説明

防災システム及び防災システム構築方法

【課題】新たな施工や改修工事が容易であり、火災時の防災手段の作動確実性を高めることができる防災システムを提供する。
【解決手段】防災システム10は、火災時の被害拡大を防止するために設置された防災手段である排煙口11と、排煙口10に作動信号を送信する操作手段である操作ボックス12と、排煙口11に駆動電力を供給する電源13a及び排煙口11を制御する制御回路13bを有する防災盤13と、を備え、操作ボックス12と排煙口11との間の信号の送受信を行う無線通信手段として、排煙口11及び操作ボックス12にそれぞれ伝送器11a,12aが設けられている。操作ボックス12には、伝送器12aを構成する送信部12b及び受信部12cを制御する制御回路12dと、制御回路12d及び伝送器12aを機能させる電源12e(リチウム電池)とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種建築物において火災が発生したときの被害拡大を防止するために設置される防災システム及び防災システム構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や地下街などにおいて火災が発生したときの被害拡大を防止するための防災システムについては、従来、様々な方式が提案されているが、本発明に関連するものとして、火災発生時に操作ボックスを手動操作すると排煙口が作動する機構を備えたものがある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−116331号公報
【特許文献2】実用新案登録第3030912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載された防災システムにおいては、排煙口、操作ボックス及び制御盤などは電気配線で連結され、操作信号の送受信及び駆動電流の供給などは全て電気配線を経由して行われている。
【0005】
従って、特許文献1,2に記載された防災システムを新たな建築物に設置する場合には前述した電気配線を行うためのスペースを建築物内に確保する必要があり、電気配線工事にも多大な労力と資材とが費やされている。また、改修工事などの際に防災機器類の取り換えを行う場合にも、既設の電気配線の撤去及び新たな電気配線の施工に多大な労力と資材とが費やされている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、新たな施工や改修工事が容易であり、火災時の防災手段の作動確実性を高めることができる防災システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防災システムは、火災時の被害拡大を防止するために設置された防災手段と、前記防災手段に作動信号を送信する操作手段と、前記防災手段に駆動電力を供給する電源及び前記防災手段を制御する制御回路を有する防災盤とを備えた防災システムにおいて、
前記操作手段と前記防災手段との間の制御信号の送受信を行う無線通信手段と、前記無線通信手段を機能させる電源と、を設け、
前記無線通信手段に、前記操作手段から送信された作動信号に基づく前記防災手段の作動が完了したとき前記操作手段へ完了信号を送信する返信機能と、前記操作手段が前記完了信号を受信するまで前記作動信号を送信する連続送信機能と、を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、前記操作手段と前記防災手段との間の電気配線が不要となるため、施工が容易となり、改修工事も容易となる。また、前記防災手段の作動が完了して前記操作手段へ送信された完了信号を前記操作手段が受信するまで前記作動信号が送信されるため、火災時の防災手段の作動確実性を高めることができる。なお、前記防災手段とは、火災時に発生する煙を排出するために設けられた排煙経路を開放する排煙口、建物内へ外気を取り込むための給気口、排煙ダンパ、排煙窓、あるいは、火災時に発生する煙の拡散経路を閉止したり、煙の流動を妨げたりする防火戸、防火垂れ壁などをいう。
【0009】
また、本発明の防災システムは、火災時の被害拡大を防止するために配置された防災手段と、前記防災手段に作動信号を送信する操作手段と、前記防災手段を制御する制御回路を有する防災盤とを備えた防災システムにおいて、
前記防災手段と前記防災盤との間の制御信号の送受信を行う無線通信手段と、前記防災手段に駆動電力を供給する電源と、
前記操作手段と前記防災手段との間の信号の送受信を行う無線通信手段と、前記無線通信手段を機能させる電源と、を設け、
前記無線通信手段に、前記操作手段から送信された作動信号に基づく前記防災手段の作動が完了したとき前記操作手段へ完了信号を送信する返信機能と、前記操作手段が前記完了信号を受信するまで前記作動信号を送信する連続送信機能と、を設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、前記操作手段と前記防災手段との間の電気配線が不要となるため、施工が容易となり、改修工事も容易となる。また、前記防災手段の作動が完了して前記操作手段へ送信された完了信号を前記操作手段が受信するまで前記作動信号が送信されるため、火災時の防災手段の作動確実性を高めることができる。また、前記防災盤と前記防災手段との間の電力配線及び信号配線も不要となるため、施工性及び改修工事の容易化に有効である。
【0011】
ここで、前記操作手段に、前記電源の残量を監視する残量表示手段を設けることが望ましい。
【0012】
このような構成とすれば、電源の残量不足による当該防災システムの作動不良を未然に防止することができる。
【0013】
また、前記操作手段に、前記操作手段と前記防災手段との間の送受信状態を監視する監視手段を設けることが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、操作手段と防災手段とが互いに送受信可能な領域内に位置すること、防災手段に異常が発生していないこと及び当該防災システムが正常に機能していることを常時確認することができる。また、操作手段と防災手段とが互いに送受信可能な領域内に配置されているか否かを確認することができるので、当該防災システムを新たに施工するとき、あるいは改修するときなどの作動確認作業が容易となる。
【0015】
さらに、火災時に発生する煙、熱の少なくとも一方を感知する煙・熱感知手段を前記防災手段に付設し、前記煙・熱感知手段からの感知信号に基づいて前記防災手段を平常状態に自己復帰させるリセット手段を前記防災手段に設けることもできる。
【0016】
このような構成とすれば、操作手段によって一旦作動した防災手段を前記リセット手段によって平常状態に自己復帰させることができるので、例えば、複数の区画にそれぞれ防災手段が設置されている建物で火災が発生したとき、避難者が闇雲に操作手段を操作したことによって発生する当該防災システムの不必要な作動を自動的に修復し、実際に火災が発生している区画の防災手段のみを確実に作動させることにより、火災発生区画における排煙風量の低下を防止することができる。
【0017】
次に、本発明の防災システム構築方法は、火災時の被害拡大を防止するために設置された防災手段と、前記防災手段に電気配線を経由して作動信号を送信する操作手段と、前記防災手段に電気配線を経由して作動信号及び駆動電力を供給する制御回路及び電源を有する防災盤と、を備えた既設の防災システムにおいて、
前記防災手段に無線通信手段を付加し、若しくは前記防災手段の作動手段を無線通信手段付きの作動手段に交換し、
前記操作手段を、前記防災手段の無線通信手段と送受信可能な無線通信手段及び前記無線通信手段を機能させる電源を有する無線式の操作手段に交換することを特徴とする。
【0018】
このような構成とすれば、既設の防災システムを利用して容易に本発明に係る防災システムを構築することができる。
【0019】
また、前記防災盤に、前記防災手段に新設された前記無線通信手段と送受信可能な無線通信手段を設け、前記防災手段に駆動電力を供給する電源を前記防災手段に設けることもできる。
【0020】
このような構成とすれば、防災盤と防災手段との間の作動信号の送受信を行う電気配線も省略することができるため、工事の簡略化に有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、新たな施工や改修工事が容易であり、火災時の防災手段の作動確実性を高めることができる防災システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態である防災システムを示すブロック図である。
【図2】図1に示す防災システムを構成する操作ボックスの正面図である。
【図3】図1に示す防災システムの作動過程を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す防災システムの作動過程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態である防災システムを示すブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態である防災システムを示すブロック図である。
【図7】本発明の第4実施形態である防災システムを示すブロック図である。
【図8】本発明の第5実施形態である防災システムを示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態である防災システム構築方法の施工対象である排煙口を示す斜視図である。
【図10】図1に示す排煙口における開閉器の取付構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態である防災システム10は、火災時の被害拡大を防止するために設置された防災手段である排煙口11と、排煙口11に作動信号を送信する操作手段である操作ボックス12と、排煙口11に駆動電力を供給する電源13a及び排煙口11を制御する制御回路13bを有する防災盤13と、を備え、操作ボックス12と排煙口11との間の信号の送受信を行う無線通信手段として、排煙口11及び操作ボックス12にそれぞれ伝送器11a,12aが設けられている。
【0024】
図1に示す防災システム10は、煙・熱感知器15が煙や熱を感知すると、その感知信号が電気配線16を経由して防災盤13の制御回路13bへ送信され、防災盤13の制御回路13bから電気配線14を経由して排煙口11の制御回路11dへ作動信号が送信され、排煙口11が自動的に作動する機能を備えている。
【0025】
操作ボックス12には、伝送器12aを構成する送信部12b及び受信部12cを制御する制御回路12dと、制御回路12d及び伝送器12aを機能させる電源12e(リチウム電池)とが設けられている。
【0026】
排煙口11には、伝送器11aを構成する送信部11b及び受信部11cの制御と、ソレノイド11s及びモータ11mの制御とを行う制御回路11dが設けられている。後述する作動操作などによって排煙口11に作動信号が送信されるとソレノイド11sが作動して排煙口11に設けられている羽根板が開放され(例えば、図9の羽根板63参照)、後述する復帰操作などによって排煙口11に復帰信号が送信されるとモータ11mが作動して開放中の前記羽根板が閉止状態に復帰する。また、排煙口11内部に煙感知器11fが配置され、煙感知器11fは電気配線11gを介して伝送器11aに接続されている。
【0027】
排煙口11の制御回路11dと、防災盤13の制御回路13bとは電気配線14によって接続され、防災盤13と煙・熱感知器15とは電気配線16によって接続されている。防災盤13において所定の手動操作することにより、排煙口11を作動させたり、復帰させたりすることができ、排煙口11の作動状態、復帰状態は防災盤13及び操作ボックス12に表示される。
【0028】
排煙口11の伝送器11aの送信部11bには、操作ボックス12から送信された作動信号に基づく排煙口11の作動が完了したとき操作ボックス12へ完了信号を送信する返信機能が設けられ、操作ボックス12の伝送器12aの送信部12bには、受信部12cが前記完了信号を受信するまで前記作動信号を送信する連続送信機能が設けられている。
【0029】
図2に示すように、操作ボックス12には、火災発生時に押圧操作される押しボタン12sと、作動表示灯12f及び通電表示灯12gとが設けられている。平常時は、作動表示灯12fが消灯し、通電表示灯12gが点滅している。後述するように、排煙口11が作動すると作動表示灯12fが点灯し、伝送器11a,12a間の無線通信ができなくなると作動表示灯12fが「0.5秒ON/3秒OFF」の間隔で点滅し、電源12eの残量が所定値以下になると作動表示灯12fが「0.5秒ON/6秒OFF」の間隔で点滅する。
【0030】
図3に示すように、平常時は、操作ボックス12の制御回路12dが電源12eの残量確認を行い(S31)、その残量が所定値以上であれば、通電表示灯12gが点滅し続ける(S32)。一方、電源12eの残量が所定値未満になると、操作ボックス12の作動表示灯12fが「0.5秒ON/6秒OFF」の間隔で点滅する(S33)ので、電源12eの交換を行う(S34)。電源12eの交換が終わると、制御回路12dが再び残量確認を行い(S31)、残量が所定値以上であれば、通電表示灯12gが点滅し始める(S32)。
【0031】
ここで、図1,図2及び図4を参照して、火災発生時の操作手順及び防災システム10の作動過程について説明する。火災発生時に操作ボックス12の押しボタン12sが押圧操作されると(S41)、制御回路12dが機能して伝送器12aの送信部12bから、排煙口11の受信部11cへ作動信号が送信される。排煙口11の受信部11cが前記作動信号を受信すると、制御回路11dから電気配線14を介して防災盤13の制御回路13bへ制御信号が送信され、防災盤13の電源13aから制御回路13b及び電気配線14を経由して制御回路11dへ供給される駆動電流によりソレノイド11sが作動して排煙口11が作動する。
【0032】
排煙口11の作動が完了すると、送信部11bから操作ボックス12の受信部12cへ完了信号が送信され、受信部12cが前記完了信号を受信すると、送信部12bから受信部11cへ作動信号の送信が停止され、操作ボックス12の作動表示灯12fが点灯する(S42)。これにより、排煙口11が作動したこと、及び排煙機(図示せず)が起動したこと(S43)を視認することができる。
【0033】
一方、排煙口11が作動せず、送信部11bから受信部12cへ完了信号が送信されないときは、操作ボックス12の作動表示灯12fが点滅し(S54)、受信部12cが完了信号を受信するまで、操作ボックス12の送信部12bから受信部11cへの作動信号の連続送信(作動信号のリトライ)が行われる(S55)。
【0034】
また、排煙口11の内部に設けられている煙感知器11fが煙の有無を感知し(S44)、煙感知器11fの感知信号が排煙口11の制御回路11dに伝送されないときは(S45)、排煙口11が自己復帰する(S46)。煙感知器11fが煙を感知し、煙感知器11fの感知信号が排煙口11の制御回路11dに伝送されている間は(S47)、排煙口11は作動し続け、開放保持される(S48)。
【0035】
火災鎮火を確認することができたら(S49)、防災盤13における手動操作で排煙機を停止し(S50)、操作ボックス12において押しボタン12sを引くなどの復帰操作を行うと(S51)、排煙口11の復帰が完了する(S52)。
【0036】
前述したように、防災システム10においては、操作ボックス12と排煙口11との間の電気配線が不要であるため、施工が容易であり、改修工事も容易である。また、排煙口11の作動が完了し、排煙口11の送信部11bから操作ボックス12へ送信された完了信号を操作ボックス12の受信部12cが受信するまで、送信部12bから排煙口11の受信部11cへ作動信号が連続送信されるため、火災発生時の排煙口11の作動確実性を高めることができる。
【0037】
操作ボックス12については、通電表示灯12gをなくして、作動表示灯12fのみを設けた構成とすることもできる。この場合、平常時は、作動表示灯12fが消灯し、防災システム10に異常(電源残量不足、排煙口異常、送受信異常など)が生じたとき、作動表示灯12fが点滅するようにすることができる。また、暗がりでも操作ボックス12の場所が視認できるような視認機能(例えば、ストロボ、夜光塗装など)を付加することもできる。
【0038】
なお、操作ボックス12における表示手段は前述した方式に限定しないので、例えば、操作ボックスの一部に液晶画面を設け、作動時は「作動」の文字を画面表示し、伝送不良などの異常時には「異常」の文字を画面表示し、電池残量は常に図形による画面表示(例えば、携帯電話の液晶画面の電池残量表示のようなもの)を行い、電池残量が少なくなると「電池交換」の文字を画面表示するような方式とすることもできる。
【0039】
次に、図5に基づいて、本発明の第2実施形態である防災システム20について説明する。なお、前述した防災システム10の構成要件と共通する部分は図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0040】
図5に示すように、防災システム20においては、排煙口11と防災盤13との間の制御信号の送受信を行う無線通信手段として、防災盤13に送信部13c及び受信部13dが設けられている。また、排煙口11の駆動電力を供給するための電源11eが当該排煙口11に設けられている。防災システム20は、防災盤13と排煙口11との間の電気配線が不要であるため、施工が容易であり、改修工事も容易である。
【0041】
次に、図6に基づいて、本発明の第3実施形態である防災システム30について説明する。なお、前述した防災システム10,20の構成要件と共通する部分は図1,図5と同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、防災システム30は、火災時の被害拡大を防止するために設置された防災手段である排煙口11及び給気口17と、給気口17に作動信号を送信する操作手段である操作ボックス12と、防災盤13と、を備え、操作ボックス12と給気口17との間の信号の送受信を行う無線通信手段として、給気口17及び操作ボックス12にそれぞれ伝送器17a,12aが設けられている。
【0043】
図6に示す防災システム30は、煙・熱感知器15が煙や熱を感知すると、その感知信号が電気配線16を経由して防災盤13の制御回路13bへ送信され、防災盤13の制御回路13bから電気配線14を経由して排煙口11の制御回路11d及び給気口17の制御回路17dへ作動信号が送信され、排煙口11及び給気口17が自動的に作動する機能を備えている。
【0044】
給気口17には、伝送器17aを構成する送信部17b及び受信部17cの制御と、ソレノイド17s及びモータ17mの制御とを行う制御回路17dが設けられている。作動操作などによって給気口17に作動信号が送信されるとソレノイド17sが作動して給気口17に設けられている羽根(図示せず)が開放され、復帰操作などによって給気口17に復帰信号が送信されるとモータ17mが作動して開放中の羽根(図示せず)は閉止状態に復帰する。
【0045】
防災盤13の制御回路13bと排煙口11の制御回路11dとは電気配線14で接続され、排煙口11の制御回路11dと給気口17の制御回路17dとは電気配線18で接続されている。排煙口11及び給気口17を作動させたり、復帰させたりする電力は防災盤13の電源13aから電気配線14,18を経由して排煙口11及び給気口17に供給される。
【0046】
火災発生時、図2に示す操作ボックス12の押しボタン12sが押圧操作されると、制御回路12dが機能して伝送器12aの送信部12bから、給気口17の受信部17cへ作動信号が送信される。給気口17の受信部17cが前記作動信号を受信すると、制御回路17dから電気配線18、排煙口11の制御回路11d及び電気配線14を介して防災盤13の制御回路13bへ制御信号が送信され、防災盤13の電源13aから供給される駆動電流によりソレノイド11s,17sが作動して排煙口11及び給気口17が作動する。
【0047】
排煙口11及び給気口17の作動が完了すると、送信部17bから操作ボックス12の受信部12cへ完了信号が送信され、受信部12cが前記完了信号を受信すると、送信部12bから受信部17cへ作動信号の送信が停止され、操作ボックス12の正面パネルの作動表示灯12fが点灯する。これにより、排煙口11及び給気口17が作動したことを視認することができる。
【0048】
一方、排煙口11及び給気口17が作動せず、送信部17bから受信部12cへ完了信号が送信されないときは、受信部12cが完了信号を受信するまで、送信部12bから受信部11cへ前記作動信号が連続して送信される。
【0049】
また、図6に示すように、排煙口11の制御回路11dと給気口17の制御回路17dとが電気配線18で接続されているため、排煙口11と給気口11のいずれかと操作ボックス12と間に無線通信手段を設けることにより防災システム30を構築することができる。
【0050】
次に、図7に基づいて、本発明の第4実施形態である防災システム40について説明する。なお、前述した防災システム10,20,30の構成要件と共通する部分は図1,図5,図6と同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
図7に示すように、防災システム40は、排煙口11及び給気口17に作動信号を送信する操作ボックス12と、防災盤13と、を備え、操作ボックス12と排煙口11及び給気口17との間の信号の送受信を行う無線通信手段として、排煙口11、給気口17及び操作ボックス12にそれぞれ伝送器11a,17a,12aが設けられている。排煙口11及び給気口17にはそれぞれ電源11e,17eが設けられている。また、防災盤13と排煙口11及び給気口17との間の制御信号の送受信を行う無線通信手段として、防災盤13に送信部13c及び受信部13dが設けられている。
【0052】
防災システム40においては、操作ボックス12と排煙口11及び給気口17との間の信号の送受信だけでなく、防災盤13と排煙口11及び給気口17との間の信号の送受信も無線通信で行われるので、これらの機材間の電気配線が不要であり、施工及び改修工事も容易である。防災システム40においては、排煙口11及び給気口17にそれぞれ電源11e,17eが設けられているため、防災盤13からの給電線などの配線が全く不要となる。また、排煙口11及び給気口17の両方とも作動して初めて完了信号が送信され、操作ボックス12の作動表示灯12fが点灯する構成となっているので、いずれか一方が作動しなければ作動表示灯12fが点灯しないし、作動するまでリトライ信号が送信され続ける。
【0053】
次に、図8に基づいて、本発明の第5実施形態である防災システム50について説明する。なお、前述した防災システム10,20,30,40の構成要件と共通する部分は図1,図5,図6,図7と同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
図8に示すように、防災システム50においては、図7に示す防災システム40と同様、操作ボックス12と排煙口11及び給気口17との間の信号の送受信と、防災盤13と排煙口11及び給気口17との間の信号の送受信と、が無線通信で行われる。また、排煙靴11及び給気口17の内部に煙感知器11f,17fが配置され、それぞれ電気配線11g,17gを介して伝送器11a,17aに接続されている。
【0055】
火災発生時、操作ボックス12からの作動信号により排煙口11、給気口17が作動した後、予め設定された所定時間が経過した時点で煙感知器11f,17fが排煙口11内の煙を感知しないときは、排煙口11、給気口17が自動的に平常の閉止状態に自己復帰する。従って、火災発生時に避難者が闇雲に操作ボックス12を操作して排煙口11や給気口17を作動させた場合、排煙口11、給気口17の煙感知器11f,17fが煙を感知しなければ、排煙口11、給気口17が自己復帰するので、排煙口11、給気口17の不必要な作動を自動的に修復することができる。
【0056】
また、排煙口11、給気口17が前記自己復帰機能を有することにより、建物内の複数の区画にそれぞれ防災手段(排煙口11、給気口17)が設置されている場合、実際に火災が発生している部分の防災手段(排煙口11,給気口17)のみを確実に作動させることができるため、火災発生区画における排煙風量の低下を防止することができる。
【0057】
図8に示す防災システム50においては、煙感知器11f,17fが排煙口11、給気口17に内蔵され、排煙口11、給気口17自体が具備する煙感知機能により、不必要に作動したこれらの機器が自動的に自己復帰するので、複雑で大掛かりなシステムを構築する必要がない。また、火災発生時に避難者が闇雲に操作ボックス12を操作して排煙口11を作動させた場合でも、排煙口11の煙感知器11fが煙を感知しなければ、排煙口11自体が自己復帰するので、複雑で大掛かりなシステムを組む必要がない。さらに、排煙口11、給気口17の両方とも作動して初めて完了信号が送信され、操作ボックス12の作動表示灯12fが点灯する構成となっているので、いずれか一方が作動しなければ作動表示灯12fが点灯せず、作動するまでリトライ信号が送信し続けられる。
【0058】
前述した防災システム10,20,30,40,50においては、電源11e,12e,13e,17eとしてリチウムイオン電池を採用しているが、これに限定するものではないので、充電式のバッテリーや太陽電池などを使用することもできる。
【0059】
なお、前述した防災システムは新規施工によって構築することができるのは勿論であるが、本発明に係る防災システム構築方法を実施すること、即ち、既設の防災システムに無線通信手段などを付加すること(例えば、電気配線を利用した電気信号作動式の排煙口、給気口に伝送器を後付けし、操作ボックスを無線式に交換することなど)によって構築することもできる。この場合、排煙口、給気口の開閉器を伝送機能付きのものに交換し、操作ボックスを無線式に交換することにより、排煙口本体や給気口本体ごと交換しなくても、既設の防災システムの構成機材を利用して開閉器の交換だけで無線式の防災システムを構築することもできる。また、ワイヤー式であっても、防災盤からの遠隔操作ができるように信号線を結線するための端子台があるので、これを利用することで実現可能である。
【0060】
ここで、図9,図10を参照し、本発明に係る防災システム構築方法の施工対象である既設の防災システムを構成する排煙口について説明する。図9に示すように、既設の防災手段の一つである排煙口60は、内部に空気の流路を形成するケース61と、ケース61内に設けられた開閉器62と、ケース61に回動自在に軸支され、空気の流路を開閉する羽根板63とを備えている。排煙口60の作動手段である開閉器62は箱形状に形成され、後述する図10に示すような取付構造を介して、ケース61内の天井面に略中央位置に着脱可能に取り付けられている。
【0061】
開閉器62内には、ソレノイド、モータ及び自動巻取胴(図示せず)などが内蔵され、基端部が自動巻取胴に巻き込まれた状態で縦長孔70から延設された索条71の先端部が羽根板63に係止されている。ケース61内の中間高さの位置に横設された軸36に、羽根板63の背面側に固定された補強枠38が軸支され、軸36には、羽根板63を常時水平方向に付勢回動させるための複数の付勢バネ40が設けられている。
【0062】
図10に示すように、排煙口60においては、開閉器62の取り付け位置であるケース61の天井面に取付部材86が固定され、この取付部材86は、開閉器62の一部を着脱自在に係止する着脱部80と、開閉器62の他の部分を取付方向からの入力操作で固定する完全固定部90とを備えている。取付部材86は、矩形状の取付板92の両側端に下方へ折曲された一対のL形板94を有し、これらのL形板94の一端寄り下面に着脱部80としてのヘッド付きピン96が固定され、他端に完全固定部90としてのネジ孔98が開口された受止片100が垂下されている。
【0063】
開閉器62の両側面の上部寄り位置には、L形板94に接合可能な一対の長板102が水平方向に突設され、これらの長板102の一端寄り位置にヘッド付ピン96を係嵌するための瓢箪形のピン孔104が開口され、他端位置には受止片100に接合するネジ孔105付きの係止片106が下方へ突設されている。
【0064】
図10に示す構成において、取付板92をケース61の天井面にビスなどで固定し、開閉器62を下方から嵌合させ、L形板94の下面に開閉器62の長板102を接合しつつ、長板102のピン孔104にL形板94のヘッド付ピン96を嵌合させ受止片100方向へ摺動させることによってピン孔104をヘッド付ピン96に嵌係させる。この状態で係止片106を持ち上げて受止片100の内面に接合させ、係止片106と受止片100の相互に連通したネジ孔98,105にネジ108を螺着させれば、開閉器62をケース61の開口端64側から容易に固定することができる。また、前述した固定作業と逆の作業を行えば、開閉器62をケース61の開口端64側から容易に取り外すことができる。
【0065】
従って、図9に示す排煙口60において、既設の開閉器62を無線通信手段付きのもの(例えば、図1に示す伝送器11a付きのもの)に交換し、既設の操作ボックス(図示せず)を無線通信手段付きの操作ボックス(例えば、図1,図2に示す操作ボックス12)に交換すれば、排煙口60本体ごと交換することなく、既設の防災システムの構成機材を利用して、容易に本発明に係る無線式の防災システムを構築することができる。
【0066】
なお、図9,図10に示す排煙口60は、本発明に係る防災システム構築方法を実施可能な排煙口の一例を示すものであり、実施対象をこれに限定するものではないので、本発明に係る防災システム構築方法は、着脱可能な開閉器を有する既設の排煙口や給気口などの防災手段に対して広く実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、大型建築物や地下街などにおける火災の被害拡大を防止するための防災設備として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10,20,30,40,50 防災システム
11,60 排煙口
11a,12a,17a 伝送器
11b,12b,13c,17b 送信部
11c,12c,13d,17c 受信部
11d,12d,13b,17d 制御回路
11e,12e,13a,17e 電源
11f,17f 煙感知器
11g,17g,14,16,18 電気配線
11m,17m モータ
11s,17s ソレノイド
12 操作ボックス
12f 作動表示灯
12g 通電表示灯
12s 押しボタン
13 防災盤
15 煙・熱感知器
17 給気口
36 軸
38 補強枠
40 付勢バネ
61 ケース
62 開閉器
63 羽根板
64 開口端
70 縦長孔
71 索条
80 着脱部
86 取付部材
90 完全固定部
92 取付板
94 L形板
96 ヘッド付ピン
98,105 ネジ孔
100 受止片
102 長板
104 ピン孔
106 係止片
108 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時の被害拡大を防止するために設置された防災手段と、前記防災手段に作動信号を送信する操作手段と、前記防災手段に駆動電力を供給する電源及び前記防災手段を制御する制御回路を有する防災盤とを備えた防災システムにおいて、
前記操作手段と前記防災手段との間の信号の送受信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段を機能させる電源と、を設け、
前記無線通信手段に、前記操作手段から送信された作動信号に基づく前記防災手段の作動が完了したとき前記操作手段へ完了信号を送信する返信機能と、前記操作手段が前記完了信号を受信するまで前記作動信号を送信する連続送信機能と、を設けたことを特徴とする防災システム。
【請求項2】
火災時の被害拡大を防止するために配置された防災手段と、前記防災手段に作動信号を送信する操作手段と、前記防災手段を制御する制御回路を有する防災盤とを備えた防災システムにおいて、
前記防災手段と前記防災盤との間の制御信号の送受信を行う無線通信手段と、
前記防災手段に駆動電力を供給する電源と、
前記操作手段と前記防災手段との間の信号の送受信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段を機能させる電源と、を設け、
前記無線通信手段に、前記操作手段から送信された作動信号に基づく前記防災手段の作動が完了したとき前記操作手段へ完了信号を送信する返信機能と、前記操作手段が前記完了信号を受信するまで前記作動信号を送信する連続送信機能と、を設けたことを特徴とする防災システム。
【請求項3】
前記操作手段に、前記電源の残量を監視する残量表示手段を設けた請求項1または2記載の防災システム。
【請求項4】
前記操作手段に、前記操作手段と前記防災手段との間の送受信状態を監視する監視手段を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の防災システム。
【請求項5】
火災時に発生する煙、熱の少なくとも一方を感知する煙・熱感知手段を前記防災手段に付設し、前記煙・熱感知手段からの感知信号に基づいて前記防災手段を平常状態に自己復帰させるリセット手段を前記防災手段に設けた1〜4のいずれかに記載の防災システム。
【請求項6】
火災時の被害拡大を防止するために設置された防災手段と、前記防災手段に電気配線を経由して作動信号を送信する操作手段と、前記防災手段に電気配線を経由して作動信号及び駆動電力を供給する制御回路及び電源を有する防災盤と、を備えた既設の防災システムにおいて、
前記防災手段に無線通信手段を付加し、若しくは前記防災手段の作動手段を無線通信手段付きの作動手段に交換し、
前記操作手段を、前記防災手段の無線通信手段と送受信可能な無線通信手段及び前記無線通信手段を機能させる電源を有する無線式の操作手段に交換することを特徴とする防災システム構築方法。
【請求項7】
前記防災盤に、前記防災手段の無線通信手段と送受信可能な無線通信手段を設け、前記防災手段に駆動電力を供給する電源を前記防災手段に設けることを特徴とする請求項6記載の防災システム構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−240(P2013−240A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132583(P2011−132583)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(390022666)協立エアテック株式会社 (41)
【Fターム(参考)】