説明

陶器製加熱調理器具

【課題】調理器具の実際の温度よりも温度検出装置による検出温度が高温側に大きくずれてしまうことを回避できる陶器製加熱調理器具を提供する。
【解決手段】ガスコンロ22の五徳24に載置される底面14の中央部分に、中央突起38を下方に突出するように設けた。そして、加熱調理器具10の底面14に当接して、加熱調理器具10の温度を検出する温度検出装置34に中央突起38が当接することにより、温度検出装置34を加熱調理器具10の底面14よりも下方に押し下げるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶器製の加熱調理器具に関し、特にガスコンロによる加熱調理に用いられるガスコンロ用の陶器製加熱調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品の加熱調理器具として陶器製のものが広く用いられている。陶器製の加熱調理器具は、多孔質な構造を有し、保湿性や保温性に優れるため、食品をふっくらと加熱調理することができるからである。また、陶器の加熱により生ずる遠赤外線効果等によって、食品を更に美味しく調理できる利点も知られており、金属製の鍋等と共に、加熱調理に欠かせない調理器具として長年に亘って用いられてきている。
【0003】
ところで、加熱調理器具の加熱に利用される熱源の一つとして、ガスバーナを備えたガスコンロが、一般に使用されている。また、近年、金属製の筒体内にサーメスタ等の温度センサが収容されてなる温度検出装置が、環状のガスバーナの中央部に、ばねで上方に付勢された状態で上下方向に伸縮自在に配設されたガスコンロが提供されている。例えば、特開2006−84119号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。このようなガスコンロでは、温度検出装置が、鍋等の加熱調理器具の底面に当接して、当該調理器具の温度を検出する。そして、空焚き等により加熱調理器具の温度が異常に上昇した場合に、ガスバーナの燃焼を停止することによって、火災等を未然に防止するようになっている。また、温度検出装置により検知される温度に基づき、ガスコンロに内蔵されたマイクロコンピュータによりガスバーナの火力を調節することも行われている。
【0004】
ところが、このような温度検出装置を備えたガスコンロを用いて陶器製の加熱調理器具を加熱すると、加熱調理器具が充分に加熱される前に、温度検出装置により検出される温度が高温に達し、ガスバーナの燃焼が停止してしまうという不具合があった。何故なら、陶器製の加熱調理器具は金属製の鍋等に比べて熱伝導性が低く、加熱に時間がかかる。これに対して、温度検出装置は、金属製の筒体から構成されており、ガスバーナからの熱影響を受けやすく、陶器製の加熱調理器具の底面温度よりも早期に高温に達しやすい。そのため、温度検出装置の検出温度が陶器製の加熱調理器具の温度よりも高温側に大きくずれてしまうからである。それ故、陶器製の加熱調理器具を用いた場合に、温度検出装置の作動が実際の調理器具の温度と適合せず、そのために、ガスバーナの火力の適正な調節が困難となるといった問題が生じていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−84119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ガスバーナの中央部に温度検出装置が配設されたガスコンロにおいて使用される陶器製加熱調理器具であって、調理器具の実際の温度よりも温度検出装置による検出温度が高温側に大きくずれてしまうことを回避することができる、新規な構造のガスコンロ用の陶器製加熱調理器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、五徳に載置される加熱調理器具の底面に当接して温度を検出する温度検出装置がガスバーナの中央部に配設されてなるガスコンロにおいて使用される陶器製加熱調理器具において、前記底面の中央部分には下方に突出する中央突起が設けられており、該中央突起が前記温度検出装置に当接することにより該温度検出装置が前記底面よりも下方に押し下げられるようになっていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、温度検出装置を、中央突起にて、加熱調理器具の底面よりも下方に押し下げて、比較的高温となるガスバーナの炎の上方側から、それよりも低温のガスバーナの炎口側に位置させることができる。これにより、温度検出装置に対して、ガスバーナの熱影響を受け難くさせることが可能となる。その結果、温度検出装置による検出温度が、ガスバーナからの熱影響のために、陶器製の加熱調理器具の加熱調理面の実際の温度よりも先に異常な高温となってしまうことが防止できる。そして、それによって、温度検出装置による検出温度を効果的に適正化できる。
【0009】
また、中央突起により温度検出装置を加熱調理器具の底面よりも下方に押し下げることで、加熱調理器具の底面と温度検出装置との間に、外部空気の流通空間を形成することができる。その結果、温度検出装置が、外部空気に晒されるようになる。そして、これによっても、ガスバーナからの熱影響による温度検出装置の過熱を抑制することが可能となる。より好ましくは、中央突起により温度検出装置をガスバーナの炎口近傍か、それ以下に押し下げる。これにより、温度検出装置の一層の冷却効果が期待できる。
【0010】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るガスコンロ用の陶器製加熱調理器具において、前記底面の中央部分には、前記中央突起を囲繞する筒状周壁部が下方に突出して設けられているものである。
【0011】
本態様によれば、中央突起に当接する温度検出装置の周囲を筒状周壁部によって囲繞することができる。これによって、温度検出装置へのガスバーナの熱影響をより有効に防止できる。また、筒状周壁部を中央突起の温度検出装置に対する位置決め部として機能させることができる。これにより、温度検出装置を、中央突起にて確実に押し下げることができる。その結果、温度検出装置の押し下げによる検出温度の適正化の効果を、更に一層確実に且つ安定的に得ることが可能となる。
【0012】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るガスコンロ用の陶器製加熱調理器具において、前記中央突起の前記温度検出装置への当接面積が、前記温度検出装置の先端面の表面積以下とされているものである。
【0013】
本態様によれば、加熱調理器具の中央突起の形成部位からなる底面の厚肉部分を必要最小限にしつつ、温度検出装置の押し下げによる検出温度の適正化の効果を確実に得ることができる。しかも、中央突部の当接面積が小さくされることで、温度検出装置の外部空気による冷却効果が期待できる。それ故、陶器製の加熱調理器具表面に具備した食材との接触面の温度を適切に調節できる。
【0014】
また、本態様の構成と前記第二の態様に係る構成とを組み合わせた場合には、中央突起の外径を温度検出装置の外径よりも小さくしても、筒状周壁部による位置決め効果により、中央突起を温度検出装置に対して確実に当接させることができる。
【0015】
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れか一の態様に係るガスコンロ用の陶器製加熱調理器具において、前記底面が、前記中央突起から前記五徳に載置される前記外周縁部に向かって上方に傾斜する勾配が設けられているものである。
【0016】
本態様によれば、ガスバーナの炎を底面の外周縁部側へが逃すことができ、中央部に設けられた温度検出装置への熱影響をさらに低減できる。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記第一〜四の何れか一の態様に係るガスコンロ用の陶器製加熱調理器具において、全体として平板形状を備えており、前記五徳に載置される前記底面と反対側の表面が加熱調理面とされているものである。
【0018】
本態様によれば、加熱調理面で焼き物等の加熱調理が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従う陶器製加熱調理器具によれば、ガスコンロに設けられる温度検出装置による検出温度が、ガスバーナからの熱影響のために、調理器具の底面の実際の温度よりも高温側に大きくずれてしまうようなことを効果的に防止できる。その結果、陶器製の調理器具を用いた場合に、温度検出装置の作動が調理器具の実際の温度と適合せずに、ガスバーナの火力の適正な調節が困難となるといった問題を極めて有利に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従う構造を有する陶器製加熱調理器具の一実施形態を、その使用形態において示す拡大縦断面図。
【図2】図1に示された陶器製加熱調理器具の表面図。
【図3】図1に示された陶器製加熱調理器具の裏面図。
【図4】本発明に従う構造を有する陶器製加熱調理器具の別の実施形態を示す裏面図。
【図5】本発明に従う構造を有する陶器製加熱調理器具の更に別の実施形態を示す裏面図。
【図6】図1に示された陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの調理器具の表面温度と、温度検出装置の検出温度と、バーナの火力のそれぞれの経時変化を示すグラフ。
【図7】図4に示された陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの調理器具の表面温度と、温度検出装置の検出温度と、バーナの火力のそれぞれの経時変化を示すグラフ。
【図8】図5に示された陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの調理器具の表面温度と、温度検出装置の検出温度と、バーナの火力のそれぞれの経時変化を示すグラフ。
【図9】従来構造を有する陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの調理器具の表面温度と、温度検出装置の検出温度と、バーナの火力のそれぞれの経時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有するガスコンロ用の陶器製加熱調理器具の一実施形態としての焼き物用陶板10が、ガスコンロ22に載置された状態での縦断面形態で示されている。また、図2には、焼き物用陶板10の表面形態が、図3には、その裏面形態が、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の焼き物用陶板10は、全体として、円形の平板形状を有している。この焼き物用陶板10は、その表面(上面)が、加熱調理面12とされている。また、その裏面(下面)が、底面14とされている。そして、加熱調理面12上に被調理物が載置される一方、底面14において、ガスコンロ22の五徳24に載置されて、使用されるようになっている。なお、図1においては、ガスコンロ22は一部切欠断面図にて示されている。
【0023】
より詳細には、図1及び図2から明らかなように、焼き物用陶板10の加熱調理面12には、リブ状突起16が、放射状に延びるように多数設けられている。また、それら多数のリブ状突起16の互いに隣り合うもの同士の間には、溝部18が、それぞれ形成されている。更に、加熱調理面12の外周部には、周方向に延びる凹溝からなる液溜め部20が設けられている。
【0024】
これによって、被調理食品が、加熱調理面12において、多数のリブ状突起16上に載置されるようになっている。そして、例えば、肉等の被調理食品を加熱調理した際に生ずる肉汁や油等の液状物が、多数の溝部18を伝って加熱調理面12の外周部に流れていき、液溜め部20に溜められるようになっている。
【0025】
一方、図1及び図3から明らかなように、焼き物用陶板10の底面14は、下方に向かって次第に小径となる、テーパ角度が極めて小さなテーパ面とされている。即ち、底面14には、その中央部から外周縁部に向かって上方に傾斜する、小さな勾配が付されている。
【0026】
また、そのような底面14は、その中央部分と外周部分との間に位置する、径方向の中間部分が、ガスコンロ22の五徳24上に載置され、且つガスコンロ22のガスバーナ26の炎Fに直接に晒されて、加熱される被加熱部28とされている。そして、この被加熱部28の外側の外周部には、複数個(ここでは3個)の位置決め突起30が、周方向に等間隔を隔てて、一体的に突設されている。それら複数の位置決め突起30が五徳24の外側に配置されることにより、被加熱部28が五徳24上に確実に載置されるようになっている。また、位置決め突起30の突出高さは、後述する中央突起38の突出高さよりも大きくされている。これにより、焼き物用陶板10を五徳24から外してテーブル等の平面上に載置しても、中央突起38がテーブル等に当接することなく、位置決め突起30により安定して載置することができる。
【0027】
ところで、図1に示されるように、焼き物用陶板10の被加熱部28を加熱するガスコンロ22のガスバーナ26は、五徳24の内側に配されている。そして、そのようなガスバーナ26の中央部には、収容穴32が設けられており、この収容穴32内に、温度検出装置としての温度センサ34が、上下方向に移動可能な状態で収容されている。温度センサ34は、先端面が検出部35とされて、この検出部35において被検出物に当接することで被検出物の温度を検出する公知の構造を有している。また、収容穴32内には、圧縮コイルスプリング36が収容されている。そして、温度センサ34が、収容穴32内で圧縮コイルスプリング36の上端面に係合し、且つ検出部35を五徳24よりも上側に突出させた状態(図1に二点鎖線で示す)で、配置されている。これによって、焼き物用陶板10がガスコンロ22の五徳24上に載置されたときに、温度センサ34の検出部35が、圧縮コイルスプリング36の付勢力に基づいて、焼き物用陶板10の底面14の中央部に圧接するようになっている。なお、図示されてはいないものの、ガスコンロ22には、温度センサ34による検出温度に基づいてガスバーナ26の炎Fの火力を調節するコントローラが内蔵されている。
【0028】
そして、本実施形態の焼き物用陶板10においては、特に、底面14の中央部に、下方に突出する中央突起38が一体形成されている。この中央突起38は、全体として、下方に向かって次第に小径となる円錐台形状を呈している。このような中央突起38の先端面(下面)が、円形の平坦面からなる押圧面40とされている。
【0029】
このため、焼き物用陶板10がガスコンロ22の五徳24上に載置されたときに、中央突起38の押圧面40の全面が、温度センサ34の検出部35に当接する。これによって、ガスバーナ26の炎Fにて加熱された焼き物用陶板10の温度が、温度センサ34にて検出されるようになっている。
【0030】
また、焼き物用陶板10が五徳24上に載置されたときには、中央突起38が、温度センサ34を、圧縮コイルスプリング36の付勢力に抗して、焼き物用陶板10の底面14よりも下方に押し下げる。そして、温度センサ34の検出部35が、中央突起38の底面14からの突出高さに応じた分だけ、焼き物用陶板10の底面14から離間させられる。このとき、温度センサ34の検出部35は、比較的高温となるガスバーナ26の炎Fの上方側から、それよりも低温のガスバーナ26の炎口側に配置される。また、温度センサ34の検出部35から焼き物用陶板10の底面14から離間させられることで、焼き物用陶板10の底面14の被加熱部28よりも内側に位置する中央部分の下側に、外部空気を、図1に矢印アで示されるように温度センサ34の検出部35に導く外気流通空間41が形成される。これらによって、ガスバーナ26の炎口側に配置された温度センサ34の検出部35が、ガスバーナ26の炎Fからの熱影響を受け難くされている。
【0031】
なお、中央突起38の底面14からの突出高さは、特に限定されるものではないものの、2〜9mm程度の範囲内の値とされていることが望ましい。何故なら、中央突起38の突出高さが2mm未満である場合には、温度センサ34をガスバーナ26の炎Fの高温の上方側から十分に離間させることが困難となる。そのため、温度センサ34に対するガスバーナ26の炎Fからの熱影響の回避効果が十分に得られなくなるからである。また、中央突起38の突出高さが9mmを超える場合には、その突出高さが、収容穴32内での温度センサ34の移動ストロークを超えるようになる。そのため、焼き物用陶板10をガスコンロ22に載置したときに、焼き物用陶板10の底面14が五徳24から浮き上がってしまい、焼き物用陶板10をガスコンロ22に安定的に載置することが困難となるからである。このような中央突起38の底面14からの突出高さは、3〜8mmとされていることが、より好ましく、更に好ましくは6mmである。
【0032】
また、中央突起38は、その先端面からなる押圧面40の面積(温度センサ34の検出部35に対する当接面積)が、温度センサ34の検出部35の表面積よりも小さくされている。これにより、温度センサ34の検出部35が中央突起38の押圧面40にて押し下げられた状態下で、検出部35の外周部が、中央突起38の押圧面40と非接触とされている。そして、そのような検出部35の外周部が、外気流通空間41内を流通する外部空気に晒されるようになっている。
【0033】
このような中央突起38が設けられた焼き物用陶板10の底面14には、下方に突出し、且つ周方向に延びる筒状周壁部42が、中央突起38を囲繞するように一体形成されている。この筒状周壁部42は、中央突起38よりも高い突出高さを有すると共に、十分に薄い肉厚を有する円筒形状を呈している。そして、焼き物用陶板10の底面14の中央部と前記被加熱部28との境界部位に配置されている。
【0034】
このため、焼き物用陶板10をガスコンロ22の五徳24上に載置させる際に、筒状周壁部42を五徳24の内側に位置させることで、被加熱部28が、五徳24上に確実に載置されるようになる。即ち、筒状周壁部42が位置決め機能を発揮するようになっている。それ故、前記したように、中央突起38の押圧面40の面積が、温度センサ34の検出部35の表面積よりも小さくされているにも拘わらず、筒状周壁部42の位置決め機能に基づいて、中央突起38の押圧面40が、温度センサ34の検出部35に対して確実に接触するようになっている。なお、ガスバーナの炎口の向きによっては、筒状周壁部42の突出高さを中央突起38よりも小さくしてもよいし、若しくは筒状周壁部42を採用しなくてもよい。
【0035】
また、図1に示されるように、焼き物用陶板10が五徳24上に載置された状態下では、筒状周壁部42が、中央突起38にて押し下げられた温度センサ34の検出部35を、径方向に所定距離を隔てた位置において、外側から取り囲むように配置される。これによって、筒状周壁部42が、温度センサ34の検出部35とガスバーナ26の炎Fとの間を遮断するようになる。その結果として、温度センサ34の検出部35が、ガスバーナ26の炎Fからの熱影響を受け難くされている。
【0036】
このように、本実施形態の焼き物用陶板10では、底面14の中央部に一体的に突設された中央突起38にて、ガスコンロ22に設置される温度センサ34を押し下げることにより、また、筒状周壁部42にて、温度センサ34の検出部35を外側から囲繞することによって、温度センサ34の検出部35がガスバーナ26の炎Fから受ける熱影響を十分に小さくすることができる。しかも、中央突起38による温度センサ34の押下げにより、焼き物用陶板10の底面14の中央部分の下方に形成される外気流通空間41内に導かれた外部空気を、温度センサ34の検出部35のうち、中央突起38と非接触とされた外周部分に接触させることができる。これによっても、温度センサ34の検出部35の過熱を抑制できる。
【0037】
従って、このような本実施形態の焼き物用陶板10を用いれば、温度センサ34による検出温度が、ガスバーナ26からの熱影響のために、焼き物用陶板10の底面14の温度よりも先に異常な高温となってしまうことが防止できる。そして、それによって、焼き物用陶板10を使用した場合にも、温度センサ34による検出温度を効果的に適正化でき、その結果、焼き物用陶板10の温度に基づいて、ガスバーナ26の火力の調節を適正に実施することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態の焼き物用陶板10では、底面14の被加熱部28に対して、その内周側から外周側に向かって上方に傾斜する勾配が付されている。このため、ガスバーナ26の炎Fが、被加熱部28の傾斜に沿って底面14の外周縁側に逃がされるようになる。これによっても、底面14の中央部に突設された中央突起38の押圧面40と接触する温度センサ34の検出部35がガスバーナ26の炎Fから受ける熱影響を、より効果的に軽減させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態においては、中央突起38が円錐台形状とされている。そのため、中央突起38の先端面からなる押圧面40の面積を十分に小さく為しつつ、中央突起38に必要な強度が有利に確保され得る。これによって、押圧面40の温度センサ34との当接面積の減少による効果を有利に確保した上で、中央突起38が簡単に折れたり、破損したりするようなことが有利に防止され得る。その結果、中央突起38の押し下げによって得られる温度センサ34の熱影響回避効果が、より確実に且つ安定的に発揮され得る。その上、中央突起38が円錐台形状とされて、押圧面40の面積が小さくされていることで、中央突起38の形成によって厚肉化される部分が、必要最小限に抑えられる。これにより、焼き物用陶板10全体の熱伝達性が中央突起38にて損なわれるようなことが、有利に防止され得る。
【0040】
次に、図4には、本発明に従う陶器製加熱調理器具の別の実施形態が、その裏面形態において示されている。なお、図4に示される実施形態、及び後述する図5に示される更に別の実施形態に関しては、前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図4及び図5に、図1〜図3と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0041】
すなわち、図4から明らかなように、本実施形態の焼き物用陶板44にあっては、その外周部を除く部分の全体に、厚さ方向に貫通する透孔46が、所定のパターンで配列して、多数形成されている。それら多数の透孔46は、長孔形状乃至は細長い長方形状を有している。これによって、加熱調理面12上に載置された被調理食品などが、多数の透孔46を通じて、ガスバーナ26の炎F(共に図示せず)に直接に晒されるようになっている。即ち、本実施形態の焼き物用陶板44は、網焼き用として、好適に使用されるようになっているのである。
【0042】
そして、このような焼き物用陶板44の底面14の中央部にも、中央突起38が一体形成されている。この中央突起38は、前記実施形態と同様に、先細りの円錐台形状を呈し、その先端面が、温度センサ34の検出部35(共に図示せず)を押圧する押圧面40とされている。
【0043】
従って、本実施形態の焼き物用陶板44にあっても、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
【0044】
そして、このような網焼き用として使用される焼き物用陶板44にあっては、好適には、図5に示されるように、底面14の外周部に、複数個(ここでは6個)の脚部48が一体的に突設される。それら各脚部48は、周方向において互いに等間隔を隔てて配置されている。また、各脚部48の突出先端面には、五徳24の上端部が嵌合する嵌合溝50がそれぞれ設けられている。
【0045】
このような脚部48を有する焼き物用陶板44は、各脚部48の嵌合溝50に五徳24の上端部がそれぞれ嵌合された状態で、五徳24上に載置される。これによって、加熱調理面12が、各脚部48の高さ分だけ、ガスバーナ26(図示せず)から上方に離隔されて、ガスバーナ26の炎F(図示せず)から遠ざけられる。その結果、加熱調理面12に載置される被調理食品が、ガスバーナ26の炎Fで焦げ付くことが、未然に防止されるようになっている。
【0046】
そして、このような焼き物用陶板44の底面14の中央部にも、中央突起38が一体形成されている。これによって、本実施形態の焼き物用陶板44にあっても、前記各実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、中央突起38の形状は、温度検出装置としての温度センサ34を押し下げ得る形状であれば、何等限定されるものではない。従って、中央突起38の形状としては、例えば、円形や楕円形、多角形、無定形などの横断面形状を呈する柱形状や筒形状、或いは円錐形状や角錐形状など、任意の形状が、適宜に採用され得る。
【0048】
また、筒状周壁部42も、中央突起38を囲繞可能であれば、如何なる形状を有していても良い。そして、その高さや肉厚も、特に限定されるものではない。なお、本発明において、筒状周壁部42は必須のものではない。
【0049】
加えて、前記各実施形態では、本発明を平状の全体形状を有する焼き物用陶板に適用したものの具体例が示されていたが、本発明は、そのような焼き物用陶板以外に、例えば土鍋などの陶器製加熱調理器具の何れに対しても、有利に適用可能である。また、焼き物用陶板の加熱調理面上に、被加熱調理食品に代えて、鍋等の別の加熱調理器具を載置して、この加熱調理器具を加熱するようにしても良い。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しないかぎりにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものである。
【0051】
先ず、土鍋などの形成材料として一般に使用される粘土等を用いて、公知の手法により、図1〜図3に示される構造を有する焼き物用陶板を製造した。これにより、本発明に従って、底面の中央突起が設けられた、平板状の全体形状を有する陶器製加熱調理器具を得た。これを実施例1とした。
【0052】
また、それとは別に、実施例1の陶器製加熱調理器具の製造に使用した粘土等と同様なものを用いて、図4に示されるような構造を有する網焼き用の焼き物用陶板と、図5に示されるような構造を有する、脚部を備えた網焼き用の焼き物用陶板とを、それぞれ製造した。これにより、本発明に従って、底面の中央突起が設けられた、網状の陶器製加熱調理器具と、そのような網状の陶器製加熱調理器具の底面の外周部に複数の脚部を一体形成したものとを、それぞれ得た。それらのうちの前者を実施例2とし、後者を実施例3とした。
【0053】
さらに、比較のために、実施例1の陶器製加熱調理器具の製造に使用した粘土等と同様なものを用いて、実施例1の陶器製過熱調理器具と同様な平板上の全体形状を有するものの、底面の中央部に、中央突起が何等設けられていない、従来と同様な構造を有する陶器製加熱調理器具を作製した。これを比較例1とした。
【0054】
そして、五徳上に載置される加熱調理器具の底面に接触して、加熱調理器具の温度を検出する温度センサが、ガスバーナの中央部に設置された公知のガスコンロ上に、上記のようにして得られた実施例1〜3と比較例1の4種類類の陶器製加熱調理器具をそれぞれ載置した。次いで、それら4種類の陶器製加熱調理器具のうち、実施例1と比較例1の陶器製加熱調理器具の加熱調理面上に鶏肉を載置して、それを加熱調理した。また、実施例2と実施例3の陶器製加熱調理器具の加熱調理面上には、もちを載置して、それを加熱調理した。そして、それら4種類の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行った際の各調理器器具の加熱調理面の温度と、温度センサの検出温度と、ガスバーナの火力のそれぞれの経時変化を調べた。実施例1の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの結果を図6に、実施例2の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの結果を図7に、実施例3の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの結果を図8に、比較例1の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行ったときの結果を図9に、それぞれ示した。
【0055】
図6〜図9に示された結果から明らかなように、実施例1〜実施例3の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行った際には、それら各調理器具の加熱調理面の温度と温度センサの検出温度とが、何れも、時間の経過に従って同様に変化している。そして、温度センサによる検出温度の最高温度が300℃を超えることがない。それよって、ガスバーナが消火されることなく、その火力が安定的に制御されている。これに対して、比較例1の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行った際には、比較例1の陶器製加熱調理器具の加熱調理面の温度が300℃を超えていないにも拘わらず、温度センサによる検出温度が300℃を上回っている。そして、それによって、ガスバーナが消火されてしまっている。これは、底面に中央突起が設けられた、本発明に従う構造を有する実施例1〜実施例3の陶器製加熱調理器具を用いることによって、温度センサによる検出温度が各調理器具の温度よりも先に異常な高温となってしまうことが防止できることを、明確に示している。
【0056】
また、図6〜図8のそれぞれのガスバーナの火力と温度センサの温度の経時変化から、実施例1〜実施例3の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行った場合には、温度センサの検出温度に基づいて、ガスバーナの火力が有効に制御されていることが確認できる。
【0057】
さらに、図6〜図8のそれぞれの各検出温度の経時変化から、実施例1〜実施例3の陶器製加熱調理器具を用いて加熱調理を行った場合には、ガスバーナの火力の有効な制御によって、バーナ周辺器具が異常な高温に達しないことが確認できる。そして、このことから、周辺器具が異常加熱されて、劣化したり、火災につながるような危険な状況を招いたりすることを確実に防止できることが、認識され得る。
【符号の説明】
【0058】
10,44:焼き物用陶板(陶器製加熱調理器具)、12:加熱調理面、14:底面、22:ガスコンロ、24:五徳、26:ガスバーナ、34:温度センサ(温度検出装置)、35:検出部(先端面)、38:中央突起、42:筒状周壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
五徳に載置される加熱調理器具の底面に当接して温度を検出する温度検出装置がガスバーナの中央部に配設されてなるガスコンロにおいて使用される陶器製加熱調理器具であって、
前記底面の中央部分には下方に突出する中央突起が設けられており、該中央突起が前記温度検出装置に当接することにより該温度検出装置が前記底面よりも下方に押し下げられるようになっていることを特徴とする、ガスコンロ用の陶器製加熱調理器具。
【請求項2】
前記底面の中央部分には、前記中央突起を囲繞する筒状周壁部が下方に突出して設けられている、請求項1に記載のガスコンロ用の陶器製加熱調理器具。
【請求項3】
前記中央突起の前記温度検出装置への当接面積が、前記温度検出装置の先端面の表面積以下とされている、請求項1又は2に記載のガスコンロ用の陶器製加熱調理器具。
【請求項4】
前記底面は、前記中央突起から前記五徳に載置される前記外周縁部に向かって上方に傾斜する勾配が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載のガスコンロ用の陶器製加熱調理器具。
【請求項5】
全体として平板形状を備えており、前記五徳に載置される前記底面と反対側の表面が加熱調理面とされている請求項1〜4の何れか1項に記載のガスコンロ用の陶器製加熱調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−245018(P2011−245018A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120904(P2010−120904)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(597149364)長谷製陶株式会社 (10)
【Fターム(参考)】