説明

防眩フィルム、偏光板、及び、液晶表示素子

【課題】高硬度かつ低カールで、視認性に優れた防眩性フィルムを提供する。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂基材の少なくとも片面に、第1の硬化性組成物を硬化して得られる膜厚1〜20μmの第1の硬化膜、及び、第2の硬化性組成物を硬化して得られる膜厚1〜20μmの第2の硬化膜をこの順で有し、前記第1の硬化性組成物は、(B1)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び(A1)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した粒径5〜200nmの無機酸化物粒子を含有し、前記第2の硬化性組成物は、(B2)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び、(C)数平均粒径が0.3〜20μmである粒子を含有し、第1の硬化膜及び第2の硬化膜の合計が2〜30μmであることを特徴とする防眩フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造を有する防眩フィルム、該防眩フィルムを備えた偏光板、及び、該偏光板を用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示装置では、その表面に光拡散層を設けることが一般的である。かかる光拡散層は、表面反射光を拡散するアンチグレア(防眩)層として機能させて、蛍光灯や太陽光等の照明光などの外部環境が画面上に映り込むゴースト現象で視認性が阻害されることの防止などを目的とする。その光拡散層としては、サンドブラストや透明粒子の混入などによる粗面化方式にて表面に微細凹凸構造を付与したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、液晶表示装置の普及に伴い、自動車の室内等の高温高湿になる場所で使用されることが多くなり、耐熱性に優れた液晶表示装置が要求されている。しかし、従来の液晶表示装置は、偏光素子の保護フィルムに透湿性の高いトリアセチルセルロースフィルムを使用しており、耐熱性、耐湿性ともに十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−265004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、高耐熱性で低カールの防眩性フィルム、該防眩性フィルムを使用した偏光板、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究した結果、特定の層構成とすることで、上記目的とする諸特性を満足し得る防眩性フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記のフィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供する。
[1]環状オレフィン系樹脂基材の少なくとも片面に、第1の硬化性組成物を硬化して得られる膜厚1〜20μmの第1の硬化膜、及び、第2の硬化性組成物を硬化して得られる膜厚0.5〜20μmの第2の硬化膜をこの順で有し、前記第1の硬化性組成物は、(A1)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子、及び、(B1)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有し、前記第2の硬化性組成物は、(B2)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び、(C)数平均粒径が0.3〜20μmである粒子を含有し、第1の硬化膜及び第2の硬化膜の合計が2〜30μmであることを特徴とする防眩フィルム。
[2]前記第2の硬化性組成物が、さらに(A2)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した粒径5〜200nmの無機酸化物粒子を含有する1に記載の防眩フィルム。
[3]前記(A1)成分の無機酸化物粒子がシリカ粒子である、1に記載の防眩フィルム。
[4]前記(A2)成分の無機酸化物粒子がシリカ粒子である、2に記載の防眩フィルム。
[5]前記(C)成分がアクリル樹脂粒子である、1〜3のいずれかに記載の防眩フィルム。
[6]前記(C)成分が第2の硬化膜の膜厚の0.3〜2倍の数平均粒径を有する、1〜5のいずれかに記載の防眩フィルム。
[7]前記第1の硬化膜及び前記第2の硬化膜の合計膜厚が、3〜20μmである、1〜6のいずれかに記載の防眩フィルム。
[8]1〜7のいずれかに記載の防眩フィルムを備えた偏光板。
[9]8に記載の偏光板を備えた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い耐熱性、耐擦傷性と高い硬度を有する防眩性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示した模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の防眩性フィルムについて以下説明する。
【0011】
<防眩フィルム>
本発明の防眩性フィルムは、透明基材及び、該透明基材の少なくとも片面に、第1及び第2の硬化膜を積層された構造を有する。
本発明の防眩性フィルムについて以下説明する。
【0012】
<透明基材>
本発明で使用される透明基材は、環化オレフィン系樹脂のフィルムが使用される。環化オレフィン系樹脂は、透明で、高い耐熱性、低い透湿度を備えているため、本発明の防眩性フィルムを使用して液晶表示装置を製造した場合に高い耐熱性と耐久性を付与することができる。ここで、透明とは、実際に使用するフィルムにおいて、可視領域(波長400〜800nm)で80%以上の透過率であれば実用上問題なく使用することができ、90%以上の透過率を有することが好ましい。また、耐熱性は、硬化性組成物の溶剤を揮発させるための加熱温度より高いTgを有することが好ましい。具体的には100℃以上、好ましくは120℃以上のTgを有する環化オレフィン系樹脂をフィルム化して使用することが好ましい。
【0013】
このような環状オレフィン系樹脂は、以下の(1)〜(6)のいずれかであることが好ましく、以下の(2)、(3)、(5)、(6)のいずれかであることがさらに好ましい。
【0014】
【化1】

[上記式(I)中、aおよびbは独立に0または1を示し、cおよびdは独立に0〜2の整数を示し、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有してもよい置換または非置換の炭素数1〜40の炭化水素基;または極性基を示し、R10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R10またはR11と、R12またはR13とは相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合した多環構造でもよい。)]
(1)上記一般式(I)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体
(2)上記一般式(I)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体を水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体または開環(共)重合水添体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(4)上記一般式(I)で表される環状オレフィン系単量体の付加(共)重合体
(5)上記一般式(I)で表される環状オレフィン系単量体とエチレンまたは1置換エチレンとの付加共重合体
(6)上記一般式(I)で表される環状オレフィン系単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体の付加型(共)重合体またはその水添体
【0015】
透明基材の製造には、公知の方法が使用できる。具体的には、前記の樹脂を溶剤に溶解させPET等のフィルム上に流延させ加熱乾燥する方法や、樹脂を加熱しスリットから押し出すことでフィルム状の成型させる方法が挙げられる。また、前記の方法で成型した後、更に加熱しながら延伸させたフィルムであってもよい。基材として使用されるフィルムの厚さは、操作性等を考慮して適宜調節することができ、例えば、40〜150μm厚のものを使用することができる。
【0016】
透明基材は、後述する第1の硬化膜を形成する前に、各種表面処理を施すことができる。表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、アルカリ処理、コーティング処理などを挙げることができるが、これらのうち、コロナ放電処理を行うことが好ましい。
【0017】
<第1の硬化膜>
第1の硬化膜は、前記透明基材上に直接又は他の層を介して形成される膜厚1〜20μmの硬化膜層である。第1の硬化膜は、(A1)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子、及び(B1)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する第1の硬化性組成物を使用して形成することができる。
本発明の防眩性フィルムは第1の硬化膜は、フィルムの硬度を高める効果を有する。
【0018】
<第2の硬化膜>
第2の硬化膜は、前記第1の硬化膜上に形成される膜厚0.5〜20μmの硬化膜層である。第2の硬化膜は、(B2)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び(C)数平均粒径が0.3〜20μmかつ第2の硬化膜の膜厚の0.3〜2倍である粒子を含有する第2の硬化性組成物を硬化して形成することができる。なお、成分(C)が硬化膜から突出する場合における第2の硬化膜の膜厚は、突出した2つの成分(C)の中心点での膜厚を指す。
本発明の防眩性フィルムは第2の硬化膜は、フィルムに防眩性を付与する効果を有する。
【0019】
基材上に形成される硬化膜を複数層にすることで、収縮応力を緩和し、防眩性フィルムのカールを低減することが可能となる。第1の硬化膜及び第2の硬化膜のそれぞれの厚さは、防眩性フィルムの要求性能により適宜決定できる。例えば、第1の硬化膜の膜厚は1〜20μmであり、好ましくは、5〜15μmである。第2の硬化膜の膜厚は、0.5〜20μmであり、好ましくは0.7〜12μm、より好ましくは0.9〜10μmである。第1の硬化膜の膜厚を上記範囲にすることにより、高硬度かつ低カールなフィルムを得ることができる。第2の硬化膜の膜厚を上記範囲にすることにより、高精細な防眩フィルムを得ることができる。第1の硬化膜と第2の硬化膜の膜厚の合計は、3〜30μmである。合計膜厚が3μmより薄いと、フィルム表面の硬度が不足するおそれがあり、30μmを超えると硬化膜にひび割れが生じやすくなり、フィルムを扱いづらくなる。第1の硬化膜と第2の硬化膜の膜厚の合計は、要求される表面硬度に応じて適宜変更することができる。
【0020】
<第1の硬化性組成物>
本発明で使用される第1の硬化性組成物(以下、第1の組成物ともいう)は、下記の成分(A1)、(B1)及び(D1)〜(F1)を含み得る。これらの成分のうち、(A1)及び(B1)は必須成分であり、(D1)〜(F1)は必要に応じて添加することのできる任意成分である。
(A1)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子
(B1)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(D1)ラジカル重合開始剤
(E1)有機溶剤
(F1)その他の添加剤
以下これらの成分について説明する。
【0021】
(A1)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子
本発明で用いられるエチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子(以下、「反応性粒子」という。)配合することにより、本発明のフィルムの硬度を高め、フィルムのカールを抑制することができる。
【0022】
(1)無機酸化物粒子
本発明の硬化膜に含有される無機酸化物粒子は、得られる樹脂組成物の硬化被膜の無着色性の観点から、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子である。これらの酸化物としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン及び酸化セリウムを挙げることができる。中でも、高硬度性の観点から、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア及び酸化アンチモンが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。さらには、このような元素の酸化物粒子は、粉体状又は溶剤分散ゾルであることが好ましい。溶剤分散ゾルである場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
【0023】
本発明の第1及び第2の硬化膜は、数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子を含有する。無機酸化物粒子の数平均粒径が200nmを越えると、硬化物としたときのカールが大きくなったり、精細度が低下したりする可能性がある。一方、数平均粒径が5nmより小さいと硬度が劣る場合がある。なお、本発明において無機酸化物粒子の数平均粒径は透過型電子顕微鏡で測定した50個の粒径の平均値をいう。
【0024】
ケイ素酸化物粒子、例えばシリカ粒子として市販されている商品としては、例えばコロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製 商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製 商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製 商品名:E220A、E220、富士シリシア(株)製 商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製 商品名:SGフレ−ク等を挙げることができる。
【0025】
また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:アルミナゾル−100、−200、−520、アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:セルナックス、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末及び溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製 商品名:ナノテック、アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株) 製 商品名:SN−100D、ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品、酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製 商品名:ニードラール等を挙げることができる。酸化物粒子の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状であり、好ましくは球状である。酸化物粒子の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法による)は、好ましくは10〜1000m/gであり、さらに好ましくは100〜500m/gである。これら酸化物粒子の使用形態は乾燥状態の粉末、又は水もしくは有機溶剤で分散した状態で用いることができる。例えば、上記の酸化物の溶剤分散ゾルとして当業界に知られている微粒子状の酸化物粒子の分散液を直接用いることができる。特に、硬化物に優れた透明性を要求する用途においては酸化物の溶剤分散ゾルの利用が好ましい。
【0026】
(2)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤
無機酸化物粒子を、エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で表面処理することで、後述の(B)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物との相溶性が向上し、かつ硬化時に他の硬化性組成物と共架橋することが可能となり、硬化膜の耐擦傷性を改良することが可能となる。エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤としては、エチレン性不飽和基及び加水分解性シリル基を有する化合物であれば特に限定されない。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。尚、加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノール(Si−OH)基を生成するものであって、例えば、ケイ素に1以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、等のアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子が結合したものを指す。この様なエチレン性不飽和基含有シランカップリング剤としては、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の市販品を使用することもできるし、例えば、国際公開公報WO97/12942号公報に記載された化合物を用いることもできる。
【0027】
(A1)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、本発明の組成物中の有機溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、通常30〜80質量%である。この理由は、添加量が30質量%未満となると、得られたフィルムのカールが大きくなる場合があるためであり、一方、添加量が80質量%を超えると、硬化物の硬度が低下するおそれがある。
また、このような理由から、(A1)成分の添加量を40〜80質量%とするのがより好ましい。
【0028】
(B1)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、多官能(メタ)アクリレートともいう)は、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の硬度及び耐擦傷性を高めるために用いられる。
【0029】
(メタ)アクリロイル基が3個以上の化合物としては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0030】
これらの多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、DPHA−40H、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。上記の化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
(B1)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、本発明の第1の組成物中の有機溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、通常15〜70質量%である。この理由は、添加量が20質量%未満となると、硬化性組成物を硬化させてなる硬化物の耐擦傷性が低下する場合があるためであり、一方、添加量が70質量%を超えると、硬化性組成物の硬化物の硬度が低下するおそれがある。
また、このような理由から、(B1)成分の添加量を20〜60質量%とするのがより好ましい。
【0032】
(D1)ラジカル重合開始剤
本発明の第1の組成物および第2のには、(D1)ラジカル重合開始剤を配合することが好ましい。
このような(D1)ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物(熱重合開始剤)、及び放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物(光重合開始剤)等の、汎用されているものを挙げることができ、短時間で硬化できることから光重合開始剤が好ましい。
【0033】
光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等を挙げることができる。
【0034】
光重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、BASF社製ルシリン TPO、8893UCB社製ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製エザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B、日本化薬工業(株)KAYACURE BMS等を挙げることができる。
【0035】
熱重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0036】
本発明において必要に応じて用いられる(D1)ラジカル重合開始剤の含有量は、組成物中の溶剤を除く成分の合計量を100質量%としたときに、0.01〜20質量%配合することが好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。0.01質量%未満であると、添加した効果が十分に発現せず、20質量%を超えると、硬化物としたときに硬度が劣る可能性がある。
【0037】
(E1)有機溶剤
本発明の組成物は、塗膜の厚さを調節したり、塗工性を向上させるために有機溶剤を含有することができる。例えば、本発明の目的で使用する場合の粘度(25℃)は、通常0.1〜50,000mPa・秒であり、好ましくは、0.5〜10,000mPa・秒である。
【0038】
有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族類等から選択される一種又は二種以上の組み合わせが挙げられる。これらの内、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましく、より好ましくはメチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、t−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルの一種単独又は二種以上の組み合わせである。
【0039】
(E1)有機溶剤の合計の添加量については特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対し、50〜100,000質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が50質量部未満となると、硬化性組成物の粘度調整が困難となる場合があるためであり、一方、添加量が100,000質量部を超えると、硬化性組成物の保存安定性が低下したり、あるいは固形分量が低下しすぎて塗布の均一性が低下する場合があるためである。
【0040】
(F1)添加剤
本発明の組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、スリップ剤等の添加剤をさらに含有させることも好ましい。
【0041】
基材上への、第1の組成物及び第2の組成物のコーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコ−ト、フローコ−ト、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。
【0042】
<第2の硬化性組成物>
本発明で使用される第2の硬化性組成物(以下、第2の組成物ともいう)は、下記の成分(A2)〜(F2)を含み得る。これらの成分のうち、(B2)および(C)は必須成分であり、(A2)及び(D2)〜(F2)は必要に応じて添加することのできる任意成分である。
(A2)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子
(B2)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(C)数平均粒径が0.3〜20μmである粒子
(D2)ラジカル重合開始剤
(E2)有機溶剤
(F2)その他の添加剤
以下これらの成分について説明する。
【0043】
(B2)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
第2の組成物に使用される(B2)成分は、前述(B1)と同じものを使用できるため詳細な説明は省略する。
【0044】
(B2)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、本発明の第2の組成物中の有機溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、通常15〜95質量%であり、20〜90質量%とするのがより好ましい。
【0045】
(C)数平均粒径が0.3〜20μmの粒子
本発明で使用される第2の組成物には、第2の硬化膜に防眩性を付与する目的で、数平均粒径が0.3〜20μmの粒子(以下、「防眩性粒子」ともいう)が配合される。防眩性粒子の粒径は、動的光散乱法で測定した数平均粒径をいう。
【0046】
防眩性粒子としては、上記の粒径を有する透明な粒子であれば特に制限無く使用することができるが、例えば、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アクリル樹脂粒子、アクリル−スチレン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が挙げられる。
【0047】
第2の組成物における(C)成分として使用される粒子の種類は、防眩性フィルムの要求特性に応じて適宜決めることができる。また、(C)成分の粒径は、第2の硬化膜の膜厚の0.3〜2倍の数平均粒径の粒子を使用することができる。(C)成分の数平均粒径が、第2の硬化膜の膜厚の0.3〜1倍の場合、(C)成分を構成する材料の屈折率が、(C)成分以外の成分から得られる硬化膜の屈折率と0.03以上異なるものを選択することが好ましい。なお、ここで「屈折率」は25℃における589nmの屈折率を表す。C)成分の数平均粒径が、第2の硬化膜の膜厚の1〜2倍の場合、第2の硬化膜の表面から防眩性粒子が突出するため、防眩性粒子の材料は任意に設定することができる。
【0048】
(C)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、本発明の第2の組成物中の有機溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、0.3〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜15質量%とするのがより好ましい。
【0049】
(A2)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子
第2の組成物に任意で使用される(A2)成分は、前述(A1)と同じものを使用できるため詳細な説明は省略する。
【0050】
(A2)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、本発明の第2の組成物中の有機溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、30〜80質量%であることが好ましく、35〜80質量%とするのがより好ましい。
【0051】
その他、任意で添加できる(D2)、(E2)及び(F2)は、それぞれ(D1)、(E1)及び(F1)と同じものを使用できるため詳細な説明は省略する。
【0052】
<硬化膜の形成>
本発明の組成物は、熱及び/又は放射線(光)によって硬化させることができる。熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0053】
本発明の硬化物は、前記硬化性組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは、20〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、熱及び/又は放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは、0.1〜2J/cm2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加速電圧は10〜300kV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではない。「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」を意味する。また、本発明において「固形分」とは、組成物から溶剤等の揮発成分を除いた部分を意味し、具体的には、組成物を所定温度のホットプレート上で1時間乾燥して得られる残渣物(不揮発成分)を意味する。
製造例1
シランカップリング剤(Ab)の合成
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン221部、ジブチル錫ジラウレート1部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート222部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)549部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで重合性不飽和基を含む有機化合物(Ab)を得た。生成物中の残存イソシアネート量をFT−IRで分析したところ0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。生成物の赤外吸収スペクトルは原料中のメルカプト基に特徴的な2550cm−1の吸収ピーク及び原料イソシアネート化合物に特徴的な2260cm−1の吸収ピークが消失し、新たにウレタン結合及びS(C=O)NH−基に特徴的な1660cm−1のピーク及びアクリロキシ基に特徴的な1720cm−1のピークが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロキシ基と−S(C=O)NH−、ウレタン結合を共に有するアクリロキシ基修飾アルコキシシランが生成していることを示した。以上により、前記式(14)及び(15)で示される有機化合物(Ab)が合計で773部とペンタエリスリトールテトラアクリレート220部が得られた。
【0055】
製造例2
反応性粒子1の製造
製造例1で製造した組成物8.84部(シランカップリング剤(Ab)を6.88部含む)、シリカ粒子分散液(シリカ濃度31.6%、アデカ製AT―20Qを限外濾過でMEKに溶剤置換したもの)89.9部、イオン交換水0.12部、0.1N硫酸0.03部、及びp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.01部の混合液を、60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.38部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌し、反応性粒子の分散液を得た。この分散液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、36.4%であった。
【0056】
製造例3
反応性粒子2の製造
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(SZ6030;東レダウコーニング社製)0.73部、シリカ粒子分散液(シリカ濃度30%、アデカ製AT―20QBを限外濾過でMEKに溶剤置換したもの)97.7部、イオン交換水0.12部、0.1N硫酸0.03部、及びp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.01部の混合液を、60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.38部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌し、反応性粒子の分散液を得た。この分散液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、30.0%であった。
【0057】
硬化性組成物1の調製
上記製造例3で製造した反応性粒子分散液2を135.7部(反応性粒子として40.8部)、多官能ウレタンアクリレート(日本化薬社製、DPHA−40H)33.9部、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM315)22.5部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.4部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irgacure 184)、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド(日本化薬社製、KAYACURE BMS)1.4部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)114部をフラスコに入れ室温で30分間攪拌し均一な308.8部の混合液を得た。その後エバポレーターを用いて減圧度80mmHgで溶剤の留去を行い、全量が249.8部になるまで濃縮し目的の組成物1を得た。
【0058】
硬化性組成物2の調製
上記製造例2で製造した反応性シリカ粒子分散液1を214.6部(反応性シリカ粒子として78.1部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、DPHA)20.1部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.8部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irgacure 184)、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド(日本化薬社製、KAYACURE BMS)1.4部、メチルエチルケトン(MEK)13部をフラスコに入れ室温で30分間攪拌し、249.5部の組成物2を得た。
【0059】
硬化性組成物3の調製
ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD PET−30)27.8部、トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコート#295)18.6部、多官能アクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコート#802)46.4部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.2部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irgacure 184)、メチルエチルケトン(MEK)150部をフラスコに入れ室温で30分間攪拌し、250部の組成物3を得た。
【0060】
硬化性組成物4〜6の調製
上記、組成物1〜3の固形分100部に対して、それぞれ1部のアクリル粒子(綜研化学社製 MX−180 平均粒径1.9μm)を加え、室温にて30分攪拌することにより、組成物4〜6を得た。
表1に組成物1〜6の固形分組成をそれぞれ示す。
示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1中に記載の市販品等の内容を以下に示す。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;日本化薬工業(株)製
アロニックス M315:イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート:東亞合成(株)製
DPHA−40H:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの反応物;日本化薬工業(株)製
ビスコート#802:多官能アクリレート;大阪有機化学工業社製
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート;日本化薬工業(株)製
ビスコート#295:トリメチロールプロパントリアクリレート;大阪有機化学工業社製
Irgacure184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、
KAYACURE BMS:4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド;日本化薬工業(株)製
MX180TA:平均粒径 1.9μmのアクリル粒子;綜研化学社製
【0063】
積層体1の作製(実施例1)
以下に積層体1の作製手順を示す。
80μmの厚みの環状オレフィン系重合体フィルム(JSR社製、ARTON R5000)にコロナ表面処理装置(春日電機社製、AGF−012)を用いて320W・分/mの放電量で処理を行った。処理を行ったフィルム上に、弟一層として硬化性組成物1を30ミルのバーコーターを用いて塗布し、これを80℃のオーブンに3分間投入し、乾燥させ、高圧水銀灯にて400mJ/cm紫外線照射することで、塗膜を硬化させた。得られた弟一層の膜厚は12μmであった。続いて、このハードコート付フィルム上に第二層として、硬化性組成物4を3ミルのバーコーターを用いてオーバーコートし、これを80℃のオーブンに3分間投入し、乾燥させ、高圧水銀灯にて400mJ/cm紫外線照射することで、積層体1を作製した。第二層の膜厚は1.2μmであった。
【0064】
積層体2〜8の作製(実施例2〜4、比較例1〜4)
表2に記載の硬化性組成物を用いたこと以外は積層体1と同様にして、積層体2〜6をそれぞれ作製した。各積層体の弟一層、第二層の膜厚を表2に示す。

積層体1〜8の各種物性は、次のようにして測定あるいは評価した。評価結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
(1)鉛筆硬度
測定荷重は500gで、測定方法はJIS K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を評価した。
(2)密着性
基材上に製膜した硬化膜の密着性を、JIS K5600−5−6における碁盤目セロハンテープ剥離試験に準拠し、1mm角、計100個の碁盤目における残膜率で以下の基準で密着性を評価した。
○ :残膜率が100〜90%
△ :残膜率が90未満〜50%
× :残膜率が50未満〜0%
【0067】
(3)防眩性
フィルムに蛍光灯(全光束3520lm)を映し、蛍光灯の輪郭のボケの程度を以下の基準で目視により評価した。
○ :蛍光灯の輪郭がまったくわからない。
△ :蛍光灯の輪郭が僅かにわかる。
× :蛍光灯の輪郭がはっきりわかる。
(4)ヘイズ
須賀製作所(株)製 カラーヘイズメーターを用い、ASTM D1003に従いヘイズ値(%)を測定し、基材フィルム込みの値として評価した。
【0068】
(5)カール性
基材上に製膜されたフィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、カール値を4隅の平均値で算出し、以下の評価基準で評価した。
○ :カール値が0.5cm未満
△ :カール値が0.5cm以上1cm未満
× :カール値が1cm以上
【0069】
製造例4
TACフィルムの製造
セルロースアセテート(酸化度60.8%)100重量部、トリフェニルホスフェート12重量部、塩化メチレン300重量部、メタノール50重量部を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解した。次にこの溶液を濾過し、冷却して30℃に保ち、カラス基板に貼り付けたPETフィルム上に15ミルのアプリケーターで塗布した。この状態で5分間静置した後、更に100℃のオーブンで1時間乾燥を終了させ、膜厚80μmのTACフィルムを得た。
【0070】
積層体9の製造
製造例4で製造したTACフィルムを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体9を作製した。
【0071】
製造例5
PVAフィルムの製造
ホウ酸20重量部、ヨウ素0.2重量部、ヨウ化カリウム0.5重量部を水480重量部に溶解させて染色液を調製した。この染色液にPVAフィルム(ビニロンフィルム#40、アイセロ社製)を、30秒浸漬した後、フィルムを一方向に2倍に延伸し、乾燥させて、膜厚30μmのPVAフィルムを作製した。
製造例6
紫外線硬化型接着剤の製造
3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル社製、セロキサイド2021P)39.4部、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)/(アジピン酸)](クラレ社製、クラレポリオールP−1010)11.6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(サンアプロ社製、CPI−110A)2.5部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、SR−NPG)38.4部及び、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(三洋化成工業社製、サンニックスGP−400)8.1部を容器に入れ、4時間攪拌し均一に混合した。その後24時間静置し紫外線硬化型接着剤とした。
【0072】
実施例5
紫外線硬化型接着剤を、ワイヤーバーコーター#3を用いて環状オレフィン系重合体フィルム(JSR社製、ARTON R5000)上に塗工し、その上に製造例5のPVAフィルムを気泡等の欠陥が入らないように貼合した。次に積層体1上に、紫外線硬化型接着剤を、ワイヤーバーコーター#3を用いて塗工し、上記貼合したフィルムのPVA上に、気泡等の欠陥が入らないように貼合した。ガラス板上に、積層体1が上になるように四方をテープで固定し、メタルハライドランプ(照度220mW/cm、照射光量1,000mJ/cm)で積層体1の側から光照射し、偏光板1を作製した。
【0073】
比較例5
実施例5において、環状オレフィン系重合体フィルムに替えて製造例4のTACフィルムを、積層体1に替えて積層体9を使用した以外は同様の操作を行い、偏光板2を作製した。
【0074】
(6)湿熱耐性試験
偏光板1、2を、スーパーダンベルカッター(SSK−12862−06、ダンベル社製)および、SD型レバー式試料裁断機(SDL−200、ダンベル社製)を用い、50mm×80mmの大きさに打ち抜いた。打ち抜いた偏光板に耐熱粘着材で、7mm厚の無アルカリガラスに固定し、85℃、85%RH(相対湿度)の環境に250時間さらした。その結果、偏光板1は湿熱耐性試験後も変化が確認できなかったが、偏光板2は偏光子の色が抜けて黄色く変化していた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の防眩性フィルムは、優れた耐熱性を有しており、特に高温となる場所で使用される液晶表示装置用に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・防眩性フィルム
10・・・透明基材
21・・・第1の硬化膜
22・・・第2の硬化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂基材の少なくとも片面に、第1の硬化性組成物を硬化して得られる膜厚1〜20μmの第1の硬化膜、及び、第2の硬化性組成物を硬化して得られる膜厚0.5〜20μmの第2の硬化膜をこの順で有し、
前記第1の硬化性組成物は、(A1)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した数平均粒径5〜200nmの無機酸化物粒子、及び、(B1)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有し、
前記第2の硬化性組成物は、(B2)分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び、(C)数平均粒径が0.3〜20μmの粒子を含有し、
第1の硬化膜及び第2の硬化膜の合計が2〜30μmであることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項2】
前記第2の硬化性組成物が、さらに(A2)エチレン性不飽和基含有シランカップリング剤で変性した粒径5〜200nmの無機酸化物粒子を含有する請求項1に記載の防眩フィルム。
【請求項3】
前記(A1)成分の無機酸化物粒子がシリカ粒子である、請求項1に記載の防眩フィルム。
【請求項4】
前記(A2)成分の無機酸化物粒子がシリカ粒子である、請求項2に記載の防眩フィルム。
【請求項5】
前記(C)成分がアクリル樹脂粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項6】
前記(C)成分が第2の硬化膜の膜厚の0.3〜2倍の数平均粒径を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項7】
前記第1の硬化膜及び前記第2の硬化膜の合計膜厚が、3〜20μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の防眩フィルムを備えた偏光板。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光板を備えた液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−276870(P2010−276870A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129510(P2009−129510)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】