものである。
【0013】
また、本発明の防湿性透明導電性フィルムの第2の態様は、高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜及び第2層として耐エッチング膜が順に積層されると共に、上記高分子フィルムの他面に導電膜が積層されてなるものである。
【0014】
この第2の態様を、図を参照して具体的に説明すると、この第2の態様の防湿性透明導電性フィルムは、図2に示されるように、基板をなす高分子フィルム1の一面に防湿膜2が積層され、この防湿膜2上に導電膜4のエッチングの際に用いるエッチング液から防湿膜2を保護する耐エッチング膜3が積層されると共に、高分子フィルム1の他面に導電膜4が積層されたものである。
【0015】
本発明の防湿性透明導電性フィルムにおいて、高分子フィルムは防湿性透明導電性フィルムの基板をなすものであり、透明性を有する樹脂等のフィルムである。基材となる高分子フィルムの樹脂材料としては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリエチレンスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等が挙げられるが、特に強度面でPET、PC、PMMA、TACが好ましく、とりわけPETが好ましい。
【0016】
なお、高分子フィルムの厚さは、透明導電性フィルムの用途等によっても異なるが、例えばディスプレイ用途の場合、通常23μm〜0.5mm程度である。
【0017】
本発明の防湿性透明導電性フィルムにおいては、高分子フィルムに隣接して防湿膜が積層される。この防湿膜は、透明導電性フィルムに高分子フィルムの水蒸気バリア性を超える防湿性を与えることができ、光学的に透明なものであれば、特に限定されず、低抵抗膜、高抵抗膜、誘電膜等で構成することができるが、無機物であることが好ましい。特に、防湿膜を後述する導電膜と同じ材料で構成すると、導電膜と同じ成膜法での成膜が可能となり、防湿性透明導電性フィルムの製造工程を簡略化でき、また、製造コストも低減できることから好ましい。
【0018】
この防湿膜を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物が挙げられ、酸化インジウム系の導電性無機物としてはインジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)など、酸化亜鉛系の導電性無機物としてはアンチモンドープ・亜鉛酸化物(AZO)、ガリウムドープ・亜鉛酸化物(GZO)などが挙げられる。
【0019】
また、防湿膜を酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物で構成する場合、アモルファス構造の導電性無機物とすると、高い防湿性が得られることから特に好ましい。
【0020】
このような防湿膜は、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着等の物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)、又は熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD等の化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)などにより成膜することができるが、得られる防湿膜の緻密性、機械的強度、接着性に優れ、成膜時のコンタミが少なく、また高速での成膜が可能な点から、スパッタリングが好適である。
【0021】
スパッタリングにより、例えば、酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物を成膜する場合は、ITO、IZO、AZO、GZO等の導電性無機物をターゲットとし、スパッタリングガスとしてAr,He,Ne,Krなどの不活性ガスと、必要に応じて酸素ガスとを用い、1×10-2〜5×102Pa程度の圧力でのスパッタが可能である。
【0022】
本発明の防湿性透明導電性フィルムにおいては、高分子フィルム上に積層された防湿膜に隣接して耐エッチング膜が積層される。この耐エッチング膜は、透明導電性フィルムを使用する際に、後述する導電膜に施されるエッチングによるパターニングにおいて、エッチング液、特に、酸性エッチング液から防湿膜を保護するために設けられるものであり、光学的に透明なものであれば、特に限定されないが、無機物であることが好ましい。
【0023】
この耐エッチング膜を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、酸化ケイ素等の無機酸化物、酸窒化ケイ素等の無機酸窒化物で構成することが好ましい。特に、酸窒化ケイ素等の無機酸窒化物で構成すれば、耐湿膜の防湿性に加えて、耐エッチング膜によっても防湿性を更に向上させることができることから好適である。
【0024】
このような耐エッチング膜は、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着等の物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)、又は熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD等の化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)などにより成膜することができるが、得られる耐エッチング膜の緻密性、機械的強度、接着性に優れ、成膜時のコンタミが少なく、また高速での成膜が可能な点から、スパッタリングが好適である。
【0025】
スパッタリングにより、例えば、酸化ケイ素等の無機酸化物又は酸窒化ケイ素等の無機酸窒化物を成膜する場合は、ターゲットとして例えば単体Siをターゲットとし、スパッタリングガスとしてAr,He,Ne,Krなどの不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、酸化窒素ガスなどから適宜選ばれる反応性ガスとを用い、1×10-2〜5×102Pa程度の圧力でのスパッタが可能である。
【0026】
なお、ターゲットとして単体Siの代わりにSiCを用いることも可能である。SiCを用いれば、電力密度を増大させることが可能となることからスループットの向上に効果的である。この場合、耐エッチング膜は少量の炭素を含む場合があるが、本発明において、酸化ケイ素等の無機酸化物には、少量の炭素を含む酸化ケイ素等の無機酸化物、酸窒化ケイ素等の無機酸窒化物には、少量の炭素を含む酸窒化ケイ素等の無機酸窒化物も含まれる。
【0027】
また、酸化ケイ素や酸窒化ケイ素をスパッタリングにて成膜する場合、しばしば成膜速度が小さいためスループットの低下が問題となるが、2つのカソードに交互に電力を印加し、カソードのプラズマ発光をモニタリングして導入酸素や電力にフィードバック制御する又はカソードのインピーダンスをモニタリングして導入酸素や電力にフィードバック制御するデュアルカソード法を採用すれば、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素であっても高速成膜が可能となることから、耐エッチング膜をスパッタリングで成膜する場合は、デュアルカソード法を好適に採用し得る。
【0028】
また、防湿膜及び耐エッチング膜の膜厚及び屈折率を、反射防止機能を呈するように設定すれば、この防湿膜と耐エッチング膜とにより、防湿性透明導電性フィルムに反射防止機能を付与することができる。具体的には、例えば、耐湿膜をITOとし、耐エッチング膜を酸化ケイ素や酸窒化ケイ素とした場合、ITOの屈折率は約2と比較的高く、酸化ケイ素や酸窒化ケイ素の屈折率はこれより低いから、ITOと、酸化ケイ素又は酸窒化ケイ素との積層により反射防止機能を付与することができる。
【0029】
なお、防湿膜及び耐エッチング膜の膜厚(物理膜厚)は、特に限定されるものではないが、防湿膜は20〜200nm程度、耐エッチング膜は40〜400nm程度とすることができる。
【0030】
本発明の防湿性透明導電性フィルムにおいては、防湿膜及び耐エッチング膜と共に、導電膜が積層される。導電膜は、上記防湿膜上に積層されたエッチング膜に隣接して、又は防湿膜及び耐エッチング膜が積層された高分子フィルムの面(一面)とは反対側の面(他面)上に積層される。この導電膜は、光学的に透明なものであり、一般に電極として用いられる透明導電性フィルムの導電性を担う膜である。
【0031】
この導電膜を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物が挙げられ、酸化インジウム系の導電性無機物としてはインジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)など、酸化亜鉛系の導電性無機物としてはアンチモンドープ・亜鉛酸化物(AZO)、ガリウムドープ・亜鉛酸化物(GZO)などが挙げられる。
【0032】
このような導電膜は、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着等の物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)、又は熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD等の化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)などにより成膜することができるが、得られる導電膜の緻密性、機械的強度、接着性に優れ、成膜時のコンタミが少なく、また高速での成膜が可能な点から、スパッタリングが好適である。
【0033】
スパッタリングにより、例えば、酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物を成膜する場合は、ITO、IZO、AZO、GZO等の導電性無機物をターゲットとし、スパッタリングガスとしてAr,He,Ne,Krなどの不活性ガスと、必要に応じて酸素ガスとを用い、1×10-2〜5×102Pa程度の圧力でのスパッタが可能である。
【0034】
なお、導電膜の膜厚(物理膜厚)は、透明導電性フィルムの用途等によっても異なるが、一般に20〜500nm程度である。
【0035】
本発明の防湿性透明導電性フィルムは、防湿膜、耐エッチング膜及び導電膜が、同一の成膜法にて成膜されてなるものであることが好ましい。例えば、防湿膜、耐エッチング膜及び導電膜を全てスパッタリングにより成膜すると、これらの膜を同一のチャンバー中、インラインで成膜することができ、製造工程の簡略化と、製造コストの低減とに大きく寄与する。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
マグネトロンDCスパッタ装置にターゲットとしてITO(SnO2割合 10質量%)ターゲット及びSiCターゲットをセットし、真空チャンバーに188μmのPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10-4Paまで排気した後、Arガスを190sccm、O2ガスを10sccmの流量で混合ガスとして導入してチャンバー内圧力を0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、スパッタリングにてPETフィルム基板上に防湿膜として約30nmのITO薄膜を成膜した。
【0038】
次に、チャンバー内を一度Arガスで完全に置換した後に、チャンバー内にArガスを170sccm、O2ガスを30sccmの流量で混合ガスとして導入してチャンバー内圧力を0.5Paとなるように調整した後、SiCターゲットに4kWの電力を印加し、反応性スパッタリングにて耐エッチング膜として約60nmの酸化ケイ素薄膜を成膜した。
【0039】
更に、チャンバー内を一度Arガスで完全に置換した後に、チャンバー内にArガスを197sccm、O2ガスを3sccmの流量で混合ガスとして導入してチャンバー内圧力を0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、スパッタリングにて導電膜として約260nmのITO薄膜を成膜して透明導電性フィルムを得た。
【0040】
得られた透明導電性フィルムの最表面のITO薄膜(導電膜)を、フォトレジスト法により酸性エッチング液を用いてパターニングし、透明導電性フィルムのガスバリア性(透湿性)を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN)を使用して評価したところ0.05g/m2・dayであった。
【0041】
[実施例2]
マグネトロンDCスパッタ装置にターゲットとしてITO(SnO2割合 10質量%)ターゲット及びSiCターゲットをセットし、真空チャンバーに188μmのPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10-4Paまで排気した後、Arガスを190sccm、O2ガスを10sccmの流量で混合ガスとして導入してチャンバー内圧力を0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、スパッタリングにてPETフィルム基板上に防湿膜として約30nmのITO薄膜を成膜した。
【0042】
次に、チャンバー内を一度Arガスで完全に置換した後に、チャンバー内にArガスを160sccm、O2ガスを20sccm、N2ガスを20sccmの流量で混合ガスとして導入してチャンバー内圧力を0.5Paとなるように調整した後、SiCターゲットに4kWの電力を印加し、反応性スパッタリングにて耐エッチング膜として約60nmの酸窒化ケイ素薄膜を成膜した。
【0043】
更に、チャンバー内を一度Arガスで完全に置換した後に、チャンバー内にArガスを197sccm、O2ガスを3sccmの流量で混合ガスとして導入してチャンバー内圧力を0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、スパッタリングにて導電膜として約260nmのITO薄膜を成膜して透明導電性フィルムを得た。
【0044】
得られた透明導電性フィルムの最表面のITO薄膜(導電膜)を、フォトレジスト法により酸性エッチング液を用いてパターニングし、透明導電性フィルムのガスバリア性(透湿性)を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN)を使用して評価したところ0.01g/m2・day(検出限界)以下であった。
【0045】
[比較例1]
マグネトロンDCスパッタ装置にターゲットとしてITO(SnO2割合 10質量%)ターゲットをセットし、真空チャンバーに188μmのPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10-4Paまで排気した後、Arガスを197sccm、O2ガスを3sccmの流量で混合ガスとして導入してチャンバー内圧力を0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加してスパッタリングにてPETフィルム基板上に約260nmのITO薄膜を成膜して透明導電性フィルムを得た。
【0046】
得られた透明導電性フィルムのITO薄膜を、フォトレジスト法により酸性エッチング液を用いてパターニングし、透明導電性フィルムのガスバリア性(透湿性)を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN)を使用して評価したところ3.6g/m2・dayであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の防湿性透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の防湿性透明導電性フィルムの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 高分子フィルム
2 防湿膜
3 耐エッチング膜
4 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜、第2層として耐エッチング膜及び第3層として導電膜が順に積層されてなることを特徴とする防湿性透明導電性フィルム。
【請求項2】
高分子フィルムの一面に高分子フィルム側から第1層として防湿膜及び第2層として耐エッチング膜が順に積層されると共に、上記高分子フィルムの他面に導電膜が積層されてなることを特徴とする防湿性透明導電性フィルム。
【請求項3】
上記防湿膜が酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物であることを特徴とする請求項1又は2記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項4】
上記導電性無機物がインジウム・スズ酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、アンチモンドープ・亜鉛酸化物又はガリウムドープ・亜鉛酸化物であることを特徴とする請求項3記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項5】
上記酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物がアモルファス構造であることを特徴とする請求項3又は4記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項6】
上記耐エッチング膜が無機酸化物又は無機酸窒化物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項7】
上記無機酸化物又は無機酸窒化物が、酸化ケイ素又は酸窒化ケイ素であることを特徴とする請求項6記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項8】
上記導電膜が酸化インジウム系又は酸化亜鉛系の導電性無機物であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項9】
上記導電性無機物がインジウム・スズ酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、アンチモンドープ・亜鉛酸化物又はガリウムドープ・亜鉛酸化物であることを特徴とする請求項8記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項10】
上記防湿膜及び耐エッチング膜の膜厚及び屈折率が反射防止機能を呈するように設定されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項11】
上記防湿膜、耐エッチング膜及び導電膜が、同一の成膜法にて成膜されてなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項12】
上記成膜法が物理蒸着法又は化学蒸着法であることを特徴とする請求項11記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項13】
上記物理蒸着法がスパッタリング、イオンプレーティング又は真空蒸着であることを特徴とする請求項12記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項14】
上記化学蒸着法が熱CVD、プラズマCVD又は常圧CVDであることを特徴とする請求項12記載の防湿性透明導電性フィルム。
【請求項15】
上記耐エッチング膜がデュアルカソードスパッタリングにより成膜されてなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の防湿性透明導電性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−4633(P2006−4633A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176378(P2004−176378)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】