説明

除草剤としてのシクロヘキサンジオン誘導体の使用

式(I)
【化1】


ここで式中、Rは場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルキル又は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルケニルを示し;R、R、R及びRは各々水素原子又はメチルを示し、又はRはRと一緒になってエチレンを形成し;そしてR及びRは水素原子又はメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示す、
で表される化合物を有効成分として含有することを特徴とする速効作用を有する除草剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロヘキサンジオン誘導体の除草剤としての使用、新規なシクロヘキサンジオン誘導体、その製造方法及び新規な中間体、並びに混合除草剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のシクロヘキサンジオン誘導体が除草剤としての作用を示すことは既に知られている(例えば、米国特許第4202840号明細書及びPhytochemistry,Vol.60(3),p.281−288,2002参照)。
【0003】
また、ある種のシクロヘキサンジオン誘導体は殺虫剤及び/又は殺菌剤としての作用を示すこともまた既に知られている(例えば、WO02/89587、WO03/51806号、Flavour and Fragrance Journal,Vol.15(4),p.278−280,2000およびJournal of Chemical Ecology,Vol.27(3),p.517−521,2001参照)。
【0004】
更に、有機化学の分野において、種々のシクロヘキサンジオン誘導体が合成され報告されている(例えば、米国特許出願公開第2002/4931号明細書、Synthesis,Vol.12,p.925−927,1978、Synlett Vol.9,p.1392−1394,2001、薬学雑誌(Journal of Pharmacy,Japan),Vol.76,p.1256−1258,1956参照)。
【特許文献1】米国特許第4202840号明細書
【特許文献2】WO02/89587
【特許文献3】WO03/51806
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/4931号明細書
【非特許文献1】Phytochemistry,Vol.1,60(3),p.281−288,2002
【非特許文献2】Flavour and Fragrance Journal,Vol.15(4),p.278−280,2000
【非特許文献3】Journal of Chemical Ecology,Vol.27(3),p.517−521,2001
【非特許文献4】Synthesis,Vol.12,p.925−927,1978
【非特許文献5】Synlett Vol.9,p.1392−1394,2001
【非特許文献6】薬学雑誌(Journal of Pharmacy,Japan),Vol.76,p.1256−1258,1956
【非特許文献7】Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii,(3),p.329−333,1975
【非特許文献8】Zhunal Organicheskoi Khimii,Vol.28(8),p.163−1642,1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら既知のシクロヘキサンジオン誘導体は、除草剤としての効果、効果の発現速度及び/又は安全性の観点で十分に満足できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今般、下記式(I)で表されるシクロヘキサンジオン誘導体の一群のもの、すなわち、式(I)
【化1】

ここで式中、
は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルキル又は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルケニルを示し、
、R、R及びRは水素又はメチルを示すか、又は
はRと一緒になってエチレンを形成し、そして
及びRは水素若しくはメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示す、
で表される化合物が速効作用を有するすぐれた除草活性を示すことを見出したのである。
【0007】
本発明のさきに述べた式(I)に包含される次の式(IA)で表されるシクロヘキサンジオン誘導体は、存在する刊行物に記載されていない新規な化合物である。
【0008】

【化2】

ここで式中、
1Aは場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルキル又は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルケニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aは水素又はメチルを示すか、又は
2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aは水素又はメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示す、
但し、次の(i)〜(iii)の場合:
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示しそしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aがメチルを示しそしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示しそしてR1Aがn−ノニルを示す場合、を除くものとする。
【0009】
この式(IA)で表される化合物は、例えば、次の製法(a)によって製造することができる:
製法(a):
次の式(II)
【化3】

ここで式中、
1A、 R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aは上記した通りの意味を有する、
で表される化合物を不活性溶媒の存在下に、もしも必要ならば酸結合剤の存在下に、そしてもしも必要ならばシアナイドの存在下に、そしてもしも必要ならば相変換触媒の存在下に反応させて転位させて製造することができる。
【0010】
さきに述べた式(I)の化合物もまた、上記製法(a)によって製造することができる。
【0011】
本発明より提供される新規な式(IA)の化合物を包含する式(I)のシクロヘキサンジオン誘導体は強力な除草作用を示す。本発明による式(I)のシクロヘキサンジオン誘導体は、米国特許第4202840号明細書に記載された一般式で示される化合物に一部そして総括的には包含されるが、この米国特許明細書に具体的には記載されていない化合物である。また、本発明による式(I)のシクロヘキサンジオン誘導体は、WO03/51806及びFlavour and Fragrance Journal,Vol.15(4),p.278−280,2000、Journal of Chemical Ecology,Vol.27(3),p.517−521,2001、Synthesis,Vol.12,p.925−927,1978、Synlett Vol.9,p.1392−1394,2001、薬学雑誌(Journal of Pharmacy,Japan),Vol.76,p.1256−1258,1956、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii,(3),p.329−333,1975およびZhunal Organicheskoi Khimii,Vol.28(8),p.163−1642,1992に記載される既知の化合物を包含するが、これらの特許文献及び非特許文献には、本発明による式(I)のシクロヘキサンジオン誘導体が除草効果を有することは何ら記載されていない。
【0012】
本発明の式(I)のシクロヘキサンジオン誘導体は、意外にも、上記米国特許明細書に記載されている既知の化合物に比して、極めて優れた速効的除草作用を示す。
【0013】
本発明の式(I)のシクロヘキサンジオン誘導体は、また、特定的に下記に示すとおり、他の除草活性化合物と混合することにより、混合除草剤組成物として、より一層強力な除草作用を示す。
【0014】
本明細書において、
「C6−9アルキル」は、直鎖状又は分子鎖状であることができる。例えば、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、3−メチルオクチル、7−メチルオクチル等を挙げることができる。
「C6−9アルケニル」としては、例えば、6−ノネニル等を挙げることができる。
「C1−4アルコキシ」としては、例えば、メトキシ、エトキシ等を挙げることができる。
【0015】
さきに述べた式(IA)の化合物において、好ましくは、
1Aは場合によりメトキシ置換またはエトキシ置換されていてもよいC6−9アルキル(ここで、このC6−9アルキルはn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、3−メチルオクチル又は7−メチルオクチルを示す)又はメトキシ置換された6−ノネニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aは水素又はメチルを示し、又は
2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aは水素又はメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示す、
但し、次の(i)〜(iii)の場合:
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示しそしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aが各々メチルを示しそしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示しそしてR1Aがn−ノニルを示す場合、を除くものとする。
【0016】
さきに述べた式(IA)の化合物において、より好ましくは、
1Aは場合によりメトキシ置換もしくはエトキシ置換されていてもよいC6−9アルキル(ここで、このC6−9アルキルはn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、3−メチルオクチル又は7−メチルオクチルを示す)又はメトキシ置換された6−ノネニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aは水素又はメチルを示し、又は
2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aは水素又はメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示す、
但し、
4A及びR5Aが各々水素原子を示す場合、R2A、R3A、R6A及びR7Aは水素を示すか、又はR2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成しそしてR3A及びR6Aは水素を示し、
4A及びR5Aがメチルを示す場合、R2A、R3A、R6A及びR7Aは水素を示し、そして
4AがR5Aと一緒になってオキソを示す場合、R2A、R3A、R6A及びR7Aはメチルを示す、
但し、
さらに、次の(i)〜(iii)の場合
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示しそしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aがメチルを示しそしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示しR4AとR5Aが一緒になってオキソを示しそしてR1Aがn−ノニルを示す場合、を除くものとする。
【0017】
さきに述べた式(IA)の化合物において、特に好ましくは、
1Aは場合によりメトキシ置換又はエトキシ置換されていてもよいC6−9アルキル(ここで、このC6−9アルキルはn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、3−メチルオクチル又は7−メチルオクチルを示す)又はメトキシ置換された6−ノネニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aはメチルを示し、そして
4AとR5Aは一緒になってオキソを示す、
但し、R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示しそしてR1Aがn−ノニルを示す場合は除くものとする。
【0018】
さきに述べた製法(a)は、例えば、オクタン酸4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステルと、酸結合剤(acid binder)として、例えば、4−ジメチルアミノピリジンを用いる場合、次の反応スキームで表わされる。
【化4】

【0019】
上記した式(I)の化合物は、次の式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)で示されるとおり、互変異性体として存在することができる。本明細書を通じて、これらは、式(Ia)の構造を以て表記するが、式(I)の化合物は、式(Ib)、(Ic)及び(Id)の化合物も包含するものである。
【化5】

【0020】
さきに述べた製法(a)において出発原料として用いられる式(II)の化合物は、現存する文献に未記載の新規化合物である。そしてこれらの化合物は、例えば、特開平2−173号公報、特開平2−222号公報、特開平2−6425号公報等に記載された方法に従い、次の式(III)
【化6】

ここで式中、
2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aは上記した通りの意味を有する、で表される化合物を次の式(IV)
【化7】

ここで式中、
1Aは上記した通りの意味を有するものであり、
Xはハロゲン、好ましくは塩素又は臭素を示す、
で表される化合物と反応させることにより容易に製造することができる。
【0021】
上記した式(III)の化合物は、市場で入手可能であり、又は、例えば、特開平9−309883号公報、ヨーロッパ特許第283162号等に記載の方法に従って製造することができる。
【0022】
上記した式(IV)の化合物は、その一部は文献に未記載の新規化合物であり、例えば、Jouranl of Organic Chemistry,Vol.59,p.2253−2256,1994等に記載の方法に従って製造することができる。
【0023】
さきに述べた式(II)の化合物は、例えば、WO01/7422号等に記載の方法に従い、例えば、上記した式(III)の化合物を次の式(V)
【化8】

ここで式中、
1Aは上記した通りの意味を有する、
で表される化合物と反応させることにより容易に製造することができる。
【0024】
上記した式(V)の化合物は、その一部は現存する文献に未記載の新規化合物であり、例えば、Jouranl of Organic Chemistry,Vol.59,p.2253−2256,1994等に記載された方法に従って製造することができる。
【0025】
さきに述べた製法(a)において出発原料として用いられる式(II)の化合物の特定例としては、次のものを例示することができる。
ヘプタン酸 4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
オクタン酸 4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
ノナン酸 4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
デカン酸 4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
5−メトキシノナン酸 4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
4−メトキシデカン酸 4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
オクタン酸 3−オキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
ノナン酸 3−オキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
オクタン酸 5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
ノナン酸 5,5−ジメチル− 3−オキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル、
オクタン酸 4−オキソ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−エン−2−イルエステル、
ノナン酸 4−オキソ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−エン−2−イルエステル、等。
【0026】
上記した製法(a)の反応は適当な希釈剤中で実施することができる。その場合に使用される希釈剤としては、例えば;脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素類(場合によっては塩素化されていてもよい)、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エ−テル、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等;エ−テル類、例えば、エチルエ−テル、メチルエチルエ−テル、イソプロピルエ−テル、ブチルエ−テル、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(DGM)等;ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチル−イソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等;ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等;エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸アミル等;酸アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等;スルホン類およびスルホキシド類、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等;塩基、例えば、ピリジン等を挙げることができる。
【0027】
製法(a)は酸結合剤の存在下で行うことができる。この酸結合剤としては、例えば、無機塩基として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は重炭酸塩等、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等;有機塩基として、第3級アミン類、ジアルキルアミノアニリン類又はピリジン類、例えば、トリエチルアミン、1,1,4,4−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)等を挙げることができる。
【0028】
製法(a)はシアン化物の存在下で行うことができる。このシアン化物の例としては、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、アセトンシアノヒドリン、シアン化水素等を挙げることができる。
【0029】
この製法(a)は、シアン化物の存在下で行なう場合、相間移動触媒を一緒に用いることもできる。その際に使用される該相間移動触媒の例としては、クラウンエーテル類、例えば、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、18−クラウン−6等を挙げることができる。
【0030】
また、相関移動触媒を用いる場合、反応は希釈剤の存在下で実施することができる。その際に使用される希釈剤の例としては、水;脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素類(場合によっては塩素化されていてもよい)例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エ−テル、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロルベンゼン、ジクロロベンゼン等;エ−テル類、例えば、エチルエ−テル、メチルエチルエ−テル、イソプロピルエ−テル、ブチルエ−テル、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(DGM)等;ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等を挙げることができる。
【0031】
製法(a)は実質的に広い温度範囲内において実施することができる。しかしながら一般に、約0〜約180℃、特に約20〜約150℃の範囲内の温度で実施するのが好ましい。また、この反応は望ましくは常圧下で行われるが、場合によっては加圧下または減圧下で操作することもできる。
【0032】
製法(a)を実施するにあたって、例えば、希釈剤、例えばトルエン中、1モルの式(II)の化合物を0.1〜3モルの4−ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させることによって目的化合物を得ることができる。
【0033】
製法(a)をシアン化物の存在下で行なう場合、反応温度は、一般に、約−10〜約80℃、好ましくは約5〜約50℃の範囲内とすることができる。また、この反応は望ましくは常圧下で行われるが、場合によっては加圧下または減圧下で操作することもできる。
【0034】
製法(a)をシアン化物の存在下で実施するにあたって、例えば、希釈剤、例えばアセトニトリル中、1モルの式(II)の化合物を1〜4モルのトリエチルアミン及びシアン化物として、例えば0.01〜1モルのアセトンシアンヒドリンの存在下で反応させることによって目的化合物を得ることができる。
【0035】
本発明のさきに述べた式(I)の活性化合物は、後記する生物試験実施例に示す如く、種々の雑草に対して優れた除草活性を示し、除草剤として使用することができる。本明細書において、広義には雑草とは望ましくない場所に生育するすべての植物を意味する。本発明によれば式(I)の化合物は、使用濃度に依存して非選択性除草剤として作用する。本発明の活性化合物は、例えば、次の雑草に対して使用することができる。
双子葉雑草の属:カラシ(Sinapis)、ナズナ(Capsella)、マメグンバイナズナ(Leipidium)、ヤエムグラキヌタソウ(Galium)、ハコベ(Stellaria)、アカザ・アリタソウ(Chenopodium)、ホウキギ(Kochia)、イラクサ(Urtica)、ハンゴウソウ・ノボロギク・キオン(Senecio)、ヒユ・ハゲイトウ(Amaranthus)、スベリヒユ・マツバボタン(Portulaca)、オナモミ(Xanthium)、アサガオ(Ipomoea)、ミチヤナギ(Polygonum)、ブタクサ(Ambrosia)、ノアザミ・フジアザミ(Cirsium)、ノゲシ(Sonchus)、ナス・ジャガイモ(Solanum)、イヌガラシ(Rorippa)、オドリコソウ(Lamium)、クワガタソウ・イヌノフグリ(Veronica)、チョウセンアサガオ(Datura)、スミレパンジー(Viola)、チシマオドロ(Galeopsis)、ケシ(Papaver)、ヤグルマギク(Centaurea)、ハキダメギク(Galinsoga)、キカシグサ(Rotala)、アゼナ(Lindernia)、アメリカツノクサネム(Sesbania)、シロツメクサ(Trifolium)、イチビ(Abutilon)、ホトケノザ(Lamium)、イヌカミツレ(Matricaria)、ヨモギ(Artemisia)等。
単子葉雑草の属:ヒエ(Echinochloa)、エノコロ・アワ(Setaria)、キビ(Panicum)、メヒシバ(Digitaria)、アワガリエ・チモシー(Phleum)、イチゴツナギ・スズメノカタビラ(Poa)、ウシノケグサ・トボシガラ(Festuca)、オヒシバ・シコクビエ(Eleusine)、ドクムギ(Lolium)、キツネガヤ・イヌムギ(Bromus)、カラスムギ・オートムギ(エンバク)(Avena)、カヤツリグサ・パピルス・シチトウイ・ハマスゲ(Cyperus)、モロコシ(Sorghum)、カモジグサ(Agropyron)、コナギ(Monochoria)、テンツキ(Fimbristylis)、オモダカ・クワイ(Sagittaria)、ハリイ・クログワイ(Eleocharis)、ホタルイ・ウキヤグラ・フトイ(Scirpus)、スズメノヒエ(Paspalum)、カモノハシ(Ischaemum)、ヌカボ(Agrostis)、スズメノテッポウ(Alopecurus)、ギヨウギシバ(Cynodon)、ツユクサ(Commelina)等。
その他の雑草:スギナ(Equisetum)等。
【0036】
本発明の式(I)の活性化合物は、非選択的除草剤として、例えば、栽培植物の休眠期の畑及び水田、休耕地、耕起前、播種前、植付前又は植付後萌芽前の畑及び水田、畦畔、圃場周縁、収獲後畑及び水田等、工場等の産業用地、鉄道軌道、道路、駐車場、公園、庭園、堤防、運動場、宅地、墓地、のり面、牧野、草地、植林又は非植林地等において使用することができる。
【0037】
また、本発明の式(I)の活性化合物は、多年性植物栽培地の下草防除、例えば、植林、鑑賞用植林、果樹園、ブドウ園、カンキツ果樹園、ナッツ果樹園、バナナ農園、コーヒー農園、茶農園、ゴム農園、アブラヤシ農園、ココア農園、小果樹園、ホップ栽培地等の下草防除、のために使用することができる。
【0038】
本発明の式(I)の活性化合物は、他の除草剤、例えば、次の公知除草剤(一般名)との混合除草剤組成物としてより強力な除草作用を現すことができる。
【0039】
スルホニル尿素系除草剤:例えば、クロルスルフロン、スルホメツロンメチル、クロリムロンエチル、トリアスルフロン、アミドスルフロン、オキサスルフロン、トリベニュロン−メチル、プロスルフロン、エタメトスルフロン−メチル、トリフルスルフロン−メチル、チフェンスルフロン−メチル、フラザスルフロン、リムスルフロン、ニコスルフロン、フルピルスルフロン、ベンスルフロン−メチル、ピラゾスルフロン−エチル、フォラムスルフロン、スルホスルフロン、シノスルフロン、アジムスルフロン、メトスルフロン−メチル、ハロスルフロン−メチル、エトキシスルフロン、シクロスルファムロン、ヨードスルフロン等;
カルバメート系除草剤:例えば、フェンメディファム、クロロプロファム、アシュラム、ベンチオカルブ、モリネート、エスプロカルブ、ピリブチカルブ、ジメピペレート、スエップ(MCC)等;
クロロアセトアニリド系除草剤:例えば、プロパクロール、メタザクロール、アラクロール、アセトクロール、メトラクロール、ブタクロール、プレチラクロール、テニルクロール等;
ジフェニルエーテル系除草剤:例えば、アシフルオルフェン、オキシフルオルフェン、ラクトフェン、フォメサフェン、アクロニフェン、クロメトキシフェン、ビフェノックス、CNP等;
トリアジン系除草剤:例えば、シマジン、アトラジン、プロパジン、シアナジン、アメトリン、シメトリン、ジメタメトリン、プロメトリン等;
フェノキシ酸又は安息香酸系除草剤:例えば、2,3,6−TBA、ジカンバ、キンクロラック、キンメラック、クロピラリド、ピクロラム、トリクロピル、フルロキシピル、フェノキサプロップ、ジクロホップ−メチル、フルアジホップ−メチル、ハロキシホップ−メチル、キザロホップ−エチル、シハロホップ−ブチル、2,4−PA、MCP、MCPB、フェノチオール等;
酸アミド又は尿素系除草剤:例えば、イソキサベン、ジフルフェニカン、ジウロン、リニュロン、フルオメツロン、ジフェノクスロン、メチルダイムロン、イソプロチュロン、イソウロン、テブチウロン、メタベンゾチアズロン、プロパニル、メフェナセット、クロメプロップ、ナプロアニリド、ブロモブチド、ダイムロン、クミルロン、エトベンザニド、オキサジクロメフォン等;
有機リン除草剤:例えば、グリホサート、ビアラホス、グルホシネート、アミプロホス−メチル、アニロフォス、ベンスリド、ピペロホス、ブタミホス等;
ジニトロアニリン系除草剤:例えば、ブロモキシニル、アイオキシニル、ジノセブ、トリフルラリン、プロジアミン等;
シクロヘキサンジオン系除草剤:例えば、アロキシジム、セトキシジム、クロプロキシジム、クレソジム、シクロキシジム、トラルコキシジム等;
イミダゾリノン系除草剤:例えば、イマザメタベンズ、イマザピル、イマザメタピル、イマゼタピル、イマザモックス、イマザキン等;
ビピリジウム系除草剤:例えば、パラコート、ジクワット等;
カルバモイルテトラゾリノン系除草剤:例えば、フェントラザミド等;
その他の除草剤:例えば、ベンタゾン、トリジファン、インダノファン、アミトロール、カルフェントラゾン−エチル、スルフェントラゾン、フェンクロラゾール−エチル、イソキサフルトール、クロマゾン、マレイン酸ヒドラジド、ピリデート、クロリダゾン、ノルフルラゾン、ピリチオバック、ブロマシル、ターバシル、メトリブジン、オキサジクロメホン、シンメチリン、フルミクロラック−ペンチル、フルミオキサジン、フルチアセット−メチル、アザフェニジン、ベンフレセート、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ペントキサゾン、カフェンストロール、ピリミノバック、ビスピリバックナトリウム、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピラフルフェン−エチル、ベンゾビシクロン、ジチオピル、ダラポン、クロルチアミド等。
【0040】
上に述べた除草剤の中でも、特に、スルホメツロン−メチル、フェンメディファム、アシュラム、オキシフルオルフェン、シマジン、アトラジン、アメトリン、プロメトリン、トリクロピル、フェノキサプロップ、フルアジホップ−ブチル、2,4−PA、MCP、イソキサベン、ジウロン、リニュロン、イソウロン、テブチウロン、プロパニル、グリホサート、ビアラホス、グルホシネート、アミプロホス−メチル、ブロモキシニル、アイオキシニル、トリフルラリン、セトキシジム、イマザピル、パラクワット、ジクワット、フェントラザミド、ベンタゾン、アミトロール、カルフェントラゾン−エチル、ピリデート、ブロマシル、ターバシル、メトリブジン、フルミオキサジン、アザフェニジン、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ビスピリバックナトリウム及びピラフルフェン−エチルが好適である。
【0041】
上に述べた活性化合物は、“Pesticide Manual”,2000年,British Crop Protect Coucil発行に記載された公知の除草剤である。
【0042】
本発明の混合除草剤組成物において、本発明の式(I)の活性化合物と他の除草剤との混合割合は、その使用目的などに応じて広い範囲にわたって変えることができる。例えば、本発明の式(I)の化合物1質量当り、次の除草剤、すなわち:
スルホニル尿素系除草剤:0.0001〜1質量、好ましくは0.001〜0.1質量、
カルバメート系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
クロロアセトアニリド系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
ジフェニルエーテル系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
トリアジン系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
フェノキシ酸又は安息香酸系除草剤:0.0001〜10質量、好ましくは0.001〜1質量、
酸アミド又は尿素系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
有機リン除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
ジニトロアニリン系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
シクロヘキサンジオン系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
イミダゾリノン系除草剤:0.0001〜1質量、好ましくは0.001〜0.1質量、
ビピリジウム系除草剤:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
カルバモイルテトラゾリノン系除草剤:0.001〜1質量、好ましくは0.01〜1質量、
その他の除草剤として、例えば、
ベンタゾン:0.001〜10質量、好ましくは0.1〜2質量、
アミトロール:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
カルフェントラゾン−エチル:0.001〜10質量、好ましくは0.005〜0.1質量、
ピリデート:0.01〜10質量、好ましくは0.1〜1質量、
ブロマシル:0.001〜10質量、好ましくは0.1〜2質量、
ターバシル:0.001〜10質量、好ましくは0.1〜2質量、
メトリブジン:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
フルミオキサジン:0.001〜1質量、好ましくは0.01〜1質量、
アザフェニジン:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
オキサジアゾン:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
オキサジアルギル:0.001〜10質量、好ましくは0.01〜1質量、
ビスピリバックナトリウム:0.001〜1質量、好ましくは0.01〜1質量、
ピラフルフェン−エチル:0.0001〜1質量、好ましくは0.001〜0.5質量
の範囲内で使用することができる。
【0043】
本発明の混合除草剤組成物は、混合により相乗的除草効果を発揮し、予想を越える効果を得ることができる。
【0044】
本発明の式(I)の活性化合物及び混合除草剤組成物は使用に当って慣用の製剤形態にすることができる。その製剤形態としては、例えば、液剤、水和剤、エマルジョン、懸濁剤、粉剤、顆粒性水和剤、錠剤、顆粒剤、懸濁エマルジョン濃厚剤、重合体物質中のマイクロカプセル、ジャンボ製剤等を挙げることができる。
【0045】
これらの製剤はそれ自体既知の方法で製造することができる。例えば、活性化合物を、エクステンダー、即ち、液体又は固体の希釈剤又は担体、及び場合によっては界面活性剤、即ち、乳化剤及び/又は分散剤及び/又は泡形成剤と混合することによって調製することができる。
【0046】
液体の希釈剤又は担体としては、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、キシレン、トルエン、アルキルナフタレン等)、クロル化芳香族又はクロル化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン類、塩化エチレン類、塩化メチレン等)、脂肪族炭化水素類[例えば、シクロヘキサン等、パラフィン類(例えば鉱油留分等)]、アルコール類(例えば、ブタノール、クリコール等)及びそれらのエーテル、エステル等、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、強極性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)、水等を挙げることができる。エクステンダーとして水を用いる場合には、例えば、有機溶媒を補助溶媒として使用することができる。
【0047】
固体の希釈剤又は担体としては、例えば、粉砕天然鉱物(例えば、カオリン、クレー、タルク、チョーク、石英、アタパルガイド、モンモリロナイト、珪藻土等)、粉砕合成鉱物(例えば、高分散ケイ酸、アルミナ、シリケート等)等を挙げることができる。粒剤のための固体担体としては、粉砕し分別された岩石(例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石、ドロマイト等)、無機及び有機粉の合成粒、有機物質(例えば、おがくず、ココナットシェル、とうもろこしの穂軸、タバコの茎等)の細粒体等を挙げることができる。
【0048】
乳化剤及び/又は泡形成剤としては、例えば、非イオン及び陰イオン乳化剤[例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(例えば、アルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アリールスルホン酸塩等)]、アルブミン加水分解生成物等を挙げることができる。
【0049】
分散剤には、例えば、リグニンサルファイト廃液やメチルセルロース等が包含される。
【0050】
固着剤も製剤(粉剤、粒剤、乳剤)に使用することができ、該固着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、天然及び合成ポリマー(例えば、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート等)を挙げることができる。
【0051】
着色剤を使用することもでき、該着色剤としては、無機顔料(例えば、酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブルー等)、アリザリン染料、アゾ染料又は金属フタロシアニン染料のような有機染料、さらに、鉄、マンガンホウ素、銅、コバルト、モリブデン、亜鉛等の金属の塩のような微量要素を挙げることができる。
【0052】
この製剤は、一般に、式(I)の活性化合物を0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜70質量%の範囲内で含有することができる。
【0053】
本発明の式(I)の活性化合物及び混合除草剤組成物は、それ自体を直接使用するか、前記の製剤形態で使用するか、又はさらに希釈して調製された使用形態で使用することができる。そして、例えば、液剤散布(watering)、噴霧、微粒子化、散粒施用などの方法で適用することができる。
【0054】
本発明の式(I)の活性化合物及び混合除草剤組成物は、植物の発芽前及び発芽後のいずれの段階でも使用することができる。
【0055】
本発明の式(I)の活性化合物の施用量は実質的範囲内で変えることができる。それは望むべき効果の性質に依存して基本的に異なる。施用量としては、一般には、1ヘクタール当り、活性化合物として約0.01〜約50kg、好ましくは約0.1〜約10kgの範囲内を挙げることができる。
【0056】
また、混合除草剤組成物の施用量は、それぞれの混合有効成分の種類、配合割合、配合量等により異なる。一般には、1ヘクタール当り、合計混合有効成分量として約0.0001〜約50kg、好ましくは約0.001〜約5kgの範囲内を挙げることができる。
【0057】
次に、本発明の化合物の製造及び用途を下記の実施例によりさらに特定的に示す。しかしながら本発明はこれらのみに限定されるべきものではない。
【実施例】
【0058】
合成実施例1
【化9】

オクタン酸4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル(1.48g)をアセトニトリル(20ml)に溶解し、これにトリエチルアミン(0.97g)およびアセトンシアンヒドリン(0.04g)を加えた。混合物を室温で5時間攪拌した。溶媒を留去したのち、反応混合物に希塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチル(150ml)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。酢酸エチルを留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により精製し、目的の5−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−オクタノイル−シクロヘキサ−4−エン−1,3−ジオン(0.51g)を得た。
D20 1.4937
【0059】
合成実施例2
【化10】

ノナン酸4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル(0.64g)をトルエン(5ml)に溶解し、これに4−ジメチルアミノピリジン(0.05g)を加え、2時間還流下に攪拌した。溶媒を留去したのち、反応混合物に希塩酸を加えて酸性とし、酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。酢酸エチルを留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により精製し、目的の5−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ノナノイル−シクロヘキサ−4−エン−1,3−ジオン(0.42g)を得た。
D20 1.4932
【0060】
上記の合成実施例1又は2と同様の方法により、または、さきに述べた製法(a)の一般的製法に準じて容易に得られる、式(IA)の化合物を包含し且つまた既知化合物を包含する前記式(I)のシクロヘキサンジオン誘導体の例を、上記合成実施例1および2の化合物と共に次の第1表に示す。
【0061】
第1表において、本発明の式(I)の化合物の次の式(Qn)の部分:
【化11】

に関し、
Q1は基
【化12】

を示し、
Q2は基
【化13】

を示し、
Q3は基
【化14】

を示し、
Q4は基
【化15】

を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
参考実施例1(中間体の製造)
【化16】

THF(20ml)中の2,2,4,4−テトラメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリオン(0.80g)の溶液にトリエチルアミン(0.60g)を加え、30分間、10℃にて攪拌した。これにTHF(5ml)中の塩化n−オクタノイル(0.94g)の溶液を5℃にて滴下し室温で3時間攪拌した。反応後、冷水で反応液を希釈し、酢酸エチル(100ml)で抽出し、ついで希塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液にて洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。酢酸エチルを留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により精製し、目的のオクタン酸4,4,6,6−テトラメチル−3,5−ジオキソ−1−シクロヘキサ−1−エニルエステル(1.48g)を得た。
D20 1.4735
【0064】
<生物試験実施例>
試験実施例1: 雑草に対する除草効果試験
活性化合物の調合剤の調製
担 体:ジメチルホルムアミド(DMF) 5質量部
乳化剤:ベンジルオキシポリグリコールエーテル 1質量部
活性化合物の調合剤は、1質量部の活性化合物と、上記分量の担体および乳化剤とを混合することにより、乳剤として得られた。その調合剤の所定薬量を水で希釈する。
試験方法
温室内において、畑土壌を詰めた120cm3ポットの表層に、エノコログサ及びアオビユの各種子を播種覆土した。播種覆土10日後(雑草は平均第2葉期)に、各活性化合物の調合剤の所定希釈液を各試験ポットの植物体茎葉部に均一に散布した。散布5日後に除草効果の程度を調査した。なお、除草効果の評価は、完全枯死を100%とし、0%を除草効果なしとして行った。
【0065】
代表例として、例えば、化合物番号1、2、3、4、6、8および10の化合物における結果を第2表に示す。
【表2】

【0066】
試験実施例2: 除草剤組成物の茎葉散布相乗効果試験
温室内において、畑土壌を詰めた120cm3ポットの表層に、ヒエ、エノコログサ、アオビユ及びイヌタデの各種子を播種覆土した。播種覆土10日後(雑草は平均第2葉期)に、上記試験実施例1と同様にして調製した各活性化合物及び各活性化合物混合物を各試験ポットの植物体茎葉部に均一に散布した。散布3日後に除草効果の程度を調査した。除草効果の評価は、完全枯死を100%とし、0%を除草効果なしとして行った。
【0067】
代表例として、例えば、本発明化合物として化合物番号3の化合物と、公知除草剤としてグルホシネートを用いた場合の結果を第3表に示す。
【表3】

【0068】
<製剤実施例>
製剤実施例1(粒剤)
本発明化合物番号18(10部)、ベントナイト(モンモリロナイト)(30部)、タルク(滑石)(58部)及びリグニンスルホン酸塩(2部)の混合物に水(25部)を加え、良く捏和し、押し出し式造粒機により10〜40メッシュの粒状とし、40〜50℃で乾燥して粒剤とした。
【0069】
製剤実施例2(粒剤)
0.2〜2mmの粒度分布を有する粘土鉱物粒(95部)を回転混合機に入れた。回転下、液体希釈剤とともに本発明化合物番号18(5部)を噴霧し均等に湿らせた後、40〜50℃で乾燥し粒剤とした。
【0070】
製剤実施例3(乳剤)
本発明化合物番号3(30部)、キシレン(55部)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(8部)及びアルキルベンゼンスルホン酸カルシウム(7部)を混合し撹拌して乳剤とした。
【0071】
製剤実施例4(水和剤)
本発明化合物番号3(15部)、ホワイトカーボン(含水無定形酸化ケイ素微粉末)と粉末クレーとの混合物(1:5)(80部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(2部)及びアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン重合物(3部)を粉末混合し、水和剤とした。
【0072】
製剤実施例5(水和顆粒)
本発明化合物番号3(20部)、リグニンスルホン酸ナトリウム(30部)、ベントナイト(15部)及び焼成ケイソウ土粉末(35部)を十分に混合し、水を加え、0.3mmのスクリーンで押し出し、乾燥して、水和顆粒とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルキル又は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルケニルを示し、
、R、R及びRは水素若しくはメチルを示すか、又は
はRと一緒になってエチレンを形成し、そして
及びRは水素若しくはメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示す]
で表される化合物を有効成分として含有することを特徴とする速効性作用を有する除草剤組成物。
【請求項2】
式(IA)
【化2】

[式中、
1Aは場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルキル又は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルケニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aは水素又はメチルを示すか、又は
2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aは水素若しくはメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示し、
但し、次の(i)〜(iii)の場合:
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aがメチルを示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示し、そしてR1Aがn−ノニルを示す場合、
を除く]
で表される新規なシクロヘキサンジオン誘導体。
【請求項3】
1Aが場合によりメトキシ置換もしくはエトキシ置換されていてもよいC6−9アルキル(ここで、このC6−9アルキルはn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、3−メチルオクチル又は7−メチルオクチルを示す)又はメトキシ置換された6−ノネニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aが水素若しくはメチルを示すか、又は
2AがR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aが水素若しくはメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示し、
但し、次の(i)〜(iii)の場合:
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aがメチルを示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示し、そしてR1Aがn−ノニルを示す場合、
を除く、
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1Aが場合によりメトキシ置換もしくはエトキシ置換されていてもよいC6−9アルキル(ここで、このC6−9アルキルはn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、3−メチルオクチル又は7−メチルオクチルを示す)又はメトキシ置換された6−ノネニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aが水素若しくはメチルを示し、又は
2AがR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aが水素若しくはメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示し、
但し、
4A及びR5Aが水素を示す場合、R2A、R3A、R6A及びR7Aは水素を示すか、又はR2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成しそしてR3A及びR6Aは夫々水素を示し、
4A及びR5Aがメチルを示す場合、R2A、R3A、R6A及びR7Aは夫々水素を示し、そして
4AがR5Aと一緒になってオキソを示す場合、R2A、R3A、R6A及びR7Aはメチルを示し、そして
さらに、次の(i)〜(iii)の場合:
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aがメチルを示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示し、そしてR1Aがn−ノニルを示す場合、
を除く、
請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
1Aが場合によりメトキシ置換もしくはエトキシ置換されていてもよいC6−9アルキル(ここで、このC6−9アルキルはn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、3−メチルオクチル又は7−メチルオクチルを示す)又はメトキシ置換された6−ノネニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、そして
4AとR5Aが一緒になってオキソを示し、
但し、R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示し、そしてR1Aがn−ノニルを示す場合、
を除く、
請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
式(IA)
【化3】

[式中、
1Aは場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルキル又は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルケニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aは水素又はメチルを示すか、又は
2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aは水素若しくはメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示し、
但し、次の(i)〜(iii)の場合:
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aがメチルを示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示し、そしてR1Aがn−ノニルを示す場合、
を除く]
で表される化合物の製造方法であって、次の式(II)
【化4】

(式中、R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aは、上記した通りの意味を有する)で表される化合物を、不活性溶媒中で、もしも必要ならば酸結合剤の存在下に、そしてもしも必要ならばシアナイドの存在下に、そしてもしも必要ならば相変換触媒の存在下に、反応させて転位することを特徴とする、上記の製造方法。
【請求項7】
(a)請求項1に記載の式(I)の化合物、及び
(b)スルホニル尿素系除草剤、カーバメート系除草剤、クロロアセトアニリド系除草剤、ジフェニルエーテルトリアジン系除草剤、フェノキシ酸又は安息香酸系除草剤、酸アミド又は尿素系除草剤、有機リン系除草剤、ジニトロアニリン系除草剤、シクロヘキサンジオン系除草剤、イミダゾリノン系除草剤、ビピリジウム系除草剤、カルバモイルテトラゾリノン系除草剤、ベンタゾン、トリジファン、インダノファン、アミトロール、カルフェントラゾン−エチル、スルフェントラゾン、フェンクロラゾール−エチル、イソキサフルトール、クロマゾン、マレイン酸ヒドラジド、ピリデート、クロリダゾン、ノルフルラゾン、ピリチオバック、ブロマシル、ターバシル、メトリブジン、オキサジクロメホン、シンメチリン、フルミクロラック−ペンチル、フルミオキサジン、フルチアセット−メチル、アザフェニジン、ベンフレセート、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ペントキサゾン、カフェンストロール、ピリミノバック、ビスピリバックナトリウム、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピラフルフェン−エチル、ベンゾビシクロン、ジチオピル、ダラポン及びクロルチアミド
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の他の除草剤
とを有効成分として含有することを特徴とする混合除草剤組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)で表されるシクロヘキサンジオン誘導体を、雑草および/またはそれらの生育場所に作用させることを特徴とする、雑草を防除する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)で表されるシクロヘキサンジオン誘導体の雑草を防除するための使用。
【請求項10】
請求項1に記載の式(I)で表されるシクロヘキサンジオン誘導体を、増量剤および/または表面活性剤と混合することを特徴とする、除草剤組成物の製造方法。
【請求項11】
式(II)
【化5】

[式中、
1Aは場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルキル又は場合によりC1−4アルコキシ置換されていてもよいC6−9アルケニルを示し、
2A、R3A、R6A及びR7Aは水素又はメチルを示すか、又は
2AはR7Aと一緒になってエチレンを形成し、そして
4A及びR5Aは水素若しくはメチルを示すか、又は一緒になってオキソを示し、
但し、次の(i)〜(iii)の場合:
(i) R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びR7Aが水素を示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(ii) R2A、R3A、R6A及びR7Aが水素を示し、R4A及びR5Aがメチルを示し、そしてR1Aがn−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−ノニルを示す場合、
(iii) R2A、R3A、R6A及びR7Aがメチルを示し、R4AとR5Aが一緒になってオキソを示し、そしてR1Aがn−ノニルを示す場合、
を除く]
で表される化合物。

【公表番号】特表2008−534532(P2008−534532A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503395(P2008−503395)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002306
【国際公開番号】WO2006/102986
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】