説明

隠蔽印刷層を備えた黒色カード

【課題】 永年の使用によってカード表面が摩滅しても外観性が低下することのない黒色カードを提供する。
【解決手段】 本発明の隠蔽印刷層を備えた黒色カード1は、カード基体の中心層として白色のコアシート101,102を有し、その両面に透明オーバーシート103,104を積層したカードの少なくともカードの表オーバーシート103外表面に印刷された黒色ベタ印刷層を有する黒色カードにおいて、少なくとも表面オーバーシート側の白色コアシート101面に、実質的に同色の黒色隠蔽印刷がされていることを特徴とする。
なお、透明コアシートの両面に透明オーバーシートを積層したカードの表面側透明オーバーシート外表面と裏面側コアシートに黒色ベタ印刷層を有する黒色カードで、透明コアシートに同様に黒色隠蔽印刷をした場合には、コアシートも黒色のカードが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードの表面色が黒色のカードに関するが、特に、表面側オーバーシート面に黒色ベタ印刷層を有するほか、オーバーシーの下面に、さらに黒色の隠蔽層を備えた耐摩耗性の高い黒色カードに関する。
【背景技術】
【0002】
カードの表面色が黒色のカード、すなわちブラックカードは重要な顧客や会員に付与されるものとして、高級カードとしてのイメージが大きい。一般に、カード発行者は会員をステータス別に「一般カード会員」、「ゴールドカード会員」、「ブラックカード会員」に分類しサービスの差別化を図っている。とりわけ、「ブラックカード会員」は最上級のサービスを受けられ、主に富裕層がその対象となっていると言われる。
しかし、黒色カードも長期間にわたって使用するとカードの四隅や縁辺部の黒色が剥げて、下色の隠蔽銀の銀色やコアシートの白色が表面からも見える状態になってしまう。隠蔽銀印刷の下面のオーバシートは透明なので、黒色印刷と隠蔽銀印刷が剥げると、カード中心層のコアシートの白色が見え易くなるからである。ブラックカードでは特にこの剥げた状態が目立つ問題がある。このようになってしまっては、高級感も消え失せ、かえって見すぼらしい状態にもなってしまう。
【0003】
図6は、長期間使用した後のカード状態を示す図であり、図6(A)は、平面図、図6(B)は、図6(A)の概略断面を示す図である。
表面印刷の摩滅部1mは、カードの四隅や縁辺部、ICモジュール8の周囲部分に生じることが多い。カード入れやリーダライタへの挿抜時の機械的摩擦やカード携帯中に生じる衣服との接触摩擦が原因と考えられる。凸状にエンボスした文字9の表面に施した箔押しが剥落する現象も生じるが、これは表面印刷の摩滅とは異なり、箔押しによるチッピング(Tipping)の剥落の問題である。チッピングの剥落に関しては、出願人の先の出願(特許文献3)で対策が提案されている。
【0004】
図6(B)のように、近年のカード(特に磁気カードやICカード)では、1ないし2枚(図6では2枚)のコアシート101,102を中心層として、その両面に保護用の透明オーバーシート103,104を積層したカード基体10の構成からなるものが多い。黒色カード表面には、転写した絵柄層6が形成されている。絵柄層6は、オセット等の柄印刷3と比較的厚盛りのシルクスクリーン印刷等による黒色ベタ印刷4と隠蔽銀印刷5とからなり、最表面に剥離層7が形成されている。剥離層7は、転写フィルムから絵柄層6を容易に剥離させるために、転写フィルムの基材面に形成された層であり、転写後は通常、絵柄層6側に転移している。これは極めて薄い(1〜2μm)層であるが保護層の役割りをしている。カード裏面側にもオセット等の柄印刷3と銀印刷5等がされている。
【0005】
オーバーシート103は透明なシートであり、塩化ビニールやポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G等の材質からなる50〜100μmの厚みのものである。
オーバーシート103の内側には、白色のコアシート101がある。オーバーシート103に転写した磁気テープ12を隠蔽するために、その面に隠蔽銀印刷(銀ベタの印刷)5がされていることが多い。上記のように、黒色カードの縁辺部等が摩滅して外観価値が低下するのは、黒色ベタ印刷4が摩耗して隠蔽銀印刷5が見えるようになるか、隠蔽銀印刷5も摩耗して透明なオーバーシート103を介してコアシート101の白色が見えるようになるためである。図6(B)の左上部は、摩滅部1mを示している。オーバーシート103まで摩滅する場合がある。右上部等も摩耗しているが図示していない。
黒色ベタ印刷4もオーバーシート103も耐久性を考慮したものではあるが、永年の使用では、そのようなカード状態になることも避けられないことがある。
【0006】
そこで本発明(請求項1)では、隠蔽銀印刷5に代えて(隠蔽銀印刷5を止めて)、実質的にオーバーシートの黒色ベタ印刷4と同色の黒色によるシルクスクリーン印刷をコアシート101に対して行い、黒色ベタ印刷4やオーバーシート103が摩耗した場合も、当該シルクスクリーン印刷によって、コアシート101の白色が外観に現れないようにすることを検討したものである。なお、請求項2では、コアシートに透明材料を使用する形態になっている。
【0007】
本発明のように、カードの摩滅防止を目的とする先行技術は特に検出されないが、カード摩耗防止を考慮したリーダライタ等に関し、特許文献1、2等がある。
特許文献4は、コアシートとして透明基材を使用して、カードの側面から見た場合に、基材が黒色に見えるようにした、出願人による先願である。特許文献4は、請求項2において利用する発明に関する。
【特許文献1】特開平6−187508号公報
【特許文献2】特開2006−307157号公報
【特許文献3】特願2008−005583号
【特許文献4】特願2008−024854号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カードの表面色が黒色のカードに関して、永年の使用で縁辺部等の黒色印刷層やオーバーシート層が摩耗しても、内部のコアシートの白色(または透明)が現れず、外観から見た高級感の低下を招き難いカードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の要旨の1は、カード基体の中心層として白色コアシートを有し、その両面に透明オーバーシートを積層したカードの少なくともカードの表面オーバーシートを介して、表面オーバーシート外表面に印刷された黒色ベタ印刷層を有する黒色カードにおいて、少なくとも表面オーバーシート側の白色コアシート面に、実質的に前記黒色ベタ印刷層と同色の黒色隠蔽印刷がされていることを特徴とする隠蔽印刷層を備えた黒色カード、にある。
【0010】
上記課題を解決する本発明の要旨の2は、カード基体の中心層として透明コアシートを有し、その両面に透明オーバーシートを積層したカードの少なくともカードの表面オーバーシートを介して、表面オーバーシート外表面に印刷された黒色ベタ印刷層を有する黒色カードにおいて、表面オーバーシート側の透明コアシート面に、実質的に前記黒色ベタ印刷層と同色の黒色隠蔽印刷がされ、透明コアシートの他方の面に、表面に印刷された黒色ベタ印刷層と同色の黒色ベタ印刷がされていることを特徴とする隠蔽印刷層を備えた黒色カード、にある。
【0011】
上記隠蔽印刷層を備えた黒色カードにおいて、カードの文字エンボス部分に、エンボス文字のチッピング色と同系色の印刷インキによる着色層が隠蔽印刷層の上に部分的に形成されている、ようにすることができ、その場合には、文字エンボス部分のチッピングの剥落を補うことができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の隠蔽印刷層を備えた黒色カードは、長期間使用して表面の黒色ベタ印刷層やその下面のオーバーシートが摩耗しても、さらに内側のコアシートに印刷した黒色隠蔽層が現れて補う効果を有するため、黒色カードの外観が損なわれることが少ない。
請求項2の隠蔽印刷層を備えた黒色カードは、請求項1のカードと同様の効果を有するほか、両面に黒色ベタ印刷層を有し、さらにコアシートが透明にされているので、カードの側面から見てもコアシート部分が黒色に見える効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の隠蔽印刷層を備えた黒色カードについて図面を参照して説明する。
図1は、本発明の隠蔽印刷層を備えた黒色カードの第1形態を示す断面図、図2は、同第2形態を示す断面図、図3は、第2形態の黒色カードを側面から見た場合を説明する図
、図4は、絵付け用転写フィルムの構成を示す図、図5は、転写工程を示す図、である。
【0014】
図1は、本発明の隠蔽印刷層を備えた黒色カード(以下、「黒色カード」ともいう。)の第1形態1aを示す断面図である。図1のように、1枚ないし数枚(図1では2枚)の白色コアシート101,102を中心層として、その両面に保護用の透明オーバーシート103,104を積層したカード基体10の層構成からなっている。透明オーバーシート103とコアシート101、透明オーバーシート104とコアシート102の間は、図1では離して図示しているが、熱融着又は接着シート等を介して接着されているものである。このカード基体10の構成は、図6で説明した従来品の黒色カードと同様である。
カードの全体厚みは、ISO規格に準拠する厚み、0.76mm±0.08mm、より好ましくは、0.78mm±0.04mmにされる。
カードの表面側オーバーシート103に転写した絵柄層6が形成されている。絵柄層6は、シルクスクリーン印刷等による比較的厚盛りの黒色ベタ印刷4aとオフセット等の柄印刷3とからなっている。黒色ベタ印刷4aは、通常、1μm〜10μm程度の厚みに印刷されている。最表面に剥離層7が形成されていることも、従来品と同様である。
【0015】
黒色カード1aの特徴は、透明オーバーシート外表面に印刷された黒色ベタ印刷4aのほかに、コアシート101の前記透明オーバーシート103側面に、実質的に黒色ベタ印刷4aと同色の黒色隠蔽印刷2がされていることにある。黒色隠蔽印刷2はコアシート101に直刷り(直接印刷)したもので、黒色ベタ印刷4aは転写印刷したものである。黒色隠蔽印刷2もシルクスクリーン印刷によるベタ刷りのものである。両者は肉眼で見て判別できない程度に近似した色相にするのが好ましい。両者は同等の材質からなるが、二重に印刷した内側のものを隠蔽印刷というものとする。黒色隠蔽印刷2も、通常、1μm〜10μm程度の厚みに印刷されている。
【0016】
ただし、従来の黒色カードに用いられていた隠蔽銀印刷5(図6(B)参照)はされていない。カードの裏面側も、透明オーバーシート104の外表面に印刷された黒色ベタ印刷を行い、コアシート102の前記透明オーバーシート104側面に、実質的に黒色ベタ印刷4aと同色の黒色隠蔽印刷がされているようにしてもよいが、カード裏面側の外観が表面側と同様に重要視されることは少ないだろう。
従って、カードの裏面側は、従来の構成と同様でよい。すなわち、白色コアシート102の外面に銀印刷5や他の色の濃色にされていてよい。文字等のオフセット印刷3がされているのが通常である。隠蔽銀印刷5は、磁気テープ12を隠蔽する目的があるが、裏面に磁気テープが無い場合は、隠蔽する目的がないから銀印刷5としている。
【0017】
上記において「ベタ刷り」とは、通常は全面に印刷することを意味するが、カードのマーク部1Mやホログラム箔転写部1H(図6参照)等、下色が明るいことが望ましい部分は、当該部分の黒色は適宜除去してもよいものとする。要するに、外観的にブラックカードであることを達成できれば良く、必ずしも物理的に全面「黒」であることを意味するものではない。以下において、「ベタ刷り」という場合も同様である。
【0018】
着色層11は、エンボス文字のチッピング色と同系色の印刷インキによる印刷がされた部分である。前述の特許文献3に記載されるように、凸状にエンボスした文字9の表面に施した箔押しの着色剤が剥落した際に、着色層11が見えるようにすることにより、表面の剥落を目立たなくするために施すものである。
カード表面印刷の摩滅対策とは異なり、チッピングの剥落を補う手段であるが、隠蔽印刷層の形成と同時の工程で行うことができるので、必須ではないが本発明に併用できる利点がある。
【0019】
図2は、本発明の隠蔽印刷層を備えた黒色カードの第2形態1bを示す断面図である。図2のように、1枚ないし数枚の透明コアシート101t,102tを中心層として、その両面に保護用の透明オーバーシート103,104を積層したカード基体10tの層構成からなっている。図2では、コアシートは2枚であるが、3枚又は4枚であってもも良いものである。スペーサシートと言う場合もある。
カードの表面側オーバーシート103に転写した絵柄層6が形成されていること、および絵柄層6は、シルクスクリーン印刷等による比較的厚盛りの黒色ベタ印刷4aとオフセット等の柄印刷3とからなること、最表面に剥離層7が形成されていることは、第1形態と同様である。
【0020】
黒色カード1bは、透明オーバーシート103外表面に印刷された黒色ベタ印刷4aのほかに、コアシート101tの前記透明オーバーシート103側外面に、黒色隠蔽印刷2がされ、透明コアシート102tの外面に黒色ベタ印刷4bがされている特徴がある。図示して無いが黒色ベタ印刷4bの外面側に銀印刷5を併用してもよい。
透明コアシートなので、白色コアシートのように白色が表面に現れることはないが、従来仕様では外観性が低下する。下側の透明オーバーシート104に黒色ベタ印刷がされていてもよいが、いずれか一方が黒色にされていればコアシートは黒色に見える。
【0021】
黒色隠蔽印刷2も黒色ベタ印刷4bもシルクスクリーン印刷によるベタ刷りのものであるが、透明コアシート101tに対する黒色隠蔽印刷2、透明コアシート102tに対する黒色ベタ印刷4bやオフセット印刷3の印刷は、熱プレス前の工程で行っておくものである。カードの裏面側、すなわち、透明コアシート102t又は透明オーバーシート104の外面に黒色ベタ印刷4bがされていることが必要なのは、カードを側面から見た場合に、他の側面からの入射光を吸収してコアシート101t,102t部分が黒色に見えるようにするためである。第1形態と同様に、チッピングの剥落を補う着色層11を備えていてもよい。
【0022】
図3は、第2形態の黒色カード1bを側面から見た場合を説明する図である。カードの層構成は概略である。第2形態の場合は、カードの両面が黒色なので表裏から光が入ることがない。黒色カード1bのコアシートの一方側から光Lが入って、透明なコアシート101t,102t内を進行しても、黒色ベタ印刷4a(黒色隠蔽印刷2も寄与する)と黒色ベタ印刷4bの間を通過する間の多重反射により吸収されて消失するので、いずれの辺から見てもコアシート101t,102t部分は黒色に見えることになる。コアシートが透明だからカード側面から光があたっても表面反射は生じない。一方、第1形態の場合は中心層の白色コアシートは、表面反射するから当然ながら白く見えることになる。
従って、第2形態1bの場合は、表面側の透明オーバーシート103と透明コアシート102tの双方に黒色ベタ印刷を施す必要があり、カードの一方側表面のみに黒色ベタ印刷をしても意味がないことになる。このカードについては、前記特許文献4に詳細に記載されているが、第2形態のカードは、さらに高度の耐久性を持たせた意義がある。
【0023】
第1形態の黒色カード1aは、黒色のコアシートを使用すれば、黒色ベタ印刷やオーバーシートが摩耗しても黒色のコアシートが見えるようになるので、外観性が低下することは無いと考えられる。第2形態の黒色カード1bも黒色コアシートを使用すれば、側面が白色に見えることはない。
しかし、シート基材メーカーは、成形装置に黒色顔料を使用すると、後続するシート加工で黒色の汚れを発生させることになり、これを防止するためには手間のかかる念入りな装置の清掃が必要になることから、白色や透明材料と同等の価格で材料を供給することには積極的ではない。従って、シート材料の高騰を招き、ブラックカード自体も高価なものにならざるを得ない問題がある。
【0024】
次に、本発明の黒色カードの製造工程について説明する。
黒色カードが磁気カードである場合は、黒色隠蔽印刷2が施されたコアシート101とコアシート102、磁気テープが転写されたオーバーシート103とオーバーシート104を仮積みした後、熱圧プレスして一体のカード基体にし、その後、オーバーシート103の面に絵付け用転写フィルムを用いて絵柄層6を転写することにより行う。絵柄転写とカード基体の一体化を一回の工程で行う場合もあり、後述の実施例は、一回の工程で行うものを記載している。
【0025】
黒色カードが非接触ICカードである場合は、アンテナを形成しICチップを実装したアンテナシートを中心層とし、コアシート102や必要な黒色隠蔽印刷2が施されたコアシート、オーバーシートを仮積みした後、熱圧プレスして一体のカード基体にし、その後、オーバーシート面に絵付け用転写フィルムを用いて表面絵柄を転写して、非接触ICカードを完成する。通常、ICチップは表面に現れないようにする。
黒色カードが接触・非接触共用ICカードである場合は、アンテナを形成したアンテナシートを中心層とし、必要な黒色隠蔽印刷2が施されたコアシート、オーバーシートを仮積みした後、熱圧プレスして一体のカード基体にし、その後、オーバーシート面に絵付け用転写フィルムを用いて表面絵柄を転写する。その後、ICモジュール装着用凹部を切削してICモジュールの装着とアンテナとの接続を行い、共用ICカードを完成する。
黒色カードが接触ICカードである場合は、アンテナシートを用いずに、ICモジュールの装着のみを行う。
これらの工程については、先行技術にも詳細に記載されているので、詳述を避け、本願に関連する絵柄転写工程と黒色隠蔽印刷について、以下説明することとする。
【0026】
図4は、絵付け用転写フィルムの構成を示す図である。
絵付け用転写フィルム20は、PET等の転写フィルム基材21に薄層の剥離層(厚み0.5μm〜2μmでグラビア印刷による)27を印刷した後、剥離層27の一部にオフセット印刷やシルクスクリーン印刷で絵柄23を印刷し、最後に黒色ベタ印刷24をシルクスクリーンで印刷した構造になっている。カード発行会社を示すマーク部分等は明るく表現するため、黒色ベタ印刷24を除くのが好ましい。マークデザインや白文字等は、オフセットで印刷することが多いが、シルクスクリーン印刷でもよい。
マークデザインや白文字等(絵柄23)を印刷してから黒色ベタ印刷24を行へば鮮明な文字になる。この黒色ベタ印刷24部分に、従来は銀ベタを重ねて印刷していたが、本発明では銀ベタを止めて、コアシート101に黒色隠蔽印刷2を行うものである。
【0027】
図5は、絵柄転写工程を示す図である。
転写工程では、上記転写フィルム20を、オーバーシート103面に転写することにより行う。オーバーシート103は、コアシート101,102、オーバーシート104と共に、仮積みされた状態になっている。仮積みとは、各基材の層間が本接着されていない状態で位置合わせされ、かつ位置ずれしないようにシート間がスポット溶着等により固定されている状態を言う。オーバーシート103側に面するコアシート101面は、黒色隠蔽印刷2がされ、必要により着色層11も印刷されている。これらは厚肉に印刷されるシルクスクリーン印刷によるのが好ましい。
転写は、絵付け用転写フィルム20をオーバーシート103面に位置合わせして重ね、金属鏡面板30間に挟み、熱圧をかけてプレスラミネートする。プレス後、転写フィルム基材21を剥離すれば、剥離層27以下の絵柄23と黒色ベタ印刷24がオーバーシート103側に転写され、図1に図示する状態になる。この工程までは、一般的にカードの多面付けの状態で行う。黒色ベタ印刷4をカード基体10の両面に転写する場合は、オーバーシート103とオーバーシート104の両面に転写フィルム20をあてがい、同時の工程で転写できる。
【0028】
黒色隠蔽印刷2は、コアシート101にあらかじめ印刷しておく。カードの両面に黒色隠蔽印刷2を形成する場合は、勿論、コアシート102にもあらかじめ印刷しておく。
この印刷は、外観的には黒色ベタ印刷4と肉眼的に同等色になるのが好ましい。従って通常は、同一のインキを用いて同一の方法で、略同一厚みに印刷することになる。
ブラックカードを演出するために、多くは、カード表面に上述のように黒色を使用するが、黒色に近い茶色、ブルー、グリーンなどでも良いものである。
上記は、第1形態の製造工程について説明しているが、第2形態の場合は、透明コアシートを用いることと両面に黒色ベタ印刷を行うことの違いだけであるから、その他の特別な工程を追加する必要はない。
【0029】
(材質に関する実施形態)
オーバーシート103,104には、透明な非結晶性ポリエステル系樹脂、透明なポリ乳酸系樹脂、透明なポリ塩化ビニル樹脂等を使用できる。
第1形態の黒色カードは、コアシート101,102に、白色の非結晶性ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を使用できる。 第2形態の黒色カードには、コアシート101t,102tに、これらの樹脂系による透明性の高い材料を使用できる。
非結晶性ポリエステル系樹脂は、一般的には芳香族ジカルボン酸とジオールとの脱水縮合体であって、共重合ポリエステルの中でも特に結晶性が低い非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂からなる。ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸等があり、ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等がある。
前記非結晶性ポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した商品(商品名「PET−G」)がイーストマンケミカル社から市販されており、これらを使用することができる。
【0030】
ポリ乳酸系樹脂は、例えば、ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、あるいは3又は4−ヒドロキシアルカノエートの共重合体、又はこれらの混合物と、ジカルボン酸とグリコールを重縮合して成る脂肪族ポリエステル、及び/または、乳酸を原料としてこれを直接又は二量体の開環重合してなるポリ乳酸を、二種または三種ブレンドして使用する。
ポリ塩化ビニル樹脂については、公知材料で硬質のものを使用できる。
【0031】
黒色ベタ印刷や黒色隠蔽印刷に使用するシルクスクリーンインキには、通常、アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂に顔料を添加したインキを使用する。
表面用絵柄印刷部、裏面用絵柄印刷部には、市販されている紫外線硬化型オフセットインキ、または市販されているスクリーン印刷インキを使用する。
剥離層の印刷には、ワックス含有透明樹脂を使用でき、透明樹脂としては、アクリル樹脂、変性セルロース樹脂、シリコン樹脂等を使用できる。
【実施例1】
【0032】
(表面側転写フィルムの準備)
厚み150μm(20〜200μmでもよい。)のポリエチレンテレフタレート(PET)からなる転写フィルム基材21に対して、剥離層27を厚み1〜2μmとなるようにグラビア印刷し、剥離層27面にマークやカードの絵柄23をオフセット印刷した。
続いて、剥離層27と絵柄23面にシルクスクリーン印刷による黒色ベタ印刷24を、厚み4〜5μmになるように印刷した。なお、黒色ベタ印刷24は接着層の機能も兼ねているので、接着層を別に設けなくてもよい。
【0033】
上記において、黒色ベタ印刷24のシルクスクリーン印刷インキは、以下の組成のものとした。
(インキ組成)
アクリル系樹脂 10質量部
酢酸ビニル系樹脂 10質量部
カーボン顔料 5質量部
溶剤(アノン、トルエン等) 適量
【0034】
(カード基体の準備)
厚み360μmのPET−G樹脂からなる白色コアシート101に、黒色のシルクスクリーン印刷により黒色隠蔽印刷2を行った。黒色隠蔽印刷2の厚みは、4〜5μmのものである。また、黒色隠蔽印刷2上であって、カードの文字エンボス部分に相当する位置に、エンボス文字のチッピング色と同系色の印刷インキ(金色)による着色層11を、シルクスクリーン印刷により幅10mm×長さ72mmの大きさで、厚みは、3〜6μmになるように印刷した。
なお、黒色隠蔽印刷2のシルクスクリーン印刷インキは、黒色ベタ印刷24のシルクスクリーン印刷と同一のインキを使用した。
【0035】
この白色コアシート101の絵柄層6が外面になるようにし、厚み360μmのPET−G樹脂からなるコアシート102を抱き合わせて中心層とし、その両面に、厚み50μmのPET−G樹脂からなる透明オーバーシート103,104を仮積みし、さらに上記で準備した転写フィルムを、図5のようにして重ね鏡面板間に挟み熱圧プレスした。
なお、透明オーバーシート103の外面側には、磁気テープ12を転写済みのものであり、コアシート102の外面となる面には、シルクスクリーンによる銀印刷5面にカードの使用規定等をオフセット印刷3したものである。従って、裏面側に絵柄転写は行っていない。
【0036】
プレスして冷却後、転写フィルム基材21を剥離すると、表面が黒色のカードが得られた。このカードに対して、ICモジュール装着位置を切削して、接触型ICモジュールを実装し、さらに文字エンボスして金色にチッピングし、磁気テープ付き接触型ICカードが完成した。
【実施例2】
【0037】
(表面側転写フィルムの準備)
厚み150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる転写フィルム基材に対して、剥離層27を厚み1〜2μmとなるようにグラビア印刷し、剥離層27面にマークやカードの柄印刷6をオフセット印刷した。続いて、剥離層27と絵柄23の面にシルクスクリーン印刷による黒色ベタ印刷24を、厚み3〜6μmになるように印刷した。
なお、印刷インキは実施例1と同一のものを使用した。
【0038】
(カード基体の準備)
厚み360μmのPET−G樹脂からなる透明コアシート101tに、黒色のシルクスクリーン印刷により黒色隠蔽印刷2を行った。黒色隠蔽印刷2の厚みは、3〜6μmのものである。同様に、厚み360μmのPET−G樹脂からなる透明コアシート102tに、黒色のシルクスクリーン印刷により黒色ベタ印刷4bを行った。黒色ベタ印刷4bの厚みは、3〜6μmのものである。黒色のシルクスクリーン印刷インキは、実施例1と同一のものを使用した。
【0039】
この透明コアシート101tの黒色隠蔽印刷2が外面になるようにし、厚み360μmの透明PET−G樹脂からなるコアシート102tと抱き合わせて中心層とし、その両面に、厚み50μmのPET−G樹脂からなる透明オーバーシート103,104を仮積みし、さらに上記で準備した絵付け用転写フィルム20をオーバーシート103側に重ね、鏡面板間に挟み熱圧プレスした。なお、透明オーバーシート103tと104tには、磁気テープ12を転写済みのものである。
【0040】
プレスして冷却後、転写フィルム基材21を剥離すると、表面が黒色の磁気カードが得られた。このカードは、カードの表裏面が黒色であるばかりでなく、カードの側面のいずれの方向から見ても黒色に見えた。
【0041】
(比較例)
(表面側転写フィルムの準備)
厚み150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる転写フィルム基材に対して、剥離層27を厚み1〜2μmとなるようにグラビア印刷し、剥離層27面にマークやカードの絵柄23をオフセット印刷した。剥離層27と絵柄23の面にシルクスクリーン印刷による黒色ベタ印刷24を、厚み1〜6μmになるように印刷し、さらに、黒色ベタ印刷24面に隠蔽銀印刷5をシルクスクリーン印刷により、厚み4〜5μmになるように印刷した。なお、黒色ベタ印刷24の印刷インキは実施例1と同一のものを使用した。
【0042】
(カード基体の準備)
厚み360μmのPET−G樹脂からなる白色コアシート101に、厚み360μmのPET−G樹脂からなる白色コアシート102を抱き合わせて中心層とし、その両面に、厚み50μmのPET−G樹脂からなる透明オーバーシート103,104を仮積みし、さらに上記で準備した絵付け用転写フィルム20を、図5のようにして重ね、鏡面板間に挟み熱圧プレスした。なお、透明オーバーシート103には、磁気テープ12を転写済みのものであり、コアシート102の外面となる面には、シルクスクリーンによる銀色印刷面にカードの使用規定等をオフセット印刷したものである。従って、裏面転写は行っていない。なお、印刷インキは実施例1と同様の樹脂組成のものを使用した。
【0043】
プレスして冷却後、転写フィルム基材を剥離すると、表面が黒色のカードが得られた。このカードに対して、ICモジュール装着位置を切削して、接触型ICモジュールを実装して磁気テープ付き接触型ICカードが完成した。
【0044】
実施例1、実施例2、比較例で完成した、各カード10枚について、ATM(Automatic Teller Machine)仕様の模擬試験装置を使用して、カードの挿抜試験による耐摩擦試験を行った。
比較例のカードは、平均1000回程度の繰り返し挿抜試験でカード表面縁辺部の黒色ベタ印刷の摩滅が発生し、隠蔽銀印刷5の銀色が見えるようになった。
一方、実施例1、実施例2のカードは、いずれも、3000回程度の挿抜試験でもカード表面からコアシートが見えるようなことはなかった。また、文字エンボス部の金色のチッピング剥落してもエンボス部の外観が悪くなることもなかった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の隠蔽印刷層を備えた黒色カードの第1形態を示す断面図である。
【図2】同第2形態を示す断面図である。
【図3】第2形態の黒色カードを側面から見た場合を説明する図である。
【図4】絵付け用転写フィルムの構成を示す図である。
【図5】絵柄転写工程を示す図である。
【図6】長期間使用した後のカード状態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1a,1b 隠蔽印刷層を備えた黒色カード
2 黒色隠蔽印刷
3 オフセット等の柄印刷
4,4a,4b 黒色ベタ印刷
5 隠蔽銀印刷
6 絵柄層
7 剥離層
8 ICモジュール
9 エンボスした文字
10 カード基体
11 着色層
12 磁気テープ
20 絵付け用転写フィルム
21 転写フィルム基材
23 絵柄
101,102 コアシート
103,104 オーバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基体の中心層として白色コアシートを有し、その両面に透明オーバーシートを積層したカードの少なくともカードの表面オーバーシートを介して、表面オーバーシート外表面に印刷された黒色ベタ印刷層を有する黒色カードにおいて、少なくとも表面オーバーシート側の白色コアシート面に、実質的に前記黒色ベタ印刷層と同色の黒色隠蔽印刷がされていることを特徴とする隠蔽印刷層を備えた黒色カード。
【請求項2】
カード基体の中心層として透明コアシートを有し、その両面に透明オーバーシートを積層したカードの少なくともカードの表面オーバーシートを介して、表面オーバーシート外表面に印刷された黒色ベタ印刷層を有する黒色カードにおいて、表面オーバーシート側の透明コアシート面に、実質的に前記黒色ベタ印刷層と同色の黒色隠蔽印刷がされ、透明コアシートの他方の面に、表面に印刷された黒色ベタ印刷層と同色の黒色ベタ印刷がされていることを特徴とする隠蔽印刷層を備えた黒色カード。
【請求項3】
カードの文字エンボス部分に、エンボス文字のチッピング色と同系色の印刷インキによる着色層が隠蔽印刷層の上に部分的に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の隠蔽印刷層を備えた黒色カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−89276(P2010−89276A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258643(P2008−258643)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】