説明

防錆包装材

【課題】金属部品などを包装した時に、材料自身に発熱機能を付与することで、寒冷地でも気化性防錆剤の気化を発現させ、金属の発錆防止機能を有する包装材を提供する。
【解決手段】防錆フィルム層を有する防錆包装材において、該防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とを含有したものである。また、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に、気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とに加えて、更に、酸素吸収剤と水分吸収剤とを含有したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属からなる機械・器具や部品等を包装して、保管、搬送、輸送中に、金属表面が酸化されて発錆したり、破損するのを防止するための防錆包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
防錆包装の目的は、金属材料やその部品に対して、材質、形状、表面仕上げの程度、およびその機能を考慮して、適切な防錆包装材料を用い、輸送・保管などにおける物理的あるいは温湿度、排気ガス、光などの環境から物品の劣化や損傷を防ぐことにある。防錆包装の技術は、第二次世界大戦中の米国において、兵器や軍需品の海上長距離輸送やこれらを高温多湿地域で保管中に発生する錆を防止することを契機に急速に発達した。わが国では1959年(昭和34年)に、MIL−P−116B(米軍規格:防錆包装方法)を参考にして、JIS−Z−0303(さび止め包装方法通則)が制定され、防錆管理に広く利用されている。
【0003】
防錆油等の塗布による防錆を行なえない様な機械・器具、精密機器や電子部品などの保管、搬送、輸送については、気化性防錆剤が多く用いられている。通常、被防錆対象物を包装する際に当該包装体の内部空間に気化性防錆剤を挿入しておき、揮発する防錆成分を被防錆対象物の表面に化学的もしくは物理的に吸着させることによって、大気中の酸素や湿気などによる酸化(腐食)を防止する。
【0004】
通常の気化性防錆剤は、常温で揮発して防錆効果を発揮するものであるため、粉末状あるいは液体状の気化性防錆剤を直接被防錆対象物に散布ないし塗布しただけでは、防錆成分が短期間のうちに揮発してしまい防錆効果を喪失する。また、粉末状や液体状の気化性防錆剤では、それを被防錆対象物に散布あるいは塗布するのに手間がかかり、多孔質の小袋等に気化性防錆剤を別包する必要がある。また、それら防錆成分の担体成分が被防錆対象物の表面に付着すると、特に精密機器等では機能障害を起す原因になることがあり、除去の手間が非常に煩雑である。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1等に開示されているように、上記した気化性防錆剤をポリエチレンなどプラスチックフィルムに塗布あるいは練りこんだ、「防錆フィルム」が多く使われている。しかしながら、寒冷地では気化性防錆剤による発錆防止効果が得られがたい問題がある。気化性防錆剤は低温環境下では気化を起こし難く、防錆対象物への防錆皮膜を生成し難いため、結果的に発錆防止効果がうまく発現しない。そのため、使用方法が簡便で且つ効果のある防錆フィルムを使用するのではなく、塗膜処理や除膜処理作業が煩雑な防錆油を直接防錆対象物へ塗布する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49−1644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した実情を考慮し問題点を克服するために発明されたもので、金属部品などを包装した時に、材料自身に発熱機能を付与することで、寒冷地でも気化性防錆剤の気化を発現させ、金属の発錆防止機能を有する包装材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、防錆フィルム層を有する防錆包装材において、該防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とを含有したものであることを特徴とする防錆包装材である。
【0009】
また本発明の請求項2に係る発明は、前期熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に、気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とに加えて、更に、酸素吸収剤と水分吸収剤とを含有したものであることを特徴とする請求項1に記載する防錆包装材である。
【0010】
また本発明の請求項3に係る発明は、防錆フィルム層を有する防錆包装材において、該防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤を含有する内層と、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に被酸化性金属粉末と酸素吸収剤と水分吸収剤を含有する外層とからなることを特徴とする防錆包装材である。
【0011】
また本発明の請求項4に係る発明は、最外層に易剥離性のガスバリア層を有し、内容物を充填し熱圧で密封後、該ガスバリア層を剥離して用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載する防錆包装材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防錆包装材は、防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とを含有したものであるため、被酸化性金属粉末の酸化反応による発熱が防錆剤気化の引き金となって、寒冷地においても気化性防錆剤の気化を発現させ、金属の発錆防止機能を発揮できる。ここで、被酸化性金属粉末の中でも代表的な還元鉄の酸化反応による発熱機構は以下の化学式で表される。
Fe+3/4O+3/2HO → Fe(OH)+401.8608J/mol
【0013】
熱融着性ポリオレフィン系樹脂層内の還元鉄を酸化させるためには、上記した化学式のとおり、酸素及び水が必要である。本発明の請求項2に記載する防錆包装材は、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に、気化性防錆剤と還元鉄粉末とに加えて、更に、酸素吸収剤と水分吸収剤とを含有したものであるため,層内に環境中の酸素、水分が誘引され還元鉄が酸化反応を起こすことになる。
【0014】
本発明の別の実施形態としての請求項3に記載する防錆包装材は、防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤を含有する内層と、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に還元鉄粉末と酸素吸収剤と水分吸収剤を含有する外層とからなるが、前述した通り、同様に還元鉄の酸化反応による発熱が防錆剤気化の引き金となって、寒冷地においても気化性防錆剤の気化を発現させ、より長期的に金属の発錆防止機能を発揮できる。
【0015】
さらに、最外層に易剥離性のガスバリア層を有し、内容物を充填し熱圧で密封後、該ガスバリア層を剥離して用いられることで、使用前の本発明の発熱および気化機能が保持される。また、外層のガスバリア層が耐熱性に優れるため、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層同士の加工適性に優れる金属製品の充填・密封作業も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の防錆包装材の一実施形態及の3つの例を断面で示す説明図である。
【図2】本発明の防錆包装袋の一実施形態の外観を、断面及び斜視で示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の防錆包装材の一実施形態を断面で示す説明図である。(a)は、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に、気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とに加えて、更に、酸素吸収剤と水分吸収剤とを含有した一例の防錆包装材を示し、(b)は、防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤を含有する内層と、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に被酸化性金属粉末と酸素吸収剤と水分吸収剤を含有する外層とからなる一例を示し、更に(c)は、最外層に易剥離性のガスバリア層を有し、内容物を充填し熱圧で密封後、該ガスバリア層を剥離して用いられる他の例を示す。また、図2は、本発明の防錆包装材を用いて金属部品等の被防錆対象物を密封包装した防錆包装袋の一例の外観を(a)は断面で、(b)は斜視で示す模式図である。
【0018】
本発明の防錆包装材10は、気化性防錆剤1を含有する熱融着性ポリオレフィン系樹脂からなる材料自身に発熱機能を有することが特徴であり、特に、低温下での防錆包装に適用可能である。本発明の防錆包装材を用いた金属加工部品を充填・密封した包装袋は、外部から侵入する空気中の酸素と接触して発熱することで温度が上昇し、気化性防錆剤が包装袋内に気化して、防錆効果が速やかに発揮される。その実施形態としては、気化性防錆剤1を含有する同一層内に発熱機能を有する被酸化性金属粉末2及びその発熱反応の引き金となる酸素吸収剤3と水分吸収剤4を同時に混練して単層で成膜する形態と、気化性防錆剤1を含む内層と、発熱機能を有する被酸化性金属粉末2、酸素吸収剤3及び水分吸収剤4を含む外層を、例えば、共押し出し法で一体として成膜する形態がある。これらは、インフレーション法あるいは押し出しキャスト法、カレンダー法等公知の方法で製膜できる。フィルム厚みは特に問わないが、重量物である場合は内容物保護の観点から80μm〜120μm程度が好ましい。
【0019】
本発明の防錆包装材のベースとなる熱融着性ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、シクロペンタジエンやノルボルネンなどの環状オレフィンを共重合させた、エチレン−環状オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分または完全けん化物、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体あるいはこのエステル化物、あるいはイオン架橋物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体などから選定することが可能である。またこれら熱融着性ポリオレフィン系樹脂の2種以上のブレンド物でも構わない。これらの熱融着性ポリオレフィン系樹脂には、さらに各種添加剤、例えば酸化防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、分散剤、光安定剤など各種添加剤を配合してもかまわない。
【0020】
まず、上記したベースとなる熱融着性ポリオレフィン系樹脂に練りこまれる防錆剤としては気化性防錆剤が望ましく、防錆剤は鉄用途、非鉄用途、マルチメタル用途など被防錆対象物によって選択される。本発明の防錆包装材の特性をより有効に発揮するものとして、ポリオレフィン系樹脂への練り込み性が良好でフィルム化し易く、金属の表面への汚染性の少ないものが望ましい。具体的には、それ自体気化性は有していないが、雰囲気中の水分および炭酸ガス等の酸成分の存在下で加水分解を起こし、鉄鋼材料に対して優れた防錆効果を発揮するNOガスを生成する亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム等の亜硝酸塩があげられる。金属と水酸化物イオンが結合するより前に、気化ガス中の亜硝酸イオンと結合して金属表面に防錆皮膜を形成する。また、それ自身が気化性を有し、金属表面に吸着した水分中に溶解して金属に防錆性能のある皮膜を生成する、安息香酸ナトリウム、亜硝酸塩類のジイソプロピルアンモニウム・ナイトライト(DIPAN)、ジシクロヘキシルアンモニウム・ナイトライト(DICHAN)、ニトロナフタリ
ンアンモニウム・ナイトライト(NITAN)、およびそれらの混合物も使用可能である。また、本発明の防錆包装材には、鉄鋼製品以外の銅及び銅合金に防錆効果のあるベンゾトリアゾールまたはその誘導体を併用することも可能である。なお、これらの気化性防錆剤は人体に有害なものが多く、その取り扱いには注意が必要である。特に、作業員の健康面に配慮すべきものとしてアミン系カルボン酸塩を主成分とする気化性防錆剤が提案されており、その使用が好ましい。また、気化性防錆剤の添加量は、被防錆対象製品の包装空間容積と、防錆期間で選定され、概ね包装内部空間体積に対して5g/m以上の防錆成分の濃度が維持されることが望ましく、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層全体の2質量%から15質量%添加するのが防錆成分の放散性およびフィルムの製膜性、さらには熱シール性の点で好ましい。
【0021】
次に、熱融着性ポリオレフィン系樹脂に練りこまれる発熱材としては被酸化性金属粉末を用いる。被酸化性金属粉末としては、鉄粉、アルミニウム粉などが上げられるが通常は鉄粉を用いる。鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズド鉄粉、電解鉄粉などが用いられるが、本発明においては還元鉄粉が好ましく使用できる。その粒径としては60メッシュ(25.4mm当り60本の網目)の篩目を通過したもの、好ましくは100メッシュ(125.4mm当り100本の網目)の篩目を通過したものが使用できる。配合量は熱融着性ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1.0質量部から100質量部が好ましい。これより少ないと発熱効果が不十分であり、これより多いと添加した樹脂層が脆くなって熱融着性にも欠け、更には、酸化による体積膨張により樹脂層に亀裂が生じ、かえって酸化した鉄の錆が滲み出す問題がある。
【0022】
本発明の防錆包装材は、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に、上記した気化性防錆剤と還元鉄粉末とに加えて、更に、酸素吸収剤と水分吸収剤とを含有することで,層内に環境中の酸素、水分が誘引され還元鉄が酸化反応を起こすことになる。酸素吸収剤は空気中の酸素を吸着して、還元鉄粉末を含有する樹脂層内の酸素濃度を高める働きをするものであり、主に活性炭が使用される。椰子殻炭、竹炭、木粉炭、ピート炭などの粉末や、繊維状活性炭、カーボンブラックなどが挙げられるがこれに限定されない。酸素吸収剤は還元鉄粉100質量部に対して5〜15質量部配合する。
【0023】
水分吸収剤としては、公知の乾燥剤を用いることができる。ここで、乾燥剤としては、酸化カルシウム、ゼオライト、シリカゲル、硫酸マグネシウムや明礬石などの硫酸塩化合物、塩化カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、アルミナ、活性炭、粘土鉱物から選択される少なくとも1種以上からなり、更にポリビニルアルコール(PVA)系やポリエチレングルコール(PEG)系等の吸水性ポリマーを併用することも可能である。乾燥剤の添加量は、水分吸収効果及びフィルム製膜の安定性から、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層の3質量%以上20質量%以下とするのが望ましい。包装空間内に残った水分や外から浸入した水分を吸収・補足することで、上記した酸素吸収剤と共に、還元鉄の酸化反応を促進して低温下でも防錆効果の高い防錆包装材料とする機能を発揮する。
【0024】
また、本発明の防錆包装材は、最外層に易剥離性のガスバリア層を有し、内容物を充填し熱圧で密封後、該ガスバリア層を剥離して用いる形態を取ることで、使用前の本発明の防錆包装材の発熱および防錆剤気化機能が保持される。また、一般に外層のガスバリア層は熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に較べて耐熱性に優れるため、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層同士の熱融着加工適性が向上し、金属製品の充填・密封作業も容易となる。
【0025】
ここで、最外層のバリア層は、内層側に含まれている気化性防錆剤が外気側(内容物封入側と反対側)へ放出されることを抑制し、かつ、外部の空気中の酸素と水分とが発熱性を有する樹脂層中に浸入するのを防止し。内容物を充填し使用するに当たって、剥離することで、発熱および気化機能が発揮される。
【0026】
バリア層を構成するガスバリア性フィルムとしては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などの透明な薄膜をPET等の樹脂フィルム上に蒸着した透明蒸着バリアフィルムとして上市されているものが使用可能である。上記した透明蒸着バリアフィルム以外にも、EVOH(エチレンービニルアルコール共重合体)などのガスバリア性を有するフィルムが使用できる。
【0027】
この最外層に設けるバリア層は、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に剥離可能に密着している必要があるが、その密着強度としては、フィルムの厚さにもよるが、概ね15〜20g/15mm幅(90°剥離)が好ましい。上記バリア性フィルム単体に対して、本発明の熱融着性ポリオレフィン系樹脂層からなる防錆包装材を直接押し出し、圧着することも可能であるが、例えば微粘着性を有するEVA(エチレンビニルアセテート)フィルムとの積層品等の剥離性フィルムを圧着して複合することも可能である。
【0028】
以下に本発明の具体的実施例及び比較例について説明する。なお、実施例及び比較例の結果について、表1にまとめて示す。
【0029】
<実施例1>
LDPEベース樹脂100質量部に対して、鉄用途の気化性防錆剤である安息香酸ナトリウム10質量部、100メッシュ通過の還元鉄粉10質量部、酸素吸収剤としてのカーボンブラック1質量部、及び水分吸収剤としてのゼオライト10質量部を添加し混練したLDPEベースの防錆フィルム80μmを作成した。このフィルムの3方をシールして、包装袋の外寸が、縦:300mm、横:300mm、シール幅:10mmの包装袋を作成した。作成した包装袋に、寸法:150mm×150mm×1.5mmの鋼材を入れ、開口部を熱シールして密封した。この包装袋を30℃環境下で1日保管した後に鋼材を取り出し、気化性防錆剤による防錆被膜の有無を確認するために、鋼材表面に5質量%濃度のNaCl(食塩)水溶液を3滴滴下して、室温環境下に4時間放置し、発錆有無の確認を行った。
【0030】
<実施例2>
実施例1と同時材料を用いて、実施例1と同じ形状の包装袋を作成した。作成した包装袋に、寸法:150mm×150mm×1.5mmの鋼材を入れ、開口部を熱シールして密封した。この包装袋を0℃の低温環境下で1日保管した後に鋼材を取り出し、気化性防錆剤による防錆被膜の有無を確認するために、鋼材表面に5質量%濃度のNaCl(食塩)水溶液を3滴滴下して、室温環境下に4時間放置し、発錆有無の確認を行った。
【0031】
<比較例1>
LDPEベース樹脂100質量部に対して、鉄用途の気化性防錆剤である安息香酸ナトリウム10質量部のみを混練したLDPEベースの防錆フィルム80μmを用いて、実施例1と同じ形状の包装袋を作成した。作成した包装袋に、寸法:150mm×150mm×1.5mmの鋼材を入れ、開口部を熱シールして密封した。この包装袋を30℃環境下で1日保管した後に鋼材を取り出し、気化性防錆剤による防錆被膜の有無を確認するために、鋼材表面に5質量%濃度のNaCl(食塩)水溶液を3滴滴下して、室温環境下に4時間放置し、発錆有無の確認を行った。
【0032】
<比較例2>
LDPEベース樹脂100質量部に対して、鉄用途の気化性防錆剤である安息香酸ナトリウム10質量部のみを混練したLDPEベースの防錆フィルム80μmを用いて、実施例1と同じ形状の包装袋を作成した。作成した包装袋に、寸法:150mm×150mm×1.5mmの鋼材を入れ、開口部を熱シールして密封した。この包装袋を0℃の低温環境
下で1日保管した後に鋼材を取り出し、気化性防錆剤による防錆被膜の有無を確認するために、鋼材表面に5質量%濃度のNaCl(食塩)水溶液を3滴滴下して、室温環境下に4時間放置し、発錆有無の確認を行った。
【0033】
<比較例3>
寸法:150mm×150mm×1.5mmの鋼材に防錆処理を施さずに、鋼材表面に5質量%濃度のNaCl(食塩)水溶液を3滴滴下して、室温環境下に4時間放置し、発錆有無の確認を行った。
【表1】

【0034】
<比較結果>
表1に示す通り、実施例1と比較例1の比較で、本発明の包装材は、いわゆる常温環境下で使用した場合には、従来の気化性防錆剤のみを含有した防錆フィルムと同様に発錆防止効果がえられることがわかる。また、実施例2と比較例2との比較でその発錆状況に差異が見られることから、本発明の包装材は、寒冷環境に保管しても包装材自身が発熱し気化性防錆剤が気化するため、内容物に防錆被膜が形成され、発錆防止効果がえられることがわかる。それに対して、従来の気化性防錆剤のみを含有した防錆フィルムでは、寒冷環境下では防錆効果が極めて低いと判断できる。
以上の結果より、本発明の防錆包装材の有用性が明らかとなった。本発明においては、防錆フィルム層への添加材料が増えるためコストは上がることになるが、寒冷地でも防錆油を使用せずに簡便な防錆処理を施すことができるため、費用対効果は大きいものとなる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・気化性防錆剤 2・・・被酸化性金属粉(還元鉄粉) 3・・・酸素吸収剤4・・・水分吸収剤 5・・・バリア層 6・・・シール部
10・・・防錆包装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防錆フィルム層を有する防錆包装材において、該防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とを含有したものであることを特徴とする防錆包装材。
【請求項2】
前記熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に、気化性防錆剤と被酸化性金属粉末とに加えて、更に、酸素吸収剤と水分吸収剤とを含有したものであることを特徴とする請求項1に記載する防錆包装材。
【請求項3】
防錆フィルム層を有する防錆包装材において、該防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤を含有する内層と、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に被酸化性金属粉末と酸素吸収剤と水分吸収剤を含有する外層とからなることを特徴とする防錆包装材。
【請求項4】
最外層に易剥離性のガスバリア層を有し、内容物を充填し熱圧で密封後、該ガスバリア層を剥離して用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載する防錆包装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−254350(P2010−254350A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107736(P2009−107736)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】