説明

除細動器中における心臓分路電流の補償

1対の電極を有し除細動ショックを供給する除細動器及びその方法を提供する。除細動器は、電極を経て患者へと放電して2相電圧又は電流パルスを供給し得るエネルギー源回路を含む。エネルギー源蓄積回路はブリッジ回路の両端に結合され、除細動パルスを1対の電極を経て患者に供給する。コントローラが全除細動プロセスを制御し、ECGフロントエンドにより患者から要ショックリズムを検出する。コントローラは、選択したモードに適合させする除細動器のエネルギー源を決定して適切な除細動ショックを供給する。選択モードは、例えば体内電極、成人用で又は小児用体外電極などのコード化アクセサリを接続することにより入力される。インピーダンス補償を達成するために他のタイプの患者依存パラメータも使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体の電気的測定及びモニタリングに使用する装置、特に患者の心臓への電気エネルギーの供給を最適化する体外式除細動器(デフビリレータ)/心臓除細動装置(カルディオバータ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の心臓内の電子化学活動は通常は心筋繊維を同期的に収縮及び弛緩させて心室からバイタル臓器への血液の有効なポンピングを生じさせる。心停止、代表的には心室細動(VF)または心室頻脈(VT)では、患者は正常な心拍の命にかかわる中断に襲われ、はっきりした脈拍は現れない。VFの唯一の有効な処置は、電気的ショックを患者に与えて心臓を再同期させる電気的除細動(デフビリレーション)である。同様に、心房性頻脈のような命に別状はない不整脈もしばしば心臓除細動(カルディオバージョン)と称される方法で電気的ショックで治療される。
【0003】
体外式除細動器/心臓除細動器装置(以後略して除細動器という)は、患者の胴体部に添付した電極により患者の心臓に電気パルスを付与するために使用できる。この処理中、オペレータは患者の心臓からのECG信号を収集するために患者の胸を横切るように1対の電極を添付する。除細動器が自動化されている場合には、除細動器はECG信号を分析して心室細動(VF)を検出する。VFまたは他の要ショックリズムが検出された場合には、除細動器は患者を救助するために一連の除細動パルスを送給する。有効な除細動に必要とされる患者電流及び供給エネルギー量は患者のインピーダンスに依存する。患者は約20〜80オームの範囲にあると一般に理解されている経胸インピーダンス(「患者インピーダンス」)を有する。患者の電気的インピーダンスは殆ど完全に抵抗性である。従って、除細動器は患者インピーダンス範囲にある任意の患者の心臓に所望の電流またはエネルギーを供給するインピーダンス補償除細動パルスを出力するのが望ましい。
【0004】
インピーダンス補償を提供する多くの除細動器があるが、従来の体外式除細動器の設計は心臓分路電流の問題に十分対処していない。外部から添付した除細動器パッド(またはパドル)から胸部に入力する電流は胸部を通る無数の経路を経て他方の除細動器パッドへと流れる。いくつかの経路は有効に心臓を通過して治療電流を送給する。他の電流要素は心臓を通過せず、これらの分路電流は除細動に有用でない。それにもかかわらず、胸部分路電流は除細動器により供給される電流の大部分に対して考慮されていない。分路電流経路のインピーダンスは総経胸インピーダンスより優勢であり(Deale OC, BB, “Intrathoracic current flow during transthoracic defibrillation in dogs”, Circulation Reserch 1990, Vol 67, No. 6: 1405-1419)且つ分路インピーダンス変化は人間について観測される広範囲の経胸インピーダンスの原因である。
【0005】
しかし、除細動器は多くの供給モードで使用される。例えば、除細動器は患者の胸部上の前―前パッド位置で利用されることもあるため、分路電流が上述したように大きなファクタとなる。この供給モードは治療方法に分路電流の適切な補償を必要とする。それにもかかわらず、同じ装置が心臓に直接当てたパドルを使用する体内式除細動のような異なる供給モードでも使用され得る。このモードでは、分路電流は著しく小さいため、適切な補償は全く異なる。更に、他の供給モード(体外式パドルの位置の相違または子供への除細動器の使用を含む)は前記補償方法に対して他の調整を必要とする。従って、種々の動作モードに対する除細動のための電気パルスの供給中に遭遇しうる種々の胸部電流分布に対して適切なインピーダンス補償されたパルスを送給し得る改良された除細動または心臓除細動システムが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、突然の心臓停止の犠牲者に適切な除細動ショックを付与する方法及びシステムを提供する。本発明は、種々の程度の心臓分路電流も除細動器の供給モードに従って補償するインピーダンス補償された除細動パルスを送給し得る除細動器/心臓除細動器を提供することによって従来の問題を解決するものである。エネルギー蓄積回路またはエネルギー源は電池からエネルギーを受ける充電回路により高電圧に充電される。エネルギー蓄積回路はモードスイッチと除細動パルスを患者回路要素に供給するブリッジスイッチの両端間に結合する。患者回路要素は、患者と、患者に当てられた特定のタイプの電極と、特定の電極に固有のインピーダンスとからなる回路を含む。コントローラが全除細動プロセスを制御するとともに、センサにより要ショックリズム及び除細動ショック送給モードを検出する。
【0007】
本発明の一つの態様では、除細動器は、患者に結合する1対の電極と、電極対に結合された複数の出力経路を有し、第1の出力経路が電圧源を近似し、第2の出力経路が変更電流源として作用し、第3の出力経路が第2の変更電流源として作用するモードスイッチと、モードスイッチを経て除細動パルスを患者に供給するエネルギー供給回路と、モードスイッチとエネルギー蓄積回路に結合され、除細動器の供給モードに依存してどの出力経路を患者帰路要素に接続するかを決定するコントローラとを具える。実施例では、第1出力経路の出力はエネルギー供給回路の電圧にほぼ等しいものとし、第2出力経路の出力はエネルギー供給回路の電圧を第1インピーダンスと患者により供給されるインピーダンスとの和で割った値にほぼ等しいものとし、第3出力経路の出力はエネルギー供給回路の電圧を第2インピーダンスと患者により供給されるインピーダンスとの和で割った値にほぼ等しいものとする。
【0008】
本発明の他の態様では、除細動器はモードスイッチとエネルギー源を具える。モードスイッチの位置もエネルギー源の電圧も検出した供給モードに依存する。
【0009】
本発明のさらに他の態様では、上述した除細動器/心臓除細動器はさらにモードスイッチ位置及び/又はエネルギー源電圧を先に供給された電気治療の結果に基づいて決定する。
【0010】
さらに他の態様は、本発明を簡単で、高信頼性で且つ安価な除細動器に実現できる。
【0011】
本発明の上記の及び他の特徴及び効果は以下に記載する図面に示す好適実施例の詳細な説明から明らかになる。図面において、全図を通して同一の部分は同一の番号で示されている。図面は必ずしも一定の寸法比で描かれておらず、本発明の原理を示すことに重きを置いている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法及び装置のより完全な理解には以下の詳細な説明を添付図面と一緒に参照するのが有効である。
以下の説明においては、本発明の十分な理解を提供するために特定の構成、インターフェース、技術などの特定の詳細について説明するが、本発明を限定するものではない。簡単及び明瞭のために、公知の装置、回路及び方法の詳細な説明は本発明が不必要な説明であいまいにならないように省略した。
【0013】
除細動または心臓除細動ショックの供給方法はさまざまである。パッドまたはパドルは経胸的に、前−前(胸横断)位置または前−後(胸と背中)位置に添付することができる。患者は大きな大人から小さな子供まで広範囲にわたり、フルレンジの経胸インピーダンスを有する。更に、除細動ショックは手術中に体内式除細動パドルを用いて心臓に直接与えることもできる。これらの方法は除細動器を異なるモードで動作することを必要とする。除細動器ショックを患者に与るこれらの方法は供給される電流の分路成分を大きく変化することになる。従って、本発明では、種々の除細動モードに対する経胸電流を最適化するために除細動器の電気的特性を調整することによって患者体内の異なる電流分配方法を実現する。特に、以下に説明するように、除細動モードの変化に対してエネルギー供給を最適化するために、除細動器のエネルギー源特性を患者のインピーダンス及び他の情報に従って変更電流源または電圧源に選択的に変化させる方法を提供する。
【0014】
図1につき説明すると、除細動器10は総電流IDを患者2に供給するよう構成されている。しかし、患者の胸に除細動ショックの供給中、電流は患者の心臓を有効に流れ(Ic)、また心臓の周囲を分流する(Is)。
【0015】
図2は除細動器10の等価回路を示す。図に示されているように、除細動器10は電流を心臓(Rheart)と直列組織(Rser)に出力し、また分路Rshuntを経て心臓を分流する。
【0016】
従来の体外式除細動器は、ショック供給中変更電流源に近似して高すぎもなく低すぎもない適切な心臓電流を保証する体外式除細動器の設計のための指針を殆ど提供していない。この点に関して、患者インピーダンスに加えて、ショック供給方法の選択も広範囲の患者の除細動または心臓除細動成功率に影響することを確かめた。
【0017】
前−前パッド配置またはパドル配置での経胸成人除細動の場合には、心臓を通る経路のインピーダンスは僅かな変化を示すだけであっても、Rshuntが大きく変化し得る。従って、電圧源に近いエネルギー供給回路が、並列分路の電流要件Isと無関係に、図2にIcとして示す適切な心臓電流を供給する。
【0018】
前−後(A−P)パッド配置を用いる経胸除細動の場合には、分路電流は前−前(A−A)配置の場合よりも総電流の小部分になる。従って、心臓電流をより良好に調整するためには変更電流源を使用する方が好ましい。
【0019】
手術中に心臓を直接除細動するために使用する直接体内ショック付与の場合には、Rshuntが極めて高く、Rser及びRheartが比較的低い。この場合には、低エネルギーの電流制限除細動パルスが変更電流源から必要とされる。
【0020】
極めて小さい子供に対する前−後小児配置の場合には、Rshunt及びRserは低い傾向にあり、総電流の大部分が心臓を経て流れ得る。この場合には、過大な心臓電流を阻止するために心臓を経由する電流源の適正な制御が必要とされる。
【0021】
本発明は、供給モードと患者に供給される総電流及びエネルギーとの間の上記の関係を利用する除細動器及び除細動方法である。この目的のために、本発明の除細動器は、除細動器のエネルギー源特性を、体内パドル、成人用電極または小児用体外電極のようなコード化された付属品の接続によってまたはオペレータ制御パネルによって入力される選択された供給モードに適合するように切り換える。更に、前記除細動器のエネルギー源特性を切り換える際に患者から導出された患者インピーダンスのような追加のモード情報を考慮することができる。例えば、除細動器は、成人用電極がA−Aモードで使用されていることを検出するとともに、患者は比較的高いまたは低い経胸インピーダンスであることを検出することができる。本発明の除細動器は、この患者情報に基づいて、そのエネルギー供給回路を電圧源または数個の直列インピーダンスの1つを持つ変更電流源に近似するように設定する。コード化された付属品を認識する除細動器はUS特許第6,560,485号の「Four Contact Identification Defibrillator Electrode System」に記載されており、参考のためにここに含まれているものとする。
【0022】
図3は、本発明の好適実施例の除細動器10のブロック図である。患者2に結合する1対の電極12はセンサ20に接続され、更にモードスイッチ22に接続される。センサ20は除細動器10に結合された電極のタイプ、すなわち体内パドル、小児用A−AまたはA−P電極を検出するよう動作する。センサ20は、患者2からのECG信号の検出、フィルタリング及びディジタル化を提供するECGフロントエンドと一体にしてもよい。センサ20は独立に電極上のコード化ラベルを識別することによって電極のタイプを検出するものとしてもよい。
【0023】
ECG信号は次にコントローラ28に供給される。コントローラ28は、心室細動や電気療法で治療可能な他の要電気ショックリズムを検出し得るショック勧告アルゴリズムを実行する。ECGフロントエンドは、電極12間の電圧降下を測定するための非治療パルスである低レベルテスト信号を用いて電極12間の患者インピーダンスを測定することもできる。検出された患者インピーダンスをコントローラ28で分析して患者に供給すべき波形の適切なタイミングを決定する。患者インピーダンスを検出する除細動器の一例は米国特許第5,749,904号、「Electrotherapy Method Utilizing Patient Dependent Electrical Parameters」、に開示されており、その全内容が参考のために本明細書に組み込まれているとする。また、患者インピーダンスは電気治療ショック前に検出してもよい。
【0024】
除細動パルスを電極対12に供給するとき除細動パルス間隔または持続時間を提供するためにタイマ26がコントローラ28に接続される。コントローラ28が心室除細動VFまたは他の要ショックリズムを検出した後に、ユーザは典型的には除細動器10のユーザインターフェースの一部であるショックボタン32によって電極対12への除細動パルスの供給を開始することができる。付勢/滅勢ボタン32は好適実施例ではAEDモードとマニュアルモードの両モードで機能することができる。ディスプレイ/スピーカ34がコントローラ28に接続され、除細動器10の動作中に音声及び可視指示及び/又はフィードバックをユーザに提供する。
【0025】
電池36が全体的に除細動器10を給電し、特に電圧チャージャ30を給電し、これがエネルギー源回路24内のキャパシタを充電する。代表的な電池電圧は12ボルト以下であるが、エネルギー源回路24は1800ボルト以上に充電することができる。エネルギー源24は単一キャパシタ、または、単一キャパシタとして機能するように構成されたキャパシタバンクであり、所定の範囲の電圧レベルに充電することができ、選択されるレベルは患者パラメータ及び他のパラメータに依存する。エネルギー源24と電極12との間に配置されたブリッジスイッチ23はエネルギー源24から電極12へのエネルギーの供給を、例えば多相波形で制御する。モードスイッチ22が検出された供給モードの関数としてエネルギー供給回路に直列インピーダンスを選択的に付加する。コントローラ28は電圧チャージャ20のみならずブリッジ回路23及びモードスイッチ22の動作も制御する。
【0026】
除細動器10の動作中、コントローラ28は電圧チャージャ30を制御してエネルギー源24を所望の電圧レベルに充電する。初期電圧はすべての患者に対して同一にしても、自動的に選択可能にしても、除細動器のユーザにより選択可能にしてもよい。例えば、除細動器は幼児用、成人用及び開胸手術用の複数の初期電圧設定の選択を可能にすることができる。
【0027】
コントローラ28はブリッジスイッチ23を制御してエネルギー源24を電極12と2つの極の1つで接続し、またエネルギー源24を電極12から切断する。ブリッジスイッチ23はエネルギー源24を患者2に電気的に添付された電極対12に選択的に接続及び切断する。ブリッジスイッチ23はコントローラ28からのスイッチ制御信号に応答して除細動パルスを電極対12を介して患者2に所望の極性及び持続時間で供給するように動作する。ブリッジスイッチ23は好適実施例では2相除細動パルスを供給するように構成するが、単相または多相除細動パルスを供給するように構成することは容易であり、この場合にも本発明の利点が実現される。
【0028】
コントローラ28は更にモードスイッチ22を、装置の動作モードに依存して適切なインピーダンスをエネルギー供給回路に付加するように動作させる。モードスイッチ22の動作を図4を参照して詳細に説明する。
【0029】
図4は、本発明の好適実施例に従う電極12、ブリッジスイッチ23及びモードスイッチ22の代表的な回路図を示す。図に示されているように、除細動器10は電圧Vcに充電されたエネルギー蓄積キャパシタCと、放電中キャパシタの極性を逆転するブリッジスイッチ23と、一連のスイッチと抵抗からなるモードスイッチ22とを具える。当業者であれば他のハードウエア構成を成功裏に使用できること明らかである。
【0030】
コントローラ28が電圧チャージャ30を駆動してエネルギー源24のエネルギー蓄積キャパシタCを所定の電圧に充電する。この期間中、ブリッジスイッチ23とオプションスイッチS1,S2及びS3は開のため、電極12の間に接続された患者には何の電圧も供給されない。その間、コントローラ28は所定の基準(後で説明する)に基づいて動作モードを決定し、患者の心臓にパルスを供給する前にモードスイッチ22の位置とエネルギー源24の電圧の設定を調整する。ここで、コントローラ28はユーザの入力に従って動作モードを決定すること、又はコード化体内パドル、成人用A−A又はA−P体外電極、又は小児用A−A又はAA−P体外電極のような動作モードパラメータをセンサ20で検出することにより決定することができる。同時に、コントローラ28は電極12の両端から受信される信号により患者インピーダンスを決定することができる。その結果、選択された動作モードに対応するエネルギー源24の調整済み電圧レベルがインピーダンス調整された所望の除細動パルスを患者に供給するために使用される。
【0031】
動作モードの分類は例えば次のように行うことができる。
(1)A−Aパッド又はパドルを用いる成人患者の除細動のためには、電圧源供給が選択され、エネルギー源24のキャパシタCが心臓経路を流れる所望の電流を発生する電圧に充電される。放電中、スイッチS1を閉じて入力回路内の全ての直列インピーダンスを短絡し、キャパシタはその全電圧を患者に供給する。この場合には、極めて低い直列インピーダンスを有するエネルギー源の近似的表現として「電圧源」なる語を使用する。電圧源は、少なくとも短時間の間その端子に所定の電圧を維持しながら多量の電流を供給することができる。除細動器では、小さい追加の直列インピーダンスを有する充電キャパシタの初期接続は瞬時に電圧源に良く近似する。
【0032】
(2)低インピーダンス患者の成人用除細動又は体内又は小児除細動のためには、変更電流源供給が選択され、エネルギー源24のキャパシタCは上述した電圧源供給モードより高い電圧に充電することができる。この放電中、スイッチS2を閉じて抵抗Rc1を患者回路に挿入する。Rc1は、患者及び電極インピーダンスに追加のインピーダンスを付加し、追加のインピーダンスを殆ど又は少ししか持たない電圧源供給の場合より患者インピーダンスの変化に影響されない電流を供給するように除細動器を設定する。このモードでは、追加の直列インピーダンスを有する電圧源として「変更」電流源と表記する。真の電流源は無限大のインピーダンスを示し、その端子にどんな電圧が発生しようともその端子から所定の電流を流す。この電流源は大きな直列インピーダンスと高電圧キャパシタとで近似することができるが、このような実現は極めてエネルギー効率が悪く、非実用的である。その代わりに、本発明の目的のための「変更電流源」とは、負荷インピーダンスの関数としての電流変化を電圧源よりも小さくできるとともに蓄積エネルギーの大きな部分を浪費しない回路をいう。好適実施例では、変更電流源は選択可能な抵抗を経て放電する充電キャパシタとする。しかし、他の実施例では、変更電流源は、例えばインダクタを用いて電流変化を瞬間的に抑える他の実現例もいう。
【0033】
(3)A−P成人患者又はA−A小児患者の除細動のためには、エネルギー源24のキャパシタCが動作モード(1)の場合より高いが動作モード(2)の場合ほど高くない電圧に充電される。放電中、スイッチS2とS3を閉じてRc1とRc2の並列に接続し除細動器のソースインピーダンスを下げ、全電圧を患者に供給しないようにする。この実施例では、Rc1は約40オーム、Rc2は約20オームとして、抵抗の比を約2対1にするのが好ましい。
【0034】
表1は上述した供給モードに対するモードスイッチS1,S2及びS3の位置を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
図5は、本発明の実施例による心臓分路電流も補償するアーチファクト補償除細動ショックを供給する動作ステップを示すフローチャートである。
【0037】
最初に、除細動器10を配置し、電極12を心疾患者に添付して患者入力信号を分析する。同時に、除細動器10の電圧チャージャ30が動作してエネルギー源24のキャパシタCを除細動ショック供給のための電圧レベルの所定の割合に充電する。
【0038】
ステップ100において、センサ/ECGフロントエンド20が要ショックリズム、即ち心室除細動(VF)を検出する。要ショックリズムでない場合には、除細動器10はECG情報の検出を続ける。要ショックリズムが検出されると、低レベルテスト信号を測定することにより、又は非治療電流を供給することにより患者インピーダンスが測定される。検出された要ショックリズムは除細動器10のコントローラ28に転送される。
【0039】
ステップ120において、コントローラ120は、先に説明したように、検出された患者インピーダンスと患者体内に予想される電流分布のタイプに基づいて除細動パルスを患者に供給する動作モードを決定する。再度説明すれば、モード情報は、体内パドル、小児用A−A又はA−P電極、又は成人用A−A又はA−P電極のようなコード化アクセサリにより与える、又は除細動器10のユーザにより手動で与えることができる。他の実施例では、患者依存パラメータはセンサ/ECGフロントエンド20を用いてステップ100の前に既に測定されているものとする。
【0040】
ステップ140において、決定された動作モードと患者情報を用いて、除細動器10は、図4で説明したようにモードスイッチ22を制御してそのエネルギー供給回路を設定する。次にコントローラ28は除細動パラメータの供給プロセスを開始し、制御システムとして機能して適正な順序の連続する除細動ショックを所定のインターバルで供給する。或いは又、コントローラ28は、ディスプレイ34によってユーザに、ショックボタン32を押して患者への除細動パルスの手動供給を駆動すべきことを知らせることもできる。ステップ140で除細動パルスが患者に供給された後、次の除細動ショックが必要かを決定するために患者の心臓がモニタされる。必要であれば、上記のステップが繰り返され、次の除細動ショックを供給する。供給したショックの成功に基づいてスイッチS1,S2及びS3又は除細動器充電電圧を調整して次のショックが必要に応じもっと多量の電流を患者に供給することができる。
【0041】
このように、除細動供給モードに依存して心臓分路電流を補償する除細動パルスを供給するシステム及び方法の好適実施例を説明したので、所定の利点が達成されることは当業者に明らかである。特に、本発明は除細動中に発生し得る種々の胸内電流分布に対する適切なインピーダンス補償方法を実現する。例えば、成人経胸除細動、小児除細動および体内除細動は心臓を流れる電流と分路する電流を異なる程度に生ずる。心臓を流れる電流を多く含む電流分布に対しては、除細動エネルギーは変更電流源に近似するように供給され、心臓を分路する電流経路を多く有する電流分布に対しては、除細動エネルギーは電圧源に近似するように供給され、中間の状態では、エネルギーは分路電流の存在下で適切な経胸電流を確保するように供給される。
【0042】
本発明の好適実施例を図に示し、説明したが、当業者であれば本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形や変更が可能であり、また種々の構成要素の代わりに等価な要素を使用することが可能である。更に、本発明の特定の条件や教えに多くの変更を加えることもできる。従って、本発明は本発明を実施するための最良の形態として記載した特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲に含まれる全ての実施例を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】心停止患者に取り付けられた本発明の一実施例の除細動器を示す図である。
【図2】図1に示す除細動器の等価回路ハードウエアを示す図である。
【図3】本発明の好適実施例の除細動器システムのブロック図である。
【図4】本発明の好適実施例の除細動器システムの回路図である。
【図5】本発明の好適実施例の除細動器システムの動作ステップを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除細動エネルギー供給回路を具えた体外式除細動器であって、
除細動モード入力と、
前記除細動モード入力に基づいて前記エネルギー供給回路にインピーダンスを選択的に付加するモードスイッチと、
を具えることを特徴とする体外式除細動器。
【請求項2】
前記除細動モード入力は、除細動器に結合される電極のタイプを示すパラメータを含むことを特徴とする請求項1記載の除細動器。
【請求項3】
前記電極タイプパラメータは、成人用電極、小児用電極又は体内電極からなる群から選ばれることを特徴とする請求項2記載の除細動器。
【請求項4】
前記除細動モード入力はさらに患者に添付される電極対の位置を示すパラメータを含むことを特徴とする請求項2記載の除細動器。
【請求項5】
前記電極対位置パラメータは、前−前配置、前−後配置及び体内配置からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4記載の除細動器。
【請求項6】
前記モードスイッチは、並列に配置された複数のスイッチを具え、前記複数のスイッチの位置が前記供給モード入力に基づいて決まることを特徴とする請求項1記載の除細動器。
【請求項7】
エネルギー源と、
前記エネルギー源を前記供給モードに基づく電圧に充電する電圧チャージャと、
をさらに具えることを特徴とする請求項1記載の除細動器。
【請求項8】
前記モードスイッチの位置がさらに前除細動ショックの成功を示すパラメータに基づくことを特徴とする請求項1記載の除細動器。
【請求項9】
前記モードスイッチの位置がさらに患者インピーダンスの測定値に基づくことを特徴とする請求項1記載の除細動器。
【請求項10】
除細動電流を心臓分路電流について補償する方法であって、
除細動電流の供給モードを検出するステップと、
前記検出ステップに基づいて除細動電流と直列にインピーダンスを選択的に付加するステップとを具えることを特徴とする除細動電流補償方法。
【請求項11】
前記検出ステップはさらに除細動器に結合される電極のタイプを検出することを特徴とする請求項10記載の除細動器。
【請求項12】
前記電極タイプは、成人用電極、小児用電極又は体内電極からなる群から選ばれることを特徴とする請求項11記載の除細動器。
【請求項13】
前記検出ステップはさらに患者に添付される電極対の位置を示すパラメータを検出することを特徴とする請求項11記載の除細動器。
【請求項14】
前記電極対位置パラメータは、前−前配置、前−後配置及び体内配置からなる群から選ばれることを特徴とする請求項13記載の除細動器。
【請求項15】
前記選択的にインピーダンスを付加するステップは、さらに並列に配置された複数のスイッチの位置を前記検出ステップに基づいて決めることを特徴とする請求項10記載の除細動器。
【請求項16】
除細動エネルギー源を前記検出ステップに基づく電圧に充電するステップをさらに具えることを特徴とする請求項10記載の除細動器。
【請求項17】
前記選択的にインピーダンスを付加するステップは、さらに前除細動ショックの成功を示すパラメータを検出するステップに基づくことを特徴とする請求項10記載の除細動器。
【請求項18】
前記選択的にインピーダンスを付加するステップは、さらに患者インピーダンスを測定するステップに基づくことを特徴とする請求項10記載の除細動器。
【請求項19】
供給モードに依存して選択的に電圧源としてまたは変更電流源として構成される電気治療供給回路を具えることを特徴とする複数の供給モードの1つのモードで電気治療を供給する装置。
【請求項20】
電気治療供給回路を供給モードの関数として選択的に電圧源としてまたは変更電流源として構成するステップを具えることを特徴とする複数の供給モードの1つのモードで電気治療を供給する方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−515983(P2007−515983A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516537(P2006−516537)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001939
【国際公開番号】WO2005/000399
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】