説明

集光素子、集光光学系、及び、プロジェクタ

【課題】光源からの照明光を効率良くライトバルブに照射する集光素子、集光光学系及びこの集光光学系を用いたプロジェクタを提供する。
【解決手段】プロジェクタ100に用いられ、光源10からの光をライトバルブ70に照射する集光光学系40は、光源10を焦点とする凹面であって、光源10からの光を反射して略平行光に変換する第1の反射面22、この平行光の一部を通過させて射出させる開口部24、及び、平行光の残りを反射して、光源10に導く第2の反射面23を有する集光素子20と、集光素子20から射出された平行光を均一化するインテグレータ30と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光素子、集光光学系、及び、プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(発光ダイオード)を用いた小型のプロジェクタが提案されている(例えば特許文献1参照)。プロジェクタは、液晶デバイス(LCD,LCOS)やDMD等の表示素子をライトバルブとして用い、光源から放射された照明光をこのライトバルブに照射して、その表示画像を投射レンズによりスクリーン等に拡大投影する装置である。このようなプロジェクタに設けられ、光源から放射された光を集光してライトバルブに照射する集光光学系として、例えば、図8に示す集光光学系440は、光源410から放射された光を略平行光に変換する集光素子420と、ライトバルブに照射される照明光の照度を均一にするインテグレータ430と、を有している。そして、集光素子420は、光源410から放射された照明光を反射させる特性を有する反射面422と、半円形状の開口部423と、を備えた構成となっている。この反射面422は、放物面形状を有しており、その焦点位置に光源410が配置されている。これにより、反射面422で反射された反射光は略平行光に変換され、半円形断面の照明光として開口部423から射出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−041256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような集光光学系440においては、集光素子420の開口部423が半円形状の断面であるのに対し、インテグレータ430の有効口径は照明開口数に応じて一般に矩形又は略円形形状であるため、光源410から放射された照明光のうち、一部の光がライトバルブの照明に利用されず、非効率であるという課題があった。すなわち、集光素子420の開口部423のうち、インテグレータ430の有効口径と略同一形状の領域424(図8において破線で囲まれた領域)からの光のみがインテグレータ430を介してライトバルブを照明し、開口部423のうち、この領域424以外の領域から射出される光はライトバルブまで到達しないためである。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、光源からの照明光を効率良くライトバルブに照射する集光素子、集光光学系及びこの集光光学系を用いたプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る集光素子は、光源を焦点とする凹面であって、光源からの光を反射して略平行光に変換する第1の反射面と、略平行光の一部を通過させて射出させる開口部と、略平行光の残りを反射して、光源に導く第2の反射面と、を有する。
【0007】
このような集光素子において、第1の反射面は、光源を焦点とする略放物面形状であることが好ましい。
【0008】
また、このような集光素子において、第2の反射面は、略平行光を垂直に反射する平面であることが好ましい。
【0009】
あるいは、第2の反射面は、光源を焦点とする凹面であることが好ましい。このとき、この第2の反射面は、光源を焦点とする略放物面形状であることが好ましい。
【0010】
また、このような集光素子は、光源からの光に対して透明な媒質で構成された光学部材の表面に、第1の反射面、第2の反射面及び開口部が形成され、光学部材内で光源からの光を反射させて開口部から略平行光を射出させるように構成されることが好ましい。
【0011】
このとき、このような集光素子は、光学部材の光源と対向する面に、当該光源を球心として半球状にくり抜かれて形成された入射面を有することが好ましい。
【0012】
あるいは、このような集光素子は、光学部材の内部に形成された空間を囲む面に、第1の反射面、第2の反射面及び開口部が形成され、空間内で光源からの光を反射させて開口部から略平行光を射出させるように構成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る集光光学系は、光源からの光を集光して略平行光として射出させる上述の集光素子のいずれかと、この集光素子から射出された略平行光を均一化するインテグレータと、から構成される。
【0014】
また、本発明に係るプロジェクタは、表面での拡散効果を有する光源と、光源からの光を集光して射出する上述の集光光学系と、この集光光学系からの光が照射されるライトバルブと、このライトバルブを透過又は反射した光を投影する投影レンズと、を有する。
【0015】
このようなプロジェクタにおいて、光源は、固体発光素子と、この固体発光素子の発光と補色をなす蛍光体と、から構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る集光素子、集光光学系及びプロジェクタを以上のように構成すると、光源からの照明光を効率良くライトバルブに照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】白色光源と透過型ライトバルブとを用いたプロジェクタの構成を示す説明図であって、(a)は斜視図を示し、(b)は側面図を示す。
【図2】第1の実施形態に係る集光素子を示す説明図であって、(a)は斜視図を示し、(b)はIIb−IIb断面図を示し、(c)は側面図を示し、(d)は正面図を示し、(e)は底面図を示す。
【図3】第2の実施形態に係る集光素子を示す説明図であって、(a)は斜視図を示し、(b)はIIIb−IIIb断面図を示し、(c)は側面図を示し、(d)は平面図を示し、(c)は正面図を示し、(f)は底面図を示す。
【図4】第3の実施形態に係る集光素子を示す説明図であって、(a)は斜視図を示し、(b)はIVb−IVb断面図を示し、(c)は側面図を示し、(d)は正面図を示し、(e)は底面図を示す。
【図5】第4の実施形態に係る集光素子を示す説明図であって、(a)は斜視図を示し、(b)はVb−Vb断面図を示し、(c)は側面図を示し、(d)は正面図を示し、(e)は底面図を示す。
【図6】白色光源と反射型ライトバルブを用いたプロジェクタの構成を示す説明図である。
【図7】赤色、緑色及び青色の3色の光源と透過型ライトバルブとを用いたプロジェクタの構成を示す説明図である。
【図8】従来の集光素子を示す説明図であって、(a)は斜視図を示し、(b)はVIIIb−VIIIb断面図を示し、(c)は側面図を示し、(d)は正面図を示し、(e)は底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて、本実施形態に係る集光素子及び集光光学系が用いられるプロジェクタの構成について説明する。このプロジェクタ100は、光源10から放射された照明光をライトバルブ70に照射して、その表示画像を投射レンズ80によりスクリーン等に拡大投影する装置であって、光源10側から順に、集光素子20及びインテグレータ30から構成される集光光学系40と、開口絞り50と、コンデンサレンズ60と、透過型のライトバルブ(例えば、LCD)70と、投影レンズ80と、から構成される。このプロジェクタ100において、光源10から放射された照明光は集光素子20により反射されて略平行化してインテグレータ30に入射する。さらに、このインテグレータ30により均一化された照明光(平行光)は、開口絞り50により所定の照明開口数に制限された後、コンデンサレンズ60によりライトバルブ70を照明する。そして、このライトバルブ70により変調されて映像光となり、投射レンズ80により不図示のスクリーン等に拡大投影される。ここで、光源10は、例えば、InGaN系の青色LEDチップ(固体撮像素子)と、当該青色LEDチップから放射される青色光によって励起され、この青色光と補色をなすブロードな黄色光を放射するYAG蛍光体の層(以下、「蛍光体層」と呼ぶ)と、を組み合わせて白色光を得る白色LEDにより構成されている。なお、YAG蛍光体層は、例えば、青色LEDチップの表面(例えば、固体撮像素子を保護するケースの表面)に塗布されて形成されている。
【0019】
それでは、このようなプロジェクタに用いられ、光源から放射された光を効率良くライトバルブに導く集光素子及び集光光学系について説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係る集光素子20及びインテグレータ30からなる集光光学系40を示している。集光素子20は、光源10から放射される光の波長に対して透明な媒質からなる光学材料で形成された光学部材に対して、その表面(外周面)に金属膜や誘電体多層膜など(以下「反射膜」と呼ぶ)による反射面(反射面22及び反射面23)を形成したものであり、例えば、光源10が可視光光源であれば、熱可塑性樹脂を射出成形したものに、Al(アルミニウム)の反射膜を蒸着させて構成される。この集光素子20は、平面状の底面25の一部が半球状にくり抜かれて形成され、その球心に光源10の中心が配置される入射面21と、このように配置された光源10の中心に焦点が位置するような略放物面形状の上面22に反射膜が形成された凹の反射面(以下、「第1の反射面22」と呼ぶ)と、底面25から垂直に延び、略放物面形状の上面を切断するような形状の前面23(従って、この前面23は正面視において略半円形状となる)に反射膜が形成された平面の反射面(以下、「第2の反射面23」と呼ぶ)と、を有している。また、この集光素子20の前面23には第2の反射面23を構成する反射膜が形成されていない、正面視において略正方形の形状をした開口部24が設けられている。
【0021】
集光素子20を以上のような形状とすることにより、光源10から上方に放射された照明光は、入射面21に垂直に入射して透過し、そのまま第1の反射面22に入射する。このとき、第1の反射面22は、上述のように光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されているため、この第1の反射面22で反射した光は、略平行光となって、底面25に対して平行に前方に反射される。第1の反射面22で反射された平行光のうち、開口部24に入射した光はこの開口部24を略垂直に透過し、略平行光のままこの集光素子20から射出される。一方、第2の反射面23は、第1の反射面22で反射された略平行光に対して直交するように形成されているため、第1の反射面22で反射された略平行光のうち、第2の反射面23に入射した光は、この第2の反射面23に垂直に反射されて同一光路を逆行し、さらに、第1の反射面22で反射されて、この第1の反射面22の焦点である光源10の中心に集光される。光源10に集光された光は、この光源10の表面(放射面)に形成された蛍光体層で拡散され、放射された後、再び第1の反射面22によって略平行光に変換される。このとき、光源10より再放出された光はYAG蛍光体層の拡散効果により、最初に放出された光路とは異なる方向へ放出されるため、一部は開口部24から略平行光として射出される。
【0022】
以上のようにして集光素子20の開口部24から放射された平行光はインテグレータ30に入射する。このインテグレータ30は、矩形形状の単位レンズが多数個配列されたフライアイインテグレータを用いている。このインテグレータ30を構成する単位レンズは、入射面と射出面との曲率半径が等しく、両面の頂点が互いに他の焦点に配されている。インテグレータ30は、この単位レンズを数十個、入射面及び射出面の各々において各頂点が同一平面上に並ぶように束ねて配置されている。また、各単位レンズの入射面は、図1に示したコンデンサレンズ60を介して照明領域と共役に配置され、その像は単位レンズの位置に無関係にコンデンサレンズ60の後側焦点に生じ、この後側焦点に配置された被照明領域(すなわち、ライトバルブ70)を重畳的に照明する。インテグレータ30の入射面上の照度は光源10の放射角度特性により不均一に照明されるが、各単位レンズの入射面が重畳的に投影されるため、被照明領域での照度の均一性が向上する。
【0023】
この第1の実施形態に係る集光素子20を以上のように構成すると、光源10から放射されて第1の反射面22で反射された略平行光のうち、開口部24から射出されなかった光は、第2の反射面23及び第1の反射面22で反射されて光源10に戻り、この光源10の表面で散乱されて再度放射されるため、その一部は開口部24から略平行光として射出される。そのため、光源10から放射された光のうち、開口部24から略平行光として射出される光を増やすことができ、光源10からの光の利用効率を向上させることができる。これにより、この集光素子20における発熱を低減し、また、光源10で消費される電力を低減することができる。また、光源10から放射された光のうち、一部の光は2度以上、光源10の蛍光体層を通過するため、より明るい照明光をライトバルブ70に照射することができる。
【0024】
なお、このような集光素子及び集光光学系は、以上の実施形態に限定されず、本発明の範囲内において適宜変更可能である。まず、上記実施形態において、光源10はInGaN系の青色LEDチップとYAG蛍光体層とからなる白色LED用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、表面での拡散効果を有する光源であればよい。例えば、表面に凹凸を作製したLED光源や有機EL等の固体光源を用いることもできる。
【0025】
また、上記実施形態において、開口部24の形状は矩形であるとしたが、インテグレータ30の有効口径に合わせて、この有効口径と略同一形状であれば良く、例えば円形としても良い。
【0026】
また、上記実施形態において、第1の反射面22は略放物面形状であるとしたが、この第1の反射面22に対して光源10の発光面積の大きさが比較的小さい場合においては、このような略放物面形状が好適である。しかし、第1の反射面22に対して発光面積の大きい光源10を用いる場合においては、反射後の平行性を向上させるために、この第1の反射面22の形状を高次の非球面形状とすることが望ましい。
【0027】
また、上記実施形態において、光源10の中心を第1の反射面22の焦点とする要件を満足しつつ、光源10と入射面21との間の空間を樹脂で封止することにより、光源10と集光素子20とを一体化しても良い。このように構成することで、光源10の表面にて空気との境界面で全反射されて放出されない光を、効率的に放射させることが可能となる。
【0028】
さらに、本実施形態において、インテグレータ30はフライアイインテグレータを用いる場合について説明したが、例えば、ロッドインテグレータに置き換えることも可能である。なお、これらの変形例については、以降の実施形態に係る集光素子及び集光光学系についても同様である。
【0029】
[第2の実施形態]
次に、図3を用いて第2の実施形態に係る集光素子120について説明する。なお、この第2の実施形態に係る集光素子120に用いられる光源10及びインテグレータ30は第1の実施形態と同一のものである。また、この集光素子120をプロジェクタ100に適用するときは、図1に示す集光素子20を本実施形態に係る集光素子120が置き換えて配置される(以降の実施形態においても同様である)。
【0030】
この第2の実施形態に係る集光素子120も、光源10から放射される光の波長に対して透明な媒質からなる光学材料で形成された光学部材に対して、その表面(外周面)に反射膜による反射面(反射面122及び反射面124)が形成されている。また、この集光素子120は、平面状の底面125と、二つの放物面の開口を対向させて組み合わせた形状の上面122及び前面123を有している。そして、この集光素子120は、底面125の一部が半球状にくり抜かれその球心に光源10の中心が配置される入射面121と、このように配置された光源10の中心に焦点が位置する略放物面形状の上面122に反射膜が形成された凹の反射面(以下、「第1の反射面122」と呼ぶ)と、この第1の反射面122に対向するように形成され、光源10の中心に焦点が位置する略放物面形状の前面123に反射膜が形成された凹の反射面(以下、「第2の反射面123」と呼ぶ)と、を有している。なお、第2の反射面123の中央部には、断面が略正方形形状の突出部120aが形成されており、この突出部120aの前面124は、底面125に対して直交する略正方形の形状の平面となっている(以下、「開口部124」と呼ぶ)。この開口部124には反射膜は形成されていない。
【0031】
集光素子120を以上のような形状とすることにより、光源10から上方に放射された照明光は、入射面121に垂直に入射して透過し、そのまま第1の反射面122に入射する。このとき、第1の反射面122は、上述のように光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されているため、この第1の反射面122で反射した光は、略平行光となって、底面125に対して平行に前方に反射される。第1の反射面122で反射された平行光のうち、開口部124に入射した光はこの開口部124を略垂直に透過し、略平行光のままこの集光素子120から射出される。一方、第2の反射面123も、光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されているため、第1の反射面122で反射された略平行光のうち、第2の反射面123に入射した光は、この第2の反射面123で反射されて、略放物面形状の焦点である光源10の中心に集光される。光源10に集光された光は、この光源10の表面(放射面)に形成された蛍光体層で拡散され、放射された後、再び第1の反射面121によって略平行光に変換される。このとき、光源10より再放出された光はYAG蛍光体層の拡散効果により、最初に放出された光路とは異なる方向へ放出されるため、一部は開口部124から略平行光として射出される。
【0032】
ところで、第1の実施形態に係る集光素子20においては、光源10から放射されて直接第2の反射面23に入射する光は光源10に戻って来ないが、この第2の実施形態に係る集光素子120においては、光源10から放射されて第2の反射面123に直接入射する光は、この第2の反射面123で反射されて平行光になり、さらに第1の反射面122で反射されて光源10の中心に集光される。この場合も、光源10の表面(放射面)に形成された蛍光体層で拡散されて放射されるが、このときも、光源10より再放出された光はYAG蛍光体層の拡散効果により、最初に放出された光路とは異なる方向へ放出されるため、一部は開口部124から略平行光として射出される。すなわち、この第2の実施形態に係る集光素子120は、第1の実施形態に係る集光素子20よりも集光効率に優れている。その他の効果は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0033】
[第3の実施形態]
図4に示す第3の実施形態に係る集光素子220は、第1の実施形態に係る集光素子20と同じ反射面形状を有しているが、第1の実施形態に係る集光素子20が透明樹脂内の反射を利用したものであったのに対し、この第3の実施形態に係る集光素子220は表面反射とした点において異なっている。即ち、この集光素子220の内部には、底部225及び前部227において開口した空間226が形成されている。そして、底部225の開口部221内に光源10が配置され、空間226を囲む上面222は、光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されその表面に反射膜が形成された凹の反射面(以下、「第1の反射面222」と呼ぶ)を構成し、空間226を囲む前面223は、底部225から垂直に延び、略放物面形状の上面222を切断するような形状に形成され、その表面に反射膜が形成された平面の反射面(以下、「第2の反射面223」と呼ぶ)を構成している。なお、この前面223には、前部227を貫通して略正方形形状の開口部224が形成されている。
【0034】
集光素子220を以上のような形状とすることにより、光源10から上方に放射された照明光は、開口部221から内部の空間226に入射してそのまま第1の反射面222に入射する。このとき、第1の反射面222は、上述のように光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されているため、この第1の反射面122で反射した光は、略平行光となって前方に反射される。第1の反射面222で反射された平行光のうち、開口部224に入射した光はこの開口部224を通って略平行光のままこの集光素子220から射出される。一方、第2の反射面223は、第1の反射面222で反射された略平行光に対して直交するように形成されているため、第1の反射面222で反射された略平行光のうち、第2の反射面223に入射した光は、この第2の反射面223で垂直に反射されて同一光路を逆行し、さらに、第1の反射面222で反射されて、この第1の反射面222の焦点である光源10の中心に集光される。光源10に集光された光は、この光源10の表面(放射面)に形成された蛍光体層で拡散され、放射された後、再び第1の反射面222によって略平行光に変換される。このとき、光源10より再放出された光はYAG蛍光体層の拡散効果により、最初に放出された光路とは異なる方向へ放出されるため、一部は開口部224から略平行光として射出される。
【0035】
第1の実施形態に係る集光素子20が、光源10から放射される光の波長に対して透明な媒質で構成されたものであることが必要なのに対し、この第3の実施形態に係る集光素子220では、不透明の熱可塑性樹脂を用いた射出成形品(光学部材)として、その内部に形成された空間226を囲む上面222及び前面223に反射膜を蒸着したものでも良く、材料の選択範囲が広がる利点がある。また、紫外線光源などによる樹脂内部の透過率の低下と言った問題を回避できる利点がある。その他の効果は、第1の実施形態の場合と同様である。なお、図4において、集光素子220の外観は、円柱を半分にした形状にした場合を示しているが、特にこの形状に限定されるわけではなく、例えば、矩体形状としても良い。また、第1の実施形態に係る集光素子20と同様に、この第3の実施例に係る集光素子220においては、光源10から放射された光のうち、直接第2の反射面223に入射する光は、光源10には戻らない。
【0036】
[第4の実施形態]
図5に示す第4の実施形態に係る集光素子320は、第2の実施形態に係る集光素子120と同じ反射面形状を有しているが、第2の実施形態に係る集光素子120が透明樹脂内の反射を利用したものであったのに対し、この第4の実施形態に係る集光素子320は表面反射とした点において異なっている。即ち、この集光素子320の内部には、底部325及び前部327において開口した空間326が形成されている。そして、底部325の開口部321内に光源10が配置され、空間326を囲む上面322は、光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されその表面に反射膜が形成された凹の反射面(以下、「第1の反射面322」と呼ぶ)を構成し、空間326を囲む前面323は、光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されその表面に反射膜が形成された凹の反射面(以下、「第2の反射面323」と呼ぶ)を構成している。なお、この前面323には、前部327を貫通して略正方形形状の開口部324が形成されている。
【0037】
集光素子320を以上のような形状とすることにより、光源10から上方に放射された照明光は、開口部321から内部の空間326に入射してそのまま第1の反射面322に入射する。このとき、第1の反射面322は、上述のように光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されているため、この第1の反射面322で反射した光は、略平行光となって前方に反射される。第1の反射面322で反射された平行光のうち、開口部324に入射した光は、この開口部324を通って略平行光のままこの集光素子320から射出される。一方、第2の反射面323も、光源10の中心を焦点とする略放物面形状に形成されているため、第1の反射面322で反射された略平行光のうち、第2の反射面323に入射した光は、この第2の反射面323で反射されて、略放物面形状の焦点である光源10の中心に集光される。光源10に集光された光は、この光源10の表面(放射面)に形成された蛍光体層で拡散され、放射された後、再び第1の反射面322によって略平行光に変換される。このとき、光源10より再放出された光はYAG蛍光体層の拡散効果により、最初に放出された光路とは異なる方向へ放出されるため、一部は開口部324から略平行光として射出される。同様に、光源10から放射されて第2の反射面323に直接入射する光は、この第2の反射面323で反射されて平行光になり、さらに第1の反射面322で反射されて光源10に集光される。この場合も、光源10の表面(放射面)に形成された蛍光体層で拡散されて放射されるが、このときも、光源10より再放出された光はYAG蛍光体層の拡散効果により、最初に放出された光路とは異なる方向へ放出されるため、一部は開口部324から略平行光として射出される。すなわち、この第4の実施形態に係る集光素子320は、第2の実施形態に係る集光素子220よりも集光効率に優れている。
【0038】
なお、この第4の実施形態に係る集光素子320も、不透明の熱可塑性樹脂を用いた射出成形品(光学部材)とすることができ、材料の選択範囲が広がる利点がある。また、紫外線光源などによる樹脂内部の透過率の低下と言った問題を回避できる利点がある。その他の効果は、第2の実施例の場合と同様である。なお、図5において、集光素子320の外観は、円柱を半分にした形状にした場合を示しているが、特にこの形状に限定されるわけではなく、例えば、矩体形状としても良い。
【0039】
以上に説明した第1〜第4の実施形態に係る集光素子及び集光光学系が適用されるプロジェクタは、図1に示した透過型のライトバルブを用いたものだけでなく、図6に示すように反射型のライトバルブ(例えば、LCOSやDMD)を用いたプロジェクタにも適用することができる。あるいは、図7に示すように赤色、緑色及び青色の3色の光を照射する照明光学系と透過型のライトバルブを用いたプロジェクタにも適用することができる。ここで、図6に示すプロジェクタ200は、図示しない光源と反射型のライトバルブ71との間に、光源側から順に、例えば第1の実施形態に係る集光素子20及びインテグレータ30からなる集光光学系40と、開口絞り50と、コンデンサレンズ60と、偏光ビームスプリッタ90とが配置されて、光源からの光をライトバルブ71に照射し、さらに、このライトバルブ71で反射された光が偏光ビームスプリッタ90を透過して投影レンズ80で図示しないスクリーン等に投影されるように構成されている。なお、この図6に示すプロジェクタでは、光源からの光は、偏光ビームスプリッタ90の偏光分離面90aで反射されてライトバルブ71に照射され、このライトバルブ71で反射された光は、偏光分離面90aを透過して投影レンズ80を介して投影されるように構成した場合を示しているが、偏光分離面90aを透過した光が照射される位置にライトバルブ71を配置し、このライトバルブ71で反射された光を偏光分離面90aで反射させて投影レンズ80に導くように構成することも可能である。
【0040】
また、図7に示すプロジェクタ300は、赤色、緑色及び青色の光を放射する光源の各々に対して、集光素子20a〜20c及びインテグレータ30a〜30cからなる集光光学系40a〜40cと、開口絞り50a〜50cと、コンデンサレンズ60a〜60cとからなる照明光学系を設け、それぞれの照明光学系から射出された3色の照明光を偏光ビームスプリッタ91で重畳させて白色光として放射することにより、透過型のライトバルブ70に照射するように構成されている。このプロジェクタ300においても、ライトバルブ70を透過して変調された映像光は、投影レンズ80によりスクリーン等に投影される。
【符号の説明】
【0041】
10 光源
20,120,220,320 集光素子 21,121 入射面
22,122,222,322 第1の反射面
23,123,223,323 第2の反射面
24,124,224,324 開口部 30 インテグレータ
40 集光光学系 70,71 ライトバルブ 80 投影レンズ
100,200,300 プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を焦点とする凹面であって、前記光源からの光を反射して略平行光に変換する第1の反射面と、
前記略平行光の一部を通過させて射出させる開口部と、
前記略平行光の残りを反射して、前記光源に導く第2の反射面と、を有する集光素子。
【請求項2】
前記第1の反射面は、前記光源を焦点とする略放物面形状である請求項1に記載の集光素子。
【請求項3】
前記第2の反射面は、前記略平行光を垂直に反射する平面である請求項1または2に記載の集光素子。
【請求項4】
前記第2の反射面は、前記光源を焦点とする凹面である請求項1または2に記載の集光素子。
【請求項5】
前記第2の反射面は、前記光源を焦点とする略放物面形状である請求項4に記載の集光素子。
【請求項6】
光源からの光に対して透明な媒質で構成された光学部材の表面に、前記第1の反射面、前記第2の反射面及び前記開口部が形成され、前記光学部材内で前記光源からの光を反射させて前記開口部から前記略平行光を射出させるように構成された請求項1〜5いずれか一項に記載の集光素子。
【請求項7】
前記光学部材の前記光源と対向する面に、当該光源を球心として半球状にくり抜かれて形成された入射面を有する請求項6に記載の集光素子。
【請求項8】
光学部材の内部に形成された空間を囲む面に、前記第1の反射面、前記第2の反射面及び前記開口部が形成され、前記空間内で前記光源からの光を反射させて前記開口部から前記略平行光を射出させるように構成された請求項1〜5いずれか一項に記載の集光素子。
【請求項9】
光源からの光を集光して略平行光として射出させる請求項1〜8いずれか一項に記載の集光素子と、
前記集光素子から射出された前記略平行光を均一化するインテグレータと、から構成される集光光学系。
【請求項10】
表面での拡散効果を有する光源と、
前記光源からの光を集光して射出する請求項9に記載の集光光学系と、
前記集光光学系からの光が照射されるライトバルブと、
前記ライトバルブを透過又は反射した光を投影する投影レンズと、を有するプロジェクタ。
【請求項11】
前記光源は、
固体発光素子と、
前記固体発光素子の発光と補色をなす蛍光体と、から構成された請求項10に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−2544(P2011−2544A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144035(P2009−144035)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】