防護柵
【課題】ロープ材の取付作業が容易で、支柱前面に横方向のロープ材を配置するスペースを確保することができる防護柵を提供する。
【解決手段】間隔を置いて支柱2,3を立設し、これら支柱2,3の間に金網を設け、支柱2,3と該支柱2,3の前側との間に控えロープ材61を設ける。支柱2,3の左右両側に、左右の控えロープ材61,61を連結する連結部を設けたから、支柱2,3の左右両側に控えロープ材61を連結することにより、支柱2,3の前面のスペースを確保することができ、支柱2,3の前面に横方向のロープ材4やその端部に設けた端末金具23や緩衝金具などを配置及び連結することができる。
【解決手段】間隔を置いて支柱2,3を立設し、これら支柱2,3の間に金網を設け、支柱2,3と該支柱2,3の前側との間に控えロープ材61を設ける。支柱2,3の左右両側に、左右の控えロープ材61,61を連結する連結部を設けたから、支柱2,3の左右両側に控えロープ材61を連結することにより、支柱2,3の前面のスペースを確保することができ、支柱2,3の前面に横方向のロープ材4やその端部に設けた端末金具23や緩衝金具などを配置及び連結することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山腹の斜面部等に構築し、積雪や落石等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から山腹の斜面部等に構築して落石や積雪等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵が知られており、例えば、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平ロープ材の途上にロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成した衝撃吸収柵(例えば特許文献1)や、基礎上に間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱間に防護用網体を張設した防護柵(例えば特許文献2)などが提案されている。
【0003】
そして、上記衝撃吸収柵では、支柱はH鋼等の剛性部材で構成され、その上下部に水平ロープ材を係止するための孔が開設されている。
【0004】
また、上記防護柵では、ロープ材の端末は緩衝具や固定具により端末パイプ支柱に揺動可能に連結され、その緩衝具は、ロープ材を所定の摩擦力で把持する一対の把持体を備え、両把持体をボルトナットなどの締付手段により締め付け固定し、その固定具は、U字型の金具を用いてロープ材の端部を固定している。
【0005】
また、前記支柱の上部前側には、取付部が設けられ、この取付部の孔に、控えロープ材を把持した緩衝具のUボルトが連結され、前記控えロープ材の先端は、前方の斜面にロックボルトにより連結されている。
【特許文献1】特公平7−18134号公報
【特許文献2】特開2004−19369号公報(0031段及び0032段)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記防護柵では、ロープ材の端部を緩衝具や金具により支柱に連結し、中間の支柱では、それら緩衝具や金具を支柱の前面に固定するため、支柱の前側スペースが取られ、控えロープ材の取付スペースに制約を受けるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2では、支柱の前面に取付部が設けられ、この取付部の孔に控えロープを連結しており、このように控えロープの端部に、係脱可能なUボルトなどを設ける必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、ロープ材の取付作業が容易で、支柱前面に横方向のロープ材を配置するスペースを確保することができる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱の間に防護面を設け、前記支柱と該支柱の前側との間に控えロープ材を設けた防護柵において、前記支柱の左右両側に、左右の前記控えロープ材を連結する連結部を設けたものである。
【0010】
また、請求項2の発明は、前記支柱前後方向に対する前記左右の控えロープ材の角度が略等しいものである。
【0011】
また、請求項3の発明は、前記連結部は、上下の受部材と、これら上下の受部材により形成され前記控えロープ材のロープ端部を挿入可能な挿入受け部と、この挿入受け部を開閉する開閉手段とを備えるものである。
【0012】
また、請求項4の発明は、前記ロープ端部が輪部である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、支柱の左右両側に控えロープ材を連結することにより、支柱の前面のスペースを確保することができ、支柱の前面に横方向のロープ材やその端部に設けた緩衝金具などを配置及び連結することができる。
【0014】
また、請求項2の構成によれば、支柱の前方から加わる力に対して、左右の控えロープ材が均等に対抗することができる。
【0015】
また、請求項3の構成によれば、挿入受け部に控えロープ材のロープ端部を挿入した後、開閉手段により挿入受け部を閉めることにより、支柱に控えロープ材を連結することができ、控えロープ材のロープ端部に開閉する連結手段を設ける必要がない。
【0016】
また、請求項4の構成によれば、輪部を挿入受け部に挿入して控えロープ材に連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる防護柵を採用することにより、従来にない防護柵が得られ、その防護柵を夫々記述する。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の防護柵の実施例について図1〜図15を参照して説明する。防護柵1は、両側に配置する端末パイプ支柱(端末支柱)2の間に複数又は単数の中間パイプ支柱(中間支柱)3を間隔をおいて並設し、これらパイプ支柱2,3に、上下に間隔おいて、横方向のロープ材4を多段に架設すると共に、防護用網体として金属線材で編成した金網5を前側に張設し、例えば、それら支柱2,3は山腹の斜面Sに穿設した縦孔S1に建て込まれる。尚、金網5はロープ材4の前に張設される。また、前記ロープ材4にはワイヤーロープなどが用いられる。この例では、端末パイプ支柱2,2の間に複数の中間パイプ支柱3,3…を配置している。
【0019】
前記端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3は、斜面S1などに建て込まれ、建て込んだ端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3は、連結杆6によって相互に連結される。これら端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3及び連結杆6の上部は、断面形状が円形の鋼管によって形成されている。このような中空構造の端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3は、外側の鋼管に内設する補強体8によって補強されている。なお、図3に示すように、補強体8は断面略三角形をなし、鋼板などの硬質板材を三角形に配置してなる。そして、前記支柱2,3は内部にコンクリートや無収縮モルタルを充填した充填鋼管が用いられる。
【0020】
本発明では、前記連結杆6は断面円形をなし、連結杆6は、好ましくは鋼管の内部にコンクリートや無収縮モルタル(図示せず)を充填した充填鋼管が用いられ、その連結杆6の端部を端末パイプ支柱2及び中間パイプ支柱3に、回動連結機構12,13により、前後方向及び上下方向回動可能に連結している。
【0021】
まず、図7及び図10を参照して、中間パイプ支柱3に設ける前記回動連結機構13について説明すると、この回動連結機構13は、中間パイプ支柱3の上部に回動可能に外嵌する支柱キャップ14と、前記連結杆6の端部を挿入連結する連結外筒部15と、前記支柱キャップ14と連結外筒部15とを上下方向回動可能に連結する回動連結部16,16Aとを備える。
【0022】
前記連結外筒部15は、支柱側を閉塞端部151により閉塞し、反支柱側の開口側の半円筒部152を着脱可能に設け、連結外筒部15に連結杆6の端部6Aを挿入し、連結外筒部15に前記反円筒部152を締め付けることにより、連結外筒部15に対して連結杆6が締め付け固定される。
【0023】
前記回動連結部16Aは、前記支柱キャップ14と連結外筒部15とを回動可能に連結するボルトなどからなる横方向の枢軸17を備える。
【0024】
したがって、中間パイプ支柱3に対して、両側の連結外筒部15は、枢軸17を中心に上下方向に回動し、支柱キャップ14を中心に前後方向に回動可能になっている。
【0025】
次に、前記回動連結機構12は、図7及び図10に示すように、端末パイプ支柱2に支柱キャップ14が平面回動可能に連結され、この端末パイプ支柱2に対して、連結外筒部15は、枢軸17を中心に上下方向に回動し、支柱キャップ14を中心に前後方向に回動可能になっている。
【0026】
尚、連結外筒部18への連結杆6の端部の挿入量を調整することにより、支柱2,2,3間の間隔に連結杆6を合わせて調整することができる。
【0027】
さらに、図7に示すように、端末パイプ支柱2の外周前側には、ロープ材4の端末を連結するための取付部21が上下多段に設けられ、この取付部21には横長形状の孔22が形成されている。そして、ロープ材4の端末は端末金具23により端末パイプ支柱2に揺動可能に連結される。
【0028】
図7〜図9に示すように、 前記端末金具23は、U字状のジョイント金具24と、このジョイント金具24にナット25により固定されるプレート26とを備え、このプレート26に、前記ジョイント金具24の両端部を挿通する一対の孔26A,26Aと、前記ロープ材4の端部を挿通する孔26Bとを穿設し、前記ジョイント金具24の両端部を一側から前記孔26A,26Aに挿通し、その両端部に形成された螺子部24A,24Aに前記ナット25,25を螺合して、ジョイント金具24にプレート26を連結し、前記ロープ材4の端部を他側から前記孔26Bに挿通し、挿通したロープ材4の端部に、前記プレート26に係止するストッパ27を固着してなる。そして、図10に示すように、前記取付部21に形成した孔22に前記ジョイント金具24を挿通して連結している。
【0029】
前記中間パイプ支柱3には前記ロープ材4が係合する係合部31が設けられている。図7,図11及び図12に示すように、この係合部31は、前記ロープ材4に対応して、中間パイプ支柱3の鋼管の前側に多段に設けられ、上下対をなす係合部材32,32を前方に突出して設け、これら係合部材32,32は断面が円形の丸棒などからなり、この丸棒は鋼製などであって、中間パイプ支柱3の鋼管の外周に溶着されており、それら上下の係合部材32,32の間に、前記ロープ材4を側方から挿入可能な挿入受け部33が形成されている。そして、挿入受け部33側は係合部材32,32の円筒形の外周面32G,32Gが位置している。また、上の係合部材32の先端上部に切欠き段部34を形成すると共に、下の係合部材32の先端下部に切欠き段部34を形成し、上下の切欠き段部34,34の対応する位置で係合部材32,32に透孔35,35を穿設し、開閉手段たるボルト36を前記透孔35,35に挿通し、そのボルト36にナット37,37Aを螺合することにより、前記挿入受け部33を閉めることができ、逆に、ナット37,27Aを外してボルト36を抜くことにより、挿入受け部73を開くことができる。
【0030】
また、前記支柱2,3,3,2間には、ロープ材4に加わる衝撃エネルギーを分散する分散維持装置51が複数設けられ、この例では、図5,図7及び図15などに示すように、支柱2,3,3,2間にそれぞれ分散維持装置51が設けられている。この分散維持装置51は、図14などに示すように、縦方向の連結部材たる縦ロープ材52を有し、この縦ロープ材52は、上端にアイボルトからなる輪部53を有し、下端にロック加工部54を設けている。前記連結杆6の前面に、前記縦ロープ材52を連結する係合部31Aを設け、この係合部31Aは、前記係合部材32,32を左右に配置して前記連結杆6の鋼管の前面に配置した以外は、前記係合部31と同一構成をなし、前記ボルト36を前記輪部53に挿通することにより、係合部31Aに縦ロープ材53を連結する。また、前記縦ロープ材52と各段のロープ材4との交差箇所は接続具55により接続され、この接続具55は、ロープ材4が当接する凹部56を備えたプレート57と、このプレート57の上下に端部を挿通したUボルト58,58とを備え、凹部56に係合するようにロープ材4の後側にプレート57を当て、ロープ材4の前側に縦ロープ材52を交差させ、この交差箇所の上下で縦ロープ材52にUボルト58,58を挟み、プレート57に挿通したUボルト58の端部の螺子部にナット59を締め付けることにより接続する。
【0031】
前記各支柱2,3の左右には、左右の控えロープ材61,61が連結され、これら左右の控えロープ材61,61は支柱2,3の前後方向に対して、平面において左右10度程度の角度θをなす。前記控えロープ材61は、支柱側の端部に輪部62を設け、この輪部62は補強金具たるロープシンブル63を備え、その輪部62の端部はロック金具64により固定されている。また、前記控えロープ材61は、反支柱側の端部に輪部65を設け、この輪部65は補強金具たる前記ロープシンブル63を備え、その輪部62の端部は複数のワイヤークリップ66により固定されている。
【0032】
前記支柱2,3の上部左右には、前記輪部65を着脱可能に連結する連結部71が、多段に設けたロープ材4,4の間に設けられ、前記連結部71は、上下対をなす受部材72,72を側方に突出して設け、これら受部材72,72は板材などからなり、支柱2,3の鋼管の外周に溶着されており、それら上下の受部材72,72の間に、前記輪部62を側方から挿入可能な挿入受け部73が形成されている。そして、受部材72,72に透孔75,75を穿設し、開閉手段たるボルト76を前記透孔75,75に挿通し、そのボルト76にナット77,77Aを螺合することにより、前記挿入受け部73を閉めることができ、逆に、ナット77,77Aを外してボルト76を抜くことにより、挿入受け部73を開くことができる。
【0033】
一方、控えロープ材61の山側端は、アンカー81に接続される。このアンカー81は、斜面Sにロックボルト82を挿入固定してなり、そのロックボルト82の上端に、接続装置83を設けてなる。この接続装置83は、ロックボルト82の上端を挿通する孔84を設けたプレート85を備え、このプレート85の前記孔84を挟んだ両側に孔84A,84Aを穿設し、これら孔84A,84AにUボルト86の両端部を挿通し、これら両端部の雄螺子部にナット87,87を螺合し、そのUボルト86を前記輪部65に挿通しておき、また、Uボルト86とは逆方向から前記孔84にロックボルト82の上端を挿通し、このロックボルト82の上端にナット体87を螺合し、これによりアンカー81に控えロープ材61を連結する。
【0034】
ところで、現場での支柱2,3の建て込みにおいては、斜面Sに縦孔S1を穿孔し、支柱2,3の下部を挿入し、グラウト材などを充填して固定する。このように基礎を使用せずに、支柱2,3を建て込んで固定する構造では、深い縦孔S1に長い支柱2,3の下部を挿入する必要がある。これに対して、本実施例では、支柱2,3の上部の左右に連結部71,71を設けているから、これら左右に連結部71,71に、支柱2,3をほぼ水平に保つように吊り具(図示せず)を係合し、支柱2,3を垂直に保った状態で、その下部を縦孔S1に挿入することができ、建て込み作業の効率化を図ることもできる。
【0035】
このように本実施例では、間隔を置いて支柱2,3を立設し、これら支柱2,3の間に防護面たる金網5を設け、支柱2,3と該支柱2,3の前側との間に控えロープ材61を設けた防護柵において、支柱2,3の左右両側に、左右の控えロープ材61,61を連結する連結部を設けたから、支柱2,3の左右両側に控えロープ材61を連結することにより、支柱2,3の前面のスペースを確保することができ、支柱2,3の前面に横方向のロープ材4やその端部に設けた端末金具23や緩衝金具などを配置及び連結することができる。
【0036】
また、このように本実施例では、支柱2,3の前後方向に対する左右の控えロープ材61,61の角度が略等しいから、支柱2,3の前方から加わる力に対して、左右の控えロープ材61,61が均等に対抗することができる。
【0037】
また、このように本実施例では、連結部は、上下の受部材72,72と、これら上下の受部材72,72により形成され控えロープ材61のロープ端部たる輪部62を挿入可能な挿入受け部73と、この挿入受け部73を開閉する開閉手段たるボルト76とを備えるから、挿入受け部73に控えロープ材61の輪部62を挿入した後、ボルト76により挿入受け部73を閉めることにより、支柱2,3に控えロープ材61を連結することができ、控えロープ材61のロープ端部に開閉する連結手段を設ける必要がない。
【0038】
また、このように本実施例では、前記ロープ端部が輪部62であるから、輪部62を挿入受け部73に挿入して控えロープ材61に連結することができる。
【0039】
また、実施例上の効果として、各支柱2,3,3,2の上部を連結杆6で連結することによって、各支柱2,3,3,2の連結強度を高めることができ、さらに、隣合う支柱2,3又は支柱3,3とこれらを連結する連結杆6からなる門形構造において、支柱2,3,3,2の間に連結杆6を設けることにより、門形構造の強度が向上するから、支柱2,3,3,2間隔を広く設定することができ、支柱2,3,3,2の植設作業が容易となる。また、門形構造による強度向上により、支柱2,3の直径寸法を抑えることができ、縦孔S1も小径で済む。このように、新設・既設のいずれの場合においても、支柱2,3に関わる施工を簡略化することができる。
【0040】
また、連結杆6の端部6Aを支柱2,3に前後方向回動可能で且つ上下方向回動可能に連結する回動連結機構12,13を備えるから、各支柱2,3に対して連結杆6が前後方向及び上下方向に回動可能に連結されているので、各支柱2,3と連結杆6の連結部分で防護柵1に加わる落石あるいは雪崩など加わる衝撃を吸収して支柱2,3の損壊を抑制することができる。
【0041】
また、連結杆6が内部に充填材たる無収縮モルタルを充填した充填鋼管であり、回動連結機構12,13は、6連結杆の端部6Aを挿入連結する連結外筒部15を有するから、連結杆6に充填鋼管を用いることにより、優れた変形性能が得られ、衝撃吸収能力が向上し、また、回動連結機構12,13は連結外筒部15を有するから、この連結外筒部15を支柱2,3に回動可能に連結し、この連結外筒部15に連結杆6の端部を挿入して連結したり、連結外筒部18に連結杆6の端部を挿入配置してから連結外筒部15を支柱2,3に連結すればよく、支柱2,3への連結杆6の連結作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、実施例上の効果として、各パイプ支柱2,3の上端部を連結杆6によって相互に連結することによって、各パイプ支柱2,3の連結強度も向上する。しかも、各パイプ支柱2,3を相互に連結するための連結杆6の内部にもモルタルが充填され、防護柵1に衝撃が加わっても、容易に折れ曲がることもない。また、各パイプ支柱2,3と、これを連結する連結杆6とは回動連結機構12,13によって結合することによって、各パイプ支柱2,3と連結杆6とは溶接などのよって剛的に固定されていないので、各パイプ支柱2,3と連結杆6の回動連結機構12,13で防護柵1が受ける衝撃を、吸収することができる。
【実施例2】
【0043】
図16及び図20は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、端末金具23に代えて緩衝具161により端末パイプ支柱2に揺動可能に連結される。
【0044】
この緩衝具161は、図16〜図19に示すように、前記ロープ材4を所定の摩擦力で把持する一対の把持体164,164を備え、これら把持体64,64の合せ面に、ロープ材4に嵌合する嵌合溝65を形成し、両把持体164,164をボルトナットなどの締付手段66により締め付け固定する。相互に固定された把持体164,164の側面には、Uボルト167が係合する係合溝168,168が形成され、この係合溝168,168にUボルト167の両端部167T,167Tが係合する。また、Uボルト167の両端部167T,167Tを挿通するプレート169を備え、このプレート169にはロープ材4の余長部4A側を遊挿する溝部170が形成されている。そして、Uボルト167の途中を前記連結受部28の孔29に挿通連結し、その両端部167T,167T間に、ロープ材4を締め付けた把持体164,164を嵌め入れ、さらに、端部167T,167Tを押さえ板169に挿通し、端部167TZ,167Tにナット171を螺合する。そして、前記一対の把持体164,164により、ロープ材4を所定の摩擦力で把持する把持具172を構成し、また、図20に示すように、緩衝具163は、前記2つの把持具172,172を並べて設けたタイプのものでもよい。このようにUボルト167に複数の把持具172を並べて設けることができ、また、さらに、Uボルト167を長くすれば3個以上の把持具172を並べて設けることもできる。
【0045】
そして、前記余長部4Aの端部には、前記把持具172に係止するストッパ173を固着する。従って、防護柵に落石などの衝撃力が加わり、ロープ材4に張力が発生すると、緩衝具163に対してロープ材4の余長部4Aが摺動し、この摺動はストッパ173が把持具172に係止するまで摺動可能であって、摺動によりエネルギーの一部を吸収できる。
【0046】
このように本実施例においても、支柱2,3の前面に横方向のロープ材4やその端部に設けた端末金具や緩衝金具161などを配置及び連結するスペースが得られ、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、開閉手段は、実施例で示したボルト以外でも、蓋状のものなど各種のものを用いることができる。また、緩衝具は、摺動可能に把持するものであれば、各種のものを用いることができる。さらに、充填材はモルタル以外にも各種のものを用いることができるが、そのモルタルやコンクリートなどセメントを混合してセメント系の充填材を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例を示す控えロープ材と支柱の平面図である。
【図2】同上、控えロープ材と支柱の側面図である。
【図3】同上、支柱の連結部周りの断面図である。
【図4】同上、支柱の連結部箇所の正面図である。
【図5】同上、防護柵の正面図である。
【図6】同上、防護柵の平面図である。
【図7】同上、防護柵の上部の正面図である。
【図8】同上、端末金具を示し、図8(A)はジョイント金具の正面図、図8(B)はプレートの正面図を示す。
【図9】同上、防護柵上部の平面図である。
【図10】同上、防護柵の要部の平面図である。
【図11】同上、係合部を示し、図11(A)は一部を断面にした側面図、図11(B)は平面図である。
【図12】同上、係合部の正面図である。
【図13】同上、分散維持装置の部品を示し、図13(A)は側面図、図13(B)は平面図である。
【図14】同上、分散維持装置の縦ロープ材の側面図である。
【図15】同上、支柱の上部の側面図である。
【図16】本発明の実施例2を示す緩衝具の正面図である。
【図17】同上、緩衝具の平面図である。
【図18】同上、緩衝具の把持具の側面図である。
【図19】同上、緩衝具の側面図である。
【図20】同上、2つの把持具を有する緩衝具の正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 防護柵
2 パイプ支柱(支柱)
3 中間パイプ支柱(支柱)
4 ロープ材(横ロープ材)
5 金網
6 連結杆
61 控えロープ材
62 輪部(ロープ端部)
71 連結部
72 受部材
73 挿入受け部
75 透孔
76 ボルト(開閉手段)
S 斜面
S1 縦孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、山腹の斜面部等に構築し、積雪や落石等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から山腹の斜面部等に構築して落石や積雪等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵が知られており、例えば、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平ロープ材の途上にロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成した衝撃吸収柵(例えば特許文献1)や、基礎上に間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱間に防護用網体を張設した防護柵(例えば特許文献2)などが提案されている。
【0003】
そして、上記衝撃吸収柵では、支柱はH鋼等の剛性部材で構成され、その上下部に水平ロープ材を係止するための孔が開設されている。
【0004】
また、上記防護柵では、ロープ材の端末は緩衝具や固定具により端末パイプ支柱に揺動可能に連結され、その緩衝具は、ロープ材を所定の摩擦力で把持する一対の把持体を備え、両把持体をボルトナットなどの締付手段により締め付け固定し、その固定具は、U字型の金具を用いてロープ材の端部を固定している。
【0005】
また、前記支柱の上部前側には、取付部が設けられ、この取付部の孔に、控えロープ材を把持した緩衝具のUボルトが連結され、前記控えロープ材の先端は、前方の斜面にロックボルトにより連結されている。
【特許文献1】特公平7−18134号公報
【特許文献2】特開2004−19369号公報(0031段及び0032段)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記防護柵では、ロープ材の端部を緩衝具や金具により支柱に連結し、中間の支柱では、それら緩衝具や金具を支柱の前面に固定するため、支柱の前側スペースが取られ、控えロープ材の取付スペースに制約を受けるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2では、支柱の前面に取付部が設けられ、この取付部の孔に控えロープを連結しており、このように控えロープの端部に、係脱可能なUボルトなどを設ける必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、ロープ材の取付作業が容易で、支柱前面に横方向のロープ材を配置するスペースを確保することができる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱の間に防護面を設け、前記支柱と該支柱の前側との間に控えロープ材を設けた防護柵において、前記支柱の左右両側に、左右の前記控えロープ材を連結する連結部を設けたものである。
【0010】
また、請求項2の発明は、前記支柱前後方向に対する前記左右の控えロープ材の角度が略等しいものである。
【0011】
また、請求項3の発明は、前記連結部は、上下の受部材と、これら上下の受部材により形成され前記控えロープ材のロープ端部を挿入可能な挿入受け部と、この挿入受け部を開閉する開閉手段とを備えるものである。
【0012】
また、請求項4の発明は、前記ロープ端部が輪部である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、支柱の左右両側に控えロープ材を連結することにより、支柱の前面のスペースを確保することができ、支柱の前面に横方向のロープ材やその端部に設けた緩衝金具などを配置及び連結することができる。
【0014】
また、請求項2の構成によれば、支柱の前方から加わる力に対して、左右の控えロープ材が均等に対抗することができる。
【0015】
また、請求項3の構成によれば、挿入受け部に控えロープ材のロープ端部を挿入した後、開閉手段により挿入受け部を閉めることにより、支柱に控えロープ材を連結することができ、控えロープ材のロープ端部に開閉する連結手段を設ける必要がない。
【0016】
また、請求項4の構成によれば、輪部を挿入受け部に挿入して控えロープ材に連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる防護柵を採用することにより、従来にない防護柵が得られ、その防護柵を夫々記述する。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の防護柵の実施例について図1〜図15を参照して説明する。防護柵1は、両側に配置する端末パイプ支柱(端末支柱)2の間に複数又は単数の中間パイプ支柱(中間支柱)3を間隔をおいて並設し、これらパイプ支柱2,3に、上下に間隔おいて、横方向のロープ材4を多段に架設すると共に、防護用網体として金属線材で編成した金網5を前側に張設し、例えば、それら支柱2,3は山腹の斜面Sに穿設した縦孔S1に建て込まれる。尚、金網5はロープ材4の前に張設される。また、前記ロープ材4にはワイヤーロープなどが用いられる。この例では、端末パイプ支柱2,2の間に複数の中間パイプ支柱3,3…を配置している。
【0019】
前記端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3は、斜面S1などに建て込まれ、建て込んだ端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3は、連結杆6によって相互に連結される。これら端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3及び連結杆6の上部は、断面形状が円形の鋼管によって形成されている。このような中空構造の端末パイプ支柱2と中間パイプ支柱3は、外側の鋼管に内設する補強体8によって補強されている。なお、図3に示すように、補強体8は断面略三角形をなし、鋼板などの硬質板材を三角形に配置してなる。そして、前記支柱2,3は内部にコンクリートや無収縮モルタルを充填した充填鋼管が用いられる。
【0020】
本発明では、前記連結杆6は断面円形をなし、連結杆6は、好ましくは鋼管の内部にコンクリートや無収縮モルタル(図示せず)を充填した充填鋼管が用いられ、その連結杆6の端部を端末パイプ支柱2及び中間パイプ支柱3に、回動連結機構12,13により、前後方向及び上下方向回動可能に連結している。
【0021】
まず、図7及び図10を参照して、中間パイプ支柱3に設ける前記回動連結機構13について説明すると、この回動連結機構13は、中間パイプ支柱3の上部に回動可能に外嵌する支柱キャップ14と、前記連結杆6の端部を挿入連結する連結外筒部15と、前記支柱キャップ14と連結外筒部15とを上下方向回動可能に連結する回動連結部16,16Aとを備える。
【0022】
前記連結外筒部15は、支柱側を閉塞端部151により閉塞し、反支柱側の開口側の半円筒部152を着脱可能に設け、連結外筒部15に連結杆6の端部6Aを挿入し、連結外筒部15に前記反円筒部152を締め付けることにより、連結外筒部15に対して連結杆6が締め付け固定される。
【0023】
前記回動連結部16Aは、前記支柱キャップ14と連結外筒部15とを回動可能に連結するボルトなどからなる横方向の枢軸17を備える。
【0024】
したがって、中間パイプ支柱3に対して、両側の連結外筒部15は、枢軸17を中心に上下方向に回動し、支柱キャップ14を中心に前後方向に回動可能になっている。
【0025】
次に、前記回動連結機構12は、図7及び図10に示すように、端末パイプ支柱2に支柱キャップ14が平面回動可能に連結され、この端末パイプ支柱2に対して、連結外筒部15は、枢軸17を中心に上下方向に回動し、支柱キャップ14を中心に前後方向に回動可能になっている。
【0026】
尚、連結外筒部18への連結杆6の端部の挿入量を調整することにより、支柱2,2,3間の間隔に連結杆6を合わせて調整することができる。
【0027】
さらに、図7に示すように、端末パイプ支柱2の外周前側には、ロープ材4の端末を連結するための取付部21が上下多段に設けられ、この取付部21には横長形状の孔22が形成されている。そして、ロープ材4の端末は端末金具23により端末パイプ支柱2に揺動可能に連結される。
【0028】
図7〜図9に示すように、 前記端末金具23は、U字状のジョイント金具24と、このジョイント金具24にナット25により固定されるプレート26とを備え、このプレート26に、前記ジョイント金具24の両端部を挿通する一対の孔26A,26Aと、前記ロープ材4の端部を挿通する孔26Bとを穿設し、前記ジョイント金具24の両端部を一側から前記孔26A,26Aに挿通し、その両端部に形成された螺子部24A,24Aに前記ナット25,25を螺合して、ジョイント金具24にプレート26を連結し、前記ロープ材4の端部を他側から前記孔26Bに挿通し、挿通したロープ材4の端部に、前記プレート26に係止するストッパ27を固着してなる。そして、図10に示すように、前記取付部21に形成した孔22に前記ジョイント金具24を挿通して連結している。
【0029】
前記中間パイプ支柱3には前記ロープ材4が係合する係合部31が設けられている。図7,図11及び図12に示すように、この係合部31は、前記ロープ材4に対応して、中間パイプ支柱3の鋼管の前側に多段に設けられ、上下対をなす係合部材32,32を前方に突出して設け、これら係合部材32,32は断面が円形の丸棒などからなり、この丸棒は鋼製などであって、中間パイプ支柱3の鋼管の外周に溶着されており、それら上下の係合部材32,32の間に、前記ロープ材4を側方から挿入可能な挿入受け部33が形成されている。そして、挿入受け部33側は係合部材32,32の円筒形の外周面32G,32Gが位置している。また、上の係合部材32の先端上部に切欠き段部34を形成すると共に、下の係合部材32の先端下部に切欠き段部34を形成し、上下の切欠き段部34,34の対応する位置で係合部材32,32に透孔35,35を穿設し、開閉手段たるボルト36を前記透孔35,35に挿通し、そのボルト36にナット37,37Aを螺合することにより、前記挿入受け部33を閉めることができ、逆に、ナット37,27Aを外してボルト36を抜くことにより、挿入受け部73を開くことができる。
【0030】
また、前記支柱2,3,3,2間には、ロープ材4に加わる衝撃エネルギーを分散する分散維持装置51が複数設けられ、この例では、図5,図7及び図15などに示すように、支柱2,3,3,2間にそれぞれ分散維持装置51が設けられている。この分散維持装置51は、図14などに示すように、縦方向の連結部材たる縦ロープ材52を有し、この縦ロープ材52は、上端にアイボルトからなる輪部53を有し、下端にロック加工部54を設けている。前記連結杆6の前面に、前記縦ロープ材52を連結する係合部31Aを設け、この係合部31Aは、前記係合部材32,32を左右に配置して前記連結杆6の鋼管の前面に配置した以外は、前記係合部31と同一構成をなし、前記ボルト36を前記輪部53に挿通することにより、係合部31Aに縦ロープ材53を連結する。また、前記縦ロープ材52と各段のロープ材4との交差箇所は接続具55により接続され、この接続具55は、ロープ材4が当接する凹部56を備えたプレート57と、このプレート57の上下に端部を挿通したUボルト58,58とを備え、凹部56に係合するようにロープ材4の後側にプレート57を当て、ロープ材4の前側に縦ロープ材52を交差させ、この交差箇所の上下で縦ロープ材52にUボルト58,58を挟み、プレート57に挿通したUボルト58の端部の螺子部にナット59を締め付けることにより接続する。
【0031】
前記各支柱2,3の左右には、左右の控えロープ材61,61が連結され、これら左右の控えロープ材61,61は支柱2,3の前後方向に対して、平面において左右10度程度の角度θをなす。前記控えロープ材61は、支柱側の端部に輪部62を設け、この輪部62は補強金具たるロープシンブル63を備え、その輪部62の端部はロック金具64により固定されている。また、前記控えロープ材61は、反支柱側の端部に輪部65を設け、この輪部65は補強金具たる前記ロープシンブル63を備え、その輪部62の端部は複数のワイヤークリップ66により固定されている。
【0032】
前記支柱2,3の上部左右には、前記輪部65を着脱可能に連結する連結部71が、多段に設けたロープ材4,4の間に設けられ、前記連結部71は、上下対をなす受部材72,72を側方に突出して設け、これら受部材72,72は板材などからなり、支柱2,3の鋼管の外周に溶着されており、それら上下の受部材72,72の間に、前記輪部62を側方から挿入可能な挿入受け部73が形成されている。そして、受部材72,72に透孔75,75を穿設し、開閉手段たるボルト76を前記透孔75,75に挿通し、そのボルト76にナット77,77Aを螺合することにより、前記挿入受け部73を閉めることができ、逆に、ナット77,77Aを外してボルト76を抜くことにより、挿入受け部73を開くことができる。
【0033】
一方、控えロープ材61の山側端は、アンカー81に接続される。このアンカー81は、斜面Sにロックボルト82を挿入固定してなり、そのロックボルト82の上端に、接続装置83を設けてなる。この接続装置83は、ロックボルト82の上端を挿通する孔84を設けたプレート85を備え、このプレート85の前記孔84を挟んだ両側に孔84A,84Aを穿設し、これら孔84A,84AにUボルト86の両端部を挿通し、これら両端部の雄螺子部にナット87,87を螺合し、そのUボルト86を前記輪部65に挿通しておき、また、Uボルト86とは逆方向から前記孔84にロックボルト82の上端を挿通し、このロックボルト82の上端にナット体87を螺合し、これによりアンカー81に控えロープ材61を連結する。
【0034】
ところで、現場での支柱2,3の建て込みにおいては、斜面Sに縦孔S1を穿孔し、支柱2,3の下部を挿入し、グラウト材などを充填して固定する。このように基礎を使用せずに、支柱2,3を建て込んで固定する構造では、深い縦孔S1に長い支柱2,3の下部を挿入する必要がある。これに対して、本実施例では、支柱2,3の上部の左右に連結部71,71を設けているから、これら左右に連結部71,71に、支柱2,3をほぼ水平に保つように吊り具(図示せず)を係合し、支柱2,3を垂直に保った状態で、その下部を縦孔S1に挿入することができ、建て込み作業の効率化を図ることもできる。
【0035】
このように本実施例では、間隔を置いて支柱2,3を立設し、これら支柱2,3の間に防護面たる金網5を設け、支柱2,3と該支柱2,3の前側との間に控えロープ材61を設けた防護柵において、支柱2,3の左右両側に、左右の控えロープ材61,61を連結する連結部を設けたから、支柱2,3の左右両側に控えロープ材61を連結することにより、支柱2,3の前面のスペースを確保することができ、支柱2,3の前面に横方向のロープ材4やその端部に設けた端末金具23や緩衝金具などを配置及び連結することができる。
【0036】
また、このように本実施例では、支柱2,3の前後方向に対する左右の控えロープ材61,61の角度が略等しいから、支柱2,3の前方から加わる力に対して、左右の控えロープ材61,61が均等に対抗することができる。
【0037】
また、このように本実施例では、連結部は、上下の受部材72,72と、これら上下の受部材72,72により形成され控えロープ材61のロープ端部たる輪部62を挿入可能な挿入受け部73と、この挿入受け部73を開閉する開閉手段たるボルト76とを備えるから、挿入受け部73に控えロープ材61の輪部62を挿入した後、ボルト76により挿入受け部73を閉めることにより、支柱2,3に控えロープ材61を連結することができ、控えロープ材61のロープ端部に開閉する連結手段を設ける必要がない。
【0038】
また、このように本実施例では、前記ロープ端部が輪部62であるから、輪部62を挿入受け部73に挿入して控えロープ材61に連結することができる。
【0039】
また、実施例上の効果として、各支柱2,3,3,2の上部を連結杆6で連結することによって、各支柱2,3,3,2の連結強度を高めることができ、さらに、隣合う支柱2,3又は支柱3,3とこれらを連結する連結杆6からなる門形構造において、支柱2,3,3,2の間に連結杆6を設けることにより、門形構造の強度が向上するから、支柱2,3,3,2間隔を広く設定することができ、支柱2,3,3,2の植設作業が容易となる。また、門形構造による強度向上により、支柱2,3の直径寸法を抑えることができ、縦孔S1も小径で済む。このように、新設・既設のいずれの場合においても、支柱2,3に関わる施工を簡略化することができる。
【0040】
また、連結杆6の端部6Aを支柱2,3に前後方向回動可能で且つ上下方向回動可能に連結する回動連結機構12,13を備えるから、各支柱2,3に対して連結杆6が前後方向及び上下方向に回動可能に連結されているので、各支柱2,3と連結杆6の連結部分で防護柵1に加わる落石あるいは雪崩など加わる衝撃を吸収して支柱2,3の損壊を抑制することができる。
【0041】
また、連結杆6が内部に充填材たる無収縮モルタルを充填した充填鋼管であり、回動連結機構12,13は、6連結杆の端部6Aを挿入連結する連結外筒部15を有するから、連結杆6に充填鋼管を用いることにより、優れた変形性能が得られ、衝撃吸収能力が向上し、また、回動連結機構12,13は連結外筒部15を有するから、この連結外筒部15を支柱2,3に回動可能に連結し、この連結外筒部15に連結杆6の端部を挿入して連結したり、連結外筒部18に連結杆6の端部を挿入配置してから連結外筒部15を支柱2,3に連結すればよく、支柱2,3への連結杆6の連結作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、実施例上の効果として、各パイプ支柱2,3の上端部を連結杆6によって相互に連結することによって、各パイプ支柱2,3の連結強度も向上する。しかも、各パイプ支柱2,3を相互に連結するための連結杆6の内部にもモルタルが充填され、防護柵1に衝撃が加わっても、容易に折れ曲がることもない。また、各パイプ支柱2,3と、これを連結する連結杆6とは回動連結機構12,13によって結合することによって、各パイプ支柱2,3と連結杆6とは溶接などのよって剛的に固定されていないので、各パイプ支柱2,3と連結杆6の回動連結機構12,13で防護柵1が受ける衝撃を、吸収することができる。
【実施例2】
【0043】
図16及び図20は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、端末金具23に代えて緩衝具161により端末パイプ支柱2に揺動可能に連結される。
【0044】
この緩衝具161は、図16〜図19に示すように、前記ロープ材4を所定の摩擦力で把持する一対の把持体164,164を備え、これら把持体64,64の合せ面に、ロープ材4に嵌合する嵌合溝65を形成し、両把持体164,164をボルトナットなどの締付手段66により締め付け固定する。相互に固定された把持体164,164の側面には、Uボルト167が係合する係合溝168,168が形成され、この係合溝168,168にUボルト167の両端部167T,167Tが係合する。また、Uボルト167の両端部167T,167Tを挿通するプレート169を備え、このプレート169にはロープ材4の余長部4A側を遊挿する溝部170が形成されている。そして、Uボルト167の途中を前記連結受部28の孔29に挿通連結し、その両端部167T,167T間に、ロープ材4を締め付けた把持体164,164を嵌め入れ、さらに、端部167T,167Tを押さえ板169に挿通し、端部167TZ,167Tにナット171を螺合する。そして、前記一対の把持体164,164により、ロープ材4を所定の摩擦力で把持する把持具172を構成し、また、図20に示すように、緩衝具163は、前記2つの把持具172,172を並べて設けたタイプのものでもよい。このようにUボルト167に複数の把持具172を並べて設けることができ、また、さらに、Uボルト167を長くすれば3個以上の把持具172を並べて設けることもできる。
【0045】
そして、前記余長部4Aの端部には、前記把持具172に係止するストッパ173を固着する。従って、防護柵に落石などの衝撃力が加わり、ロープ材4に張力が発生すると、緩衝具163に対してロープ材4の余長部4Aが摺動し、この摺動はストッパ173が把持具172に係止するまで摺動可能であって、摺動によりエネルギーの一部を吸収できる。
【0046】
このように本実施例においても、支柱2,3の前面に横方向のロープ材4やその端部に設けた端末金具や緩衝金具161などを配置及び連結するスペースが得られ、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、開閉手段は、実施例で示したボルト以外でも、蓋状のものなど各種のものを用いることができる。また、緩衝具は、摺動可能に把持するものであれば、各種のものを用いることができる。さらに、充填材はモルタル以外にも各種のものを用いることができるが、そのモルタルやコンクリートなどセメントを混合してセメント系の充填材を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例を示す控えロープ材と支柱の平面図である。
【図2】同上、控えロープ材と支柱の側面図である。
【図3】同上、支柱の連結部周りの断面図である。
【図4】同上、支柱の連結部箇所の正面図である。
【図5】同上、防護柵の正面図である。
【図6】同上、防護柵の平面図である。
【図7】同上、防護柵の上部の正面図である。
【図8】同上、端末金具を示し、図8(A)はジョイント金具の正面図、図8(B)はプレートの正面図を示す。
【図9】同上、防護柵上部の平面図である。
【図10】同上、防護柵の要部の平面図である。
【図11】同上、係合部を示し、図11(A)は一部を断面にした側面図、図11(B)は平面図である。
【図12】同上、係合部の正面図である。
【図13】同上、分散維持装置の部品を示し、図13(A)は側面図、図13(B)は平面図である。
【図14】同上、分散維持装置の縦ロープ材の側面図である。
【図15】同上、支柱の上部の側面図である。
【図16】本発明の実施例2を示す緩衝具の正面図である。
【図17】同上、緩衝具の平面図である。
【図18】同上、緩衝具の把持具の側面図である。
【図19】同上、緩衝具の側面図である。
【図20】同上、2つの把持具を有する緩衝具の正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 防護柵
2 パイプ支柱(支柱)
3 中間パイプ支柱(支柱)
4 ロープ材(横ロープ材)
5 金網
6 連結杆
61 控えロープ材
62 輪部(ロープ端部)
71 連結部
72 受部材
73 挿入受け部
75 透孔
76 ボルト(開閉手段)
S 斜面
S1 縦孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱の間に防護面を設け、前記支柱と該支柱の前側との間に控えロープ材を設けた防護柵において、前記支柱の左右両側に、左右の前記控えロープ材を連結する連結部を設けたことを特徴とする防護柵。
【請求項2】
前記支柱前後方向に対する前記左右の控えロープ材の角度が略等しいことを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項3】
前記連結部は、上下の受部材と、これら上下の受部材により形成され前記控えロープ材のロープ端部を挿入可能な挿入受け部と、この挿入受け部を開閉する開閉手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項4】
前記ロープ端部が輪部であることを特徴とする請求項3記載の防護柵。
【請求項1】
間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱の間に防護面を設け、前記支柱と該支柱の前側との間に控えロープ材を設けた防護柵において、前記支柱の左右両側に、左右の前記控えロープ材を連結する連結部を設けたことを特徴とする防護柵。
【請求項2】
前記支柱前後方向に対する前記左右の控えロープ材の角度が略等しいことを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項3】
前記連結部は、上下の受部材と、これら上下の受部材により形成され前記控えロープ材のロープ端部を挿入可能な挿入受け部と、この挿入受け部を開閉する開閉手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項4】
前記ロープ端部が輪部であることを特徴とする請求項3記載の防護柵。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−215773(P2009−215773A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60198(P2008−60198)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(501047173)株式会社ライテク (30)
【出願人】(500464528)和光物産株式会社 (24)
【出願人】(000125107)開発コンクリート株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(501047173)株式会社ライテク (30)
【出願人】(500464528)和光物産株式会社 (24)
【出願人】(000125107)開発コンクリート株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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