説明

防眩層形成用塗料、防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置

【課題】 従来防眩層の表面凹凸形状を作成するために必須と考えられていた微粒子を添加せずとも、防眩層の表面凹凸形状を作成することができ、防眩性とギラツキ防止効果を具備した上で、高コントラストを達成することができる防眩層形成用塗料、防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置を提供する。
【解決手段】 電離放射線硬化型樹脂、層状有機粘土、該層状有機粘土の良溶媒および該層状有機粘土の貧溶媒とを含有することを特徴とする防眩層形成用塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩層形成用塗料および液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等のディスプレイ表面に設ける防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDやPDP等のディスプレイ表面は、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、これらのディスプレイ表面には、画像の視認性を向上させるために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた防眩フィルムなどの、機能性フィルムが最表面に設けられている。
【0003】
これら機能性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)やトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という。)等の透光性基体上に、微細凹凸構造を形成させた防眩層を一層設けたものや、光拡散層上に低屈折率層を積層したものが、一般に製造販売されており、層構成の組み合わせにより所望の機能を提供する機能性フィルムの開発が進められている。
【0004】
ディスプレイの最表面に防眩フィルムを用いた場合には、明るい部屋での使用の際に、光の拡散により黒表示の画像が白っぽくなり、コントラストが低下する問題があった。このため、防眩性を低減させてでも、高コントラストを達成できる防眩フィルムが求められている(高コントラストAG)。防眩フィルムのコントラストを向上させる方法としては、例えば、表面の凹凸形状を最適化させることが挙げられる。
防眩層表面に凹凸形状を形成させる方法としては、上記の透光性基体上に、微粒子を添加した防眩層形成用塗料を塗布した後、当該防眩層形成材料に紫外線を照射して防眩層を形成させるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−196117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、微粒子を含有する防眩層を使用する場合、防眩性とギラツキ防止効果を奏する。しかしながら、防眩層に含有する微粒子の界面と、該微粒子の形状に基づいた防眩層の表面凹凸部分において光の散乱が生じることから、高コントラストを達成することが難しい問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、従来防眩層の表面凹凸形状を作成するために必須と考えられていた微粒子を添加せずとも、防眩層の表面凹凸形状を作成することができ、防眩性とギラツキ防止効果を具備した上で、高コントラストを達成することができる防眩層形成用塗料、防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の技術的構成により上記課題を解決できたものである。
【0009】
(1)電離放射線硬化型樹脂、層状有機粘土、該層状有機粘土の良溶媒および該層状有機粘土の貧溶媒とを含有することを特徴とする防眩層形成用塗料。
(2)前記電離放射線硬化型樹脂と、前記層状有機粘土が質量比で、99.9:0.1〜90:10の範囲にあることを特徴とする前記(1)に記載の防眩層形成用塗料。
(3)固形分と、良溶媒と貧溶媒を合わせた溶媒が質量比で、70:30〜30:70の範囲にあることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の防眩層形成用塗料。
(4)前記層状有機粘土の良溶媒と前記層状有機粘土の貧溶媒の混合比が、質量比で、10:90〜90:10の範囲にあることを特徴とする前記(1)または前記(3)に記載の防眩層形成用塗料。
(5)透光性基体上に、前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の防眩層形成用塗料を塗布した後、電離放射線を照射して該防眩層形成用塗料を硬化させて防眩層を形成させてなることを特徴とする防眩フィルム。
(6)防眩層の表面に形成される凹凸形状の平均傾斜角度が0.2〜1.6であり、該凹凸形状の表面粗さRaが0.05〜0.3であることを特徴とする前記(5)に記載の防眩フィルム。
(7)前記(5)または前記(6)に記載の防眩フィルムを具備してなることを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来防眩層の表面凹凸形状を作成するために必須と考えられていた微粒子を添加せずとも、防眩層の表面凹凸形状を作成することができ、防眩性とギラツキ防止効果を具備した上で、高コントラストを達成することができる防眩層形成用塗料、防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、電離放射線硬化型樹脂、層状有機粘土、該層状有機粘土の良溶媒および該層状有機粘土の貧溶媒を必須成分として含有することを特徴とする防眩層形成用塗料である。本発明の防眩層塗料は上記の必須成分を含有してなるため、従来防眩層の表面凹凸形状を作成するために必須と考えられていた微粒子を添加せずとも、防眩層の表面凹凸形状を作成することができるものである。
本発明の防眩層形成用塗料には任意成分として、無機微粒子、有機微粒子、帯電防止剤および近赤外線吸収剤等を含有させることができる。
【0012】
本発明の塗料には、固形分として、電離放射線硬化型樹脂と層状有機粘土が含まれてなる。その配合量は質量比(電離放射線硬化型樹脂:層状有機粘土)で、99.9:0.1〜90:10の範囲であればよく、99:1〜91:9の範囲であることが好ましく、98:2〜92:8の範囲であることがさらに好ましい。層状有機粘土の配合量が0.1質量部未満では十分な数の表面凹凸が形成されなくなり防眩性が不十分になる問題がある。層状有機粘土の配合量が10質量部超では、表面凹凸数が多くなり、視認性が損なわれる問題がある。
なお、電離放射線硬化型樹脂の固形分には、層状有機粘土以外の全固形分が含まれてなるものであって、電離放射線硬化型樹脂のみならず、その他の任意成分の固形分も含む。
【0013】
本発明の塗料を構成する固形分と、溶媒(良溶媒と貧溶媒を合わせたもの)の配合量は質量比で、70:30〜30:70の範囲であればよい。固形分が30質量部未満では、乾燥ムラなどが生じ外観が悪くなるとともに、表面凹凸数が多くなり視認性が損なわれる問題がある。固形分が70質量部超では、固形分の溶解性が損なわれやすくなるため、製膜できなくなる問題がある。
【0014】
以下、本発明の防眩層形成用塗料を構成する成分を中心に説明する。
【0015】
<電離放射線硬化型樹脂組成物>
電離放射線硬化型樹脂組成物は、熱や紫外線等の放射線で硬化する樹脂組成物を意味する。電離放射線硬化型樹脂組成物としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独で、または適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用することができる。電離放射線硬化型樹脂の官能基数は3個以上であることが好ましい。電離放射線硬化型樹脂の官能基数が3個以上であることにより、硬化速度が上がることや硬化物の硬度が向上するなどの利点がある。
電離放射線硬化型樹脂としてウレタンアクリレートを含有することが好ましい。ウレタンアクリレートを含有することにより、作製した防眩フィルムに柔軟性などを付与することができる。
【0016】
電離放射線硬化型樹脂組成物は、そのままで電子線照射により硬化可能であるが、紫外線照射による硬化を行う場合は、光重合開始剤の添加が必要である。なお、用いられる放射線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線のいずれであってもよい。また、これらの放射線は、偏光であっても無偏光であってもよい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独または適宜組み合わせて使用することができる。
【0017】
また、電離放射線硬化型樹脂組成物にレベリング剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることができる。レベリング剤は、塗膜表面の張力均一化を図り塗膜形成前に欠陥を直す働きがあり、上記電離放射線硬化型樹脂組成物より界面張力、表面張力共に低い物質が用いられる。
【0018】
<層状有機粘土>
本発明において、層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。本発明は層状有機粘土が特定の溶剤に対して溶解性が低いことに注目したものであって、防眩層形成用塗料として層状有機粘土および特定の溶剤を使用すると、当該溶剤の選択により、防眩層に微粒子を含有させることなく、表面凹凸を有する防眩層を形成することを見出したものである。
【0019】
(膨潤性粘土)
膨潤性粘土は、陽イオン交換能を有し、該膨潤性粘土の層間に水を取り込んで膨潤するものであればよく、天然物であっても合成物(置換体、誘導体を含む)であってもよい。また、天然物と合成物との混合物であってもよい。
膨潤性粘土としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を挙げることができる。これらの膨潤性層状粘土は、1種を使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。
【0020】
(有機オニウムイオン)
有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。
オニウムイオンとしては、例えば、ジメリルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩や、ベンジル基やポリオキシエチレン基を有するアンモニウム塩を用いたり、ホスホニウム塩やピリジニウム塩やイミダゾリウム塩からなるイオンを用いることができる。塩としては、例えば、Cl、Br、NO、OH、CHCOO等の陰イオンとの塩を挙げることができる。塩としては、第4級アンモニウム塩を使用することが好ましい。
有機オニウムイオンの官能基は制限されないが、アルキル基、ベンジル基、ポリオキシプロピレン基またはフェニル基のいずれかを含む材料を使用すると、防眩性を発揮させやすくなるため好ましい。
【0021】
アルキル基の好ましい範囲は、炭素数1〜30であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0022】
ポリオキシプロピレン基〔(CHCH(CH)O)H又は(CHCHCHO)H〕のnの好ましい範囲は1〜50であり、さらに好ましくは5〜50であり、その付加モル数が多いほど、有機溶媒に対する分散性は良くなるが、過剰になり過ぎると、生成物が粘着性を帯びるようになるので、溶媒に対する分散性に重点をおけばnの数は、20〜50がより好ましい。また、nの数が5〜20である場合には、生成物が非粘着性で粉砕性がすぐれている。また、分散性とハンドリングの点から、第4級アンモニウム全体のnの総数は5〜50が好ましい。
【0023】
該第4級アンモニウム塩の具体的例としては、テトラアルキルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウムブロミド、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムクロリド、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムブロミド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムクロリド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムブロミド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムクロリド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムブロミド等を挙げることができる。
【0024】
一般式(I)の第4級アンモニウムイオンにおいて、Rで好ましいものはメチル基又はベンジル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜12のアルキル基であり、特に好ましいものは炭素数1〜4のアルキル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜25のアルキル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜25のアルキル基、(CHCH(CH)O)H基又は(CHCHCHO)H基である。nは5〜50であるものが好ましい。
【化1】

【0025】
本発明を構成する層状有機粘土の生成は、X線回析で(001)底面反射の位置を測定することにより容易に確認することができる。例えば、原料の合成スメクタイトは、脱水状態で10Å、通常の温度、湿度下では12〜15Åの底面間隔を有するが、本発明の層状有機粘土は、第4級アンモニウムイオンにおけるアルキル基の炭素数と、ポリオキシプロピレン基の付加縮合数に依存するが、15Å以上であることから、層状有機粘土が生成していることが分かる。
【0026】
<層状有機粘土の良溶媒>
層状有機粘土の良溶媒としては、層状有機粘土100質量部に対して、1000質量部の溶媒を添加することによって、当該層状有機粘土が溶解するものであればよく、良溶媒の種類は特に制限されるものではない。本発明において、層状有機粘土が溶解するとは、層状有機粘土100質量部に対して、1000質量部の溶媒を添加して混合した混合液が、実質的に濁りを生じず透明性を有するものをいう。具体的には、当該混合液のヘイズ値が10%以下のものをいう。層状有機粘土の種類によって使用できる良溶媒は異なるが、例えば、層状有機粘土として合成スメクタイトを使用した場合、良溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を使用することができる。これらの溶媒は、一種で使用しても複数を混合して使用してもよい。
【0027】
<層状有機粘土の貧溶媒>
層状有機粘土の貧溶媒としては、層状有機粘土100質量部に対して、1000質量部の溶媒を添加しても、当該層状有機粘土が溶解しないもの(濁りを生じるもの)であればよい。具体的には、層状有機粘土100質量部に対して1000質量部の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値が30%以上のものをいう。層状有機粘土の種類によって使用できる貧溶媒は異なるが、例えば、層状有機粘土として合成スメクタイトを使用した場合、貧溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソプロピルアルコール等を使用することができる。
なお、良溶媒および貧溶媒を決定する際に求めるヘイズ値は、JIS K7105に準じて測定した。
【0028】
層状有機粘土の良溶媒と層状有機粘土の貧溶媒の混合比としては質量比で、10:90〜90:10の範囲であればよく、15:85〜85:15の範囲であることが好ましく、20:80〜80:20の範囲であることが好ましい。
層状有機粘土の良溶媒が10質量部未満では未溶解物による外観欠点が発生する問題がある。
層状有機粘土の良溶媒が90質量部超では十分な防眩性を得るための表面凹凸が得られない問題がある。
【0029】
<防眩フィルム>
上記の構成成分を含む本発明の防眩層形成用塗料を、透光性基体上に塗布した後、電離放射線(例えば電子線または紫外線照射)を照射して該防眩層形成用塗料を硬化させることにより防眩層を形成させ、本発明の防眩フィルムを得ることができる。
防眩層は透光性基体の片面に形成されていても両面に形成されていてもよい。また、防眩層と透光性基体の間に他の層を有していてもよいし、防眩層上に他の層を有していてもよい。ここで他の層としては、例えば、偏光層、光拡散層、低反射層、防汚層、帯電防止層、紫外線・近赤外線(NIR)吸収層、ネオンカット層、電磁波シールド層などを挙げることができる。
【0030】
防眩層の厚さは1.0〜12.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2.0〜11.0μmの範囲であり、さらに好ましくは3.0〜10.0μmの範囲である。防眩層が1.0μmより薄い場合は、紫外線硬化型時に酸素阻害による硬化不良を起こし、防眩層の耐磨耗性が劣化しやすくなる。防眩層が12.0μmより厚い場合は、防眩層の硬化収縮によるカールの発生や、マイクロクラックの発生、透光性基体との密着性の低下、さらには光透過性の低下が生じてしまう。そして、膜厚の増加に伴う必要塗料量の増加によるコストアップの原因ともなる。
【0031】
本発明の防眩フィルムは、透過像鮮明度が5.0〜70.0の範囲(JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した値)が好ましく、20.0〜65.0がより好ましい。透過像鮮明度が5.0未満ではコントラストが悪化し、70.0を超えると防眩性が悪化するため、ディスプレイ表面に用いる防眩フィルムに適さなくなる。
【0032】
本発明の防眩フィルムは、防眩層の表面に微細な凹凸形状を有する。ここで、当該微細な凹凸形状は、好適には、ASME95に従い求められる平均傾斜から計算される平均傾斜角度が0.2〜1.6の範囲にあり、より好ましくは0.25〜1.35、更に好ましくは0.25〜1.0である。平均傾斜角度が0.2未満では防眩性が悪化し、平均傾斜角度が1.6を超えるとコントラストが悪化するため、ディスプレイ表面に用いる防眩フィルムに適さなくなる。
【0033】
また、本発明の防眩フィルムは、防眩層の微細な凹凸形状として、表面粗さRaが0.05〜0.3μmであることが好ましく、0.05〜0.25μmであることがさらに好ましく、0.05〜0.15μmであることが特に好ましい。表面粗さRaが0.05μm未満であると、防眩フィルムの防眩性が不十分になる。表面粗さRaが0.3μm超であると、防眩フィルムのコントラストが悪化する。
【0034】
更に、当該防眩フィルムは、透過像鮮明度が5.0〜70.0の範囲(JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した値)が好ましく、20.0〜65.0がより好ましい。透過像鮮明度が5.0未満ではコントラストが悪化し、70.0を超えると防眩性が悪化するため、ディスプレイ表面に用いる防眩フィルムに適さなくなる。
【0035】
<透光性基体>
本最良形態に係る透光性基体としては、透光性である限り特に限定されず、石英ガラスやソーダガラス等のガラスも使用可能であるが、PET、TAC、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。なお、PDP、LCDに用いる場合は、PETフィルム、TACフィルムおよび含ノルボルネン樹脂フィルムから選ばれる1種を使用することがより好ましい。
【0036】
これら透光性基体の透明性は高いものほど良好であるが、全光線透過率(JIS K7105)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、透光性基体の厚さとしては、軽量化の観点からは薄い方が好ましいが、その生産性やハンドリング性を考慮すると、1〜700μmの範囲のもの、好ましくは25〜250μmを使用することが好適である。
【0037】
透光性基体表面に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理などのトリートメント処理、界面活性剤、シランカップリング剤などのプライマーコーティング、Si蒸着などの薄膜ドライコーティングなどを施すことで、透光性基体と防眩層との密着性を向上させ、当該防眩層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。また、透光性基体と防眩層との間に他の層を設ける場合も、上記同様の方法で、各層界面の密着性を向上させ、当該防眩層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。
【0038】
<防眩フィルムの製造方法>
透光性基体上に防眩層形成用塗料を塗布する手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
【0039】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0040】
(製造例1 合成スメクタイトの製造)
10L のビーカーに水4L を入れ、3号水ガラス(SiO2 28%、Na2 O9%、モル比3.22)860g を溶解し、95%硫酸162g を撹拌しながら一度に加えてケイ酸塩溶液を得る。次に水1L にMgCl2 ・6H2 O一級試薬(純度98%)560g を溶解し、これを前記ケイ酸溶液に加えて均質混合溶液を調製した。これを2N −NaOH溶液3.6L 中に撹拌しながら5分間で滴下した。得られた反応沈澱物を、直ちに日本ガイシ(株)製のクロスフロー方式による濾過システム〔クロスフロー濾過器(セラミック膜フィルター:孔径2μm 、チューブラータイプ、濾過面積400cm2)、加圧:2kg/cm2、濾布:テトロン1310〕で濾過及び充分に水洗した後、水200mlとLi(OH)・H2 O 14.5gとよりなる溶液を加えてスラリー状とした。これをオートクレーブに移し、41kg/cm2、250℃で3時間、水熱反応させた。冷却後反応物を取出し、80℃で乾燥し、粉砕して下記式の合成スメクタイトを得た。この合成スメクタイトは、X線回析で測定した底面間隔が、空気中で12.5Å、陽イオン交換容量が110ミリ当量/100g であった。Na0.4 Mg2.6 Li0.4 Si410(OH)2。
【0041】
(製造例2 合成スメクタイト系層状有機粘土Aの製造)
製造例1で合成した合成スメクタイト10g を水道水500mlに分散させて懸濁液とした。該合成スメクタイトの陽イオン交換容量相当量の次式(II)の第四級アンモニウム塩の17.7g(98%含有品)を溶解した水溶液300mlを、前記合成スメクタイト懸濁液に添加し、撹拌しながら室温で2時間反応させた。生成物を固液分離、洗浄して副生塩類を除去した後、乾燥して合成スメクタイト系層状有機粘度Aを得た。該生成物のX線回析測定によれば、その(001)底面反射の位置から計算された底面間隔は44Åであり、合成スメクタイト系層状有機粘土Aの生成が確認された。
【化2】

【実施例1】
【0042】
前記、層状有機粘土Aを含む表1記載の所定の混合物をディスパーにて30分間攪拌することによって得られた防眩層形成用の塗料を、膜厚80μm、全光線透過率92%からなる透明基体のTAC(富士フィルム社製;TD80UL)の片面上にロールコーティング方式にて塗布(ラインスピード;20m/分)し、30〜50℃で20秒間予備乾燥を経た後、100℃で1分間乾燥し、窒素雰囲気(窒素ガス置換)中で紫外線照射(ランプ;集光型高圧水銀灯、ランプ出力;120W/cm、灯数:4灯、照射距離;20cm)を行うことで塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ5.5μmの防眩層を有する実施例1の防眩フィルムを得た。
【実施例2】
【0043】
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.4μmの防眩層を有する実施例2の防眩フィルムを得た。
【実施例3】
【0044】
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.5μmの防眩層を有する実施例3の防眩フィルムを得た。
【0045】
[比較例1]
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.6μmの防眩層を有する比較例1の防眩フィルムを得た。
【0046】
[比較例2]
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更し、比較例2の混合物をディスパーにて30分間攪拌し防眩層形成用の塗料作製したが、層状有機粘土Aがイソプロピルアルコールに溶解しないため、塗布不可能となった。
【0047】
[比較例3]
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.4μmの防眩層を有する比較例3の防眩フィルムを得た。
【0048】
[比較例4]
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ6.0μmの防眩層を有する比較例4の防眩フィルムを得た。
【0049】
実施例および比較例で使用した材料を表1にまとめた。
なお、上記の合成スメクタイト系層状有機粘土A100質量部に対して1000質量部のトルエンを添加して混合した混合液のヘイズ値(JIS K7105)は4.8%であった。すなわち、トルエンが良溶媒として使用できることを確認した。
上記の合成スメクタイト系層状有機粘土A100質量部に対して1000質量部のイソプロピルアルコールを添加して混合した混合液のヘイズ値(JIS K7105)は88.0%であった。すなわち、イソプロピルアルコールが貧溶媒として使用できることを確認した。
【表1】

【0050】
<評価方法>
次に実施例および比較例の防眩フィルムについて、下記の項目について評価を行った。
(全光線透過率)
JIS K7105に従い、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。
(ヘイズ値)
ヘイズ値は、JIS K7105に従い、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。
(表面粗さ)
表面粗さRaは、JIS B0601−1994に従い、上記表面粗さ測定器を用いて測定した。
(平均傾斜角度)
平均傾斜角度は、ASME95に従い、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダSE1700α、小坂研究所社製)を用いて平均傾斜を求め、次式に従って平均傾斜角度を算出した。
平均傾斜角度=tan−1(平均傾斜)
(画像鮮明性)
JIS K7105に従い、写像性測定器(商品名:ICM−1DP、スガ試験機社製)を用い、測定器を透過モードに設定し、光学くし幅0.5mmにて測定した。
(防眩性)
防眩性は、透過画像鮮明度の値が0〜30のとき◎、31〜80のとき○、81〜100のとき×とした。
(ギラツキ)
ギラツキは、各実施例及び各比較例の防眩フィルム形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して解像度が50ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LC−32GD4、シャープ社製)と、解像度が100ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LL−T1620−B、シャープ社製)と、解像度が120ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)と、解像度が140ppiの液晶ディスプレイ(商品名:VGN−TX72B、ソニー社製)と、解像度が150ppiの液晶ディスプレイ(商品名:nw8240−PM780、日本ヒューレットパッカード社製)と、解像度が200ppiの液晶ディスプレイ(商品名:PC−CV50FW、シャープ社製)の画面表面にそれぞれ貼り合わせ、暗室にて液晶ディスプレイを緑表示とした後、各液晶TVの法線方向から解像度200ppiのCCDカメラ(CV−200C、キーエンス社製)にて撮影した画像において、輝度バラツキが確認されない時の解像度の値が、0〜50ppiのとき×、51〜140ppiのとき○、141〜200ppiのとき◎とした。
(明室コントラスト)
明室コントラストは、実施例及び比較例の防眩フィルム形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、液晶ディスプレイ画面の正面上方60°の方向から蛍光灯(商品名:HH4125GL、ナショナル社製)にて液晶ディスプレイ表面の照度が200ルクスとなるようにした後、液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM−5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m)と白表示時の輝度(cd/m)を以下の式にて算出した時の値が、600〜800のとき×、801〜1000のとき○、1001〜1200のとき◎とした。
コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度
暗室コントラスト
暗室コントラストは、実施例及び比較例の防眩フィルム形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、暗室条件下で液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM−5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m)と白表示時の輝度(cd/m)を以下の式にて算出した時の値が、900〜1100のとき×、1101〜1300のとき△、1301〜1500のとき○とした。
コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度
【0051】
得られた結果を表2に示した。なお、比較例2は層状有機粘土Aがイソプロピルアルコールに溶解せず、塗布不可能となったことから、防眩フィルムを作製することができなかったため、評価は行わなかった。
【表2】

【0052】
以上のように、本発明によれば、従来防眩層の表面凹凸形状を作成するために必須と考えられていた微粒子を添加せずとも、防眩層の表面凹凸形状を作成することができ、防眩性とギラツキ防止効果を具備した上で、高コントラストを達成することができる防眩層形成用塗料を提供することができる。また、該防眩層形成用塗料を用いた防眩フィルム、および該防眩フィルムを用いた表示装置を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線硬化型樹脂、層状有機粘土、該層状有機粘土の良溶媒および該層状有機粘土の貧溶媒とを含有することを特徴とする防眩層形成用塗料。
【請求項2】
前記電離放射線硬化型樹脂と、前記層状有機粘土が質量比で、99.9:0.1〜90:10の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の防眩層形成用塗料。
【請求項3】
固形分と、良溶媒と貧溶媒を合わせた溶媒が質量比で、70:30〜30:70の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の防眩層形成用塗料。
【請求項4】
前記層状有機粘土の良溶媒と前記層状有機粘土の貧溶媒の混合比が、質量比で、10:90〜90:10の範囲にあることを特徴とする請求項1または3に記載の防眩層形成用塗料。
【請求項5】
透光性基体上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防眩層形成用塗料を塗布した後、電離放射線を照射して該防眩層形成用塗料を硬化させて防眩層を形成させてなることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項6】
防眩層の表面に形成される凹凸形状の平均傾斜角度が0.2〜1.6であり、該凹凸形状の表面粗さRaが0.05〜0.3μmであることを特徴とする請求項5に記載の防眩フィルム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の防眩フィルムを具備してなることを特徴とする表示装置。

【公開番号】特開2010−256882(P2010−256882A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74477(P2010−74477)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】