説明

防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置

本発明は、防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置に関しており、ビル内で火災が発生しているときには、この防火装置が、ドアパネル(11、11’)の間のすき間を遮断することによって、炎や煙がエレベータの乗り場から昇降路(60)に行き渡ることを防止するとともに、ビル内全体にわたってこれらが蔓延することを防止する。防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置は、開閉するドアパネル(11、11’)と、1枚のドアパネル(11)のエレベータに面している側面(11a)上に開閉エッジ面(11b)と平行に延びており、ドアパネルの開閉エッジの方向に下向きに傾斜したスロット(42)を備え、かつ上記スロットを貫通する締結手段(46)によって上記ドアパネルに固定された防火プレート(40)と、上記締結手段によって、上記ドアパネル及び上記防火プレートとともに堅固に固定された可融性素材でできている固定具(44)と、からなる。固定具(44)は、ドアパネル(11)と防火プレート(40)との間もしくは、防火プレート(40)と締結手段(46)との間に配置され、またプラスチックや鉛でできている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗り場ドアに関する。さらに具体的には、本発明は、炎や煙が乗り場ドアのパネルの間のすき間を通って昇降路に行き渡ることを防止する装置を有するエレベータの乗り場ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乗り場ドアは、ビル内の各フロアにおけるエレベータの乗り場に取り付けられるエレベータかごへの入口である。エレベータの乗り場ドアは通常、閉じており、乗り場側と昇降路側との間の開口部を遮断する。昇降路内をエレベータかごは昇降し、このかごが、あるフロアに到着すると、かごドアに備えられたインターロックによって乗り場ドアが開閉される。
【0003】
図1、2は、従来のエレベータの乗り場ドアを示す背面図ならびに縦断面図であり、また図3は、従来のエレベータの乗り場ドアが、熱によって変形した状態を示す水平断面図である。図2においては、乗り場ドア10の左側は乗り場50であり、また右側は昇降路60である。
【0004】
ポケット12が、エレベータの乗り場の入口における上部壁20に形成されており、レール14が、このポケット12に取り付けられる。
【0005】
ハンガ16が、左右対称に配置された一対のドアパネル11、11’の上部に取り付けられ、レール14によって案内されているハンガローラ18が、このハンガ16上に取り付けられる。ハンガローラ18がレール14に沿って回転すると、ドアパネル11、11’が左右両側にスライドして開閉する。
【0006】
敷居32は、エレベータの乗り場のフロア30に取り付けられ、また上記敷居32に設けられた案内溝34に沿ってスライドするガイドシュー19が、ドアパネル11、11’の底面に取り付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ビル内において従来のエレベータの乗り場ドアが、火災によって加熱されると、ドアパネル11、11’が変形し始めるとともに、最終的には図3に示すように、ドアパネル11、11’の間にすき間が開く。炎や煙は、このすき間を通って乗り場50から昇降路60に行き渡り、かつこの昇降路60が煙突として機能する。これによって、炎や煙がビル内の他のフロアに蔓延し、さらに火災による損傷が拡大する。
【0008】
本発明は、防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置を提供することによって、従来技術におけるこれらの問題を解決し、乗り場で火災が発生しているときには、この防火装置が、ドアパネルの間のすき間を遮断することによって、炎や煙が乗り場から昇降路に行き渡ることを防止するとともに、ビル内全体にわたってこれらが蔓延することを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置は、開閉するドアパネルと、ドアパネルのエレベータに面している側面上に開閉エッジ面と平行に延びており、上記ドアパネルの開閉エッジの方向に下向きに傾斜したスロットを備え、かつ上記スロットを貫通する締結手段によって上記ドアパネルに固定された防火プレートと、上記締結手段によって、ドアパネル及び防火プレートとともに堅固に固定された可融性素材でできている固定具と、からなる。固定具は、ドアパネルと防火プレートとの間もしくは、防火プレートと締結手段との間に配置される。
【0010】
好ましくは、固定具は、プラスチックや鉛でできている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明における好ましい実施例を添付の図を参照して詳細に説明する。
【0012】
図4a、4bは、本発明における防火装置の第1の実施例を有するエレベータの乗り場ドア装置を示す背面図及び断面図である。
【0013】
図4a、4bに示すように、長方形の防火プレート40が、エレベータの乗り場ドアにおける2枚のドアパネル11、11’のうちの1枚のドアパネル11において、昇降路に面している背面部分11a上に位置しており、また固定具44が、ドアパネル11の背面11aと防火プレート40との間に配置されている。ドアパネル11、固定具44ならびに防火プレート40は、所定の保持強度を有するリベット46などの締結手段によって互いに固定される。
【0014】
防火プレート40は、隣接のドアパネル11’に面しているドアパネル11の開閉エッジ11bに沿って、ドアパネル11の高さとほぼ同一の長さになるように延びている。
【0015】
また、防火プレート40は、一つ或いは複数のスロット42を備えており、リベット46は、このプレート40を貫通する。上記スロット42は、ドアパネル11の開閉エッジ11bの方向に向かって所定の角度で下向きに傾斜しているとともに、所定の長さを有する。
【0016】
通常の場合、リベット46は、防火プレート40における傾斜したスロット42の最下部及び、固定具44を貫通する。防火プレート40、固定具44ならびにドアパネル11は、防火プレート40が、ドアパネル11の開閉エッジ11bを越えて突出せず、また乗客の乗降を妨げないように、互いに固定されている。
【0017】
上述の固定具44は、プラスチックや鉛からなる可融性素材でできており、熱を加えることによって簡単に溶融する。
【0018】
図5a、5bは、本発明における防火装置の第1の実施例の作動状態を示す背面図及び断面図である。本発明における防火装置の第1の実施例の動作及び効果を、これらの図を参照して説明する。
【0019】
ビルで火災が発生し、ドアパネル11、11’に熱が作用し始めると、可融性固定具44に熱が伝達して、この固定具44が即座に融解する。これによって、ドアパネル11の背面11aと防火プレート40との間の保持強度が消滅する。その結果、防火プレート40は、このプレート自体の重さによって、下向きに傾斜したスロット42に沿ってドアパネル11の開閉エッジ11bへ向かって所定距離を移動する。このようにして、防火プレート40が、リベット46によってドアパネル11から垂れ下がり、2枚のドアパネル11、11’の間のすき間を遮断することができる。これによって、炎や煙が、エレベータの乗り場からドアパネル11、11’の間のすき間を通って昇降路に行き渡ることを防止することができるとともに、ビル全体にわたってこれらが蔓延することを防止することができる。
【0020】
図6は、本発明における防火装置の第2の実施例を有するエレベータの乗り場ドアを示す断面図である。固定具44は、ドアパネル11の背面11aと防火プレート40との間ではなく、防火プレート40とリベット46の頂部との間に配置され、かつ同様の機能的な効果を、上述の第1の実施例で得られたように得ることができる。
【0021】
本発明は、上述の実施例に限定されないが、当業者であれば、特許請求の範囲において本発明の趣旨から逸脱することなく種々の変更ができるだろう。
【0022】
詳細に説明したように、本発明における防火装置を有するエレベータの乗り場ドアにおいて、ビルで火災が発生し、ドアパネルに熱が伝達すると、可融性素材でできている固定具が即座に融解する。これにより、防火プレートが一対のドアパネルの間のすき間を遮断するとともに、乗り場側の炎や煙が昇降路に行き渡ることを防止することができ、またビル内全体にわたってこれらが蔓延することを防止することができる。
【0023】
また、本発明における防火装置は、火災発生時に必然的に生じる高温ならびに、防火プレート自体の重さによって、防火装置用の独立した駆動装置の必要なしに簡単に作動することができるので、防火プレートの取り付け構造は簡単であり、また取り付け費用も安価である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のエレベータの乗り場ドアを示す背面図。
【図2】従来のエレベータの乗り場ドアを示す縦断面図。
【図3】従来のエレベータの乗り場ドアが、熱によって変形した状態を示す水平断面図。
【図4a】本発明における防火装置を備えたエレベータの乗り場ドアを示す背面図。
【図4b】本発明における防火装置の第1の実施例を示す断面図。
【図5a】本発明における防火装置の第1の実施例の作動状態を示す背面図。
【図5b】本発明における防火装置の第1の実施例の作動状態を示す断面図。
【図6】本発明における防火装置の第2の実施例を備えたエレベータの乗り場ドアを示す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉する2枚のドアパネル(11、11’)と、
1枚のドアパネル(11)のエレベータに面している側面(11a)上に開閉エッジ面(11b)と平行に延びており、上記ドアパネルの開閉エッジの方向に下向きに傾斜したスロット(42)を備え、かつ上記スロットを貫通する締結手段(46)によって上記ドアパネルに固定された防火プレート(40)と、
上記締結手段によって、上記ドアパネル及び上記防火プレートとともに堅固に固定された可融性素材からなる固定具(44)と、
からなることを特徴とする防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置。
【請求項2】
上記固定具(44)は、1枚のドアパネル(11)と上記防火プレート(40)との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置。
【請求項3】
上記固定具(44)は、上記防火プレート(40)と締結手段(46)との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置。
【請求項4】
上記固定具(44)は、プラスチックからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置。
【請求項5】
上記固定具(44)は、鉛からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防火装置を有するエレベータの乗り場ドア装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−513034(P2007−513034A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542785(P2006−542785)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040511
【国際公開番号】WO2005/056964
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】