説明

防錆コーティング膜形成組成物、防錆コーティング膜、その形成方法及びそれを備えた金属材料

【課題】防錆性が要求される様々な金属材料に対して、防錆性及びそれらの耐久性に優れた均一な防錆コーティング膜をより簡単に且つ効率よく形成することを可能とする防錆コーティング膜形成組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、(B)樹脂化合物、及び(C)揮発性溶媒を含有することを特徴とする防錆コーティング膜形成組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆コーティング膜形成組成物、防錆コーティング膜、その形成方法及びそれを備えた金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、防錆添加剤を加えた鉱物油を基油とした防錆油や、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いてコーティングするといった化学的処理により、金属基材表面に防錆性を付与することが行われている。
【0003】
例えば、特開平5−247485号公報(特許文献1)には、鉱物油を基油とし、疎水性シリカ、パラフィン、脂肪酸等からなる防錆グリースが開示されている。しかしながら、このような防錆グリースにおいては、金属の後加工において防錆グリースの除去が必要となるため、洗浄工程の必要性、及び洗浄廃水の処理工程の必要性があるという問題があった。
【0004】
また、特開2004−322573号公報(特許文献2)には、無機板状シリカ粒子と水性の結着剤樹脂成分からなる表面層を形成した金属部材が開示されており、明細書中には、このような金属部材が高いバリヤ性や耐食性を有することが記載されている。しかしながら、このような金属部材は、防錆性の点で未だ必ずしも十分なものではなかった。
【0005】
また、特開2001−240977号公報(特許文献3)には、シランカップリング剤、水分散性シリカ、ジルコニウム化合物、チタニウム化合物からなる金属表面処理剤で金属表面を処理乾燥し、次いでシランカップリング剤、水分散性シリカ、リン含有化合物、樹脂からなる防錆コーティング剤を塗布する金属表面処理方法が開示され、明細書中には、このような金属表面処理方法により高い耐食性、良好な上塗り密着性が付与できることが記載されている。しかしながら、このような水系コーティング剤を用いる場合には、コーティング膜を形成させるため、高温での乾燥及びエージングに数日を要するという問題があった。
【特許文献1】特開平5−247485号公報
【特許文献2】特開2004−322573号公報
【特許文献3】特開2001−240977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、防錆性が要求される様々な金属材料に対して、防錆性及びそれらの耐久性に優れた均一な防錆コーティング膜をより簡単に且つ効率よく形成することを可能とする防錆コーティング膜形成組成物及びその組成方法、並びにそれによって得られた防錆コーティング膜及びそれを備えた金属材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物を樹脂化合物及び揮発性溶媒と組み合わせた防錆コーティング膜形成組成物を用いることにより、金属に対して防錆性及びそれらの耐久性に優れた均一な防錆コーティング膜をより簡単に且つ効率よく形成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の防錆コーティング膜形成組成物は、(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、(B)樹脂化合物、及び(C)揮発性溶媒を含有することを特徴とするものである。本発明の防錆コーティング膜形成組成物においては、(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、(B)樹脂化合物、及び(C)揮発性溶媒を、それらの均一分散物として含有していることが好ましい。
【0009】
本発明の防錆コーティング膜の形成方法は、前記本発明の防錆コーティング膜形成組成物を金属の表面に塗布した後に乾燥させることを特徴とする方法である。
【0010】
また、本発明の防錆コーティング膜は、(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、(B)樹脂化合物、及び(C)揮発性溶媒を含有することを特徴とするものである。本発明の防錆コーティング膜においては、(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物が、バインダーとしての(B)樹脂化合物中に分散していることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の金属材料は、前記本発明の防錆コーティング膜を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防錆が要求される様々な金属材質に対して、防錆性及びそれらの耐久性に優れた均一な防錆コーティング膜をより簡単に且つ効率よく形成することを可能とする防錆コーティング膜形成組成物及びその形成方法、並びにそれによって得られた防錆コーティング膜及び金属材料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
先ず、本発明の防錆コーティング膜形成組成物について説明する。本発明の防錆コーティング膜形成組成物は、(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、(B)樹脂化合物、及び(C)揮発性溶媒を含有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明に用いる(A)成分としての疎水性微細シリカ化合物は、微細シリカの表面のOH基にヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質したものである。かかる疎水性微細シリカ化合物の一次粒子の平均粒子径は5〜50nmであることが好ましい。この平均粒子径が5nm未満であると、防錆コーティング膜形成組成物をコーティングし、乾燥した後に生成する防錆コーティング膜の形成性が劣る傾向になり、そのためコーティング膜から疎水性微細シリカが飛散しやすくなって防錆性が減少する傾向になる。一方、この平均粒子径が50nmを超えると、均一な防錆コーティング膜になりにくくなって防錆性が減少する傾向にある。
【0016】
また、かかる疎水性微細シリカ化合物中の炭素量は2〜5質量%であることが好ましく、2.2〜4質量%であることが特に好ましい。この炭素量が2質量%未満であると微細シリカ表面の疎水性への改質が不十分になる傾向にあり、5質量%を超えると不均一な改質部位が発生しやすくなり、良好な疎水性が妨げられる傾向にある。
【0017】
さらに、本発明に用いる(A)成分の疎水性微細シリカ化合物としては、ヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質する際に、まず微細シリカの表面のOH基にメチルトリクロルシラン、ジメチルジクロルシラン等のアルキルハロゲノシランを接触反応させた後に、さらにヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質した疎水性微細シリカ化合物であることが好ましい。このような本発明に用いる疎水性微細シリカ化合物の製造方法としては、例えば、特許2886037号公報、特許2886105号公報等に開示されている製造方法が挙げられる。また、本発明に用いる疎水性微細シリカ化合物は市販品としても入手することが可能であり、例えば、微細シリカの表面のOH基にヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質したレオロシールHM−20L、HM−30S((株)トクヤマ製)や、微細シリカの表面のOH基にアルキルハロゲノシランを接触反応させた後に、さらにヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質したレオロシールZD−30ST((株)トクヤマ製)等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いる(B)成分としての樹脂化合物は、金属(被処理材)の表面に対して(A)成分の疎水性微細シリカ化合物を担持するためのバインダー、並びに水や空気の浸透を防ぐものとして機能するものである。このような樹脂化合物は特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジンエステル樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、シリコーン樹脂を用いることができ、これらの中でも、ポリウレタン樹脂、アルキルフェノール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジンエステル樹脂、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。このようなポリウレタン樹脂としては、エステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンが特に好ましく用いられる。アルキルフェノール樹脂としては、軟化点が80〜130℃である、ノボラック型のものが特に好ましい。脂環族飽和炭化水素樹脂としては、軟化点が90〜130℃のものが特に好ましい。ロジンエステル樹脂としては、軟化点が120〜130℃である、重合ロジンエステル樹脂が特に好ましい。またシリコーン樹脂としてはメチル系、メチルフェニル系ストレートシリコーン樹脂が特に好ましい。このようなポリウレタン樹脂、アルキルフェノール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジンエステル樹脂、及びシリコーン樹脂は市販品として入手することが可能であり、例えば、エステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンのネオステッカー1200(日華化学(株)製)、アルキルフェノール樹脂のタマノル200N(荒川化学(株)製)、脂環族飽和炭化水素樹脂のアルコンM−90(荒川化学(株)製)、ロジンエステル樹脂のエステルガムAAL(荒川化学(株)製)、シリコーン樹脂のKR−400(信越化学(株)製)を挙げることができる。
【0019】
本発明に用いる(C)成分としての揮発性溶媒は、(A)成分及び(B)成分を分散させるための分散媒として機能するものである。このような揮発性溶媒は特に限定されず、単一の有機溶剤であってもよいし、2種以上の有機溶剤の混合物であってもよく、またこれらの有機溶剤には水が含まれてもよい。
【0020】
本発明で(C)成分の揮発性溶媒として用いる有機溶剤としては、実質的に不活性なものが好ましく、好適な溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコール;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル等のエーテル類;脂肪族系又は芳香族系の炭化水素;シリコーンオイルを挙げることができる。
【0021】
本発明の防錆コーティング膜形成組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分を含有するものであり、それらの均一分散物として含有していることが好ましい。
【0022】
本発明の防錆コーティング膜形成組成物においては、防錆性をより向上させる観点からは(A)成分を増量させ、また防錆性、耐久性(密着性)をより向上させる観点からは(B)成分を増量させることが好ましい傾向にあり、両者を両立させることによってより良好な防錆性と耐久性を備えたコーティング膜が得られる傾向にある。そして、それら成分の相対的な量としては、(A):(B)の配合比率(質量基準)が1:99〜80:20の範囲となるように配合することが好ましく、それによってより良好な防錆性と耐久性(密着性)が達成される傾向にある。(A):(B)の配合比率(質量基準)が1:99未満、すなわち、(B)成分を99質量%を超えた比率で配合すると防錆性が低下する傾向にあり、他方、(A):(B)の配合比率(質量基準)が80:20を超えて、すなわち、(A)成分を80質量%を超えた比率で配合すると膜に隙間が出来やすく防錆性が低下する傾向にある。
【0023】
また、本発明の防錆コーティング膜形成組成物における(C)揮発性溶媒の配合量は特に限定されず、採用する塗布方法等に応じて適宜選択されるが、得られる防錆コーティング膜形成組成物における不揮発分(固形分)の含有量が0.1〜50質量%程度となる量の(C)揮発性溶媒を配合することが一般的に好ましい。
【0024】
本発明においては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を使用時に混合して防錆コーティング膜形成組成物として用いることもできるが、(A)成分及び(B)成分の分散性が弱すぎる場合には、防錆コーティング膜形成組成物の経時での分散安定性が悪くなることにより、防錆コーティング膜中に分散不良による凝集粒子が混在するようになり、防錆性、耐久性(密着性)が低下する傾向にある。従って、本発明の防錆コーティング膜形成組成物を調整する際には係る分散性について十分注意すべきであり、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混合物を高速分散装置を用いて分散させることが好ましい。本発明において使用する(A)成分の疎水性微細シリカ化合物は超微粒子であるので、良好な分散性を得るためには、ホモジナイザー、サンドミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダー、超音波分散或いは高圧ジェットミル分散装置等の高速分散装置を用いて、安定性及び均一性に優れた防錆コーティング膜形成組成物とすることが好ましい。
【0025】
次に、本発明の防錆コーティング膜の形成方法について説明する。
【0026】
本発明の防錆コーティング膜の形成方法は、前記本発明の防錆コーティング膜形成組成物を金属表面に塗布した後に乾燥させることを特徴とする方法である。すなわち、本発明においては、前記(C)成分の揮発性溶媒に前記(A)成分及び(B)成分を分散させた防錆コーティング膜形成組成物を用いて金属の表面にコーティングを行い、溶剤を揮発、乾燥させることによって、防錆性のコーティング膜を形成させることができる。
【0027】
本発明の防錆コーティング膜を形成させる方法において、金属(被処理材)の表面上にコーティングする前記組成物の量は、一般にコーティングで均一に塗布ができる量で充分な量であり、極端に薄い(例えば1〜50nm)膜厚でも防錆性の機能を発揮できるが、実際に使用されるコーティングではもっと厚くてもよい。
【0028】
また、本発明の防錆コーティング膜を形成させる方法においては、そのコーティング方法については特に限定されず、従来のコーティング方法を適用することができる。このようなコーティング方法としては、例えば、刷毛塗り、エアガン若しくはエアレスガン塗装機による直接コーティング;エアゾールスプレー若しくはトリガースプレー形態による直接スプレーコーティング;ローラー式刷毛を用いたコーティング;シート状基体によるコーティングを採用することができる。
【0029】
また、本発明の防錆コーティング膜により優れた特性を発揮させるためには、防錆コーティング膜を形成させるときに、被処理材のコーティング面に対して前処理を施しておくことが好ましい。また、本発明の防錆コーティング膜により優れた耐久性を与えるためには、被処理材の表面を清浄化してから本発明の防錆コーティング膜形成組成物をコーティングすることが好ましい。すなわち、コーティングに先立って、被処理材の表面から有機物の汚染物を実質的に除去しておくことが好ましく、そのような清浄化方法は、例えば、アセトンやエタノール等の有機溶媒を使用した溶媒による清浄化処理が効果的である。
【0030】
本発明の防錆コーティング膜を形成させる方法において、金属の表面に塗布された前記防錆コーティング膜形成組成物を乾燥させる(揮発性溶媒を揮発させる)方法は特に制限されず、本発明においては特に加熱せずに乾燥させることも可能である。すなわち、従来の防錆コーティング膜を形成させる方法においては一般に加熱が必要であったが、本発明の防錆コーティング膜形成組成物を用いた場合には、常温での乾燥で同様の機能を発揮させることができる。なお、本発明において加熱乾燥する方法を採用しても良く、その場合は防錆コーティング膜を形成させる時間をより短縮させることが可能となる傾向にある。
【0031】
次に、本発明の防錆コーティング膜及び本発明の金属材料について説明する。本発明の防錆コーティング膜は、(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、及び(B)樹脂化合物を含有することを特徴とするものである。また、本発明の金属材料は、前記本発明の防錆コーティング膜を備えることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の防錆コーティング膜は、前述の(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、及び(B)樹脂化合物により構成されており、(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物が、バインダーとしての(B)樹脂化合物中に均一に分散していることが好ましい。かかる防錆コーティング膜における(A)成分及び(B)成分の配合比率の好適範囲は前述のとおりである。また、金属の表面に担持される(A)成分及び(B)成分の担持量が0.01〜10g/m程度であることが一般的に好ましい。さらに、本発明の防錆コーティング膜の膜厚も特に限定されないが、10〜30nm程度であることが一般的に好ましい。
【0033】
また、本発明に適用できる金属(被処理材)は特に限定されず、例えば、鉄、銅等の様々な金属からなる基材に対して本発明の防錆コーティング膜を形成させることができる。
【0034】
本発明によれば、上記のような金属(被処理材)に対して、薄膜によって防錆コーティング膜を容易に形成させることができ、それによる上塗り塗装密着性の低下もなく、防錆コーティング膜を取り除くことなく上塗り塗装ができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例に用いた疎水性微細シリカ化合物、樹脂化合物、及び揮発性溶媒は以下の通りである。
【0036】
<ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物>
レオロシールHM−30S((株)トクヤマ製)
一次粒子の平均粒子径:7nm
炭素含有量:3.5質量%
レオロシールZD−30ST((株)トクヤマ製)
一次粒子の平均粒子径:7nm
炭素含有量:2.8質量%。
【0037】
<樹脂化合物>
スーパーエステルA−100(荒川化学(株)製)
特殊ロジンエステル樹脂
不揮発分 100%
タマノル100S(荒川化学(株)製)
アルキルフェノール樹脂
不揮発分 100%
エステルガムAAL(荒川化学(株)製)
ロジンエステル樹脂
不揮発分 100%。
【0038】
<揮発性溶媒>
IPソルベント1016(出光興産(株)製)
イソパラフィン系溶剤
イソプロピルアルコール(試薬1級)。
【0039】
(実施例1)
以下の諸成分:
レオロシールHM−30S((株)トクヤマ製) 2.0質量%
タマノル100S(荒川化学(株)製) 10.0質量%
スーパーエステルA−100(荒川化学(株)製) 10.0質量%
イソプロピルアルコール(試薬1級) 15.0質量%
IPソルベント1016(出光興産(株)製) 63.0質量%
を予備混合した後、ホモジナイザー装置(ゴーリーン社製、商品名:ホモジナイザー、30MPa)を用いて分散処理(5分間)を施し、安定な乳白色をした防錆コーティング膜形成組成物を得た。
【0040】
(実施例2)
以下の諸成分:
レオロシールHM−30S((株)トクヤマ製) 2.0質量%
エステルガムAAL(荒川化学(株)製) 10.0質量%
スーパーエステルA−100(荒川化学(株)製) 10.0質量%
IPソルベント1016(出光興産(株)製) 78.0質量%
を予備混合した後、ホモジナイザー装置(ゴーリーン社製、商品名:ホモジナイザー、30MPa)を用いて分散処理(5分間)を施し、安定な黄白色をした防錆コーティング膜形成組成物を得た。
【0041】
(実施例3)
以下の諸成分:
レオロシールZD−30ST((株)トクヤマ製) 2.0質量%
タマノル100S(荒川化学(株)製) 10.0質量%
スーパーエステルA−100(荒川化学(株)製) 10.0質量%
イソプロピルアルコール(試薬1級) 15.0質量%
IPソルベント1016(出光興産(株)製) 63.0質量%
を予備混合した後、ホモジナイザー装置(ゴーリーン社製、商品名:ホモジナイザー、30MPa)を用いて分散処理(5分間)を施し、安定な乳白色をした防錆コーティング膜形成組成物を得た。
【0042】
(実施例4)
以下の諸成分:
レオロシールZD−30ST((株)トクヤマ製) 2.0質量%
タマノル100S(荒川化学(株)製) 2.0質量%
イソプロピルアルコール(試薬1級) 96.0質量%
を予備混合した後、ホモジナイザー装置(ゴーリーン社製、商品名:ホモジナイザー、30MPa)を用いて分散処理(5分間)を施し、安定な乳白色をした防錆コーティング膜形成組成物を得た。
【0043】
(比較例1)
以下の諸成分:
エステルガムAAL(荒川化学(株)製) 10.0質量%
スーパーエステルA−100(荒川化学(株)製) 10.0質量%
IPソルベント1016(出光興産(株)製) 80.0質量%
を混合し、安定な黄色透明なコーティング膜形成組成物を得た。
【0044】
(比較例2)
以下の諸成分:
タマノル100S(荒川化学(株)製) 10.0質量%
スーパーエステルA−100(荒川化学(株)製) 10.0質量%
イソプロピルアルコール(試薬1級) 15.0質量%
IPソルベント1016(出光興産(株)製) 65.0質量%
を混合し、安定な黄色透明なコーティング膜形成組成物を得た。
【0045】
(比較例3)
市販されている鉱物油系防錆剤であるスーパーオイルスプレー((株)エーゼット製)を防錆剤としてそのまま使用した。
【0046】
[評価用試験板の作製]
コーティング基材(被処理材)として市販の鉄鋼板(SPCC−SB 5cm×2cm)を用い、先ず、表面の残留物を除去するためにアセトンを用いて前処理洗浄を施した。次に、実施例及び比較例で得られたコーティング膜形成組成物に基材を浸漬処理した後に室温で乾燥し、コーティング膜を有する評価用の試験板を得た。
【0047】
[防錆性の評価試験]
5%の食塩水を35℃で試験板の処理面に噴霧し、168時間後の錆の程度を目視にて評価し、下記の基準に基づいて10点満点で判定した。
【0048】
10点:異常なし
9点:10点と8点の間
8点:僅かに錆発生
7〜6点:8点と5点の間
5点:面積の半分に錆発生
4〜2点:5点と1点の間
1点:全面に錆発生。
【0049】
[上塗り塗装密着性の評価試験]
JIS K5400 8.5.2に記載された方法に準拠して、碁盤目1mmのカットを入れた部分のテープ剥離性(剥離の度合い)を目視にて評価し、下記の基準に基づいて10点満点で判定した。
10点:異常なし
9点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が1〜10%以下
8点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が11〜20%以下
7点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が21〜30%以下
6点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が31〜40%以下
5点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が41〜50%以下
4点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が51〜60%以下
3点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が61〜70%以下
2点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が71〜80%以下
1点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が81〜90%以下
0点:測定した碁盤目のうち剥離した割合が91%より大。
【0050】
実施例及び比較例で得られたコーティング膜形成組成物を用いて得られた評価用の試験板について実施した、防錆性及び上塗り塗装密着性の評価試験の結果を表1にまとめて示す。また、比較のため、未処理の基材について同様に評価した結果も併せて表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4で得られた本発明の防錆コーティング膜形成組成物を付与した防錆コーティング膜を備えた鉄鋼板は、防錆性試験において良好な結果を示していることが確認された。また、上塗り塗装密着性試験の結果でも、実施例1〜4で得られた本発明の防錆コーティング膜形成組成物を付与した防錆コーティング膜を備えた鉄鋼板は、上塗り塗装密着性に問題は見られなかった。
【0053】
一方、比較例1〜2のコーティング膜形成組成物を付与したコーティング膜を備えた鉄鋼板は、実施例で得られたものに比べて防錆性がかなり劣ることが確認された。また、比較例3の防錆油で被覆した鉄鋼板は、実施例で得られたものに比べて防錆性がかなり劣り、上塗り塗装密着性が非常に劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、防錆性が要求される様々な金属材料に対して、防錆性及びそれらの耐久性に優れた均一な防錆コーティング膜をより簡単に且つ効率よく形成することを可能とする防錆コーティング膜形成組成物及びその組成方法、並びにそれによって得られた防錆コーティング膜及びそれを備えた金属材料を提供することが可能となる。
【0055】
したがって、本発明の防錆コーティング膜形成組成物は、防錆鋼材加工部品といった分野で幅広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、(B)樹脂化合物、及び(C)揮発性溶媒を含有することを特徴とする防錆コーティング膜形成組成物。
【請求項2】
(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、(B)樹脂化合物、及び(C)揮発性溶媒の均一分散物を含有することを特徴とする請求項1に記載の防錆コーティング膜形成組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防錆コーティング膜形成組成物を金属の表面に塗布した後に乾燥させることを特徴とする防錆コーティング膜の形成方法。
【請求項4】
(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物、及び(B)樹脂化合物を含有することを特徴とする防錆コーティング膜。
【請求項5】
(A)ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物が、バインダーとしての(B)樹脂化合物中に分散していることを特徴とする請求項4に記載の防錆コーティング膜。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の防錆コーティング膜を備えることを特徴とする金属材料。

【公開番号】特開2009−40801(P2009−40801A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203806(P2007−203806)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】