説明

集光式光電変換装置

【課題】曇天時における発電量の低下を抑止して天候に関わらず多くの発電量を得ることを可能とした集光式光電変換装置を提供する。
【解決手段】集光レンズと、集光レンズに対向する位置に設置された光電変換素子とを備え、光電変換素子は、シリコン太陽電池と、シリコン太陽電池の集光レンズの設置側の表面上にシリコン太陽電池に電気的に接続されるようにして設置された受光面側多接合型太陽電池とを含み、受光面側多接合型太陽電池の集光レンズの設置側の表面である受光面の面積が集光レンズによって受光面に集光された光の面積の0.8以上1.2倍以下である集光式光電変換装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光式光電変換装置に関し、特に、曇天時における発電量の低下を抑止して天候に関わらず多くの発電量を得ることを可能とした集光式光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光電変換装置として、太陽光エネルギを電気エネルギに変換する太陽光発電装置が実用化されているが、低コスト化を実現し、さらに多くの発電量を得るために、集光レンズで集光した太陽光を集光レンズの受光面積より小さい太陽電池素子に照射して電力を取り出すタイプの集光式光電変換装置が実用化されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−339522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の集光式光電変換装置においては、晴天時には通常のシリコン太陽電池を用いた平板の太陽電池モジュールと比較して多くの発電量が得られるが、曇天時にはほとんど発電量が得られないといった問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、曇天時における発電量の低下を抑止して天候に関わらず多くの発電量を得ることを可能とした集光式光電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、集光レンズと、集光レンズに対向する位置に設置された光電変換素子とを備え、光電変換素子は、シリコン太陽電池と、シリコン太陽電池の集光レンズの設置側の表面上にシリコン太陽電池に電気的に接続されるようにして設置された受光面側多接合型太陽電池とを含み、受光面側多接合型太陽電池の集光レンズの設置側の表面である受光面の面積が集光レンズによって受光面に集光された光の面積の0.8以上1.2倍以下である集光式光電変換装置である。
【0006】
ここで、本発明の集光式光電変換装置においては、シリコン太陽電池の受光面側多接合型太陽電池の下方に位置する第1のエミッタ層が、第1のエミッタ層に隣り合う位置に形成された第2のエミッタ層と電気的に分離されていてもよい。
【0007】
また、本発明の集光式光電変換装置において、受光面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が1.7eV以上1.9eV以下である化合物半導体層のpn接合を1つ含む化合物半導体太陽電池を有していてもよい。また、この化合物半導体層は、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の集光式光電変換装置において、受光面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下である第1の化合物半導体層の第1のpn接合を含む第1の化合物半導体太陽電池と、第1の化合物半導体太陽電池の下方に禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下の第2の化合物半導体層の第2のpn接合を含む第2の化合物半導体太陽電池とを有していてもよい。ここで、第1の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、第2の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の集光式光電変換装置において、受光面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下である第1の化合物半導体層の第1のpn接合を含む第1の化合物半導体太陽電池と、第1の化合物半導体太陽電池の下方に禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下の第2の化合物半導体層の第2のpn接合を含む第2の化合物半導体太陽電池とを有し、シリコン太陽電池の集光レンズの設置側とは反対側の表面上にシリコン太陽電池に電気的に接続されるようにして裏面側多接合型太陽電池が設置されており、裏面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が0.6eV以上0.8eV以下である第3の化合物半導体層の第3のpn接合を含む第3の化合物半導体太陽電池を有していてもよい。ここで、第1の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、第2の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、第3の化合物半導体層は、InGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の集光式光電変換装置は、受光面側多接合型太陽電池の受光面上に形成された第1の電極と、シリコン太陽電池の第2のエミッタ層上に形成された第2の電極と、シリコン太陽電池の集光レンズの設置側とは反対側の表面上に形成された第3の電極とを有していてもよい。ここで、第1の電極と第3の電極との間で発生する電力と、第2の電極と第3の電極との間で発生する電力とを分離することができることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、曇天時における発電量の低下を抑止して天候に関わらず多くの発電量を得ることを可能とした集光式光電変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、参照符号は同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0013】
<実施の形態1>
図1(a)に、本発明の集光式光電変換装置に用いられる光電変換素子の一例の模式的な断面図を示す。
【0014】
図1(a)に示すように、本発明の集光式光電変換装置に用いられる光電変換素子は、シリコン基板から形成されたシリコン太陽電池10と、そのシリコン太陽電池10上に形成された受光面側多接合型太陽電池20とから構成されている。なお、集光レンズは、受光面側多接合型太陽電池20の受光面(シリコン太陽電池10が設置されている側の表面と反対側の表面)側に設置される。
【0015】
ここで、シリコン太陽電池10は、p型シリコン基板13の受光面にストライプ状のn型不純物がドーピングされることにより形成されたn型不純物ドーピング領域14が形成されており、p型シリコン基板13の裏面の全面にはp型不純物がドーピングされることにより形成されたp型不純物ドーピング領域12が形成されており、このp型不純物ドーピング領域12を覆うようにして導電性物質からなるp電極11が形成されている。
【0016】
また、n型不純物ドーピング領域14は、受光面側多接合型太陽電池20の下方に位置する第1のエミッタ層14aと受光面側多接合型太陽電池20の下方に位置していない第2のエミッタ層14bとによって構成されている。そして、第1のエミッタ層14aの両端部には、L字状の接合電極16と、接合電極16と第1のエミッタ層14aとの間の隙間を埋める帯状の絶縁膜17とが形成されており、第2のエミッタ層14b上には複数のn電極15が形成されている。
【0017】
ここで、第1のエミッタ層14aと第2のエミッタ層14bとは所定の間隔をあけてそれぞれ帯状に形成されているため、第1のエミッタ層14aと第2のエミッタ層14bとの間には電気的な接触はなく、電気的に分離されている。
【0018】
また、受光面側多接合型太陽電池20は、複数のp型化合物半導体層が積層されることにより形成されたp型化合物半導体層積層体211と、そのp型化合物半導体層積層体211上に複数のn型化合物半導体層が積層されることにより形成されたn型化合物半導体層積層体210とが接合されてなる化合物半導体太陽電池215を有している。そして、p型化合物半導体層積層体211とn型化合物半導体層積層体210との接合部がpn接合部214となっている。
【0019】
また、受光面側多接合型太陽電池20のn型化合物半導体層積層体210の受光面上にはn側電極212が形成されており、p型化合物半導体層積層体211の裏面上にはp側電極213が形成されている。
【0020】
そして、受光面側多接合型太陽電池20のp側電極213がシリコン太陽電池10の接合電極16上に設置されて電気的に接続されることにより、光電変換素子が形成されている。
【0021】
図1(b)に、図1(a)に示す光電変換素子を受光面側から見た模式的な斜視図を示す。図1(b)に示すように、本実施の形態の光電変換素子は、シリコン太陽電池10の受光面の中心部に受光面側多接合型太陽電池20が設置された構成となっている。
【0022】
図1(c)に、図1(a)に示す光電変換素子を裏面側から見た模式的な斜視図を示す。図1(c)に示すように、本実施の形態の光電変換素子においては、シリコン太陽電池10の裏面の全面にp電極11が形成されている。
【0023】
図1(a)〜(c)に示す光電変換素子は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0024】
まず、たとえばホウ素等のp型不純物がドーピングされたp型シリコン基板13の裏面にホウ素等のp型不純物をドーピングすることによって裏面電界層となるp型不純物ドーピング領域12を形成する。そして、アルミニウム等の金属を蒸着等させることによって、p型不純物ドーピング領域12の表面上にp電極11を形成する。
【0025】
次に、p型シリコン基板13の受光面にスピン塗布焼結等によってシリコン酸化膜を形成し、フォトリソグラフィ技術を利用することによってn型不純物ドーピング領域14の形成領域に対応しない領域の形状にパターンニングされたシリコン酸化膜を形成する。そして、シリコン酸化膜が形成されていない部分をエッチングしてp型シリコン基板13の受光面の一部を露出させ、リン等のn型不純物をドーピングすることによってp型シリコン基板13の受光面にn型不純物ドーピング領域14(第1のエミッタ層14a、第2のエミッタ層14b)を形成する。その後、シリコン酸化膜は除去される。
【0026】
続いて、図2(a)の模式的断面図に示すように、p型シリコン基板13の受光面の第1のエミッタ層14a上に絶縁膜17を形成する。そして、図2(b)の模式的断面図に示すように、絶縁膜17の両側に、フォトリソグラフィ技術を利用することによって所定の形状にパターンニングされたレジストパターン110を形成し、その後、たとえば銀等を蒸着等することによって、帯状のn電極15とL字形状の接合電極16とを形成することができる。そして、上記のようにして形成されたレジストパターン110を除去することによって、図1(a)に示す構成のシリコン太陽電池10を形成する。ここで、本実施の形態においては、シリコン太陽電池10のp型シリコン基板13およびn型不純物ドーピング領域14の禁制帯幅はそれぞれ1.1eV程度とされる。
【0027】
また、シリコン太陽電池10とは別に、図3の模式的構成図に示すように、GaAs基板21上に、GaAsバッファ層22、InGaPエッチングストップ層23、n型GaAsコンタクト層24、n型AlInP窓層25、n型InGaPエミッタ層26、p型InGaPベース層27、p型AlInP裏面電界層28およびp型GaAsコンタクト層29をたとえばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等によって順次エピタキシャル成長させた化合物半導体ウエハを作製する。
【0028】
ここで、n型GaAsコンタクト層24、n型AlInP窓層25およびn型InGaPエミッタ層26の積層体によってn型化合物半導体層積層体210が構成され、p型InGaPベース層27、p型AlInP裏面電界層28およびp型GaAsコンタクト層29の積層体によってp型化合物半導体層積層体211が構成される。ここでは、pn接合部214は、n型InGaPエミッタ層26とp型InGaPベース層27とが接合することによって形成されている。ここで、本実施の形態においては、n型InGaPエミッタ層26とp型InGaPベース層27の禁制帯幅はそれぞれ1.7eV以上1.9eV以下とされている。
【0029】
そして、化合物半導体ウエハのp型GaAsコンタクト層29の表面上に所定の形状にパターンニングされたp側電極213を形成し、化合物半導体ウエハを正方形状にダイシングすることによってセルを形成する。
【0030】
その後、上記のようにして作製したシリコン太陽電池10の接合電極16上に、上記のようにして形成したセルのp側電極213を電気的に接続して固定する。ここで、シリコン太陽電池10の接合電極16と上記セルのp側電極213との接続は、これらの電極をたとえば、低融点の共晶金属または半田等を用いることによって実施することができる。
【0031】
そして、シリコン太陽電池10上にセルを固定した状態で、セルのGaAs基板21、GaAsバッファ層22およびInGaPエッチングストップ層23を除去し、n型GaAsコンタクト層24の表面を露出させる。
【0032】
その後、上記のようにして露出させたn型GaAsコンタクト層24の表面上にフォトリソグラフィ技術を利用して所定の形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンの非形成部分に金属膜を蒸着すること等によって形成した後に、リフトオフ等によりレジストパターンとともにレジストパターン上に形成された金属膜を除去することによって、残された金属膜により所定の形状にパターンニングされたn側電極212が形成される。ここで、n側電極212としては、たとえば、n型GaAsコンタクト層24の表面側から、Au−Ge膜、Ni膜、Au膜およびAg膜の順に金属膜を形成した構成を用いることができる。
【0033】
なお、上記のエピタキシャル成長の際には、たとえばGaAs基板21の表面温度は約700℃に設定される。また、GaAs化合物半導体層をエピタキシャル成長させるための原料としては、たとえば、TMG(トリメチルガリウム)とAsH3(アルシン)を用いることができる。また、InGaP化合物半導体層をエピタキシャル成長させるための原料としては、たとえば、TMI(トリメチルインジウム)、TMGおよびPH3(ホスフィン)を用いることができる。また、AlInP化合物半導体層をエピタキシャル成長させるための原料としては、たとえば、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMIおよびPH3を用いることができる。
【0034】
また、上記のエピタキシャル成長の際に、p型の化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には上記の原料とともにたとえばDEZn(ジエチル亜鉛)を用いることができ、n型の化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には上記の原料とともにたとえばSiH4(モノシラン)を用いることができる。
【0035】
以上により、図1(a)〜(c)に示す構成の光電変換素子を作製することができる。そして、このようにして作製した光電変換素子の受光面上に、たとえば1辺が10mmの正方形状で厚さが3mmであって焦点距離が約10mmのガラス製の集光レンズを貼り付けることによって、本実施の形態の集光式光電変換装置を作製することができる。なお、本発明においては、集光レンズは太陽光を集光する機能を有するレンズであれば特に限定されず用いることができる。
【0036】
図4(a)に上記のようにして作製した本発明の集光式光電変換装置の模式的な上面図を示し、図4(b)に図4(a)に示した集光式光電変換装置の模式的な断面図を示す。
【0037】
図4(a)に示すように、集光レンズ30は、光電変換素子の受光面の上方に縦5個×横5個に配列されており、シリコン太陽電池10のn電極15を電気的に接続して集電する端子31および受光面側多接合型太陽電池20のn側電極212を電気的に接続して集電する端子32が光電変換素子の外部にそれぞれ引き出されている。
【0038】
ここで、集光レンズ30は、各々の受光面側多接合型太陽電池20の受光面の面積が各々の集光レンズ30によって受光面側多接合型太陽電池20の受光面に集光される光の面積と同程度(受光面側多接合型太陽電池20の受光面の面積が集光レンズ30によって受光面側多接合型太陽電池20の受光面に集光される光の面積の0.8以上1.2倍以下)となるように設置される。
【0039】
また、図4(b)に示すように、集光レンズ30と受光面側多接合型太陽電池20との間には空間33が形成されている。
【0040】
上記のような構成の集光式光電変換装置についてソーラーシミュレーターにより擬似太陽光を集光レンズ30側から照射し、端子32とp電極11との間、および端子31とp電極11との間のそれぞれの電気特性について評価した。
【0041】
すなわち、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、シリコン太陽電池10の第1のエミッタ層14aと第2のエミッタ層14bとが電気的に分離されていることから、受光面側多接合型太陽電池20の受光面上に形成されたn側電極212とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力と、シリコン太陽電池10の第2のエミッタ層14b上に形成されたn電極15とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力とを分離することができる。
【0042】
また、上記の電気特性は、ソーラーシミュレーターによる擬似太陽光を集光レンズ30に対して垂直に照射した場合と30°に傾けて照射した場合のそれぞれの場合について評価した。
【0043】
その結果、擬似太陽光を集光レンズ30に対して垂直に照射した場合においては、端子32とp電極11との間の発電量は0.56Wであり、端子31とp電極11との間の発電量は0.1Wであった。
【0044】
また、擬似太陽光を集光レンズ30に対して30°に傾けて照射した場合においては、端子32とp電極11との間の発電量は0.15Wであり、端子31とp電極11との間の発電量は0.3Wであった。
【0045】
このように、上記の構成を有する本実施の形態の集光式光電変換装置においては、禁制帯幅が1.1eV程度のシリコンからなるシリコン太陽電池10の受光面上に、禁制帯幅が1.7eV以上1.9eV以下の化合物半導体層のpn接合を有する受光面側多接合型太陽電池20を設置しているため、晴天時においては集光レンズ30によって集光された太陽光が入射した受光面側多接合型太陽電池20において効率的な発電が可能になり、曇天時においては受光面側多接合型太陽電池20の周囲のシリコン太陽電池10の発電が可能となる。
【0046】
したがって、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、晴天時においてのみ効率的な発電が可能である従来の集光式光電変換装置と比べて、晴天時だけでなく曇天時においてもシリコン太陽電池10の発電により発電量の低下を抑止することができるため、天候に関わらず多くの発電量を得ることが可能となる。すなわち、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、直達光しか利用することができず、散乱光の利用ができないといった問題を解消することができる。
【0047】
また、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、比較的安価なシリコン太陽電池10を大面積で使用することができ、その中心部の比較的小面積の範囲で受光面側多接合型太陽電池20を設置するため、変換効率の高い集光式光電変換装置を比較的低コストで作製することができる。
【0048】
さらに、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、受光面側多接合型太陽電池20を構成する化合物半導体層の禁制帯はシリコン太陽電池10との組み合わせで最適になるように選択することができるため、集光式光電変換装置の変換効率を高くすることができる。
【0049】
なお、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、受光面側多接合型太陽電池20からの電力とシリコン太陽電池10からの電力とを分離することができ、実際の発電においては、それぞれの電圧を合わせるように直並列で接続してインバーターに入力することができる(もしくは、インバーター側で調整することができる)。
【0050】
また、上記の実施の形態においては、pn接合部214が、禁制帯幅が1.7eV以上1.9eV以下のn型InGaPエミッタ層26とp型InGaPベース層27とが接合することによって形成されているが、pn接合部214を形成する化合物半導体層の材質としては、禁制帯幅が1.7eV以上1.9eV以下のAlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種の化合物半導体層を用いることが好ましい。
【0051】
<実施の形態2>
図5(a)に、本発明の集光式光電変換装置に用いられる光電変換素子の他の一例の模式的な断面図を示す。本実施の形態の集光式光電変換装置は、シリコン太陽電池10上に形成された受光面側多接合型太陽電池20が、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下である化合物半導体層によって形成された第1のpn接合525を含む第1の化合物半導体太陽電池523と、第1の化合物半導体太陽電池523の下方に禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下の化合物半導体層の第2のpn接合526を含む第2の化合物半導体太陽電池524とを有する構成となっていることに特徴がある。
【0052】
ここで、第1の化合物半導体太陽電池523は、複数のp型化合物半導体層が積層されることにより形成された第1のp型化合物半導体層積層体517と、その第1のp型化合物半導体層積層体517上に複数のn型化合物半導体層が積層されることにより形成された第1のn型化合物半導体層積層体516とが接合されることによって構成されている。
【0053】
また、第2の化合物半導体太陽電池524は、複数のp型化合物半導体層が積層されることにより形成された第2のp型化合物半導体層積層体520と、その第2のp型化合物半導体層積層体520上に複数のn型化合物半導体層が積層されることにより形成された第2のn型化合物半導体層積層体519とが接合されることによって構成されている。
【0054】
そして、第1の化合物半導体太陽電池523と第2の化合物半導体太陽電池524とはトンネル接合518を介して接合されている。
【0055】
また、第1の化合物半導体太陽電池523の第1のn型化合物半導体層積層体516の受光面上にはn側電極521が形成されており、第2の化合物半導体太陽電池524の第2のp型化合物半導体層積層体520の裏面上にはp側電極522が形成されている。
【0056】
そして、受光面側多接合型太陽電池20のp側電極522がシリコン太陽電池10の接合電極16上に設置されて電気的に接続されることにより、光電変換素子が形成されている。
【0057】
図5(b)に、図5(a)に示す光電変換素子を受光面側から見た模式的な斜視図を示す。図5(b)に示すように、本実施の形態の光電変換素子は、シリコン太陽電池10の受光面の中心部に受光面側多接合型太陽電池20が設置された構成となっている。
【0058】
図5(c)に、図5(a)に示す光電変換素子を裏面側から見た模式的な斜視図を示す。図5(c)に示すように、本実施の形態の光電変換素子においては、シリコン太陽電池10の裏面の全面にp電極11が形成されている。
【0059】
図5(a)〜(c)に示す光電変換素子は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0060】
まず、実施の形態1と同様にして、図5(a)に示す構成のシリコン太陽電池10を形成する。ここで、本実施の形態においても、シリコン太陽電池10のp型シリコン基板13およびn型不純物ドーピング領域14の禁制帯幅はそれぞれ1.1eV程度とされる。
【0061】
また、シリコン太陽電池10とは別に、図6の模式的構成図に示すように、GaAs基板51上に、GaAsバッファ層52、InGaPエッチングストップ層53、n型GaAsコンタクト層54、n型AlInP窓層55、n型AlInGaPエミッタ層56、p型AlInGaPベース層57、p型AlInP裏面電界層58、p型AlGaAsトンネル接合層59、n型AlInGaPトンネル接合層510、n型AlInP窓層511、n型AlGaAsエミッタ層512、p型AlGaAsベース層513、p型InGaP裏面電界層514およびp型GaAsコンタクト層515をたとえばMOCVD法等によって順次エピタキシャル成長させた化合物半導体ウエハを作製する。
【0062】
ここで、n型GaAsコンタクト層54、n型AlInP窓層55およびn型AlInGaPエミッタ層56の積層体によって第1のn型化合物半導体層積層体516が構成され、p型AlInGaPベース層57およびp型AlInP裏面電界層58の積層体によって第1のp型化合物半導体層積層体517が構成されている。
【0063】
また、p型AlGaAsトンネル接合層59とn型AlInGaPトンネル接合層510との接合によってトンネル接合518が形成されている。
【0064】
また、n型AlInP窓層511およびn型AlGaAsエミッタ層512の積層体によって第2のn型化合物半導体層積層体519が構成されており、p型AlGaAsベース層513、p型InGaP裏面電界層514およびp型GaAsコンタクト層515の積層体によって第2のp型化合物半導体層積層体520が構成されている。
【0065】
また、本実施の形態においては、第1のpn接合525を形成するn型AlInGaPエミッタ層56およびp型AlInGaPベース層57の禁制帯幅がそれぞれ1.8eV以上2eV以下とされており、第2のpn接合526を形成するn型AlGaAsエミッタ層512およびp型AlGaAsベース層513の禁制帯幅がそれぞれ1.4eV以上1.6eV以下とされている。
【0066】
そして、化合物半導体ウエハのp型GaAsコンタクト層515の表面上に所定の形状にパターンニングされたp側電極522を形成し、化合物半導体ウエハを正方形状にダイシングすることによってセルを形成する。
【0067】
その後、上記のようにして作製したシリコン太陽電池10の接合電極16上に、上記のようにして形成したセルのp側電極522を電気的に接続して固定する。
【0068】
そして、シリコン太陽電池10上にセルを固定した状態で、セルのGaAs基板51、GaAsバッファ層52およびInGaPエッチングストップ層53を除去し、n型GaAsコンタクト層54の表面を露出させる。
【0069】
その後、上記のようにして露出させたn型GaAsコンタクト層54の表面上に、所定の形状にパターンニングされたn側電極521が形成される。ここで、n側電極521としては、たとえば、n型GaAsコンタクト層54の表面側から、Au−Ge膜、Ni膜、Au膜およびAg膜の順に金属膜を形成した構成を用いることができる。
【0070】
なお、上記のエピタキシャル成長の際に、AlGaAs化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には、その原料としては、たとえば、TMA、TMGおよびAsH3を用いることができる。また、AlInGaP化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には、その原料としては、たとえば、TMA、TMI、TMGおよびPH3を用いることができる。
【0071】
また、n型の化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には上記の原料とともにたとえばSiH4を用いることができる。また、AlGaAs化合物半導体層をp型にする場合には、上記の原料とともにたとえばCBr4(四臭化炭素)を用いることができ、AlGaAs化合物半導体層以外のp型の化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には上記の原料とともにたとえばDEZnを用いることができる。その他は実施の形態1と同様である。
【0072】
以上により、図5(a)〜(c)に示す構成の光電変換素子を作製することができる。そして、このようにして作製した光電変換素子の受光面上に、実施の形態1と同様に集光レンズを貼り付けることによって、図4(a)および図4(b)に示す構成の本実施の形態の集光式光電変換装置を作製することができる。
【0073】
ここでも、集光レンズ30は、各々の受光面側多接合型太陽電池20の受光面の面積が各々の集光レンズ30によって受光面側多接合型太陽電池20の受光面に集光される光の面積と同程度(受光面側多接合型太陽電池20の受光面の面積が集光レンズ30によって受光面側多接合型太陽電池20の受光面に集光される光の面積の0.8以上1.2倍以下)となるように設置される。
【0074】
そして、実施の形態1と同様にして、上記のような構成の集光式光電変換装置についてソーラーシミュレーターにより擬似太陽光を集光レンズ30側から照射し、端子32とp電極11との間、および端子31とp電極11との間のそれぞれの電気特性について評価した。
【0075】
すなわち、本実施の形態の集光式光電変換装置においても、シリコン太陽電池10の第1のエミッタ層14aと第2のエミッタ層14bとが電気的に分離されていることから、受光面側多接合型太陽電池20の受光面上に形成されたn側電極521とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力と、シリコン太陽電池10の第2のエミッタ層14b上に形成されたn電極15とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力とを分離することができる構成となっている。
【0076】
また、上記の電気特性は、実施の形態1と同様に、ソーラーシミュレーターによる擬似太陽光を集光レンズ30に対して垂直に照射した場合と30°に傾けて照射した場合のそれぞれの場合について評価した。
【0077】
その結果、擬似太陽光を集光レンズ30に対して垂直に照射した場合においては、端子32とp電極11との間の発電量は0.64Wであり、端子31とp電極11との間の発電量は0.1Wであった。
【0078】
また、擬似太陽光を集光レンズ30に対して30°に傾けて照射した場合においては、端子32とp電極11との間の発電量は0.17Wであり、端子31とp電極11との間の発電量は0.3Wであった。
【0079】
このように、上記の構成を有する本実施の形態の集光式光電変換装置においては、禁制帯幅が1.1eV程度のシリコンからなるシリコン太陽電池10の受光面上に、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下である化合物半導体層によって形成された第1のpn接合525を含む第1の化合物半導体太陽電池523と、第1の化合物半導体太陽電池523の下方に禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下の化合物半導体層の第2のpn接合526を含む第2の化合物半導体太陽電池524とを有する受光面側多接合型太陽電池20を設置しているため、晴天時においては集光レンズ30によって集光された太陽光が入射した受光面側多接合型太陽電池20において実施の形態1よりもさらに効率的な発電が可能になり、曇天時においては実施の形態1と同様に受光面側多接合型太陽電池20の周囲のシリコン太陽電池10の発電が可能となる。
【0080】
したがって、本実施の形態の集光式光電変換装置においても、晴天時においてのみ効率的な発電が可能である従来の集光式光電変換装置と比べて、晴天時だけでなく曇天時においてもシリコン太陽電池10の発電により発電量の低下を抑止することができるため、天候に関わらず多くの発電量を得ることが可能となる。すなわち、本実施の形態の集光式光電変換装置においても、直達光しか利用することができず、散乱光の利用ができないといった問題を解消することができる。
【0081】
また、本実施の形態においては、第1のpn接合525は、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下のn型AlInGaPエミッタ層56とp型AlInGaPベース層57とを接合することによって形成されているが、第1のpn接合525を形成する化合物半導体層の材質としては、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下のAlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0082】
また、本実施の形態においては、第2のpn接合526は、禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下のn型AlGaAsエミッタ層512とp型AlGaAsベース層513とを接合することによって形成されているが、第2のpn接合526を形成する化合物半導体層の材質としては、禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下のAlGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0083】
その他の説明は実施の形態1と同様であるので省略する。
<実施の形態3>
図7(a)に、本発明の集光式光電変換装置に用いられる光電変換素子のさらに他の一例の模式的な断面図を示す。
【0084】
本実施の形態の集光式光電変換装置は、シリコン太陽電池10の受光面側とは反対側の裏面に裏面側多接合型太陽電池70が形成されており、裏面側多接合型太陽電池70が禁制帯幅が0.6eV以上0.8eV以下である化合物半導体層のpn接合である第3のpn接合714を含む第3の化合物半導体太陽電池713を有する構成となっていることに特徴がある。
【0085】
ここで、第3のpn接合714は、複数のn型化合物半導体層が積層されることにより形成された第3のn型化合物半導体層積層体710と、その第3のn型化合物半導体層積層体710上に複数のp型化合物半導体層が積層されることにより形成された第3のp型化合物半導体層積層体79とが接合されて構成されている。
【0086】
また、裏面側多接合型太陽電池70の第3のn型化合物半導体層積層体710の表面上にはn側電極711が形成されており、第3のp型化合物半導体層積層体79の裏面の全面にはp側電極712が形成されている。
【0087】
また、シリコン太陽電池10の裏面には、裏面側多接合型太陽電池70の上方に位置する第1のp型不純物ドーピング領域12aと、裏面側多接合型太陽電池70の上方に位置していない第2のp型不純物ドーピング領域12bとが所定の間隔をあけて形成されており、第1のp型不純物ドーピング領域12aと第2のp型不純物ドーピング領域12bとによってp型不純物ドーピング領域12が形成されている。
【0088】
また、シリコン太陽電池10の裏面の第1のp型不純物ドーピング領域12aの周縁にはL字形状の接合電極18が形成されており、第1のp型不純物ドーピング領域12aと接合電極18との間の領域には絶縁膜19が形成されている。
【0089】
そして、裏面側多接合型太陽電池70のn側電極711と、シリコン太陽電池10の裏面の接合電極18とが電気的に接続されることによって、光電変換素子が形成されている。
【0090】
図7(b)に、図7(a)に示す光電変換素子を受光面側から見た模式的な斜視図を示す。図7(b)に示すように、本実施の形態の光電変換素子は、シリコン太陽電池10の受光面の中心部に受光面側多接合型太陽電池20が設置された構成となっている。ここで、受光面側多接合型太陽電池20は、実施の形態2における受光面側多接合型太陽電池20と同一の構成となっている。
【0091】
図7(c)に、図7(a)に示す光電変換素子を裏面側から見た模式的な斜視図を示す。図7(c)に示すように、本実施の形態の光電変換素子においては、シリコン太陽電池10の裏面の中心部に裏面側多接合型太陽電池70が設置されており、裏面側多接合型太陽電池70の全外周から所定の間隔をあけてその全外周を取り囲むようにp電極11が形成されている。
【0092】
図7(a)〜(c)に示す光電変換素子は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0093】
まず、実施の形態1および実施の形態2と同様にして、図7(a)に示す構成のシリコン太陽電池10を形成する。ここで、本実施の形態においても、シリコン太陽電池10のp型シリコン基板13およびn型不純物ドーピング領域14の禁制帯幅はそれぞれ1.1eV程度とされる。
【0094】
そして、実施の形態2と同様にして、シリコン太陽電池10の受光面の接合電極16上に受光面側多接合型太陽電池20のp側電極522を電気的に接続することによって、シリコン太陽電池10上に受光面側多接合型太陽電池20を設置する。
【0095】
また、上記のシリコン太陽電池10と受光面側多接合型太陽電池20との接合体とは別に、図8の模式的構成図に示すように、InP基板71上に、InPバッファ層72、p型InGaAsコンタクト層73、p型InP裏面電界層74、p型InGaAsベース層75、n型InGaAsエミッタ層76、n型InP窓層77およびn型InGaAsコンタクト層78をたとえばMOCVD法等によって順次エピタキシャル成長させた化合物半導体ウエハを作製する。
【0096】
ここで、p型InGaAsコンタクト層73、p型InP裏面電界層74およびp型InGaAsベース層75の積層体によって第3のp型化合物半導体層積層体79が構成されており、n型InGaAsエミッタ層76、n型InP窓層77およびn型InGaAsコンタクト層78の積層体によって第3のn型化合物半導体層積層体710が構成されている。
【0097】
また、本実施の形態においては、第3のpn接合714を構成しているp型InGaAsベース層75およびn型InGaAsエミッタ層76の禁制帯幅がそれぞれ0.6eV以上0.8eV以下とされている。
【0098】
そして、化合物半導体ウエハのn型InGaAsコンタクト層78の表面上に所定の形状にパターンニングされたn側電極711を形成し、化合物半導体ウエハを正方形状にダイシングすることによってセルを形成する。
【0099】
その後、上記のようにして作製したシリコン太陽電池10の接合電極18上に、上記のようにして形成したセルのn側電極711を電気的に接続して固定する。
【0100】
そして、シリコン太陽電池10上にセルを固定した状態で、セルのInP基板71およびInPバッファ層72を除去し、p型InGaAsコンタクト層73の表面を露出させる。
【0101】
その後、上記のようにして露出させたp型InGaAsコンタクト層73の表面の全面にp側電極712が形成される。ここで、p側電極712としては、たとえば、p型InGaAsコンタクト層73の表面側から、Au−Zn膜およびAg膜の順に金属膜を形成した構成等を用いることができる。
【0102】
なお、上記のエピタキシャル成長の際に、InP化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には、その原料としては、たとえば、TMIおよびPH3を用いることができる。また、InGaAs化合物半導体層をエピタキシャル成長させる場合には、その原料としては、たとえば、TMI、TMGおよびAsH3を用いることができる。その他は実施の形態1および実施の形態2と同様である。
【0103】
以上により、図7(a)〜(c)に示す構成の光電変換素子を作製することができる。そして、このようにして作製した光電変換素子の受光面上に、実施の形態1および実施の形態2と同様に集光レンズを貼り付けることによって、図4(a)に示す構成の本実施の形態の集光式光電変換装置を作製することができる。
【0104】
本実施の形態においても、集光レンズ30は、各々の受光面側多接合型太陽電池20の受光面の面積が各々の集光レンズ30によって受光面側多接合型太陽電池20の受光面に集光される光の面積と同程度(受光面側多接合型太陽電池20の受光面の面積が集光レンズ30によって受光面側多接合型太陽電池20の受光面に集光される光の面積の0.8以上1.2倍以下)となるように設置される。また、裏面側多接合型太陽電池70のp側電極712を電気的に接続して集電する裏面側端子(図示せず)も設置される。
【0105】
そして、実施の形態1および実施の形態2と同様にして、上記のような構成の集光式光電変換装置についてソーラーシミュレーターにより擬似太陽光を集光レンズ30側から照射し、端子32と裏面側端子との間、および端子31とp電極11との間のそれぞれの電気特性について評価した。
【0106】
すなわち、本実施の形態の集光式光電変換装置においても、シリコン太陽電池10の第1のエミッタ層14aと第2のエミッタ層14bとが電気的に分離されていることから、受光面側多接合型太陽電池20の受光面上に形成されたn側電極521とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力と、シリコン太陽電池10の第2のエミッタ層14b上に形成されたn電極15とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力とを分離することができる構成となっている。
【0107】
また、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、シリコン太陽電池10の第1のp型不純物ドーピング領域12aと第2のp型不純物ドーピング領域12bとも電気的に分離されていることから、裏面側多接合型太陽電池70の裏面上に形成されたp側電極712とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力と、シリコン太陽電池10の第2のエミッタ層14b上に形成されたn電極15とシリコン太陽電池10に形成されたp電極11との間で発生する電力とを分離することができる構成となっている。
【0108】
また、上記の電気特性は、実施の形態1および実施の形態2と同様に、ソーラーシミュレーターによる擬似太陽光を集光レンズ30に対して垂直に照射した場合と30°に傾けて照射した場合のそれぞれの場合について評価した。
【0109】
その結果、擬似太陽光を集光レンズ30に対して垂直に照射した場合においては、端子32と裏面側端子との間の発電量は0.71Wであり、端子31とp電極11との間の発電量は0.1Wであった。
【0110】
また、擬似太陽光を集光レンズ30に対して30°に傾けて照射した場合においては、端子32と裏面側端子との間の発電量は0.19Wであり、端子31とp電極11との間の発電量は0.3Wであった。
【0111】
このように、上記の構成を有する本実施の形態の集光式光電変換装置においては、禁制帯幅が1.1eV程度のシリコンからなるシリコン太陽電池10の受光面上に、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下である化合物半導体層によって形成された第1のpn接合525を含む第1の化合物半導体太陽電池523と、第1の化合物半導体太陽電池523の下方に禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下の化合物半導体層の第2のpn接合526を含む第2の化合物半導体太陽電池524とを有する受光面側多接合型太陽電池20を設置しているため、晴天時においては集光レンズ30によって集光された太陽光が入射した受光面側多接合型太陽電池20において実施の形態1よりもさらに効率的な発電が可能になり、曇天時においては実施の形態1と同様に受光面側多接合型太陽電池20の周囲のシリコン太陽電池10の発電が可能となる。
【0112】
また、本実施の形態の集光式光電変換装置においては、シリコン太陽電池10の裏面上にシリコン太陽電池10を構成するシリコンよりも禁制帯幅の小さい0.6eV以上0.8eV以下の禁制帯の化合物半導体層の第3のpn接合714を有する裏面側多接合型太陽電池70が設置されていることから、さらに長波長の太陽光の入射により裏面側多接合型太陽電池70が発電するため、実施の形態1および実施の形態2よりもさらに変換効率が上昇する。
【0113】
したがって、本実施の形態の集光式光電変換装置においても、晴天時においてのみ効率的な発電が可能である従来の集光式光電変換装置と比べて、晴天時だけでなく曇天時においてもシリコン太陽電池10の発電により発電量の低下を抑止することができるため、天候に関わらず多くの発電量を得ることが可能となる。すなわち、本実施の形態の集光式光電変換装置においても、直達光しか利用することができず、散乱光の利用ができないといった問題を解消することができる。
【0114】
また、本実施の形態においては、第3のpn接合714は、禁制帯幅が0.6eV以上0.8eV以下のp型InGaAsベース層75とn型InGaAsエミッタ層76とを接合することによって形成されているが、第3のpn接合714を形成する化合物半導体層の材質としては、禁制帯幅が0.6eV以上0.8eV以下のInGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0115】
その他の説明は実施の形態1および実施の形態2と同様であるので省略する。
なお、本明細書においては、化合物半導体層を構成する元素の種類のみを記載しているが、これは化合物半導体層を構成する元素の組成比は適宜設定されることを意味している。
【0116】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、曇天時における発電量の低下を抑止して天候に関わらず多くの発電量を得ることを可能とした集光式光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】(a)は本発明の集光式光電変換装置に用いられる光電変換素子の一例の模式的な断面図であり、(b)は(a)に示す光電変換素子を受光面側から見た模式的な斜視図であり、(c)は(a)に示す光電変換素子を裏面側から見た模式的な斜視図である。
【図2】図1(a)〜(c)に示す光電変換素子の接合電極の形成工程の一部を図解する模式的な構成図である。
【図3】図1(a)〜(c)に示す光電変換素子の作製に用いられる受光面側多接合型太陽電池の形成工程の一部を図解する模式的な構成図である。
【図4】(a)は本発明の集光式光電変換装置の模式的な上面図を示し、(b)は(a)に示した集光式光電変換装置の模式的な断面図である。
【図5】(a)は本発明の集光式光電変換装置に用いられる光電変換素子の他の一例の模式的な断面図であり、(b)は(a)に示す光電変換素子を受光面側から見た模式的な斜視図であり、(c)は(a)に示す光電変換素子を裏面側から見た模式的な斜視図である。
【図6】図1(a)〜(c)に示す光電変換素子の作製に用いられる受光面側多接合型太陽電池の形成工程の一部を図解する模式的な構成図である。
【図7】(a)は本発明の集光式光電変換装置に用いられる光電変換素子のさらに他の一例の模式的な断面図であり、(b)は(a)に示す光電変換素子を受光面側から見た模式的な斜視図であり、(c)は(a)に示す光電変換素子を裏面側から見た模式的な斜視図である。
【図8】図1(a)〜(c)に示す光電変換素子の作製に用いられる受光面側多接合型太陽電池の形成工程の一部を図解する模式的な構成図である。
【符号の説明】
【0119】
10 シリコン太陽電池、11 p電極、12 p型不純物ドーピング領域、12a 第1のp型不純物ドーピング領域、12b 第2のp型不純物ドーピング領域、13 p型シリコン基板、14 n型不純物ドーピング領域、14a 第1のエミッタ層、14b 第2のエミッタ層、15 n電極、16,18 接合電極、17,19 絶縁膜、20 受光面側多接合型太陽電池、21,51 GaAs基板、22,52 GaAsバッファ層、23,53 InGaPエッチングストップ層、24,54 n型GaAsコンタクト層、25,55 n型AlInP窓層、26 n型InGaPエミッタ層、27 p型InGaPベース層、28 p型AlInP裏面電界層、29 p型GaAsコンタクト層、30 集光レンズ、31,32 端子、56 n型AlInGaPエミッタ層、57 p型AlInGaPベース層、58 p型AlInP裏面電界層、59 p型AlGaAsトンネル接合層、70 裏面側多接合型太陽電池、71 InP基板、72 InPバッファ層、73 p型InGaAsコンタクト層、74 p型InP裏面電界層、75 p型InGaAsベース層、76 n型InGaAsエミッタ層、77 n型InP窓層、78 n型InGaAsコンタクト層、79 第3のp型化合物半導体層積層体、210 n型化合物半導体層積層体、211 p型化合物半導体層積層体、212,521,711 n側電極、213,522,712 p側電極、214 pn接合部、215 化合物半導体太陽電池、510 n型AlInGaPトンネル接合層、511 n型AlInP窓層、512 n型AlGaAsエミッタ層、513 p型AlGaAsベース層、514 p型InGaP裏面電界層、515 p型GaAsコンタクト層、516 第1のn型化合物半導体層積層体、517 第1のp型化合物半導体層積層体、518 トンネル接合、519 第2のn型化合物半導体層積層体、520 第2のp型化合物半導体層積層体、523 第1の化合物半導体太陽電池、524 第2の化合物半導体太陽電池、525 第1のpn接合、526 第2のpn接合、710 第3のn型化合物半導体層積層体、713 第3の化合物半導体太陽電池、714 第3のpn接合。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光レンズと、前記集光レンズに対向する位置に設置された光電変換素子と、を備え、
前記光電変換素子は、シリコン太陽電池と、前記シリコン太陽電池の前記集光レンズの設置側の表面上に前記シリコン太陽電池に電気的に接続されるようにして設置された受光面側多接合型太陽電池と、を含み、
前記受光面側多接合型太陽電池の前記集光レンズの設置側の表面である受光面の面積が、前記集光レンズによって前記受光面に集光される光の面積の0.8以上1.2倍以下である、集光式光電変換装置。
【請求項2】
前記シリコン太陽電池の前記受光面側多接合型太陽電池の下方に位置する第1のエミッタ層が、前記第1のエミッタ層に隣り合う位置に形成された第2のエミッタ層と電気的に分離されていることを特徴とする、請求項1に記載の集光式光電変換装置。
【請求項3】
前記受光面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が1.7eV以上1.9eV以下である化合物半導体層のpn接合を1つ含む化合物半導体太陽電池を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の集光式光電変換装置。
【請求項4】
前記化合物半導体層は、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の集光式光電変換装置。
【請求項5】
前記受光面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下である第1の化合物半導体層の第1のpn接合を含む第1の化合物半導体太陽電池と、前記第1の化合物半導体太陽電池の下方に禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下の第2の化合物半導体層の第2のpn接合を含む第2の化合物半導体太陽電池とを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の集光式光電変換装置。
【請求項6】
前記第1の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であり、前記第2の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項5に記載の集光式光電変換装置。
【請求項7】
前記受光面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が1.8eV以上2eV以下である第1の化合物半導体層の第1のpn接合を含む第1の化合物半導体太陽電池と、前記第1の化合物半導体太陽電池の下方に禁制帯幅が1.4eV以上1.6eV以下の第2の化合物半導体層の第2のpn接合を含む第2の化合物半導体太陽電池とを有し、
前記シリコン太陽電池の前記集光レンズの設置側とは反対側の表面上に前記シリコン太陽電池に電気的に接続されるようにして裏面側多接合型太陽電池が設置されており、前記裏面側多接合型太陽電池は、禁制帯幅が0.6eV以上0.8eV以下である第3の化合物半導体層の第3のpn接合を含む第3の化合物半導体太陽電池を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の集光式光電変換装置。
【請求項8】
前記第1の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であり、前記第2の化合物半導体層は、AlGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であって、第3の化合物半導体層は、InGaAs、InGaAsPおよびAlInGaAsPからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項7に記載の集光式光電変換装置。
【請求項9】
前記受光面側多接合型太陽電池の前記受光面上に形成された第1の電極と、前記シリコン太陽電池の前記第2のエミッタ層上に形成された第2の電極と、前記シリコン太陽電池の前記集光レンズの設置側とは反対側の表面上に形成された第3の電極と、を有することを特徴とする、請求項2に記載の集光式光電変換装置。
【請求項10】
前記第1の電極と前記第3の電極との間で発生する電力と、前記第2の電極と前記第3の電極との間で発生する電力とを分離することができることを特徴とする、請求項9に記載の集光式光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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