説明

陽イオン交換樹脂、及びその製造方法、並びにそれを用いたビスフェノール類の製造方法

【課題】高い中性塩分解容量を有する陽イオン交換樹脂、及び温和な条件での製造方法、並びにそれをビスフェノール類の製造触媒として用いた高転化率でのビスフェノール類の製造方法を提供する。
【解決手段】スチレン基の直鎖炭素原子の一方にR2及びR3を有し芳香環を有する炭素原子にR1を有するとともに芳香環にZを有するスルホン基およびA、Zを有するスルホン基をもつ構成単位を含み、芳香環1個当たりのスルホン酸基の平均結合モル数が1モルを越える陽イオン交換樹脂、及びその製造方法、並びにその陽イオン交換樹脂を触媒として用いるビスフェノール類の製造方法。R1、R2及びR3は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、Aは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を表し、Zは対イオンを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽イオン交換樹脂、及びその製造方法、並びにそれを用いたビスフェノール類の製造方法に関する。詳しくは、高い中性塩分解容量を有する陽イオン交換樹脂、及び温和な製造条件によるその製造方法、並びにそれをビスフェノール類の製造触媒として用いた場合に高転化率でビスフェノール類を製造することができるビスフェノール類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陽イオン交換樹脂の最も一般的なものは、スチレンとジビニルベンゼン等の架橋剤との架橋共重合体に濃硫酸等のスルホン化剤を反応させて、スルホン酸基をベンゼン環に直接に結合させた構造のものである。そして、陽イオン交換樹脂は、例えば、硬水軟化、純水製造、金属回収分離、超純水製造、薬液精製、糖液精製、アミノ酸分離精製、固体酸触媒、有機反応触媒等、各種の産業分野で用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の陽イオン交換樹脂は、導入されるスルホン酸基の量が必ずしも十分ではなく、純水製造、金属回収分離、固体酸触媒等の用途において、更なる中性塩分解容量の向上が求められている。又、これらの陽イオン交換樹脂をビスフェノール類の製造触媒として用いた場合も、更なる転化率や選択率の向上が求められている。一方、それらの点に解決を与えるべく、陽イオン交換樹脂中に含まれるスルホン酸基の含有量を増加させる検討も行われ、例えば、過剰量の発煙硫酸を用いて120℃程度の高温でスルホン化する方法等も提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)が、これらの条件では、スルホン架橋生成による架橋度の増加が起こり、所望の物性が得られない惧れがあり、又、多量の未反応の強酸が排出され、中和処理の必要がある等、環境面及び経済性の面での不利を免れ得ないものであった。
【特許文献1】米国特許第3158583号明細書
【特許文献2】特開2002−253971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、陽イオン交換樹脂における前述の従来技術に鑑みなされたもので、従って、本発明は、高い中性塩分解容量を有する陽イオン交換樹脂、及び温和な製造条件によるその製造方法、並びにそれをビスフェノール類の製造触媒として用いた場合に高転化率でビスフェノール類を製造することができるビスフェノール類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記一般式(1)で表される構成単位を含み、芳香環1個当たりのスルホン酸基の平均結合モル数が1モルを越える陽イオン交換樹脂、を要旨とする。
【0006】
【化1】

【0007】
〔式(1)中、R1 、R2 、及びR3 は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、Aは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を表し、Zは対イオンを表す。〕
【0008】
又、本発明は、前記陽イオン交換樹脂を製造するに際し、下記一般式(2−a)で表される構成単位を含む架橋共重合体をスルホン化剤によりスルホン化する陽イオン交換樹脂の製造方法、を要旨とする。
【0009】
【化2】

【0010】
〔式(2−a)中、R1 、R2 、及びR3 は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、Aは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す。〕
【0011】
更に、本発明は、前記陽イオン交換樹脂を触媒として用いるビスフェノール類の製造方法、を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い中性塩分解容量を有する陽イオン交換樹脂、及び温和な製造条件によるその製造方法、並びにそれをビスフェノール類の製造触媒として用いた場合に高転化率でビスフェノール類を製造することができるビスフェノール類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の陽イオン交換樹脂は、前記一般式(1)で表される構成単位を含むものであり、前記一般式(1)で表される構成単位を含まない場合には、後述する芳香環1個当たりのスルホン酸基の平均結合モル数が1モルを越えることが困難となり、本願発明の効果を達成することが困難となる。
【0014】
ここで、一般式(1)におけるR1 、R2 、及びR3 のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖状、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の分岐鎖状、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のものが、又、アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が、又、ハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等がそれぞれ挙げられる。又、これらのアルキル基、アリール基の置換基としては、例えば、前記R1 、R2 、及びR3 で例示したようなアルキル基やハロゲン原子等が挙げられる。これらの中で、R1 、R2 、及びR3 としては水素原子であるのが特に好ましい。
【0015】
又、一般式(1)におけるAの、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基としては、メチレン基(−CH2 −)、エチレン基(−CH2 CH2 −)、プロピレン基(−CH2 CH2 CH2 −)、ブチレン基(−CH2 CH2 CH2 CH2 −)等の炭素数1〜6のアルキレン基、及びそれらのアルキレン基にアルキレンオキシ基が置換した、例えば、ブチレンオキシメチレン基、ペンチレンオキシメチレン基等のアルキレンオキシアルキレン基等が挙げられ、これらのアルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基等の置換基としては、例えば、弗素原子等のハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、ジフルオロメチレン基(−CF2 −)、テトラフルオロエチレン基(−CF2 CF2 −)等が挙げられる。
【0016】
又、一般式(1)におけるZの対イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、コバルト、銅、パラジウム等の金属イオン、及び、アンモニウム類、ホスホニウム類等のオニウムイオンが挙げられる。金属イオンのうち、アルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムの各イオンが挙げられ、中で、ナトリウム、及びカリウムの各イオンが特に好ましい。又、アルカリ土類金属イオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びラジウムの各イオンが挙げられ、中で、マグネシウム、及びバリウムの各イオンが特に好ましい。
【0017】
又、オニウムイオンのうち、アンモニウムイオンとしては、第一級〜第四級のいずれのアンモニウムイオンであってもよいが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、アニリン、ベンジルアミン等の脂肪族或いは芳香族第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、N−メチルアニリン等の脂肪族或いは芳香族第二級アミン、トリメチルアミン、チリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン等の脂肪族或いは芳香族第三級アミンの各アンモニウムイオン、アルキル基の炭素数が1〜10のテトラアルキルアンモニウムの各イオンが挙げられ、又、アミノ酸類のアンモニウムイオンとして、アラニン、バリン、セリン、ロイシン、フェニルアラニン、フェニルグリシン、p−ヒドロキシフェニルグリシン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン等のラセミ体或いは光学活性体のアンモニウムイオンが挙げられる。又、ホスホニウムイオンとしては、アルキル基の炭素数が1〜10のテトラアルキルホスホニウムや、テトラフェニルホスホニウム等の各イオンが挙げられる。
【0018】
尚、前記一般式(1)で表される構成単位を含む本発明の陽イオン交換樹脂は、前記一般式(1)で表される構成単位の外に、下記一般式(2−a)、下記一般式(2−b)、下記一般式(2−c)、及び下記式(2−d)で表される構成単位等を含んでいてもよい。
【0019】
【化3】

【0020】
〔式(2−a)、(2−b)、(2−c)、及び(2−d)中、R1 、R2 、及びR3 は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、Aは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表し、Zは対イオンを表す。〕
【0021】
式(2−a)、(2−b)、(2−c)、及び(2−d)において、R1 、R2 、R3 のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、及びAのアルキレン基、並びにZの対イオンとしては、前記一般式(1)におけると同様のものが挙げられ、又、Xのハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられる。
【0022】
そして、前記一般式(1)で表される構成単位を含む本発明の陽イオン交換樹脂は、芳香環1個当たりのスルホン酸基の平均結合モル数が1モルを越えるものであり、1.1〜2.0モルであるのが好ましい。スルホン酸基の平均結合モル数が前記範囲未満では、陽イオン交換樹脂として高い中性塩分解容量を得ることが困難となり、一方、前記範囲超過のものは製造が困難である。
【0023】
又、前記一般式(1)で表される構成単位を含む本発明の陽イオン交換樹脂は、芳香環に直接に結合するスルホン酸基の総モル数〔M1 〕に対する、Aを介して芳香環に結合するスルホン酸基の総モル数〔M2 〕の割合〔M2 /M1 〕が、0.1〜2.0であるのが好ましく、0.3〜1.0であるのが特に好ましい。この割合〔M2 /M1 〕が前記範囲外では、芳香環1個当たりのスルホン酸基の前述の平均結合モル数を達成することが困難となる。
【0024】
本発明において、前記一般式(1)で表される構成単位を含み、前記一般式(2−a)、前記一般式(2−b)、前記一般式(2−c)、及び前記式(2−d)で表される構成単位等を含んでいてもよい陽イオン交換樹脂を製造するには、モノビニル芳香族化合物を単独重合した後、ハロアルキル基を導入し、次いで、スルホン化する方法、又は、ハロアルキル基を有するモノビニル芳香族化合物を単独重合した後、スルホン化する方法等であってもよいが、代表的には、(A)モノビニル芳香族化合物とポリビニル化合物とを、重合開始剤の存在下、水性媒体中で懸濁共重合し、これにハロアルキル基を導入し、次いで、スルホン化剤を用いてスルホン化する方法、(B)予めハロアルキル基を有するモノビニル芳香族化合物とポリビニル化合物とを、重合開始剤の存在下、水性媒体中で懸濁共重合し、次いで、スルホン化剤を用いてスルホン化する方法等が好ましい。即ち、前記一般式(2−a)で表される構成単位を含む架橋共重合体をスルホン化剤によりスルホン化する方法が好ましい。
【0025】
前記製造方法(A)において、モノビニル芳香族化合物としては、スチレン、スチレンのベンゼン環にエチル基等のアルキル基や弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子等が置換した化合物、スチレンのベンゼン環に他の芳香環が縮合した化合物、スチレンのα位及び/又はβ位に1個又は2個以上のメチル基等のアルキル基や弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子等が置換した化合物等、具体的には、エチルビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、α−フルオロスチレン、β−フルオロスチレン、α,β,β−トリフルオロスチレン等が挙げられる。これらは1種が用いられても、2種以上が用いられてもよい。これらの中で、入手及び製造の容易さからスチレンが最も好ましい。
【0026】
又、ポリビニル化合物は架橋剤として機能するもので、ここでは不飽和二重結合を2個以上有する架橋性化合物、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン、ジビニルトルエン等のアルキルジビニルベンゼン、ビスビニルフェニルエタン、ビスビニルフェニルブタン、ビス(4−ビニルフェニル)スルホン等のポリビニル芳香族化合物、及び、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)エチレングリコール(ポリ)(メタ)アクリレート等の(ポリ)(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの中で、ジビニルベンゼンが最も好ましい〔尚、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味し、以降も同様とする。〕。
【0027】
前記モノビニル芳香族化合物と前記ポリビニル化合物との共重合に際しては、必要に応じて、更に他のビニル化合物等を加えて共重合させてもよい。このようなビニル化合物(以下「第3のビニル化合物」と言う場合がある。)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等の(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエン、イソプレン等の不飽和炭化水素、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0028】
前記モノビニル芳香族化合物、前記ポリビニル化合物、及び、必要に応じて用いられる第3のビニル化合物(以下、これらを合わせて「原料モノマー」と言う場合がある。)との共重合方法は、公知の方法に準じて、全原料モノマーの混合物を、例えば、原料モノマー全量に対して通常0.1〜5重量%程度のラジカル重合開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等、の存在下、常圧乃至加圧下で、通常40〜150℃、好ましくは40〜100℃程度の温度で、水性媒体中で懸濁共重合することにより行われ、架橋共重合体球状粒子として得られる。
【0029】
尚、その際のモノビニル芳香族化合物の使用比率は、得られる樹脂の強度等、所望の物性に応じて選択することが可能であり、原料モノマー全量に対して、20重量%以上とするのが好ましく、又、99.9重量%以下とするのが好ましい。一方、ポリビニル化合物の使用比率は、原料モノマー全量に対して、0.1重量%以上とするのが好ましく、0.5重量%以上とするのが更に好ましく、又、55重量%以下とするのが好ましく、25重量%以下とするのが更に好ましい。又、第3のビニル化合物を使用する場合の使用比率は、原料モノマー全量に対して、50重量%以下とするのが好ましく、20重量%以下とするのが更に好ましい。
【0030】
尚、原料モノマーの共重合方法としては、分散重合、乳化重合等を用いることもできる。特に、スチレンのα位及び/又はβ位に1個又は2個以上のメチル基等のアルキル基や弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子等が置換した化合物を原料モノマーに用いる場合には、公知の方法に準じて、重合開始剤及び乳化剤の存在下での分散重合又は乳化重合が好適に用いられる。その際の重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が用いられ、その使用量は、原料モノマー全量に対して通常0.1〜10重量%程度である。又、乳化剤としては、ドデシルアミン塩酸塩やドデシルスルホン酸ソーダ等が用いられ、その使用量は、原料モノマー全量に対して通常0.01〜10重量%程度である。又、重合温度としては、重合開始剤の種類や濃度等の各種条件に応じて異なるが、通常は0〜100℃の範囲で選択される。
【0031】
得られた架橋共重合体へのハロアルキル基の導入方法は、特に限定されるものではないが、例えば、クロロメチル基を導入する場合、得られた架橋共重合体に、クロロメチル化反応の触媒としてのルイス酸の存在下にクロロメチルメチルエーテルを反応させる方法が用いられる。ここで、ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第二錫、四塩化チタン、三弗化硼素、臭化アルミニウム等が用いられ、その使用量は、架橋共重合体に対して通常0.02〜2重量倍程度であり、又、反応は、通常、30〜60℃程度の温度で2〜20時間で行われる。
【0032】
一方、前記製造方法(B)においては、ハロアルキル基を有するモノビニル芳香族化合物(以下、「ハロアルキル基含有モノビニル芳香族化合物」と言う場合がある。)を用いる以外は、前記製造方法(A)の場合と同様にしてポリビニル化合物と共重合させる。
【0033】
この場合のハロアルキル基含有モノビニル芳香族化合物としては、ハロアルキルスチレンが好ましく、具体的には、例えば、4−(4−ブロモブチル)スチレン、4−(4−クロロブチル)スチレン、4−(4−ヨードブチル)スチレン、4−クロロメチルスチレン、4−ブロモメチルスチレン、4−ヨードメチルスチレン等が挙げられる。尚、架橋剤として機能するポリビニル化合物としては、前記製造方法(A)の場合と同様の化合物が挙げられ、又、更に、前記製造方法(A)の場合と同様の他のビニル化合物を共重合させてもよい。
【0034】
尚、その際のハロアルキル基含有モノビニル芳香族化合物の使用比率は、原料モノマー全量に対して、10重量%以上とするのが好ましく、又、99.9重量%以下とするのが好ましい。一方、ポリビニル化合物、及び第3のビニル化合物を使用する場合の使用比率は、前記製造方法(A)の場合と同様とする。
【0035】
本発明においては、前記製造方法(A)又は(B)で得られた架橋共重合体をスルホン化する方法としては、第1段階で芳香環部位をスルホン化した後、第2段階でハロアルキル(−A−X)部位をスルホン化する2段階のスルホン化反応方法を採ることが好ましい。
【0036】
ここで、第1段階での芳香環部位のスルホン化は、この種樹脂において公知のスルホン化方法、具体的には、架橋共重合体を、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、プロピレンジクロライド等の有機溶剤の存在下或いは非存在下、通常0〜150℃程度の温度で、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等のスルホン化剤と反応させることによりなされる。この際の反応温度は、スルホン化剤及び使用する有機溶剤に応じて適宜選択される。これにより、芳香環へのスルホン酸基の導入率は、架橋度によっても異なるが、0.5以上であるのが好ましく、0.7以上であるのが更に好ましい。
【0037】
又、第2段階でのハロアルキル(−A−X)部位のスルホン化は、架橋共重合体を亜硫酸塩と反応させて、架橋共重合体が有するハロアルキル(−A−X)基のハライドを直接、スルホン酸基と置換することによりなされる。
【0038】
その際の亜硫酸塩とは、亜硫酸イオン、又は、亜硫酸イオンと、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム等の金属イオン、又はアミン類、アンモニウム類等のオニウムイオンとの塩を指し、具体的には、亜硫酸アルカリ金属塩、亜硫酸アルカリ土類金属塩、亜硫酸アンモニウム塩、亜硫酸水素アルカリ金属塩、亜硫酸水素アルカリ土類金属塩、亜硫酸水素アンモニウム塩等が挙げられる。
【0039】
金属イオンのうち、アルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムの各イオンが挙げられ、中で、ナトリウム、及びカリウムの各イオンが特に好ましい。又、アルカリ土類金属イオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びラジウムの各イオンが挙げられ、中で、マグネシウム、及びバリウムの各イオンが特に好ましい。
【0040】
又、オニウムイオンのうち、アンモニウムイオンとしては、第一級〜第四級のいずれのアンモニウムイオンであってもよいが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、アニリン、ベンジルアミン等の脂肪族或いは芳香族第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、N−メチルアニリン等の脂肪族或いは芳香族第二級アミン、トリメチルアミン、チリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン等の脂肪族或いは芳香族第三級アミンの各アンモニウムイオン、アルキル基の炭素数が1〜10のテトラアルキルアンモニウムの各イオンが挙げられ、又、アミノ酸類のアンモニウムイオンとして、アラニン、バリン、セリン、ロイシン、フェニルアラニン、フェニルグリシン、p−ヒドロキシフェニルグリシン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン等のラセミ体或いは光学活性体のアンモニウムイオンが挙げられる。又、ホスホニウムイオンとしては、アルキル基の炭素数が1〜10のテトラアルキルホスホニウムや、テトラフェニルホスホニウム等の各イオンが挙げられる。
【0041】
以上の亜硫酸塩として、具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸等が好ましく、中でも亜硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0042】
本発明において、スルホン化反応に用いる亜硫酸塩の量は、特に制限されるものではないが、架橋共重合体が有するハロアルキル基に対して、モル比で1〜10倍量とするのが好ましく、1〜5倍量とするのが特に好ましい。又、スルホン化反応は、通常0〜300℃、好ましくは5〜250℃、特に好ましくは40〜200℃の温度、常圧下〜加圧下で、通常1〜200時間、好ましくは2〜100時間でなされる。
【0043】
以上の本発明の陽イオン交換樹脂は、通常、100μm〜2mmの平均粒子径を有する球状粒子として得られるが、ゲル状、ポーラス状、ハイポーラス状、拡大網目形等、いずれの形態としても、又、球状の外、板状、膜状、繊維状等の任意の形状に加工して用いられる。
【0044】
そして、本発明の陽イオン交換樹脂は、従来陽イオン交換樹脂が使用されている各種の用途、具体的には、例えば、硬水軟化、純水製造、金属回収分離、超純水製造、薬液精製、糖液精製、アミノ酸分離精製、固体酸触媒、有機反応触媒等、において使用することができる。
【0045】
それらの中で、本発明の陽イオン交換樹脂は、フェノール化合物とカルボニル化合物との縮合反応によるビスフェノール類の製造における固体酸触媒として特に好適に用いられる。
【0046】
そのフェノール化合物としては、具体的には、例えば、無置換のフェノール、o−及びm−クレゾール、2,5−及び2,6−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、o−及びm−クロロフェノール、2,5−及び2,6−ジクロロフェノール等が挙げられる。これらの中で無置換のフェノールが特に好ましい。
【0047】
又、カルボニル化合物としては、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等の炭素数3〜10程度のケトン類、及び、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類が挙げられる。これらの中で、ホルムアルデヒド及びアセトンが好ましく、アセトンが特に好ましい。
【0048】
本発明で、前記フェノール化合物と前記カルボニル化合物との反応触媒として用いるにおいては、前記陽イオン交換樹脂を、その体積の5〜200倍のフェノール化合物を、40〜110℃の温度で、液時空間速度(LHSV)0.5〜50hr-1で通液する前処理を行うことが好ましい。この前処理により、陽イオン交換樹脂が水を含んでいる場合であっても、陽イオン交換樹脂触媒は水からフェノール化合物へ溶媒交換され、誘導期間なしで反応に使用できるようになる。
【0049】
本発明における前記フェノール化合物と前記カルボニル化合物との反応方式は、特に限定されるものではなく、前記陽イオン交換樹脂触媒を充填した反応器にフェノール化合物とカルボニル化合物との原料混合物を連続的に供給して反応を行う固定床流通方式、流動床方式、及び連続撹拌方式のいずれでもよく、又、回分方式であってもよい。固定床流通方式、流動床方式、及び連続撹拌方式で反応を行う場合には、原料混合物の供給は、フェノール化合物湿潤状態の陽イオン交換樹脂触媒基準でLHSV0.05〜20hr-1、好ましくは0.2〜10hr-1の範囲、で行う。反応温度は40〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲とする。反応温度が40℃未満では反応速度が遅く、一方、120℃超過では陽イオン交換樹脂触媒の劣化が著しく副生物や着色物質も増加するため好ましくない。
【0050】
尚、その際のフェノール化合物とカルボニル化合物のモル比は、カルボニル化合物1モルに対してフェノール化合物が2〜40モル、好ましくは4〜30モル、の範囲とする。フェノール化合物の使用量が前記範囲未満であると、副生物が増加するため好ましくなく、一方、前記範囲超過としてもその効果に殆ど変化はなく、むしろ回収再使用するフェノール化合物の量が増大するため経済的でなくなるという不利益が生じる。反応混合物から目的物質であるビスフェノール化合物の分離精製は、例えば、本発明の製造方法において製造するのに特に好ましいビスフェノールAの場合には、反応終了後、必要に応じて、未反応のアセトンや生成した水、過剰のフェノールを除去した後、その濃縮物を冷却してビスフェノールAとフェノールとの付加物(フェノールアダクト)を析出させ、その後、フェノールアダクトから減圧下でフェノールを留出させることにより、目的のビスフェノールAを得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0052】
実施例1
<原料架橋共重合体の製造>
窒素ガス導入管、冷却管、攪拌羽根を備えた4ツ口フラスコに脱塩水3100ml、6%ポリビニルアルコール水溶液25.8gを加え、窒素を導入した。一方、4−(4−ブロモブチル)スチレン301.6g、ジビニルベンゼン(含有率81%)8.5g、及び40%過酸化ベンゾイルキシレン溶液4.65gを溶解したモノマー溶液を調製した。モノマー溶液を上記フラスコに入れ、100rpmで攪拌し、モノマーの液滴を形成した。室温で30分間攪拌後、80℃に昇温し、80℃で8時間反応させた。生成した架橋共重合体球状粒子を取り出し、脱塩水で洗浄した後、3000rpmで10分間遠心分離することにより付着水を取り除くことにより、4モル%のジビニルベンゼンで架橋された、4−(4−ブロモブチル)スチレン/ジビニルベンゼン架橋共重合体球状粒子を得た。
【0053】
<芳香環部位のスルホン化>
窒素ガス導入管、冷却管、等圧滴下ロート、攪拌羽根を備えた4ツ口フラスコに、予め105℃で8時間乾燥させた前記で得られた架橋共重合体球状粒子12.2gと1,2−ジクロロエタン52gを入れ、窒素を導入した。別途調製したクロロスルホン酸13.4g/1,2−ジクロロエタン19gの溶液を等圧滴下ロートに入れ、攪拌下、30分かけて室温で滴下し、更に5時間攪拌した。脱塩水を加え、余剰のクロロスルホン酸を加水分解した後、得られたアリールスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂をカラムに充填し、樹脂に対して10容量倍の脱塩水、10容量倍のアセトンの順に通液し、更に、脱塩水で洗浄液が中性になるまで洗浄することにより、H型のアリールスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を得た。得られたH型のアリールスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂の分析結果を、「第1段階反応後」として表1に示す。
【0054】
<ハロアルキル(−A−X)部位のスルホン化>
前記で得られたアリールスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂(1a)13.3g(湿潤状態)をカラムに充填し、樹脂に対して20容量倍の6%塩化ナトリウム水溶液を通液し、対イオンをH型からNa型に変換した。次いで、窒素ガス導入管、冷却管、攪拌羽根を備えた四つ口フラスコに、得られた前記Na型陽イオン交換樹脂の全量、亜硫酸ナトリウム17.4g、及び脱塩水50mlを入れ、窒素を導入した後、100℃で7時間反応させた。得られた樹脂を脱塩水で洗浄した後、樹脂に対して約10容量倍の2N塩酸を通液し、更に脱塩水で洗浄することにより、H型のアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を得た。得られたH型のアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂の分析結果を、「第2段階反応後」として表1に示す。
【0055】
実施例2
4−(4−ブロモブチル)スチレン/ジビニルベンゼンのモル比が98/2となるように原料モノマーを調製した外は、実施例1と同様にして、対応するアリールスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂、及びアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を製造した。それぞれの分析結果を、「第1段階反応後」、及び「第2段階反応後」として表1に示す。
【0056】
実施例3
4−(4−ブロモブチル)スチレン/ジビニルベンゼンのモル比が94/6となるように原料モノマーを調製した外は、実施例1と同様にして、対応するアリールスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂、及びアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を製造した。それぞれの分析結果を、「第1段階反応後」、及び「第2段階反応後」として表1に示す。
【0057】
実施例4
4−(4−ブロモブチル)スチレン/ジビニルベンゼンのモル比が76/24となるように原料モノマーを調製した外は、実施例1と同様にして、対応するアリールスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂、及びアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を製造した。それぞれの分析結果を、「第1段階反応後」、及び「第2段階反応後」として表1に示す。
【0058】
実施例5
更にスチレンを共重合させ、4−(4−ブロモブチル)スチレン/スチレン/ジビニルベンゼンのモル比が38/60/2となるように原料モノマーを調製した外は、実施例1と同様にして、対応するアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を製造した。その分析結果を、「第2段階反応後」として表1に示す。
【0059】
実施例6
4−(4−ブロモブチル)スチレン/スチレン/ジビニルベンゼンのモル比が58/40/2となるように原料モノマーを調製した外は、実施例5と同様にして、対応するアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を製造した。その分析結果を、「第2段階反応後」として表1に示す。
【0060】
実施例7
4−(4−ブロモブチル)スチレン/スチレン/ジビニルベンゼンのモル比が78/20/2となるように原料モノマーを調製した外は、実施例5と同様にして、対応するアリールスルホン酸基・アルキルスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を製造した。その分析結果を、「第2段階反応後」として表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
<分析法>
1.Br及びSの元素分析
試料数mgを白金製ボートに採取して石英管管状炉(三菱化学社製「AQF−100型」)で燃焼し、燃焼ガス中のBr及びS分を0.1%過酸化水素で吸収した。吸収液中のBr- 、及びSO42- をイオンクロマトグラフ(Dione社製「DX−500型」)で測定した。
2.中性塩分解容量
ダイアイオンマニュアル(三菱化学社刊行、平成5年第6版、第142頁参照。)
3.スルホン酸導入率
仕込みモノマー組成比をもとに推算した中性塩分解容量理論値と、中性塩分解容量実測値とから、以下の式により算出した。
スルホン酸導入率=(中性塩分解容量実測値/中性塩分解容量理論値)×100
【0063】
4.芳香環1個当たりのスルホン酸基の平均結合モル数
原料架橋共重合体が、4−(4−ブロモブチル)スチレン/ジビニルベンゼン二元共重合体の場合、及び、4−(4−ブロモブチル)スチレン/スチレン/ジビニルベンゼン三元共重合体の場合、それぞれについて、ジビニルベンゼンユニットを無視し、仕込みモノマー組成比をもとに推算した中性塩分解容量理論値と、中性塩分解容量実測値とから、以下の式により算出した。
前者二元共重合体の場合
スルホン酸基の平均結合モル数=中性塩分解容量実測値/(中性塩分解容量理論値/2)
後者三元共重合体の場合
スルホン酸基の平均結合モル数=中性塩分解容量実測値/[中性塩分解容量理論値×(X+Y)/(X+Y×2)]
(但し、Xは原料架橋共重合体中のスチレンユニットのモル分率、Yは原料架橋共重合体中の4−(4−ブロモブチル)スチレンのモル分率である。)
5.芳香環に直接に結合するスルホン酸基の総モル数〔M1 〕に対する、Aを介して芳香環に結合するスルホン酸基の総モル数〔M2 〕の割合〔M2 /M1
2 /M1 =(第2段階反応後のスルホン酸基の平均結合モル数−第1段階反応後のスルホン酸基の平均結合モル数)/第1段階反応後のスルホン酸基の平均結合モル数
【0064】
実施例8
<陽イオン交換樹脂触媒の調製>
窒素ガス導入管を備えた200ml四つ口フラスコに、実施例5で得られた陽イオン交換樹脂5.03g、及び60℃の脱塩水40mlを入れ、陽イオン交換樹脂を洗浄した後、洗浄液をデカンテーションにより廃棄し、再度60℃の脱塩水40mlを入れて洗浄する操作を3回繰り返した。次いで、洗浄液を廃棄した後、脱塩水20gを加え、フラスコ内を窒素で置換した。そこへ、2−(4−ピリジル)エタンチオール0.1583gを攪拌下に一括投入し、更に3時間、室温下で攪拌して変性反応を行った。反応終了後、得られた陽イオン交換樹脂触媒をカラムに充填し、樹脂に対して20容量倍の脱塩水を通液して洗浄することにより、陽イオン交換樹脂触媒を調製した。
【0065】
<ビスフェノール類の製造>
窒素ガス導入管、冷却管を備えた50mlガラス製フラスコに、前記で得られた陽イオン交換樹脂触媒を湿潤状態で0.50g採取し、70℃のフェノールを用いて、洗浄液の含水率が0.1重量%以下になるまで洗浄した。次いで、上記フラスコに70℃のフェノール6.44gを採取し、窒素を導入した。攪拌下、アセトン0.39gを加えて反応を開始した。反応開始後60分の時点で反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーにより以下の条件で、以下の式に基づく4,4’−ビスフェノールA収率を算出したところ、36%であった。
【0066】
4,4’−ビスフェノールA収率(%)=〔(生成した4,4’−ビスフェノールAのモル数)/(供給したアセトンのモル数)〕×100
【0067】
<分析法>
ガスクロマトグラフィー:SHIMADZU製「GC−14A」
カラム:Hewlett Packard製「Ultra Performance Capillary Columns Ultra2(Cross−linked 5%Phenylmethyl Silicone Gum Phase)25m×0. 32mm×0. 52μm」
検出器:FID
キャリアーガス:He

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位を含み、芳香環1個当たりのスルホン酸基の平均結合モル数が1モルを越えることを特徴とする陽イオン交換樹脂。
【化1】

〔式(1)中、R1 、R2 、及びR3 は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、Aは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を表し、Zは対イオンを表す。〕
【請求項2】
芳香環1個当たりのスルホン酸基の平均結合モル数が1.1〜2.0モルである請求項1に記載の陽イオン交換樹脂。
【請求項3】
芳香環に直接に結合するスルホン酸基の総モル数〔M1 〕に対する、Aを介して芳香環に結合するスルホン酸基の総モル数〔M2 〕の割合〔M2 /M1 〕が、0.1〜2.0である請求項1又は2に記載の陽イオン交換樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の陽イオン交換樹脂を製造するに際し、下記一般式(2−a)で表される構成単位を含む架橋共重合体をスルホン化剤によりスルホン化することを特徴とする陽イオン交換樹脂の製造方法。
【化2】

〔式(2−a)中、R1 、R2 、及びR3 は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、Aは、置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す。〕
【請求項5】
スルホン化剤によるスルホン化を以下の2段階の反応により行う請求項4に記載の陽イオン交換樹脂の製造方法。
第1段階;硫酸、発煙硫酸、及びクロロスルホン酸のいずれかのスルホン化剤による芳香環部位のスルホン化
第2段階;亜硫酸塩による−A−X部位のスルホン化
【請求項6】
第2段階における亜硫酸塩が、亜硫酸アルカリ金属塩、及び亜硫酸オニウム塩のいずれかである請求項5に記載の陽イオン交換樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の陽イオン交換樹脂を触媒として用いることを特徴とするビスフェノール類の製造方法。

【公開番号】特開2009−165937(P2009−165937A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5385(P2008−5385)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】