説明

障子のシール構造

【課題】障子のスムースな開閉を損なうことなく、シール性能に優れた障子のシール構造を提供する。
【解決手段】下枠4は硬質樹脂製で、嵌合部11をサッシ1の凹部14に嵌着することによりサッシ1に取付けられる。シール部5は軟質樹脂製でアーチ状をなし、下枠4とは二色押出により一体成形され、障子2に弾接してシールする。押出成形後、シール部5には表面に水性シリコーンが塗布され、障子2の開閉がスムースに行えるようにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシにスライドして開閉可能に取付けられるガラス戸などの戸や障子(以下、単に障子といい、本発明において障子とはガラス戸等の戸を含むものとする)のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシール構造に関しては、サッシに低摩擦係数の超高分子ポリエチレンフィルムを発泡ポリウレタンフォームを介して貼着し、ポリエチレンフィルムをガラス戸の滑り面としたもの(特許文献1)、サッシに樹脂製のタイト材を取付けて障子に接触させるようにしたもの(特許文献2)などが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−185271号
【特許文献2】特開平10−205238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述する従来のシール構造において、シール性を高めるにはポリウレタンフォームに貼着されるポリエチレンフィルムやタイト材等のシール材を障子に圧着させてシール圧を高める必要があり、シール圧が高くなる程、シール材は圧縮されるが、シール材には障子に接触する箇所と、接触しない箇所があり、接触しない箇所では、圧縮されないため、圧縮される箇所と圧縮されない箇所ではシール材に厚みに段差を生ずる。この状態で障子を開閉すると、障子の先端又は後端のエッジがシール材に食い込み、障子のスムースな開閉を損なうようになる。
【0005】
本発明は、障子のスムースな開閉を損なうことなく、シール性能に優れた障子のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係わる発明は、中空状又はリップ状をなしてサッシに取付けられ、サッシにスライドして開閉可能に取着される障子に弾接して該障子との間をシールする、軟質ゴム又は軟質樹脂製のシール部を有することを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記シール部と、該シール部に一体形成され、サッシに嵌着する嵌合部を備えた硬質ゴム又は硬質樹脂製の下枠を有することを特徴とする。
【0007】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、シール部には少なくとも障子に接する箇所に低摩擦のために摺動膜が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係わる発明によると、シール部は軟質で、しかも中空状又はリップ状をなすから可撓性に優れ、障子に密着させてシール性を高めることができると共に、障子に接触する箇所と障子に接触しない箇所で段差を生じた状態で障子を開閉したとき、障子の先端又は後端が食い込んでもシール部は十分な撓み代を有して可撓性に優れるため、充分に撓んで変形し、障子のスムースな開閉を損なうことがない。
【0009】
請求項2に係わる発明によると、嵌合部をサッシに嵌着することにより下枠がサッシに取付けられ、これによりシール部がサッシに簡易に取付けられるようになる。
【0010】
請求項3に係わる発明によると、障子の開閉をスムースに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】サッシに取付けられた障子の正面図。
【図2】シール部を一体形成した下枠の断面図。
【図3】サッシに組付けた図2に示す下枠のシール部による障子のシール構造を示す図1のA−A線での断面図。
【図4】別の態様のシール部を一体形成した下枠の断面図。
【図5】サッシに組付けた図4に示す下枠のシール部による障子のシール構造を示す図1のA−A線での断面図。
【図6】更に別の態様のシール部を一体形成した下枠の断面図。
【図7】サッシに組付けた図6に示す下枠のシール部による障子のシール構造を示す図1のA−A線での断面図。
【図8】シール部を割愛した別の態様の下枠の断面図。
【図9】シール部を割愛した更に別の態様の下枠の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、サッシ1にスライドして開閉可能に取付けられる引き戸状の障子2を示すものである。また図3は、図1のA−A線での断面、図2はサッシ1に取付けられる、本実施形態のシール構造を構成する下枠4と、該下枠4に一体形成される中空状のシール部5の断面を示すもので、下枠4は室外側の側壁6と、該側壁6と略同じ高さを有し、かつ段状をなす室内側の側壁7と、両側壁6及び7の中間部同士を連結するT形断面の連結部8とで構成され、連結部上に該連結部8と両側壁6、7とで凹所9を内側に形成した嵌合部11と、室内側の側壁上端から室内側に水平に延びる取付部12よりなり、全体が硬質樹脂、例えばポリプロピレンPP、オレフィン系熱可塑性エラストマーTPO、スチレン系熱可塑性エラストマーTPS、塩化ビニールPVC等で形成されている。
【0013】
シール部5は、室内側の側壁7の上端と連結部8を連結する垂れ下がったアーチ状をなし、軟質樹脂、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマーTPO、スチレン系熱可塑性エラストマーTPS、塩化ビニールPVC等で形成され、下枠4とは二色押出しにより一体形成されている。そして押出成形後、シール部表面に障子2の開閉がスムースに行えるようにするため低摩擦係数の摺動剤、たとえば水性シリコーン等が塗布されて摺動膜が形成されている。摺動膜は上述するような塗装だけでなく、別部材の貼付けや、シール部と共押出しすることによっても形成することが可能である。
【0014】
図3に示すサッシ1は、前記嵌合部11の下側の外郭と同一形態をなして嵌合部11が嵌着する凹部14を備え、該凹部14を形成する室外側の側壁15はレールとなり、上端に前記障子2の戸車16が転動可能に係合するようになっている。そして図示していないが、前記側壁15と下枠4の室外側の側壁6とには、両者を貫通する複数のスロットが形成されている。
【0015】
下枠4をサッシ1に取付けるときには、嵌合部11をサッシ1の凹部14に嵌着する。この嵌着に際しては、下枠長手方向(紙面と直交する方向)への位置決めが行われ、位置決めして嵌着されると、下枠の室外側の側壁6に形成される前記スロットと、サッシ1の側壁15に形成される前記スロットが合致し、凹所9に溜まったゴミや水がスロットを通して室外側に排出できるようにしてある。図中、17は障子2に取付けられ、サッシ側壁15の室外側に弾接してシールするリップである。
【0016】
以上のようにして下枠4がサッシ1に取付けられたのち、障子2が取付けられる。この取付状態において障子下端の室内側側端のエッジがシール部5に押付けられ、密着する。こうして室内外のシールが行われ、水密及び気密構造となる。
【0017】
なお下枠4を組付けたサッシ1は、取付部12において図示しない窓枠にビスによりネジ止めされるか、或いは粘着テープにより接着して固定されるが、この固定は障子2をサッシ1に取付ける前に行われるか、或いは取付けたのちに行われる。
【0018】
本実施形態のシール構造によると、下枠4は嵌合部11をサッシ1の凹部14に嵌着するだけで簡易に取付けることができる。シール部5は、その全長の一半が障子2に図3に示すように弾接してシールするが、障子2に弾接しない他半は図2に示す形態を維持する。この状態より障子2がスライドして開閉すると、障子下端の室内側角部の室内面又は底面(下端面)が図3に示すシール部5に食い込んで移動しようとするが、シール部5は前述するように中空で可撓性に優れ、十分な撓み代を有するため、容易かつ充分に変形し、シール部表面に形成される摺動膜と相俟って障子2のスムースな開閉を可能にする。
【0019】
図4に示す下枠21は、図2に示す下枠4と同一構造をなしている。シール部22は、前記シール部5と異なり、断面倒V形をなして下枠21の室内側側壁7の中間部と連結部8とに連結され、上面が室外に向かって若干上向きに傾斜している。
【0020】
図5は、サッシ1に図4に示す下枠21を組付けた状態を示すもので、シール部22は前記障子2の室内側下端面の室内側の略半部に弾接して障子2との間をシールするようになっている。
【0021】
本実施形態のシール構造も前記実施形態のシール構造と同様の効果を生ずる。すなわちシール部22は、その全長の一半において障子2の下端面に面接触してシールし、障子2と接触しない他半では図4に示す形態を維持する。この状態より障子2がスライドして開閉すると、障子前端又は後端のエッジがシール部22に食い込んで移動しようとするが、シール部22は中空で可撓性に優れ、十分な撓み代を有するため、容易かつ充分に変形し、シール部表面に形成される摺動膜と相俟って障子2のスムースな開閉を可能にする。
【0022】
図6に示す下枠25はシール部26が図2に示すシール部5の下側部を除く形態、すなわち円弧状をなして室内側の側壁上端に垂れ下がった状態で支持される形態をなすほかは図2に示す下枠4と同一構造をなしている。
【0023】
図7は、サッシ1に図6に示す下枠25を取付けた状態を示すもので、シール部26は前記障子2の室内側下端面に弾接してシールするようになっている。
【0024】
本実施形態のシール部26はリップ状をなすため、前記実施形態のシール部5、22より更に変形し易く、シール部表面に形成される摺動膜と相俟って障子2の更なるスムースな開閉を可能にする。
【0025】
図8は、下枠の別の形態を示すもので、該下枠28は、室外側の側壁6は連結部8下だけに設けられ、連結部上には設けられていない点でのみ図3に示す下枠4と相違する。
【0026】
図9は、下枠の更に別の形態を示すもので、該下枠31は、図3に示す下枠4において、室外側の側壁6をなくすと共に、T形断面の連結部8の室外側部分をなくした形態を有している。本実施形態において、下枠31が取付けられるサッシは凹所が下枠31の室内側側壁7とアングル状の連結部32が収まるサイズに形成されていてもよい。
【0027】
図8及び図9に示す下枠28及び31には、前述するシール部5、22又は26が図2、図4又は図6と同様にして一体形成される。
前述する下枠4、21、25、28、31はいずれも室内側の側壁7が段状をなしているが、これは取付けるサッシの形状に対応したものであり、サッシに段状部がなければ、下枠も段状にする必要がない。
【符号の説明】
【0028】
1・・サッシ
2・・障子
4、21、25、28、31・・下枠
5、22、26・・シール部
6、15・・室外側の側壁
7・・室内側の側壁
8、32・・連結部
9・・凹所
11・・嵌合部
12・・取付部
14・・凹部
16・・戸車
17・・リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状又はリップ状をなしてサッシ1に取付けられ、サッシ1にスライドして開閉可能に取着される障子2に弾接して該障子2との間をシールする、軟質ゴム又は軟質樹脂製のシール部5、22、26を有することを特徴とする障子のシール構造。
【請求項2】
前記シール部5、22、26と、該シール部5、22、26に一体形成され、サッシ1に嵌着する嵌合部11を備えた硬質ゴム又は硬質樹脂製の下枠4、21、25、28、31を有することを特徴とする請求項1記載の障子のシール構造。
【請求項3】
シール部5、22、26には少なくとも障子に接する箇所に低摩擦のために摺動膜が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の障子のシール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−31633(P2012−31633A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171807(P2010−171807)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】