説明

隔壁形成用ガラスおよびプラズマディスプレイパネル

【課題】プラズマディスプレイパネル(PDP)およびPDP等の緻密な隔壁を形成でき、PbOおよびFのいずれも含有しないガラスの提供を目的とする。
【解決手段】モル%で、SiO 24〜50%、B 13〜23%、ZnO 10〜32%、LiO 3〜20%、NaO 1〜9%、Al 1〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜20%、Bi 0〜9%、からなり、[(B+ZnO)−Al]≧24%であり、ZrOを含有する場合その含有量は2%以下であり、かつ、PbOおよびFのいずれも含有しない隔壁形成用ガラス。Biを含有しない前記ガラス。軟化点が615℃以下である前記ガラス。これらガラスを用いて形成された隔壁を有するPDP。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成してプラズマディスプレイパネル(PDP)等の隔壁形成に用いられるガラスおよびPDPに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型の薄型平板型カラー表示装置としてPDPが注目されている。PDPは、二枚のガラス基板の間に隔壁(バリアリブ)で仕切られた多数のセル(微小放電空間)を形成し、各セル内表面に蛍光体を配し、このセル中に放電ガスを充填した構造となっている。前記セル内の電極間で放電を起させて放電ガスを励起し、その際に発生する紫外線によって基底状態にある蛍光体を発光させて画素を形成させる。このようなPDPは自己発光型のフラットディスプレイであり、軽量薄型、高視野角等の優れた特性を備えており、また大型化が可能なため最も将来性のある表示装置の一つである。
【0003】
この隔壁形成用材料にはガラス基板の変形を防止するためにたとえば615℃以下、600℃以下等の低い温度で焼成できるようなものであることが求められている。従来このような材料には、軟化点を低くする成分である酸化鉛(PbO)や酸化ビスマス(Bi)を多量含有するガラスが使用されている。
近年PbOおよびBiのいずれも含有しない、または、PbOを含有せずBiも多量には含有しない隔壁形成用ガラスが求められており、ZnO−B−SiO系ガラス(たとえば特許文献1参照。)やZnO−B−BaO系ガラス(たとえば特許文献2参照。)などが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−130926号公報
【特許文献2】特開平11−228178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2で提案されているガラスはいずれもFを含有しており、ガラス溶解時におけるF揮散が問題となるおそれがある。本発明はFを含有することなく先に述べたような課題を解決できる隔壁形成用ガラスの提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 24〜50%、B 13〜23%、ZnO 10〜32%、LiO 3〜20%、NaO 1〜9%、Al 1〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜20%、Bi 0〜9%、から本質的になり、[(B+ZnO)−Al]が24モル%以上であり、ZrOを含有する場合その含有量は2モル%以下であり、かつ、PbOおよびFのいずれも含有しない隔壁形成用ガラス(本発明の第1のガラス)を提供する。
【0007】
また、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 24〜50%、B 13〜32%、ZnO 15〜32%、LiO 3〜20%、NaO 1〜15%、Al 1〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜20%、Bi 0〜9%、から本質的になり、[(B+ZnO)−Al]が24モル%以上、(NaO−LiO)が4モル%以下であり、ZrOを含有する場合その含有量は2モル%以下であり、かつ、PbOおよびFのいずれも含有しない隔壁形成用ガラス(本発明の第2のガラス)を提供する。
【0008】
また、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 21〜50%、B 12〜35%、ZnO 15〜37%、LiO 1〜25%、NaO 0〜21%、Al 1〜25%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜20%、Bi 0〜9%、から本質的になり、(B+ZnO)が50モル%以下、[(B+ZnO)−Al]が24モル%以上であり、KOを含有する場合その含有量が5モル%以下であり、かつ、PbOおよびFのいずれも含有しない隔壁形成用ガラス(本発明の第3のガラス)を提供する。
また、前記隔壁形成用ガラスを用いて形成された隔壁を有するPDPを提供する。
【発明の効果】
【0009】
PbOおよびFのいずれも含有せず、かつBiを含有する場合でもその含有量が9モル%以下という少量である材料によってPDP等の緻密な隔壁を形成できる。
また、本発明の一態様ではPDPの製造時または使用時におけるHOガス発生を抑制でき、PDPの初期輝度を高くする、またはPDPの寿命を長くすることが可能になる。
また、本発明の好ましい態様においては台形の上端部が丸みを帯びているような断面形状を有する隔壁を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の隔壁形成用ガラス(以下、単に本発明のガラスという。)は、通常、粉砕、分級されてガラス粉末として使用される。当該ガラス粉末は通常、必要に応じてセラミックスフィラー、耐熱顔料等と混合され、さらに樹脂を有機溶剤に溶解させたビヒクルと混練してガラスペーストとされる。このガラスペーストは下地に塗布後サンドブラスト等によって所定のパターンの未焼成隔壁とされ、その後焼成されて隔壁となる。なお、前記樹脂としてはエチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等が、前記有機溶剤としてはα−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、酢酸イソペンチル等が例示される。
【0011】
本発明のガラスはPDP、VFD(蛍光表示管)等の隔壁形成に用いられる。
本発明のガラスをPDPの隔壁形成に用いる場合、前記下地はガラス基板であるが、通常はその上にアドレス用のデータ電極が形成され、そのアドレス電極の上には、誤放電防止のための絶縁被覆層である誘電体層が形成される。
前記未焼成隔壁に対して行われる焼成の最高温度は通常500〜600℃である。500℃未満では焼成後の隔壁に前記ビヒクル中の樹脂が残留し、PDP製造時にパネルを封着する際またはパネル放電が起こる際にこれら残留樹脂がガスとなって放出されるおそれがある。600℃超ではガラス基板が変形するおそれがある。
なお、このようにして形成された隔壁を有するPDPは本発明のPDPである。
【0012】
本発明のガラスの軟化点Tsは615℃以下であることが好ましい。615℃超では、焼成時のガラスの流動性が低下し、緻密な隔壁が得られないおそれがある。より好ましくは600℃以下、さらに好ましくは590℃以下である。
本発明のガラスの50〜350℃における平均線膨張係数αは65×10−7〜95×10−7/℃であることが好ましい。この範囲外では、その粉末をセラミックスフィラー等と混合して焼成して得られる隔壁(焼成体)の前記平均線膨張係数を好ましい範囲すなわち65×10−7〜85×10−7/℃とすることが困難になる。αは、より好ましくは75×10−7〜90×10−7/℃、特に好ましくは70×10−7〜80×10−7/℃である。なお、ガラス基板の前記平均線膨張係数は典型的には80×10−7〜90×10−7/℃である。
本発明のガラスの20℃、1MHzにおける比誘電率εは11以下であることが好ましい。11超ではPDPの消費電力が大きくなるおそれがある。より好ましくは10以下である。
【0013】
本発明のガラスについて以下のようにして測定した「焼成時HOガス発生量指標」wは4×10−10A以下であることが好ましい。4×10−10A超ではPDP製造時またはPDP使用時におけるHOガス発生が多くなりPDPの輝度等が不足するおそれがある。より好ましくは3.5×10−10A以下、特に好ましくは3×10−10A以下、最も好ましくは2.5×10−10A以下である。
【0014】
(wの測定方法)
ガラスを粉末化して質量平均粒径が1.5〜3.0μmの粉末とする。
この粉末30gとシリカフィラー(典型的には破砕状のもの)4gと、エチルセルロース(たとえばダウケミカル社製STD100)9.6gおよびアクリル樹脂(たとえば三菱レイヨン社製BR101)2.4gをテルピネオール(たとえば日本テルペン社製テルピネオールC)88gに80℃で2時間溶解させて得られたビヒクル16gとを乳鉢で攪拌後三本ロールを用いて混錬してガラスペーストとする。
次に、ガラス基板(たとえば旭硝子社製PD200)を用意し、このガラス基板上に厚み400μmのスペーサを用いて前記ガラスペーストをブレードコートし、120℃に90分間保持して乾燥後560℃に30分間保持する焼成を行って焼成体付きガラス基板を得る。
この焼成体付きガラス基板を1×10−7Paの高真空下において速度60℃/分で800℃まで昇温し、その昇温過程において発生するHOガス量をイオン化されたHO電流として四重極子型質量分析計(たとえばBALZERS社製QMG 421C)を用いて測定する。横軸に温度、縦軸にガラス100mg当りの前記電流Iをそれぞれプロットしたグラフを作成し、温度が300〜750℃の範囲におけるIの最小値Iminと、IがIminとなる温度以上750℃以下の範囲におけるIの最大値Imaxとを読み取り、Imax−Iminを算出してこれをwとする。
【0015】
本発明のガラスの粉末を用いて形成した隔壁の断面形状は概ね台形である。当該断面形状は台形または台形の上辺端部(上端部)が丸みを帯びているようなものであることが好ましい。一方、概ね台形状ではあるがその上辺が両端において中央より高くなり当該上辺と側辺が顕著な鋭角をなすようなものは好ましくない。
隔壁の断面形状は次のようにして観察する。
【0016】
(隔壁断面形状観察方法)
wの測定に用いたものと同じガラスペーストを用意する。
次に、大きさが100mm×100mmのガラス基板(たとえば旭硝子社製PD200)を用意し、このガラス基板上に厚み400μmのスペーサを用いて前記ガラスペーストをブレードコートし、120℃に90分間保持して乾燥し乾燥膜付きガラス基板を得る。
ドライフィルム(たとえば東京応化工業社製ドライフィルムBF704)を4cm×5cmに切断し、ロール温度110℃、ロール圧150kPa、基板搬送速度0.45m/分の条件で前記乾燥膜付きガラス基板を1回ラミネ−タに通す。
その後、110μm線幅のストライプパターンの露光マスクをセットして250mJ/cmで露光し、0.3%炭酸ナトリウム水溶液の現像液で現像し、50℃の乾燥機で15分間乾燥する。これをエルフォテック社製サンドブラスト装置(型式 ELP−1TR)を用いて、研磨剤供給エアー圧140kPa、圧送エアー圧160kPa、ローラ回転数35rpmの条件でブラスト後、1%NaOH溶液で剥離し、80℃の乾燥機で30分間乾燥する。
これを電気炉に入れ560℃に30分間保持して焼成し隔壁が形成されたガラス基板を作製し、その隔壁断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察する。
【0017】
本発明の第1および第2のガラスは焼結性を高めたい等の場合に好適な態様である。
【0018】
次に、本発明の第1のガラスの組成についてモル%を単に%と表示して説明する。
SiOはネットワークフォーマであり、必須である。24%未満ではTsが低くなりすぎ焼成した場合に隔壁としての形状保持が困難になる、またはαが大きくなりすぎる。好ましくは25%以上、より好ましくは27%以上、特に好ましくは30%以上である。50%超ではTsが高くなりすぎるおそれがある。好ましくは47%以下、典型的には45%以下である。
はガラスを安定化し、焼結性を高める成分であり、必須である。13%未満では焼結性が低下し、緻密な隔壁を得ることが困難になるおそれがある。好ましくは14%以上である。23%超では耐アルカリ性もしくは耐水性が低下する、または前記wが大きくなる。好ましくは21%以下である。
【0019】
ZnOは焼結性を高める成分であり、必須である。10%未満では焼結性が低下し、緻密な隔壁を得ることが困難になるおそれがある。好ましくは14%以上である。32%超では耐アルカリ性もしくは耐水性が低下する、失透しやすくなる、またはかえって焼結性が低下する。典型的には27%以下、より典型的には22%以下である。
およびZnOの合計は50%以下であることが好ましい。50%超ではwが大きくなるおそれがある。より好ましくは45%以下である。
【0020】
LiOはTsを低下させ焼結性を高める成分であり、必須である。3%未満では焼結性が低下する。好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上である。20%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは16%以下、より好ましくは14%以下である。
NaOはTsを低下させ焼結性を高める成分であり、必須である。1%未満では焼結性が低下する。好ましくは2%以上である。9%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある、または焼結性が低下する。好ましくは8%以下である。
焼結性をより高めたい等の場合、(NaO−LiO)は4%以下、すなわち、LiO含有量がNaO含有量以上であるかNaO含有量がLiO含有量より大きくかつ両者の差が4%以下であることが好ましい。
【0021】
Alはガラスを安定化させる、化学的耐久性を高くする、または前記αを低下させる等の効果を有し、必須である。1%未満では前記効果が小さい。好ましくは2%以上である。15%超ではTsが高くなり焼結性が低下する、またはガラスが不安定になる。好ましくは13%以下である。前記隔壁の断面形状を台形の上端部が丸みを帯びているようなものとしたい場合Alは5%超であることが好ましく、7%以上であることがより好ましい。
SiOおよびAlの含有量の合計SiO+Alは55%以下であることが好ましい。55%超ではTsが高くなる、またはガラスが不安定になるおそれがある。より好ましくは51%以下である。また、SiO+Alは好ましくは30%以上、より好ましくは33%以上である。
ガラスを安定化させる、または焼結性を高めるために[(B+ZnO)−Al]は24%以上とされる。
【0022】
(ZnO−Al)は4%以上であることが好ましい。4%未満では分相しやすくなるおそれがある。より好ましくは5%以上である。
【0023】
MgO、CaO、SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、Tsを低下させる、失透を抑制する、αを調整する、焼成時の結晶析出を抑制する等のために合計で20%まで含有してもよい。20%超では焼結性が低下するおそれがある。好ましくは16%以下である。Biを含有しない場合等においては前記合計は10%以下であることが好ましい。
【0024】
ZnOが15%未満であってMgOを含有する場合MgO含有量は好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。2%超ではガラスが分相しやすくなるおそれがある。ZnOが15%未満である場合MgOは含有しないことが特に好ましい。
Biを含有しない場合等においてMgO、CaO、SrOまたはBaOを含有する場合、当該含有される成分の含有量はそれぞれ8%以下であることが好ましい。
【0025】
Biは必須ではないが、焼結性を高くする等のために9%まで含有してもよい。9%超ではTsまたは前記εが高くなるおそれがある。Biを含有する場合その含有量は0.1%以上であることが好ましい。
Tsをより低くしたい場合、(LiO+NaO+Bi)は11%以上であることが好ましい、すなわち、Biを含有する場合はLiO、NaOおよびBiの含有量の合計が、Biを含有しない場合はLiOおよびNaOの含有量の合計がそれぞれ11%以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の第1のガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を含有してもよい。このように他の成分を含有する場合、それらの含有量の合計は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
そのような他の成分としては、たとえばTsもしくはαの調整、失透抑制等を目的とする成分として、SnO、ZrO、TiO、CeO、KO、CuOが挙げられる。さらに、CeO以外のLa等希土類酸化物、P、MnO、Fe、CoO、NiO、GeO、Y、MoO、Rh、AgO、In、TeO、WO、ReO、VおよびPdOが例示される。
【0027】
これらのうち、SnO、CeOおよびCuOのいずれか1種以上を含有する場合これらの含有量の合計は2%以下であることが好ましい。2%超では失透しやすくなる、またはTsが高くなりすぎる。
焼成して得られる隔壁の着色を抑制したい場合にはSnOを2%以下の範囲で含有してもよい。2%超ではTsが高くなりすぎるおそれがある。好ましくは0.9%以下である。
【0028】
耐水性をより向上させたい場合にはZrOまたはTiOを合計で7%以下の範囲で含有してもよい。7%超ではTsが高くなりすぎるおそれがある。
また、ZrOを含有する場合その含有量は2%以下でなければならない。2%超ではガラスが不安定になる。
Oを含有する場合その含有量は5%以下とすることが好ましい。5%超ではwが大きくなるおそれがある。前記含有量はより好ましくは3.5%以下、特に好ましくは1%未満である。
【0029】
本発明の第2のガラスは本発明の第1のガラスと、Bの含有量の上限が異なる点と、ZnOの含有量の下限が異なる点と、NaOの含有量の上限が異なる点と、(NaO−LiO)が4%以下とされている点とにおいて相違する。その他の両ガラスの共通する点の説明は本発明の第1のガラスに対するものと同じであるので省略し、以下では前記相違する点についてのみ説明する。
【0030】
はガラスを安定化し、焼結性を高める成分であり、必須である。32%超では耐アルカリ性もしくは耐水性が低下する、または前記wが大きくなる。好ましくは23%以下、より好ましくは21%以下である。
ZnOは焼結性または溶解性を高める成分であり、必須である。15%未満では焼結性が低下し、緻密な隔壁を得ることが困難になるおそれがある、または溶解性が低下するおそれがある。また、ZnOが15%未満ではMgOをたとえば2%超または1%超含有させる場合において分相しやすくなる。
【0031】
NaOはTsを低下させ焼結性を高める成分であり、必須である。15%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある、または焼結性が低下する。好ましくは13%以下、より好ましくは9%以下、特に好ましくは8%以下である。
(NaO−LiO)が4%超では焼結性が低下する。好ましくは3%以下である。
【0032】
本発明の第3のガラスはwを小さくしたい等の場合に好適な態様である。
本発明の第3のガラスは本発明の第1のガラスと、SiOの含有量の下限、Bの含有量の上限下限、ZnOの含有量の上限下限、LiOの含有量の上限下限、NaOの含有量の上限下限、およびAlの含有量の上限が異なる点と、(B+ZnO)が50%以下とされている点と、KOを含有する場合その含有量が5%以下とされている点と、ZrOを含有する場合におけるその含有量上限が明示的には設けられていない点とにおいて相違する。その他の両ガラスの共通する点の説明は本発明の第1のガラスに対するものと同じであるので省略し、以下では前記相違する点についてのみ説明する。
【0033】
SiOはネットワークフォーマであり、必須である。21%未満ではTsが低くなりすぎ焼成した場合に隔壁としての形状保持が困難になる、またはαが大きくなりすぎる。好ましくは24%以上、より好ましくは27%以上、特に好ましくは30%以上である。
はガラスを安定化し、焼結性を高める成分であり、必須である。12%未満では焼結性が低下し、緻密な隔壁を得ることが困難になるおそれがある。好ましくは13%以上である。35%超では耐アルカリ性もしくは耐水性が低下する、またはwが大きくなる。好ましくは32%以下である。
【0034】
ZnOは焼結性または溶解性を高める成分であり、必須である。15%未満では焼結性が低下し、緻密な隔壁を得ることが困難になるおそれがある、または溶解性が低下するおそれがある。ZnOが15%未満ではMgOをたとえば2%超または1%超含有させる場合において分相しやすくなる。37%超では耐アルカリ性もしくは耐水性が低下する、失透しやすくなる、またはかえって焼結性が低下する。典型的には32%以下である。
およびZnOの合計は50%以下である。50%超ではwが大きくなるおそれがある。好ましくは45%以下である。
【0035】
LiOはTsを低下させ焼結性を高める成分であり、必須である。1%未満では焼結性が低下する。好ましくは3%以上である。25%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは20%以下である。
NaOは必須ではないが、Tsを低下させ焼結性を高める等のために21%まで含有してもよい。21%超ではαが大きくなりすぎる、または焼結性が低下する。好ましくは15%以下である。NaOを含有する場合その含有量は好ましくは1%以上である。
Alはガラスを安定化させる、化学的耐久性を高くする、または前記αを低下させる等の効果を有し、必須である。25%超ではTsが高くなり焼結性が低下する、またはガラスが不安定になる。好ましくは15%以下である。
【0036】
本発明の第3のガラスはKOを含有する場合その含有量は5%以下である。5%超ではwが大きくなるおそれがある。前記含有量は好ましくは3.5%以下、より好ましくは1%未満である。
また、本発明の第3のガラスはZrOを含有してもよいが、その場合における含有量は2%以下であることが好ましい。2%超ではガラスが不安定になるおそれがある。
【0037】
Tsまたはεを低下させたい場合、本発明のガラスはたとえば、SiO 30〜50%、B 13〜21%、ZnO 14〜32%、LiO 6〜16%、NaO 2〜8%、Al 1〜5%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜10%であって、かつBiを含有しないことが好ましい。
【0038】
台形の上端部が丸みを帯びているような断面形状を有する隔壁を得たい等の場合、本発明のガラスはたとえば、SiO 25〜40%、ZnO 14〜32%、LiO+NaO+Bi 11〜22%、Al 5超〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜10%、SiO+Al 25〜55%であることが好ましい。
あるいは、SiO 25〜40%、B 15〜23%、ZnO 14〜32%、LiO 6〜14%、NaO 3〜13%、Al 5〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜10%、SiO+Al 30〜55%、LiO+NaO 11〜22%、(NaO−LiO)≦4%、[(B+ZnO)−Al]≧24%、であって、Biを含有せず、またSnOを含有する場合その含有量が2%以下であるものも好ましい態様として例示される。
電気絶縁性を高くしたい場合、本発明のガラスはたとえば、SiO 24〜45%、LiO+NaO 4〜15%、Bi 0.1〜9%、SiO+Al 25〜55%であることが好ましい。
【0039】
本発明のガラスは先に述べたようにPDP等の隔壁形成基板(背面基板)の製造に用いられる。たとえば、アドレス用のデータ電極、その上に絶縁被覆層である誘電体層等が形成されているガラス基板上に、本発明のガラスの粉末を含有するガラスペーストを塗布後サンドブラスト等によって所定のパターンの未焼成隔壁を形成し、その後焼成してこの未焼成隔壁を隔壁とし隔壁形成基板を得る。
【実施例】
【0040】
表のSiOからBaOまで、SiOからSnOまで、またはSiOからCeOまでの欄にモル%表示で示した組成となるように原料を調合、混合した。これを、白金坩堝を用いて1250〜1350℃に加熱し60分間溶解した。次いで、溶融ガラスをステンレス鋼製ローラーに流し込んでフレーク化した。得られたフレーク状のガラスをアルミナ製ボールミルで20時間乾式粉砕して、平均粒径2〜4μmのガラス粉末を得た。なお、表の「B+Zn−Al」の欄に[(B+ZnO)−Al]を示す。
例1〜10、16〜22、28〜41は本発明の第1、第2および第3のガラス、例12〜15は本発明の第3のガラス、例11、23〜27は比較例である。なお、例26、27はガラス化しなかった。
【0041】
得られたガラス粉末の軟化点Ts(単位:℃)を、昇温速度10℃/分での示差熱分析(DTA)により測定した。
さらに、ガラス粉末2gを直径13mmのステンレス製の型枠でプレス成型し、560℃で30分焼成し、焼結性を目視で評価した(◎:極めて良好、○:良好、×:不良)。なお、本評価は560℃において行われたものであるが、隔壁形成のための焼成は560℃超で行われることも多い。このようなより高温の焼成においては本評価において不良と評価されたものであっても使用できる可能性がある、すなわち本評価における不良という評価結果は隔壁形成への適用可能性をただちに否定するものではない。
また、溶融ガラスをステンレス鋼製の型枠に流し込み、熱処理を行って歪を取り除いた後、長さ20mm、直径5mmの円柱状に加工し、50〜350℃における平均線膨張係数α(単位:10−7/℃)を測定した。これら結果を表に示す。
【0042】
さらに、一部の例について、ε、100℃における比抵抗ρ(単位:Ω・cm)、w(単位:10−10A)および隔壁断面形状を測定または観察をした。
ε:ガラス粉末を再溶融して板状に成形後、50mm×50mm×3mmに加工し、その両面にアルミニウムを蒸着して電極とし、LCRメータを用いて20℃における比誘電率を測定した。
logρ:εの測定に用いたサンプルを用いて、ASTM D57に準拠して100℃における比抵抗を測定した。表にはその常用対数を示す。logρは5以上であることが好ましい。
【0043】
w:エチルセルロース12gをテルピネオール88gに80℃で2時間かけて溶解させたビヒクル16gとガラス粉末30gとシリカフィラー4gとを乳鉢さらに3本ロールを用いて混錬してガラスペーストを作製した。このガラスペーストを用いて先に述べたようにしてwを測定した。
隔壁断面形状:wの測定に用いたと同じガラスペーストを用いて、先に述べたようにして隔壁断面形状を観察した。断面形状の台形の上端部が丸みを帯びているものを◎、上辺の一方の端部から他方の端部までほぼ直線状であるものを○、上端部において上辺と側辺がわずかに鋭角をなしているものを△、顕著な鋭角をなしているものを×、とした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
さらに比較例として、モル%表示組成が、SiO 25.5%、B 22.8%、ZnO 13.7%、LiO 7.1%、NaO 10.3%、Al 10.6%、MgO 3.9%、TiO 2.5%、BaO 3.7%、となるように原料を調合して溶解したところ、得られたガラスは分相していた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
PDPの隔壁形成に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 24〜50%、B 13〜23%、ZnO 10〜32%、LiO 3〜20%、NaO 1〜9%、Al 1〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜20%、Bi 0〜9%、から本質的になり、[(B+ZnO)−Al]が24モル%以上であり、ZrOを含有する場合その含有量は2モル%以下であり、かつ、PbOおよびFのいずれも含有しない隔壁形成用ガラス。
【請求項2】
下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 24〜50%、B 13〜32%、ZnO 15〜32%、LiO 3〜20%、NaO 1〜15%、Al 1〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜20%、Bi 0〜9%、から本質的になり、[(B+ZnO)−Al]が24モル%以上、(NaO−LiO)が4モル%以下であり、ZrOを含有する場合その含有量は2モル%以下であり、かつ、PbOおよびFのいずれも含有しない隔壁形成用ガラス。
【請求項3】
(B+ZnO)が50モル%以下である請求項1または2に記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項4】
下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 21〜50%、B 12〜35%、ZnO 15〜37%、LiO 1〜25%、NaO 0〜21%、Al 1〜25%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜20%、Bi 0〜9%、から本質的になり、(B+ZnO)が50モル%以下、[(B+ZnO)−Al]が24モル%以上であり、KOを含有する場合その含有量が5モル%以下であり、かつ、PbOおよびFのいずれも含有しない隔壁形成用ガラス。
【請求項5】
(NaO−LiO)が4モル%以下である請求項1または4に記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項6】
が21モル%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項7】
MgOが0〜8モル%、CaOが0〜8モル%、SrOが0〜8モル%、BaOが0〜8モル%、である請求項1〜6のいずれかに記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項8】
(LiO+NaO+Bi)が11モル%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項9】
Biを含有しない請求項1〜8のいずれかに記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項10】
軟化点が615℃以下である請求項1〜9のいずれかに記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項11】
50〜350℃における平均線膨張係数が65×10−7〜95×10−7/℃であるである請求項1〜10のいずれかに記載の隔壁形成用ガラス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の隔壁形成用ガラスを用いて形成された隔壁を有するプラズマディスプレイパネル。

【公開番号】特開2006−143479(P2006−143479A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314180(P2004−314180)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】