階調マスク
【課題】本発明は、表示装置の製造工程の簡略化を図るとともに、パターンの形成に有利な階調マスクを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、上記透明基板上に前記遮光膜が設けられた遮光領域と、上記透明基板上に前記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、上記透明基板上に前記遮光膜および前記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、表示装置の製造に用いられる表示装置製造用階調マスクであって、上記半透明膜が金属膜であり、上記表示装置製造用階調マスクは、エッチングストッパー膜を有するものではないことを特徴とする表示装置製造用階調マスクを提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】本発明は、透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、上記透明基板上に前記遮光膜が設けられた遮光領域と、上記透明基板上に前記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、上記透明基板上に前記遮光膜および前記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、表示装置の製造に用いられる表示装置製造用階調マスクであって、上記半透明膜が金属膜であり、上記表示装置製造用階調マスクは、エッチングストッパー膜を有するものではないことを特徴とする表示装置製造用階調マスクを提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置等の製造過程において、ハーフトーン露光に好適に用いられる階調マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置のリソグラフィー工程数を減らすパターン形成方法に関しては、例えばリフロー法またはアッシング法が開示されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。また、上記の特許文献には、露光光の解像限界以下の微小スリットを有するフォトマスク(スリットマスク)、および露光光に対して階調を有するフォトマスク(階調マスク)が開示されている。
【0003】
スリットマスクでは、露光光を実質的に遮光するクロム膜などの一般的な遮光膜を用い、遮光膜に露光機の解像限界以下の微細なスリットを配置する(例えば特許文献3参照)。このマスクのスリットは、解像限界以下のサイズであるため、それ自身はレジスト上に結像せずに、周囲の非開口部領域も含めたエリアに、サイズに応じた露光光を透過する。このため、スリットマスクは、スリットが形成された領域と、その周囲を含めたエリアに、あたかも半透明膜があるかのように機能する。
しかしながら、このスリットは解像限界以下である必要があるため、当然のことながら、マスクの本体パターンよりも小さな寸法に仕上げる必要があり、マスク製造に対して大きな負荷となってしまうという問題があった。さらに、広い領域を半透明にするためには、多くのスリットを配置する必要があるため、パターンデータ容量が増え、パターン形成工程や、パターンの欠陥検査工程に対する負荷の増大という問題も生じ、製造・検査時間の増大、マスク製造コストの上昇につながってしまうという問題があった。
【0004】
一方、階調マスクは、露光光を実質的に遮光する遮光膜と、露光光を所望の透過率で透過する半透明膜とを用い、光を透過する透過領域と、光を透過しない遮光領域と、透過する光の量が調整された半透明領域とを有することにより、階調を出すマスクである(例えば特許文献4参照)。このマスクを作製するためには、透明基板上に半透明膜と遮光膜とが積層された専用のマスクブランクを使用し、マスクパターン製版を行う。この階調マスクは、スリットマスクのように微細なスリットを配置する必要がない点で有利である。
【0005】
階調マスクでは、透過率の異なる領域によって透過光の量を制御することにより、現像後のレジストの膜厚を2段階に制御することができる。例えば、階調マスクを用いて一括露光することにより、液晶表示装置用カラーフィルタにおける柱状スペーサおよび液晶配向機能突起を同時に形成することが可能となる(例えば特許文献5参照)。
特許文献5に記載の階調マスクは、透過率が300nmで5%以下、380nmで45%以上であり、露光光の短波長域(300nm〜350nm程度)をカットし、長波長域(350nm〜450nm程度)のみを利用するというものである。しかしながら、長波長域のみを利用する場合、短波長域を利用する場合と比較してエネルギーが低いため、硬化速度が遅く、露光に時間がかかるという問題がある。
【0006】
また、特許文献4および特許文献5では、階調マスクの半透明膜として、酸化クロム膜、窒化クロム膜、酸化窒化クロム膜、フッ化クロム膜、酸化インジウム錫膜、TiおよびWを含む酸化膜、TiおよびMoを含む酸化膜などが用いられている。このように半透明膜には、金属の酸化物や窒化物などの膜を用いるのが主流である。一方、半透明膜として金属膜を用いた例は報告されていない。
【0007】
【特許文献1】特許第3415602号公報
【特許文献2】特開2000−66240公報
【特許文献3】特開2002−196474公報
【特許文献4】特開2002−189280公報
【特許文献5】特開2005−84366公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、表示装置の製造工程の簡略化を図るとともに、パターンの形成に有利な階調マスクを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域と、上記透明基板上に上記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、上記透明基板上に上記遮光膜および上記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、上記半透明膜が金属膜であることを特徴とする階調マスクを提供する。
【0010】
一般に、金属は自由電子を介して結合しているため、光吸収を起こすバンドギャップが存在しない。そのため、特徴的な吸収がなく、紫外光領域から可視光領域において透過率が一定の範囲になる場合が多い。これに対し、金属酸化物は吸収係数が比較的小さく、長波長(紫外・可視領域)になるほど吸収係数がほぼゼロに近づくため、波長が長くなるほど透過率が高くなる場合が多い。また、金属窒化物や金属炭化物も、金属酸化物と同様の傾向を示す。したがって、半透明膜として金属膜を用いることにより、所望の透過率特性を有する半透明膜を備える階調マスクを得ることができる。
このような階調マスクでは、露光光の長波長域も短波長域も有効に利用することができるので、露光時間の短縮化が可能である。また、例えばネガ型レジストを用いてパターンを形成する場合には、透過領域および半透明領域の透過率比を、透過領域および半透明領域の露光後のレジストの膜厚比とみなすことができ、レジストの膜厚制御が容易である。
【0011】
上記発明においては、上記半透明膜および上記遮光膜がクロム膜であることが好ましい。半透明膜および遮光膜がクロム膜であれば、階調マスクを作製する際に、半透明膜および遮光膜を同一のエッチャントを用いて同時にパターニングすることができるからである。また、クロム膜は、機械的強度に優れており、さらには退光性がなく安定しているため、長時間の使用に耐えうる階調マスクとすることができるからである。
【0012】
さらに本発明は、上述した階調マスクが表示装置の製造に用いられることを特徴とする表示装置製造用階調マスクを提供する。
本発明の表示装置製造用階調マスクは、上述した階調マスクを用いたものであるので、表示装置の製造工程の簡略化が可能であり、またパターン形成時の露光時間の短縮化が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、半透明膜として金属膜を用いることにより、所望の透過率特性を有する半透明膜を備える階調マスクを得ることができる。このような階調マスクを用いた一括露光により、高さや形状の異なるパターンを同時に形成することができ、製造工程の簡略化が可能である。また、本発明の階調マスクを用いることにより、露光光の短波長域もレジストの硬化反応に利用することができ、露光時間の短縮化が図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の階調マスクの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の階調マスクを用いて液晶表示装置におけるスペーサを形成する例を示す工程図である。
【図3】本発明における半透明膜の分光スペクトルの一例を示すグラフである。
【図4】本発明の階調マスクの一例を示す平面図である。
【図5】本発明の階調マスクの他の例を示す平面図である。
【図6】図4のA−A線断面図である。
【図7】本発明の階調マスクを用いて形成された液晶表示装置におけるスペーサおよび配向制御用突起の一例を示す断面図である。
【図8】図5のB−B線断面図である。
【図9】本発明の階調マスクを用いて形成された液晶表示装置におけるスペーサおよびオーバーコート層の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
【図11】本発明の階調マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図12】本発明の階調マスクを用いて薄膜トランジスタを作製する例を示す工程図である。
【図13】実施例1および比較例1における半透明膜の分光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の階調マスクおよび表示装置製造用階調マスクについて詳細に説明する。
【0016】
A.階調マスク
本発明の階調マスクは、透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域と、上記透明基板上に上記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、上記透明基板上に上記遮光膜および上記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、上記半透明膜が金属膜であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の階調マスクについて、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の階調マスクの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上に半透明膜3および遮光膜4がこの順に積層されたものである。この半透明膜3は透過率調整機能を有している。また、遮光膜4は実質的に露光光を透過しないものである。階調マスク1では、透明基板2上に半透明膜3および遮光膜4がパターン状に形成されており、透明基板2上に遮光膜4が設けられた遮光領域11と、透明基板2上に半透明膜3のみが設けられた半透明領域12と、透明基板2上に半透明膜3および遮光膜4のいずれも設けられていない透過領域13とが混在している。
【0018】
次に、図1に示す階調マスク1を用いて液晶表示装置におけるスペーサを形成する方法の一例を図2に示す。階調マスク1においては、透過領域13では透明基板2を露光光15が透過し、半透明領域12では透明基板2および半透明膜3を露光光15が透過する。透過領域13からは通常の波長の露光光が照射されるため、ほぼマスクパターン形状に応じたパターンが形成される。一方、半透明領域12から照射される露光光は、半透明膜3が透過率調整を行っているため、波長に応じて所定の透過率で透過する。したがって、透過領域13と半透明領域12とで同じ露光量でパターン露光した場合、透過領域13では露光前のレジスト厚に相当する高さのスペーサ16aが形成され、半透明領域12ではスペーサ16aの高さよりも低いスペーサ16bが形成される。このように、本発明の階調マスクを利用した一括露光により、1枚の階調マスクで高さの異なるパターンを同時に得ることができる。
【0019】
一般に、金属は自由電子を介して結合しているため、光吸収を起こすバンドギャップが存在しない。そのため、特徴的な吸収がなく、紫外光領域から可視光領域において透過率が一定の範囲になる場合が多い。図3に、本発明における半透明膜の分光スペクトルの一例を示す。図3に例示するように、半透明膜は、波長250nm〜600nmにおける透過率が一定の範囲となっている。すなわち、半透明膜の透過率は、波長によらずほぼ一定である。したがって、半透明膜として金属膜を用いることにより、所望の透過率特性を有する半透明膜を備える階調マスクを得ることができる。
【0020】
このような透過率特性を有する半透明膜が設けられた半透明領域では、露光光の長波長域(350nm〜450nm程度)だけでなく、短波長域(300nm〜350nm程度)も所定の透過率で透過するので、短波長域もレジストの硬化反応に利用される。
【0021】
短波長域の光は、エネルギーが高く、硬化速度が速いという利点があり、上述したように短波長域の光も有効に利用することにより、露光時間を短縮することが可能である。また、短波長域での露光は、レジストが表面から硬化する傾向にあるので、レジスト内部からの不純物の拡散を抑えることができる。さらに、長波長域での露光は、深部まで光が到達してレジストを硬化させる傾向にあるため、上記のような高さの異なるパターンを形成するのに有効である。したがって、本発明の階調マスクでは、広い波長域を有効に活用でき、パターンの形成に有利である。
【0022】
また一般に、露光装置は種類等によって得られる発光スペクトル(波長範囲、ピーク波長、ピーク強度比、ピーク半値幅など)が異なる。このため、目的とするパターンを形成するために適切な露光量となるように、使用する露光装置に応じて階調マスクの透過率を設計する必要がある。
本発明における半透明膜は、金属膜であるので、紫外光領域から可視光領域における透過率が一定の範囲となる傾向があり、露光波長域全体において透過率が一定の範囲内となる。このため、例えば露光装置に高圧水銀ランプを用いた場合、例えば図3においては300nmにおける透過率が39%、365nm(I線)における透過率が37%、436nm(G線)における透過率が35%となり、波長域全体(250nm〜600nm)において透過率が一定の範囲内(33%〜40%程度)となる。したがって、図2に例示するようにネガ型レジストを用いた場合は、半透明膜の各波長における透過率(%):透過率100(%)≒半透明領域の平均透過率:透過領域の平均透過率≒半透明領域の露光後のレジスト厚:透過領域の露光後のレジスト厚、とみなすことができる。すなわち、ある波長における透過率を調整することにより、露光波長域全体において透過率を所定の範囲内に調整することができ、露光後のレジスト厚を制御することができる。このように、本発明の階調マスクでは、レジストの膜厚制御が容易であり、種々のレジスト厚を容易に設計することができる。
【0023】
一方、例えば金属酸化物膜は、一般的に波長が長くなるにつれて透過率が高くなるような透過率特性を示す。このような金属酸化物膜では、図3に例示する半透明膜と同様に365nm(I線)における透過率が37%であっても、300nmにおける透過率が27%、436nm(G線)における透過率が例えば48%となる、というように、ある波長における透過率を調整しても、露光波長域全体において透過率は一定の範囲内とはならない。レジストの膜厚は、いずれの波長がレジストの硬化反応に大きく寄与するかにより異なってくるので、半透明膜として金属酸化物膜を有する階調マスクでは、レジストの膜厚制御が困難である。
【0024】
さらに、本発明における半透明膜は、上述したように露光波長域全体において透過率が一定の範囲となる傾向があり、各波長間での透過率比がおおよそ同じになるので、本発明の階調マスクは、露光装置を選ばないという利点を有する。例えば図3に示すように、半透明膜の300nm、365nm(I線)、405nm(H線)、436nm(G線)における各透過率が35%〜40%の範囲内である場合、各波長の透過率比はおおよそ1:1:1:1となる。この場合、例えばI線、H線、G線の強度比が異なる露光装置があるとすると、各波長間での透過率比がおおよそ同じになるので、いずれの露光装置を使用しても、透過領域における露光量に対する半透明領域における露光量は35%〜40%の範囲内となる。このように、本発明の階調マスクでは、露光装置の発光スペクトル(波長範囲、ピーク波長、ピーク強度比、ピーク半値幅など)の差異によらず、適用することが可能である。
【0025】
一方、例えば上述した金属酸化物膜では、一般的に波長が長くなるにつれて透過率が高くなるような透過率特性を示すので、各波長間での透過率比が異なるものとなる。例えば金属酸化物膜の300nm、365nm(I線)、405nm(H線)、436nm(G線)における各透過率が10%、20%、35%、40%である場合、各波長の透過率比は1:2:3.5:4となる。この場合、例えばI線、H線、G線の強度比が異なる露光装置があるとすると、各波長間での透過率比が異なるので、使用する露光装置によって、透過領域における露光量に対する半透明領域における露光量が異なってしまう。したがって、半透明膜としてこのような金属酸化物膜を有する階調マスクでは、使用する露光装置に応じて適切な露光量となるように各波長での透過率を設計しなければならない。
このように、本発明の階調マスクは、露光装置によらずに適用することができる点においても、有利である。
【0026】
また、本発明の階調マスクは、透明基板と、遮光膜と、半透明膜とが順不同に積層されたものである。例えば図1に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層された階調マスク1を作製する場合には、透明基板上に半透明膜を成膜し、レーザ光などで半透明膜のパターン描画を行い、この描画時に遮光膜のパターニング時に位置合せに使用するアライメントマークを複数個描画配置することができる。
一般に、金属は反射率が比較的高く、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などは反射率が比較的低い。このため、半透明膜が金属膜である場合には、アライメントマークの検出が容易であるという利点を有する。すなわち、2回目のマスクパターン製版において位置合わせが容易となる。
以下、本発明の階調マスクの各構成について説明する。
【0027】
1.半透明膜
本発明に用いられる半透明膜は、金属膜であり、透過率調整機能を有するものである。
金属膜としては、透過率調整機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばクロム、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素、ニッケル等の膜が挙げられる。これらの金属膜は、透過率調整機能を有していれば、微量の酸素や窒素等を含んでいてもよい。
半透明膜および遮光膜を同一エッチング設備、工程でパターニングし得るという利点から、半透明膜は、遮光膜と同系の材料、すなわち同種の金属を含む材料からなる膜であることが好ましい。後述するように遮光膜がクロム系膜であることが好ましいことから、半透明膜はクロム膜であることが好ましい。クロム膜は、機械的強度に優れており、さらには退光性がなく安定しているため、本発明の階調マスクは長時間の使用に耐えうるものとなるという利点を有する。
このクロム膜は、上述したように微量の酸素や窒素等を含んでいてもよく、この場合には、膜中のクロム含有量が80%以上であることが好ましく、特に95%以上であることが好ましい。後述する好適な透過率特性を満足する半透明膜とすることができるからである。
【0028】
また、金属膜として、モリブデンシリサイド膜、タンタル膜も好ましく用いられる。このタンタル膜は、上記のクロム膜と同様に、微量の酸素や窒素を含んでいてもよい。
【0029】
本発明における半透明膜は、紫外光領域から可視光領域において透過率が一定の範囲内であることが好ましい。具体的には、半透明膜の波長300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が7%以下であることが好ましく、特に5%以下であることが好ましい。例えば露光装置に高圧水銀ランプを用いた場合、発光スペクトルの端部がおおよそ300nmであり、I線の波長が365nm、H線の波長が405nm、G線の波長が436nmであることから、各波長を含む300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が上記範囲であれば、露光光の長波長域(350nm〜450nm程度)も短波長域(300nm〜350nm程度)もほぼ一定の透過率で半透明膜を透過するので、上述した理由からパターンの形成に有利であり、またレジストの膜厚制御が容易となる。一方、300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が上記範囲を超えると、露光波長域全体において透過率が一定の範囲にならない場合があり、レジストの膜厚制御が困難となるおそれがある。
【0030】
なお、透過率分布は、300nm〜450nmにおける最大透過率(Tmax)と最小透過率(Tmin)との差を、300nm〜450nmにおける平均透過率(Tav)を2倍した値で割った値に、100を乗じた値である。(透過率分布=(Tmax−Tmin)/(2Tav)×100)
また、透過率の測定方法としては、階調マスクに使用する透明基板の透過率をリファレンス(100%)として、半透明膜の透過率を測定する方法を採用することができる。装置としては、紫外・可視分光光度計(例えば日立U-4000等)、またはフォトダイオードアレイを検出器としている装置(例えば大塚電子MCPD等)を用いることができる。上記の最大透過率および最小透過率は、300nm〜450nmにおける透過率のうち最大値および最小値であり、上記の平均透過率は、300nm〜450nmにおける透過率を平均した値である。
【0031】
ここで、露光装置として一般に広く使用されているのは水銀ランプであり、水銀ランプの発光スペクトルではおおよそ300nm〜450nmの範囲内に主要なピークが存在することから、本発明においては300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が所定の範囲であることが好ましいとした。
【0032】
また、半透明膜の波長250nm〜600nmにおける透過率分布は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。一般に、液晶表示装置などの表示装置の製造工程において、パターン形成での露光条件として露光波長域を250nm〜600nmの範囲内で設定することが多いため、250nm〜600nmにおける透過率分布が上記範囲であれば、広い波長域を有効に利用することができ、パターンの形成に有利となり、またレジストの膜厚制御が容易となるからである。
なお、透過率分布の算出方法については、上述した通りである。
【0033】
さらに、半透明膜の波長300nmでの透過率は、半透明膜の膜厚および階調マスクの用途によって異なるものではあるが、10%〜70%の範囲内であることが好ましい。上述したように、例えば露光装置に高圧水銀ランプを用いた場合、発光スペクトルの端部がおおよそ300nmであることから、波長300nmでの透過率が上記範囲であれば、レジストの硬化反応に短波長域の光をより確実に利用することができるからである。
中でも、本発明の階調マスクを利用して、例えば高さの異なるスペーサを形成する場合において、各パターンの高さの差を3μm以上とする場合は、300nmでの透過率が10%〜30%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10%〜20%の範囲内である。また、各パターンの高さの差を3μm以下とする場合には、300nmでの透過率が30%〜70%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは30%〜50%の範囲内である。
なお、透過率の測定方法については、上述した通りである。
【0034】
また、半透明膜の波長250nm〜600nmにおける平均透過率は、10%〜60%の範囲内であることが好ましい。平均透過率が上記範囲未満では、本発明の階調マスクを用いたパターン形成において、半透明領域と遮光領域との透過率の差が出にくくなる場合があり、また平均透過率が上記範囲を超えると、半透明領域と透過領域との透過率の差が出にくくなる場合があるからである。
【0035】
半透明膜は、単層であってもよく、複数の層で構成されていてもよい。半透明膜が複数の層で構成されている場合は、少なくとも一つの層が上述した透過率特性を有していることが好ましい。また、他の層は上述した透過率特性を有していてもよく、上述した透過率特性とは異なる透過率特性を有していてもよい。この場合、多階調の階調マスクを得ることができる。
【0036】
半透明膜の膜厚としては、上述した透過率特性を満たす膜厚であることが好ましく、クロム膜の場合は5nm〜20nm程度とすることができる。半透明膜の透過率は膜厚により変わるので、膜厚を制御することで所望の透過率とすることができる。また、半透明膜が酸素や窒素等を含む場合は、その透過率は組成により変わるので、膜厚と組成とを同時にコントロールすることで所望の透過率を実現できる。
【0037】
半透明膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。
【0038】
2.遮光膜
本発明に用いられる遮光膜は、実質的に露光光を透過しないものであり、露光波長における平均透過率が0.1%以下であることが好ましい。このような遮光膜としては、一般にフォトマスクに用いられる遮光膜を用いることができ、例えばクロム、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素等の金属の膜、あるいは、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素等の金属の酸化物や窒化物などの膜が挙げられる。中でも、遮光膜としては、クロム、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム等のクロム系膜が好ましく用いられ、特にクロム膜が好適である。クロム系膜は、最も使用実績があり、コスト、品質の点で好ましいからである。また、クロム系膜は、単層であってもよく、2層以上が積層されたものであってもよい。
【0039】
また、遮光膜は、低反射機能を有していてもよい。低反射機能により、露光光の乱反射を防止することができるので、より鮮明なパターンを形成することができる。遮光膜に低反射機能を付加するには、例えば遮光膜表面に露光光の反射を防止する酸化クロム等のクロム化合物を含有させればよい。この場合、遮光膜が、表面に向かって徐々に含有成分が変化する傾斜界面により形成されたものであってもよい。
【0040】
遮光膜の膜厚としては、特に限定されるものではなく、例えばクロム膜の場合には50nm〜150nm程度とすることができる。
【0041】
遮光膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。
【0042】
3.透明基板
本発明に用いられる透明基板は、一般にフォトマスクに用いられる基板を使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等の光学研磨された低膨張ガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。中でも、石英ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れている。
【0043】
4.遮光領域、半透明領域、および透過領域
本発明における遮光領域は、透明基板上に遮光膜が設けられた領域である。遮光領域では、透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されていればよく、透明基板上に遮光膜および半透明膜が形成されていてもよい。
【0044】
また、本発明における半透明領域は、透明基板上に半透明膜のみが設けられた領域である。半透明領域では、透明基板上に半透明膜のみが形成されており、遮光膜は形成されていない。半透明膜が複数の層で構成されている場合は、階調マスクが、異なる透過率特性をもつ複数種類の半透明領域を有していてもよい。この場合、多階調マスクとすることができる。
【0045】
さらに、本発明における透過領域は、透明基板上に遮光膜および半透明膜のいずれも設けられていない領域である。すなわち、透過領域は、透明基板のみを有する。
【0046】
遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状としては、特に限定されるものではなく、本発明の階調マスクの用途に応じて適宜調整される。例えば図4に示すように階調マスク1が、屈曲部を有する線形状の半透明領域12と円形状の透過領域13とを有し、その他の領域が遮光領域11である場合や、図5に示すように階調マスク1が、L字形状の遮光領域11と円形状の透過領域13とを有し、その他の領域が半透明領域12である場合など、遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状は、種々の形状とすることができる。
【0047】
本発明の階調マスクは、透明基板と、遮光膜と、半透明膜とが順不同に積層されたものである。図4に例示する階調マスクの層構成としては、例えば図6(a)に示すように透明基板2、遮光膜4、半透明膜3の順に積層されていてもよく、図6(b)に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層されていてもよく、図6(c)に示すように半透明膜3、透明基板2、遮光膜4の順に積層されていてもよい。なお、図6(a)〜(c)は、図4のA−A線断面図である。この場合、遮光領域11では透明基板上2に遮光膜4および半透明膜3が設けられ、半透明領域12では透明基板2上に半透明膜3が設けられており、透過領域13は透明基板2のみを有する。このような階調マスクを用いてパターンを形成した場合には、例えば図7に示すように高さおよび形状の異なるスペーサ18aおよび配向制御用突起18bを同時に形成することができる。
【0048】
また、図5に例示する階調マスクの層構成としても、例えば図8(a)に示すように透明基板2、遮光膜4、半透明膜3の順に積層されていてもよく、図8(b)に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層されていてもよく、図8(c)に示すように半透明膜3、透明基板2、遮光膜4の順に積層されていてもよい。なお、図8(a)〜(c)は、図5のB−B線断面図である。この場合、遮光領域11では透明基板上2に遮光膜4および半透明膜3が設けられ、半透明領域12では透明基板2上に半透明膜3が設けられており、透過領域13は透明基板2のみを有する。このような階調マスクを用いてパターンを形成した場合には、例えば図9に示すようにスペーサ19aおよびオーバーコート層19bを同時に形成することができる。
【0049】
本発明における半透明膜および遮光膜は、上記の遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状に応じて、透明基板上にパターン状に形成される。
【0050】
5.低反射層
本発明においては、遮光膜上に低反射層が形成されていてもよい。低反射層を設けることにより、本発明の階調マスクの使用時において、ハレーションを防止することができる。
低反射層としては、例えば酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム等の膜が挙げられる。遮光膜がクロム系膜である場合、これらの膜は遮光膜のエッチング時に同時にエッチングすることが可能である。
例えば図6(a)に示すように透明基板2、遮光膜4、半透明膜3の順に積層されている場合、低反射層は遮光膜と半透明膜の間に形成される。また、図6(b)に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層されている場合、および図6(c)に示すように半透明膜3、透明基板2、遮光膜4の順に積層されている場合、低反射層は遮光膜上に形成される。
【0051】
6.階調マスク
本発明の階調マスクは、透過率が3段階以上に段階的に変化するものであり、2階調のマスクに限定されるものではなく、後述するようにパターニングを繰り返すことにより、2階調以上の多階調のマスクとすることが可能である。
【0052】
本発明の階調マスクは、リソグラフィー法などのように、露光工程を経て製造される様々な製品の製造に用いることができる。中でも、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等の表示装置の製造、特に大型の表示装置の製造に用いることにより、本発明の効果を最大限に利用することができる。
本発明の階調マスクを用いた一括露光により2種以上のパターンを同時に形成する用途として、具体的には液晶表示装置におけるスペーサおよび配向制御用突起の同時形成、液晶表示装置における高さの異なるスペーサの同時形成、液晶表示装置におけるスペーサおよびオーバーコート層の同時形成、液晶表示装置用カラーフィルタにおけるスペーサおよび配向制御用突起の同時形成、液晶表示装置カラーフィルタにおける高さの異なるスペーサの同時形成、液晶表示装置カラーフィルタにおけるスペーサおよびオーバーコート層の同時形成、表示装置における半導体素子作製時の厚みの異なるレジストの形成などを挙げることができる。
【0053】
本発明の階調マスクの大きさとしては、用途に応じて適宜調整されるが、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の製造に用いられる場合には、300mm×400mm〜1,600mm×1,800mm程度とすることができる。
【0054】
7.階調マスクの製造方法
次に、本発明の階調マスクの製造方法について説明する。本発明の階調マスクの製造方法としては、透明基板上に半透明膜および遮光膜をパターン状に形成することにより、所望の位置に遮光領域、半透明領域、および透過領域を配置することができる方法であれば特に限定されるものではないが、2つの好ましい態様を挙げることができる。以下、各態様について説明する。
【0055】
(1)第1の態様
本発明の階調マスクの製造方法の第1の態様は、透明基板上に遮光膜を成膜したマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、遮光膜の一部をパターニングする第1パターニング工程と、パターニングされた遮光膜が形成された透明基板の全面に半透明膜を成膜する半透明膜成膜工程と、遮光膜および半透明膜をパターニングする第2パターニング工程とを有するものである。
【0056】
図10は、本態様の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
本態様の階調マスクを作製するには、まず透明基板2上に遮光膜4aを成膜したマスクブランク20を準備する(図10(a)、マスクブランク準備工程)。
次に、遮光膜4a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第1レジスト膜21aを形成する(図10(b))。次に、遮光膜をパターン露光する。この際、半透明領域12と遮光領域11とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、半透明領域12は第1レジスト膜21aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13は第1レジスト膜21aが残存する露光量で露光する。続いて、現像することにより、第1レジストパターン21bを形成する(図10(c))。次に、第1レジストパターン21bより露出している遮光膜4aをエッチングして、遮光膜中間パターン4bを形成し(図10(d))、残存している第1レジストパターン21bを除去する(図10(e))。この遮光膜中間パターン4bでは、後述する第2パターニング工程にて半透明膜と同じ箇所をエッチングする部分はエッチングされずに残存している。なお、図10(b)〜(e)は第1パターニング工程である。
次に、遮光膜中間パターン4bが形成された透明基板2の全面に、半透明膜3aを成膜する(図10(f)、半透明膜成膜工程)。
次に、半透明膜3a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第2レジスト膜22aを形成する(図10(g))。続いて、遮光膜および半透明膜のパターン露光を行う。この際、遮光領域11と透過領域13とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、透過領域13は第2レジスト膜22aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12は第2レジスト膜22aが残存する露光量で露光する。次に、現像することにより、第2レジストパターン22bを形成する(図10(h))。次に、第2レジストパターン22bより露出している半透明膜3aをエッチングし、続いて、下層の遮光膜中間パターン4bが露出している箇所をさらにエッチングすることにより、半透明膜パターン3bおよび遮光膜パターン4cを形成する(図10(i))。次いで、残存している第2レジストパターン22bを除去し(図10(j))、階調マスクを得ることができる。なお、図10(g)〜(j)は第2パターニング工程である。
【0057】
本態様においては、第1パターニング工程にて遮光膜の一部のみをパターニングし、第2パターニング工程にて遮光膜および半透明膜をパターニングするので、後述する第2の態様のように半透明膜上に形成された遮光膜のみを選択的にエッチングする必要がない。このため、遮光膜および半透明膜に用いる材料が限定されないという利点を有する。例えば、遮光膜および半透明膜に同系の材料、具体的にはクロム膜を用いることができる。また、エッチング選択性が要求されないので、複数のエッチング技術(複数の装置・エッチャントなど)を用いる必要がなく、マスク製造コストを削減することができる。さらに、遮光膜および半透明膜がクロム膜である場合には、従来のバイナリマスクと同様のプロセスで階調マスクを製造することができ、複雑な工程を要しないという利点も有する。
【0058】
また、本態様の階調マスクの製造方法は、上述したように第2パターニング工程において遮光膜および半透明膜のパターニングを一括して行うことから、遮光膜および半透明膜が同系の材料からなる膜である場合に好適である。中でも、遮光膜および半透明膜が金属膜である場合がより好ましく、特にいずれの膜もクロム膜である場合が好ましい。
以下、本態様の階調マスクの製造方法における各工程について説明する。
【0059】
(i)マスクブランク準備工程
本態様におけるマスクブランク準備工程は、透明基板上に遮光膜を成膜したマスクブランクを準備する工程である。
透明基板上に遮光膜としてクロム膜が形成されたマスクブランクは、一般的に使用されているマスクブランクであり、容易に入手可能である。
【0060】
(ii)第1パターニング工程
本態様における第1パターニング工程は、遮光膜の一部をパターニングする工程である。遮光膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、マスクブランクの遮光膜上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第1レジスト膜を形成する。
【0061】
第1レジスト膜の材料としては、ポジ型レジスト材料(光照射部分が溶解するもの)およびネガ型レジスト材料(光照射部分が固まるもの)のいずれも用いることができる。ポジ型レジスト材料としては特に限定されるものではなく、例えばノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型レジスト等が挙げられる。また、ネガ型レジスト材料としては特に限定されるものではなく、例えば架橋型樹脂をベースとした化学増幅型レジスト、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型レジスト等が挙げられる。
【0062】
遮光膜のパターン露光では、半透明領域と遮光領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、各領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、半透明領域は第1レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および透過領域は第1レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0063】
例えば図10(c)は、ポジ型レジスト材料を用いて第1レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、半透明領域12では第1レジスト膜21aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13では第1レジスト膜21aを露光しない。
また、図示しないが、第1レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、半透明領域では露光せず、遮光領域および透過領域で第1レジスト膜が感光される露光量で露光する。
なお、遮光膜および半透明膜の同じ箇所を一括してエッチングするためのパターン露光は、第2パターニング工程で行う。
【0064】
各領域により異なる露光量で露光する方法としては、エネルギー線の露光量を制御する方法や、一定の露光量で重ねて露光する方法等がある。描画方法としては、特に限定されるものではなく、通常のフォトマスク描画に用いられる電子線描画法、もしくはレーザー描画法等を用いることができる。電子線描画法を用いる場合は、露光量を容易に変換することができる。レーザー描画法を用いる場合は、露光量変換に時間がかかるため、露光量を変えずに重ねて露光してもよい。また、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置の大型化、製造時の多面付化に伴い、階調マスクも大型化しているため、表示装置用の階調マスクの作製には主にレーザー描画法が適用される。
【0065】
パターン露光後の現像は、一般的な現像方法に従って行うことができる。
【0066】
遮光膜のエッチング方法としては、例えば硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液等によるウェットエッチング、塩素系ガス等によるドライエッチングのいずれも適用することができる。中でも、ウェットエッチングが好ましい。ウェットエッチングはコストや生産効率の点で有利である。また、ウェットエッチングは化学反応で溶解が進行するため、エッチャントを選択することによりエッチング速度を容易に制御できる点からも好ましい。
遮光膜がクロム系膜である場合には、硝酸セリウム系ウェットエッチャントが好適に用いられる。
また、遮光膜が低反射機能を有する場合は、第1レジスト膜を露光するための露光光の散乱によって、本来露光されるべき領域でない領域が露光されてしまうことを防止することができる。
【0067】
第1レジスト膜の除去方法としては特に限定されるものではなく、通常、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う。
【0068】
本態様においては、第1パターニング工程後に、遮光膜パターンの検査を行う検査工程や、必要に応じて欠陥修正をする修正工程を行ってもよい。遮光膜がクロム膜である場合には、一般的なフォトマスクの検査技術、修正技術を適用することができる。遮光膜パターンの寸法検査、遮光膜パターンの欠陥検査の検査工程や、修正工程を行うことにより、次の工程に欠陥を有する基板が渡るのを防ぎ、良品率が高まり、マスクコスト低減に寄与する。
【0069】
(iii)半透明膜成膜工程
本態様における半透明膜成膜工程は、パターニングされた遮光膜が形成された透明基板の全面に半透明膜を成膜する工程である。なお、半透明膜の成膜方法については、上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
(iv)第2パターニング工程
本態様における第2パターニング工程は、遮光膜および半透明膜をパターニングする工程である。遮光膜および半透明膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、遮光膜および半透明膜が形成された透明基板上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第2レジスト膜を形成する。
なお、第2レジスト膜の材料については、上記第1パターニング工程の項に記載した第1レジスト膜の材料と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
半透明膜および遮光膜のパターン露光では、遮光領域と透過領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、各領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、透過領域は第2レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および半透明領域は第2レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0072】
例えば図10(h)は、ポジ型レジスト材料を用いて第2レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、透過領域13では第2レジスト膜22aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12では第2レジスト膜22aを露光しない。
また、図示しないが、第2レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、透過領域では露光せず、遮光領域および半透明領域で第2レジスト膜が感光される露光量で露光する。
【0073】
なお、パターン露光のその他の点、および現像については、上記第1パターニング工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明において、半透明膜がクロム膜である場合、膜厚は例えば5nm〜20nm程度であり、比較的薄い。このため、半透明膜のエッチング時間を短縮することができる。また、半透明膜および遮光膜のエッチング速度にほとんど差がないので、半透明膜パターンのエッジのビリツキがない(エッジがシャープである)という利点を有する。
【0074】
また、本工程においては、遮光膜および半透明膜の同じ箇所を一括してエッチングする。透過領域では遮光膜と半透明膜とが一括してエッチングされるので、遮光膜パターンの端部および半透明膜パターンの端部の位置が略同一となる。なお、遮光膜および半透明膜のエッチング方法については、上記第1パターニング工程の項に記載した遮光膜のエッチング方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
第2レジスト膜の除去方法としては特に限定されるものではなく、通常、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う。
【0076】
本態様においては、第2パターニング工程後に、遮光パターンおよび半透明膜パターンの検査を行う検査工程や、必要に応じて欠陥修正をする修正工程を行ってもよい。遮光パターンおよび半透明膜パターンの寸法検査、遮光パターンおよび半透明膜パターンの欠陥検査の検査工程や、修正工程を行うことにより、良品率が高まり、マスクコスト低減に寄与する。
【0077】
(2)第2の態様
本発明の階調マスクの製造方法の第2の態様は、透明基板上に半透明膜および遮光膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、半透明膜および遮光膜の一部をパターニングする第1パターニング工程と、遮光膜のみをパターニングする第2パターニング工程とを有するものである。
【0078】
図11は、本態様の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
本態様の階調マスクを作製するには、まず透明基板2上に半透明膜3aおよび遮光膜4aがこの順に積層されたマスクブランク20を準備する(図11(a)、マスクブランク準備工程)。
次に、遮光膜4a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第1レジスト膜23aを形成する(図11(b))。次に、半透明膜および遮光膜のパターン露光を行う。この際、遮光領域11と透過領域13とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、透過領域13は第1レジスト膜23aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12は第1レジスト膜23aが残存する露光量で露光する。続いて、現像することにより、第1レジストパターン23bを形成する(図11(c))。次に、第1レジストパターン23bより露出している透明膜3aおよび遮光膜4aをエッチングして、半透明膜パターン3bおよび遮光膜中間パターン4bを形成し(図11(d))、残存している第1レジストパターン23bを除去する(図11(e))。この遮光膜中間パターン4bでは、後述する第2パターニング工程にて遮光膜のみをエッチングする部分はエッチングされずに残存している。なお、図11(b)〜(e)は第1パターニング工程である。
次に、半透明膜パターン3bおよび遮光膜中間パターン4bが形成された透明基板2上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第2レジスト膜24aを形成する(図11(f))。続いて、遮光膜のパターン露光を行う。この際、半透明領域12と遮光領域11とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、半透明領域12は第2レジスト膜24aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13は第2レジスト膜24aが残存する露光量で露光する。次に、現像することにより、第2レジストパターン24bを形成する(図11(g))。次に、第2レジストパターン24bより露出している遮光膜中間パターン4bをエッチングして、遮光膜パターン4cを形成し、(図11(h))、残存している第2レジストパターン24bを除去する(図11(i))。なお、図11(f)〜(i)は第2パターニング工程である。このようにして階調マスクを得ることができる。
【0079】
本態様においては、上記第1の態様のように、具体的には第1パターニング工程および第2パターニング工程の間に半透明膜成膜工程を行うというように、階調マスクの製造工程の途中で半透明膜成膜工程を行う必要がない。このため、半透明膜の成膜時のリスク(欠陥や汚れなど)を低減することができる。また、TAT(Turn Around Time)の短縮化が可能である。
【0080】
また、本態様の階調マスクの製造方法は、上述したように第1パターニング工程において遮光膜および半透明膜のパターニングを一括して行うことから、第1の態様と同様に、遮光膜および半透明膜が同系の材料からなる膜である場合に好適である。中でも、第2パターニング工程においてエッチング選択性が要求されることから、遮光膜および半透明膜が、組成が大きく異なる膜である場合がより好ましい。
以下、本態様の階調マスクの製造方法における各工程について説明する。
【0081】
(i)マスクブランク準備工程
本態様におけるマスクブランク準備工程は、透明基板上に半透明膜および遮光膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備する工程である。なお、透明基板、半透明膜および遮光膜については上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0082】
(ii)第1パターニング工程
本態様における第1パターニング工程は、半透明膜および遮光膜の一部をパターニングする工程である。半透明膜および遮光膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、マスクブランクの遮光膜上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第1レジスト膜を形成する。
【0083】
半透明膜および遮光膜のパターン露光では、遮光領域と透過領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、透過領域は第1レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および半透明領域は第1レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0084】
例えば図11(c)は、ポジ型レジスト材料を用いて第1レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、透過領域13では第1レジスト膜23aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12では第1レジスト膜23aを露光しない。
また、図示しないが、第1レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、透過領域では露光せず、遮光領域および半透明領域で第1レジスト膜が感光される露光量で露光する。
なお、遮光膜のみをエッチングするためのパターン露光は、第2パターニング工程で行う。
【0085】
なお、第1レジスト膜の材料、半透明膜および遮光膜のパターン露光のその他の点、現像、半透明膜および遮光膜のエッチング方法、第1レジスト膜の除去方法、半透明膜パターンおよび遮光膜パターンの検査工程、ならびに半透明膜パターンおよび遮光膜パターンの修正工程については、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
(iii)第2パターニング工程
本態様における第2パターニング工程は、遮光膜のみをパターニングする工程である。遮光膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、パターニングされた半透明膜および遮光膜の上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第2レジスト膜を形成する。
【0087】
遮光膜のパターン露光では、半透明領域と遮光領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、半透明領域は第2レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および透過領域は第2レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0088】
例えば図11(g)は、ポジ型レジスト材料を用いて第2レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、半透明領域12では第2レジスト膜24aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13では第2レジスト膜24aを露光しない。
また、図示しないが、第2レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、半透明領域では露光せず、遮光領域および透過領域で第2レジスト膜が感光される露光量で露光する。
【0089】
なお、第2レジスト膜の材料、遮光膜のパターン露光、および現像については、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
現像後は、遮光膜のエッチングを行う。本態様においては、例えばクロム系膜が種類によってエッチング速度が異なることを利用し、半透明膜にクロム膜、遮光膜にクロム膜以外のクロム系膜を用いて、半透明膜のエッチング速度を遮光膜のエッチング速度より遅くすることができる。半透明膜および遮光膜のエッチング速度に差をつけることで、エッチングの選択性が向上し、上層の遮光膜をエッチングする際に下層の半透明膜も一緒にエッチングされることを防止することができる。このように、半透明膜および遮光膜のエッチング速度を変えることでエッチング選択性を向上させ、階調をより鮮明にすることができる。
また、半透明膜および遮光膜に異種の金属膜を用いて、半透明膜のエッチング速度を遮光膜のエッチング速度より遅くすることもできる。
【0091】
なお、遮光膜のエッチング方法、第2レジスト膜の除去方法、遮光膜パターンの検査工程、および遮光膜パターンの修正工程については、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0092】
B.表示装置製造用階調マスク
次に、本発明の表示装置製造用階調マスクについて説明する。
本発明の表示装置製造用階調マスクは、上述した階調マスクが表示装置の製造に用いられることを特徴とするものである。
【0093】
本発明の表示装置製造用階調マスクを用いて表示装置における部材を形成する方法について図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の表示装置製造用階調マスク1を用いて液晶表示装置における高さの異なるスペーサ16aおよび16bを同時に形成する例である。また、図4および図6に示す表示装置製造用階調マスク1を用いることにより、図7に例示するように液晶表示装置における高さおよび形状の異なるスペーサ18aおよび配向制御用突起18bを同時に形成することができる。さらに、図5および図8に示す表示装置製造用階調マスク1を用いることにより、図9に例示するように液晶表示装置におけるスペーサ19aおよびオーバーコート層19bを同時に形成することができる。このように、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いることにより、表示装置における高さや形状の異なる部材を同時に形成することが可能である。
【0094】
図12は、本発明の表示装置製造用階調マスク1を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を作製する例である。従来では、2層の半透明膜をパターニングする場合、例えばレジスト塗布、露光・現像・エッチング、露光・現像・エッチング、剥離というように2回の露光工程が必要であった。これに対し、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いた場合、基板31上に形成された2層の半透明膜32および33をパターニングするには、図12に例示するようにレジスト材料を塗布してレジスト膜34を形成し、光30を照射し(図12(a))、現像し(図12(b))、2層の半透明膜32および33をエッチングし(図12(c))、レジスト膜34をアッシングし(図12(d))、上層の半透明膜33のみをエッチングし(図12(e))、レジスト膜34を剥離すればよい(図12(f))。したがって、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いることにより、表示装置における半導体素子の製造工程を簡略化することが可能である。
【0095】
また、本発明の表示装置製造用階調マスクは上述した階調マスクを用いたものであり、露光光の長波長域だけでなく短波長域も硬化反応に利用するので、パターンの形成に有利である。
したがって、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いることにより、表示装置の製造工程の簡略化および露光時間の短縮化が可能である。
【0096】
本発明の表示装置製造用階調マスクの大きさとしては、通常、300mm×400mm〜1,600mm×1,800mm程度とされる。
なお、表示装置製造用階調マスクのその他の点については、上記「A.階調マスク」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0098】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(階調マスクの作製)
光学研磨された390mm×610mmの合成石英基板上にクロム膜(遮光膜)が厚み100nmで成膜されている常用のマスクブランク上に、市販のフォトレジスト(東京応化工業社製 ip−3500)を厚み600nmで塗布し、120℃に加熱されたホットプレートで15分ベークした後、フォトマスク用レーザ描画装置(マイクロニック社製 LRS11000−TFT3)で、所望の遮光膜中間パターンを描画した。
次に、専用のデベロッパー(東京応化工業社製 NMD3)で現像し、遮光膜用レジストパターンを得た。
次に、レジストパターンをエッチング用マスクとし、遮光膜をエッチングし、さらに残ったレジストパターンを剥膜することで、所望の遮光膜中間パターンを得た。遮光膜のエッチングには、市販の硝酸セリウム系ウェットエッチャント(ザ・インクテック社製 MR−ES)を用いた。遮光膜のエッチング時間は、60秒であった。
【0099】
次いで、遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、クロム膜(半透明膜)を下記の条件でスパッタリング法にて成膜した。
<成膜条件>
・ガス流量比 Ar:N2=4:1
・パワー:1.3kW
・ガス圧:3.5mTorr
半透明膜の膜厚は10nmとした。半透明膜の分光スペクトルを図13に示す。
次に、半透明膜上に市販のフォトレジスト(東京応化製 ip−3500)を再度、厚み600nmで塗布し、120℃に加熱されたホットプレート上で15分ベークした。
続いて半透明膜パターンとなる像を再度、レーザ描画装置(マイクロニック社製 LRS11000−TFT3)で描画し、専用デベロッパー(東京応化社製 NMD3)で現像し、レジストパターンを得た。
次に、レジストパターンをマスクとして、市販の硝酸セリウム系ウェットエッチャント(ザ・インクテック社製 MR−ES)で半透明膜および遮光膜をエッチングし、半透明膜パターンおよび遮光膜パターンを得た。エッチングは半透明膜および遮光膜に対して行った。
最後に残ったレジストを剥膜し、パターン寸法検査、パターン欠陥検査などの検査工程を経て、必要に応じてパターン修正を行い、階調マスクを得た。
【0100】
(階調マスクを用いたパターンの形成)
大きさが100mm×100mm、厚みが0.7mmのガラス基板を準備し、このガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(JSR製 オプトマーNN850)をスピンコート法により塗布し、減圧乾燥後、100℃にて3分間プリベークした。その後、上記の階調マスクを介して下記条件にて露光した。
<露光条件>
・露光量:100mJ/cm2(I線換算)
・露光ギャップ:150μm
【0101】
次いで、水酸化カリウム水溶液を用いて現像し、その後、230℃、30分間の加熱処理を施し、凸形状の2種のパターンを形成した。
【0102】
[比較例1]
(階調マスクの作製)
下記のように半透明膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして階調マスクを作製した。
遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、酸化窒化炭化クロム膜(半透明膜)をスパッタリング法にて成膜した。酸化窒化炭化クロム膜の膜厚は35nmとした。この酸化窒化炭化クロム膜の分光スペクトルを図13に示す。
【0103】
(階調マスクを用いたパターンの形成)
実施例1と同様にして、凸形状の2種のパターンを形成した。
【0104】
[比較例2]
(階調マスクの作製)
下記のように半透明膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして階調マスクを作製した。
遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、高屈折率層(屈折率:2.5、厚み:29nm、TiO2膜)と低屈折率層(屈折率:1.5、厚み:48nmのSiO2膜)とを交互に計15層(1層目および15層目は高屈折率層)、スパッタリング法にて成膜した。これにより、波長330nm以下の短波長域をカットする半透明膜を得た。
【0105】
(階調マスクを用いたパターンの形成)
実施例1と同様にして、凸形状の2種のパターンを形成した。
【0106】
[評価]
実施例1、比較例1,2の階調マスクを用いて形成されたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡にて観察し、寸法を測定した。
【0107】
【表1】
【0108】
実施例1の階調マスクを露光プロセスに用いることにより、高さの異なるセル保持用カラムスペーサを所望通りの寸法にて形成することができた。
【符号の説明】
【0109】
1 … 階調マスク
2 … 透明基板
3 … 半透明膜
4 … 遮光膜
11 … 遮光領域
12 … 半透明領域
13 … 透過領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置等の製造過程において、ハーフトーン露光に好適に用いられる階調マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置のリソグラフィー工程数を減らすパターン形成方法に関しては、例えばリフロー法またはアッシング法が開示されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。また、上記の特許文献には、露光光の解像限界以下の微小スリットを有するフォトマスク(スリットマスク)、および露光光に対して階調を有するフォトマスク(階調マスク)が開示されている。
【0003】
スリットマスクでは、露光光を実質的に遮光するクロム膜などの一般的な遮光膜を用い、遮光膜に露光機の解像限界以下の微細なスリットを配置する(例えば特許文献3参照)。このマスクのスリットは、解像限界以下のサイズであるため、それ自身はレジスト上に結像せずに、周囲の非開口部領域も含めたエリアに、サイズに応じた露光光を透過する。このため、スリットマスクは、スリットが形成された領域と、その周囲を含めたエリアに、あたかも半透明膜があるかのように機能する。
しかしながら、このスリットは解像限界以下である必要があるため、当然のことながら、マスクの本体パターンよりも小さな寸法に仕上げる必要があり、マスク製造に対して大きな負荷となってしまうという問題があった。さらに、広い領域を半透明にするためには、多くのスリットを配置する必要があるため、パターンデータ容量が増え、パターン形成工程や、パターンの欠陥検査工程に対する負荷の増大という問題も生じ、製造・検査時間の増大、マスク製造コストの上昇につながってしまうという問題があった。
【0004】
一方、階調マスクは、露光光を実質的に遮光する遮光膜と、露光光を所望の透過率で透過する半透明膜とを用い、光を透過する透過領域と、光を透過しない遮光領域と、透過する光の量が調整された半透明領域とを有することにより、階調を出すマスクである(例えば特許文献4参照)。このマスクを作製するためには、透明基板上に半透明膜と遮光膜とが積層された専用のマスクブランクを使用し、マスクパターン製版を行う。この階調マスクは、スリットマスクのように微細なスリットを配置する必要がない点で有利である。
【0005】
階調マスクでは、透過率の異なる領域によって透過光の量を制御することにより、現像後のレジストの膜厚を2段階に制御することができる。例えば、階調マスクを用いて一括露光することにより、液晶表示装置用カラーフィルタにおける柱状スペーサおよび液晶配向機能突起を同時に形成することが可能となる(例えば特許文献5参照)。
特許文献5に記載の階調マスクは、透過率が300nmで5%以下、380nmで45%以上であり、露光光の短波長域(300nm〜350nm程度)をカットし、長波長域(350nm〜450nm程度)のみを利用するというものである。しかしながら、長波長域のみを利用する場合、短波長域を利用する場合と比較してエネルギーが低いため、硬化速度が遅く、露光に時間がかかるという問題がある。
【0006】
また、特許文献4および特許文献5では、階調マスクの半透明膜として、酸化クロム膜、窒化クロム膜、酸化窒化クロム膜、フッ化クロム膜、酸化インジウム錫膜、TiおよびWを含む酸化膜、TiおよびMoを含む酸化膜などが用いられている。このように半透明膜には、金属の酸化物や窒化物などの膜を用いるのが主流である。一方、半透明膜として金属膜を用いた例は報告されていない。
【0007】
【特許文献1】特許第3415602号公報
【特許文献2】特開2000−66240公報
【特許文献3】特開2002−196474公報
【特許文献4】特開2002−189280公報
【特許文献5】特開2005−84366公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、表示装置の製造工程の簡略化を図るとともに、パターンの形成に有利な階調マスクを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域と、上記透明基板上に上記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、上記透明基板上に上記遮光膜および上記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、上記半透明膜が金属膜であることを特徴とする階調マスクを提供する。
【0010】
一般に、金属は自由電子を介して結合しているため、光吸収を起こすバンドギャップが存在しない。そのため、特徴的な吸収がなく、紫外光領域から可視光領域において透過率が一定の範囲になる場合が多い。これに対し、金属酸化物は吸収係数が比較的小さく、長波長(紫外・可視領域)になるほど吸収係数がほぼゼロに近づくため、波長が長くなるほど透過率が高くなる場合が多い。また、金属窒化物や金属炭化物も、金属酸化物と同様の傾向を示す。したがって、半透明膜として金属膜を用いることにより、所望の透過率特性を有する半透明膜を備える階調マスクを得ることができる。
このような階調マスクでは、露光光の長波長域も短波長域も有効に利用することができるので、露光時間の短縮化が可能である。また、例えばネガ型レジストを用いてパターンを形成する場合には、透過領域および半透明領域の透過率比を、透過領域および半透明領域の露光後のレジストの膜厚比とみなすことができ、レジストの膜厚制御が容易である。
【0011】
上記発明においては、上記半透明膜および上記遮光膜がクロム膜であることが好ましい。半透明膜および遮光膜がクロム膜であれば、階調マスクを作製する際に、半透明膜および遮光膜を同一のエッチャントを用いて同時にパターニングすることができるからである。また、クロム膜は、機械的強度に優れており、さらには退光性がなく安定しているため、長時間の使用に耐えうる階調マスクとすることができるからである。
【0012】
さらに本発明は、上述した階調マスクが表示装置の製造に用いられることを特徴とする表示装置製造用階調マスクを提供する。
本発明の表示装置製造用階調マスクは、上述した階調マスクを用いたものであるので、表示装置の製造工程の簡略化が可能であり、またパターン形成時の露光時間の短縮化が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、半透明膜として金属膜を用いることにより、所望の透過率特性を有する半透明膜を備える階調マスクを得ることができる。このような階調マスクを用いた一括露光により、高さや形状の異なるパターンを同時に形成することができ、製造工程の簡略化が可能である。また、本発明の階調マスクを用いることにより、露光光の短波長域もレジストの硬化反応に利用することができ、露光時間の短縮化が図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の階調マスクの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の階調マスクを用いて液晶表示装置におけるスペーサを形成する例を示す工程図である。
【図3】本発明における半透明膜の分光スペクトルの一例を示すグラフである。
【図4】本発明の階調マスクの一例を示す平面図である。
【図5】本発明の階調マスクの他の例を示す平面図である。
【図6】図4のA−A線断面図である。
【図7】本発明の階調マスクを用いて形成された液晶表示装置におけるスペーサおよび配向制御用突起の一例を示す断面図である。
【図8】図5のB−B線断面図である。
【図9】本発明の階調マスクを用いて形成された液晶表示装置におけるスペーサおよびオーバーコート層の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
【図11】本発明の階調マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図12】本発明の階調マスクを用いて薄膜トランジスタを作製する例を示す工程図である。
【図13】実施例1および比較例1における半透明膜の分光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の階調マスクおよび表示装置製造用階調マスクについて詳細に説明する。
【0016】
A.階調マスク
本発明の階調マスクは、透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域と、上記透明基板上に上記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、上記透明基板上に上記遮光膜および上記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、上記半透明膜が金属膜であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の階調マスクについて、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の階調マスクの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上に半透明膜3および遮光膜4がこの順に積層されたものである。この半透明膜3は透過率調整機能を有している。また、遮光膜4は実質的に露光光を透過しないものである。階調マスク1では、透明基板2上に半透明膜3および遮光膜4がパターン状に形成されており、透明基板2上に遮光膜4が設けられた遮光領域11と、透明基板2上に半透明膜3のみが設けられた半透明領域12と、透明基板2上に半透明膜3および遮光膜4のいずれも設けられていない透過領域13とが混在している。
【0018】
次に、図1に示す階調マスク1を用いて液晶表示装置におけるスペーサを形成する方法の一例を図2に示す。階調マスク1においては、透過領域13では透明基板2を露光光15が透過し、半透明領域12では透明基板2および半透明膜3を露光光15が透過する。透過領域13からは通常の波長の露光光が照射されるため、ほぼマスクパターン形状に応じたパターンが形成される。一方、半透明領域12から照射される露光光は、半透明膜3が透過率調整を行っているため、波長に応じて所定の透過率で透過する。したがって、透過領域13と半透明領域12とで同じ露光量でパターン露光した場合、透過領域13では露光前のレジスト厚に相当する高さのスペーサ16aが形成され、半透明領域12ではスペーサ16aの高さよりも低いスペーサ16bが形成される。このように、本発明の階調マスクを利用した一括露光により、1枚の階調マスクで高さの異なるパターンを同時に得ることができる。
【0019】
一般に、金属は自由電子を介して結合しているため、光吸収を起こすバンドギャップが存在しない。そのため、特徴的な吸収がなく、紫外光領域から可視光領域において透過率が一定の範囲になる場合が多い。図3に、本発明における半透明膜の分光スペクトルの一例を示す。図3に例示するように、半透明膜は、波長250nm〜600nmにおける透過率が一定の範囲となっている。すなわち、半透明膜の透過率は、波長によらずほぼ一定である。したがって、半透明膜として金属膜を用いることにより、所望の透過率特性を有する半透明膜を備える階調マスクを得ることができる。
【0020】
このような透過率特性を有する半透明膜が設けられた半透明領域では、露光光の長波長域(350nm〜450nm程度)だけでなく、短波長域(300nm〜350nm程度)も所定の透過率で透過するので、短波長域もレジストの硬化反応に利用される。
【0021】
短波長域の光は、エネルギーが高く、硬化速度が速いという利点があり、上述したように短波長域の光も有効に利用することにより、露光時間を短縮することが可能である。また、短波長域での露光は、レジストが表面から硬化する傾向にあるので、レジスト内部からの不純物の拡散を抑えることができる。さらに、長波長域での露光は、深部まで光が到達してレジストを硬化させる傾向にあるため、上記のような高さの異なるパターンを形成するのに有効である。したがって、本発明の階調マスクでは、広い波長域を有効に活用でき、パターンの形成に有利である。
【0022】
また一般に、露光装置は種類等によって得られる発光スペクトル(波長範囲、ピーク波長、ピーク強度比、ピーク半値幅など)が異なる。このため、目的とするパターンを形成するために適切な露光量となるように、使用する露光装置に応じて階調マスクの透過率を設計する必要がある。
本発明における半透明膜は、金属膜であるので、紫外光領域から可視光領域における透過率が一定の範囲となる傾向があり、露光波長域全体において透過率が一定の範囲内となる。このため、例えば露光装置に高圧水銀ランプを用いた場合、例えば図3においては300nmにおける透過率が39%、365nm(I線)における透過率が37%、436nm(G線)における透過率が35%となり、波長域全体(250nm〜600nm)において透過率が一定の範囲内(33%〜40%程度)となる。したがって、図2に例示するようにネガ型レジストを用いた場合は、半透明膜の各波長における透過率(%):透過率100(%)≒半透明領域の平均透過率:透過領域の平均透過率≒半透明領域の露光後のレジスト厚:透過領域の露光後のレジスト厚、とみなすことができる。すなわち、ある波長における透過率を調整することにより、露光波長域全体において透過率を所定の範囲内に調整することができ、露光後のレジスト厚を制御することができる。このように、本発明の階調マスクでは、レジストの膜厚制御が容易であり、種々のレジスト厚を容易に設計することができる。
【0023】
一方、例えば金属酸化物膜は、一般的に波長が長くなるにつれて透過率が高くなるような透過率特性を示す。このような金属酸化物膜では、図3に例示する半透明膜と同様に365nm(I線)における透過率が37%であっても、300nmにおける透過率が27%、436nm(G線)における透過率が例えば48%となる、というように、ある波長における透過率を調整しても、露光波長域全体において透過率は一定の範囲内とはならない。レジストの膜厚は、いずれの波長がレジストの硬化反応に大きく寄与するかにより異なってくるので、半透明膜として金属酸化物膜を有する階調マスクでは、レジストの膜厚制御が困難である。
【0024】
さらに、本発明における半透明膜は、上述したように露光波長域全体において透過率が一定の範囲となる傾向があり、各波長間での透過率比がおおよそ同じになるので、本発明の階調マスクは、露光装置を選ばないという利点を有する。例えば図3に示すように、半透明膜の300nm、365nm(I線)、405nm(H線)、436nm(G線)における各透過率が35%〜40%の範囲内である場合、各波長の透過率比はおおよそ1:1:1:1となる。この場合、例えばI線、H線、G線の強度比が異なる露光装置があるとすると、各波長間での透過率比がおおよそ同じになるので、いずれの露光装置を使用しても、透過領域における露光量に対する半透明領域における露光量は35%〜40%の範囲内となる。このように、本発明の階調マスクでは、露光装置の発光スペクトル(波長範囲、ピーク波長、ピーク強度比、ピーク半値幅など)の差異によらず、適用することが可能である。
【0025】
一方、例えば上述した金属酸化物膜では、一般的に波長が長くなるにつれて透過率が高くなるような透過率特性を示すので、各波長間での透過率比が異なるものとなる。例えば金属酸化物膜の300nm、365nm(I線)、405nm(H線)、436nm(G線)における各透過率が10%、20%、35%、40%である場合、各波長の透過率比は1:2:3.5:4となる。この場合、例えばI線、H線、G線の強度比が異なる露光装置があるとすると、各波長間での透過率比が異なるので、使用する露光装置によって、透過領域における露光量に対する半透明領域における露光量が異なってしまう。したがって、半透明膜としてこのような金属酸化物膜を有する階調マスクでは、使用する露光装置に応じて適切な露光量となるように各波長での透過率を設計しなければならない。
このように、本発明の階調マスクは、露光装置によらずに適用することができる点においても、有利である。
【0026】
また、本発明の階調マスクは、透明基板と、遮光膜と、半透明膜とが順不同に積層されたものである。例えば図1に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層された階調マスク1を作製する場合には、透明基板上に半透明膜を成膜し、レーザ光などで半透明膜のパターン描画を行い、この描画時に遮光膜のパターニング時に位置合せに使用するアライメントマークを複数個描画配置することができる。
一般に、金属は反射率が比較的高く、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などは反射率が比較的低い。このため、半透明膜が金属膜である場合には、アライメントマークの検出が容易であるという利点を有する。すなわち、2回目のマスクパターン製版において位置合わせが容易となる。
以下、本発明の階調マスクの各構成について説明する。
【0027】
1.半透明膜
本発明に用いられる半透明膜は、金属膜であり、透過率調整機能を有するものである。
金属膜としては、透過率調整機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばクロム、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素、ニッケル等の膜が挙げられる。これらの金属膜は、透過率調整機能を有していれば、微量の酸素や窒素等を含んでいてもよい。
半透明膜および遮光膜を同一エッチング設備、工程でパターニングし得るという利点から、半透明膜は、遮光膜と同系の材料、すなわち同種の金属を含む材料からなる膜であることが好ましい。後述するように遮光膜がクロム系膜であることが好ましいことから、半透明膜はクロム膜であることが好ましい。クロム膜は、機械的強度に優れており、さらには退光性がなく安定しているため、本発明の階調マスクは長時間の使用に耐えうるものとなるという利点を有する。
このクロム膜は、上述したように微量の酸素や窒素等を含んでいてもよく、この場合には、膜中のクロム含有量が80%以上であることが好ましく、特に95%以上であることが好ましい。後述する好適な透過率特性を満足する半透明膜とすることができるからである。
【0028】
また、金属膜として、モリブデンシリサイド膜、タンタル膜も好ましく用いられる。このタンタル膜は、上記のクロム膜と同様に、微量の酸素や窒素を含んでいてもよい。
【0029】
本発明における半透明膜は、紫外光領域から可視光領域において透過率が一定の範囲内であることが好ましい。具体的には、半透明膜の波長300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が7%以下であることが好ましく、特に5%以下であることが好ましい。例えば露光装置に高圧水銀ランプを用いた場合、発光スペクトルの端部がおおよそ300nmであり、I線の波長が365nm、H線の波長が405nm、G線の波長が436nmであることから、各波長を含む300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が上記範囲であれば、露光光の長波長域(350nm〜450nm程度)も短波長域(300nm〜350nm程度)もほぼ一定の透過率で半透明膜を透過するので、上述した理由からパターンの形成に有利であり、またレジストの膜厚制御が容易となる。一方、300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が上記範囲を超えると、露光波長域全体において透過率が一定の範囲にならない場合があり、レジストの膜厚制御が困難となるおそれがある。
【0030】
なお、透過率分布は、300nm〜450nmにおける最大透過率(Tmax)と最小透過率(Tmin)との差を、300nm〜450nmにおける平均透過率(Tav)を2倍した値で割った値に、100を乗じた値である。(透過率分布=(Tmax−Tmin)/(2Tav)×100)
また、透過率の測定方法としては、階調マスクに使用する透明基板の透過率をリファレンス(100%)として、半透明膜の透過率を測定する方法を採用することができる。装置としては、紫外・可視分光光度計(例えば日立U-4000等)、またはフォトダイオードアレイを検出器としている装置(例えば大塚電子MCPD等)を用いることができる。上記の最大透過率および最小透過率は、300nm〜450nmにおける透過率のうち最大値および最小値であり、上記の平均透過率は、300nm〜450nmにおける透過率を平均した値である。
【0031】
ここで、露光装置として一般に広く使用されているのは水銀ランプであり、水銀ランプの発光スペクトルではおおよそ300nm〜450nmの範囲内に主要なピークが存在することから、本発明においては300nm〜450nmの範囲内における透過率分布が所定の範囲であることが好ましいとした。
【0032】
また、半透明膜の波長250nm〜600nmにおける透過率分布は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。一般に、液晶表示装置などの表示装置の製造工程において、パターン形成での露光条件として露光波長域を250nm〜600nmの範囲内で設定することが多いため、250nm〜600nmにおける透過率分布が上記範囲であれば、広い波長域を有効に利用することができ、パターンの形成に有利となり、またレジストの膜厚制御が容易となるからである。
なお、透過率分布の算出方法については、上述した通りである。
【0033】
さらに、半透明膜の波長300nmでの透過率は、半透明膜の膜厚および階調マスクの用途によって異なるものではあるが、10%〜70%の範囲内であることが好ましい。上述したように、例えば露光装置に高圧水銀ランプを用いた場合、発光スペクトルの端部がおおよそ300nmであることから、波長300nmでの透過率が上記範囲であれば、レジストの硬化反応に短波長域の光をより確実に利用することができるからである。
中でも、本発明の階調マスクを利用して、例えば高さの異なるスペーサを形成する場合において、各パターンの高さの差を3μm以上とする場合は、300nmでの透過率が10%〜30%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10%〜20%の範囲内である。また、各パターンの高さの差を3μm以下とする場合には、300nmでの透過率が30%〜70%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは30%〜50%の範囲内である。
なお、透過率の測定方法については、上述した通りである。
【0034】
また、半透明膜の波長250nm〜600nmにおける平均透過率は、10%〜60%の範囲内であることが好ましい。平均透過率が上記範囲未満では、本発明の階調マスクを用いたパターン形成において、半透明領域と遮光領域との透過率の差が出にくくなる場合があり、また平均透過率が上記範囲を超えると、半透明領域と透過領域との透過率の差が出にくくなる場合があるからである。
【0035】
半透明膜は、単層であってもよく、複数の層で構成されていてもよい。半透明膜が複数の層で構成されている場合は、少なくとも一つの層が上述した透過率特性を有していることが好ましい。また、他の層は上述した透過率特性を有していてもよく、上述した透過率特性とは異なる透過率特性を有していてもよい。この場合、多階調の階調マスクを得ることができる。
【0036】
半透明膜の膜厚としては、上述した透過率特性を満たす膜厚であることが好ましく、クロム膜の場合は5nm〜20nm程度とすることができる。半透明膜の透過率は膜厚により変わるので、膜厚を制御することで所望の透過率とすることができる。また、半透明膜が酸素や窒素等を含む場合は、その透過率は組成により変わるので、膜厚と組成とを同時にコントロールすることで所望の透過率を実現できる。
【0037】
半透明膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。
【0038】
2.遮光膜
本発明に用いられる遮光膜は、実質的に露光光を透過しないものであり、露光波長における平均透過率が0.1%以下であることが好ましい。このような遮光膜としては、一般にフォトマスクに用いられる遮光膜を用いることができ、例えばクロム、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素等の金属の膜、あるいは、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素等の金属の酸化物や窒化物などの膜が挙げられる。中でも、遮光膜としては、クロム、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム等のクロム系膜が好ましく用いられ、特にクロム膜が好適である。クロム系膜は、最も使用実績があり、コスト、品質の点で好ましいからである。また、クロム系膜は、単層であってもよく、2層以上が積層されたものであってもよい。
【0039】
また、遮光膜は、低反射機能を有していてもよい。低反射機能により、露光光の乱反射を防止することができるので、より鮮明なパターンを形成することができる。遮光膜に低反射機能を付加するには、例えば遮光膜表面に露光光の反射を防止する酸化クロム等のクロム化合物を含有させればよい。この場合、遮光膜が、表面に向かって徐々に含有成分が変化する傾斜界面により形成されたものであってもよい。
【0040】
遮光膜の膜厚としては、特に限定されるものではなく、例えばクロム膜の場合には50nm〜150nm程度とすることができる。
【0041】
遮光膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。
【0042】
3.透明基板
本発明に用いられる透明基板は、一般にフォトマスクに用いられる基板を使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等の光学研磨された低膨張ガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。中でも、石英ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れている。
【0043】
4.遮光領域、半透明領域、および透過領域
本発明における遮光領域は、透明基板上に遮光膜が設けられた領域である。遮光領域では、透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されていればよく、透明基板上に遮光膜および半透明膜が形成されていてもよい。
【0044】
また、本発明における半透明領域は、透明基板上に半透明膜のみが設けられた領域である。半透明領域では、透明基板上に半透明膜のみが形成されており、遮光膜は形成されていない。半透明膜が複数の層で構成されている場合は、階調マスクが、異なる透過率特性をもつ複数種類の半透明領域を有していてもよい。この場合、多階調マスクとすることができる。
【0045】
さらに、本発明における透過領域は、透明基板上に遮光膜および半透明膜のいずれも設けられていない領域である。すなわち、透過領域は、透明基板のみを有する。
【0046】
遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状としては、特に限定されるものではなく、本発明の階調マスクの用途に応じて適宜調整される。例えば図4に示すように階調マスク1が、屈曲部を有する線形状の半透明領域12と円形状の透過領域13とを有し、その他の領域が遮光領域11である場合や、図5に示すように階調マスク1が、L字形状の遮光領域11と円形状の透過領域13とを有し、その他の領域が半透明領域12である場合など、遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状は、種々の形状とすることができる。
【0047】
本発明の階調マスクは、透明基板と、遮光膜と、半透明膜とが順不同に積層されたものである。図4に例示する階調マスクの層構成としては、例えば図6(a)に示すように透明基板2、遮光膜4、半透明膜3の順に積層されていてもよく、図6(b)に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層されていてもよく、図6(c)に示すように半透明膜3、透明基板2、遮光膜4の順に積層されていてもよい。なお、図6(a)〜(c)は、図4のA−A線断面図である。この場合、遮光領域11では透明基板上2に遮光膜4および半透明膜3が設けられ、半透明領域12では透明基板2上に半透明膜3が設けられており、透過領域13は透明基板2のみを有する。このような階調マスクを用いてパターンを形成した場合には、例えば図7に示すように高さおよび形状の異なるスペーサ18aおよび配向制御用突起18bを同時に形成することができる。
【0048】
また、図5に例示する階調マスクの層構成としても、例えば図8(a)に示すように透明基板2、遮光膜4、半透明膜3の順に積層されていてもよく、図8(b)に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層されていてもよく、図8(c)に示すように半透明膜3、透明基板2、遮光膜4の順に積層されていてもよい。なお、図8(a)〜(c)は、図5のB−B線断面図である。この場合、遮光領域11では透明基板上2に遮光膜4および半透明膜3が設けられ、半透明領域12では透明基板2上に半透明膜3が設けられており、透過領域13は透明基板2のみを有する。このような階調マスクを用いてパターンを形成した場合には、例えば図9に示すようにスペーサ19aおよびオーバーコート層19bを同時に形成することができる。
【0049】
本発明における半透明膜および遮光膜は、上記の遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状に応じて、透明基板上にパターン状に形成される。
【0050】
5.低反射層
本発明においては、遮光膜上に低反射層が形成されていてもよい。低反射層を設けることにより、本発明の階調マスクの使用時において、ハレーションを防止することができる。
低反射層としては、例えば酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム等の膜が挙げられる。遮光膜がクロム系膜である場合、これらの膜は遮光膜のエッチング時に同時にエッチングすることが可能である。
例えば図6(a)に示すように透明基板2、遮光膜4、半透明膜3の順に積層されている場合、低反射層は遮光膜と半透明膜の間に形成される。また、図6(b)に示すように透明基板2、半透明膜3、遮光膜4の順に積層されている場合、および図6(c)に示すように半透明膜3、透明基板2、遮光膜4の順に積層されている場合、低反射層は遮光膜上に形成される。
【0051】
6.階調マスク
本発明の階調マスクは、透過率が3段階以上に段階的に変化するものであり、2階調のマスクに限定されるものではなく、後述するようにパターニングを繰り返すことにより、2階調以上の多階調のマスクとすることが可能である。
【0052】
本発明の階調マスクは、リソグラフィー法などのように、露光工程を経て製造される様々な製品の製造に用いることができる。中でも、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等の表示装置の製造、特に大型の表示装置の製造に用いることにより、本発明の効果を最大限に利用することができる。
本発明の階調マスクを用いた一括露光により2種以上のパターンを同時に形成する用途として、具体的には液晶表示装置におけるスペーサおよび配向制御用突起の同時形成、液晶表示装置における高さの異なるスペーサの同時形成、液晶表示装置におけるスペーサおよびオーバーコート層の同時形成、液晶表示装置用カラーフィルタにおけるスペーサおよび配向制御用突起の同時形成、液晶表示装置カラーフィルタにおける高さの異なるスペーサの同時形成、液晶表示装置カラーフィルタにおけるスペーサおよびオーバーコート層の同時形成、表示装置における半導体素子作製時の厚みの異なるレジストの形成などを挙げることができる。
【0053】
本発明の階調マスクの大きさとしては、用途に応じて適宜調整されるが、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の製造に用いられる場合には、300mm×400mm〜1,600mm×1,800mm程度とすることができる。
【0054】
7.階調マスクの製造方法
次に、本発明の階調マスクの製造方法について説明する。本発明の階調マスクの製造方法としては、透明基板上に半透明膜および遮光膜をパターン状に形成することにより、所望の位置に遮光領域、半透明領域、および透過領域を配置することができる方法であれば特に限定されるものではないが、2つの好ましい態様を挙げることができる。以下、各態様について説明する。
【0055】
(1)第1の態様
本発明の階調マスクの製造方法の第1の態様は、透明基板上に遮光膜を成膜したマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、遮光膜の一部をパターニングする第1パターニング工程と、パターニングされた遮光膜が形成された透明基板の全面に半透明膜を成膜する半透明膜成膜工程と、遮光膜および半透明膜をパターニングする第2パターニング工程とを有するものである。
【0056】
図10は、本態様の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
本態様の階調マスクを作製するには、まず透明基板2上に遮光膜4aを成膜したマスクブランク20を準備する(図10(a)、マスクブランク準備工程)。
次に、遮光膜4a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第1レジスト膜21aを形成する(図10(b))。次に、遮光膜をパターン露光する。この際、半透明領域12と遮光領域11とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、半透明領域12は第1レジスト膜21aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13は第1レジスト膜21aが残存する露光量で露光する。続いて、現像することにより、第1レジストパターン21bを形成する(図10(c))。次に、第1レジストパターン21bより露出している遮光膜4aをエッチングして、遮光膜中間パターン4bを形成し(図10(d))、残存している第1レジストパターン21bを除去する(図10(e))。この遮光膜中間パターン4bでは、後述する第2パターニング工程にて半透明膜と同じ箇所をエッチングする部分はエッチングされずに残存している。なお、図10(b)〜(e)は第1パターニング工程である。
次に、遮光膜中間パターン4bが形成された透明基板2の全面に、半透明膜3aを成膜する(図10(f)、半透明膜成膜工程)。
次に、半透明膜3a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第2レジスト膜22aを形成する(図10(g))。続いて、遮光膜および半透明膜のパターン露光を行う。この際、遮光領域11と透過領域13とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、透過領域13は第2レジスト膜22aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12は第2レジスト膜22aが残存する露光量で露光する。次に、現像することにより、第2レジストパターン22bを形成する(図10(h))。次に、第2レジストパターン22bより露出している半透明膜3aをエッチングし、続いて、下層の遮光膜中間パターン4bが露出している箇所をさらにエッチングすることにより、半透明膜パターン3bおよび遮光膜パターン4cを形成する(図10(i))。次いで、残存している第2レジストパターン22bを除去し(図10(j))、階調マスクを得ることができる。なお、図10(g)〜(j)は第2パターニング工程である。
【0057】
本態様においては、第1パターニング工程にて遮光膜の一部のみをパターニングし、第2パターニング工程にて遮光膜および半透明膜をパターニングするので、後述する第2の態様のように半透明膜上に形成された遮光膜のみを選択的にエッチングする必要がない。このため、遮光膜および半透明膜に用いる材料が限定されないという利点を有する。例えば、遮光膜および半透明膜に同系の材料、具体的にはクロム膜を用いることができる。また、エッチング選択性が要求されないので、複数のエッチング技術(複数の装置・エッチャントなど)を用いる必要がなく、マスク製造コストを削減することができる。さらに、遮光膜および半透明膜がクロム膜である場合には、従来のバイナリマスクと同様のプロセスで階調マスクを製造することができ、複雑な工程を要しないという利点も有する。
【0058】
また、本態様の階調マスクの製造方法は、上述したように第2パターニング工程において遮光膜および半透明膜のパターニングを一括して行うことから、遮光膜および半透明膜が同系の材料からなる膜である場合に好適である。中でも、遮光膜および半透明膜が金属膜である場合がより好ましく、特にいずれの膜もクロム膜である場合が好ましい。
以下、本態様の階調マスクの製造方法における各工程について説明する。
【0059】
(i)マスクブランク準備工程
本態様におけるマスクブランク準備工程は、透明基板上に遮光膜を成膜したマスクブランクを準備する工程である。
透明基板上に遮光膜としてクロム膜が形成されたマスクブランクは、一般的に使用されているマスクブランクであり、容易に入手可能である。
【0060】
(ii)第1パターニング工程
本態様における第1パターニング工程は、遮光膜の一部をパターニングする工程である。遮光膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、マスクブランクの遮光膜上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第1レジスト膜を形成する。
【0061】
第1レジスト膜の材料としては、ポジ型レジスト材料(光照射部分が溶解するもの)およびネガ型レジスト材料(光照射部分が固まるもの)のいずれも用いることができる。ポジ型レジスト材料としては特に限定されるものではなく、例えばノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型レジスト等が挙げられる。また、ネガ型レジスト材料としては特に限定されるものではなく、例えば架橋型樹脂をベースとした化学増幅型レジスト、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型レジスト等が挙げられる。
【0062】
遮光膜のパターン露光では、半透明領域と遮光領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、各領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、半透明領域は第1レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および透過領域は第1レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0063】
例えば図10(c)は、ポジ型レジスト材料を用いて第1レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、半透明領域12では第1レジスト膜21aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13では第1レジスト膜21aを露光しない。
また、図示しないが、第1レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、半透明領域では露光せず、遮光領域および透過領域で第1レジスト膜が感光される露光量で露光する。
なお、遮光膜および半透明膜の同じ箇所を一括してエッチングするためのパターン露光は、第2パターニング工程で行う。
【0064】
各領域により異なる露光量で露光する方法としては、エネルギー線の露光量を制御する方法や、一定の露光量で重ねて露光する方法等がある。描画方法としては、特に限定されるものではなく、通常のフォトマスク描画に用いられる電子線描画法、もしくはレーザー描画法等を用いることができる。電子線描画法を用いる場合は、露光量を容易に変換することができる。レーザー描画法を用いる場合は、露光量変換に時間がかかるため、露光量を変えずに重ねて露光してもよい。また、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置の大型化、製造時の多面付化に伴い、階調マスクも大型化しているため、表示装置用の階調マスクの作製には主にレーザー描画法が適用される。
【0065】
パターン露光後の現像は、一般的な現像方法に従って行うことができる。
【0066】
遮光膜のエッチング方法としては、例えば硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液等によるウェットエッチング、塩素系ガス等によるドライエッチングのいずれも適用することができる。中でも、ウェットエッチングが好ましい。ウェットエッチングはコストや生産効率の点で有利である。また、ウェットエッチングは化学反応で溶解が進行するため、エッチャントを選択することによりエッチング速度を容易に制御できる点からも好ましい。
遮光膜がクロム系膜である場合には、硝酸セリウム系ウェットエッチャントが好適に用いられる。
また、遮光膜が低反射機能を有する場合は、第1レジスト膜を露光するための露光光の散乱によって、本来露光されるべき領域でない領域が露光されてしまうことを防止することができる。
【0067】
第1レジスト膜の除去方法としては特に限定されるものではなく、通常、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う。
【0068】
本態様においては、第1パターニング工程後に、遮光膜パターンの検査を行う検査工程や、必要に応じて欠陥修正をする修正工程を行ってもよい。遮光膜がクロム膜である場合には、一般的なフォトマスクの検査技術、修正技術を適用することができる。遮光膜パターンの寸法検査、遮光膜パターンの欠陥検査の検査工程や、修正工程を行うことにより、次の工程に欠陥を有する基板が渡るのを防ぎ、良品率が高まり、マスクコスト低減に寄与する。
【0069】
(iii)半透明膜成膜工程
本態様における半透明膜成膜工程は、パターニングされた遮光膜が形成された透明基板の全面に半透明膜を成膜する工程である。なお、半透明膜の成膜方法については、上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
(iv)第2パターニング工程
本態様における第2パターニング工程は、遮光膜および半透明膜をパターニングする工程である。遮光膜および半透明膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、遮光膜および半透明膜が形成された透明基板上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第2レジスト膜を形成する。
なお、第2レジスト膜の材料については、上記第1パターニング工程の項に記載した第1レジスト膜の材料と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
半透明膜および遮光膜のパターン露光では、遮光領域と透過領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、各領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、透過領域は第2レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および半透明領域は第2レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0072】
例えば図10(h)は、ポジ型レジスト材料を用いて第2レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、透過領域13では第2レジスト膜22aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12では第2レジスト膜22aを露光しない。
また、図示しないが、第2レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、透過領域では露光せず、遮光領域および半透明領域で第2レジスト膜が感光される露光量で露光する。
【0073】
なお、パターン露光のその他の点、および現像については、上記第1パターニング工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明において、半透明膜がクロム膜である場合、膜厚は例えば5nm〜20nm程度であり、比較的薄い。このため、半透明膜のエッチング時間を短縮することができる。また、半透明膜および遮光膜のエッチング速度にほとんど差がないので、半透明膜パターンのエッジのビリツキがない(エッジがシャープである)という利点を有する。
【0074】
また、本工程においては、遮光膜および半透明膜の同じ箇所を一括してエッチングする。透過領域では遮光膜と半透明膜とが一括してエッチングされるので、遮光膜パターンの端部および半透明膜パターンの端部の位置が略同一となる。なお、遮光膜および半透明膜のエッチング方法については、上記第1パターニング工程の項に記載した遮光膜のエッチング方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
第2レジスト膜の除去方法としては特に限定されるものではなく、通常、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う。
【0076】
本態様においては、第2パターニング工程後に、遮光パターンおよび半透明膜パターンの検査を行う検査工程や、必要に応じて欠陥修正をする修正工程を行ってもよい。遮光パターンおよび半透明膜パターンの寸法検査、遮光パターンおよび半透明膜パターンの欠陥検査の検査工程や、修正工程を行うことにより、良品率が高まり、マスクコスト低減に寄与する。
【0077】
(2)第2の態様
本発明の階調マスクの製造方法の第2の態様は、透明基板上に半透明膜および遮光膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、半透明膜および遮光膜の一部をパターニングする第1パターニング工程と、遮光膜のみをパターニングする第2パターニング工程とを有するものである。
【0078】
図11は、本態様の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
本態様の階調マスクを作製するには、まず透明基板2上に半透明膜3aおよび遮光膜4aがこの順に積層されたマスクブランク20を準備する(図11(a)、マスクブランク準備工程)。
次に、遮光膜4a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第1レジスト膜23aを形成する(図11(b))。次に、半透明膜および遮光膜のパターン露光を行う。この際、遮光領域11と透過領域13とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、透過領域13は第1レジスト膜23aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12は第1レジスト膜23aが残存する露光量で露光する。続いて、現像することにより、第1レジストパターン23bを形成する(図11(c))。次に、第1レジストパターン23bより露出している透明膜3aおよび遮光膜4aをエッチングして、半透明膜パターン3bおよび遮光膜中間パターン4bを形成し(図11(d))、残存している第1レジストパターン23bを除去する(図11(e))。この遮光膜中間パターン4bでは、後述する第2パターニング工程にて遮光膜のみをエッチングする部分はエッチングされずに残存している。なお、図11(b)〜(e)は第1パターニング工程である。
次に、半透明膜パターン3bおよび遮光膜中間パターン4bが形成された透明基板2上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第2レジスト膜24aを形成する(図11(f))。続いて、遮光膜のパターン露光を行う。この際、半透明領域12と遮光領域11とが接する境界、および半透明領域12と透過領域13とが接する境界を形成するように、半透明領域12は第2レジスト膜24aが除去される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13は第2レジスト膜24aが残存する露光量で露光する。次に、現像することにより、第2レジストパターン24bを形成する(図11(g))。次に、第2レジストパターン24bより露出している遮光膜中間パターン4bをエッチングして、遮光膜パターン4cを形成し、(図11(h))、残存している第2レジストパターン24bを除去する(図11(i))。なお、図11(f)〜(i)は第2パターニング工程である。このようにして階調マスクを得ることができる。
【0079】
本態様においては、上記第1の態様のように、具体的には第1パターニング工程および第2パターニング工程の間に半透明膜成膜工程を行うというように、階調マスクの製造工程の途中で半透明膜成膜工程を行う必要がない。このため、半透明膜の成膜時のリスク(欠陥や汚れなど)を低減することができる。また、TAT(Turn Around Time)の短縮化が可能である。
【0080】
また、本態様の階調マスクの製造方法は、上述したように第1パターニング工程において遮光膜および半透明膜のパターニングを一括して行うことから、第1の態様と同様に、遮光膜および半透明膜が同系の材料からなる膜である場合に好適である。中でも、第2パターニング工程においてエッチング選択性が要求されることから、遮光膜および半透明膜が、組成が大きく異なる膜である場合がより好ましい。
以下、本態様の階調マスクの製造方法における各工程について説明する。
【0081】
(i)マスクブランク準備工程
本態様におけるマスクブランク準備工程は、透明基板上に半透明膜および遮光膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備する工程である。なお、透明基板、半透明膜および遮光膜については上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0082】
(ii)第1パターニング工程
本態様における第1パターニング工程は、半透明膜および遮光膜の一部をパターニングする工程である。半透明膜および遮光膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、マスクブランクの遮光膜上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第1レジスト膜を形成する。
【0083】
半透明膜および遮光膜のパターン露光では、遮光領域と透過領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、透過領域は第1レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および半透明領域は第1レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0084】
例えば図11(c)は、ポジ型レジスト材料を用いて第1レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、透過領域13では第1レジスト膜23aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および半透明領域12では第1レジスト膜23aを露光しない。
また、図示しないが、第1レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、透過領域では露光せず、遮光領域および半透明領域で第1レジスト膜が感光される露光量で露光する。
なお、遮光膜のみをエッチングするためのパターン露光は、第2パターニング工程で行う。
【0085】
なお、第1レジスト膜の材料、半透明膜および遮光膜のパターン露光のその他の点、現像、半透明膜および遮光膜のエッチング方法、第1レジスト膜の除去方法、半透明膜パターンおよび遮光膜パターンの検査工程、ならびに半透明膜パターンおよび遮光膜パターンの修正工程については、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
(iii)第2パターニング工程
本態様における第2パターニング工程は、遮光膜のみをパターニングする工程である。遮光膜のパターニング方法としては特に限定されるものではなく、通常、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法を用いる場合、パターニングされた半透明膜および遮光膜の上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第2レジスト膜を形成する。
【0087】
遮光膜のパターン露光では、半透明領域と遮光領域とが接する境界、および半透明領域と透過領域とが接する境界を形成するように、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、半透明領域は第2レジスト膜が除去される露光量で露光し、遮光領域および透過領域は第2レジスト膜が残存する露光量で露光する。
【0088】
例えば図11(g)は、ポジ型レジスト材料を用いて第2レジスト膜を形成した場合の例であるが、この場合、半透明領域12では第2レジスト膜24aが感光される露光量で露光し、遮光領域11および透過領域13では第2レジスト膜24aを露光しない。
また、図示しないが、第2レジスト膜にネガ型レジスト材料を用いた場合は、半透明領域では露光せず、遮光領域および透過領域で第2レジスト膜が感光される露光量で露光する。
【0089】
なお、第2レジスト膜の材料、遮光膜のパターン露光、および現像については、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
現像後は、遮光膜のエッチングを行う。本態様においては、例えばクロム系膜が種類によってエッチング速度が異なることを利用し、半透明膜にクロム膜、遮光膜にクロム膜以外のクロム系膜を用いて、半透明膜のエッチング速度を遮光膜のエッチング速度より遅くすることができる。半透明膜および遮光膜のエッチング速度に差をつけることで、エッチングの選択性が向上し、上層の遮光膜をエッチングする際に下層の半透明膜も一緒にエッチングされることを防止することができる。このように、半透明膜および遮光膜のエッチング速度を変えることでエッチング選択性を向上させ、階調をより鮮明にすることができる。
また、半透明膜および遮光膜に異種の金属膜を用いて、半透明膜のエッチング速度を遮光膜のエッチング速度より遅くすることもできる。
【0091】
なお、遮光膜のエッチング方法、第2レジスト膜の除去方法、遮光膜パターンの検査工程、および遮光膜パターンの修正工程については、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0092】
B.表示装置製造用階調マスク
次に、本発明の表示装置製造用階調マスクについて説明する。
本発明の表示装置製造用階調マスクは、上述した階調マスクが表示装置の製造に用いられることを特徴とするものである。
【0093】
本発明の表示装置製造用階調マスクを用いて表示装置における部材を形成する方法について図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の表示装置製造用階調マスク1を用いて液晶表示装置における高さの異なるスペーサ16aおよび16bを同時に形成する例である。また、図4および図6に示す表示装置製造用階調マスク1を用いることにより、図7に例示するように液晶表示装置における高さおよび形状の異なるスペーサ18aおよび配向制御用突起18bを同時に形成することができる。さらに、図5および図8に示す表示装置製造用階調マスク1を用いることにより、図9に例示するように液晶表示装置におけるスペーサ19aおよびオーバーコート層19bを同時に形成することができる。このように、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いることにより、表示装置における高さや形状の異なる部材を同時に形成することが可能である。
【0094】
図12は、本発明の表示装置製造用階調マスク1を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を作製する例である。従来では、2層の半透明膜をパターニングする場合、例えばレジスト塗布、露光・現像・エッチング、露光・現像・エッチング、剥離というように2回の露光工程が必要であった。これに対し、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いた場合、基板31上に形成された2層の半透明膜32および33をパターニングするには、図12に例示するようにレジスト材料を塗布してレジスト膜34を形成し、光30を照射し(図12(a))、現像し(図12(b))、2層の半透明膜32および33をエッチングし(図12(c))、レジスト膜34をアッシングし(図12(d))、上層の半透明膜33のみをエッチングし(図12(e))、レジスト膜34を剥離すればよい(図12(f))。したがって、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いることにより、表示装置における半導体素子の製造工程を簡略化することが可能である。
【0095】
また、本発明の表示装置製造用階調マスクは上述した階調マスクを用いたものであり、露光光の長波長域だけでなく短波長域も硬化反応に利用するので、パターンの形成に有利である。
したがって、本発明の表示装置製造用階調マスクを用いることにより、表示装置の製造工程の簡略化および露光時間の短縮化が可能である。
【0096】
本発明の表示装置製造用階調マスクの大きさとしては、通常、300mm×400mm〜1,600mm×1,800mm程度とされる。
なお、表示装置製造用階調マスクのその他の点については、上記「A.階調マスク」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0098】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(階調マスクの作製)
光学研磨された390mm×610mmの合成石英基板上にクロム膜(遮光膜)が厚み100nmで成膜されている常用のマスクブランク上に、市販のフォトレジスト(東京応化工業社製 ip−3500)を厚み600nmで塗布し、120℃に加熱されたホットプレートで15分ベークした後、フォトマスク用レーザ描画装置(マイクロニック社製 LRS11000−TFT3)で、所望の遮光膜中間パターンを描画した。
次に、専用のデベロッパー(東京応化工業社製 NMD3)で現像し、遮光膜用レジストパターンを得た。
次に、レジストパターンをエッチング用マスクとし、遮光膜をエッチングし、さらに残ったレジストパターンを剥膜することで、所望の遮光膜中間パターンを得た。遮光膜のエッチングには、市販の硝酸セリウム系ウェットエッチャント(ザ・インクテック社製 MR−ES)を用いた。遮光膜のエッチング時間は、60秒であった。
【0099】
次いで、遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、クロム膜(半透明膜)を下記の条件でスパッタリング法にて成膜した。
<成膜条件>
・ガス流量比 Ar:N2=4:1
・パワー:1.3kW
・ガス圧:3.5mTorr
半透明膜の膜厚は10nmとした。半透明膜の分光スペクトルを図13に示す。
次に、半透明膜上に市販のフォトレジスト(東京応化製 ip−3500)を再度、厚み600nmで塗布し、120℃に加熱されたホットプレート上で15分ベークした。
続いて半透明膜パターンとなる像を再度、レーザ描画装置(マイクロニック社製 LRS11000−TFT3)で描画し、専用デベロッパー(東京応化社製 NMD3)で現像し、レジストパターンを得た。
次に、レジストパターンをマスクとして、市販の硝酸セリウム系ウェットエッチャント(ザ・インクテック社製 MR−ES)で半透明膜および遮光膜をエッチングし、半透明膜パターンおよび遮光膜パターンを得た。エッチングは半透明膜および遮光膜に対して行った。
最後に残ったレジストを剥膜し、パターン寸法検査、パターン欠陥検査などの検査工程を経て、必要に応じてパターン修正を行い、階調マスクを得た。
【0100】
(階調マスクを用いたパターンの形成)
大きさが100mm×100mm、厚みが0.7mmのガラス基板を準備し、このガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(JSR製 オプトマーNN850)をスピンコート法により塗布し、減圧乾燥後、100℃にて3分間プリベークした。その後、上記の階調マスクを介して下記条件にて露光した。
<露光条件>
・露光量:100mJ/cm2(I線換算)
・露光ギャップ:150μm
【0101】
次いで、水酸化カリウム水溶液を用いて現像し、その後、230℃、30分間の加熱処理を施し、凸形状の2種のパターンを形成した。
【0102】
[比較例1]
(階調マスクの作製)
下記のように半透明膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして階調マスクを作製した。
遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、酸化窒化炭化クロム膜(半透明膜)をスパッタリング法にて成膜した。酸化窒化炭化クロム膜の膜厚は35nmとした。この酸化窒化炭化クロム膜の分光スペクトルを図13に示す。
【0103】
(階調マスクを用いたパターンの形成)
実施例1と同様にして、凸形状の2種のパターンを形成した。
【0104】
[比較例2]
(階調マスクの作製)
下記のように半透明膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして階調マスクを作製した。
遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、高屈折率層(屈折率:2.5、厚み:29nm、TiO2膜)と低屈折率層(屈折率:1.5、厚み:48nmのSiO2膜)とを交互に計15層(1層目および15層目は高屈折率層)、スパッタリング法にて成膜した。これにより、波長330nm以下の短波長域をカットする半透明膜を得た。
【0105】
(階調マスクを用いたパターンの形成)
実施例1と同様にして、凸形状の2種のパターンを形成した。
【0106】
[評価]
実施例1、比較例1,2の階調マスクを用いて形成されたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡にて観察し、寸法を測定した。
【0107】
【表1】
【0108】
実施例1の階調マスクを露光プロセスに用いることにより、高さの異なるセル保持用カラムスペーサを所望通りの寸法にて形成することができた。
【符号の説明】
【0109】
1 … 階調マスク
2 … 透明基板
3 … 半透明膜
4 … 遮光膜
11 … 遮光領域
12 … 半透明領域
13 … 透過領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、前記透明基板上に前記遮光膜が設けられた遮光領域と、前記透明基板上に前記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、前記透明基板上に前記遮光膜および前記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、表示装置の製造に用いられる表示装置製造用階調マスクであって、
前記半透明膜が金属膜であり、
前記表示装置製造用階調マスクは、エッチングストッパー膜を有するものではないことを特徴とする表示装置製造用階調マスク。
【請求項2】
前記半透明膜および前記遮光膜がクロム膜であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置製造用階調マスク。
【請求項1】
透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、前記透明基板上に前記遮光膜が設けられた遮光領域と、前記透明基板上に前記半透明膜のみが設けられた半透明領域と、前記透明基板上に前記遮光膜および前記半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有し、表示装置の製造に用いられる表示装置製造用階調マスクであって、
前記半透明膜が金属膜であり、
前記表示装置製造用階調マスクは、エッチングストッパー膜を有するものではないことを特徴とする表示装置製造用階調マスク。
【請求項2】
前記半透明膜および前記遮光膜がクロム膜であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置製造用階調マスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−61670(P2013−61670A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262760(P2012−262760)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2005−376072(P2005−376072)の分割
【原出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2005−376072(P2005−376072)の分割
【原出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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