説明

降雨減衰解析装置、区分別減衰量解析装置、降雨減衰解析方法及び区分別減衰量解析プログラム

【課題】 時間とともに変化する降雨による電波の減衰量を解析することができる降雨減衰解析装置を提供する。
【解決手段】 降雨減衰解析装置3は、ある観測地点について観測された10分間ごとの降雨強度を示す地点別雨量データに基づいて、所定時間(1時間)の雨量が所定値となるときの10分間ごとの降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して、この確率分布を示す降雨強度分布データを生成する降雨強度分布解析手段32と、この降雨強度分布解析手段32によって生成された降雨強度分布データに基づいて、所定時間あたりの雨量における電波の減衰量の確率分布を解析して当該確率分布を示す減衰量分布データを生成する減衰解析手段34とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨による電波の減衰を補償する技術に係り、特に降雨による電波の減衰を補償するために、電波の減衰量を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、衛星放送や、人工衛星(以下、衛星という)から送信される放送波(以下、電波という)を用いた通信では、送受信される電波の周波数帯が通常数GHz以上となるため、降雨による電波の減衰(以下、降雨減衰という)が生じる。この降雨減衰によって、受信機や送受信局(以下、単に送受信局という)で受信される番組や通信が一時的に途絶えることがあった。特に、周波数が大きいほど降雨減衰が大きくなるため、将来利用可能となる20GHz程度の準ミリ波以上の周波数帯域では、放送・通信サービスに更に大きな影響を及ぼす。
【0003】
そのため、従来、降雨減衰を統計的に推定し、送受信局から電波を送信する送信電力を予め高めに設定して、送信電力に一定の降雨マージンを与えることで、降雨減衰の補償(降雨減衰補償)を行う機能を有する衛星が開示されている(特許文献1参照)。この衛星は、強い降雨の発生している地域が比較的狭い範囲であることに着目し、強い降雨が発生している期間にその地域だけに、より大きな送信電力を設定して電波を送信することで、衛星の規模の増大を抑えつつ、効果的な降雨減衰補償を行うものである。
【0004】
また、降雨減衰を統計的に推定する様々な手法が提案され、その大半は、1年間である閾値を超える降雨減衰が発生する確率を推定するものである。更に、複数の観測地点について1分間ごとの降雨強度(1分間降雨強度)を観測し、この1分間降雨強度の確率分布に基づいて、観測された降雨による電波の減衰量を推定する方法が開示されている(非特許文献1参照)。この方法では、所定の観測地点における10年間の平均と、特に降雨減衰の大きい月及び年との降雨強度分布及びこの降雨による減衰量について検討している。
【0005】
更に、近年、気象予報技術の発達により、この先に発生する降雨エリアを高い地理的分解能で予測することが可能になっている。例えば、日本国内全域を、5km四方の正方形の単位で分割し、分割された区分(以下、メッシュという)ごとの1時間あたりの雨量(1時間雨量)の予測値が、気象庁から降水短時間予報として発表されている。
【特許文献1】特開2004−193963号公報(段落0009〜0042)
【非特許文献1】森田 和夫、「衛星通信回線における伝搬特性の推定法(準ミリ〜ミリ波帯の場合)」、電気通信研究所研究実用化報告、日本電信電話研究開発本部、1979年8月、第28巻、第8号、p.1661〜1676
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の衛星を用いて降雨減衰補償を行うためには、強い降雨が発生している地域と、その地域における降雨減衰量を予測する必要があるが、従来の年間を通じた発生確率によって降雨減衰量を推定する手法では、衛星が電波を送信する時点においてどの地域にどれだけの大きさの降雨マージンを与える必要があるかを予測することはできない。
【0007】
また、降水短時間予報の1時間雨量の予測値は、降雨マージンを与える必要がある降雨減衰が発生する確率の高い地域を予測することには有益であるが、この1時間の間にどの程度の確率で閾値を超える降雨減衰量となるかは分からなかった。つまり、例えば、1時間の間、降雨強度が一定であると仮定して降雨による減衰量を算出し、降雨マージンを決定することはできても、実際にはこの1時間の間において降雨強度は一定でなく変動するため、実際の降雨減衰を効果的に補償することができない。
【0008】
また、非特許文献1の方法では、複数の観測地点について1分間降雨強度を測定する必要があり、また、例えば1時間のような所定時間内における1分間降雨強度の確率分布は、所定時間ごとの雨量の大きさによって異なる。そのため、非特許文献1に記載されるように、限られた地点について、1分間降雨強度が観測された降雨による電波の減衰量を、観測後に観測値から推定することは可能であるが、例えば、1時間ごと雨量の予測値に基づいて降雨による減衰量を日本全域について解析する場合には、予め複数の観測地点において、様々な1時間ごとの雨量について、1分間降雨強度を観測しておく必要が生じる。そして、降雨強度の確率分布は、観測地点によっても異なるため、誤差を小さくするためには膨大な観測地点について観測データを長期にわたって収集する必要があるが、このような観測データを収集するためには多大なコストと時間がかかるため、入手が困難である。
【0009】
そのため、メッシュごとの1時間雨量の予測値のみでは、降雨による減衰量の予測値を算出することができず、降雨減衰を補償するために、どの地域に対してどの程度の降雨マージンを与えればよいかを予測することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するために成されたもので、時間とともに変化する降雨による電波の減衰量を解析することができる降雨減衰解析装置、区分別減衰量解析装置、降雨減衰解析方法及び区分別減衰量解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の降雨減衰解析装置は、ある観測地点について観測された10分間ごとの降雨強度のうち、所定時間内における雨量が所定値となる前記降雨強度を示す地点別雨量データに基づいて、前記観測地点における前記所定時間あたりの雨量の降雨による電波の減衰量の確率分布を解析する降雨減衰解析装置であって、降雨強度分布解析手段と、減衰解析手段とを備える構成とした。
【0012】
かかる構成によれば、降雨減衰解析装置は、降雨強度分布解析手段によって、地点別雨量データによって示される降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して、この確率分布を示す降雨強度分布データを生成する。また、降雨減衰解析装置は、減衰解析手段によって、降雨強度分布データに基づいて、所定時間あたりの雨量の降雨における減衰量の確率分布を解析して当該確率分布を示す減衰量分布データを生成する。
【0013】
ここで、本発明者らは、10分間ごとの降雨強度の実測値と、1分間ごとの降雨強度の実測値との確率分布について検討を行った。その結果、10分間ごとの降雨強度の実測値及び1分間ごとの降雨強度の確率分布は、観測地点ごとの所定時間あたりの雨量に依存し、観測地点及び所定時間あたりの雨量が同じ場合には、どちらの確率分布も対数正規分布に近い分布となるとともに、2つの分布がほぼ一致することを見出した。そのため、降雨減衰解析装置は、10分間ごとの降雨強度を示す地点別雨量データに基づいて、観測地点ごとの所定時間あたりの雨量が所定値となる降雨の10分間ごとの降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似し、この確率分布を1分間ごとの降雨強度の確率分布とみなすことで、所定時間内における減衰量の確率分布を解析することが可能になる。
【0014】
また、請求項2に記載の区分別減衰量解析装置は、請求項1に記載の降雨減衰解析装置によって生成された、ある観測地点において所定時間あたりの雨量が所定値となる降雨による電波の減衰量の確率分布を示す減衰量分布データに基づいて、前記減衰量の解析対象となる地域内の複数の区分の各々について降雨による前記電波の減衰量を解析する区分別減衰量解析装置であって、減衰量分布データ記憶手段と、雨量データ入力手段と、減衰量分布データ読み出し手段と、電波減衰解析手段とを備える構成とした。
【0015】
かかる構成によれば、区分別減衰量解析装置は、減衰量分布データ記憶手段によって、減衰量分布データを観測地点及び雨量と対応付けて、複数の観測地点及び複数の雨量について記憶する。また、雨量データ入力手段によって、区分ごとの所定時間あたりの雨量を示す雨量データを入力し、減衰量分布データ読み出し手段によって、減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを記憶する減衰量分布データ記憶手段から、区分ごとに、当該区分に予め対応付けられた観測地点と、雨量データによって示される雨量とに対応する減衰量分布データを読み出す。そして、電波減衰解析手段によって、減衰量分布データ読み出し手段で読み出された減衰量分布データによって示される減衰量の確率分布と、この確率分布において減衰量がある値より大きな値をとる確率である超過確率の許容値を示す許容値データとに基づいて、区分ごとに超過確率がこの許容値となる減衰量を解析する。
【0016】
これによって、区分別減衰量解析装置は、区分ごとに、雨量データによって示される所定時間あたりの雨量に対応する減衰量分布データを減衰量分布データ記憶手段から読み出し、超過確率が許容値データによって示される許容値となる減衰量を解析することができる。
【0017】
更に、請求項3に記載の区分別減衰量解析装置は、ある観測地点について観測された所定時間内における雨量が所定値となる降雨の10分間ごとの降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して生成された、当該確率分布を示す降雨強度分布データを、前記観測地点及び前記雨量と対応付けて、複数の前記観測地点及び複数の前記雨量について記憶する降雨強度分布データ記憶装置から前記降雨強度分布データを読み出して、減衰量の解析対象となる地域内の複数の区分の各々について降雨による電波の減衰量を解析する区分別減衰量解析装置であって、雨量データ入力手段と、降雨強度分布データ読み出し手段と、減衰解析手段と、電波減衰解析手段とを備える構成とした。
【0018】
かかる構成によれば、区分別減衰量解析装置は、雨量データ入力手段によって、区分ごとの所定時間あたりの雨量を示す雨量データを入力し、降雨強度分布データ読み出し手段によって、10分間ごとの降雨強度の確率分布を示す降雨強度分布データを記憶する降雨強度分布データ記憶装置から、区分ごとに、各々の区分に予め対応付けられた観測地点と、雨量データによって示される雨量とに対応する降雨強度分布データを読み出す。また、減衰解析手段によって、降雨強度分布データ読み出し手段で読み出された降雨強度分布データに基づいて、所定時間あたりの雨量の降雨による電波の減衰量の確率分布を解析し、電波減衰解析手段によって、この確率分布と、確率分布において減衰量がある値より大きな値をとる確率である超過確率の許容値を示す許容値データとに基づいて区分ごとに超過確率が許容値となる減衰量を解析する。
【0019】
これによって、区分別減衰量解析装置は、区分ごとに、雨量データによって示される所定時間あたりの雨量に対応する、10分間ごとの降雨強度の確率分布を示す降雨強度分布データを降雨強度分布データ記憶装置から読み出し、10分間ごとの降雨強度の確率分布を1分間ごとの降雨強度の確率分布とみなして減衰量分布データを生成して、超過確率が許容値データによって示される許容値となる減衰量を解析することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の降雨減衰解析方法は、ある観測地点について観測された10分間ごとの降雨強度のうち、所定時間内における雨量が所定値となる前記降雨強度を示す地点別雨量データに基づいて、前記観測地点における前記所定時間あたりの雨量の降雨による電波の減衰量の確率分布を解析する降雨減衰解析方法であって、降雨強度分布解析ステップと、減衰解析ステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
この方法によれば、降雨強度分布解析ステップによって、地点別雨量データによって示される降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して、この確率分布を示す降雨強度分布データを生成する。続いて、減衰解析ステップによって、この降雨強度分布データに基づいて、所定時間あたりの雨量の降雨における減衰量の確率分布を解析して当該確率分布を示す減衰量分布データを生成する。
【0022】
これによって、10分間ごとの降雨強度を示す地点別雨量データに基づいて、観測地点ごとの所定時間あたりの所定の雨量の降雨の10分間ごとの降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似することで、所定時間内における減衰量の確率分布を解析することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の区分別減衰量解析プログラムは、請求項1に記載の降雨減衰解析装置によって生成された、ある観測地点において所定時間あたりの雨量が所定値となる降雨による電波の減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを、前記観測地点及び前記雨量と対応付けて、複数の前記観測地点及び複数の前記雨量について記憶する減衰量分布データ記憶装置から前記減衰量分布データを読み出して、前記減衰量の解析対象となる地域内の複数の区分の各々について降雨による前記電波の減衰量を解析するためにコンピュータを、雨量データ入力手段、減衰量分布データ読み出し手段、電波減衰解析手段として機能させることとした。
【0024】
かかる構成によれば、区分別減衰量解析プログラムは、雨量データ入力手段によって、区分ごとの所定時間あたりの雨量を示す雨量データを入力し、減衰量分布データ読み出し手段によって、減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを記憶する減衰量分布データ記憶装置から、区分ごとに、当該区分に予め対応付けられた観測地点と、雨量データによって示される雨量とに対応する減衰量分布データを読み出す。また、電波減衰解析手段によって、減衰量分布データ読み出し手段で読み出された減衰量分布データによって示される減衰量の確率分布と、この確率分布において減衰量がある値より大きな値をとる確率である超過確率の許容値を示す許容値データとに基づいて、区分ごとに超過確率が許容値となる減衰量を解析する。
【0025】
これによって、区分別減衰量解析プログラムは、区分ごとに、雨量データによって示される所定時間あたりの雨量に対応する減衰量分布データを減衰量分布データ記憶装置から読み出し、超過確率が許容値データによって示される許容値となる減衰量を解析することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る降雨減衰解析装置、区分別減衰量解析装置、降雨減衰解析方法及び区分別減衰量解析プログラムでは、以下のような優れた効果を奏する。
【0027】
請求項1又は請求項4に記載の発明によれば、10分間ごとの降雨強度に基づいて、所定時間あたりの雨量が所定値となる降雨による電波の減衰量の確率分布を解析できる。そして、例えば、気象庁の地域気象観測システム(AMeDAS;Automated Meteorological Data Acquisition System)の各々の雨量計によって観測された全国約1300箇所の観測地点の観測データのように、10分間ごとの雨量を観測した観測データは容易に入手できるため、この観測データを用いて電波の減衰量の確率分布を解析することが可能になる。
【0028】
請求項2、請求項3又は請求項5に記載の発明によれば、10分間ごとの降雨強度から解析された減衰量の確率分布に基づいて、区分ごとに、雨量データによって示される所定時間あたりの雨量の降雨による、超過確率が許容値データによって示される許容値となる減衰量を解析することができる。そして、例えば、この減衰量を補償する降雨マージンを送信電力に与えて電波を衛星から送信すると、放送や通信が降雨によって遮断される確率は、この許容値によって示される確率となる。この許容値を十分小さい値に設定して解析された減衰量に基づいて、降雨マージンを与えて電波を送信することで、時間とともに変化する降雨強度に応じた降雨減衰補償を行うことができる。
【0029】
また、区分ごとに減衰量を解析するので、降雨の集中によって減衰量が特に大きくなる範囲を特定でき、例えば、衛星放送の電波をフェーズドアレーアンテナのような、電波を送受信する地域の特定の範囲のみに高い電力で電波を送信できるアンテナによって送信することで、減衰量が特に大きくなる範囲に対して局所的に電波の強度を高くすることができるため、効率よく降雨減衰の補償ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[降雨マージン算出装置による降雨減衰補償の概要]
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態である降雨マージン算出装置1(1A)による降雨減衰補償の概要について説明する。図1は、本発明における降雨マージン算出装置による降雨減衰補償の概要を模式的に示す説明図である。図2は、本発明における降雨マージン算出装置によって算出された降雨マージンを与えて、降雨減衰補償を行う例を示す説明図、(a)は、フェーズドアレーアンテナによって、電波を送受信する地域に降雨マージンを与えた電波を送信し、降雨の集中する一部の範囲に特に高い強度の電波を送信する例を示す模式図、(b)は、(a)において送信される電波の強さを表すグラフである。
【0031】
図1に示すように、降雨マージン算出装置1(1A)は、所定の観測地点において観測された10分間ごとの雨量(10分間雨量)を示す地点別雨量データに基づいて地点ごとの降雨減衰量の確率分布を示す減衰量を解析し、降雨の発生時における衛星放送の電波の減衰量を解析して降雨マージンを算出するものである。
【0032】
なお、ここでは、降雨マージン算出装置1(1A)は、降雨減衰の解析対象となる地域である日本国内全域を、5km四方の正方形の単位で分割した区分ごとの1時間雨量の予測値である雨量データを入力し、メッシュごとに減衰量を解析して、降雨マージンを算出することとした。この雨量データには、例えば、気象庁によって発表される、メッシュごとの1時間雨量の予測値を示す降水短時間予報のデータを用いることができる。なお、この区分は、前記のものに限定されることなく、例えば、10km四方の正方形の単位で分割したものであってもよいし、また、人口の多い所定の地域等としてもよい。
【0033】
また、図2(a)に示すように、この電波を送信するアンテナを、フェーズドアレーアンテナAとすることで、電波を送受信する地域の一部の範囲に特に高い強度の電波(増力ビーム)を送信できる。このフェーズドアレーアンテナAは、電波を送信する複数のホーンh、h、…と、このホーンh、h、…によって送信された電波を反射して、電波を地上の送受信局に送信する反射鏡Rとを備え、各々のホーンhから送信される電波の位相や振幅を調整することで、送信される電波の強度を所望の放射パターンにすることができる。
【0034】
そのため、フェーズドアレーアンテナAが、本発明における降雨マージン算出装置1(1A)によって算出された降雨マージンを送信電力に与えて、降雨による減衰量の大きい範囲D1、D2に増力ビームB1、B2を送信することで、効率よく降雨減衰補償を行うことができる。図2の例では、降雨が集中する範囲D1、D2の減衰量が特に大きいため、図2(b)に示すように、フェーズドアレーアンテナAによって、この範囲D1、D2には、晴天時に必要となる送信電力値Icに、更に降雨マージンIb1、Ib2を加えた増力ビームB1、B2を送信する。
【0035】
[降雨マージン算出装置の構成(第一の実施の形態)]
次に、図3を参照して、本発明における第一の実施の形態である降雨マージン算出装置1の構成について説明する。図3は、本発明における第一の実施の形態である降雨マージン算出装置の構成を示したブロック図である。降雨マージン算出装置1は、外部から地点別雨量データを入力し、この観測地点ごとの降雨減衰量の確率分布を解析するとともに、この降雨減衰量の確率分布を示す減衰量分布データと外部から入力された雨量データと、1時間あたりで放送が遮断されない時間を示す要求放送時間データとに基づいて、降雨マージンを算出するものである。降雨マージン算出装置1は、降雨減衰解析装置3と、メッシュ減衰量解析装置5とを備える。
【0036】
(降雨減衰解析装置の構成)
降雨減衰解析装置3は、地点別雨量データに基づいて、各々の観測地点における衛星放送の電波の減衰量の確率分布を解析するものである。ここでは、降雨減衰解析装置3は、地点別雨量データ入力手段31と、降雨強度分布解析手段32と、解析データ記憶手段33と、減衰解析手段34と、減衰量分布データ出力手段35とを備える。そして、ここでは、降雨減衰解析装置3は、複数の観測地点において継続的に観測された10分間雨量を示す地点別雨量データを入力し、観測地点ごとに衛星放送の電波の減衰量の確率分布を解析して、この減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを、観測地点と、この地点別雨量データによって示される10分間雨量を1時間分加算した1時間雨量とに対応させてメッシュ減衰量解析装置5の減衰量分布データ記憶手段52に記憶することとした。
【0037】
地点別雨量データ入力手段31は、外部から地点別雨量データを入力するものである。ここでは、地点別雨量データ入力手段31は、全国約1300箇所の観測地点に設置されたAMeDASの雨量計によって過去に観測された複数の10分間雨量のデータを、地点別雨量データとして入力することとした。ここで入力された地点別雨量データは、降雨強度分布解析手段32に出力される。
【0038】
降雨強度分布解析手段32は、地点別雨量データ入力手段31から入力された地点別雨量データに基づいて、観測地点ごとに継続して観測された6つの10分間雨量の合計である1時間(所定時間)あたりの雨量を算出し、この1時間雨量が所定値となる時の、当該10分間雨量によって示されるこの10分間における降雨強度(10分間降雨強度)の確率分布を対数正規分布で近似して、当該確率分布を示す降雨強度分布データを生成するものである。ここで生成された降雨強度分布データは、減衰解析手段34の減衰分布算出手段342に出力される。
【0039】
この所定値となる1時間雨量は、例えば、5mm、10mm、15mm、…のように5mmおきの雨量を設定することとしてもよいし、2mm、5mm、10mm、20mm、…のように雨量が小さいほど間隔を狭くして設定することとしてもよいし、また、降雨減衰の生じやすい大きい雨量の間隔を狭くして設定することとしてもよい。そして、降雨強度分布解析手段32は、入力された10分間雨量を1時間分加算して1時間雨量を算出し、この1時間雨量が所定値となる当該6つの10分間雨量の組を複数取り出して、観測地点及び1時間雨量ごとに、10分間雨量によって示される10分間降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似する。そして、この確率分布を示す降雨強度分布データを生成する。
【0040】
ここで、図4を参照(適宜図3参照)して、降雨強度分布解析手段32が、10分間降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似する理由について説明する。図4は、東京及び鹿児島の2つの観測地点において観測された、1時間雨量が5mmとなる降雨の1分間降雨強度及び10分間降雨強度の確率分布を対数正規確率紙にプロットしたグラフである。なお、ここでは、東京における降雨の1分間降雨強度を三角で示し、10分間降雨強度の近似直線を点線で示した。また、鹿児島における降雨の1分間降雨強度を丸で示し、10分間降雨強度の近似直線を一点鎖線で示した。
【0041】
図4に示すように、2箇所の観測地点(東京及び鹿児島)において1分間雨量及び10分間雨量を計測し、1時間雨量が5mmとなる1分間雨量及び10分間雨量に基づいて1分間降雨強度及び10分間降雨強度を算出して、当該1分間降雨強度及び10分間降雨強度の各々の値を超える確率である超過確率を算出して、対数正規確率紙に打点したところ、それぞれの観測地点の1分間降雨強度及び10分間降雨強度の点がほぼ直線上に配列された。そのため、1分間降雨強度及び10分間降雨強度の確率分布は対数正規分布で近似できることが分かった。また、各々の観測地点の1分間降雨強度及び10分間降雨強度の点がほぼ同一直線上に配列されたため、1分間降雨強度及び10分間降雨強度がほぼ同一の確率分布を有することが分かった。そこで、降雨強度分布解析手段32は、地点別雨量データ入力手段31から入力される地点別雨量データに基づいて観測地点及び1時間降雨強度ごとに、10分間雨量から10分間降雨強度を算出し、この10分間降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似することとした。
【0042】
図3に戻って説明を続ける。以下、降雨強度分布解析手段32が、地点別雨量データに基づいて、1時間雨量が所定値となる10分間降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して、当該確率分布を示す降雨強度分布データを生成する方法の例を説明する。降雨強度分布解析手段32は、観測地点及び所定値の1時間雨量ごとに、10分間雨量を1時間分加算した1時間雨量が所定値となる6個の10分間雨量の組を複数取り出す。そして、降雨強度分布解析手段32は、10分間雨量の各々について、値を6倍して10分間降雨強度を算出する。そして、降雨強度分布解析手段32は、各々の組の6個の10分間降雨強度の値を昇順に並び替え、値が小さいものから順に5つの10分間降雨強度の超過確率を83.33%、66.67%、50%、33.33%、16.67%とする。
【0043】
更に、降雨強度分布解析手段32は、複数の組の10分間降雨強度とその超過確率とに基づいて、超過確率p(pは83.33%、66.67%、50%、33.33%、16.67%のいずれか)における10分間降雨強度Rpを、以下の式(1)によって算出する。ここで、Median{}は括弧内の数値の中央値を示す。また、Rp[k]は、n個の組のうちのk番目の組において超過確率がpとなる10分間降雨強度を示す。
Rp=Median{Rp[1]、Rp[2]、…、Rp[n]} …(1)
【0044】
そして、降雨強度分布解析手段32は前記の式(1)によって算出された、超過確率が83.33%、66.67%、50%、33.33%、16.67%の10分間降雨強度の平均値と標準偏差とを算出し、降雨強度分布データとする。なお、前記したように、10分間降雨強度と1分間降雨強度はほぼ一致するため、ここで算出された10分間降雨強度の確率分布の平均値と標準偏差を1分間降雨強度の確率分布の平均値と標準偏差とし、後記する減衰分布算出手段342によって減衰量を算出する際に用いることとした。
【0045】
解析データ記憶手段33は、後記する減衰解析手段34によって減衰量の確率分布を算出するために必要となるデータを予め記憶するもので、半導体メモリ、ハードディスク等の一般的な記憶手段である。ここでは、解析データ記憶手段33に、後記する降雨区間長算出手段341によって、衛星放送の電波の伝送路上において降雨が発生している区間の長さである降雨区間長を算出する際に必要となる、観測地点位置データ、衛星軌道位置データ、及び、雨滴層高度データと、後記する減衰分布算出手段342によって減衰量の確率分布を算出する際に必要となる周波数パラメータとを記憶することとした。
【0046】
なお、観測地点位置データは、観測地点の位置(緯度と経度)を示すものである。また、衛星軌道位置データは、衛星の軌道位置を示すものである。更に、雨滴層高度データは、観測地点ごとの、降雨雲が雨滴から氷晶へと変化する気温0℃高度である雨滴層高度[km]を示すものである。
【0047】
また、周波数パラメータは、降雨区間長の単位長さあたりの減衰量を示す降雨減衰係数A0が、以下の式(2)によって近似される場合において、電波の周波数と偏波とに依存するパラメータγ、nと、周波数とを対応させたものである。ここで、Rは1分間降雨強度[mm/h]である。
0=γ・Rn[dB/km] …(2)
【0048】
減衰解析手段34は、降雨強度分布解析手段32によって生成された降雨強度分布データに基づいて、降雨強度が解析された観測地点及び1時間雨量に対応する減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを生成するものである。ここでは、減衰解析手段34は、降雨区間長算出手段341と、減衰分布算出手段342とを備える。
【0049】
降雨区間長算出手段341は、観測地点ごとに降雨区間長を算出するものである。ここで算出された降雨区間長は、減衰分布算出手段342に出力される。なお、この降雨区間長は、例えば、非特許文献1に記載されている方法等の一般的な方法で算出することができる。ここで、図5を参照(適宜図3参照)して、降雨区間長算出手段341が、降雨区間長を算出する例について説明する。図5は、雨滴層高度と、衛星放送の電波の降雨区間長とを模式的に示した説明図である。
【0050】
図5に示すように、仰角θ[°]の衛星放送の電波の伝送路Tにおいて、観測地点Oから気温0℃高度までの長さD[km]が、降雨区間長となる。そして、降雨区間長算出手段341は、この降雨区間長Dを、以下の式(3)に基づいて算出する。なお、H[km]は、各々の観測地点Oにおける雨滴層高度であり、また、伝送路Tの仰角θは、解析データ記憶手段33に記憶された、観測地点位置データと衛星軌道位置データとに基づいて算出することができる。
D=H・cosecθ[km] …(3)
【0051】
図3に戻って説明を続ける。減衰分布算出手段342は、降雨区間長算出手段341から入力される降雨区間長と、降雨強度分布解析手段32から入力される降雨強度分布データとに基づいて、観測地点ごとの降雨による減衰量の確率分布を解析し、この確率分布を示す減衰量分布データを生成するものである。ここで生成された減衰量分布データは、観測地点と、1時間雨量とに対応付けられて減衰量分布データ出力手段35に出力される。
【0052】
なお、ここでは、減衰量の確率分布が対数正規分布で近似できることとし、減衰分布算出手段342は、降雨強度分布解析手段32によって解析された10分間降雨強度の確率分布の平均値と標準偏差を、1分間降雨強度の確率分布の平均値と標準偏差とみなして、この平均値と標準偏差とを、この1分間降雨強度の確率分布を有する降雨による減衰量の確率分布を示す平均値と標準偏差とに変換して、減衰量分布データとすることとした。ここで、図6を参照(適宜図3参照)して、減衰量の確率分布を対数正規分布で近似する理由について説明する。図6は、東京において観測された、1時間雨量が5mm及び10mmとなる降雨の1分間降雨強度及び減衰量の確率分布を対数正規確率紙にプロットしたグラフである。なお、ここでは、1時間雨量が5mmの時の1分間降雨強度を三角、減衰量を白抜きの三角、1時間雨量が10mmの時の1分間降雨強度を丸、減衰量を白抜きの丸で示した。また、各々の分布を示す点の近似直線も示した。
【0053】
図6に示すように、1時間雨量が5mmと、10mmの場合について、1分間雨量と12GHz帯の電波の降雨による減衰量とを計測し、1分間雨量から算出された1分間降雨強度及び減衰量の各々の値を超える確率である超過確率を算出して、対数正規確率紙に打点したところ、それぞれの点がほぼ直線上に配列された。そのため、1分間降雨強度と同様に、減衰量の確率分布も対数正規分布で近似できることが分かった。
【0054】
図3に戻って説明を続ける。ここで、減衰分布算出手段342は、降雨強度分布解析手段32によって解析された降雨強度分布データによって示される平均値と標準偏差とを、例えば、非特許文献1に記載されている方法等によって、減衰量の確率分布を示す平均値と標準偏差とに変換することができる。
【0055】
以下、減衰分布算出手段342が降雨強度分布データによって示される平均値と標準偏差とを、減衰量の確率分布を示す平均値と標準偏差とに変換する方法について説明する。減衰量Aは、以下の式(4)で表される。ここで、γ、nは、解析データ記憶手段33に記憶された周波数パラメータ、Rは1分間降雨強度[mm/h]、積分は伝送路にわたっての線積分である。
A=γ・∫Rndx[dB] …(4)
【0056】
そして、1分間降雨強度Rが対数正規分布に従い、log10Rの平均値をm、標準偏差をsとすると、減衰量Aの分布は、対数正規分布で近似でき、log10Aの平均値me、標準偏差seは、式(5)、式(6)に示すようになる。なお、Kは、log10e(=0.4343)である。
【0057】
【数1】

【0058】
ここで、μA、σA2は、減衰量Aの平均値及び分散で、それぞれ、以下の式(7)、式(8)によって示される。なお、Dは、前記の式(3)によって求められた降雨区間長、αは、1分間降雨強度Rの空間相関を示すパラメータ(α≒0.35)である。
【0059】
【数2】

【0060】
なお、減衰解析手段34が降雨強度分布データに基づいて減衰量の確率分布を解析する方法は前記の方法に限定されることなく、1分間降雨強度から減衰量を算出する他の方法を適用してもよい。また、ここでは、減衰解析手段34が、降雨強度分布データによって示される平均値と標準偏差を減衰量の確率分布を示す平均値と標準偏差とに変換することとしたが、例えば、減衰解析手段34が、所定の超過確率となる降雨強度を複数算出し、各々の降雨強度を1分間降雨強度として減衰量に変換することとしてもよい。
【0061】
減衰量分布データ出力手段35は、減衰解析手段34から入力された減衰量分布データを外部へ出力するものである。なお、ここでは、減衰量分布データ出力手段35は、減衰量分布データを観測地点と1時間雨量とに対応付けてメッシュ減衰量解析装置5に出力することとした。
【0062】
(メッシュ減衰量解析装置の構成)
次に、メッシュ減衰量解析装置5の構成について説明する。メッシュ減衰量解析装置5は、外部から入力される、メッシュごとの1時間雨量の予測値を示す雨量データと、降雨減衰解析装置3によって生成された減衰量分布データとに基づいて、衛星放送の電波の減衰量を解析し、降雨による減衰を補償する降雨マージンを算出するものである。ここでは、メッシュ減衰量解析装置5は、減衰量分布データ入力手段51と、減衰量分布データ記憶手段52と、雨量データ入力手段53と、減衰量分布データ読み出し手段54と、要求放送時間データ入力手段55と、電波減衰解析手段56と、算出データ記憶手段57と、降雨マージン算出手段58と、降雨マージン出力手段59とを備える。
【0063】
減衰量分布データ入力手段51は、降雨減衰解析装置3の減衰解析手段34によって生成された減衰量分布データを減衰量分布データ出力手段35から入力し、減衰量分布データ記憶手段52に記憶するものである。
【0064】
減衰量分布データ記憶手段(減衰量分布データ記憶装置)52は、降雨減衰解析装置3によって解析された減衰量分布データを観測地点と1時間雨量とに対応付けて記憶するもので、半導体メモリ、ハードディスク等の一般的な記憶手段である。この減衰量分布データは、後記する減衰量分布データ読み出し手段54によって読み出され、電波減衰解析手段56によって、メッシュごとの衛星放送の電波の減衰量を解析する際に参照されて用いられる。
【0065】
雨量データ入力手段53は、メッシュごとの1時間雨量を示す雨量データを外部から入力するものである。なお、ここでは、この雨量データをメッシュごとの1時間雨量の予測値とするが、この雨量データは、予め設定された所定時間あたりの雨量や、AMeDAS等によって所定の単位のメッシュごとに観測された所定時間あたりの雨量の実測値であってもよい。ここで入力された雨量データは、減衰量分布データ読み出し手段54に出力される。
【0066】
減衰量分布データ読み出し手段54は、雨量データ入力手段53から入力された雨量データに基づいて、減衰量分布データ記憶手段52から減衰量分布データを読み出すものである。ここで、すべてのメッシュはその近傍の観測地点と予め対応付けられており、減衰量分布データ読み出し手段54は、メッシュごとに、各々のメッシュに予め対応付けられた観測地点における、雨量データによって示される1時間雨量に対応する減衰量分布データを読み出す。ここで読み出された減衰量分布データは、電波減衰解析手段56に出力される。
【0067】
要求放送時間データ入力手段55は、1時間の放送時間のうち送受信局の受信機における映像の再生が可能となる時間として設定される値を示す要求放送時間データを外部から入力するものである。この要求放送時間データ(許容値データ)は、減衰量分布データにおける超過確率の許容値を示し、例えば、この要求放送時間データが1時間の放送時間のうちの59分を示す場合には、超過確率の許容値として98.33%(59/60)を示している。ここで入力された要求放送時間データは、電波減衰解析手段56に出力される。
【0068】
電波減衰解析手段56は、メッシュごとに、減衰量分布データ読み出し手段54によって読み出された減衰量分布データによって示される減衰量の確率分布において、要求放送時間データ入力手段55から入力される要求放送時間データによって示される超過確率の許容値に対応する減衰量を解析するものである。ここで、例えば、要求放送時間データが、1時間の放送時間のうちの59分を示す場合には、電波減衰解析手段56は、減衰量の確率分布において超過確率が98.33%となる減衰量を求める。ここで解析された減衰量は、放送時間中に変動する降雨による減衰量が98.33%の確率で超過する値を示している。この減衰量は、降雨マージン算出手段58に出力される。
【0069】
算出データ記憶手段57は、後記する降雨マージン算出手段58による降雨マージンの算出に必要となるデータを記憶するもので、半導体メモリ、ハードディスク等の一般的な記憶手段である。ここでは、算出データ記憶手段57に、送受信局データと、衛星データと、伝送条件データとを記憶することとした。
【0070】
送受信局データとは、衛星放送の電波を受信あるいは送受信する地上の送受信局のパラメータであり、例えば、送受信局の受信アンテナの利得値、送信アンテナの実効等方放射電力値(EIRP;Effective Isotropic Radiated Power)、送受信局の受信装置のノイズフィギュア値、アンテナのポインティングロス値、カップリングロス値等である。また、衛星データとは、例えば、衛星の受信アンテナの利得値、送信アンテナの実効等方放射電力値、衛星の受信装置のノイズフィギュア値等である。
【0071】
伝送条件データは、変調方式や誤り訂正方式等の、CN比(career to noise ratio;搬送波電力対雑音電力比)に影響を与える因子に、衛星放送の再生に必要となるCN比を対応させたデータである。この送受信局データ、衛星データ及び伝送条件データは、降雨マージン算出手段58によって降雨マージンを算出する際に参照されて用いられる。
【0072】
降雨マージン算出手段58は、電波減衰解析手段56から入力された減衰量に基づいて、降雨マージンを算出するものである。ここで算出された降雨マージンは降雨マージン出力手段59に出力される。
【0073】
ここで、降雨マージン算出手段58は、算出データ記憶手段57に記憶された送受信局データによって示される送受信局側の利得と、衛星データによって示される衛星側の利得と、酸素吸収による減衰と、電波減衰解析手段56から入力された減衰量となる降雨による減衰の影響をと加えた際に、送受信局の受信機において、伝送条件データによって示される再生に必要なCN比となるために必要な送信電力を、メッシュごとに算出する。送信電力は以下の式(9)によって算出される。ここで、衛星の送信電力をPt[dBm]、送受信局における受信電力をPr[dBm]、送受信局側の利得をGt[dB]、衛星側の利得をGr[dB]、電波の波長をλ[m]、伝送路長をr[m]、酸素吸収による減衰量をa[dB/m]、降雨による減衰量をA[dB]とする。
Pt=Pr−Gt−Gr−20log(λ/4πr)+ar+A …(9)
【0074】
そして、降雨マージン算出手段58は、図2(a)によって示されたフェーズドアレーアンテナAのホーンh、h、…によって電波が送信される各々の範囲に対応する複数のメッシュにおいて、前記の式(9)によって算出された複数の送信電力の中の最大値を、当該ホーンhから送出する電波の送信電力とし、降雨マージンを算出する。これによって、降雨マージン算出手段58は、各々のホーンh、h、…によって電波が送信される範囲においてすべての送受信局の受信機によって、1時間の放送時間のうち要求放送時間データによって示される時間の再生が可能となる降雨マージンを算出することができる。
【0075】
降雨マージン出力手段59は、降雨マージン算出手段58によって算出された降雨マージンを外部に出力するものである。
【0076】
以上のように降雨マージン算出装置1を構成することで、降雨マージン算出装置1は、降雨減衰解析装置3によって、観測地点ごとに、衛星放送の電波の降雨による減衰量の確率分布を解析し、減衰量分布データを生成することができる。そして、メッシュ減衰量解析装置5によって、この減衰量分布データと、外部から入力された雨量データと、要求放送時間データに基づいて、送受信局の受信機において要求放送時間データによって示される時間の再生が可能となるような送信電力を解析し、フェーズドアレーアンテナAのホーンh、h、…(図2参照)の各々の降雨マージンを算出することができる。これによって、フェーズドアレーアンテナAによって、降雨減衰の補償を効果的に行うことができる。
【0077】
なお、特許請求の範囲に記載の区分別減衰量解析装置は、少なくとも減衰量分布データ記憶手段52と、雨量データ入力手段53と、減衰量分布データ読み出し手段54と、電波減衰解析手段56とを備えていればよい。
【0078】
更に、ここでは、雨量データを、メッシュごとの1時間雨量の予測値としたが、降雨マージン算出装置1は、予め設定された所定時間あたりの雨量や、気象レーダ等によって観測された過去の雨量を雨量データとして入力し、この降雨によって生じた減衰量を解析して降雨マージンを算出することとしてもよい。また、所定時間は、例えば、1時間や2時間等であり、10分間より長い時間であればよい。
【0079】
また、メッシュ減衰量解析装置5は、要求放送時間データ入力手段55によって、外部から要求放送時間データを入力することとしたが、超過確率の許容値を示すデータを入力すればよい。また、メッシュ減衰量解析装置5は、図示しない記憶手段に要求放送時間データを記憶し、電波減衰解析手段56によって記憶手段から要求放送時間データを読み出すこととしてもよい。
【0080】
更に、メッシュ減衰量解析装置5は、ここでは降雨減衰解析装置3から減衰量分布データを入力し、当該メッシュ減衰量解析装置5内の減衰量分布データ記憶手段52に記憶することとしたが、メッシュ減衰量解析装置5は、外部に減衰量分布データを記憶する減衰量分布データ記憶装置(図示せず)を備えることとしてもよいし、また、減衰量分布データ記憶手段52に減衰量分布データを予め記憶し、降雨減衰解析装置3とは接続されない構成としてもよい。また、降雨減衰解析装置3及びメッシュ減衰量解析装置5は、衛星からの電波の降雨による減衰量を解析することとしたが、本発明の降雨減衰解析装置及び区分別減衰量解析装置は、衛星からの電波に限定されず、様々な電波の降雨による減衰量を解析することができる。
【0081】
また、降雨減衰解析装置3及びメッシュ減衰量解析装置5は、コンピュータにおいて各手段を各機能プログラムとして実現することも可能であり、各機能プログラムを結合して、降雨減衰解析プログラム及びメッシュ別減衰量解析プログラムとして動作させることも可能である。
【0082】
[降雨マージン算出装置の動作]
次に、図7及び図8(適宜図3参照)を参照して、本発明の第一の実施の形態である降雨マージン算出装置1の降雨減衰解析装置3とメッシュ減衰量解析装置5との動作について説明する。
【0083】
(降雨減衰解析装置の動作)
まず、図7を参照(適宜図3参照)して、降雨減衰解析装置3が、観測地点ごとに所定の1時間雨量に対して衛星放送の電波の減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを生成する動作について説明する。図7は、本発明の第一の実施の形態における降雨減衰解析装置の動作を示したフローチャートである。
【0084】
(降雨強度分布解析ステップ)
降雨減衰解析装置3は、地点別雨量データ入力手段31によって、外部から地点別雨量データを入力する(ステップS31)。続いて、降雨減衰解析装置3は、降雨強度分布解析手段32によって、ステップS31において入力された地点別雨量データに基づいて、観測地点ごとに1時間雨量を算出し、1時間雨量が所定値となる10分間降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して降雨強度分布データを生成する(ステップS32)。
【0085】
(減衰解析ステップ)
そして、降雨減衰解析装置3は、減衰解析手段34の降雨区間長算出手段341によって、ステップS32において10分間降雨強度が解析された観測地点の降雨区間長を算出する(ステップS33)。続いて、降雨減衰解析装置3は、減衰分布算出手段342によって、ステップS32において生成された降雨強度分布データと、ステップS33において算出された降雨区間長とに基づいて、降雨による減衰量の確率分布を解析し、平均値及び標準偏差を観測地点と1時間あたりの雨量とに対応させた減衰量分布データを生成する(ステップS34)。
【0086】
更に、降雨減衰解析装置3は、減衰量分布データ出力手段35によって、ステップS34において生成された減衰量分布データをメッシュ減衰量解析装置5に出力する(ステップS35)。そして、降雨減衰解析装置3は、降雨強度分布解析手段32によって、すべての観測地点及び所定の1時間雨量について、減衰量分布データの生成を行ったかを判断する(ステップS36)。
【0087】
そして、すべての観測地点及び所定の1時間雨量について終了していない場合(ステップS36でNo)には、ステップS32に戻って、降雨減衰解析装置3が、降雨強度分布解析手段32によって、次の1時間雨量あるいは観測地点について、降雨強度分布データを生成する動作以降の動作を行う。また、すべての観測地点及び所定の1時間雨量について終了した場合(ステップS36でYes)には、動作を終了する。
【0088】
(メッシュ減衰量解析装置の動作)
次に、図8を参照(適宜図3参照)して、メッシュ減衰量解析装置5が、外部から入力された雨量データに基づいて、衛星放送の電波の送信電力の降雨マージンを算出する動作について説明する。図8は、本発明の第一の実施の形態におけるメッシュ減衰量解析装置の動作を示したフローチャートである。
【0089】
なお、ここでは、メッシュ減衰量解析装置5が、減衰量分布データ入力手段51によって、複数の観測地点及び1時間雨量についての減衰量分布データを降雨減衰解析装置3から入力して、既に減衰量分布データ記憶手段52に記憶していることとし、これ以降の動作について説明する。
【0090】
(雨量データ入力手段ステップ)
メッシュ減衰量解析装置5は、雨量データ入力手段53によって、外部から雨量データを入力する。また、メッシュ減衰量解析装置5は、要求放送時間データ入力手段55によって、外部から要求放送時間データを入力する(ステップS51)。
【0091】
(減衰量分布データ読み出しステップ)
そして、メッシュ減衰量解析装置5は、減衰量分布データ読み出し手段54によって、メッシュごとに、減衰量分布データ記憶手段52から、メッシュに予め対応付けられた観測地点と、ステップS51において入力された雨量データによって示される当該メッシュの1時間雨量とに対応する減衰量分布データを読み出す(ステップS52)。
【0092】
(電波減衰解析ステップ)
更に、メッシュ減衰量解析装置5は、電波減衰解析手段56によって、ステップS51において入力された要求放送時間データによって示される超過確率の許容値に基づいて、メッシュごとに、ステップS52において読み出された減衰量分布データにおいて、超過確率がこの許容値となる減衰量を解析する(ステップS53)。
【0093】
そして、メッシュ減衰量解析装置5は、電波減衰解析手段56によって、ステップS51において入力された雨量データに示されたすべてのメッシュについて、超過確率の許容値に対応する減衰量の解析を行ったかを判断する(ステップS54)。そして、すべてのメッシュについて終了していない場合(ステップS54でNo)には、ステップS52に戻って、メッシュ減衰量解析装置5が、減衰量分布データ読み出し手段54によって、減衰量分布データ記憶手段52から、次のメッシュについての減衰量分布データを読み出す動作以降の動作を行う。
【0094】
また、すべてのメッシュについて終了した場合(ステップS54でYes)には、メッシュ減衰量解析装置5は、降雨マージン算出手段58によって、ステップS53において解析された減衰量に基づいてメッシュごとに必要な送信電力を算出し、フェーズドアレーアンテナAのホーンh、h、…(図2参照)によって電波が送信される各々の範囲に対応する複数のメッシュに対して算出された複数の送信電力値の中の最大値を、該当する送信範囲に割り当て、電波の送信電力として降雨マージンを算出する(ステップS55)。
【0095】
そして、メッシュ減衰量解析装置5は、降雨マージン出力手段59によって、ステップS55において生成された降雨マージンを出力し(ステップS56)、動作を終了する。
【0096】
[降雨マージン算出装置の構成(第二の実施の形態)]
次に、図9(適宜図3参照)を参照して、本発明における第二の実施の形態である降雨マージン算出装置1Aの構成について説明する。図9は、本発明における第二の実施の形態である降雨マージン算出装置の構成を示したブロック図である。図9に示すように、降雨マージン算出装置1Aは、外部から地点別雨量データを入力し、この観測地点ごとの降雨強度の確率分布を解析するとともに、この降雨強度の確率分布を示す降雨強度分布データと、外部から入力された雨量データと、1時間あたりで放送が遮断されない時間を示す要求放送時間データとに基づいて、降雨マージンを算出するものである。降雨マージン算出装置1Aは、降雨減衰解析装置3Aと、メッシュ減衰量解析装置5Aとを備える。
【0097】
(降雨減衰解析装置の構成)
降雨減衰解析装置3Aは、地点別雨量データに基づいて、各々の観測地点における10分間降雨強度の確率分布を解析するものである。この降雨減衰解析装置3Aは、降雨減衰解析装置3の解析データ記憶手段33と、減衰解析手段34と、減衰量分布データ出力手段35とを備えず、降雨強度分布解析手段32の代わりに降雨強度分布解析手段32Aを備え、更に、降雨強度分布データ出力手段36Aを備える。なお、降雨減衰解析装置3A内の地点別雨量データ入力手段31は、図3に示したものと同一であるので、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0098】
降雨強度分布解析手段32Aは、地点別雨量データ入力手段31から入力された地点別雨量データに基づいて、1時間雨量が所定値となる、観測地点ごとの10分間降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して、当該確率分布を示す降雨強度分布データを生成するものである。ここでは、10分間降雨強度の確率分布の平均値と標準偏差を降雨強度布データとし、観測地点及び1時間雨量と対応させることとした。このようにして生成された降雨強度分布データは、降雨強度分布データ出力手段36Aに出力される。
【0099】
降雨強度分布データ出力手段36Aは、降雨強度分布解析手段32Aから入力された降雨強度分布データを外部へ出力するものである。なお、ここでは、降雨強度分布データ出力手段36Aは、降雨強度分布データをメッシュ減衰量解析装置5Aに出力することとした。なお、この降雨強度分布データ出力手段36Aは、減衰量分布データ出力手段35(図3)に比べて出力するデータを減衰量分布データから降雨強度分布データとしただけで機能は同じものである。
【0100】
(メッシュ減衰量解析装置の構成)
メッシュ減衰量解析装置5Aは、外部から入力される、メッシュごとの1時間雨量の予測値を示す雨量データと、降雨減衰解析装置3Aによって算出された降雨強度分布データとに基づいて、衛星放送の電波の減衰量を解析し、降雨による減衰を補償する降雨マージンを算出するものである。このメッシュ減衰量解析装置5Aは、減衰量分布データ入力手段51と、減衰量分布データ記憶手段52と、減衰量分布データ読み出し手段54とを備えず、雨量データ入力手段53と、電波減衰解析手段56との代わりに雨量データ入力手段53Aと、電波減衰解析手段56Aとを備え、更に、降雨強度分布データ入力手段61Aと、降雨強度分布データ記憶手段62Aと、降雨強度分布データ読み出し手段64Aと、解析データ記憶手段33Aと、減衰解析手段34Aとを備える。なお、メッシュ減衰量解析装置5A内の降雨強度分布データ入力手段61A、降雨強度分布データ記憶手段62A、雨量データ入力手段53A、降雨強度分布データ読み出し手段64A、解析データ記憶手段33A及び減衰解析手段34A、電波減衰解析手段56A以外の構成は、図3に示したものと同一であるので、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0101】
降雨強度分布データ入力手段61Aは、降雨減衰解析装置3Aの降雨強度分布解析手段32Aによって生成された降雨強度分布データを降雨強度分布データ出力手段36Aから入力し、降雨強度分布データ記憶手段62Aに記憶するものである。なお、この降雨強度分布データ入力手段61Aは、減衰量分布データ入力手段51(図3)に比べて入力するデータを減衰量分布データから降雨強度分布データとしただけで機能は同じものである。
【0102】
降雨強度分布データ記憶手段(降雨強度分布データ記憶装置)62Aは、降雨減衰解析装置3Aによって解析された降雨強度分布データを観測地点及び1時間雨量と対応付けて記憶するもので、半導体メモリ、ハードディスク等の一般的な記憶手段である。この降雨強度分布データは、後記する降雨強度分布データ読み出し手段64Aによって読み出され、減衰解析手段34Aによって、観測地点ごとの衛星放送の電波の減衰量の確率分布を解析する際に参照されて用いられる。
【0103】
雨量データ入力手段53Aは、メッシュごとの1時間雨量を示す雨量データを外部から入力するものである。ここで入力された雨量データは、降雨強度分布データ読み出し手段64Aに出力される。なお、この降雨強度分布データ出力手段36Aは、減衰量分布データ出力手段35(図3)に比べて、雨量データの出力先を減衰量分布データ読み出し手段54から降雨強度分布データ読み出し手段64Aとしただけで機能は同じものである。
【0104】
降雨強度分布データ読み出し手段64Aは、雨量データ入力手段53Aから入力された雨量データに基づいて、降雨強度分布データ記憶手段62Aから、各々のメッシュに予め対応付けられた観測地点における、雨量データによって示される1時間雨量に対応する降雨強度分布データを読み出すものである。ここで読み出された減衰量分布データは、減衰解析手段34Aに出力される。
【0105】
解析データ記憶手段33Aは、後記する減衰解析手段34Aによって減衰量の確率分布を算出するために必要となるデータを予め記憶するもので、半導体メモリ、ハードディスク等の一般的な記憶手段である。ここでは、解析データ記憶手段33Aに、観測地点位置データ、衛星軌道位置データ、雨滴層高度データ及び周波数パラメータを記憶することとした。なお、この解析データ記憶手段33Aは、解析データ記憶手段33(図3)に比べてメッシュ減衰量解析装置5Aに含まれることとしただけで記憶されるデータは同じものである。
【0106】
減衰解析手段34Aは、降雨強度分布データ読み出し手段64Aによって読み出された降雨強度分布データに基づいて、減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを生成するものである。ここでは、減衰解析手段34Aは、降雨区間長算出手段341と、減衰分布算出手段342Aとを備える。なお、降雨区間長算出手段341は、図3に示したものと同一であるので、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0107】
減衰分布算出手段342Aは、降雨区間長算出手段341から入力される降雨区間長と、降雨強度分布データ読み出し手段64Aから入力される降雨強度分布データとに基づいて、観測地点ごとの降雨による減衰量の確率分布を解析するものである。ここで解析された確率分布を示す減衰量分布データは、減衰量分布データ出力手段35に出力される。
【0108】
電波減衰解析手段56Aは、メッシュごとに、減衰解析手段34Aによって生成された減衰量分布データによって示される減衰量の確率分布において、要求放送時間データ入力手段55から入力される要求放送時間データによって示される超過確率の許容値に対応する減衰量を解析するものである。この減衰量は、降雨マージン算出手段58に出力される。なお、この電波減衰解析手段56Aは、電波減衰解析手段56(図3)に比べて、減衰量分布データの入力元を減衰量分布データ読み出し手段54から減衰解析手段34Aとしただけで機能は同じものである。
【0109】
これによって、降雨マージン算出装置1Aは、メッシュごとの1時間雨量の予測値に基づいて、1時間の放送時間のうち要求放送時間データによって示される時間の再生を可能とするための降雨マージンを算出することができる。
【0110】
なお、特許請求の範囲に記載の区分別減衰量解析装置は、少なくとも雨量データ入力手段53Aと、降雨強度分布データ読み出し手段64Aと、減衰解析手段34Aと、電波減衰解析手段56Aとを備えていればよい。
【0111】
また、降雨減衰解析装置3A及びメッシュ減衰量解析装置5Aは、コンピュータにおいて各手段を各機能プログラムとして実現することも可能であり、各機能プログラムを結合して、降雨減衰解析プログラム及びメッシュ別減衰量解析プログラムとして動作させることも可能である。
【0112】
[降雨マージン算出装置の動作(第二の実施の形態)]
次に、図10(適宜図9参照)を参照して、本発明の第二の実施の形態である降雨マージン算出装置1Aの動作について説明する。図10は、本発明の第二の実施の形態におけるメッシュ減衰量解析装置の動作を示したフローチャートである。なお、ここでは、降雨減衰解析装置3Aが、複数の観測地点及び1時間雨量についての降雨強度分布データを生成し、メッシュ減衰量解析装置5Aが、降雨強度分布データ入力手段61Aによってこの降雨強度分布データを入力して、降雨強度分布データ記憶手段62Aに記憶していることとし、これ以降のメッシュ減衰量解析装置5Aの動作について説明する。
【0113】
(雨量データ入力手段ステップ)
メッシュ減衰量解析装置5Aは、雨量データ入力手段53Aによって、外部から雨量データを入力する。また、メッシュ減衰量解析装置5Aは、要求放送時間データ入力手段55によって、外部から要求放送時間データを入力する(ステップS61)。
【0114】
(降雨強度分布データ読み出しステップ)
そして、メッシュ減衰量解析装置5Aは、降雨強度分布データ読み出し手段64Aによって、メッシュごとに、降雨強度分布データ記憶手段62Aから、メッシュに予め対応付けられた観測地点と、ステップS61において入力された雨量データによって示される当該メッシュの1時間雨量とに対応する降雨強度分布データを読み出す(ステップS62)。
【0115】
(減衰解析ステップ)
そして、メッシュ減衰量解析装置5Aは、減衰解析手段34Aの降雨区間長算出手段341によって、ステップS62において読み出された降雨強度分布データの観測地点における降雨区間長を算出する(ステップS63)。続いて、メッシュ減衰量解析装置5Aは、減衰分布算出手段342Aによって、ステップS62において読み出された降雨強度分布データと、ステップS63において算出された降雨区間長とに基づいて、降雨による減衰量の確率分布を解析し、平均値及び標準偏差を観測地点と1時間あたりの雨量とに対応させた減衰量分布データを生成する(ステップS64)。
【0116】
(電波減衰解析ステップ)
更に、メッシュ減衰量解析装置5Aは、電波減衰解析手段56Aによって、ステップS61において入力された要求放送時間データによって示される超過確率の許容値に基づいて、メッシュごとに、ステップS64において生成された減衰量分布データにおいて、超過確率がこの許容値となる減衰量を解析する(ステップS65)。
【0117】
そして、メッシュ減衰量解析装置5Aは、電波減衰解析手段56Aによって、ステップS61において入力された雨量データに示されたすべてのメッシュについて、超過確率の許容値に対応する減衰量の解析を行ったかを判断する(ステップS66)。そして、すべてのメッシュについて終了していない場合(ステップS66でNo)には、ステップS62に戻って、メッシュ減衰量解析装置5Aが、降雨強度分布データ読み出し手段64Aによって、降雨強度分布データ記憶手段62Aから、次のメッシュについての降雨強度分布データを読み出す動作以降の動作を行う。
【0118】
また、すべてのメッシュについて終了した場合(ステップS66でYes)には、メッシュ減衰量解析装置5Aは、降雨マージン算出手段58によって、ステップS65において解析された減衰量に基づいてメッシュごとに必要な送信電力を算出し、フェーズドアレーアンテナAのホーンh、h、…(図2参照)によって電波が送信される各々の範囲に対応する複数のメッシュに対して算出された複数の送信電力の中の最大値を、該当する送信範囲に割り当てる電波の送信電力として、降雨マージンを算出する。(ステップS67)。
【0119】
そして、メッシュ減衰量解析装置5Aは、降雨マージン出力手段59によって、ステップS67において生成された降雨マージンを出力し(ステップS68)、動作を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明における第一の実施の形態である降雨マージン算出装置による降雨減衰補償の概要を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明における第一の実施の形態である降雨マージン算出装置によって算出された降雨マージンを与えて、降雨減衰補償を行う例を示す説明図、(a)は、フェーズドアレーアンテナによって、電波を送受信する地域に降雨マージンを与えた電波を送信し、降雨の集中する一部の範囲に特に高い強度の電波を送信する例を示す模式図、(b)は、(a)において送信される電波の強さを表すグラフである。
【図3】本発明における第一の実施の形態である降雨マージン算出装置の構成を示したブロック図である。
【図4】東京及び鹿児島の2つの観測地点において観測された、1時間雨量が5mmとなる降雨の1分間降雨強度及び10分間降雨強度の確率分布を対数正規確率紙にプロットしたグラフである。
【図5】本発明の第一の実施の形態における降雨減衰解析装置の降雨区間長算出手段によって算出される衛星放送の電波の降雨区間長と、雨滴層高度とを模式的に示した説明図である。
【図6】東京において観測された、1時間雨量が5mm及び10mmとなる降雨の1分間降雨強度及び減衰量の確率分布を対数正規確率紙にプロットしたグラフである。
【図7】本発明の第一の実施の形態における降雨減衰解析装置の動作を示したフローチャートである。
【図8】本発明の第一の実施の形態におけるメッシュ減衰量解析装置の動作を示したフローチャートである。
【図9】本発明における第二の実施の形態である降雨マージン算出装置の構成を示したブロック図である。
【図10】本発明の第二の実施の形態におけるメッシュ減衰量解析装置の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0121】
3、3A 降雨減衰解析装置
31 地点別雨量データ入力手段
32、32A 降雨強度分布解析手段
34、34A 減衰解析手段
52 減衰量分布データ記憶手段(減衰量分布データ記憶装置)
53、53A 雨量データ入力手段
54 減衰量分布データ読み出し手段
56、56A 電波減衰解析手段
62A 降雨強度分布データ記憶手段(降雨強度分布データ記憶装置)
64A 降雨強度分布データ読み出し手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある観測地点について観測された10分間ごとの降雨強度のうち、所定時間内における雨量が所定値となる前記降雨強度を示す地点別雨量データに基づいて、前記観測地点における前記所定時間あたりの雨量の降雨による電波の減衰量の確率分布を解析する降雨減衰解析装置であって、
前記地点別雨量データによって示される前記降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して、前記確率分布を示す降雨強度分布データを生成する降雨強度分布解析手段と、
この降雨強度分布解析手段によって生成された降雨強度分布データに基づいて、前記所定時間あたりの雨量の降雨における前記減衰量の確率分布を解析して当該確率分布を示す減衰量分布データを生成する減衰解析手段とを備えることを特徴とする降雨減衰解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の降雨減衰解析装置によって生成された、ある観測地点において所定時間あたりの雨量が所定値となる降雨による電波の減衰量の確率分布を示す減衰量分布データに基づいて、前記減衰量の解析対象となる地域内の複数の区分の各々について降雨による前記電波の減衰量を解析する区分別減衰量解析装置であって、
前記減衰量分布データを前記観測地点及び前記雨量と対応付けて、複数の前記観測地点及び複数の前記雨量について記憶する減衰量分布データ記憶手段と、
前記区分ごとの所定時間あたりの雨量を示す雨量データを入力する雨量データ入力手段と、
前記減衰量分布データ記憶手段から、前記区分ごとに、当該区分に予め対応付けられた前記観測地点と、前記雨量データによって示される前記雨量とに対応する減衰量分布データを読み出す減衰量分布データ読み出し手段と、
この減衰量分布データ読み出し手段によって読み出された前記減衰量分布データによって示される前記減衰量の確率分布と、前記確率分布において前記減衰量がある値より大きな値をとる確率である超過確率の許容値を示す許容値データとに基づいて、前記区分ごとに前記超過確率が前記許容値となる減衰量を解析する電波減衰解析手段とを備えることを特徴とする区分別減衰量解析装置。
【請求項3】
ある観測地点について観測された所定時間内における雨量が所定値となる降雨の10分間ごとの降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して生成された、当該確率分布を示す降雨強度分布データを、前記観測地点及び前記雨量と対応付けて、複数の前記観測地点及び複数の前記雨量について記憶する降雨強度分布データ記憶装置から前記降雨強度分布データを読み出して、減衰量の解析対象となる地域内の複数の区分の各々について降雨による電波の減衰量を解析する区分別減衰量解析装置であって、
前記区分ごとの所定時間あたりの雨量を示す雨量データを入力する雨量データ入力手段と、
前記降雨強度分布データ記憶装置から、前記区分ごとに、当該区分に予め対応付けられた前記観測地点と、前記雨量データによって示される前記雨量とに対応する降雨強度分布データを読み出す降雨強度分布データ読み出し手段と、
この降雨強度分布データ読み出し手段によって読み出された降雨強度分布データに基づいて、前記所定時間あたりの雨量の降雨による前記電波の減衰量の確率分布を解析する減衰解析手段と、
この減衰解析手段によって解析された前記減衰量の確率分布と、前記確率分布において前記減衰量がある値より大きな値をとる確率である超過確率の許容値を示す許容値データとに基づいて、前記区分ごとに前記超過確率が前記許容値となる減衰量を解析する電波減衰解析手段とを備えることを特徴とする区分別減衰量解析装置。
【請求項4】
ある観測地点について観測された10分間ごとの降雨強度のうち、所定時間内における雨量が所定値となる前記降雨強度を示す地点別雨量データに基づいて、前記観測地点における前記所定時間あたりの雨量の降雨による電波の減衰量の確率分布を解析する降雨減衰解析方法であって、
前記地点別雨量データによって示される前記降雨強度の確率分布を対数正規分布で近似して、この確率分布を示す降雨強度分布データを生成する降雨強度分布解析ステップと、
この降雨強度分布解析ステップにおいて生成された降雨強度分布データに基づいて、前記所定時間あたりの雨量の降雨における前記減衰量の確率分布を解析して当該確率分布を示す減衰量分布データを生成する減衰解析ステップとを含むことを特徴とする降雨減衰解析方法。
【請求項5】
請求項1に記載の降雨減衰解析装置によって生成された、ある観測地点において所定時間あたりの雨量が所定値となる降雨による電波の減衰量の確率分布を示す減衰量分布データを、前記観測地点及び前記雨量と対応付けて、複数の前記観測地点及び複数の前記雨量について記憶する減衰量分布データ記憶装置から前記減衰量分布データを読み出して、前記減衰量の解析対象となる地域内の複数の区分の各々について降雨による前記電波の減衰量を解析するためにコンピュータを、
前記区分ごとの所定時間あたりの雨量を示す雨量データを入力する雨量データ入力手段、
前記減衰量分布データ記憶装置から、前記区分ごとに、当該区分に予め対応付けられた前記観測地点と、前記雨量データによって示される前記雨量とに対応する減衰量分布データを読み出す減衰量分布データ読み出し手段、
この減衰量分布データ読み出し手段によって読み出された前記減衰量分布データによって示される前記減衰量の確率分布と、前記確率分布において前記減衰量がある値より大きな値をとる確率である超過確率の許容値を示す許容値データとに基づいて、前記区分ごとに前記超過確率が前記許容値となる減衰量を解析する電波減衰解析手段として機能させることを特徴とする区分別減衰量解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−246375(P2006−246375A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62708(P2005−62708)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】