説明

集光性多発色団を用いてポリヌクレオチド結合タンパク質相互作用を検出及び分析するための方法並びに組成物

標的ポリヌクレオチドについてサンプルをアッセイするための方法、組成物及び製品を提供する。標的ポリヌクレオチドの含有が疑われるサンプルを、ポリカチオン多発色団、及び該標的ポリヌクレオチドに結合可能なセンサPBPと接触させる。センサPBPは、励起された多発色団からのエネルギーを受容し、前記標的ポリヌクレオチドの存在下で発光するシグナル伝達発色団を含む。本方法は、マルチプレックス形式で用いることができる。かかる方法を実施するための試薬を含むキットもまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中のポリヌクレオチドを検出及び分析するための方法、物、並びに組成物に関する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明に至るまでの研究は、米国国立衛生研究所から付与された助成金番号GM62958−01、米国国立科学財団から付与された助成金番号DMR−0097611及び米国海軍研究事務所から付与された助成金番号N00014−1−1−0239の下で実施した。米国政府は本発明に関して一定限度の権利を持つものとする。
【背景技術】
【0003】
リアルタイムで感度の高いポリヌクレオチド解析を可能にする方法は、科学的及び経済的に重要である1,2,3。それらの用途としては、医学的診断、遺伝子突然変異の同定、遺伝子送達のモニタリング及び特定のゲノム技術が挙げられる。臭化エチジウム及びチアゾールオレンジなどのカチオン有機色素は、2本鎖DNA(dsDNA)の溝内に挿入されると発光し、直接DNAハイブリダイゼーションプローブとして機能するものの、配列特異性に欠けている5,6。鎖特異的アッセイ用のエネルギー/電子移動発色団対が存在するが、これらは2つの核酸の化学標識、又は同一改変鎖の二重修飾(例えば、分子ビーコン)を必要とする7,8。2箇所のDNA部位を標識するのは困難であるため、収率が低くなり、コストが嵩み、さらに一方だけが標識された不純物が生じたりして、結果的に検出感度が低下する
【0004】
サンプル中の特定のポリヌクレオチドを検出及び分析するための方法、並びにかかる方法に有用な組成物及び製品が当分野で必要とされている。
【発明の開示】
【0005】
サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出及びアッセイするための方法、組成物並びに製品を提供する。
【0006】
第1の実施形態においては、標的ポリヌクレオチドの含有が疑われるサンプルを、ポリカチオン多発色団、及び該標的ポリヌクレオチドと結合しうるセンサポリヌクレオチド結合タンパク質(PBP)と接触させる。センサPBPは、シグナル伝達発色団(signaling chromophore)を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、サンプル中に標的ポリヌクレオチドが存在する場合、シグナル伝達発色団は、センサPBPに結合した標的ポリヌクレオチドの骨格との静電相互作用を利用することによりカチオン多発色団の近接にもたらされると考えられる(図1参照)。続いて、シグナル伝達発色団は、励起されたポリカチオン多発色団からエネルギーを獲得し、検出可能な光を発することができる。標的ポリヌクレオチドは、サンプル中に存在する形で分析してもよいし、あるいは分析に先立って、又は分析と同時に増幅してもよい。
【0007】
本発明の方法を実施する際に有用な試薬を含む溶液を、かかる試薬を含有するキットとして提供する。該方法は、複数の異なるセンサPBPを使用して複数の異なる標的ポリヌクレオチドをアッセイするマルチプレックス環境で使用することができる。該方法は、任意により表面上で、例えば表面に会合させたポリカチオン多発色団を用いて実施することができる(つまり、該表面をセンサとすることができる)。また、該方法を均一フォーマットで提供することもできる。本明細書中に記載した方法及び物は、ポリヌクレオチドを検出するための他の技術に代わるものとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
DNA及びRNAセンサ(「ジーン・チップ」及び「DNAチップ」を含む)に関する現在の技術は、1本鎖DNAへの蛍光タグ(発光団(lumophore))の共有結合に依存している。これらのセンサの大部分は分析物サンプルの標識に依存せざるを得ないが、これにはサンプル間の標識反応の効率の変動によって生じる、複雑な交差較正が必要となる回避しがたい問題がある。他の系は「モレキュラービーコン」手法に依存するものであり、それには発光団及びクエンチャー(消光団)を正確に操作された配列に付加する必要がある。
【0009】
サンプルと、少なくとも2つの成分:(a)集光性発光多発色団系、例えば、共役ポリマー、半導体量子ドット又は水溶性の樹状構造など;及び(b)発光シグナル伝達発色団と共役させたセンサPBP(PBP−C)とを接触させるステップを含む、ポリヌクレオチド分析のための方法を提供する。多発色団の励起時におけるシグナル伝達発色団−C特有の光波長は、溶液中の標的ポリヌクレオチドの存在を示唆している。それぞれに異なる塩基配列及び異なるシグナル伝達発色団を有する複数の異なるセンサPBP(PBP1−C1、PBP2−C2、PBP3−C3、PBP4−C4など)を使用することで、複数の異なるポリヌクレオチドを別個に検出しアッセイすることができる。
【0010】
集光性発色団及びシグナル伝達発色団(C)は、これら2つの種の発色団の吸収バンドの重複が最小となるように、またこれら2つの種の発光スペクトルが異なる波長を持つように、選択する。水溶液中で調製する場合、集光性発光多発色団系は正に帯電している、又はカチオンであり、好ましくはポリカチオンである(例えば、ポリカチオン共役高分子電解質である)。センサPBP及び多発色団は、標的の不在下にてそれらの間の相互作用が最小となるように選択する。センサPBPと結合可能な標的ポリヌクレオチドを添加した場合、標的ポリヌクレオチドはセンサPBPと複合体を形成する。標的ポリヌクレオチドは負に帯電しているため、センサPBPはポリカチオン多発色団と結合することとなり、それによりポリカチオン多発色団からシグナル伝達発色団へのエネルギー移動が、例えばForsterエネルギー移動機構により可能となる。センサPBPと結合しないポリヌクレオチドを添加した場合には、多発色団とセンサPBPとの複合体形成が起こらない。ポリカチオン多発色団とシグナル伝達発色団との平均距離はかかる複合体形成の不在下では有効なエネルギー移動のためには広すぎるため、シグナル伝達発色団からの発光はほとんど又は全くない。この全体的なスキームは、試験溶液中の標的ポリヌクレオチドの存在を検出することができる。
【0011】
前記の方法に加えて、本発明は、少なくとも2つの成分、すなわち(a)カチオン多発色団、及び(b)シグナル伝達発色団と共役させたポリヌクレオチド結合タンパク質を含む「センサPBP」(PBP−C)、を含む、主に水性の溶液を提供する。
【0012】
実施例中で示すように、共役ポリマーなどの水溶性多発色団により提供される光増幅を利用してPBPセンサへのポリヌクレオチドの結合を検出することができる。該増幅は、より分子量の高い水溶性共役ポリマー又は他の構造を本明細書中に記載のポリカチオン多発色団として使用することによって増進できる。本発明は、蛍光検出方法の容易さを利用する均一フォーマットで提供することができる。本発明を使用すれば増幅された標的ポリヌクレオチドを検出することができるし、又は本発明が大きなシグナルの増幅であることから、ポリヌクレオチドを増幅する必要の無い独立したアッセイとして使用することができる。
【0013】
それゆえ、現行のジーン・チップ技術を上回る本発明の特有の利点には、分析に先立ってサンプル中に含有されているか又はサンプルから得たポリヌクレオチドに発光団又は発色団を共有結合させることにより分析するために各サンプルを最初に標識することを回避しうる。それらの結合方法では結合効率を再現することが本質的に困難であるため、サンプル間の相互校正が必要となる。
【0014】
本明細書中に記載した発明は、サンプルを標的ポリヌクレオチドについて調べることのできるアッセイであれば、そのいずれにとっても有用である。典型的なアッセイではサンプル中の標的ポリヌクレオチドの存在若しくはその相対量を決定することを必要とするので、該アッセイは定量的なものであっても半定量的なものであってもよい。
【0015】
本発明の方法は、その全てをマルチプレックス・フォーマットで実施することができる。複数の異なるセンサPBPを使用することにより、各センサPBPに共役させた異なるシグナル伝達発色団を利用してサンプル中の対応する異なる標的ポリヌクレオチドを検出することができる。対応する異なる標的ポリヌクレオチドについてアッセイするために同時に使用しうる2、3、4、5、10、15、20、25、50、100、200、400個又はそれ以上の異なるセンサPBPを用いるマルチプレックス方法を提供する。
【0016】
前記方法は基板上並びに溶液中で実施することができるが、溶液フォーマットは拡散するためにより迅速であると予想される。従って、前記アッセイを、例えば基板上のアレイフォーマット(これをセンサとすることができる)で実施することができる。これはアッセイ成分(例えば、センサPBP、ポリカチオン多発色団、若しくはその両方)を基板上に固定するか又は別の方法で組み込むことにより達成できる。これらの基板は、ガラス、シリコン、紙、プラスチックの表面、又は光電子変換器として用いられる光電子半導体(例えば、限定するものではないが、インジウム添加窒化ガリウム又は高分子ポリアニリンなど)の表面であってもよい。所与のセンサPBPの位置は、公知の位置であってもアレイフォーマットで決定しうる位置であってもよく、また該アレイフォーマットはマイクロアドレスを指定可能なもの(microaddressable)であってもナノアドレスを指定可能なもの(nanoaddressable)であってもよい。
【0017】
本発明をさらに詳しく記載する前に、本発明は記載されている特定の方法論、道具、解決策又は装置に限定されないことを理解されたい。何故なら、かかる方法、道具、解決方策又は装置は、当然変更しうるからである。また、本明細書中で使用する用語は、単に特定の実施形態を記載することを目的としたものであって、本発明の範囲を限定するものではないことも理解されたい。
【0018】
単数形「a」、「an」及び「the」を使用する場合、文中で特に明確に指定しない限り、複数形の表現が含まれているものとする。従って、例えば「標的ポリヌクレオチド(a target polynucleotide)」という表現には複数の標的ポリヌクレオチドが含まれ、「シグナル伝達発色団(a signaling chromophore)」という表現には複数のかかる発色団が含まれ、また「センサPBP」という表現には複数のセンサPBPが含まれ、他についても同様である。さらに、「2つの(two)」、「3つの(three)」などの具体的な複数形の表現を使用する場合には、文中で特に明確に指定しない限り、多数の同一物を指すものと解釈する。
【0019】
「接続(connected)」、「付加(attached)」及び「連結(linked)」などの用語は本明細書中では同義的に使用されるものとし、また文中で特に明確に指示しない限り、直接的並びに間接的な接続、付加、連結又は共役を包含するものとする。ある数値範囲が示された場合、示された該範囲の上限値と下限値の間にある各整数、及びそれら各々の分数もまた、かかる数値間の各下位範囲と共に具体的に開示されるものと理解されたい。どんな範囲の上限値及び下限値であっても、それらを別個に該範囲内に含めること、又は該範囲から除外することが可能であり、これらの限界値の一方を含む範囲、いずれも含まない範囲、又は両方を含む範囲もまた本発明に包含されるものとする。議論されている数値が固有の限界値を有する場合、例えばある成分が0〜100%の濃度で存在しうる場合、又は水溶液のpHが1〜14まで変動しうる場合、それらの固有の限界値は具体的に開示されているものとする。ある数値が明示された場合、示された数値とほぼ同数又は同量の数値もまた、それらの数値を根拠とする範囲として本発明の範囲に含まれるものと理解されたい。ある組み合わせが開示された場合、その組み合わせの要素からなる下位の組み合わせ各々もまた、具体的に開示され、かつ本発明の範囲に含まれるものとする。逆に、異なる要素又は要素集団が開示された場合、それらの組み合わせもまた開示されるものとする。複数の代替物を有するある発明のいずれかの要素が開示された場合、各代替物が別々に、又は他の代替物とのいずれかの組み合わせで除外されている該発明の実施例もまた、本明細書中に開示されるものとする。ある発明の2つ以上の要素がかかる除外を受ける可能性があり、かかる除外を受けた要素の全ての組み合わせが本明細書中に開示されるものとする。
【0020】
特に定義しない限り、又は文中で特に明確に指定しない限り、本明細書中で使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野において通常の知識を有する者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載した方法及び材料と類似又は同等のものはいずれも本発明を実施又は試験する際に使用できるが、好適な方法及び材料は本明細書中に記載されている。
【0021】
本明細書中で言及した全ての刊行物は、それらを参照するきっかけとなった特定の材料及び方法論を開示しかつ記載することを目的として、参照により本明細書に含めるものとする。本明細書中で議論されている刊行物は、本出願の出願日に先立ってそれらを開示するためだけに提供されたものである。本明細書の如何なる内容も、本発明が、それらが先行発明であるという理由で、かかる開示に先行する資格を持たないことを認めたものと解釈されるべきではない。
【0022】
定義
本発明を説明するにあたって次の用語を使用するが、これらは以下の通りに定義されるものとする。
【0023】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」という用語は、本明細書中ではある長さを有するヌクレオチドのポリマー形態を指すために同義的に使用されるものとし、また該用語にはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、その類似体、又はそれらの混合物が含まれるものとする。これらの用語は分子の1次構造のみを指す。従って、前記用語には、3本鎖、2本鎖及び1本鎖のデオキシリボ核酸(「DNA」)、並びに3本鎖、2本鎖及び1本鎖のリボ核酸(「RNA」)が含まれる。また、例えばアルキル化及び/又はキャッピングにより修飾された形態のポリヌクレオチド、及び非修飾形態のポリヌクレオチドも含まれる。
【0024】
修飾されているか否かに関わらず、標的ヌクレオチドは、本明細書に記載の方法においてポリカチオン多発色団と静電相互作用する(なお、他の力がさらにその相互作用に関与する可能性もある)ために十分な負電荷のポリアニオン骨格、好ましくは糖−リン酸骨格を有する必要がある。センサPBPは、標的の不在下で最小限に多発色団と相互作用するポリヌクレオチド結合タンパク質である。所定のアッセイフォーマットのための好適な結合条件は当業者であれば決定することができ、調整しうるパラメータの非限定的な例としては、例えばアッセイ成分の濃度、pH、使用する塩類及びそれらの濃度、イオン強度、温度などが含まれる。
【0025】
より詳しく述べると、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」という用語には、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、例えばスプライシングを受けたか又は受けていないtRNA、rRNA、hRNA、及びmRNAを含むポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリン又はピリミジン塩基のN−又はC−配糖体である他のタイプのポリヌクレオチド、リン酸又は他のポリアニオン骨格を含む他のポリマー、並びに他の合成配列特異的核酸ポリマー(ただし、該ポリマーは、DNA及びRNA中に見出されるような塩基対の形成と塩基のスタッキングを可能にする立体配置をとる核酸塩基を含有するものとする)が含まれる。用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」に関しては、長さの区別を意図しておらず、これらの用語は本明細書中で互換的に用いられる。これらの用語は分子の一次構造のみに関する。従って、これらの用語には、例えば3’−デオキシ−2’,5’−DNA、オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’P5’ホスホルアミデート、2’−O−アルキル−置換RNA、2本鎖及び1本鎖DNA、2本鎖及び1本鎖RNA、並びに例えばDNAとRNAとのハイブリッドを含むそれらのハイブリッドが含まれ、さらに公知のタイプの修飾物、例えば標識によるもの、アルキル化によるもの、「キャップ」によるもの、1つ以上のヌクレオチドがその類似体で置換されたもの、ヌクレオチド間修飾物、例えば負に帯電した連結によるもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、例えばタンパク質(ヌクレアーゼなどの酵素、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなどを含む)などの付属部分を含有するもの、インターカレート剤(例えばアクリジン、ソラレンなど)によるもの、キレート(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属などのキレート)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結によるもの(例えば、αアノマー核酸など)、並びに非修飾形態のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドも含まれる。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「ヌクレオシド」及び「ヌクレオチド」という用語には、公知のプリン及びピリミジン塩基だけでなく他の修飾された複素環式塩基も含有する部分が含まれることが理解されよう。かかる修飾物としては、メチル化プリン若しくはピリミジン、アシル化プリン若しくはピリミジン、又は他の複素環が挙げられる。また、修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドとしては、その糖部分が修飾されたもの、例えば1つ以上のヒドロキシル基がハロゲン、脂肪族基と置き換えられているか、又はエーテル、アミンなどとして機能化されているものも挙げることができる。「ヌクレオチド単位」という用語は、ヌクレオシド及びヌクレオチドを包含するものとする。
【0027】
さらに、ヌクレオチド単位に対する修飾としては、それぞれに相補的なピリミジン又はプリンとの水素結合を形成するプリン若しくはピリミジン塩基上の官能基の再配置、付加、置換又は別の方法による変更が挙げられる。その結果得られる修飾ヌクレオチド単位は、任意で、同様に修飾した他のヌクレオチド単位(ただしA、T、C、G又はU以外)と塩基対を形成していてもよい。ポリヌクレオチドの機能を妨げない脱塩基部位が含まれていてもよいが、好ましくは、ポリヌクレオチドは脱塩基部位を含まない。ポリヌクレオチド中の一部又は全ての残基は、任意で、1つ以上の方法で修飾することができる。
【0028】
標準的なA−T及びG−C塩基対は、チミジンのN3−H及びC4−オキシとそれぞれアデノシンのN1−及びC6−NH2との間、並びにシチジンのC2−オキシ、N3及びC4−NH2とそれぞれグアノシンのC2−NH2、N’−H及びC6−オキシとの間に水素結合が形成されうる条件下で形成される。従って、例えば、グアノシン(2−アミノ−6−オキシ−9−β−D−リボフラノシル−プリン)を修飾することにより、イソグアノシン(2−オキシ−6−アミノ−9−β−D−リボフラノシル−プリン)を形成してもよい。かかる修飾により、もはやシトシンとの標準的な塩基対を効果的に形成することのないヌクレオシド塩基が生成する。しかし、シトシン(1−β−D−リボフラノシル−2−オキシ−4−アミノ−ピリミジン)を修飾することによりイソシトシン(l−β−D−リボフラノシル−2−アミノ−4−オキシ−ピリミジン)を形成すれば、グアノシンとの塩基対を効果的に形成することはないがイソグアノシンとの塩基対を形成する修飾ヌクレオチドが生成する。イソシトシンはSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から入手可能であり、イソシチジンはSwitzeret al. (1993) Biochemistry 32:10489-10496及びその文中で引用された参考文献に記載の方法により調製してもよく、2’−デオキシ−5−メチル−イソシチジンはToret al. (1993) J. Am. Chem. Soc. 115:4461-4467及びその文中で引用された参考文献に記載の方法により調製してもよく、またイソグアニン・ヌクレオチドはSwitzeret al. (1993) 上掲、及びMantschet al. (1993) Biochem. 14:5593-5601に記載の方法を利用して、又はCollinsらに発行された米国特許第5,780,610号に記載の方法により調製してもよい。他の非天然塩基対は、2,6−ジアミノピリミジン及びその相補体(1−メチルピラゾロ−[4,3]ピリミジン−5,7−(4H,6H)−ジオン)の合成についてPiccirilli et al. (1990) Nature 343:33-37に記載された方法により合成してもよい。固有の塩基対を形成する他のかかる修飾ヌクレオチド単位、例えばLe
ach et al. (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:3675-3683及びSwitzer et al. 上掲、に記載されたものが知られている。
【0029】
「相補的」又は「実質的に相補的」とは、ヌクレオチド又は核酸の間、例えばセンサポリヌクレオチド結合タンパク質と標的ポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション又は塩基対合能力を意味する。相補的なヌクレオチドは、一般的にAとT(又はAとU)、又はCとGである。2つの一本鎖ポリヌクレオチドは、一方の鎖の塩基を、他方の鎖と適当な挿入又は欠失を行いながら最適にアライメントし比較して、他方の鎖の塩基の少なくとも約80%、通常少なくとも約90〜95%、より好ましくは約98〜100%の塩基と対合する場合に、実質的に相補性という。
【0030】
あるいは、ポリヌクレオチド又はPNAがその相補配列に対して選択的なハイブリダイゼーション条件下においてハイブリダイズする場合には、実質的な相補性がある。典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも14〜25塩基の範囲にわたり少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%相補的である場合に生じる。M. Kanehisa Nucleic Acids Res. 12:203 (1984)を参照されたい。
【0031】
「示差結合」又は「示差ハイブリダイゼーション」とは、別のサンプル中の成分と比べて結合対の1つのメンバーがその結合パートナーに結合する高い傾向を指す。
【0032】
ハイブリダイゼーション条件としては、典型的には約1M未満、より通常は約500mM未満、好ましくは約200mM未満の塩濃度が挙げられる。ペプチド核酸とポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの場合、該ハイブリダイゼーションは殆ど又は全く塩を含有しない溶液中で行うことができる。ハイブリダイゼーション温度は最低で5℃とすることができるが、典型的には22℃より高く、より典型的には約30℃より高く、好ましくは約37℃を上回る温度とする。断片が長くなるにつれて、特異的ハイブリダイゼーションのためにより高いハイブリダイゼーション温度が必要となる場合がある。他の要因、例えば塩基組成及び相補鎖の長さ、有機溶媒の存在及び塩基ミスマッチ形成の程度などがハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える場合があり、また使用するパラメータの組み合わせはいずれか1つのみの絶対基準よりも重要である。制御しうる他のハイブリダイゼーション条件は、緩衝液の種類及び濃度、溶液のpH、バックグラウンド結合を減らすためのブロッキング試薬(反復配列又はブロッキングタンパク質溶液など)の存在及び濃度、洗浄液の種類及び濃度、ポリヌクレオチドの相対濃度を高めるポリマーなどの分子、金属イオン及びそれらの濃度、キレート剤及びそれらの濃度、並びに当分野で公知の他の条件が含まれる。
【0033】
本明細書中でいう「マルチプレックス」とは、多数の被分析物を同時にアッセイしうるアッセイ又は他の分析方法を指す。
【0034】
「任意の」又は「任意で」とは、続いて記載される事象又は状況が生じても生じなくてもよいこと、またその記載には該事象又は状況が生じる場合と生じない場合とが含まれることを意味する。
【0035】
ポリヌクレオチドセンサは、2つの成分:(a)集光性発光水溶性ポリカチオン多発色団系、例えば、共役ポリマー、オリゴマー又は樹状分子など;(b)発光シグナル伝達発色団で標識したセンサポリヌクレオチド結合タンパク質又はその結合性断片(PBP−C)を含むものとして提供される。PBP−Cの標的ポリヌクレオチドへの結合によって、ポリカチオン多発色団と相互作用するために十分な負電荷の複合体が形成される。カチオン集光性分子との静電(及び疎水性)相互作用は、シグナル伝達発色団(C)を集光性分子に近接させる。適当な周波数で集光性分子を励起することにより、シグナル伝達発色団へのエネルギー伝達が生じる。Cからの発光により、PBP−Cと標的ポリヌクレオチドとの結合を確認しうる。センサ−標的相互作用が特異的である場合、続いてCの発光は溶液中の特異的なDNA又はRNA配列の存在に相当する。
【0036】
図1にセンサ操作の概要を示す。水溶液中において、カチオン集光性分子(黒で示す)とプローブPBP−C(赤で示す)との最小の相互作用が存在する。PBP及び集光性分子は、それらが標的の不在下では有意に相互作用しないように選択する。ポリヌクレオチド含有サンプルの添加の際には、2つの状態が起こり得る。状態Aは、標的ポリヌクレオチド(青)に結合するシグナル伝達PBP−Cの結果を示す。これらの状態において、負に帯電したDNA−PBP−C又はRNA−PBP−C複合体は、複数の静電相互作用により正に帯電した集光性共役分子と会合する。近接性を確保することにより、例えばForsterエネルギー移動機構により集光性共役分子からPBP−Cのシグナル伝達発色団へのエネルギー移動が生じる10,11。シグナル伝達Cに特徴的な波長の発光は、タンパク質とRNA又はDNAとの認識を示唆している。PBP−Cと相互作用しないポリヌクレオチド(緑で示す)が存在する場合には、PBP−Cは負電荷の巨大分子に隣接することはなく、カチオン集光性分子とCとの距離がエネルギー移動にはあまりに大きくなる(状態B)。
【0037】
センサの具体的な実施例として、本発明者は以下の2つの成分を使用した:(a)集光性発光水溶性共役分子、例えば共役ポリマー及び共役オリゴマーなど;(b)N末端が発光シグナル伝達発色団で標識された16残基のペプチド(Tat−C)。集光性分子及びシグナル伝達発色団(C)は、この2種の発光スペクトルが異なる波長であり、そしてCの吸収が集光性種の発光と重複するように選択する。TAR RNAを添加した場合、シグナル伝達ペプチドTat−CはTAR RNAと特異的に結合する。負に帯電したTAR RNA/Tat−C複合体は、続いて正に帯電した集光性共役分子と会合する(状況A)。近接性を確保することにより、集光性共役分子からTat−Cのシグナル伝達発色団へのエネルギー移動が生じる。シグナル伝達Tat−Cに特徴的な波長の発光は、HIV TAR RNAの存在を示唆している。Tatと相互作用しないRNAを用いる場合には、RNAとカチオン分子とが相互作用するが、Cへのエネルギー移動はない。
【0038】
ヒト1型免疫不全ウイルス(HIV−1)を検出するための信頼性ある技術の開発は、臨床的に非常に重要である12,13,14,15。HIV感染の伝統的な検出技術は、ウイルス抗原を固相に吸着させるHIV抗体についてのELISA試験である22,16。電気泳動分離と放射性同位体検出とを組み合わせたウエスタンブロットアッセイもまたこの課題に一般的である22,17。これらの技術の不利な点としては、複雑な装置、アッセイに要する時間、並びに放射性標識プローブの半減期の短さ及び有害な性質による厄介な問題が挙げられる。HIVウイルス検出のための単純、高感度、特異的かつリアルタイムの方法が非常に望まれていた。
【0039】
HIVのトランス活性化応答エレメントRNA配列(TAR)はウイルス感染細胞により高レベルで発現される18。本明細書において記載されるリアルタイムでTAR RNAを簡便にモニターする能力は、HIVウイルスの存在を迅速に検出するための実行可能な方法を提供する。多くの研究は、トランス活性化タンパク質(Tat)が優れた特異性でかつ約1nMのアフィニティでTAT RNAと結合して、安定で十分に特定されている複合体を形成することを示している19,20,21。TatのTAR RNAへの特異的結合により、本明細書に記載の方法を用いてHIVを臨床に関連するリアルタイムで検出するためのシグナル伝達が誘導される。
【0040】
実施例においては、Tatペプチド結合の特異性及びTAR RNAへの折りたたみと、共役ポリマー及びオリゴマーの大規模な光増幅とを組み合わせた新規な光学バイオセンサが証明されている。HIV RNAセンサは、2つの成分、すなわち(a)集光性発光水溶性共役分子、例えば共役ポリマー及び共役オリゴマーなど;(b)N末端が発光シグナル伝達発色団で標識された16残基のペプチド(Tat−C)を含む。プローブペプチド及び発光共役分子のTAR RNAへの結合によって複合体が形成され、共役分子からTat−Cへのエネルギー移動が誘導される。シグナル伝達Tat−Cに特徴的な波長の発光は、HIV−1 TAR RNAの存在を示唆している。
【0041】
実施例において示すように、水溶性共役分子の光増幅を利用して、HIV TAR RNAの存在を検出しうる。本発明は、蛍光検出方法の容易性及びタンパク質−ポリヌクレオチド相互作用(Tat−TAR RNA相互作用など)に見とめられる特異的結合挙動を利用する均一フォーマットで用いることができ、リアルタイムでTAR RNAを検出する能力を提供する。実施例において用いたTatペプチド、TAR RNA及びdTAR RNAの構造は、図2に示す(Tat−Cについては一文字暗号でアミノ酸を示す)。
【0042】
Forster22により示されるように、双極子間相互作用は、ドナー発色団からアクセプタ発色団への長波長の共鳴エネルギー移動(FRET)を導く。エネルギー移動効率(E)は、1/r(ここでrはドナーとアクセプタの距離である)に比例し、下記式1に示される重なり積分である:
【数1】

【0043】
本明細書に記載の方法におけるエネルギー移動のための距離の要件は、図1における相互作用により制御される。重なり積分は、ドナーの発光とアクセプタの吸収との間のスペクトルの重複を表わす23。本明細書に例示するように、センサの成分はそれらの光学特性が上記要件を満たすように選択されうる。
【0044】
サンプル
標的ポリヌクレオチドを含んでいるか又は含んでいることが疑われるサンプルの一部は、直接的又は間接的に生物(例えば細胞、組織又は体液)から取得できるポリヌクレオチド、並びに生物が残した物(例えばウイルス、マイコプラズマ及び化石)から取得できるポリヌクレオチド、を含む生体材料のうちのいずれかをその供給源とすることができる。サンプルは、その全部又は一部を合成手段により調製した標的ポリヌクレオチドを含んでいてもよい。典型的には、サンプルは、主に水性の媒体として取得するか、又は該媒体中に分散させる。サンプルの非限定的な例としては、血液、尿、精液、乳、痰、粘液、口腔内の採取物、膣内の採取物、直腸内の採取物、吸引物、針生検、例えば外科手術又は検視解剖により得られた組織切片、血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、及び尿生殖路の外分泌物、涙、唾液、腫瘍、器官、in vitro細胞培養成分のサンプル(細胞培養培地における細胞増殖の結果得られた条件培地、ウイルスに感染したと推定される細胞、組換え細胞、及び細胞成分を含むがこれらに限定されない)、並びにポリヌクレオチド配列を含む組換えライブラリが挙げられる。
【0045】
サンプルは、標的ポリヌクレオチド又はその代用物を含有することが知られている陽性対照サンプルとすることができる。また、標的ポリヌクレオチドを含有することは期待されていないが、該標的ポリヌクレオチド又は偽陽性を呈しうる別の成分を(1つ以上の試薬の汚染を介して)含有することが疑われており、かつ所与のアッセイで使用された試薬の標的ポリヌクレオチドによる汚染が無いことを確認したり、所与のセットのアッセイ条件が偽陽性(サンプル中に標的ポリヌクレオチドが存在しない場合でも陽性のシグナル)を呈するか否かを決定したりするために試験される陰性対照サンプルを使用することもできる。
【0046】
サンプルを希釈、溶解、懸濁、抽出又は別の方法で処理することにより、存在する標的ポリヌクレオチドを可溶化及び/若しくは精製するか、又は該標的ポリヌクレオチドが増幅スキームで使用する試薬若しくは検出試薬に接近しやすくすることができる。サンプルが細胞を含有している場合、該細胞を溶解又は透過処理することにより該細胞内のポリヌクレオチドを放出させることができる。ワンステップ透過処理用緩衝液を使用して細胞を溶解すれば、溶解直後にさらに別の工程(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)を実施することができる。
【0047】
標的ポリヌクレオチド及び該標的ポリヌクレオチドから生成された増幅産物
標的ポリヌクレオチドは1本鎖、2本鎖、又はより高次のものであってよく、直鎖状又は環状であってもよい。1本鎖標的ポリヌクレオチドの例としては、mRNA、rRNA、tRNA、hnRNA、ssRNA又はssDNAウイルスゲノムが挙げられるが、これらのポリヌクレオチドは内部に相補配列及び重要な二次構造を含有していてもよい。2本鎖標的ポリヌクレオチドの例としては、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、dsRNA又はdsDNAウイルスゲノム、プラスミド、ファージ、及びウイロイドが挙げられる。標的ポリヌクレオチドは合成により調製することができるし、又は生物源から精製することができる。標的ポリヌクレオチドを精製することにより、サンプルの1つ以上の望ましくない成分を取り除くか若しくは減らしてもよいし、又は該標的ポリヌクレオチドを濃縮してもよい。逆に、標的ポリヌクレオチドが特定のアッセイにとって濃縮されすぎている場合には、該標的ポリヌクレオチドを希釈してもよい。
【0048】
サンプルの収集と任意の核酸抽出を行った後、標的ポリヌクレオチドを含むサンプルの核酸部分を1つ以上の調製反応に供することができる。これらの調製反応としては、in vitro転写(IVT)、標識、断片化、増幅及び他の反応が挙げられる。検出及び/又は増幅に先立って、mRNAを最初に逆転写酵素とプライマーで処理することにより、cDNAを作製することができる。この処理は、精製mRNAを用いてin vitroで、又はin situで(例えばスライドに貼り付けられた細胞又は組織内で)行うことができる。核酸増幅によって標的ポリヌクレオチドなどの対象配列のコピー数が増える。様々な増幅方法が使用に適しており、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自律的配列複製(3SR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、Qβレプリカーゼの使用、逆転写、ニックトランスレーションなどが挙げられる。
【0049】
標的ポリヌクレオチドが1本鎖であり、増幅対象となる場合、最初の増幅サイクルで該標的ポリヌクレオチドに対して相補的なプライマー伸張産物が形成される。標的ポリヌクレオチドが1本鎖RNAである場合、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを最初の増幅で使用することによりRNAをDNAへと逆転写し、追加の増幅サイクルを実施することにより、プライマー伸張産物を複製することができる。PCR用のプライマーは、当然、増幅しうる断片を生成するそれらの対応する鋳型内の領域にハイブリダイズするよう設計されていなければならない。従って、各プライマーは、その3’ヌクレオチドが、使用した該プライマーの3’ヌクレオチドの3’側に位置するその相補的鋳型鎖中のヌクレオチドとの対を形成することによって、PCRにおいて該相補的鋳型鎖を複製するようにハイブリダイズしなければならない。
【0050】
典型的には、標的ポリヌクレオチドの1つ以上の鎖をプライマー及び適切な活性を有するポリメラーゼと接触させて該プライマーを伸張し、また同時に該標的ポリヌクレオチドを複製し、それによって相補的ポリヌクレオチドの全長又はその小部分を生成することにより、標的ポリヌクレオチドを増幅する。標的ポリヌクレオチドを複製しうるポリメラーゼ活性を有する酵素(例えばDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、1種以上のポリメラーゼ活性を有する酵素)はいずれも使用可能であり、また該酵素は熱不安定性なもの又は熱安定性なものとすることができる。酵素の混合物を使用することもできる。酵素の例としては、DNAポリメラーゼ(DNAポリメラーゼI(「Pol I」)、Pol Iのクレノウ断片、T4、T7、Sequenase(登録商標)T7、Sequenase(登録商標)バージョン2.0 T7、Tub、Taq、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tli及びパイロコッカスsp.(Pyrococcus sp)のGB−D DNAポリメラーゼなど)、RNAポリメラーゼ(大腸菌(E.coli)、SP6、T3及びT7 RNAポリメラーゼなど)、並びに逆転写酵素(AMV、M−MuLV、MMLV、RNアーゼHMMLV(SuperScript(登録商標))、SuperScript(登録商標)II、ThermoScript(登録商標)、HIV−1、及びRAV2逆転写酵素など)が挙げられる。これらの酵素は全て市販されている。多数の特異性を備えたポリメラーゼの例としては、RAV2及びTli(エキソ)ポリメラーゼが挙げられる。熱安定性ポリメラーゼの例としては、Tub、Taq、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tli及びパイロコッカスsp.(Pyrococcus sp.)のGB−D DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0051】
pH、緩衝液、イオン強度、1種以上の塩の存在及び濃度、ヌクレオチド及びマグネシウム及び/又は他の金属イオン(例えばマンガン)などの反応物質及び補因子の存在及び濃度、任意の共溶媒、温度、ポリメラーゼ連鎖反応を含む増幅スキームのための熱サイクルプロフィールを含む適切な反応条件は、標的ポリヌクレオチドの増幅が可能となるように選択するが、その一部は使用するポリメラーゼ及びサンプルの性質に左右される可能性がある。共溶媒としては、ホルムアミド(典型的には約2〜約10%)、グリセロール(典型的には約5〜約10%)、及びDMSO(典型的には約0.9〜約10%)が挙げられる。増幅スキームにおいて技術を駆使することにより、増幅中に生成する偽陽性の物質又は人工物の生成を最小限に抑えてもよい。これらの技術としては、「タッチダウン」PCR、ホットスタート技術、nestedプライマーの使用、又はデザイニングPCRプライマーが挙げられるが、これらはプライマー−ダイマーが形成されるとステムループ構造を形成するので、増幅されない。PCRを促進するための技術、例えば、サンプル内をより大きく対流させることが可能であって、かつサンプルを急速に加熱及び冷却するための赤外線加熱工程を含む遠心PCRを使用することができる。1回以上の増幅サイクルを実施することができる。あるプライマーを過剰に使用するとPCRで該プライマーの伸張産物を過剰に生成することができるが、好ましくは、過剰に生産された該プライマー伸張産物は検出しようとする増幅産物である。複数の異なるプライマーを使用することにより、サンプル中の異なる標的ポリヌクレオチド又は特定の標的ポリヌクレオチドの異なる領域を増幅してもよい。
【0052】
増幅された標的ポリヌクレオチドを増幅後の処理に供してもよい。例えば、場合によっては、ハイブリダイゼーション前に標的ポリヌクレオチドを断片化しておくことで、より容易に接近しうるセグメントを提供することが望ましいだろう。核酸の断片化は、実施しようとするアッセイに役立つサイズの断片を生成する方法により実施可能であり、また適切な物理的、化学的及び酵素的方法が当分野で公知である。
【0053】
増幅反応は、ある増幅サイクルの少なくとも一過程中にセンサPBPが増幅産物に結合しうる条件下で実施することができる。アッセイをこのように実施する場合、増幅スキーム中のかかるハイブリダイゼーション時に生じるシグナル伝達発色団からの発光の変化を観察することにより、このハイブリダイゼーション事象のリアルタイム検出を行うことができる。
【0054】
ポリカチオン多発色団
集光性多発色団系は、それらが多数の発色団を含むという理由で効率的な光吸収材であることが証明されている。具体例としては、限定するものではないが、共役ポリマー、共役分子の集合体、飽和ポリマーに側鎖を介して付加された発光色素、半導体量子ドット及び樹状構造が挙げられる。例えば、共役ポリマー上の各繰り返し単位は発色団の1つと考えることができるし、量子ドットは多くの原子で構成されており、飽和ポリマーはその側鎖上の多くの発光色素分子により機能化しうるし、また多くの共有結合した個々の発色団を含有するデンドリマーを合成することができる。ポリマービーズ又は表面などの固形支持体上への発色団集合体の付加を、集光目的で利用することもできる。
【0055】
集光性多発色団系は、近接する発光種(例えば、「シグナル伝達発色団」)へエネルギーを効率的に移動することができる。エネルギー移動の機構としては、例えば、共鳴エネルギー移動(Forster型(又は蛍光)共鳴エネルギー移動、すなわちFRET)、量子電荷交換(Dexter型エネルギー移動)などが挙げられる。しかし通常は、これらのエネルギー移動機構はその移動距離が比較的短い。つまり、効率的なエネルギー移動のためには、集光性多発色団系がシグナル伝達発色団に密接していることが必要とされる。効率的なエネルギー移動のための条件下では、多発色団の全体の吸収能力がシグナル伝達発色団のものよりも高い場合、例えば集光性多発色団系中の個々の発色団の数が多い場合には、シグナル伝達発色団からの発光が増幅される。つまり、シグナル伝達発色団からの発光は、入射光(「ポンプ光」)が集光性多発色団系により吸収される波長を持つ場合のほうが、該シグナル伝達発色団がポンプ光により直接励起される場合よりも強い。
【0056】
共役ポリマー(CP)は非局在化した電子構造を特徴とし、化学及び生物標的に対する高反応性の光レポーターとして使用することができる24,25。効果的な共役の長さはポリマー鎖の長さよりも実質的に短いため、その骨格には密接し合う多数の共役セグメントが含まれている。従って、共役ポリマーは集光にとって効率的であり、また該共役ポリマーによりForster型エネルギー移動を介した光増幅が可能となる26。水溶性CPは、逆に帯電したアクセプタの存在下で例学的な蛍光クエンチ効率を示し、生物学的認識事象の伝達のために特に重要である27,28
【0057】
カチオン高分子電解質とDNAとの間の自発的なポリマー間複合体形成反応については既に記載されており、また該反応は協同静電気力によるところが大きい29,30,31。芳香族ポリマー単位とDNA塩基との間の疎水性相互作用もまた最近になって認められた32,33。高分子電解質/DNA相互作用の自由エネルギーは、pH、イオン強度、及び温度などの溶液の可変要素と併せて使用する参加化学種の構造によって制御される34。これらの相互作用の強さ及び特異性は、最近になって、プラスミドDNAの三次構造を認識するように調整された35
【0058】
本発明で使用する多発色団はポリカチオン性であり、そのため標的ポリヌクレオチドと静電気的に相互作用し、それにより非荷電センサPBP上のシグナル伝達発色団が、センサPBPと標的ポリヌクレオチドとの結合に関してエネルギー受容接近位置にもたらされる。光を吸収しかつセンサPBP上のシグナル伝達発色団にエネルギーを移動しうるポリカチオン多発色団はいずれも、前記の方法に使用することができる。使用しうる多発色団の例としては、多数の発色団を実行可能な様式で組み入れた共役ポリマー、飽和ポリマー又はデンドリマー、及び半導体ナノ結晶(SCNC)が挙げられる。共役ポリマー、飽和ポリマー及びデンドリマーを調製することにより複数のカチオン種を組み入れることができるし、又はこれらを合成後に誘導体化してポリカチオン性とすることができる。半導体ナノ結晶は、その表面にカチオン種を加えることでポリカチオン性とすることができる。
【0059】
好適な実施形態では、共役ポリマーをポリカチオン多発色団として使用する。
【0060】
ポリカチオン多発色団の例を以下に示すが、カチオン水溶性コンジュゲート分子はポリマー1(n=2〜100,000)、オリゴマー1及びオリゴマー2である。この具体的な分子構造は重要ではなく、任意の水溶性カチオン収光性分子を用い得る。
【化1】

【0061】
別の具体例を、カチオン水溶性共役ポリマーがヨウ化物対アニオンを有するポリ((9,9−ビス(6’−N,N,N−トリメチルアンモニウム)−ヘキシル)−フルオレンフェニレン)であるポリマー3(以後はポリマー3と記す)36に示す。このポリマーの粒径は、該ポリマーが光を吸収しかつ接近したシグナル伝達発色団へエネルギーを移動しうる限りは重要ではない。「n」の典型的な値は2〜約100,000の範囲内にある。この特有の分子構造は重要ではなく、比較的高い発光量子効率を有する水溶性カチオン共役ポリマーであればいずれも使用することができる。
【化2】

【0062】
水溶性共役オリゴマーをポリカチオン多発色団として使用することもできる。ヨウ化物対イオンを有する、かかる水溶性でカチオン性の発光共役オリゴマーの1例(本明細書中ではオリゴマー4と記す)を以下に示す。
【化3】

【0063】
より小さいオリゴマー4は高分子量ポリマーに特徴的な大きなシグナル増幅を示さないが、かかる小分子は、ポリマーに見られる固有の多分散性及びバッチ間変動のせいで判別しにくい構造物性相関を解明する際に役に立つ。さらに、水性媒体中では4などのオリゴマーはそれらのポリマー対応物より溶けやすく、また疎水性相互作用は、4の場合はポリマー構造の場合ほど重要ではないと予想される。従って、オリゴマーの集合体は特定の用途に用いるのに望ましいだろう。
【0064】
センサPBP
アッセイしようとする標的ポリヌクレオチドに結合するセンサPBPを提供する。シグナル伝達発色団をセンサPBPに付加するための化学的手法は当技術分野で周知である。発色団に共役させた構造を含む特定のセンサPBP構造は、商業的供給源を利用して特注するか、又は化学的に合成することができる。
【0065】
対象の標的ポリヌクレオチドに結合しうる任意のタンパク質を開示する方法において用いることができる。PBPの非限定的な例としては、DNA結合タンパク質、例えば転写因子、スプライシング因子、ポリ(A)結合タンパク質、クロマチン成分、ウイルスタンパク質、ウイルス感染を検出するタンパク質、複製因子、並びに有糸細胞分裂及び/又は減数分裂に関与するタンパク質が挙げられる。RNA−タンパク質相互作用は、重要な細胞プロセス、例えば転写、転写後修飾、RNAスプライシング及び翻訳などを媒介する37,38,39,40。多くの病原性ウイルス、例えば1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)41、ピコルナウイルス42、及びインフルエンザウイルス43などの複製周期は特異的なRNA−タンパク質相互作用に依存している。そのような相互作用の特異性は、医療診断及びゲノム研究において有用な配列特異的センサのための基礎として利用することができる。ポリヌクレオチド結合タンパク質の例としては、ジンクフィンガータンパク質、ホメオドメインタンパク質、翼状らせん(フォークヘッド)タンパク質、ロイシンジッパータンパク質、ヘリックス−ループ−ヘリックスタンパク質、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質、及びヒストン様タンパク質が挙げられる。
【0066】
PBPは、細胞源から単離してもよいし、あるいはin vitroで、例えばin vitro転写/翻訳法又は完全な合成方法により作製してもよい。PBPは、天然タンパク質、天然タンパク質の変異体、例えば分子進化法により作製されたランダム作製タンパク質、又は未知の結合特異性の推定ポリヌクレオチオド結合タンパク質でありうる。
【0067】
RNA/タンパク質相互作用のモニターが有意である理由の1つは、タンパク質構造がRNA機能を阻害する抗生物質として機能しうることである。1つの例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)複製の中心となる、調節タンパク質であるRevとRev応答性エレメント(RRE、ウイルスRNAのサブドメイン)との相互作用である。116個のアミノ酸を含むRevは、不完全にスプライシングされたウイルスmRNA転写産物の細胞質への蓄積を誘導することにより発現を促進する。タンパク質/DNA結合及び相互作用は、これらの事象がDNAの種々の機能及び代謝を調節するという理由で重要である。この性質を示すタンパク質は配列特異的DNA結合タンパク質と称される。これらは、DNA複製、組換え、鎖切断及び転写を媒介する。
【0068】
実施例において用いたTatペプチドは、固相法により容易に合成され、HPLCで精製することができ、MALDI−TOF質量スペクトル及びアミノ酸分析により特性決定される。シグナル伝達発色団をこのペプチドに付加してシグナル伝達センサPBP−Cを形成するための化学的方法は公知である44。具体的な例は、N末端にフルオレセインを有するシグナル伝達Tat−Cである。具体的なPBP−Cの構造は商業的供給源に作製注文することができる。
【0069】
使用可能なPBPの他の例としては、A型インフルエンザウイルスRNAに結合するマトリックスタンパク質(M1、一文字暗号で「DPNNMDKAVKLYRKLKR」の配列を有する)、リボソームRNA前駆体に結合するhnRNP Uタンパク質(一文字暗号で「MRGGNFRGGAPGNRGGYNRRGN」)が挙げられる。例えば、M1は、HIVについて実施例に示したのと同様に、サンプル中のインフルエンザウイルス検出のためのアッセイに用いることができる。
【0070】
シグナル伝達発色団
本明細書中に記載した本発明に有用な発色団としては、適切な溶液中の励起されたポリカチオン多発色団からのエネルギーを受容し、かつ発光しうる全ての物質が挙げられる。マルチプレックス式アッセイの場合、検出可能な程度に異なる発光スペクトルを有する複数の異なるシグナル伝達発色団を使用することができる。発色団は、発光団であっても、又は蛍光団であってもよい。典型的な蛍光団としては、蛍光色素、半導体ナノ結晶、ランタニド・キレート、及び緑色蛍光タンパク質が挙げられる。
【0071】
蛍光色素の例としては、フルオレセイン、6−FAM、ローダミン、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、カルボキシローダミン6G、カルボキシロードル(carboxyrhodol)、カルボキシローダミン110、カスケードブルー、カスケードイエロー、クマリン、Cy2(登録商標)、Cy3(登録商標)、Cy3.5(登録商標)、Cy5(登録商標)、Cy5.5(登録商標)、Cy−クロム、フィコエリトリン、PerCP(ペリオジニンクロロフィル−プロテイン)、PerCP−Cy5.5、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン)、NED、ROX(5−(及び−6)−カルボキシ−X−ローダミン)、HEX、ルシファーイエロー、マリナブルー、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)660、Alexa Fluor(登録商標)680、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸、BODIPY(登録商標)FL、BODIPY(登録商標)FL−Br、BODIPY(登録商標)530/550、BODIPY(登録商標)558/568、BODIPY(登録商標)564/570、BODIPY(登録商標)576/589、BODIPY(登録商標)581/591、BODIPY(登録商標)630/650、BODIPY(登録商標)650/665、BODIPY(登録商標)R6G、BODIPY(登録商標)TMR、BODIPY(登録商標)TR、それらの共役体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ランタニド・キレートの例としては、ユウロピウム・キレート、テルビウム・キレート、及びサマリウム・キレートが挙げられる。
【0072】
多種多様な蛍光半導体ナノ結晶(SCNC)が当分野で公知であり、半導体ナノ結晶を生成及び利用する方法は、1999年5月27日に公開されたPCT公報第WO99/26299号(発明者はBawendiら)、1999年11月23日にWeissらに発行された米国特許第5,990,479号、及びBruchez et al., Science 281:2013, 1998に記載されている。明確な発光波長ピークを有する非常に幅の狭い発光バンドを呈する半導体ナノ結晶を得ることができるため、多数の異なるSCNCを同一アッセイにおいてシグナル伝達発色団として(任意で他の非SCNC型のシグナル伝達発色団と組み合わせて)用いることが可能となる。
【0073】
「緑色蛍光タンパク質」という用語は、天然のイクオレア(Aequorea)緑色蛍光タンパク質と、変更された励起及び発光最大値並びに異なる形状の励起及び発光スペクトルを含む、変更された蛍光特性を示すことが確認されている変異型(Delagrave, S. et al. (1995) Bio/Technology 13:151-154; Heim, R. et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12501-12504; Heim, R. et al. (1995) Nature 373:663-664)の両方を指す。Delgraveらは、励起スペクトルが赤方偏移しているクローン化オワンクラゲ(Aequorea victoria)GFPの変異体を単離した(Bio/Technology 13:151-154 (1995))。Heim, R.らは、青色蛍光を有する変異体(Tyr66がHisに変異している)を報告した(Proc. Natl. Acad. Sci. (1994) USA 91:12501-12504)。
【0074】
基板
基板上で実施するアッセイの変形について、基板は、多様な材料、生物学的材料、非生物学的材料、有機材料、無機材料、又はこれらのいずれかの組み合わせを含みうる。例えば、基板は、重合したラングミュアー・ブロジェット膜、機能性ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、修飾シリコン、又は多種多様なゲル若しくはポリマー((ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリ酸無水物、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセタート)、ポリシロキサン、高分子シリカ、ラテックス、デキストランポリマー、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、若しくはそれらの組み合わせ)のうちのいずれか1つであってよい。導電性ポリマー及び光伝導性材料を使用することができる。
【0075】
基板は、シリカベースの基板(例えばガラス、石英など)などの平面結晶基板、又は例えば半導体及びマイクロプロセッサ産業で使用される結晶基板(例えばシリコン、ガリウムヒ素、インジウム添加GaNなど)とすることが可能であり、半導体ナノ結晶がこれに含まれる。
【0076】
基板は、光ダイオード、光半導体チップ若しくは光薄膜半導体などの光電センサ、又はバイオ素子の形態をとりうる。基板上の個々のセンサPBPの位置は、そのアドレスを指定可能なものとすることができる。これは高密度フォーマットで行うことが可能であり、またその位置はマイクロアドレスが指定可能なもの、又はナノアドレスが指定可能なものとすることができる。
【0077】
シリカ・エーロゲルを基板として使用することも可能であり、これは当分野で公知の方法により調製することができる。エーロゲル基板を自立基板として、又は別の基板材料用の表面塗料として使用してもよい。
【0078】
基板はどんな形態もとりうるが、典型的にはプレート、スライド、ビーズ、ペレット、ディスク、粒子、ミクロ粒子、ナノ粒子、より糸、沈殿物、任意で多孔質のゲル、シート、チューブ、球体、容器、毛管、パッド、薄片、フィルム、チップ、マルチウェルプレート又は皿、光ファイバーなどである。基板は、硬質又は半硬質の形態をとることもできる。基板はアッセイ成分が配置された凸又は凹領域を含んでいてもよい。基板の表面を周知技術を用いてエッチング処理することにより、所望の表面特徴、例えば溝、V溝、メサ構造などを提供することができる。
【0079】
基板上の表面は、基板と同一の材料で構成するか又は別の材料から作製することが可能であり、また該表面を化学的若しくは物理的手段により基板上に結合することができる。このように結合された表面は、多種多様な材料、例えばポリマー、プラスチック、樹脂、多糖、シリカ又はシリカベースの材料、カーボン、金属、無機ガラス、膜のうちのいずれか、又は前記基板材料のうちのいずれかで構成されていてもよい。表面を任意で透明にすることができるし、また該表面にシリカ表面で見られるような表面Si−OH機能を持たせることもできる。
【0080】
基板及び/又はその任意の表面は、使用する合成及び/又は検出方法にとって適切な光学特性を提供するように選択する。基板及び/又は表面を透明にすることで、複数の方向から当てた光に基板を曝露することができる。反射「鏡」構造を備えた基板及び/又は表面を提供することにより光の回収率を高めてもよい。
【0081】
基板及び/又はその表面は、通常、使用時に曝露される条件に対して耐性であるか又は耐性となるよう処理されており、該基板及び/又はその表面を任意で処理することによりかかる条件に曝露した後の耐性材料を除去することができる。
【0082】
アッセイ成分は、適切な方法、例えば米国特許第5,143,854号、PCT公報第WO92/10092号、1990年12月6日に出願された米国特許出願第07/624,120号(既に放棄されている)、Fodor et al., Science, 251: 767-777 (1991)、及びPCT公報第WO 90/15070号に記載された方法により、基板上で組み立てるか又は基板に付加することができる。力学的合成方法を利用してアレイを合成するための技術は、例えばPCT公報第WO93/09668号及び米国特許第5,384,261号に記載されている。
【0083】
さらに別の技術としては、PCT出願第PCT/US93/04145号に記載されているようなビーズを用いる技術、及び米国特許第5,288,514号に記載されているようなピンを用いる方法が挙げられる。
【0084】
センサPBPを基板へ付加する際に適用しうる追加的フローチャネル法(additional flow channel)又はスポット法は、1992年12月20日に出願された米国特許出願第07/980,523号及び米国特許第5,384,261号に記載されている。試薬は、(1)所定の領域上の定められたチャネル内を流れることにより、又は(2)所定の領域上に「スポット」することにより、基板へと送達される。親水性又は疎水性の被膜(溶媒の性質によって決まる)などの保護被膜を、時には他の領域ではこの反応液による加湿を容易にする材料と共に、保護しようとする基板の一部に対して使用することができる。このようにして、流動溶液がその指定された流路の外に流れ出すのをさらに防ぐ。
【0085】
典型的なディスペンサーとしては、任意でロボット制御されているマイクロピペット、インクジェットプリンタ、一連のチューブ、多岐管、数多くのピペットなどが挙げられ、これらにより種々の試薬を連続して、又は同時に、反応領域へ送達することができる。
【0086】
発色団の励起及び検出
ポリカチオン多発色団を励起することが可能であって、かつ検出しようとする発光波長よりも短い波長を提供する道具は、いずれも励起のために使用することができる。好ましくは、励起源はシグナル伝達発色団を直接的には有意に励起しない。励起源は、適切なフィルタを備えた重水素ランプなどの広帯域UV光源、キセノンランプ又は重水素ランプなどの白色光源が所望の波長を取り出すための単色光分光器を通過した後の出力、持続波(cw)気体レーザー、固体ダイオードレーザー、又はいずれかのパルスレーザーであってもよい。シグナル伝達発色団からの発光はいずれかの適切な装置又は技術を介して検出することが可能であり、多くの適切なアプローチが当分野で公知である。例えば、蛍光光度計又は分光光度計を使用することにより、多発色団を励起した場合に試験サンプルがシグナル伝達発色団に特徴的な波長の光を放出するか否かを検出してもよい。
【0087】
キット
本発明の方法を実施する際に有用な試薬を含むキットもまた提供する。ある実施形態では、キットには、対象の標的ポリヌクレオチドと結合するセンサPBPとポリカチオン多発色団が含まれている。センサPBPはシグナル伝達発色団と共役している。サンプル中に標的ポリヌクレオチドが存在する場合、センサPBPは該標的と結合する際に多発色団に近接し、これはポリカチオン多発色団と静電的に会合する。
【0088】
キットの成分は、ハウジング(housing)により維持する。キットを使用して本発明の方法を実施するための使用説明書は、ハウジングと共に提供することができるし、又は何らかの固定媒体中に提供することができる。使用説明書をハウジングの内側又は外側に配置したり、又はウジングを形成している表面の内部又は外部に印刷したりすることにより、該使用説明書を読みやすくしてもよい。キットは、対応する異なる標的ポリヌクレオチドに結合しうる複数の1つ以上の異なるセンサPBPを含有するマルチプレックス形式であってもよい。
【0089】
以下の実施例は、当業者に本発明の作製方法及び用途についての十分な説明を提供するために記載されているのであって、本発明とみなされるものの範囲を制限するものではない。使用する数字(例えば量、温度など)の精度を裏付けるための努力が為されてはいるが、多少の実験誤差及び偏差は考慮すべきである。特に指示しない限り、部は重量部、温度はセ氏度、及び圧力は大気圧前後であり、また全ての材料は市販されているものとする。以下に記載するTAR RNA及びdTAR RNAオリゴヌクレオチドはDharmacon Research Inc.(Lafayette, USA)から購入した。N末端上のフルオレセインにより修飾したポリペプチド(Tat−C及びSH3−C)はSigma-Genosys(Texas, USA)に特注した。ポリマー1及びオリゴマー2は文献45に記載の通りに調製する。蛍光及びFRET実験は全て、tris−EDTA緩衝液(10mM、pH=7.4)中で、キセノンランプ励起源を備えたPTI Quantum Master蛍光光度計を用いて実施した。
【実施例1】
【0090】
ポリマー1、Tat−Cの発光スペクトル、及びTat−Cの吸収スペクトルを図3に示す。このデータは、ポリマー1の発光とTat−Cの吸収との重複が良好であり、蛍光共鳴エネルギー移動を保証することを示す。
【実施例2】
【0091】
オリゴマー1、Tat−Cの発光スペクトル、及びTat−Cの吸収スペクトルを図4に示す。このデータは、オリゴマー1の発光とTat−Cの吸収との重複が良好であり、蛍光共鳴エネルギー移動を保証することを示す。
【実施例3】
【0092】
オリゴマー2、Tat−Cの発光スペクトル、及びTat−Cの吸収スペクトルを図5に示す。このデータは、オリゴマー2の発光とTat−Cの吸収との重複が良好であり、蛍光共鳴エネルギー移動を保証することを示す。
【実施例4】
【0093】
Tat−Cプローブ([Tat−C]=1.0×10−8M)を、非特異的dTAR RNAと同じ方法で室温にて等モル量のTAR RNAと混合した。TAR RNAの突出部構造はTatペプチドがTAR RNAに結合するのに必要であることが知られている46,47。dTAR RNAは、TAR RNAと構造上非常に関連しているが、Tat結合に必要な3塩基の突出部構造を欠損している。
【0094】
水中のオリゴマー1([オリゴマー1]=8.0×10−8M)を添加し、それに続いて365nmでの励起により得られるTat−Cの蛍光を比較することによって(図6)、非特異的Tat−C/dTAR RNA対と比較して、Tat−C/TAR RNAは強度の比が10倍よりも高いことが明らかとなった。これらのFRETの差は、特異的RNAに対するHIV TRA RNAセンサの特異性を示すものである。さらに、フルオレセイン発光は、オリゴマー1の不在下でのフルオレセインの吸収最大における直接Tat−C励起から得られるものよりも25倍以上大きかった。エネルギー移動複合体におけるTat−C発光の増大は、光増幅が共役オリゴマー1によりもたらされることを示している。
【実施例5】
【0095】
Tat−Cプローブ([Tat−C]=1.0×10−8M)を、非特異的dTAR RNAと同じ方法で室温にて等モル量のTAR RNAと混合した。水中のオリゴマー2([オリゴマー2]=6.0×10−8M)を添加し、それに続いて375nmでの励起により得られるTat−Cの蛍光を比較することによって(図7)、非特異的Tat−C/dTAR RNA対と比較して、Tat−C/TAR RNAは強度の比が15倍高いことが明らかとなった。これらのFRETの差は、特異的RNAに対する本発明のHIV TRA RNAセンサの特異性を示すものである。さらに、フルオレセイン発光は、オリゴマー2の不在下での直接Tat−C励起から得られるものよりも30倍以上大きかった。エネルギー移動複合体におけるTat−C発光の増大は、光増幅が共役オリゴマー2によりもたらされることを示している。
【実施例6】
【0096】
水溶性コンジュゲートポリマー1(平均n=約15)を集光性発色団として用いた。Tat−Cプローブ([Tat−C]=1.0×10−8M)を、非特異的dTAR RNAと同じ方法で室温にて等モル量のTAR RNAと混合した。Tat−C及びTAR RNA混合物中に水中のポリマー1([ポリマー1]=4.8×10−7M)を添加することによって、非特異的Tat−C/dTAR RNAよりも強度の比が15倍より高く、またポリマー1の不在下での直接Tat−C励起から得られるものより10倍大きいTat−Cの蛍光が得られた(図8)。従って、有意に高いFRET比と、対応する高い感度が達成された。Tat−C及びTAR RNA混合物に対する1の滴定によって、1からTAR RNAへの電荷の比が4:1に近接するまで、FRET比が1の濃度に従って増大したことが明らかとなり、その後、FRET比の低減が観察された。同様のパターンがオリゴマー2についても観察された。
【実施例7】
【0097】
TAR RNAに特異的に結合することのできない、N末端をフルオレセインで標識した別のペプチド配列(SH3−C;AKPRPPRPLPVAC、一文字記号)もまたシグナルプローブとして使用した。図9([SH3−C又はTat−C]=1.0×10−8M、[TAR RNA]=1.0×10−8M、及び[オリゴマー1]=8.0×10−8M)は、Tat−Cが存在する場合にのみCの発光を示す。これらのFRETの差は、本発明のHIV TRA RNAセンサがTatペプチド配列とTAR RNAとの特異的相互作用に依存することを示している。
【0098】
好適な実施形態を引用して本発明を詳細に記載してきたが、当業者であれば、本明細書中の教示内容を考慮すれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく一定の変更及び修正を行いうることが分かるだろう。従って、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0099】
参照
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【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、ポリカチオンポリマーを集光性多発光団として用いる本発明の方法を説明する。センサPBP(PBP−C)はシグナル伝達発色団と対象の標的ポリヌクレオチドに対する結合特異性を含む。サンプル中の標的ポリヌクレオチドと接触させた際、ポリカチオン多発色団は、それ自体の標的ポリヌクレオチドとの相互作用のために、シグナル伝達発色団と近接することになる。続いて、多発色団の励起により、シグナル伝達発色団から発光が生じる。
【図2】図2は、実施例において使用するTat−C(Cはフルオレセインである)、TAR RNA及びdTAR RNAの分子構造を説明する。
【図3】図3は、ポリマー1及びTat−Cの光学スペクトルを示す。ポリマー1及びTat−Cについてはそれぞれ380nm及び480nmにて励起を行った。アッセイ条件はTRIS EDTAバッファー溶液(10mM)及びpH=7.4である。
【図4】図4は、オリゴマー1及びTat−Cの光学スペクトルを示す。オリゴマー1及びTat−Cについてはそれぞれ365nm及び480nmにて励起を行った。アッセイ条件はTRIS EDTAバッファー溶液(10mM)及びpH=7.4である。
【図5】図5は、オリゴマー2及びTat−Cの光学スペクトルを示す。オリゴマー2及びTat−Cについてはそれぞれ375nm及び480nmにて励起を行った。アッセイ条件はTRIS EDTAバッファー溶液(10mM)及びpH=7.4である。
【図6】図6は、365nmにおけるオリゴマー1の励起によるTAR RNA及びdTAR RNAの存在下におけるTat−Cの発光スペクトルを示す。条件はTRIS EDTAバッファー溶液(10mM)及びpH=7.4である。スペクトルは、オリゴマー1の発光に関して正規化した。
【図7】図7は、375nmにおけるオリゴマー2の励起によるTAR RNA及びdTAR RNAの存在下におけるTat−Cの発光スペクトルを示す。条件はTRIS EDTAバッファー溶液(10mM)及びpH=7.4である。スペクトルは、オリゴマー2の発光に関して正規化した。
【図8】図8は、380nmにおけるポリマー1の励起によるTAR RNA及びdTAR RNAの存在下におけるTat−Cの発光スペクトルを示す。条件はTRIS EDTAバッファー溶液(10mM)及びpH=7.4である。スペクトルは、ポリマー1の発光に関して正規化した。
【図9】図9は、365nmにおけるオリゴマー1の励起によるTAR RNAの存在下におけるSH3−C及びTat−Cの発光スペクトルを示す。条件はTRIS EDTAバッファー溶液(10mM)及びpH=7.4である。スペクトルは、オリゴマー1の発光に関して正規化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイ方法であって、以下:
標的ポリヌクレオチドの含有が疑われるサンプルを提供するステップ、
標的ポリヌクレオチドと相互作用し、かつ励起されるとエネルギーをシグナル伝達発色団へ移動する能力のあるポリカチオン多発色団を提供するステップ、
前記標的ポリヌクレオチドと結合可能なセンサポリヌクレオチド結合タンパク質(PBP)であって、前記シグナル伝達発色団と共役されている、該PBPを提供するステップ、
前記標的ポリヌクレオチドが存在する場合にはこれに前記センサPBPが結合しうる条件下で、前記サンプルを溶液中で前記センサPBP及び前記多発色団と接触させるステップ、
前記溶液に、前記多発色団を励起しうる光源を当てるステップ、及び
前記シグナル伝達発色団から光が放出されるか否かを検出するステップ、
を含む上記アッセイ方法。
【請求項2】
前記多発色団が、飽和ポリマー、共役ポリマー、デンドリマー、及び半導体ナノ結晶より選択される構造を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記多発色団が飽和ポリマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記多発色団がデンドリマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記多発色団が半導体ナノ結晶を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記多発色団が共役ポリマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記共役ポリマーが、下記構造:
【化1】

〔式中、n=2〜100,000である。〕
を有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記共役ポリマーが、下記構造:
【化2】

を有する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記共役ポリマーが、下記構造:
【化3】

〔式中、n=2〜100,000である。〕
を有する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記共役ポリマーが、下記構造:
【化4】

〔式中、m=1又は2である。〕
を有する、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルを、約1:1の電荷比で前記センサPBP及び多発色団と接触させる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルを、前記センサPBPと前記多発色団との間の疎水性相互作用を低下させるのに十分な量の有機溶媒の存在下で、前記センサPBP及び前記多発色団と接触させる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルを、対応する異なるシグナル伝達発色団を含む複数の異なるセンサPBPと接触させるが、ただしそれらの異なるセンサPBPは各々が対応する異なる標的ポリヌクレオチドに選択的に結合できるものとする、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記発色団が蛍光団である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記蛍光団が、半導体ナノ結晶、蛍光色素、及びランタニド・キレートから選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記蛍光団が半導体ナノ結晶である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光団が蛍光色素である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光色素がフルオレセインである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光団がランタニド・キレートである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記標的ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記標的ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルが1本鎖の標的ポリヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルが2本鎖の標的ポリヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記標的ポリヌクレオチドが増幅反応により提供される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
シグナル伝達発色団に付加された、標的ポリヌクレオチドに結合するセンサポリヌクレオチド結合タンパク質(PBP)、及び
該標的ポリヌクレオチドと静電的に相互作用可能であり、かつセンサPBPと標的ポリヌクレオチドの結合時において、シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団、
を含むポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項26】
標的ポリヌクレオチドに結合可能なセンサPBP、
標的ポリヌクレオチドと静電的に相互作用可能であり、かつセンサPBPと標的ポリヌクレオチドとの結合時において、シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団、
センサPBP及び多発色団を保持するためのハウジング、並びに
標的ポリヌクレオチドについてサンプルをアッセイするためにキット成分を使用する方法を説明する、上記ハウジングに提供される説明書、
を含む、サンプルを標的ポリヌクレオチドについてアッセイするためのキット。
【請求項27】
前記シグナル伝達発色団から放出された閾値を上回る光が、前記サンプル中に前記標的ポリヌクレオチドが存在することを示唆する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記シグナル伝達発色団から放出された光の量を定量し、これを利用して前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドの量を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記蛍光団が緑色蛍光タンパク質である、請求項12記載の方法。
【請求項30】
前記標的ポリヌクレオチドを増幅しない、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−517801(P2006−517801A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503558(P2006−503558)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/004286
【国際公開番号】WO2004/077014
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(398051143)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (21)
【Fターム(参考)】