障害物検知レーダシステム
【課題】 レーダ送受信機の分解能を仮想的に細かくする。
【解決手段】 レーダ送受信機10は、水平広ビームアンテナから、複数の検出反射体2a〜2eを包含する広範囲の空間に放射されるレーダ波である送信波3を送信する。また、垂直偏波受信用と水平偏波受信用の2種類の受信アンテナと、これら受信アンテナを交互に切り替える為のスイッチを備える。一方、各検出反射体2a〜2eは、同一偏波用と異偏波用の2種類を交互に設置し且つ同一種類同士はレーダ送受信機10の距離分解能によって決定される最小間隔以上の間隔となるようにしてある。上記送信波3が水平偏波の偏波送信波である場合には、同一偏波用は水平偏波、異偏波用は垂直偏波を反射波としてレーダ送受信機10に返す。上記スイッチを交互に切り替えることで、レーダ送受信機10は、送信波3送信毎に、同一偏波用と異偏波用の何れか一方からの反射波による受信信号のみを入力する。
【解決手段】 レーダ送受信機10は、水平広ビームアンテナから、複数の検出反射体2a〜2eを包含する広範囲の空間に放射されるレーダ波である送信波3を送信する。また、垂直偏波受信用と水平偏波受信用の2種類の受信アンテナと、これら受信アンテナを交互に切り替える為のスイッチを備える。一方、各検出反射体2a〜2eは、同一偏波用と異偏波用の2種類を交互に設置し且つ同一種類同士はレーダ送受信機10の距離分解能によって決定される最小間隔以上の間隔となるようにしてある。上記送信波3が水平偏波の偏波送信波である場合には、同一偏波用は水平偏波、異偏波用は垂直偏波を反射波としてレーダ送受信機10に返す。上記スイッチを交互に切り替えることで、レーダ送受信機10は、送信波3送信毎に、同一偏波用と異偏波用の何れか一方からの反射波による受信信号のみを入力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検知レーダシステムに係わり、特に、レーダによる障害物の監視、侵入監視等の物体検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダを用いた障害物の検知技術としては、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載のレーダ送受信装置は、角度制御信号θ1、θ2、・・・θm、・・・θn-m、・・・θnによって送受信アンテナの走査角度を順次変えつつ、送受信アンテナから電波を送信する。角度θmの方向には他のレーダ送受信装置が設置されており、角度θn-mの方向には反射板が設置されている。他のレーダ送受信装置からの送信電波又は反射板からの反射電波は、自己診断機能に用いられ、送受信アンテナが角度θm又は角度θn-mのときに電波受信すれば、正常動作していると判定する。送受信アンテナの角度が、角度θm、θn-m以外の角度のときに反射電波を受信した場合には、障害物がある状態であると判定する。
【0003】
また、特許文献2に記載の技術においても、アンテナを走査しながらレーダ波を送信する。すなわち、常時、アンテナを水平面に走査展開しながら、収束したレーダ波を踏切全体に送信する。そして、リフレクタやマーカや踏切内の障害物からの反射波のデータを処理して、装置が正常動作しているか否かを確認したり、障害物の有無と大きさを認識する。
そして、この特許文献2では、レーダ装置を利用して検出された障害物データにチェックコードを付加して外部の入出力制御装置に出力することにより、入出力制御装置の側で障害物データの正常性を確認可能にしている。
【特許文献1】特開2001−325690号公報
【特許文献2】特開2002−37078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2の技術では、アンテナを走査しなければならない。すなわち、鋭い指向性を持ったアンテナの角度を順次変えていく為の構成が必要となる。
また、反射板付近に不要物体などが存在すると、反射板からの反射電力以外に不要物体からの反射電力が混在して検出される。不要物体が不安定な場合は、振動、風などのわずかな変位でRCSレベルが変動することになる。そして、本来の反射板からの反射波よりも大きいRCSレベルの変動があると障害物分離性能(すなわち障害物の有無の判定精度)が劣化し、また不要物体からの反射波の検出レベルの変動による誤検知(監視対象領域に障害物が存在しないにも関わらず、不要物体からの反射波の検出レベル変動により障害物が存在すると誤認する)等、障害物の検知に支障をきたすといった問題があった。
【0005】
この様な問題に対して、本出願の出願人は、既に、特願2004-323417号(以下、先願と呼ぶ)に記載の技術を提案している。
この先願の発明では、例えば図21に示すように、障害物検知対象領域(踏切101内等)を挟んで一方に(図上左側)一つのレーダ送受信機110を設置し、他方に(図上右側)に複数の検出反射体130を配置している。図示の例では、踏切101の長手方向(人や車等が踏切を渡るときの移動方向)に沿って複数の検出反射体130を配列し、踏切101を挟んで反対側にレーダ送受信機110を設置している。レーダ送受信機110は、水平広ビームアンテナ111を備えており、この水平広ビームアンテナ111から送信波121を送信する。水平広ビームアンテナ111は、広い水平面指向性(広いビーム幅)を持たせたアンテナであり、送信波121は、図示の様に、上記複数の検出反射体130を包含する広範囲の空間に放射されるレーダ波となる。
【0006】
この構成では、障害物検知領域内に障害物が存在しない場合には、水平広ビームアンテナ111から送信波121を一回送信する毎に、全ての検出反射体130から各々、反射波122が返されてくるが、各検出反射体130(検出反射体a〜f)から水平広ビームアンテナ111までの距離は、全て異なっているので(R1〜R6)、当然、送信波121の送信から各反射波122を受信するまでの時間(往復所要時間)も全て異なるので、この往復所要時間によって、各反射波122がどの検出反射体130からの反射波であるのかを区別できる。すなわち、上記各検出反射体130毎の往復所要時間に合わせて、レーダ送受信機110における各受信波122の検出タイミングを設定すればよい。
【0007】
これより、レーダ送受信機110では、任意のタイミングで上記送信波121を放射してから、各検出反射体130に対応する往復所要時間に応じたタイムスロット毎に、各反射波122の受信電力の変動判定を順次実行する(このような処理を、“時分割で処理する”というものとする)。もし、任意の検出反射体130との間に障害物(人間、バイク、車等)が存在する場合には、この検出反射体130からの反射波122が障害物によって遮断される為、受信電力が低下し、所定の閾値レベル以下となることから、障害物があることを検知できる。
【0008】
また、先願の特徴は上記検出反射体130とアンテナにある。まず、先願におけるレーダ送受信機110の送信アンテナは、水平偏波の偏波送信波を送信する。一方、受信アンテナは、垂直偏波の偏波受信波を受信する垂直偏波受信アンテナである。そして、検出反射体130は、水平偏波の偏波送信波を垂直偏波の偏波受信波として反射する機能を備えている。これにより、もし検出反射体130以外の何らかの構造物から反射があっても、それは水平偏波の偏波受信波であるので、垂直偏波受信アンテナによる受信電力レベルは非常に低いので、影響されないことになる。
【0009】
ここで、図21に示す、隣り合う二つの検出反射体130の配列間隔ΔGは、レーダ送受信機110の距離分解能によって、その最小間隔が決定される。すなわち、各検出反射体130のレーダ送受信機110(水平広ビームアンテナ111)に対する距離R1〜R6の差ΔR(たとえばR1とR2との差)が、レーダ送受信機110の距離分解能よりも大きくなるように、配列間隔ΔGを設定する必要がある。換言すれば、配列間隔ΔGは、レーダ送受信機110の距離分解能によって決定される所定値(最小間隔)Zより大きくする必要がある。検出反射体130の配列間隔ΔGを、上記所定値Zよりも小さくすると、以下に述べる問題が生じるからである。尚、所定値Zは、全ての検出反射体間について同一の値となるわけではない。例えば検出反射体e−f間の所定値Zと検出反射体d−e間の所定値Zとは、異なる値となる。
【0010】
図22(a)、(b)に、図21における検出反射体e,fを例にして、これら検出反射体e,fからの反射波による受信信号を示す。検出反射体eまでの距離R2と検出反射体fまでの距離R1は、R1<R2であるので、まず送信から受信までの時間t1のタイミングで検出反射体fからの受信信号があり、その後、送信から受信までの時間t2のタイミングで検出反射体eからの受信信号がある。
【0011】
検出反射体130の配列間隔ΔGが、上記所定値Zよりも大きければ、隣り合う二つの検出反射体e,fからの反射波による受信信号は、図22(a)に示すように正常な状態である。つまり、図示の“山”が2つある状態となる。そして、レーダ送受信機110と検出反射体e又はfとの間の何処かに障害物がある場合には、時間t1又はt2における受信電力は大幅に減少するので、所定の閾値と比較することで、レーダ送受信機110と検出反射体e又はfとの間に障害物があることを検知できる。
【0012】
一方、もし、検出反射体130の配列間隔ΔGを、上記所定値Zよりも小さくすると、図22(b)に示すように、隣り合う二つの検出反射体e,fからの反射波による受信信号が重複して1つの“山”となってしまう。この為、遮断検知を正常に行えなくなる。
よって、上記の通り、検出反射体130の配列間隔ΔGは、上記所定値Zよりも大きくしなければならない。
【0013】
しかしながら、障害物が小さなもの(人間等)である場合、すなわち図23に示すように、障害物102が検出反射体130の配列間隔ΔGの間に収まるような小さなものであるときには、反射波を遮断しないので、“障害物無し”と誤判定してしまうという問題が生じる。
【0014】
本発明の課題は、検出反射体の配置間隔をレーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔未満としても問題なく遮断検知できるようにすることで、小さな障害物であっても検知し易くする障害物検知レーダシステム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による第1の障害物検知レーダシステムは、入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、前記レーダ送受信機は、前記第1電波を送信する送信アンテナと、前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有するように構成する。
【0016】
第1の障害物検知レーダシステムでは、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力する。つまり、1回の測定毎に(第1電波送信毎)、同一偏波反射体からの反射波又は異偏波反射体からの反射波の何れか一方の反射波による受信信号のみを入力する。ここで、上記2種類の反射体のうち同じ種類の反射体同士の設置間隔は、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上としているので、この受信信号は、図22(b)で説明したような問題は生じない。一方、上記の通り、2種類の反射体を交互に設置しており、隣合う反射体の間隔、すなわち同一偏波反射体と異偏波反射体との間隔は、上記最小間隔よりも狭くできる。よって、受信アンテナを切り替えて測定を2回行えば、実質的に、上記最小間隔よりも狭い間隔で設置された反射体を用いた障害物検知を行えることになる。
【0017】
尚、異偏波反射体は、例えば、前記第1電波の偏波面を90°回転させた反射波を返す機能を有する。この反射波が上記第3電波である。よって、上記第1電波が例えば水平偏波の電波である場合には、上記第2電波も水平偏波の電波となるが、上記第3電波は垂直偏波の電波となる。
【0018】
本発明による第2の障害物検知レーダシステムは、入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、前記レーダ送受信機は、前記第1電波として水平偏波の電波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の電波を送信する第2の送信アンテナと、水平偏波の電波又は垂直偏波の電波の何れか一方のみを受信できる受信アンテナと、該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信させ、受信した電波の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有するように構成する。
【0019】
上記第2の障害物検知レーダシステムは、受信アンテナではなく、送信アンテナを交互に切り替えることで、上記第1の障害物検知レーダシステムと同様の機能を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の障害物検知レーダシステム等によれば、検出反射体の配置間隔をレーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔未満としても問題なく遮断検知できるので、小さな障害物であっても検知し易くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態の障害物検知レーダシステム全体の構成を示す図である。
この例では、障害物検知対象領域は、踏切1内であるものとし、本例の障害物検知レーダシステムは、先願と同様に、当該踏切1を挟んで対向するように、レーダ送受信機10と、複数の検出反射体2a〜2eが配置されている。検出反射体2a〜2eは、踏切1の上記長手方向に沿って設置される。
【0022】
レーダ送受信機10は、上記先願と同様に、送信アンテナとして水平広ビームアンテナを備えており、少なくとも全ての検出反射体2a〜2eを含む領域をレーダ覆域とする、水平方向に広いビーム幅の送信波を送信する。よって、この送信波は、全ての検出反射体2a〜2eに届く。そして、ここでは、この送信波は、水平偏波の偏波送信波3であるものとする。勿論、垂直偏波の偏波送信波を送信してもよいが、ここでは、水平偏波の偏波送信波3を送信するものとする。
【0023】
レーダ送受信機10(そのレーダ信号処理制御部14)は、先願と同様、任意のタイミングで上記送信波3を放射してから、各検出反射体2a〜2eに対応する往復所要時間に応じたタイムスロット毎に、各反射波(垂直偏波の偏波受信波4or水平偏波の偏波受信波5)による受信電力の変動判定を実行する(このような処理を、“時分割で処理する”というものとする)。もし、任意の検出反射体との間に障害物(人間、バイク、車等)が存在する場合には、この検出反射体からの反射波が障害物によって遮断される為、受信電力が低下し、所定の閾値レベル以下となることから、障害物があることを検知できる。
ここで、本例では、先願とは異なり、検出反射体は2種類あり、この2種類の検出反射体を交互に設置する。すなわち、例えば図示の検出反射体2b、2dは、上記先願の検出反射体130に相当するものであり(以下、異偏波用の検出反射体と呼ぶ)、入射波の偏波面を90°回転させて反射するものである。よって、検出反射体2b、2dは、上記水平偏波の偏波送信波3に対する反射波として垂直偏波の偏波受信波4をレーダ送受信機10に返す。勿論、垂直偏波の偏波送信波に対しては水平偏波の偏波受信波を返す。
【0024】
一方、検出反射体2a、2c、2eは、既存のリフレクタであり(以下、同一偏波用の検出反射体と呼ぶ)、上記水平偏波の偏波送信波3に対する反射波として水平偏波の偏波受信波5を返す。勿論、垂直偏波の偏波送信波に対しては垂直偏波の偏波受信波を返す。そして、図示の通り、検出反射体を2a、2b、2c、2d、2eの順に設置してある。
【0025】
レーダ送受信機10は、後に図3で説明する構成例では、1種類の送信アンテナと、2種類の受信アンテナ(垂直偏波受信アンテナ11c、水平偏波受信アンテナ11d)と、スイッチ(SW)15を備えており、SW15によって上記2種類の受信アンテナの何れか一方を選択して(基本的には交互に選択する)、選択した受信アンテナによる反射波受信信号を入力して、先願と同様、この受信信号レベル(受信電力)と閾値とに基づいて、障害物の有/無を判定する。
【0026】
上記スイッチ(SW15)によって受信アンテナを切り替えることで、1回の測定毎に、上記2種類の検出反射体の何れか一方の種類の検出反射体からの反射波による受信信号のみを入力するので(他方の種類の検出反射体からの反射波による受信信号レベルは非常に低いので、ここでは無いものとして扱う)、同じ種類の検出反射体同士の間隔(異偏波用の検出反射体2bと2dの間隔ΔGT、あるいは同一偏波用の検出反射体2aと2c及び2cと2eの間隔ΔGS)が、上述してあるレーダ送受信機10の距離分解能によって定められる所定値Z(最小間隔)よりも大きければ、上記図22(b)で説明した問題は生じない。且つ、各検出反射体の配列間隔ΔGを、上記所定値Zよりも小さくすることができる(例えばZ/2程度とすることができる)。そして、測定を2回行えば、実質的に、先願よりも短い配列間隔で設置された検出反射体を用いた障害物検知を行えることになる。すなわち、仮想的に、レーダ送受信機の分解能が細かくなる。
【0027】
従って、検知対象物(障害物)が小さくても、先願よりも検知し易くなる。
尚、レーダ送受信機10は、後に図5で説明する構成例の様に2種類の送信アンテナを備える構成としてもよい(この場合、受信アンテナは1種類)。この場合も、2種類の送信アンテナをスイッチ15によって交互に切り替えることで、上記図3の構成と同様、各検出反射体の配列間隔ΔGを上記所定値Zよりも小さくしても問題なく、きめ細かい障害物検知を行うことができる。
【0028】
尚、レーダ送受信機10の水平広ビームアンテナ(送信アンテナ)の指向性は、遠方の放射電力を強め、近くなるほど放射電力を弱める、矩形ビームとしてもよい。図1の例で言えば、検出反射体2aの方向に対しては放射電力を強め、検出反射体2eの方向に対しては放射電力を弱めるようにしてもよい。これによって、受信電力レベルをほぼ均等にし、遮断検知の為の閾値を1つのみとすることができる。
【0029】
以下、上記障害物検知レーダシステムについて、更に詳細に説明する。
まず、図2に、上記レーダ送受信機10の構成例を示す。
図2に示すレーダ送受信機10は、スイッチ(SW)15を介して送受信アンテナ11に接続される送信部12および受信部13と、レーダ信号処理制御部14と、不揮発性メモリ(ROM)17、外部入出力インターフェイス(I/F)18およびユーザインターフェイス(I/F)19を備えている。
【0030】
送受信アンテナ11は、水平偏波送信アンテナ11a、垂直偏波送信アンテナ11b、垂直偏波受信アンテナ11c、水平偏波受信アンテナ11dの4つのアンテナより成る。この4つのアンテナ全てを有する構成としてもよいが、本手法は、この4つのアンテナのうちの何れか3つのアンテナを有する構成とすれば実現できる。すなわち、送受信アンテナ11は、基本的には、「2種類の送信アンテナ+1種類の受信アンテナ」又は「1種類の送信アンテナ+2種類の受信アンテナ」として構成する。後に説明する図3、図5の例では、図3における送受信アンテナ11は、水平偏波送信アンテナ11a、垂直偏波受信アンテナ11c、及び水平偏波受信アンテナ11dより成り、図5における送受信アンテナ11は、水平偏波送信アンテナ11a、垂直偏波送信アンテナ11b、及び垂直偏波受信アンテナ11cより成る。
【0031】
図3の例では、スイッチ(SW)15によって、垂直偏波受信アンテナ11cと水平偏波受信アンテナ11dの何れか一方が、受信部13に接続される。そして、送信部12は、水平偏波送信アンテナ11aを介してレーダ波を外部に出力する。受信部13は、垂直偏波受信アンテナ11cまたは水平偏波受信アンテナ11dを介して、上記送信したレーダ波に対する反射波(偏波受信波4or5)による受信信号を入力する。すなわち、水平偏波の電波(偏波受信波)5または垂直偏波の電波(偏波受信波)4による受信信号を選択的に受信する。送信部12は、一定周期で送信アンテナからレーダ波を出力させるものであり、スイッチ15は基本的にはこの送信周期(計測周期)に合わせて切り替える。すなわち、任意の計測時に垂直偏波受信アンテナ11cを選択させたら、次の計測時には水平偏波受信アンテナ11dを選択させる。これは、図5の送信アンテナ切り替えの場合にも同様である。
【0032】
また、図5の例では、スイッチ(SW)15によって、水平偏波送信アンテナ11aと垂直偏波送信アンテナ11bの何れか一方が、送信部12に接続される。送信部12は、水平偏波送信アンテナ11aまたは垂直偏波送信アンテナ11bを介してレーダ波を外部に出力させる。受信部13は、垂直偏波受信アンテナ11cを介して、上記送信したレーダ波に対する反射波(垂直偏波の偏波受信波4)による受信信号を受信する。
【0033】
レーダ信号処理制御部14は、送信部12および受信部13を制御するとともに、送受信アンテナ11を介して受信部13にて検出された偏波受信波4or5の受信電力と、予め設定される閾値とに基づいて、送受信アンテナ11と各検出反射体2a〜2eとの間に障害物6が存在するか否かを判別する。すなわち、障害物検知対象領域内に障害物が存在するか否かを判別する。また、レーダ信号処理制御部14は、スイッチ15を切り替え制御して、上記2種類のアンテナの何れか一方を選択する。
【0034】
尚、レーダ信号処理制御部14はMPU(マイクロプロセッサ)によって実現される。MPUは、レーダ送受信機10の全体を制御するものであり、不揮発性メモリ17に格納されている制御プログラムやデータを読出し・実行することにより、各種処理を実行するものであり、レーダ信号処理制御部14は当該各種処理機能の一部である。よって、勿論、MPUによって実行される処理機能は、レーダ信号処理制御部14の機能に限らず、他にも例えば、レーダ信号処理制御部14による障害物6の検出結果を、外部入出力インターフェイス18を介して外部システムに出力する機能等がある。
【0035】
ユーザインターフェイス19は、ボタンスイッチ、キーボード、ディスプレイ等で構成され、作業者が、レーダ送受信機10を操作する場合に用いられる。
以下、図3、図5の構成について更に詳しく説明する。
【0036】
まず、図3の構成について説明する。図3(a)に示す構成は、既に説明した通り、送信アンテナは水平偏波送信アンテナ11aを用い、受信アンテナは垂直偏波受信アンテナ11cと水平偏波受信アンテナ11dの何れか一方をスイッチ15によって交互に選択して用いる。尚、図3におけるレーダシステム本体20とは、基本的には図2に示す構成のうち送受信アンテナ11とスイッチ15を除く全ての構成を意味するが、特に送信部12、受信部13、及びレーダ信号処理制御部14を意味するものとする。これは図5(a)においても同様である。
【0037】
尚、図3(a)、図5(a)においては、簡単の為、検出反射体は上記異偏波用、同一偏波用を1つづつ示す(図1の検出反射体2a、2bのみを示す)。よって、アンテナから異偏波用の検出反射体2bまでの距離はR1、アンテナから同一偏波用の検出反射体2aまでの距離はR2であり(R1>R2)、これら2つの検出反射体は隣り合っており、その配列間隔ΔGは、上記レーダ送受信機10の距離分解能に基づいて決定される所定値Zよりも小さい(例えばZ/2程度)ものである。つまり、検出反射体は従来の2倍程度の密度で設置されており、小さな障害物であっても検知し易くなっている。
【0038】
図4は、図3の構成におけるレーダシステム本体(レーダ信号処理制御部14)による障害物検知処理のフローチャート図である。また、図3(b)には、受信アンテナの切り替えタイミング、及び2種類の受信アンテナのどちらから受信信号を入力するかを示す。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、レーダ信号処理制御部14は、自己が生成する基準クロック信号を、スイッチ15に対して出力しており、スイッチ15は、基準クロック信号が‘1’になると垂直偏波受信アンテナ11c側に切り替わり、基準クロック信号が‘0’になると水平偏波受信アンテナ11d側に切り替わるようになっている。
【0040】
また、レーダ信号処理制御部14は、基準クロック信号が‘1’になったとき、及び‘0’になったときに、送信部12を制御して、水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波を出力させる。
【0041】
まず、レーダ信号処理制御部14は、基準クロック信号が‘1’になると、送信部12を制御して、水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波を出力させる(ステップS11)。この水平偏波の送信波に対しては、図3(a)に示すように、異偏波用の検出反射体2bは、垂直偏波の反射波を返し、同一偏波用の検出反射体2aは水平偏波の反射波を返す。垂直偏波受信アンテナ11cは垂直偏波の電波を受信でき、水平偏波受信アンテナ11dは水平偏波の電波を受信できる。
【0042】
尚、厳密に言えば、垂直偏波受信アンテナ11cは水平偏波の電波も交差偏波識別度で決まる電力で受信できるが、受信電力レベルが非常に小さいので、図22(b)の様な問題は生じない為、ここでは水平偏波の電波は受信できないものとして扱う。勿論、これは、水平偏波受信アンテナ11dについても同様である。
【0043】
そして、ここでは受信アンテナは垂直偏波受信アンテナ11c側に切り替わっているので、レーダシステム本体20には、図3(b)に示す通り、垂直偏波の反射波の受信信号のみが入力されることになる(ステップS12)。これより、レーダ信号処理制御部14は、この1つの受信信号のレベルが、予め設定される閾値以下であるか否かを判定し(ステップS13)、閾値以下であった場合には(ステップS13,YES)、レーダ送受信機10と異偏波用の検出反射体2bとを結ぶ線上の何処かに、障害物があると判定する(ステップS14)。尚、図3(b)に示す通り、水平偏波受信アンテナ11dは検出反射体2aからの水平偏波の反射波を受信しているが、この受信信号はレーダシステム本体20には入力されない。
【0044】
続いて、基準クロック信号が‘0’になると、スイッチ15が水平偏波受信アンテナ11d側に切り替わると共に、レーダ信号処理制御部14は、送信部12を制御して、水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波を出力させる(ステップS15)。そして、この場合には、レーダシステム本体20には、図3(b)に示す通り、検出反射体2aからの水平偏波の反射波による受信信号のみが入力されることになり(ステップS16)、レーダ信号処理制御部14は、この1つの受信信号のレベルが、予め設定される閾値以下であるか否かを判定し(ステップS17)、閾値以下であった場合には(ステップS17,YES)、レーダ送受信機10と同一偏波用の検出反射体2aとを結ぶ線上の何処かに、障害物があると判定する(ステップS18)。
【0045】
このように、反射体2a−2b間の間隔が所定値Z未満であっても、何れか一方の反射波のみが受信されるので、2つの受信波の“山”が重なることで区別出来なくなるという問題は生じない。
【0046】
尚、ここでは分かり易くする為に、ステップS11〜S14の処理とステップS15〜S18との処理を分けて示してあるが、これら2つの処理に違いはない。同じ処理であっても、スイッチ15が受信アンテナ11c、11dの何れを選択しているかによって、レーダ信号処理制御部14が受け取る受信信号が異なることを示しているだけである。
【0047】
次に図5の構成例について説明する。図5(a)の構成例に対応するレーダ信号処理制御部14による障害物検知処理のフローチャート図を図6に示す。また、図5(b)には、基準クロックによる送信アンテナの切り替えタイミングを示す。
【0048】
但し、図6に示す処理は、本質的には、図4の処理と変わらない。レーダ信号処理制御部14による処理自体は、「送信制御→受信信号のレベル判定による障害物の有無検知」である。ここでは、スイッチ15が切り替わることによって、使用する送信アンテナが変わることから、図4とは別に示しているだけである。
【0049】
すなわち、まず、図5(a)の構成では、スイッチ15は、基準クロック信号が‘1’になると垂直偏波送信アンテナ11b側に切り替わり、基準クロック信号が‘0’になると水平偏波送信アンテナ11a側に切り替わるようになっている。これより、レーダ信号処理制御部14が基準クロック信号が‘1’になったときに送信制御した場合には垂直偏波送信アンテナ11bから垂直偏波の送信波が出力され(ステップS21)、基準クロック信号が‘0’になったときに送信制御した場合には水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波が出力されることになる(ステップS25)。そして、受信アンテナは垂直偏波受信アンテナ11cのみであるので、ステップS21,S25の何れの場合にも、垂直偏波の反射波のみが受信できる(ステップS22、26)。これは、図5(a)に示す通り、ステップS21の送信波に対しては同一偏波用の検出反射体2aによる反射波のみが受信でき、ステップS25の送信波に対しては異偏波用の検出反射体2bによる反射波のみが受信できる。
【0050】
もちろん、アンテナ11cを水平偏波受信アンテナとし、ステップS22およびステップS26で水平偏波の反射波のみを受信するようにしても構わない。
よって、検出反射体2a−2b間の間隔が所定値Z(最小間隔)未満であっても、何れか一方の反射波のみが受信されるので、2つの受信波の“山”が重なることで区別出来なくなるという問題は生じることなく、受信信号のレベルを閾値と比較して障害物の有無を判定する処理を問題なく行える(ステップS23,S24又はS27,S28)。
【0051】
図7(a)、(b)に、上記図3(a)又は図5(a)の構成における、レーダシステム本体20に入力される受信信号の一例を示す。ここでは、検出反射体は、図1における検出反射体2a〜2dの4つを例にする。図1に示す通り、レーダ送受信機10から各検出反射体2a〜2dまでの距離は、検出反射体2dが最も近く(R4)、検出反射体2aが最も遠い(R1)。また、検出反射体2a,2cが同一偏波用、検出反射体2b,2dが異偏波用である。尚、図示のt1〜t4は、これら距離R1〜R4に応じた受信タイミング(送信から受信までに掛かる時間)を意味する。
【0052】
まず、上記ステップS12又はS26で受信する受信信号は、図7(a)に示す通り、異偏波用の検出反射体2b,2dによる反射波の受信信号(上記距離R2、R4に応じたタイミングt2、t4で生じる2つの“山”)のみとなる。同じ種類の検出反射体間の間隔は、レーダ送受信機10の距離分解能に基づいて決定される所定値Zよりも大きいので、図22(b)のような状態にはならず、問題なくステップS13等による障害物検知の判定が行える。
【0053】
一方、上記ステップS16又はS22で受信する受信信号は、図7(b)に示す通り、同一偏波用の検出反射体2a,2cによる反射波の受信信号のみとなり、上記反射体2b、2dの場合と同様に、受信信号が重複して1つの“山”となってしまうことはない。
【0054】
そして、例えば何らかの小さな障害物がレーダ送受信機10−検出反射体2c間の何処かに居る場合、図7(a)のときには検知できないが、図7(b)のときに検知できる。つまり、測定を2回行えば、実質的に、距離分解能による制限を受けずに高い密度で配置された検出反射体によって障害物検知を行える。よって、小さな障害物であっても検知し易くなる。
【0055】
更に、先願と同様の効果も得られる。すなわち、異偏波用の検出反射体による反射波を受信するときには、他の何らかの反射体による反射波があっても影響されないので、設置環境等に影響されることなく、高精度の障害物検出を実現することができる。
【0056】
図8に、上記検出反射体の一例、及びその設置例を示す。
図示の検出反射体は、既に先願で示した三面体コーナレフレクタであり、3つの反射面を備えている。検出反射体は、この三つの反射面の交点を通る中心軸を送受信アンテナ11に向ける姿勢で設置される。送信アンテナから出力される送信電波は、この3つの反射面に順次反射された後、反射波となって送受信アンテナ11側に戻される。
【0057】
なお、三面体コーナレフレクタによる電波の反射機能については、たとえば、McGraw-Hill Book Company、1961年発行、「Antenna Engineering Handbook second edition」、P17-27、Fig.17-27、等の文献に記載されている。
【0058】
上記同一偏波用の検出反射体は、この様な既存の三面体コーナレフレクタを用いる。一方、異偏波用の検出反射体は、「水平偏波→垂直偏波」又は「垂直偏波→水平偏波」とする為の構成が加わっており、これについては先願で提案してあるが、後に簡単に説明するものとする。
【0059】
そして、本例では、図8に示す通り、例えば踏切沿いに存在する縁石21に各検出反射体を埋め込む。当然、図1で説明したように、同一偏波用の検出反射体と異偏波用の検出反射体とを交互に設置する。検出反射体を踏切上にそのまま置くと、設置位置のずれ等から、距離精度に影響を及ぼすことが起こり得る。検出反射体を縁石21に埋め込むことによって、この様な問題が生じることなく、且つ検出反射体の設置工事が簡略になる。尚、この例では踏切沿いに存在する縁石21を用いたが、この例に限らず、何らかの道路境界物(例えば、道路と歩道の間の段差部分等)に埋め込むようにすればよい。
【0060】
ここで、図1の設置例では、各検出反射体を踏切1の長手方向(図上、縦方向)に沿って設置しているが、踏切1の短手方向(図上、横方向)には設置していない。この為、図1に示す通り、踏切1内の図上左上側のエリアに、障害物検知できない領域が生じる。
【0061】
この為、踏切1の短手方向にも検出反射体を設置することを考えるが、踏切1の長手方向の場合には既存の縁石21があるので、これを利用して、縁石21に検出反射体を埋め込むことで、歩行や車両走行の邪魔にならないように設置できるが、踏切1の短手方向には縁石は無い。検出反射体をそのまま踏切上に設置すると、歩行や車両走行の邪魔になる。
【0062】
この問題を解決する為に、本例では、図9に示すように、踏切の遮断棒22にも、各検出反射体2を取り付ける。当然、同一偏波用の検出反射体と異偏波用の検出反射体とを交互に設置する。これにより、踏切の遮断棒22が下りているときには、図示の通り、踏切1の短手方向に沿って各検出反射体が配置されることになる。尚、踏切の遮断棒22が上がっているときには、通常、安全に通行できる状態であるので、障害物検知できなくても問題ない。また、遮断棒22は、縁石21よりも高い位置にあるが、図11に示す通り、レーダ送受信機10の送信アンテナの指向性は、ある程度の高さまで対応できるものであるので、問題はない。
【0063】
以上述べたように、踏切1の長手方向、短手方向の両方に検出反射体を配置することで、障害物検知できない領域を更に少なくすることができる。尚、これは、当然、踏切の場合に限らず、他の障害物検知対象領域についても同様である。
【0064】
更に、図10に示すようにレーダ送受信機10を2台設置し、踏切1(長方形)の4辺全てに検出反射体を配置することで、踏切内の障害物を殆ど死角無しに検知できるようになる。尚、これは、当然、踏切の場合に限らず、他の障害物検知対象領域についても同様である。尚、図11には、送信アンテナの指向性を示す。図示の通り、ある程度の高さに設置されたレーダ送受信機10から、踏切1の反対側の縁石21に埋め込まれた検出反射体2に向けて、すなわち斜め下方向に向けて、水平広ビーム(例えば水平偏波の偏波送信波3)が送信される。
【0065】
図12に、同じ種類の検出反射体間の間隔の決定方法の一例を示す。
図示の例では、検出反射体2a〜2eを例にし、検出反射体2a,2c,2eが同一偏波用、検出反射体2b、2dが異偏波用である(但し、図1とは配置が異なる)。本例では、既に説明してあるように、同一種類の検出反射体間の配列間隔が、上記所定値Zよりも大きくなるように設定する。
【0066】
ここでは、同一偏波用の検出反射体2a,2c,2eを例にする。そして、ここでは、レーダ送受信機10の距離分解能は、0.75(m)であるとする。そして、障害物検知対象領域は10(m)×10(m)のエリアであり、レーダ送受信機10から検出反射体2aまでの距離R1が最も短く、R1=10(m)であるとする。
【0067】
この場合、まず、レーダ送受信機10から検出反射体2cまでの距離R2は、10+0.75=10.75(m)以上とする必要がある。ここでは、R2=10.75(m)とすると、レーダ送受信機10から検出反射体2eまでの距離R3は、10.75+0.75=11.5(m)以上とする必要がある。
【0068】
これより、検出反射体2a−2c間の最小間隔Z(ΔG1)は、10.752=102+ΔG12より、ΔG1=3.95≒4となり、検出反射体2a−2c間の設置間隔ΔG1は、約4(m)以上とする必要がある。検出反射体2c−2e間の最小間隔Z(ΔG2)も同様にして求めることで、ΔG2は、約1.7(m)以上とする必要があることが分かる。
【0069】
異偏波用の検出反射体2b−2d間の設置間隔も、同様にして求める。
この様にして求めた同一種類の検出反射体間の最小設置間隔を守るように配置する限り、異なる種類の検出反射体間の設置間隔は、任意でよい。例えば、検出反射体2a−2b間の設置間隔は、任意でよい(勿論、検出反射体2bは、検出反射体2aと2cの間に設置しなければならず、且つ検出反射体2b−2d間の最小設置間隔を守るように検出反射体2dを設置したときに、検出反射体2dが検出反射体2cと2eの間に設置されるように、しなければならない。
【0070】
本例の障害物検知レーダシステムは、上述した例では踏切に設置するものとしたが、勿論、この例に限らない。他の設置例を図13、図14に示す。
図13は、本例の障害物検知レーダシステムを家屋敷地内(庭等)に設置して、ホームセキュリティシステムとして利用する例である。
【0071】
図示の通り、レーダ送受信機10を庭の一角に設置し、各検出反射体を敷地の隅の任意の場所に設置する。勿論、同一偏波用と異偏波用とを交互に設置する。これによって、敷地内に不法な侵入者等があったときには、この侵入者を検知できる。
【0072】
図14は、本例の障害物検知レーダシステムを駅のプラットフォームに設置して、転落者検知に用いる例である。図示の通り、レーダ送受信機10をプラットフォームに設置して、各検出反射体を、線路を挟んで反対側に設置する。プラットフォームは非常に長いので、レーダ送受信機10は複数設置している。
【0073】
ここで、従来の光線式の遮断検知方式では、落ち葉、紙等の遮断によって誤検知する場合があった。また、従来の一対の電波送信器−受信器を用いた対向式検知方式では、送信器、受信器の両方の設置及び配線が必須であり、コスト高になるという欠点があった。
これに対して、障害物検知レーダシステムでは、庭木の落ち葉や紙等によって遮断されても大きなレベル変動がないので誤検知することなく、確実に検出対象(人等)のみを検出することができる。また、1台のレーダ送受信機10を設置し配線すれば(検出反射体は配線の必要はない)、広範囲を検知対象エリアとすることができ、上記対向式検知方式や従来技術に比べて、設置の手間が掛からず且つコスト安となる。
【0074】
尚、上記の例に限らず、他にも例えば美術館の館内等のような各種施設内のセキュリティシステムとして利用してもよい。あるいは、宝石店の各種店内等のセキュリティシステムとして利用してもよい。
【0075】
また、上記説明では、水平偏波と垂直偏波の両方を扱えるレーダ送受信機による構成を述べたが、これを水平偏波のみを送受信する第一のレーダ送受信機と、垂直偏波のみを送受信する第二のレーダ送受信機との2台に分けてそれらを併設するようにする構成をとることもできる。その場合には、図1のレーダ送受信機10の位置に水平偏波用と垂直偏波用の2台のレーダ送受信機が設置され、また同様に図10のレーダAとレーダBの位置にもそれぞれ水平偏波用と垂直偏波用の2台のレーダ送受信機が設置される(即ち、図10には計4台のレーダ送受信機が含まれる)ことになる。
【0076】
最後に、上記検出反射体の構成例について説明する。
まず、上記先願で既に提案している検出反射体について説明する。
先願では、三面体コーナレフレクタを用いる。図15に既存の三面体コーナレフレクタの例を示す。本例では例えば図15の三面体コーナレフレクタを上記同一偏波用の検出反射体として用いる。
【0077】
図15には、反射面31、反射面32および反射面33という互いに直交する三つの反射面を備えた三面体コーナレフレクタ30を示す。本例では、直交する三つの反射面の交点(頂点30a)を通る中心軸をレーダ送受信機10のアンテナに向ける姿勢で、この三面体コーナレフレクタ30を設置する。これにより、レーダ送受信機10の送信アンテナから三面体コーナレフレクタ30に入射する入射波(偏波送信波3)は、反射面31、反射面32および反射面33の、第1反射点31a、第2反射点32aおよび第3反射点33aにおいて順次反射された後、反射波(偏波受信波5)となってレーダ送受信機10側に戻される。
【0078】
そして、本例の上記異偏波用の検出反射体は、図16に示すように、上記三面体コーナレフレクタ30における反射波の通過経路(三面体コーナレフレクタ30の開口部の右側半分程度)を覆うように、偏波変更膜34が備えられた構成となっている。この偏波変更膜34は、当該偏波変更膜34への入射波が水平偏波の電波であれば、これを垂直偏波の電波に変換する機能を備えている。勿論、入射波が垂直偏波の電波である場合には、これを水平偏波の電波に変換する。
【0079】
この偏波変更膜34は、例えば図17に示すように、絶縁膜34aの両面に、互いに逆方向に±45°に傾斜するように配置されたメタルストリップパターン34bおよびメタルストリップパターン34cで構成されるミリ波変換膜からなる。メタルストリップパターン34bおよびメタルストリップパターン34cの幅wおよび間隔sは、入射波の周波数に応じて適宜設定される。そして、このような構成の偏波変更膜34を通過する入射波の電界方向Ei(偏波面)は、90°回転し、電界方向Eoとなる。尚、偏波変更膜34を通過する入射波は、偏波面が90°回転するだけであり、強さは減衰しない。
【0080】
そして、偏波変更膜34は、水平偏波の入射面を三面体コーナレフレクタ30の反射面側に向けた姿勢で当該三面体コーナレフレクタ30に装着される。
これより、図1の例の場合、図16に示す構成の検出反射体2b、2dに水平偏波として入射する偏波送信波3は、反射面33で反射された後、裏面側から偏波変更膜34を通過することによって、ほとんど減衰することなく偏波面が90°回転し、垂直偏波の偏波受信波4としてレーダ送受信機10側に返される。また、偏波変更膜34の表面(出射面)側に入射した電波は散乱される。
【0081】
尚、検出反射体は、上記三面体コーナレフレクタを用いる例に限らず、例えばレンズリフレクタを用いてもよい。図18に、既存のレンズリフレクタの構成例を示す。図18(a)には90°CAPを備える例、図18(b)には180°CAPを備える例、図18(c)にはCAP無しの例を示す(参考文献;「ANTENNA ENGINEERING HANDBOOK second edition」、p17−28、Fig.17−29)
図18に示す既存のレンズリフレクタを上記同一偏波用の検出反射体として用いる。
【0082】
そして、上記異偏波用の検出反射体は、図19に示すような、図18のレンズリフレクタに上記偏波変更膜34を挿入したものを用いる。
上記三面体コーナレフレクタは、その形状ゆえにゴミ等が溜まる為、これが検知性能の劣化に繋がる可能性がある。これに対して、レンズリフレクタは、球であるので、ゴミが溜まることなく、検知性能が劣化する可能性は極めて低くなる。
【0083】
レンズリフレクタを用いる場合、図11の設置状況が図20に示すようになる。
(付記1) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波を送信する送信アンテナと、前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【0084】
(付記2) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波として水平偏波の電波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の電波を送信する第2の送信アンテナと、水平偏波の電波又は垂直偏波の電波の何れか一方のみを受信できる受信アンテナと、該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信させ、受信した電波の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【0085】
(付記3) 前記異偏波用反射体は、前記第1電波が垂直偏波の電波である場合には前記第3電波を水平偏波の電波とし、前記第1電波が水平偏波の電波である場合には前記第3電波を垂直偏波の電波とすることを特徴とする付記1又は2記載の障害物検知レーダシステム。
【0086】
(付記4) 前記異偏波用反射体は、前記第1電波の偏波面を90°回転させる偏波変更体を備えることを特徴とする付記1〜3の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0087】
(付記5) 前記送信アンテナが前記第1電波として水平偏波の電波を送信するアンテナである場合には、前記第1の受信アンテナは水平偏波受信用アンテナであり、前記第2の受信アンテナは垂直偏波受信用アンテナであり、
前記制御手段は、前記第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを交互に切り替えることで、前記第2電波による前記受信信号と前記第3電波による前記受信信号とを交互に入力することを特徴とする付記1記載の障害物検知レーダシステム。
【0088】
(付記6) 前記制御手段は、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとを交互に切り替えて前記第1電波を送信させることで、前記第2電波による前記受信信号と前記第3電波による前記受信信号とを交互に入力することを特徴とする付記2記載の障害物検知レーダシステム。
【0089】
(付記7) 前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、道路境界構造物に埋め込むことで設置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0090】
(付記8) 前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、前記障害物検知対象領域が踏切である場合には、遮断棒に取り付けることで設置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0091】
(付記9) 前記障害物検知対象領域が踏切である場合には、前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、踏切の長手方向に設けられる縁石に埋め込むと共に遮断棒に取り付けることで設置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0092】
(付記10) 前記同一偏波反射体はレンズリフレクタであり、前記異偏波用反射体は該レンズリフレクタに前記偏波変更体を取り付けたものであることを特徴とする付記4記載の障害物検知レーダシステム。
【0093】
(付記11) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、水平偏波の電波を送受信する第1の送受信アンテナを有する第1のレーダ送受信機と、垂直偏波の電波を送受信する第2の送受信アンテナを有する第2のレーダ送受信機とが併設されたものであり、
該第1のレーダ送受信機と第2のレーダ送受信機は、各々、前記第1又は第2の送受信アンテナによって前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段を有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【0094】
(付記12) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とが交互に、且つ、同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔が、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上となるように設置された障害物検知対象領域に対して、前記第1電波を送信する送信アンテナと、
前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、
前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、
該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知を行う制御手段と、
を有することを特徴とするレーダ送受信機。
【0095】
(付記13) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とが交互に、且つ、同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔が、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上となるように設置された障害物検知対象領域に対して、前記第1電波を送信する送信アンテナとして、前記第1電波として水平偏波の送信波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の送信波を送信する第2の送信アンテナとを備え、更に、
前記第2電波又は第3電波を受信する受信アンテナと、
該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と前記第3電波の何れか一方を受信させて、該受信した電波による受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知を行う制御手段と、
を有することを特徴とするレーダ送受信機。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】障害物検知レーダシステム全体の構成を示す図である。
【図2】レーダ送受信機全体の構成例である。
【図3】(a)は2種類の受信アンテナを交互に切り替えて使用するレーダ送受信機の構成例であり、(b)は切り替えタイミングを示す。
【図4】図3の構成におけるレーダ信号処理制御部による障害物検知処理のフローチャート図である。
【図5】(a)は2種類の送信アンテナを交互に切り替えて使用するレーダ送受信機の構成例であり、(b)は切り替えタイミングを示す。
【図6】図5の構成におけるレーダ信号処理制御部による障害物検知処理のフローチャート図である。
【図7】(a),(b)は、レーダシステム本体に入力される受信信号の一例である。
【図8】検出反射体の一例、及びその設置例である。
【図9】検出反射体を遮断棒に取り付けた例である。
【図10】検出反射体及びレーダ送受信機の設置例である。
【図11】送信アンテナの指向性を示す図である。
【図12】同じ種類の検出反射体間の間隔の決定方法の一例を示す図である。
【図13】障害物検知レーダシステムをホームセキュリティシステムとして利用する例である。
【図14】障害物検知レーダシステムを転落者検知に用いる例である。
【図15】同一偏波用の検出反射体の具体例であり、既存の三面体コーナレフレクタの例である。
【図16】異偏波用の検出反射体の具体例(その1)である。
【図17】偏波変更膜の構成例である。
【図18】同一偏波用の検出反射体の具体例であり、既存のレンズリフレクタの例である。
【図19】異偏波用の検出反射体の具体例(その2)である。
【図20】レンズリフレクタの設置例である。
【図21】先願の障害物検知レーダシステムの構成例である。
【図22】(a)、(b)は、図21のシステムにおける各検出反射体からの反射波による受信信号である。
【図23】障害物を検知できない状況例である。
【符号の説明】
【0097】
2a,2c,2e (同一偏波用)検出反射体
2b、2d (異偏波用)検出反射体
3 水平偏波の偏波送信波
4 垂直偏波の偏波受信波
5 水平偏波の偏波受信波
10 レーダ送受信機
11 送受信アンテナ
11a 水平偏波送信アンテナ
11b 垂直偏波送信アンテナ
11c 垂直偏波受信アンテナ
11d 水平偏波受信アンテナ
12 送信部
13 受信部
14 レーダ信号処理制御部
15 スイッチ(SW)
17 不揮発性メモリ(ROM)
18 外部入出力インターフェイス(I/F)
19 ユーザインターフェイス(I/F)
21 縁石
22 遮断棒
30 三面体コーナレフレクタ
31,32,33 反射面
31a 第1反射点
32a 第2反射点
33a 第3反射点
34 偏波変更膜
34a 絶縁膜
34b メタルストリップパターン
34c メタルストリップパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検知レーダシステムに係わり、特に、レーダによる障害物の監視、侵入監視等の物体検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダを用いた障害物の検知技術としては、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載のレーダ送受信装置は、角度制御信号θ1、θ2、・・・θm、・・・θn-m、・・・θnによって送受信アンテナの走査角度を順次変えつつ、送受信アンテナから電波を送信する。角度θmの方向には他のレーダ送受信装置が設置されており、角度θn-mの方向には反射板が設置されている。他のレーダ送受信装置からの送信電波又は反射板からの反射電波は、自己診断機能に用いられ、送受信アンテナが角度θm又は角度θn-mのときに電波受信すれば、正常動作していると判定する。送受信アンテナの角度が、角度θm、θn-m以外の角度のときに反射電波を受信した場合には、障害物がある状態であると判定する。
【0003】
また、特許文献2に記載の技術においても、アンテナを走査しながらレーダ波を送信する。すなわち、常時、アンテナを水平面に走査展開しながら、収束したレーダ波を踏切全体に送信する。そして、リフレクタやマーカや踏切内の障害物からの反射波のデータを処理して、装置が正常動作しているか否かを確認したり、障害物の有無と大きさを認識する。
そして、この特許文献2では、レーダ装置を利用して検出された障害物データにチェックコードを付加して外部の入出力制御装置に出力することにより、入出力制御装置の側で障害物データの正常性を確認可能にしている。
【特許文献1】特開2001−325690号公報
【特許文献2】特開2002−37078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2の技術では、アンテナを走査しなければならない。すなわち、鋭い指向性を持ったアンテナの角度を順次変えていく為の構成が必要となる。
また、反射板付近に不要物体などが存在すると、反射板からの反射電力以外に不要物体からの反射電力が混在して検出される。不要物体が不安定な場合は、振動、風などのわずかな変位でRCSレベルが変動することになる。そして、本来の反射板からの反射波よりも大きいRCSレベルの変動があると障害物分離性能(すなわち障害物の有無の判定精度)が劣化し、また不要物体からの反射波の検出レベルの変動による誤検知(監視対象領域に障害物が存在しないにも関わらず、不要物体からの反射波の検出レベル変動により障害物が存在すると誤認する)等、障害物の検知に支障をきたすといった問題があった。
【0005】
この様な問題に対して、本出願の出願人は、既に、特願2004-323417号(以下、先願と呼ぶ)に記載の技術を提案している。
この先願の発明では、例えば図21に示すように、障害物検知対象領域(踏切101内等)を挟んで一方に(図上左側)一つのレーダ送受信機110を設置し、他方に(図上右側)に複数の検出反射体130を配置している。図示の例では、踏切101の長手方向(人や車等が踏切を渡るときの移動方向)に沿って複数の検出反射体130を配列し、踏切101を挟んで反対側にレーダ送受信機110を設置している。レーダ送受信機110は、水平広ビームアンテナ111を備えており、この水平広ビームアンテナ111から送信波121を送信する。水平広ビームアンテナ111は、広い水平面指向性(広いビーム幅)を持たせたアンテナであり、送信波121は、図示の様に、上記複数の検出反射体130を包含する広範囲の空間に放射されるレーダ波となる。
【0006】
この構成では、障害物検知領域内に障害物が存在しない場合には、水平広ビームアンテナ111から送信波121を一回送信する毎に、全ての検出反射体130から各々、反射波122が返されてくるが、各検出反射体130(検出反射体a〜f)から水平広ビームアンテナ111までの距離は、全て異なっているので(R1〜R6)、当然、送信波121の送信から各反射波122を受信するまでの時間(往復所要時間)も全て異なるので、この往復所要時間によって、各反射波122がどの検出反射体130からの反射波であるのかを区別できる。すなわち、上記各検出反射体130毎の往復所要時間に合わせて、レーダ送受信機110における各受信波122の検出タイミングを設定すればよい。
【0007】
これより、レーダ送受信機110では、任意のタイミングで上記送信波121を放射してから、各検出反射体130に対応する往復所要時間に応じたタイムスロット毎に、各反射波122の受信電力の変動判定を順次実行する(このような処理を、“時分割で処理する”というものとする)。もし、任意の検出反射体130との間に障害物(人間、バイク、車等)が存在する場合には、この検出反射体130からの反射波122が障害物によって遮断される為、受信電力が低下し、所定の閾値レベル以下となることから、障害物があることを検知できる。
【0008】
また、先願の特徴は上記検出反射体130とアンテナにある。まず、先願におけるレーダ送受信機110の送信アンテナは、水平偏波の偏波送信波を送信する。一方、受信アンテナは、垂直偏波の偏波受信波を受信する垂直偏波受信アンテナである。そして、検出反射体130は、水平偏波の偏波送信波を垂直偏波の偏波受信波として反射する機能を備えている。これにより、もし検出反射体130以外の何らかの構造物から反射があっても、それは水平偏波の偏波受信波であるので、垂直偏波受信アンテナによる受信電力レベルは非常に低いので、影響されないことになる。
【0009】
ここで、図21に示す、隣り合う二つの検出反射体130の配列間隔ΔGは、レーダ送受信機110の距離分解能によって、その最小間隔が決定される。すなわち、各検出反射体130のレーダ送受信機110(水平広ビームアンテナ111)に対する距離R1〜R6の差ΔR(たとえばR1とR2との差)が、レーダ送受信機110の距離分解能よりも大きくなるように、配列間隔ΔGを設定する必要がある。換言すれば、配列間隔ΔGは、レーダ送受信機110の距離分解能によって決定される所定値(最小間隔)Zより大きくする必要がある。検出反射体130の配列間隔ΔGを、上記所定値Zよりも小さくすると、以下に述べる問題が生じるからである。尚、所定値Zは、全ての検出反射体間について同一の値となるわけではない。例えば検出反射体e−f間の所定値Zと検出反射体d−e間の所定値Zとは、異なる値となる。
【0010】
図22(a)、(b)に、図21における検出反射体e,fを例にして、これら検出反射体e,fからの反射波による受信信号を示す。検出反射体eまでの距離R2と検出反射体fまでの距離R1は、R1<R2であるので、まず送信から受信までの時間t1のタイミングで検出反射体fからの受信信号があり、その後、送信から受信までの時間t2のタイミングで検出反射体eからの受信信号がある。
【0011】
検出反射体130の配列間隔ΔGが、上記所定値Zよりも大きければ、隣り合う二つの検出反射体e,fからの反射波による受信信号は、図22(a)に示すように正常な状態である。つまり、図示の“山”が2つある状態となる。そして、レーダ送受信機110と検出反射体e又はfとの間の何処かに障害物がある場合には、時間t1又はt2における受信電力は大幅に減少するので、所定の閾値と比較することで、レーダ送受信機110と検出反射体e又はfとの間に障害物があることを検知できる。
【0012】
一方、もし、検出反射体130の配列間隔ΔGを、上記所定値Zよりも小さくすると、図22(b)に示すように、隣り合う二つの検出反射体e,fからの反射波による受信信号が重複して1つの“山”となってしまう。この為、遮断検知を正常に行えなくなる。
よって、上記の通り、検出反射体130の配列間隔ΔGは、上記所定値Zよりも大きくしなければならない。
【0013】
しかしながら、障害物が小さなもの(人間等)である場合、すなわち図23に示すように、障害物102が検出反射体130の配列間隔ΔGの間に収まるような小さなものであるときには、反射波を遮断しないので、“障害物無し”と誤判定してしまうという問題が生じる。
【0014】
本発明の課題は、検出反射体の配置間隔をレーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔未満としても問題なく遮断検知できるようにすることで、小さな障害物であっても検知し易くする障害物検知レーダシステム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による第1の障害物検知レーダシステムは、入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、前記レーダ送受信機は、前記第1電波を送信する送信アンテナと、前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有するように構成する。
【0016】
第1の障害物検知レーダシステムでは、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力する。つまり、1回の測定毎に(第1電波送信毎)、同一偏波反射体からの反射波又は異偏波反射体からの反射波の何れか一方の反射波による受信信号のみを入力する。ここで、上記2種類の反射体のうち同じ種類の反射体同士の設置間隔は、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上としているので、この受信信号は、図22(b)で説明したような問題は生じない。一方、上記の通り、2種類の反射体を交互に設置しており、隣合う反射体の間隔、すなわち同一偏波反射体と異偏波反射体との間隔は、上記最小間隔よりも狭くできる。よって、受信アンテナを切り替えて測定を2回行えば、実質的に、上記最小間隔よりも狭い間隔で設置された反射体を用いた障害物検知を行えることになる。
【0017】
尚、異偏波反射体は、例えば、前記第1電波の偏波面を90°回転させた反射波を返す機能を有する。この反射波が上記第3電波である。よって、上記第1電波が例えば水平偏波の電波である場合には、上記第2電波も水平偏波の電波となるが、上記第3電波は垂直偏波の電波となる。
【0018】
本発明による第2の障害物検知レーダシステムは、入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、前記レーダ送受信機は、前記第1電波として水平偏波の電波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の電波を送信する第2の送信アンテナと、水平偏波の電波又は垂直偏波の電波の何れか一方のみを受信できる受信アンテナと、該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信させ、受信した電波の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有するように構成する。
【0019】
上記第2の障害物検知レーダシステムは、受信アンテナではなく、送信アンテナを交互に切り替えることで、上記第1の障害物検知レーダシステムと同様の機能を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の障害物検知レーダシステム等によれば、検出反射体の配置間隔をレーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔未満としても問題なく遮断検知できるので、小さな障害物であっても検知し易くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態の障害物検知レーダシステム全体の構成を示す図である。
この例では、障害物検知対象領域は、踏切1内であるものとし、本例の障害物検知レーダシステムは、先願と同様に、当該踏切1を挟んで対向するように、レーダ送受信機10と、複数の検出反射体2a〜2eが配置されている。検出反射体2a〜2eは、踏切1の上記長手方向に沿って設置される。
【0022】
レーダ送受信機10は、上記先願と同様に、送信アンテナとして水平広ビームアンテナを備えており、少なくとも全ての検出反射体2a〜2eを含む領域をレーダ覆域とする、水平方向に広いビーム幅の送信波を送信する。よって、この送信波は、全ての検出反射体2a〜2eに届く。そして、ここでは、この送信波は、水平偏波の偏波送信波3であるものとする。勿論、垂直偏波の偏波送信波を送信してもよいが、ここでは、水平偏波の偏波送信波3を送信するものとする。
【0023】
レーダ送受信機10(そのレーダ信号処理制御部14)は、先願と同様、任意のタイミングで上記送信波3を放射してから、各検出反射体2a〜2eに対応する往復所要時間に応じたタイムスロット毎に、各反射波(垂直偏波の偏波受信波4or水平偏波の偏波受信波5)による受信電力の変動判定を実行する(このような処理を、“時分割で処理する”というものとする)。もし、任意の検出反射体との間に障害物(人間、バイク、車等)が存在する場合には、この検出反射体からの反射波が障害物によって遮断される為、受信電力が低下し、所定の閾値レベル以下となることから、障害物があることを検知できる。
ここで、本例では、先願とは異なり、検出反射体は2種類あり、この2種類の検出反射体を交互に設置する。すなわち、例えば図示の検出反射体2b、2dは、上記先願の検出反射体130に相当するものであり(以下、異偏波用の検出反射体と呼ぶ)、入射波の偏波面を90°回転させて反射するものである。よって、検出反射体2b、2dは、上記水平偏波の偏波送信波3に対する反射波として垂直偏波の偏波受信波4をレーダ送受信機10に返す。勿論、垂直偏波の偏波送信波に対しては水平偏波の偏波受信波を返す。
【0024】
一方、検出反射体2a、2c、2eは、既存のリフレクタであり(以下、同一偏波用の検出反射体と呼ぶ)、上記水平偏波の偏波送信波3に対する反射波として水平偏波の偏波受信波5を返す。勿論、垂直偏波の偏波送信波に対しては垂直偏波の偏波受信波を返す。そして、図示の通り、検出反射体を2a、2b、2c、2d、2eの順に設置してある。
【0025】
レーダ送受信機10は、後に図3で説明する構成例では、1種類の送信アンテナと、2種類の受信アンテナ(垂直偏波受信アンテナ11c、水平偏波受信アンテナ11d)と、スイッチ(SW)15を備えており、SW15によって上記2種類の受信アンテナの何れか一方を選択して(基本的には交互に選択する)、選択した受信アンテナによる反射波受信信号を入力して、先願と同様、この受信信号レベル(受信電力)と閾値とに基づいて、障害物の有/無を判定する。
【0026】
上記スイッチ(SW15)によって受信アンテナを切り替えることで、1回の測定毎に、上記2種類の検出反射体の何れか一方の種類の検出反射体からの反射波による受信信号のみを入力するので(他方の種類の検出反射体からの反射波による受信信号レベルは非常に低いので、ここでは無いものとして扱う)、同じ種類の検出反射体同士の間隔(異偏波用の検出反射体2bと2dの間隔ΔGT、あるいは同一偏波用の検出反射体2aと2c及び2cと2eの間隔ΔGS)が、上述してあるレーダ送受信機10の距離分解能によって定められる所定値Z(最小間隔)よりも大きければ、上記図22(b)で説明した問題は生じない。且つ、各検出反射体の配列間隔ΔGを、上記所定値Zよりも小さくすることができる(例えばZ/2程度とすることができる)。そして、測定を2回行えば、実質的に、先願よりも短い配列間隔で設置された検出反射体を用いた障害物検知を行えることになる。すなわち、仮想的に、レーダ送受信機の分解能が細かくなる。
【0027】
従って、検知対象物(障害物)が小さくても、先願よりも検知し易くなる。
尚、レーダ送受信機10は、後に図5で説明する構成例の様に2種類の送信アンテナを備える構成としてもよい(この場合、受信アンテナは1種類)。この場合も、2種類の送信アンテナをスイッチ15によって交互に切り替えることで、上記図3の構成と同様、各検出反射体の配列間隔ΔGを上記所定値Zよりも小さくしても問題なく、きめ細かい障害物検知を行うことができる。
【0028】
尚、レーダ送受信機10の水平広ビームアンテナ(送信アンテナ)の指向性は、遠方の放射電力を強め、近くなるほど放射電力を弱める、矩形ビームとしてもよい。図1の例で言えば、検出反射体2aの方向に対しては放射電力を強め、検出反射体2eの方向に対しては放射電力を弱めるようにしてもよい。これによって、受信電力レベルをほぼ均等にし、遮断検知の為の閾値を1つのみとすることができる。
【0029】
以下、上記障害物検知レーダシステムについて、更に詳細に説明する。
まず、図2に、上記レーダ送受信機10の構成例を示す。
図2に示すレーダ送受信機10は、スイッチ(SW)15を介して送受信アンテナ11に接続される送信部12および受信部13と、レーダ信号処理制御部14と、不揮発性メモリ(ROM)17、外部入出力インターフェイス(I/F)18およびユーザインターフェイス(I/F)19を備えている。
【0030】
送受信アンテナ11は、水平偏波送信アンテナ11a、垂直偏波送信アンテナ11b、垂直偏波受信アンテナ11c、水平偏波受信アンテナ11dの4つのアンテナより成る。この4つのアンテナ全てを有する構成としてもよいが、本手法は、この4つのアンテナのうちの何れか3つのアンテナを有する構成とすれば実現できる。すなわち、送受信アンテナ11は、基本的には、「2種類の送信アンテナ+1種類の受信アンテナ」又は「1種類の送信アンテナ+2種類の受信アンテナ」として構成する。後に説明する図3、図5の例では、図3における送受信アンテナ11は、水平偏波送信アンテナ11a、垂直偏波受信アンテナ11c、及び水平偏波受信アンテナ11dより成り、図5における送受信アンテナ11は、水平偏波送信アンテナ11a、垂直偏波送信アンテナ11b、及び垂直偏波受信アンテナ11cより成る。
【0031】
図3の例では、スイッチ(SW)15によって、垂直偏波受信アンテナ11cと水平偏波受信アンテナ11dの何れか一方が、受信部13に接続される。そして、送信部12は、水平偏波送信アンテナ11aを介してレーダ波を外部に出力する。受信部13は、垂直偏波受信アンテナ11cまたは水平偏波受信アンテナ11dを介して、上記送信したレーダ波に対する反射波(偏波受信波4or5)による受信信号を入力する。すなわち、水平偏波の電波(偏波受信波)5または垂直偏波の電波(偏波受信波)4による受信信号を選択的に受信する。送信部12は、一定周期で送信アンテナからレーダ波を出力させるものであり、スイッチ15は基本的にはこの送信周期(計測周期)に合わせて切り替える。すなわち、任意の計測時に垂直偏波受信アンテナ11cを選択させたら、次の計測時には水平偏波受信アンテナ11dを選択させる。これは、図5の送信アンテナ切り替えの場合にも同様である。
【0032】
また、図5の例では、スイッチ(SW)15によって、水平偏波送信アンテナ11aと垂直偏波送信アンテナ11bの何れか一方が、送信部12に接続される。送信部12は、水平偏波送信アンテナ11aまたは垂直偏波送信アンテナ11bを介してレーダ波を外部に出力させる。受信部13は、垂直偏波受信アンテナ11cを介して、上記送信したレーダ波に対する反射波(垂直偏波の偏波受信波4)による受信信号を受信する。
【0033】
レーダ信号処理制御部14は、送信部12および受信部13を制御するとともに、送受信アンテナ11を介して受信部13にて検出された偏波受信波4or5の受信電力と、予め設定される閾値とに基づいて、送受信アンテナ11と各検出反射体2a〜2eとの間に障害物6が存在するか否かを判別する。すなわち、障害物検知対象領域内に障害物が存在するか否かを判別する。また、レーダ信号処理制御部14は、スイッチ15を切り替え制御して、上記2種類のアンテナの何れか一方を選択する。
【0034】
尚、レーダ信号処理制御部14はMPU(マイクロプロセッサ)によって実現される。MPUは、レーダ送受信機10の全体を制御するものであり、不揮発性メモリ17に格納されている制御プログラムやデータを読出し・実行することにより、各種処理を実行するものであり、レーダ信号処理制御部14は当該各種処理機能の一部である。よって、勿論、MPUによって実行される処理機能は、レーダ信号処理制御部14の機能に限らず、他にも例えば、レーダ信号処理制御部14による障害物6の検出結果を、外部入出力インターフェイス18を介して外部システムに出力する機能等がある。
【0035】
ユーザインターフェイス19は、ボタンスイッチ、キーボード、ディスプレイ等で構成され、作業者が、レーダ送受信機10を操作する場合に用いられる。
以下、図3、図5の構成について更に詳しく説明する。
【0036】
まず、図3の構成について説明する。図3(a)に示す構成は、既に説明した通り、送信アンテナは水平偏波送信アンテナ11aを用い、受信アンテナは垂直偏波受信アンテナ11cと水平偏波受信アンテナ11dの何れか一方をスイッチ15によって交互に選択して用いる。尚、図3におけるレーダシステム本体20とは、基本的には図2に示す構成のうち送受信アンテナ11とスイッチ15を除く全ての構成を意味するが、特に送信部12、受信部13、及びレーダ信号処理制御部14を意味するものとする。これは図5(a)においても同様である。
【0037】
尚、図3(a)、図5(a)においては、簡単の為、検出反射体は上記異偏波用、同一偏波用を1つづつ示す(図1の検出反射体2a、2bのみを示す)。よって、アンテナから異偏波用の検出反射体2bまでの距離はR1、アンテナから同一偏波用の検出反射体2aまでの距離はR2であり(R1>R2)、これら2つの検出反射体は隣り合っており、その配列間隔ΔGは、上記レーダ送受信機10の距離分解能に基づいて決定される所定値Zよりも小さい(例えばZ/2程度)ものである。つまり、検出反射体は従来の2倍程度の密度で設置されており、小さな障害物であっても検知し易くなっている。
【0038】
図4は、図3の構成におけるレーダシステム本体(レーダ信号処理制御部14)による障害物検知処理のフローチャート図である。また、図3(b)には、受信アンテナの切り替えタイミング、及び2種類の受信アンテナのどちらから受信信号を入力するかを示す。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、レーダ信号処理制御部14は、自己が生成する基準クロック信号を、スイッチ15に対して出力しており、スイッチ15は、基準クロック信号が‘1’になると垂直偏波受信アンテナ11c側に切り替わり、基準クロック信号が‘0’になると水平偏波受信アンテナ11d側に切り替わるようになっている。
【0040】
また、レーダ信号処理制御部14は、基準クロック信号が‘1’になったとき、及び‘0’になったときに、送信部12を制御して、水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波を出力させる。
【0041】
まず、レーダ信号処理制御部14は、基準クロック信号が‘1’になると、送信部12を制御して、水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波を出力させる(ステップS11)。この水平偏波の送信波に対しては、図3(a)に示すように、異偏波用の検出反射体2bは、垂直偏波の反射波を返し、同一偏波用の検出反射体2aは水平偏波の反射波を返す。垂直偏波受信アンテナ11cは垂直偏波の電波を受信でき、水平偏波受信アンテナ11dは水平偏波の電波を受信できる。
【0042】
尚、厳密に言えば、垂直偏波受信アンテナ11cは水平偏波の電波も交差偏波識別度で決まる電力で受信できるが、受信電力レベルが非常に小さいので、図22(b)の様な問題は生じない為、ここでは水平偏波の電波は受信できないものとして扱う。勿論、これは、水平偏波受信アンテナ11dについても同様である。
【0043】
そして、ここでは受信アンテナは垂直偏波受信アンテナ11c側に切り替わっているので、レーダシステム本体20には、図3(b)に示す通り、垂直偏波の反射波の受信信号のみが入力されることになる(ステップS12)。これより、レーダ信号処理制御部14は、この1つの受信信号のレベルが、予め設定される閾値以下であるか否かを判定し(ステップS13)、閾値以下であった場合には(ステップS13,YES)、レーダ送受信機10と異偏波用の検出反射体2bとを結ぶ線上の何処かに、障害物があると判定する(ステップS14)。尚、図3(b)に示す通り、水平偏波受信アンテナ11dは検出反射体2aからの水平偏波の反射波を受信しているが、この受信信号はレーダシステム本体20には入力されない。
【0044】
続いて、基準クロック信号が‘0’になると、スイッチ15が水平偏波受信アンテナ11d側に切り替わると共に、レーダ信号処理制御部14は、送信部12を制御して、水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波を出力させる(ステップS15)。そして、この場合には、レーダシステム本体20には、図3(b)に示す通り、検出反射体2aからの水平偏波の反射波による受信信号のみが入力されることになり(ステップS16)、レーダ信号処理制御部14は、この1つの受信信号のレベルが、予め設定される閾値以下であるか否かを判定し(ステップS17)、閾値以下であった場合には(ステップS17,YES)、レーダ送受信機10と同一偏波用の検出反射体2aとを結ぶ線上の何処かに、障害物があると判定する(ステップS18)。
【0045】
このように、反射体2a−2b間の間隔が所定値Z未満であっても、何れか一方の反射波のみが受信されるので、2つの受信波の“山”が重なることで区別出来なくなるという問題は生じない。
【0046】
尚、ここでは分かり易くする為に、ステップS11〜S14の処理とステップS15〜S18との処理を分けて示してあるが、これら2つの処理に違いはない。同じ処理であっても、スイッチ15が受信アンテナ11c、11dの何れを選択しているかによって、レーダ信号処理制御部14が受け取る受信信号が異なることを示しているだけである。
【0047】
次に図5の構成例について説明する。図5(a)の構成例に対応するレーダ信号処理制御部14による障害物検知処理のフローチャート図を図6に示す。また、図5(b)には、基準クロックによる送信アンテナの切り替えタイミングを示す。
【0048】
但し、図6に示す処理は、本質的には、図4の処理と変わらない。レーダ信号処理制御部14による処理自体は、「送信制御→受信信号のレベル判定による障害物の有無検知」である。ここでは、スイッチ15が切り替わることによって、使用する送信アンテナが変わることから、図4とは別に示しているだけである。
【0049】
すなわち、まず、図5(a)の構成では、スイッチ15は、基準クロック信号が‘1’になると垂直偏波送信アンテナ11b側に切り替わり、基準クロック信号が‘0’になると水平偏波送信アンテナ11a側に切り替わるようになっている。これより、レーダ信号処理制御部14が基準クロック信号が‘1’になったときに送信制御した場合には垂直偏波送信アンテナ11bから垂直偏波の送信波が出力され(ステップS21)、基準クロック信号が‘0’になったときに送信制御した場合には水平偏波送信アンテナ11aから水平偏波の送信波が出力されることになる(ステップS25)。そして、受信アンテナは垂直偏波受信アンテナ11cのみであるので、ステップS21,S25の何れの場合にも、垂直偏波の反射波のみが受信できる(ステップS22、26)。これは、図5(a)に示す通り、ステップS21の送信波に対しては同一偏波用の検出反射体2aによる反射波のみが受信でき、ステップS25の送信波に対しては異偏波用の検出反射体2bによる反射波のみが受信できる。
【0050】
もちろん、アンテナ11cを水平偏波受信アンテナとし、ステップS22およびステップS26で水平偏波の反射波のみを受信するようにしても構わない。
よって、検出反射体2a−2b間の間隔が所定値Z(最小間隔)未満であっても、何れか一方の反射波のみが受信されるので、2つの受信波の“山”が重なることで区別出来なくなるという問題は生じることなく、受信信号のレベルを閾値と比較して障害物の有無を判定する処理を問題なく行える(ステップS23,S24又はS27,S28)。
【0051】
図7(a)、(b)に、上記図3(a)又は図5(a)の構成における、レーダシステム本体20に入力される受信信号の一例を示す。ここでは、検出反射体は、図1における検出反射体2a〜2dの4つを例にする。図1に示す通り、レーダ送受信機10から各検出反射体2a〜2dまでの距離は、検出反射体2dが最も近く(R4)、検出反射体2aが最も遠い(R1)。また、検出反射体2a,2cが同一偏波用、検出反射体2b,2dが異偏波用である。尚、図示のt1〜t4は、これら距離R1〜R4に応じた受信タイミング(送信から受信までに掛かる時間)を意味する。
【0052】
まず、上記ステップS12又はS26で受信する受信信号は、図7(a)に示す通り、異偏波用の検出反射体2b,2dによる反射波の受信信号(上記距離R2、R4に応じたタイミングt2、t4で生じる2つの“山”)のみとなる。同じ種類の検出反射体間の間隔は、レーダ送受信機10の距離分解能に基づいて決定される所定値Zよりも大きいので、図22(b)のような状態にはならず、問題なくステップS13等による障害物検知の判定が行える。
【0053】
一方、上記ステップS16又はS22で受信する受信信号は、図7(b)に示す通り、同一偏波用の検出反射体2a,2cによる反射波の受信信号のみとなり、上記反射体2b、2dの場合と同様に、受信信号が重複して1つの“山”となってしまうことはない。
【0054】
そして、例えば何らかの小さな障害物がレーダ送受信機10−検出反射体2c間の何処かに居る場合、図7(a)のときには検知できないが、図7(b)のときに検知できる。つまり、測定を2回行えば、実質的に、距離分解能による制限を受けずに高い密度で配置された検出反射体によって障害物検知を行える。よって、小さな障害物であっても検知し易くなる。
【0055】
更に、先願と同様の効果も得られる。すなわち、異偏波用の検出反射体による反射波を受信するときには、他の何らかの反射体による反射波があっても影響されないので、設置環境等に影響されることなく、高精度の障害物検出を実現することができる。
【0056】
図8に、上記検出反射体の一例、及びその設置例を示す。
図示の検出反射体は、既に先願で示した三面体コーナレフレクタであり、3つの反射面を備えている。検出反射体は、この三つの反射面の交点を通る中心軸を送受信アンテナ11に向ける姿勢で設置される。送信アンテナから出力される送信電波は、この3つの反射面に順次反射された後、反射波となって送受信アンテナ11側に戻される。
【0057】
なお、三面体コーナレフレクタによる電波の反射機能については、たとえば、McGraw-Hill Book Company、1961年発行、「Antenna Engineering Handbook second edition」、P17-27、Fig.17-27、等の文献に記載されている。
【0058】
上記同一偏波用の検出反射体は、この様な既存の三面体コーナレフレクタを用いる。一方、異偏波用の検出反射体は、「水平偏波→垂直偏波」又は「垂直偏波→水平偏波」とする為の構成が加わっており、これについては先願で提案してあるが、後に簡単に説明するものとする。
【0059】
そして、本例では、図8に示す通り、例えば踏切沿いに存在する縁石21に各検出反射体を埋め込む。当然、図1で説明したように、同一偏波用の検出反射体と異偏波用の検出反射体とを交互に設置する。検出反射体を踏切上にそのまま置くと、設置位置のずれ等から、距離精度に影響を及ぼすことが起こり得る。検出反射体を縁石21に埋め込むことによって、この様な問題が生じることなく、且つ検出反射体の設置工事が簡略になる。尚、この例では踏切沿いに存在する縁石21を用いたが、この例に限らず、何らかの道路境界物(例えば、道路と歩道の間の段差部分等)に埋め込むようにすればよい。
【0060】
ここで、図1の設置例では、各検出反射体を踏切1の長手方向(図上、縦方向)に沿って設置しているが、踏切1の短手方向(図上、横方向)には設置していない。この為、図1に示す通り、踏切1内の図上左上側のエリアに、障害物検知できない領域が生じる。
【0061】
この為、踏切1の短手方向にも検出反射体を設置することを考えるが、踏切1の長手方向の場合には既存の縁石21があるので、これを利用して、縁石21に検出反射体を埋め込むことで、歩行や車両走行の邪魔にならないように設置できるが、踏切1の短手方向には縁石は無い。検出反射体をそのまま踏切上に設置すると、歩行や車両走行の邪魔になる。
【0062】
この問題を解決する為に、本例では、図9に示すように、踏切の遮断棒22にも、各検出反射体2を取り付ける。当然、同一偏波用の検出反射体と異偏波用の検出反射体とを交互に設置する。これにより、踏切の遮断棒22が下りているときには、図示の通り、踏切1の短手方向に沿って各検出反射体が配置されることになる。尚、踏切の遮断棒22が上がっているときには、通常、安全に通行できる状態であるので、障害物検知できなくても問題ない。また、遮断棒22は、縁石21よりも高い位置にあるが、図11に示す通り、レーダ送受信機10の送信アンテナの指向性は、ある程度の高さまで対応できるものであるので、問題はない。
【0063】
以上述べたように、踏切1の長手方向、短手方向の両方に検出反射体を配置することで、障害物検知できない領域を更に少なくすることができる。尚、これは、当然、踏切の場合に限らず、他の障害物検知対象領域についても同様である。
【0064】
更に、図10に示すようにレーダ送受信機10を2台設置し、踏切1(長方形)の4辺全てに検出反射体を配置することで、踏切内の障害物を殆ど死角無しに検知できるようになる。尚、これは、当然、踏切の場合に限らず、他の障害物検知対象領域についても同様である。尚、図11には、送信アンテナの指向性を示す。図示の通り、ある程度の高さに設置されたレーダ送受信機10から、踏切1の反対側の縁石21に埋め込まれた検出反射体2に向けて、すなわち斜め下方向に向けて、水平広ビーム(例えば水平偏波の偏波送信波3)が送信される。
【0065】
図12に、同じ種類の検出反射体間の間隔の決定方法の一例を示す。
図示の例では、検出反射体2a〜2eを例にし、検出反射体2a,2c,2eが同一偏波用、検出反射体2b、2dが異偏波用である(但し、図1とは配置が異なる)。本例では、既に説明してあるように、同一種類の検出反射体間の配列間隔が、上記所定値Zよりも大きくなるように設定する。
【0066】
ここでは、同一偏波用の検出反射体2a,2c,2eを例にする。そして、ここでは、レーダ送受信機10の距離分解能は、0.75(m)であるとする。そして、障害物検知対象領域は10(m)×10(m)のエリアであり、レーダ送受信機10から検出反射体2aまでの距離R1が最も短く、R1=10(m)であるとする。
【0067】
この場合、まず、レーダ送受信機10から検出反射体2cまでの距離R2は、10+0.75=10.75(m)以上とする必要がある。ここでは、R2=10.75(m)とすると、レーダ送受信機10から検出反射体2eまでの距離R3は、10.75+0.75=11.5(m)以上とする必要がある。
【0068】
これより、検出反射体2a−2c間の最小間隔Z(ΔG1)は、10.752=102+ΔG12より、ΔG1=3.95≒4となり、検出反射体2a−2c間の設置間隔ΔG1は、約4(m)以上とする必要がある。検出反射体2c−2e間の最小間隔Z(ΔG2)も同様にして求めることで、ΔG2は、約1.7(m)以上とする必要があることが分かる。
【0069】
異偏波用の検出反射体2b−2d間の設置間隔も、同様にして求める。
この様にして求めた同一種類の検出反射体間の最小設置間隔を守るように配置する限り、異なる種類の検出反射体間の設置間隔は、任意でよい。例えば、検出反射体2a−2b間の設置間隔は、任意でよい(勿論、検出反射体2bは、検出反射体2aと2cの間に設置しなければならず、且つ検出反射体2b−2d間の最小設置間隔を守るように検出反射体2dを設置したときに、検出反射体2dが検出反射体2cと2eの間に設置されるように、しなければならない。
【0070】
本例の障害物検知レーダシステムは、上述した例では踏切に設置するものとしたが、勿論、この例に限らない。他の設置例を図13、図14に示す。
図13は、本例の障害物検知レーダシステムを家屋敷地内(庭等)に設置して、ホームセキュリティシステムとして利用する例である。
【0071】
図示の通り、レーダ送受信機10を庭の一角に設置し、各検出反射体を敷地の隅の任意の場所に設置する。勿論、同一偏波用と異偏波用とを交互に設置する。これによって、敷地内に不法な侵入者等があったときには、この侵入者を検知できる。
【0072】
図14は、本例の障害物検知レーダシステムを駅のプラットフォームに設置して、転落者検知に用いる例である。図示の通り、レーダ送受信機10をプラットフォームに設置して、各検出反射体を、線路を挟んで反対側に設置する。プラットフォームは非常に長いので、レーダ送受信機10は複数設置している。
【0073】
ここで、従来の光線式の遮断検知方式では、落ち葉、紙等の遮断によって誤検知する場合があった。また、従来の一対の電波送信器−受信器を用いた対向式検知方式では、送信器、受信器の両方の設置及び配線が必須であり、コスト高になるという欠点があった。
これに対して、障害物検知レーダシステムでは、庭木の落ち葉や紙等によって遮断されても大きなレベル変動がないので誤検知することなく、確実に検出対象(人等)のみを検出することができる。また、1台のレーダ送受信機10を設置し配線すれば(検出反射体は配線の必要はない)、広範囲を検知対象エリアとすることができ、上記対向式検知方式や従来技術に比べて、設置の手間が掛からず且つコスト安となる。
【0074】
尚、上記の例に限らず、他にも例えば美術館の館内等のような各種施設内のセキュリティシステムとして利用してもよい。あるいは、宝石店の各種店内等のセキュリティシステムとして利用してもよい。
【0075】
また、上記説明では、水平偏波と垂直偏波の両方を扱えるレーダ送受信機による構成を述べたが、これを水平偏波のみを送受信する第一のレーダ送受信機と、垂直偏波のみを送受信する第二のレーダ送受信機との2台に分けてそれらを併設するようにする構成をとることもできる。その場合には、図1のレーダ送受信機10の位置に水平偏波用と垂直偏波用の2台のレーダ送受信機が設置され、また同様に図10のレーダAとレーダBの位置にもそれぞれ水平偏波用と垂直偏波用の2台のレーダ送受信機が設置される(即ち、図10には計4台のレーダ送受信機が含まれる)ことになる。
【0076】
最後に、上記検出反射体の構成例について説明する。
まず、上記先願で既に提案している検出反射体について説明する。
先願では、三面体コーナレフレクタを用いる。図15に既存の三面体コーナレフレクタの例を示す。本例では例えば図15の三面体コーナレフレクタを上記同一偏波用の検出反射体として用いる。
【0077】
図15には、反射面31、反射面32および反射面33という互いに直交する三つの反射面を備えた三面体コーナレフレクタ30を示す。本例では、直交する三つの反射面の交点(頂点30a)を通る中心軸をレーダ送受信機10のアンテナに向ける姿勢で、この三面体コーナレフレクタ30を設置する。これにより、レーダ送受信機10の送信アンテナから三面体コーナレフレクタ30に入射する入射波(偏波送信波3)は、反射面31、反射面32および反射面33の、第1反射点31a、第2反射点32aおよび第3反射点33aにおいて順次反射された後、反射波(偏波受信波5)となってレーダ送受信機10側に戻される。
【0078】
そして、本例の上記異偏波用の検出反射体は、図16に示すように、上記三面体コーナレフレクタ30における反射波の通過経路(三面体コーナレフレクタ30の開口部の右側半分程度)を覆うように、偏波変更膜34が備えられた構成となっている。この偏波変更膜34は、当該偏波変更膜34への入射波が水平偏波の電波であれば、これを垂直偏波の電波に変換する機能を備えている。勿論、入射波が垂直偏波の電波である場合には、これを水平偏波の電波に変換する。
【0079】
この偏波変更膜34は、例えば図17に示すように、絶縁膜34aの両面に、互いに逆方向に±45°に傾斜するように配置されたメタルストリップパターン34bおよびメタルストリップパターン34cで構成されるミリ波変換膜からなる。メタルストリップパターン34bおよびメタルストリップパターン34cの幅wおよび間隔sは、入射波の周波数に応じて適宜設定される。そして、このような構成の偏波変更膜34を通過する入射波の電界方向Ei(偏波面)は、90°回転し、電界方向Eoとなる。尚、偏波変更膜34を通過する入射波は、偏波面が90°回転するだけであり、強さは減衰しない。
【0080】
そして、偏波変更膜34は、水平偏波の入射面を三面体コーナレフレクタ30の反射面側に向けた姿勢で当該三面体コーナレフレクタ30に装着される。
これより、図1の例の場合、図16に示す構成の検出反射体2b、2dに水平偏波として入射する偏波送信波3は、反射面33で反射された後、裏面側から偏波変更膜34を通過することによって、ほとんど減衰することなく偏波面が90°回転し、垂直偏波の偏波受信波4としてレーダ送受信機10側に返される。また、偏波変更膜34の表面(出射面)側に入射した電波は散乱される。
【0081】
尚、検出反射体は、上記三面体コーナレフレクタを用いる例に限らず、例えばレンズリフレクタを用いてもよい。図18に、既存のレンズリフレクタの構成例を示す。図18(a)には90°CAPを備える例、図18(b)には180°CAPを備える例、図18(c)にはCAP無しの例を示す(参考文献;「ANTENNA ENGINEERING HANDBOOK second edition」、p17−28、Fig.17−29)
図18に示す既存のレンズリフレクタを上記同一偏波用の検出反射体として用いる。
【0082】
そして、上記異偏波用の検出反射体は、図19に示すような、図18のレンズリフレクタに上記偏波変更膜34を挿入したものを用いる。
上記三面体コーナレフレクタは、その形状ゆえにゴミ等が溜まる為、これが検知性能の劣化に繋がる可能性がある。これに対して、レンズリフレクタは、球であるので、ゴミが溜まることなく、検知性能が劣化する可能性は極めて低くなる。
【0083】
レンズリフレクタを用いる場合、図11の設置状況が図20に示すようになる。
(付記1) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波を送信する送信アンテナと、前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【0084】
(付記2) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波として水平偏波の電波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の電波を送信する第2の送信アンテナと、水平偏波の電波又は垂直偏波の電波の何れか一方のみを受信できる受信アンテナと、該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信させ、受信した電波の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【0085】
(付記3) 前記異偏波用反射体は、前記第1電波が垂直偏波の電波である場合には前記第3電波を水平偏波の電波とし、前記第1電波が水平偏波の電波である場合には前記第3電波を垂直偏波の電波とすることを特徴とする付記1又は2記載の障害物検知レーダシステム。
【0086】
(付記4) 前記異偏波用反射体は、前記第1電波の偏波面を90°回転させる偏波変更体を備えることを特徴とする付記1〜3の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0087】
(付記5) 前記送信アンテナが前記第1電波として水平偏波の電波を送信するアンテナである場合には、前記第1の受信アンテナは水平偏波受信用アンテナであり、前記第2の受信アンテナは垂直偏波受信用アンテナであり、
前記制御手段は、前記第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを交互に切り替えることで、前記第2電波による前記受信信号と前記第3電波による前記受信信号とを交互に入力することを特徴とする付記1記載の障害物検知レーダシステム。
【0088】
(付記6) 前記制御手段は、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとを交互に切り替えて前記第1電波を送信させることで、前記第2電波による前記受信信号と前記第3電波による前記受信信号とを交互に入力することを特徴とする付記2記載の障害物検知レーダシステム。
【0089】
(付記7) 前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、道路境界構造物に埋め込むことで設置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0090】
(付記8) 前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、前記障害物検知対象領域が踏切である場合には、遮断棒に取り付けることで設置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0091】
(付記9) 前記障害物検知対象領域が踏切である場合には、前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、踏切の長手方向に設けられる縁石に埋め込むと共に遮断棒に取り付けることで設置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【0092】
(付記10) 前記同一偏波反射体はレンズリフレクタであり、前記異偏波用反射体は該レンズリフレクタに前記偏波変更体を取り付けたものであることを特徴とする付記4記載の障害物検知レーダシステム。
【0093】
(付記11) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、水平偏波の電波を送受信する第1の送受信アンテナを有する第1のレーダ送受信機と、垂直偏波の電波を送受信する第2の送受信アンテナを有する第2のレーダ送受信機とが併設されたものであり、
該第1のレーダ送受信機と第2のレーダ送受信機は、各々、前記第1又は第2の送受信アンテナによって前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段を有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【0094】
(付記12) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とが交互に、且つ、同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔が、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上となるように設置された障害物検知対象領域に対して、前記第1電波を送信する送信アンテナと、
前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、
前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、
該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知を行う制御手段と、
を有することを特徴とするレーダ送受信機。
【0095】
(付記13) 入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とが交互に、且つ、同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔が、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上となるように設置された障害物検知対象領域に対して、前記第1電波を送信する送信アンテナとして、前記第1電波として水平偏波の送信波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の送信波を送信する第2の送信アンテナとを備え、更に、
前記第2電波又は第3電波を受信する受信アンテナと、
該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と前記第3電波の何れか一方を受信させて、該受信した電波による受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知を行う制御手段と、
を有することを特徴とするレーダ送受信機。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】障害物検知レーダシステム全体の構成を示す図である。
【図2】レーダ送受信機全体の構成例である。
【図3】(a)は2種類の受信アンテナを交互に切り替えて使用するレーダ送受信機の構成例であり、(b)は切り替えタイミングを示す。
【図4】図3の構成におけるレーダ信号処理制御部による障害物検知処理のフローチャート図である。
【図5】(a)は2種類の送信アンテナを交互に切り替えて使用するレーダ送受信機の構成例であり、(b)は切り替えタイミングを示す。
【図6】図5の構成におけるレーダ信号処理制御部による障害物検知処理のフローチャート図である。
【図7】(a),(b)は、レーダシステム本体に入力される受信信号の一例である。
【図8】検出反射体の一例、及びその設置例である。
【図9】検出反射体を遮断棒に取り付けた例である。
【図10】検出反射体及びレーダ送受信機の設置例である。
【図11】送信アンテナの指向性を示す図である。
【図12】同じ種類の検出反射体間の間隔の決定方法の一例を示す図である。
【図13】障害物検知レーダシステムをホームセキュリティシステムとして利用する例である。
【図14】障害物検知レーダシステムを転落者検知に用いる例である。
【図15】同一偏波用の検出反射体の具体例であり、既存の三面体コーナレフレクタの例である。
【図16】異偏波用の検出反射体の具体例(その1)である。
【図17】偏波変更膜の構成例である。
【図18】同一偏波用の検出反射体の具体例であり、既存のレンズリフレクタの例である。
【図19】異偏波用の検出反射体の具体例(その2)である。
【図20】レンズリフレクタの設置例である。
【図21】先願の障害物検知レーダシステムの構成例である。
【図22】(a)、(b)は、図21のシステムにおける各検出反射体からの反射波による受信信号である。
【図23】障害物を検知できない状況例である。
【符号の説明】
【0097】
2a,2c,2e (同一偏波用)検出反射体
2b、2d (異偏波用)検出反射体
3 水平偏波の偏波送信波
4 垂直偏波の偏波受信波
5 水平偏波の偏波受信波
10 レーダ送受信機
11 送受信アンテナ
11a 水平偏波送信アンテナ
11b 垂直偏波送信アンテナ
11c 垂直偏波受信アンテナ
11d 水平偏波受信アンテナ
12 送信部
13 受信部
14 レーダ信号処理制御部
15 スイッチ(SW)
17 不揮発性メモリ(ROM)
18 外部入出力インターフェイス(I/F)
19 ユーザインターフェイス(I/F)
21 縁石
22 遮断棒
30 三面体コーナレフレクタ
31,32,33 反射面
31a 第1反射点
32a 第2反射点
33a 第3反射点
34 偏波変更膜
34a 絶縁膜
34b メタルストリップパターン
34c メタルストリップパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波を送信する送信アンテナと、前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【請求項2】
入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波として水平偏波の電波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の電波を送信する第2の送信アンテナと、水平偏波の電波又は垂直偏波の電波の何れか一方のみを受信できる受信アンテナと、該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信させ、受信した電波の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【請求項3】
前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、道路境界構造物に埋め込むことで設置することを特徴とする請求項1又は2記載の障害物検知レーダシステム。
【請求項4】
前記障害物検知対象領域が踏切である場合には、前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、踏切の長手方向に設けられる縁石に埋め込むと共に遮断棒に取り付けることで設置することを特徴とする請求項1又は2記載の障害物検知レーダシステム。
【請求項5】
前記同一偏波反射体はレンズリフレクタであり、前記異偏波用反射体は該レンズリフレクタに前記第1電波の偏波面を90°回転させる偏波変更体を取り付けたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【請求項1】
入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波を送信する送信アンテナと、前記第2電波を受信できる第1の受信アンテナと、前記第3電波を受信できる第2の受信アンテナと、該第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることで、前記第2電波と第3電波の何れか一方の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【請求項2】
入射される第1電波を第2電波として反射する同一偏波反射体と、入射される第1電波を該第1電波の偏波面を変化させた第3電波として反射する異偏波用反射体とを交互に配置すると共に同一偏波反射体間の設置間隔及び異偏波用反射体の設置間隔を、レーダ送受信機の距離分解能によって定められる最小間隔以上の間隔とし、
前記レーダ送受信機は、前記第1電波として水平偏波の電波を送信する第1の送信アンテナと、前記第1電波として垂直偏波の電波を送信する第2の送信アンテナと、水平偏波の電波又は垂直偏波の電波の何れか一方のみを受信できる受信アンテナと、該第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを切り替えて何れか一方から前記第1電波を送信させることで、前記受信アンテナに前記第2電波と第3電波の何れか一方を受信させ、受信した電波の受信信号を入力し、該受信信号を時分割で処理することで障害物検知対象領域内の障害物検知を行う制御手段とを有することを特徴とする障害物検知レーダシステム。
【請求項3】
前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、道路境界構造物に埋め込むことで設置することを特徴とする請求項1又は2記載の障害物検知レーダシステム。
【請求項4】
前記障害物検知対象領域が踏切である場合には、前記同一偏波反射体及び異偏波用反射体は、踏切の長手方向に設けられる縁石に埋め込むと共に遮断棒に取り付けることで設置することを特徴とする請求項1又は2記載の障害物検知レーダシステム。
【請求項5】
前記同一偏波反射体はレンズリフレクタであり、前記異偏波用反射体は該レンズリフレクタに前記第1電波の偏波面を90°回転させる偏波変更体を取り付けたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の障害物検知レーダシステム。
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図3】
【図5】
【図12】
【図13】
【図17】
【図19】
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図3】
【図5】
【図12】
【図13】
【図17】
【図19】
【公開番号】特開2007−17356(P2007−17356A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200936(P2005−200936)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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