説明

防火剤を含有している付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル

【課題】付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル。
【解決手段】付香成分もしくはフレーバリング成分及び担持材料に加えて防火剤を含有している付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルは、それらの製造の間に熱気中に懸濁される場合に、低下した激しさの爆発を受けることを証明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料製造業及びフレーバー工業の分野に関する。さらに、本発明は特に、十分に強力な発火源にさらされた場合に、その迅速な燃焼反応が弱いか又は中程度であるという事実により特徴付けられる、付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルに関する。実際、本発明のマイクロカプセルは、これらの粒子を粉塵障害クラスSt−1に分類させるように、それらの爆発の激しさを低下させることができる有効量の防火剤を含有する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、香料製造業及びフレーバリング工業において大いに使用される。それらは、付香成分もしくはフレーバリング成分のための送達系を構成し、かつ有利に、極めて多数の用途において使用されることができる。活性物質、例えば付香成分もしくはフレーバリング成分のカプセル封入は、同時に、"攻撃"、例えば酸化又は水分に対して、そこにカプセル封入された成分の保護を提供し、かつ他方では、連続した放出を通して感覚上の効果を誘発するためのフレーバー又はフレグランス放出の速度論の特定の制御を可能にする。
【0003】
ところで、これらの分野におけるマイクロカプセルの多数の有利な性質は、それらの製造、輸送、貯蔵及び取扱いの間に考慮されなければならない他の性質に対立している。実際、そのような送達系は、それらの性質のため及び特にそれらが揮発性及び引火性の物質をカプセル封入する事実のために、空気又は他の酸素含有ガス中に分散される場合に、容易に着火しうる混合物を形成しうる可燃性の粉塵を構成する。十分強力な発火源により点火される場合には、その結果は、前進圧力及び火炎前面を有する迅速な燃焼反応である。
【0004】
この問題は、マイクロカプセルの製造の間に重要になる。特に、噴霧乾燥及び流動床のカプセル封入プロセスは、この問題によって大いに関係している、それというのも、それらは、粒子が微粒子として熱気中に懸濁され、かつ故にそれらの製造の間に爆発しうる装置の使用に双方とも基づいているからである。
【0005】
噴霧乾燥は、揮発性物質、例えばフレーバー又はフレグランスを、多くの用途に適合した、固体の形でそれらをカプセル封入することにより安定化させるのに使用される最も普通のカプセル封入技術である。噴霧乾燥した粉末は通例、通常の噴霧乾燥装置中で製造される。噴霧乾燥は、通常、回転円板又は多成分ノズルを用いることにより達成される。詳細な技術は、例えばK. Masters, Spray-drying Handbook, Longman Scientific and Technical, 1991に記載されている。
【0006】
流動床は、床中で流動化されたコア材料上にコーティングを噴霧するのに使用される。このカプセル封入技術も十分公知であり、かつ例えばEP 70719又はUS 6,056,949に記載されており、その内容はこれにより参考により含まれる。
【0007】
上記の双方のカプセル封入装置は、空気中に懸濁された粒子の爆発に感受性であるので、故にそれらは、そこで処理される粒子の特性を表す工業的安全パラメーターの関数として適合されなければならない。特に、それらは、マイクロカプセルの製造の間に起こりうる爆発の激しさの関数として必要な大きさにされなければならない。故に、そのようなカプセル封入プロセスから生じる粉末製品の起こりうる爆発の激しさを低下させるという問題は、工業にとって卓絶して重要である。
【0008】
可燃性物質の安全な取扱いのためには、製品の危険性を知ることは至上命令である。製品の可燃性及び爆発性の特性を示すための信頼性のある方法は、製品の試料を様々な試験にかけ、かつ工業的安全特性に従って結果を分類することである。国際規格(VDIガイドライン2263 part 1 : Dust Fires and Dust Explosions、Hazard Assessment - Protective Measures, Test Methods for the Determination of Safety Characteristics of Dusts, Beuth, Berlin, May 1990)には、試験装置(改良Hartmann装置及びClose装置)及び方法が記載されている。これらの方法は、物理定数、例えば閉じた系中での可燃性粉塵の最大爆発挙動を決定することを可能にする。10kJの総エネルギーを有する火工点火器は発火源として使用される。挙げられたガイドラインに記載された試験方法からは、粉塵の特性である特性係数、K-Stが決定される。それだけの数のそのような粉塵が、工業的実践において製造されかつ処理されるので、例えば医薬及び穀物、穀粉製品にとって、この最大爆発定数を幾つかの粉塵爆発クラスの1つに割り当て、かつこれらを、構造上の保護手段を必要な大きさにする基礎として使用することがふさわしい。これらのクラスの間の対応は、以下に粉塵障害クラスと呼び、かつ定数K-Stは、次の通りである:
粉塵障害クラス 製品特異的定数K-St[bar.m.s-1
St−1 > 0〜200
St−2 < 200〜300
St−3 < 300。
【0009】
ところで、一部の付香成分及びフレーバリング成分が粉塵障害クラスSt−1に分類されるにもかかわらず、多数のこれらの成分、ひいてはそれらをカプセル封入しておりかつ付香成分もしくはフレーバリング成分の揮発性に依存しているマイクロカプセルは、依然としてSt−2粉塵障害クラスのもとに分類され、ひいてはもちろん極めて高価でありうる、とりわけ起こりうる爆発の激しさに適合された製造装置を必要とする。
【0010】
解決法が、他の技術分野における、例えば分解する傾向を示す高分子有機組成物のための類似の問題を解決するために提案されている一方で、付香工業及びフレーバリング工業は、これらの製品に適合され、かつSt−2に分類されたマイクロカプセルを製造するのに必要とされる高価な装置に関連している経済的問題を解決する効率的な解決法を決して提供していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP 70719
【特許文献2】US 6,056,949
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】K. Masters, Spray-drying Handbook, Longman Scientific and Technical, 1991
【非特許文献2】VDIガイドライン2263 part 1 : Dust Fires and Dust Explosions、Hazard Assessment - Protective Measures, Test Methods for the Determination of Safety Characteristics of Dusts, Beuth, Berlin, May 1990
【非特許文献3】VDI Progress Report 134
【非特許文献4】Perfume and Flavour Chemicals by S. Arctander, Montclair, N. J. (USA)
【非特許文献5】Fenaroli's Handbook of Flavour Ingredients、CRC Press
【非特許文献6】Synthetic Food Adjuncts by M. B. Jacobs, van Nostrand Co. Inc.
【非特許文献7】Spray-Drying Handbook, 第3版, K. Masters; John Wiley (1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、我々は、防火剤が、付香マイクロカプセル及びフレーバリングマイクロカプセルに、それらの製造の間に、特に熱気中に懸濁される場合に、起こりうる爆発の激しさを低下させるのに有効な量で、直接添加されることができることを確立することができた。本発明の一対象は、故に、マイクロカプセルが、マイクロカプセルの粉塵障害爆発クラスをSt−1に低下させることができる有効量の防火剤も含有しているという事実により特徴付けられる、高分子担持材料中に分散されているか又は高分子担持材料内部に吸着されている少なくとも1つの付香成分もしくはフレーバリング成分を含有している付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルを提供することである。本発明の対象はまた、そのようなマイクロカプセルを製造し、かつ使用する方法を提供することである。
【0014】
前記のように、マイクロカプセルのSt−クラスは、その製品特異的定数K-Stの値から導き出される(上記の対応表参照)。K-Stパラメーターは、改良Hartmann装置及びClose装置を用いて測定される。この装置及びK-Stの測定方法は、国際規格に記載されており、これにより参照により含まれる (VDIガイドライン2263 part 1 : Dust Fires and Dust Explosions、Hazard Assessment - Protective Measures、Test Methods for the Determination of Safety Characteristics of Dusts, Beuth, Berlin, May 1990)。
【0015】
本発明の付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルは、それらの製造の間に空気中にそれらを懸濁させることによりもしかすると誘発されるマイクロカプセルの爆発の激しさを低下させることができる有効量の防火剤を含有している。このことは、そのような送達系が、故に可燃性粉塵を構成する高度に揮発性の成分から主になることを思えば、極めて有利である。そのような揮発性成分は、従来、熱気中に粒子を懸濁させることを含むプロセスにかけられる組成物中で制限された割合で使用されなければならなかった。ところで、本発明により提供される解決法は、より高品質のこれらの成分を使用することを可能にし、ひいては特定の特に揮発性成分の前駆物質の事前使用に対する有利な代替法を提供する。
【0016】
故に、本発明は、付香マイクロカプセル及びフレーバリングマイクロカプセル並びに粉末製品の製造の問題に関して、特に噴霧乾燥機又は流動床を含んでいるプロセスを経る製造について、有利な解決法を提供するものであり、その際、微粒子が、空気中に懸濁され、かつ故に爆発により感受性である。St−1クラスのもとで、爆発の激しさは、弱いか又は少なくとも中程度の反応であるのに対して、粉塵障害クラスSt−2については激しい反応であり、かつ粉塵障害クラスSt−3については極めて激しい反応である。結果として、本発明によるマイクロカプセルの製造に使用される装置は、従って、即ちSt−1として必要な大きさにされることができ、ひいてはあまり高価ではなくなり、それと同時に同じか又はより良好な製造安全条件を保証する。
【0017】
さらに、本発明のマイクロカプセル及び粉末製品は、それらの製造の間に誘発された起こりうる任意のそのような反応の激しさに関して利点が存在するだけではなく、着火にあまり感受性ではない、即ち爆発に対して低下された傾向を示すことが証明された。この特性は、測定されることができ、かつ最小点火エネルギー又はMIEパラメーターを通して表現される。粉塵のMIEは、火花ギャップが放出された場合に、一連の20の連続試験において大気圧、周囲温度及び起こりうる最低の乱流で最も容易に着火性の粉塵又は空気混合物を発火させるのに丁度十分ではない蓄電器中に貯蔵された電気エネルギーの最も低い量として定義される。国際規格(VDI Progress Report 134)は、10〜100mJの最小点火エネルギーを有する粉塵が一般に、通常の点火性を有するものとみなされるのに対して、10mJ未満の最小点火エネルギーを有する粉塵の場合には、全ての発火源、弱い発火源、例えば機械的スパーク又は静電気の放電でさえ除去することに特に注意が払われなければならないことを述べている。
【0018】
MIEパラメーターの測定方法は、国際規格に記載されており、これにより参照により含まれる、即ちVDIガイドライン2263、part 1 : Dust Fires and Dust Explosions, Hazard Assessment - Protective Measures, Test Methods for the Determination of Safety Characteristics of Dusts, Beuth, Berlin, May 1990。
【0019】
ここで関連している工業に関して、一部の付香粉末及びフレーバリング粉末が、付香成分及びフレーバリング成分の性質のために、1〜10mJの範囲内のMIE値を有することが判明している。ところで、全く予期しない方法で、かつ以下の例に示されているように、本発明のマイクロカプセルの組成物中の防火剤の存在が、こうして10mJを上回る値に達したこれらの製品のMIEの特性を表す値の増大を生じたことが判明した。このことはさらに卓絶して重要である本発明の予期しない利点である、それというのも、本発明のマイクロカプセルは、それらの製造の容易にされたプロセスに加えて、ところで、それらの貯蔵又はそれらの輸送でさえ、及びさらなる取扱いについての要件に関して、多数の利点も示す。
【0020】
本発明の防火剤は、好ましくは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸一アンモニウムもしくは炭酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムもしくはリン酸三ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、メラミン シアヌレート、塩素化炭化水素及びその混合物からなる群から選択される。この種類の商業製品の例は、Monnex(R)(出所:SICLI Materiel Incendie SA、ジュネーブ、スイス)、Bi-Ex(R)(出所:SICLI Materiel Incendie SA、ジュネーブ、スイス)、ABC-E(R)(出所:SICLI Materiel Incendie SA、ジュネーブ、スイス)、Tropolar(R)(出所:SICLI Materiel Incendie SA、ジュネーブ、スイス)及びATO-33(R)(出所:SICLI Materiel Incendie SA、ジュネーブ、スイス)を含む。
【0021】
防火剤は、通常、マイクロカプセルの全乾燥質量の5〜90質量%である割合で存在する。好ましくは、マイクロカプセルの全乾燥質量に対して5〜15質量%である。
【0022】
本発明のマイクロカプセルは、少なくとも1つの付香材料もしくはフレーバリング材料及び高分子担持材料の存在に基づいている。
【0023】
付香成分もしくはフレーバリング成分は、1つの単独の成分の形でか又は組成物の形で、分離してか又は、場合により、現行使用の溶剤及び助剤中の溶液又は懸濁液中で、マイクロカプセルの全質量に対して、1〜80%、及び好ましくは1〜50質量%である。本明細書で使用されるような香水又はフレーバリング成分又は組成物という用語は、天然起源及び合成起源双方の多様なフレグランス及びフレーバー材料を定義すると考えられる。それらは、単一の化合物及び混合物を含む。そのような成分の特別な例は、最新の文献、例えばPerfume and Flavour Chemicals by S. Arctander, Montclair, N. J. (USA); Fenaroli's Handbook of Flavour Ingredients、CRC Press又はSynthetic Food Adjuncts by M. B. Jacobs, van Nostrand Co. Inc.中、及び他の類似の教本中に見出されることができ;かつ消費製品の付香(perfuming)、フレーバリング(flavouring)及び/又は香気付け(aromatising)、即ち消費製品に臭い又は味を付与する当業者に十分公知である。
【0024】
本発明の一実施態様において、香水又はフレーバー成分又は組成物は、高分子担持材料中に分散される。後者の制限されない例は、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、天然デンプンもしくは化工デンプン、植物ガム、ペクチン、キサンタン、アルギン酸塩、カラゲナン又はさらにセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース、及び揮発性物質のカプセル封入に現在使用される一般に全ての材料を含む。
【0025】
他の実施態様において、香水又はフレーバー成分又は組成物は、高分子担持材料内部に吸着される。後者の制限されない例として、無定形シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ及びアルミノケイ酸塩、例えばゼオライト及びアルミナが挙げられうる。
【0026】
本発明の第二の対象は、防火剤を含有している付香マイクロカプセル及びフレーバリングマイクロカプセルの製造方法である。本発明のマイクロカプセルの製造方法に対する幾つかの代替法が存在する。第一の実施態様において、防火剤は、高分子担持材料中に分散されている付香成分もしくはフレーバリング成分又は組成物からなる水性エマルジョンに添加される。得られたエマルジョンは、粉末を形成させるために、ついで噴霧乾燥される。場合により、乳化剤は、最初のエマルジョンに添加されてよい。このカプセル封入技術は、本明細書中でより詳細な説明を必要としない、それというのも、先行技術[例えばSpray-Drying Handbook, 第3版, K. Masters; John Wiley (1979)参照]において完全に十分に詳細に記載されておりかつ食品工業又はフレーバー及び香水工業において現在応用される常用の噴霧乾燥技術を信頼するからである。
【0027】
他の実施態様において、固体粉末の形の防火剤は、高分子担持材料及び乳化剤中の付香成分もしくはフレーバリング成分又は組成物の水性エマルジョンから形成された噴霧乾燥した粉末と単純に混合される。
【0028】
低下された激しさの爆発反応を示す本発明のマイクロカプセルを製造するための第三の代替法は、最初に、付香成分もしくはフレーバリング成分又は組成物を上記のような多孔質高分子担持材料の内部に吸着させ、かつさらに生じた系を防火剤でコーティングすることである。この製造方法は、流動床装置中で、常用の技術、例えばEP 70719又はUS 6,056,949に記載されているものに従って実施されてよく、その内容はこれにより参考により含まれる。担体内部へのフレグランス又はフレーバー成分又は組成物の吸着により形成された粒子は、故に、造粒後に、例えばコアの周囲に保護フィルムを形成する防火剤の溶液、エマルジョン又は溶融物を噴霧することにより、コーティングされてよい。
【0029】
造粒プロセスの間に、コア材料にか又は噴霧エマルジョンに添加されてよい通常の添加剤、例えば人工甘味料、食品着色料、ビタミン、酸化防止剤、消泡剤、炭酸発生剤又は付加的なフレーバラント(flavorant)等が使用されてよい。
【0030】
本発明のマイクロカプセルは、通常5〜500μmの間で変化する平均径を有する。
【0031】
本発明のマイクロカプセルは、有利に、多種多様で食用又は付香された最終製品の官能特性を付与するか、改善するか、高めるか又は修正することに使用されることができる。香料製造業の分野において、本発明による方法の任意の実施態様から生じる付香マイクロカプセルは、付香組成物、例えば香水、コロン又はアフターシェーブローション中に配合されてよく、又はさらにそれらは、機能性製品、例えば洗剤又は織物柔軟剤、せっけん、バス又はシャワーゲル、デオドラント、ボディローション、シャンプー及び他のヘアケア製品、ハウスホールドクレンザー、トイレタンク用の洗浄及び消臭ブロックに添加されてよい。他方では、カプセル封入されたフレーバーの場合に、本発明のマイクロカプセルによりフレーバリングされることができる消費製品は、食品、飲料、医薬品等を含んでいてよい。
【0032】
本発明のマイクロカプセルがそのような消費製品中に配合されることができる濃度は、付香すべきか又はフレーバリングすべき製品の種類に依存している幅広い範囲の値で変化する。例により厳密に採用されるべき典型的な濃度は、それらが含まれるフレーバリング組成物もしくは付香組成物又は完成した消費製品の質量の数ppmから5又は10%までの幅の値の範囲内で含まれている。
【0033】
ところで、本発明は、次の例により、説明されるがしかし制限されるものではなく、その際、温度は、摂氏度で与えられ、かつ略符号は、当工業界において通常の意味を有する。
【実施例】
【0034】
例1
噴霧乾燥した付香粉末及び粉末にした防火剤の乾式混合
次の組成のエマルジョンを、噴霧乾燥機Buechi(出所:スイス)中で噴霧乾燥した:
成分
水 150.0
Capsul(R) 1) 67.0
香水濃縮物2) 33.0
合計 250.0
1) デキストリン ジオクテニルスクシネート;出所:National Starch、USA
2) 出所: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス。
【0035】
水の蒸発後の理論収量は、香水33%を含有している粉末100gのものであった。
【0036】
粉末の爆発特性を、Hartmann装置を用いて測定し(VDIガイドライン2263 part 1 : Dust Fires and Dust Explosions, Hazard Assessment -Protective Measures, Test Methods for the Determination of Safety Characteristics of Dusts, Beuth, Berlin, May 1990参照)、かつ粉末は、粉塵障害クラスSt−2にあるものとされた。同じ粉末を、ついで、粉末の形のリン酸二アンモニウムと、80:20の比で混合した。
【0037】
均質な混合物の爆発特性の分析は、同じ条件下で、混合物がSt−1として分類されることができたことを立証した。
【0038】
例2
ケイ酸ナトリウムでの燃焼性の付香マイクロカプセルのコーティング
二酸化シリカ球(Tixosil 68;出所:Rhodia、フランス)を、例1に記載され、かつさらにケイ酸ナトリウムでコーティングした付香成分で次のように充填した:
二酸化シリカ中の香水の吸着
その多孔質の特徴のために、二酸化シリカは、香水60%を吸着し、かつさらに外部液体なしで易流動性顆粒のままであった。
【0039】
例1に説明されているように測定される爆発分析は、混合物をSt−2として分類した。後者を、ついで、次の処方に従って、Kugelcoater(出所:Huettlin、ドイツ)中で、ケイ酸ナトリウムでコーティングした:
成分
Tioxil 68及び香水 900
ケイ酸ナトリウム水溶液35% 300
合計 1200。
【0040】
Kugelcoater中でのコーティングの間の水の蒸発後に、ケイ酸ナトリウム層でコーティングされたコーティング球約1000gが得られた。Hartmann装置中での爆発分析は、生成物をSt−1として分類した。この結果は、ケイ酸ナトリウム保護層の作用を明らかに立証している。
【0041】
例3
防火剤を含有している付香エマルジョンの噴霧乾燥
2つの付香エマルジョンを、次の処方(質量部)から製造した:
成分 処方A 処方B
(質量部) (質量部)
ラベンダー香水1) 13.20 13.20
Tween(R) 20 2) 0.12 0.12
水 60.00 60.00
クエン酸 0.12 0.12
Capsul(R) 3) 20.56 26.56
Budit(R) 315 4) 2.00 −
リン酸一アンモニウム 4.00
合計 100.00 100.00
1) 出所:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
2) ポリオキシエチレン モノラウレート;出所:ICI Chemicals、英国
3) デキストリン ジオクテニルスクシネート;出所:National Starch、USA
4) メラミン シアヌレート;出所:Budenheim、ドイツ。
【0042】
上記で挙げられた成分を、Silversonタイプ高速撹拌機を用いて均質化した。混合物を、ついで、2kg/hのエマルジョンアウトプット、乾燥空気:350℃及び0.45×10Paで320m/hを有するSodeva装置中で噴霧乾燥した。こうして微細粉末が得られ、その際、粒子の直径は10〜300μmに含まれ、かつ液体の香水の含量は、13.2質量%であった。例1に説明されているように2種類の粉末の粉塵障害クラスを測定した後に、処方AはSt−1として分類されたのに対して、処方BはSt−2として分類された。さらに、最小点火エネルギー(MIE)を、双方の粉末について測定した(使用した方法について、VDIガイドライン 2263 part 1 : Dust Fires and Dust Explosions, Hazard Assessment - Protective Measures, Test Methods for the Determination of Safety Characteristics of Dusts, Beuth, Berlin, May 1990参照)。処方Aは、10〜25mJを含んでいるMIEを有していたのに対し、処方Bは、5〜10mJを含んでいるMIEを有していた。後者は、故に、極めて反応性(そのMIEについて極めて低い値)であるとして分類され、ひいては引火性ガス(例えばプロパン又はブタン)として処理されるべきである。他方では、そのMIEについてより高い値を有していた処方Aは、故に電気放電により発火されない。
【0043】
例4
防火剤を含有しているフレーバリングエマルジョンの噴霧乾燥
2つのフレーバリングエマルジョンを、次の処方(質量部)から製造した:
成分 処方A 処方B
(質量部) (質量部)
Basilicフレーバー1) 16.33 16.33
アセトアルデヒド 1.81 1.81
水 45.02 45.02
Capsul(R) 2) 28.59 36.84
リン酸二ナトリウム 8.25
合計 100.00 100.00
1) 出所:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
2) デキストリン ジオクテニルスクシネート;出所:National Starch、USA。
【0044】
上記で挙げられた成分を、高速撹拌機を用いて均質化した。混合物を、ついで、1kg/hのエマルジョンアウトプット;180°の入口温度;80°の出口温度;300°で20kg/hの蒸発能力を有するAPV PSD 52装置中で噴霧乾燥した。こうして微細粉末が得られ、その際、平均粒径がそれぞれ45μm(処方A)及び37μm(処方B)であり、かつ噴霧乾燥した粉末のフレーバー含量は、出発エマルジョンのそれと同一であった。例1に説明されているように得られた粉末のそれぞれの粉塵障害クラスを測定した後に、処方AはSt−1として分類されたのに対して、処方BはSt−3として分類された。故に、処方A中の有効量のリン酸二ナトリウムの存在は有利に、粉末の粉塵障害爆発クラスを低下させた。
【0045】
さらに、専門のフレーバリストによる2つの粉末の評価は、処方Aの粉末のフレーバーがリン酸二ナトリウムの存在により変質されなかったことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子担持材料中に分散されているか又は高分子担持材料内部に吸着されている少なくとも1つの付香成分もしくはフレーバリング成分を含有している付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルにおいて、
マイクロカプセルがさらに、マイクロカプセルの粉塵障害爆発クラスをSt−1に低下させることができる有効量の防火剤を含有していることを特徴とする、付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル。
【請求項2】
防火剤が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸一アンモニウムもしくは炭酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムもしくはリン酸三ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、メラミン シアヌレート、塩素化炭化水素及びその混合物からなる群から選択されている、請求項1記載の付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル。
【請求項3】
マイクロカプセルの乾燥質量に対して、防火剤5〜90質量%を含有している、請求項1記載の付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル。
【請求項4】
マイクロカプセルの乾燥質量に対して、防火剤5〜15質量%を含有している、請求項3記載の付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル。
【請求項5】
マイクロカプセルの全質量に対して、香水又はフレーバー1〜80質量%を含有している、請求項1記載の付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル。
【請求項6】
マイクロカプセルの全質量に対して、香水又はフレーバー1〜50質量%を含有している、請求項1記載の付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセル。
【請求項7】
請求項1に定義された付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルの製造方法において、防火剤を、高分子担持材料中の付香成分もしくはフレーバリング成分の水性エマルジョンに添加し、かつ得られたエマルジョンを噴霧乾燥して粉末を形成させることを特徴とする、請求項1に定義された付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
請求項1に定義された付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルの製造方法において、多孔質高分子担持材料に付香成分もしくはフレーバリング成分を含浸させ、かつ生じた系を防火剤でコーティングすることを特徴とする、請求項1に定義された付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
請求項1に定義された付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルの製造方法において、高分子担体中の付香成分もしくはフレーバリング成分の水性エマルジョンを噴霧乾燥させ、かつ得られた噴霧乾燥した粉末を、粉末にした形の防火剤と乾式混合することを特徴とする、請求項1に定義された付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
マイクロカプセルを空気中に懸濁させる間のマイクロカプセルの爆発の激しさを低下させるための、付香マイクロカプセルもしくはフレーバリングマイクロカプセルの組成物中での防火剤の使用。
【請求項11】
防火剤を、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸一アンモニウムもしくは炭酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムもしくはリン酸三ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、メラミン シアヌレート、塩素化炭化水素及びその混合物からなる群から選択する、請求項10記載の使用。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれか1項記載の付香マイクロカプセルを含有していることを特徴とする、香水、コロン、アフターシェーブローション、せっけん、バスもしくはシャワーゲル、デオドラント、ボディローション、シャンプーもしくは他のヘアケア製品、洗剤、織物柔軟剤、ハウスホールドクリーナー及びトイレタンク用の洗浄及び消臭ブロックからなる群から選択された、付香された製品。
【請求項13】
請求項1から6までのいずれか1項記載のフレーバリングマイクロカプセルを含有していることを特徴とする、食品、飲料又は医薬製品。

【公開番号】特開2010−138414(P2010−138414A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66137(P2010−66137)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2003−545401(P2003−545401)の分割
【原出願日】平成14年11月11日(2002.11.11)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】