説明

防炎性耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物

本発明は、(A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、58〜99.6重量部、(B)バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法で製造されるゴム変性グラフトポリマー、0.5〜12重量部、(C)ホスフィン酸の塩、0.1〜30重量部(成分A、BおよびCのそれぞれの重量部は成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)を含むポリカーボネート組成物に関する。このポリカーボネート組成物は、高い加熱撓み温度、良好な防炎性、優れた機械的特性、および良好な加水分解抵抗の最適な組み合わせを特徴とする。本発明は、更に、上記ポリカーボネート組成物の成形物品の製造への使用並びに前記成形物品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルク重合法によって製造されるゴム含有グラフトポリマーおよびホスフィン酸の塩を含有するポリカーボネート組成物、このポリカーボネート組成物の成形物品の製造への使用、並びに成形物品そのものに関する。
【背景技術】
【0002】
WO−A 2005/044906は、次リン酸の金属塩少なくとも1種類並びに芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネートとゴム含量5〜15%のスチレン含有グラフトコポリマー樹脂との混合物の少なくとも1種類を含有する熱可塑性成形組成物を開示している。スチレン含有グラフトコポリマーの含量は10〜40wt.%である。得られる成形組成物は、良好な耐燃性、加工条件のもとでの高い熱安定性および良好な耐候性が認められている。低いゴム含量のために、他の特性、特に機械特性はレベルが低い。
【0003】
WO−A 1999/57192は、ポリエステルまたはポリカーボネート5〜96wt.%、ホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩および/またはそのポリマー1〜30wt.%、少なくとも1種類の有機リン含有防炎加工剤1〜30wt.%、並びに可能な別の添加剤を含有する熱可塑性成形組成物を開示している。
【0004】
DE−A 102004049342は、熱可塑性ポリマー10〜98wt.%、高度分枝ポリカーボネートまたは高度分枝ポリエステルまたはそれらの混合物0.01〜50wt.%、P含有化合物またはN含有化合物またはP−N縮合体またはそれらの混合物の群から選択されるハロゲンを含まない防炎加工剤1〜40wt.%、および可能な別の添加剤を含有する熱可塑性成形組成物を開示している。
【0005】
特開2001−335699は、スチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂から選択される2種類以上の熱可塑性樹脂並びに1種類以上の無機ホスフィン酸塩または有機ホスフィン酸塩、並びに可能な別の添加剤を含有する防炎加工樹脂組成物を記載している。
【0006】
特開2001−261973(ダイセル化学工業株式会社)は、熱可塑性樹脂と無機または有機ホスフィン酸塩との組成物を開示している。PBTとホスフィン酸カルシウムとPTFEとの組み合わせが実施例として挙げられている。
【0007】
特開2002−161211は、熱可塑性樹脂と防炎加工剤(例えばホスフィン酸塩、リン酸塩およびそれらの誘導体)との組成物を開示している。PBTとABSとポリオキシフェニレンとホスフィン酸カルシウムとオルガノホスフェートとグラスファイバーとの組み合わせが実施例として挙げられている。
【0008】
ポリカーボネート/ABSブレンドの先行技術で常套の防炎加工剤は、有機芳香族リン酸エステルである。有機芳香族リン酸エステルは低分子量の形態であっても、様々なオリゴマーの混合物の形態であってもオリゴマーと低分子量化合物との混合物の形態であってもよい(例えばWO−A 99/16828およびWO−A 00/31173)。防炎加工剤としての良好な活性は、不都合なことに上記化合物のポリマー成分における高い可塑化作用によって打ち消されるので、これらの成形組成物の加熱撓み温度は多くの用途に十分でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い加熱撓み温度、良好な防炎性、優れた機械的特性、および良好な加水分解抵抗の最適な組み合わせを有する耐衝撃性改良ポリカーボネート成形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
意外なことに、(A)ポリカーボネート、(B)バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法で製造されるゴム変性グラフトポリマーおよび(C)ホスフィン酸の塩を含有する成形組成物または組成物が所望の特性プロファイルを有することがわかった。
【0011】
意外なことに、
(A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、58〜99.6重量部、好ましくは76〜98重量部、特に好ましくは80〜90重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)、
(B) バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法によって製造されるゴム変性グラフトポリマー、0.5〜12重量部、好ましくは1〜9重量部、特に好ましくは3〜8重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)、
(C) ホスフィン酸の塩、0.1〜30重量部、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは7〜12重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)、
(D) ゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート、0〜20重量部(成分A+B+Cの重量部の合計100に対する。)を含有し、好ましくは本発明の組成物はゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレートを含まず、
(E) 添加剤、0〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計100に対する。)
(本明細書中の重量部は全て、成分A+B+Cの重量部の合計が100になるように標準化されている。)
を含有する組成物が、上記技術的目標を達成することがわかった。
【0012】
成分Bの高すぎる含量には、燃焼特性および加熱撓み温度(ビカーB)が低下するという欠点がある(比較例2参照。)。
【0013】
成分A
【0014】
本発明に好適な成分Aの芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって製造できる(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えば、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964年およびDE−AS 1 495 626、DE−A 2 232 877、DE−A 2 703 376、DE−A 2 714 544、DE−A 3 000 610およびDE−A 3 832 396参照。芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えばDE−A 3 077 934参照。)。
【0015】
芳香族ポリカーボネートは、例えばジフェノールと、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物との、要すれば連鎖停止剤、例えばモノフェノールを使用し、要すれば三官能価以上の分枝剤、例えばトリフェノールもしくはテトラフェノールを使用する界面法による反応によって製造される。ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合法による製造も同様に可能である。
【0016】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に好適なジフェノールは、式(I)
【化1】

〔式中、
A は、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい別の芳香環が縮合していてもよいC〜C12−アリーレン、または式(II)もしくは(III)
【化2】

の基であり、
B は、それぞれC〜C12−アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素であり、
x は、それぞれ0、1または2であり、
p は、1または0であり、
およびR は、それぞれのXに対して個々に選択され、互いに独立して、水素またはC〜C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、
m は、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、但し少なくとも1つの原子Xにおいて、RおよびRは同時にアルキルである。〕
のジフェノールである。
【0017】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホンおよびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピル−ベンゼンおよびそれらの核臭素化および/または核塩素化誘導体である。
【0018】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびそれらの二−および四臭素化または塩素化誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0019】
ジフェノールは、単独で使用されても所望の混合物として使用されてもよい。ジフェノールは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって得られる。
【0020】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノール、または2,4,6−トリブロモフェノール、更に長鎖アルキルフェノール、例えば4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]−フェノール、DE−A 2 842 005に記載の4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノールまたはアルキル置換基中に全部で8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソ−オクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、一般的に、使用される特定のジフェノールのモルの合計に対して0.5mol%〜10mol%である。
【0021】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの平均重量平均分子量(M、例えばGPC、超遠心法または散乱光測定によって測定される。)は、10,000〜200,000g/mol、好ましくは15,000〜80,000g/mol、特に好ましくは24,000〜32,000g/molである。
【0022】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは既知の方法で、特に好ましくは、用いられるジフェノールの合計に対して0.05〜2.0mol%の3官能価以上の化合物、例えば3以上のフェノール性基を有する化合物、の混和によって分枝されていてもよい。
【0023】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方が好適である。ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン、用いられるジフェノールの総量に対して1〜25wt.%、好ましくは2.5〜25wt.%、を本発明の成分Aのコポリカーボネートの製造に用いてもよい。これらは既知であり(US 3 419 634)、文献で知られている方法によって製造されうる。ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの製造は、DE−A 3 334 782に記載されている。
【0024】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、ビスフェノールAと、ジフェノールのモルの合計に対して15mol%以下の好ましいか特に好ましいと言及されている別のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、とのコポリカーボネートである。
【0025】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造用の芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0026】
イソフタル酸の二酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物との、1:20〜20:1の比の混合物が特に好ましい。
【0027】
炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンを更にポリエステルカーボネートの製造における二官能性酸誘導体として併用する。
【0028】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する可能な連鎖停止剤は、既に言及したモノフェノールに加えて、更にそれらのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物であって、任意にC〜C22−アルキル基またはハロゲン原子によって置換されていてもよいもの、および脂肪族C〜C22−モノカルボン酸塩化物である。
【0029】
連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合はジフェノールのモルに対して、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合はジカルボン酸二塩化物のモルに対して、それぞれ、0.1〜10mol%である。
【0030】
芳香族ポリエステルカーボネートは、更に、混入芳香族ヒドロキシカルボン酸を含んでいてもよい。
【0031】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であっても既知の方法で分枝されていてもよい(この関連で、DE−A 2 940 024およびDE−A 3 007 934参照。)。
【0032】
使用されうる分枝剤は、例えば、三官能価以上のカルボン酸塩化物、例えば、トリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物もしくはピロメリット酸四塩化物、0.01〜1.0mol%(用いられるジカルボン酸二塩化物に対する。)、または三官能価以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタンまたは1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]−ベンゼン、用いられるジフェノールに対して0.01〜1.0mol%である。フェノール系分枝剤は、最初に、ジフェノールと共に導入され、酸塩化物分枝剤は、酸二塩化物と共に導入される。
【0033】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の含量は、所望の通り変更されうる。好ましくは、カーボネート基の含量は、エステル基とカーボネート基との合計に対して、100mol%以下、特に80mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル分とカーボネート分の両方が重縮合物中にブロックの形態で存在してもランダムに分散されていてもよい。
【0034】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32である(塩化メチレン溶液100mL中のポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5gの溶液において25℃において測定される。)。
【0035】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは単独で使用されても所望の混合物で使用されてもよい。
【0036】
成分B
【0037】
ゴム変性グラフトポリマーBは、B.1.1および/またはB.1.2のモノマーのランダム(コ)ポリマーと、B.1.1および/またはB.1.2のランダム(コ)ポリマーがグラフトしているゴムB.2と、を含み、Bの製造は、例えばUS−3 243 481、US−3 509 237、US−3 660 535、US−4 221 833およびUS−4 239 863に記載されているように既知の方法でバルクまたは溶液またはバルク−サスペンション重合法によって行われる。
【0038】
モノマーB.1.1の例は、スチレン、α−メチルスチレン、核がハロゲンまたはアルキルによって置換されたスチレン、例えばp−メチルスチレンおよびp−クロロスチレン、および(メタ)アクリル酸C〜C−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートである。モノマーB.1.2の例は、不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸C〜C−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレート、不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)(例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)、またはそれらの混合物である。
【0039】
好ましいモノマーB.1.1は、スチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1種類のモノマーから選択され、好ましいモノマーB.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートの少なくとも1種類のモノマーから選択される。
【0040】
特に好ましいモノマーは、B.1.1スチレンおよびB.1.2アクリロニトリルである。
【0041】
グラフトポリマーBに好適なグラフトベースB.2は、例えば、ジエンゴム、ジエン/ビニルブロックコポリマーゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび要すればジエンベースのゴム、およびアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムおよびそのようなゴムの混合物、およびシリコーン成分とアクリレート成分とが互いに化学的に(例えばグラフト化によって)結合しているシリコーン/アクリレートコンポジットゴムである。
【0042】
好ましいゴムB.2は、ジエンゴム(例えばブタジエン、イソプレンなどベースのもの)またはジエンゴムの混合物またはジエンゴム同士もしくはジエンゴムと別の共重合性モノマー(例えばB.1.1およびB.1.2のモノマー)との混合物のコポリマーであり、但し、成分B.2のガラス転移温度は10℃未満、好ましくは−10℃未満である。純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0043】
好ましくは、成分B.1と成分B.2とのグラフトポリマーは、成分B.1がシェル(更にケーシングとも云う)を形成し、成分B.2がコアを形成するコア−シェル構造を有する(例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH−Verlag,第A21巻,1992年,635頁および656頁参照。)。
【0044】
要すれば、成分B.2のゴム特性がそれによって損なわれない場合、成分Bは、更に少量、通常B.2に対して5wt.%未満、好ましくは2wt.%未満の、架橋作用を有するエチレン系不飽和モノマーを含んでいてもよい。そのような架橋作用を有するモノマーの例は、アルキレンジオールジ(メタ)−アクリレート、ポリエステルジ−(メタ)−アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、アリル(メタ)−アクリレート、ジアリルマレエートおよびジアリルフマレートである。
【0045】
ゴム変性グラフトポリマーBは、B.1.1のモノマー50〜99重量部、好ましくは60〜95重量部とB.1.2のモノマー1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部との混合物50〜99重量部、好ましくは65〜98重量部、特に好ましくは75〜95重量部の、ゴム成分B.2 1〜50重量部、好ましくは2〜35重量部、特に好ましくは5〜25重量部の存在下における、バルクまたは溶液またはバルク−サスペンション重合法によって行われるグラフト重合によって得られる。
【0046】
ゴム変性グラフトポリマーBの製造において、ゴム成分B.2がグラフト重合の前にモノマーB.1.1および/またはB.1.2の混合物中に溶解された形態で存在することが不可欠である。従って、ゴム成分B.2は、B.1.1および/またはB.1.2における溶解が不可能になるほど高度に架橋してもグラフト重合の開始時に分離粒子の形態になっていてもいけない。Bの製品性質に重要なB.2の粒子のモルホロジーおよび架橋の増加は、グラフト重合の過程ではじめて創り出される(この関連で、例えば、Ullmann,Encyclopaedie der technischen Chemie,第19巻,284頁以降,第4版,1980年を参照。)。
【0047】
B.1.1とB.1.2とのランダムコポリマーは、通常、ポリマーB中に、ゴムB.2上にまたはゴムB.2中に部分的にグラフトされて存在し、このグラフトコポリマーはポリマーB中で分離粒子を形成している。B.1.1とB.1.2とのコポリマー全体におけるB.1.1とB.1.2とのグラフトしているコポリマーの含量、すなわち、グラフト収量(=実際にグラフトするグラフトモノマー対全体で使用されるグラフトモノマーの重量比×100、%で示す。)は、この関係で、2〜40%、好ましくは3〜30%、特に好ましくは4〜20%であるべきである。
【0048】
生じるグラフトゴム粒子の平均粒径(電子顕微鏡写真においてカウントすることによって測定。)は、0.5〜5μm、好ましくは0.8〜2.5μmである。平均粒度d50は、その上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径である。平均粒度は、超遠心測定によって(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.und Z.Polymere 250(1972年),782〜1796)または電子顕微鏡写真においてカウントすることによって決定されうる。成分Bのグラフトポリマーは、好ましくはコア−シェル構造を有する。
【0049】
好ましい態様では、成分(B)のグラフトポリマーは、バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法において製造され、ゴム含量(グラフトポリマー中の成分B.2の含量に一致する。)が16〜25wt.%、好ましくは17〜19wt.%であり、B.1.2の少なくとも1種類のモノマー、グラフトシェルのモノマーに対して22〜27wt.%と、B.1.1の少なくとも1種類のモノマー、グラフトシェルのモノマーに対して73〜78wt.%と、を含むグラフトシェルを有するグラフトポリマーである。グラフトポリマーは、非常に好ましくは、コアとしてのブタジエン/スチレンブロックコポリマーゴムおよびスチレン(B.1.1)とアクリロニトリル(B.1.2)とのシェルを含む。このグラフトポリマーのゲル含量(アセトン中で測定。)は、20〜30wt.%、好ましくは22〜26wt.%である。グラフトポリマーのゲル含量は、好適な溶媒中で25℃において決定する(M.Hoffmann,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I und II,Georg Thieme−Verlag,シュトゥットガルト1977年)。
【0050】
エマルジョン重合法によって製造されるグラフトポリマーには、本発明のグラフトポリマーと比較して、加水分解抵抗が多くの用途に不十分なレベルであるという欠点がある。通常、エマルジョングラフトポリマーの高いゴム含量は、燃焼特性の低下ももたらしうる。
【0051】
本発明によるグラフトポリマーのゴム含量が16wt.%よりも低いと、機械的特性、特にノッチ付き衝撃強さ、および耐薬品性が多くの用途に不十分なレベルになるという欠点がある。
【0052】
成分C
【0053】
本発明との関連で、ホスフィン酸の塩(成分C)は、ホスフィン酸と所望の金属カチオンとの塩を意味すると理解されるべきである。金属カチオンが異なる塩の混合物を使用してもよい。金属カチオンは、周期表の第1主族の金属のカチオン(アルカリ金属、好ましくはLi、Na、K)、第2主族の金属のカチオン(アルカリ土類金属;好ましくはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、特に好ましくはCa2+)または第3主族の金属のカチオン(ホウ素族の元素;好ましくはAl3+)および/または第2、7もしくは8亜族の金属のカチオン(好ましくはZn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+)である。
【0054】
好ましくは、式(IV)
【化3】

〔式中、
m+ は、周期表の第1主族の金属カチオン(アルカリ金属;m=1)、第2主族の金属カチオン(アルカリ土類金属;m=2)または第3主族の金属カチオン(m=3)または第2、7もしくは8亜族の金属カチオン(mは1〜6の整数、好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは2または3である。)である。〕
のホスフィン酸の塩またはその混合物を使用する。
【0055】
特に好ましくは、式(IV)において、
m=1の場合、金属カチオンMは、Li、Na、Kであり、
m=2の場合、金属カチオンM2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+であり、
m=3の場合、金属カチオンM3+は、Al3+であり、
Ca2+(m=2)およびAl3+(m=3)が非常に好ましい。
【0056】
好ましい態様では、ホスフィン酸塩(成分C)の平均粒度d50は80μm未満、好ましくは60μm未満であり、d50は特に好ましくは10μm〜55μmである。平均粒度d50は、その上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径である。平均粒度d50が異なる塩の混合物を使用してもよい。
【0057】
ホスフィン酸塩の粒度d50へのこれらの要求は、それぞれ、ホスフィン酸塩の防炎性を増加させる技術的効果に関連する。
【0058】
ホスフィン酸塩は、単独で使用しても別のリン含有防炎加工剤との組み合わせで使用してもよい。本発明による組成物は、好ましくは、モノマーおよびオリゴマーリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンの群から選択されるリン含有防炎加工剤を含まない。これらの別のリン含有防炎加工剤、例えばモノマーおよびオリゴマーリン酸エステルおよびホスホン酸エステル、は、ホスフィン酸塩と比較して、成形組成物の加熱撓み温度を低下させるという欠点を有する。
【0059】
成分D
【0060】
成分Dは、1種類以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーD.1および/またはポリアルキレンテレフタレートD.2を含む。
【0061】
好適なビニル(コ)ポリマーD.1は、ビニル芳香族化合物、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)の群からの少なくとも1種類のモノマーのポリマーである。特に好適な(コ)ポリマーは、
D.1.1 ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびp−クロロスチレン、および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート、50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部と、
D.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)(例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)、1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部と
の(コ)ポリマーである。
【0062】
ビニル(コ)ポリマーD.1は、樹脂状であり、熱可塑性であり、ゴムを含まない。D.1.1スチレンとD.1.2アクリロニトリルとのコポリマーが特に好ましい。
【0063】
D.1の(コ)ポリマーは、既知であり、フリーラジカル重合、特にエマルジョン、サスペンション、溶液またはバルク重合によって製造されうる。上記(コ)ポリマーは、好ましくは平均分子量M(重量平均、光散乱または沈殿法によって測定される。)が15,000〜200,000である。
【0064】
成分D.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体、例えばジメチルエステルまたは無水物、と、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールとの反応生成物および反応生成物の混合物である。
【0065】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に対して少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%のテレフタル酸基と、ジオール成分に対して少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%のエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールの基と、を含む。
【0066】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、C原子を8〜14個有する別の芳香族もしくは脂環式ジカルボン酸、または炭素原子を4〜12個有する脂肪族ジカルボン酸の基、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸およびシクロヘキサン二酢酸の基を、20mol%以下、好ましくは10mol%以下含んでいてもよい。
【0067】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコールまたはブタン−1,4−ジオールの基に加えて、C原子を3〜12個有する別の脂肪族ジオールまたはC原子を6〜21個有する脂環式ジオールの基、例えばプロパン−1,3−ジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−エチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン(DE−A 2 407 674、2 407 776および2 715 932)の基を20mol%以下、好ましくは10mol%以下含んでいてもよい。
【0068】
ポリアルキレンテレフタレートを、例えばDE−A 1 900 270およびUS 3 692 744による比較的少量の3−もしくは4−価アルコールまたは3−もしくは4−塩基カルボン酸、の混和によって分枝してもよい。好ましい分枝剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0069】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えばジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールとのみから製造されたポリアルキレンテレフタレートおよびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0070】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、ポリエチレンテレフタレート1〜50wt.%、好ましくは1〜30wt.%およびポリブチレンテレフタレート50〜99wt.%、好ましくは70〜99wt.%を含む。
【0071】
一般的に好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートの極限粘度は0.4〜1.5dL/g、好ましくは0.5〜1.2dL/gである(フェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で25℃においてUbbelohde粘度計において測定。)。
【0072】
ポリアルキレンテレフタレートは既知の方法によって製造されうる(例えば、Kunststoff−Handbuch,第VIII巻,695頁以降,Carl−Hanser−Verlag,ミュンヘン1973年参照。)。
【0073】
成分E
【0074】
本発明の組成物は、更に、成分(E)の市販の添加剤、例えば防炎性相乗剤、成分(B)と異なるゴム変性グラフトポリマー、アンチドリップ剤(例えばフッ素化ポリオレフィン、シリコーンおよびアラミド繊維の物質クラスの化合物)、滑剤および離型剤(例えばペンタエリトリトールテトラステアレート)、成核剤、安定剤、帯電防止剤(例えば導電性カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブおよび有機帯電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホネートまたはポリアミド含有ポリマー)、酸、充填剤および強化物質(例えばグラスファイバーまたはカーボンファイバー、マイカ、カオリン、タルク、CaCOおよびガラスフレーク)および染料および顔料を含有していてもよい。
【0075】
成分Bと異なるグラフトポリマーは、フリーラジカル重合によって、例えばエマルジョン、サスペンションまたは溶液重合によって製造される。本発明による組成物は、好ましくは成分Bと異なるグラフトポリマーを含まない。
【0076】
成形組成物および成形物品の製造
【0077】
本発明による熱可塑性成形組成物は、特定の成分を既知の方法で混合し、この混合物を260℃〜300℃の温度で常套のユニット、例えば内部ニーダー、押出機および二軸押出機、において溶融配合し、溶融押出することによって製造される。
【0078】
個々の成分の混合は、既知の方法で連続的にまたは同時に、特に約20℃(室温)においてまたは高温において行われうる。
【0079】
同様に、本発明は、成形組成物の製造方法およびこの成形組成物の成形物品の製造への使用および成形品そのものも提供する。
【0080】
本発明による成形組成物はあらゆるタイプの成形物品の製造に使用されうる。上記成形物品は、射出成形法、押出成形法およびブロー成形法によって製造されうる。別の加工形態は、予め製造されたシートまたはフィルムからの熱成形による成形物品の製造である。
【0081】
そのような成形物品の例は、フィルム、プロファイル、あらゆるタイプのハウジング部品、例えば屋内電気器具、例えばテレビ、果汁圧搾機、コーヒーマシーンおよびミキサー用のハウジング部品、オフィス機器、例えばモニタ、フラットスクリーン、ノートパソコン、プリンタおよびコピー機用のハウジング部品、シート、チューブ、電気設備コンジット、ウィンドウ、ドアおよび建築部門用の別のプロファイル(例えば屋内仕上げ材および屋外用途)および電気部品および電子部品(例えばスイッチ、プラグおよびソケット)、および実用車用の、特に自動車分野用の、車体または屋内部品である。
【0082】
本発明による成形組成物は、更に、特に、例えば下記成形物品または成形品の製造にも使用できる:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび別の自動車用の屋内仕上げ部品、小型変圧器を含む電気設備のハウジング、情報の処理および伝達用の装置のハウジング、医療機器のハウジングおよびライニング、マッサージ器具およびそのハウジング、子供用乗物玩具、平壁要素(planar wall element)、安全装置およびテレビ用のハウジング、断熱輸送容器、衛生設備および浴室用の成形品、通気口用のカバー格子および園芸用品用ハウジング。
【0083】
下記実施例は、本発明を更に説明するのに役立つ。
【実施例】
【0084】
成分A
【0085】
重量平均分子量Mが27,500g/mol(GPCによって測定。)のビスフェノールAベースの直鎖ポリカーボネート。
【0086】
成分B
【0087】
アクリロニトリル24wt.%とスチレン76wt.%との混合物、ABSポリマーに対して82wt.%の、スチレン含量26wt.%のポリブタジエン/スチレンブロックコポリマーゴム、ABSポリマーに対して18wt.%の存在下におけるバルク重合によって製造されるコア−シェル構造を有するABSポリマー。このABSポリマーのゲル含量は24wt.%である(アセトン中で測定。)。
【0088】
成分C
【0089】
成分C−1(比較)
ビスフェノールAベースのオリゴホスフェート
【化4】

【0090】
成分C−2
平均粒度d50=50μmのホスフィン酸カルシウム
【0091】
成分E
【0092】
成分E−1: ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
成分E−2: ペンタエリトリトールテトラステアレート
成分E−3: IrganoxTMB900(製造業者:スイス国バーゼル在Ciba Specialty Chemicals Inc.)
【0093】
成形組成物の製造および試験
【0094】
表1に示される出発物質を、二軸押出機(ZSK−25)(Werner und Pfleiderer)において回転速度225rpmおよび処理量20kg/時間でマシーン温度260℃において配合し、グラニュール化する。完成グラニュールを射出成形マシーンにおいて処理して対応試験片を生じる(溶融温度240℃、金型温度80℃、メルトフロント速度240mm/秒)。
【0095】
DIN EN ISO 180/1A(ノッチ付きアイゾッド衝撃強さa)、DIN EN ISO 527(引張弾性率および破断点伸び)、DIN ISO 306(ビカー軟化温度、50Nの負荷および加熱速度120K/時間を用いる方法B)、ISO 11443(溶融粘度)、DIN EN ISO 1133(メルト・ボリューム・フロー・レートMVR)およびUL 94 V(寸法127×12.7×1.5mmのバーにおいて測定。)に準拠して同定を行う。
【0096】
加水分解試験:ISO 1133に準拠して95℃および100%相対大気湿度における貯蔵(1d=1日、2d=2日、5d=5日、6d=6日、7d=7日)後のグラニュールに240℃においてプランジャー負荷5kgを用いて測定されるMVRの変化は、このように製造される組成物の加水分解抵抗の尺度の役割を果たす。相当する貯蔵前のMVR値を表1で「出発試験片のMVR値」という。
【0097】
耐薬品性(ESC特性)では、室温におけるトルエン/イソプロパノール(60/40容積部)中での試験片の貯蔵後の、エッジファイバーの伸び率(edge fibre elongation)2.4%における破断までの時間を示す。
【0098】
本発明による組成物3および4は、比較例1および5と比較して、改良されたノッチ付き衝撃強さ、改良されたビカー加熱撓み温度、短いあと燃え時間、良好なESC特性、高い弾性率および良好な破断点伸び並びに高い加水分解抵抗を有する。この技術的効果は、比較例においてオリゴホスフェートが防炎加工剤として使用されているという違いに起因する。
【0099】
本発明による実施例3は、比較例2の組成物が高い含量の耐衝撃性改良剤Bと同じ量の防炎加工剤とを含有するという点で比較例2と異なる。この違いは、本発明による実施例3の組成物が、比較例2の組成物と比較して、特に改良された燃焼特性および高い加熱撓み温度(ビカーB)を有するという技術的効果を有する。
【0100】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、58〜99.6重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)、
(B) バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法で製造されるゴム変性グラフトポリマー、0.5〜12重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)、
(C) ホスフィン酸の塩、0.1〜30重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)
を含有する組成物。
【請求項2】
成分(B)のゴム変性グラフトポリマーを3〜8重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ホスフィン酸の塩を7〜12重量部(いずれの場合も、成分A+B+Cの重量部の合計に対する。)含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(D)としてゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレートを0〜20重量部(成分A+B+Cの重量部の合計100に対する。)含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレートを含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分(E)として添加剤を0〜50重量部(いずれの場合も成分A+B+Cの重量部の合計100に対する。)含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法で製造され、ゴム含量(グラフトポリマー中の成分B.2の含量に相当する。)が16〜25wt.%であり、B.1.2の少なくとも1種類のモノマー、グラフトシェルのモノマーに対して22〜27wt.%と、B.1.1の少なくとも1種類のモノマー、グラフトシェルのモノマーに対して73〜78wt.%と、を含むグラフトシェルを有する成分(B)のグラフトポリマーを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ゴム含量が17〜19wt.%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該グラフトポリマーがコアとしてのブタジエン/スチレンブロックコポリマーゴムおよびスチレン(B.1.1)とアクリロニトリル(B.1.2)とのシェルを含む、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
成分(C)として、金属カチオンがLi、Na、K、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Al3+、Zn2+、Mn2+、Fe2+および/またはFe3+であるホスフィン酸の塩またはその混合物を含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
該塩またはその混合物として、式(IV)
【化1】

〔式中、
m+ は、周期表の第1主族(アルカリ金属;m=1)、第2主族(アルカリ土類金属;m=2)または第3主族(m=3)または第2、7もしくは8亜族(mは1〜6の整数である。)の金属カチオンである。〕
のホスフィン酸を含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
m+がCa2+であり、mが2であるか、またはMm+がAl3+であり、mが3である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
該ホスフィン酸塩(成分C)の平均粒度d50が80μm未満である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
該ホスフィン酸塩(成分C)の平均粒度d50が10〜55μmである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
該組成物が、モノマーおよびオリゴマーリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンの群から選択されるリン含有防炎加工剤を含まない、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
成分(E)の市販の添加剤が、防炎相乗剤、成分(B)と異なるゴム変性グラフトポリマー、アンチドリップ剤、滑剤および離型剤、成核剤、安定剤、帯電防止剤、酸、充填剤および強化剤および染料および顔料である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1〜16に記載の組成物の成形物品の製造への使用。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物を含有する成形物品。
【請求項19】
該成形物品が乗用車、鉄道車両、航空機または水中の乗物の一部であることを特徴とする、請求項18に記載の成形物品。

【公表番号】特表2011−506694(P2011−506694A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538403(P2010−538403)
【出願日】平成20年12月6日(2008.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010369
【国際公開番号】WO2009/080194
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】